(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤とブレンドされたキレート化剤を使用するシリカスケールの阻害
(51)【国際特許分類】
C02F 5/08 20230101AFI20231120BHJP
C02F 5/10 20230101ALI20231120BHJP
C02F 5/12 20230101ALI20231120BHJP
C02F 5/14 20230101ALI20231120BHJP
C02F 5/00 20230101ALI20231120BHJP
【FI】
C02F5/08 A
C02F5/10 620C
C02F5/10 620D
C02F5/10 620G
C02F5/12
C02F5/14 A
C02F5/10 620B
C02F5/00 620C
(21)【出願番号】P 2020567107
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 US2019034349
(87)【国際公開番号】W WO2019232019
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】201841020613
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】201841020598
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】201841029480
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】201941002455
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】デオ、プスパンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】シモン、マリア
(72)【発明者】
【氏名】アカーデ、ムラモド
(72)【発明者】
【氏名】アブラモ、グラハム、ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、カイリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】メータ、ソミル、チャンドラカント
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05271847(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F5/00-5/14
C09K23/00-23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカおよび金属ケイ酸塩スケールの形成を阻害する方法であって、前記方法は、
シリカを含む水性系を、キレート化剤と、酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤との有効量の混合物で処理する工程を含み、
前記キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)であり、
前記酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤は、500ダルトン~40,000ダルトンの数平均分子量を有し、
前記キレート化剤は、前記酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤と、キレート化剤対分散剤の1.0:0.5超~1.0:3.0未満の重量比で混合され、
前記酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤は、3.0重量%~35重量%の不飽和グラフト酸およびアルキレンオキシドポリマー骨格を含む重合性酸グラフトポリマーであり、前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、以下の式を有し、
【化1】
式中、各R’は、水素、メチル基、エチル基、およびアミン基からなる群から独立して選択され、
R”は、水素、メチル基、エチル基、およびアミン基からなる群から独立して選択され、
各「Z」は、独立して、4~1,800の値を有し、
「a」は、1~4の値を有し、
各「n」は、独立して、2~4の値を有し、その結果、前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、エチレンオキシド繰り返し単位、プロピレンオキシド繰り返し単位、ブチレンオキシド繰り返し単位、またはそれらのコポリマーのいずれかを含む、方法。
【請求項2】
前記グラフト酸は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸(AMPS)、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、ビニルホスホン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、45:55~55:45のエチレンオキシド対プロピレンオキシドの重量比を有するエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドポリマーのコポリマーであり、
前記アルキレンオキシドポリマー骨格の前記繰り返し単位の10%は、前記アクリル酸でグラフト化されている、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤は、側鎖A、骨格B、および任意選択的に側鎖Cを含むボトルブラシポリマーであり、
Aは、カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、アクリルホスフェート、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、
Bは、以下の化学式を有する1つ以上のポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、
【化2】
式中、R
1は、HまたはCH
3であり、
R
2は、以下の化学式を有し、
【化3】
式中、R
3は、H、CH
3、またはそれらの混合物であり、
R
4は、H、またはC
1~C
4のアルキル基、またはそれらの混合物であり、
n=5~100であり、
Cは、(1)カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、アクリルホスフェート、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位、または(2)メタクリレート、アクリレート、およびアクリルアミドからなる群から選択される1つ以上の非イオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位のいずれかであり、
Aは、前記ボトルブラシポリマー
の5重量%~45重量%を構成し、
Bは、前記ボトルブラシポリマー
の55重量%~95重量%を
構成し、
Cは、前記ボトルブラシポリマー
の0重量%~25重量%を
構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Aは、アクリル酸、アクリル酸の塩、メタクリル酸、メタクリル酸の塩、イタコン酸、イタコン酸の塩、マレイン酸、マレイン酸の塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸(AMPS)、AMPSの塩、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸の塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸の塩、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
Bは、ポリオキソアルキレンアクリレート、メタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
Cは、存在し、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートヒドロキシプロピルアクリレートおよびセロソルブアクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアクリルアミド、t-オクチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
Aは
、メタクリル酸であり、かつ前記ボトルブラシポリマーの5重量%~10重量%であり、
Bは
、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、かつ前記ボトルブラシポリマーの70重量%~75重量%であり、
Cは
、メタクリル酸メチルであり、かつ前記ボトルブラシポリマーの20重量%~23重量%である、請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
Aは
、アクリル酸であり、かつ前記ボトルブラシポリマーの8重量%~10重量%であり、
Bは
、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、かつ前記ボトルブラシポリマーの80重量%~84重量%であり、
Cは
、メタクリル酸であり、前記ボトルブラシポリマーの8重量%~10重量%である、請求項
4に記載の方法。
【請求項8】
前記酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤は、2,500ダルトン~12,000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クロスリファレンス
本国際特許出願は、2018年8月6日に出願されたインド特許出願第201841029480号、2018年6月1日に出願されたインド特許出願第201841020598号、2018年6月1日に出願されたインド特許出願第201841020613号、および2019年1月21日に出願されたインド特許出願第201941002455号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、スケール阻害に関する。具体的には、本発明は、シリカスケールの形成を阻害するためのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)などのキレート化剤と、酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤(酸グラフトEO-POコポリマーまたはボトルブラシポリマーなど)とのブレンドの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
シリカおよび金属ケイ酸塩のスケールは、水性系を利用する多くの産業で問題がある。最も影響を受けるセグメントは、工業用水処理、特に逆浸透(RO)、冷却塔、ボイラ、ならびに石油およびガスの用途、特に地熱エネルギーの取り出しおよび蒸気支援重力排水(SAGD)の用途である。Bayerプロセスを利用したアルミナ精製などの採掘作業でも、シリカおよびケイ酸塩のスケールに重大な問題がある。
【0004】
シリカおよびケイ酸塩スケールの形成は、pH、温度、シリカ濃度、およびそのような系で使用される水中に存在する多価金属イオンの存在などの操作条件に依存する。それらの条件に基づいて、異なるタイプのシリカまたはケイ酸塩スケールが形成される場合がある。例えば、8.5を超えるpH値では、Mg2+、Ca2+、Al3+、またはFe3+などの多価イオンの存在および操作温度に応じて、シリカスケールは主に金属ケイ酸塩の形になるが、コロイダルシリカ(重合シリカ粒子)は、6.5~8.5のpH値でより一般的である。スケールは、水処理装置または生成装置に堆積し、最終的に流れを制限し、コストのかかるプロセスのダウンタイムにつながる可能性がある。典型的なスケール除去処理は、機械的洗浄、またはフッ化水素酸洗浄などの危険で腐食性の酸洗浄を含む。
【0005】
当技術分野で知られているスケール阻害剤は、例えば、米国特許出願公開第2015/0076074号を含み、これは、冷却およびボイラ水システムにおけるシリカおよびケイ酸塩のスケールを制御するためのアクリル酸(AA)のホモポリマーとAAおよび2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)のいずれかとのコポリマー、またはAA、AMPS、およびt-ブチルアクリルアミド(t-BAM)とEDTAのターポリマーとのブレンドの使用を開示する。米国特許第6,166,149号は、親水性グラフトポリマーおよび任意選択的に不飽和カルボン酸型ポリマーをさらに含むポリエーテル化合物を含むスケール阻害剤を作製するためのプロセスを開示する。米国特許第5,378,368号は、単独でまたはポリマー添加剤と組み合わせて使用され得るシリカ/ケイ酸塩堆積を制御するためのポリエーテルポリアミノメチレンホスホネートの使用を開示する。米国特許第4,618,448号は、スケール阻害剤としてのカルボン酸/スルホン酸/ポリアルキレンオキシドポリマーの使用を開示する一方、米国特許第4,933,090号は、シリカ/ケイ酸塩の堆積を制御するための選択されたホスホネートおよび任意選択的なカルボン酸/スルホン酸/ポリアルキレンオキシドポリマーの使用を開示する。これとは別に、米国特許第6,051,142号は、冷却およびボイラ水システムにおけるシリカおよびケイ酸塩のスケールを制御するためのエチレンオキシド-プロピレンオキシド(EO-PO)ブロックコポリマーの使用を開示する。最後に、米国特許第7,316,787号は、コロイド状シリカスケール阻害剤としての疎水性修飾エチレンオキシドポリマーの使用を開示する。
【0006】
複数のスケール阻害剤が存在するにもかかわらず、シリカおよび金属ケイ酸塩のスケーリングは、水性系における主要な課題であり続けている。特に、阻害剤は純粋なシリカブライン条件でのシリカスケール形成の阻害に有効であるが、そのような阻害剤は、多くの産業用途に見られる多価カチオンの存在下でその効力を失う。必要なものは、そのような多価カチオンを含むブラインの存在下でその効力を維持するシリカおよび金属ケイ酸塩スケール阻害剤である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様によれば、シリカを含む水性系を、アルキレンオキシド由来のポリマー分散剤とブレンドされた有効量のキレート化剤で処理することを介して、シリカおよび金属ケイ酸塩スケールの形成を阻害する方法が提供される。キレート化剤は、1:1の重量比のブレンドを含む、キレート化剤対分散剤の1.0:0.5超~1.0:3.0未満の範囲の重量比で、ポリマー分散剤とブレンドされる。好ましくは、キレート化剤は、EDTAまたはDTPAのいずれかである。ポリマー分散剤を上記の重量比でEDTAまたはDTPAとブレンドすると、結果として得られるブレンドは、多価カチオンの存在下を含め、ブライン中でのコロイド状シリカまたは金属ケイ酸塩形成の阻害に対して相乗効果を示すことが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】Na
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、およびAl
3+の存在下での400ppmのシリカに対する対照およびスケール阻害剤試料A~試料Gの阻害率(%)を示すチャートである。
【
図2】Na
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、およびAl
3+の存在下での400ppmのシリカに対する対照およびスケール阻害剤試料A~試料Gを使用する溶液中の反応性シリカを示すチャートである。
【
図3】Na
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、およびAl
3+の存在下での400ppmのシリカに対する対照およびスケール阻害剤試料A、試料D、および試料Hの阻害率(%)を示すチャートである。
【
図4】Na
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、およびAl
3+の存在下での400ppmのシリカに対する対照およびスケール阻害剤試料A、試料D、および試料Hを使用する溶液中の反応性シリカを示すチャートである。
【
図5】Na
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、およびAl
3+の存在下での400ppmのシリカに対する対照およびスケール阻害剤試料A、試料D、および試料Iの阻害率(%)を示すチャートである。
【
図6】Na
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、およびAl
3+の存在下での400ppmのシリカに対する対照およびスケール阻害剤試料A、試料D、および試料Iを使用する溶液中の反応性シリカを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、シリカを含む水性系を、アルキレンオキシド由来のポリマー分散剤とブレンドされた有効量のキレート化剤で処理することを介して、シリカおよび金属ケイ酸塩スケールの形成を阻害する方法を対象とする。キレート化剤は、1:1の重量比のブレンドを含む、キレート化剤対分散剤の1.0:0.5超~1.0:3.0未満の範囲の重量比で、ポリマー分散剤とブレンドされる。ポリマー分散剤を上記の重量比でキレート化剤とブレンドすると、結果として得られるブレンドは、多価カチオンの存在下を含め、ブライン中でのコロイド状シリカまたはケイ酸塩形成の阻害に対して相乗効果を示すことが見出された。
【0010】
本明細書に記載された全てのパーセンテージは、特に明記されていない限り、重量パーセント(重量%)である。温度は、摂氏(℃)で表され、「周囲温度」とは、特に指定がない限り、20℃~25℃を意味する。
【0011】
「ポリマー」は、同じまたは異なるタイプのモノマーにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物または「樹脂」を指す。本明細書で使用される場合、「ポリマー」という一般用語は、1つ以上のタイプのモノマーから作製されたポリマー化合物を含む。本明細書で使用される「コポリマー」は、一般に、2つ以上の異なるタイプのモノマーから調製されたポリマー化合物を指す。同様に、「ターポリマー」は、3つの異なるタイプのモノマーから調製されたポリマー化合物である。
【0012】
「水性系」は、一般に、これらに限定されないが、シリカブライン、冷却水、脱塩、濾過、逆浸透、糖蒸発器、紙処理、採掘回路、地熱エネルギーシステム、SAGDなどを含む水を含む任意の系を指す。
【0013】
「シリカスケール」という用語は、一般に、RO膜、熱交換器、ならびに生成用チューブおよび配管などの水処理装置の内面に堆積および蓄積されるシリカを含む固体物を指す。シリカスケールは、一般に、コロイド状またはアモルファスシリカ(SiO2)およびケイ酸塩(ケイ酸マグネシウムなど)などの複数のタイプのシリカスケールを含む。蓄積されたシリカスケールは、シリカおよびケイ酸塩タイプのスケールの組み合わせである場合があり、場合によっては、どちらか一方のタイプのスケールが優勢であることが多い。コロイド状/アモルファスシリカスケールは、以下、主にコロイド状/アモルファスタイプであるシリカスケール堆積物を一般的に指すために使用される用語である。金属の種類に応じて、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ホスホン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、硫酸バリウム、沖積堆積物、金属酸化物、および金属水酸化物など、シリカタイプ以外の他の種類のスケールが存在し得、他のイオンは水性系に存在する。
【0014】
コロイド状/アモルファスシリカスケールを形成するための化学反応機構は、一般に、水酸化物イオンによって触媒されるケイ酸の縮合重合を伴う。この反応機構は、一般に、以下のように進行する。
Si(OH)4+OH-→(OH)3SiO-+H2O(I)
Si(OH)3
-+Si(OH)4+OH-→(OH)3Si-{3O-{3Si(OH)3(二量体)+OH-(II)
(OH)3Si-O-Si(OH)3(二量体)→環状→コロイダル→アモルファスシリカ(スケール)(III)
【0015】
反応機構は、水酸化物イオンによって触媒されるため、低pHではゆっくりと進行するが、pHが約7を超えると、大幅に増加する。したがって、6.5~8.5などの「中性」pHを有する水性系におけるシリカスケール形成の防止が特に懸念される。
【0016】
本発明の方法は、20℃~250℃の範囲の温度で、6.0~10.0のpHを有する水性系におけるコロイド状/アモルファスシリカスケールの堆積を制御するのに好適である。この方法は、シリカを含む水性系を、1.0:0.5超~1.0:3.0未満の範囲の重量比でポリマー分散剤とブレンドされた有効量のキレート化剤で処理することを含む。具体的には、キレート化剤は、EDTAまたはDTPAのいずれかであり、一方で、ポリマー分散剤は酸グラフト化EO-POコポリマー、またはアニオン性モノマーおよびポリオキソアルキレン含有モノマーから重合したボトルブラシポリマーのいずれかである。
【0017】
キレート化剤
キレート化剤は、その分子が単一の金属イオンに対して複数の結合を形成することができる物質である。したがって、キレート化剤は、系から不要な金属イオンを除去するためによく利用される。本発明のための有用なキレート化剤は、EDTAおよびDTPAであることが判定されている。EDTAの有用性は、多価カチオン、特にCa2+、Mg2+、Fe3+、およびAl3+などの金属イオンを封鎖するための優れたキレート化剤として機能する六座(「6歯」)配位子の形成におけるその役割に由来する。同様に、DTPAの有用性は、Ca2+、Mg2+、Fe3+、およびAl3+などの多価カチオンの優れたキレート化剤である八座配位子の形成におけるその役割に由来する。
【0018】
ポリマー分散剤
ポリマー分散剤は、酸およびアルキレンオキシド由来の分散剤である。ポリマー分散剤は、液体分散剤であり得る。ポリマー分散剤は、500ダルトン~40,000ダルトンの数平均分子量を有する(例えば、2,000ダルトン~20,000ダルトン、2,000ダルトン~15,000ダルトン、2,000ダルトン~13,000ダルトン、2,500ダルトン~12,000ダルトンなど)。
【0019】
グラフトポリマー分散剤
グラフトポリマーは、(1)線形骨格ポリマー、および(2)別のポリマーのランダムに分布した分岐を含むセグメント化されたコポリマーである。
【0020】
グラフトコポリマーを作製するために使用されるポリ(アルキレンオキシド)化合物は、一般に、アルキレンオキシドまたはアルキレンオキシドの混合物を、連続してまたは組み合わせてアルコールと反応させることによって生成される。このようなアルコールは、一価または多価であり得、式R”(OH)aに対応し、式中、R”は、水素、またはメチル、エチル、またはアミン基であり、「a」は、1~4の値を有する。そのようなアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセロール、グリセロールのモノエチルエーテル、グリセロールのジメチルエーテル、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンなどを含む。
【0021】
一般に、本発明で使用されるポリ(オキシアルキレン)化合物は、約200ダルトン~約80,000ダルトン、好ましくは約1,000ダルトン~約50,000ダルトン、より好ましくは約1,500ダルトン~約20,000ダルトン、さらにより好ましくは約2,000ダルトン~約10,000ダルトン、なおさらにより好ましくは約3,000ダルトン~約7,000ダルトン、および最も好ましくは約4,500ダルトン~約5,500ダルトンの範囲の分子量(数平均)を有する。
【0022】
重合性酸のポリ(オキシアルキレン)化合物へのグラフト化は、フリーラジカル重合によって実行することができ、約3~約35(好ましくは約5~約25)のグラフト化酸含量を与える。
【0023】
有用なグラフト酸は、とりわけ、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸(AMPS)、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、およびビニルホスホン酸を含み、アクリル酸、マレイン酸、およびビニルホスホン酸がより好ましく、アクリル酸が最も好ましい。
【0024】
本発明において有用なポリ(オキシアルキレン)化合物は、以下の式を有する。
【化1】
式中、各R’は、独立して水素またはメチル、エチル、またはアミン基のいずれかであり、R”は、独立して水素またはメチル、エチル、またはアミン基のいずれかであり、各「n」は、独立して2~4の値を有し、各「Z」は,独立して4~約1800の値を有し、および「a」は、1~4の値を有する。好ましい実施形態では、ポリ(オキシアルキレン)化合物は、「n」が2または3の値を有し、「a」が1の値を有し、および各R’またはR”が独立して水素またはメチル、エチル、またはアミン基のいずれかであり、エチレンオキシド(「EO」)およびプロピレンオキシド(「PO」)コポリマー(「EO-POコポリマー」)をもたらす一価アルコール開始ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)ポリマーである。別の好ましい実施形態では、R’およびR”は、両方とも水素原子ではない。
【0025】
ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)またはEO-POコポリマーは、シリカスケールの形成を阻害することができるので、本発明のグラフトポリマーの骨格として特に適している。本発明の好適なEO-POコポリマーは、EO-POのランダムコポリマー、EO-POのブロックコポリマー、およびEO-POの逆ブロックコポリマーを含み得る。EO:POの重量比は、約99:1~約1:99であり得、好ましくは約90:10~約10:90であり、より好ましくは約75:25~約25:75であり、さらにより好ましくは約45:55~約55:45、および最も好ましくは約50:50である。本発明のグラフトポリマーは、好ましくは、65重量%~97重量%の骨格ポリマーを含む。
【0026】
ボトルブラシポリマー分散剤
ボトルブラシポリマーは、2つ以上のポリマーを含む分岐ポリマーまたはグラフトポリマーの一種であり、ポリマー側鎖「ブリストル」が線状ポリマー「骨格」に取り付けられており、その結果、その外観はボトルブラシの外観に似ている。本発明に望ましいボトルブラシポリマーは、ポリマー側鎖A、骨格B、および任意選択的に側鎖Cを含み、ここで、Aは、1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、Bは、1つ以上のポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、およびCは、1つ以上のアニオン性または非イオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位である。
【0027】
Aは、好ましくは、約5重量%~約45重量%のボトルブラシポリマーを含む。より好ましくは、Aは、約5重量%~約30重量%のボトルブラシポリマーを含む。最も好ましくは、Aは、約5重量%~約20重量%のボトルブラシポリマーを含む。
【0028】
Bは、好ましくは、約55重量%~約95重量%のボトルブラシポリマーを含む。より好ましくは、Bは、約70重量%~約95重量%のボトルブラシポリマーを含む。最も好ましくは、Bは、約70重量%~約85重量%のボトルブラシポリマーを含む。
【0029】
最後に、Cは、好ましくは、約0重量%~約25重量%のボトルブラシポリマーを含む。より好ましくは、Cは、約0重量%~約15重量%のボトルブラシポリマーを含む。最も好ましくは、Cは、約0重量%~約10重量%のボトルブラシポリマーを含む。
【0030】
好ましくは、本発明のボトルブラシポリマーは、約2,000ダルトン~約60,000ダルトン、およびより好ましくは4,000ダルトン~20,000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0031】
ポリオキソアルキレン含有モノマー
本発明に好適なポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後に得られる繰り返し単位は、以下の化学式を有する。
【化2】
式中、R
1は、HまたはCH
3であり、
R
2は、以下の化学式を有し、
【化3】
式中、R
3は、H、CH
3、またはそれらの混合物であり、
R
4は、H、またはC
1~C
4アルキル基、またはそれらの混合物であり、
n=5~100である。
下付き文字「n」は、好ましくは40超~100以下、より好ましくは60超~100以下、および最も好ましくは80超~100以下である。好適なポリオキソアルキレン含有モノマーは、これらに限定されないが、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ならびにポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレートなどのポリオキソアルキレンアクリレートおよびメタクリレートを含む。好ましい実施形態では、ポリオキソアルキレン含有モノマーは、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、数平均分子量は約2,000ダルトンである。別の好ましい実施形態では、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートは、約550ダルトンの数平均分子量を有する。
【0032】
アニオン性モノマー
アニオン性モノマーは、カルシウム、マグネシウム、鉄、およびアルミニウムなどの水溶液に見られる典型的なカチオンの存在下で分散剤として機能する。本発明のボトルブラシポリマーを合成するために使用することができる好ましいアニオン性モノマーは、これらに限定されないが、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、不飽和ホスホン酸、不飽和リン酸塩、および不飽和アクリルホスフェートを含む。好ましい不飽和カルボン酸は、これらに限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、およびマレイン酸を含む。好ましい不飽和スルホン酸または塩は、これらに限定されないが、2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸(AMPS)、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、およびビニルスルホン酸を含む。好ましい不飽和アクリルホスフェートは、これに限定されないが、エチレングリコールメタクリレートホスフェートを含む。
【0033】
非イオン性モノマー
本発明のボトルブラシポリマーを合成するために使用することができる好ましい非イオン性モノマーは、これらに限定されないが、メタクリレート、アクリレート、およびアクリルアミドを含む。好ましいメタクリレートは、これらに限定されないが、メチルメタクリレート、N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシエチルメタクリレートを含む。好ましいアクリレートは、エチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、およびセロソルブアクリレートを含む。好ましいアクリルアミドは、(メタ)アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N、N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、t-オクチルアクリルアミドおよびジメチルアクリルアミドを含む。
【0034】
使用方法
「有効量」は、処理される水性系におけるコロイド状/アモルファスシリカスケールの堆積を阻害するために必要なボトルブラシポリマーの量である。「阻害する」とは、コロイド状/アモルファスシリカスケールの堆積を遅らせて、機器の最大効率の期間を延長することを意味する。水性系に添加されるグラフトコポリマーまたはボトルブラシポリマーの有効量は、水性系に存在するシリカ、塩、および多価金属イオンの濃度とともに、水性系の温度およびpHに応じて変化し得る。ほとんどの用途では、グラフトコポリマーまたはボトルブラシポリマーの有効量は、約0.5ppm~約1,000ppm、およびより好ましくは約1ppm~100ppmの範囲である。
【0035】
堆積を制御するための本発明の方法において有用なグラフトポリマーを調製するために使用される重合方法は、特に限定されず、現在または将来、当業者に知られている任意の方法であり得、これらに限定されないが、米国特許第4,146,488号、同第4,392,972号、同第5,952,432号、および同第6,143,243号に開示された方法を含む、エマルジョン、溶液、添加およびフリーラジカル重合技術を含み、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
堆積を制御するための本発明の方法において有用なボトルブラシポリマーを調製するために使用される重合方法は、特に限定されず、現在または将来、当業者に知られている任意の方法であり得、これらに限定されないが、米国特許第4,711,725号に開示された重合方法を含む、エマルジョン、溶液、添加およびフリーラジカル重合技術を含み、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。好ましくは、本発明のボトルブラシポリマーは、水溶液フリーラジカル重合を介して重合される。
【0037】
EDTAまたはDTPAおよびポリマーは、上記の比率で別々に投与するか、最初に上記の比率で事前にブレンドしてから、一緒に投与することができる。ブレンドは、キレート化剤およびポリマー分散剤が均一になるまで続ける。
【0038】
本発明の使用、用途、および利点は、本発明の例示的な実施形態の以下の考察および説明によって明らかにされるであろう。
【0039】
実施例
以下の実施例は、本明細書に開示および特許請求される本発明の様々な非限定的な実施形態、ならびにその特定の属性を示す。
【0040】
調査は、以下のシリカスケール阻害特性について実行された。
試料A:骨格内のアルキレンオキシドの総重量に基づいて、50重量%のEO-50重量%のPO、10%のアクリル酸(AA)がグラフト化された骨格の繰り返し単位(すなわちモノマー)を有し、および2,700ダルトンの数平均分子量を有する;
試料B:8.7重量%のAA(アクリル酸)-8.7重量%のMAA(メタクリル酸)-82.6重量%のMPEGMA2000(ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート)ターポリマー、11,000ダルトンの数平均分子量を有する;
試料C:7重量%のメタクリル酸(MAA)-21重量%のメタクリル酸メチル(MMA)-72重量%のMPEGMA-550(ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート)、4,300ダルトンの数平均分子量を有する。
試料D:EDTA;
試料E:試料Aと1:1の重量比でブレンドされた試料D、
試料F:試料Bと1:1の重量比でブレンドされた試料D、
試料G:試料Cと1:1の重量比でブレンドされた試料D、
試料H:試料Aと1:2の重量比でブレンドされた試料D、および
試料I:試料Aと1:3の重量比でブレンドされた試料D。
【0041】
試料Aの調製
アクリル酸グラフト化EO-POコポリマーは、アクリル酸およびブタノール開始ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)コポリマーを含むベースポリマーを使用して、以下のように調製した。
水凝縮器、熱電対、撹拌機、およびアクリル酸および触媒を導入する手段を備えた5リットルの3つ口丸底フラスコに、2,700gのベースポリマーを入れた。加熱マントルを用いて、フラスコを150℃の温度に加熱し、続いて35gの過安息香酸第三級ブチルおよび312gのアクリル酸を添加した。酸供給を開始する10分前に過酸化物供給を開始し、両方の成分を90分間にわたって供給し、その後、生成物を室温まで冷却させた。
【0042】
試料Bの調製
水、メタ重亜硫酸ナトリウム、および硫酸鉄七水和物をガラス反応器に加え、窒素雰囲気下で72℃に加熱した。メタ重亜硫酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、および水、アクリル酸、およびポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートを含むモノマー混合物を120分かけて反応器に添加した。モノマーの供給が完了した後、過硫酸ナトリウムの2回目のチャージを反応器に添加し、60℃で5分間保持した。水中の50%の水酸化ナトリウム溶液を反応器にゆっくりと添加し、ポリマーを部分的に中和し、35%の固形分のポリマー溶液を得た。
【0043】
試料Cの調製
プロピレングリコール(354g)は、撹拌機、熱電対、N2入口、および還流冷却器を備えた3リットルの4つ口丸底ガラス反応器に添加された。反応器の内容物は、撹拌しながら窒素雰囲気下で92℃に加熱された。脱イオン水(10g)に溶解したリン酸水素二ナトリウム(2.46g)の溶液を反応器に添加し、続いてメルカプトエタノール(6.6g)を添加した。Bisomer550 MW(470.3g)、メタクリル酸メチル(138.7g)、およびメタクリル酸(45.5g)を含むモノマー混合物を、240分にわたって反応器に添加した。プロピレングリコール(90g)に溶解したTrigono25 C75(89.6)の開始剤供給物を、モノマー混合物と同時に開始して反応器に添加し、250分にわたって供給した。供給中、反応器の温度は、撹拌を続けながら91℃に制御された。開始剤の供給が完了した後、バッチは、90℃で20分間保持された。水酸化アンモニウム水溶液(16.5g、30%)および脱イオン水(285g)の混合物を反応器に添加し、pHを7.0に上昇させた。脱イオン水(53g)中のTrigonox25 C75(52.8g)の溶液は、反応器に添加された。脱イオン水(70g)中のメタ重亜硫酸ナトリウム(23.6g)の溶液を反応器に添加し、バッチを90℃に45分間保持した。脱イオン水の最終希釈液(175g)をバッチに加え、バッチを室温まで冷却して回収した。
【0044】
試料E~Iの調製
EDTA溶液を試料A~Cの溶液と1:1の比率で混合し、EDTAおよびポリマー分散剤が均一になるまでブレンドした。これとは別に、EDTAを試料Aと1:2の比率および1:3の比率でブレンドした。次に、ブレンドのpHを7.5に調整した。
【0045】
スケール阻害静的ボトル試験
試料A~Iは、400ppmのシリカ溶液で阻害有効性を評価した。評価は、400ppmのシリカに対して25ppm(ブレンドの各成分の12.5ppm)および50ppm(ブレンドの各成分の25ppm)のスケール阻害剤(%活性物質に基づく)で行われた。スケール阻害剤およびそれらのブレンドは、周囲温度ならびに高温(約200℃)の用途で評価された。高温用途の場合、阻害剤は、パー容器内で、200℃で24時間エージングされ、エージング後に評価された。
【0046】
静的ボトル試験を使用して、シリカ重合を阻害する様々なポリマーの有効性を評価した。溶液中に残っている遊離シリカ(反応性シリカ)は、HACHケイモリブデン酸塩比色法を使用して追跡された。コロイダルシリカの形成を阻害する効果が高いポリマーは、溶液中の遊離シリカのレベルを長期間維持した。過飽和シリカ溶液は、SiO2として400ppmの初期シリカ濃度を得るために脱イオン水にケイ酸ナトリウム塩を溶解することによって調製された。
【0047】
全ての実験は、ガラス器具からのシリカの浸出を防ぐためにプラスチック容器で実施された。試験溶液は、塩化ナトリウムとして添加された、5000ppmのNa+の添加、塩化カリウムとして添加された、300ppmのK+の添加、塩化カルシウム二水和物として添加された、100ppmのCa2+の添加、塩化マグネシウム六水和物として添加された、40ppmのMg2+の添加、および地熱ブライン条件を模倣するためのカチオン溶液として硝酸アルミニウム非水和物として添加された、10ppmのAl3+の添加により調製された。シリカ溶液は、アニオン溶液としてケイ酸ナトリウムとして添加された400ppmのSiO2を添加することによって調製された。所望の量の阻害剤ストック溶液をアニオン溶液に添加し、次にカチオン溶液を混合物に添加した。次に、希塩酸および/または水酸化ナトリウム溶液の添加を介して、完全なブラインのpHを7.5に調整し、室温で24時間ベンチトップに置いた。次に、シリカ溶液を0.45μmフィルタで濾過し、濾液の遊離シリカ濃度を、以下に記載するHACH比色ケイモリブデン酸塩試験を使用することによって分析した。
【0048】
可溶性(反応性)シリカの判定:
ケイモリブデン酸塩分光光度法は、可溶性シリカ含量を判定するために使用された。この方法は、モリブデン酸アンモニウムが低pH(約1)の溶液中に存在する反応性シリカとともに黄色のヘテロポリ酸を形成するという原理に基づいている。この方法は、1~100ppmの範囲の可溶性シリカしか判定することができないため、試験溶液の希釈(シリカ含量400~600ppm)が必要であった。この試験に使用される化学物質は、HACH Companyから市販されている。
【0049】
スケール阻害剤の阻害性能は、2つの異なる形式で示されている:(1)溶液中の反応性シリカ;および(2)対照と比較した阻害率(%)。
阻害率(%)は、以下の式に従って計算された。
【数1】
エージングされていないスケール阻害剤およびそれらのブレンドのシリカスケール阻害(阻害率(%)および溶液中のシリカ中での反応性)性能は、
図1~
図6に示される。
【0050】
図1~
図6が示すように、個々の阻害剤(50ppm活性ベース)は、K、Na、Mg、Ca、およびAlなどのカチオンの存在下でシリカスケール(初期シリカ濃度400ppm)を阻害するのに有効ではなかった。対照的に、EDTA(試料D)と阻害剤との1:1および1:2ブレンドは、シリカ阻害性能の大幅な改善を示した。EDTAと試料A、B、およびCとの1:1ブレンド(すなわち、試料E、F、およびG)、およびEDTAと試料Aとの1:2ブレンド(すなわち、試料H)は、対照または個々のスケール阻害剤と比較して、スケール阻害が少なくとも35%改善され、最大スケール阻害が約70%を示す。しかしながら、EDTAと試料Aとの1:3ブレンド(すなわち、試料I)は、対照に対してわずかな改善を示した。これらの結果は、キレート化剤およびポリマー分散剤を1:1および1:2の比率(キレート化剤対分散剤)で組み合わせると、シリカスケールの阻害に相乗効果が得られることを示す。
【0051】
本発明は、上記の明細書および図面に開示されたその好ましい実施形態を参照して説明されてきたが、本発明から逸脱することなく、本発明のさらに多くの実施形態が可能である。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
本願は以下の態様にも関する。
(1) シリカおよび金属ケイ酸塩スケールの形成を阻害する方法であって、前記方法は、
シリカを含む水性系を、キレート化剤と、酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤との有効量の混合物で処理する工程を含み、
前記キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)であり、
前記酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤は、500ダルトン~40,000ダルトンの数平均分子量を有し、
前記キレート化剤は、前記酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤と、キレート化剤対分散剤の1.0:0.5超~1.0:3.0未満の重量比で混合される、方法。
(2) 前記酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤は、3.0重量%~35重量%の不飽和グラフト酸およびアルキレンオキシドポリマー骨格を含む重合性酸グラフトポリマーであり、前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、以下の式を有し、
【化4】
式中、各R’は、水素、メチル基、エチル基、およびアミン基からなる群から独立して選択され、
R”は、水素、メチル基、エチル基、およびアミン基からなる群から独立して選択され、
各「Z」は、独立して、4~約1,800の値を有し、
「a」は、1~4の値を有し、
各「n」は、独立して、2~4の値を有し、その結果、前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、エチレンオキシド繰り返し単位、プロピレンオキシド繰り返し単位、ブチレンオキシド繰り返し単位、またはそれらのコポリマーのいずれかを含む、上記(1)に記載の方法。
(3) 前記グラフト酸は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸(AMPS)、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、ビニルホスホン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、上記(2)に記載の方法。
(4) 前記アルキレンオキシドポリマー骨格は、約45:55~約55:45のエチレンオキシド対プロピレンオキシドの重量比を有するエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドポリマーのコポリマーであり、
前記アルキレンオキシドポリマー骨格の前記繰り返し単位の10%は、前記アクリル酸でグラフト化されている、上記(3)に記載の方法。
(5) 前記酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤は、側鎖A、骨格B、および任意選択的に側鎖Cを含むボトルブラシポリマーであり、
Aは、カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、アクリルホスフェート、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、
Bは、以下の化学式を有する1つ以上のポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、
【化5】
式中、R
1
は、HまたはCH
3
であり、
R
2
は、以下の化学式を有し、
【化6】
式中、R
3
は、H、CH
3
、またはそれらの混合物であり、
R
4
は、H、またはC
1
~C
4
のアルキル基、またはそれらの混合物であり、
n=5~100であり、
Cは、(1)カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、アクリルホスフェート、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位、または(2)メタクリレート、アクリレート、およびアクリルアミドからなる群から選択される1つ以上の非イオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位のいずれかであり、
Aは、前記ボトルブラシポリマーの5重量%~45重量%を構成し、
Bは、前記ボトルブラシポリマーの55重量%~95重量%を構成し、
Cは、前記ボトルブラシポリマーの0重量%~25重量%を構成する、
上記(1)に記載の方法。
(6) Aは、アクリル酸、アクリル酸の塩、メタクリル酸、メタクリル酸の塩、イタコン酸、イタコン酸の塩、マレイン酸、マレイン酸の塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸(AMPS)、AMPSの塩、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸の塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸の塩、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
Bは、ポリオキソアルキレンアクリレート、メタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
Cは、存在し、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートヒドロキシプロピルアクリレートおよびセロソルブアクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアクリルアミド、t-オクチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、およびそれらの混合物からなる群から選択される、上記(5)に記載の方法。
(7) Aは、前記メタクリル酸であり、かつ前記ボトルブラシポリマーの5重量%~10重量%であり、
Bは、前記ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、かつ前記ボトルブラシポリマーの70重量%~75重量%であり、
Cは、前記メタクリル酸メチルであり、かつ前記ボトルブラシポリマーの20重量%~23重量%である、上記(6)に記載の方法。
(8) Aは、前記アクリル酸であり、かつ前記ボトルブラシポリマーの8重量%~10重量%であり、
Bは、前記ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、かつ前記ボトルブラシポリマーの80重量%~84重量%であり、
Cは、前記メタクリル酸であり、前記ボトルブラシポリマーの8重量%~10重量%である、上記(6)に記載の方法。
(9) 前記酸およびアルキレンオキシド由来のポリマー分散剤は、2,500ダルトン~12,000ダルトンの数平均分子量を有する、上記(1)に記載の方法。