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特許7387675遺伝子発現カセット及びそれを含む発現ベクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】遺伝子発現カセット及びそれを含む発現ベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/67 20060101AFI20231120BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231120BHJP
   C07K 14/335 20060101ALN20231120BHJP
   C07K 14/195 20060101ALN20231120BHJP
【FI】
C12N15/67 Z ZNA
C12N1/21
C07K14/335
C07K14/195
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021092517
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2019531269の分割
【原出願日】2018-10-16
(65)【公開番号】P2021137021
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2018-0003002
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM12182P
(73)【特許権者】
【識別番号】517002731
【氏名又は名称】セル バイオテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ミョンジュン
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-515445(JP,A)
【文献】特開2004-135669(JP,A)
【文献】特表2020-505910(JP,A)
【文献】特表2020-505911(JP,A)
【文献】Genome Announc, 2013 Dec 26, vol. 1, no. 6, article no. e01106-13 (pp. 1-2)
【文献】Biologia, 2016, vol. 71, no. 5, pp. 457-463
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/AGRICOLA/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号10のP8タンパク質をコーディングする異種核酸に作動可能に連結された配列番号3のPKプロモーター、分泌信号ペプチド及び選択的標識遺伝子を含み、配列番号9のプラスミドpCBT24-2(KCCM12182P)にクローニングされたことを特徴とする、発現ベクター。
【請求項2】
前記遺伝子発現カセットは、前記プロモーターの下流に、二番目プロモーター、二番目分泌信号ペプチド及び二番目異種核酸配列をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
前記二番目プロモーターは前記プロモーターと同一であるか異なり、前記二番目異種核酸配列は前記異種核酸配列と互いに同一であるか異なる配列であることを特徴とする、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項4】
前記選択的標識遺伝子は抗生剤耐性を有する遺伝子であることを特徴とする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項5】
前記分泌信号ペプチドは、USP45分泌信号ペプチド、Usp45 N4及びラクトバシラスブレビスS層タンパク質信号ペプチドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項6】
前記遺伝子発現カセットは、菌株内での複製のための複製起点をさらに含む、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項7】
前記複製起点が、ColE1のOriおよびOriTからなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項8】
前記発現ベクターは図2又は図3の開裂地図を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の発現ベクターによって形質転換された、菌株。
【請求項10】
前記菌株は、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ラトコックス(Latococcus)、ロイコノストク(Leuconostoc)、ペジオコックス(Pediococcus)、又はビフィドバクテリアム(Bifidobacterium)属に属する菌株であることを特徴とする、請求項に記載の菌株。
【請求項11】
前記菌株は、ラクトバシラスラムノスス、ラクトバシラスアシドフィルス、ラクトバシラスパラカセイ、ラクトバシラスプランタルム、ペジオコックスペントサセウス、又はラクトバシラスブレビス属に属する菌株であることを特徴とする、請求項10に記載の菌株。
【請求項12】
前記菌株はペジオコックスペントサセウスSL4菌株(KCTC 10297BP)であることを特徴とする、請求項11に記載の菌株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有用なタンパク質を生産するための遺伝子発現カセット及びそれを含む発現ベクターに係り、より詳しくは外来遺伝子を効率的に発現するためにプロモーターと分泌信号ペプチド及び選択的標識遺伝子を含む新規の遺伝子発現カセット及びそれを含む発現ベクターに関する。
【0002】
本発明は、大韓民国の中小ベンチャー企業部の監督の下に、産業通商資源部によって後援されたWC300プロジェクト技術開発支援の一環として行った研究から導き出されたものである[課題固有番号:S2367890、研究課題名:内臓疾患の治療用薬物伝達プロバイオティックスの開発、課題期間: 2016.02.01.~2020.12.31]。
【背景技術】
【0003】
生物学的に活性なポリペプチド及びタンパク質の生産はヒト及び動物用薬学製剤、酵素及びその他の特定の化学物質の製造のために経済的に重要である。発現宿主として、バクテリア細胞、真菌類細胞、哺乳類細胞を使う組み換えDNA技法は多量のポリペプチドの生産のために特に有用な手段である。
【0004】
一般に、目的タンパク質の組み換え生産は、タンパク質をコーディングする遺伝子に作動可能に連結された場合、遺伝子の発現を調節する信号を含む発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクションさせる過程を含む。トランスフェクションされた細胞は組み換えタンパク質の発現に適した条件の下で成長する。
【0005】
商業的に使うように意図された組み換え的に生産されたタンパク質の場合、宿主細胞から目的タンパク質を高水準で発現させることが特に要望される。細胞当たり生産される目的タンパク質の量が増加すれば、所定量の生成物を収得するために成長しなければならない細胞の容積が減少するため、生産コストが減少することができ、また目的生成物が宿主細胞によって生産された総タンパク質のうちより多い部分を占めるので、容易に精製することができる。したがって、目的タンパク質を高水準で発現させることができる発現調節信号が必要である。
【0006】
一方、最近には、人体に有益な高付加価値性の物質を微生物、特に乳酸菌を用いて大量生産するための研究が活発に進んでいる。乳酸菌において外来遺伝子を高水準で発現することができる遺伝子発現カセットが開発されれば、食品分野、医薬分野、及びその他の産業分野で有利に用いられることができるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した技術的要求に応えるためのもので、本発明の一目的は乳酸菌内で力強いプロモーター活性を有するプロモーターを含む遺伝子発現カセットを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、異種核酸に作動可能に連結された前記プロモーターを含む遺伝子発現カセットを含む発現ベクターを提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、本発明の発現ベクターを含む微生物菌株を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するための本発明の一様相は、生物学的に活性なポリペプチドをコーディングする異種核酸に作動可能に連結された配列番号1(Chosプロモーター)、配列番号2(ermEプロモーター)、配列番号3(PKプロモーター)、配列番号4(GKプロモーター)、配列番号5(G6Piプロモーター)、配列番号6(6PFKプロモーター)、配列番号7(L-LDHプロモーター)、及び配列番号8(D-LDHプロモーター)からなる群から選択される1種以上のプロモーター、分泌信号ペプチド及び選択的標識遺伝子を含むことを特徴とする遺伝子発現カセットに関する。
【0012】
前記遺伝子発現カセットは、前記プロモーターの下流に、二番目プロモーター、二番目分泌信号ペプチド及び二番目異種核酸配列をさらに含むことができる。前記二番目プロモーターは、一番目プロモーターと互いに同一であっても異なってもよく、前記二番目異種核酸配列は、一番目異種核酸配列と互いに同一であっても異なってもよい。
【0013】
前記選択的標識遺伝子は抗生剤耐性遺伝子であってもよい。
【0014】
前記分泌信号ペプチドは、USP45分泌信号ペプチド、Usp45 N4又はラクトバシラスブレビスS層タンパク質信号ペプチドであってもよい。
【0015】
本発明の遺伝子発現カセットは菌株内で複製可能な複製基点をさらに含むことができる。
【0016】
上述した課題を解決するための本発明の他の様相は、前記遺伝子発現カセットを含む発現ベクターに関する。
【0017】
本発明のさらに他の様相は本発明の発現ベクターによって形質転換された菌株に関する。前記微生物菌株は、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ラトコックス(Latococcus)、ロイコノストク(Leuconostoc)、ペジオコックス(Pediococcus)、又はビフィドバクテリアム(Bifidobacterium)属に属する菌株であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明ではプロバイオティクスで作動するプロモーター構造を介して外来遺伝子を高発現することができる新しい遺伝子発現カセット及び発現ベクターを開発した。本発明の遺伝子発現カセットを含む発現ベクターは外来タンパク質をプロバイオティクスで高収率で生産するので、食品用又は医薬用タンパク質の生産に広く使われることができる。
【0019】
本発明の遺伝子発現カセットは一緒に導入された外来遺伝子を高レベルで発現する細胞を薬剤選択性によって効率的に濃縮することができ、高発現細胞株の樹立作業を縮めることができる。したがって、本発明の遺伝子発現カセットを使った細胞発現システムはバイオ医薬品として新薬開発などに大きく寄与するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例の遺伝子発現カセットの構成図である。
図2】本発明の一実施例の発現ベクター(pCBT24-2-CysA)の開裂地図である。
図3】本発明の他の実施例の発現ベクター(pCBT24-2-P8)の開裂地図である。
図4】本発明の遺伝子発現カセットにシスタチンAをコーディングする遺伝子をクローニングした場合の発現量をウエスタンブロッティング法で定性的に分析した結果を示した写真である。
図5】本発明の遺伝子発現カセットによるP8タンパク質の発現/分泌量の変化をウエスタンブロッティング法で定量的に分析した結果を示したグラフである。
図6】本発明の遺伝子発現カセットによるP8タンパク質の発現/分泌量の変化をELISA法で定量的に分析した結果を示したグラフである。
図7】本発明の遺伝子発現カセットによるP8タンパク質の発現/分泌量の変化をウエスタンブロッティング法で定性的に分析した結果を示した写真である。
図8】本発明の遺伝子発現カセットによるP14タンパク質の発現/分泌量の変化をウエスタンブロッティング法で定性的に分析した結果を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下で添付図面を参照して本発明についてより詳細に説明する。
【0022】
他に定義しない限り、本発明で使用された全ての技術的用語及び科学的用語は本発明が属する技術分野の熟練者によって通常に理解されるものと同じ意味を有する。シングルトン(Singleton)などの文献[Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, 第2版, John Wiley and Sons(New York)]には、本発明に使用された多くの用語の一般的な辞書的意味が提供されている。
【0023】
“核酸”と言う用語は一本鎖又は二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド重合体を指称し、別途の制限がない限り、天然的に発生するヌクレオチドと類似した方式で核酸にハイブリッドされる天然ヌクレオチドの公知の類似体を含む。別途の指示がない限り、特定の核酸配列はその相補配列を含む。
【0024】
“遺伝子発現カセット”又は単に“発現カセット”とは配列と相性がある宿主において構造遺伝子の発現に影響を与えることができる核酸要素がある、組み換え的に又は合成的に作られた核酸構築物である。発現カセットは少なくともプロモーター及び選択的な転写終決信号を含む。典型的に、遺伝子発現カセットは転写される核酸(例えば、目的ポリペプチドをコーディングする異種核酸)及びプロモーターを含む。発現を遂行するのに要求されるかこれに役立つ追加の因子も本発明で説明したように使われることができる。
【0025】
本明細書で、“プロモーター”という用語はコーディング配列又は機能的RNAの発現を調節することができるDNA配列を意味する。プロモーター部位は当業者であれば容易に認識することができる。プロモーターは近位及び遠位の上流エレメント(element)から構成されている。近位エレメントとしては、通常的にRNA重合酵素IIが適切な転写開始位置でRNAの合成を開始することができるようにするTATAボックスを含む。遠位エレメントはエンハンサー(enhancer)とも呼ばれる調節配列を含み、これはTATAボックスの上流部位に組職特異的又は時間特異的発現に関与する追加調節エレメントである。エンハンサーはプロモーターの活性を促進することができるDNA配列であり、プロモーターの固有のエレメントであるか、プロモーターの組職特異性又は発現水準を向上させるために挿入される異種(heterologous)のエレメントであってもよい。プロモーターは元の遺伝子からその全体が由来したものであってもよく、あるいは自然界で発見された相異なるプロモーターから由来した相異なるエレメントから構成されることもでき、甚だしくは合成DNAを含むこともできる。当業者であればそれぞれ異なるプロモーターはそれぞれ異なる組職又は細胞タイプで、又は発逹段階の相異なる段階で遺伝子の発現を指示することを理解することができる。
【0026】
“生物学的に活性な物質(biologically active molecule、BAM)”と言う用語は遺伝子治療に関与するか又は免疫反応を調節することができる物質であり、細胞内信号伝達機構(signal transduction mechanism)又は他の特定遺伝子の発現を調節することができる物質を含む。このような物質としては、成長因子、癌治療用物質、腫瘍抑制物質、サイトカイン、インターフェロンなどを含むことができる。
【0027】
本発明で、“異種配列”又は”異種核酸”とは外来供給源(又は種)から由来するか、又は同じ供給源から由来する場合、その固有形態から改質されたものである。したがって、プロモーターに作動可能に連結された異種核酸はプロモーターが誘導される供給源とは違う供給源から誘導されるか、あるいは同じ供給源の場合、その固有の形態から改質される。異種配列は、例えばDNAを制限酵素で処理してプロモーターに作動可能に連結されることができるDNA断片を生成することによって改質されることができる。
【0028】
“作動可能に連結される”と言う用語は核酸発現調節配列(例えば、プロモーター、信号配列又は一連の転写因子結合部位)と異種核酸配列間の機能的連結を指称する。ここで、発現調節配列は異種核酸配列に相応する核酸の転写及び/又は翻訳に影響を与える。
【0029】
本明細書で、“発現ベクター”という用語は宿主細胞で目的とする外来タンパク質を発現することができるベクターであり、遺伝子挿入物が発現するように作動可能に連結された必須な調節要素を含むベクターを意味する。適した発現ベクターは、プロモーター、オペレーター、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化信号及びエンハンサーのような発現調節配列の他にも、膜標的化又は分泌のためのシグナル配列又はリーダー配列を含み、目的によって多様に製造されることができる。本発明の発現ベクターには、ベクターを含む宿主細胞を選別するための選別マーカーをさらに含むことができる。
【0030】
“下流”という用語は基準ヌクレオシド配列に対して3’に位置するヌクレオシド配列を示す。特に、下流ヌクレオシド配列は一般的に転写開始点以後の配列を示す。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは転写開始部位の下流に位置する。
【0031】
“上流”という用語は基準ヌクレオシド配列に対して5’に位置するヌクレオシド配列を示す。特に、上流ヌクレオシド配列は一般的にコーディング配列又は転写開始点の5’側に位置する配列に係る。例えば、大部分のプロモーターは転写開始部位の上流に位置する。
【0032】
“制限エンドヌクレアーゼ”及び“制限酵素”という用語は互いに交換して使われることができ、二本鎖DNA内の特定のヌクレオシド配列内に結合して切断する酵素を示す。
【0033】
本明細書で、“P8タンパク質(Protein No.8)”は乳酸菌(ラクトバシラスラムヌス)から抽出された、配列番号10のアミノ酸配列を有する、8KDa大きさのタンパク質を意味する。
【0034】
本明細書で、“P14タンパク質(Protein No.14)”は乳酸菌(ラクトバシラスラムヌス)から抽出された、配列番号11のアミノ酸配列を有する、14KDa大きさのタンパク質を意味する。
【0035】
本明細書で、“シスタチン(Cystatin)”とは、細胞内タンパク質分解酵素の作用を阻害する物質を意味する。シスタチンは現在細胞内に存在するファミリー1(シスタチンA、シスタチンB)、分泌性のファミリー2(シスタチンC、シスタチンD、シスタチンS、卵白シスタチン、牛乳シスタチン)、ファミリー3(キニノゲン)などに分類される。シスタチンAは、表皮、消化管、膣などの上皮組職、白血球などに存在し、病源菌の侵入から私の身を保護し、シスタチンBは大部分の細胞質に含有されており、タンパク質分解酵素の作用を阻害してウイルスの感染を阻む作用をする。卵白シスタチンもウイルスによる感染防止に役立ち、シスタチンCは免疫系防御機能に重要な役目をするものと知られている。
【0036】
本発明の一実施例は、図1に示したような、生物学的に活性なポリペプチドをコーディングする異種核酸に作動可能に連結された配列番号1(Chosプロモーター)、配列番号2(ermEプロモーター)、配列番号3(PKプロモーター)、配列番号4(GKプロモーター)、配列番号5(G6Piプロモーター)、配列番号6(6PFKプロモーター)、配列番号7(L-LDHプロモーター)、及び配列番号8(D-LDHプロモーター)からなる群から選択される1種以上のプロモーター、分泌信号ペプチド及び選択的標識遺伝子を含むことを特徴とする遺伝子発現カセットに関する。
【0037】
【表1】
【0038】
本発明の遺伝子発現カセットは、プロバイオティクス細胞に導入される場合、その生物学的に活性な外来タンパク質構造遺伝子がコーディングするタンパク質が発現するために必要なDNAセットであり、生物学的に活性なポリペプチドをコーディングする異種核酸とその異種核酸の発現を促進するプロモーターを含む。配列番号1~配列番号8のプロモーターのうち6種(Chosプロモーター、ermEプロモーター、PKプロモーター、GK、G6Piプロモーター、6PFKプロモーター)は該当作用代謝経路から選別され、2種(L-LDHプロモーター、D-LDHプロモーター)は二次代謝産物であるラクテート生産経路から選別したものである。
【0039】
図1を参照すると、本発明の遺伝子発現カセットに含まれるプロモーターは乳酸菌での生理活性物質の発現及び分泌量を増加させるためのもので、Pediococcus pentosaceusに来由したものである。図1で、Pはプロモーターを示し、Sは分泌信号ペプチドを示し、BAMは生物学的に活性な物質(Biologically Active Material)をコーディングする異種核酸を示し、SLMは選択的標識マーカー(Selective Labeling Maker)を示す。
【0040】
本発明の遺伝子発現カセットは異種核酸の発現量を増加させるだけでなく分泌も向上させることができる。本明細書で、タンパク質が“分泌される”と言う表現はタンパク質が宿主細胞から細胞外に伝達されることを意味するもので、タンパク質の全体分子が全く遊離した形態で培地に実際に存在する場合を含み、またタンパク質の全ての分子が細胞の表面層に存在する場合、及びタンパク質分子の一部が培地に存在し、分子の残部は細胞の表面層に存在する場合を含む。
【0041】
本発明の発現ベクターによって発現する外来タンパク質を宿主細胞の分泌経路内に誘導するために、分泌信号ペプチド(S)が遺伝子発現カセット内に提供されることができる。分泌信号ペプチド配列は普通外来タンパク質をコーディングするDNA配列において5’に位置する。
【0042】
本発明の発現ベクターはプロバイオティクス細胞内で複製可能な複製基点を含むこともできる。これはベクターの操作がプロバイオティクス又はバクテリア菌株内でより効率的であるからであり、好ましい複製基点としては、例えばColE1、Ori、oriTなどがある。
【0043】
プロバイオティクスから発現したタンパク質の分泌を誘導することによって多くのシステムにおいて組み換えタンパク質の総生産を増加させることができるが、本発明において、分泌信号ペプチドはUSP45分泌信号;野生型Usp45分泌信号の位置4にあるリシンがアスパラギンに置換されたUsp45 N4、又はラクトバシラスブレビスS層タンパク質信号ペプチドなどの強いタンパク質分泌を指示する分泌信号ペプチドを含むことができる。
【0044】
本発明で、異種核酸は、ホルモン、サイトカイン、酵素、凝固因子、輸送タンパク質、受容体、調節タンパク質、構造タンパク質、転写因子、抗原、抗体などを暗号化する遺伝子であってもよい。その具体的な例としては、トロンボポエチン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、コロニー刺激因子、グルカゴン様ペプチド(GLP-1など)、G-タンパク質連結型受容体(G-protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞怪死糖タンパク質、抗毒素、リンホトキシン、腫瘍怪死因子、腫瘍抑制因子、形質転換成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質-E、赤血球生成因子、高糖化赤血球生成因子、アンジオポエチン、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX及びXIII、プラスミノゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C-反応性タンパク質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板来由成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、インシュリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合織活性因子、組職因子経路抑制剤、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状線ホルモン、レラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インシュリン類似成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵膓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチココロピン放出因子、甲状腺刺戟ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体、受容体拮抗物質、細胞表面抗原、ウイルス来由抗原、単一クローン抗体、多重クローン抗体及び抗体断片などを暗号化する遺伝子であってもよく、これらに制限されない。
【0045】
例えば、本発明で、異種核酸は細胞分裂の調節に関与するタンパク質、神経栄養因子(脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor)、グリア細胞由来神経栄養因子(glial cell derived neurotrophic factor)、NGF、NT3、NT4及びNT5)、サイトカイン(α-、β-又はγ-インターフェロン、IL-1、IL-2のようなインターロイキン、腫瘍怪死因子又はインシュリン類似成長因子I又はII)、タンパク質キナーゼ(MAPキナーゼ)、タンパク質デヒドロゲナーゼ及びこれらの要素のための細胞受容体などの成長因子をコーディングすることができる。
【0046】
異種核酸は、好ましくは治療用又は疾病に係るポリペプチドをコーディングすることができる。また、異種核酸はワクチン用途の抗原性ポリペプチドをコーディングすることができる。このような抗原性ポリペプチドは、好ましくは微生物又はウイルスのような病原体又は腫瘍に来由する。
【0047】
本発明の遺伝子発現カセットは目的構築物を含むバクテリア細胞の選別ができるようにする選択的標識マーカー(Selective Labeling Maker、SLM)を含む。選択的標識マーカーはマーカー遺伝子の効果に基づき、すなわち抗生剤に対する耐性、除草剤に対する耐性、比色分析マーカー、酵素、蛍光マーカーなどに対して選発可能である、確認因子、一般的に抗生剤又は化学物質耐性遺伝子を示す。当該分野で使われる、かつ公知となった選抜可能なマーカー遺伝子の例は、アンピシリン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどに対する許容性を提供する遺伝子;及び表現型マーカーとして使われる遺伝子、すなわちアントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子を含むが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0048】
前記選択的標識マーカーと異種核酸が同じベクター上に配置される場合、両者は隣接しても良くその間にスペーサー配列を挟んでいても良い。選択的標識マーカーは異種核酸の上流及び下流のいずれに配置されても良いが、隣接して挿入されるときは異種核酸が上流となるように配置されることが好ましい。
【0049】
選択的標識マーカーは一つのベクターに2個以上含まれていても良い。選択的標識マーカーは抗生剤耐性遺伝子であってもよい。この場合、同じ抗生剤選択マーカーが選択される場合もあり、それぞれ異なる抗生剤選択マーカーが選択される場合もある。
【0050】
本発明のベクターは単に標的物質の発現だけではなく発現した物質の分泌を誘導するように分泌信号ペプチドを装着して、搭載された物質が菌体外に分泌されるように製作される。特に、本発明のベクターは、現在商用化したイースト、大膓菌のような発現/分泌のみを目的で商用化したイースト、大膓菌システムとは違い、日常で摂取する乳酸菌に適用することができるという点で著しい利点を提供することができる。
【0051】
本発明の遺伝子発現カセットは文献に記述されている公知の技法で合成することができる(文献[Carruthers et al, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 47:411-418(1982)]及び文献[Adams et al., J. Am. Chem. Soc. 105: 661(1983)]参照)。その後、相補鎖を合成し、適当な条件の下で鎖を一緒にアニーリングするか適当なプライマー配列とともにDNAポリメラーゼを使用して相補鎖を添加することによって二本鎖DNA断片を収得することができる。
【0052】
本発明のプロモーター、分泌信号ペプチド、異種核酸、及び選択的標識マーカーの配置順序は、選択的標識遺伝子の発現ができる限り、特に制限されないが、一般的にプロモーター、分泌信号ペプチド、異種核酸、及び選択的標識マーカーの順に上流から下流に向けて配置する。これらの四つの要素は互いに直接連結されている必要はなく、選択的にイントロン、スペーサー配列、エンハンサーなどを間に含むことができる。
【0053】
本発明の他の実施例による遺伝子発現カセットは、図1に示したように、前記プロモーターの下流に上述した配列番号1~配列番号8のいずれか一つのプロモーター以外に、二番目プロモーター、二番目分泌信号ペプチド及び生物学的に活性なポリペプチドをコーディングする二番目核酸配列をさらに含むことができる。
【0054】
本発明の他の実施例の遺伝子発現カセットは、発現させようとする異種核酸の上流に必ず第1プロモーターを有し、また発現させようとする異種核酸の下流に第2プロモーターを含むことができる。これらの第1プロモーターと第2プロモーターは互いに同一であっても異なってもよい。大部分の細胞又は組職で外来遺伝子の発現を促進させることができる非特異的プロモーターも、組職又は器官特異的プロモーター、腫瘍特異的プロモーター、発生又は分化特異的プロモーターなどの特異的又は選択的プロモーターも用いることができる。例えば、第1プロモーターとして特異的プロモーターを用い、第2プロモーターとして非特異的なプロモーターを用いることができる。
【0055】
本発明の他の様相は、本発明の外来タンパク質の発現用遺伝子発現カセットを含む発現ベクターに関する。このような発現ベクターは宿主細胞の染色体への遺伝子導入用遺伝子カセットを含む。
【0056】
本発明の遺伝子発現カセットを挿入する発現ベクターはプラスミドベクターであってもよい。しかし、これに限定されず、例えばウイルスベクター、コスミッドベクター、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)及び他の非プラスミドベクターも使うことができる。このようなベクターの例としては、プラスミド、アデノウイルス(Ad)ベクター、アデノ隋伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどのウイルスベクター又は生分解性ポリマーなどの非ウイルスベクターを挙げることができる。
【0057】
本発明の発現ベクターは二重プロモーターを含むことができる。すなわち、一番目プロモーターの下流に、二番目プロモーター、二番目分泌信号ペプチド及び生物学的に活性なポリペプチドをコーディングする二番目核酸配列をさらに含むことができる。このような発現ベクターは単一プロモーターを含む発現ベクターに比べて外来タンパク質の発現及び分泌量を増加させることができる。
【0058】
好適な実施例で、本発明の発現ベクターは図2又は図3の開裂地図を有する発現ベクターである。図2の開裂地図は異種核酸でシスタチンDをコーディングする遺伝子が挿入された二重プロモーターを含む発現ベクターであり、図3の開裂地図を有する発現ベクターは抗炎症活性を有するタンパク質8(P8)をコーディングする遺伝子が挿入された二重プロモーターを含む発現ベクターである。
【0059】
発現ベクターは、当該分野に公知となった方法、例えばトランスフェクション(transfection)、電気穿孔、微細注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈澱、リポフェクション(lipofection)(リソソーム融合)、遺伝子銃(gene gun)の使用、又はDNAベクタートランスポーター(transporter)によって所望の宿主細胞内に導入することができる(例えば、[Wu et al., J. Biol. Chem. 267:963(1992)]; [Wu et al., J. Biol. Chem. 263:14621(1988)];及び[Hartmut et al., Canadian Patent Application No. 2,012,311]参照)。発現ベクターの導入方法は自体として知られた方法又は今後に開発される方法のいずれを適用することができる。
【0060】
本発明の遺伝子発現カセットを挿入した発現ベクターを宿主細胞に導入し、前記宿主細胞又は微生物菌株をトランスフェクションすることにより、前記宿主細胞又は菌株で目的遺伝子を発現させて目的タンパク質を生産することができる。本発明の発現ベクターを導入して目的タンパク質を生産させるためには、真核細胞又は原核細胞系を使うことができる。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、プロバイオティクス細胞系、糸状菌細胞及び酵母細胞などの細胞などを挙げることができ、原核細胞としては、例えば大膓菌、枯草菌、ブレビバシラス(brevibacillus)属細菌などの宿主細胞を挙げることができる。
【0061】
前記宿主細胞は、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ラトコックス(Latococcus)、ロイコノストク(Leuconostoc)、又はペジオコックス(Pediococcus)、ビフィドバクテリアム(Bifidobacterium)属に属するバクテリア細胞である宿主細胞であってもよい。前記微生物菌株は、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ラトコックス(Latococcus)、ロイコノストク(Leuconostoc)、又はペジオコックス(Pediococcus)、ビフィドバクテリアム(Bifidobacterium)属に属する菌株であってもよい。前記菌株の具体的な例は、ラクトバシラスラムヌス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシラスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバシラスパラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバシラスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、ペジオコックスペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、又はラクトバシラスブレビス(Lactobacillus brevis)属に属する菌株を含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0062】
形質転換された前記宿主細胞をin vitro又はin vivoで培養して目的とするタンパク質を生産させることができる。宿主細胞の培養は公知の方法で行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMなどの公知の培養用培地を使うことができる。生産されたタンパク質は、分泌タンパク質の場合は培養液内で、非分泌タンパク質の場合は細胞抽出物内で公知の方法で精製することができる。目的タンパク質を生産させる場合、細胞に他の目的遺伝子を含む複数のベクターを同時にトランスフェクションさせて生産しても良い。このようにすることにより、一度に複数のタンパク質を生産することができる。
【0063】
以下で本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例
実施例1.乳酸菌来由タンパク質過発現及び分泌のためのシステム構築
実施例1-1.過発現誘導のための遺伝子プロモーターの選別
標的タンパク質(シスタチンA)の乳酸菌での発現のための力強いプロモーター5種(ChoS、L-カルニチン、コリンABCトランスポーター、パーミアーゼタンパク質;PK、ピルビン酸キナーゼ;GK、グルコキナーゼ;G6Pi、グルコース6-リン酸イソメラーゼ;L-LDH、L-乳酸脱水素酸素)を解糖作用代謝経路から選別した。標的タンパク質の発現ホストはペジオコックスペントサセウスSL4(Pediococcus pentosaceus SL4)(受託番号:KCTC 10297BP)で、特許菌株であり、糖の消費速度が非常に早いことを以前の実験で確認したことがあり、また消費された糖のほぼ100%が二次代謝産物であるL-ラクテートに転換されることをHPLC分析で確認したから、プロモーターの5種は解糖作用代謝経路から、そして2種は二次代謝産物であるラクテート生産経路から選別した。
【0065】
実施例1-2.標的タンパク質の過発現及び分泌システム構築
プラスミドpCBT24-2(配列番号8)(KCCM12182P)を使った。実施例1-1で選別されたプロモーターをラトコックスラクチス(Lactococcus lactis)から由来したusp45分泌信号ペプチド(S)を暗号化するDNA配列を用いてプロモーター(P)-分泌信号ペプチド(S)-シスタチンA(CysA)形態のDNAをクローニングした。プロモーターと分泌信号ペプチドにBamHI/PstI制限酵素部分を挿入した。完成されたプラスミドの種類は
pCBT24-2-ChoS-usp45-CysA、
pCBT24-2-PK-usp45-CysA、
pCBT24-2-GK-usp45-CysA、
pCBT24-2-G6Pi-usp45-CysA、
pCBT24-2-L-LDH-usp45-CysAをペジオコックスペントサセウスSL4(受託番号:KCTC 10297BP)に形質転換した。各プロモーターによる発現/分泌量を測定した後、高い活性を示したプロモーターどうしの結合によってpCBT24-2-G6Pi-usp45-CysA-usp45-G6Pi-CysAを製作した。製作されたDNAをペジオコックスペントサセウスSL4に形質転換し、形質転換体を選別した。前記形質転換体をLB液体培地に混合した後、37℃で1時間培養させた。前記1時間培養した培養液をエリスロマイシン(最終濃度10μg/ml)を含有したLB寒天培地に平板塗抹して、耐性を示す菌株を1次選別した。
【0066】
実施例1-3.ペジオコックスペントサセウスSL4形質転換体の培養
MRS固体培地(agar plate)で育った形質転換体を10ml MRS液体培地(エリスロマイシン、10mg/ml)に接種し、37℃で15時間静置培養(overnight incubation)した。この培養液1mlを10ml M9最小培地(エリスロマイシン、10mg/L)に接種した後、37℃で48時間静置培養し、培養液5mlを遠心分離して上澄み液を得た。上澄み液5mlはTCA沈澱法で総タンパク質を濃縮し、これをウエスタンブロッティング法でシスタチンAタンパク質の発現及び分泌量を比較分析した。菌体の場合、緩衝溶液で希釈し、超音波粉砕機を用いて菌体を破砕した後、細胞抽出物をウエスタンブロッティング法で発現した後、分泌されることができなかったシスタチンAタンパク質の量を分析した。
【0067】
実施例1-4.シスタチンAタンパク質の分離及び検出
乳酸菌形質転換体を培養した後、培養上澄み液5mlに100%TCA(Trichloro Acetic Acid)を添加して最終濃度が20%となるようにした。混合後、氷で30分間反応し、4℃、15,000rpmで30分間遠心分離して全てのタンパク質の沈澱を誘導した。遠心分離後、上澄み液を除去し、アセトン200μlを添加し、さらに4℃、15,000rpmで10分間遠心分離して沈澱したタンパク質を洗浄した。常温で乾燥によって残ったアセトンを全く除去した後、培養上澄み液に存在する目的タンパク質分泌量を測定した。分泌量はウエスタンブロッティング法で測定し、測定結果、新しいプロモーターの使用時、発現/分泌量が著しく増加することを確認した(図4参照)。
【0068】
実施例2:P8タンパク質の発現
2-1.Chosプロモーターの下流にP8タンパク質コーディング遺伝子のクローニング
実施例1-1で選別されたプロモーターをusp45信号ペプチドと連結し、連結されたDNA配列を用いてDNA断片を合成した。プロモーターと信号ペプチドにBamHI/PstI制限酵素部分を挿入し、分泌信号ペプチドとしてusp45を使った。合成が完了したプロモーターと信号ペプチド一部をBamHI/PstI制限酵素で切除した後、DNAゲル抽出法でDNA断片を分離及び精製し、同じ制限酵素で切除されたpCBT24-2-P8/BamHI/PstIベクターに挿入した。形質転換法としては熱衝撃法(Heat Shock)(42℃、45秒)を用い、エリスロマイシン耐性を有する大膓菌を選別し、大膓菌形質転換体及びクローニングされたプラスミドを収得した。
【0069】
i)pCBT24-2-PK-P8、
ii)pCBT24-2-GK-P8、
iii)pCBT24-2-6PFK-P8、
iv)pCBT24-2-FK-P8、
v)pCBT24-2-G6Pi-P8、
vi)pCBT24-2-L-LDH-P8、
vii)pCBT24-2-D-LDH-P8を
クローニングされたプラスミドをペジオコックスペントサセウスSL4に形質転換し、各プロモーターによる発現/分泌量を測定した後、高い活性を示したプロモーターどうしの結合によってpCBT24-2-GK-P8-L-LDH-oriP8、
pCBT24-2-PK-P8-PK-oriP8、
pCBT24-2-GK-P8-GK-oriP8を製作した。
【0070】
製作された遺伝子発現カセットをペジオコックスペントサセウスSL4に形質転換し、形質転換体を選別した。形質転換法は次のようである。培養した細胞の培地成分を除去し、きれいな細胞のみを得、Bio-RadのGene Pulserを使い、2000V、25uF、200Ωの条件で電気穿孔した。形質転換に使用したプラスミドは配列番号9のpCBT24-2(KCCM12182P)であり、エリスロマイシン耐性を有するペジオコックスペントサセウスを選別する方法で形質転換体を収得した。
【0071】
実施例2-2.ペジオコックスペントサセウスSL4形質転換体の培養
MRS固体培地で育った形質転換体を10ml MRS(エリスロマイシン、10mg/L)に接種し、37℃で17時間静置培養した。培養液1mlを10ml M9最小培地(エリスロマイシン、10mg/L)に接種した後、37℃で48時間静置培養した。培養後、M9培養液を遠心分離して上澄み液と菌体を分画し、培養上澄み液のうち原液はP8定量分析に使い、残りの培養上澄み液はTCA濃縮法で全てのタンパク質を回収し、これをウエスタンブロッティング法に使用し、P8の発現/分泌量を比較分析した。菌体の場合、適量の緩衝溶液で希釈し、粉砕器を用いて菌体を破砕した後、細胞抽出物を回収した後、ウエスタンブロッティング法でP8タンパク質の発現/分泌量を定性的に分析した。
【0072】
実施例2-3.P8タンパク質の分離及び検出
ペジオコックスペントサセウスSL4形質転換体を培養した後、培養上澄み液にTCA(Trichloro Acetic Acid)を1:4で添加して最終濃度20%となるようにした。混合後、低温(0~4℃)で30分間反応し、4℃、15,000rpmで30分間遠心分離して全てのタンパク質の沈澱を誘導した。遠心分離後、上澄み液を除去し、初期に使用した培養上澄み液の1/10容積のアセトンを添加し、さらに4℃、14,000rpmで30分間遠心分離して沈澱したタンパク質を洗浄した。常温で乾燥によって残ったアセトンを全く除去した後、これを発現/分泌量の測定に使った。発現/分泌量の測定はウエスタンブロッティング法で測定した。図5は本発明の遺伝子発現カセットによるP8タンパク質の発現/分泌量の変化をウエスタンブロッティング法で定性的に分析した結果を示した写真であり、図6は本発明の遺伝子発現カセットによるP8タンパク質の発現/分泌量の変化をELISA法で定量的に分析した結果を示したグラフである。図5及び図6に示したように、分泌量の測定結果、本発明の遺伝子発現カセットの使用時、発現/分泌量が著しく増加することを確認した。
【0073】
図7はPK-PK二重プロモーターを組み合わせた遺伝子発現カセットによるP8タンパク質の発現/分泌量の変化をウエスタンブロッティング法で定性的に分析した結果を示した写真である。図7に示したように、最高の発現/分泌量を示したpCBT24-2-PK-P8にPK-oriP8を挿入して製作されたpCBT24-2-PK-P8-PK-oriP8でP8の発現/分泌量を測定した結果、P8の分泌量が最大で約466μg/Lまで生産されることを確認することができた。
【0074】
実施例3:P14タンパク質の発現
3-1.G6Piプロモーターの下流にP14タンパク質コーディング遺伝子のクローニング
実施例1-1で選別されたプロモーターをusp45信号ペプチドと連結し、連結されたDNA配列を用いてDNA断片を合成した。プロモーターと信号ペプチドにBamHI/PstI制限酵素部分を挿入した。合成の完了したプロモーターと信号ペプチドの一部をBamHI/PstI制限酵素で切除した後、DNAゲル抽出法でDNA断片を分離及び精製し、同じ制限酵素で切除されたpCBT24-2-P14/BamHI/PstIベクターに挿入した。完成されたpCBT24-2-G6Pi-P14をペジオコックスペントサセウスSL4に実施例1と同様な方法で形質転換し、各プロモーターによる発現/分泌量を測定した後、高い活性を示したプロモーターどうしの結合によってpCBT24-2-G6Pi-P14-L-LDH-oriP14を製作し、抗生剤を含む培地(LB液体培地、カナマイシン20μg/ml含み)上で形質転換体を選別した。
【0075】
実施例3-2.ペジオコックスペントサセウスSL4形質転換体の培養
MRS固体培地で育った形質転換体を10ml MRS(エリスロマイシン、10mg/L)に接種し、37℃で48時間静置培養した。48時間後、1ml MRS EM培養液を10ml M9(エリスロマイシン、10mg/L)培養液に接種した後、37℃で48時間静置培養した。培養後、5ml M9培養液を遠心分離して上澄み液と菌体を分画し、培養上澄み液のうち原液はP14定量分析し、残りの培養上澄み液はTCA濃縮法で全てのタンパク質を回収し、これをウエスタンブロッティングに使用してP14の発現/分泌量を比較分析した。菌体の場合、適量の緩衝溶液で希釈し、超音波粉砕機で菌体を破砕した後、細胞抽出物を回収した後、ウエスタンブロッティング法で発現/分泌量を定性的に分析した。
【0076】
実施例3-3.P14タンパク質の分離及び検出
乳酸菌形質転換体を培養した後、培養上澄み液5mlに100%TCA(Trichloro Acetic Acid)を添加して最終濃度が20%となるようにする。混合後、氷で30分間反応し、4℃、14,000rpmで30分間遠心分離して全てのタンパク質の沈澱を誘導した。遠心分離後、上澄み液を除去し、初期に使用した培養上澄み液の1/10容積のアセトンを添加し、さらに4℃、14,000rpmで30分間遠心分離して沈澱したタンパク質を洗浄した。常温で乾燥によって残ったアセトンを全く除去した後、これを発現/分泌量の測定に使った。発現/分泌量はウエスタンブロッティング法で測定した。
【0077】
図8はG6Piプロモーターを含む遺伝子発現カセットによるP14タンパク質の発現/分泌量の変化をウエスタンブロッティング法で定性的に分析した結果を示した写真である。図8に示したように、最高の発現/分泌量を示したpCBT24-2-G6Pi-P14にPK-oriP14を挿入して製作されたpCBT24-2-G6Pi-P14-PK-oriP14でP14の発現/分泌量を測定した結果、P14の分泌量が高いことを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の多様な実施例の遺伝子発現カセットは、細胞の種類、遺伝子の種類、トランスフェクション試薬の種類を問わず、遺伝子発現によって発現させようとする目的タンパク質の高発現による大量生産を実現することにより、生物工学分野での試薬としての適用だけではなく、治療用のタンパク質医薬としての適用又は臨床での遺伝子を用いた治療、検査、診断のために幅広い応用が可能である。
【0079】
以上で本発明の好適な実施例について詳細に記述したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではない。本発明が属する技術分野の通常の技術者は上述した実施例に基づいて多様な変形及び変更を容易になし得ることを理解することができるであろう。したがって、本発明の真正な保護範囲は後述する特許請求範囲及びそれと均等な範囲内で決定されなければならないであろう。
【0080】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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