(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】塗工紙
(51)【国際特許分類】
D21H 19/38 20060101AFI20231120BHJP
D21H 19/72 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
D21H19/38
D21H19/72
(21)【出願番号】P 2020537110
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2019032149
(87)【国際公開番号】W WO2020036223
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2018153575
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】宮内 謙史郎
(72)【発明者】
【氏名】川島 正典
(72)【発明者】
【氏名】外岡 遼
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-117174(JP,A)
【文献】特開2011-122289(JP,A)
【文献】特開2011-026752(JP,A)
【文献】特開2014-088641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙上に顔料塗工層を備える塗工紙であって、
当該原紙の王研式平滑度が20秒以下であり、
当該顔料塗工層の塗工量が片面当たり5.0g/m
2以上であり、
当該顔料塗工層は、炭酸カルシウムとクレーを含むが、プラスチックピグメントを含まず、
王研式平滑度が65秒以下であり、
ISO白色度が70%以上である、塗工紙。
【請求項2】
前記顔料塗工層における顔料100重量部あたり、炭酸カルシウムおよびクレーの合計量が80重量部以上である、請求項1に記載の塗工紙。
【請求項3】
コールドセット用新聞インキを使用し、印刷濃度が1.6となるようにベタ印刷した際の75°光沢度が30%以上である、請求項1または2に記載の塗工紙。
【請求項4】
前記塗工量が片面当たり8.0g/m
2以下である、請求項1~3のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項5】
前記塗工紙の坪量が、45~75g/m
2である、請求項1~4のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項6】
前記塗工紙の密度が、0.5~1.0g/cm
3である、請求項1~5のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項7】
王研式平滑度が20秒以下の原紙上に、片面当たり5.0g/m
2以上の顔料塗工層を設ける工程を備える、請求項1~6のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインキ乾燥性が良好な塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙媒体での新聞販売部数の減少に伴い、新聞輪転機を新聞以外の用途に活用する取り組みが始まっている。一般的に浸透乾燥型のコールドセット用インキを用いた新聞輪転(オフセット印刷)機による印刷は、乾燥工程を有さずインキの紙への浸透によりインキを乾燥させており、紙には良好なインキ吸収性が求められる。紙のインキ吸収性が悪いと、印刷機や紙面の汚れの発生、印刷速度の低下等の問題が生じ、印刷品質の悪化や操業性の低下を引き起こす。このような印刷方式においては、一般的に顔料塗工層を設けない非塗工紙、特に古紙パルプを多く含有する新聞用紙が使用されてきた。しかし、非塗工紙や新聞用紙を用いるとインキ乾燥性が良好であるものの、インキ着肉性および印刷光沢が十分でないという問題があり、文字以外の情報を印刷する用途にコールドセット型オフセット印刷を用いる際に大きな障害となっていた。この問題を解決するために、特許文献1には片面当たり0.5g/m2以上4.0g/m2未満の顔料塗工層を設けた新聞インキ対応微塗工紙が提案されている。この微塗工紙によって、新聞用紙並みのインキ乾燥性および鮮明性の優れた印刷適性を達成できる。また特許文献2には、プラスチックピグメントおよび合成接着剤を含む表面処理剤を片面当たり4g/m2以上塗工したコールドセット用オフセット印刷用紙が提案されている。この印刷用紙は、高い印刷光沢およびカラー印刷適性、引き摺り汚れが少ないとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-31927号公報
【文献】特開2012-117174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れたインキ乾燥性、インキ着肉、印刷光沢を有する塗工紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、以下の本発明によって解決される。
[1]原紙上に顔料塗工層を備える塗工紙であって、
当該顔料塗工層の塗工量が片面当たり5.0g/m2以上であり、
王研式平滑度が65秒以下であり、
ISO白色度が70%以上である、塗工紙。
[2]前記顔料塗工層における顔料100重量部あたり、炭酸カルシウムおよびクレーの合計量が80重量部以上である、[1]に記載の塗工紙。
[3]コールドセット用新聞インキを使用し、印刷濃度が1.6となるようにベタ印刷した際の75°光沢度が30%以上である、[1]または[2]に記載の塗工紙。
[4]前記塗工量が片面当たり8.0g/m2以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の塗工紙。
[5]前記塗工紙の坪量が、45~75g/m2である、[1]~[4]のいずれかに記載の塗工紙。
[6]前記塗工紙の密度が、0.5~1.0g/cm3である、[1]~[5]のいずれかに記載の塗工紙。
[7]王研式平滑度が20秒以下の原紙上に、片面当たり5.0g/m2以上の顔料塗工層を設ける工程を備える、[1]~[6]のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、優れたインキ乾燥性、インキ着肉性、および印刷光沢を有する塗工紙を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」は端値であるXおよびYを含む。
【0008】
1.塗工紙
本発明において塗工紙とは、原紙上に特定量の顔料塗工層を有する紙である。本発明の塗工紙は、特に、新聞インキ等のコールドセット用インクでのオフセット印刷に好適である。
【0009】
(1)顔料塗工層
顔料塗工層とは白色顔料を主成分として含む層である。本発明の塗工紙は、片面あたり5.0g/m2以上の顔料塗工層を備える。当該塗工量は片面あたり5.5~8.0g/m2であることが好ましく、その上限は7.0g/m2以下であることがより好ましい。白色顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、焼成カオリン、無定形シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、プラスチックピグメント等の通常使用されている顔料が挙げられる。
【0010】
顔料塗工層が炭酸カルシウムまたはクレーを含むと塗工紙の平滑性が向上するので精細で発色が良好な印刷画像を得ることができる。この観点から、顔料塗工層における顔料100重量部あたり、炭酸カルシウムおよびクレーの合計量は80重量部以上であることが好ましく、90重量部以上であることがより好ましい。当該合計量の上限は限定されず100重量部以下である。
【0011】
炭酸カルシウムの平均粒子径は0.5~1.0μmであることが好ましい。平均粒子径は、Malvern社製Mastersizer等のレーザー回析式粒度分布測定器等で測定することができ、D50を平均粒子径とすることができる。また、炭酸カルシウムの2.0μm以下の粒子径を持つ粒子の含有量は好ましくは90体積%以上であり、より好ましくは93体積%以上であり、さらに好ましくは95体積%以上である。炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムが挙げられる。また、軽質炭酸カルシウムとして特許5274077号等に記載された軽質炭酸カルシウム(苛性化軽質炭酸カルシウム)を使用してもよい。
【0012】
クレーの平均粒子径は6.0μm以下であることが好ましい。クレーの粒子径が小さいと塗工層に微細な空隙を形成でき、インキ乾燥性を向上させることができる。クレーの平均粒子径もレーザー回析式粒度分布測定器等で測定することができ、D50を平均粒子径とすることができる。平均粒子径の下限は限定されないが、1.0μm以上であることが好ましい。また、白色度の観点から、炭酸カルシウムおよびクレーの合計量中のクレー含有量は50重量部以下が好ましく、40重量部以下がより好ましい。
【0013】
顔料塗工層は接着剤を含む。当該接着剤としては、酸化澱粉、陽性澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉等のエーテル化澱粉、デキストリン等の各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等が挙げられる。これらは単独、あるいは2種以上を併用して用いることができる。澱粉系の接着剤とラテックス系の接着剤を混合して使用すると、顔料塗工液の塗工適性と、表面強度などの印刷適性のバランスが優れるので好ましい。顔料塗工層における接着剤の総量は、顔料100重量部に対して1~15重量部が好ましく、2~14重量部がより好ましく、3~13重量部がさらに好ましい。接着剤が1重量部より少ないと接着剤が不足して塗工層強度が弱くなるため、印刷時に白点等の欠陥が多く発生してしまう可能性がある。一方で15重量部より多いと、顔料塗工層中の空隙が不足するため、浸透型のコールドセット型インクが紙に浸透しにくくなってしまい、乾燥性に劣る可能性がある。
【0014】
顔料塗工層は、一般の紙製造分野で使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤を含んでいてもよい。
【0015】
顔料塗工層は、塗工液を公知の方法で原紙の片面あるいは両面に塗工して設けることができる。塗工液中の固形分濃度は、塗工適性の観点から、30~70重量%程度が好ましい。顔料塗工層は1層以上であってよいが、微塗工紙であることから1層であることが好ましい。顔料塗工層の塗工量は片面あたりトータルで5.0g/m2以上であり、5.5g/m2以上であることが好ましい。塗工量の上限は8.0g/m2以下であることが好ましく、7.0g/m2未満であることがより好ましい。当該塗工量が5g/m2未満であると、塗工層が原紙を十分に被覆することができないため、インク発色性が低下する。また、塗工量が過度に高いとインクの浸み込みが悪くなりインク乾燥性が低下する。
【0016】
(2)原紙
本発明で用いる原紙のパルプ原料は特に限定されず、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ、古紙パルプ(脱墨パルプ(DIP))、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、針葉樹クラフトパルプ(LKP)等の化学パルプ等を使用できる。古紙パルプとしては、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラシ、雑誌などの選別古紙やこれらが混合している無選別古紙由来のものを使用できるが、機械パルプを含有する中質紙や下級紙、新聞紙を原料に含有する古紙パルプであることが好ましい。本発明の印刷用紙は、パルプ100重量部中、化学パルプを30重量部以上含む。化学パルプを多く含有することで印刷用紙の密度を向上させインクが原紙の深部に過度に浸み込むことを抑制できるためインク発色性を向上できる。この観点から、化学パルプ含有量の下限は40重量部以上が好ましく、50重量部以上であることがさらに好ましい。一方で、印刷工程や加工工程において、あるいは書籍としたときに紙には適度なこわさが求められるため、一定量の機械パルプまたは機械パルプを原料に含有する古紙パルプを含有することが好ましい。そのため、化学パルプ含有量の上限は90重量部以下であることが好ましく、80重量部以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明の塗工紙は、パルプ100重量部中、機械パルプまたは機械パルプを含有する古紙パルプを、これらの合計で10重量部以上含有することが好ましく、20重量部以上含有することがより好ましい。当該合計量の上限としては50重量部以下が好ましい。当該合計量がこの値を超えると、密度が低下してインク発色性が低下する可能性があり、さらには白色度が低下し画像の映えが低下しうる。
【0018】
原紙には公知の填料を添加できる。填料としては、重質炭酸カルシム、軽質炭酸カルシウム、クレー、シリカ、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸ナトリウムの鉱酸による中和で製造される非晶質シリカ等の無機填料や、尿素-ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などの有機填料が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし併用してもよい。この中でも、中性抄紙やアルカリ抄紙における代表的な填料であり、高い不透明度が得られる炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物が好ましい。
【0019】
内添薬品として、嵩高剤、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、濾水性向上剤、染料、中性サイズ剤等を必要に応じて使用してもよい。乾燥紙力向上剤としてはポリアクリルアミド、カチオン化澱粉が挙げられ、湿潤紙力向上剤としてはポリアミドアミンエピクロロヒドリンなどが挙げられる。これらの薬品は地合や操業性などの影響の無い範囲で添加される。中性サイズ剤としてはアルキルケテンダイマーやアルケニル無水コハク酸、中性ロジンサイズ剤などが挙げられる。嵩高剤は使用してもよいが、嵩高になりすぎる可能性があるため、使用量は少ないことが好ましく、使用しないことがより好ましい。嵩高剤を使用する場合、紙の密度が本発明の範囲内となるように、カレンダー処理などで紙厚を調整することが好ましい。これらの内添薬品は、必要に応じてパルプ、填料と共に使用され紙料とすることができる。
【0020】
原紙は、単層紙であることが好ましく、公知の抄紙方法で製造される。例えば、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、ハイブリッドフォーマー型抄紙機、オントップフォーマー型抄紙機、丸網抄紙機等を用いて行うことができるが、これらに限定されない。本発明のコールドセット用オフセット印刷用紙は、抄紙工程と顔料塗工工程が連続したオンマシン方式で製造してもよく、抄紙工程の後に顔料塗工工程にて塗工を行うオフマシン方式で製造してもよい。抄紙及び塗工速度は400~2000m/分が好ましい。
【0021】
原紙の王研式平滑度は20秒以下であることが好ましい。当該平滑度が20秒以下であると原紙の表面の平滑度は比較的低いレベルとなるが、原紙の平滑性がこの程度であると、顔料塗工層の塗工量が多くなってもインキ乾燥性を高めることができる。この理由は明らかではないが、原紙の平滑度が上記の範囲であると、顔料塗工層を設けた後の塗工紙の比表面積が高くなること、平滑度が低いために塗工時の原紙被覆性が低く、露出した原紙にインキが吸収されやすいことなどにより、インク吸収性が向上すると推察される。当該王研式平滑度の下限は限定されないが、好ましくは5秒以上であり、より好ましくは10秒以上である。さらに、本発明の塗工紙は5g/m2以上の顔料塗工層を有するのでインクの着肉性や印刷光沢度も良好であり、インキ乾燥性、インキ着肉性および高い印刷光沢を兼ね備える。
【0022】
(3)その他の処理
本発明の塗工紙は、原紙の片面または両面に接着剤を主成分とするクリア塗工層をさらに有していてもよい。クリア塗工層は原紙層に隣接することが好ましいが、原紙から最も遠い最外層に設けてもよい。クリア塗工層に使用される接着剤は前述のとおりである。原紙に隣接してクリア塗工層を設けた場合、顔料塗工液の原紙へのしみこみを抑制することができ、顔料塗工層の原紙被覆性が向上するため好ましく、使用する接着剤としては澱粉が好ましい。また、クリア塗工液が原紙に浸透することで、原紙の強度が向上する。以上から、クリア塗工層の塗工量は両面で、0.5~5.0g/m2が好ましく、1.0~4.5g/m2がより好ましく、2.0~4.0g/m2がさらに好ましい。
【0023】
本発明の塗工紙には表面処理を施してもよい。表面処理としては、ソフトカレンダーやスーパーカレンダー、グロスカレンダー、熱カレンダー、シューカレンダーによる処理が挙げられる。
【0024】
(4)本発明の塗工紙の特性
1)王研式平滑度
本発明の塗工紙は、王研式平滑度(JIS P8155)が65秒以下であり、好ましくは60秒以下である。この値が上限を超えるとインキの浸透速度が遅くなり乾燥性が低下する。下限値は限定されないが、印刷光沢等の表面性の観点から30秒以上であることが好ましい。
【0025】
2)ISO白色度
本発明の塗工紙は、ISO白色度(JIS P8148)が70%以上であるが、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上である。白色度が75%未満であると、白紙部分の白色度が低下し、かつ印刷後の画像の映えも低下する。
【0026】
3)印刷光沢度
本発明の塗工紙は、コールドセット用新聞インキを使用し印刷濃度が1.6となるようにベタ印刷した際の75°光沢度が、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。当該光沢度が30%未満であると、印刷物の光沢感が不足し、印刷後の画像の映えも低下しうる。
【0027】
4)坪量、密度
本発明の塗工紙の坪量は、好ましくは45g/m2以上であり、より好ましくは50g/m2以上であり、さらに好ましくは55g/m2以上である。また、坪量の上限は、好ましくは75g/m2以下であり、より好ましくは70g/m2以下、さらに好ましくは65g/m2以下であり、書籍とした際のめくりやすさの観点から、63g/m2以下であることが最も好ましい。坪量が45g/m2未満であると、書籍などにした際に紙のこわさが不足し、手肉感が劣る可能性があり、75g/m2超であると、水切れ等の観点から単層で抄紙することが困難となることがある。また、紙の密度は好ましくは0.5~1.0g/cm3であり、より好ましくは0.6~0.9g/cm3である。
【0028】
2.本発明の塗工紙の製造方法
本発明の塗工紙は、前記原紙の片面または両面上にブレード塗工によって前記塗工量の顔料塗工層を設ける工程を経て製造されることが好ましい。顔料塗工層は、これ以外にロール塗工によっても設けることができるが、ブレード塗工は塗工液を塗布後にブレードで掻き取る塗工方法であるため、平滑性の高い塗工面を得ることができ、インキ発色性が良好な印刷用紙を得ることができる。
【0029】
3.用途
本発明の塗工紙はコールドセット用オフセット印刷において優れたインキ乾燥性とインキ着肉、印刷光沢を発現するので、コールドセット用オフセット印刷に好適である。特に輪転機を用いたコールドセット用オフセット印刷に用いることで、高速で多量の高品質な印刷物を効率よく生産できる。従って、本発明の塗工紙はコールドセット用インキによる印刷が使用される用途に好適であり、例えば新聞用紙、書籍用紙、コミック用紙、教科書用紙等として有用である。また、本発明の塗工紙はインキ乾燥性が良好であるため、インキの乾燥性や発色性が求められるインクジェットなどのオンデマンド印刷方式にも使用できる。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
原紙として、NBKP30重量%、LBKP23重量%、脱墨パルプ27重量%、GP20重量%填料として軽質炭酸カルシウムを12重量%含有する紙料を調製して抄紙し、密度0.56g/cm3、坪量54g/m2の原紙2を準備した。顔料として重質炭酸カルシウム(株式会社ファイマテック製、商品名:FMT97、沈降法による粒子径が2μm以下の粒子の割合:97%、D50=0.64μm)82重量部(固形分)および2級クレー(IMERYS社製、商品名:KCS、D50=4.9μm)18重量部(固形分)を用い、これに接着剤としてスチレン-ブタジエン系共重合ラテックスを5重量部、酸化澱粉7.5重量部を配合して、さらに水を加えて固形分濃度55重量%の塗工液1を得た。前記原紙の片面に、当該顔料塗工液をブレードコーターで乾燥塗工量が5.5g/m2となるように塗工(目標塗工量)し、その後乾燥して塗工紙を得た。後述する方法で当該塗工紙を評価した。
【0031】
[実施例2]
塗工量を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同じ方法で塗工紙を得て、評価した。
【0032】
[実施例3]
顔料として2級クレー(IMERYS社製、商品名:KCS、D50=4.9μm)100重量部(固形分)を用いた以外は、塗工液1と同様にして塗工液2を得た。塗工液1を塗工液2に変更した以外は、実施例1と同じ方法で塗工紙を得て評価した。
【0033】
[比較例1、2]
目標塗工量を4.0g/m2、3.0g/m2にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同じ方法で塗工紙を得て評価した。
【0034】
[比較例3、4]
原紙2を線圧20kgでカレンダー処理して原紙1とし、これを用いた以外は実施例2、比較例1とそれぞれ同じ方法で塗工紙を得て評価した。
【0035】
[比較例5]
比較例3で得た塗工紙を線圧60kgでカレンダー処理し、比較例3と同じ方法で塗工紙を得て評価した。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
表3に示すとおり、本発明の塗工紙はコールドセット用オフセット印刷において優れたインキ乾燥性、インキ着肉および印刷光沢を有することが明らかである。
【0040】
以下に評価方法の詳細を説明する。
(1)白紙光沢度
JIS P8142に基づいて測定した。
(2)坪量
JIS P8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した。
(3)紙厚および密度
JIS 8118に記載の「紙および板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
(4)王研式平滑度
JIS P8155に基づいて測定した。
(5)白色度
ISO白色度測定方法:JIS P8148に準拠し、村上色彩株式会社製色差計CMS-35SPXにて、紫外光を含む光源にて測定した。
(6)インキ乾燥性
手動式RI印刷機(株式会社明製作所製)にて、コールドセット用オフセット印刷(DICグラフィックス株式会社製 Media Shine 墨)を行い、印刷1分経過後の印刷物を塗工紙に転写し、その塗工紙の汚れ具合を目視および数値により評価を行った。数値評価は、X-Rite(エックスライト社製)を用い、Y値差(白紙-インキ転写部)を評価した。
A:インキの転写が少なく、乾燥性に優れる。
B:インキの転写がややあるが使用に問題ない。
C:インキが乾燥しておらず、使用できない。
(7)インキ着肉濃度
前記(6)で印刷したサンプルについて、印刷1時間後の印刷濃度をX-Rite(エックスライト社製)を用いて測定した。
A: 1.50超でありインキ着肉が良好。
B: 1.40~1.50でありインキ着肉がやや良好。
C: 1.40未満でありインキ着肉が不良。
(8)印刷光沢度
前記(6)で印刷したサンプルについて、印刷後23℃、相対湿度50%の環境下で1日放置後の印刷光沢度を、JIS P-8142に基づいて測定した。当該印刷光沢度は、コールドセット用新聞インキを使用し、印刷濃度が1.6となるようにベタ印刷した際の75°光沢度に相当する。
A: 35%超であり印刷光沢がかなり良好。
B: 30~35%であり印刷光沢がやや良好。
C: 30%未満であり印刷光沢が不良。