(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】低通過軸変動を有する多層複屈折反射型偏光子を含むフィルムのロール
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2020520851
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(86)【国際出願番号】 IB2018054707
(87)【国際公開番号】W WO2019003109
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-05
(32)【優先日】2017-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジレット,クリスティ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マシュー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ストバー,カール エー.
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】河原 正
【審判官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6096375(US,A)
【文献】特表2008-537795(JP,A)
【文献】特表2013-526730(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0306086(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムのロールであって、
クロスウェブ方向に沿って変化する通過軸を有する多層複屈折反射偏光子を備え、
前記多層複屈折反射偏光子は、複屈折層と等方性層との交互層を含み、
前記多層複屈折反射偏光子が、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートのモノマーを含むコポリマー、又はポリエチレンナフタレート、を含み、
前記多層複屈折反射偏光子の前記通過軸は、前記フィルムのロールの全クロスウェブ幅にわたって約1度以下で変化し、
前記全クロスウェブ幅は、27インチより大きく、
前記多層複屈折反射偏光子は、前記フィルムのロールが65℃で500時間、90%相対湿度に曝露された後に、少なくとも200:1のコントラスト比を有する、
フィルムのロール。
【請求項2】
前記多層複屈折反射偏光子は、少なくとも2つの光学パケットを含み、各光学パケットは、直線状の層プロファイルを有する、請求項1に記載のフィルムのロール。
【請求項3】
前記少なくとも2つの光学パケットは、少なくとも80%で重なり合う厚さ(複数)を有する、請求項2に記載のフィルムのロール。
【請求項4】
前記多層複屈折反射偏光子の前記複屈折層のいくつかは、偏光染料を含む、請求項1に記載のフィルムのロール。
【請求項5】
前記多層複屈折反射偏光子の前記複屈折層のそれぞれが、偏光染料を含む、請求項1に記載のフィルムのロール。
【請求項6】
ディスプレイを組み立てる方法であって、
液晶パネルを用意することと、
請求項1に記載のフィルムのロールを用意することと、
前記フィルムのロールを少なくとも1つの変換されたフィルム部分に変換することと、
前記少なくとも1つの変換されたフィルム部分のうちの1つを、前記ディスプレイが組み立てられた状態において、前記液晶パネルから前記少なくとも1つの変換されたフィルム部分のうちの1つへの光路内で、前記液晶パネルと前記少なくとも1つの変換されたフィルム部分のうちの1つとの間に吸収型偏光素子が存在しないように、前記液晶パネルに直接隣接して配置することと、
を含む、
方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの変換されたフィルム部分のうちの1つを前記液晶パネルに直接隣接して配置することは、前記少なくとも1つの変換されたフィルム部分のうちの1つを前記液晶パネルに積層することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ポリマーウェブを処理する方法であって、
ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートのモノマーを含むコポリマー、又はポリエチレンナフタレート、を含む複屈折を発現させることができる層と等方性層との交互層を含むポリマー多層ウェブを用意することと、
前記ポリマー多層ウェブを前記等方性層のガラス転移温度を越えて加熱することと、
前記複屈折を発現させることができる層が複屈折を発現させるように、前記ポリマー多層ウェブを幅出しして、多層反射偏光子を形成することと、
幅出しした後に、前記多層反射偏光子の通過軸が前記多層反射偏光子の全クロスウェブ幅にわたって約1.5度以下で変化するように、前記多層反射偏光子の機械方向張力の瞬間的な変化を制御することと、
を含み、前記多層反射偏光子は、前記多層反射偏光子が65℃で500時間、90%相対湿度に曝露された後に、前記多層反射偏光子が少なくとも200:1のコントラスト比を有するように、環境的に安定している、
方法。
【請求項9】
幅出しすることは、直線状のテンタ上で幅出しすることを含み、前記多層反射偏光子の機械方向張力の前記瞬間的な変化を制御することは、幅出しした後にクロスウェブの弛緩を制限することを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
幅出しした後にクロスウェブの弛緩を制限することは、前記クロスウェブ幅が、急冷する前に、縁部トリミングを含まずに、1%以下で低減されることを意味する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
幅出しした後にクロスウェブの弛緩を制限することは、前記クロスウェブ幅が、急冷する前に、縁部トリミングを含まずに、0.5%以下で低減されることを意味する、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
幅出しすることは、放物線型のテンタ上で幅出しすることを含み、前記多層反射偏光子の機械方向張力の前記瞬間的な変化を制御することは、前記放物線型のテンタのレールの端部と、隔離された引き取り機構のレールの先頭との間に、機械方向に少なくとも3インチの間隙を提供することを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項13】
前記間隙は、少なくとも4インチである、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記間隙は、少なくとも5インチである、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
ポリマーウェブを処理する方法であって、
ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートのモノマーを含むコポリマー、又はポリエチレンナフタレート、を含む複屈折を発現させることができる層と等方性層との交互層を含むポリマー多層ウェブを用意することと、
前記ポリマー多層ウェブを前記等方性層のガラス転移温度を越えて加熱することと、
前記複屈折を発現させることができる層が複屈折を発現させるように、約6.5以上の総横断方向延伸倍率で前記ポリマー多層ウェブを幅出しすることによって、多層反射偏光子を形成することと、
を含み、前記多層反射偏光子は、前記多層反射偏光子の通過軸が前記多層反射偏光子の全クロスウェブ幅にわたって約1度以下で変化し、かつ、前記多層反射偏光子が65℃で500時間、90%相対湿度に曝露された後に、前記多層反射偏光子が少なくとも200:1のコントラスト比を有するように、環境的に安定している、
方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多層複屈折反射型偏光子は、ロール形態で供給される場合がある。反射型偏光子は、1つの偏光の光を優先的に反射し、その一方で直交する偏光の光を実質的に透過する。反射型偏光子は、通過軸を有する。通過軸は、実質的に透過される光の直線偏光に平行である。
【発明の概要】
【0002】
1つの態様では、本開示は、フィルムのロールに関する。フィルムのロールは、クロスウェブ方向に沿って変化する通過軸を有する多層複屈折反射型偏光子を含む。多層複屈折反射型偏光子は、複屈折層と等方性層との交互層を含む。多層複屈折反射型偏光子の複屈折層は、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートのモノマーを含むコポリマー、又はポリエチレンナフタレート、を含む。多層複屈折反射型偏光子の通過軸は、フィルムのロールの全クロスウェブ幅にわたって約1度以下だけ変化する。全クロスウェブ幅は、27インチより大きく、多層複屈折反射型偏光子は、フィルムのロールが65℃で500時間、90%相対湿度に曝露された後に、少なくとも200:1のコントラスト比を有する。
【0003】
別の態様では、本開示は、ポリマーウェブの加工方法に関する。この方法は、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートのモノマーを含むコポリマー、又はポリエチレンナフタレート、を含む複屈折を発現させることができる層と等方性層との交互層を含むポリマー多層ウェブを用意することと、ポリマー多層ウェブを等方性層のガラス転移温度を越えて加熱することと、複屈折を発現させることができる層が複屈折を発現させるように、ポリマー多層ウェブを幅出しして多層反射型偏光子を形成することと、幅出しした後に、多層反射型偏光子の通過軸が多層反射型偏光子の全クロスウェブ幅にわたって約1.5度以下だけ変化するように、多層反射型偏光子の機械方向張力の瞬間的な変化を制御することと、を含む。多層反射型偏光子は、多層反射型偏光子が65℃で500時間、90%相対湿度に曝露された後に、多層反射型偏光子が少なくとも200:1のコントラスト比を有するように、環境的に安定している。
【0004】
更に別の態様では、本開示は、ポリマーウェブの加工方法に関する。この方法は、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートのモノマーを含むコポリマー、又はポリエチレンナフタレート、を含む複屈折を発現させることができる層と等方性層との交互層を含むポリマー多層ウェブを用意することと、ポリマー多層ウェブを等方性層のガラス転移温度を越えて加熱することと、複屈折を発現させることができる層が複屈折を発現させるように、約6.5以上の総横断方向延伸倍率でポリマー多層ウェブを幅出しすることによって、多層反射型偏光子を形成することと、を含む。多層反射型偏光子は、多層反射型偏光子が65℃で500時間、90%相対湿度に曝露された後に、多層反射型偏光子が少なくとも200:1のコントラスト比を有するように、環境的に安定している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図2】多層複屈折反射型偏光子の正面断面図である。
【
図4】実施例及び比較例のクロスウェブ方向に沿った通過軸変動のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
多層複屈折反射型偏光子は、複屈折を発現させることができる少なくとも1つの層及び他の1つの層を含むポリマーウェブを延伸することによって形成される。いくつかの実施形態では、他の層は、等方性層であり、すなわち、この層は、複屈折を発現させることができる層と同じ延伸条件下で複屈折性になるように設計されていない。いくつかの実施形態では、等方性層は、その分子構造に起因して複屈折を発現させないため、等方性である。いくつかの実施形態では、等方性層は、複屈折を発現させることができる層と同じ温度で複屈折を発現させないため、等方性である。
【0007】
反射型偏光子は、ディスプレイ、特に、均一な照明のためにバックライトを利用する液晶ディスプレイ又は他の透過型ディスプレイにおいて有用である。反射型偏光子は、典型的には、ディスプレイとして有用又は許容可能な十分なコントラスト比(バックライトがオンである間の最大透過率と最小透過率との比)を提供するために、従来の吸収型偏光子に積層される、取り付けられる、又は隣接して配置される。しかしながら、積層/取り付けプロセス、又は別個のフィルムの取り扱い及び変換により、製造コスト及び複雑性が増す。更に、配向プロセス中の延伸のむらにより、従来の反射型偏光子は、クロスウェブ方向に沿った通過軸方向の大きな変動を有する。いくつかの従来の反射型偏光子に関しては、通過軸は、全クロスウェブ幅に沿って3度以上変化し得る。通過軸方向の変動により、反射型偏光子及び吸収型偏光子の軸を整列させることが困難になり、それにより、ディスプレイのコントラスト比又は透過率の悪化をもたらす。あるいは、適切なサイズであり、かつ好適なレベルの通過軸変動を有するフィルム構成要素を見出すために、大量の材料を廃棄する必要があり得る。
【0008】
特定のプロセス条件の変更により、本明細書に記載されるような反射型偏光子のフィルムロールを可能にすることができる。ポリマー多層ウェブの延伸条件は、特に、通過軸の変動に対して有意な効果を有することができる。例えば、驚くべきことに、高い横断方向の延伸倍率により、高複屈折界面の発現が可能になり、一方で、クロスウェブ幅にわたって良好な均一性を依然として維持した。いくつかの実施形態では、総横断方向延伸倍率(すなわち、最終横断方向幅と最初にキャストされた予延伸幅との比は、非常に大きい。いくつかの実施形態では、総横断方向延伸倍率は、少なくとも6である。いくつかの実施形態では、総横断方向延伸倍率は、少なくとも7である。いくつかの実施形態では、総横断方向延伸倍率は、少なくとも7.5である。
【0009】
いくつかの実施形態では、ポリマー多層ウェブを幅出しして、多層反射型偏光子を形成した後に、多層反射型偏光子内の機械方向張力の瞬間的な変化は、通過軸が多層反射型偏光子の全クロスウェブ幅にわたって最小限に変化するように、制御される。多層反射型偏光子にわたる瞬間的な機械方向張力の効果的な制御は、配向プロセスで使用される様々なテンタに依存して、異なるプロセス変更を利用することができる。
【0010】
例えば、従来の直線状のテンタに関しては、典型的な加工条件により、フィルムの収縮及び他の物理的特性を改善するために、延伸直後かつフィルムの縁部をトリミングする前に、「トーイン」、又はクロスウェブの弛緩が可能になる。しかしながら、本明細書に記載されるフィルムは、全クロスウェブ幅にわたってはるかにより均一な通過軸を意外にも維持するために、制限された又は最小のトーインを利用する。いくつかの実施形態では、クロスウェブ幅は、縁部トリミングを含まずに、1%以下だけ低減される。いくつかの実施形態では、クロスウェブ幅は、縁部トリミングを含まずに、0.5%以下だけ低減される。
【0011】
米国特許第6,949,212号(Merrillら)に記載され、
図3に示すものなどの放物線型のテンタでは、多層反射型偏光子にわたる瞬間的な機械方向張力を制御することは、放物線型のテンタレールの端部と隔離された引き取り機構のレールの先頭との間で従来行われるよりも、(機械方向に)間隙を延ばすことを意味する。
図3では、これは、トラック140及び141をローラ62から機械方向に更に移動させることを含む。いくつかの実施形態では、間隙は、少なくとも3インチである。いくつかの実施形態では、間隙は、少なくとも4インチである。いくつかの実施形態では、間隙は、少なくとも5インチである。
【0012】
図1は、フィルムのロールの平面図である。ロール100は、多層複屈折反射型偏光子110を含む。
【0013】
多層複屈折反射型偏光子110は、少なくとも異なる2つの材料の交互のミクロ層を含む。多層光学フィルム、すなわち、少なくとも部分的には、異なる屈折率のミクロ層の配置によって、望ましい透過特性及び/又は反射特性をもたらすフィルムが知られている。真空チャンバの中で、一連の無機質材料を光学的に薄い層(「ミクロ層」)として基材に堆積させることによって、このような多層光学フィルムを作ることが知られている。
【0014】
多層光学フィルムは、交互ポリマー層を共押し出しすることによっても実証された。例えば、米国特許第3,610,729号(Rogersによる)、同第4,446,305号(Rogersらによる)、同第4,540,623号(Imらによる)、同第5,448,404号(Schrenkらによる)、及び同第5,882,774号(Jonzaらによる)を参照されたい。これらのポリマー多層光学フィルムにおいて、個々の層の構成において、ほとんど又は専ら、ポリマー材料が使用される。そのようなフィルムは、大量生産工程と適合し、大きなシート及びロール品で作製することができる。いくつかの実施形態では、交互ポリマー層に使用される材料のうちの少なくとも1つは、ポリエチレンナフタレート、又はポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートを含むコポリマーのいずれかである。いくつかの実施形態では、複屈折を発現させることができる層に使用される材料のうちの少なくとも1つは、ポリエチレンナフタレート、又は、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、及び100%の二塩基酸モノマーを基準としたモル%で10%未満のモル%での任意の他のモノマーのコポリマーである。
【0015】
多層光学フィルムは、異なる屈折率特性を有する個々のミクロ層を含み、それにより、一部の光は、隣接するミクロ層間の境界面で反射される。微細層は十分に薄いため、複数の境界面で反射された光は強め合う干渉又は弱め合う干渉を受けて、多層光学フィルムに所望の反射特性又は透過特性を与える。紫外線、可視、又は近赤外線波長の光を反射するように設計された多層光学フィルムでは、各ミクロ層は、一般に約1μm未満の光学的厚さ(物理的厚さに屈折率を乗じたもの)を有する。一般的に、層は、最も薄いものから最も厚いものへと配置することができる。いくつかの実施形態において、交互に配置された光学層は、層数の関数として実質的に直線的に変化することがある。これらの層プロファイルは、直線状の層プロファイルと呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、層の厚さは、単調に配置してもよい。一般的に、直線状の層プロファイルは、層配置の全体的な形状に基づくものであり、直線状の層プロファイルからのわずかな又は有意でない偏差は、当業者によって直線状の層プロファイルであるとして依然として見なされるであろう。いくつかの実施形態では、これは、実質的直線状の層プロファイルと呼ばれる場合がある。多層光学フィルムの外側表面のスキン層、又は、多層光学フィルム内に配置され、ミクロ層のひとまとまりの群(本明細書においては「パケット」と呼ぶ)を分離する保護境界層(protective boundary layer、PBL)などの、より厚い層を含めることもできる。いくつかの実施形態では、多層複屈折反射型偏光子110は、少なくとも2つのパケットを含んでもよい。いくつかの実施形態では、多層複屈折反射型偏光子の2つのパケットは、少なくとも80%だけ重なり合う厚さ(複数)を有する。場合によっては、保護境界層は、多層光学フィルムの交互層のうちの少なくとも1つと同じ材料であってもよい。他の場合では、保護境界層は、物理的特性又はレオロジー特性のために選択される、異なる材料であってよい。保護境界層は、光学パケットの片側又は両側にあってもよい。単一パケットの多層光学フィルムの場合、保護境界層は、多層光学フィルムの外側表面の一方又は両方にあってよい。
【0016】
スキン層が加えられることがあり、これはフィードブロックの後だが溶融物がフィルムダイを出る前に起こる。この多層溶融物は次に、ポリエステルフィルムに関する従来の様式でフィルムダイを通して冷却ロール上に流延され、急冷される。その後、例えば、米国特許公開第2007/047080(A1)号、米国特許公開第2011/0102891(A1)号、及び米国特許第7,104,776号(Merrillらによる)に記載されているように、光学層のうちの少なくとも1つに複屈折が得られるように、キャストウェブが種々の可能な方法のうちの少なくとも1つにより延伸されて、多くの場合、反射型偏光子又はミラーフィルムのいずれかが形成される。複屈折を有するフィルムは、多層複屈折反射型偏光子と呼ばれることがある。
【0017】
多層複屈折反射型偏光子110は、任意の好適な反射特性を有することができる。例えば、多層複屈折反射型偏光子110は、1つの偏光の光を優先的に反射し、一方で第2の直交する偏光の光を優先的に透過する、反射型偏光子であってもよい。いくつかの実施形態では、多層複屈折反射型偏光子は、反射型円偏光子を効果的に形成するために、四分の一波長リターダを含む、又はそれに取り付けてもよい。四分の一波長リターダは、いくつかの実施形態では、550nm光に対して137.5nmの50nm以内のリターダンスを有してもよい。いくつかの実施形態では、四分の一波長リターダは、複屈折延伸ポリマーフィルムであってもよく、又は複屈折延伸ポリマーフィルムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、四分の一波長リターダは、液晶層であってもよく、又は液晶層を含んでもよい。いくつかの実施形態では、四分の一波長リターダは、拡張された波長範囲にわたって無色であってもよく、すなわち、四分の一波長リターダは、その拡張された波長範囲にわたって約4分の1波長の遅延をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、多層複屈折反射型偏光子110は、垂直入射において、425nm~675nmの通過状態の光の少なくとも60%を透過する。いくつかの実施形態では、多層複屈折反射型偏光子110は、垂直入射において、425nm~675nmの通過状態の光の少なくとも70%を透過する。
【0018】
いくつかの実施形態では、多層複屈折反射型偏光子は、吸収素子を含む。いくつかの実施形態では、これらの吸収素子は、吸収型偏光素子である。いくつかの実施形態では、これらの吸収素子は、光の直交する偏光の両方を吸収する広帯域吸収体である。いくつかの実施形態では、吸収型偏光素子は、多層複屈折反射型偏光子の複屈折層内にのみ配置してもよい。いくつかの実施形態では、吸収型偏光素子は、多層複屈折反射型偏光子の複屈折層のいくつかの内にのみ配置してもよい。吸収素子を含む例示的な偏光子は、米国特許出願公開第2016-0306086号(Haagら)及び米国特許第6,096,375号(Ouderkirkら)に記載されている。
【0019】
フィルムのロールのクロスウェブ幅を
図1に示す。フィルムのロールの全クロスウェブ幅にわたって、通過軸方向は、1.5度以下、1度以下、0.8度以下、又は私の0.5度以下だけ変動し得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、フィルムのロールの全クロスウェブ幅は大きい。いくつかの実施形態では、フィルムのロールの全クロスウェブ幅は、27インチより大きい。いくつかの実施形態では、それは、30インチより大きい。いくつかの実施形態では、それは、32インチより大きい。
【0021】
いくつかの実施形態では、多層複屈折反射型偏光子は、高度に発達した複屈折を有する。いくつかの実施形態では、(通過軸に直交する)遮蔽方向に沿った、面内の隣接する2つの層の間の屈折率の差は、0.2以上であってもよい。いくつかの実施形態では、通過方向に沿った、面内の隣接する2つの層の間の屈折率の差は、0.05以下であってもよい。
【0022】
多層複屈折反射型偏光子は、優れた環境安定性を有してもよく、又は高温若しくは多湿条件への長期曝露後にその性能を維持する。いくつかの実施形態では、多層複屈折反射型偏光子は、フィルムのロールが65℃で500時間、90%相対湿度に曝露された後に、少なくとも100:1のコントラスト比を有する。
【0023】
図2は、多層複屈折反射型偏光子の正面断面図である。多層複屈折反射型偏光子は、交互する複屈折を発現させることができる層212及び等方性層214と、スキン層220とを含む。
【0024】
スキン層220は、任意の好適な厚さであってよく、また任意の好適な材料から形成していてよい。スキン層220は、複屈折を発現させることができる層212又は等方性層214のいずれかのうちの1つ以上と同じ材料から形成してもよく、又はそれらと同じ材料を含んでもよい。スキン層220は、薄くてもよく、いくつかの実施形態では、スキン層は、500nmより薄く、300nmより薄く、又は200nmより薄くてもよい。いくつかの実施形態では、スキン層は、150nmより厚くなければならない。
【0025】
いくつかの実施形態では、多層複屈折反射型偏光子を含む本明細書に記載されるフィルムのロールは、独立型反射型偏光子としてディスプレイ又はバックライトに使用可能であり得る。独立型反射型偏光子とは、反射型偏光子が、別個の吸収型偏光子に積層することなくディスプレイでの使用に好適であることを意味する。いくつかの実施形態では、フィルムのロールは、少なくとも1つの変換されたフィルム部分に変換され、変換されたフィルム部分は、組み立てられたディスプレイにおいて、液晶パネルから変換されたフィルム部分への光路内に、液晶パネルと変換されたフィルム部分との間に吸収型偏光素子が存在しないように、液晶パネルに直接隣接して配置される。いくつかの実施形態では、フィルムのロールの多層複屈折反射型偏光子の複屈折層のいくつかは、偏光染料を含んでもよい。
【実施例】
【0026】
多層フィルムは、典型的には、ロールツーロール法で形成され、クロスウェブ寸法は、一般的に横断方向(transverse direction、TD)とラベル付けされ、ロールの長さに沿った寸法は、機械方向(machine direction、MD)と呼ばれる。更に、フィルムは、慎重に制御された温度ゾーン内で機械方向及び横断方向に形成プロセスにおいて慎重に延伸されて、一般に幅出しプロセスと呼ばれるもので複屈折層に影響を及ぼす。更に、パケットの直線状の横断延伸又は放物線状延伸のいずれかをそれらが形成される際に提供することができる幅出しプロセスは、冷却ゾーン中の制御された収縮の許容差が、「トーイン」と一般に呼ばれる制御された内向きの直線状の収縮も必要とすることがある。一般的な多層光学フィルムプロセスを記載した特許参考文献は、幅広いウェブ/フィルム製品のための改善された通過軸制御を可能にするプロセス偏差としての以下の実施例に散在している。
【0027】
以下の実施例は、大きなスパンのウェブ処理装置にわたる通過軸制御の改善を示す。これらの改善は、非伝統的なプロセス条件の変更に由来するものである。通過軸制御の改善の主要メトリックは、横断方向のウェブにわたる25個の位置から測定したときの通過軸角度の範囲として、各実施例(及び比較例)について報告されている。
【0028】
通過軸制御の定義/試験方法
有用なウェブ幅にわたって等距離の25個の位置の通過軸配向を、角度を0.01度の分解能まで報告する能力を有する回転分析器を使用して収集した。当然ながら、理想的な場合は、これらの25個のデータ点間で通過軸配向の変動を有さないであろう。本発明者らは、角度で報告された測定された通過軸配向の範囲内のピークツーピークの広がりとして、通過軸制御を定義する。
【0029】
多層光学フィルムの実施例内の吸収材料
これらの実施例は、多層フィルムパケット(単数又は複数)と共に偏光染料を組み込む。比較例(CE-1、CE-2、CE-3)では、染料は、米国特許第7,826,009号に記載されているように、2つの反射型偏光子間の層に組み込まれる。実施例1~3では、染料は、付与前の米国特許出願公開第2016-0306086号に記載されているように、反射パケットのうちの1つの複屈折層内にある。プロセス条件及び通過軸制御結果を、表1及び表2に示す。
【0030】
比較例1、2、及び3に関しては、染料層は、光学パケットの間にあり、「染料層」と呼ばれる。実施例1、2、及び3に関しては、吸収染料は、「染料パケット」と呼ばれるパケットのうちの1つの複屈折層内にある。これらの実施例に関しては、PENは、ポリエチレンナフタレートであり、PETgは、Eastman Chemicals(Knoxville,TN)から供給されるコポリエステルであり、PETG-i5は、ポリエステル系アイオノマーであり、「ポリエステルO」として付与前の米国特許出願公開第2007-0298271号に記載されている。記載したように、これらの全ての実施例において等方性層として使用されるPetg-i5の重量分率は、2重量%であり、残りの98重量%は、PETgである。
【0031】
多層光学フィルムラインのテンタ加熱ゾーンは、押出機/テンタ装置のウェブの下方の連続的な位置に対して制御される。これらのゾーンは、予備加熱温度、延伸温度、ヒートセット温度、及び冷却温度として列記され、プロセス設定が、それらと共に表に記入されている。本発明者らは、テンタのヒートセットゾーン(0.3%対2.4%の幅の減少)内のより高温のヒートセット温度(300F対285F)及び低減したトーインに関して、反射型偏光子のコントラスト比が維持され、通過軸範囲が著しく改善されたことを見出した。フィルムが延伸温度付近の温度に維持され、続いて冷却される間の機械方向の張力の変化率は、通過軸範囲を最適化するときに重要なパラメータであると考えられる。
【0032】
表1のデータは、実施例1~3の通過軸制御が0.85~1.29度の範囲にある一方で、2.13~2.79度の範囲にある比較例(CE-1、CE-2、CE-3)の通過軸制御(すなわち、ウェブにわたる測定された通過軸の全範囲)の比較を示す。また、表1には、垂直入射(400~700nm)における平均遮蔽状態透過率で除算した垂直入射(400~700nm)における平均通過状態透過率として定義される、偏光コントラスト比の測定値も示す。
【0033】
本発明者らは、材料を必要な幅の2倍に延伸し、より幅の広い通過軸仕様を有する製品に関して縁部が巻き取られるのに対して、テンタ出力の中心からロールを巻き取ることによって、通過軸制御のまた更なる改善を得ることができることを実証している(実施例2及び3は、2倍の幅を有する利用可能なフィルムからの中央部分ロールである)。
【表1】
表1.多層光学フィルム内の吸収材料の特性及びプロセス条件
【表2】
表2.多層光学フィルム内の吸収材料のプロセス条件
【0034】
真の一軸延伸(放物線型のテンタ)を使用した反射型偏光子
吸収染料を含まない多層反射型偏光子は、米国特許第6,939,499号に記載されている放物線型のテンタを使用して、真の一軸延伸を利用して製造された。プロセスパラメータは、表3及び4に通過軸制御の結果として得られる測定値と共に記載されている。
【0035】
これらの実施例に関しては、光学層の数は、610であり、2つの光学パケットの間で等しく分割された(パケット当たり305のミクロ層)。これらの実施例のプロセス条件を記載したデータは、表3a及び表3bに見出される。引き取りベルトと放物線状レールとの間の距離は、「衝突パラメータ」と呼ばれ、表3bにまとめられている。
【0036】
放物線型のテンタは、機械方向に5つの加熱ゾーンに分割され、最終ゾーンのゾーン5は、延伸が完了した後の冷却ゾーンである。引き取り比は、延伸プロセスを出るフィルムの速度と延伸プロセスに入るフィルムの速度との比として定義される。これは、機械方向の延伸倍率と同義である。0.5の引き取り比に対して、フィルムは、配向された後に機械方向に半分の長さになるように変形されている。
【0037】
PC/CoPETは、ポリカーボネート/コポリエステルブレンドを指し、この場合、Sabic USA(Houston,TX)から入手可能なXylex EXXX0281である。PETgは、Eastman Chemicals(Knoxville,TN)から入手可能なコポリエステルである。90/10 CoPENは、3M Company(Saint Paul,MN)により製造された、90モル%のポリエチレンナフタレート及び10モル%のポリエチレンテレフタレートであるランダムコポリエステルである。
【0038】
本発明者らは、より高い衝突パラメータを用いて、改善されたクロス通過軸の均一性が達成されることを見出した。実施例4~6の通過軸制御は、0.8~0.9度の範囲内に入るのに対し、比較例(CE-4、CE-5、及びCE-6)の通過軸制御は、1.6~2.7度以内の範囲である。
【0039】
図4は、実施例4、5、6、CE-4、CE-5、及びCE-6に関して、横断(クロスウェブ)方向に2.2インチ毎に測定された通過軸データを示す。各場合において、これらのフィルムのコントラスト比は、多数の層、放物線型のテンタの配向特性によって与えられる大きな屈折率差、及び各パケットに対して慎重に制御された層厚さプロファイルに起因して3000より大きい。実施例6に関しては、コントラスト比は、4502として測定された。
【表3】
表3.真の一軸配向反射型偏光子のプロセスデータ
【表4】
表4.真の一軸配向反射型偏光子のプロセスデータ
【0040】
以下は本開示による例示的な実施形態である。
【0041】
項目1.フィルムのロールであって、クロスウェブ方向に沿って変化する通過軸を有する多層複屈折反射型偏光子を備え、
多層複屈折反射型偏光子は、複屈折層と等方性層との交互層を含み、
多層複屈折反射型偏光子の複屈折層は、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートのモノマーを含むコポリマー、又はポリエチレンナフタレート、を含み、
多層複屈折反射型偏光子の通過軸は、フィルムのロールの全クロスウェブ幅にわたって約1度以下で変化し、
全クロスウェブ幅は、27インチより大きく、
多層複屈折反射型偏光子は、フィルムのロールが65℃で500時間、90%相対湿度に曝露された後に、少なくとも200:1のコントラスト比を有する、フィルムのロール。
【0042】
項目2.多層複屈折反射型偏光子が、少なくとも2つの光学パケットを含み、各光学パケットが、直線状の層プロファイルを有する、項目1に記載のフィルムのロール。
【0043】
項目3.少なくとも2つの光学パケットが、少なくとも80%で重なり合う厚さ(複数)を有する、項目2に記載のフィルムのロール。
【0044】
項目4.多層複屈折反射型偏光子の複屈折層のいくつかが、偏光染料を含む、項目1に記載のフィルムのロール。
【0045】
項目5.多層複屈折反射型偏光子の複屈折層のそれぞれが、偏光染料を含む、項目1に記載のフィルムのロール。
【0046】
項目6.ディスプレイの組立方法であって、
液晶パネルを用意することと、
請求項1に記載のフィルムのロールを用意することと、
フィルムのロールを少なくとも1つの変換されたフィルム部分に変換することと、
少なくとも1つの変換されたフィルム部分のうちの1つを、ディスプレイが組み立てられた状態において、液晶パネルから少なくとも1つの変換されたフィルム部分のうちの1つへの光路内で、液晶パネルと少なくとも1つの変換されたフィルム部分のうちの1つとの間に吸収型偏光素子が存在しないように、液晶パネルに直接隣接して配置することと、を含む、方法。
【0047】
項目7.少なくとも1つの変換されたフィルム部分のうちの1つを液晶パネルに直接隣接して配置することが、少なくとも1つの変換されたフィルム部分のうちの1つを液晶パネルに積層することを含む、項目6に記載の方法。
【0048】
項目8.ポリマーウェブを処理する方法であって、
ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートのモノマーを含むコポリマー、又はポリエチレンナフタレート、を含む複屈折を発現させることができる層と等方性層との交互層を含むポリマー多層ウェブを用意することと、
ポリマー多層ウェブを等方性層のガラス転移温度を越えて加熱することと、
複屈折を発現させることができる層が複屈折を発現させるように、ポリマー多層ウェブを幅出しして、多層反射型偏光子を形成することと、
幅出しした後に、多層反射型偏光子の通過軸が多層反射型偏光子の全クロスウェブ幅にわたって約1.5度以下で変化するように、多層反射型偏光子の機械方向張力の瞬間的な変化を制御することと、を含み、
多層反射型偏光子は、多層反射型偏光子が65℃で500時間、90%相対湿度に曝露された後に、多層反射型偏光子が少なくとも200:1のコントラスト比を有するように、環境的に安定している、方法。
【0049】
項目9.幅出しすることが、直線状のテンタ上で幅出しすることを含み、
多層反射型偏光子の機械方向張力の瞬間的な変化を制御することが、幅出しした後にクロスウェブの弛緩を制限することを含む、項目5に記載の方法。
【0050】
項目10.幅出しした後にクロスウェブの弛緩を制限することは、
クロスウェブ幅が、急冷する前に、縁部トリミングを含まずに、1%以下だけ低減されることを意味する、項目6に記載の方法。
【0051】
項目11.幅出しした後にクロスウェブの弛緩を制限することは、
クロスウェブ幅が、急冷する前に、縁部トリミングを含まずに、0.5%以下だけ低減されることを意味する、項目6に記載の方法。
【0052】
項目12.幅出しすることが、放物線型のテンタ上で幅出しすることを含み、
多層反射型偏光子の機械方向張力の瞬間的な変化を制御することが、放物線型のテンタのレールの端部と、隔離された引き取り機構のレールの先頭との間に、機械方向に少なくとも3インチの間隙を提供することを含む、項目5に記載の方法。
【0053】
項目13.間隙が、少なくとも4インチである、項目9に記載の方法。
【0054】
項目14.間隙が、少なくとも5インチである、項目9に記載の方法。
【0055】
項目15.ポリマーウェブの加工方法であって、
ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートのモノマーを含むコポリマー、又はポリエチレンナフタレート、を含む複屈折を発現させることができる層と等方性層との交互層を含むポリマー多層ウェブを用意することと、
ポリマー多層ウェブを等方性層のガラス転移温度を越えて加熱することと、
複屈折を発現させることができる層が複屈折を発現させるように、約6.5以上の総横断方向延伸倍率でポリマー多層ウェブを幅出しすることによって、多層反射型偏光子を形成することと、を含み、
多層反射型偏光子は、多層反射型偏光子が65℃で500時間、90%相対湿度に曝露された後に、多層反射型偏光子が少なくとも200:1のコントラスト比を有するように、環境的に安定している、方法。