(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】ヘモグロビンを含む代用血液及び作製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/42 20060101AFI20231120BHJP
A61K 35/18 20150101ALI20231120BHJP
A61P 7/08 20060101ALI20231120BHJP
C07K 14/805 20060101ALN20231120BHJP
【FI】
A61K38/42
A61K35/18
A61P7/08
C07K14/805
(21)【出願番号】P 2020524720
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 US2018042497
(87)【国際公開番号】W WO2019018403
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-13
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520020557
【氏名又は名称】ヴァーテック・バイオ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・リチャード・ライト
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・タッカー
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-521088(JP,A)
【文献】特表2009-529923(JP,A)
【文献】特表2008-534067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/42
A61K 35/18
A61P 7/08
C07K 14/805
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘモグロビンを含む代用血液調製物を調製する方法であって、
(i)血液から赤血球を単離する工程、
(ii)ヘモグロビンタンパク質分子と内在性非ヘモグロビンタンパク質総体とを含む低純度赤血球タンパク質分画を、前記赤血球から単離する工程であって、前記低純度赤血球タンパク質分画が、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む、工程、並びに
(iii)前記低純度赤血球タンパク質分画を、前記タンパク質分画中のタンパク質を化学的に修飾することができる反応物と接触させ、それによって、前記反応物が、前記ヘモグロビンタンパク質分子間の分子間架橋と、前記ヘモグロビンタンパク質分子及び前記内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間の分子間架橋とを含む架橋タンパク質の形成を媒介し、それによって、代用血液調製物を形成する工程、
を含
み、
前記架橋タンパク質の平均分子量が少なくとも約300kDaである、方法。
【請求項2】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されている、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されており、それにより、架橋タンパク質の平均分子量が約1,000kDaである、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記内在性非ヘモグロビンタンパク質総体がカルボニックアンヒドラーゼを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記カルボニックアンヒドラーゼが、前記内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約15%(モル/モル)を構成する、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記赤血球タンパク質分画中のタンパク質を修飾することができる前記反応物が、還元性共有結合架橋を形成することができる、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記赤血球タンパク質分画中のタンパク質を修飾することができる前記反応物が、還元性共有結合架橋を形成することができ、前記還元性共有結合架橋がシッフ塩基である、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記赤血球タンパク質分画中のタンパク質を化学的に修飾することができる前記反応物が、ポリアルデヒドであり、前記ポリアルデヒドを、前記ポリアルデヒドのアルデヒド基と前記タンパク質のアミノ基との化学反応を許容する反応条件下で反応させて、前記ヘモグロビンタンパク質分子間、並びに前記ヘモグロビンタンパク質分子及び前記内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間に、複数の共有結合分子間架橋を形成する、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
ポリアルデヒドとの反応の後に、前記架橋タンパク質を還元剤と反応させて、前記架橋を還元して、還元架橋を形成する、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリアルデヒドがグルタルアルデヒドである、請求項
8又は
9に記載の方法。
【請求項11】
前記還元性共有結合架橋がシッフ塩基であり、還元共有結合架橋が第二級アミンである、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
前記還元剤がシアノ水素化ホウ素である、請求項
9記載の方法。
【請求項13】
前記赤血球タンパク質分画中のタンパク質を修飾することができる前記反応物が、前記赤血球タンパク質分画中のタンパク質を分子間及び分子内で架橋することができる反応物である、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記赤血球が透析濾過により血液から単離される、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
前記赤血球を低浸透圧ショックに付すことにより、前記赤血球を溶解して、赤血球溶解産物を得て、前記赤血球溶解産物から低純度赤血球タンパク質分画を得る、請求項
1に記載の方法。
【請求項16】
前記低純度赤血球タンパク質分画が、赤血球溶解産物を前記赤血球から得ること及び前記赤血球溶解産物を膜濾過に付すことによって得られる、請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
前記低純度赤血球タンパク質分画が、赤血球溶解産物を前記赤血球から得ること及び前記赤血球溶解産物を接線流濾過に付すことによって得られる、請求項
1に記載の方法。
【請求項18】
方法が、脱酸素工程の実施を更に含み、前記脱酸素工程が、工程(i)の前、工程(i)の後及び工程(ii)の前、工程(ii)の後及び工程(iii)の前、又は工程(iii)の後に実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項19】
ヘモグロビンを含む最終代用血液製剤を調製する方法であって、
(i)赤血球から得ることができるヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む低純度赤血球タンパク質分画を提供する工程であって、前記低純度赤血球タンパク質分画が、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含み、前記低純度赤血球タンパク質分画が、前記タンパク質分画中のタンパク質を化学的に修飾することができる反応物によって修飾され、前記反応物が、前記ヘモグロビンタンパク質分子間の分子間架橋と、前記ヘモグロビンタンパク質分子及び前記内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間の分子間架橋とを含む架橋タンパク質の形成を媒介し、それによって、代用血液調製物を形成する工程、並びに
(ii)前記代用血液調製物を、最終代用血液製剤の形成に適した少なくとも1種の他の成分により製剤化する工程、
を含
み、
前記架橋タンパク質の平均分子量が少なくとも約300kDaである、方法。
【請求項20】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されている、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されており、それにより、架橋タンパク質の平均分子量が約1,000kDaである、請求項
19に記載の方法。
【請求項22】
前記内在性非ヘモグロビンタンパク質総体がカルボニックアンヒドラーゼを含む、請求項
19~2
1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記カルボニックアンヒドラーゼが、前記内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大15%(モル/モル)を構成する、請求項2
2に記載の方法。
【請求項24】
前記代用血液調製物が透析濾過に付される、請求項
19に記載の方法。
【請求項25】
前記代用血液調製物が、約300kDa未満の質量を有するタンパク質の除去を許容する条件下で透析濾過に付される、請求項
19に記載の方法。
【請求項26】
前記代用血液調製物が、約1,000kDa未満の質量を有するタンパク質の除去を許容する条件下で透析濾過に付される、請求項
19に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1種の他の成分が、賦形剤、希釈剤又は担体である、請求項
19に記載の方法。
【請求項28】
前記最終代用血液製剤が、in-vivoに使用される製剤である、請求項
19に記載の方法。
【請求項29】
前記最終代用血液製剤が、ex-vivoに使用される製剤である、請求項
19に記載の方法。
【請求項30】
ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物であって、前記ヘモグロビンタンパク質分子が、架橋を介して分子間架橋されており、前記ヘモグロビンタンパク質分子が、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、前記低純度タンパク質分画が、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含
み、
前記架橋タンパク質の平均分子量が少なくとも約300kDaである、代用血液調製物。
【請求項31】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されている、請求項3
0に記載の代用血液調製物。
【請求項32】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されており、それにより、架橋タンパク質の平均分子量が約1,000kDaである、請求項3
0に記載の代用血液調製物。
【請求項33】
前記内在性非ヘモグロビンタンパク質総体がカルボニックアンヒドラーゼを含む、請求項3
0~3
2のいずれか一項に記載の代用血液調製物。
【請求項34】
前記カルボニックアンヒドラーゼが、前記内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の約0.2%(モル/モル)~15%(モル/モル)を構成する、請求項3
3に記載の代用血液調製物。
【請求項35】
前記架橋が還元性共有結合架橋である、請求項3
0に記載の代用血液調製物。
【請求項36】
前記還元性共有結合架橋がシッフ塩基である、請求項3
5に記載の代用血液調製物。
【請求項37】
前記架橋が還元シッフ塩基である、請求項3
5に記載の代用血液調製物。
【請求項38】
前記架橋が、前記低純度赤血球タンパク質分画中のタンパク質をポリアルデヒドと反応させて、シッフ塩基を形成し、続いて前記シッフ塩基を還元することによって形成されている還元シッフ塩基である、請求項
37に記載の代用血液調製物。
【請求項39】
前記ポリアルデヒドがグルタルアルデヒドである、請求項
38に記載の代用血液調製物。
【請求項40】
ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物を含む最終代用血液製剤であって、前記ヘモグロビンタンパク質分子が、架橋を介して分子間架橋されており、前記ヘモグロビンタンパク質分子が、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、前記低純度タンパク質分画が、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含
み、
前記架橋タンパク質の平均分子量が少なくとも約300kDaである、最終代用血液製剤。
【請求項41】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されている、請求項4
0に記載の最終代用血液製剤。
【請求項42】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されており、それにより、架橋タンパク質の平均分子量が約1,000kDaである、請求項4
0に記載の最終代用血液製剤。
【請求項43】
in-vivoに使用する最終血液製剤を調製するための、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物の使用であって、前記ヘモグロビンタンパク質分子が、架橋を介して分子間架橋されており、前記ヘモグロビンタンパク質分子が、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、前記低純度タンパク質分画が、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含
み、
前記架橋タンパク質分子の平均分子量が少なくとも約300kDaである、使用。
【請求項44】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されている、請求項4
3に記載の使用。
【請求項45】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されており、それにより、架橋タンパク質の平均分子量が約1,000kDaである、請求項4
3に記載の使用。
【請求項46】
ex-vivoに使用する最終血液製剤を調製するための、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物の使用であって、前記ヘモグロビンタンパク質分子が、架橋を介して分子間架橋されており、前記ヘモグロビンタンパク質分子が、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、前記低純度タンパク質分画が、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含
み、
前記架橋タンパク質の平均分子量が少なくとも約300kDaである、使用。
【請求項47】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されている、請求項
46に記載の使用。
【請求項48】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されており、それにより、架橋タンパク質の平均分子量が約1,000kDaである、請求項
46に記載の使用。
【請求項49】
ex-vivo投与のための、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む最終代用血液調製物の使用であって、前記ヘモグロビンタンパク質分子が、架橋を介して分子間架橋されており、前記ヘモグロビンタンパク質分子が、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、前記低純度タンパク質分画が、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含
み、
前記架橋タンパク質の平均分子量が少なくとも約300kDaである、使用。
【請求項50】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されている、請求項
49に記載の使用。
【請求項51】
前記赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)の前記ヘモグロビンタンパク質分子が架橋されており、それにより、架橋タンパク質の平均分子量が約1,000kDaである、請求項
49に記載の使用。
【請求項52】
前記最終血液調製物が、臓器又は組織をex-vivo保存するために使用される、請求項
49に記載の使用。
【請求項53】
前記最終血液調製物が、臓器又は組織を静的又は動的モードでex-vivo保存するために使用される、請求項
49に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
特許協力条約の本出願は、2017年7月18日に出願された米国特許仮出願第62/534,000号の特許法119条(e)下での利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示される分野
本開示は、一般に、代用血液及び代用血液を作製する方法、特にヘモグロビンベース代用血液を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の段落は、本開示の背景として提供される。しかし、これらは、ここで考察されるいずれかのものが従来技術である又は当業者の知識の一部であることを容認するものではない。
【0004】
生体及び臓器に適合した酸素輸送用の媒体が有用である状況が、数多く存在する。例えば、全血又は血液分画を、事故被害者の緊急処置又は外科手術手技の実施中に使用して、酸素を患者の周辺組織、例えば、肝臓、腎臓及び肺に送達して、連続した適切な酸素供給を確実にすることができる。逆に、臓器が、その必要性を満たすには不十分にしか酸素供給されないとき、貧血性低酸素症が、細胞損傷をもたらし、最終的には細胞及び組織の死をもたらす。血液及び血液分画をex-vivo使用して、臨床的臓器又は組織移植が意図される臓器及び組織を灌流することもできる。しかし、血液ドナー不足及び血液媒介病原体(blood-borne pathogenic agent)に関連する安全性への懸念に起因して、血液供給は、とりわけ開発途上国において、たびたび必要量に至っていない。したがって、適切な量の酸素を、不適当な副作用を有することなく生体又は組織に運搬又は送達することは、極めて望ましいことが十分に理解される。
【0005】
前述の必要性に対処するため、血液固有の酸素運搬特性を模倣する代用血液を調製するいくつかの技術が発展してきた。当該技術に既知の一組の技術は、酸素運搬タンパク質ヘモグロビンを含有する、赤血球(erythrocyte)としても知られている赤血球(red blood cell)の調製を伴う。しかし、赤血球調製物を代用血液として使用することに関連して大きな障害があり、伝染性血液媒介疾患汚染菌、例えば、B型肝炎及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)の存在、特定の血液型を入手できないこと、並びにそのような赤血球調製物を長期間にわたって貯蔵できないことが挙げられる。
【0006】
前述の障害を克服するため、代替的な開発努力が、代用血液として使用するために純粋なヘモグロビン調製物を得る方向に向けられてきた。しかし、ヘモグロビン調製物が最初に臨床評価のために利用可能になったとき、これらの調製物における赤血球間質脂質の存在が原因の重篤な腎毒性を引き起こしたので、これらの調製物が不安定であることが明らかとなった。次いで、間質脂質を除去するための方法が開発され、間質脂質無含有ヘモグロビン調製物は、腎毒性には対処したものの、最適ではない酸素送達特性を呈し、更に大きく低減された血管内半減期を呈した。今度は、これらの短所が、代用血液として使用するために、ヘモグロビンベース酸素担体(一般的にHBOCとも称される)としても既知のヘモグロビンン誘導体の開発につながった。HBOC調製物の製造は、一般に、高純度のヘモグロビン溶液を得ること、続いてヘモグロビンオリゴマーを架橋して、ポリマーヘモグロビンを含有する調製物を得ることを伴う。
【0007】
当該技術に既知の現行のHBOC製造プロセスにおける1つの制限は、高純度のヘモグロビン調製物の製造を伴うことである。高純度のヘモグロビン調製物の要件は、HBOC調製物の製造プロセスに途方もない複雑さを強いることになり、高純度HBOC調製物の製造施設の建築及び既知の製造プロセスの稼働に関連する費用は、既知のHBOC製造プロセスを実質的に非経済的にしている。
【0008】
多くの現行のHBOC製造方法に対する1つの更に特別な制限は、既知のヘモグロビン重合技術が、化学反応物の水素化ホウ素ナトリウム(BH4
-)の使用を伴い、その化学反応が水素ガスの放出をもたらすという事実に照らして、この薬剤を大規模製造プロセスに用いるのは特に実用的ではないことである。水素ガスの存在に関連する危険性をHBOC製造施設に限定するため、HBOCの製造会社は、特殊なpH条件等の注意深く制御された反応条件の実行、並びに難燃性通気孔及び水素ガスの蓄積を制限するための不活性ガスの流れ等の綿密な安全状態の確立を必要とする。したがって、このことは、HBOC製品の経済的な製造を大きく妨げる製造工程となっている。
【0009】
多くの既知のHBOC製造方法におけるもう1つの更に特別な制限は、製造プロセスの過程で、ある特定の量のヘモグロビンが、メトヘモグロビンとして知られている変異ヘモグロビンに変換されることである。メトヘモグロビンでは、酸素への分子結合部位として機能する、タンパク質のヘム基内の鉄が、二価鉄(Fe2+)の状態ではなく、三価鉄(Fe3+)の状態で存在する。メトヘモグロビンは、酸素に結合することができず、酸素担体として機能することができない。
【0010】
当該技術に既知の酸素運搬媒体を提供する別の代替的手法は、酸素を溶解できるペルフルオロカーボン(perflurocarbon)ベース合成分子の使用を伴う。合成炭素-フッ素分子は、化学的に不活性であり、製造するのが直接的であるが、これらの酸素溶解性はヘモグロビンと比べて低く、ペルフルオロカーボン調製物は、実質的に水と不混和性であり、したがって乳化を必要とし、そのことがペルフルオロカーボン調製物を不安定にし、貯蔵することを困難にしている。
【0011】
このように、代用血液調製物を得ることができたとしても、そのような調製物の製造技術に多くの障害が残っていることは明らかである。したがって、改善された代用血液調製物及びそのような代用血液を作製する方法の必要性、特に、ヘモグロビン含有代用血液調製物を作製する改善された方法の必要性、並びに経済的で安全及び効果的なヘモグロビン含有代用血液調製物の必要性が当該技術に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第5,084,558号
【文献】米国特許第5,296,465号
【文献】米国特許第5,955,581号
【非特許文献】
【0013】
【文献】Creteur,J.ら、「Diaspirin cross-linked hemoglobin improves oxygen extraction capabilities in endotoxic shock」、J Appl Physiol、2000年、89:1437~1444頁
【文献】Vandegriff KDら、「MP4, a new nonvasoactive PEG-Hb conjugate」、Transfusion、2003年:43巻、4版、509~16頁
【文献】Vandegriff KD及びWinslow R.M.、「Hemospan:Design Principles for a New Class of Oxygen Therapeutic」Artif Organs、2009年;33巻、133-138頁
【文献】W.R.Light、「Oxygen Transport:The New Physiology」、ESCVS International Congress、2011年
【文献】Harrington,J.P.及びWollocko,H.「Molecular Design Properties of OxyVita Hemoglobin,a New Generation Therapeutic Oxygen Carrier:A Review」、J.Funct.Biomaterial.2011年、2巻、414~424頁.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下の段落は、以下のより詳細な記載を読者に紹介することを意図しており、本開示の特許請求される主題を定義又は制限することを意図していない。
【0015】
1つの広い態様において、本開示は、血液及び代用血液に関する。
【0016】
別の広い態様において、本開示は、ヘモグロビン含有代用血液調製物を作製する方法に関する。
【0017】
したがって、一態様において、本明細書の技術によると、本開示は、少なくとも一実施形態では、ヘモグロビンを含む代用血液調製物を調製する方法であって、
(i)血液から赤血球を単離する工程、
(ii)ヘモグロビンタンパク質分子と内在性非ヘモグロビンタンパク質総体とを含む低純度赤血球タンパク質分画を、赤血球から単離する工程であって、低純度赤血球タンパク質分画が、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む、工程、並びに
(iii)低純度赤血球タンパク質分画を、タンパク質分画中のタンパク質を化学的に修飾することができる反応物と接触させ、それによって、反応物が、ヘモグロビンタンパク質分子間の分子間架橋と、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間の分子間架橋とを含む架橋タンパク質の形成を媒介し、それによって、代用血液調製物を形成する工程、
を含む方法を提供する。
【0018】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0019】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は約1,000kDaである。
【0020】
少なくとも一実施形態において、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体は、カルボニックアンヒドラーゼを含むことができ、カルボニックアンヒドラーゼは、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約15%(モル/モル)を構成する。
【0021】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中のタンパク質を修飾することができる反応物は、還元性(reducible)共有結合架橋を形成する可能性があってもよい。
【0022】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中のタンパク質を修飾することができる反応物は、還元性共有結合架橋を形成する可能性があってもよく、還元性共有結合架橋はシッフ塩基である。
【0023】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中のタンパク質を化学的に修飾することができる反応物は、ポリアルデヒドであってもよく、ポリアルデヒドを、ポリアルデヒドのアルデヒド基とタンパク質のアミノ基との化学反応を許容する反応条件下で反応させて、ヘモグロビンタンパク質分子間、並びにヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間に、複数の共有結合分子間架橋を形成することができる。
【0024】
少なくとも一実施形態では、ポリアルデヒドとの反応の後に、架橋タンパク質を還元剤と反応させて、架橋を還元して、還元架橋(reduced cross-linkage)を形成することができる。
【0025】
少なくとも一実施形態において、ポリアルデヒドはグルタルアルデヒドでありうる。
【0026】
少なくとも一実施形態において、還元性共有結合架橋は、シッフ塩基であってもよく、還元共有結合架橋は、第二級アミンであってもよい。
【0027】
少なくとも一実施形態において、還元剤はシアノ水素化ホウ素でありうる。
【0028】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中のタンパク質を修飾することができる反応物は、赤血球タンパク質分画中のタンパク質を分子間及び分子内で架橋することができる反応物でありうる。
【0029】
少なくとも一実施形態において、赤血球は、透析濾過により血液から単離されうる。
【0030】
少なくとも一実施形態において、赤血球を低浸透圧ショックに付すことにより、赤血球を溶解して、赤血球溶解産物を得ることができ、赤血球溶解産物から低純度赤血球タンパク質分画を得ることができる。
【0031】
少なくとも一実施形態において、低純度赤血球タンパク質分画は、赤血球溶解産物を赤血球から得ること及び赤血球溶解産物を膜濾過に付すことによって、得ることができる。
【0032】
少なくとも一実施形態において、低純度赤血球タンパク質分画は、赤血球溶解産物を赤血球から得ること及び赤血球溶解産物を接線流濾過に付すことによって、得ることができる。
【0033】
少なくとも一実施形態において、方法は、脱酸素工程の実施を更に含むことができ、脱酸素工程は、工程(i)の前、工程(i)の後及び工程(ii)の前、工程(ii)の後及び工程(iii)の前、又は工程(iii)の後に実施される。
【0034】
別の態様において、本開示は、少なくとも一実施形態では、ヘモグロビンを含む最終代用血液製剤を調製する方法であって、
(i)赤血球から得ることができるヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む低純度赤血球タンパク質分画を提供する工程であって、低純度赤血球タンパク質分画が、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含み、低純度赤血球タンパク質分画が、タンパク質分画中のタンパク質を化学的に修飾することができる反応物によって修飾され、反応物が、ヘモグロビンタンパク質分子間の分子間架橋と、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間の分子間架橋とを含む架橋タンパク質の形成を媒介し、それによって、代用血液調製物を形成する工程、並びに
(ii)代用血液調製物を、最終代用血液製剤の形成に適した少なくとも1種の他の成分により製剤化する工程、
を含む方法を提供する。
【0035】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0036】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は約1,000kDaである。
【0037】
少なくとも一実施形態において、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体は、カルボニックアンヒドラーゼを含むことができ、カルボニックアンヒドラーゼは、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大15%(モル/モル)を構成する。
【0038】
少なくとも一実施形態では、代用血液調製物を透析濾過に付すことができる。
【0039】
少なくとも一実施形態では、代用血液調製物を、約300kDa未満の質量を有するタンパク質の除去を許容する条件下で透析濾過に付すことができる。
【0040】
少なくとも一実施形態では、代用血液調製物を、約1,000kDa未満の質量を有するタンパク質の除去を許容する条件下で透析濾過に付すことができる。
【0041】
少なくとも一実施形態において、少なくとも1種の他の成分は、賦形剤、希釈剤又は担体でありうる。
【0042】
少なくとも一実施形態において、最終代用血液製剤は、in-vivoに使用される製剤である。
【0043】
少なくとも一実施形態において、最終代用血液製剤は、ex-vivoに使用される製剤である。
【0044】
別の態様において、本開示は、少なくとも一実施形態では、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0045】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0046】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は約1,000kDaである。
【0047】
少なくとも一実施形態において、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体は、カルボニックアンヒドラーゼを含むことができ、カルボニックアンヒドラーゼは、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の約0.2%(モル/モル)~15%(モル/モル)を構成する。
【0048】
少なくとも一実施形態において、架橋は還元性共有結合架橋でありうる。
【0049】
少なくとも一実施形態において、還元性共有結合架橋はシッフ塩基でありうる。
【0050】
少なくとも一実施形態において、架橋は還元シッフ塩基でありうる。
【0051】
少なくとも一実施形態において、架橋は還元シッフ塩基であってもよく、低純度赤血球タンパク質分画中のタンパク質をポリアルデヒドと反応させて、シッフ塩基を形成し、続いてシッフ塩基を還元することによって形成されている。
【0052】
少なくとも一部の実施形態において、ポリアルデヒドはグルタルアルデヒドでありうる。
【0053】
別の態様において、本開示は、少なくとも一実施形態では、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物を含む最終代用血液製剤を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0054】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0055】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は約1,000kDaである。
【0056】
少なくとも一実施形態において、最終代用血液製剤は、本開示のいずれかの方法により作製された代用血液調製物を含むことができる。
【0057】
別の態様において、本開示は、少なくとも一実施形態では、in-vivoに使用する最終血液製剤を調製するための、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物の使用を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0058】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質分子の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0059】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は約1,000kDaである。
【0060】
少なくとも一実施形態において、代用血液調製物は、本開示のいずれかの方法により作製されうる。
【0061】
少なくとも一実施形態において、本開示は、ex-vivoに使用する最終血液製剤を調製するための、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物の使用を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0062】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0063】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は約1,000kDaである。
【0064】
少なくとも一実施形態において、代用血液調製物は、本開示のいずれかの方法により作製されうる。
【0065】
別の態様において、本開示は、少なくとも一実施形態では、in-vivo投与のための、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物を含む最終代用血液製剤の使用を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0066】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0067】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は約1,000kDaである。
【0068】
少なくとも一実施形態において、最終血液調製物は、循環系への注射によってin-vivo投与されてもよい。
【0069】
少なくとも一実施形態において、最終血液調製物は、静脈内又は動脈内注射によってin-vivo投与されてもよい。
【0070】
少なくとも一実施形態において、最終代用血液製剤は、本開示のいずれかの方法により作製された任意の代用血液調製物を含むことができる。
【0071】
少なくとも一実施形態において、本開示は、少なくとも一実施形態では、ex-vivo投与のための、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む最終代用血液調製物の使用を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0072】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0073】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は約1,000kDaである。
【0074】
少なくとも一実施形態において、最終血液調製物は、臓器又は組織をex-vivo保存するために使用できる。
【0075】
少なくとも一実施形態において、最終血液調製物は、臓器又は組織を静的又は動的モードでex-vivo保存するために使用できる。
【0076】
少なくとも一実施形態において、最終代用血液製剤は、本開示のいずれかの方法により作製された代用血液調製物を含むことができる。
【0077】
別の態様において、本開示は、必要性のある対象に、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物を含む最終代用血液製剤の治療有効量を投与する方法を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0078】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0079】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は約1,000kDaである。
【0080】
少なくとも一実施形態において、最終血液調製物は、循環系への注射によって投与されてもよい。
【0081】
少なくとも一実施形態において、最終血液調製物は、静脈内又は動脈内注射によって投与されてもよい。
【0082】
少なくとも一実施形態において、最終代用血液製剤は、本開示のいずれかの方法により作製された代用血液調製物を含むことができる。
【0083】
本開示の他の特徴及び利点は、以下の詳細な記載によって明白となる。しかし、詳細な記載は、本開示の好ましい実行を示しているが、本開示の精神及び範囲内の様々な変更及び改変は、詳細な記載から当業者には明白となるので、説明のためだけに提示されていることが理解されるべきである。
【0084】
本明細書に記載されている様々な例示実施形態をより良好に理解するため、及びこれらの様々な実施形態がどのように実施されうるかをより明確に示すため、少なくとも1つの例示実施形態を示す添付の図面を単なる例として参照して、ここに図面を簡単に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1A】グルタルアルデヒドのモノマー形態及びグルタルアルデヒドのポリマー形態の化学式をそれぞれ描写する。
【
図1B】グルタルアルデヒドのモノマー形態及びグルタルアルデヒドのポリマー形態の化学式をそれぞれ描写する。
【
図2】グルタルアルデヒドを使用して、ヘモグロビンを、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に存在するタンパク質と架橋させ、それによってシッフ塩基を形成する化学反応例を描写する。
【
図3A】架橋タンパク質の4つの異なる例示的立体配置を描写する。
図3A、3B、3C及び3Dのそれぞれにおいて、「H」は、ヘモグロビンタンパク質を表し、「E」は、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に存在するタンパク質を表し、「G」、「G'」及び「G"」は架橋剤を表す。
【
図3B】架橋タンパク質の4つの異なる例示的立体配置を描写する。
図3A、3B、3C及び3Dのそれぞれにおいて、「H」は、ヘモグロビンタンパク質を表し、「E」は、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に存在するタンパク質を表し、「G」、「G'」及び「G"」は架橋剤を表す。
【
図3C】架橋タンパク質の4つの異なる例示的立体配置を描写する。
図3A、3B、3C及び3Dのそれぞれにおいて、「H」は、ヘモグロビンタンパク質を表し、「E」は、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に存在するタンパク質を表し、「G」、「G'」及び「G"」は架橋剤を表す。
【
図3D】架橋タンパク質の4つの異なる例示的立体配置を描写する。
図3A、3B、3C及び3Dのそれぞれにおいて、「H」は、ヘモグロビンタンパク質を表し、「E」は、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に存在するタンパク質を表し、「G」、「G'」及び「G"」は架橋剤を表す。
【
図4】グルタルアルデヒド架橋タンパク質においてシッフ塩基を還元し、それにより、還元剤としてシアノ水素化ホウ素を使用して第二級アミンを形成する化学反応例を描写する。
【
図5】本開示の実施形態によって代用血液調製物及び製剤を調製する方法の工程の概略図を描写する。
【
図6】本開示の方法の工程を実施するアセンブリ例、特に、赤血球溶解産物から低純度赤血球タンパク質分画を調製するアセンブリの概略図を描写する。
【
図7】本開示の実施形態によって作製された代用血液調製物例をラットにin-vivo投与することを伴う実験の実施から得たグラフを描写する。傷害の後、続く代用血液調製物(表示:VIR-VET Avg)及び乳酸リンゲル液(表示:LRS Avg)の投与の時間の関数として、間質内酸素圧を示す。
【
図8】本開示の実施形態による血液調製物例をラットにin-vivo投与することを伴う実験の実施から得たグラフを描写する。傷害の後、続く血液調製物(表示:VTB)及び乳酸リンゲル液(表示:LRS)の投与の時間の関数として、ラットの生存率を示す。
【
図9】本開示の実施形態によって作製された血液調製物例をラットにin-vivo投与することを伴う実験の実施から得た顕微鏡画像を描写する。投与前(表示:ベースライン)、投与の時点(表示:10%ボーラス0分)及び投与の120分後(表示:10%ボーラス120分)での筋肉組織血管の画像を示す。
【
図10A】本開示の実施形態によって作製された血液調製物例をブタ肝臓にex-vivo灌流することを伴う実験の実施から得た顕微鏡画像を描写する。画像は、灌流の開始前(
図10A)及び灌流の12時間後(
図10B)に10×及び20×倍率で示されている。
【
図10B】本開示の実施形態によって作製された血液調製物例をブタ肝臓にex-vivo灌流することを伴う実験の実施から得た顕微鏡画像を描写する。画像は、灌流の開始前(
図10A)及び灌流の12時間後(
図10B)に10×及び20×倍率で示されている。
【
図11】ポリアクリルアミドゲルにおいて、ある特定のタンパク質を含有する試料の分離を伴う実験の実施によって得た、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動ゲルを描写する。タンパク質含有試料は、本開示による調製物例から得られる。レーン1:着色分子サイズマーカー、レーン2:精製ヘモグロビン、ロット番号VTB-004、レーン3:精製ヘモグロビン、ロット番号VTB-009、レーン4:ヘモグロビン及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体(非架橋)を含む300kDaの赤血球タンパク質濾液例、レーン5:架橋ヘモグロビン及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む架橋代用血液調製物例、ロット番号VTB009、並びにレーン6:架橋ヘモグロビン及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む架橋代用血液調製物例、ロット番号VTB007が示されている。
【
図12A】精製ヘモグロビン(
図12A)、架橋ヘモグロビン及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む代用血液調製物例(
図12B)、並びに分子サイズマーカー(
図12C)の比較を示すサイズ排除ゲル濾過クロマトグラフィー実験のトレースを描写する。
【
図12B】精製ヘモグロビン(
図12A)、架橋ヘモグロビン及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む代用血液調製物例(
図12B)、並びに分子サイズマーカー(
図12C)の比較を示すサイズ排除ゲル濾過クロマトグラフィー実験のトレースを描写する。
【
図12C】精製ヘモグロビン(
図12A)、架橋ヘモグロビン及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む代用血液調製物例(
図12B)、並びに分子サイズマーカー(
図12C)の比較を示すサイズ排除ゲル濾過クロマトグラフィー実験のトレースを描写する。
【
図13】本開示の実施形態によって作製された血液調製物例で3個のブタ肝臓をex-vivo灌流することを伴う実験の実施から得た棒グラフを描写する。時間の関数として(灌流開始の3時間、6時間及び9時間後)のH
2O
2産生を示す。P1が表示されているバーは、除去前の肝臓のH
2O
2産生のin-vivoレベルを表す。BTが表示されているバーは、初期灌流開始時のH
2O
2産生のex-vivoレベルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図面は、以下の詳細な記載と一緒になって、本開示がどのように実際に実施されうるかを当業者に明らかにする。
【0087】
様々なプロセス、方法及び組成物が下記に記載されて、特許請求される主題の実施形態の例を提供している。下記に記載されている実施形態で、任意の特許請求される主題を制限するものはなく、任意の特許請求される主題は、下記に記載されているものと異なるプロセス、方法又は組成物を包含しうる。特許請求される主題は、下記に記載されているプロセス、方法若しくは組成物の全ての特徴を有する、又は下記に記載されているプロセス、方法若しくは組成物の多数に共通の特徴を有する任意のプロセス、方法又は組成物に限定されない。下記に記載されているプロセス、方法又は組成物は、任意の特許請求される主題の実施形態でないことが可能である。本文書において特許請求されていない、下記に記載されているプロセス、方法又は組成物に開示されている任意の主題は、別の保護された法律文書、例えば、継続特許出願の主題である可能性があり、出願人、発明者又は権利者は、本文書における開示よって、任意のそのような主題を放棄、権利放棄又は公共に提供することを意図しない。
【0088】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、特に文脈から明白に示されない限り、「a」、「an」及び「the」等の単数形は複数参照を含み、その逆も同じである。本明細書の全体を通して、特に指示されない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、排他的ではなく包括的に使用され、そのため、記述された整数又は整数の群は、1つを超える他の非記述整数又は整数の群を含んでもよい。用語「又は(or)」は、例えば「いずれか(either)」により修飾されない限り、包括的である。用語「及び/又は(and/or)」は、包括的な「又は(or)」を表すことが意図される。すなわち、「X及び/又はY」は、例えば、X又はY又はその両方を意味することが意図される。更なる例として、X、Y及び/又はZは、X又はY又はZ又はこれらの任意の組合せを意味することが意図される。
【0089】
範囲が、分子量等の物理的な特性又は化学式等の化学的特性について本明細書に使用されるとき、範囲及びその特定の実施形態の全ての組合せ及び部分的組合せが含まれることが意図される。操作実施例以外に、又は他に指示のない場合、本明細書で使用される成分の量又は反応条件を表す全ての数値は、全ての場合において用語「約(about)」により修飾されていると理解されるべきである。用語「約」は、数値又は数値範囲を参照するとき、参照される数値又は数値範囲が、実験変動の範囲内(又は統計的実験誤差の範囲内)の近似値であること、したがって、数値又は数値範囲が記述された数値又は数値範囲の1%~15%で変動しうることを意味し、文脈から容易に認識される。更に、本明細書に記載されている値の任意の範囲は、範囲の極限値を具体的に含むことが意図され、任意の中間値又は所定範囲内の部分範囲、並びにそのような全ての中間値及び部分範囲は、個別及び具体的に開示されている(例えば、1~5の範囲は1、1.5、2、2.75、3、3.90、4及び5を含む)。同様に、「実質的に」及び「およそ」等の程度についての他の用語は、本明細書で使用されるとき、最終結果が有意に変化しないような、修飾された用語の妥当な偏差量を意味する。これらの程度の用語は、この偏差が、修飾される用語の意味を否定しない場合、修飾された用語の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0090】
特に定義されない限り、本明細書に記載されている製剤に関連する化学及び技術用語は、当業者に一般に理解される意味を有する。本明細書に使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のためだけのものであり、本発明の範囲を制限することを意図せず、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0091】
本明細書に参照される全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかもそれぞれ個別の刊行物、特許又は特許出願が、参照によりその全体が組み込まれることが明確に示されるのと同じ程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0092】
定義
用語「アルデヒド」は、本明細書で使用されるとき、-CH=Oにより表される基を有する化合物を指す。
【0093】
用語「カルボニックアンヒドラーゼ」は、構成内在性赤血球タンパク質を指し、全ての天然に生じる変異体が挙げられるヒトのカルボニックアンヒドラーゼ、並びに他の脊椎動物から得ることができる又は得たカルボニックアンヒドラーゼを含む。
【0094】
用語「化学修飾」は、本明細書で使用されるとき、反応物分子が、1個以上の新たに形成された共有結合を含む生成物分子に変換されるように、反応物分子を使用し、生成物分子の形成をもたらす化学反応の実施を指す。
【0095】
用語「共有結合」、「共有結合的連結(covalent linkage)」及び「共有結合的連結(covalent link)」は、本明細書において実質的に交換可能に使用されてもよく、化学結合を参照すると、電子が2個の原子間で共有されている化学結合を指し、追加の電子が加えられることによって還元されうる還元性化学結合を含む。
【0096】
用語「架橋(cross-link)」及び「架橋(cross-linkage)」は、本明細書において実質的に交換可能に使用されてもよく、2個の原子間に、例えば架橋分子を介して形成された任意の化学連結を指す。架橋は、分子内架橋又は分子間架橋でありうる。
【0097】
用語「内在性非ヘモグロビンタンパク質総体」は、本明細書で使用されるとき、ヘモグロビン以外の、赤血球調製物における任意及び全ての構成タンパク質を指す。
【0098】
用語「赤血球(erythrocyte」又は「赤血球(red blood cell)」又は「RBC」は、本明細書において交換可能に使用されてもよく、赤血球を含有する非有核ヘモグロビンを意味し、一般に血液の赤い色の原因である。
【0099】
用語「溢出」は、本明細書で使用されるとき、ヘモグロビン等の血液に存在する分子の、血管から血管外組織ヘの損失の過程を指す。
【0100】
用語「ex-vivo」は、本明細書で使用されるとき、代用血液製剤の使用に関して、酸素を、生存対象の外側にある臓器、組織又は細胞に輸送及び送達するための使用を指す。
【0101】
「代用血液調製物を製剤化して、最終代用血液製剤を形成する」とは、代用血液調製物を希釈剤、賦形剤又は担体が挙げられるが、これらに限定されない少なくとも1種の他の成分と接触させ、最終代用血液製剤が形成されるまで混合、均質化又は調製することを意図する。
【0102】
用語「最終代用血液製剤」は、本明細書で使用されるとき、ex-vivo又はin-vivoでの使用に適した代用血液調製物を含む完全製剤化代用血液製剤を指す。
【0103】
用語「グルタルアルデヒド」は、本明細書で使用されるとき、
図1A及び
図1Bに示されている化合物を指し、
図1Aに示されているモノマー形態のグルタルアルデヒド及び
図1Bに示されているポリマー形態のグルタルアルデヒドを含み、
図1Bにおいて、nは正整数であり、nは、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15である。
【0104】
用語「ヘモグロビン」及び「ヘモグロビン分子」は、本明細書において交換可能に使用され、酸素を生体に輸送する赤血球内に含有されたタンパク質を指す。ヘモグロビンの各分子は、4個のサブユニット、2個のα鎖及び2個のβ鎖を有し、四量体構造に配置されている。各サブユニットは、1個のヘム基も含有し、ヘム基は酸素に結合する鉄含有中心である。したがって、各ヘモグロビン分子は、4個の酸素分子に結合することができる。本明細書に使用されるとき、この用語自体は、天然に生じる変異体を含む未変性ヘモグロビンを指し、任意の生体から得ることができるヘモグロビンを更に含み、哺乳類及び鳥類のヘモグロビン、例えば、ヒトヘモグロビン、ウシヘモグロビン、ヒツジヘモグロビン及びブタヘモグロビンが限定されることなく挙げられる脊椎動物ヘモグロビンが、限定されることなく挙げられる。
【0105】
用語「分子間架橋(intermolecular cross-link)」及び「分子間架橋(intermolecular cross-linkage)」は、本明細書において交換可能に使用されてもよく、2個の分子の間、例えば2個のヘモグロビン分子の間、又はヘモグロビン分子と、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に存在するタンパク質との間の、非未変性で存在する架橋を指す。
【0106】
用語「分子内架橋(intramolecular cross-link)」又は「分子内架橋(intramolecular cross-linkage)」は、本明細書において交換可能に使用されてもよく、分子内、例えば、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に存在するタンパク質中の2個のアミノ酸の間、ヘモグロビン分子の同じα鎖内の2個のアミノ酸の間、又は同じヘモグロビン分子のα鎖のアミノ酸とβ鎖のアミノ酸との間に形成された、非未変性で存在する架橋を指す。
【0107】
用語「in-vivo」は、本明細書で使用されるとき、代用血液製剤の使用に関して、対象、すなわち、ヒト又は動物への投与を指す。
【0108】
用語「ポリアルデヒド」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも2個のアルデヒド基を有する化合物を指し、グルタルアルデヒドが挙げられるが、これに限定されない。
【0109】
用語「シッフ塩基」は、本明細書で使用されるとき、イミン連結としても知られているアゾメチン架橋-CH=N-を含有し、いずれかの末端に直接結合している炭素原子を有する、任意の化合物を指す。アゾメチン架橋は、脂肪族置換基と芳香族置換基の両方に結合することができる。この用語は、アゾメチン連結の水素が炭素原子に置き換えられている類似の化合物を含むことも意図され、例えば、下記である。
【0110】
【0111】
用語「スーパーオキシドジスムターゼ」は、構成内在性赤血球タンパク質を指し、全ての天然に生じる変異体が挙げられるヒトのスーパーオキシドジスムターゼ、並びに他の脊椎動物から得ることができる又は得たスーパーオキシドジスムターゼを含む。
【0112】
「低純度」は、本明細書で使用されるとき、赤血球タンパク質分画に関して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体が、赤血球タンパク質分画に存在する全タンパク質の少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約0.3%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約0.4%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約0.5%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約1%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約3%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約4%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約5%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約6%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約7%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約8%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくも約9%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約10%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、又は少なくとも約15%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)を構成する赤血球タンパク質分画を指す。
【0113】
「実質的に純粋」は、本明細書で使用されるとき、本明細書において実体、例えば、細胞又は化合物を記載し、細胞又は化合物は、天然に不随している構成成分から分離されている。典型的には、実体は、試料中の少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、95%、96%、97%又は98%、最も好ましくは少なくとも99%(体積、湿潤若しくは乾燥質量、又はモルパーセント若しくはモル分率に基づく)の総物質が目的の実体であるとき、実質的に純粋である。赤血球調製物を参照すると、この用語は、非赤血球血液細胞、例えば白血球及び血小板からの分離を更に指しており、5%、4%、3%、2%又は1%未満の非赤血球血液細胞を含む調製物が挙げられる。純度は、任意の適切な方法、例えば、タンパク質の場合ではクロマトグラフィー、ゲル電気泳動又はHPLC分析により、赤血球の場合ではフローサイトメトリーにより測定することができる。
【0114】
一般的実施
概観としては、低純度ヘモグロビン調製物を使用して代用血液を調製できることが、驚くべきことに実現された。本開示の調製物は、赤血球を得ること及び赤血球から低純度タンパク質調製物を調製することによって製造されうる。低純度タンパク質調製物は、ヘモグロビンの他に、相当量の内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含有するように調製される。本開示の技術は、複雑な精製方法を避けて高純度のヘモグロビンを得ることによって、既知の代用血液製造技術に対して複雑さが著しく少ない代替案を表す。更に、本開示の技術によると、水素化ホウ素(BH4
-)の使用を避けることが可能である。このように、製造操作は、水素化ホウ素が使用されるときに通常必要となる予防措置を考慮する必要がない。
【0115】
実施形態では、低純度タンパク質調製物を、調製物中のタンパク質を化学的に修飾できる反応物と接触させて、架橋タンパク質を得ることができる。架橋タンパク質は、ヘモグロビンタンパク質分子間の分子間架橋と、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間の分子間架橋とを含むことができる。赤血球タンパク質分画中の相当量のヘモグロビンタンパク質分子は、架橋されてもよく、それにより、実施形態において、調製物中の架橋タンパク質の平均分子量は、例えば少なくとも約300kDaでありうる。このようにして得られた新規代用血液調製物を、最終血液製剤の調製に使用することができる。
【0116】
本開示の代用血液調製物は、組織酸素供給を提供することができ、それによって組織の生存を媒介することができる。本開示の調製物は、低いコロイド浸透圧(COP)及び高い粘度を呈することによって特徴付けられると更に言うことができる。本開示の調製物を含む製剤が、それを必要とする対象に投与されるとき、これらの特質は、血管収縮とも称される生理学的過程である血管の狭小を限定的にする若しくは無しにする、及び/又は溢出とも称される生理学的過程である血管からのヘモグロビンの漏出を限定的にする若しくは無しにすると考えられる。更に、本開示の調製物中の反応性酸素種の形成は、制限されると言うことができ、したがって血管の内皮グリコカリックスへの損傷を最小限することができる。本開示の代用血液調製物が実現した、なお更に有益な特徴は、調製物中の限定された量のメトヘモグロビンの存在である。このように、本開示の方法は、in-vivoでの使用、例えば外科手術手技のため、並びにex-vivoでの使用、例えば組織及び臓器を移植用に保存するための最終代用血液製剤の調製に使用することができる、新規代用血液調製物を製造する安全、容易及び経済的な手段を提供する。
【0117】
以下では、選択された実施形態が、図面を説明の目的で参照しながら記載される。したがって、本開示は、少なくとも一実施形態において、ヘモグロビンを含む代用血液調製物を調製する方法であって、
(i)血液から赤血球を単離する工程、
(ii)ヘモグロビンタンパク質分子と内在性非ヘモグロビンタンパク質総体とを含む低純度赤血球タンパク質分画を、赤血球から単離する工程であって、低純度赤血球タンパク質分画が、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む工程、並びに
(iii)低純度赤血球タンパク質分画を、タンパク質分画中のタンパク質を化学的に修飾することができる反応物と接触させ、それによって、反応物が、ヘモグロビンタンパク質分子間の分子間架橋と、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間の分子間架橋とを含む架橋タンパク質の形成を媒介し、それによって、代用血液調製物を形成する工程、
を含む方法を提供する。
【0118】
一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0119】
一実施形態において、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体は、カルボニックアンヒドラーゼを含むことができ、カルボニックアンヒドラーゼは、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大15%(モル/モル)を構成する。
【0120】
一態様では、最初に、ヘモグロビンタンパク質及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む低純度赤血球タンパク質分画を得ることができる。以下では、低純度赤血球タンパク質分画の調製物が簡潔に一般用語により記載される。低純度赤血球タンパク質分画を得るために選択された実施形態が、
図5及び
図6を参照しながら更に詳細に本明細書以降に更に記載される。
【0121】
本明細書によると、低純度赤血球タンパク質分画は、好ましくはウイルス疾患汚染菌を含まない、ヒト血液が挙げられるが、これに限定されない血液から、本明細書以降に記載される方法又は赤血球の調製に適した任意の他の方法を使用して調製された赤血球調製物、好ましくは実質的に純粋な赤血球調製物から単離され得る。低純度赤血球タンパク質分画は、調製物中の赤血球を溶解し、その後、ヘモグロビン及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含むタンパク質分画を、溶解産物から、例えば、本明細書以降に記載される濾過方法又は任意の適切なタンパク質分画技術を使用して分離することによって、赤血球調製物から得ることができる。本明細書によると、得られた低純度赤血球タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約0.3%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約0.4%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約0.5%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約1%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約3%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約4%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約5%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約6%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約7%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約8%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくも約9%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、少なくとも約10%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)、又は少なくとも約15%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含み、残りがヘモグロビンを含む、タンパク質分画である。
【0122】
一実施形態において、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体は、次の内在性非ヘモグロビンタンパク質総体タンパク質:カルボニックアンヒドラーゼ及び/又はスーパーオキシドジスムターゼを含むことができる。
【0123】
一実施形態において、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体は、約0.2%(モル/モル)~約15%(モル/モル)のカルボニックアンヒドラーゼを含むことができる。
【0124】
一態様では、低純度赤血球タンパク質分画を、赤血球タンパク質分画中のタンパク質を化学的に修飾できる反応物と接触させ、それによって架橋タンパク質の形成を媒介することができる。
【0125】
一実施形態において、反応物は、ヘモグロビンタンパク質分子間の分子間架橋と、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間の分子間架橋とを含む架橋タンパク質の形成を媒介することができる。
【0126】
一実施形態において、反応物は、架橋タンパク質の形成を媒介することができ、それにより、形成されたタンパク質分子は、代用血液調製物を、それを必要とする対象に投与したとき、ヘモグロビンの溢出を防止するのに十分に大きい分子量を有する。
【0127】
一実施形態において、反応物は、架橋タンパク質の形成を媒介することができ、それにより、形成されたタンパク質は、約又は少なくとも約300kDa、約又は少なくとも約400kDa、約又は少なくとも約500kDa、約又は少なくとも約600kDa、約又は少なくとも約700kDa、約又は少なくとも約800kDa、約又は少なくとも約900kDa、約又は少なくとも約1,000kDa、約又は少なくとも約1,100kDaの平均分子量を有する。
【0128】
一実施形態において、反応物は、架橋タンパク質の形成を媒介することができ、それにより、全ての又は実施的に全ての形成されたタンパク質は、約若しくは少なくとも約120kDa、約若しくは少なくとも約180kDa、約若しくは少なくとも約250kDa、約若しくは少なくとも約300kDa、約若しくは少なくとも約400kDa、約若しくは少なくとも約500kDa、約若しくは少なくとも約600kDa、約若しくは少なくとも約700kDa、約若しくは少なくとも約800kDa、約若しくは少なくとも約900kDa、約若しくは少なくとも約1,000kDa、又は約若しくは少なくとも約1,100kDaの分子量を有する。
【0129】
一実施形態において、反応物は、架橋タンパク質の形成を媒介することができ、それにより、少なくとも約90%(モル/モル)、少なくとも約95%(モル/モル)、少なくとも約96%(モル/モル)、少なくとも約97%(モル/モル)、少なくとも約98%(モル/モル)、又は少なくとも約99%(モル/モル)の形成されたタンパク質分子は、約若しくは少なくとも約120kDa、約若しくは少なくとも約180kDa、約若しくは少なくとも約250kDa、約若しくは少なくとも約300kDa、約若しくは少なくとも約400kDa、約若しくは少なくとも約500kDa、約若しくは少なくとも約600kDa、約若しくは少なくとも約700kDa、約若しくは少なくとも約800kDa、約若しくは少なくとも約900kDa、約若しくは少なくとも約1,000kDa、又は約若しくは少なくとも約1,100kDaの分子量を有する。
【0130】
一実施形態において、架橋タンパク質の形成を媒介することができる反応物は、ポリアルデヒドであってもよい。ポリアルデヒドを、ポリアルデヒドのアルデヒド基とタンパク質のアミノ基との化学反応を許容する反応条件下で反応させて、ヘモグロビンタンパク質分子間、並びにヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間に、複数の共有結合分子間架橋を形成することができる。本明細書によると、任意のポリアルデヒドを使用して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を、低純度赤血球タンパク質分画中に存在するヘモグロビンと架橋させてもよい。ポリアルデヒドの濃度は変わることができ、例えば、最終濃度が約0.15g/l~約20g/lのポリアルデヒドを使用してもよい。
【0131】
一実施形態において、ポリアルデヒドはグルタルアルデヒドであってもよく、約0.15g/l~約2g/lの最終濃度で使用することができる。好ましい実施形態において、グルタルアルデヒドは、約1.2g/lの最終濃度で使用される。
【0132】
一実施形態において、ポリアルデヒドはスクシンアルデヒドであってもよく、約0.15g/l~約1.7g/lの最終濃度で使用することができる。好ましい実施形態において、グルタルアルデヒドは、約1.0g/lの濃度で使用される。
【0133】
一実施形態において、架橋タンパク質の形成を媒介することができる反応物は、o-ラフィノースであってもよい。
【0134】
一実施形態において、架橋タンパク質の形成を媒介することができる反応物は、ビス(3,5-ジブロモサリチル)アジペートであってもよい。
【0135】
反応物の濃度は、変わりうるが、ヘモグロビンタンパク質分子間、並びにヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間に複数の共有結合分子間架橋を形成するのに十分であるべきである。示されているように、ポリアルデヒドが反応物として使用される場合、ポリアルデヒドの濃度は、約0.15g/l~約20g/lでありうる。反応物の濃度は、例えば、複数の赤血球タンパク質試料を調製することによって最適化又は調整してもよく、各試料には、異なる濃度の反応物が含まれ、化学修飾反応が完了すると、架橋タンパク質の平均分子量及び/又は架橋タンパク質の分画が決定される。このように、反応物の濃度は、ある特定の平均分子量、例えば、少なくとも300kDaを有する架橋タンパク質分子を提供するように選択されうる。温度又はpH等の他の反応パラメーターも同様に決定されてもよい。代用血液調製物の使用に応じて、例えば、in-vivo又はex-vivoでの使用に応じて、反応物の濃度を含む最適条件に変動があってもよい。
【0136】
本明細書前記に示されているように、一実施形態では、グルタルアルデヒドを反応物として使用することができる。以下では、例として、本開示による反応物としてのグルタルアルデヒドの使用が更に説明される(
図1A~1Bを参照すること)。
【0137】
ここで
図2を参照すると、ポリグルタルアルデヒと、ヘモグロビンタンパク質と、構成内在性非ヘモグロビンタンパク質総体タンパク質との間の化学反応例の代表例が、ここに示されている。説明の容易さのため、1個のアミノ(NH
2)基のみが各タンパク質に描写されていることが留意される。しかし、両方のタンパク質は複数のアミノ基を含み、リジン、アルギニン、アスパラギン及びグルタミンによりもたらされるアミノ基、並びにN末端アミノ基が含まれ、全て描写されている反応に参加することができる。ポリグルタルアルデヒド分子内の第1及び第2アルデヒド基と、ヘモグロビン分子内の第1アミノ基及び構成内在性非ヘモグロビンタンパク質総体タンパク質の第2アミノ基との化学反応は、ヘモグロビン及び構成内在性非ヘモグロビンタンパク質総体タンパク質の間に分子間架橋をもたらし、この反応によって、2個の共有結合架橋及び1個の架橋タンパク質を形成する。
図2に示されているように、一実施形態において、架橋は還元性シッフ塩基でありうる。反応は様々な条件下で実施してもよく、例えば、僅かに塩基性のpH、例えばpH7.5~8.5を有するリン酸緩衝液、又はHEPES緩衝液、好ましくは室温を超える温度、例えば37℃が挙げられる。
【0138】
赤血球タンパク質分画を、タンパク質分画中のタンパク質を化学的に修飾できる反応物と接触させて、様々なタンパク質分子間に分子間架橋の形成をもたらしうることが留意される。
【0139】
一実施形態では、共有結合分子間架橋ヘモグロビンタンパク質分子が形成されてもよく、共有結合分子間架橋ヘモグロビンタンパク質分子は、1個以上の共有結合分子間架橋を含んでもよい。
【0140】
一実施形態では、共有結合分子間架橋内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子が形成されてもよく、共有結合分子間架橋内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子は、1個以上の共有結合分子間架橋を含んでもよい。
【0141】
一実施形態では、共有結合分子間架橋ヘモグロビンタンパク質分子及び共有結合分子間架橋内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子が形成されてもよく、共有結合分子間架橋ヘモグロビンタンパク質分子は、1個以上の分子間架橋を含んでもよく、共有結合分子間架橋内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子は、1個以上の分子間架橋を含んでもよい。
【0142】
一実施形態では、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子に共有結合分子間架橋されたヘモグロビンタンパク質分子が形成されてもよく、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子に架橋されたヘモグロビンタンパク質分子は、1個以上の共有結合分子間連結を含んでもよい。
【0143】
一実施形態において、共有結合分子間架橋ヘモグロビンタンパク質分子、共有結合分子間架橋内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子、及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子に共有結合分子間架橋されたヘモグロビンタンパク質分子が形成されてもよく、共有結合分子間架橋ヘモグロビン分子は、1個以上の分子間架橋を含んでもよく、共有結合分子間架橋内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子は、1個以上の共有結合分子間架橋を含んでもよく、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子に架橋されたヘモグロビン分子は、1個以上の共有結合分子間連結を含んでもよい。
【0144】
更に、一実施形態では、共有結合分子内架橋が形成されうることが留意される。
【0145】
本開示に従って使用されうる分子内タンパク質架橋を形成することができる反応物は、グルタルアルデヒド等のポリアルデヒド、ヘモグロビンβ鎖を分子内架橋する2-ノル-2-ホルミルピロキシダール5'-ホスフェート(NFPLP)、又はビス(3,5-ジブロモサリチル)フマレートを介してヘモグロビンα鎖を分子内架橋するジアスピリン(diasprin)である。
【0146】
一実施形態では、共有結合分子内架橋ヘモグロビン分子が形成されてもよく、共有結合分子内架橋ヘモグロビン分子は、1個以上の共有結合分子内架橋を含んでもよい。
【0147】
一実施形態では、共有結合分子内架橋内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子が形成されてもよく、共有結合分子内架橋内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子は、1個以上の共有結合分子内架橋を含んでもよい。
【0148】
一実施形態では、共有結合分子内架橋ヘモグロビン分子及び共有結合分子内架橋内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子が形成されてもよく、共有結合分子内架橋ヘモグロビン分子は、1個以上の共有結合分子内架橋を含んでもよく、共有結合分子内架橋内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子は、1個以上の共有結合分子内架橋を含んでもよい。
【0149】
一実施形態では、共有結合分子内架橋ヘモグロビン分子、共有結合分子間架橋ヘモグロビン分子、及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子に共有結合分子間架橋されたヘモグロビン分子が形成されてもよく、共有結合分子内架橋ヘモグロビン分子は、1個以上の共有結合分子内架橋を含んでもよく、共有結合分子間架橋ヘモグロビン分子は、1個以上の共有結合分子間架橋を含んでもよく、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体分子に架橋されたヘモグロビン分子は、1個以上の共有結合分子間連結を含んでもよい。
【0150】
更なる実施形態では、結合剤を使用して、ハイブリッド複合タンパク質を形成することができる。
【0151】
一実施形態では、結合剤を、化学修飾剤との反応の前に使用して、分子間架橋を形成することができる。
【0152】
一実施形態では、結合剤を、化学修飾剤との反応の後に使用して、分子間架橋を形成することができる。
【0153】
本明細書に従って使用できる結合剤の例には、ピリドキサールが挙げられ、マレイミドPEG、スクシンイミジルカーボネートPEG5000又はメトキシPEG5000を含むポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。結合剤との反応によって、PEG化ヘモグロビン等のハイブリッド複合タンパク質が形成されうる。
【0154】
本明細書前記に示されたように、分子間架橋タンパク質のサイズは変わってもよく、本明細書によると、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50若しくは100個の個別のタンパク質(すなわち、個別のヘモグロビン及び/若しくは内在性非ヘモグロビンタンパク質総体タンパク質)から構成される架橋タンパク質を含む調製物、又は前述の範囲内でサイズが変わる複数の架橋タンパク質を含む混合物を含む調製物を得ることができる。一実施形態において、分子量は、120kDa~約20,000kDaの範囲でありうる。架橋タンパク質中のヘモグロビンの相対量は変わってもよい。一実施形態において、架橋タンパク質内の少なくとも50%、60%、70%、80%又は少なくとも90%(モル/モル)の個別のタンパク質は、ヘモグロビンでありうる。
【0155】
更に、架橋に参加する赤血球分画中に存在するヘモグロビン分子の量は、変わりうる。一部の実施形態において、赤血球分画中に存在する全て又は実質的に全てのヘモグロビン分子は、架橋反応が完了すると、共有結合架橋を介して、他のヘモグロビン又は内在性非ヘモグロビンタンパク質分子に架橋される。一実施形態において、赤血球分画中に存在する少なくとも約90%(モル/モル)、少なくとも約95%(モル/モル)、少なくとも約96%(モル/モル)、少なくとも約97%(モル/モル)、少なくとも約98%(モル/モル)、少なくとも約99%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は、架橋反応が完了すると、架橋を介して、別のヘモグロビン又は内在性非ヘモグロビンタンパク質分子に架橋されうる。
【0156】
更に、形成される分子間架橋の量は、変わりうる。架橋ヘモグロビン分子は、少なくとも1個の架橋を含むことが明らかである。他の実施形態において、代用血液調製物中に存在する全て又は実質的に全ての架橋ヘモグロビンタンパク質分子は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個又は少なくとも5個の架橋を含むことができる。
【0157】
一実施形態において、架橋されると、全て又は実質的に全ての形成された架橋分子の分子量は、約若しくは少なくとも約120kDa、約若しくは少なくとも約180kDa、約若しくは少なくとも約250kDa、約若しくは少なくとも約300kDa、約若しくは少なくとも約400kDa、約若しくは少なくとも約500kDa、約若しくは少なくとも約600kDa、約若しくは少なくとも約700kDa、約若しくは少なくとも約800kDa、約若しくは少なくとも約900kDa、約若しくは少なくとも約1,000kDa、又は約若しくは少なくとも約1,100kDaでありうる。
【0158】
一実施形態において、架橋されると、少なくとも約90%(モル/モル)、少なくとも約95%(モル/モル)、少なくとも約96%(モル/モル)、少なくとも約97%(モル/モル)、少なくとも約98%(モル/モル)、又は少なくとも約99%(モル/モル)の形成された架橋分子は、約若しくは少なくとも約120kDa、約若しくは少なくとも約180kDa、約若しくは少なくとも約250kDa、約若しくは少なくとも約300kDa、約若しくは少なくとも約400kDa、約若しくは少なくとも約500kDa、約若しくは少なくとも約600kDa、約若しくは少なくとも約700kDa、約若しくは少なくとも約800kDa、約若しくは少なくとも約900kDa、約若しくは少なくとも約1,000kDa、又は約若しくは少なくとも約1,100kDaの分子量を有することができる。
【0159】
一実施形態において、形成された架橋分子は、約若しくは少なくとも約300kDa、約若しくは少なくとも約400kDa、約若しくは少なくとも約500kDa、約若しくは少なくとも約600kDa、約若しくは少なくとも約700kDa、約若しくは少なくとも約800kDa、約若しくは少なくとも約900kDa、約若しくは少なくとも約1,000kDa、又は約若しくは少なくとも約1,100kDaの平均分子量を有することができる。
【0160】
このように、様々な架橋タンパク質又はそのような架橋タンパク質の混合物は、本明細書に従って調製されうることが、前述から明らかである。調製されうる架橋タンパク質の一部の更なる非限定例が、説明の目的で
図3A~3Dに示されている。
【0161】
ここで
図3A~3Dを参照すると、
図3Aには、架橋(G)、5個のヘモグロビン(H)及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体(E)に存在する1個のタンパク質によって分子間架橋された、6個のタンパク質から構成される架橋タンパク質が示されており、
図3Bには、架橋(G)、6個のヘモグロビン(H)及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体(E)に存在する2個のタンパク質によって分子間架橋された、8個のタンパク質から構成される架橋タンパク質が示されており、
図3Cには、架橋(G)、5個のヘモグロビン(H)及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体(E)に存在する2個のタンパク質によって分子間架橋された、複数(2個)の架橋(G')がある特定の複数のヘモグロビン又は1個のヘモグロビンを内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に架橋している、7個のタンパク質から構成される架橋タンパク質が示されている。
図3Cでは、一部のタンパク質は3個の架橋を含有し、一部のタンパク質は2個の架橋を含有し、一部のタンパク質は1個の架橋を含有することが留意される。
図3Dには、架橋(G)、5個のヘモグロビン(H)及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体(E)に存在する1個のタンパク質、並びに架橋(G'')で分子内架橋された3個のタンパク質によって分子間架橋された、6個のタンパク質から構成される架橋タンパク質が示されている。
図3Dのヘモグロビン(H)に関連して示されている架橋(G")は、ヘモグロビン分子を構成する4個のポリペプチドのうちの2個を連結する架橋を表しうることが留意される。
【0162】
本明細書前記に記述されたように、一実施形態において、形成された架橋は還元性共有結合、例えばシッフ塩基でありうる。したがって、本開示の方法には、一実施形態において、架橋タンパク質を還元剤と反応させて、還元性共有結合架橋を還元し、還元共有結合連結を形成して、それによって代用血液調製物を形成することを含むことができる。
【0163】
ここで
図4を参照すると、還元共有結合架橋を形成するための、還元性共有結合架橋、とりわけシッフ塩基と還元剤のシアノ水素化ホウ素(BH
3CN
-)との化学反応例の代表例が示されている。シッフ塩基のとの化学反応は、イミン基の還元、並びに第二級アミン基連結及びBH
2CN(シアノボラン)の形成をもたらす。この反応は、例えば、リン酸緩衝液、中性pH及び25℃を含む様々な条件下で実施してもよい。
【0164】
他の実施形態において、他の還元剤を本明細書に従って使用することができる。そのような還元剤には、水素化ホウ素、亜ジチオン酸塩、トリメチルアミン、t-ブチルアミン、モルホリンボラン及びピリジンボラン、並びに前述のいずれかの塩、例えば、ナトリウム塩が限定されることなく挙げられる。
【0165】
一実施形態では、還元後に得た調製物をアミノ基含有化合物、例えば、リジン(そのεアミノ基)又はアルギニンと反応させることができる。前述のことは、ある特定の実施形態において有益であると認められ、それは、架橋反応に参加できなかったアルデヒドをアミノ基含有化合物と反応させて、更なるポリアルデヒド反応を防止できるからである。
【0166】
本明細書によると、別の実施形態において、本開示は、ヘモグロビンを含む代用血液調製物を作製する方法であって、
(i)血液から赤血球を単離する工程、
(ii)ヘモグロビンタンパク質と内在性非ヘモグロビンタンパク質総体とを含む低純度赤血球タンパク質分画を、赤血球から単離する工程であって、低純度赤血球タンパク質分画が、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む工程、並びに
(iii)低純度赤血球タンパク質分画を、複数の還元性共有結合架橋で架橋されたタンパク質を形成するための、ポリアルデヒドのアルデヒド基とタンパク質のアミノ基との化学反応を許容する条件下で、ポリアルデヒドと接触させ、タンパク質が、分子間架橋ヘモグロビンタンパク質、及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋したヘモグロビンを含み、それによって代用血液調製物を形成する工程、
を含む方法を提供する。
【0167】
一実施形態では、架橋タンパク質を還元剤と反応させて、還元性共有結合架橋を還元し、還元架橋を形成して、それによって代用血液調製物を形成することができる。
【0168】
簡潔に要約すると、本開示の選択された実施形態による方法では、低純度赤血球タンパク質分画を得ることができる。低純度赤血球タンパク質分画は、赤血球からのヘモグロビンタンパク質及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。低純度赤血球タンパク質分画中の内在性非ヘモグロビンタンパク質総体は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)を構成する。低純度赤血球タンパク質分画は反応物により処理され、反応物は架橋タンパク質の形成を媒介する。架橋タンパク質は、ヘモグロビンタンパク質分子間の分子間架橋と、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間の分子間架橋とを含み、それによって、代用血液調製物を形成する。
【0169】
次に、赤血球及び低純度赤血球タンパク質分画の調製に使用できる選択された実施形態が記載される。これらの選択された実施形態は、
図5及び
図6を参照しながら記載される。
【0170】
ここで
図5を参照すると、代用血液調製物525を調製するための一般スキーム500の例示実施形態が示されている。このように、
図5に示されている実施形態によると、全血505は、初期赤血球510が得られる源材料として使用される。次いで、今度は赤血球510を使用して、ヘモグロビン及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む低純度赤血球タンパク質分画515を得る。低純度赤血球タンパク質分画515を、共有結合架橋の形成を許容する反応条件下でポリアルデヒドを使用して処理することによって、分画中に存在するタンパク質を架橋する。次いで、還元性共有結合架橋を低減して、還元ヘモグロビン/内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む代用血液調製物525を形成し、これを、最終代用血液製剤530の製剤化に使用することができる。
【0171】
本明細書の一態様によると、赤血球は血液から単離される。本明細書に従って使用されうる適切な血液は、脊椎動物の血液を含み、哺乳類及び鳥類の血液が限定されることなく挙げられ、ヒト血液、ウシ血液、ブタ血液、ウマ血液及びヒツジ血液が限定されることなく挙げられる。血液溶液は、生存している又は死亡した生体から収集することができ、当該技術に既知の任意の技術及びデバイスを使用して収集することができ、例えば、米国特許第5,084,558号及び同第5,296,465号に記載されている方法が挙げられる。血液は、新鮮であっても、古い試料からのもの、例えば血液銀行からの期限切れ血液であってもよい。加えて、血液は、貯蔵及び/又は凍結されていてもよい。血液溶液を血液媒介病原菌の存在について、例えば、ヒト血液が使用される場合にはHIV及びB型肝炎の存在についてスクリーンすることが好ましい。好ましくは、血液媒介病原菌無含有血が、本開示の方法による使用ために選択される。血液を収集すると、抗凝固薬を血液に添加して、凝血を防止することが好ましい。使用できる抗凝固薬には、ヘパリン、ヒルジン、クエン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸が挙げられる。抗凝固薬は、水溶液又は粒子形態で提供されてもよい。
【0172】
赤血球を血液から単離するため、当該技術に既知の任意の赤血球分離技術を使用することができる。これには、大きな血液凝集塊(例えば、50μm以上)及び細片を除去するための遠心分離、並びに/又は濾し取り及び濾過技術の使用が挙げられる。このように、1枚以上のプロピレン800μm~50μmフィルターを使用することができる。この点に関して、赤血球が約5~10μmのサイズであることが留意される。
【0173】
一部の実施形態において、赤血球は、赤血球細胞膜の完全性を保存するpH及び浸透圧を有する等張液を使用した、例えば、285~315mOsmの浸透圧を有するクエン酸ナトリウム(約6.0g/l)及び塩化ナトリウム(約8.0g/l)溶液を使用した透析濾過によって、血液から更に単離することができる。本明細書に従って使用できる許容される透析濾過フィルターには、赤血球を、より小さな成分から実質的に分離する細孔膜、例えば、Spectrum labs社から入手可能な改質ポリエチレンスルホン中空繊維接線流濾過膜が挙げられる。等張液をバッチにより又は連続的に、典型的には、濾液が出て行くのとほぼ同じ速度で加えることができる。この工程の際に、赤血球より小さい血液溶液の成分、一般的には、細胞外血液タンパク質、例えば抗体及び血清アルブミンが挙げられる血液の血漿部分が、赤血球から濾液として分離し、これらを保持し、バッチにより又は連続的に等張液に加える。使用される等張液の体積は、変わってもよく、例えば、血液溶液の体積の少なくとも2×、3×、4×、5×、6×又は7×であってもよい。好ましくは、十分な体積の等張液を使用して、少なくとも約90%~95%(モル/モル)の血液血漿タンパク質を除去し、実質的に純粋な赤血球調製物を得る。
【0174】
一実施形態において、赤血球は、遠心分離技術を用いることなく単離することができる。
【0175】
血液から赤血球を単離するため及び実質的に純粋な赤血球調製物を得るために使用される技術が望ましく、当該技術に既知の任意の技術を含むことができ、例えば、米国特許第5,955,581号に記載されている赤血球の単離方法が挙げられる。
【0176】
その後、単離赤血球を溶解することができる。赤血球を溶解する当該技術に既知の任意の技術を使用することができ、任意の機械的溶解技術又は化学的溶解技術を挙げることができるが、そのような技術が、ヘモグロビンの酸素輸送及び放出能力に著しく有害な影響を与えないことが条件である。
【0177】
一実施形態において、赤血球を低浸透圧ショックに付すことにより、単離赤血球を溶解して、赤血球溶解産物を得ることができる。本明細書に従って使用されうる適切な低浸透圧溶液には、例えば、赤血球と混合されていてもよいリン酸緩衝液、3.75mM、pH7.2又は水が挙げられ、混合物を、氷上で例えば1時間インキュベートして、溶解赤血球調製物を得てもよい。
【0178】
一実施形態において、低純度赤血球タンパク質分画は、赤血球溶解産物を膜濾過に付すことによって得ることができる。
【0179】
一実施形態において、低純度赤血球タンパク質分画は、赤血球溶解産物を接線流濾過に付すことによって得ることができる。
【0180】
一実施形態では、赤血球溶解産物を多数の接線流濾過工程に付すことができる。一実施形態では、赤血球溶解産物を3つの接線流濾過工程に付すことができ、第1の接線流分離工程は、ウイルス汚染菌及び赤血球細片を分離することができる膜の使用を含み、第2の接線流分離工程は、高分子量カットオフの膜を含み、第3の接線流分離工程は、低分子量カットオフ膜を含む。
【0181】
ここで
図6を参照すると、レザバー610からポンプ505を使用して溶解産物665がその中を通って供給されている、様々なセクション660a、660b、660c、660d、660e、660f及び660gを含む管状ライン660を介して接続された、接線流デバイス620、640及び645を含む系600の例示実施形態が、ここに示されている。使用されるポンプは、例えば、蠕動型ポンプ又はダイアフラム型ポンプであってもよい。レザバー610は、例えば、レザバーを窒素ガスで覆うことによって低酸素環境に維持してもよく、更に汚染を防止するために好ましくは封止される。レザバー出口611を介してレザバー610を出ると、溶解産物665は、管状ライン660のセクション660a及び660bを介して、ポリスルホン50nm中空繊維膜665を有する接線流デバイス620に向けられ、接線流デバイス入口680を介して接線流デバイス620に入る。接線流デバイス620内では、溶解産物665が膜665により濾過されて、(i)接線流デバイス濾液出口625を介して接線流デバイス620から出た濾液及び(ii)接線流デバイス濃縮水出口615を介して接線流デバイス620から出た濃縮水を生じる。濃縮水は、管状ライン660のセクション660cを介してレザバー610へ戻り、循環のためにレザバー入口612からレザバー610に入る。濃縮水は、管状ライン660のセクション660dを介して、接線流デバイス640に向けられ、接線流デバイス入口690を介して接線流デバイス640に入り、500kDa分子量中空繊維ポリスルホン膜670により濾過されて、(i)接線流デバイス濾液出口635を介して接線流デバイス640から出た濾液及び(ii)接線流デバイス濃縮水出口630を介して接線流デバイス640から出た濃縮水を生じる。濃縮水は、管状ライン660のセクション660eを介して再循環される。濃縮水流は、管状ライン660のセクション660fを介して、接線流デバイス645に向けられ、接線流デバイス入口695を介して接線流デバイス645に入り、50kDa分子量中空繊維ポリスルホン膜675により濾過されて、(i)接線流デバイス濾液出口650を介して接線流デバイス645から排出された濾液及び(ii)接線流デバイス濃縮水出口655を介して接線流デバイス645から出た濃縮水を生じる。濃縮水は、管状ライン660のセクション660gを介して再循環される。接線流デバイス645から排出された濾液は、処分されうる。ヘモグロビン及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む濃縮水が、得られる。このように、前述の例示実施形態による接線流濾過の実施によって、第3の接線流濾過工程の後、ヘモグロビン及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む低純度赤血球タンパク質分画を濃縮水中に保持し、一方、より小さいサイズの汚染菌が第3の濾過工程による濾液の中に得られる。
【0182】
一実施形態において、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体は、スーパーオキシドジスムターゼ及びカルボニックアンヒドラーゼからなる群から選択されるタンパク質を含むことができる。
【0183】
一実施形態において、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体は、約0.2%(モル/モル)~約15%(モル/モル)のカルボニックアンヒドラーゼを含むことができる。
【0184】
前述の低純度赤血球タンパク質分画を使用して、その中のタンパク質を化学修飾して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に架橋されたヘモグロビンを含む代用血液調製物を得ることができる。
【0185】
一実施形態では、化学修飾工程を実施した後に得た調製物を使用して、最終代用血液製剤を調製することができる。このように、別の態様において、本開示は、一実施形態では、ヘモグロビンを含む最終代用血液製剤を調製する方法であって、
(i)赤血球から得ることができるヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む低純度赤血球タンパク質分画を提供する工程であって、低純度赤血球タンパク質分画が、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含み、低純度赤血球タンパク質分画が、タンパク質分画中のタンパク質を化学的に修飾することができる反応物によって修飾され、反応物が、ヘモグロビンタンパク質分子間の分子間架橋と、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の間の分子間架橋とを含む架橋タンパク質の形成を媒介し、それによって、代用血液調製物を形成する工程、並びに
(ii)代用血液調製物を、最終代用血液製剤の形成に適した少なくとも1種の他の成分により製剤化する工程、
を含む方法を提供する。
【0186】
一実施形態において、最終代用血液製剤は、in-vivoに使用される製剤でありうる。
【0187】
一実施形態において、最終代用血液製剤は、ex-vivoに使用される製剤でありうる。
【0188】
一実施形態では、代用血液調製物を、最終代用血液調製物に使用するのに適した少なくとも1種の他の成分、とりわけ、希釈剤、担体又は賦形剤と接触させることができる。代用血液調製物及び希釈剤、担体又は賦形剤は、好ましくは、希釈剤、担体又は賦形剤及び代用血液調製物の均質混合物が形成されるまで、混合、均質化又は調製され、そのような混合物は、代用血液製剤としての使用に適している。希釈剤、担体又は賦形剤は、任意の適切な希釈剤、担体又は賦形剤であってもよく、希釈剤、担体又は賦形剤は、任意の形態で提供されてもよく、例えば、溶液、懸濁液、ゲル、液体、固体、粉末又は結晶が挙げられる。希釈剤、担体又は賦形剤の量は、変わってもよい。典型的には、代用血液調製物に加えて、複数の成分、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10種又はそれ以上の成分が、最終代用血液製剤の調製のために提供されている。複数の成分を含む実施形態では、そのような成分を順次又は同時に混合してもよい。
【0189】
一実施形態において、追加の成分は、血液中に通常見いだされる化合物を含み、例えば、カルシウムイオン、塩化物イオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、リン酸塩イオン又はこれらの混合物が挙げられる、血液中に通常見いだされるイオンであり、それぞれ、塩化ナトリウムが挙げられる様々な化学形態及び様々な製剤、例えば食塩水の形態で提供されうる。最終代用血液調製物の調製に含まれてもよい他の成分は、アミノ酸;還元剤、例えば、グルタチオン、アスコルビン酸若しくはn-アセチルシステイン;ヒドロキシエチルデンプン若しくはアルブミン等のコロイド;グルコース若しくはラクトビオン酸等の単糖若しくは二糖が挙げられる糖類;又はこれらの混合物である。一部の実施形態では、疾患状態又は医学的状態を回復することができる薬理学的化合物であっても含めることができる。このように、例えば、一部の実施形態では、インスリンを薬理学的成分として含めることができる。
【0190】
一実施形態では、化学修飾工程の後に得た代用血液調製物を製剤化するため、調製物を、賦形剤緩衝液を使用した透析濾過に付して、最終代用血液製剤を調製し、例えば、N-アセチル-L-システイン(NAC)で修飾された修飾乳酸リンゲル液(NaCl 115mmol/l、KCl 4mmol/l、NaOH 13mmol/l、乳酸ナトリウム(27mmol/l)及びN-アセチル-L-システイン(2g/l))を使用して、透析濾過を実施する。
【0191】
一実施形態において、透析濾過工程の実施は、タンパク質が懸濁され、例えば反応物のグルタルアルデヒド及び還元剤を含む溶液を除去し、置き換えるが、還元を実施した後に得たタンパク質構成成分は、最終代用血液製剤中に実質的に保持される。
【0192】
一実施形態において、化学修飾工程の後に得た調製物は、最終代用血液製剤の調製のため、調製物から約100kDa以下の分子量を有するタンパク質の除去をもたらすフィルター及び条件を使用して透析濾過に付される。一実施形態において、還元の後に得た調製物は、調製物から分子量約300kDa、約400kDa、約500kDa、約600kDa、約700kDa、約800kDa、約900kDa、約1,000kDa又は約1,100kDa未満の分子量を有するタンパク質の除去をもたらすフィルター及び条件を使用して透析濾過に付される。このように前述は、代用血液調製物から低い分子量を有するタンパク質の除去をもたらし、これらは一般に架橋されていない又は少ない程度で架橋されているタンパク質であり、これによって、調製物に存在する架橋ヘモグロビンの相対濃度が増加されうる。この方法によって、代用血液調製物を得ることができ、そのうち、少なくとも約90%(モル/モル)、約91%(モル/モル)、約92%(モル/モル)、約93%(モル/モル)、約94%(モル/モル)、約95%(モル/モル)、約96%(モル/モル)、約97%(モル/モル)、約98%(モル/モル)又は約99%(モル/モル)のヘモグロビンが架橋されている。一部の実施形態で使用される透析濾過緩衝液は、N-アセチル-L-システイン(NAC)で修飾された修飾乳酸リンゲル液(NaCl 115mmol/l、KCl 4mmol/l、NaOH 13mmol/l、乳酸ナトリウム(27mmol/l)及びN-アセチル-L-システイン(2g/l))が挙げられる賦形剤でありうる。
【0193】
一実施形態において、本開示の方法は、脱酸素工程の実施を更に含む。
【0194】
一実施形態において、低純度赤血球タンパク質分画は脱酸素される。任意の脱酸素方法を使用することができ、任意の化学脱酸素方法が挙げられる。好ましくは、ガス交換濾過方法を使用して、そのような脱酸素を達成し、不活性ガス、例えば窒素、アルゴン又はヘリウムを使用する。一部の実施形態において、脱酸素は、約30~50mmHGでP50を有するヘモグロビンをもたらすことができる。好ましい実施形態において、脱酸素は、約40mmHGでP50を有するヘモグロビンをもたらすことができる。
【0195】
一実施形態では、赤血球が脱酸素されてもよく、続く工程が全て低酸素条件下で実施される。
【0196】
一実施形態では、最終代用血液製剤を短期間又は長期間にわたって貯蔵することができ、例えば、1~2日間から最大1年、又はそれ以上である。最終代用血液製剤は、好ましくは、滅菌され封止された容器、例えば、低酸素環境を有する、封止ガラス容器、ステンレス鋼容器又は貯蔵バッグに貯蔵される。貯蔵容器は、更に好ましくは、水の蒸発及び製剤の汚染を防止するために、水の移行に対して不浸透性である。低酸素環境を達成するため、貯蔵容器を、例えば、封止する前に窒素雰囲気で覆ってもよい。一部の実施形態において、自動酸化を防止するため、最終代用血液製剤は一酸化炭素で処理される。代用血液製剤を貯蔵するため、容器を貯蔵のために冷蔵(0℃~4℃)してもよく又は血液を冷凍し、冷凍庫に、例えば-20℃~-80℃で貯蔵してもよい。
【0197】
代用血液調製物及び最終代用血液製剤
別の態様において、本開示は、新規の代用血液調製物を更に提供する。したがって、本開示は、少なくとも一実施形態において、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0198】
少なくとも一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0199】
一実施形態において、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体は、カルボニックアンヒドラーゼを含むことができ、カルボニックアンヒドラーゼは、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の約0.2%(モル/モル)~15%(モル/モル)を構成する。
【0200】
一実施形態において、架橋は還元性架橋でありうる。
【0201】
一実施形態において、架橋はシッフ塩基でありうる。
【0202】
一実施形態において、架橋は還元シッフ塩基でありうる。
【0203】
一実施形態において、架橋は還元シッフ塩基であってもよく、低純度赤血球タンパク質分画中のタンパク質をポリアルデヒドと反応させて、シッフ塩基を形成し、続いてシッフ塩基を還元することによって形成されている。
【0204】
一実施形態において、ポリアルデヒドはグルタルアルデヒドでありうる。
【0205】
一実施形態において、代用血液調製物は、約30~50mmHGでP50を呈する。一実施形態において、代用血液調製物は、約36mmHGでP50を呈する。
【0206】
一実施形態において、代用血液調製物は、約10~約12g/dlの総ヘモグロブリン濃度を呈することができる。一実施形態において、代用血液調製物は、約11g/dlの総ヘモグロブリン濃度を呈することができる。
【0207】
一実施形態において、代用血液調製物は、約5EU/ml、4EU/ml、3EU/ml、2EU/ml又は1EU/ml未満のエンドトキシン負荷を含むことができる。
【0208】
一実施形態において、代用血液調製物は、ヘモグロビンを含むことができ、メトヘモグロビンが、総ヘモグロビン構成成分の10%モル/モル未満、約9%モル/モル未満、約8%モル/モル未満、約6%モル/モル未満、約5%モル/モル未満、又は約1%モル/モル未満を構成する。
【0209】
一実施形態において、代用血液調製物は、約4.5%~約6.0%のメトヘモグロビン濃度を含むことができる。
【0210】
一実施形態において、代用血液調製物は、約5.8%のメトヘモグロビン濃度を含むことができる。
【0211】
一実施形態において、代用血液調製物は、約1.2のヒル番号を呈することができる。
【0212】
一実施形態において、代用血液調製物は、約12~約18センチポアズ又は約13~約17センチポアズの粘度を呈することができる。
【0213】
一実施形態において、代用血液調製物は、約15センチポアズの粘度を呈することができる。
【0214】
一実施形態において、代用血液調製物は、約5mmHG~約11mmHG、又は約6mmHG~約10mmHG、又は約7mmHG~約9mmHGのコロイド浸透圧(COP)を呈することができる。
【0215】
一実施形態において、代用血液調製物は、約8mmHGのコロイド浸透圧(COP)を呈することができる。
【0216】
本開示の調製物を含む製剤が、それを必要とする対象に投与されるとき、血管収縮とも称される生理学的過程である血管の狭小が限定的であること又は無いことが観察されうることが留意される。更に、溢出とも称される生理学的過程である血管からのヘモグロビンの漏出が限定的であること又は無いことが観察されうる。理論に束縛されるものではないが、本開示の代用血液調製物の相対的に高い粘度及び低いCOPが、血管収縮及び/又は溢出が限定的である又は無いことの達成に寄与していると考えられる。このように、本開示の血液調製物の投与によって、溢出及び血管収縮に関して正常又は正常に近い生理学的状態が維持されうる。
【0217】
一実施形態において、代用血液調製物は、反応性酸素、すなわち、過酸化水素(H2O2)の限定された形成、例えば、8,000pmol/分/mg未満、7,000pmol/分/mg未満又は6,000pmol/分/mg未満を呈することができる。限定された量の反応性酸素種の形成は、反応性酸素種が血管の内皮グリコカリックスを損傷することがあるので、本開示の調製物の有益の特質であると認められる。
【0218】
一実施形態において、代用血液調製物中に存在する全て又は実質的に全てのヘモグロビンタンパク質分子は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個又は少なくとも5個の共有結合架橋を含むことができる。
【0219】
一実施形態において、代用血液調合中に存在する少なくとも約90%(モル/モル)、少なくとも約95%(モル/モル)、少なくとも約96%(モル/モル)、少なくとも約97%(モル/モル)、少なくとも約98%(モル/モル)、少なくとも約99%(モル/モル)のヘモグロビン分子は、少なくとも1個の共有結合架橋を介して架橋されうる。
【0220】
別の態様において、本開示は、一実施形態では、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物を含む最終代用血液製剤を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0221】
一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0222】
一実施形態において、少なくとも1種の他の成分は、賦形剤、希釈剤又は担体でありうる。
【0223】
少なくとも一実施形態において、最終代用血液製剤は、本開示のいずれかの方法により作製された代用血液調製物を含むことができる。
【0224】
代用血液調製物の使用
別の態様において、本開示は、一実施形態では、in-vivoに使用する最終血液製剤を調製するための、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物の使用を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0225】
一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質分子の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0226】
一実施形態において、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体は、カルボニックアンヒドラーゼを含むことができ、カルボニックアンヒドラーゼは、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の約0.2%(モル/モル)~15%(モル/モル)を構成する。
【0227】
一実施形態において、本開示は、ex-vivoに使用する最終血液製剤を調製するための、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物の使用を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0228】
一実施形態において、赤血球タンパク質分画中の少なくとも約90%(モル/モル)のヘモグロビンタンパク質分子は架橋されてもよく、それにより、架橋タンパク質の平均分子量は少なくとも約300kDaである。
【0229】
一実施形態において、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体は、カルボニックアンヒドラーゼを含むことができ、カルボニックアンヒドラーゼは、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の約0.2%(モル/モル)~15%(モル/モル)を構成する。
【0230】
代用血液製剤は、それを必要とする任意の対象に投与又は摂取されうる。一部の実施形態において、代用血液製剤は、脊椎動物に摂取され、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の哺乳動物が挙げられ、更に、トリ、サカナ又は爬虫類が挙げられる。更なる実施形態において、代用血液製剤はヒトによって摂取される。更に、代用血液製剤は、生涯の任意の段階で摂取されてもよく、出生前胎児及び出生後新生児が挙げられる。
【0231】
本開示の代用血液製剤を、脊椎動物の循環系への注射によって、循環系に投与することができる。注射技術の例には、静脈内及び動脈内注射等の血管内注射、並びに心臓内注射が挙げられ、更に、リンパ系による代用血液の循環系への輸送を許容する方法による腹腔内注射、皮下注射、トロカール又はカテーテルを用いた骨髄への注射が挙げられる。好ましくは、本開示の代用血液製剤を静脈内に投与することができる。本開示の代用血液製剤は、心筋梗塞、卒中、貧血、外傷、又はアナフィラキシーショック、敗血症性ショック若しくはアレルギー性ショックが挙げられるショックの結果としての循環系の一部又は全体における赤血球流の低減が挙げられる、多くの異なる原因によってもたらされる脊椎動物の低酸素組織を治療するために、治療的に投与されうる。更に、本開示の代用血液製剤を、外科手術の際の蘇生処置における急性出血のため、血液の補充として使用することができる。代用血液製剤は、また、可能性のある又は予測された赤血球流の低減によってもたらされる脊椎動物体内組織の酸素枯渇を防止するために、予防的に投与されうる。
【0232】
投与される代用血液製剤の治療量は、変わってもよい。用語「治療有効量」は、本開示の目的において、意図される目的を達成するのに有効な代用血液製剤の量を指す。個体の要求は様々であるが、投与される代用血液製剤の有効量の最適な範囲は、当業者の技能の範囲内である。イヌ、ラット又は霊長類等の研究動物を使用して、投与量を決定することができる。一般に、製剤又は調製物の有効量を提供するために必要であり、当業者により調整されうる投与量は、レシピエントの年齢、健康、身体状態、性別、体重、状態の程度、治療の頻度、並びに特定の患者又は動物にとって望ましい効果の性質及び範囲に応じて変わり、従来の配慮を使用して(例えば、適切な従来の薬理学的又は獣医的プロトコールを用いて)、当業者によって決定することができる。
【0233】
別の態様において、本開示は、一実施形態では、必要性のある対象に、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物を含む最終代用血液製剤の治療有効量を送達する方法を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0234】
別の態様において、本開示は、一実施形態では、in-vivo投与のための、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む最終代用血液調製物の使用を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0235】
少なくとも一実施形態において、本開示は、一実施形態では、ex-vivo投与のための、ヘモグロビンタンパク質分子及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む化学的に修飾された架橋タンパク質を含む低純度赤血球タンパク質分画を含む最終代用血液調製物の使用を提供し、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して分子間架橋されており、ヘモグロビンタンパク質分子は、架橋を介して、内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に分子間架橋されており、低純度タンパク質分画は、少なくとも約0.2%(モル/モル)~最大約20%(モル/モル)の赤血球内在性非ヘモグロビンタンパク質総体を含む。
【0236】
一実施形態において、本開示の代用血液製剤は、例えば、臓器が患者への後の移植若しくは患者への再置換のために貯蔵される場合又は臓器若しくは組織の輸送が必要な場合、臓器又は組織を保存するため、臓器又は組織の酸素含有量をex-vivoで維持することに使用される。この点に関して、使用されうる個別の臓器には、肝臓、腎臓、心臓、肺、腸及び膵臓が限定されることなく挙げられる。組織移植の例には、複合組織同種移植、例えば、四肢、顔が挙げられる。一部の実施形態において、臓器又は組織は、静的モードで保存される。一部の実施形態において、臓器は、動的モードで保存される。静的モードでは、臓器は本開示の代用血液製剤を含む溶液に浸けられる。動的モードでは、臓器は、本開示の代用血液製剤、並びに、例えばポンプ系及び温度調節デバイスが挙げられる1つ以上の機械的デバイスを使用して灌流される。
【0237】
一実施形態では、本開示の代用血液製剤を使用して、研究開発の目的のため、例えば、バイオマーカーの発見のため又はバイオリアクターとしての臓器組織の使用のために、臓器を維持することができる。
【0238】
個別の組織又は臓器の保存に加えて、本開示の組成物を、脳死の個体又は死体が挙げられる生体ドナーの全身保存のために使用することもできる。
【0239】
ジスムターゼ
ここで理解されるように、代用血液調製物は、本開示の方法に従って調製することができ、本開示の方法は、高純度ヘモグロビン調製物を得ること及びそれに関連する複雑な操作過程を回避している。代用血液調製物を多くの臨床方法に適用することができる。
【0240】
当然のことながら、上記記載の本開示の例示実施形態は、説明することだけが意図されており、いかようにも制限することを意図していない。記載されている実施形態は、組成物、詳細及び操作順序に多くの変更の余地がある。本発明は、むしろ、特許請求の範囲に定義されている範囲内のそのような変更を全て包含することを意図しており、記載全体に一致した広い解釈を与えるべきである。
【実施例】
【0241】
本明細書以降には、本開示の方法を実施する更なる特定の実施形態、並びに本開示の組成物を表す実施形態の実施例が提供される。実施例は、例示する目的のためだけに提供されており、本開示の範囲をいかようにも制限することを意図しない。
【0242】
(実施例1)
グルタルアルデヒドと架橋した低純度赤血球タンパク質分画を含む代用血液調製物
低純度赤血球タンパク質分画は、赤血球から以下のように調製した。正規代理店から得た濃縮赤血球を、最初に、1)0.45μM中空繊維フィルターを介して生理食塩水の6回の透析濾過交換によって洗浄し、次いで、2)精製水の更なる6回の透析濾過交換によって溶解し、次いで、3)タンパク質を含有する濾液分画を、500kDa中空繊維フィルターを介したリン酸緩衝液の6回の透析濾過交換によって精製し、4)濾液に収集されたタンパク質を、10kDa中空繊維フィルターを介したリン酸緩衝液及びn-アセチルシステインの6回の透析濾過交換によって更に洗浄し、濃縮水を保持した。最後の工程の際に同時に溶液をガス交換カートリッジ及び窒素で脱酸素した。得られたタンパク質溶液(2g/dL)をグルタルアルデヒドと最終濃度の1.25g/lで3時間反応させ、次いでシアノ水素化ホウ素(BH3CN)で還元し、グルタルアルデヒド及びシアノ水素化ホウ素が透析濾過によって除去されるように、n-アセチルシステインを有する乳酸リンゲル液の中に入れ、それにより低純度代用血液調製物を得た。タンパク質調製物中の内在性非ヘモグロビンタンパク質総体の濃度は、SDSゲル評価に基づいて約0.2%モル/モル~約20%モル/モルと推定した。全ての工程を室温で実施した。次いで、代用血液調製物を希釈し、分光光度的にモニターできるように共栓付きキュベットに入れた。周囲酸素を除去する努力は行わず、予測された結果は、周囲酸素の存在下でのヘモグロビン調製物が酸化されて、ヘモグロビンの生理学的に不活性な形態であるメトヘモグロビンになるというものであった。変化は、付随するスペクトルシフト(concomitant characteristic spectral shift)をもたらし、容易に検出及び測定することができる。最初に観察されたスペクトルは、酸素供給されたヘモグロビンに予測されるものであった。しかし、驚くべきことに、代用血液調製物中のヘモグロビンは、48時間にわたって実質的な酸化を受けていないことが観察され、ヘモグロビンの脱酸素形態への急激なシフトは観察されなかった。前述の観察は、1)生成物の全体的な酸化レベルが実質的に一定に維持されたこと、及び2)利用可能な酸素が、ヘモグロビンに結合するものがなくなるまで、共栓付きキュベットにおいてゆっくりと消費されたこ
とを示している。このことは、酸素送達溶液にとって有利であり、それは酸化がその有効性を制限するからである。
【0243】
(実施例2)
代用血液調製物のin-vivo投与
代用血液調製物を実施例1に記載されたように調製した。出血性ショック(HS)モデルの血液をラット(3)から採取して、血液損失のモデルを作り、次いで代用血液調製物及び対照として乳酸リンゲル液(LRS)を投与した。間質内酸素圧を時間の関数として記録した。結果をグラフ化し、
図7に示す。LRS液の結果をLRS-Avgと表示する。代用血液調製物の結果をVIR-VET Avgと表示する。
図7から分かるように、傷害の後(T=-25分)、最初に間質内酸素圧は、0mmHgに急速に低下した。LRS及び代用血液調製物の投与は、間質内酸素圧の最初の回復をもたらし、ピークは、LRSにより治療したラットでは約18mmHgであり、代用血液調製物により治療したラットでは約38mmHgであった。その後、間質内酸素圧に急速な低下が観察され、LRSにより治療した動物では約1=15分で0mmHgに達した。代用血液調製物により治療したラットにおける間質内酸素圧の低下は、より漸進的であり、約t=90分で0mmHgに達した。
【0244】
同じ実験では、投与後のラットの生存時間をモニターした。結果をグラフ化し、
図8に示す。LRS液の結果をLRSと表示する。代用血液調製物の結果をVTBと表示する。
図8から分かるように、LRSが投与されたラットの100%が、LRSを投与した25分後に死亡した。対照的に、代用血液調製物が投与されたラットは、相当長時間にわたって生存し、代用血液調製物を投与した98分後にラットの100%が死亡した。
【0245】
別個の実験では、ラットモデルに、実施例1に記載されたように調製した10%代用血液調製物を注入し、筋肉組織の微小血管の応答を微視的に評価した。結果を
図9に示す。
図9から分かるように、血管構造の実質的な変化は、代用血液調製物を投与した直後又は120分後に観察されなかった。
【0246】
(実施例3)
代用血液調製物のex-vivo投与
ブタの肝臓を得て、実施例1に記載されたように調製した代用血液調製物を使用して、機械的灌流により、酸素供給代用血液調製物を21℃で12時間にわたって連続的に灌流させた。灌流された肝臓及び灌流する前の肝臓の肝臓生検材料を取り、ヘマトキシリン及びエオシン染色で染色した。顕微鏡画像を
図10A及び10Bに示す。肝臓組織の画像が、異なる倍率(10×及び20×と表示)によって示されている。
図10A及び10Bの肝臓組織の顕微鏡画像を、病理学者が盲検により微視的に評価した。病理学者は、灌流した肝臓から得た生検材料と灌流する前の肝臓の生検材料とを区別することができなかった。
【0247】
(実施例4)
代用血液調製物の特徴決定-タンパク質構成成分
代用血液調製物を実施例1に記載されたように調製した。タンパク質を、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用して評価した。結果を
図11(SDS-PAGE)及び
図12A~12C(サイズ排除クロマトグラフィー)に示す。
図11から分かるように、代用血液調製物は、一部のヘモグロビン(レーン2及び3に示されている精製ヘモグロビン試料、2個の異なるロット)に加えて、ヘモグロビンの分子量より実質的に高い分子量のタンパク質(レーン4~6)を含有する。レーン4は、300kDa未満のタンパク質が透析濾過によって除去された非架橋赤血球タンパク質分画を表す。レーン5及び6は、グルタルアルデヒド架橋タンパク質調製物の2個のロットを表す。レーン5~6の高い分子量のタンパク質は、架橋ヘモグロビン分子、及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に架橋されたヘモグロビン分子を表す。
図12A~Cは、精製ヘモグロビンの平均分子量を示し、約16kDaであると推定され、これは個別のモノマーに対応し(
図12A)、代用血液調製物中の架橋タンパク質(すなわち、架橋ヘモグロビン、及び内在性非ヘモグロビンタンパク質総体に架橋されたヘモグロビン)の平均分子量を示し、約1,000kDaであると推定される(
図12B)。分子サイズマーカーが比較のために示されている(
図12C)。更に、代用血液調製物中に存在する非架橋ヘモグロビンの量は、10%モル/モル未満であると推定される。
【0248】
(実施例5)
代用血液調製物の特徴決定-物理化学的特質
代用血液調製物を実施例1に記載されたように調製し、物理化学的な観点から評価した。評価した物理化学的パラメーターは、(i)総ヘモグロビン濃度、(ii)メトヘモグロビン濃度、(iii)pH、(iv)浸透圧、(v)分子量、(vi)ヘモグロビン二量体濃度、(vii)酸素の分圧(P50)、(viii)ヒル番号、(ix)粘度及び(x)コロイド浸透圧(COP)であった。表1は得られた結果を示す。
【0249】
【0250】
実施例1に記載されたように調製した代用血液調製物の得られた物理化学的特質も、以下が挙げられる当該技術に既知の様々な代用血液調製物と比較した。(i)pRBCs;(ii)aaHb、Creteur,J.ら、「Diaspirin cross-linked hemoglobin improves oxygen extraction capabilities in endotoxic shock」、J Appl Physiol、2000年、89:1437~1444頁を参照すること;(iii)Hemospan、Vandegriff KDら、「MP4, a new nonvasoactive PEG-Hb conjugate」、Transfusion、2003年:43巻、4版、509~16頁、及びVandegriff KD及びWinslow R.M.、「Hemospan:Design Principles for a New Class of Oxygen Therapeutic」Artif Organs、2009年;33巻、133-138頁を参照すること;(iv)Oxyglobin、W.R.Light、「Oxygen Transport:The New Physiology」、ESCVS International Congress、2011年による公表を参照すること;(v)Hemopure、W.R.Light、「Oxygen Transport:The New Physiology」、ESCVS International Congress、2011年による公表を参照すること;並びに(vi)OxyVita(hb)、Harrington,J.P.及びWollocko,H.「Molecular Design Properties of OxyVita Hemoglobin,a New Generation Therapeutic Oxygen Carrier:A Review」、J.Funct.Biomaterial.2011年、2巻、414~424頁を参照すること。結果を表2に示し、VIR-HBOCは、実施例1に記載された方法に従って調製された調製物を示す。
【0251】
【0252】
(実施例6)
代用血液調製物内の反応性種の形成
代用血液調製物を実施例1に記載されたように調製し、3個のブタ肝臓のex-vivo灌流に21℃で一定時間にわたって使用した。反応性酸素種(ROS)(H
2O
2)の形成レベルを、3時間、6時間及び9時間のインキュベーションの後に評価した。結果を
図13に示し、P1と示されているバーは、採取前に肝臓がin-vivo提示されたときのH
2O
2産生レベルを表し、BTと示されているバーは、初期灌流時のH
2O
2産生レベルを表し、3時間、6時間及び9時間と示されているバーは、灌流した3時間、6時間及び9時間後のH
2O
2産生レベルをそれぞれ表す。理解できるように、H
2O
2産生は、それぞれの肝臓を灌流した際には増加せず、全ての場合で約7,500pmol/分/mgを下回ったままである。
【符号の説明】
【0253】
500 一般スキーム
600 系
620、640、645 接線流デバイス
660 管状ライン
665 溶解産物
610 レザバー
505 ポンプ
611 レザバー出口
665、670、675 中空繊維ポリスルホン膜
680、695 接線流デバイス入口
625、635 接線流デバイス濾液出口
615、630、655 接線流デバイス濃縮水出口
612 レザバー入口
690 接線流デバイス入口
640、645 接線流デバイス