(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】実験室温度調節装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20231120BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20231120BHJP
C12M 1/38 20060101ALI20231120BHJP
B01L 1/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/00 Z
C12M1/38 Z
B01L1/00 C
(21)【出願番号】P 2020548655
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2019056697
(87)【国際公開番号】W WO2019175432
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-10-13
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501186645
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック シュテーラー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック シュエネマン
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ ティマン
(72)【発明者】
【氏名】ホーケ マルツェン
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02438683(GB,A)
【文献】中国実用新案第203112845(CN,U)
【文献】米国特許第06177271(US,B1)
【文献】特開平01-222769(JP,A)
【文献】特開2013-027384(JP,A)
【文献】中国実用新案第204342796(CN,U)
【文献】米国特許第06518059(US,B1)
【文献】特開2006-122019(JP,A)
【文献】特開平11-046752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00
C12M 1/00
B01L 1/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標温度T
targetで実験室試料を温度調節するための実験室温度調節装置(1)であって、
*チャンバ空間(9)の内側に実験室試料を受容するためのチャンバ(2)であって、その外側は、少なくとも1つのチャンバ壁(2a)と、チャンバ開口部を閉じる1つのチャンバドア(16b)とによって形成され、前記チャンバ開口部を通って前記チャンバの内部にユーザがアクセスすることができる、チャンバ(2)と、
*前記チャンバを温度調節するための温度制御ユニット(6)であって、前記チャンバの外側に熱接触して取り付けられた温度制御ユニット(6)と、
*前記チャンバの外側に熱接触して取り付けられ、温度T
akを記録する温度センサ(3)と、
*前記温度制御ユニット、前記温度センサ及び前記チャンバを環境から熱的に絶縁する絶縁要素(4)と、
*前記温度センサ及び温度制御ユニットによって前記温度T
akを、予め設定された値T
x0を有する設定点温度に調整して、
温度設定T
ak
がT
x0
となるときに、前記チャンバ内部の温度T
K
がT
target
になるように構成され、前記値T
x0は、チャンバ内の目標温度T
K=T
targetとは異なる、電気コントローラ(5)と、を具備
し、
前記温度制御ユニットは、電力P
temp
(t)によって、温度設定T
ak
=T
x0
の間に時間の関数として動作し、前記電気コントローラは前記電力P
temp
(t)及び時間依存値T
ak
(t)を記録し、前記電気コントローラは、前記電力P
temp
(t)及び測定温度T
ak
(t)の関数として、前記チャンバ内の温度として温度T
Kb
を計算するように構成されたデータ処理ユニットを具備し、
前記実験室温度調節装置は、前記チャンバドアの開閉を記録するチャンバドアセンサを具備するか、
あるいは、
前記実験室温度調節装置は、ハウジングドアであって、開いたときに、ユーザが開いた前記チャンバドアを介して前記チャンバの内部にアクセスすることができるようにするハウジングドアを有する外側ハウジングと、前記ハウジングドアの開閉を記録するハウジングドアセンサとを具備し、
これにより、前記電気コントローラは、前記チャンバドア又はハウジングドアの開閉を時間の関数として記録し、前記チャンバ内の温度としてのほか、前記チャンバドア又はハウジングドアが開閉される時点の関数として温度T
Kb
を計算するように構成される、実験室温度調節装置。
【請求項2】
前記チャンバ内の温度を測定し、前記温度センサ及び温度制御ユニットによって、前記値T
x0を有する設定点温度にT
akを調整する前記電気コントローラの温度制御のための測定要素として機能する温度センサを備えていない、請求項1に記載の実験室温度調節装置。
【請求項3】
前記電気コントローラはデータ記憶ユニットを具備し、前記データ記憶ユニットには温度T
ak=T
x0を設定する目的で前記データ記憶ユニットから取得される少なくとも1つの所定の値T
x0が保存される、請求項1又は2に記載の実験室温度調節装置。
【請求項4】
前記電気コントローラは、前記実験室温度調節装置の前記チャンバドア又はハウジングドアを開閉した後の温度T
Kb(t)を、時間tの関数として、以下の数式に従う前記チャンバ内の温度として計算するように構成され、
【数1】
ここで、T
offsetはT
offset=T
x0-T
targetによって規定され、P
basis(t)は、所与の周囲温度にて定常状態で前記チャンバドア又はハウジングドアを開く前に前記温度制御ユニットによって付与される電力であり、Fは倍率である、請求項
1に記載の実験室温度調節装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の実験室温度調節装置のチャンバ内の目標温度T
targetを設定する方法(100)であって、
・機器固有の値T
x0を判定するステップであって、T
x0は、前記チャンバ内の温度T
KのT
K=T
targetへの設定が温度設定T
ak=T
x0に由来するように予め設定される、ステップと、
・外気温度T
akをT
ak=T
x0に設定して、前記チャンバ内の温度T
KがT
K=T
targetに設定されるようにするステップと、を含む方法。
【請求項6】
T
x0は、
・チャンバの熱平衡を待つステップと、
・検証されたやり方で、前記チャンバ内の温度T
Kを前記チャンバの熱平衡状態でT
K=T
targetに調整するステップと、
・前記実験室温度調節装置の前記チャンバの外側にある外部温度センサT
akを使用して、前記チャンバ内の現時点で確実に設定された温度T
K=T
targetにて、T
x0を判定するステップと、を含む較正方法(200)によって事前に判定される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
T
K=T
targetは、較正目的で前記チャンバ内に設置された移動式温度センサT
insideを前記実験室温度調節装置の前記電気コントローラに接続して、
制御回路であって、前記チャンバ内の前記移動式温度センサT
insideが前記制御回路の測定要素として動作し、前記温度制御ユニットが前記制御回路の制御要素として動作する制御回路を確立することによって、
設定される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の実験室温度調節装置の前記チャンバ内の前記温度T
Kを推定する方法(300)であって、
・請求項
6又は
7に記載の較正方法に特に従って機器固有の値T
x0を判定するステップであって、T
x0は、前記チャンバ内の温度T
KのT
K=T
targetへの設定が前記温度設定T
ak=T
x0に由来するように予め設定される、ステップと、
・機器固有の値Fを判定するステップと、
・特に、温度設定T
ak=T
x0を介して前記チャンバ内の温度T
KをT
K=T
targetに設定するステップと、
・特に、前記実験室温度調節装置の前記チャンバドア及び/又はハウジングドアを開閉するステップと、
・計算により前記チャンバ内の値T
Kを推定するステップと、を含む方法。
【請求項9】
前記チャンバ内の前記値T
Kは、以下の計算により推定され、
【数2】
ここで、T
offsetはT
offset=T
x0-T
targetによって規定され、P
basis(t)は、所与の周囲温度にて定常状態で前記チャンバドア又はハウジングドアを開く前に前記温度制御ユニットによって付与される電力であり、Fは機器固有又は装置固有の値である、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記値Fは、
・前記実験室温度調節装置を既知の外気温度T
environmentを有する環境に設置するステップと、
・検証されたやり方で、前記チャンバ内の温度T
Kを、T
environmentが特に<>T
target_0である状態で、値T
K=T
target_0に設定するステップと、
・前記チャンバドア及び/又はハウジングドアをある時点t0で開き、後の時点t1で閉じるステップと、
・開閉前及び開閉中及びその後に、前記チャンバ内の温度T
inside(t)を測定し、時間の関数として前記チャンバ内の温度T
inside(t)を保存するステップと、
・数式、特に「数式1」を使用して、前記数式と測定値T
inside(t)との間の誤差を補正し、係数Fを判定するステップと、によって判定される、請求項
9に記載の方法(400)。
【請求項11】
検証されたやり方で、前記チャンバ内の温度T
Kの値T
K=T
target_0への設定は、
・移動式温度センサT
insideを前記チャンバ内に設置し、前記移動式温度センサT
insideを実験室温度調節装置の電気コントローラに接続するステップであって、
制御回路であって、前記チャンバ内の前記移動式温度センサT
insideが前記制御回路の測定要素として動作し、前記温度制御ユニットが前記制御回路の制御要素として動作する、制御回路を確立し、
制御は、前記チャンバドア及び/又はハウジングドアによって実施される、ステップによって実施される、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
培養器(1)、特に細胞培養用のCO
2培養器である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の実験室温度調節装置。
【請求項13】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の実験室温度調節装置を製造する方法であって、装置固有の値T
x0は、請求項
6又は
7に記載の較正方法に従って事前に判定される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験室試料を目標温度にて温度調節するための実験室温度調節装置(laboratory tempering device)に関する。特に、細胞培養物を成長させるための培養器に関する。さらに、本発明は、実験室温度調節装置にて目標温度を設定する方法に関する。本発明はこのほか、この実験室温度調節装置のチャンバ内の温度を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実験室温度調節装置は、実験室試料を保護環境で特定の目標温度に保持するため、特に、維持するために必要である。培養器を生物学的医療実験室で使用して、制御された周囲条件下で細胞培養物の細胞を維持し、それにより「試験管内」(in vitro)での生細胞の成長を促進する。この目的のために、環境から隔離された培養器チャンバ内の温度及びガス組成の両方かそれぞれ、湿度は、培養器の構成要素によって所望の値に維持される。真核細胞をCO2培養器で培養する必要がある。大気は、特定のCO2及びO2含有量と特定の湿度を有する空気によって形成される。多くの場合、適切な温度は37°Cであろう。そのような実験室温度調節装置は、培養器チャンバを取り囲むハウジングを有する。例えば、ハウジング開口部であって、ユーザが試料をハウジング内部、特に、培養器チャンバ内部に配置し、同チャンバから取り出すことができるハウジング開口部を有する外側ハウジングを有する。
【0003】
実験室温度調節装置の重要な要件の1つには、実験室温度調節装置のチャンバ内でユーザが希望する目標温度を正確に維持するか設定することが挙げられる。培養器には、典型的には、チャンバ内の温度センサ又はチャンバ内に接続された温度センサが測定要素として割り当てられ、培養器の温度制御ユニットが制御要素として割り当てられる制御回路が設けられる。温度制御の精度と信頼性は、温度センサの精度と信頼性がどの程度であるかに決定的な影響を及ぼす。培養器内に位置づけられた温度センサを、その寿命にわたって、実験室試料、即ち、滅菌に必要な最大180°Cの広範囲のさまざまな温度と組み合わせた洗浄剤によって引き起こされるさまざまな悪影響に暴露する。このほか、チャンバの内部を定期的に操作する実験室スタッフ及び保守担当者などのユーザによる干渉がある。温度センサの信頼性は、ここに挙げた影響の結果として、損なわれる可能性がある。ただし、その信頼性を確保するために、温度センサは一定の間隔で較正される場合があるが、これには多少の労力が伴う。このため、実験室温度調節装置の信頼性のある効率的な操作に利益をもたらすことになる対策が必要である。
【0004】
特許文献1(米国特許第6,518,059号明細書)は、密閉された培養チャンバを内部に有するハウジングと、培養器内の温度を所望の範囲に均一に保持する温度制御アセンブリとを備える実験室マイクロプレート培養器を開示する。温度制御アセンブリは、チャンバを加熱するためのハウジング内に位置決めされたヒータ、温度センサ及びコントローラを備える。
【0005】
特許文献2(米国特許第6,063,619号明細書)は、培養器本体内に嫌気性及び一定温度の環境を提供し、培養器本体と、培養器本体に配置された無蓋培養瓶と、アルミニウム製の外側円筒形ケーシング及びステンレス鋼製の内側円筒形ケーシングと、を備える培養器を開示する。平面ヒータを外側円筒形ケーシングの外面と密接に接触した状態で配置し、温度センサを外側円筒形ケーシングの壁に取り付ける。ヒータによる培養瓶の加熱は、培養器本体の前面にあるスイッチによって制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,518,059号明細書
【文献】米国特許第6,063,619号明細書
【発明の概要】
【0007】
このため、本発明の目的は、信頼性があり効率的な方法で操作することができる改良実験室温度調節装置と、実験室温度調節装置を信頼性があり効率的な方法で操作することができる方法とを提供することである。
【0008】
本発明は、請求項1に記載の実験室温度調節装置と、請求項7及び10に記載の方法とを提供することにより、この問題を解決する。特に、好ましい実施形態は従属請求項の主題である。
【0009】
本発明による実験室温度調節装置は、目標温度Ttargetにて実験室試料を温度調節するのに役立つ。この装置は、-チャンバの内部に実験室試料を受容するためのチャンバであって、その外側は、少なくとも1つのチャンバ壁と、チャンバ開口部を閉じる1つのチャンバドアとによって形成され、チャンバ開口部を通ってチャンバの内部にユーザがアクセスすることができる、チャンバと、-チャンバを温度調節するための温度制御ユニットであって、チャンバの外側に熱接触して取り付けられた温度制御ユニットと、-チャンバの外側に熱接触して取り付けられ、温度Takを記録する温度センサと、-温度制御ユニット、温度センサ及びチャンバを環境から熱的に絶縁する絶縁要素と、-温度センサ及び温度制御ユニットによって温度Takを、予め設定された値Tx0を有する設定点温度に制御して、温度設定Tak=Tx0がTK=Ttargetに設定されたチャンバ内部の温度TKになるように設けられた電気コントローラと、を備える。
【0010】
本発明による実験室温度調節装置では、チャンバ内部の温度は、チャンバの外部に位置決めされた温度センサによる測定によって温度制御ユニットを制御することにより、設定される。この構成では、温度センサは、環境とチャンバの内部とから保護された領域に位置づけられる。断熱材、特に外部ハウジングのおかげで、内部の温度設定に重要な温度センサは完全に保護される。これにより、温度センサの信頼性の高い耐用年数が延長され、実験室温度調節装置をさらに効率的に操作することができる。「温度調節」という用語は、加熱及び/又は冷却によって達成することができ、制御ユニット又は他の温度設定制御を意味する可能性がある温度の設定を概ね表す。温度Ttargetは、特にユーザが選択可能である。
【0011】
本発明によるこの概念は、驚くべきことに、断熱装置によって外部に対して断熱されたチャンバ内部の温度を確実に設定することができるようにするために、チャンバ内部の温度センサを必要としないことを示したプロトタイプ測定に基づくものである。これに代わって、チャンバの外側に位置決めされた温度センサと外部温度制御ユニットとによって温度を制御するだけで充分であることが明らかになった。18°Cから28°Cの間の外気温度で通常操作されるそのような実験室温度調節装置では、チャンバ内の温度は、使用されたそれぞれの温度調節装置のみに依存する不変の関係に従ってチャンバの外側で制御された温度に追従する。特に、この不変の関係は、実験室温度調節装置の個々の構成であって、「装置固有」(device-specific)と呼ばれる構成にのみ依存し、実験室温度調節装置の構成が常に同一の場合には、「機器固有」(apparatus-specific)と呼ばれる実験室温度調節装置のタイプにのみ依存する。
【0012】
機器固有の不変関係又は特性の場合、同一の実験室温度調節装置が、この不変関係又は特性の点で個々に異なるわけではなく、不変関係は、同一の実験室温度調節装置の全部、すなわち、実験室温度調節装置の一タイプに適用することができる。この場合、不変の関係は、装置固有又は機器固有の一定の値Tx0に関連する。チャンバ内の温度TKが、外部で測定された温度Takに相関し、外部で測定された温度Takが、チャンバ内の温度TKに追従する。実験室温度調節装置の熱流の定常平衡では、常に同じ値Tak=Tx0が達成される。このため、チャンバ内の温度TKを確実かつ正確に設定することができるようにするには、外部温度センサをTak=Tx0に設定するだけで済む。値Tx0は、チャンバ内のそれぞれの所望の目標温度TK=Ttargetごとに異なる。値のペア(Ttarget;Tx0)、あるいはそれぞれの値のうちのいくつかを、以下で説明するように、実験室温度調節装置で事前に設定し、装置固有の不変の関係の場合には個々の実験室温度調節装置で使用することができ、あるいは機器固有の不変の関係の場合には同一の実験室温度調節装置の全部で使用することができる。
【0013】
連続生産工程の全装置を同じように構成する必要がないため、構成要素をさらに柔軟に選択することができることから、Tx0又は別の特性の装置固有の仕様が有利である。
【0014】
好ましくは、実験室温度調節装置は、チャンバ内の温度を測定する温度センサを備えていない。このため、温度センサなしで温度調節を実施することができ、温度調節を点検するコストを節約することができる。これにより、実験室温度調節装置の費用効率が向上することになる。
【0015】
好ましくは、実験室温度調節装置は、チャンバ内部の温度TKを制御する制御ユニットを備えていない。好ましくは、実験室温度調節装置は、チャンバ内の温度TKを測定し、特に上記制御ユニットの測定要素として機能する温度センサを備える制御ユニットを備えていない。特に、チャンバ内の温度TKが、実験室温度調節装置の固有の特性又は上記の不変の関係の不可避の結果として、温度設定Tak=Tx0の結果としてのみ、所望の値に設定される。言い換えれば、本発明によれば、チャンバの外側の測定センサの温度Takが、少なくとも1つの温度制御ユニットを操作することにより設定温度Tx0に設定され、チャンバ内の温度TKが、 Tx0とチャンバ内の所望の目標温度TK=Ttargetとの所定の装置固有又は機器固有の相関(Ttarget;Tx0)を介してこの設定を追従する。このため、チャンバ内のこのタイプの温度制御はこのほか、従来の意味でのTKの温度設定ではないとしても、チャンバ内の温度TKの「間接設定」(indirect setting)と呼ぶことができる。
【0016】
電気コントローラは、好ましくは、データ記憶ユニットを備える。好ましくは、少なくとも1つの所定の値Tx0は、このデータ記憶ユニットに記憶され、温度Tak=Tx0を設定する目的でデータ記憶ユニットから取得される。ただし、値Tx0はデジタルだけでなくアナログでも提供できる。
【0017】
好ましくは、電子コントローラは、温度設定Tak=Tx0の間に時間tの関数として電力Ptemp(t)で温度制御ユニットを動作させるように構成される。特に、実験室温度調節装置は、電流のパルス幅変調(PWM)によって温度制御ユニットを動作させるように構成されてもよい。次に、電流の振幅が変化しないことが好ましいため、特にPWMデューティサイクルを通じて電力を判定する。
【0018】
好ましくは、電子コントローラは、電気コントローラが上記電力Ptemp(t)及び時間依存値Tak(t)を判定することができるように構成される。電子コントローラは、好ましくは、データ処理ユニット、特にコンピュータプロセッサを備える。好ましくは、データ処理ユニットは、チャンバ内の温度TKを表すか推定する温度として値TKbを判定するか計算するように構成される。これは、特に、データ処理ユニットが、特に計算規則又は少なくとも1つの数式によって、少なくとも1つの他のパラメータに依存する値として値TKbを判定するように実施される。データ処理ユニットは、好ましくは、電力Ptemp(t)及び測定された温度Tak(t)の関数として温度TKbを計算するように構成される。データ処理ユニットは、それに応じて、好ましくは、TKbを判定するようにプログラムされる。特に、電子コントローラ又はデータ処理ユニットは、コントローラ又はデータ処理ユニットによって実行されたときにTKbを計算するコンピュータプログラムを備える。コンピュータプログラムは、実験室温度調節装置のデータ記憶ユニットに保存されてもよい。特に、コントローラ又はデータ処理ユニットは、本発明による方法のうちの1つ及び/又は本発明による方法のうちの1つの方法ステップの少なくとも1つ、いくつか又は全部を実行するように構成される。
【0019】
実験室温度調節装置は、好ましくは、チャンバドアの開閉を記録するチャンバドアセンサを備える。外側ハウジングとハウジングドアとを備えた実験室温度調節装置の場合、培養器の場合に最もよくみられるように、ハウジングドアの開閉を記録するハウジングドアセンサがあることが好ましい。実験室温度調節装置は、好ましくは、ハウジングドアであって、開いたときに、ユーザが開いたチャンバドアを通してチャンバの内部にアクセスすることができるようにするハウジングドアを有する外側ハウジングと、特に、ハウジングの開閉を記録するハウジングドアセンサとを備える。電気コントローラは、好ましくは、時間の関数としてチャンバドア又はハウジングドアの開閉を記録し、チャンバ内の温度としてのほか、チャンバドア又はハウジングドアが開閉される時点の関数として、温度TKbを計算するように構成される。これは、チャンバ内の温度が本発明では必ずしも測定されないが、わかるようになるという問題を解決する。
【0020】
電気コントローラは、好ましくは、実験室温度調節装置のチャンバドア又はハウジングドアを開閉した後の温度T
Kb(t)を、以下の好ましい数式に従ってチャンバ内の温度として時間tの関数として計算するように構成される。
【数1】
ここで、T
offsetがT
offset=T
x0-T
targetで規定され、P
basis(t)が、所与の周囲温度にて定常状態でチャンバドア又はハウジングドアを開く前に、温度制御ユニット又はいくつかの温度制御ユニットによって付与される電力であり、Fが倍率である。その判定について以下に説明する。好ましくは、値Fは、装置固有であり、好ましくは、電気コントローラのデータ記憶ユニットにデジタルで保存されるか、アナログで提供される。ただし、値Fはこのほか、機器固有であってもよい。
【0021】
Pbasis(t)は特に、時間の経過とともに変化する可能性のある値Pbasis(t)の移動平均である。そのような平均化により、精度が向上する。電気コントローラは、好ましくは、時間の関数として複数の値Pbasis(t)を保存するように構成される。特に、電気コントローラは、好ましくは、時間の関数として、チャンバドア又はハウジングドアの開閉(ZT(t)(「ドアの状態」)と略される)を記録して保存するように構成される。電気コントローラは、好ましくは、情報Pbasis(t)とZT(t)とを、特にデータPbasis(t)の移動平均として、特に略してPWMと呼ばれるデューティサイクル値の移動平均として、組み合わせることにより、定常平衡状態でドアが開く前の電力の平均値を判定するように構成される。実験室温度調節装置の熱流の定常平衡では、Pbasis(t)は通常18°C~28°Cの外気温度に依存する。
【0022】
特定のタイプの実験室温度調節装置の場合、Tx0は、好ましくは、製造元によって指定される。チャンバの熱平衡にて実施される較正手順では、Tx0は、好ましくは、この実験室温度調節装置又は別の同一の実験室温度調節装置にてチャンバ内の所定の温度TK=Ttargetで外部温度センサTakによって測定される。この較正手順では、TK=Ttargetは、検証済みの方法で設定されるのが好ましい。即ち、特に、構成のためにチャンバ内の移動式較正済み温度センサを実験室温度調節装置の電気コントローラに接続して、チャンバ内の移動式温度センサTinsideが制御回路の測定要素として動作し、温度制御ユニットが制御回路の制御要素として動作する制御回路を確立することによって制御された較正済みセンサを用いて設定されるのが好ましい。
【0023】
特定のタイプの実験室温度調節装置の場合、倍率Fは、製造元が指定することが好ましい。この目的のために、実験室温度調節装置は、既知の外気温度Tenvironmentを有する環境に設置される。Tenvironmentは、例えば、18℃である。チャンバTK内の温度は、値TK=Ttarget_0、例えば、Ttarget_0=50°Cに設定される。特に、TenvironmentはTtarget_0(Tenvironment<>Ttarget_0)と等しくない。このために、チャンバ内に設置された移動式温度センサTinsideを、実験室温度調節装置の電気コントローラに接続して、チャンバ内の移動式温度センサTinsideが制御回路の測定要素として動作し、温度制御ユニットが制御回路の制御要素として動作する制御回路を確立する。制御は、チャンバドア及び/又はハウジングドア(培養器の場合はハウジングドアセンサ)を閉じた状態で実施される。チャンバドアは、ある時点t0で開かれ、t0より1~10分遅れ得るその後の時点t1で閉じられる。チャンバ内の温度Tinside(t)が測定され、開閉前及び開閉中の時間の関数として保存される。好ましくは、上記の「数式1」又は別の数式は、次に、適合曲線として使用されて、適合曲線と値Tinside(t)との間の誤差補償によって係数Fを判定する。それにより、好ましくは、チャンバドア又はハウジングドアの開閉の間の期間のみ、そのような誤差補償は特に考慮される必要がある。好ましくは、このように判定された係数Fを、同じタイプの他の実験室温度調節装置の全部に保存し、チャンバ内の温度を推定するか計算するために使用する。係数Fは、好ましくは、実験室温度調節装置の電気コントローラのデータ記憶ユニットに保存される。
【0024】
好ましくは、実験室温度調節装置は、表示ユニット上に視覚的表示を示すように構成された表示ユニットを有するユーザインターフェースユニットを備える。ユーザインターフェースユニットが、実験室温度調節装置、特に培養器の一体部分であっても、同じタイプのいくつかの実験室温度調節装置で使用することができるモジュールであってもよい。実験室温度調節装置又はユーザインターフェースユニットの電気コントローラは、好ましくは、ユーザインターフェースユニット用のコントローラと、そのような実験室装置又は培養器のインターフェースユニットを介して、実験室装置、特に培養器とのデータ接続を確立するための通信ユニットと、ユーザのユーザ入力を記録するための入力ユニットと、ユーザに情報を出力するための出力ユニット、特にディスプレイユニット又はディスプレイ、特にタッチスクリーンディスプレイと、を備える。ユーザインターフェースユニットのコントローラは、好ましくは、データ接続を介して実験室温度調節装置又は培養器のコントローラとデータを交換するように構成される。実験室温度調節装置及び/又はそのコントローラとユーザインターフェースユニットとは、特に、ユーザがユーザインターフェースユニットを介して所望の目標温度Ttargetを選択するか入力することができ、特にこのように入力された目標温度Ttargetが、実験室温度調節装置のデータ記憶ユニットに保存されるように構成されてもよい。
【0025】
好ましくは、電気コントローラは、特に連続的な再計算が値TKb(t)の変化を示すとき、表示ユニットに計算値TKb(t)を出力し、指定された間隔で更新するように構成される。
【0026】
本発明はこのほか、本発明による実験室温度調節装置のチャンバ内の目標温度Ttargetを設定する方法に関する。この方法は、
・特に上記方法に従う機器固有の値Tx0を判定するステップであって、Tx0は、チャンバ内の温度TKのTK=Ttargetへの設定が温度設定Tak=Tx0に由来するように予め設定される、ステップと、
・外気温度TakをTak=Tx0に設定して、チャンバ内の温度TKがTK=Ttargetに設定されるようにするステップと、を含む。
【0027】
好ましくは、本発明による実験室温度調節装置、特にそのコントローラは、この目的のためにプログラムされたコントローラのデータ処理ユニットによって特に、実験室温度調節装置のチャンバ内の目標温度Ttargetを設定するための上記の方法を実行するように構成される。このデータ処理ユニットは、特に上記の方法を実装するコンピュータプログラムを実行するように構成される。
【0028】
本発明はこのほか、本発明による実験室温度調節装置のチャンバ内の温度T
Kを推定する方法に関する。この方法は、
・上記方法に特に従って機器固有の値T
x0を判定するステップであって、T
x0は、チャンバ内の温度T
KのT
K=T
targetへの設定が温度設定T
ak=T
x0に由来するように予め設定される、ステップと、
・上記方法に特に従って機器固有の値Fを判定するステップと、
・特に、温度設定T
ak=T
x0を介してチャンバ内の温度T
KをT
K=T
targetに設定するステップと、
・特に、実験室温度調節装置のチャンバドア及び/又はハウジングドアを開閉するステップと、
・以下の計算によりチャンバ内の値T
Kを推定するステップであって、
【数2】
ここで、T
offsetはT
offset=T
x0-T
targetによって規定され、P
basis(t)は、所与の周囲温度にて定常状態でチャンバドア又はハウジングドアを開く前に温度制御ユニットによって付与される電力であり、P
temp(t)は、温度制御ユニットによって継続的に取得され、温度センサT
akによる温度制御に必要である電力であり、振幅がわかっているときに、パラメータP
temp(t)、P
basis(t)がPWMのデューティサイクルとして示される場合、係数Fの単位は「ケルビン」である、ステップと、を含む。
【0029】
好ましくは、本発明による実験室温度調節装置、特にそのコントローラは、この目的のためにプログラムされたコントローラのデータ処理ユニットによって特に、実験室温度調節装置のチャンバ内の温度TKを推定する上記の方法を実施するように構成される。このデータ処理ユニットは、特に上記の方法を実装するコンピュータプログラムを実行するように構成される。
【0030】
実験室試料を温度調節する実験室温度調節装置は、特に、実験室試料を保管するための温度制御されたキャビネットである。そのような装置は電気的に作動し、電圧端子を備える。しかし、本発明による実験室温度調節装置はこのほか、実験室試料を温度調節するだけでなく、少なくとも1つの実験室試料に対して異なる処理を実施するように構成されてもよい。実験室温度調節装置は、少なくとも1つの実験室試料を処理するように構成されてもよい。実験室温度調節装置は、特に、少なくとも1つの液体実験室試料を自動的に処理するように構成された実験室機械であってもよい。そのような実験室機械はこのほか、液体処理ロボットとして知られている。実験室機械のチャンバは、環境から分離された作業空間であってもよい。この作業空間では、少なくとも1つの実験室試料を、自動処理ユニット、特に自動ピペット操作ロボットによって輸送したり、及び/又は投与したりしてもよい。
【0031】
温度制御されたキャビネットは、実験室試料を温度調節する。即ち、ハウジングの内部、ひいては内部に保管された実験室試料を、特にユーザが温度制御を用いて特定の許容範囲内で設定可能な設定温度に維持する。上記温度は、例えば、加熱キャビネット又は培養器の場合、室温(周囲温度)よりも高くてもよい。あるいは、例えば、冷蔵庫又は冷凍庫の場合、室温より低くてもよい。好ましくは、調整キャビネットとして設計された実験室キャビネットでは、ハウジング内部に存在する気候パラメータがこのほか、特定の許容範囲内で制御される。上記気候パラメータは、湿度及び/又はガス濃度、例えばCO2、O2及び/又はN2の濃度であってもよい。そのような調整キャビネットは、例えば、生細胞培養物から構成される実験室試料用の培養器である。
【0032】
好ましくは、実験室温度調節装置はハウジングを備える。ハウジングは、外側ハウジングであることが好ましい。ハウジングの壁が環境と接触している。このため、ハウジングドアは、閉じられたときに環境に隣接する外側ハウジングドアであってもよい。
【0033】
ハウジングドアは、特に、ハウジングドアをハウジングと枢動可能に接続するヒンジユニットを備える。そのようなヒンジ付きドアは、開位置と閉位置との間の回転によって移動する。ヒンジユニットは、特に(実験室キャビネットが意図されたように使用される場合)、ハウジング開口部に当接する直方体ハウジングの垂直に向けられた外縁上に配置されてもよい。実験室キャビネットが意図したとおりに使用される場合、直方体ハウジングの底板は水平に配置され、ハウジングの側壁は特に垂直に配置され、ハウジングのカバー板は底板の反対側に特に水平に配置される。
【0034】
しかし、チャンバドア又はハウジングドアはこのほか、開位置と閉位置との間の並進運動によって動かされるスライドドアであってもよい。このほか、チャンバドア又はハウジングドアの混合された旋回/並進運動が可能である。
【0035】
好ましくは、データ処理ユニットは、実験室温度調節装置の機能を制御する電気コントローラの一体部分である。コントローラの機能は、特に電子回路によって実装される。コントローラは、データを処理するための中央処理装置(CPU)及び/又はデータ処理装置を備え得るマイクロプロセッサを備えてもよい。コントローラ及び/又はデータ処理ユニットは、好ましくは、制御ソフトウェア又は制御プログラムとも呼ばれる制御プロセスを実行するように構成される。培養器及び/又はコントローラの機能は、方法ステップで説明されてもよい。機能は、制御プログラムの一部として、特に制御プログラムのサブプログラムとして実現されてもよい。
【0036】
実験室温度調節装置は、好ましくは培養器である。培養器は実験室用培養器、ひいてはさまざまな生物学的発達及び成長プロセスのための制御された気候条件を生成して達成するために使用される装置である。実験室温度調節装置は、培養器チャンバ内の制御されたガス及び/又は湿度及び/又は温度の条件で微気候を作成して維持するのに特に役立ち、それによりこの処理は時間に依存する可能性がある。実験室培養器、特に実験室培養器の処理ユニットは、特にタイマーと、特にタイマークロックと、加熱及び/又は冷却ユニットとして、好ましくは培養器チャンバに供給された置換ガスを制御するための調整器として設計された温度制御ユニットと、培養器の培養器チャンバ内でガスを構成するため、特に、ガスのCO2及び/又はO2及び/又はN2の濃度を調整するための調整装置及び/又は培養器の培養器内の湿度を調整するための調整装置と、を備えてもよい。
【0037】
培養器は、特に培養器チャンバ(=チャンバ)と、このほか好ましくは、少なくとも1つの温度制御ユニットが制御要素として割り当てられ、少なくとも1つの温度センサが測定要素として割り当てられる少なくとも1つの制御回路を有する制御ユニットとを備える。培養器はこのほか、実施形態によっては、湿度を制御するために使用されてもよい。培養器チャンバ内の水で満たされた受け皿を、蒸発によって湿度を制御するために加熱しても冷蔵してもよい。CO2培養器が、特に動物又はヒトの細胞の培養に役立つ。培養器は、少なくとも1つの細胞培養容器を回転させるための回転装置及び/又は少なくとも1つの細胞培養容器を振動させるか移動させるための撹拌器を備えてもよい。
【0038】
制御装置は、培養器のプログラムパラメータ又は制御パラメータが、他のデータ、特にZT(t)の関数として自動的に選択されるように構成されてもよい。培養器では、制御パラメータによって制御される少なくとも1つの細胞培養容器内の少なくとも1つの細胞培養物の処理が、特に、少なくとも1つの細胞培養物に対して実施される気候処理に等しい。気候処理に影響を及ぼすために使用される潜在的なパラメータ、特にプログラムパラメータ、特にユーザパラメータは、特に、少なくとも1つの試料が培養される培養器空間の温度、培養チャンバ内のO2及び/又はCO2及び/又はN2の相対ガス濃度、培養チャンバ内の湿度及び/又はコース、特にいくつかのステップを含む培養処理プログラムの順序に影響を及ぼすか規定する少なくとも1つのフローパラメータを規定する。
【0039】
外側、特にチャンバ壁、特に上部チャンバ壁と特に熱接触するように配置された1つ又は複数の温度センサが設けられる。熱接触を作り出すために、温度センサは、外側に、特に直接、あるいは熱伝導性ペースト、熱伝導性ホイル又は熱伝導性構成要素などの熱伝導媒体を介して接触してもよい。温度センサは外側に押し付けて取り付けられてもよい。また、複数の10個以上の温度センサを設けてもよい。温度センサが、例えば、Pt100又はPt1000温度プローブであってもよい。
【0040】
温度制御ユニットは、組み合わされた加熱/冷却ユニットであってもよい。好ましくは、温度制御ユニットは加熱ユニットのみである。特に、温度制御ユニットは特に電気抵抗ワイヤを介して熱を生成してもよい。コントローラは1つ又は複数の制御回路を備えてもよい。制御回路は、それぞれが少なくとも1つの温度制御ユニットと、特に、チャンバの外側と熱接触して特に取り付けられて温度Toutside Takを記録する少なくとも1つの温度センサと、を備えてもよい。いくつかの制御回路の場合、制御要素として機能する温度制御ユニットと、測定要素として機能する温度センサとは、特に、チャンバの外側の異なる位置に、特に、チャンバのさまざまな外側、例えば、天井壁、底壁、側壁、前壁及び/又は後壁に配置される。いくつかの制御回路の場合、好ましくは、同じ数の装置固有の値Tx0は、各制御回路にその独自の値Tx0が割り当てられた状態で、実験室温度調節装置のデータ記憶ユニットに保存される。チャンバ内の目標温度Ttargetを設定するために、各温度センサの温度が独自の値Tx0に調整される。好ましくは、N個の制御回路が設けられ、制御回路の温度制御ユニット及び温度センサは、特にチャンバの外壁のさまざまな位置に配置されるが、好ましくは1<N<10であり、好ましくはNは、特に{1 、2、3、4、5、6}から選択される。N=4が特に好ましい。
【0041】
実験室温度調節装置が、断熱要素又は他の断熱装置によって互いに熱的に分離されているいくつかのチャンバを備える場合、個別の目標温度Ttargetを、対応する設定Tak=Tx0によって設定される各チャンバに提供してもよい。
【0042】
実験室温度調節装置又は培養器は、正確に1つのチャンバを有してもよいが、このほか、いくつかのチャンバであって、その雰囲気(温度、相対ガス濃度、湿度)が特に個別又は集合的に調整可能ないくつかのチャンバを備えてもよい。内部チャンバの典型的なサイズは50から400リットルである。
【0043】
本発明による実験室温度調節装置の好ましい実施形態を、特に、本発明による方法の1つの説明から収集してもよい。本発明による方法の好ましい実施形態を、特に、本発明による実験室温度調節装置の説明から収集してもよい。
【0044】
本発明による実験室キャビネットのさらに好ましい実施形態を、図による例示的な実施形態の説明から収集してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1a】
図1aは、例示的な実施形態に従う本発明による培養器の斜視正面図である。
【
図3】
図3は、移動式温度センサで測定された実際のチャンバ温度と比較した温度top_heating circuit(加熱回路上端温度)=T
ak+T
offsetを示す図である。
【
図4】
図4は、チャンバドアとハウジングドアとが最初に開いて閉じたときに、培養器のさまざまな温度関連パラメータが時間に対して適用される状態を示す図である。
【
図5】
図5は、移動式温度センサで測定された時間に対する真のチャンバ温度T
Kの曲線と、誤差補正に基づいて計算された適合曲線とを示す図である。
【
図6】
図6は、本発明による方法の例示的な実施形態を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明による方法の例示的な実施形態を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明による方法の例示的な実施形態を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明による方法の例示的な実施形態を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明による方法の例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1aは、細胞培養物を成長させるための培養器1、この場合、真核細胞を成長させるためのCO
2培養器として構成された実験室温度調節装置を示す。培養器は、少なくとも1つの細胞培養容器であって、その中で成長する細胞培養物を含有する少なくとも1つの細胞培養容器を受容するための培養器チャンバ(
図2参照)と、上部チャンバ壁2aの外側に熱接触して取り付けられた温度センサ3と、を有する。培養器は、
*チャンバ空間9の内側に実験室試料を受容するためのチャンバ2であって、その外側は、少なくとも1つのチャンバ壁2aと、チャンバ開口部2bを閉じる1つのチャンバドア16bとによって形成され、チャンバ開口部2bを通ってチャンバの内部にユーザがアクセスすることができる、チャンバ2と、
*チャンバ2を温度調節するための温度制御ユニット6であって、上部チャンバ壁2aによって形成されたチャンバの外側2aに熱接触して取り付けられた温度制御ユニット6と、
*チャンバ2の同一の外側2aに熱接触して取り付けられ、温度T
akを記録する温度センサ3と、
*温度制御ユニット、温度センサ及びチャンバを環境から熱的に絶縁する絶縁層4及びハウジングドア16を備える絶縁要素(4、16)と、
*温度センサ及び温度制御ユニットによって温度T
akを、予め設定された値T
x0を有する設定点温度に調整して、温度設定T
ak=T
x0がT
K=T
targetに設定されたチャンバ内部の温度T
Kになるように構成された電気コントローラ5と、を備える。
【0047】
培養器1は、電気コントローラ5がユーザに情報を出力し、ユーザが入力を実施することができるユーザインターフェースユニット8のディスプレイを備える。表示される情報には、特にチャンバ空間9内の推定温度TKbが含まれる。培養器は、チャンバTK内の温度を搭載された手段で測定することができるセンサを備えていない。電気コントローラ5は、ハウジング7の電子構成要素14内に位置決めされるのに対し、チャンバ2とハウジング7との間に配置された絶縁層4の外側の構成要素14は、配置された培養器の裏側に配置される。構成要素14はこのほか、培養器の電圧源6aを備える。さらに、N2とCO2のガス接続部17が培養器の背面に設けられる。
【0048】
図3は、検証された移動式温度センサによってチャンバ2の内部空間9にて測定することができるチャンバ温度T
K(「測定温度」(measured temperature))が、ハウジングドア16とチャンバドア16bとが開いた後、37℃から約26℃に下がり、ドアが再び閉じると、チャンバ温度が徐々に初期値の37°Cに戻ることを示す。これは、外側に配置された温度センサ3の温度T
ak(「加熱回路上端」(top heating circuit))を所定値、この場合は装置固有の値T
x0に調整することによって実施される。この値T
x0は、目標温度と異なってもよく、通常は異なることになるが、必ずしも異なっている必要はない。例示的な培養器の特定の場合では、この値は37℃未満であったが、これは、T
akを測定するために使用される温度センサが較正されていないためである。実験室温度調節装置の温度精度の較正が値T
x0を予め設定することによって実施されるため、そのようなセンサの較正は必要ない。値top_heating circuit=T
ak+T
offsetはわずかしか変化しないことがわかる。しかし、本発明の教示によれば、この値はチャンバ温度T
Kとしっかりと関連している。
【0049】
図4は、培養器のさまざまな温度関連パラメータが、チャンバドアとハウジングドアとが最初に開いたとき(t
0=70sの最初の縦線)と次に閉じたとき(t
1=370sの2番目の縦線)とに、時間に対して適用される図を示す。時点t
0=70sでは、温度制御ユニット6(加熱回路)の電力入力を特徴付ける基本性能値P
basis(t)(「PWM_basis」)が記録され、(その時点ですでに経過しているが、電気コントローラのメモリーに保存されている)P
Basis(t)のここでは30個の値の移動平均として計算される。温度制御の電力入力の曲線P
basis(t)はPWMと呼ばれ、目盛りは右側の縦軸にある。ここでの値は、パルス幅変調によって制御される温度制御ユニットの電力供給の時間依存デューティサイクルを示す約0.01~0.3の値である。このほか、説明及びさらに深い理解のために、実験用培養器の内部空間9に設置された検証済みの移動式温度センサによって測定された真のチャンバ温度T
Kが示される。チャンバ壁2aの外側の温度センサ3の温度は、曲線「T_mess」として示される。曲線「T_ top circle」は、値T
offset(「T_offset」)からT_top circle=T
ak(t)+T
offsetとして追従する。このほか、曲線T
Kb(t)、即ち、「T_anz」が入力される。この曲線に従って変化する温度値T
Kbは、計算されたチャンバ温度としてディスプレイ8に示される。チャンバの内部空間9の値T
Kは、この例で適用される数式1に基づく計算によって推定される。
【数3】
【0050】
ここで、機器固有の値Tx0=Ttarget+Toffsetである。ここでは、Ttarget=37°Cである。
【0051】
図5は、機器固有の値Fがどのように判定されるかを説明するための図(時間対温度)を示す。この場合も、真のチャンバ温度T
K(「18/50-10min-ACTUAL」)は、実験用培養器の内部空間9に設置された検証済みの移動式温度センサによって測定されるときに、適用される。周囲温度は18℃であって、チャンバ内の温度は50℃に設定された。チャンバ温度T
Kは扉を開けた後に下がった。適合曲線は、理想的には、パラメータの変化(誤差補正)によってドアを開いてから閉じるまでの期間の曲線T
K(t)(「18/50-10min-calculated」)に適用される。この例では、適合曲線は数式1に従い、培養器に対して定義された係数Fを導出することができる。機器固有の値T
x0とFの両方がデータ記憶ユニットに格納される。チャンバ内の温度は、T
x0と温度センサT
akの温度制御によって設定することができる。ドアを開いた後のチャンバ内の温度プロファイルは、倍率Fを使用して推定することができる。
【0052】
図7は、実験室温度調節装置のチャンバ、特に
図1から
図5に従う本発明による実験室温度調節装置の目標温度T
targetを設定するための本発明による方法100の一例を示す。この方法は、
・特に較正方法200によって機器固有の値T
x0を判定するステップであって、T
x0は、チャンバ内の温度T
KのT
K=T
targetへの設定が温度設定T
ak=T
x0に由来するように予め設定される、ステップ(101)と、
・外気温度T
akをT
ak=T
x0に設定して、チャンバ内の温度T
KがT
K=T
targetに設定されるようにするステップ(102)と、を含む。
【0053】
図6は、実験室温度調節装置、特に
図1から
図5に従う本発明による実験室温度調節装置を較正するための本発明による較正方法200の一例を示す。この構成方法は、
・チャンバの熱平衡を待つステップ(201)と、
・検証された方法で、チャンバ内の温度T
Kをチャンバの熱平衡状態でT
K=T
targetに調整するステップ(202)と、
・実験室温度調節装置のチャンバの外側にある外部温度センサT
akを使用して、チャンバ内の現時点で確実に設定された温度T
K=T
targetにて、T
x0を判定するステップ(203)と、
・実験室温度調整装置又はそのデータ記憶ユニットにT
x0を保存するステップ(204)と、を含む。
【0054】
ここで、チャンバ内の温度TKは、検証可能な方法で、TK=Ttargetを制御することによって、TK=Ttargetに設定される。この制御は、較正用にチャンバ内に設置された移動式温度センサTinsideを実験室温度調節装置の電気コントローラに接続して、制御回路であって、チャンバ内の移動式温度センサTinsideが制御回路の測定要素として動作し、温度制御ユニットが制御回路の制御要素として動作する制御回路を確立するステップによって実施される。
【0055】
図10は、実験室温度調節装置、特に
図1から
図5の1つによる実験室温度調節装置のチャンバ内の温度T
Kを推定するための本発明による方法300の一例を示す。この方法は、
・請求項8又は9に記載の較正方法に特に従って機器固有の値T
x0を判定するステップであって、T
x0は、チャンバ内の温度T
KのT
K=T
targetへの設定が温度設定T
ak=T
x0に由来するように予め設定される、ステップ(301)と、
・機器固有の値Fを判定するステップ(302)と、
・特に、温度設定T
ak=T
x0を介してチャンバ内の温度T
KをT
K=T
targetに設定するステップ(303)と、
・特に、実験室温度調節装置のチャンバドア及び/又はハウジングドアの開閉を記録するステップ(304)と、
・以下の計算によりチャンバ内の値T
Kを推定するステップであって、
【数4】
ここで、T
offsetはT
offset=T
x0-T
targetによって規定され、P
basis(t)は、所与の周囲温度にて定常状態でチャンバドア又はハウジングドアを開く前に温度制御ユニットによって付与される電力である、ステップ(305)と、を含む。
【0056】
図9は、機器固有の値Fを判定するための本発明による方法400の一例を示す。この方法は、
・実験室温度調節装置を既知の外気温度T
environmentを有する環境に設置するステップ(401)と、
・検証された方法で、チャンバ内の温度T
Kを、T
environmentが特に<>T
target_0である状態で、値T
K=T
target_0に設定するステップ(402)と、
・チャンバドア及び/又はハウジングドアをある時点t0で開き、後の時点t1で閉じるステップ(403)と、
・開閉前及び開閉中及びその後に、チャンバ内の温度T
inside(t)を測定し、時間の関数としてチャンバ内の温度T
inside(t)を保存するステップ(404)と、
・計算規則、好ましくは数式、特に「数式1」を使用して、数式と測定値T
inside(t)との間の誤差を補正し、係数Fを判定するステップ(405)と、を含む。
【0057】
ここで、チャンバ内の温度TKは、検証されたやり方で、移動式温度センサTinsideを前記チャンバ内に設置し、移動式温度センサTinsideを実験室温度調節装置の電気コントローラに接続して、制御回路であって、チャンバ内の移動式温度センサTinsideが制御回路の測定要素として動作し、温度制御ユニットが制御回路の制御要素として動作する制御回路を確立するステップによって、値TK=Ttarget_0に設定される。制御は、チャンバドア及び/又はハウジングドアによって実施される。
【0058】
図8は、温度T
targetにて実験室試料を保管するための実験室温度調節装置に対して診断を実施するための本発明による方法(500)の一例を示す。実験室温度調節装置は、
*チャンバ空間の内側に実験室試料を受容するためのチャンバであって、その外側は、少なくとも1つのチャンバ壁と、チャンバ開口部を閉じる1つのチャンバドアとによって形成され、チャンバ開口部を通ってチャンバの内部にユーザがアクセスすることができる、チャンバと、
*チャンバを温度調節するための温度制御ユニットであって、チャンバの外側に熱接触して取り付けられた温度制御ユニットと、
*温度T
akを記録するためにチャンバの外側に熱接触して取り付けられた外部温度センサと、
*特に内部に位置決めされた内部温度センサであって、温度T
insideを記録するためにチャンバの内部に熱接触して取り付けられた内部温度センサと、
*温度制御ユニット、温度センサ及びチャンバを環境から熱的に絶縁する絶縁要素と、
*内部温度センサ及び温度制御ユニットを使用して、機器固有の値T
x0をデータ記憶ユニットに保存した状態で、温度T
akを値T
targetによって設定点温度に調整するように構成された電気コントローラと、を備え、
この方法は、
・チャンバ内の温度を値T
targetに調整するステップ(501)と、
・チャンバ内の温度が値T
targetに調整され、定常平衡が存在する場合に、温度T
akを測定するステップ(502)と、
・T
akをT
x0と比較するステップ(503)と、
・好ましくは、T
akとT
x0の比較結果を実験室温度調節装置のデータ記憶ユニットに保存するステップ(504)と、
・好ましくは、T
ak<>T
x0であることが比較で示された場合、実験室温度調節装置のユーザインターフェースユニットを使用してエラーメッセージを出力するステップ(505)と、を含む。