(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】ジェル状化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20231120BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20231120BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20231120BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/02
A61K8/73
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020562500
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051440
(87)【国際公開番号】W WO2020138424
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2018248470
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】川口 達也
(72)【発明者】
【氏名】中野 新一郎
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518516(JP,A)
【文献】特開2018-095611(JP,A)
【文献】特開2016-121140(JP,A)
【文献】特開2014-237628(JP,A)
【文献】特開2017-109962(JP,A)
【文献】特開2017-214293(JP,A)
【文献】国際公開第2014/083116(WO,A2)
【文献】特表2013-544280(JP,A)
【文献】特開2016-027026(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044880(WO,A1)
【文献】evangelist@nikkol,今までにないマットな感触をもたらす吸水性パウダー ARON NT-Z,ケミナビ(chemical-navi.com)ホームページ:コラム・研究開発支援 [オンライン],2017年06月16日,[検索日 2020.02.04] インターネット:<https://www.chemical-navi.com/column/cosmetics/2017-06-16/3417>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリレーツクロスポリマー-2-Naからなる
吸水倍率が自重の20~30倍である吸水粉末、及び
(B)
アクリル酸Naグラフトデンプン及びカルボマーNaからなる群から選択される吸水倍率が自重の100倍以上である粒状吸水性ポリマーの少なくとも1種、を含むジェル状化粧料であって、
水の配合量が80質量%以上であり、
前記(A)吸水粉末の配合量が2.0~3.5質量%であり、
前記(A)吸水粉末及び前記(B)粒状吸水性ポリマーの合計配合量が1.0~4.5質量%であり、
前記(A)吸水粉末の配合量に対する前記(B)粒状吸水性ポリマーの配合量の比率[(B)/(A)]が、1/10~4/1の範囲内であり、
かつ化粧料の粘度が50,000~150,000mPa・sであることを特徴とするジェル状化粧料。
【請求項2】
前記(A)吸水粉末の配合量に対する前記(B)粒状吸水性ポリマーの配合量の比率[(B)/(A)]が、1/10~2/1の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のジェル状化粧料。
【請求項3】
(C)吸油粉末を更に含む、
請求項1または2に記載のジェル状化粧料。
【請求項4】
(C)吸油粉末が、多孔質シリカ、メタクリル酸メチルクロスポリマー、炭酸カルシウム、ポリメチルシルセスキオキサン、ナイロン、ポリウレタン、デンプン、ポリエチレン、シリコーンエラストマー、及びその混合物からなる群から選択される少なくとも1種である、
請求項3に記載のジェル状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な外観及び使用感を有するジェル状化粧料に関する。より詳細には、シャーベット様の外観を有し、肌に塗布すると化粧料が崩れて水がはじけるような独特の感触を与えることのできるジェル状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェル状化粧料、特に水性ジェル化粧料は、塗布した肌にみずみずしい感触を与える点等から好まれている。化粧料の形態をジェル状とするために各種の高分子増粘剤が配合されているが、その配合量を増量すると塗布時または塗布後にべたつきやぬめりを生じるという問題があった。
【0003】
特許文献1は、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体と、水による最大ぬれ力が2mN以上であって、純水を1~5ml/g添加したときの少なくとも1点での状態が塊状であることを特徴とする吸水性粉体(例えば、ベントナイト、結晶セルロース、微粒子シリカ等)とを含有したジェル状化粧料を開示しており、当該化粧料は優れたコク感と良好な保湿感を達成したとされている。しかし、コク感に優れるということは、化粧料の肌への密着感が強く、塗布時ののびが重くなることを意味する。
【0004】
特許文献2は、アデカノール(商品名)のような疎水性変性ポリエーテルウレタンと、デンプン・アクリル酸グラフト重合体及び水膨潤性粘土鉱物(例えば、ベントナイト)とを含有するジェル状化粧料を開示しており、当該化粧料は硬度安定性に優れ、べたつきのない良好な使用性を示すとされている。しかしながら、特許文献2の化粧料は硬度領域の硬い使用感触のものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-95611号公報
【文献】特許第6209386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、外観がシャーベット様で視覚的な清涼感を与えるジェル状化粧料であって、塗布時にはサラッとした感触でありながら、柔らかく崩れて水がはじけるような独特の感触(以下、「水崩れ感」ともいう)を与えるジェル状化粧料を提供することを課題とする。
本明細書における「シャーベット様の外観」とは、食料品(氷菓子)であるシャーベットのような外観、即ち、液体を凍結して粉砕したようなサクサクした触感を想起させる外観を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、吸水倍率が自重の20~30倍である吸水粉末と吸水倍率が自重の100倍以上である粒状吸水性ポリマーとを各々少なくとも1種以上組み合わせて配合するとともに、両者の合計配合量及び化粧料の粘度を特定範囲内に調節することにより、前記独特の外観及び使用感が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(A)吸水倍率が自重の20~30倍である吸水粉末の少なくとも1種、及び
(B)吸水倍率が自重の100倍以上である粒状吸水性ポリマーの少なくとも1種、を含むジェル状化粧料であって、
前記(A)吸水粉末及び前記(B)粒状吸水性ポリマーの合計配合量が1.0~4.5質量%であり、かつ化粧料の粘度が50,000~150,000mPa・sであることを特徴とするジェル状化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のジェル状化粧料は、吸水粉末と粒状吸水性ポリマーとを適量含有しており、それらが水を適宜吸収してジェル状の構造体を形成し、所定範囲の粘度を持つシャーベット様の外観を呈する。そのため、本発明のジェル状化粧料は、視覚的な清涼感を与えるが、実際の触感としてはふんわりした手触りとなる。本発明のジェル状化粧料は、肌に塗布する際は、軽くてのびが良好で、べたつきやぬめりがなく、崩れて水がはじけるような使用感を与える。塗布後は均一な膜を形成し、化粧ヨレやポロカスを生じない。
【0010】
なお、本明細書における「化粧ヨレ」とは、化粧料がシワやほうれい線に経時で溜まりしわを目立たせてしまう現象をいう。「ポロカス」とは、典型的には粉末やポリマー成分を比較的多く含有する化粧料を塗布した皮膚を塗擦したときに生じる消しゴムのカス様のものを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のジェル状化粧料(以下、単に「化粧料」ともいう)は、(A)吸水倍率が自重の20~30倍である吸水粉末、及び(B)吸水倍率が自重の100倍以上である粒状吸水性ポリマーを必須成分として含有する。
本明細書における「吸水倍率」は、高吸水性樹脂粉末に対して適用可能な各種測定法(例えば、乾燥重量法など)を使用して、樹脂粉末が吸収する水の重量が、当該樹脂粉末の自重の何倍に相当するかを示す数値である。
以下に各成分について詳述する。
【0012】
(A)吸水倍率が自重の20~30倍である吸水粉末
本発明の化粧料における(A)吸水倍率が自重の20~30倍である吸水粉末(以下、「吸水粉末」又は「成分(A)」という)は、粉末の乾燥重量の20~30倍の水を吸収することができ、吸水することにより各粉末粒子が膨潤するが粒子形状は保持している粉末成分である。(A)粉末粒子の粒子径は特に限定されないが、通常は1~50μm、好ましくは1~30μmのものが使用される。(A)吸水粉末は、1種又は2種以上を混合して配合してもよい。
【0013】
(A)吸水粉末としては、架橋型のアクリル酸ポリマーの塩からなる粉末が好ましい。特に、化粧品表示名称で「アクリレーツクロスポリマー-2-Na」(INCI名:Sodium Acrylates Crosspolymer-2)と称される粉末が好ましい。アクリレーツクロスポリマー-2-Naからなる粉末は市販品として入手可能であり、ARON NT-Z(東亞合成株式会社製)が例示できる。この市販品は、吸水倍率が約24倍であることが知られている。
【0014】
(B)吸水倍率が自重の100倍以上である粒状吸水性ポリマー
本発明の化粧料における(B)吸水倍率が自重の100倍以上である粒状吸水性ポリマー(以下、「粒状吸水性ポリマー」又は「成分(B)」という)は、粉末の乾燥重量の100倍以上の水を吸収できることができる粒状ポリマー成分である。(B)粒状吸水性ポリマーは、乾燥時には粒状(粉末状)であるが、多量の水を吸収することにより変形するものであってよい。(B)粒状吸水性ポリマーの乾燥時の粒子径は特に限定されない。
【0015】
(B)粒状吸水性ポリマーとしては、分子内にポリアクリル酸塩の構造を有するポリマー粒子が好ましく使用される。例えば、架橋型または非架橋型のポリアクリル酸ナトリウムを含むポリアクリル酸塩(例えば、化粧品成分表示名称:カルボマーNa(INCI名:Sodium Carbomer))、あるいは、デンプン等の糖類にアクリル酸をグラフト重合したポリマー(例えば、化粧品成分表示名称:アクリル酸Naグラフトデンプン(INCI名:Sodium Polyacrylate Starch))等が好ましい例として挙げられる。(B)粒状吸水性ポリマーは、1種又は2種以上を混合して配合してもよい。
【0016】
本発明における(B)粒状吸水性ポリマーは市販品を用いてもよい。カルボマーNaとしては、AQUAKEEP(住友精化株式会社製)及びAQUPEC MG N40R(住友精化株式会社製)、アクリル酸Naグラフトデンプンとしては、MAKIMOUSSE 12(平均粒径約12μm(大東化成工業株式会社製)、MAKIMOUSSE 25(平均粒径約25μm)(大東化成工業株式会社製)、サンフレッシュ ST-100(三洋化成株式会社製)等が知られており、本発明で好ましく使用される。
【0017】
本発明の化粧料では、前記(A)吸水粉末と(B)粒状吸水性ポリマーとの合計配合量は、化粧料全量に対して1.0~4.5質量%であり、好ましくは1.5~4.5質量%、より好ましくは2.0~4.0質量%である。この合計配合量を1.0質量%~4.5質量%の範囲内とすることにより、化粧料をジェル状化粧料として適切な粘度範囲に調製でき、シャーベット様の外観を呈するとともに、塗布時に崩れて水がはじけるような感触(水崩れ感)を与え、なおかつ化粧ヨレ及びポロカスを生じない。
【0018】
本発明の化粧料は、ジェル状化粧料として適切な粘度を有しており、その粘度範囲は、50,000~150,000mPa・s、好ましくは50,000~100,000mPa・sである。
本明細書における粘度は、30℃においてB型粘度計で測定した値とする。
【0019】
本発明の化粧料における(A)吸水粉末の配合量は、(B)粒状吸水性ポリマーとの合計配合量が前記の条件(1.0~4.5質量%)を満たせばよいが、通常は、化粧料全量に対して0.5~4.0質量%であり、好ましくは1.0~3.8質量%、より好ましくは2.0~3.5質量%である。配合量が0.5質量%未満であると、水崩れ感が得られず、配合量が4.0質量%を超えると「化粧ヨレ」が生じる場合がある。
【0020】
本発明の化粧料における(B)粒状吸水性ポリマーの配合量は、共に配合される(A)吸水粉末との合計配合量が前記の条件(1.0~4.5質量%)を満たせばよいが、通常は、化粧料全量に対して0.1~1.0質量%であり、好ましくは0.2~0.8質量%、より好ましくは0.3~0.5質量%である。(B)粒状吸水性ポリマーの配合量が0.1質量%未満あるいは1.0質量%を超えると、所望の特性が得られない場合がある。
【0021】
本発明の化粧料においては、前記(A)吸水粉末の配合量に対する前記(B)粒状吸水性ポリマーの配合量の比率(質量比)、すなわち[(B)/(A)]の値を、1/10~4/1の範囲内とするのが好ましく、1/10~2/1の範囲内とするのが更に好ましい。
【0022】
本発明の化粧料は、前記(A)吸水粉末及び(B)粒状吸水性ポリマーの所定量を、水中に分散して調製される。即ち、本発明の化粧料は、シャーベット状の外観を有するジェル状の水性化粧料である。
本発明の化粧料における水の配合量は特に限定されないが、化粧料全量に対して60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0023】
本発明の化粧料は、前記必須成分(A)及び(B)さらには水に加えて、(C)吸油粉末を1種または2種以上適宜配合することができる。(C)吸油粉末を配合することにより、化粧料を塗布した肌の皮脂や油分を吸収し、さっぱりした感触を与えることができる。
【0024】
本発明の化粧料で好ましく用いられる(C)吸油粉末は、特に限定されないが、通常は、20ml/100g以上、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは80ml/100g以上の吸油能を有する粉末である。
【0025】
(C)吸油粉末の具体例としては、シリカ(多孔質)、メタクリル酸メチルクロスポリマー、炭酸カルシウム、ポリメチルシルセスキオキサン、ナイロン、ポリウレタン、デンプン、ポリエチレン、シリコーンエラストマー等が挙げられる。本発明においては、特に吸油能が高い球状粉末が好ましく、シリカ及びメタクリル酸メチルクロスポリマーからなる球状粉末が特に好ましく使用される。
【0026】
(C)吸油粉末は、市販されているものを使用することも可能である。市販されているシリカ粉末としては、サンスフェア L-51S(AGCエスアイテック株式会社製)、シリカマイクロビード P-1500(日揮触媒化成株式会社製)等が挙げられ、メタクリル酸メチルクロスポリマー粉末としては、マイクロスフェア M-100、M-330(松本油脂製薬株式会社製)等が挙げられる。
【0027】
本発明の化粧料における(C)吸油粉末の配合量は、通常は、化粧料全量に対して0.1~5.0質量%であり、好ましくは0.2~3.0質量%、より好ましくは0.5~2.0質量%である。配合量が0.1質量%未満であると吸油粉末の配合効果が得られず、配合量が5.0質量%を超えるときしみ感を示し、化粧ヨレやポロカス発生の原因となる場合がある。
【0028】
本発明の化粧料は、水性のジェル状化粧料に配合可能な他の任意成分を、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜配合することができる。他の任意成分としては、限定されないが、保湿剤、界面活性剤、清涼化剤、防腐剤、キレート剤、香料、各種薬剤、安定化剤、マスキング剤、着色剤、精油などが例示できる。
【0029】
保湿剤としては、例えば、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール(DPG)、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D-マンニット、トレハロース、エリスリトール、プロパンジオール、グルコース、ポリオキシエチレンメチルグルコシド等が挙げられる。
【0030】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
清涼化剤としては、l-メントール等が挙げられる。
キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム塩、メタリン酸ナトリウム、リン酸等が挙げられる。
【0031】
本発明の化粧料は、従来から汎用されている方法に準じて製造することができる。例えば、水性成分、粉末成分及び油性成分を別々に混合し、水性成分に粉末成分及び油性成分を加えて攪拌することにより製造することができる。
【0032】
本発明の化粧料は、シャーベット様の清涼感を想起させ外観を有し、肌に塗布した際には崩れて水がはじけるような感触を与えるという特徴を有する。従って、これらの特徴を活かせる皮膚化粧料、例えば夏用のスキンケア化粧料等として提供するのに適している。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、配合量については特に断りのない限り、その成分が配合される化粧料(試料)全量に対する質量%で示す。
【0034】
下記の表に掲げた処方でジェル状化粧料(試料)を常法に従って調製した。各例の試料について、以下の項目を以下の方法により評価した。結果を各表に併せて示す。
(1)粘度
各例の試料を調製した後、30℃において、B型粘度計(芝浦システム株式会社製ビスメトロン粘度計)を用いて、ローターNo.6、回転数10rpm、1分間の条件で測定した。
【0035】
(2)崩れて水がはじけ出るような使用感(水崩れ感)
専門パネラー10名が各例の試料を実使用し、塗布時に化粧料が崩れて水がはじけ出るような感触(水崩れ感)の有無を判定した。各パネラーの判定結果を以下の基準に従って評価した。
(評価基準)
A:10名中8名以上が「水崩れ感」があると回答した。
B:「水崩れ感」があると回答したパネラーが7名以下であり、かつ「水崩れ感」がないと回答したパネラーが7名以下であった。
C:10名中8名以上が「水崩れ感」がないと回答した。
【0036】
(3)ジェル化粧料としての総合評価
上記(1)粘度の測定結果が、ジェル化粧料として適切な範囲(50,000~150,000mPa・s)にあること(条件1)、水崩れ感についての評価結果が「A」であること(条件2)に基づいて、次のように総合評価した。
A:条件1及び条件2を共に満たす。
B:条件1又は条件2のいずれか一方を満たす。
C:条件1及び条件2の両方を満たさない。
【0037】
(4)化粧ヨレ・ポロカスの発生
専門パネラー10名が各例の試料を実使用し、塗布した肌を手で塗擦したときのポロカス発生の有無を目視観察した。さらに、化粧料塗布の1時間後に、各パネラーの目視観察により、化粧ヨレの有無を判定した。判定結果を下記の基準に従って評価した。
(評価基準)
A:10名中8名以上が、化粧ヨレまたはポロカスの発生が観察されなかったと回答した。
B:化粧ヨレまたはポロカスの発生が観察されなかったと回答したパネラーが7名以下であり、かつ化粧ヨレまたはポロカスの発生が観察されたと回答したパネラーが7名以下であった。
C:10名中8名以上が、化粧ヨレまたはポロカスの発生が観察されたと回答した。
【0038】
【0039】
表1に示すように、(A)吸水粉末のみを配合した比較例1~3では、その配合量が3質量%では、粉末が水を抱え込んでジェル化した層と、粉末が抱え込み切れなかった自由水とに分離して適切なジェルが得らなかった(比較例1)。吸水粉末の配合量を4.5質量%に増量するとジェル状となり水崩れ感も得られるが、化粧ヨレ・ポロカスを生じた(比較例2)。吸水粉末の配合量を5質量%まで更に増量すると、化粧料の粘度が大きくなりジェルとして適切な範囲を超えるとともに、化粧ヨレ・ポロカスも生じた(比較例3)。
一方、(A)吸水粉末と(B)粒状吸水性ポリマーとを組み合わせて所定範囲内(実施例では合計で3.3質量%)配合した実施例1及び2は、適切な粘度範囲のジェルとなり、塗布時には水崩れ感を与えるとともに、化粧ヨレ・ポロカスを生じなかった。
実施例1又は2の(B)粒状吸水性ポリマーを、同量の別の水溶性ポリマー(吸水倍率が100倍未満:簡易測定によると30~50倍)に置換した比較例4~6は、ジェル状にはなるが、塗布時の水崩れ感が得られなかった。
【0040】
次に、前記の実施例1または2の処方に(C)吸油粉末(多孔質シリカまたはメタクリル酸メチルクロスポリマーの球状粉末)を配合した試料について、前記と同様に評価した。加えて、試料を肌に塗布した後の「さらさら感(べたつきのなさ)」の持続についても以下の基準で評価した。結果を下記の表2及び3に示す。
【0041】
(5)肌のさらさら感(べたつきのなさ)の持続
専門パネラー10名が各例の試料を実使用し、塗布3時間後に、塗布した肌のべたつきの有無を触感にて確認した。判定結果を下記の基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:10名中8名以上が、べたつきがないと回答した。
B:べたつきがないと回答したパネラーが7名以下であり、かつ、べたつきがあると回答したパネラーが7名以下であった。
C:10名中8名以上が、べたつきがあると回答した。
【0042】
【0043】
【0044】
表2及び3に示すように、(C)吸油粉末を配合しても、所定量の(A)吸水粉末及び(B)粒状吸水ポリマーによって調整された適切な粘度及び水崩れ感は維持される。それに加えて、(C)吸油粉末の配合による「さらさらした(べたつきのない)感触」が付加され、その感触は長時間持続した。ただし、(C)吸油粉末の材質によっては、5質量%以下であってもポロカスを発生させることがある(参考例1)。従って、多孔質シリカを配合する場合には、その配合量を2.0質量%未満にするのが好ましい。