(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】低粘度潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 163/00 20060101AFI20231120BHJP
C10M 167/00 20060101ALI20231120BHJP
C10M 159/22 20060101ALN20231120BHJP
C10M 139/00 20060101ALN20231120BHJP
C10M 137/10 20060101ALN20231120BHJP
C10M 145/14 20060101ALN20231120BHJP
C10M 129/54 20060101ALN20231120BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20231120BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20231120BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20231120BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20231120BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20231120BHJP
C10N 30/04 20060101ALN20231120BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20231120BHJP
【FI】
C10M163/00
C10M167/00
C10M159/22
C10M139/00 A
C10M139/00 Z
C10M137/10 A
C10M145/14
C10M129/54
C10N40:25
C10N10:04
C10N10:12
C10N20:02
C10N30:06
C10N30:04
C10N30:00 Z
(21)【出願番号】P 2020521533
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 IB2018057961
(87)【国際公開番号】W WO2019077462
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391050525
【氏名又は名称】シェブロンジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾之内 久成
(72)【発明者】
【氏名】久保 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-193996(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129465(WO,A1)
【文献】特開2005-220196(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0111797(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103215109(CN,A)
【文献】特開2015-61906(JP,A)
【文献】特開2013-199594(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021350(WO,A1)
【文献】特表2010-502787(JP,A)
【文献】特開平6-220477(JP,A)
【文献】特開2017-105886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関潤滑油組成物であって、
a.主要量の潤滑粘度の油;
b.平均炭素原子数が14~18の範囲のアルキル基を有するアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤;
c.平均炭素原子数が20~28の範囲のアルキル基を有するアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤;
d.b)、c)、別の清浄剤、またはそれらの組み合わせに由来するものであり得るホウ素含有清浄剤からの少なくとも50~500ppmのホウ素;
e.前記潤滑油組成物に100~1500ppmのモリブデンを提供する量のモリブデン含有化合物;
f.ZnDTP化合物
を含み、そして
100~800ppmの量のマグネシウム、および500~2000ppmの量のカルシウムを含み、b:cのモル比が、アルキルヒドロキシベンゾエート分子に基づくと1:5~5:1であり、0.12重量%以下のリン含有量を有する潤滑油組成物。
【請求項2】
前記ホウ素含有清浄剤が、ホウ素化サリチレート、ホウ素化スルホネート、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記潤滑油組成物が、150℃で1.6~2.9cPの範囲のHTHS粘度を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記潤滑油組成物が、0W-8、0W-12、0W-16、または0W-20のSAE粘度グレードである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記潤滑油組成物が、100℃で4.0~9.3cStの動粘度を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記潤滑粘度の油が、APIグループII、グループIII、グループIV、およびグループVのうちの1つ以上から選択される基油である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記潤滑粘度の基油が100℃で少なくとも3.0cStの動粘度を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記モリブデン含有化合物が硫黄含有有機モリブデン化合物または硫黄非含有有機モリブデン化合物である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記モリブデン含有化合物が、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、カルボン酸モリブデン、モリブデンエステル、モリブデンアミン、モリブデンアミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
b)および/またはc)が過塩基性カルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記b:cの
モル比が、アルキルヒドロキシベンゾエート分子に基づいた場合1:3~3:1である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記マグネシウムが、マグネシウムスルホネートを含むマグネシウム含有清浄剤から得られる、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
前記ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤が30以下のSSIを有する、請求項
13に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
前記ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤が5以下のSSIを有する、請求項
13に記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
前記ZnDTP化合物が、一級ジアルキルジチオリン酸亜
鉛を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
前記ZnDTP化合物が、一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛と二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
ハイブリッド車の電気モーター/バッテリーシステムに連結された、直接噴射火花点火エンジンおよびポート燃料噴射火花点火エンジンから選択される内燃機関用である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
内燃機関の燃費を改善する方法であって、請求項1に記載の潤滑油組成物で前記
内燃機関を潤滑させることを含む、内燃機関の燃費を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は、2017年10月20日に提出された米国仮出願第62/574,955号の優先権を主張する。
【0002】
開示された技術は、内燃機関、特に火花点火機関用の潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0003】
性能や耐久性を犠牲にすることなく燃費を改善するために、最新のエンジン設計が開発されている。ガソリンエンジンの燃料消費を改善するために、ハイブリッド車と過給された直噴エンジンが引き続き導入されている。過給された直接燃料噴射エンジンの導入により、同じ出力を維持しながら、低回転数でトルクを上げ、排気量を下げることが可能となる。その結果、燃料消費を改善し、機械的損失の割合を減らすことができる。一方、過給された直接燃料噴射エンジンでは、低回転数でのトルクが増加すると、低速過早着火(LSPI)の形での突然の異常燃焼の問題が発生する。LSPIの発生は、燃料消費の改善に制限を課し、同時に機械的損失の増加も引き起こす。
【0004】
様々な性能要件を満たすために、エンジン油は様々な添加剤とブレンドされる。燃費を向上させる1つのよく知られた方法は、潤滑油の粘度を下げることである。しかしながら、このアプローチは今や、現在の機器の能力と仕様の限界に達しつつある。所定の粘度で、有機または有機金属の摩擦調整剤を添加すると、潤滑油の表面摩擦が減少し、燃費が向上することは周知である。しかしながら、これらの添加剤はしばしば、堆積物の形成の増加、シールの衝撃などの有害な影響をもたらすか、または限られた表面部位の耐摩耗性成分と競合するため、耐摩耗性フィルムの形成を許さず、摩耗を増加させることになる。
【0005】
エンジン油の配合における主要な課題は、摩耗、堆積、およびワニスの制御を同時に達成しながらも燃費を改善することである。潤滑油配合技術の進歩にもかかわらず、摩耗、摩擦低減特性、および堆積物制御を維持または改善しながら、燃費を効果的に改善するハイブリッド車と直噴エンジンの両方に適した低粘度エンジン油潤滑剤の必要性が存在する。
【0006】
潤滑油組成物に関するこの開示は、燃費の問題に対処すると同時に、低粘度でのLSPIの性能、摩耗、および堆積物の制御に対処している。
【発明の概要】
【0007】
内燃機関潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の油と、14~18の範囲の平均炭素原子数を有するアルキル基を有する過塩基性アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤とを含む。内燃機関潤滑油組成物は、20~28の範囲の平均炭素原子数を有するアルキル基を有する過塩基性アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をさらに含むことができる。さらに、内燃機関潤滑油組成物は、前述のアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤のいずれか、追加の清浄剤、またはそれらの組み合わせに由来し得るホウ素含有清浄剤からの少なくとも約50~約500ppmのホウ素を含み得る。内燃機関潤滑油組成物は、約100~約1500ppmのモリブデンを潤滑油組成物に提供する量のモリブデン含有化合物をさらに含むことができる。さらに、内燃機関潤滑油組成物は、約100~約1500ppmのモリブデンを潤滑油組成物に提供する量のモリブデン含有化合物をさらに含むことができる。内燃機関潤滑油組成物は、ZnDTP化合物をさらに含むことができる。一実施形態では、内燃機関潤滑油組成物は、約100~約800ppmの量のマグネシウム、および約500~約2000ppmの量のカルシウムをさらに含むことができる。さらなる一実施形態において、内燃機関潤滑油組成物については、14~18の範囲の平均炭素原子数を有するアルキル基を有する過塩基性アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤と20~28の範囲の平均炭素原子数を有するアルキル基を有する過塩基性アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤のモル比が、アルキルヒドロキシベンゾエート分子に基づいて1:5~5:1である場合をさらに含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で開示される主題の理解を容易にするために、本明細書で使用されるいくつかの用語、略語または他の略記を以下に定義する。定義されていない用語、略語または略記は、本出願の提出と同時期に当業者によって使用される通常の意味を有するものと理解される。
【0009】
定義:
この明細書において、以下の単語と表現は、使用される場合には、下記の意味を有する。
【0010】
「主要量」とは、組成物の50重量%を超えることを意味する。
【0011】
「少量」とは、1つまたは複数の添加剤の有効成分として判断される、記載された添加剤に関して、および組成物中に存在するすべての添加剤の総質量に関して示され、組成物の50重量%未満であることを意味する。
【0012】
「有効成分」または「活性物質」とは、希釈剤または溶媒ではない添加物を指す。
【0013】
報告されているすべてのパーセンテージは、特に明記しない限り、有効成分ベースの重量%である(すなわち、担体または希釈油に関係ない)。
【0014】
「ppm」という略語は、潤滑油組成物の全重量に基づいた、重量にして百万分のいくらの割合であるかを意味する。
【0015】
150℃での高温高せん断(HTHS)粘度は、ASTM D4683に従って決定された。
【0016】
100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従って決定された。
【0017】
金属-「金属」という用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物を指す。
【0018】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して、油溶性または分散性という表現が使用されている。油溶性または油分散性とは、所望のレベルの活性または性能を提供するのに必要な量を、潤滑粘度の油に溶解、分散、または懸濁させることにより組み込むことができることを意味する。通常、これは、材料の少なくとも約0.001重量%を潤滑油組成物に組み込むことができることを意味する。油溶性および分散性、特に「安定に分散性」という用語のさらなる検討については、米国特許第4,320,019号を参照されたい。この点について関連する教示については、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0019】
本明細書で使用される「硫酸灰分」という用語は、潤滑油中の清浄剤および金属添加剤から生じる不燃性残留物を指す。硫酸灰分は、ASTMテストD874を使用して測定され得る。
【0020】
本明細書で使用される「総塩基数」または「TBN」という用語は、1グラムの試料中のKOHのミリグラム数に相当する塩基の量を指す。したがって、TBNの数値が高くなるということは、アルカリ性の生成物が多くなることであるため、アルカリ性が増大することを反映している。TBNは、ASTM D 2896テストを使用して決定された。
【0021】
特に指定がない限り、すべてのパーセンテージは重量パーセントである。
【0022】
一般に、本開示の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づくと、約0.7重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.70重量%、0.01~0.6重量%、0.01~0.5重量%、0.01~0.4重量%、0.01~0.3重量%、0.01~0.2重量%、0.01重量%~0.10重量%の硫黄レベルである。一実施形態では、本開示の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づくと、約0.60重量%以下、約0.50重量%以下、約0.40重量%以下、約0.30重量%以下、約0.20重量%以下、約0.10重量%以下である。
【0023】
一実施形態では、本開示の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づくと、約0.12重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.12重量%のリンのレベルである。一実施形態では、本開示の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づくと、約0.11重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.11重量%のリンのレベルである。一実施形態では、本開示の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づくと、約0.10重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.10重量%のリンのレベルである。一実施形態では、本開示の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づくと、約0.09重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.09重量%のリンのレベルである。一実施形態では、本開示の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づくと、約0.08重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.08重量%のリンのレベルである。一実施形態では、本開示の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づくと、約0.07重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.07重量%のリンのレベルである。一実施形態では、本開示の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づくと、約0.05重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.05重量%のリンのレベルである。一実施形態では、潤滑油は実質的にリンを含まない。
【0024】
一実施形態では、本開示の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874により判定されたところによると約1.60重量%以下、例えば、ASTM D 874によって判定されたところによると約0.10~約1.60重量%の硫酸灰分のレベルである。一実施形態では、本開示の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874により判定されたところによると約1.00重量%以下、例えば、ASTM D 874によって判定されたところによると約0.10~約1.00重量%の硫酸灰分のレベルである。一実施形態では、本開示の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874により判定されたところによると約0.80重量%以下、例えば、ASTM D 874によって判定されたところによると約0.10~約0.80重量%の硫酸灰分のレベルである。一実施形態では、本開示の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874により判定されたところによると約0.60重量%以下、例えば、ASTM D 874によって判定されたところによると約0.10~約0.60重量%の硫酸灰分のレベルである。
【0025】
ここで参照されるすべてのASTM規格は、本出願の出願日時点での最新バージョンである。
【0026】
本開示については、様々な修正および代替形態が可能であるが、その特定の実施形態を本明細書で詳細に説明する。ただし、特定の実施形態の本明細書における記載は、開示を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、反対に、意図するところは、添付の特許請求の範囲によって定義される開示の精神および範囲内にあるすべての修正、同等物、および代替物を網羅することであると理解されるべきである。
【0027】
一般的な記載または例で説明されているすべての行動が必要なわけではなく、特定の行動の一部が必要でない場合があり、説明された行動に加えて1つ以上のさらなる行動が実行され得る場合があるものとする。さらに、行動が列挙される順序は、必ずしも実行される順序ではない。
【0028】
本明細書では、特定の実施形態に関して、利益、他の利点、および問題の解決策について説明した。ただし、利益、利点、問題の解決策、および利益、利点、または解決策が発生する、またはより顕著になる誘因となり得る、複数の場合もある特徴は、一部またはすべての特許請求の範囲の重要な特徴、必要とされる特徴、または本質的な特徴として解釈されるべきではない。
【0029】
本明細書に記載の実施形態の明細および実例は、様々な実施形態の構造の一般的な理解をもたらすことを意図したものである。
【0030】
本明細書で使用される用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、またはその任意の他の変形は、包括的含有という状況を包含するものとする。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、品目、または装置については、必ずしもそれらの特徴だけに限定されず、明示的に列挙されていない他の特徴またはかかるプロセス、方法、品目、または装置に固有のその他の特徴を含む場合がある。さらに、相反する記載が明示されていない限り、「または」は、排他的論理和ではなく、包括的論理和を指す。例えば、次のいずれか1つによって条件「AまたはB」が満たされる:Aは真である(または存在する)かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽である(または存在しない)かつBは真である(または存在する)、AとBの両方が真である(または存在する)。
【0031】
「a」または「an」の使用は、本明細書で説明されるエレメントおよび構成要素を記載するために採用される。これは、単に便宜上、および本開示の実施形態の範囲の一般的な意味を与えるために行われる。この記載は、他の意味合いを有することが明らかではなければ、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形は複数形も含むか、または逆の場合も同様である。「平均」という用語は、値を指す場合、平均、幾何平均、または中央値を意味するものとする。元素の周期表内の列に対応する族番号は、CRC Handbook of Chemistry and Physics(CRC化学・物理学ハンドブック)、第81版(2000-2001)に見られる「New Notation」(新しい表記法)の規則を使用している。
【0032】
別に説明されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。材料、方法、および例は説明のみを目的としており、限定することを意図したものではない。本明細書に記載されていない範囲で、特定の材料および加工行為に関する多くの詳細は従来のものであり、潤滑剤ならびに石油およびガス産業内の教科書および他の情報源で見出され得る。
【0033】
本明細書および例示は、本明細書に記載の構造または方法を使用する製剤、組成物、装置およびシステムのすべてのエレメントおよび特徴の網羅的かつ包括的な説明としての役割を果たすことを意図するものではない。別個の実施形態を単一の実施形態に組み合わせて提供することもでき、逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明する様々な特徴を別個にまたは任意の部分的な組み合わせで提供することもできる。さらに、範囲に記載されている値に言及する場合、その範囲内のすべての値が含まれる。本明細書を読んで初めて、多くの他の実施形態が当業者に明らかになる可能性がある。本開示の範囲から逸脱することなく、構造的置換、論理的置換、または別の変更を行うことができるように、他の実施形態を使用し、本開示から導出することができる。したがって、本開示は限定的ではなく例示的とみなされるべきである。
なお、下記[1]から[20]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
内燃機関潤滑油組成物であって、
a.主要量の潤滑粘度の油;
b.平均炭素原子数が約14~約18の範囲のアルキル基を有するアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤;
c.平均炭素原子数が約20~約28の範囲のアルキル基を有するアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤;
d.b)、c)、別の清浄剤、またはそれらの組み合わせに由来するものであり得るホウ素含有清浄剤からの少なくとも約50~約500ppmのホウ素;
e.前記潤滑油組成物に約100~約1500ppmのモリブデンを提供する量のモリブデン含有化合物;
f.ZnDTP化合物
を含み、そして
約100~約800ppmの量のマグネシウム、および約500~約2000ppmの量のカルシウムを含み、b:cのモル比が、アルキルヒドロキシベンゾエート分子に基づくと約1:5~約5:1であり、約0.12重量%以下のリン含有量を有する潤滑油組成物。
[2]
前記ホウ素含有清浄剤が、前記潤滑油配合物に基づいた場合、約50~約500ppmのホウ素を有する、[1]に記載の潤滑油組成物。
[3]
前記ホウ素含有清浄剤が、ホウ素化サリチレート、ホウ素化スルホネート、またはそれらの組み合わせである、[1]に記載の潤滑油組成物。
[4]
前記潤滑油組成物が、150℃で約1.6~約2.9cPの範囲のHTHS粘度を有する、[1]に記載の潤滑油組成物。
[5]
前記潤滑油組成物が、0W-8、0W-12、0W-16、または0W-20のSAE粘度グレードである、[1]に記載の潤滑油組成物。
[6]
前記潤滑油組成物が、100℃で4.0~約9.3cStの動粘度を有する、[1]に記載の潤滑油組成物。
[7]
前記潤滑粘度の油が、APIグループII、グループIII、グループIV、およびグループVのうちの1つ以上から選択される基油である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[8]
前記潤滑粘度の基油が100℃で少なくとも3.0cStの動粘度を有する、[1]に記載の潤滑油組成物。
[9]
有機モリブデン化合物が硫黄含有有機モリブデン化合物または硫黄非含有有機モリブデン化合物である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[10]
前記有機モリブデン化合物が、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、カルボン酸モリブデン、モリブデンエステル、モリブデン]アミン、モリブデンアミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、[1に記載の潤滑油組成物。
[11]
b)および/またはc)が過塩基性カルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[12]
前記b:cの比が、アルキルヒドロキシベンゾエート分子に基づいた場合1:3~3:1である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[13]
前記マグネシウムが、マグネシウムスルホネートを含むマグネシウム含有清浄剤から得られる、[1]に記載の潤滑油組成物。
[14]
ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤をさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[15]
前記ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤が30以下のSSIを有する、[14]に記載の潤滑油組成物。
[16]
前記ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤が5以下のSSIを有する、[14]に記載の潤滑油組成物。
[17]
前記ZnDTP化合物が、一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の少なくとも一部を含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[18]
前記ZnDTP化合物が、一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛と二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物を含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[19]
ハイブリッド車の電気モーター/バッテリーシステムに連結された、直接噴射火花点火エンジンおよびポート燃料噴射火花点火エンジンから選択される内燃機関用である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[20]
[1]に記載の潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させることを含む、内燃機関の燃費を改善する方法。
【0034】
一実施態様において、内燃機関潤滑油組成物であって、
a.主要量の潤滑粘度の油;
b.平均炭素原子数が14~18の範囲のアルキル基を有するアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤;
c.平均炭素原子数が20~28の範囲のアルキル基を有するアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤;
d.b)、c)、別の清浄剤、またはそれらの組み合わせに由来するものであり得るホウ素含有清浄剤からの少なくとも約50~約500ppmのホウ素;
e.前記潤滑油組成物に約100~約1500ppmのモリブデンを提供する量のモリブデン含有化合物;
f.ZnDTP化合物
を含み、そして
約100~約800ppmの量のマグネシウム、および約500~約2000ppmの量のカルシウムを含み、b:cのモル比が、アルキルヒドロキシベンゾエート分子に基づくと約1:5~約5:1であり、約0.12重量%以下のリン含有量を有する潤滑油組成物。
【0035】
潤滑粘度の油
潤滑粘度の油(「ベースストック」または「基油」と呼ばれることもある)は、潤滑剤の主要な液体成分であり、例えばそこに添加剤や場合によっては他の油をブレンドして最終潤滑剤(または潤滑剤組成物)を生成する。基油は、濃縮物を製造するのに、およびそれから潤滑油組成物を製造するのに有用であり、天然および合成の潤滑油およびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0036】
天然油には、動物性および植物性油、液体石油、ならびにパラフィン系、ナフテン系および混合パラフィン-ナフテン系の水素化精製された溶剤処理鉱物潤滑油が含まれる。石炭または頁岩に由来する潤滑粘度の油も有用な基油である。
【0037】
合成潤滑油には、炭化水素油、例えば重合および共重合オレフィン(例、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)、アルキルベンゼン(例、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン、アルキル化ナフタレン)、ポリフェノール(例、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール)、ならびにアルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニル硫化物、ならびにその誘導体、類似体および同族体が含まれる。
【0038】
別の適切な種類の合成潤滑油には、ジカルボン酸(例、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、アジピン酸、リノール酸二量体、フタル酸)と様々なアルコール(例、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルが含まれる。これらのエステルの具体例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼレート酸ジイソオクチル、アゼレート酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、および1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることにより形成される複合エステルが含まれる。
【0039】
合成油として有用なエステルには、C5~C12モノカルボン酸およびポリオール、ならびにネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールなどのポリオールエーテルから作られたものも含まれる。
【0040】
基油は、フィッシャー・トロプシュ合成の炭化水素に由来してもよい。フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して、H2とCOを含む合成ガスから作られる。かかる炭化水素は、通常、基油として有用であるためにさらなる処理が必要である。例えば、前記炭化水素は、当業者に知られているプロセスを使用して、水素異性化、水素化分解および水素異性化、脱ろうまたは水素異性化および脱ろうされていてもよい。
【0041】
本発明の潤滑油組成物では、未精製油、精製油および再精製油を使用することができる。未精製油とは、天然原料または合成原料からさらなる精製処理を行わずに直接得られるものである。例えば、レトルト操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、またはエステル化プロセスから直接得られ、さらになる処理をせずに使用されるエステル油は、未精製油である。精製油は、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製工程でさらに処理されていることを除き、未精製油に類似している。蒸留、溶媒抽出、酸または塩基抽出、濾過および浸透などの多くのそのような精製技術は、当業者に知られている。
【0042】
再精製油は、すでに使用されている精製油に適用される精製油を得るために使用されるプロセスと同様のプロセスによって得られる。かかる再精製油は、再生油または再処理油としても知られており、多くの場合、使用済み添加物および油分解製品の承認を得るための技術によってさらに処理される。
【0043】
したがって、本潤滑油組成物の製造に使用され得る基油は、米国石油協会(API)基油互換性ガイドライン(American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelines)(API Publication 1509)で指定されているグループI~Vの基油のいずれかから選択され得る。上記の基油グループを、以下の表1に要約する。
【表1】
【0044】
本明細書での使用に適した基油は、APIグループII、グループIII、グループIV、およびグループVの油およびそれらの組み合わせに対応する種類のいずれか、好ましくは並外れた揮発性、安定性、粘度および清浄度といった特徴故にグループIII~グループVの油である。
【0045】
基油とも呼ばれる、本開示の潤滑油組成物に使用するための潤滑粘度の油は、典型的には、主要量、例えば、組成物の総重量に基づくと50重量%を超える量、好ましくは約70重量%を超える量、より好ましくは約80~約99.5重量%の量、最も好ましくは約85~約98重量%の量で存在する。本明細書で使用される「基油」という表現は、単一の製造業者によって(飼料供給源または製造業者の場所と関係なく)同じ仕様に向けて製造され、同じ製造業者の仕様に適合し、一意の式、製品識別番号、またはその両方によって識別される潤滑剤成分であるベースストックまたはベースストックのブレンドを意味すると理解される。本明細書で使用するための基油は、そのようなあらゆる用途のための潤滑油組成物の配合に使用される潤滑粘度の既知または今後発見され得る油、例えばエンジン油、マリンシリンダー油、作動油、ギア油、トランスミッション液などの機能性流体などであり得る。さらに、本明細書で使用するための基油は、必要に応じて、粘度指数向上剤、例えば、高分子アルキルメタクリレート、オレフィン系共重合体、例えば、エチレン-プロピレン共重合体またはスチレン-ブタジエン共重合体;などおよびそれらの混合物を含むことができる。粘度調整剤のトポロジーには、線形、分岐形、超分岐形、星形、または櫛形のトポロジーが含まれ得るが、これらに限定はされない。
【0046】
当業者が容易に理解するように、基油の粘度は用途によって異なる。したがって、本明細書で使用するための基油の粘度は、通常、100℃(C)で約2センチストークス~約2000センチストークス(cSt)の範囲となる。一般に、エンジン油として使用される基油は、個々に、100℃で約2cSt~約30cSt、好ましくは約3cSt~約16cSt、最も好ましくは約4cSt~約12cStの動粘度範囲を有することになり、所望の最終用途および完成油(finished oil)中の添加剤に応じて選択またはブレンドすることにより、エンジン油の所望のグレードを達成、例えば、SAE粘度グレードが0W、0W-8、0W-12、0W-16、0W-20、0W-26、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、15W-40、30、40などである潤滑油組成物が得られる。
【0047】
潤滑油組成物は、少なくとも135(例えば、135~400、または135~250)、少なくとも150(例えば、150~400、150~250)、少なくとも165(例えば、165~400、または165~250)、少なくとも190(例、190~400、または190~250)、または少なくとも200(例、200~400、または200~250)の粘度指数を有する。潤滑油組成物の粘度指数が135未満である場合、150℃でHTHS粘度を維持しながら燃料効率を改善することは困難な可能性がある。潤滑油組成物の粘度指数が400を超えると、蒸発特性が低下する可能性があり、添加剤の不十分な溶解性とシール材料とのマッチング特性による欠陥が誘発される可能性がある。
【0048】
潤滑油組成物は、3.5cP以下(例、1.0~3.5cP)、3.3cP以下(例、1.0~3.3cP)、3.0cP以下(例、1.3~3.0cP)、2.6cP以下(例、1.3~2.6cP)、2.3cP以下(例、1.0~2.3cP、または1.3~2.3cP)、例えば2.0cP以下(例、1.0~2.0cP、または1.3~2.0cP)、さらには1.7cP以下(例:1.0~1.7cP、または1.3~1.7cP)の150℃での高温せん断(HTHS)粘度を有する。
【0049】
潤滑油組成物は、100℃で3~12mm2/秒(例、3~6.9mm2/秒、3.5~6.9mm2/秒、または4~6.9mm2/秒)の範囲の動粘度を有する。
【0050】
好適には、本潤滑油組成物は、4~15mg KOH/g(例、5~12mg KOH/g、6~12mg KOH/g、または8~12mg KOH/g)の総塩基価(TBN)を有し得る。
【0051】
アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤
一実施形態において、1つのアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、約14~約18個の炭素原子を含むアルキル基を含み、第2のアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、約20~約28個の炭素原子を含むアルキル基を含む。これら2つの清浄剤間のモル比は、アルキルヒドロキシベンゾエート部分に基づくと約1:5~約5:1、例えば約1:4~約4:1、約1:3~約3:1、約1:2~約2:1、約2:3~約3:2、または約3:4~約4:3であり得る。特定の一実施形態では、モル比は1:1であり、10%の偏差がある(すなわち、0.9:1と1:1.1の間)。
【0052】
一実施形態において、アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤はサリチレート清浄剤である。サリチレート清浄剤は
マグネシウム
カルシウム
またはそれらの組み合わせなどのアルカリ土類金属塩であり得る。一実施形態において、上記成分は、約14~約18の範囲の平均炭素原子数を有するアルキル基を有するカルシウムサリチレートまたはマグネシウムサリチレートであり得、約14~約18の範囲の炭素原子数を有する前記アルキル基の少なくとも60モル%は、好ましくは、60モル%以上、特に70モル%以上の量で約14~約18の範囲の平均炭素原子数を有するアルキル基を有する複数のカルシウムサリチレートまたはマグネシウムサリチレートを含む混合物である。
【0053】
さらなる一実施形態では、第2のアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤はサリチレート清浄剤である。サリチレート清浄剤は
マグネシウム
カルシウム
またはそれらの組み合わせなどのアルカリ土類金属塩であり得る。一実施形態において、第2のアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、約20~約28の範囲の平均炭素原子数を有するアルキル基を有するカルシウムサリチレートまたはマグネシウムサリチレートであり得、約20~約28の範囲の炭素原子数を有する前記アルキル基の少なくとも60モル%は、好ましくは、60モル%以上、特に70モル%以上の量で約20~約28の範囲の平均炭素原子数を有するアルキル基を有する複数のカルシウムサリチレートまたはマグネシウムサリチレートを含む混合物である。
【0054】
アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、中性または過塩基性であり得る。
【0055】
過塩基性金属清浄剤は、一般に、炭化水素、清浄剤の酸、例えばスルホン酸、アルキルヒドロキシベンゾエートなど、金属酸化物または水酸化物(例えば酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム)およびキシレン、メタノール、水などの促進剤の混合物を炭酸塩化することによって製造される。例えば、過塩基性カルシウムスルホネートを調製するために、炭酸塩化では、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを気体の二酸化炭素と反応させて炭酸カルシウムを形成させる。スルホン酸は過剰のCaOまたはCa(OH)2で中和され、スルホネートを形成する。
【0056】
過塩基性清浄剤は、低過塩基性、例えば、活性物質ベースで100未満のTBNを有する過塩基性の塩であり得る。一実施形態では、低過塩基性塩のTBNは、約30~約100であってもよい。別の実施形態では、低過塩基性塩のTBNは約30~約80であってもよい。過塩基性清浄剤は、中過塩基性、例えば、約100~約250のTBNを有する過塩基性塩であってもよい。一実施形態では、中過塩基性塩のTBNは約100~約200であってもよい。別の実施形態では、中過塩基性塩のTBNは、約125~約175であってもよい。過塩基性清浄剤は、高過塩基性、例えば250を超えるTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態では、高過塩基性塩のTBNは、活性物質ベースで約250~約800であってもよい。
【0057】
アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、いくつかのヒドロキシ芳香族化合物から誘導することができる。適切なヒドロキシ芳香族化合物には、1~4個、好ましくは1~3個のヒドロキシル基を有する単核モノヒドロキシおよびポリヒドロキシ芳香族炭化水素が含まれる。適切なヒドロキシ芳香族化合物には、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾールなどが含まれる。好ましいヒドロキシ芳香族化合物はフェノールである。
【0058】
一実施態様では、複数の場合もあるカルシウム清浄剤は、潤滑油組成物中のカルシウム金属として約500~約2000ppmのカルシウム金属、500~約1800ppmのカルシウム金属、500~約1600ppmのカルシウム金属、500~約1500ppmのカルシウム金属、または約500~約1400ppm、または約600~約1400ppm、または約600~約1400ppm、または約800~約1400ppmのカルシウム金属を潤滑油組成物に提供するのに十分な量で添加され得る。
【0059】
一実施形態において、複数の場合もあるマグネシウム清浄剤は、潤滑油組成物中のマグネシウム金属として約100~約800ppmのマグネシウム金属、または約100~約700ppm、または約100~約600ppm、または約200~約500ppmのマグネシウム金属を潤滑油組成物に提供するのに十分な量で添加され得る。
【0060】
本開示の潤滑油組成物は、上記の成分以外の追加の金属含有清浄剤をさらに含むことができる。これらの清浄剤には
油溶性スルホネート
硫黄非含有フェネート
硫化フェネート
サリキサレート
サリチレート
サリゲニン
複合清浄剤およびナフテネート清浄剤
ならびに金属
特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属
例えばバリウム
ナトリウム
カリウム
リチウム
カルシウムおよびマグネシウムの他の油溶性アルキルヒドロキシベンゾエートが含まれる。これらは中性または過塩基性であり得る。最も一般的に使用される金属は
カルシウムおよびマグネシウムであり
これらは両方とも潤滑剤に使用される清浄剤
およびカルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムの混合物に含まれる場合がある。
【0061】
ホウ素含有清浄剤
組成物は、ホウ素含有清浄剤をさらに含む。これらの清浄剤には
油溶性スルホネート
硫黄非含有フェネート
硫化フェネート
サリキサレート
サリチレート
サリゲニン
複合清浄剤およびナフテネート清浄剤
ならびに金属
特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属
例えばバリウム
ナトリウム
カリウム
リチウム
カルシウムおよびマグネシウムの他の油溶性アルキルヒドロキシベンゾエートが含まれる。最も一般的に使用される金属は
カルシウムおよびマグネシウムであり
これらは両方とも潤滑剤に使用される清浄剤
およびカルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムの混合物に含まれる場合がある。特に好ましいホウ素化清浄剤には、スルホネートおよびサリチレートが含まれる。
【0062】
ホウ素化スルホネートの例には、(a)炭化水素溶媒の存在下で(i)油溶性スルホン酸またはアルカリ土類スルホン酸塩またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つ、(ii)アルカリ土類金属の少なくとも1つの供給源、(iii)少なくとも1つのホウ素供給源、および(iv)ホウ素供給源以外で、ホウ素供給源に対して0から10モルパーセント未満の過塩基性酸を反応させ、(b)(a)の反応生成物を炭化水素溶媒の蒸留温度より高い温度に加熱して、この反応から炭化水素溶媒と水を蒸留することにより得られるホウ素化アルカリ土類金属スルホネートが含まれる。適切なホウ素化アルカリ土類金属スルホネートには、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20070123437号に開示されているものが含まれる。
【0063】
ホウ素化サリチレートの例には、(a)炭化水素溶媒の存在下で(i)油溶性サリチル酸またはアルカリ土類サリチル酸塩またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つ、(ii)アルカリ土類金属の少なくとも1つの供給源、(iii)少なくとも1つのホウ素供給源、および(iv)ホウ素供給源以外で、ホウ素供給源に対して0から10モルパーセント未満の過塩基性酸を反応させ、(b)(a)の反応生成物を炭化水素溶媒の蒸留温度より高い温度に加熱して、この反応から炭化水素溶媒と水を蒸留することにより得られるホウ素化アルカリ土類金属サリチレートが含まれる。
【0064】
ホウ素化清浄剤は、本開示の潤滑油組成物に、ホウ素含有清浄剤から提供される組成物の総質量に基づくとして、約50~約500ppm、約60~約500ppm、約70~約500ppm、約80~約500ppm、約90~約500ppm、約100~約500ppm、約110~約500ppm、約120~約500ppm、約130~約500ppm、約140~約500ppm、約150~約500ppm、約160~約500ppm、約170~約500ppm、約180~約500ppm、約190~約500ppm、または約200~約500ppmのホウ素を提供する。ホウ素含有清浄剤は、本明細書に記載のアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤、別の清浄剤に由来するもの、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0065】
追加の油溶性ホウ素成分
組成物は、追加のホウ素含有化合物をさらに含むことができる。以下に例を示す。
【0066】
本開示の潤滑油組成物で使用するための少なくとも1つの油溶性または分散油安定性ホウ素含有化合物のさらなる例には、ホウ素化分散剤、ホウ素化摩擦調整剤、分散アルカリ金属または混合アルカリ金属またはアルカリ土類金属ホウ酸塩、ホウ素化エポキシド、ホウ酸エステル、ホウ素化脂肪族アミン、ホウ素化アミドなど、およびそれらの混合物が含まれる。
【0067】
ホウ素化分散剤の例には、ホウ素化無灰分散剤、例えばホウ素化ポリアルケニル無水コハク酸;ポリアルキレン無水コハク酸のホウ素化窒素非含有誘導体;スクシンイミド、カルボン酸アミド、ヒドロカルビルモノアミン、ヒドロカルビルポリアミン、マンニッヒ塩基、ホスホノアミド、チオホスホナミドおよびホスホルアミド、チアゾール、例えば2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾールおよびその誘導体、トリアゾール、例えばアルキルトリアゾールおよびベンゾトリアゾール、アミン、アミド、イミン、イミド、ヒドロキシル、カルボキシルなどを含む、1つ以上のさらなる極性官能基を有するカルボン酸エステルを含むコポリマー、例えば上記官能基の単量体と長鎖アルキルアクリレートまたはメタクリレートの共重合により調製された生成物からなる群から選択されるホウ素化塩基性窒素化合物など、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるわけではない。好ましいホウ素化分散剤は、例えばホウ素化ポリイソブテニルスクシンイミドなどのホウ素のスクシンイミド誘導体である。
【0068】
ホウ素化摩擦調整剤の例には、ホウ素化脂肪族エポキシド、ホウ素化アルコキシル化脂肪族アミン、ホウ素化グリセロールエステルなど、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0069】
水和粒子状アルカリ金属ホウ酸塩は当技術分野で周知であり、市販されている。水和粒子状アルカリ金属ホウ酸塩および製造方法の代表例には、例えば、米国特許第3,313,727号;第3,819,521号;第3,853,772号;第3,907,601号;第3,997,454号;第4,089,790号;第6,737,387号および第6,534,450号があり、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。水和アルカリ金属ホウ酸塩は、次式:M2O・mB2O3・nH2Oで表すことができ、式中、Mは、約11~約19の範囲の原子番号のアルカリ金属、例えばナトリウムおよびカリウムであり、mは約2.5~約4.5の数(整数と小数の両方)であり、nは約1.0~約4.8の数である。水和ホウ酸ナトリウムが好ましい。水和ホウ酸塩粒子は一般に、約1ミクロン未満の平均粒径を有する。
【0070】
ホウ素化エポキシドの例には、1つ以上のホウ素化合物と少なくとも1つのエポキシドとの反応生成物から得られるホウ素化エポキシドが含まれる。適切なホウ素化合物には、酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、三酸化ホウ素、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、ボロン酸、ホウ酸、四ホウ酸およびメタホウ酸などのホウ素酸、ホウ素アミド、およびホウ素酸の様々なエステルが含まれる。エポキシドは一般に、約8~約30個の炭素原子、好ましくは約10~約24個の炭素原子、より好ましくは約12~約20個の炭素原子を有する脂肪族エポキシドである。適切な脂肪族エポキシドには、ドデセンオキシド、ヘキサデセンオキシドなど、およびそれらの混合物が含まれる。エポキシドの混合物、例えば約14~約16個の炭素原子または約14~約18個の炭素原子を有するエポキシドの市販の混合物も使用することができる。ホウ素化エポキシドは一般的に知られており、例えば、米国特許第4,584,115号に記載されている。
【0071】
ホウ酸エステルの例には、上記のホウ素化合物の1つ以上を、適切な親油性を有する1つ以上のアルコールと反応させることによって得られるホウ酸エステルが含まれる。典型的には、アルコールは6~約30個の炭素、好ましくは8~約24個の炭素原子を含むことになる。上記のホウ酸エステルの製造方法は、当技術分野で周知である。ホウ酸エステルは、ホウ素化リン脂質でもあり得る。ホウ酸エステルの代表例には、式I~IIIに示される構造を有するものが含まれる:
【化1】
(式中、各Rは、独立してC
1-C
12直鎖または分枝状アルキル基であり、R
1は水素またはC
1-C
12直鎖または分枝状アルキル基である)。
【0072】
ホウ素化脂肪族アミンの例には、上記のホウ素化合物の1つ以上を、脂肪族アミンの1つ以上、例えば、約14~約18個の炭素原子を有するアミンと反応させることにより得られるホウ素化脂肪族アミンが含まれる。ホウ素化脂肪族アミンは、アミンを約50~約300℃、好ましくは約100~約250℃の範囲の温度、および約3:1~約1:3のアミンの当量対ホウ素化合物の当量の比でホウ素化合物と反応させることにより調製することができる。
【0073】
ホウ素化アミドの例には、8~約22個の炭素原子を有する直鎖または分枝状の飽和または不飽和一価脂肪族酸、尿素、およびポリアルキレンポリアミンとホウ酸化合物などおよびそれらの混合物との反応生成物から得られるホウ素化アミドが含まれる。
【0074】
有機モリブデン化合物
内燃機関潤滑油組成物は、潤滑油組成物中のモリブデン含有量に関して約100~約1500ppmのモリブデン量のモリブデン含有化合物を含む。
【0075】
有機モリブデン化合物は、少なくともモリブデン原子、炭素原子および水素原子を含むが、硫黄原子、リン原子、窒素原子および/または酸素原子を含んでいてもよい。適切な有機モリブデン化合物には、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、およびカルボン酸モリブデン、モリブデンエステル、モリブデンアミン、モリブデンアミドなどの様々な有機モリブデン錯体が含まれ、これらは、酸化モリブデンまたはモリブデン酸アンモニウムを脂肪、グリセリド、脂肪酸、または脂肪酸誘導体(例、エステル、アミン、アミド)と反応させることで得られる。「脂肪(性)の」という用語は、10~22個の炭素原子を有する炭素鎖、通常は直鎖状の炭素鎖を意味する。
【0076】
ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)は、次の構造(1):
【化2】
[式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、互いに独立して、4個~18個の炭素原子(例えば、8個~13個の炭素原子)を有する直鎖または分枝状のアルキル基である]
で表される有機モリブデン化合物である。
【0077】
ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、次の構造(2):
【化3】
[式中、R
5、R
6、R
7、およびR
8は、互いに独立して、4個~18個の炭素原子(例えば、8個~13個の炭素原子)を有する直鎖または分枝状のアルキル基である]
で表される有機モリブデン化合物である。
【0078】
一実施形態では、モリブデンアミンはモリブデン-スクシンイミド錯体である。適切なモリブデン-スクシンイミド錯体は、例えば、米国特許第8,076,275号に記載されている。これらの錯体は、酸性モリブデン化合物と、構造(3)または(4):
【化4】
[式中、RはC
24~C
350(例えば、C
70~C
128)のアルキルまたはアルケニル基であり;R’は、2個~3個の炭素原子を有する直鎖または分枝状鎖のアルキレン基であり、xは1~11であり、yは1~10である]
で示されるポリアミンのアルキルまたはアルケニルスクシンイミドまたはそれらの混合物との反応を含むプロセスによって調製される。
【0079】
モリブデン-スクシンイミド錯体の調製に使用されるモリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物または酸性モリブデン化合物の塩である。「酸性である」とは、ASTM D664またはD2896で測定されたところによると、モリブデン化合物が塩基性窒素化合物と反応することを意味する。一般的に、酸性モリブデン化合物は六価である。適切なモリブデン化合物の代表例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、および他のアルカリ金属モリブデン酸塩、ならびに他のモリブデン塩、例えば水素塩、(例、モリブデン酸水素ナトリウム)、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6などが含まれる。
【0080】
モリブデン-スクシンイミド錯体を調製するために使用できるスクシンイミドは、多くの参考文献に開示されており、当技術分野で周知である。「スクシンイミド」という技術用語に含まれるある特定の基本的なタイプのスクシンイミドおよび関連材料は、米国特許第3,172,892号、第3,219,666号および第3,272,746号に教示されている。「スクシンイミド」という用語は、当技術分野では、形成される可能性もあるアミド、イミド、およびアミジンなる化学種の多くを含むと理解されている。しかしながら、主な生成物はスクシンイミドであり、この用語は、アルキルまたはアルケニル置換コハク酸または同無水物と窒素含有化合物との反応の生成物を意味するものとして一般に受け入れられている。好ましいスクシンイミドは、約70~128個の炭素原子のポリイソブテニル無水コハク酸を、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、およびそれらの混合物から選択されるポリアルキレンポリアミンと反応させることにより調製されるものである。
【0081】
モリブデン-スクシンイミド錯体は、適切な圧力および120℃を超えない温度で硫黄供給源により後処理して、硫化モリブデン-スクシンイミド錯体を提供することができる。硫化工程は、約0.5~5時間(例、0.5~2時間)実施され得る。硫黄の適切な供給源には、元素の硫黄、硫化水素、五硫化リン、式R2Sx[式中、Rはヒドロカルビル(例:C1~C10アルキル)であり、xは少なくとも3である]で示される有機多硫化物、C1~C10メルカプタン、無機硫化物および無機多硫化物、チオアセトアミド、ならびにチオ尿素が含まれる。
【0082】
モリブデン化合物は、重量にして約100~約1500ppm、約120~約1500ppm、約130ppm~約1500ppm、約140ppm~約1400ppm、約150ppm~1200ppm、約160ppm~約1100ppm、約170ppm~約1000ppm、約180~約1000ppm、約190~約1000ppm、または約200~約1000ppmのモリブデンを潤滑油組成物に提供する量で使用される。
【0083】
ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)化合物
耐摩耗剤は、金属部品の摩耗を減らす。適切な耐摩耗剤には、式(5):
Zn[S-P(=S)(OR1)(OR2)]2(5)
[式中、R1およびR2は、1~18個(例、2~12個)の炭素原子を有し、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリールおよび脂環式基などの基を含む同一または異なるヒドロカルビル基であり得る]
で示されるジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)などのジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩が含まれる。R1基およびR2基として特に好ましいのは、2個~8個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、アルキル基は、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、2-エチルヘキシルであり得る)である。油溶性を得るために、炭素原子の総数(すなわち、R1+R2)は少なくとも5になる。したがって、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むことができる。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、一級または二級のジアルキルジチオリン酸亜鉛であり得る。
【0084】
ZDDPは、潤滑油組成物の3重量%以下(例、0.1~1.5重量%、または0.5~1.0重量%)の割合で存在し得る。
【0085】
粘度調整剤
潤滑油組成物は、粘度調整剤をさらに含むことができる。
【0086】
粘度調整剤は、潤滑油に高温および低温での操作性を付与するように機能する。使用される粘度調整剤は、前記の唯一の機能を備えるものであってもよく、または多機能であってもよい。分散剤としても機能する多機能粘度調整剤も知られている。適切な粘度調整剤には、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンと高級アルファオレフィンのコポリマー、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルの共重合体、ならびにスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエンおよびイソプレン/ブタジエンの部分水素化コポリマー、ならびにブタジエンとイソプレンおよびイソプレン/ジビニルベンゼンの部分水素化ホモポリマーが含まれる。一実施形態では、粘度調整剤はポリアルキルメタクリレートである。粘度調整剤のトポロジーには、線形、分岐形、超分岐形、星形、または櫛形のトポロジーが含まれ得るが、これらに限定されるわけではない。粘度調整剤は、非分散剤タイプまたは分散剤タイプであり得る。一実施形態では、粘度調整剤は分散剤ポリメタクリレートである。
【0087】
適切な粘度調整剤は、30以下(例えば、10以下、5以下、さらには2以下)の永久せん断安定性指数(PSSI)を有する。PSSIは、添加剤によってもたらされる油の粘度の、せん断に起因する不可逆的な減少の尺度である。PSSIは、ASTM D6022に従って決定される。本開示の潤滑油組成物は、グレード維持能力を示す。新鮮な油とそのせん断バージョンにより単一のSAE粘度グレード分類内における100℃での動粘度が保持されているということは、油のグレード維持能力の証拠である。
【0088】
粘度調整剤は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、0.5~15.0重量%(例、0.5~10重量%、0.5~5重量%、1.0~15重量%、1.0~10重量%、または1.0~5重量%)の量で使用することができる。
【0089】
以下は、本開示の可能な実施形態の項目のリストである:
項目1.内燃機関潤滑油組成物であって、
a.主要量の潤滑粘度の油;
b.平均炭素原子数が約14~約18の範囲のアルキル基を有するアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤;
c.平均炭素原子数が約20~約28の範囲のアルキル基を有するアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤;
d.b)、c)、別の清浄剤、またはそれらの組み合わせに由来するものであり得るホウ素含有清浄剤からの少なくとも約50~約500ppmのホウ素;
e.前記潤滑油組成物に約100~約1500ppmのモリブデンを提供する量のモリブデン含有化合物;
f.ZnDTP化合物
を含み、そして
約100~約800ppmの量のマグネシウム、および約500~約2000ppmの量のカルシウムを含み、b:cのモル比が、アルキルヒドロキシベンゾエート分子に基づくと約1:5~約5:1であり、約0.12重量%以下のリン含有量を有する潤滑油組成物。
【0090】
項目2.前記ホウ素含有清浄剤が、潤滑油配合物に基づいた場合、約50~約500ppmのホウ素を有する、項目1に記載の潤滑油組成物。
【0091】
項目3.前記ホウ素含有清浄剤が、ホウ素化サリチレート、ホウ素化スルホネート、またはそれらの組み合わせである、項目1の潤滑油組成物。
【0092】
項目4.150℃で約1.6~約2.9cPの範囲のHTHS粘度を有する、項目1の潤滑油組成物。
【0093】
項目5.0W-8、0W-12、0W-16、または0W-20のSAE粘度グレードである、項目1の潤滑油組成物。
【0094】
項目6.100℃で4.0~約9.3cStの動粘度を有する、項目1の潤滑油組成物。
【0095】
項目7.前記潤滑粘度の油が、APIグループII、グループIII、グループIV、およびグループVのうちの1つ以上から選択される基油である、項目1の潤滑油組成物。
【0096】
項目8.前記潤滑粘度の基油が100℃で少なくとも3.0cStの動粘度を有する、項目1の潤滑油組成物。
【0097】
項目9.有機モリブデン化合物が、硫黄含有有機モリブデン化合物または硫黄非含有有機モリブデン化合物である、項目1の潤滑油組成物。
【0098】
項目10.前記有機モリブデン化合物が、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、カルボン酸モリブデン、モリブデンエステル、モリブデンアミン、モリブデンアミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1の潤滑油組成物。
【0099】
項目11.b)および/またはc)が過塩基性カルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤である、項目1の潤滑油組成物。
【0100】
項目12.b:cの比が、アルキルヒドロキシベンゾエート分子に基づいた場合1:3~3:1である、項目1の潤滑油組成物。
【0101】
項目13.前記マグネシウムが、マグネシウムスルホネートを含むマグネシウム含有清浄剤から得られる、項目1の潤滑油組成物。
【0102】
項目14.ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤をさらに含む、項目1の潤滑油組成物。
【0103】
項目15.前記ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤が30以下のSSIを有する、項目14の潤滑油組成物。
【0104】
項目16.前記ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤が5以下のSSIを有する、項目14の潤滑油組成物。
【0105】
項目17.前記ZnDTP化合物が、一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の少なくとも一部を含む、項目1の潤滑油組成物。
【0106】
項目18.前記ZnDTP化合物が、一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛と二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物を含む、項目1の潤滑油組成物。
【0107】
項目19.ハイブリッド車の電気モーター/バッテリーシステムに連結された直接噴射火花点火エンジンおよびポート燃料噴射火花点火エンジンから選択される内燃機関用である、項目1の潤滑油組成物。
【0108】
項目20.内燃機関の燃費を改善する方法であって、前記機関を項目1の潤滑油組成物で潤滑させることを含む方法。
【0109】
追加の潤滑油添加剤
本開示の潤滑油組成物はまた、これらの添加剤が分散または溶解される潤滑油組成物の任意の望ましい特性を付与または改善することができる他の慣用的添加剤を含有してもよい。本明細書に開示される潤滑油組成物には、当業者に知られている任意の添加剤を使用することができる。いくつかの適切な添加剤は、Mortierら、“Chemistry and Technology of Lubricants”(潤滑剤の化学および技術)、第2版、ロンドン、Springer(1996);およびLeslie R.Rudnick、“Lubricant Additives:Chemistry and Applications”(潤滑剤添加剤:化学および用途)、ニューヨーク、Marcel Dekker(2003)に記載されており、両方とも参照により本明細書に組み込まれる。例えば、潤滑油組成物を、酸化防止剤、防錆剤、脱ヘイズ剤、解乳化剤、金属不活化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、腐食防止剤、無灰分散剤、多機能剤、染料、極圧剤などおよびそれらの混合物とブレンドすることができる。様々な添加剤が知られており、市販されている。これらの添加剤またはそれらの類似化合物は、通常のブレンド手順により本開示の潤滑油組成物の調製に使用することができる。
【0110】
潤滑油配合物の調製では、炭化水素油、例えば鉱物潤滑油、またはその他の適切な溶媒中10~80重量%の有効成分濃縮物形態で添加剤を導入することが一般的な慣行である。
【0111】
通常、これらの濃縮物を、完成潤滑剤、例えば、クランクケースモーター油を形成する際に、添加剤パッケージ1重量部当たり3~100重量部、例えば5~40重量部の潤滑油で希釈することができる。濃縮物の目的は、もちろん、様々な材料の取り扱いをより容易にし、扱い易くすること、および最終ブレンドでの溶解または分散を促進することである。
【0112】
前述の添加剤は、それぞれ使用時に、潤滑剤に所望の特性を付与するために機能的に有効な量で使用される。したがって、例えば、添加剤が摩擦調整剤である場合、この摩擦調整剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の摩擦調整特性を付与するのに十分な量となる。
【0113】
一般に、潤滑油組成物中の各添加剤の濃度は、使用する場合、潤滑油組成物の全重量に基づくとして、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約15重量%、または約0.1重量%~約10重量%、約0.005重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約2.5重量%である。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の全重量に基づくとして、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約5重量%の範囲であり得る。
【0114】
以下の例は、本開示の実施形態の実例を示すために提示されているが、本開示を記載された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。別段の指示がない限り、すべての部およびパーセンテージは重量による。すべての数値は近似値である。数値範囲が与えられている場合、記載された範囲外の実施形態が依然として本開示の範囲内にある可能性があることを理解されたい。各例で説明されている特定の詳細は、本開示の必要な特徴として解釈されるべきではない。
【0115】
本明細書に開示された実施形態に対して様々な修正がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、上記の説明は、限定として解釈されるべきではなく、好ましい実施形態の単なる例示として解釈されるべきである。例えば、上記で説明され、本開示を動作させるための最良のモードとして実装される機能は、例示のみを目的とするものである。本開示の範囲および精神から逸脱することなく、他の取り合わせおよび方法が当業者によって実施され得る。さらに、当業者であれば、本明細書に添付される特許請求の範囲およびその精神内で他の修正を想定するはずである。
【0116】
例
以下の例は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を決して限定するものではない。
【0117】
例1
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.31cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.011重量%の160TBNホウ素化カルシウムスルホネート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.165重量%の、168TBNカルシウムサリチレート清浄剤、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤、および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)マグネシウム含有量換算で0.040重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(6)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(7)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(8)アルキル化ジフェニルアミン;
(9)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(10)PSSIが5のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(11)残余、グループIII基油。
【0118】
例2
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.30cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.011重量%の160TBNホウ素化カルシウムスルホネート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.151重量%の、168TBNカルシウムサリチレート清浄剤、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤、および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)マグネシウム含有量換算で0.055重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量換算で740ppmの、一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛と二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物;
(6)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(7)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(8)アルキル化ジフェニルアミン;
(9)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(10)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(11)残余、グループIII基油。
【0119】
例3
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.31cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.011重量%の160TBNホウ素化カルシウムスルホネート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.151重量%の、168TBNカルシウムサリチレート清浄剤、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤、および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)マグネシウム含有量換算で0.055重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(6)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(7)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(8)アルキル化ジフェニルアミン;
(9)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(10)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(11)残余、グループIII基油。
【0120】
例4
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.35cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.023重量%の160TBNホウ素化カルシウムスルホネート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.151重量%の、168TBNカルシウムサリチレート清浄剤、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤、および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)マグネシウム含有量換算で0.055重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(6)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(7)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(8)アルキル化ジフェニルアミン;
(9)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(10)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(11)残余、グループIII基油。
【0121】
例5
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.32cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.043重量%の160TBNホウ素化カルシウムスルホネート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.151重量%の、168TBNカルシウムサリチレート清浄剤、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤、および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)マグネシウム含有量換算で0.055重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(6)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(7)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(8)アルキル化ジフェニルアミン;
(9)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(10)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(11)残余、グループIII基油。
【0122】
例6
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.35cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.011重量%の160TBNホウ素化カルシウムスルホネート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.05重量%の、168TBNカルシウムサリチレート清浄剤、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤、および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)マグネシウム含有量換算で0.08重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(6)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(7)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(8)アルキル化ジフェニルアミン;
(9)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(10)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(11)残余、グループIII基油。
【0123】
例7
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.35cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.011重量%の160TBNホウ素化カルシウムスルホネート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.20重量%の、168TBNカルシウムサリチレート清浄剤、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤、および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)マグネシウム含有量換算で0.01重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(6)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(7)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(8)アルキル化ジフェニルアミン;
(9)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(10)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(11)残余、グループIII基油。
【0124】
例8
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.32cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.011重量%の160TBNホウ素化カルシウムスルホネート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.20重量%の、168TBNカルシウムサリチレート清浄剤、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤、および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)マグネシウム含有量換算で0.01重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(6)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(7)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(8)アルキル化ジフェニルアミン;
(9)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(10)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(11)残余、グループIII基油。
【0125】
例9
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.32cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.011重量%の160TBNホウ素化カルシウムスルホネート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.20重量%の、168TBNカルシウムサリチレート清浄剤、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤、および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)マグネシウム含有量換算で0.01重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(6)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(7)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(8)アルキル化ジフェニルアミン;
(9)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(10)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(11)残余、グループIII基油。
【0126】
例10
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.30cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.011重量%の192TBNホウ素化カルシウムサリチレート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.151重量%の、168TBNカルシウムサリチレート清浄剤、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤、および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)マグネシウム含有量換算で0.055重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(6)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(7)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(8)アルキル化ジフェニルアミン;
(9)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(10)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(11)残余、グループIII基油。
【0127】
例11
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で1.87cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.011重量%の160TBNホウ素化カルシウムスルホネート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.151重量%の、168TBNカルシウムサリチレート清浄剤、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤、および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)マグネシウム含有量換算で0.055重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(6)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(7)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(8)アルキル化ジフェニルアミン;
(9)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(10)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(11)残余、グループIII基油。
【0128】
比較例1
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.31cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)カルシウム含有量換算で0.151重量%の、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物;
(3)マグネシウム含有量換算で0.055重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(4)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(5)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(6)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(7)アルキル化ジフェニルアミン;
(8)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(9)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(10)残余、グループIII基油。
【0129】
比較例2
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.33cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.011重量%の160TBNホウ素化カルシウムスルホネート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.151重量%の、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)マグネシウム含有量換算で0.055重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(6)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(7)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(8)アルキル化ジフェニルアミン;
(9)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(10)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(11)残余、グループIII基油。
【0130】
比較例3
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で2.35cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素含有量換算で0.011重量%の160TBNホウ素化カルシウムスルホネート清浄剤;
(3)カルシウム含有量換算で0.20重量%の、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(4)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(5)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(6)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(7)アルキル化ジフェニルアミン;
(8)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(9)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(10)残余、グループIII基油。
【0131】
比較例4
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製して、150℃で1.90cPのHTHS粘度を有する完成油を提供した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)カルシウム含有量換算で0.151重量%の、323TBNカルシウムサリチレート清浄剤および60TBNカルシウムサリチレート清浄剤の混合物、この場合(2)からのホウ素化清浄剤からのカルシウムも含まれるものとする;
(3)マグネシウム含有量換算で0.055重量%の400TBNマグネシウムスルホネート清浄剤;
(4)リン含有量換算で740ppmの二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(5)モリブデン換算で40ppmのモリブデンスクシンイミド酸化防止剤;
(6)モリブデン換算で900ppmのMoDTC錯体;
(7)アルキル化ジフェニルアミン;
(8)ケイ素含有量換算で5ppmの消泡剤;
(9)PSSIが1のポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;および
(10)残余、グループIII基油。
【0132】
コマツホットチューブ試験(KHTT)は、高温にさらされるエンジン油や他の油についての堆積物形成性能のスクリーニングと品質管理に使用される。
【0133】
洗浄力ならびに熱安定性および酸化安定性は、潤滑油の満足できる全体的な性能に不可欠であるとして業界で一般的に受け入れられている性能領域である。コマツホットチューブ試験は、潤滑油の洗浄力ならびに熱安定性および酸化安定性を測定する潤滑業界のベンチテスト(JPI 5S-55-99)である。試験中、ある特定の温度に設定されたオーブン内に配置されたガラスチューブを介して、指定された量の試験油が上方に送り出される。油がガラスチューブに入る前に、空気が油の流れに導入され、油とともに上方に流れる。潤滑油の評価は、280℃の温度で実施された。試験結果は、ガラス試験チューブに付着したラッカーの量を、1.0(真っ黒)から10.0(完全にきれい)の範囲の評価尺度と比較することによって決定される。結果を表2、3、4および5に示す。
【0134】
トヨタ2ZR-FEモーター駆動エンジンの燃費試験
比較例1~4および例1~11の潤滑油組成物を、ガソリンモーター駆動エンジン試験でそれらの燃料経済性について試験した。ガソリンエンジンの場合、運転中における測定可能な量のすすの発生は、あるとしても極めて少ないことが知られている。エンジンは、トヨタ2ZR-FE 1.8L直列4気筒配列である。トルクメータは、モーターとエンジンのクランクシャフトの間に配置され、トルク変化%を、基準油と候補油との間で測定する。100℃、80℃、および60℃の油温および400~2000RPMのエンジン速度でのトルク変化%データを測定する。トルク変化%が低い(すなわち、よりマイナス方向に向かっている)ことは、燃費が良いことを反映している。モーター駆動エンジンの摩擦トルク試験の構成とその試験条件については、SAE Paper 2013-01-2606でさらに説明している。この試験のトルクデータを、以下の表2、3、4、および5に記載する。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】