(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】セルロース含有フィルタ材料からの浸出性ベータ-グルカンレベルの減少
(51)【国際特許分類】
B01D 39/18 20060101AFI20231120BHJP
A61K 35/16 20150101ALI20231120BHJP
【FI】
B01D39/18
A61K35/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021078686
(22)【出願日】2021-05-06
(62)【分割の表示】P 2019520052の分割
【原出願日】2017-10-23
【審査請求日】2021-06-07
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アクシャット・グプタ
(72)【発明者】
【氏名】ダナ・キンゼルマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】カラ・ピゼッリ
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス・グッドリッチ
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-274525(JP,A)
【文献】特開昭61-044824(JP,A)
【文献】特開昭58-207918(JP,A)
【文献】特開2007-014854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
A61K 35/00-35/768
36/06-36/068
B01D 24/00-35/04
35/10-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース含有フィルタ材料における浸出性ベータ-グルカンの量を減少させる方法であって、前記フィルタ材料を、
炭酸アンモニウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸鉄、炭酸マグネシウム、炭酸マンガンおよび有機カーボネート以外の炭酸
塩を含む溶液で処理する工程を含
み、前記溶液のpHが、7.5~12の範囲であり、かつ、前記フィルタ材料が、デプスフィルタ材料である、方法。
【請求項2】
前記溶液のpHが、8.5~12の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液のpHが、10~12の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液のカーボネート濃度が、0.01M~1Mである、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記溶液のカーボネート濃度が、0.01M~0.5Mである、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記処理が、前記フィルタ材料を前記溶液に1分間~240分間浸漬させる工程を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記処理が、前記フィルタ材料を前記溶液に60分間~120分間浸漬させる工程を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記フィルタ材料が、セルロース繊維、再生セルロース繊維、無機フィルタ助剤と組み合わされたセルロース繊維、無機フィルタ助剤及び有機樹脂と組み合わされたセルロース繊維、セルロース/シリカブレンド、酢酸セルロース若しくは三酢酸セルロースのようなセルロース誘導体又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記デプスフィルタが、ハウジングを含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記フィルタ材料が、木材パルプである、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
減少した量の浸出ベータ-グルカンを有するバイオ医薬又は血漿誘導体を調製する方法であって、前記バイオ医薬又は血漿誘導体を、請求項1~10のいずれかに記載の処理方法によって処理されたセルロース含有フィルタ材料との接触によって処理する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体で参照により本明細書に組み込む、2016年10月26日に出願された米国仮特許出願第62/413,013号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は概して、セルロース含有フィルタ材料からの(1→3)-β-D-グルカン浸出物のレベルの減少に関する。
【背景技術】
【0003】
セルロース含有媒体及びフィルタは、標的分子から不純物を除去するために、バイオ医薬及び血漿精製のプロセスで広く使用されている。(1→3)-β-D-グルカン(「ベータ-グルカン」)は、セルロースマトリックス中の生来の不純物であり、タンパク質及び同様の成分の濾過中に生成物ストリーム中に浸出する可能性がある。規制当局は、バイオ医薬製造者に対して、ベータ-グルカン不純物のレベルを厳重に監視し、それらを規定閾値より下に維持することを要求している。フィルタ、特にプロセス中のさらに下流で使用されるものから生じるベータ-グルカン浸出物の上昇したレベルは、患者の安全性及び規制理由のために懸念事項の原因である。さらに、血清ベース生成物の製造者も、ベータ-グルカン浸出物のレベルを閾値量より下に維持することが要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セルロース含有フィルタ材料中の浸出性ベータ-グルカンの量を減少させる方法を提供することが、本開示の様々な態様の中にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、簡潔には、本開示は、セルロース含有フィルタ材料における浸出性ベータ-グルカンの量を減少させる方法であって、フィルタ材料を、炭酸塩、有機カーボネート(炭酸エステルなど)、又は炭酸を含む溶液で処理する工程を含む、方法に関する。
【0006】
本開示の別の態様は、本明細書に記載される方法によって処理されたセルロース含有フィルタ材料であって、未処理フィルタ材料と比較して減少した量の浸出性ベータ-グルカンを有する、フィルタ材料を提供することである。
【0007】
本開示の別の態様は、減少した量の浸出ベータ-グルカンを有するバイオ医薬又は血漿誘導体を調製する方法であって、バイオ医薬又は血漿誘導体を、本明細書に記載される方法によって処理されたセルロース含有フィルタ材料との接触によって処理する工程を含む、方法を提供することである。
【0008】
本開示の別の態様は、バイオ医薬又は血漿誘導体を、本明細書に記載される方法によって処理されたセルロール含有フィルタ材料と接触させることによって調製されたバイオ医薬又は血漿誘導体であって、未処理バイオ医薬又は血漿誘導体と比較して減少した量の浸出ベータ-グルカンを含む、バイオ医薬又は血漿誘導体を提供することである。
【0009】
他の目的及び特徴は、以下で部分的に明らかとなり、部分的に指摘される。
【0010】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からより十分に明らかとなり、ここで、図面は、本開示の例示的な態様に従って特徴を例証するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】特殊フラッシュの調査のためのベンチスケール装置の例示的概略図である。
【
図2】再循環モードでの特殊フラッシュの調査のためのベンチスケール装置の例示的概略図である。
【
図3】生成物プールにおける浸出ベータ-グルカンレベルに対する特殊フラッシュの効果を例証するグラフである。
【
図4】カーボネートフラッシュVPFと標準フラッシュVPF(モノクローナル抗体A、VPFロットC4AA98988)とのVPro比較性能を例証するグラフである。
【
図5】カーボネートフラッシュVPFと標準フラッシュVPF(モノクローナル抗体B、VPFロットC3AA43491)とのVPro比較性能を例証するグラフである。
【
図6】デプスフィルタからのベータ-グルカンの除去についての炭酸ナトリウムと炭酸カリウムとの比較を例証するグラフである。
【
図7】効果分析のサイズについてのParetoチャートを例証するグラフである。
【
図8】予測に対して測定されたベータ-グルカン浸出性レベルを例証するグラフである。
【
図9】低ホールド値を例証する輪郭プロットである。
【
図10】中間ホールド値を例証する輪郭プロットである。
【
図11】高ホールド値を例証する輪郭プロットである。
【
図12】再循環モードでのフラッシング溶液の異なる体積対面積比の効果を例証するグラフである。
【
図13】水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを使用しての未処理セルロースパルプからの浸出ベータ-グルカンの減少を例証するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
略語及び定義
以下の定義及び方法は、本開示をより良く定義し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。特に断りのない限り、用語は、関連技術分野における当業者による慣用法に従って理解されるものとする。
【0013】
本明細書に引用された刊行物、特許及び特許出願のすべては、上記又は下記にかかわらず、あたかもそれぞれ個別の刊行物、特許又は特許出願を参照により組み込むことを具体的及び個別に示すのと同じ程度にそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
「含む(including)」、「含む(containing)」、又は「により特徴付けられる(characterized by)」と同義である、用語「含む(comprising)」は、包括的又はオープンエンドであり、かつ追加の、列挙されていない要素又は方法工程を排除しない。
【0015】
用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求発明の具体化された材料又は工程「及び基本的及び新規な特性に実質的に影響を与えないもの」に特許請求の範囲を限定する。
【0016】
本明細書で使用される場合の用語「からなる(consisting of)」は、特許請求に具体化されないすべての要素、工程、又は原料を排除する。
【0017】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、そうでないことが内容から明白である場合を除き、複数の記載を包含することが留意されなければならない。したがって、例えば、1つの(a)「成分」という場合は、1つ、2つ又はそれ以上のこのような成分を含む。
【0018】
別に規定されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語のすべては、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等のいくつかの方法及び材料が、本発明の実施において使用され得るが、好ましい材料及び方法は、本明細書に記載される。
【0019】
本開示の一態様は、セルロース含有フィルタ材料中の浸出性ベータ-グルカンの量を減少させる方法に関する。有利には、本明細書に記載される方法、及びそれにより生成される処置フィルタ材料は、バイオ医薬又は血漿誘導体のような生成物プール(すなわち、ろ過パス後に収集された成分)中に通常は浸出するベータ-グルカンの量をかなり減少させ得ることが発見された。
【0020】
一般に、本明細書に記載される方法及びフィルタは、セルロース含有フィルタ材料中の浸出性ベータ-グルカンのレベルを10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、又は99%超だけ減少させることができる。このような浸出ベータ-グルカンは、例えば、処理プロセス後の濾液中検出され得る(すなわち、処理効力の指示薬として)。本明細書に記載される処理セルロース含有フィルタ材料が、その後にバイオ医薬又は血漿誘導体プロセシングで用いられる場合、浸出性ベータ-グルカンレベルの減少は、例えば、1000pg/ml未満、900pg/ml未満、800pg/ml未満、700pg/ml未満、600pg/ml未満、500pg/ml未満、400pg/ml未満、300pg/ml未満、200pg/ml未満、又は100pg/ml未満のベータ-グルカン不純物を有するバイオ医薬又は血漿誘導体生成物につながる可能性がある。ベータ-グルカン不純物の下限は、特に限定されず、好ましくは50pg/ml未満又はさらにはそれ未満であってもよい。
【0021】
処理溶液
本明細書に記載される方法は、セルロース含有フィルタ材料をカーボネート含有溶液で処理する工程を伴う。一般に、フィルタ材料の処理は、ソーキング、循環、再循環、洗浄、フラッシング、通過、又はそうでなければ、以下にさらに詳細に検討されるとおりに、フィルタ材料を溶液と接触させて、それから浸出性ベータ-グルカンを除去する工程によって行われる。
【0022】
カーボネート含有溶液は、炭酸塩、有機カーボネート、又は炭酸を含む。炭酸塩、有機カーボネート、及び/又は炭酸の組み合わせがまた、用いられてもよい。
【0023】
一部の実施形態において、例えば、溶液は、炭酸塩を含む。例示的な炭酸塩には、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸鉄、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及びそれらの混合物が含まれる。1つの特定の実施形態において、炭酸塩は、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸鉄、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。別の特定の実施形態において、炭酸塩は、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。1つの好ましい実施形態において、炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、又はそれらの混合物である。
【0024】
他の実施形態において、例えば、溶液は有機カーボネートを含む。有機カーボネートは、一般に式:RO[(CO)O]nR(式中、それぞれのRは、独立して、置換又は非置換、直鎖又は分岐の、1~20個のC原子を有する、脂肪族、芳香族/脂肪族(芳香脂肪族)、又は芳香族炭化水素基である)を有する。2個の基Rはまた、互いに連結されて、環を形成してもよい。2個のR基は、同じであっても又は異なっていてもよく;1つの特定の実施形態において、それらは同じである。この実施形態において、Rは、好ましくは脂肪族炭化水素基、より好ましくは1~5個のC原子を有する、直鎖若しくは分岐アルキル基、又は置換若しくは非置換フェニル基である。この場合のRは、1~20個のC原子、好ましくは1~12個、より好ましくは1~6個、非常により好ましくは1~4個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐、好ましくは直鎖の、(シクロ)脂肪族、芳香族/脂肪族又は芳香族、好ましくは(シクロ)脂肪族又は芳香族、より好ましくは脂肪族炭化水素基である。このような基の例は、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル、n-エイコシル、2-エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、フェニル、o-若しくはp-トリル、又はナフチルである。これらの基Rは、同じであっても又は異なっていてもよく;それらは、好ましくは同じである。基Rはまた、互いに連結されて、環を形成してもよい。この種の二価基Rの例は、1,2-エチレン、1,2-プロピレン、及び1,3-プロピレンである。一般的に言えば、nは、1~5、好ましくは1~3、より好ましくは1~2の整数である。カーボネートは、好ましくは一般式RO(CO)ORの単純なカーボネートであり、すなわち、この場合のnは、1である。
【0025】
適当なカーボネートの例は、エチレンカーボネート、1,2-若しくは1,3-プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジキシリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジ-n-ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジデシルカーボネート又はジドデシルカーボネートのような脂肪族、芳香族/脂肪族又は芳香族カーボネートを含む。1つの例示的な置換カーボネートは、グリセロールカーボネートである。nが1より大きいカーボネートの例は、ジ-tert-ブチルカーボネートのようなジアルキルジカーボネート、又はジ-tert-ブチルトリカーボネートのようなジアルキルトリカーボネートを含む。1つの例示的な芳香族カーボネートは、ジフェニルカーボネートである。1つの特定の実施形態において、有機カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセロールカーボネート及びそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネートエステルである。
【0026】
カーボネート含有溶液のpHは、一般に約7.5~約12(例えば、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5又は約12)の範囲である。一実施形態において、例えば、溶液のpHは、約8.5~約12(例えば、約8.5、約8.75、約9、約9.25、約9.5、約9.75、約10、約10.25、約10.5、約10.75、約11、約11.25、約11.5、約11.75又は約12)の範囲である。1つの好ましい実施形態において、溶液のpHは、約10~約12(例えば、約10.1、約10.2、約10.3、約10.4、約10.5、約10.6、約10.7、約10.8、約10.9、約11、約11.1、約11.2、約11.3、約11.4、約11.5、約11.6、約11.7、約11.8、約11.9又は約12)の範囲である。
【0027】
溶液のカーボネート濃度は、例えば、選択されるカーボネート(例えば、炭酸塩又は炭酸)、所望のpH及び/又は処理プロセスの保持時間に依存して、変わってもよい。1つの実施形態において、例えば、カーボネート濃度は、約0.005mMの下限、及び用いられる特定のカーボネートの最大溶解度限界の上限を有してもよい。別の実施形態において、溶液のカーボネート濃度は、約0.005mM~約2Mである。したがって、例えば、カーボネート濃度は、約0.005mM、約0.01mM、約0.025mM、約0.05mM、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約5mM、約10mM、約25mM、約50mM、約0.1M、約0.15M、約0.2M、約0.25M、約0.5M、約0.75M、約1.0M、約1.25M、約1.5M、約1.75M又は約2Mであってもよい。1つの特定の実施形態において、溶液のカーボネート濃度は、約0.01M~約0.5Mである。別の特定の実施形態において、溶液のカーボネート濃度は、約0.01M~約1Mである。有機カーボネートが用いられる実施形態において、例えば、それらは、そのままで(すなわち、希釈なし又は水性形態で使用されてもよい。
【0028】
カーボネートに加えて、溶液は、pH範囲を所望の範囲内に(例えば、約8.5~約12に)維持する及びそうでなければ、溶液濃度を調節するために、緩衝剤を含有してもよい。いずれの緩衝剤も使用され得るが、ただし、本明細書では、それがカーボネート成分に悪影響を与えない及び必要とされる必須pHを支持する限りであることを条件とする。例示的な緩衝剤には、水酸化ナトリム、水酸化カリウムなどが含まれる。1つの特定の実施形態において、緩衝剤は、水酸化ナトリウムである。典型的には、緩衝剤濃度は、0.005mM、約0.01mM、約0.025mM、約0.05mM、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約5mM、約10mM、約25mM、約50mM、約0.1M、約0.15M、約0.2M、約0.25M、約0.5M、約0.75M、約1.0M、約1.25M、約1.5M、約1.75M又は約2Mである。一部の実施形態においてかつ選択される緩衝剤、並びにそれのpH及び濃度に依存して、緩衝剤は、フィルタ材料に殺菌利益を与えてもよい。
【0029】
上で留意されるとおり、フィルタ材料の処理は、ソーキング、循環、再循環、洗浄、フラッシング、通過、又はそうでなければ、フィルタ材料と溶液との接触を伴う。一般に、使用のためのフィルタ材料を調製するいずれの慣用洗浄又はフラッシュ方法も、用いられ得る。追加的に、又は代替的に、セルロースパルプ又はメンブレンのようなフィルタ成分は、フィルタ材料を含むデバイスの製作前に本明細書で記載されるとおりに処理され得る。したがって、例えば、フィルタ材料は、溶液で30秒~6時間、又はそれ以上の間処理又は溶液と接触されてもよいが、ただし、時間の長さが、フィルタ材料の性能に悪影響を与えない又はそれを損なわないことを条件とする。
【0030】
一実施形態において、フィルタ材料は、溶液中に一定期間(すなわち、静的ソーク)ソーク又は浸漬される。典型的には、例えば、フィルタ材料は、溶液中に約1分~約240分(例えば、約15分、約30分、約45分、約60分、約75分、約90分、約105分、約120分、約135分、約150分、約165分、約180分、約195分、約210分、約225分又は約240分)の間ソーク又は浸漬される。1つの特定の実施形態において、フィルタ材料は、溶液中に約1分~約180分(例えば、約15分、約30分、約45分、約60分、約75分、約90分、約105分、約120分、約135分、約150分、約165分又は約180分)の間ソーク又は浸漬される。別の特定の実施形態において、フィルタ材料は、溶液中に約60分~約120分(例えば、約60分、約75分、約90分、約105分又は約120分)の間ソーク又は浸漬される。
【0031】
別の実施形態において、方法は、フィルタ材料を通しての溶液の再循環、例えば、パルプシステムを介してフィルタ材料を通しての溶液の2つ以上のパスを含む。例示的な再循環配置は、実施例1及び
図2に記載される。慣用濾過、正接フロー濾過及び同様の方法の使用は、本明細書に記載される再循環実施形態に容易に適用され得る。例えば、デプスフィルタトレインにおける平均システムホールドアップは、約10L/m
2~約100L/m
2程度である。1つの特定の実施形態において、平均システムホールドアップは、約10L/m
2~約60L/m
2;例えば、25L/m
2~約60L/m
2である。
【0032】
上記のpH、カーボネート濃度及び接触/循環状態は、浸出性ベータ-グルカンの最大減少を与えるように最適化され得ることが理解される(例えば、実施例2を参照)。例えば、ある特定の場合において、低濃度(例えば、0.01M~0.5M)での比較的高いpH(例えば、10~12)及び比較的高い接触時間(例えば、80~120分)は、浸出ベータ-グルカンレベルを減少させるのに特に有効であり得る。別の例として、比較的低いpH(例えば、7.5~10)は、浸出性ベータ-グルカンレベルの最も有効な減少のために比較的高いモル濃度(例えば、0.5M~溶解度限界)を必要とし得る。さらに別の例として、延長ホールド時間(>80分)は、0.5M未満のカーボネート濃度でpH11~12溶液によって浸出ベータ-グルカンを100pg/mlより下に減少させるのに特に有効であり得る。さらに別の例として、比較的低いpH(例えば、7.5~10)、比較的高いカーボネート濃度(>0.8M)及び比較的低い静的保持時間(例えば、1~20分)は、浸出ベータ-グルカンレベルを減少させるのに特に有効であり得る。1つの特定の実施形態において、溶液は、0.01M~1Mのカーボネート濃度、11~12のpHを有し、フィルタ材料は、静的ソーク中に100~120分間浸漬される。別の特定の実施形態において、溶液は、0.01M~0.5Mのカーボネート濃度、11~12のpHを有し、フィルタ材料は、静的ソーク中に80~120分間浸漬される。
【0033】
圧力が、フィルタ材料の性能及び/又は浸出性ベータ-グルカンの除去に悪影響を与えない又はそれらを損なわないことを条件として、処理状態の圧力(例えば、パス又はフロースルー又は(再)循環配置における)は、厳密には決定的でない。
【0034】
セルロース含有フィルタ材料
一般に、本明細書に記載される浸出性ベータ-グルカンを除去するための本明細書に記載される方法は、ベータ-グルカンを所望の生成物中に浸出させるリスクを課し得る、任意のセルロース含有濾過若しくは固体支持材料、媒体又はメンブレンとともに用いられてもよい。本明細書にさらに詳細に記載されるとおり、処理は、濾過デバイス(例えば、フィルタ材料のハウジングを含む)の形成前又は後に、濾過デバイスの形成前及び後の両方で、所望の生成物の濾過前に(すなわち、前処理として)、並びにそれらの組み合わせ及び倍数で行われ得る。したがって、本開示の別の態様は、本明細書に記載される方法によって処理されたセルロース含有フィルタ材料であって、未処理フィルタ材料と比較される場合に減少した量の浸出性ベータ-グルカンを有する、フィルタ材料である。
【0035】
セルロース含有フィルタ材料として、フィルタ材料は、セルロース繊維(例えば、木材パルプ及び/又は綿由来)、再生セルロース繊維、無機フィルタ助剤(例えば、珪藻土、パーライト、ヒュームドシリカ)と組み合わされたセルロース繊維、無機フィルタ助剤及び有機樹脂と組み合わされたセルロース繊維、セルロース/シリカブレンド、酢酸セルロース若しくは三酢酸セルロースのようなセルロース誘導体又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。湿式プロセス(製紙と同様の)又は乾式プロセスのいずれかによってこれらの材料及びそれらを製造するそれらの方法は、当技術分野で周知である。
【0036】
一部の実施形態において、例えば、フィルタ材料は、デプスフィルタである又はデプスフィルタデバイスを最終的に形成するために使用される。本明細書での処理方法によって使用されてもよい代表的な市販のデプスフィルタには、例えば、3M/CUNO APシリーズデプスフィルタ(AP01);3M/CUNO CPシリーズデプスフィルタ(CP10、CP30、CP50、CP60、CP70、CP90);3M/CUNO HPシリーズデプスフィルタ(HP10、HP30、HP50、HP60、HP70、HP90);3M/CUNO CAシリーズデプスフィルタ(CA10、CA30、CA50、CA60、CA70、CA90);3M/CUNO SPシリーズデプスフィルタ(例には、SP10、SP30、SP50、SP60、SP70、SP90が含まれる);3M/CUNO Delipid及びDelipid plusフィルタ;3M/CUNO Polynet Filters(Polynet-PB);3M/CUNO Life Assureフィルタ;EMD Millipore CEシリーズデプスフィルタ(CE15、CE20、CE25、CE30、CE35、CE40、CE45、CE50、CE70、CE75);EMD Millipore DEシリーズデプスフィルタ(DE25、DE30、DE35、DE40、DE45、DE50、DE55、DE560、DE65、DE70、DE75);EMD Millipore HCフィルタ(A1HC、B1HC、COHC、D0HC、X0HC、VPF、F0HC)、Clarisolve(40MS、20MS);EMD Millipore Corporation Clarigard(登録商標)、Polygard(登録商標)、Millistak+(登録商標)、及びPolysep(登録商標)フィルタ;ManCel Associatesデプスフィルタ(PR12UP、PR12、PR5UP)、並びにPALL Corporationフィルタ(Bio20、SUPRA EKIP、KS-50P);Sartorius AGフィルタ (Sartobran(登録商標));などが含まれる。
【0037】
他の実施形態において、フィルタ材料は、木材パルプである。
【0038】
本明細書に記載される方法によって処理され得る他のフィルタ材料及びデバイスには、吸収剤、限外濾過メンブレン、透析機及び同様の材料含有セルロース又はそれらの誘導体が含まれる。再度、このような材料は、商業的濾過デバイスの形成前又は後(又は前及び後の両方)のいずれかに本明細書に記載されるとおりに処理されてもよい。
【0039】
バイオ医薬及び血漿誘導体
上で留意されたとおりに、セルロース含有培地及びフィルタは、標的分子からの不純物の除去のためにバイオ医薬及び血漿精製プロセスで広く使用されている。したがって、本開示の別の態様は、減少した量の浸出ベータ-グルカンを有するバイオ医薬又は血漿誘導体を調製する方法であって、いずれか先行する処理特許請求の方法によって処理されたセルロース含有フィルタ材料との接触によって、バイオ医薬又は血漿誘導体を処理する工程を含む、方法である。本開示のさらに別の態様は、上述の方法によって調製されたバイオ医薬又は血漿誘導体である。
【0040】
一般に、標準的なフィルタ及びフィルタ材料が、本明細書に記載される処理セルロース含有フィルタ材料で置き換えられることを除いて、バイオ医薬又は血漿誘導体を調製する(すなわち、濾過する)慣用方法が用いられもよい。
【0041】
本明細書に記載される方法を使用して調製/精製されてもよいバイオ医薬又は血漿誘導体は、狭くは決定的ではなく;本明細書に記載されるとおりに一般的に濾過されるいずれか適当なバイオ医薬又は血漿誘導体が用いられもよい。例証として、血液因子(例えば、因子VIII及び因子IX)、血液溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性因子)、ホルモン(例えば、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン、ゴナドトロフィン)、造血成長因子(例えば、エリスロポイエチン、コロニー刺激因子)、インターフェロン(例えば、インターフェロン-α、-β、-γ)、インターロイキン系生成物(例えば、インターロイキン-2)、ワクチン(例えば、B型肝炎表面アンチゲン)、モノクローナル抗体(多くの公知例)、及び他の生成物(例えば、(腫瘍壊死因子、治療酵素)などが企図される。
【0042】
本開示を詳細に提供してきたが、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲を逸脱することなく修正及び変形が、可能であることが明らかである。さらに、本開示における実施例はすべて、非限定的な実施例として提供されることが理解されるべきである。
【実施例】
【0043】
以下の非限定的な実施例は、本開示をさらに例証するために提供される。以下に続き、本発明者らが見出した手法を代表する実施例に開示される技術が、本明細書に開示される主題の実務において十分に機能し、したがって、その実務のためのモードの実施例を構成すると考えられ得ることが当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、多くの変化が、開示される具体的な実施形態で行うことができ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく同様の又は類似の結果を依然として得ることができることを理解すべきである。
[実施例1]:デプス濾過媒体からのベータ-グルカンの除去のための異なるフラッシング化学の調査
この実施例では、5つの特殊フラッシング化学をセルロース系デプス媒体からのベータ-グルカンの除去について試験した。調査された化学は、2M塩化ナトリウム、4M尿素、1M炭酸ナトリウム緩衝液pH10、0.5N水酸化ナトリウム及びRODI水(Milli Q)を含んだ。溶液を調製し、使用前に滅菌濾過した。実験は、5cm
2メンブレン面積を有するViresolve Pre Filter(VPF)マイクロデバイス(OptiScale 40 Capsule Cat No SSPVA40NB9)で行った。実験装置は、圧力降下及び流量データを収集するための自動データ収集システム(DAQ2.0)、白金硬化シリコンチュービングフローパス(Cat No#HV-96410-14、Cole Parmer、IL、USA)、単一使用圧力変換器(PDKT-104-03、Pendotech、NJ)を含んだ。4つのトレインを平行に組み立てた。実験装置の概略は、
図1に示す。
【0044】
フィルタを100L/m2の特殊フラッシュ溶液でフラッシュし、続いて、静的に1時間保持した。保持時間の最後に、フィルタを400L/m2の精製水で600LMHにてフラッシュした。
【0045】
RODIフラッシュ後、フィルタを30L/m2の均衡化緩衝液(25mMTris pH7)で均衡化した。均衡化後、30L/m2のモノクローナル抗体溶液を負荷し、濾液を15mlのポリスチレン遠心チューブに収集した。これらの試料を、Charles River PTS Rapid Micro Method Glucanアッセイを使用して浸出ベータ-グルカンについて分析した。対照として使用した標準フラッシュは、100L/m2のRODIフラッシュ、続いて30L/m2緩衝液均衡化を含んだ。表1は、このプロセスを要約する。すべての工程についてのフラッシュを360L/m2.時間に設定した。
【0046】
【0047】
再循環モードのための実験装置を
図2に示す。再循環モードにおいて、規定量のフラッシング緩衝液を供給タンクに分配した。フラッシュされるデプスフィルタの出口を供給タンクの中に入れた。フラッシングを規定流量で規定時間行った。フロースルーモードとして同じ実験装置及びフィルタを上に記載された再循環研究のために使用し、主たる違いは、フィルタ出口が再循環モードの供給タンクに戻って向けられていたことである。調査された3つのレベルは、25L/m
2、50L/m
2及び60L/m
2を含む。3つの体積対面積比のすべては、浸出ベータグルカンレベルを100~200pg/mlの範囲に減少させ、有効であった。
【0048】
タンパク質溶液体積対フィルタ面積の比30L/m
2で収集されたタンパク質プールを、ベータ-グルカンレベルについて試験した。確認実行を第2のVPFロットを使用して行った。両ロットについて、生成物プール中のベータ-グルカン浸出物の減少は、80%より大きかった(ライトグリーンバー(対照、標準フラッシュ)をダークグリーン(1Mカーボネートフラッシュ)と比較する)。結果を
図3に示す。
【0049】
1M炭酸ナトリウムpH10溶液を使用しての特殊フラッシング戦略が、試験されたViresolve Pre Filter吸収能力に負に影響を与えないことを確保するために、比較性能試験を行った。標準フラッシュでフラッシュされたViresolve Pre Filter(VPF)デバイス(対照)及び特殊フラッシュをViresolve Pro Filtersのためのプレフィルタとして使用した。Viresolve Proフラックスプロファイルを、プレフィルタ性能に対する特殊フラッシュのなんらかの影響を調査するために比較した。この試験をVPFの2つの異なるロットについて行い、2つの異なるモノクローナル抗体供給物に対しての能力を試験した。VPF吸収能力に対する有害な影響は、2つの場合のいずれにおいてもまったく認められなかった。結果を
図4及び
図5に示す。
【0050】
[実施例2]:ベータ-グルカン除去効率に関する特殊フラッシュパラメータの調査
1.カーボネート対イオンの効果
カーボネート対イオンの分析を行って、ベータ-グルカン除去のためのフラッシング溶液としてのその利用性の操作上の実行可能性を評価した。分析のために選択された主要な基準は、毒性、溶解度及び他の操作上の関心事項であった。例示的な調査対イオンの要約を表2に与える。
【0051】
【0052】
上に示されたとおりに、ナトリウム(Na+)及びカリウム(K+)は、毒性、溶解性及び他の操作上の関心事項に基づいて最も好ましい対イオンである。炭酸と組み合わせてのカルシウムは、使用され得るが、二酸化炭素スパージングに関連した操作上の課題を有する。炭酸アンモニウム(NH4+)は、ポンプ処理のために使用され得るが、それが強い刺激性であるので、GMP環境での利用性は課題であり得る。有機カーボネートも使用され得る。マグネシウム、マンガン、鉄のような他の対イオンは、制限された溶解性を有し、炭酸バリウムは、低い溶解性を有するのみならず、毒性である。デプス濾過媒体からのベータ-グルカンの除去においてナトリウム及びカリウム対イオンを比較するための実験を行った。
【0053】
実験炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムを、デプスフィルタからのベータ-グルカンの除去について調査した。炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムの両方のフラッシュの場合、pH10で0.5M濃度溶液を使用した。100L/m
2溶液のフラッシュを200LMHフラックスで行った。静的保持は行わなかった。溶液フラッシュ後、400L/m
2の水フラッシュを600LMHで行った。次いで、フィルタを、30L/m
2の緩衝液を600LMHでフロースルーすることによって50mM酢酸緩衝液80mM塩化ナトリウムpH5.5緩衝液で調整した。緩衝液フラッシュ後、30L/m
2のモノクローナル抗体供給物をモデルタンパク質として100LMHで負荷した。このタンパク質負荷を収集し、浸出ベータ-グルカンについて分析した。Charles River PTS Rapid Micro Method Glucanアッセイをベータ-グルカン分析のために使用した。
図6に示されるとおりに、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムの両方は、デプス媒体からのベータ-グルカンの除去について同等の性能を示した。
【0054】
2.溶液濃度、pH及び静的保持時間の効果
実験の設計(DOE)は、pH、濃度及び静的保持時間についての有効範囲を特定するために行った。Box Behnken設計を研究のために選択した。パラメータ及び関連レベルのリストを表3に示す。
【0055】
【0056】
すべての実行について、以下に記載される標準フラッシング手順に従った。使用されたすべてのフィルタは、同じタイプ及び同じロット(Viresolve Pre Fiter OptiScale 40 Capsule Cat No SSPVA40NB9、Lot No C6BA18393))のものであった。100L/m2の特殊溶液フラッシュを所与の濃度及びpHで200LMHフラックスにて行った。静的保持は、DOEのとおり所与の時間行った。静的フラッシュ後、400L/m2の水フラッシュを600LMHで行った。次いで、フィルタを、30L/m2の緩衝液を600LMHでフロースルーすることによって50mM酢酸緩衝液80mM塩化ナトリウムpH5.5緩衝液で調整した。緩衝液フラッシュ後、30L/m2のモノクローナル抗体供給物をモデルタンパク質として100LMHで負荷した。このタンパク質負荷を収集し、浸出ベータ-グルカン濃度について分析した。Charles River PTS Rapid Micro Method Glucanアッセイをベータ-グルカン分析のために使用した。
【0057】
水に対するカーボネートフラッシュの有効性を比較するために、負の対照実験を行った。水対照実験については、100L/m2の水をフィルタに通して200LMHでフラッシュした。60分間の静的保持を行った。静的フラッシュ後、400L/m2の水フラッシュを600LMHで行った。次いで、フィルタを、30L/m2の緩衝液を600LMHでフロースルーすることによって50mM酢酸緩衝液80mM塩化ナトリウムpH5.5緩衝液で調整した。緩衝液フラッシュ後、30L/m2のモノクローナル抗体供給物をモデルタンパク質として100LMHで負荷した。このタンパク質負荷を収集し、浸出ベータ-グルカン濃度について分析した。Charles River PTS Rapid Micro Method Glucanアッセイをベータ-グルカン分析のために使用した。
【0058】
水対照に加えて、標準フラッシュ実験も行った。これは、特殊フラッシュ結果を産業で現在使用されているものと比較するために行った。標準フラッシュについて、フラッシング手順は、両方とも600LMHで行われた、100L/m2の水フラッシュ、続いて30L/m2の緩衝液フラッシュを含んだ。緩衝液フラッシュ後、30L/m2のモノクローナル抗体供給物をモデルタンパク質として100LMHで負荷した。このタンパク質供給物を収集し、浸出ベータ-グルカン含有量について試験した。
【0059】
この研究から得られたグルカン濃度を表4に示す。
【0060】
【0061】
DOEを、有意なパラメータ及びデプス媒体からのベータ-グルカンの除去に対するそれらの影響を特定するために分析した。分散分析は、モデルにおいて統計的に有意であるパラメータを特定するために行った。溶液pHが、最も有意なプロセス可変要素として特定され、溶液濃度は、それ自体で有意な影響を有しなかったが、pHと濃度との交互作用項は有意であった。静的保持時間についての線形及び2乗項は、浸出ベータ-グルカンに対する統計的に有意な効果を有しなったが、交互作用項pH
*静的保持時間は有意であった。異なる項についての効果の大きさを
図7にPareto Chartで示す。青色バーで表される項は、統計的に有意であった。
【0062】
タンパク質中に潜在的に浸出し得るベータ-グルカンのレベルと、DOEで分析される要因との間の関係を表す回帰式を等式1で与える。
ベータ-グルカン=3154-908濃度-536.7pH+7.54静的保持時間+107.8濃度
*濃度+23.84pH
*pH-0.00854静的保持時間
*静的保持時間+72.9濃度
*pH+0.782濃度
*静的保持時間-0.631pH
*静的保持時間 (1)
測定に対する予測浸出ベータ-グルカン濃度のプロットを
図8に示す。
【0063】
等高線プロットを、
図5に示されるとおりの3つの保持条件によるパラメータの効果を視覚化するために生成した。
【0064】
【0065】
低保持値に対する等高線プロットを
図9に示す。pH
*濃度プロット(上、左)は、10分の保持時間で、浸出ベータ-グルカンの濃度が、10より大きい溶液pHにより100~200pg/mlの範囲に減少され得ることを示す。より低いpHカーボネート溶液(<10)は、浸出ベータ-グルカンのレベルを減少させるためにより高い濃度(>0,5M)を必要とする。静的保持時間
*濃度プロット(上、右)は、低pHカーボネート溶液(pH7.5)がベータ-グルカンを除去するために0.7Mより大きい濃度を必要とすることを示す。静的保持時間
*pHプロット(下、左)は、10mMの溶液濃度で、浸出ベータ-グルカンの有意な減少が9以上のpHで達成され得ることを示す。また、これらの条件下で、静的保持時間は、浸出ベータ-グルカンの減少に有意には影響を与えなった。最高除去は、延長静的保持時間80~110分とともにpH11以上で達成された。
【0066】
中間の保持値について、等高線プロットを
図10に示す。pH
*濃度プロット(上、左)は、pH9.5以上でのカーボネート溶液が60分の静的保持時間で調査溶液濃度範囲(0.001M~1M)全体にわたって浸出ベータ-グルカンの減少に有効であることを示す。pH10カーボネート溶液は、静的保持時間
*濃度プロット(上、右)に示されるとおりに保持時間及び濃度の全範囲にわたって有効に浸出ベータ-グルカンの減少に有効であった。静的保持時間
*pHプロット(下、左)は、pH9.5以上が、静的保持時間にかかわらず0.5M濃度での浸出ベータ-グルカンの減少に有効である。
【0067】
高保持値について、等高線プロットを
図11に示す。pH
*濃度プロット(上、左)は、pH9.5以上でのカーボネート溶液が、110分の静的保持時間で調査溶液濃度範囲(0.001M~1M)全体にわたって浸出ベータ-グルカンの減少に有効である。さらに、pH11~12及び濃度0.001M~0.5Mの範囲は、浸出ベータ-グルカン濃度を100pg/ml未満に減少させ得る。pH12カーボネート溶液は、静的保持時間
*濃度プロット(上、右)に示されるとおりに保持時間及び濃度範囲の全体にわたって有効にベータ-グルカンを除去する際に有効であった。保持時間75分超にてpH12で濃度0.5M未満は、ベータ-グルカンの除去に最も有効であった。静的保持時間
*pHプロット(下、左)は、濃度1M、pH8.5以上が、浸出ベータ-グルカンレベルを200pg/mlに減少させる際に有効である。
【0068】
3.再循環モードにおけるフラッシングの評価
この研究において、本発明者らは、フラッシングが実施例1並びに実施例2のセクション1及び2の場合におけるとおりのフロースルーモードと比較して再循環モードで行われ得るかどうか調査した。再循環モードは、GMP設定に設置されるデプスフィルタでフラッシュを行うために必要とされる溶液体積を減少させるのに役立ち得る。
【0069】
3つの異なる体積対面積比を再循環モードで試験した。25L/m
2、50L/m
2及び100L/m
2。溶液フラッシュを200LMHフラックスで行った。静的保持は行わなかった。溶液フラッシュ後、400L/m
2の水フラッシュを600LMHで行った。次いで、フィルタを、30L/m
2の緩衝液を600LMHでフロースルーすることによって50mM酢酸緩衝液80mM塩化ナトリウムpH5.5緩衝液で調整した。緩衝液フラッシュ後、30L/m
2のモノクローナル抗体供給物をモデルタンパク質として100LMHで負荷した。このタンパク質負荷を収集し、浸出ベータ-グルカンについて分析した。結果を
図12に示す。3つの体積対面積比はすべて、浸出ベータ-グルカンのレベルを100~200pg/mlの範囲に減少させることができた。
図12に示される水対照及び標準フラッシュデータは、実施例2セクション2からである。
【0070】
[実施例3]:フィルタ媒体のためのセルロールパルプからのベータ-グルカンの減少
この実施例において、フィルタ媒体を作製するために使用されたセルロールパルプからのベータ-グルカンの減少に対する炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムの有効性を調査した。パルプは、平シートの形態で受けた。47mmのディスクを47mmArch Punchを使用して打ち抜いた。ディスクをMillipore CorporationステンレススチールフィルタホルダCAT NoXX4404700内に設置した。1つのディスクを各ホルダに設置した。4つの並行濾過トレインを、実施例1及び実施例2に同様な圧力及び流量データを収集するための自動データ取得システムを使用して組み立てた。0.5M炭酸ナトリウムpH10及び0.5M炭酸カリウムpH10、0.5N水酸化ナトリウムをこの研究中に試験した。水を負対照として使用した。
【0071】
100L/m
2溶液フラッシュ(負対照の場合は水)を含むフラッシングシーケンスを、200LMHフラックスで行った。60分の静的保持を行った。静的保持後、400L/m
2の水フラッシュを600LMHで行った。パルプを、30L/m
2の緩衝液を600LMHでフロースルーすることによって50mM酢酸緩衝液80mM塩化ナトリウムpH5.5緩衝液で調整した。緩衝液フラッシュ後、30L/m
2のモノクローナル抗体供給物をモデルタンパク質として100LMHで負荷した。このタンパク質負荷を収集し、浸出ベータ-グルカンについて分析した。Charles River PTS Rapid Micro Method Glucanアッセイをベータ-グルカン分析のために使用した。炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムフラッシュは、ベータ-グルカンレベルをそれぞれ620pg/ml及び2110pg/mlだけ減少させることができた。0.5N NaOHは、浸出ベータ-グルカンレベルの増加をもたらした。結果を
図13に示す。