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特許7387591多層複屈折反射偏光子及びポリビニルアルコール層を含み、通過軸のバラツキが小さいフィルムのロール
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  • 特許-多層複屈折反射偏光子及びポリビニルアルコール層を含み、通過軸のバラツキが小さいフィルムのロール 図1
  • 特許-多層複屈折反射偏光子及びポリビニルアルコール層を含み、通過軸のバラツキが小さいフィルムのロール 図2
  • 特許-多層複屈折反射偏光子及びポリビニルアルコール層を含み、通過軸のバラツキが小さいフィルムのロール 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】多層複屈折反射偏光子及びポリビニルアルコール層を含み、通過軸のバラツキが小さいフィルムのロール
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
G02B5/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020520850
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 IB2018054705
(87)【国際公開番号】W WO2019003107
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】62/524,978
(32)【優先日】2017-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジレット,クリスティ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ストバー,カール エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マシュー ビー.
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】河原 正
【審判官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6096375(US,A)
【文献】特表2008-537795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムのロールであって、
クロスウェブ方向に沿って変化する通過軸を有する多層複屈折反射偏光子を備え、
前記多層複屈折反射偏光子は、複屈折層と等方性層との交互層を含み、
前記多層複屈折反射偏光子が、ポリビニルアルコールの配向層を含み、
前記多層複屈折反射偏光子の前記通過軸は、前記フィルムのロールの全クロスウェブ幅にわたって約1度以下で変化し、
前記全クロスウェブ幅は、27インチよりも大きい、
フィルムのロール。
【請求項2】
前記多層複屈折反射偏光子が、ヨウ素染料で染色されており、少なくとも2000:1のコントラスト比と、425nm~675nmの垂直入射において、少なくとも60%の通過状態透過率とを示す、請求項1に記載のフィルムのロール。
【請求項3】
前記多層複屈折反射偏光子の最大伸張方向に関して、前記複屈折層及び前記等方性層は、前記最大伸張方向に沿って少なくとも0.2の屈折率差を有する、請求項1に記載のフィルムのロール。
【請求項4】
前記多層複屈折反射偏光子は、上面及び下面を有し、前記交互層は、厚さ勾配を有し、前記上面は、より厚い交互層に隣接する側であり、ポリビニルアルコールの前記配向層は、前記上面に配置されている、請求項1に記載のフィルムのロール。
【請求項5】
前記多層複屈折反射偏光子、ヨウ素染料で染色されており、少なくとも5000:1のコントラスト比を示す、請求項1に記載のフィルムのロール。
【請求項6】
前記多層複屈折反射偏光子、ヨウ素染料で染色されたており、少なくとも10000:1のコントラスト比を示す、請求項1に記載のフィルムのロール。
【請求項7】
前記多層複屈折反射偏光子、ヨウ素染料で染色されており、425nm~675nmの垂直入射において、少なくとも70%の通過状態透過率を示す、請求項1に記載のフィルムのロール。
【請求項8】
前記多層複屈折反射偏光子の前記複屈折層は、ポリエチレンナフタレート、又はポリエチレンナフタレートを含むコポリマーを含む、請求項1に記載のフィルムのロール。
【請求項9】
ポリマーウェブを処理する方法であって、
ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートのモノマーを含むコポリマー、又はポリエチレンナフタレート、を含む複屈折を発現させることができる層と、等方性層と、の交互層を含む、ポリマー多層ウェブを用意することと、
前記ポリマー多層ウェブにポリビニルアルコールの層をコーティングすることと、
前記複屈折を発現させることができる層のガラス転移温度を超えて前記ポリマー多層ウェブを加熱することと、
前記複屈折を発現させることができる層が複屈折を発現させるように、前記ポリマー多層ウェブを約6.5以上の総横断方向延伸倍率で幅出しすることによって、多層反射偏光子を形成することと、を含み、
前記多層反射偏光子は通過軸を有し、前記通過軸は、全クロスウェブ幅にわたって1度以下で変化する、方法。
【請求項10】
前記多層反射偏光子、ヨウ素染料で染色されており、少なくとも2000:1のコントラスト比と、425nm~675nmの垂直入射において、少なくとも60%の通過状態透過率とを示す、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記多層反射偏光子、ヨウ素染料で染色されており、少なくとも5000:1のコントラスト比を示す、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多層複屈折反射偏光子は、ロール形態で供給することができる。反射偏光子は、一偏光の光を優先的に反射する一方、直交偏光の光を実質的に透過する。反射偏光子は、通過軸を有する。通過軸は、実質的に透過する光の線形偏光に対して平行である。
【発明の概要】
【0002】
一態様において、本明細書は、フィルムのロールに関する。特に、フィルムのロールは、クロスウェブ方向に沿って変化する通過軸を有する多層複屈折反射偏光子を含む。多層複屈折反射偏光子は、複屈折層と等方性層との交互層と、ポリビニルアルコールの配向層と、を含む。多層複屈折反射偏光子の通過軸は、フィルムのロールの全クロスウェブ幅にわたって約1度以下で変化する。全クロスウェブ幅は、27インチよりも大きい。多層複屈折反射偏光子は、ヨウ素染料で染色された場合、少なくとも2000:1のコントラスト比と、425nm~675nmの垂直入射において、少なくとも60%の通過状態透過率とを示す。
【0003】
別の態様では、本明細書は、ポリマー多層ウェブを処理する方法に関する。特に、本方法は、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートのモノマーを含むコポリマー、又はポリエチレンナフタレート、を含む複屈折を発現させることができる層と、等方性層と、の交互層を含む、ポリマー多層ウェブを用意することと、ポリマー多層ウェブにポリビニルアルコールの層をコーティングすることと、複屈折を発現させることができる層のガラス転移温度を超えてポリマー多層ウェブを加熱することと、複屈折を発現させることができる層が複屈折を発現させるように、ポリマー多層ウェブを約6.5以上の総横断方向延伸倍率で幅出しすることによって、多層反射偏光子を形成することと、を含む。多層反射偏光子は、通過軸を有し、通過軸は、全クロスウェブ幅にわたって1度以下で変化する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】フィルムのロールの上部平面図である。
図2】ポリビニルアルコール層を含む多層複屈折反射偏光子の正面断面図である。
図3】実施例及び比較例のクロスウェブ通過軸のバラツキを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
多層複屈折反射偏光子は、複屈折を発現させることができる少なくとも1つの層及び他の1つの層を含むポリマーウェブを伸張することによって、形成される。いくつかの実施形態では、他の層は等方性層であり、すなわち、この層は、複屈折を発現させることができる層と同じ伸張条件下で複屈折性を有するようには設計されていない。いくつかの実施形態では、等方性層は、その分子構造に起因して複屈折を発現させないため等方性である。いくつかの実施形態では、等方性層は、複屈折を発現させることができる層と同じ温度で複屈折を発現させないため等方性である。
【0006】
反射偏光子は、ディスプレイ、特に、均一な照明のためにバックライトを利用する、液晶ディスプレイ又は他の透過型ディスプレイにおいて有用である。反射偏光子は、典型的には、ディスプレイとして有用であるか又は許容可能であるのに十分なコントラスト比(バックライトがオンである間の最大透過率と最小透過率との比)を提供するために、従来の吸収偏光子に積層されるか、取り付けられるか、又は隣接して配置される。しかし、積層/取り付けプロセス、又は別個のフィルムの取り扱い及び加工により、製造コスト及び複雑性が増す。更に、配向プロセス中の伸張むらにより、従来の反射偏光子は、クロスウェブ方向に沿って通過軸方向が大きくばらつく。従来の一部の反射偏光子では、通過軸は、全クロスウェブ幅に沿って3度以上で変化し得る。通過軸方向のバラツキにより、反射偏光子と吸収偏光子の軸同士を一致させることが困難になり、これにより、ディスプレイのコントラスト比が低下し、又は透過率が低下する。あるいは、適切な大きさと、通過軸の好適なレベルのバラツキとの両方を有するフィルム構成要素を見出すために、大量の材料を廃棄する必要があることがある。更に、標準的な反射偏光子及び標準的な吸収偏光子の従来の配向プロセスにより、クロスウェブに位置合わせされたときに通過軸同士が互いに直交することになる。したがって、通過軸を一致させるには、フィルムのロールから加工し、フィルムを互いに回転させ、次いで、フィルムを積層するか又は上下に積み重ねる必要がある。必要とされる加工及び取り付けの工程により、歩留りロス、追加の製造コスト、及び他の非効率性が生じることがある。更に、別個の2つのフィルム、それに加えて積層のための光学的に透明な接着剤の必要性により、フィルム積層体全体のベースライン厚さが大きくなる。
【0007】
本明細書には、ロール形態で供給することのできる多層複屈折反射偏光子が記載される。多層複屈折反射偏光子は、ポリビニルアルコール層を含む。ポリビニルアルコール層がヨウ素で染色されると、多層複屈折反射偏光子は、2000:1よりも高い、5000:1よりも高い、又は更には10000:1若しくは13000:1よりも高いコントラスト比を示し得る。これらの高いコントラスト比は、ウェブにわたる通過軸の優れた均一性に少なくとも部分的に基づく。いくつかの実施形態では、通過軸は、フィルムのロールのクロスウェブ幅全体にわたって、(山から谷まで)1.5度以下で変化し得る。
【0008】
特定のプロセス条件を変更することにより、本明細書に記載されるような反射偏光子のフィルムのロールが使用可能になる。ポリマー多層ウェブの伸張条件は、特に、通過軸のバラツキに大きな影響を及ぼし得る。例えば、驚くべきことに、横断方向の大きな延伸倍率により、クロスウェブ幅にわたって良好な均一性を維持しながらも、複屈折性の高い界面を生じさせることが可能になった。いくつかの実施形態では、横断方向の総延伸倍率(すなわち、最初に型に嵌められた伸張前の横断方向の幅に対する最終の幅の比)が非常に大きい。いくつかの実施形態では、横断方向の総延伸倍率は、少なくとも6である。いくつかの実施形態では、横断方向の総延伸倍率は、少なくとも7である。いくつかの実施形態では、横断方向の総延伸倍率は、少なくとも7.5である。
【0009】
図1は、フィルムのロールの上部平面図である。ロール100は、多層複屈折反射偏光子110を含む。
【0010】
多層複屈折反射偏光子110は、少なくとも2つの異なる材料からなる交互微細層を含む。多層光学フィルム、すなわち、異なる屈折率の微細層を配置することに少なくとも部分的によって、望ましい透過特性及び/又は反射特性をもたらすフィルムが知られている。真空チャンバの中で、一連の無機質材料を光学的に薄い層(「微細層」)として基材に堆積させることによって、このような多層光学フィルムを作ることが知られている。
【0011】
多層光学フィルムは、交互ポリマー層を共押出しすることによっても実証されている。例えば、米国特許第3,610,729号(Rogersによる)、同第4,446,305号(Rogersらによる)、同第4,540,623号(Imらによる)、同第5,448,404号(Schrenkらによる)、及び同第5,882,774号(Jonzaらによる)を参照されたい。これらのポリマー多層光学フィルムにおいて、個々の層の構成において、ほとんど又は専ら、ポリマー材料が使用される。そのようなフィルムは、大量生産工程と適合し、大きなシート及びロール品で作製することができる。いくつかの実施形態では、交互ポリマー層に使用される材料のうちの少なくとも1つは、ポリエチレンナフタレート、又はポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートを含むコポリマーのいずれかである。いくつかの実施形態では、複屈折を発現させることができる層に使用される材料のうちの少なくとも1つは、ポリエチレンナフタレート、又はポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、及び10%未満のモル%(ニ酸モノマーが100%であることに基づくモル%)の任意の他のモノマーを含むコポリマーである。
【0012】
多層光学フィルムは、異なる屈折率特性を有する個々の微細層を含み、それによって、隣接する微細層同士の間の境界面で一部の光が反射する。微細層は十分に薄いため、複数の境界面で反射された光は強め合う干渉又は弱め合う干渉を受けて、多層光学フィルムに所望の反射特性又は透過特性を与える。紫外線、可視、又は近赤外線波長の光を反射するように設計された多層光学フィルムでは、各微細層は、一般に約1μm未満の光学的厚さ(物理的厚さに屈折率を乗じたもの)を有する。一般的に、層は、最も薄いものから最も厚いものへと配置することができる。いくつかの実施形態において、交互に配置された光学層の配置は、層数の関数として実質的に線形的に変化し得る。これらの層プロファイルは、線形層プロファイルと呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、層の厚さは単調に構成してもよい。一般的に、線形層プロファイルは、層構成の全般的な形状に基づくものであり、線形層プロファイルからの小さな又は僅かな偏差は依然として線形層プロファイルであると当業者によって見なされるであろう。いくつかの実施形態では、これは、実質的な線形層プロファイルと呼ばれることがある。多層光学フィルムの外側表面にあるスキン層、又は、多層光学フィルム内に配置され、微細層の可干渉性の群(本明細書においては「パケット」と呼ぶ)を分離する保護境界層(protective boundary layer;PBL)等の、より厚い層が含められてもよい。いくつかの実施形態では、多層複屈折反射偏光子110は、少なくとも2つのパケットを含んでもよい。いくつかの実施形態では、多層複屈折反射偏光子の2つのパケットは、少なくとも80%重なり合う厚さを有する。場合によっては、保護境界層は、多層光学フィルムの交互層のうちの少なくとも1つと同じ材料でもよい。他の場合では、保護境界層は、物理的特性又はレオロジー特性のために選択される、異なる材料であってよい。保護境界層は、光学パケットの片側又は両側にあってもよい。単一パケットの多層光学フィルムの場合、保護境界層は、多層光学フィルムの外側表面の一方又は両方にあってよい。
【0013】
スキン層が加えられることがあり、これはフィードブロックの後だが溶融物がフィルムダイを出る前に起こる。この多層溶融物は次に、ポリエステルフィルムに関する従来の様式でフィルムダイを通して冷却ロール上に流延され、急冷される。その後、例えば、米国特許出願公開第2007/047080(A1)号、米国特許出願公開第2011/0102891(A1)号、及び米国特許第7,104,776号(Merrillらによる)に記載されているように、光学層のうちの少なくとも1つにて複屈折が得られるように、キャストウェブが、様々な可能なプロセスのうちの少なくとも1つによって伸張されて、多くの場合、反射偏光子又はミラーフィルムのいずれかが製造される。複屈折性のフィルムは、多層複屈折反射偏光子と呼ばれることがある。
【0014】
多層複屈折反射偏光子110は、任意の好適な反射特性を有し得る。例えば、多層複屈折反射偏光子110は、ある偏光の光を優先的に反射する一方で、第2の直交偏光の光を優先的に透過する反射偏光子でもよい。いくつかの実施形態では、多層複屈折反射偏光子は、円形反射偏光子を効果的に形成するために、1/4波長リターダを含むか、又はそれに取り付けられてもよい。1/4波長リターダは、いくつかの実施形態では、550nmの光の場合に137.5nmのうち50nm以内の位相差を有してもよい。いくつかの実施形態では、1/4波長リターダは、複屈折伸張ポリマーフィルムでもよく、又はそれを含んでもよい。いくつかの実施形態では、1/4波長リターダは、液晶層でもよく、又はそれを含んでもよい。いくつかの実施形態では、1/4波長リターダは、拡大された波長範囲にわたって色収差がなく(achromatic)てもよく、すなわち、1/4波長リターダは、その拡大された波長範囲にわたって約1/4波長の遅延をもたらし得る。いくつかの実施形態では、多層複屈折反射偏光子110は、425nm~675nmの垂直入射において、通過状態の光の少なくとも60%を透過する。いくつかの実施形態では、多層複屈折反射偏光子110は、425nm~675nmの垂直入射において、通過状態の光の少なくとも70%を透過する。
【0015】
いくつかの実施形態では、多層複屈折反射偏光子は、吸収素子を含む。いくつかの実施形態では、これらの吸収素子は、吸収偏光素子である。いくつかの実施形態では、これらの吸収素子は、両方の直交偏光の光を吸収する広帯域吸収体である。いくつかの実施形態では、吸収偏光素子は、多層複屈折反射偏光子の複屈折層内にのみ配置してもよい。いくつかの実施形態では、吸収偏光素子は、多層複屈折反射偏光子の複屈折層の一部内にのみ配置してもよい。吸収素子を含む例示的な偏光子は、米国特許出願公開第2016-0306086号(Haagら)及び米国特許第6,096,375号(Ouderkirkら)に記載されている。
【0016】
フィルムのロールのクロスウェブ幅が図1に示されている。フィルムのロールの全クロスウェブ幅にわたって、通過軸方向は、1.5度以下、1度以下、0.8度以下、又は0.5度以下で変化してもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、フィルムのロールの全クロスウェブ幅は大きい。いくつかの実施形態では、フィルムのロールの全クロスウェブ幅は、27インチよりも大きい。いくつかの実施形態では、それは、30インチよりも大きい。いくつかの実施形態では、それは、32インチよりも大きい。
【0018】
いくつかの実施形態では、多層複屈折反射偏光子は、高度な複屈折性を有する。いくつかの実施形態では、(通過軸に直交する)ブロック方向に沿った面内の2つの隣接する層間の屈折率の差は、0.2以上でもよい。いくつかの実施形態では、通過方向に沿った、面内の2つの隣接する層間の屈折率の差は、0.05以下でもよい。
【0019】
図2は、ポリビニルアルコール層を含む多層複屈折反射偏光子の正面断面図である。多層複屈折反射偏光子は、複屈折を発現させることができる層212と等方性層214との交互層、スキン層220、及びポリビニルアルコール層230を含む。
【0020】
スキン層220は、任意の好適な厚さでもよく、又は任意の好適な材料から形成されてもよい。スキン層220は、複屈折を発現させることができる層212又は等方性層214のいずれか1つ以上と同じ材料から形成してもよく、又は同じ材料を含んでもよい。スキン層220は薄くてもよく、いくつかの実施形態では、スキン層は、500nmよりも薄く、300nmよりも薄く、又は200nmよりも薄くてもよい。いくつかの実施形態では、スキン層は150nmよりも厚くあるべきである。
【0021】
ポリビニルアルコール層230は、任意の好適な厚さでもよい。いくつかの実施形態では、ポリビニルアルコール層は、配向後に0.5μm~3μmの厚さでもよい。いくつかの実施形態では、ポリビニルアルコール層は、配向後に0.8μm~2μmの厚さでもよい。いくつかの実施形態では、ポリビニルアルコール層は、配向後に1.2μm~1.5μmの厚さでもよい。ポリビニルアルコール層は、ウェブとポリビニルアルコール層とが一緒に配向され得るように、多層ポリマーウェブにコーティング又は押出成形してもよい。いくつかの実施形態では、より厚い層が一方の側の近くに配置され、より薄い層が反対側の近くに配置されるように、多層複屈折反射偏光子の層が配置される場合、ポリビニルアルコール層230は、より厚い層を有する側に配置してもよい。
【実施例
【0022】
多層フィルムは、典型的にロールツーロール法で形成され、クロスウェブ寸法は、一般的に横断方向(TD)と称され、ロールの長さに沿った寸法は、機械方向(MD)と呼ばれる。更に、フィルムは、注意深く制御された温度ゾーンにおいて、形成プロセス中に機械方向及び横断方向に慎重に伸張されて、幅出しプロセスと一般に呼ばれるプロセス中に複屈折層に影響が及ぼされる。更に、上記幅出しプロセスは、パケットが形成されるときにパケットの線形横断伸張又は放物線状伸張のいずれかをもたらしてもよく、冷却ゾーン中の制御された収縮の許容値は、「トーイン(toe-in)」と一般に呼ばれる制御された内向きの線形後退も必要とすることがある。一般的な多層光学フィルムプロセスを説明する特許文献は、広幅ウェブ/フィルム製品のための通過軸制御の改良を可能にするプロセス偏差として、以下の実施例に散在される。
【0023】
以下の実施例は、大スパンのウェブ処理装置にわたる通過軸制御の改良を示す。これらの改良は、従来とは異なるプロセス条件の変更に由来する。通過軸制御の改良に関する一次指標は、横断方向でウェブにわたる25の箇所から測定された通過軸の角度範囲として、各実施例(及び比較例)について報告される。
【0024】
通過軸制御の定義/試験方法
0.01度の分解能で角度を記録できる回転分析器を使用して、有効ウェブ幅にわたる等間隔の25の箇所について通過軸の向きを収集した。当然ながら、理想的なケースでは、これらの25のデータ点間における通過軸の向きのバラツキがない。度数で記録される測定された通過軸の向きの範囲でのピーク間の広がりとして、通過軸制御を定義する。
【0025】
ポリビニルアルコール(PVOH)でコーティングされた反射偏光子
これらの実施例は、配向前にポリビニルアルコール(PVOH)でコーティングされた反射偏光子フィルムである。これらの種類のフィルムを製造するためのプロセスは、多層反射偏光子及び吸収偏光子を同時に形成する手段を説明する米国特許第6,096,375号に既に記載されている。
【0026】
実施例1及び比較例(CE-1及びCE-2)に関するプロセスパラメータ及び材料を表1及び表2に示している。
【0027】
Xylex EXXX0281は、ポリカーボネート/コポリエステル合金であり、Sabic USA(Houston、TX)から入手可能である。PETgは、Eastman Chemicals(Knoxville、TN)から入手可能なコポリエステルである。90/10 CoPENは、3M Company(Saint Paul、MN)によって製造された、90モル%のポリエチレンナフタレート及び10モル%のポリエチレンテレフタレートであるランダムコポリエステルである。PETg-i5はポリエステル系アイオノマーであり、「ポリエステルO」として米国特許出願公開第2007-0298271号に記載されている。「延伸倍率(draw ratio)」として一般に知られる横断方向伸張比は、通過軸制御にとって重要であり得る。なお、実施例1については、良好な通過軸制御を有する6.86の延伸倍率で作製した一方で、CE-1及びCE-2については、相対的に劣る通過軸制御をもたらす、それぞれ5.05及び5.98のより従来的な延伸倍率で作製した。
【0028】
背景として、PVOHフィルムを製造するための一般的なプロセスは、米国特許第6,096,375号に記載されている。キャストフィルムには、無機若しくはポリマープライマー層への溶液コーティング、コロナ処理、又は物理的処理によってコーティングする前に、接着のために下塗りすることができる。本出願の好適な溶液系プライマーは、米国特許第4,659,523号に記載されているような、ポリエチレンテレフタレートフィルムに下塗りするために一般的に使用される水溶性コポリエステルである。ポリビニルアルコールコーティング溶液は、重量ベースで水中に2~20%のポリマーを含有するべきであり、好ましい濃度は5~15%である。ポリビニルアルコールは、95~100%、好ましくは97~99.5%の加水分解度を有するべきである。コーティング乾燥重量は、平方メートル当たり2~80グラムの範囲であるべきである。次いで、ポリビニルアルコールコーティングされたキャストフィルムを高温で伸張して、配向されたポリビニルアルコール及び多層反射偏光子を生じさせる。この温度は、多層反射偏光子の構成要素のうちの少なくとも1つのガラス転移温度よりも高いことが好ましい。一般に、温度は、80~160℃、好ましくは100~160℃であるべきである。フィルムは、元の寸法の2~10倍に伸張されるべきである。
【0029】
フィルムは、元の寸法の3~6倍に伸張されることが好ましい。フィルムは、伸張方向と交差する方向の自然な収縮(伸張比の平方根に等しい)から、拘束される(つまり、伸張方向と交差する方向の寸法の実質的な変化がなくなる)まで、伸張方向と交差する方向に寸法的に弛緩してもよい。フィルムは、長さオリエンタを用いる場合と同様に機械方向に伸張してもよく、又はテンターを使用して幅方向に伸張してもよい。次いで、配向されたポリビニルアルコールコーティングをヨウ素系染色溶液で染色し、次いで、コーティングを固定するためにホウ化する。
【0030】
これらの特定の実施例では、PVOHコーティング溶液を、89重量%の水、11重量%のPVOH、及び0.01重量%の界面活性剤で構成した。PVOHは、Kuraray America(Houston、TX)のKuraray 2899である。界面活性剤は、Air Products(Allentown、PA)から入手可能なDynol 604であった。これらの例では、フィルムを元の4~7倍に伸張し、厚さ1.2マイクロメートルのPVOH伸張層を得た。
【0031】
ヨウ素染色及びホウ化手順は、以下の要素を含んでいた。染料浴組成物は、80重量%の水、19.7重量%のヨウ化カリウム、及び0.3重量%のヨウ素であった。ホウ酸浴組成物は、80重量%の水、14重量%のホウ酸、及び6.0重量%のホウ酸ナトリウムであった。染色プロセス工程は、30℃の染料浴及び34秒間の曝露を必要とする。ホウ化工程は、65℃の浴温度及び42秒間の曝露を必要とした。ホウ化後、試料を23℃の水で24秒間すすいだ後、70℃のオーブンで5分間乾燥させた。
【0032】
偏光コントラスト比の測定値は、(400~700nm)垂直入射で測定された通過状態の平均透過率を、(400~700nm)垂直入射で測定された阻止状態の平均透過率で割った値として一般に定義される。実施例#1のフィルムを上述のようにヨウ素染色し、得られた測定コントラスト比は、液晶ディスプレイ内の偏光子のコントラスト比として有用な約4000であった。
【0033】
より低い延伸倍率の比較例(CE-1及びCE-2)で得られた通過軸制御は、それぞれ3及び5.7度の範囲の劣った通過軸制御をもたらす。一方で、従来よりも高い延伸倍率(実施例1)が、広幅ウェブの有用性を可能にする1.0度の範囲の優れた通過軸制御をもたらすことを見出した。クロスウェブ通過軸プロファイルを図3で比較する。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
以下は本開示による例示的な実施形態である。
項目1.フィルムのロールであって、
クロスウェブ方向に沿って変化する通過軸を有する多層複屈折反射偏光子を備え、
多層複屈折反射偏光子が、複屈折層と等方性層との交互層を含み、
多層複屈折反射偏光子が、ポリビニルアルコールの配向層を含み、
多層複屈折反射偏光子の通過軸は、フィルムのロールの全クロスウェブ幅にわたって約1度以下で変化し、
全クロスウェブ幅は、27インチよりも大きく、
多層複屈折反射偏光子は、ヨウ素染料で染色された場合、少なくとも2000:1のコントラスト比と、425nm~675nmの垂直入射において、少なくとも60%の通過状態透過率とを示す、フィルムのロール。
【0037】
項目2.多層複屈折反射偏光子の最大伸張方向に関して、複屈折層及び等方性層は、最大伸張方向に沿って少なくとも0.2の屈折率差を有する、項目1に記載のフィルムのロール。
【0038】
項目3.多層複屈折反射偏光子は、上面及び下面を有し、交互層は、厚さ勾配を有し、上面は、より厚い交互層に隣接する側であり、ポリビニルアルコールの配向層は、上面に配置されている、項目1に記載のフィルムのロール。
【0039】
項目4.多層複屈折反射偏光子は、ヨウ素染料で染色された場合、少なくとも5000:1のコントラスト比を示す、項目1に記載のフィルムのロール。
【0040】
項目5.多層複屈折反射偏光子は、ヨウ素染料で染色された場合、少なくとも10000:1のコントラスト比を示す、項目1に記載のフィルムのロール。
【0041】
項目6.多層複屈折反射偏光子は、ヨウ素染料で染色された場合、425nm~675nmの垂直入射において、少なくとも70%の通過状態透過率を示す、項目1に記載のフィルムのロール。
【0042】
項目7.多層複屈折反射偏光子の複屈折層は、ポリエチレンナフタレート、又はポリエチレンナフタレートを含むコポリマーを含む、項目1に記載のフィルムのロール。
【0043】
項目8.ポリマーウェブを処理する方法であって、
ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートのモノマーを含むコポリマー、又はポリエチレンナフタレート、を含む複屈折を発現させることができる層と、等方性層と、の交互層を含む、ポリマー多層ウェブを用意することと、
ポリマー多層ウェブにポリビニルアルコールの層をコーティングすることと、
複屈折を発現させることができる層のガラス転移温度を超えてポリマー多層ウェブを加熱することと、
複屈折を発現させることができる層が複屈折を発現させるように、ポリマー多層ウェブを約6.5以上の総横断方向延伸倍率で幅出しすることによって、多層反射偏光子を形成することと、を含み、
多層反射偏光子が通過軸を有し、通過軸は、全クロスウェブ幅にわたって1度以下で変化する、方法。
【0044】
項目9.多層反射偏光子は、ヨウ素染料で染色された場合、少なくとも2000:1のコントラスト比と、425nm~675nmの垂直入射において、少なくとも60%の通過状態透過率とを示す、項目8に記載の方法。
【0045】
項目10.多層反射偏光子は、ヨウ素染料で染色された場合、少なくとも5000:1のコントラスト比を示す、項目9に記載の方法。
【0046】
項目11.多層反射偏光子は、ヨウ素染料で染色された場合、少なくとも10000:1のコントラスト比を示す、項目8に記載の方法。
【0047】
項目12.多層反射偏光子は、ヨウ素染料で染色された場合、少なくとも13000:1のコントラスト比を示す、項目8に記載の方法。
図1
図2
図3