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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】運転席用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2334 20110101AFI20231120BHJP
   B60R 21/217 20110101ALI20231120BHJP
【FI】
B60R21/2334
B60R21/217
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021038797
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2021169299
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2020071595
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】小泉 晃
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3032750(JP,U)
【文献】特開平11-321506(JP,A)
【文献】特開2010-089624(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0137489(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/2334
B60R 21/217
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングホイールと乗員との間に膨張展開するエアバッグクッションと、該エアバッグクッションにガスを供給するインフレータと、該エアバッグクッションに内包されて該インフレータからのガスを整流するディフューザとを備えた運転席用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグクッションは、
前記乗員側に配置される乗員側パネルと、
前記ステアリングホイール側に配置されるステアリング側パネルと、
を含み、
前記ディフューザは、
底面部と、
天面部と、
前記底面部に形成され前記インフレータにつながれる接続部と、
前記底面部から延びる複数の脚部および前記天面部から延びる複数の脚部を接続して形成された複数の柱部であって、それらの間に前記インフレータから受けたガスを前記エアバッグクッション内に供給する複数の供給口が形成された複数の柱部と、
前記天面部に形成され前記インフレータから受けたガスを前記エアバッグクッション内に供給する乗員側供給口であって、前記ディフューザを内包した状態のエアバッグクッションの前記乗員側パネルの所定箇所に重なる乗員側供給口とを有し
当該運転席用エアバッグ装置はさらに、前記ディフューザの前記乗員側供給口を横断して該ディフューザと前記エアバッグクッションの乗員側パネルの所定箇所とを解消可能に縫製した仮縫製部を備えることを特徴とする運転席用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記仮縫製部は、前記乗員側供給口の範囲内で交わる複数本の線によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記乗員側供給口は、円形であって、
前記仮縫製部は、前記乗員側供給口の中央で直交する2本の線によって形成されることを特徴とする請求項2に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグクッションの乗員側パネルの所定箇所は、所定の色彩または模様でマーキングされていて、
前記仮縫製部は、前記マーキングに沿って形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記乗員側パネルの所定箇所は、当該乗員側パネルの中央近傍であることを特徴とする請求項4に記載の運転席用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングホイールと乗員との間に膨張展開するエアバッグクッションを備えた運転席用エアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、車両のステアリングホイールには、運転席用エアバッグ装置がほぼ標準装備されている。運転席用エアバッグ装置のエアバッグクッションは、主にステアリングホイールの中央のハブに収容されていて、樹脂製のカバー部材等をその膨張圧で開裂して乗員の前方に膨張展開する。
【0003】
各種エアバッグ装置において、エアバッグクッションの内部に袋状の部材を設ける場合がある。例えば、特許文献1の助手席用エアバッグ装置では、エアバッグクッションの形状を調節する目的で、外バッグ31の内部に内バッグ41が設けられている。特許文献1の技術では、二段階出力のインフレータ21を採用していて、インフレータ21が高出力で作動したときのみ内バッグ41にガスが供給される仕組みとなっている。そして、内バッグ41が膨張した場合、内バッグ41と外バッグ31との縫合箇所であるティアシーム51が切断され、外バッグ31がより大きく膨張する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-321506号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1の技術の他にも、エアバッグクッションの内部にガスの整流を目的とする袋状や筒状等のディフューザを設け、上記ティアシーム51と同様にエアバッグクッションとディフューザとを破断可能に仮縫製する場合がある。しかしながら、このような仮縫製をエアバッグ装置の量産過程で行うためには、専用の治具が必要になって相応のコストや労力が増大したり、品質のばらつきを管理したりする必要が生じる。そのため、エアバッグクッションとディフューザ等とをより簡潔に仮縫製できる構成が求められている。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、エアバッグクッションと内部のディフューザとを簡潔に仮縫製可能な運転席用エアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる運転席用エアバッグ装置の代表的な構成は、車両のステアリングホイールと乗員との間に膨張展開するエアバッグクッションと、エアバッグクッションにガスを供給するインフレータと、エアバッグクッションに内包されてインフレータからのガスを整流するディフューザとを備えた運転席用エアバッグ装置であって、エアバッグクッションは、乗員側に配置される乗員側パネルと、ステアリングホイール側に配置されるステアリング側パネルと、を含み、ディフューザは、インフレータにつながれる接続部と、インフレータから受けたガスをエアバッグクッション内に供給する1または複数の供給口と、を有し、1または複数の供給口は、ディフューザを内包した状態のエアバッグクッションの乗員側パネルの所定箇所に重なる乗員側供給口を含み、当該運転席用エアバッグ装置はさらに、ディフューザの乗員側供給口を横断してディフューザとエアバッグクッションの乗員側パネルの所定箇所とを解消可能に縫製した仮縫製部を備えることを特徴とする。
【0008】
上記の仮縫製部によれば、乗員側パネルにディフューザをつなぐことで、収納時におけるディフューザの位置ずれを防ぐことができる。また、上記仮縫製部によれば、エアバッグクッションの展開過程において、乗員側パネルおよびディフューザの位置が安定する。そのため、ディフューザからエアバッグクッションへと設定通りにガスを供給することが可能になると共に、乗員側パネルの展開挙動を整えて円滑に膨張展開することが可能になる。これらのように、上記構成によれば、エアバッグクッションの乗員拘束性能を向上させつつ、安定した品質のエアバッグクッションを量産することが可能になる。
【0009】
上記の仮縫製部は、乗員側供給口の範囲内で交わる複数本の線によって形成されてもよい。この構成の仮縫製部であれば、乗員側供給口からのガスの圧力によって効率良く解消することが可能である。
【0010】
上記の乗員側供給口は、円形であって、仮縫製部は、乗員側供給口の中央で直交する2本の線によって形成されてもよい。この構成の仮縫製部であっても、乗員側供給口からのガスの圧力が均等にかかるため、効率良く解消することが可能である。
【0011】
上記のエアバッグクッションの乗員側パネルの所定箇所は、所定の色彩または模様でマーキングされていて、仮縫製部は、マーキングに沿って形成されていてもよい。マーキングを目印にすることで、ディフューザと乗員側パネルとの位置合わせが容易になり、仮縫製部を形成するときの作業効率が向上する。
【0012】
上記の乗員側パネルの所定箇所は、当該乗員側パネルの中央近傍であってもよい。乗員側パネルの中央近傍であれば、ディフューザと位置合わせしやく、仮縫製部が形成しやすいため好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エアバッグクッションと内部のディフューザとを簡潔に仮縫製可能な運転席用エアバッグ装置を提供可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態にかかる運転席用エアバッグ装置の概要を例示した図である。
図2図1(b)の作動後の運転席用エアバッグ装置の構成を例示した図である。
図3図2(b)のディフューザを例示した図である。
図4図2(a)の乗員側パネルと図2(b)のディフューザとをつなぐ仮縫製部を例示した図である。
図5図2(b)のディフューザの第1変形例を例示した図である。
図6図2(a)のディフューザの第2変形例を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態にかかる運転席用エアバッグ装置100の概要を例示した図である。図1(a)は運転席用エアバッグ装置100の作動前の状態を例示した図である。以降、図1その他の図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Back)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Left)、R(Right)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(up)、D(down)で例示する。
【0017】
本実施形態では、運転席用エアバッグ装置100を、左ハンドル車における運転席用(前列左側の座席102)のものとして実施している。以下では、前列左側の座席102を想定して説明を行うため、例えば車幅方向外側(以下、車外側)とは車両左側を意味し、車幅方向内側(以下、車内側)とは車両右側を意味する。
【0018】
運転席用エアバッグ装置100のエアバッグクッション104(図1(b)参照)は、折畳みや巻回等された所定の収納形態となって、座席102における乗員の正規着座位置の前方にて、ステアリングホイール106の中央のハブ108の内部に収納されている。
【0019】
図1(b)は運転席用エアバッグ装置100の作動後の状態を例示した図である。エアバッグクッション104は、インフレータ112(図2(b)参照)からのガスによって、ステアリングホイール106(図1(a)参照)のカバー部材110を開裂しながら膨張を開始する。エアバッグクッション104は、ステアリングホイール106と、座席102における正規着座位置の乗員との間に袋状に膨張展開し、前方へ移動しようとする乗員の上半身や頭部を拘束する。クッション104は、着座位置側から見て円形で、その表面を構成する複数のパネルを重ねて縫製または接着することによって形成されている。
【0020】
図2は、図1(b)の作動後の運転席用エアバッグ装置100の構成を例示した図である。図2(a)は、図1(b)のエアバッグクッション104を車外側のやや上方から見て例示した図である。本実施形態におけるエアバッグクッション104は、やや扁平な円形に近い形状に膨張展開する。
【0021】
エアバッグクッション104は複数のパネルから形成されていて、乗員側に配置される乗員側パネル120、およびステアリングホイール106(図1(a)参照)側に配置されるステアリング側パネル122を含んでいる。乗員側パネル120の中央には、後述するマーキング152が設けられている。また、ステアリング側パネル122には、ガスを外部に排出するベントホール(図示省略)が設けられている。
【0022】
図2(b)は、図2(a)の乗員側パネル120およびステアリング側パネル122を透過してエアバッグクッション104の内部を例示した図である。ディフューザ124は、インフレータ112からのガスを整流する部材であり、エアバッグクッション104に内包された状態でインフレータ112と共にステアリング側パネル122に設置されている。
【0023】
インフレータ112は、ガスを供給する装置であって、本実施例ではディスク型(円盤型)のものを採用している。インフレータ112は、ディフューザ124の内部に一部が挿入され、端子(図示省略)がディフューザ124およびステアリング側パネル122(図2(b)参照)から外部に露出した状態に設置される。インフレータ112は、不図示のセンサから送られる衝撃の検知信号に起因して稼働し、ディフューザ124を介してエアバッグクッション104にガスを供給する。
【0024】
インフレータ112は、複数のスタッドボルト118が設けられている。スタッドボルト118は、ディフューザ124およびステアリング側パネル122を貫通し、ステアリングホイール106(図1(a)参照)の内部の底面に締結される。スタッドボルト118の締結によって、エアバッグクッション104もステアリングホイール106に固定されている。
【0025】
現在普及しているインフレータには、ガス発生剤が充填されていてこれを燃焼させてガスを発生させるタイプや、圧縮ガスが充填されていて熱を発生させることなくガスを供給するタイプ、または燃焼ガスと圧縮ガスとを両方利用するハイブリッドタイプのものなどがある。インフレータ112としては、いずれのタイプのものも利用可能である。
【0026】
図3は、図2(b)のディフューザ124を例示した図である。図3(a)は、図3(b)のディフューザ124を単独で例示した斜視図である。ディフューザ124は、下側パネル126と上側パネル128とで構成され、複数のガスの供給口(供給口130等)を形成した状態でインフレータ112(図2(b)参照)を覆う構成になっている。
【0027】
図3(b)は、図3(a)の下側パネル126を平面に置いた状態で例示した図である。図3(b)に例示するように、下側パネル126は、中央の底面部132と、4つの脚部134とを有している。底面部132は、中央にインフレータ112(図2(b)参照)が接続される接続部136を有している。接続部136は、インフレータ112の端子を露出させる開口138と、開口138の周囲に設けられたスタッドボルト118を通すボルト孔140とを含んで構成されている。脚部134は、上側パネル128の脚部146と接続され、ディフューザ124の柱部142を形成する。
【0028】
図3(c)は、図3(a)の上側パネル128を平面に置いた状態で例示した図である。上側パネル128は、中央の天面部144と、4つの脚部146とを有している。天面部144は、中央に乗員側供給口148が形成されている。乗員側供給口148は、エアバッグクッション104(図3(b)参照)の乗員側パネル120に向かってガスを供給する円形の貫通孔であり、供給口130(図3(a)参照)と同様に当該ディフューザ124の供給口のひとつである。
【0029】
本実施形態では、インフレータ112(図2(b)参照)の作動前において、ディフューザ124の位置ずれを防ぐために、ディフューザ124の乗員側供給口148の付近は仮縫製部150(図4(a)参照)によってエアバッグクッション104の乗員側パネル120に仮縫製されている。
【0030】
図4は、図2(a)の乗員側パネル120と図2(b)のディフューザ124とをつなぐ仮縫製部150を例示した図である。図4(a)は、図2(a)の乗員側パネル120を平面に置いた状態でマーキング152の付近を拡大した図である。
【0031】
本実施形態では、ディフューザ124(図3(a))の乗員側供給口148は、ディフューザ124を内包した状態のエアバッグクッション104を乗員側パネル120を上にして平面に置いたときに、乗員側パネル120のマーキング152に重なるよう設けられている。マーキング152は、紺色や黒色などの濃い色彩の四角形に形成されていて、乗員側パネル120の中央近傍に設けられている。マーキング152を目印にすることで、ディフューザ124と乗員側パネル120の中央近傍との位置合わせが容易になり、仮縫製部150を形成するときの作業効率が向上する。
【0032】
仮縫製部150は、ある程度以上の力がかかったときに糸が破断やほつれ等を起こして解消される仮縫製が形成された部位である。仮縫製部150は、ディフューザ124(図2(b)参照)の乗員側供給口148を横断する線によってディフューザ124とエアバッグクッション104の乗員側パネル120とをつないでいる。仮縫製部150は、乗員側供給口148を横断することで、インフレータ112が作動して乗員側供給口148からガスの圧力がかかったときに解消される仕組みになっている。
【0033】
また、仮縫製部150は、乗員側パネル120のマーキング152に沿って形成されている。マーキング152は、乗員側パネル120の中央近傍に設けられていて、仮縫製部150が形成しやすく好適である。
【0034】
図4(b)は、図1(b)の運転席用エアバッグ装置100のA-A断面におけるインフレータ112(図2(b)参照)の作動前の様子を例示した図である。上述したように、インフレータ112の作動前において、ディフューザ124の上側パネル128の天面部144は、乗員側供給口148を横断するようにして、仮縫製部150によってエアバッグクッション104の乗員側パネル120につながれている。
【0035】
当該運転席用エアバッグ装置100は、仮縫製部150によって乗員側パネル120にディフューザ124をつなぐことで、収納時におけるディフューザ124の位置ずれを防ぐことができる。したがって、当該運転席用エアバッグ装置100であれば、エアバッグクッション104を折り畳む工程において、ディフューザ124の位置を保持する専用の治具等が不要になり、作業の容易化およびコスト低減に資することが可能になる。
【0036】
図4(c)は、図1(b)の運転席用エアバッグ装置100のA-A断面であり、図4(b)の運転席用エアバッグ装置100のインフレータ112(図2(b)参照)の作動後の様子である。上述したように、乗員側供給口148にガスの圧力がかかることで仮縫製部150は解消され、エアバッグクッション104は乗員側パネル120がディフューザ124から離間して膨張展開する。
【0037】
仮縫製部150によれば、エアバッグクッション104の展開過程において、乗員側パネル120およびディフューザ124の位置が安定する。そのため、ディフューザ124からエアバッグクッション104へと設定通りにガスを供給することが可能になると共に、乗員側パネル120の展開挙動を整えて円滑に膨張展開することが可能になる。これらのように、仮縫製部150によれば、ディフューザ124とエアバッグクッション104の乗員側パネル120とを簡潔に仮縫製でき、エアバッグクッション104の乗員拘束性能を向上させつつ、安定した品質のエアバッグクッション104を量産することが可能になる。
【0038】
なお、図4(a)に例示した仮縫製部150は、直交する2本の線に限らず、斜めに交わる線や、1本の線または2本以上の複数本の線によって形成することも可能である。これら仮縫製部であっても、乗員側供給口148を横断するよう設けることで、ガスの圧力によって効率良く解消することが可能になる。また、マーキング152は、四角形に限らず、他の図形や模様、さらには他の色彩などによって実施することも可能である。
【0039】
(変形例)
以下、上述した各構成要素の変形例について説明する。図5、6の各図では既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
【0040】
図5は、図2(b)のディフューザ124の第1変形例(ディフューザ200)を例示した図である。図5(a)は、図2(b)に対応してディフューザ200を例示した図である。ディフューザ200は、インフレータ112(図2(b)参照)からのガスを供給する供給口として、乗員側供給口202の他、側部供給口204a、204bおよび下部供給口206を有している。当該ディフューザ200においても、乗員側供給口202は仮縫製部150(図4(a)参照)によってエアバッグクッション104の乗員側パネル120に仮縫製される。
【0041】
図5(b)は、図5(a)のディフューザ200を側方から例示した図である。ディフューザ200は、縫製によって袋状に形成されていて、下方側の縁が開放されて下部供給口206が形成されている。また、乗員側(図5(b)中右側)の縁が解放されて乗員側供給口202が形成されている。
【0042】
下部供給口206は、側部供給口204a、204bおよび乗員側供給口よりも大きな径に形成され、これら側部供給口204a、204b等よりもガスの通過量が多い。これによって、クッション104(図5(a)参照)は、下部から優先的に膨張展開する。この構成によれば、クッション104は、例えば下部を早期にステアリング106(図1(a)参照)と乗員の腹部や胸部との間に入り込ませて保護することが可能になる。
【0043】
図5(c)は、図5(b)のディフューザ200の縫製を解いて平面上に広げた状態を例示している。ディフューザ200は、中央にインフレータ112(図2(b)参照)の接続部136が設けられていて、インフレータ112と共にステアリング側パネル122(図2(a)参照)に固定される。
【0044】
図6は、図2(a)のディフューザ124の第2変形例(ディフューザ220)を例示した図である。ディフューザ220は、全体が扁平な円形になっている点で、上記各ディフューザと構成が異なっている。ディフューザ220もまた、乗員側供給口222の他、側部供給口204a、204bおよび下部供給口206を有している。当該ディフューザ220においても、乗員側供給口222は仮縫製部150(図4(a)参照)によってエアバッグクッション104の乗員側パネル120に仮縫製される。
【0045】
図6(b)は、図6(a)のディフューザ220の下側パネル224を平面上に広げた状態を例示している。下側パネル224は、中央に接続部136が設けられ、左右と下方の縁に側部供給口204a、204bおよび下部供給口206に沿った切欠きと、ディフューザ220の丸みを作るための切欠きとが形成されている。
【0046】
図6(c)は、図6(a)のディフューザ220の上側パネル226を平面上に広げた状態を例示している。上側パネル226は、ほぼ円形になっていて、縁を下側パネル224(図6(b))に接合させることでディフューザ220(図6(a)参照)を具現化することができる。上側パネル226もまた、中央に乗員側供給口222を有している。
【0047】
以上の変形例のディフューザ200、220以外にも、他の例として、側部供給口204a、204bを省略したうえで、乗員側供給口に加えてエアバッグクッションの上部と下部とに向けてガスを放出可能な供給口を設けたディフューザなども実現可能である。いずれのディフューザにおいても、仮縫製部150によって各ディフューザとエアバッグクッション104の乗員側パネル120とを簡潔に仮縫製でき、エアバッグクッション104の乗員拘束性能を向上させつつ、安定した品質のエアバッグクッション104を量産することが可能になる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0049】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、車両のステアリングホイールと乗員との間に膨張展開するエアバッグクッションを備えた運転席用エアバッグ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100…運転席用エアバッグ装置、102…座席、104…エアバッグクッション、106…ステアリングホイール、108…ハブ、112…インフレータ、118…スタッドボルト、120…乗員側パネル、122…ステアリング側パネル、124…ディフューザ、126…下側パネル、128…上側パネル、130…供給口、132…底面部、134…脚部、136…接続部、138…開口、140…ボルト孔、142…柱部、144…天面部、146…脚部、148…乗員側供給口、150…仮縫製部、152…マーキング、200…第1変形例のディフューザ、202…乗員側供給口、204a、204b…側部供給口、206…下部供給口、220…第2変形例のディフューザ、222…乗員側供給口、224…下側パネル、226…上側パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6