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特許7387587クロストリジウム・ディフィシル感染症の治療における新たな使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】クロストリジウム・ディフィシル感染症の治療における新たな使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20231120BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20231120BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20231120BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20231120BHJP
   A61K 35/741 20150101ALI20231120BHJP
   A61K 36/062 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231120BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20231120BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K35/745
A61K35/742
A61K35/744
A61K35/741
A61K36/062
A61P1/12
A61P1/04
A61P31/04
A61P29/00
A23L33/135
A23C9/13
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020514676
(86)(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 IB2018056956
(87)【国際公開番号】W WO2019053604
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】102017000101704
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 26760
【微生物の受託番号】CNCM  I-1572
(73)【特許権者】
【識別番号】520200115
【氏名又は名称】ラチドゥーエビオメ・エッセ・エッレ・エッレ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ビッフィ
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528926(JP,A)
【文献】特表2017-513906(JP,A)
【文献】特表2016-529309(JP,A)
【文献】特表2014-506463(JP,A)
【文献】J Med Bicobiol., 2004, Vol.53, p.551-554
【文献】Frontiers in Microbiology, 2015, Vol.6, Article.952(p.1-13)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロストリジウム・ディフィシル感染症によって引き起こされた生理病理学的状態、及び/又はこの生理病理学的状態に関連する総体症状、及び/又はクロストリジウム・ディフィシル感染症によって引き起こされた組織学的病変の予防及び/又は治療における使用のための、ラクトバチルス・パラカゼイCNCM I-1572及びラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01の細菌株を含む組成物であって、
前記クロストリジウム・ディフィシル感染症によって引き起こされた前記生理病理学的状態が、偽膜性小腸結腸炎、偽膜性大腸炎、偽膜なしの偽膜性大腸炎、劇症性大腸炎、中毒性巨大結腸及び腸穿孔を有する大腸炎、抗生物質に関連する大腸炎、抗生物質に関連する下痢、C.ディフィシル感染症に関連する下痢から選択され、
前記総体症状が、下痢、脱水症、偽膜性大腸炎、腸疾患、中毒性巨大結腸症、腸穿孔、敗血症、腸出血及び低カリウム血症から選択され
前記組織学的病変が、結腸管腔内の炎症性浸潤に関連する孤発性上皮壊死により特徴づけられるI型形態及び/又は灰色を帯びた偽膜で覆われた広汎性上皮壊死及び潰瘍化により特徴づけられるIII型形態である、組成物。
【請求項2】
前記クロストリジウム・ディフィシル感染症が、腸管感染症である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
プロバイオティック細菌、酵母菌及び真菌からなる群から選択される更なる微生物を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記細菌が、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、バチルス、プロピオニバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトコッカス、アエロコッカス、エンテロコッカス及びこれらの組合せから選択される属に属する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ラクトバチルス・パラカゼイCNCM I-1572及び/又は前記ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は前記任意の更なる微生物が、摂取毎に、10億~3,000億個の胞の量で投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1日1~2回摂取される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
口投与のために処方される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
所作用のために処方される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)の特定の株の使用、或いはクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症、好ましくは腸管感染症又はいわゆるCD関連疾患(CDAD)若しくはCD感染症(CDI)に関する/関連する生理病理学的状態の予防及び/又は治療のための前記株を含む組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クロストリジウム・ディフィシルは、下層土及びペットの腸管の両方において天然に広く伝播しているグラム陽性の嫌気性胞子形成桿状細菌である。
【0003】
この微生物による汚染は、糞便-経口経路を介しても発生し、特に、摂取された胞子は胃の酸バリアで生き延びて、結腸の中で発芽する。
【0004】
ヒトにおいて、クロストリジウム・ディフィシルは、腐生性腸内フローラの構成成分として約3%の健康な成人に見出され、1歳未満の乳幼児では、より有意な率(15~70%)で見出されることがある。
【0005】
クロストリジウム・ディフィシルは、一般に、いずれの障害も引き起こさない。しかし、ある特定の条件下では、様々な強さの下痢を引き起こすことがあり、ある特定の場合では、発熱、並びに身体的、精神的及び社会的な観点から個人の健康状態の大きな全体的機能障害に関連することがある。実際に、下痢は、多くの場合、嘔気、嘔吐、全身倦怠、疼痛、腹部膨隆及び脱水等の他の主要症状を伴う。
【0006】
診療の領域において、クロストリジウム・ディフィシルは、重篤な形態の大腸炎の主な原因として知られており、これは、偽膜性大腸炎として定義され、直腸及びにS状結腸に広く罹患するいくらか広い範囲壊死によって特徴づけられ、多くの場合に多量下痢(profuse diarrhea)を伴う。
【0007】
この点における懸念材料は、特に、数株のクロストリジウム・ディフィシルであり、腸毒素A及び/又は細胞毒素Bを産生することができるので、腸内毒素原性と定義される。これらの毒素は、腸粘膜から内部移行して、腸細胞の細胞死をもたらす。
【0008】
組織学的病変の範囲は、結腸管腔内の炎症性浸潤に関連する孤発性上皮壊死により特徴づけられるI型形態から、ムチン、好中球、フィブリン及び細胞片から構成される灰色を帯びた偽膜で覆われた(故に、偽膜性大腸炎と称される)広汎性上皮壊死及び潰瘍化により特徴づけられるIII型形態まで様々である。
【0009】
クロストリジウム・ディフィシル腸管感染症の重篤度は、様々である。実際に、症状は軽度から多量下痢(1日あたり10リットルまでの漿液性分泌物)の範囲であり、中毒性巨大結腸症、腸穿孔、低カリウム血症、腸出血及び敗血症を伴うことがある。下痢は、発熱、嘔気、食欲不振、全身倦怠、疼痛、腹部膨隆及び脱水を伴うことがある。下痢は、粘液、血液及び発熱に関連することがある。乳幼児は、多くの場合に無症候性保菌者である。実際に、一方では、コロニー形成は、未成熟な腸内細菌フローラにとって好ましいと思われるが、他方では、病理学的進化の欠如は、これも依然として未成熟である腸細胞の受容体に、毒素が結合できないことに起因している。
【0010】
感染は、多くの場合、積極的抗生物質療法の後に現れ、極めて一般的には入院環境で蔓延する。下痢は、抗生物質療法の一般的な副作用であるが、薬剤が治療の終了時に中止されると、障害は通常消散する。しかし、クロストリジウムの場合では、他の症状を伴う下痢は、減少又は改善の徴候を示さない。
【0011】
クロストリジウム・ディフィシル感染症の危険因子のうち、下記を記述することができる。
●抗生物質、とりわけ広域スペクトル抗生物質(すなわち、様々な種類の細菌を排除できるもの)の使用、また、長期にわたる又は抗生物質耐性感染症を治癒するために異なる抗生物質と関連しての使用。
●入院又は他の治療施設に滞在する必要性。
●消化器系の手術。
●腸が関与する腹部の手術。
●幼稚園、保育園の又は療養所における滞在。
●結腸の問題、例えば、過敏性腸症候群又は結腸直腸癌。
●腎臓の問題。
●免疫系の弱体化(糖尿病又は薬剤が原因)。
●通常は感染に対する保護として機能する、プロトンポンプ阻害剤又は胃液酸性を低減することができる他の薬剤の摂取。
●以前のクロストリジウム・ディフィシル感染。
●65歳を超えた年齢。
【0012】
いずれにしても感染症の治療には、この特定の細菌を特定的に標的にするのではあるが、抗生物質の使用が必要となる。
【0013】
すでに示したように、大多数のクロストリジウム・ディフィシル感染症は、例えば、病院及び養護施設等の状況で発生し、ここでは、多くの個人が抗生物質を摂取し、互いに密接している。重篤なクロストリジウム・ディフィシル感染症の致死率は顕著なものであり、病院の環境において疾患の蔓延を食い止めるのに不可欠な予防措置が採用されるほどである。
【0014】
近年、様々な症例が糞便移植法により成功裏に治療されている。
【0015】
プロバイオティクスを頼ると、正確にクロストリジウム・ディフィシルにより誘発されるものを含む大部分の種類の下痢の予防/治療において、病原体の競合的阻害、常在性細菌叢の安定化及び例えばロタウイルス感染に関連する腸管透過性の増加の減衰を介して、有効であることが証明されている。
【0016】
前述を考慮すると、クロストリジウム・ディフィシル感染症、好ましくは腸管感染症に関連する症状を緩和しうる及び/又はこれらに関する/関連する生理病理学的状態を治癒しうる、新たな及び/又は代替的な治療解決法の必要性が強く感じられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
出願者は、上記記載の必要性の解決策として、細菌及び/又は酵母菌及び/又は他の微生物に基づいたプロバイオティクスの使用を見出した。特に、本発明の解決策は、ラクトバチルス属及び/又はビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、好ましくはラクトバチルス・パラカゼイの菌種に属する細菌の使用を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
実際に、下記に詳細に記載されているプロバイオティクスを使用する結果として、クロストリジウム・ディフィシルの阻害が観察され、何よりもインビトロ置換試験によって明かである。
【0019】
本発明を、以下の図面の助けも借りて、制限することを何も意図していない実施例によっても下記に詳細に記載する。
とりわけ下記である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1Aは、接着試験の競合の結果、すなわち、真核細胞とプロバイオティクスとのコインキュベーション及び病原体とのコインキュベーションの結果を示す。より詳細には、この図は、HT29細胞とCDIFとのコインキュベーション及び試験した様々なプロバイオティクスとのコインキュベーションの後、接着生細胞及び生存細胞の率でCDIF接着を図示する。図1Bは、接着病原体の除去の試験結果、すなわち、真核細胞を病原体で前処理し、その後にプロバイオティクスとインキュベートした結果を示す。より詳細には、この図は、真核細胞にCDIFを負荷した後、HT29細胞を、試験した異なるプロバイオティクスとインキュベートした後、接着生細胞及び生存細胞の率でCDIF接着を図示する。
図2図2Aは、接着除外試験(真核細胞をプロバイオティックBIOK+で前処理し、その後に病原体とインキュベートした)の結果を示す。より詳細には、この図は、HT29-MTX細胞と、試験したプロバイオティック製品Bio-K+との接触による前刺激の後、接着生細胞及び生存細胞の率でCDIF接着を図示する。図2Bは、接着試験(真核細胞とプロバイオティクスとのコインキュベーション及び病原体とのコインキュベーション)における競合の結果を示す。より詳細には、この図は、HT29-MTX細胞とCDIFとのコインキュベーション及び試験したプロバイオティック製品Bio-K+とのコインキュベーションの後、接着生細胞及び生存細胞の率でCDIF接着を図示する。図2Cは、接着病原体の除去の試験(真核細胞を病原体で前処理し、その後にプロバイオティックとインキュベートした)の結果を示す。より詳細には、この図は、真核細胞にCDIFを負荷した後、HT29細胞を、試験し異なるプロバイオティクスとインキュベートした後、接着生細胞及び生存細胞の率でCDIF接着を図示する。
図3図3は、クロストリジウム・ディフィシル感染症に対して指示されたBio-K+として既知の市販の製品と比較した、特定例のプロバイオティクスにより実施された試験結果の比較分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本文脈において、定義「プロバイオティック」は、FAOとWHOにより2001年に共同開催された専門家グループにより考案されたものであり、「適量で投与されたとき、宿主に健康上の利益を付与する生微生物」である。特に、イタリアにおいて、保健省(Ministry of Health)がプロバイオティクスを「十分な量で摂取されると、身体に有益な機能を発揮できることを実証する微生物」と定義し、上述の2つ機関の定義を実質的に繰り返している。
【0022】
クロストリジウム・ディフィシル(本明細書以降、CD)は、CD関連疾患(CDAD)又はCD感染症(CDI)として知られている及び異なる重篤度によって特徴づけることができる様々な種類の感染症又は疾患/状態の臨床原因となる細菌である。
【0023】
実際に、感染症は、それ自体軽度の下痢として現れうるが、偽膜性大腸炎、中毒性巨大結腸症及び腸穿孔をもたらすこともある。何よりも死亡の危険性が関連する重篤な臨床症状は、感染症が新たな、より毒性のある細菌株により維持されると、更に頻繁になる。
【0024】
CD感染症は、典型的には院内由来であり、流行性のものによってもかなり頻繁に現れる。
【0025】
本発明の第1の態様は、クロストリジウム・ディフィシル感染症、好ましくは腸管感染症又はいわゆるCD関連疾患(CDAD)若しくはCD感染症(CDI)に関する/関連する生理病理学的状態の予防及び/又は治療における使用のための、細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/若しくは細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-01又は前記株を含む組成物に関する。
【0026】
クロストリジウム・ディフィシルに関連する前記疾患は、好ましくは、偽膜性小腸結腸炎、偽膜性大腸炎、偽膜なしの大腸炎、劇症性大腸炎、中毒性巨大結腸及び腸穿孔を有する大腸炎、抗生物質に関連する大腸炎、抗生物質に関連する下痢、並びにC.ディフィシル感染症に関連する下痢から選択される。
【0027】
両方の株を単離し、SOFAR S.p.A.に寄託した。細菌株L.カゼイDG(登録商標)(ラクトバチルス・パラカゼイCNCM I-1572)を、National Collection of Cultures of Micro-organisms of the Pasteur Institute of Parisに寄託番号CNCM I-1572で寄託した。この株は、最初は、ラクトバチルス・カゼイDGサブカゼイと命名された。細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01を、DSMZに次の受入番号:DSM26760で寄託した。
【0028】
本文脈で参照されるクロストリジウム・ディフィシル株は、好ましくは、腸内毒素原性のもの、すなわち、例えば細胞毒素B及び/又は腸毒素A等の腸毒素/細胞毒素を産生できるものと定義される。より広範囲の文脈において、毒素を産生せず、病原性でなく、新たに出現したものであり、超毒性(hypervirulent)であり、抗生物質に対して抵抗性であり、胞子の超産生株(hyper-producer)である、C.ディフィシル株も考慮される。
【0029】
細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/若しくは細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01又は前記組成物の投与は、好ましくは、前記感染症/CDAD/CDIに関連する症状及び/又はCD感染症若しくはCD関連疾患により引き起こされる組織学的病変を緩和する及び/又は治療する及び/又は治癒するのに有効である。
【0030】
実際に、CDにより引き起こされる感染症/関連疾患は、異なる程度の重篤度によって特徴づけることができる。感染症は、それ自体軽度の下痢として現れうるが、最終的には、例えば、タンパク質喪失性腸症及び再発性下痢等の腹部の状態、並びに例えば、菌血症及び脾臓膿瘍等の腸外の状態を引き起こすことにもなりうる。脱水症、低カリウム血症、敗血症性ショック、偽膜性大腸炎、中毒性巨大結腸症及び腸穿孔等の重篤な臨床症状は、何よりも死亡の危険性に関連し、感染症が新たな、より毒性のある細菌株により維持されると、更に頻繁になる。
【0031】
したがって、本発明の好ましい態様によると、前記感染症/CDAD/CDIに関連する前記症状は、下痢、脱水症、偽膜性大腸炎、腸疾患、中毒性巨大結腸症、腸穿孔、敗血症、腸出血及び低カリウム血症から選択される。
【0032】
組織学的病変は、好ましくはI型及び/又はIII型である。
【0033】
本発明の好ましい態様によると、前記組成物は、微生物、好ましくは細菌、好ましくはプロバイオティック細菌及び/又は酵母菌及び/又は真菌を更に含む。
【0034】
前記細菌は、好ましくは、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、バチルス(Bacillus)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、アエロコッカス(Aerococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)及びこれらの組合せから選択される属に属し、より好ましくは、前記細菌は、ラクトバチルス及び/又はビフィドバクテリウムの属に属する。
【0035】
本発明の更に好ましい態様によると、ラクトバチルス属の細菌は、以下の種:ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・アミロリティカス(Lactobacillus amylolyticus)、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス・アビアリエス(Lactobacillus aviaries)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・セロビオスス(Lactobacillus cellobiosus)、ラクトバチルス・コリニフォルミス(Lactobacillus coryniformis)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・クルヴァトゥス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・デルブルエッキイー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ファルシミニス(Lactobacillus farciminis)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガリナラム(Lactobacillus gallinarum)、ラクトバチルス・ガッセリー(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ヒルガルディー(Lactobacillus hilgardii)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ケフィラノファシエンス(Lactobacillus kefiranofaciens)、ラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)、ラクトバチルス・ムコサエ(Lactobacillus mucosae)、ラクトバチルス・パニス(Lactobacillus panis)、ラクトバチルス・コリノイデス(Lactobacillus collinoides)、ラクトバチルス・パラプランタラム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ポンチス(Lactobacillus pontis)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)及びラクトバチルス・サンフランシスエンシス(Lactobacillus sanfranciscensis)のうちの少なくとも1つに属する。
【0036】
更に好ましい実施形態によると、ラクトバチルス属に属する前記細菌は、ラクトバチルス・アシドフィルスCL1285及び/又はラクトバチルス・カゼイLBC80R及び/又はラクトバチルス・ラムノサスCLR2の株ではない。
【0037】
本発明の更なる実施形態によると、前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/若しくは前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01又は前記株を含む前記組成物は、ラクトバチルス・アシドフィルスCL1285及び/又はラクトバチルス・カゼイLBC80R及び/又はラクトバチルス・ラムノサスCLR2の株ではないラクトバチルス属に属する細菌を更に含む(細菌と組み合わせて更に使用される)。
【0038】
本発明の更に好ましい態様によると、ビフィドバクテリウム属の細菌は、B.アニマリス(animalis)、B.ビフィダム(bifidum)、B.ブレーベ(breve)、B.インファンティス(infantis)、B.ロンガム(longum)、B.アドレセンティス(adolescentis)、B.カテヌラタム(catenulatum)、B.アングラタム(angulatum)、B.アステロイデス(asteroides)、B.ボウム(boum)、B.コエリナム(choerinum)、B.コリネフォルム(coryneforme)、B.クニクリ(cuniculi)、B.デンティコレンス(denticolens)、B.デンチウム(dentium)、B.ガリカム(gallicum)、B.ガリナルム(gallinarum)、B.インディカム(indicum)、B. イノピナーツム(inopinatum)、B.ラクティス(lactis)、B.マグナム(magnum)、B.メリシカム(merycicum)、B.ミニマム(minimum)、B.シュードカテヌラタム(pseudocatenulatum)、B.シュードロンガム(pseudolongum)、B.プロルム(pullorum)、B. ルミナンチウム(ruminantium)、B.サエクラレ(saeculare)、B.サブタイル(subtile)、B.サームアシドフィルム(thermacidophilum)、B.サーモフィルム(thermophilum)及びB.ツルミエンス(tsurumiense)から選択される、より好ましくは、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)、バシラス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・インソライタス(Bacillus insolitus)及びバチルス・マリヌス(Bacillus marinus)から選択される少なくとも1つの種に属する。
【0039】
本発明の更に好ましい態様によると、プロピオニバクテリウム属の細菌は、P.シェルマニイ(shermanii)、P.アクネス(acnes)、P.アウストラリエンセ(australiense)、P.アビダム(avidum)、P.シクロヘキサニクム(cyclohexanicum)、P.フロイデンライシイ(freudenreichii)、P.グラヌロスム(granulosum)、P.ジェンセニー(jensenii)、P.ミクロエアロフィルム(microaerophilum)、P.プロピオニカム(propionicum)及びP.トエニー(thoenii)から選択される少なくとも1種に属する。
【0040】
本発明の更に好ましい態様によると、ストレプトコッカス属の細菌は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、ストレプトコッカス・カニス(Streptococcus canis)、ストレプトコッカス・コンステラータス(Streptococcus constellatus)、ストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)、ストレプトコッカス・ジスガラクチアエ(Streptococcus dysgalactiae)、ストレプトコッカス・エクイヌス(Streptococcus equinus)、ストレプトコッカス・フェルス(Streptococcus ferus)、ストレプトコッカス・インファンタリウス(Streptococcus infantarius)、ストレプトコッカス・イニアエ(Streptococcus iniae)、ストレプトコッカス・インターメディウス(Streptococcus intermedius)、ストレプトコッカス・ミレリ(Streptococcus milleri)、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・オリスラッティ(Streptococcus orisratti)、ストレプトコッカス・パラサンギニス(Streptococcus parasanguinis)、ストレプトコッカス・ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・シュードニューモニエ(Streptococcus pseudopneumoniae)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ラッティ(Streptococcus ratti)、ストレプトコッカス・チグリヌス(Streptococcus tigurinus)、ストレプトコッカス・サンギニス(Streptococcus sanguinis)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、ストレプトコッカス・ウベリス(Streptococcus uberis)、ストレプトコッカス・ベスチブラリス(Streptococcus vestibularis)、 ストレプトコッカス・ビリダンス(Streptococcus viridans)及びストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)から選択される少なくとも1種に属する。
【0041】
本発明の更に好ましい態様によると、ラクトコッカス属の細菌は、L.チュンガンゲンシス(chungangensis)、L.フォルモセンシス(formosensis)、L.フジエンシス(fujiensis)、L.ガルビエ(garvieae)、L.ラクティス(lactis)、L.ピスシウム(piscium)、L.プランタラム(plantarum)、L.ラフィノラクティス(raffinolactis)及びL. タイワネンシス(taiwanensis)から選択される少なくとも1種に属する。
【0042】
本発明の更に好ましい態様によると、アエロコッカス属の細菌は、A.ウリナエ(urinae)、A.サンギニコラ(sanguinicola)、A.クリステンセニイ(christensenii)、A.スイス(suis)、A.ウリナエクイー(urinaeequi)及びA.ウリナエホミニス(urinaehominis)から選択される少なくとも1種に属する。
【0043】
本発明の更に好ましい態様によると、エンテロコッカス属の細菌は、エンテロコッカス・アビウム(Enterococcus avium)、エンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・ガリナルム(Enterococcus gallinarum)、エンテロコッカス・ヘモペロキシダス(Enterococcus haemoperoxidus)、エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)、エンテロコッカス・マロドラタス(Enterococcus malodoratus)、エンテロコッカス・モラビエンシス(Enterococcus moraviensis)、エンテロコッカス・ムンディティ(Enterococcus mundtii)、エンテロコッカス・シュードアビウム(Enterococcus pseudoavium)、エンテロコッカス・ラフィノサス(Enterococcus raffinosus)及びエンテロコッカス・ソリタリウス(Enterococcus solitarius)から選択される少なくとも1種に属する。
【0044】
本発明の更に好ましい態様によると、酵母菌は、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、より好ましくは、サッカロマイセス・セレビシエ(cerevisiae)及び/又はサッカロマイセス・ブラウディ(boulardii)の種に属する。
【0045】
前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/又は前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は前記更なる微生物は、好ましくは生きているものである。後者の場合では、得られた組成物は、プロバイオティックとも定義可能である。
【0046】
或いは、前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/又は前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は前記更なる微生物は、死んだもの又はティンダル化(tyndallized)したものである。
【0047】
更なる実施態様において、前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/又は前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は前記更なる微生物は、溶解産物及び/又は抽出物の形態である。
【0048】
後者の場合では、得られた組成物は、パラプロバイオティック(paraprobiotic)とも定義可能である。
【0049】
或いは、前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/又は前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は前記更なる微生物は、個別の成分として存在しうる又はいくつかの構成成分が、菌体外多糖(exopolysaccharide)として細菌細胞壁(bacterial wall)に存在する。
【0050】
本発明の更なる実施形態において、組成物は、前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)により生成された及び/又は前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01により生成された及び/又はプロバイオティクスと定義された前記更なる微生物によって生成された及び/又は任意の他の細菌由来産物によって生成された代謝性バイオ産物(metabolic bioproduct)を更に含む。
【0051】
したがって、上記に定義された組成物は、プロバイオティック若しくはパラバイオテック若しくはポストバイオティック(postbiotic)としても定義可能である、既知である若しくは想定されるものである、又は細菌細胞壁の成分である。
【0052】
一般に、本発明の組成物に更に含まれる前記微生物は、単一の微生物又はEFSAのQPSリストに特定されている任意の菌種の組合せである。
【0053】
前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/又は前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は前記更なる微生物は、胃腸管通過を生き延びて、生きたまま結腸に到達することができる。
【0054】
前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/又は前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は存在する場合は前記更なる微生物は、1回の投与あたり10億~3,000億個(必要であれば、更に多く)、より好ましくは500億~2,500億個、更により好ましくは750億~1,500億個の細胞、好ましくは細菌細胞の範囲の量で投与される。浣腸及び/又は糞便移植法による適用の場合では、前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/又は前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は存在する場合は前記更なる微生物は、1回の投与/適用あたり1,000億~3,000億個、より好ましくは1,500億~2,000億個の細胞、好ましくは細菌細胞/プロバイオティクス/組成物の範囲の量で投与される。
【0055】
好ましい態様によると、前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/又は前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は存在する場合は前記更なる微生物、好ましくは細菌は、少なくとも1日1~2回摂取される。
【0056】
全ての投与経路が本発明において想定される。前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/又は前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は上記に記載された前記組成物の投与は、好ましくは経口であり、より好ましくは、丸剤、カプセル剤、錠剤、顆粒粉末剤、ハードシェルカプセル剤、経口溶解顆粒剤、サッシュ剤、ロゼンジ剤又は飲用バイアルの形態である。
【0057】
或いは、前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/又は前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は上記に記載された前記組成物の投与は、液体形態、好ましくはシロップ剤又は飲料剤である。
【0058】
或いは、前記細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/又は前記細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は前記組成物の投与は、食品に添加して、好ましくはヨーグルト、チーズ又はフルーツジュースに添加して実施される。
【0059】
本発明の更なる態様は、好ましくは、クロストリジウム・ディフィシル感染症、好ましくは腸管感染症又はいわゆるCD関連疾患(CDAD)若しくはCD感染症(CDI)に関する/関連する生理病理学的状態の予防及び/又は治療に使用するために、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、バチルス、プロピオニバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトコッカス、アエロコッカス、エンテロコッカス及びこれらの組合せから選択される属に属する細菌を含むプロバイオティクス又は前記プロバイオティクスを含む組成物に関し、前記プロバイオティック又は組成物は、局所的に、好ましくは直腸内投与によって、好ましくは浣腸により、好ましくは、糞便微生物叢移植法によって作用が発揮されるように処方される。
【0060】
細菌は、好ましくは、細菌株L.カゼイDG(登録商標)及び/又は細菌株ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び/又は上記に記載された前記組成物である。
プロバイオティクスの製剤又は上記に記載された組成物は、プロバイオティックの及び/又は医薬品の生成に一般に許容される賦形剤を更に含む。
【0061】
本発明の好ましい態様によると、プロバイオティクスの製剤又は組成物は、凝固防止剤、好ましくは二酸化ケイ素及び/又はステアリン酸マグネシウムを更に含む。
【0062】
本発明の好ましい態様によると、組成物は、コーティング剤、好ましくはゼラチンを更に含む。
【0063】
本発明の更なる実施形態において、プロバイオティクスの製剤又は組成物は、ビタミン、微量元素、好ましくは亜鉛若しくはセレニウム、酵素及び/又はプロバイオティック物質、好ましくは、フルクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、イヌリン、グアーガム、又はこれらの組合せを更に含む。
【0064】
本発明の好ましい態様によると、プロバイオティクスの製剤又は組成物を、更なる治療手法、好ましくは、薬理学的又は社会行動学的な種類のもの、好ましくは食事及び/若しくは健康的な生活スタイルと関連づけても又は組み合わせてもよい。
【実施例
【0065】
以下の実施例に使用した病原体は、ATCC American Type Culture Collectionから入手し、以下の株:クロストリジウム・ディフィシルATCC 43255-VPI 10463であった。
【0066】
試験した株は、以下のものであった。
1)L.カゼイDG(登録商標)(ラクトバチルス・パラカゼイCNCM I-1572)、
2)ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01及び
3)L.カゼイDG(登録商標)とL.パラカゼイLPC-S01の1:1比の組合せ(混合物)。
4)L.ラムノサスATCC53103(「市販」の陽性対照)
【0067】
菌株をRogosaアガー(L.カゼイ及びL.パラカゼイ)及びBHI Brain Heart Infusion(クロストリジウム・ディフィシル)で培養した。
【0068】
CDIFに対する阻害作用を発揮するラクトバチルス株の能力を検証するする目的であった。
【0069】
例示のプロバイオティクスが腸上皮細胞に接着する能力を検証する接着試験
粘液を産生することができるヒト腸上皮細胞系の例として、HT29-MTX-E12(ECACC)を使用した。特に、高いグルコース濃度を伴ってDMEM(ダルベッコー修飾イーグル培地)に集密単層を形成するまで、細胞を培養した。DMEMには、50μg/mlのゲンタマイシン硫酸塩及び2mLのL-グルタミンと共に10%のウシ胎児血清を補充した。細胞を、5%CO2のインキュベーターで37℃に維持した。
【0070】
接着試験の前に、細胞をハンクス平衡塩類溶液で洗浄し、トリプシン処理し、再懸濁して、既知の濃度でマルチウェルプレートに接種できるように、血球計を1回使用して数えた。接着試験を実施する前に、細胞を、集密単層を形成するように2日間増殖させた。
【0071】
接着試験の当日、消費培地を取り除き、単層を食塩水(ハンクス平衡塩類溶液)で洗浄し、抗生物質又はグルタミンを有さないが、1%のウシ胎児血清が補充されたDMEM培地を細胞に加えた。細胞単層を、細菌と接触させる前に、5%CO2により37℃で1時間インキュベートした。この作業は、試験を妨げうる任意の残留抗生物質を除去する。
【0072】
細胞は、その後に「感染」し、1:10(細胞:細菌)のMOI(感染多重度)を観察した。
【0073】
集密になった48時間後、細胞を洗浄し、例示細菌株(上記に記載された単一株又は組み合わせた株)を含有するDMEM培地で、1:10(MOI、上皮細胞:細菌)の感染多重度でインキュベートした。
【0074】
インキュベーションは、細胞の接触に好ましいようにプレートを僅かに振動させながら37℃で60分間実施した。
【0075】
インキュベーションの終了時に、培養培地を廃棄し、細胞を滅菌DMEMで洗浄して、非接着細菌を除去し、接着細菌細胞は、嫌気生活下に37℃でインキュベートした寒天MRS培地のプレートへの段階希釈接種を使用して、生存菌数によって定量化した。
【0076】
接着除外試験(除外/プレインキュベーション)
1ウェルあたりのHT29細胞の数を決定した後、L.パラカゼイ株を個別及び1:1比の組合せ(混合物)の両方により加えた。
【0077】
細菌を、僅かに振動させながら37℃に維持した細胞と60分間接触させた。
【0078】
インキュベーションの終了時に、培地を除去し、細胞を滅菌培地で洗浄して、単層に接着しなかった細菌を除去した。
【0079】
次に、CDIF(MOI 1:10)を単層に加え、細胞を37℃で60分間インキュベートした。
【0080】
インキュベーションの終了時に、培養培地を除去し、非接着細菌を滅菌培地で洗浄して除去した。
【0081】
HT29細胞へのCDIFの接着を定量化するため、最初に細胞を遊離させ、次いで溶解し、細菌を、嫌気生活下に37℃で48~72時間にわたってClostridium difficile Selective Agarに接種した後、生存細菌数によって定量化した。
【0082】
L.パラカゼイ株とプレインキュベートしていないが、CDIF単独が接種されたHT29細胞を陽性対照として使用し、一方、どの細菌ともインキュベートしていない細胞を陰性対照として使用した(無菌試験)。
【0083】
接着試験の競合(競合/コインキュベーション)
1ウェルあたりのHT29-MTX細胞の数を決定した後、2つのL.パラカゼイ株(個別及び1:1比の組合せの両方)をCDIFと同時に加えた。
【0084】
細菌を、全体的なMOIの1:10及びプロバイオティック:病原体の1:1の比で加えた。細菌を、僅かに振動させながら37℃に維持した細胞と60分間接触させた。
【0085】
インキュベーションの終了時に、培地を除去し、細胞を滅菌培地で洗浄して、単層に接着しなかった細菌を除去した。
【0086】
HT29細胞へのCDIFの接着を定量化するため、最初に細胞を遊離させ、次いで溶解し、細菌を、嫌気生活下に37℃で48~72時間にわたってClostridium difficile Selective Agarに接種した後、生存細菌数によって定量化した。
【0087】
CDIF単独が接種されたHT29細胞を陽性対照として使用し、一方、どの細菌ともインキュベートしていない細胞を陰性対照として使用した(無菌試験)。
【0088】
接着病原体の除去の試験(置換/ポストインキュベーション)
1ウェルあたりのHT29-MTX細胞の数を決定した後、CDIFを加えた(MOI 1:10)。細菌を、僅かに振動させながら37℃に維持した細胞と60分間接触させた。
【0089】
インキュベーションの終了時に、培地を除去し、単層に接着しなかった細菌を滅菌培地で繰り返し洗浄して除去した。次いで、2つのL.パラカゼイ株(個別及び1:1比の組合せの両方)を、プロバイオティック:接着病原体の10:1の比で加えた。
【0090】
細菌を、僅かに振動させながら37℃に維持した細胞と60分間接触させた。インキュベーションの終了時に、培地を除去し、細胞を滅菌培地で洗浄して、単層に接着しなかった細菌を除去した。
【0091】
細胞へのCDIFの接着を定量化するため、最初に細胞を遊離させ、次いで溶解し、細菌を、嫌気生活下に37℃で48~72時間にわたってClostridium difficile Selective Agarに接種した後、生存細菌数によって定量化した。
【0092】
CDIF単独が接種されたHT29-MTX細胞を陽性対照として使用し、一方、どの細菌ともインキュベートしていない細胞を陰性対照として使用した(無菌試験)。
【0093】
結果
結果を図1A及び図1Bに要約し、下記を実証している。
1)L.カゼイDG(登録商標)株は、病原体単独と細胞をインキュベートした条件と比較して、CDIFの接着を約7%直接低減する軽度の能力を示し、一方、L.パラカゼイLPC-S01株は、CDIFを競合的に除外する大きな有効性(接着に22%の低減)を示した。株の混合物は、阻害活性を強化できることを立証し、CDIFの接着に31%の低減をもたらした(図1A)。
2)L.カゼイDG(登録商標)株は、病原体単独と細胞をインキュベートした条件と比較して、CDIFの接着を約27%低減する中程度の能力を示し(図1B)、一方、L.パラカゼイLPC-S01株は、CDIFの「除去」に有意な有効性(接着に75%の低減)を示した。
【0094】
(実施例1)
例示株を、同じ目的が意図された市販の製品と比較した。
【0095】
使用した病原体は、前記実施例に使用したものと同じ株である。
【0096】
製品Bio-K+は、ラクトバチルス・アシドフィルスCL1285、L.カゼイLBC80R及びL.ラムノサスCLR2の混合物を、ボトル98gあたり500億CFUの公表濃度、したがって、5.0×10^10CFU/98g(5.1×10^8CFU/g)の公表濃度で含む。
【0097】
この製品を、実際のラクトバチルス合計濃度を定量化するため、選択培地で十進計数に付した(ISTISAN方法08/36)。生及び生存細胞の濃度は、1.2×10^9CFU/gであり、したがって、算出理論濃度の約2倍であった。
【0098】
接着除外試験(除外/プレインキュベーション)
1ウェルあたりのHT29細胞の数を決定した後、製品を、病原体/プロバイオティックのMOIの1:10で単層に加えた。細菌を、僅かに振動させながら37℃に維持した細胞と60分間接触させた。インキュベーションの終了時に、培地を除去し、細胞を滅菌培地で洗浄して、単層に接着しなかった細菌を除去した。次いでCDIFを単層に加え(MOI 1:10)、細胞を37℃で60分間インキュベートした。
【0099】
インキュベーションの終了時に、培養培地を除去し、非接着細菌を滅菌培地で洗浄して除去した。HT29細胞へのCDIFの接着を定量化するため、細胞を遊離させ、溶解し、細菌を、嫌気生活下に37℃で48~72時間にわたってClostridium difficile Selective Agarに接種した後、生存細菌数によって定量化した。
【0100】
製品とプレインキュベートしていないが、CDIF単独が接種されたHT29細胞のウェルを陽性対照として使用し、一方、どの細菌ともインキュベートしていない細胞のウェルを陰性対照として使用した(無菌試験)。
【0101】
接着試験の競合(競合/コインキュベーション)
1ウェルあたりのHT29-MTX細胞の数を決定した後、製品をCDIFと同時に加えた。細菌を全体的なMOIの1:10で加えた。細菌を、僅かに振動させながら37℃に維持した細胞と60分間接触させた。インキュベーションの終了時に、培地を除去し、細胞を滅菌培地で洗浄して、単層に接着しなかった細菌を除去した。細胞へのCDIFの接着を定量化するため、細胞を遊離させ、溶解し、細菌を、嫌気生活下に37℃で48~72時間にわたってClostridium difficile Selective Agarに接種した後、生存細菌数によって定量化した。CDIF単独が接種されたHT29細胞のウェルを陽性対照として使用し、一方、どの細菌ともインキュベートしていない細胞のウェルを陰性対照として使用した(無菌試験)。
【0102】
接着病原体の除去の試験(置換/ポストインキュベーション)
1ウェルあたりのHT29-MTX細胞の数を決定した後、CDIFを加えた(MOI 1:10)。細菌を、僅かに振動させながら37℃に維持した細胞と60分間接触させた。
【0103】
インキュベーションの終了時に、培地を除去し、単層に接着しなかった細菌を滅菌培地で繰り返し洗浄して除去した。次いで、製品を通常どおりに細菌/細胞の10:1の比で加えた。細菌を、僅かに振動させながら37℃に維持した細胞と60分間接触させた。インキュベーションの終了時に、培地を除去し、細胞を滅菌培地で洗浄して、単層に接着しなかった細菌を除去した。細胞へのCDIFの接着を定量化するため、細胞を遊離させ、溶解し、細菌を、嫌気生活下に37℃で48~72時間にわたってClostridium difficile Selective Agarに接種した後、生存細菌数によって定量化した。CDIF単独が接種されたHT29-MTX細胞のウェルを陽性対照として使用し、一方、どの細菌ともインキュベートしていない細胞のウェルを陰性対照として使用した(無菌試験)。
【0104】
結果
図2Aに示されている結果は、HT29-MTX細胞と、試験したプロバイオティック製品との接触による前刺激の後、接着している生細胞及び生存細胞の率によるCDIF接着を考慮する。換言すると、プロバイオティクスによる刺激が不在のCDIF接着を100の値とすると、試験株の阻害能力は、陽性対照と比較したCDIF接着の低減%として表した。
【0105】
示されたように、試験製品は、阻害能力を強化できることを示し、このように、CDIFの接着に90%に等しい非常に高い低減をもたらした。
【0106】
更に、プロバイオティクス及び病原体による細胞系の同時処理の後、HT29-MTX細胞へのCDIF接着に対する可能な低減を、あるとすれば、CDIFとコインキュベートしたときにプロバイオティクスにより発揮された競合阻害の効果を評価するために検証した。
【0107】
CDIF単独が接種されたHT29細胞のウェルを陽性対照として使用し、一方、どの細菌ともインキュベートしていない細胞のウェルを陰性対照として使用した(無菌試験)。
【0108】
図2Bに示された結果は、HT29-MTX細胞とCDIFとのコインキュベーション及び試験した異なるプロバイオティクスとのコインキュベーションの後、接着生細胞及び生存細胞の率によるCDIF接着を考慮する。前記のように、プロバイオティクスによる刺激が不在のCDIF接着を100の値とすると、試験株の阻害能力は、陽性対照と比較したCDIF接着の低減%として表した。
【0109】
示されたように、試験製品は、阻害能力を強化できることを示し、このように、CDIFの接着に30%の低減をもたらした。
【0110】
最後に、病原体による細胞系の前処理、続く、非接着病原体の除去後のプロバイオティクスとのインキュベーションの後に、HT29-MTX細胞へのCDIF接着に低減があるかを検証した。
【0111】
CDIF単独が接種されたHT29細胞のウェルを陽性対照として使用し、一方、どの細菌ともインキュベートしていない細胞のウェルを陰性対照として使用した(無菌試験)。
【0112】
図2Cに示された結果は、真核細胞にCDIFを負荷した後、HT29細胞を、試験した様々なプロバイオティクスとインキュベートした後、接着生細胞及び生存細胞の率によるCDIF接着を考慮する。前記のように、プロバイオティクスが不在のCDIF接着を100の値とすると、試験株の阻害能力は、陽性対照と比較したCDIF接着の低減%として表した。
【0113】
示されたように、製品は、非常に軽度な阻害能力を示し、CDIFの接着に8%の低減をもたらした。
【0114】
下記の表は、試験した3つの異なるプロトコールにおいて、初期病原体負荷の約1.0×10^6CFUと比較して、2つの連続試験で得たCDIF数範囲を要約した。
【0115】
【表1】
【0116】
本研究によって得たデータを、以前の調査の対象であったL.カゼイDG(登録商標)株、L.パラカゼイLPC-S01株及び2つの株の混合物に関するデータと比較すると、下記に示されるプロファイルを導き出すことができた。
【0117】
接着除外試験(真核細胞をプロバイオティックで前処理し、その後に病原体とインキュベートする)
【0118】
【表2】
【0119】
接着試験における競合(真核細胞とプロバイオティクスとのコインキュベーション及び病原体とのコインキュベーション)
【0120】
【表3】
【0121】
接着病原体の除去試験(真核細胞を病原体で前処理し、その後にプロバイオティックとインキュベートする)
【0122】
【表4】
【0123】
3つの錠剤により示された全体的な結果は、以下を実証している。
1)L.パラカゼイLPC-S01株が最も有効であり、特に、置換試験の際に、CDIFに対して非常に高い阻害能力(75%)を示した。換言すると、L.パラカゼイLPC-S01株は、試験した市販製品と異なり、病原体に接着した後に作用し、病原体を除去し、市販製品は病原体CDが細胞に付着するのを防止するように防止機能のみを実施し、この場合、試験したL.パラカゼイLPC-S01株は、病原体CDが既に接着性である場合にも作動する。
2)L.カゼイDG(登録商標)+L.パラカゼイLPC-S01の1:1組合せは、細胞系に対するCDIFの接着能力における低減に関して興味深い相乗効果を示した。この組合せは、前処理及びコインキュベーションプロトコールにおける個別の株と比較して有利であることが明らかとなり、一方、置換試験では、L.パラカゼイLPC-S01株は、2つのプロバイオティクスの組合せより有効であることを立証した。
図1
図2
図3