(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】分流装置及び採血キット
(51)【国際特許分類】
A61B 5/154 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
A61B5/154
(21)【出願番号】P 2020502390
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 US2018042367
(87)【国際公開番号】W WO2019018324
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-12
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】イヴォセヴィッチ,ミラン
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528237(JP,A)
【文献】特開昭58-067238(JP,A)
【文献】特開昭57-164068(JP,A)
【文献】国際公開第2017/019552(WO,A1)
【文献】特開2011-196820(JP,A)
【文献】特開2012-223561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口導管及び出口導管を有するハウジングであって、前記入口導管を通して初流血及び後続の血流を受け取るように構成され、かつ、前記後続の血流が、前記出口導管を通って該分流装置を出ることを可能にするように構成される、ハウジングと、
前記ハウジング内に前記出口導管に隣接して位置付けられるフィルターであって、空気を通過させるが、血液は通過させない材料を含む、フィルターと、
前記ハウジング及び前記フィルターの部分によって画定される分流チャンバーであって、前記初流血を受け取って保持するように構成される、分流チャンバーと、
前記ハウジング内に位置する内部導管であって、該内部導管は前記フィルター内に配置された第一の端部と前記分流チャンバー内に配置された第二の端部とを有する菅からなり、前記後続の流体流が該分流装置を出ることを可能にするように構成される、内部導管と、
を備える、分流装置。
【請求項2】
前記ハウジングの一部分は、親水性材料を含む、請求項1に記載の分流装置。
【請求項3】
前記内部導管の一部分は、疎水性材料を含む、請求項2に記載の分流装置。
【請求項4】
前記内部導管は、前記分流チャンバー内に延在し、前記分流チャンバーの断面積は、前記内部導管の断面積よりも大きい、請求項3に記載の分流装置。
【請求項5】
前記内部導管は、前記フィルター内に形成された導管を含み、前記管の一部分は、前記フィルター内に形成された管収納部内に位置付けられる、請求項4に記載の分流装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、ハウジングシェル及びハウジングベースを備え、前記ハウジングシェルは、前記入口導管を有し、前記ハウジングベースは、前記出口導管を有し、前記フィルターは、前記ハウジングベースに形成されたフィルター収納部内に位置付けられる、請求項5に記載の分流装置。
【請求項7】
前記フィルターは、親水性材料を含む、請求項6に記載の分流装置。
【請求項8】
前記親水性材料は、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)である、請求項7に記載の分流装置。
【請求項9】
前記分流装置に連結された採取槽によって生成される真空圧により、前記初流血を前記分流チャンバー内に引き込む、請求項1に記載の分流装置。
【請求項10】
前記内部導管は、前記後続の流体流が、前記分流装置に連結された前記採取槽によって生成される前記真空圧のみを用いて前記分流装置を出ることを可能にするように構成される、請求項9に記載の分流装置。
【請求項11】
採血経路
及び採血槽を含み、
前記採血経路は、
患者の皮膚を穿刺する第1の針と、請求項1に記載
の分流装置とを含み、
前記採取槽は、(a)前記患者からの初流血を、前記第1の針を通して
請求項1に記載の分流装置内に引き込み、(b)後続の血流を、前記第1の針及び
請求項1に記載の分流装置をそれぞれ通して前記採取槽内に引き込む、大気圧未満の内圧を有し、
前記採血経路は、最初の空気流が請求項1に記載
の分流装置を通して大気中に排気されることを阻止する閉鎖系である、採血キット。
【請求項12】
前記採血経路は、前記採取槽のキャップを穿刺する第2の針を備えるホルダーを更に含む、請求項11に記載の採血キット。
【請求項13】
請求項1に記載の前記分流装置が、前記ホルダーに統合される、請求項12に記載の採血キット。
【請求項14】
請求項1に記載の前記分流装置と、前記ホルダーとは、別個のユニットである、請求項12に記載の採血キット。
【請求項15】
前記採取槽は、細菌増殖培地、抗生物質スカベンジャー、又はpHセンサーのうちの1つ以上を含む、請求項11に記載の採血キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年7月17日に出願された米国仮特許出願第62/533,288号の出願日の利益を主張し、その開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本技術は、採血プロセス中の初流血を捕捉する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
血液培養検査は、現在のところ、菌血症及び敗血症(セプシス)を特定するのに好ましい方法である。セプシスは、臓器不全及び死につながるおそれのある、血流の細菌感染に対する全身性反応である。セプシスによって、感染した患者の6人に1人が死亡している。また、院内死亡全体のうちの半数がセプシスに関連するものである。実際のところ、セプシスでは、AIDS、乳がん、及び前立腺がんを合計したものよりも多くの人数が死亡している。セプシスは、他のいかなる診断よりも多数の病院患者を冒している。
【0004】
不幸にして、米国の医療制度は、偽陽性の血液培養結果に伴う不要な処置に、毎年40億ドル超を支出している。非特許文献1を参照されたい。また、「血液培養において汚染物質として特定されるほとんどの有機体は、患者の皮膚に由来するものであることが、現在認識されている。([i]t is currently accepted that most organisms identified as contaminants in blood cultures originate from the skin of the patient.)」(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Oren Zwang & Richard K. Albert, Analysis of Strategies to Improve Cost Effectiveness of Blood Cultures, 1 J. Hosp. Med. 272 (Sep. 2006)
【文献】Robert A. Garcia et al., Multidisciplinary Team Review of Best Practices for Collection and Handling of Blood Cultures to Determine Effective Interventions for Increasing the Yield of True-Positive Bacteremia, Reducing Contamination, and Eliminating False-Positive Central Line-Associated Bloodstream Infections, 43 Am. J. Infect. Control 1222 (Nov. 2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、採血プロセスにおいて、偽陽性の件数を低減するために、患者の皮膚からの汚染物質を含み得る患者の初流血を分流し、捕捉することが可能な装置が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の種々の実施形態は、分流装置の分流チャンバー内に初流血を捕捉する分流装置を記載している。分流チャンバーは、ハウジングシェル、ハウジングベース、及びフィルターによって部分的に画定することができる。フィルターは、空気を流通させるが、血液は流通させない多孔質材料とすることができる。分流チャンバーが満たされると、後続の血流は、分流装置の内部導管を通って採取槽に向かうことができる。
【0008】
本開示の1つの態様は、(1)入口導管及び出口導管を有するハウジングであって、前記入口導管を通して初流血及び後続の血流を受け取るように構成され、かつ前記後続の血流が、前記出口導管を通って前記分流装置を出ることを可能にするように構成される、ハウジングと、(2)前記ハウジング内に前記出口導管に隣接して位置付けられるフィルターであって、空気を通過させるが、血液は通過させない材料を含む、フィルターと、(3)前記ハウジング及び前記フィルターの部分によって画定される分流チャンバーであって、前記初流血を受け取って保持するように構成される、分流チャンバーと、(4)前記ハウジング内に位置する内部導管であって、前記後続の流体流が前記分流装置を出ることを可能にするように構成される、内部導管とを備える、分流装置に関する。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記ハウジングの一部分は、親水性材料を含む。いくつかの実施形態において、前記内部導管の一部分は、疎水性材料を含む。いくつかの実施形態において、前記内部導管は、前記分流チャンバー内に延在し、前記分流チャンバーの断面積は、前記内部導管の断面積よりも大きい。いくつかの実施形態において、前記内部導管は、管と、前記フィルター内に形成された導管とを含み、前記管の一部分は、前記フィルター内に形成された管収納部内に位置付けられる。いくつかの実施形態において、前記ハウジングは、ハウジングシェル及びハウジングベースを備え、前記ハウジングシェルは、前記入口導管を有し、前記ハウジングベースは、前記出口導管を有し、前記フィルターは、前記ハウジングベースに形成されたフィルター収納部内に位置付けられる。いくつかの実施形態において、前記フィルターは、親水性材料を含む。いくつかの実施形態において、前記親水性材料は、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)である。いくつかの実施形態において、前記分流装置に連結された採取槽によって生成される真空圧により、前記初流血を前記分流チャンバー内に引き込む。いくつかの実施形態において、前記内部導管は、前記後続の流体流が、前記分流装置に連結された前記採取槽によって生成される前記真空圧のみを用いて前記分流装置を出ることを可能にするように構成される。
【0010】
本開示の別の態様は、患者から採取槽までの採血経路を組み立てるための説明書を含み、前記採血経路は、前記患者の前記皮膚を穿刺する第1の針と、分流装置とを含み、前記採取槽は、(a)前記患者からの初流血を、前記第1の針を通して前記分流装置内に引き込み、(b)後続の血流を、前記第1の針及び前記分流装置をそれぞれ通して前記採取槽内に引き込む、大気圧未満の内圧を有し、前記採血経路は、最初の空気流が前記分流装置を通して大気中に排気されることを阻止する閉鎖系である、採血キットに関する。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記採血経路は、前記採取槽のキャップを穿刺する第2の針を備えるホルダーを更に含む。いくつかの実施形態において、前記分流装置が、前記ホルダーに統合される。いくつかの実施形態において、前記分流装置と、前記ホルダーとは、別個のユニットである。いくつかの実施形態において、前記採取槽は、細菌増殖培地、抗生物質スカベンジャー、又はpHセンサーのうちの1つ以上を含む。
【0012】
本開示の更に別の態様は、患者から採取槽までの採血経路を組み立てることを含み、前記採血経路は、前記患者の前記皮膚を穿刺する第1の針と、分流装置とを含み、前記採取槽は、(a)前記患者からの初流血を、前記第1の針を通して前記分流装置内に引き込み、(b)後続の血流を、前記第1の針及び前記分流装置をそれぞれ通して前記採取槽内に引き込む、大気圧未満の内圧を有し、前記分流装置は、(1)入口導管及び出口導管を有するハウジングであって、前記入口導管を通して初流血及び後続の血流を受け取るように構成され、かつ、前記後続の血流が、前記出口導管を通って前記分流装置を出ることを可能にするように構成される、ハウジングと、(2)前記ハウジング内に前記出口導管に隣接して位置付けられるフィルターであって、空気を通過させるが、血液は通過させない材料を含む、フィルターと、(3)前記ハウジング及び前記フィルターの部分によって画定される分流チャンバーであって、前記初流血を受け取って保持するように構成される、分流チャンバーと、(4)前記ハウジング内に位置する内部導管であって、前記後続の流体流が前記分流装置を出ることを可能にするように構成される、内部導管とを備える、採血方法に関する。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記採血経路は、最初の空気流が前記分流装置を通して大気中に排気されることを阻止する閉鎖系である。いくつかの実施形態において、前記採血経路は、前記採取槽のキャップを穿刺する第2の針を備えるホルダーを更に含む。いくつかの実施形態において、前記分流装置は、前記ホルダーに統合される。いくつかの実施形態において、前記分流装置と前記ホルダーとは、別個のユニットである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本技術に係る分流装置の1つの実施形態を備える採血システムを示す図である。
【
図2】本技術に係るホルダーに統合された分流装置の一実施形態を示す図である。
【
図3A】本技術に係るアダプターを通してホルダーと相互接続することができる分流装置の一実施形態を示す図である。
【
図3B】
図3Aに示されている分流装置を備える採血システムを示す図である。
【
図4A】本技術に係る分流装置の一実施形態を示す図である。
【
図5A】初流血が本技術に係る分流装置の分流チャンバー内に流れることができる様子を示す図である。
【
図5B】初流血が
図5Aの分流装置の分流チャンバーの充填を開始することができる様子を示す図である。
【
図5C】後続の血流が
図5Aの分流装置の内部導管を通って採取ボトルに向かって流れることができる様子を示す図である。
【
図6A】本技術に係る分流装置の原型を用いた実験の開始時の図である。
【
図6B】本技術に係る分流装置の原型を用いた実験の終了時の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施形態が、図面を参照して詳細に記載される。図面において、同様の参照符号は同様又は同一の要素を示す。開示の実施形態は、種々の形態で具現することができる本開示の単なる例であることを理解されたい。既知の機能又は構成は、本開示を不必要に詳細で不明瞭にすることを避けるため、詳細には記載しない。したがって、本明細書に開示される特定の構造及び機能の詳細は、限定として解釈せず、単に、特許請求の範囲の基礎として、また、当業者に、適切に詳述された実質的に任意の構造において本開示を様々に使用することを教示する代表的な基礎として解釈されたい。
【0016】
図1は、本技術に係る分流装置の1つの実施形態を備える採血システムを示している。
図1に示されているように、採血システムは、針110と、チューブ120と、アダプター130と、分流装置140と、ホルダー150と、採取ボトル160とを備える。ホルダー150は、針152を備える。採取ボトルは、キャップ162を備える。図示のように、針152は、キャップ162を突き通している。患者から血液サンプルを採取するプロセスの間、針110は、患者の静脈又は動脈を穿刺するのに用いられる。採取ボトル160によって生成される真空圧により駆動されると、患者からの血液は、チューブ120を通って採取ボトル160に向かう。初流血は、アダプター130を通過し、分流装置140内の分流チャンバーに捕捉される。後続の血流は、採取ボトル160に採取される。その間、後続の血流は、アダプター130、分流装置140、及び針152を通過する。
【0017】
いくつかの実施形態において、
図1の採血システムは、Becton, Dickinson and Company(「BD」)社のVacutainer(商標)採血セット、例えば、BD社のVacutainer(商標)プッシュボタン採血セット、BD社のVacutainer(商標)Safety-Lok(商標)採血セット、又はBD社のVacutainer(商標)UltraTouch(商標)プッシュボタン採血セットのうちの1つを用いて実施することができる。したがって、いくつかの実施形態において、アダプター130は、BD社のVacutainer(商標)複数サンプルルアーアダプターを用いて実施することができる。さらに、いくつかの実施形態において、ホルダー150は、BD社のVacutainer(商標)単回使用ホルダーを用いて実施することができる。
【0018】
図1に示されているように、分流装置140は、ホルダー150に統合されている。しかしながら、他の実施形態において、分流装置140は、別個のユニットとすることができる。また、分流装置140のサイズは、分流装置140内の分流チャンバーへと最初に向けられる血液の量を調整するために変更することができる。例えば、いくつかの実施形態において、分流装置140は、1mLの血液を分流チャンバーに向けるように構成することができる。しかしながら、他の実施形態において、分流装置140は、0.5mLの血液を分流チャンバーに向けるように構成することができる。いくつかの実施形態において、分流装置140は、採取された血液の量に関するフィードバックを提供するインジケーターを備えることができる。例えば、分流装置140は、採取ボトル160内に採取された血液の量を示す流量計を備えることができる。流量計は、医療従事者が適正な量の血液を確実に採取するのに役立つことで、偽陰性の血液培養の可能性を最小限にすることができる。さらに、いくつかの実施形態において、送信器をインジケーターに通信接続し、採取された血液の量に関する情報を受信器に無線で送信することができる。そのような実施形態において、受信器を、採取された血液の量に関する情報を表示するように構成された表示装置に通信接続することができる。
【0019】
採取ボトル160は、ガラス、プラスチック、又は他の好適な材料から構成することができる。いくつかの実施形態において、採取ボトル160は、BD社のBACTEC(商標)培養バイアルのうちの1つ又はBD社のVacutainer(商標)採血管のうちの1つを用いて実施することができる。いくつかの実施形態において、採取ボトル160は、細菌増殖培地、抗生物質スカベンジャー、又はpHセンサー等の液体及び/又は固体添加剤を収容することができる。いくつかの実施形態において、採取ボトル160は、BD社の血液培養培地、例えば、BD社のBACTEC(商標)Peds Plus(商標)培地、BD社のBACTEC(商標)Plus好気用培地、BD社のBACTEC(商標)Plus嫌気用培地、BD社のBACTEC(商標)溶血性嫌気用培地、BD社のBACTEC(商標)標準好気用培地、又はBD社のBACTEC(商標)標準嫌気用培地のうちの1つを収容することができる。
【0020】
上述したように、血液培養において汚染物質として特定されるほとんどの有機体は、患者の皮膚に由来する。これらの汚染物質は、通常、静脈穿刺に際して、患者からの初流血が採取ボトル内に入る際に、患者の血液サンプルに混入する。
図1の採血システムでは、初流血は、分流され、分流装置140の分流チャンバー内に捕捉される。結果として、
図1の採血システムは、偽陽性の血液培養の件数を低減することが可能な手段を提供する。また、
図1の採血システムに分流装置140が含まれることで、医療従事者にとって、血液サンプルの採取のための目下の従来技法に対して追加のワークフローステップが導入されることがない。例えば、医療従事者は、採取ボトル160をホルダー150に挿入する前に、導管又はチャンバーが部分的又は完全に充填されることを待つ必要がない。
【0021】
図2は、本技術に係るホルダーに統合された分流装置の一実施形態を示している。
図2に示されているように、分流装置240は、針252を備えるホルダー250に統合されている。さらに、この特定の実施形態では、分流装置240は、1mLの血液を分流チャンバーに向けるように構成される。
【0022】
それに対して、
図3Aは、本技術に係るアダプターを通してホルダーに相互接続することができる分流装置の一実施形態を示している。
図3Aに示されているように、分流装置340は、アダプター370を通してホルダー350に接続される。ホルダー350は、針352を備える。さらに、この特定の実施形態では、分流装置340は、0.5mLの血液を分流チャンバーに向けるように構成される。
【0023】
図3Bは、
図3Aに示されている分流装置を備える採血システムを示している。
図3Bに示されているように、採血システムは、針310と、チューブ320と、アダプター330及び370と、分流装置340と、ホルダー350と、採取ボトル360とを備える。採取ボトルは、キャップ362を備える。図示のように、針352は、キャップ362を突き通している。患者から血液サンプルを採取するプロセスの間、針310は、患者の静脈又は動脈を穿刺するのに用いられる。採取ボトル360によって生成される真空圧により駆動されると、患者からの血液は、チューブ320を通って採取ボトル360に向かう。初流血は、アダプター330及び370を通過し、分流装置340内の分流チャンバーに捕捉される。後続の血流は、採取ボトル360に採取される。その間、後続の血流は、アダプター330及び370、分流装置340、並びにホルダー350の針352を通過する。
【0024】
図3Bに示されているように、針310は、ウイング部312及び本体314を備える。ウイング部312により、医療従事者が針310を把持することをより容易にすることができる。しかしながら、本発明の他の実施形態において、ウイング部312は省いてもよい。いくつかの実施形態において、ウイング部312は、可撓性プラスチック材料から構成することができる。本体314は、患者の静脈又は動脈の穿刺に成功したことの表示を医療従事者に与えることができる。例えば、本体314は、医療従事者が患者の血液の最初の出現(initial flash)を見て取ることができる半透明のプラスチック材料から構成することができる。他の実施形態において、本体314は、透明材料から構成することができるか、又は窓を有することができる。いくつかの実施形態において、
図3Bの採血システムは、BD社のVacutainer(商標)プッシュボタン採血セットをBD社のBACTEC(商標)培養バイアルのうちの1つと組み合わせて用いることによって、部分的に実施することができる。
【0025】
図4Aは、本技術に係る分流装置の一実施形態を示している。
図4Bは、
図4Aの分流装置の断面図である。
図4Cは、
図4Bの断面図の分解図である。
図4A~
図4Cに示されているように、分流装置400は、入口410と、出口420と、ハウジングシェル430と、ハウジングベース440と、フィルター450と、管460とを備える。ハウジングシェル430の一部分は、入口導管432を形成する。同様に、ハウジングベース440の一部分は、出口導管442を形成する。ハウジングベース440の別の部分は、フィルター450のサイズ及び形状に概ね合致するフィルター収納部444を形成する。
図4Bに示されているように、フィルター450は、フィルター収納部444の内部に収まる。フィルター450は、フィルター導管454と、管460のサイズ及び形状に概ね合致する管収納部とを備える。
図4Bに示されているように、管460は、管収納部452の内部に収まる。フィルター導管454及び管460は、共同して内部導管480を形成する。同様に、分流チャンバー470は、ハウジングシェル430、ハウジングベース440、及びフィルター450の部分によって画定される、管460を囲むチャンバーである。
【0026】
分流装置400が採血システムの一部として用いられる場合、患者の血液は、入口410に入り、入口導管432を通って流れる。初流血は、分流チャンバー470に流れることが好ましい。分流チャンバー470は、内部導管480の直径に対して、初流血が内部導管480内よりも分流チャンバー470内の方に流れやすいサイズになっている。血液が分流チャンバー470内に溜まると、血液は、内部導管480内に流れ始め、出口導管442を通って出口420から出る。
【0027】
いくつかの実施形態において、ハウジングシェル430及び/又はハウジングベース440は、親水性材料から構成することができる。例えば、いくつかの実施形態において、ハウジングシェル430及び/又はハウジングベース440は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(「ABS」)等のプラスチック材料から構成することができる。いくつかの実施形態において、管460は、疎水性材料から構成することができる。例えば、いくつかの実施形態において、管460は、ポリエチレン等のプラスチック材料から構成することができる。いくつかの実施形態において、フィルター450は、親水性材料から構成することができる。いくつかの実施形態において、フィルター450は、空気を通過させるが、血液は通過させない材料から構成することができる。例えば、いくつかの実施形態において、フィルター450は、液体を吸収して膨らむ焼結多孔質ポリマーから構成することができる。例えば、フィルター450は、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)等のセルロース材料から構成することができる。いくつかの実施形態において、ハウジングシェル430は、超音波溶接プロセスによってハウジングベース440に取り付けることができる。いくつかの実施形態において、圧入プロセスによって、フィルター450をフィルター収納部444内に挿入することができ、及び/又は、管460を管収納部452内に挿入することができる。
【0028】
図5A~
図5Cは、全体として、患者からの初流血及び後続の血流が本技術に係る分流装置を通って流れることができる様子を示している。
図5A~
図5Cに示されているように、分流装置500は、ハウジングシェル530と、ハウジングベース540と、フィルター550と、管560とを備える。ハウジングシェル530の一部分は、入口導管532を形成する。同様に、ハウジングベース540の一部分は、出口導管542を形成する。フィルター550の一部分及び管560は、共同して内部導管580を形成する。同様に、分流チャンバー570は、ハウジングシェル530、ハウジングベース540、及びフィルター550の部分によって画定される、管560を囲むチャンバーである。
図5A~
図5Cに示されているように、分流装置500は、ホルダー502に統合されている。さらに、図示のように、ホルダー502の針503は、採取ボトル504のキャップ505を穿刺している。
【0029】
図5Aは、患者からの初流血590が分流チャンバー570内に流れることができる様子を示している。
図5Aに示されているように、初流血590は、細菌592を含む。また、分流チャンバー570の幅は、入口導管532の幅よりも大きい。したがって、分流チャンバー570は、入口導管532よりも血流に対する抵抗が低い。したがって、初流血590が分流チャンバー570に入るとき、初流血590は、ハウジングシェル530の壁に沿って移動し、管560を避ける。この挙動を更に促すために、ハウジングシェル530は、親水性材料から構成することができ、管560は、疎水性材料から構成することができる。さらに、管560の入口導管は、入口導管532の幅よりも小さな幅を有することができる。
【0030】
図5Bは、患者からの初流血590が分流チャンバー570を充填し始めることができる様子を示している。上述したように、分流チャンバー570の一部分は、フィルター550によって画定される。
図5Bに示されているように、フィルター550は、空気を通過させるが、血液は通過させない材料から構成される。空気は、出口導管442を通って移動する。したがって、分流装置500は閉鎖系である。分流装置500を通る最初の空気流は、大気中に排気されない。したがって、医療従事者は、分流装置500を採取ボトル504に接続する前に分流装置500から空気が放出されることを待つ必要がない。したがって、初流血590が、空気を分流チャンバー570からフィルター550を通して採取ボトル504内へと押す。さらに、初流血590が最初にフィルター550に接触する際、初流血590のうちのいくらかがフィルター550によって吸収される。フィルター550によって吸収された一部の初流血590は、フィルター550の微細構造が膨らむことでその場に留められる。有利なことに、この部分の初流血590は、最も多くの汚染物質(例えば、細菌592)を含む可能性が高い。フィルター550は、血液によって濡らされると、フィルター550を通る流れを遮断する。
【0031】
図5Cは、患者からの後続の血流590が内部導管580を通って採取ボトル504に流れることができる様子を示している。いくつかの実施形態において、分流チャンバー570及び管560の幾何学的寸法は、適用可能な流速の範囲内で、血流590が層流となり、それにより、分流チャンバー570内に捕捉された細菌592を伴う初流血590が、分流装置500を通る後続の血流590によって乱されずに留まるように選択することができる。
【0032】
図6A及び
図6Bは、本技術に係る分流装置の原型を用いた実験の開始及び終了時の図である。
図6A及び
図6Bに示されているように、採血システムは、針610と、チューブ620と、アダプター630と、分流装置640と、ホルダー650と、採取ボトル660と、スタンド680とを備える。この実験では、スタンド680は、採血システムの一部分に対する支持を与える。
図6Aに示されているように、実験の開始時、チューブ620には、およそ1mLの着色液体692が充填されている。また、この時点では、分流装置640の分流チャンバー及び採取ボトル660は空である。
【0033】
図6Aに示されているように、針610は、ここでは、透明液体694を収容する容器690内に入れられたところである。その後、採取ボトル660によって生成される真空圧により駆動されると、着色液体692は、アダプター630を通過し、分流装置640内の分流チャンバーに捕捉される。透明液体694は、続いて、採取ボトル660に流れる。その間、透明液体694は、アダプター630、分流装置640、及びホルダー650の針を通過する。
【0034】
図6Bに示されているように、着色液体692は、分流装置640の分流チャンバー内に捕捉されており、採取ボトル660には、いくらかの透明液体694が充填されている。実際の実験の終了時、採取ボトル660内に流れた着色液体692は、非常に少量であり、肉眼では識別困難であった。したがって、採取ボトル660に充填されたのは、略全てが透明液体694であった。この実験は、分流装置640が液体の最初の流れを捕捉し、その液体の後続の流れを採取ボトル660内に通す能力を視覚的に実証した。さらに、実験の終了時における採取ボトル660内の液体の透明性により、分流装置640の有効性が実証された。
【0035】
上記で実証されたように、本発明のいくつかの実施形態は、顕著な利点を提供する。血液培養において汚染物質として特定されるほとんどの有機体は、患者の皮膚に由来するものである。これらの汚染物質は、通常、静脈穿刺に際して、患者からの初流血が採取ボトル内に入る際に、患者の血液サンプルに混入する。したがって、初流血を分流し、捕捉することによって、本技術に係る分流装置は、偽陽性の血液培養の件数を低減することが可能になり得る。
【0036】
さらに、本技術に係る分流装置は、多用途の解決策を提供する。例えば、分流装置内の分流チャンバーのサイズは、約0.05mL~3mLの範囲の任意の所定量の血液を分流し、捕捉することができるように、容易に変更することができる。
【0037】
また、採血システムに本技術に係る分流装置が含まれることで、医療従事者にとって、血液サンプルの採取のための目下の従来技法に対して追加のワークフローステップが導入されることがない。例えば、医療従事者は、採取ボトルをホルダーに挿入する前に、導管又はチャンバーが部分的又は完全に充填されることを待つ必要がない。この利点は、大部分において、本技術に係る分流装置のいくつかの実施形態が、採取ボトルによって生成される真空圧を用いて動作することによって達成される。したがって、本技術に係る分流装置のいくつかの実施形態は、初流血を捕捉する又は後続の血流を採取ボトルに採取するのに、別個の電源又は患者の静脈圧に依存しない。
【0038】
上述したように、本技術に係る分流装置を備える採血システムのいくつかの実施形態は、閉鎖系の解決策をなす。これらの実施形態では、液体の血流に先立つ空気塊は、この系の外及び大気中に排気されない。その代わり、これらの実施形態は、採取ボトルによって生成される真空圧を用いて、患者から血液を瞬時に引き出す。これらの実施形態におけるフィルターは、閉鎖系内で流体経路にわたって圧力及び空気流のバランスを保つのに用いることができる。例えば、フィルターは、空気塊が分流チャンバーから出て出口導管内に流れることを可能にするように用いることができる。このような実施形態において、フィルターは、フィルターが血液等の液体によって濡らされた後には、フィルターを通る流れを妨げることができる。
【0039】
上記から、また種々の図面を参照することにより、当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示に対して或る特定の変更を加えることもできることが理解されよう。例えば、本技術に係る分流装置は、流体経路に沿った任意の場所に位置付けることができる。例えば、本技術に係る分流装置は、針の本体に取り付けることができる。別の例として、本技術に係る分流装置は、ホルダーと針との間のチューブに沿って位置付けることができる。
【0040】
さらに、本技術に係る採血システムは、上記実施形態に示されている構成要素の全てを含まなくてもよい。例えば、針、分流装置、及びホルダーは、チューブを伴わずに1つの装置に統合することができる。例えば、本技術に係る分流装置は、BD社のVacutainer(商標)Eclipse(商標)採血針に統合することができる。
【0041】
また、上述した実施形態のうちの多くにおいて、大気圧未満の内圧を有する採取ボトルを、患者から血液を採取するのに用いた。しかしながら、大気圧未満の内圧を有する多種多様な採取槽を、本技術とともに用いることができる。例えば、採取管を、本技術とともに用いることができる。別の例として、採取バイアルを、本技術とともに用いることができる。
【0042】
本開示のいくつかの実施形態が図面に示されているが、本開示は、当該技術が許容する限り広範なものであり、明細書もそのように読まれることが意図されることから、本開示はそれらの実施形態に限定されないことが意図される。したがって、上述の記載は、限定として解釈すべきではなく、単に特定の実施形態の例示として解釈すべきである。当業者であれば、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲及び趣旨内で他の変更形態が想起される。