(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】農業機械
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
A01B69/00 Z
(21)【出願番号】P 2021103303
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】玉谷 健二
(72)【発明者】
【氏名】奥山 裕二
(72)【発明者】
【氏名】阪口 和央
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐介
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-134129(JP,A)
【文献】特開2018-150010(JP,A)
【文献】特開2020-064603(JP,A)
【文献】特開2012-156909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0039720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
A01B 63/00 - 63/12
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行車体と、
前記走行車体の周囲をセンシングするセンシング装置と、
前記センシング装置のセンシング方向を調整可能なセンシング調整部と、
前記走行車体の位置を測位する測位装置と、
圃場の出入口に関する情報を取得する情報取得部と、を備え、
前記センシング調整部は、
前記情報取得部により前記出入口の傾斜角度と
始端部の位置
と終端部の位置とを取得し、
前記走行車体が前記出入口に向かって走行しているときに、前記測位装置により測位された前記走行車体の位置から前記出入口の始端部までの距離が所定値以下になると、
前記距離と前記出入口の前記傾斜角度とに基づいて前記センシング方向を移動させて、前記センシング方向を前記出入口の終端部に向ける第1調整を行い、
前記走行車体が前記出入口を走行し始めると、前記センシング方向を前記出入口の終端部又は当該終端部より走行方向に対して前方に向ける第2調整を行う農業機械。
【請求項2】
前記センシング調整部は、
前記走行車体が前記出入口を走行しているときに、前記走行車体の位置から前記出入口の終端部までの距離が所定値以下になると、前記センシング方向を前記出入口の終端部より前方に向ける第3調整を行い、
前記走行車体が走行して前記出入口を通過すると、前記センシング方向を前記走行車体の走行方向に対して前方に向ける第4調整を行う請求項1に記載の農業機械。
【請求項3】
前記走行車体に連結された作業装置により対地作業を行いながら、前記走行車体の自動運転を制御する第1運転制御と、前記作業装置により対地作業を行わずに、前記走行車体の自動運転を制御する第2運転制御とを実行する自動運転制御部を備え、
前記自動運転制御部による前記第2運転制御から前記第1運転制御への移行前又は前記第1運転制御から前記第2運転制御への移行後において、
前記センシング調整部は、
前記走行車体が前記第2運転制御により前記出入口に向かって走行しているときに、前
記走行車体の位置から前記出入口の始端部までの距離が所定値以下になると、前記第1調整により前記センシング装置のセンシング範囲を上方又は下方に移動させることによって、前記センシング方向の少なくとも一部を前記出入口の終端部と当該終端部の付近の路面とに向け、
前記走行車体が前記第2運転制御により前記出入口を走行し始めると、前記第2調整により前記センシング範囲を上方又は下方に移動させることによって、前記センシング方向の少なくとも一部を前記出入口の終端部と当該終端部の付近にある路面に向ける請求項1又は2に記載の農業機械。
【請求項4】
前記センシング調整部は、
前記走行車体が前記第2運転制御により前記出入口を走行しているときに、前記走行車体の位置から前記出入口の終端部までの距離が所定値以下になると、前記センシング範囲を上方又は下方に移動させることによって、前記センシング方向の少なくとも一部を前記出入口の終端部より前方と当該前方にある路面とに向ける第3調整を行い、
前記走行車体が前記第2運転制御により前記出入口を通過すると、前記センシング範囲を上方又は下方に移動させることによって、前記センシング方向の少なくとも一部を前記走行車体の走行方向に対して前方と当該前方にある路面とに向ける第4調整を行う請求項3に記載の農業機械。
【請求項5】
前記センシング調整部は、前記走行車体が前記出入口以外に向かって走行しているとき、又は、前記走行車体が前記出入口に向かって走行し且つ前記走行車体の位置から前記出入口までの距離が所定値より大きいときに、前記センシング方向を前記走行車体の走行方向に対して前方と当該前方にある路面とに向ける請求項1~4のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項6】
前記センシング調整部は、
前記情報取得部により、前記走行車体の走行方向に対して前記出入口より後方にある前記圃場の路面と前記出入口より前方にある前記圃場の外の路面の傾斜角度をそれぞれ取得し、
前記出入口の傾斜角度が閾値以上である場合、又は前記出入口の傾斜角度と前記圃場の路面若しくは前記圃場外の路面との角度差の絶対値が閾値以上である場合に、前記出入口の傾斜角度又は前記角度差の絶対値と、前記出入口に対する前記走行車体の位置の相対変化とに応じて、前記センシング方向の調整を行う請求項1~5のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項7】
前記情報取得部は、前記センシング調整部が前記センシング方向の調整を行うよりも前に、前記圃場に関する情報を記憶した記憶部から前記出入口に関する情報を取得する請求項1~6のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項8】
走行可能な走行車体と、
前記走行車体の周囲をセンシングするセンシング装置と、
前記センシング装置のセンシング範囲を調整可能なセンシング調整部と、
前記走行車体の位置を測位する測位装置と、
前記走行車体が走行する路面に関する情報を取得する情報取得部と、を備え、
前記センシング調整部は、
前記走行車体の走行中に、前記情報取得部が予め取得した前記情報に基づいて、前記走行車体から走行方向に対して前方に所定距離離れた地点までにある第1路面の傾斜角度と、前記地点より走行方向に対して前方にある第2路面の傾斜角度との角度差を検出し、
且つ前記走行車体の位置から前記第1路面と前記第2路面との接続地点までの距離を所定の周期で算出し、
前記走行車体が前記第1路面から前記第2路面に向かって走行すると
きに、前記角度差
と前記接続地点までの距離とに基づいて、前記走行方向に対して前方の前記センシング範囲を上下に移動させ
て、前記センシング範囲と当該センシング範囲を形成するセンシング方向の少なくとも一部とを前記第2路面の終端部に向ける調整を行い、
前記走行車体が前記第2路面を走行するときに、前記角度差と前記接続地点までの距離とに基づいて、前記センシング範囲を上下に移動させて、前記センシング範囲と前記センシング方向の少なくとも一部とを前記第2路面の終端部又は当該終端部より走行方向に対して前方に向ける調整を行う農業機械。
【請求項9】
前記センシング調整部は、前記第2路面が前記第1路面に対して上方に傾斜している場合、
前記第1路面上にある前記走行車体の位置が、前記地点に近づくに連れて、前記角度差に基づいて前記センシング範囲を上方に揺動させる調整を行い、
前記第2路面上にある前記走行車体の位置が前記地点から離れるに連れて、前記センシング範囲を下方に揺動させて前記上方への揺動前の位置に戻す調整を行う請求項8に記載の農業機械。
【請求項10】
前記センシング調整部は、前記第2路面が前記第1路面に対して下方に傾斜している場合、
前記第1路面上にある前記走行車体の位置が、前記地点に近づくに連れて、前記角度差に基づいて前記センシング範囲を下方に揺動させる調整を行い、
前記第2路面上にある前記走行車体の位置が前記地点から離れるに連れて、前記センシング範囲を上方に揺動させて前記下方への揺動前の位置に戻す調整を行う請求項8又は9に記載の農業機械。
【請求項11】
前記情報取得部は、前記センシング調整部が前記センシング範囲の調整を行うよりも前に前記路面に関する情報を、これを記憶した記憶部から取得する請求項8~
10のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項12】
前記センシング調整部は、前記調整を行った結果に基づいて、前記センシング装置のセンシング結果を補正し、
前記センシング装置のセンシング結果及び前記補正後のセンシング結果に基づいて、前記走行車体の走行を制御する走行制御部を備える請求項1~
11のいずれか1項に記載の農業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲を検出可能なセンシング装置を備えた農業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサなどのセンシング装置により周囲を検出(センシング)する農業機械として、特許文献1、2に開示された農業機械が知られている。特許文献1、2の農業機械は、走行可能な走行車体の周囲の障害物を検出する障害物センサと、走行車体の前後方向又は左右方向の傾斜を検出する傾斜センサとを備え、傾斜センサにより走行車体の傾斜を検出すると、当該傾斜方向に対する障害物センサの検出範囲を縮小させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-103102号公報
【文献】特開2020-166534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圃場に対して農業機械を出入りさせるために、傾斜した出入口が設けられることがある。そのような出入口を農業機械が走行する前に、農業機械に設けられたセンシング装置の検出範囲に出入口の路面が大きく入り込んで、その他の対象物を検出する検出性能が低下することがある。また、農業機械が出入口を走行しているときに、農業機械の走行車体が傾いて、センシング装置の検出範囲と検出方向が上空側又は地上側を向き、その他の対象物を検出する検出性能が低下することもある。特許文献1、2のように、農業機械が傾いたときに、センサの検出範囲を狭くしても、対象物の検出性能が低下してしまう。対象物の検出性能が低下すると、農業機械の走行に支障を来すおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、路面の状態が変化しても、センシング装置の検出性能を高く確保することができる農業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
本発明の農業機械は、走行可能な走行車体と、前記走行車体の周囲をセンシングするセンシング装置と、前記センシング装置のセンシング方向を調整可能なセンシング調整部と、前記走行車体の位置を測位する測位装置と、圃場の出入口に関する情報を取得する情報取得部と、を備え、前記センシング調整部は、前記情報取得部により前記出入口の傾斜角度と始端部の位置と終端部の位置とを取得し、前記走行車体が前記出入口に向かって走行しているときに、前記測位装置により測位された前記走行車体の位置から前記出入口の始端部までの距離が所定値以下になると、前記距離と前記出入口の前記傾斜角度とに基づいて前記センシング方向を移動させて、前記センシング方向を前記出入口の終端部に向ける第1調整を行い、前記走行車体が前記出入口を走行し始めると、前記センシング方向を前記出入口の終端部又は当該終端部より走行方向に対して前方に向ける第2調整を行う。
【0007】
本発明の一態様では、前記センシング調整部は、前記走行車体が前記出入口を走行しているときに、前記走行車体の位置から前記出入口の終端部までの距離が所定値以下になると、前記センシング方向を前記出入口の終端部より前方に向ける第3調整を行い、前記走行車体が走行して前記出入口を通過すると、前記センシング方向を前記走行車体の走行方向に対して前方に向ける第4調整を行う。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記農業機械は、走行車体に連結された作業装置により対地作業を行いながら、前記走行車体の自動運転を制御する第1運転制御と、前記作業装置により対地作業を行わずに、前記走行車体の自動運転を制御する第2運転制御とを実行する自動運転制御部を備え、前記自動運転制御部による前記第2運転制御から前記第1運転制御への移行前又は前記第1運転制御から前記第2運転制御への移行後において、前記センシング調整部は、前記走行車体が前記第2運転制御により前記出入口に向かって走行しているときに、前記走行車体の位置から前記出入口の始端部までの距離が所定値以下になると、前記第1調整により前記センシング装置のセンシング範囲を上方又は下方に移動させることによって、前記センシング方向の少なくとも一部を前記出入口の終端部と当該終端部の付近の路面とに向け、前記走行車体が前記第2運転制御により前記出入口を走行し始めると、前記第2調整により前記センシング範囲を上方又は下方に移動させることによって、前記センシング方向の少なくとも一部を前記出入口の終端部と当該終端部の付近にある路面に向ける。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記センシング調整部は、前記走行車体が前記第2運転制御により前記出入口を走行しているときに、前記走行車体の位置から前記出入口の終端部までの距離が所定値以下になると、前記センシング範囲を上方又は下方に移動させることによって、前記センシング方向の少なくとも一部を前記出入口の終端部より前方と当該前方にある路面とに向ける第3調整を行い、前記走行車体が前記第2運転制御により前記出入口を通過すると、前記センシング範囲を上方又は下方に移動させることによって、前記センシング方向の少なくとも一部を前記走行車体の走行方向に対して前方と当該前方にある路面とに向ける第4調整を行う。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記センシング調整部は、前記走行車体が前記出入口以外に向かって走行しているとき、又は、前記走行車体が前記出入口に向かって走行し且つ前記走行車体の位置から前記出入口までの距離が所定値より大きいときに、前記センシング方向を前記走行車体の走行方向に対して前方と当該前方にある路面とに向ける。
また、本発明の一態様では、前記センシング調整部は、前記情報取得部により、前記走行車体の走行方向に対して前記出入口より後方にある前記圃場の路面と前記出入口より前方にある前記圃場の外の路面の傾斜角度をそれぞれ取得し、前記出入口の傾斜角度が閾値以上である場合、又は前記出入口の傾斜角度と前記圃場の路面若しくは前記圃場外の路面との角度差の絶対値が閾値以上である場合に、前記出入口の傾斜角度又は前記角度差の絶対値と、前記出入口に対する前記走行車体の位置の相対変化とに応じて、前記センシング方向の調整を行う。
また、本発明の一態様では、前記情報取得部は、前記センシング調整部が前記センシング方向の調整を行うよりも前に、前記圃場に関する情報を記憶した記憶部から前記出入口に関する情報を取得する。
【0011】
また、本発明の農業機械は、走行可能な走行車体と、前記走行車体の周囲をセンシングするセンシング装置と、前記センシング装置のセンシング範囲を調整可能なセンシング調整部と、前記走行車体の位置を測位する測位装置と、前記走行車体が走行する路面に関する情報を取得する情報取得部と、を備え、前記センシング調整部は、前記走行車体の走行中に、前記情報取得部が予め取得した前記情報に基づいて、前記走行車体から走行方向に対して前方に所定距離離れた地点までにある第1路面の傾斜角度と、前記地点より走行方向に対して前方にある第2路面の傾斜角度との角度差を検出し、且つ前記走行車体の位置から前記第1路面と前記第2路面との接続地点までの距離を所定の周期で算出し、前記走行車体が前記第1路面から前記第2路面に向かって走行するときに、前記角度差と前記接続地点までの距離とに基づいて、前記走行方向に対して前方の前記センシング範囲を上下に移動させて、前記センシング範囲と当該センシング範囲を形成するセンシング方向の少なくとも一部とを前記第2路面の終端部に向ける調整を行い、前記走行車体が前記第2路面を走行するときに、前記角度差と前記接続地点までの距離とに基づいて、前記センシング範囲を上下に移動させて、前記センシング範囲と前記センシング方向の少なくとも一部とを前記第2路面の終端部又は当該終端部より走行方向に対して前方に向ける調整を行う。
【0012】
前記センシング調整部は、前記第2路面が前記第1路面に対して上方に傾斜している場合、前記第1路面上にある前記走行車体の位置が、前記第1路面と前記第2路面との接続部分である前記地点に近づくに連れて、前記角度差に基づいて前記センシング範囲を上方に揺動させる調整を行い、前記第2路面上にある前記走行車体の位置が前記地点から離れるに連れて、前記センシング範囲を下方に揺動させて前記上方への揺動前の位置に戻す調整を行う。
【0013】
前記センシング調整部は、前記第2路面が前記第1路面に対して下方に傾斜している場合、前記第1路面上にある前記走行車体の位置が、前記第1路面と前記第2路面との接続部分である前記地点に近づくに連れて、前記角度差に基づいて前記センシング範囲を下方に揺動させる調整を行い、前記第2路面上にある前記走行車体の位置が前記地点から離れるに連れて、前記センシング範囲を上方に揺動させて前記下方への揺動前の位置に戻す調整を行う。
【0015】
本発明の一態様では、前記情報取得部は、前記センシング調整部が前記センシング範囲の調整を行うよりも前に、前記圃場に関する情報を、これを記憶した記憶部から取得する。
また、本発明の一態様では、前記センシング調整部は、前記調整を行った結果に基づいて、前記センシング装置のセンシング結果を補正し、前記農業機械は、前記センシング装置のセンシング結果及び前記補正後のセンシング結果に基づいて、前記走行車体の走行を
制御する走行制御部を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、路面の状態が変化しても、センシング装置の検出性能を高く確保することができる農業機械を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】センシング装置のセンシング範囲の一例を示す図である。
【
図5A】農業機械の走行状態とセンシング範囲の一例を示す図である。
【
図5B】農業機械の走行状態とセンシング範囲の一例を示す図である。
【
図5C】農業機械と圃場の一例を示す平面図である。
【
図6】農業機械の走行位置とセンシング範囲の変化の一例を示す図である。
【
図7A】農業機械の走行状態とセンシング範囲の他の例を示す図である。
【
図7B】農業機械の走行状態とセンシング範囲の他の例を示す図である。
【
図8】農業機械の走行位置とセンシング範囲の変化の他の例を示す図である。
【
図10】昇降装置と作業装置2の昇降状態を示す図である。
【
図11A】農業機械の走行状態と作業装置の昇降位置の一例を示す図である。
【
図11B】農業機械の走行状態と作業装置の昇降位置の一例を示す図である。
【
図12】農業機械の走行位置と作業装置の昇降位置の変化の一例を示す図である。
【
図13A】農業機械の走行状態と作業装置の昇降位置の他の例を示す図である。
【
図13B】農業機械の走行状態と作業装置の昇降位置の他の例を示す図である。
【
図14】農業機械の走行位置と作業装置の昇降位置の変化の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
<農業機械の構成>
図15は、本実施形態の農業機械1の側面図である。本実施形態の農業機械1は、
図15に示すようなトラクタから構成されている。これ以外に、例えば田植機又はコンバインなどの農業で用いられる他の機械で、農業機械を構成してもよい。
図15に示すように、農業機械1は、走行装置7を有する走行車体3と、原動機4と、変速装置5と、昇降装置8とを備えている。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rがタイヤで構成された装輪型の走行装置である。他の例として、前輪又は後輪がクローラから構成された走行装置を用いてもよい。走行車体3は、走行装置7の駆動により前方(
図15で左側)及び後方(
図15右側)に走行可能である。
【0019】
走行車体3の前部には、原動機4が内蔵されている。原動機4は、例えばディーゼルエンジンから構成されている。他の例として、ガソリンエンジンなどの他の内燃機関、又は電動モータなどから原動機を構成してもよい。
走行車体3の上部には、キャビン9が設けられている。キャビン9の内部には、運転席10が設けられている。走行車体3の後部には、昇降装置8が設けられている。昇降装置8には、作業装置2が着脱可能である。
【0020】
作業装置2は、圃場(対地)及び圃場に作付けした作物などに対して様々な農作業を行う装置であって、昇降装置8を介して走行車体3に連結される。作業装置2は、例えば耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草などの刈取を行う刈取装置、牧草などの拡散を行う拡散装置、牧草などの集草を行う集草装置、又は牧草などの成形を行う成形装置などから構成される。また、これらの作業装置2は、路面を転動する車輪を有した作業装置と、車輪を有しない作業装置とに大別される。車輪を有しない作業装置2は、例えば昇降装置8により走行車体3に対して片持ち状態で支持される。
【0021】
変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。
図1は、変速装置5の構成図である。変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、シャトル部5bと、主変速部5cと、副変速部5dと、PTO動力伝達部5eと、前変速部5fと、を備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケースに回転自在に支持され、当該推進軸5aには、原動機4のクランク軸からの動力が伝達される。
【0022】
シャトル部5bは、シャトル軸5b1と、前後進切換部5b2とを有している。シャトル軸5b1には、推進軸5aからの動力が伝達される。前後進切換部5b2は、例えば、油圧クラッチなどで構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸5b1の回転方向、即ち、農業機械1の前進及び後進を切り換える。
主変速部5cは、入力された動力を無段に変更する無段変速機構である。無段変速機構は、油圧ポンプ5c1と、油圧モータ5c2と、遊星歯車機構5c3とを有している。油圧ポンプ5c1は、シャトル部5bの出力軸5b3からの動力により回転する。
【0023】
油圧ポンプ5c1は、例えば、斜板12を有する可変容量ポンプである。油圧ポンプ5c1の斜板12の角度(斜板角)を変更することにより、油圧ポンプ5c1から吐出する作動油の流量を変更可能である。
油圧モータ5c2は、配管などの油路回路を介して油圧ポンプ5c1から吐出された作動油によって回転するモータである。油圧ポンプ5c1の斜板12の斜板角を変更したり、油圧ポンプ5c1へ入力する動力を変更したりすることによって、油圧モータ5c2の回転数を変更することができる。
【0024】
遊星歯車機構5c3は、複数のギア(歯車)と、入力軸及び出力軸などの動力伝達軸とで構成された機構であって、油圧ポンプ5c1の動力が入力される入力軸13と、油圧モータ5c2の動力が入力される入力軸14と、動力を出力する出力軸15とを含んでいる。遊星歯車機構5c3は、油圧ポンプ5c1の動力と、油圧モータ5c2の動力とを合成して合成した動力を出力軸15に伝達する。
【0025】
上記のような主変速部5cによれば、油圧ポンプ5c1の斜板12の斜板角と、原動機4の回転数などを変更することによって、副変速部5dに出力する動力を変更可能である。なお、主変速部5cは、無段変速機構で構成しているが、ギアによって変速を行う有段変速機構であってもよい。
副変速部5dは、動力を変速する有段の複数のギア(歯車)を有する変速機構である。副変速部5dに備わる複数のギアの接続(噛合)を適宜変更することによって、遊星歯車機構5c3の出力軸15から副変速部5dに入力された動力が変更されて、当該変更後の動力が副変速部5dから出力される。
【0026】
副変速部5dは、入力軸5d1と、第1変速クラッチ5d2と、第2変速クラッチ5d3と、出力軸5d4とを含んでいる。入力軸5d1は、遊星歯車機構5c3の出力軸15の動力が入力される軸であり、入力された動力を、ギアなどを介して第1変速クラッチ5d2及び第2変速クラッチ5d3に入力する。第1変速クラッチ5d2及び第2変速クラッチ5d3のそれぞれの接合及び切断を切り換えることにより、入力された動力は変更され、出力軸5d4に出力される。出力軸5d4に出力された動力は、後輪デフ装置20Rに伝達される。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。
【0027】
PTO動力伝達部5eは、PTOクラッチ5e1と、PTO推進軸5e2と、PTO変速部5e3とを有している。PTOクラッチ5e1は、例えば、油圧クラッチなどで構成されている。当該油圧クラッチの入切によって、推進軸5aの動力をPTO推進軸5e2に伝達する状態(接続状態)と、推進軸5aの動力をPTO推進軸5e2に伝達しない状態(切断状態)とが切り換わる。PTO変速部5e3は、変速クラッチと複数のギアなどを含んでいて、PTO推進軸5e2からPTO変速部5e3へ入力された動力(回転数)を変更した後出力する。PTO変速部5e3の動力は、ギアなどを介してPTO軸16に伝達される。
【0028】
前変速部5fは、第1前変速クラッチ5f1と、第2前変速クラッチ5f2とを有している。第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2は、副変速部5dからの動力が伝達可能であって、例えば、出力軸5d4の動力が、ギア及び伝動軸を介して伝達される。第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2からの動力は、前伝動軸22を介して前車軸21Fに伝達可能である。具体的には、前伝動軸22は、前輪デフ装置20Fに接続され、前輪デフ装置20Fは、前輪7Fが取り付けられた前車軸21Fを回転自在に支持している。
【0029】
第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2は、油圧クラッチなどで構成されている。第1前変速クラッチ5f1には油路が接続され、当該油路には油圧ポンプから吐出した作動油が供給される制御弁23に接続されている。第1前変速クラッチ5f1は、制御弁23の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第2前変速クラッチ5f2には油路が接続され、当該油路には制御弁24に接続されている。第2前変速クラッチ5f2は、制御弁24の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。制御弁23及び制御弁24は、例えば、電磁弁付き二位置切換弁であって、電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、接続状態又は切断状態に切り換わる。
【0030】
第1前変速クラッチ5f1が切断状態で且つ第2前変速クラッチ5f2が接続状態である場合、第2前変速クラッチ5f2を通じて副変速部5dの動力が前輪7Fに伝達される。これにより、前輪7F及び後輪7Bが副変速部5dの動力によって駆動する四輪駆動状態(4WD)となり、且つ前輪7Fと後輪7Bとの回転速度が略同じとなる(4WDなど速状態)。一方、第1前変速クラッチ5f1が接続状態で且つ第2前変速クラッチ5f2が切断状態である場合、四輪駆動状態になり且つ前輪7Fの回転速度が後輪7Bの回転速度に比べて速くなる(4WD倍速状態)。また、第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2が接続状態である場合、副変速部5dの動力が前輪7Fに伝達されないため、後輪7Bだけが副変速部5dの動力によって駆動する二輪駆動状態(2WD)となる。
【0031】
図2は、昇降装置8を後方から見た斜視図である。昇降装置8は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド8d、リフトシリンダ8eを有している。
リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ8eは、制御弁34を介して油圧ポンプと接続されている。制御弁34は、電磁弁などであって、リフトシリンダ8eを伸縮させる。
【0032】
ロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。ロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部には、作業装置2が連結される。
【0033】
リフトシリンダ8eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
昇降装置8には、角度変更部25が設けられている。角度変更部25は、走行車体3に装着された作業装置2の姿勢を変更する。角度変更部25は、油圧シリンダから構成された変更シリンダ25aと、制御弁25bとを有している。変更シリンダ25aは、制御弁25bを介して油圧ポンプと接続されている。制御弁25bは、電磁弁などであって、変更シリンダ25aを伸縮させる。変更シリンダ25aは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。
【0034】
図3は、農業機械1の制御ブロック図を示す図である。農業機械1は、複数の補助弁27を有している。複数の補助弁27は、油圧ポンプ28から作動油が供給される油圧切換弁である。複数の補助弁27は、出力ポートを有しており、任意の出力ポートに油圧ホースなどが接続可能である。補助弁27の任意の出力ポートに接続した油圧ホースを、作業装置2の油圧アタッチメントに接続することにより、作業装置2に装着された様々な油圧アタッチメントを作動させることができる。
【0035】
農業機械1は、操舵装置11を備えている。操舵装置11は、ハンドル(ステアリングホイール)11aと、ハンドル11aの回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)11bと、ハンドル11aの操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)11cとを有している。
補助機構11cは、制御弁35と、ステアリングシリンダ32とを含んでいる。制御弁35は、例えば、スプールなどの移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。制御弁35は、操舵軸11bの操舵によっても切換可能である。ステアリングシリンダ32は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)36に接続されている。このため、ハンドル11aを回転操作することで、当該操作に応じて制御弁35の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁35の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ32が左又は右に伸縮して、前輪7Fの操舵方向が変更可能になる。なお、上述した操舵装置11は一例であり、上述した構成に限定されない。
【0036】
農業機械1は、検出装置41を備えている。検出装置41は、農業機械1の状態を検出する複数のセンサを有している。検出装置41には、水温を検出する水温センサ41a、燃料の残量を検出する燃料センサ41b、原動機4の回転数を検出する原動機回転センサ(回転センサ)41c、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルセンサ41d、操舵装置11の操舵角を検出する操舵角センサ41e、リフトアーム8aの角度を検出する角度センサ41f、走行車体3の幅方向(右方向又は左方向)の傾きを検出する傾き検出センサ41g、走行車体3の車速(速度)を検出する速度センサ41h、PTO軸の回転数を検出するPTO回転センサ(回転センサ)41i、バッテリーなどの蓄電池の電圧を検出するバッテリセンサ41j、走行車体3の位置を検出する測位装置41k、及び農業機械の周囲をセンシングするセンシング装置41Lが含まれている。検出装置41に含まれるセンサ及び装置は、上記に限定されない。
【0037】
測位装置41kは、例えばD-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、又はみちびきなどの衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、測位装置41kは、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報など)を受信し、衛星信号に基づいて、農業機械1の位置(例えば、緯度、経度)、即ち、走行車体3の位置を検出する。
【0038】
なお、測位装置41kは、加速度を検出する加速度センサ又は角速度を検出するジャイロセンサなどの慣性計測装置を搭載していてもよい。慣性計測装置は、加速度センサ又はジャイロセンサによって、走行車体3のロール角、ピッチ角、及びヨー角などを検出し、当該ロール角、ピッチ角、及びヨー角を用いて、走行車体3の位置を補正することができる。なお、慣性計測装置は、測位装置41kと別体で、農業機械1に設けられてもよい。
【0039】
センシング装置41Lには、光学式又は音波式のセンサと信号処理回路などが含まれている。センシング装置41Lの光学式のセンサは、例えば、カメラなどの撮像装置又はライダー(LiDAR: Light Detection And Ranging)などから構成される。撮像装置は、CCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)イメージセンサを搭載したCCDカメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサを搭載したCMOSカメラなどから構成される。撮像装置は、農業機械1の周囲を撮像して、画像信号を生成する。信号処理回路は、撮像装置から出力された画像信号に基づいて、対象物の有無、対象物の位置、及び対象物の種類などを検出する。
【0040】
ライダー(レーザセンサ)は、レーザダイオードなどの光源から1秒間に何百万回ものパルス状の測定光(レーザ光)を照射し、当該測定光を回転ミラーで反射することにより水平方向又は鉛直方向に走査して、所定の検出範囲(センシング範囲)に投光する。そして、ライダーは、測定光の対象物による反射光を、受光素子で受光する。信号処理回路は、ライダーの受光素子から出力された受光信号に基づいて、対象物の有無、対象物の位置、及び対象物の種類などを検出する。また、信号処理回路は、ライダーにより測定光を照射してから、反射光を受光するまでの時間に基づいて、対象物までの距離を検出する(TOF(Time of Flight)法)。
【0041】
センシング装置41Lの音波式のセンサは、ソナーなどの空中超音波センサから構成される。空中超音波センサは、送波器により測定波(超音波)を所定の検出範囲に発信し、当該測定波が対象物で反射した反射波を受波器で受信する。信号処理回路は、当該受波器から出力された信号に基づいて、対象物の有無、対象物の位置、及び対象物の種類などを検出する。また、信号処理回路は、空中超音波センサにより測定波を発信してから、反射波を受波するまでの時間に基づいて、対象物までの距離を検出する(TOF(Time of Flight)法)。
【0042】
本実施形態では、センシング装置41Lには、撮像装置、ライダー(レーザセンサ)、及び空中超音波センサの全てが含まれていてもよいし、又はそれらのうち少なくともいずれか一方が含まれていてもよい。また、これら以外のセンサなどの検出手段を、センシング装置41Lに含めてもよい。さらに、撮像装置、ライダー(レーザセンサ)、空中超音波センサ、及びその他の検出手段を適宜組み合わせて、センシング装置41Lを構成し、農業機械1に搭載してもよい。センシング装置41Lの構成要素は、これらに限定されない。
【0043】
センシング装置41Lは、農業機械1(走行車体3)の前方、左右側方、及び後方の周囲をセンシング(対象物を検出)するように、農業機械1に複数取り付けられている。このため、センシング装置41Lのセンシング方向(対象物の検出方向)は、農業機械1の前方、左右側方、及び後方を向き、センシング範囲(対象物の検出範囲)は、農業機械1の前方、左右側方、及び後方に所定の大きさで広がっている。なお、センシング装置41Lのセンシング方向とセンシング範囲は、前方、左右側方、及び後方に限定されない。センシング装置41Lで検出可能な対象物には、圃場、圃場の作物、圃場の出入口、地面、路面、その他の物体、障害物、及び人などが含まれている。
【0044】
センシング装置41Lのセンシング方向とセンシング範囲は、上下(走行車体3の上下方向)に揺動可能になっている。具体的には、センシング装置41Lを保持するブラケット又はステーなどの保持部材を、電動モータ又は油圧シリンダなどのアクチュエータにより上下に回動させることで、センシング装置41L及びこれのセンシングの方向とセンシング範囲とが上下に揺動する。
【0045】
また、ライダーなどでは、光源を鉛直方向に複数並べて配置して、各光源から照射される測定光の投光位置を上下方向に異ならせ、発光させる光源を切り替えることにより、センシング方向(投光方向)とセンシング範囲(検出範囲)を上下に揺動させてもよい。又は、ライダーの回転ミラーの角度を変更することにより、センシング方向とセンシング範囲を上下に揺動させてもよい。空中超音波センサでは、送波器の向きを変更することにより、センシング方向(送波方向)とセンシング範囲を上下に揺動させてもよい。撮像装置では、撮像した画像において画像処理を行う範囲を変更することにより、センシング方向とセンシング範囲を上下に揺動させてもよい。
【0046】
農業機械1は、操作装置42を備えている。操作装置42には、複数の操作部材が設けられている。当該操作部材には、走行車体3の前進又は後進を切り換えるシャトルレバー42a、原動機4の始動などを行うイグニッションスイッチ42b、PTO軸の回転数を設定するPTO変速レバー42c、自動変速及び手動変速のいずれかを切り換える変速切換スイッチ42d、変速装置5の変速段(変速レベル)を手動で切り換える変速レバー42e、車速を増減させるアクセル42f、連結装置(昇降装置)8の昇降を操作するポンパスイッチ42g、連結装置(昇降装置)8の上限を設定する高さ設定ダイヤル42h、車速を設定する車速レバー42i、油圧操作具42j、原動機4の回転数の上限を設定する回転設定具42k、ブレーキ部材42L、及びその他のスイッチ類42mなどが含まれている。
【0047】
変速切換スイッチ42d、高さ設定ダイヤル42h、及び回転設定具42kなどの設定具は、運転席10の側方に設けたコンソールボックスに設けられている。これらの設定具(変速切換スイッチ42d、高さ設定ダイヤル42h、回転設定具42k)を運転席10に着座した運転者が操作することによって、農業機械1の動作を設定することができる。なお、上述した操作部材は一例であり、操作装置42に含まれる操作部材は上記に限定されない。
【0048】
農業機械1は表示装置50を備えている。表示装置50は、農業機械1に関する様々な情報を表示する装置である。表示装置50は、液晶パネル、有機ELパネルなどのディスプレイを有し、運転席10又は当該表示装置50に設けられたハードウェアスイッチを操作することにより、画面切換及び画面操作を行うことができる。また、表示装置50は、画面に表示したソフトウェアスイッチを操作することにより、画面切換及び画面操作を行うこともできる。
【0049】
農業機械1は、制御装置40と記憶部45とを備えている。制御装置40は、農業機械1の様々な制御を行う装置であり、CPU、電気電子回路などから構成されている。記憶部45は不揮発性のメモリなどから構成され、様々な情報を記憶する。
制御装置40は、変速制御部40A、エンジン制御部40B、PTO制御部40C、昇降制御部40D、自動運転制御部40E、角度制御部40F、補助油圧制御部40G、センシング調整部40H、及び情報取得部40Iを含んでいる。
【0050】
制御装置40は、車載ネットワークN1を介して、作業装置2に備わる制御部2aと接続されている。即ち、制御装置40に含まれる各制御部40A~40Hと、作業装置2の制御部2aとは、車載ネットワークN1を介して接続されて、相互に通信可能になっている。
変速制御部40Aは変速制御を行う。変速制御では、自動変速機能が有効である場合、変速制御部40Aは、農業機械1の状態に応じて主変速部5c及び副変速部5dのいずれかを自動的に切り換え、変速装置5の変速段(変速レベル)を予め定められた変速段(変速レベル)に自動的に変更する。また、変速制御では、変速切換スイッチ42dを手動変速に切り換えた場合、変速制御部40Aは、変速レバー42eで設定された変速段(変速レベル)に応じて主変速部5c及び副変速部5dのいずれかを自動的に切り換え、変速装置5の変速段を変更する。
【0051】
また、変速制御部40Aは、走行装置7の走行駆動状態(走行装置7の動作)における走行切換制御と進行切換制御とを行う。走行切換制御では、シャトルレバー42aが前進に操作された場合、変速制御部40Aは、シャトル部5bの前後進切換部5b2を前進に切り換えることで、走行車体3を前進させる。進行切換制御では、シャトルレバー42aが後進に操作された場合、変速制御部40Aは、シャトル部5bの前後進切換部5b2を後進に切り換えることで、走行車体3を後進させる。
【0052】
また、走行切換制御では、4WD状態である場合、変速制御部40Aは、第1前変速クラッチ5f1を切断状態且つ第2前変速クラッチ5f2を接続状態にする。また、4WD倍速状態である場合、変速制御部40Aは、第1前変速クラッチ5f1を接続状態且つ第2前変速クラッチ5f2を切断状態にする。さらに、2WD状態である場合、変速制御部40Aは、第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2を接続状態にする。
【0053】
エンジン制御部40Bは、原動機4の制御を行う。エンジン制御では、イグニッションスイッチ42bがONに操作された場合、所定の処理を経て原動機4の始動を行い、イグニッションスイッチ42bがOFFに操作された場合、原動機4の駆動を停止させる。エンジン制御では、アクセル42fが操作された場合、当該アクセル42fの操作量に応じて原動機4の回転数(原動機回転数という)を変更することで、走行車体3の車速(速度)を変更する。
PTO制御部40Cは、PTO制御を行う。PTO制御では、PTO変速レバー42cが操作された場合、変速装置5に内蔵されたPTO変速ギアを切り換えることでPTO軸の回転数(PTO回転数という)を変更する。
【0054】
昇降制御部40Dは、作業装置2の昇降制御を行う。昇降制御では、手動昇降機能が有効である場合、ポンパスイッチ42gが上昇させる方向(上昇側)に手動操作されると、昇降制御部40Dは、制御弁34(
図2)を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。また、ポンパスイッチ42gが下降させる方向(下降側)に手動操作されると、昇降制御部40Dは、制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを収縮させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を下降させる。昇降装置8によって作業装置2を上昇させている場合に、作業装置2の位置、即ち、リフトアーム8aの角度が高さ設定ダイヤル42hで設定された上限(高さ上限値)に達すると、昇降制御部40Dは、昇降装置8による作業装置2の上昇動作を停止する。
【0055】
また、昇降制御では、バックアップ機能が有効である場合、走行車体3が後進したときに、昇降制御部40Dは、制御弁34を自動的に制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。さらに、昇降制御では、オートアップ機能が有効である場合、操舵装置11の操舵角が所定以上になると、昇降制御部40Dは、制御弁34を自動的に制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。
【0056】
自動運転制御部40Eは、農業機械1の自動運転の制御を行う。自動運転制御部40Eは、ライン型自動運転制御と自立型自動運転制御とを実行可能である。ライン型自動運転制御では、自動運転制御部40Eは、予め設定された走行予定ラインに沿って農業機械1(走行車体3)が移動するように、操舵装置11、変速装置5、及び原動機4などの動作を制御する。
【0057】
自立型自動運転制御では、自動運転制御部40Eは、センシング装置41Lなどによって農業機械1(走行車体3)の周囲をセンシング(対象物の検出)した結果に基づいて、走行車体3の進行方向(操舵方向)及び車速(速度)などの設定を行い、設定された操舵及び車速になるように、操舵装置11、変速装置5、及び原動機4などの動作を制御する。なお、ライン型自動運転制御と自立型自動運転制御とを、スイッチなどで切り換えることができるようにしてもよい。また、ライン型自動運転制御と自立型自動運転制御のうちのいずれか一方を実行可能に、自動運転制御部40Eを構成してもよい。自動運転制御部40Eの構成は、上記に限定されない。
【0058】
また、自動運転制御部40Eは、作業装置2による対地作業を行いながら、走行車体3の自動運転を制御する第1運転制御と、作業装置2による対地作業を行わずに、走行車体3の自動運転を制御する第2運転制御とを実行可能である。
角度制御部40Fは、作業装置2の角度制御を行う位置機能、水平機能、又は傾斜機能を有している。角度制御部40Fは、位置機能(固定機能)により、制御弁25bに制御信号を出力することで、変更シリンダ25aの長さを予め定められた長さに固定する。即ち、角度制御部40Fは、角度変更部25で設定される作業装置2の幅方向の角度(水平面に対するロアリンク8b、8bを結ぶ直線の角度)を固定する。
【0059】
また、角度制御部40Fは水平機能により、制御弁25bに制御信号を出力することで、変更シリンダ25aを伸縮させ、角度変更部25で設定される作業装置2の幅方向の角度を水平に維持する。また、角度制御部40Fは傾斜機能により、制御弁25bに制御信号を出力することで、変更シリンダ25aを伸縮させ、角度変更部25で設定される作業装置2の幅方向の角度を圃場(地面)に対して平行に維持する。
補助油圧制御部40Gは、複数の補助弁27のうち、油圧ホースなどが接続された補助弁(作動制御弁)27を制御する。例えば揺動自在なレバーなどの油圧操作具42jが操作されると、補助油圧制御部40Gは、所定の補助弁27から出力される作動油の流れを切り換える制御を行う。
【0060】
また、油圧操作具42jが左方向に操作されると、補助油圧制御部40Gは、所定の補助弁27のソレノイドを励磁して、所定の補助弁27のスプールを移動させることで作動油の流れる方向を一方向に設定する。また、油圧操作具42jが右方向に操作されると、補助油圧制御部40Gは、所定の補助弁27のソレノイドを励磁して、所定の補助弁27のスプールを移動させることで作動油の流れる方向を他方向に設定する。上記のように、補助油圧制御部40Gが補助弁27の作動を制御することで、作業装置2の油圧アタッチメントを操作にすることができる。
【0061】
センシング調整部40Hは、前述したセンシング装置41Lの駆動を制御する。また、センシング調整部40Hは、アクチュエータ43に含まれるセンシング装置41L用のアクチュエータの作動を制御して、センシング装置41Lのセンシング方向とセンシング範囲を上下に揺動させることにより調整する。さらに、センシング調整部40Hは、センシング装置41Lのセンシング方向とセンシング範囲の調整結果(上下への揺動の有無と揺動角度など)に基づいて、センシング装置41Lのセンシング結果(対象物の検出結果)を補正する。
【0062】
アクチュエータ43には、前述した各種の油圧シリンダ、電動モータ、制御弁、及び電磁弁などが含まれている。これらの各アクチュエータ43は、対応する制御部40D~40Hにより作動を制御される。
農業機械1は制動装置44を備えている。制動装置44は、走行装置7の車輪7F、7Rにブレーキをかけて、走行車体3の車速を減速したり、走行車体3を停止させたりする装置である。自動運転制御部40Eは、ブレーキ部材42Lの操作に応じて又は自動で制動装置44を作動させたり、エンジン制御部40Bを介して原動機4の回転数を調整したりして、走行車体3の走行状態(車速)を制御する。
【0063】
また、自動運転制御部40Eは、走行車体3の自動運転時又は手動運転時に、センシング装置41Lのセンシング結果及びセンシング調整部40Hによる補正後のセンシング結果に基づいて、走行車体3の走行状態(車速など)を制御する。即ち、自動運転制御部40Eは、走行車体3の走行状態を制御する走行制御部である。
農業機械1は通信装置55を備えている。通信装置55には、車載ネットワークN1を介した通信を行うための通信回路と、無線通信を行うための無線通信回路とが含まれている。当該無線通信回路は、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、LPWA(Low Power, Wide Area)、LPWAN(Low-Power Wide-Area Network)などにより、外部機器56と直接又は間接的に無線で通信を行う。他の例として、例えば携帯電話通信網又はデータ通信網などにより、外部機器56と無線で通信可能な通信回路を、通信装置55に設けてもよい。
【0064】
外部機器56は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、PDA、又はサーバなどである。外部機器56は、表示部57、制御部77、及び通信部78を備えている。制御部77は、表示部57及び通信部78の動作を制御する。通信部78は、農業機械1の通信装置55と無線で通信を行う。表示部57は、通信装置55から送信された農業機械1の各種の情報を表示可能である。
【0065】
農業機械1の制御装置40に設けられた情報取得部40Iは、圃場情報を取得可能である。圃場情報には、農業機械1が農作業を行う圃場、当該圃場の出入口、当該圃場の周辺にある農道、及びこれらの路面などに関する情報が含まれている。例えば圃場情報は、圃場を含む地域の地図情報に含まれていて、当該地図情報と圃場情報とは、外部機器56、サーバ、若しくはクラウド上のストレージなどの外部の記憶部、又は農業機械1に設けられた記憶部45に予め記憶されていてもよい。
【0066】
また、地図情報と圃場情報は、農業機械1若しくは他の車両が以前に圃場と圃場の周辺を走行したときの走行軌跡、農業機械1或いは他の車両に搭載されたセンシング装置のセンシング結果、又はドローンが圃場の周辺を飛行したときに空撮した画像データなどに基づいて、外部機器56、サーバ、若しくはクラウド上のアプリケーションプログラムで作成されてもよい。
【0067】
また、情報取得部40Iは、昇降装置8を介して走行車体3に連結された作業装置2に関する情報を取得可能である。作業装置2に関する情報には、作業装置2の種類、形状、重量、性能、機能、及び識別情報などの仕様が含まれている。作業装置2に関する情報は、例えば、作業装置2に設けられたメモリ(図示省略)に予め記憶されたり、操作装置42で予め入力されて、記憶部45に記憶されたり、外部機器56、サーバ、若しくはクラウド上のアプリケーションプログラムなどで予め入力されて、外部機器56、サーバ、若しくはクラウド上のストレージに記憶されたりする。
【0068】
例えば情報取得部40Iは、記憶部45から圃場情報と作業装置2に関する情報とを読み出し(取得し)たり、通信装置55により作業装置2、外部機器56、サーバ、又はクラウド上のストレージにアクセスして、これらから圃場情報と作業装置2に関する情報とを受信(取得)したりする。
また、情報取得部40Iは、センシング調整部40Hがセンシング範囲及びセンシング方向の調整を行うよりも前で且つ、昇降制御部40Dが昇降装置8により作業装置2の昇降位置の設定を行うよりも前で且つ、農業機械1が作業装置2により圃場に対して対地作業を行う前に、圃場情報を取得する。さらに、情報取得部40Iは、作業装置2が車載ネットワークN1を介して制御装置40に接続されたときなどに、作業装置2に関する情報を取得する。
【0069】
図4は、農業機械1の走行車体3の前方(
図4で左側)をセンシングする前方用のセンシング装置41Lのセンシング範囲Eの一例と他の例とを示す図である。
図4に示すように、前方用のセンシング装置41Lのセンシング範囲Eは、走行車体3の前部から前方に扇形に広がっている。前方用のセンシング装置41Lのセンシング方向は、走行車体3の前部からセンシング範囲Eの先端に向かう各方向である(図示省略)。
【0070】
図4(a)示すセンシング範囲Ebは、前方用のセンシング装置41Lの基準のセンシング範囲である。この基準のセンシング範囲E1bの中心軸CLは、路面K1及び走行車体3(農業機械1)の前進方向(走行方向)と平行で且つ、走行車体3の前部から真っ直ぐ前方に延伸するように設定されている。このため、基準のセンシング範囲Ebは、走行車体3の前部を基点にして中心軸CLを上下にそれぞれ所定角度傾けたラインLu、Ldで囲まれる範囲に設定されている。基準のセンシング範囲Ebには、走行車体3の前方にある路面Kが含まれている。
【0071】
センシング範囲Eの先端、即ちセンシング装置41Lのセンシング可能な距離は、例えばセンシング装置41Lを構成する撮像装置の解像度、ライダーの光源の発光パワー、又は空中超音波センサの送波器のパワーを調整することによって調整可能である。このセンシング可能な距離の調整は、センシング調整部40Hにより行われる。
また、センシング調整部40Hは、前述したように、センシング装置41Lのセンシング方向及びセンシング範囲Eを上下に調整可能である。
図4(b)には、
図4(a)に示す基準のセンシング範囲Ebを下方に揺動させた場合の、センシング範囲Eを示している。
図4(c)には、
図4(a)に示す基準のセンシング範囲Eを上方に揺動させた場合の、センシング範囲Eを示している。このように、センシング装置41Lのセンシング範囲Eを上下に揺動させることによって、当該センシング装置41Lのセンシング方向も上下に揺動する。
【0072】
センシング範囲E、Ebは、
図4(a)~(c)に示す大きさ、輪郭、及び方向などの態様に限定されない。例えば、基準のセンシング範囲Ebの中心軸CLを、路面K及び走行車体3の走行方向に対して所定の角度で傾くように設定して、基準のセンシング範囲Ebを斜め下向き又は斜め上向きに設定してもよい。
【0073】
<本実施形態の課題>
図9は、本実施形態の課題の一例を説明する図である。
農業機械1により農作業を行う圃場Hには、農業機械1を出入りさせるための出入口SLが設けられることがある。圃場Hの高さが周辺の畔及び農道Jなどの高さと異なっていたり、圃場Hに作物を作付けする面積を広く確保したりするなどの理由により、出入口SLは坂状に所定の角度で傾斜している。
【0074】
以下では、説明の便宜上、農業機械1が圃場Hから出入口SLに向かって移動している場合、即ち、農業機械1が出入口SLを上がるように走行(登坂走行)している場合は、出入口SLにおいて圃場Hに近い側の端部(出入口SLと圃場Hとの境界)を「出入口SLの始端部SLs」といい、農道Jに近い側の端部(出入口SLと農道Jとの境界)を「出入口SLの終端部SLe」という。また、農業機械1が農道Jから出入口SLに向かって移動している場合、即ち、農業機械1が出入口SLを下るように走行(下り走行)している場合は、出入口SLにおいて農道Jに近い側の端部(出入口SLと農道Jとの境界)を「出入口SLの始端部SLs」といい、圃場Hに近い側の端部(出入口SLと圃場Hとの境界)を「出入口SLの終端部SLe」という。
【0075】
図9に示す例では、圃場Hの路面Khと農道Jの路面Kjとは略水平であり、圃場Hは農道Jより低い位置にある。また、圃場Hの出入口SLは、圃場H及び農道Jに対して傾斜している。(後述する
図5A、
図5B、
図7A、
図7B、
図11A、
図11B、
図13A、及び
図13Bの例も同様である。)
例えば
図9(a)に示すように、農業機械1が自動運転で前進(前方に走行)して、圃場Hから上り坂状の出入口SLを通って、圃場H外にある農道Jに出る際に、走行車体3の前部に設けたセンシング装置41Lのセンシング範囲Eを基準のセンシング範囲Ebに固定したとする(センシング範囲一定)。
【0076】
その場合、農業機械1が圃場Hを走行して出入口SLに近づくに連れて、出入口SLの下部がセンシング範囲Ebに大きく入り込み、センシング範囲Ebが実質的に狭くなってしまう(
図9(a)の矢印Y1参照)。このため、上方にある出入口SLの終端部SLeの近傍をセンシング装置41Lでセンシングすることができず、当該終端部SLeの近傍にある路面Ks及びその他の対象物(障害物など)を検出することもできなくなる。
【0077】
またその後、農業機械1が出入口SL1を登坂走行することで、走行車体3が斜め上向きの姿勢になり、センシング範囲Ebが斜め上向きになる。そして、農業機械1が農道Jに近づくに連れて、出入口SLの路面Ksがセンシング範囲Ebから外れて行き、センシング範囲Ebが農道Jの上空側を向いてしまう(
図9(a)の矢印Y2参照)。このため、センシング装置41Lで農道Jをセンシングすることができず、農道Jにある路面Kj及びその他の対象物(障害物など)を検出することもできなくなる。
【0078】
また、
図9(b)に示すように、農業機械1が前進して、農道Jから下り坂状の出入口SLを通って、圃場H内に入る際にも、走行車体3の前部に設けたセンシング装置41Lのセンシング範囲Eを基準のセンシング範囲Ebに固定したとする(センシング範囲一定)。
その場合、農業機械1が農道Jを走行して出入口SL1に近づくと、農道Jの路面Kjがセンシング範囲Ebから外れて、センシング範囲Ebが出入口SLの上空側を向いてしまう(
図9(b)の矢印Y3参照)。このため、下方にある出入口SL及び出入口SLの終端部SLeをセンシング装置41Lでセンシングすることができず、出入口SLにある路面Ks、出入口SLの終端部SLeの近傍にある圃場Hの路面Kh、及び当該路面Ks、Kh上にあるその他の対象物(障害物など)を検出することもできなくなる。
【0079】
また、農業機械1が出入口SLを下り走行することで、走行車体3が斜め下向きの姿勢になり、センシング範囲Ebが斜め下向きになる。そして、農業機械1が圃場Hに近づくに連れて、出入口SLの終端部SLeの近傍にある圃場H1の路面Khがセンシング範囲Ebに入り込み、センシング範囲Ebが実質的に狭くなってしまう(
図9(b)の矢印Y4参照)。このため、農業機械1が出入口SLを通過した後に走行する予定の圃場H内の先の箇所をセンシングすることができず、当該先の箇所にある路面Kh及びその他の対象物(障害物など)を検出することもできなくなる。
【0080】
上記のように走行車体3の走行方向に対して前方にある出入口SL、路面Ks、Kh、Kj、及び対象物をセンシング装置41Lで検出することができないと、農業機械1の安定な走行に支障を来してしまう。
上記問題の対策として、制御装置40のセンシング調整部40Hは、走行車体3が走行する路面Kh、Ks、Kjの状態と、路面Kh、Ks、Kjに対する走行車体3の位置の相対変化とに応じて、センシング装置41Lのセンシング方向及びセンシング範囲Eを調整する。この調整動作について、
図5A~
図8を参照しながら説明する。
【0081】
<センシング調整動作>
図5A及び
図5Bは、農業機械1の走行状態と、農業機械1の走行車体3の前部に設けられたセンシング装置41Lのセンシング範囲Eの一例を示す図である。
図5Cは、農業機械1と圃場Hの一例を示す平面図である。
図6は、農業機械1の走行位置とセンシング範囲Eの変化の一例を示す図である。
【0082】
図5A及び
図5Bに示す農業機械1の走行状態とセンシング範囲Eは、
図6に示す農業機械1の走行状態とセンシング範囲Eと対応している。
図6に示すグラフでは、横軸が、走行車体3の走行位置を表し、縦軸が、走行車体3から走行方向(前進方向)に対して前方に所定距離離れた位置における、走行車体3に対するセンシング範囲Eの相対高さを表している。また、
図6のグラフ中に示す帯状のハッチング部分は、走行車体3の走行位置に対するセンシング範囲Eの相対高さの変化を占めている。(後述する
図8も同様である。)
例えば
図5Cに示す圃場Hにおいて、農業機械1(走行車体3)は作業装置2を牽引して、作業開始地点ST1から作業終了時点EN1に亘って走行しながら対地作業を行う。この際、自動運転制御部40Eは、作業装置2により対地作業を行いながら、走行車体の自動運転を制御する第1運転制御を実行する。
【0083】
上記対地作業の終了後に、例えば
図5A及び
図5Bに示すように、農業機械1(走行車体3)が自動運転で前進(前方に走行)して、圃場Hから上り坂状の出入口SLを通って、圃場H外にある農道Jに出る。この際、センシング調整部40Hは、測位装置41kにより検出された走行車体3の位置を取得する。また、センシング調整部40Hは、情報取得部40Iにより予め取得された圃場情報に含まれる出入口SLの路面Ksの位置と傾斜角度θs、及び出入口SLの前後にある圃場Hの路面Khと農道Jの路面Kjの各位置と傾斜角度θh、θjを取得する。
【0084】
なお、出入口SLの路面Ksの傾斜角度θsは、
図5A(a)に示されている。圃場Hの路面Khと農道Jの路面Kjとは水平であるため、当該路面Kh、Kjの傾斜角度θh、θj(=0°)は図示を省略している。(後述の
図7A、
図7B、
図11A、
図11B、
図13A、及び
図13Bの例も同様である。)また、
図5Cでは、農業機械1の走行車体3に作業装置2を連結しているが、
図5A及び
図5Bでは、便宜上、作業装置2の図示を省略している。(後述の
図7A及び
図7Bも同様である。)
また、センシング調整部40Hは、情報取得部40Iにより予め取得された圃場情報に基づいて、走行車体3から走行方向に対して前方に所定距離離れた地点までにある第1路面と、当該地点より走行方向に対して前方にある第2路面との上下方向の角度差Δθを検出する。角度差Δθは、第1路面に対する第2路面の相対角度のことである。
【0085】
例えば
図5A(a)に示すように、走行車体3が圃場Hを出入口SLに向かって走行している場合、走行車体3から走行方向に対して前方に所定距離離れた地点P2までにある圃場Hの路面Khが第1路面となり、地点P2より走行方向に対して前方にある出入口SLの路面Ksが第2路面となる。また、例えば圃場Hの路面Khの傾斜角度θhが0°(水平)であり、出入口SLの路面Ksの傾斜角度θsが10°である場合、これら路面Kh、Ksの角度差Δθは+10°となる(Δθ=10°-0°=+10°)。なお、
図5A(a)などに示す地点P2は、圃場Hの路面Kh(第1路面)と出入口SLの路面Ks(第2路面)との接続点であり、且つ出入口SLの始端部SLsと同一位置にある。
【0086】
また、例えば
図5A(c)に示すように、走行車体3が出入口SLを農道Jに向かって走行している場合、走行車体3から走行方向に対して前方に所定距離離れた地点P5までにある出入口SLの路面Ksが第1路面となり、地点P5より走行方向に対して前方にある農道Jの路面Kjが第2路面となる。また、例えば出入口SLの路面Ksの傾斜角度θsが10°であり、農道Jの路面Kjの傾斜角度θjが0°(水平)である場合、これら路面Kh、Ksの角度差Δθは-10°となる(Δθ=0°-10°=-10°)。なお、
図5A(c)などに示す地点P5は、出入口SLの路面Ks(第1路面)と農道Jの路面Kj(第2路面)との接続点であり、且つ出入口SLの終端部SLeと同一位置にある。農道Jは圃場Hより高い位置にある。
【0087】
図5A、
図5B、及び
図6の例では、自動運転制御部40Eは、作業装置2により対地作業を行わずに、走行車体3の自動運転を制御する第2運転制御を実行している。即ち、自動運転制御部40Eが、作業装置2により対地作業を行いながら、走行車体の自動運転を制御する第1運転制御から、第2運転制御に移行した後の農業機械1の走行状態を、
図5A、
図5B、及び
図6は示している。
【0088】
出入口SLの傾斜角度θs(
図5A(a))が所定の閾値未満である場合、センシング調整部40Hは、走行車体3の走行方向に対して前方側のセンシング装置41Lのセンシング範囲Eを、例えば、中心軸CLが圃場Hの路面Khと平行(共に水平)な基準のセンシング範囲Ebに設定する。つまり、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲E(Eb)と当該範囲E(Eb)を形成するセンシング方向の少なくとも一部とを、走行車体3の走行方向に対して前方と当該前方にある路面とに向ける。
そして、以降、走行車体3が圃場Hの路面Khを出入口SLに向かって走行したり、出入口SLを走行したりしても、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲E(Eb)及びセンシング方向の調整を行わず、当該センシング範囲E(Eb)及びセンシング方向を維持する。
【0089】
上記では、センシング調整部40Hが出入口SLの傾斜角度θsと閾値とを比較したが、出入口SLの傾斜角度θsに代えて、圃場Hの路面Khと出入口SLの路面Ksとの角度差Δθの絶対値|Δθ|を、センシング調整部40Hが閾値と比較するようにしてもよい。或いは、センシング調整部40Hが、出入口SLの傾斜角度θsと路面Kh、Ksの角度差Δθの絶対値|Δθ|とを、それぞれ対応する閾値と比較するようにしてもよい。本例では、出入口SLの傾斜角度θsと、路面Kh、Ksの角度差Δθの絶対値|Δθ|とは同値である。
【0090】
一方、出入口SLの傾斜角度θs(又は路面Kh、Ksの角度差Δθの絶対値|Δθ|)が閾値以上である場合、センシング調整部40Hは、地点P2に対する走行車体3の位置の相対変化として、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLs(地点P2)までの距離を所定の周期で算出する。そして、センシング調整部40Hは、出入口SLの傾斜角度θs、路面Kh、Ksの角度差Δθ、及び走行車体3の位置から始端部SLsまでの距離に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向の調整を行う。
【0091】
詳しくは、走行車体3が圃場Hの作業終了時点EN1(
図5C)から出入口SLに向かって走行している場合において、例えば
図5A(a)に示すように、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離が所定値より大きい間は(
図5A(a)の地点P1より左側)、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲Eを基準のセンシング範囲Ebに設定する。
【0092】
つまり、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲E(Eb)とセンシング方向の少なくとも一部とを、走行車体3の走行方向に対して前方と当該前方にある圃場Hの路面Khと出入口SLの下部の路面Ksとに向ける。これにより、
図6の地点P1より左側に示すように、前方側のセンシング範囲E(Eb)が、所定の高さに所定の上下幅で位置して、圃場Hの路面Khと平行に推移して行く。
【0093】
走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離が所定値以下になると(
図5Aの(b)と(c)の地点P1~地点P2)、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲Eを上方に移動させて、前方側のセンシング方向の少なくとも一部を出入口SLの終端部SLeと当該終端部SLeの付近の路面Ksとに向ける第1調整を行う。
例えば、走行車体3が作業終了時点EN1(
図5C)から出入口SLに向かって走行している場合において(
図5Aの(a)~(c))、センシング調整部40Hがセンシング装置41Lにより少なくとも出入口SLの始端部SLsを検出してから(
図5A(b)の状態)、センシング調整部40Hは第1調整を開始する。このときの走行車体3の位置(P1)から出入口SLの始端部SLs(P2)までの距離D1は、センシング装置41Lの検出距離L10より短く設定されている。
【0094】
この場合の第1調整では、センシング調整部40Hは、出入口SLの傾斜角度θs、路面Kh、Ksの角度差Δθ、及び走行車体3の位置から始端部SLsまでの距離に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上方に徐々に揺動させる(
図6の地点P1~地点P2)。
より詳しくは、路面Kh、Ksの角度差Δθが、圃場Hの路面Khに対して出入口SLの路面Ksが上方に傾斜していることを示す+値(正の値)になっている(
図5A(a))。このため、走行車体3が圃場Hの路面Kh上を出入口SLの路面Ksに向かって走行しているときに、センシング調整部40Hは、走行車体3の位置が地点P2に近づくに連れて、出入口SLの傾斜角度θs又は路面Kh、Ksの角度差Δθの絶対値|Δθ|に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上方に揺動させる(
図5A(c)及び
図6の地点P1~地点P2)。
【0095】
この際、センシング調整部40Hは、出入口SLの路面Ksの全体を向くように、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を調整(上方に揺動)してもよいし、又は出入口SLの終端部SLeの付近の路面Ksと当該路面Ksの上方とを向くように、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を調整してもよい。
【0096】
出入口SLの傾斜角度θs又は路面の角度差Δθと、出入口SL又は第2路面に対する走行車体3の位置の相対変化(走行車体3の位置から出入口SL又は第2路面までの距離と方向)とに応じた、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向の調整方向(揺動方向)と調整量(揺動量)は、予め設定されて記憶部45などに記憶されていてもよい。この場合、センシング調整部40Hが第1調整及び後述する第2~第4調整をそれぞれ行う際に、記憶部45などからセンシング範囲E及びセンシング方向の調整方向と調整量とを読み出せばよい。或いは、センシング調整部40Hが第1~第4調整をそれぞれ行う際に、所定の演算式に基づいて、センシング範囲E及びセンシング方向の調整方向と調整量とを算出してもよい。(後述する
図7A~
図8に示す例でも同様である。)
【0097】
走行車体3が出入口SLの路面Ksを登坂走行し始めると(
図5Aなどの地点P2より右側)、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲Eを下方に移動させて、前方側のセンシング方向の少なくとも一部を出入口SLの終端部SLeと当該終端部SLeの付近の路面Ksとに向ける第2調整を行う。
この場合の第2調整では、センシング調整部40Hは、出入口SLの傾斜角度θs、路面Kh、Ksの角度差Δθ、及び走行車体3の位置から始端部SLsまでの距離に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を下方に徐々に揺動させる(
図6の地点P2~地点P3)。
【0098】
より詳しくは、走行車体3が出入口SLの路面Ksを登坂走行しているときに、センシング調整部40Hは、走行車体3の位置が地点P2から離れるに連れて、出入口SLの傾斜角度θs又は路面Kh、Ksの角度差Δθの絶対値|Δθ|に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を下方に揺動させる。
この際、センシング調整部40Hは、出入口SLの路面Ksのうち、走行車体3の前方にある部分の全体を向くように、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を調整(下方に揺動)してもよいし、又は出入口SLの終端部SLeの付近の路面Ksと、当該路面Ksの上方とを向くように、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を調整してもよい。
【0099】
走行車体3が出入口SLの路面Ksを登坂走行しているときに、センシング調整部40Hは、第2調整により下方へ揺動させている前方側のセンシング範囲Eが基準のセンシング範囲Ebに一致すると(
図6の地点P3)、当該センシング範囲Eを基準のセンシング範囲Ebに維持する(
図6の地点P3~地点P4)。
即ち、センシング調整部40Hは、第2調整により前方側のセンシング範囲Eとセンシング方向の少なくとも一部とを、出入口SLの終端部SLeと終端部SLeの付近の路面Ks、Kjとに向ける。この場合の終端部SLeの付近の路面Ks、Kjは、出入口SLの終端部SLeより走行車体3側にある路面Ksと、終端部SLeより走行車体3と反対側にある農道Jの路面Kjである。
【0100】
上述したように、走行車体3が圃場Hの路面Khを走行して、出入口SLに近づいて行くに連れて、センシング調整部40Hは第1調整により、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上方へ徐々に揺動させる。また、走行車体3が出入口SLの路面Ksを走行して、圃場Hから離れて行くに連れて、センシング調整部40Hは第2調整により、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を下方へ徐々に揺動させて、上方への揺動前の位置(基準のセンシング範囲Eb)に戻す。
【0101】
出入口SLの路面Khと農道Jの路面Kjとの角度差Δθ(
図5A(d))の絶対値|Δθ|が閾値未満である場合、出入口SLを登坂走行している走行車体3が農道Jに近づいても、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲Eを基準のセンシング範囲Ebに維持する。そして、以降、走行車体3が出入口SLを通過したり、農道Jを走行して出入口SLから離れて行ったりしても、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲E(Eb)及びセンシング方向の調整を行わず、当該センシング範囲E(Eb)及びセンシング方向を維持する。
【0102】
一方、路面Kh、Kjの角度差Δθの絶対値|Δθ|が閾値以上である場合、走行車体3が出入口SLを農道Jに向かって登坂走行しているときに、センシング調整部40Hは、地点P5に対する走行車体3の位置の相対変化として、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLe(地点P5)までの距離を所定の周期で算出する。そして、センシング調整部40Hは、出入口SLの傾斜角度θs、路面Ks、Kjの角度差Δθ、及び走行車体3の位置から終端部SLeまでの距離に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向の調整を行う。
【0103】
詳しくは、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離が所定値以下になると(
図5Bの(e)と(f)の地点P4~地点P5)、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲Eを下方に移動させて、前方側のセンシング方向の少なくとも一部を出入口SLの終端部SLeより前方と当該前方にある農道Jの路面Kjとに向ける第3調整を行う。
【0104】
例えば、走行車体3が出入口SLの路面Ksを登坂走行している場合において(
図5A(d)及び
図5Bの(e)、(f))、センシング調整部40Hがセンシング装置41Lにより少なくとも出入口SLの終端部SLeを検出してから(
図5A(e)の状態)、センシング調整部40Hは第3調整を開始する。このときの走行車体3の位置(P4)から出入口SLの終端部SLe(P5)までの距離D2は、センシング装置41Lの検出距離L10より短く設定されている。
【0105】
この場合の第3調整では、センシング調整部40Hは、出入口SLの傾斜角度θs、路面Ks、Kjの角度差Δθ、及び走行車体3の位置から終端部SLeまでの距離に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を下方に徐々に揺動させる(
図6の地点P4~地点P5)。
より詳しくは、路面Ks、Kjの角度差Δθが、出入口SLの路面Ksに対して農道Jの路面Kjが下方に傾斜していることを示す-値(負の値)になっている(
図5A(d))。このため、走行車体3が出入口SLの路面Ks上を農道Jの路面Kjに向かって走行しているときに、センシング調整部40Hは、走行車体3の位置が地点P4から地点P5に近づくに連れて(
図5Bの(e)と(f))、出入口SLの傾斜角度θs又は路面Ks、Kjの角度差Δθの絶対値|Δθ|に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を下方に揺動させる(
図6の地点P4~地点P5)。
【0106】
この際、センシング調整部40Hは、出入口SLの終端部SLe又は終端部SLeの付近にある出入口SLの路面Ksと農道Jの路面Kjを向くように、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を調整(下方に揺動)してもよい。
走行車体3が出入口SLの終端部SLeを通過すると、即ち走行車体3が路面Kjを走行し始めると(
図5Bの地点P5より右側)、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲Eを上方に移動させて、前方側のセンシング方向の少なくとも一部を走行車体3の前方と当該前方にある農道Jの路面Kjとに向ける第4調整を行う。
【0107】
この場合の第4調整では、センシング調整部40Hは、出入口SLの傾斜角度θ、路面Ks、Kjの角度差Δθ、及び走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上方に徐々に揺動させる(
図6の地点P5より右側)。より詳しくは、走行車体3が出入口SLを通過して農道Jを走行しているときに、センシング調整部40Hは、走行車体3の位置が地点P5から離れるに連れて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上方に揺動させる。
【0108】
そして、センシング調整部40Hは、第4調整により上方へ揺動させている前方側のセンシング範囲Eが基準のセンシング範囲Ebに一致すると(
図6の地点P6)、当該センシング範囲E(Eb)を維持する(
図6の地点P6より右側、
図5B(g))。つまり、センシング調整部40Hは、第4調整により前方側のセンシング範囲Eとセンシング方向の少なくとも一部とを、前方にある農道Jと農道Jの路面Kjとに向け続ける。これにより、
図6の地点P6より右側に示すように、前方側のセンシング範囲E(Eb)が、所定の高さに所定の上下幅で位置して、農道Jの路面Kjと平行に推移して行く。
【0109】
上述したように、走行車体3が出入口SLの路面Ksを走行して、農道Jに近づいて行くに連れて、センシング調整部40Hは第3調整により、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を下方へ徐々に揺動させる。また、走行車体3が出入口SLを通過して、農道Jの路面Kjを走行しながら出入口SLから離れて行くに連れて、センシング調整部40Hは第4調整により、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上方へ徐々に揺動させて、下方への揺動前の位置(基準のセンシング範囲Eb)に戻す。
【0110】
図7A及び
図7Bは、農業機械1の走行状態と、農業機械1の走行車体3の前部に設けられたセンシング装置41Lのセンシング範囲Eの他の例を示す図である。
図8は、農業機械1の走行位置とセンシング範囲Eの変化の一例を示す図である。
図7A及び
図7Bに示す農業機械1の走行状態とセンシング範囲Eは、
図8に示す農業機械1の走行状態とセンシング範囲Eと対応している。
【0111】
例えば
図7A及び
図7Bに示すように、農業機械1(走行車体3)が自動運転で前進(前方に走行)して、圃場H外にある農道Jから下り坂状の出入口SLを通って、圃場Hに入る際にも、センシング調整部40Hは、測位装置41kにより検出された走行車体3の位置を取得する。また、センシング調整部40Hは、情報取得部40Iにより予め取得された圃場情報に含まれる農道J、出入口SL、及び圃場Hの路面Kj、Ks、Khの位置と傾斜角度θj、θs、θhとを取得する。
【0112】
また、センシング調整部40Hは、情報取得部40Iにより予め取得された圃場情報に基づいて、走行車体3から走行方向に対して前方に所定距離離れた地点までにある第1路面と、当該地点より走行方向に対して前方にある第2路面との上下方向の角度差(相対角度)Δθを検出する。
例えば
図7A(a)に示すように、走行車体3が農道Jを出入口SLに向かって走行している場合、走行車体3から走行方向に対して前方に所定距離離れた地点P12までにある農道Jの路面Kjが第1路面となり、地点P12より走行方向に対して前方にある出入口SLの路面Ksが第2路面となる。また、例えば農道Jの路面Kjの傾斜角度θhが0°(水平)であり、出入口SLの路面Ksの傾斜角度θsが10°である場合、これら路面Kj、Ksの角度差Δθは-10°となる(Δθ=0°-10°=-10°)。
図7A(a)に示す地点P12は、農道Jの路面Kj(第1路面)と出入口SLの路面Ks(第2路面)との接続点であり、且つ出入口SLの始端部SLsと同一位置にある。
【0113】
また、例えば
図7A(c)に示すように、走行車体3が出入口SLを圃場Hに向かって走行している場合、走行車体3から走行方向に対して前方に所定距離離れた地点P15までにある出入口SLの路面Ksが第1路面となり、地点P15より走行方向に対して前方にある圃場Hの路面Khが第2路面となる。また、例えば出入口SLの路面Ksの傾斜角度θsが10°であり、圃場Hの路面Khの傾斜角度θjが0°(水平)である場合、これら路面Ks、Kjの角度差Δθは+10°となる(Δθ=10°-0°=+10°)。
図7A(c)に示す地点P15は、出入口SLの路面Ks(第1路面)と圃場Hの路面Kh(第2路面)との接続点であり、且つ出入口SLの終端部SLeと同一位置にある。圃場Hは農道Jより低い位置にある。
【0114】
図7A~
図8の例では、自動運転制御部40Eは、作業装置2により対地作業を行わずに、走行車体3の自動運転を制御する第2運転制御を実行している。即ち、自動運転制御部40Eが、作業装置2により対地作業を行いながら、走行車体の自動運転を制御する第1運転制御から、第2運転制御に移行した後の農業機械1の走行状態を、
図7A~
図8は示している。
【0115】
出入口SLの傾斜角度θs(又は路面Kj、Ksの角度差Δθの絶対値|Δθ|)が閾値未満である場合、センシング調整部40Hは、走行車体3の走行方向に対して前方側のセンシング装置41Lのセンシング範囲Eを基準のセンシング範囲Ebに設定する。つまり、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲E(Eb)と当該範囲E(Eb)を形成するセンシング方向の少なくとも一部とを、走行車体3の走行方向に対して前方と当該前方にある路面とに向ける。
【0116】
そして、以降、走行車体3が農道Jの路面Kjを出入口SLに向かって走行したり、出入口SLを走行したりしても、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲E(Eb)及びセンシング方向の調整を行わず、当該センシング範囲E(Eb)及びセンシング方向を維持する。本例では、出入口SLの傾斜角度θsと路面Kj、Ksの角度差Δθの絶対値|Δθ|とは同値である。
【0117】
一方、出入口SLの傾斜角度θs(又は路面Kj、Ksの角度差Δθの絶対値|Δθ|)が閾値以上である場合、センシング調整部40Hは、地点P12に対する走行車体3の位置の相対変化として、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLs(地点P12)までの距離を所定の周期で算出する。そして、センシング調整部40Hは、出入口SLの傾斜角度θs、路面Kj、Ksの角度差Δθ、及び走行車体3の位置から始端部SLsまでの距離に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向の調整を行う。
【0118】
詳しくは、走行車体3が農道Jを出入口SLに向かって走行している場合、例えば
図7A(a)に示すように、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離が所定値より大きい間は(
図7A(a)の地点P11より左側)、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲Eを基準のセンシング範囲Ebに設定する。
つまり、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲E(Eb)とセンシング方向の少なくとも一部とを、走行車体3の走行方向に対して前方と当該前方にある農道Jの路面Kjとに向ける。これにより、
図8の地点P11より左側に示すように、前方側のセンシング範囲E(Eb)が、所定の高さに所定の上下幅で位置して、農道Jの路面Kjと平行に推移して行く。
【0119】
走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離が所定値以下になると(
図7Aの(b)と(c)の地点P11~地点P12)、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲Eを下方に移動させて、前方側のセンシング方向の少なくとも一部を出入口SLの終端部SLeと、当該終端部SLeの付近の出入口SLの路面Ksに向ける第1調整を行う。
【0120】
例えば、走行車体3が農道Jから出入口SLに向かって走行している場合において(
図7Aの(a)~(c))、センシング調整部40Hがセンシング装置41Lにより少なくとも出入口SLの始端部SLsを検出してから(
図7A(b)の状態)、センシング調整部40Hは第1調整を開始する。このときの走行車体3の位置(P11)から出入口SLの始端部SLs(P12)までの距離D3は、センシング装置41Lの検出距離L10より短く設定されている。
【0121】
この場合の第1調整では、センシング調整部40Hは、出入口SLの傾斜角度θs、路面Kj、Ksの角度差Δθ、及び走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を下方に徐々に揺動させる(
図8の地点P11~地点P12)。
より詳しくは、路面Kj、Ksの角度差Δθが、農道Jの路面Kjに対して出入口SLの路面Ksが下方に傾斜していることを示す-値(負の値)になっている。このため、走行車体3が路面Kj上を路面Ksに向かって走行しているときに、センシング調整部40Hは、走行車体3の位置が地点P12に近づくに連れて、出入口SLの傾斜角度θs又は路面Kj、Ksの角度差Δθの絶対値|Δθ|に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を下方に揺動させる(
図7A(c)及び
図8の地点P11~地点P12)。
【0122】
この際、センシング調整部40Hは、出入口SLの路面Ksの全体を向くように、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を調整(下方に揺動)してもよいし、又は出入口SLの終端部SLeの付近にある出入口SLの路面Ksと圃場Hの路面Khとを向くように、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を調整してもよい。
走行車体3が出入口SLの路面Ksを下り(降坂)走行し始めると(
図7Aの地点12より右側)、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲Eを上方に移動させて、前方側のセンシング方向の少なくとも一部を出入口SLの終端部SLeと当該終端部SLeの付近の路面Ksとに向ける第2調整を行う。
【0123】
この場合の第2調整では、センシング調整部40Hは、出入口SLの傾斜角度θs、路面Kj、Ksの角度差Δθ、及び走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上方に徐々に揺動させる(
図8の地点P12~地点P13)。
より詳しくは、走行車体3が出入口SLの路面Ksを下り走行しているときに、センシング調整部40Hは、走行車体3の位置が地点P12から離れるに連れて、出入口SLの傾斜角度θs又は路面Kj、Ksの角度差Δθの絶対値|Δθ|に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上方に揺動させる。
【0124】
その際、センシング調整部40Hは、出入口SLの路面Ksのうち、走行車体3の前方にある部分の全体を向くように、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を調整(下方に揺動)してもよいし、又は出入口SLの終端部SLeの付近にある出入口SLの路面Ksと圃場Hの路面Khとを向くように、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を調整してもよい。
【0125】
走行車体3が出入口SLの路面Ksを下り走行しているときに、センシング調整部40Hは、第2調整により上方へ揺動させている前方側のセンシング範囲Eが基準のセンシング範囲Ebに一致すると(
図8の地点P13)、当該センシング範囲E(Eb)を維持する(
図7A(d)、
図8の地点P13~地点P14)。即ち、センシング調整部40Hは、第2調整により前方側のセンシング範囲Eとセンシング方向の少なくとも一部とを、出入口SLの終端部SLeと終端部SLeの付近の路面Ks、Khとに向ける。
【0126】
上述したように、走行車体3が農道Jの路面Kjを走行して、出入口SLに近づいて行くに連れて、センシング調整部40Hは第1調整により、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を下方へ徐々に揺動させる。また、走行車体3が出入口SLの路面Ksを走行して、農道Jから離れて行くに連れて、センシング調整部40Hは第2調整により、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上方へ徐々に揺動させて、下方への揺動前の位置(基準のセンシング範囲Eb)に戻す。
【0127】
出入口SLの路面Khと圃場Hの路面Khとの角度差Δθの絶対値|Δθ|が閾値未満である場合、出入口SLを下り走行している走行車体3が圃場Hに近づいても、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲Eを基準のセンシング範囲Ebに維持する。そして、以降、走行車体3が出入口SLを通過したり、圃場Hを走行して出入口SLから離れて行ったりしても、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲E(Eb)及びセンシング方向の調整を行わず、当該センシング範囲E(Eb)及びセンシング方向を維持する。
【0128】
一方、路面Kh、Khの角度差Δθの絶対値|Δθ|が閾値以上である場合、走行車体3が出入口SLを圃場Hに向かって下り走行しているときに、センシング調整部40Hは、地点P15に対する走行車体3の位置の相対変化として、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLe(地点P15)までの距離を所定の周期で算出する。そして、センシング調整部40Hは、出入口SLの傾斜角度θs、路面Ks、Khの角度差Δθ、及び走行車体3の位置から終端部SLeまでの距離に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向の調整を行う。
【0129】
詳しくは、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離が所定値以下になると(
図7Bの(e)と(f)、地点P14~地点P15)、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲Eを上方に移動させて、前方側のセンシング方向の少なくとも一部を出入口SLの終端部SLeより前方、即ち圃場Hと、当該前方にある圃場Hの路面Khとに向ける第3調整を行う。
【0130】
例えば、走行車体3が出入口SLの路面Ksを下り走行している場合において(
図7A(d)及び
図7Bの(e)、(f))、センシング調整部40Hがセンシング装置41Lにより少なくとも出入口SLの終端部SLeを検出してから(
図7B(e)の状態)、センシング調整部40Hは第3調整を開始する。このときの走行車体3の位置(P14)から出入口SLの終端部SLe(P15)までの距離D4は、センシング装置41Lの検出距離L10より短く設定されている。
【0131】
この場合の第3調整では、センシング調整部40Hは、出入口SLの傾斜角度θs、路面Ks、Khの角度差Δθ、及び走行車体3の位置から終端部SLeまでの距離に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上方に徐々に揺動させる(
図8の地点P14~地点P15)。
より詳しくは、路面Ks、Khの角度差Δθが、出入口SLの路面Ksに対して圃場Hの路面Khが上方に傾斜していることを示す+値(正の値)になっている。このため、走行車体3が出入口SLの路面Ks上を圃場Hの路面Khに向かって走行しているときに、センシング調整部40Hは、走行車体3の位置が地点P14から地点P15に近づくに連れて(
図7Bの(e)と(f))、出入口SLの傾斜角度θs又は路面Ks、Khの角度差Δθの絶対値|Δθ|に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上方に揺動させる(
図8の地点P14~地点P15)。
【0132】
この際、センシング調整部40Hは、出入口SLの終端部SLe又は終端部SLeの付近にある出入口SLの路面Ksと圃場Hの路面Khとを向くように、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を調整(上方に揺動)してもよい。
走行車体3が出入口SLの終端部SLeを通過すると、即ち走行車体3が圃場Hを走行し始めると(
図7Bの地点P15より右側)、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲Eを下方に移動させて、前方側のセンシング方向の少なくとも一部を走行車体3の前方にある圃場Hと圃場Hの路面Khとに向ける第4調整を行う。
【0133】
この場合の第4調整では、センシング調整部40Hは、出入口SLの傾斜角度θ、路面Ks、Khの角度差Δθ、及び走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離に基づいて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を下方に徐々に揺動させる(
図8の地点P15~地点P16)。
より詳しくは、走行車体3が出入口SLを通過して圃場Hを走行しているときに、センシング調整部40Hは、走行車体3の位置が地点P15から離れるに連れて、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を下方に揺動させる。
【0134】
そして、センシング調整部40Hは、第4調整により下方へ揺動させている前方側のセンシング範囲Eが基準のセンシング範囲Ebに一致すると(
図8の地点P16)、当該センシング範囲E(Eb)を維持する(
図8の地点P16より右側、
図7B(g))。つまり、センシング調整部40Hは、第4調整により前方側のセンシング範囲Eとセンシング方向の少なくとも一部とを、前方にある圃場Hと圃場Hの路面Kjとに向け続ける。これにより、
図6の地点P16より右側に示すように、前方側のセンシング範囲E(Eb)が、所定の高さに所定の上下幅で位置して、農道Jの路面Kjと平行に推移して行く。
【0135】
上述したように、走行車体3が出入口SLの路面Ksを走行して、圃場Hに近づいて行くに連れて、センシング調整部40Hは第3調整により、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上方へ徐々に揺動させる。また、走行車体3が出入口SLを通過して、圃場Hの路面Khを走行しながら出入口SLから離れて行くに連れて、センシング調整部40Hは第4調整により、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を下方へ徐々に揺動させて、上方への揺動前の位置(基準のセンシング範囲Eb)に戻す。
【0136】
走行車体3が圃場H或いは農道Jを出入口SL以外に向かって走行しているときには、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を、走行方向に対して走行車体3の前方と、当該前方にある路面Kh、路面Kjとに向ける調整を行う。また、走行車体3が圃場H或いは農道Jを出入口SLに向かって走行し、且つ走行車体3の位置から出入口SLのある位置までの距離が所定値より大きいときにも、センシング調整部40Hは、前方側のセンシング範囲E及びセンシング方向を、走行方向に対して走行車体3の前方と、当該前方にある路面Kh、Kjとに向ける調整を行う。
【0137】
上述した農業機械1の走行車体3の走行中に、自動運転制御部40Eは、センシング装置41Lのセンシング結果、即ち対象物の検出結果に基づいて、走行車体3の走行を制御する。詳しくは、例えばセンシング装置41Lが走行車体3の走行方向に対して前方に障害物を検出した場合、自動運転制御部40Eは、走行車体3と障害物との衝突を回避するために、制動装置44を作動させて、走行車体3の車速を低くしたり、走行車体3を停止させたりする。また、自動運転制御部40Eは、走行車体3が走行する路面Kh、Ks、Kjの状態に応じて、原動機4の駆動を制御して、走行車体3を加速させたり、走行装置7の駆動状態(4WD状態及び2WD状態など)を制御したりしてもよい。
【0138】
また、走行車体3の走行中に、センシング調整部40Hは、上述したようにセンシング装置41Lのセンシング範囲E及びセンシング方向を調整すると、当該調整結果(調整の有無、調整角度、及び調整後の位置など)に基づいて、センシング装置41Lのセンシング結果(対象物の検出位置など)を補正する。この場合、自動運転制御部40Eは、補正後のセンシング結果に基づいて、走行車体3の走行を制御する。
【0139】
上述した実施形態では、農業機械1が圃場Hの傾斜した出入口SLを走行する際とその前後において、走行方向側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上下に調整する場合を例に挙げたが、農業機械1が傾斜した路面を走行する際とその前後の走行中においても、センシング調整部40Hは走行方向側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上下に調整可能である。
【0140】
また、例えば丘又は圃場の畔などのような隆起した場所を農業機械1(走行車体3)が上ってから直ぐに下るように走行する場合にも、センシング調整部40Hは、走行方向側のセンシング範囲E及びセンシング方向を上下に調整可能である。この場合、農業機械1が下方にある路面から傾斜した路面を上って上方にある路面に行く際に、
図5A~
図6に示したようにセンシング調整部40Hが走行方向側のセンシング範囲及びセンシング方向を上下に調整すればよい。またその直後に、農業機械1が上方にある路面から傾斜した路面を下って下方にある路面に行く際に、
図7A~
図8に示したように、センシング調整部40Hが走行方向側のセンシング範囲及びセンシング方向を上下に調整すればよい。
【0141】
上述した実施形態では、農業機械1の自動運転での前進時に、走行する路面Kh、Ks、Kjの状態(傾斜角度の変化)と、路面Kh、Ks、Kjに対する走行車体3の位置の相対変化(路面Ksの始端部又は終端部に対して走行車体3がある位置の距離と方向、即ち走行車体3が近づいて行く距離と離れて行く距離)とに応じて、走行方向側のセンシング装置41Lのセンシング範囲E及びセンシング方向を調整する例を示した。然るに、例えば、農業機械1の手動運転での前進時若しくは後進時、又は自動運転での後進時にも走行する路面の状態と路面走行車体3の位置の相対変化とに応じて、走行方向側のセンシング装置41Lのセンシング範囲E及びセンシング方向を調整してもよい。
【0142】
<作業装置の昇降>
農業機械1が傾斜した路面Ksを走行する際とその前後の走行中に、例えば走行車体3に片持ち状態で連結された作業装置2が路面Kh、Ks、Kjに接触したり、作業装置2の昇降位置により農業機械1の重心が高い位置に移動したりして、走行車体3の安定な走行に支障を来すおそれがある。この問題の対策として、制御装置40の昇降制御部40Dは、走行車体3が走行する路面Kh、Ks、Kjの状態と走行車体3の位置の相対変化とに応じて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を設定(変更)する。作業装置2の昇降位置の設定について、
図10~
図12Bを参照しながら説明する。
【0143】
<昇降位置の設定>
図10は、昇降装置8と作業装置2の昇降状態を示す図である。
昇降制御部40Dが、
図10(a)~(c)に示すように、昇降装置8のリフトシリンダ8eを伸縮させることにより、リフトアーム8aとロアリンク8bが昇降し、ロアリンク8bの後部とトップリンク8cの後部とに片持ち状態で連結された作業装置2が、ロアリンク8bの前部を支点として上下に揺動(昇降)する。
【0144】
図10(a)には、昇降装置8が作業装置2を最大限上昇させた状態を示し、
図10(c)には、昇降装置8が作業装置2を最大限下降させた状態を示している。昇降制御部40Dは、リフトシリンダ8eの伸縮量を調整することにより、作業装置2を最大限上昇させた最上位置と最小限下降させた最下位置との間で、作業装置2の昇降位置を設定して、当該昇降位置に作業装置2を位置させることが可能である。
図10(b)には、昇降装置8がロアリンク8bとトップリンク8cを水平に維持して、作業装置2を中間の昇降位置に静止させた状態を示している。
【0145】
作業装置2により対地作業を行う場合、昇降制御部40Dが、昇降装置8により作業装置2を下降させて、作業装置2を圃場の地面に近い所定の高さの位置に設定する。この場合、対地作業と作業装置2の仕様(種類、形状など)によって、作業装置2が圃場の地面に着地し、又は作業装置2が圃場の地面から離間する。
作業装置2により対地作業を行わない場合、昇降制御部40Dが、昇降装置8により作業装置2を上昇させて、作業装置2を圃場の地面から離れた所定の高さの位置に設定する。例えば、作業装置2により対地作業を行わない場合の作業装置2の昇降位置(地面又は路面からの高さ)は、作業装置2により対地作業を行う場合の作業装置2の昇降位置より高く設定される。
【0146】
図11A及び
図11Bは、農業機械1の走行状態と作業装置2の昇降位置の一例を示す図である。
図12は、農業機械1の走行位置と作業装置2の昇降位置の変化の一例を示す図である。
図11A及び
図11Bに示す農業機械1の走行状態及び作業装置2の昇降位置は、
図12に示す農業機械1の走行状態及び作業装置2の昇降位置と対応している。
図12に示すグラフでは、横軸が、走行車体3の走行位置を表し、縦軸が、作業装置2の昇降位置(走行車体3が位置している路面からの高さ)を表している。また、
図12のグラフ中に示す太い実線が、農業機械1の走行位置に対する作業装置2の昇降位置の変化を表している。(後述する
図14も同様である。)
【0147】
例えば
図11A及び
図11Bに示すように、農業機械1(走行車体3)が自動運転で前進(前方に走行)して、圃場Hから上り坂状の出入口SLを通って、圃場H外にある農道Jに出る際に、昇降制御部40Dは、測位装置41kにより検出された走行車体3の位置を取得する。また、昇降制御部40Dは、情報取得部40Iにより予め取得された圃場情報に含まれる圃場H、出入口SL、及び農道Jの位置と傾斜角度θh、θs、θjとを取得する。さらに、昇降制御部40Dは、情報取得部40Iにより予め取得された作業装置2に関する情報を取得する。
【0148】
図11A~
図12の例では、自動運転制御部40Eは、作業装置2により対地作業を行わずに、走行車体3の自動運転を制御する第2運転制御を実行している。即ち、自動運転制御部40Eが、作業装置2により対地作業を行いながら、走行車体の自動運転を制御する第1運転制御から、第2運転制御に移行した後の農業機械1の走行状態を、
図11A~
図12は示している。
【0149】
例えば
図5Cに示す圃場Hにおいて、農業機械1(走行車体3)は作業装置2を牽引して、作業開始地点ST1から作業終了時点EN1に亘って走行しながら対地作業を行う。そして、当該対地作業の終了後に、農業機械1(走行車体3)が作業終了時点EN1から出入口SLに向かって走行する際に、まず昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第1位置S1に設定する。
【0150】
第1位置S1は、作業装置2が圃場Hの路面Khから離間する位置であって、対地作業時の作業装置2の昇降位置より高い位置である。即ち、第1位置S1は、対地作業終了に作業装置2を圃場Hの路面Khに接触させることなく、走行車体3を走行させるための位置である。第1位置S1は、例えば圃場Hでの非対地作業用の作業装置2の昇降位置として、作業装置2に関する情報に含まれる作業装置2の仕様(形状、重量)などに基づいて予め決定されて、記憶部45などに記憶されていてもよい。そして、圃場Hでの非対地作業時に、昇降制御部40Dが記憶部45などから第1位置S1を読み出して、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第1位置S1に設定するようにしてもよい。
【0151】
対地作業の終了後、走行車体3が傾斜した出入口SLの路面Ks(第2路面)に向かって、圃場Hの路面Kh(第1路面)を走行しているときに(
図11A(a)、地点P22より左側)、昇降制御部40Dは、出入口SLに対する走行車体3の位置の相対変化として、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLs(地点P22)までの距離を所定の周期で算出する。そして、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θsと走行車体3の位置から始端部SLsまでの距離とに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を設定(変更)する。
【0152】
詳しくは、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離が第1閾値未満になると(
図11A及び
図12の地点P21~地点P22)、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θsに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第2位置S2に設定する。即ち、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLs(地点P22)までの距離が第1閾値未満になった時点で、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第1位置S1から第2位置S2に変更し始める。
【0153】
第2位置S2は、作業装置2が路面Khから離間する位置であって、第1位置S1より高い位置である。走行車体3が圃場Hから出入口SLへ走行して、作業装置2が圃場Hの路面Kh上から出入口SLの路面Ks上に移動する際に、作業装置2が路面Khに当たらず、農業機械1の安定性を低下させるぐらい農業機械1の重心の位置が高くならない作業装置2の位置に、第2位置S2は決定される。
【0154】
昇降制御部40Dは、そのような第2位置S2を出入口SLの傾斜角度θsと作業装置2の仕様とに基づいて算出し、当該第2位置S2に作業装置2が位置するように、昇降装置8のリフトシリンダ8eの伸縮量を制御する。また、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θsと、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離とに基づいて、走行車体3が始端部SLsに近づくに連れて、昇降装置8により作業装置2を上方に徐々に揺動(移動)させて、第2位置S2に位置させる(
図12の地点P21~地点P22、
図11A(b))。例えば走行車体3の位置が出入口SLの始端部SLsに到達したときに、作業装置2は第2位置S2に到達する。
【0155】
即ち、走行車体3の前輪が出入口SLの始端部SLsを通過してから、走行車体3の後輪が始端部SLsを通過するまでの、走行車体3の姿勢が変化する際に、作業装置2が圃場Hの路面Kh及び出入口SLの路面Ksに接触しないように、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第2位置S2に設定する。これにより、農業機械1(走行車体3)が対地作業を終了した地点EN1(
図5C)から走行して、出入口SLに到達するまでの間に、作業装置2の昇降位置は、少なくとも第1位置S1と第2位置S2との2段階に切り替えられる。また、作業装置2の昇降位置の切り替えにおいて、第1位置S1は傾斜角度θsに関わらず、走行車両2が非対地状態で走行できるように設定され、第2位置S2は出入口SLの傾斜角度θsに応じて設定される。
【0156】
走行車体3が出入口SLを登坂走行し始めると、昇降制御部40Dは、出入口SLに対する走行車体3の位置の相対変化として、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離と終端部SLe(地点P25)までの距離とを所定の周期で算出する。そして、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θsと、走行車体3の位置から始端部SLs及び終端部SLeまでの距離とに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を設定する。
【0157】
詳しくは、走行車体3が出入口SLを登坂走行し始めてから、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離が第2閾値未満であるときに(
図11A(c)及び
図12の地点P22~地点P23)、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第2位置S2に維持する。
そして、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離が第2閾値以上になると(
図11B及び
図12の地点P23)、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θsに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第3位置S3に設定する。
【0158】
第3位置S3は、第2位置S2より低くて第1位置S1より高い位置である。走行車体3が出入口SLを走行する際に、作業装置2が出入口SLの路面Ksに当たらず、農業機械1の安定性を低下させるぐらい農業機械1の重心の位置が高くならない作業装置2の位置に、第3位置S3は決定される。
昇降制御部40Dは、そのような第3位置S3を出入口SLの傾斜角度θsと作業装置2の仕様とに基づいて算出し、当該第3位置S3に作業装置2が位置するように、昇降装置8のリフトシリンダ8eの伸縮量を制御する。また、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θsと、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離とに基づいて、走行車体3が始端部SLsから離れるに連れて、昇降装置8により作業装置2を下方に徐々に揺動(移動)させて、第3位置S3に位置させる(
図11B(d)及び
図12の地点P23~地点P24)。
【0159】
この後、走行車体3が出入口SLを登坂走行している間は(
図11B(d)及び
図12の地点P24~地点P25)、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第3位置S3に維持する。
そして、走行車体3が出入口SLを通過したときに(
図11B及び
図12の地点P25)、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第4位置S4に設定する。
【0160】
第4位置S4は、作業装置2が農道Jの路面Kjから離間する位置であって、第3位置S3より低い位置である。第4位置S4は、例えば農道J用の作業装置2の昇降位置として、作業装置2の仕様などに基づいて予め設定され、記憶部45などに記憶されていてもよい。そして、農道Jの走行時に、昇降制御部40Dが記憶部45から第4位置S4を読み出して、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第4位置S4に設定するようにしてもよい。
【0161】
昇降制御部40Dは、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離に基づいて、走行車体3が出入口SLから離れるに連れて、昇降装置8により作業装置2を下方に徐々に揺動させて、第4位置S4に位置させる(
図11B及び
図12の地点P25~地点P26)。
その後、走行車体3が農道Jを走行しているときに(
図11B(e)及び
図12の地点P26より右側)、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第4位置S4に維持する。
【0162】
上述した作業装置2の昇降位置S1~S4は一例であって、上述した高さに限定されない。例えば、走行車体3が傾斜した出入口SLを走行しているときの作業装置2の第3位置S3は、走行車体3に対して第1位置S1と同一位置又は第1位置S1より低い位置であってもよい。また、第4位置S4は、走行車体3に対して第1位置S1と同一位置若しくは第1位置S1より低い位置であってもよいし、又は走行車体3に対して第3位置S3と同一位置若しくは第3位置S3より高い位置であってもよい。また、走行車体3が圃場Hの出入口SLから遠く離れた圃場H又は農道Jなどの路面を、対地作業を行わずに走行しているときには、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第1位置S1又は第4位置S4と異なる位置に設定してもよい。
【0163】
図13A及び
図13Bは、農業機械1の走行状態と作業装置2の昇降位置の他の例を示す図である。
図14は、農業機械1の走行位置と作業装置2の昇降位置の変化の他の例を示す図である。
図13A及び
図13に示す農業機械1の走行状態及び作業装置2の昇降位置は、
図14に示す農業機械1の走行状態及び作業装置2の昇降位置と対応している。
例えば
図13A及び
図13Bに示すように、農業機械1が自動運転で前進して、農道Jから下り坂状の出入口SLを通って、圃場Hに入る際に、昇降制御部40Dは、測位装置41kにより検出された走行車体3の位置を取得する。また、昇降制御部40Dは、情報取得部40Iにより予め取得された圃場情報に含まれる農道J、出入口SL、及び圃場Hの位置と傾斜角度θj、θs、θhとを取得する。さらに、昇降制御部40Dは、情報取得部40Iにより予め取得された作業装置2に関する情報を取得する。
【0164】
図13A~
図14の例では、自動運転制御部40Eは、作業装置2により対地作業を行わずに、走行車体3の自動運転を制御する第2運転制御を実行している。即ち、自動運転制御部40Eが第2運転制御から、作業装置2により対地作業を行いながら走行車体の自動運転を制御する第1運転制御に移行する前の農業機械1の走行状態を、
図13A~
図14は示している。
【0165】
農業機械1(走行車体3)が傾斜した出入口SLに向かって農道Jを走行する際に、まず昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第1位置S1aに設定する。第1位置S1aは、作業装置2が圃場Hの路面Khから離間する位置であって、対地作業時の作業装置2の昇降位置より高い位置である。即ち、第1位置S1aは、作業装置2を農道Jの路面Kjに接触させることなく、走行車体3を走行させるための位置である。第1位置S1aは、例えば農道J用の作業装置2の昇降位置として、作業装置2の仕様などに基づいて予め設定され、記憶部45などに記憶されていてもよい。そして、農道Jの走行時に、昇降制御部40Dが記憶部45から第1位置S1aを読み出して、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第1位置S1aに設定するようにしてもよい。
走行車体3が傾斜した出入口SLの路面Ks(第2路面)に向かって、農道Jの路面Kj(第1路面)を走行しているときに(
図13A(a)、地点P32より左側)、昇降制御部40Dは、出入口SLに対する走行車体3の位置の相対変化として、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLs(地点P32)までの距離を所定の周期で算出する。そして、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θsと走行車体3の位置から始端部SLsまでの距離とに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を設定(変更)する。
【0166】
詳しくは、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離が第1閾値未満になると(
図13A及び
図14の地点P31~地点P32)、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θsに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第2位置S2aに設定する。即ち、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLs(地点P32)までの距離が第1閾値未満になった時点で、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第1位置S1aから第2位置S2aに変更し始める。
【0167】
第2位置S2aは、作業装置2が農道Jの路面Kjから離間する位置であって、第1位置S1aより高い位置である。走行車体3が農道Jから出入口SLへ走行して、作業装置2が農道Jの路面Kj上から出入口SLの路面Ks上に移動する際に、作業装置2が路面Kjに当たらず、農業機械1の安定性を低下させるぐらい農業機械1の重心の位置が高くならない作業装置2の位置に、第2位置S2aは決定される。
【0168】
昇降制御部40Dは、そのような第2位置S2aを出入口SLの傾斜角度θsと作業装置2の仕様とに基づいて算出し、当該第2位置S2aに作業装置2が位置するように、昇降装置8のリフトシリンダ8eの伸縮量を制御する。また、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θsと、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離とに基づいて、走行車体3が始端部SLsに近づくに連れて、昇降装置8により作業装置2を上方に徐々に揺動させて、第2位置S2aに位置させる(
図14の地点P31~地点P32)。例えば走行車体3の位置が出入口SLの始端部SLs(地点P32)に到達したときに、作業装置2は第2位置S2aに到達する。
【0169】
即ち、走行車体3の前輪が出入口SLの始端部SLsを通過してから、走行車体3の後輪が始端部SLsを通過するまでの、走行車体3の姿勢が変化する際に、作業装置2が農場Jの路面Kj及び出入口SLの路面Ksに接触しないように、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第2位置S2aに設定する。これにより、農業機械1(走行車体3)が農道Jを走行して出入口SLに到達するまでの間に、作業装置2の昇降位置は、少なくとも第1位置S1aと第2位置S2aとの2段階に切り替えられる。また、作業装置2の昇降位置の切り替えにおいて、第1位置S1aは傾斜角度θsに関わらず、走行車両2が非対地状態で走行できるように設定され、第2位置S2aは出入口SLの傾斜角度θsに応じて設定される。
【0170】
走行車体3が出入口SLを下り走行し始めると、昇降制御部40Dは、出入口SLに対する走行車体3の位置の相対変化として、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLe(地点P34)までの距離を所定の周期で算出する。そして、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θsと、走行車体3の位置から終端部SLeまでの距離とに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を設定する。
【0171】
詳しくは、走行車体3が出入口SLを下り走行し始めてから、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離が第2閾値以上であるときは(
図13A(c)及び
図14の地点P32~地点P33)、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第2位置S2aに維持する。
そして、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離が第2閾値未満になると(
図13B(d)及び
図14の地点P33~地点P34)、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θsに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第3位置S3aに設定する。即ち、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLe(地点P34)までの距離が第2閾値未満になった時点で、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第2位置S2aから第3位置S3aに変更し始める。
【0172】
第3位置S3aは、第2位置S2aより高い位置である。走行車体3が出入口SLを走行する際に、作業装置2が出入口SLの路面Ksに当たらず、農業機械1の安定性を低下させるぐらい農業機械1の重心の位置が高くならない作業装置2の位置に、第3位置S3aは決定される。
昇降制御部40Dは、そのような第3位置S3aを出入口SLの傾斜角度θsと作業装置2の仕様とに基づいて算出し、当該第3位置S3aに作業装置2が位置するように、昇降装置8のリフトシリンダ8eの伸縮量を制御する。また、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θsと、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離とに基づいて、走行車体3が始端部SLsに近づくに連れて、昇降装置8により作業装置2を上方に徐々に揺動させて、第3位置S3aに位置させる(
図14の地点P33~地点P34)。例えば走行車体3の位置が出入口SLの終端部SLe(地点P34)に到達したときに、作業装置2は第3位置S3aに到達する。
【0173】
即ち、走行車体3の前輪が出入口SLの終端部SLeを通過してから、走行車体3の後輪が終端部SLeを通過するまでの、走行車体3の姿勢が変化する際に、作業装置2が出入口SLの路面Ks及び圃場Hの路面Khに接触しないように、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第3位置S3aに設定する。これにより、農業機械1(走行車体3)が農道Jから出入口SLを通って圃場Hに到達するまでの間に、作業装置2の昇降位置は、少なくとも第1位置S1aと第2位置S2aと第3位置S3aの3段階に切り替えられる。また、作業装置2の昇降位置の切り替えにおいて、第3位置S3aは出入口SLの傾斜角度θsに応じて設定される。
【0174】
走行車体3が出入口SLを通過して圃場Hを走行し始めた後、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離が第2閾値未満であるときに(
図13B(e)及び
図14の地点P34~地点P35)、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第3位置S3aに維持する。
そして、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離が第2閾値以上になると(
図13B(f)及び
図14の地点P35より右側)、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第4位置S4aに設定する。
【0175】
第4位置S4aは、作業装置2が圃場Hの路面Khから離間する位置であって、第3位置S3aより低い位置である。第4位置S4aは、例えば圃場Hでの非対地作業用の作業装置2の昇降位置として、作業装置2の仕様などに基づいて予め決定されて、記憶部45などに記憶されていてもよい。そして、圃場Hでの非対地作業時に、昇降制御部40Dが記憶部45などから第4位置S4aを読み出して、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第4位置S4aに設定するようにしてもよい。
【0176】
昇降制御部40Dは、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離(出入口SLに対する走行車体3の位置の相対変化)に基づいて、走行車体3が出入口SLから離れるに連れて、昇降装置8により作業装置2を下方に徐々に揺動させて、第4位置S4aに位置させる(
図14の地点P35~地点P36)。
その後、走行車体3が出入口SLに向かうことなく圃場Hを走行しているときに(
図14の地点P36より右側)、作業装置2で対地作業を行わない間は、昇降制御部40Dは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第4位置S4aに維持する。
【0177】
上述した作業装置2の昇降位置S1a~S4aは一例であって、上述した高さに限定されない。例えば、農業機械1が出入口SLを下り走行する際に、農業機械1の重心が高くなって、農業機械1が不安定になるのを防ぐ等のため、第2位置S2aは、走行車体3に対して第1位置S1aと同一位置又は第1位置S1aより低い位置であってもよい。また、第4位置S4aは、走行車体3に対して第1位置S1aと同一位置若しくは第1位置S1aより低い位置であってもよいし、又は走行車体3に対して第2位置S2aと同一位置若しくは第2位置S2aより高い位置であってもよい。また、走行車体3が圃場Hの出入口SLから遠く離れた圃場H又は農道Jなどの路面を、対地作業を行わずに走行しているときには、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第4位置S4a又は第1位置S1aと異なる位置に設定してもよい。
【0178】
また、昇降制御部40Dが、出入口SLの傾斜角度θs又は作業装置2の仕様(前後方向の長さ、高さ、重量、形状など)に基づいて、出入口SLに対する走行車体3の位置の相対変化(距離と方向)と比較する第1~第4閾値を変更してもよい。第1~第4閾値を変更することで、作業装置2の昇降位置S1~S4、S1a~S4aを設定しておく継続時間を調整することができる。
【0179】
上述した実施形態では、農業機械1が圃場Hの傾斜した出入口SLを走行する際とその前後の走行中において、昇降装置8により作業装置2を昇降させる場合を例に挙げたが、圃場Hの出入口SL以外の傾斜した路面を農業機械1が走行する際とその前後においても、上述したように当該路面の傾斜角度、当該路面に対する走行車体3の位置の相対変化、及び作業装置2の仕様などに基づいて、昇降装置8により作業装置2を昇降させてもよい。
【0180】
上述した実施形態では、走行車体3の後方に作業装置2を連結した農業機械1を例に挙げたが、走行車体の前方又は側方に作業装置を連結した農業機械において、走行する路面の状態などに応じて作業装置を昇降させてもよい。
上述した実施形態では、農業機械1の自動運転での前進時に、走行する路面の状態などに応じて、作業装置2を自動で昇降させる例を示したが、例えば農業機械の手動運転での前進時若しくは後進時、又は自動運転での後進時にも、走行する路面の状態などに応じて、作業装置2を自動で昇降させてもよい。
【0181】
<本実施形態の効果>
<センシング調整に関して>
以上説明した本実施形態の農業機械1は、以下の構成を備え、効果を奏する。
本実施形態の農業機械1は、走行可能な走行車体3と、走行車体3の周囲をセンシングするセンシング装置41Lと、センシング装置41Lのセンシング方向を調整可能なセンシング調整部40Hと、走行車体3の位置を測位する測位装置41kと、圃場Hの出入口SLに関する情報を取得する情報取得部40Iと、を備え、センシング調整部40Hは、走行車体3が出入口SLに向かって走行し、且つ測位装置41kが検出した走行車体3の位置から情報取得部40Iが取得した前記情報に含まれる出入口SLまでの距離が所定値以下である場合に、センシング方向を出入口SLの終端部SLeに向ける第1調整を行い、走行車体3が出入口SLを走行している場合に、センシング方向を出入口SLの終端部SLe又は当該終端部SLeより走行方向に対して前方に向ける第2調整を行う。
【0182】
上記によると、農業機械1の走行車体3が走行して圃場Hの出入口SLに近づいたときに、センシング装置41Lのセンシング方向が出入口SLの終端部SLeへ向き、走行車体3が出入口SLを走行しているときに、センシング方向が出入口SLの終端部SLe又は終端部SLeより前方へ向く。このため、出入口SLと出入口SLの前方にある対象物を、センシング装置41Lにより検出することができる。この結果、農業機械1が走行する圃場Hと出入口SLなどの路面Kh、Ksの状態(傾斜角度θh、θsなど)が変化しても、センシング装置41Lの検出性能を高く確保することができ、農業機械1の安定な走行を実現可能となる。
【0183】
本実施形態では、センシング調整部40Hは、走行車体3が出入口SLを走行し、且つ走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離が所定値以下である場合に、センシング方向を出入口SLの終端部SLeより前方に向ける第3調整を行い、走行車体3が走行して出入口SLを通過した場合に、センシング方向を走行車体3の走行方向に対して前方に向ける第4調整を行う。
【0184】
上記によると、農業機械1の走行車体3が圃場Hの出入口SLを走行して、出入口SLの終端部SLeに近づいたときに、センシング装置41Lのセンシング方向が出入口SLの終端部SLeより前方へ向き、走行車体3が出入口SLを通過したときに、センシング方向が走行車体3の前方を向く。このため、出入口SLの前方にある対象物をセンシング装置41Lにより検出することができる。この結果、農業機械1が走行する出入口SLとこの前方にある農道Jなどの路面Ks、Kiの状態が変化しても、センシング装置41Lの検出性能を高く確保することができ、農業機械1の安定な走行を実現可能となる。
【0185】
本実施形態では、走行車体3に連結された作業装置2により対地作業を行いながら、走行車体3の自動運転を制御する第1運転制御と、作業装置2により対地作業を行わずに、走行車体3の自動運転を制御する第2運転制御とを実行する自動運転制御部40Eを備え、自動運転制御部40Eによる第2運転制御から第1運転制御への移行前又は第1運転制御から第2運転制御への移行後において、センシング調整部40Hは、走行車体3が第2運転制御により出入口SLに向かって走行し、且つ走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離が所定値以下である場合に、第1調整によりセンシング装置41Lのセンシング範囲Eを上方又は下方に移動させることによって、センシング方向の少なくとも一部を出入口SLの終端部SLeと当該終端部SLeの付近の路面Ks、Khとに向け、走行車体3が第2運転制御により出入口SLを走行している場合に、第2調整によりセンシング範囲Eを上方又は下方に移動させることによって、センシング方向の少なくとも一部を出入口SLの終端部SLeと当該終端部SLeの付近にある路面Ksに向ける。
【0186】
上記によると、農業機械1が第1運転制御で圃場Hに対して対地作業を行う前に、第2運転制御で圃場Hへ入る場合、又は農業機械1が第1運転制御で圃場Hに対して対地作業を行った後に、第2運転制御で圃場Hから出る場合に、走行車体3が出入口SLに近づいたときに、センシング装置41Lのセンシング範囲Eが上下に移動して、センシング方向の少なくとも一部が出入口SLの終端部SLeと当該終端部SLeの付近の路面Ks、Khへ向く。また、走行車体3が第2運転制御で出入口SLを走行しているときに、センシング範囲Eが上下に移動して、センシング方向の少なくとも一部が出入口SLの終端部SLeと当該終端部SLeの付近にある路面Ksを向く。このため、農業機械1が第2運転制御で出入口SLを走行する前と走行中に、出入口SLと出入口SLの前方にある対象物をセンシング装置41Lにより検出して、センシング装置41Lの検出性能を高く確保することができ、農業機械1の安定な走行を実現可能となる。
【0187】
本実施形態では、センシング調整部40Hは、走行車体3が第2運転制御により出入口SLを走行し、且つ走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離が所定値以下である場合に、センシング範囲Eを上方又は下方に移動させることによって、センシング方向の少なくとも一部を出入口SLの終端部SLeより前方と当該前方にある路面Ks、Kjとに向ける第3調整を行い、走行車体3が第2運転制御により出入口SLを通過した場合に、センシング範囲Eを上方又は下方に移動させることによって、センシング方向の少なくとも一部を走行車体3の走行方向に対して前方と当該前方にある路面Kjとに向ける第4調整を行う。
【0188】
上記により、農業機械1の走行車体3が第2運転制御で出入口SLを走行して、出入口SLの終端部SLeに近づいたときに、センシング装置41Lのセンシング範囲Eが上下に移動して、センシング方向の少なくとも一部が出入口SLの終端部SLeの前方と当該前方にある路面Ks、Kjとへ向く。また、走行車体3が第2運転制御で出入口SLを通過しているときに、センシング範囲Eが上下に移動して、センシング方向の少なくとも一部が走行車体3の走行方向に対して前方と当該前方にある路面Kjとへ向く。このため、農業機械1が第1運転制御で圃場Hに対して対地作業を行う前又は行った後に、第2運転制御で出入口SLを通過する前後に、農業機械1の前方にある対象物をセンシング装置41Lにより検出して、センシング装置41Lの検出性能を高く確保することができ、農業機械1の安定な走行を実現可能となる。
【0189】
本実施形態では、センシング調整部40Hは、走行車体3が出入口SL以外に向かって走行している場合、又は走行車体3が出入口SLに向かって走行し、且つ走行車体3の位置から出入口SLの位置までの距離が所定値より大きい場合に、センシング方向を走行車体3の走行方向に対して前方と当該前方にある路面Kh、Ks、Kjとに向ける。
上記により、農業機械1が圃場Hの出入口SLから離れた場所を走行中に、センシング装置41Lのセンシング方向が走行車体3の走行方向に対して前方と当該前方にある路面Kh、Ks、Kjとへ向く。このため、前方にある対象物をセンシング装置41Lにより検出して、センシング装置41Lの検出性能を高く確保することができ、農業機械1が安定に走行可能になる。
【0190】
本実施形態では、情報取得部40Iは、出入口SLの傾斜角度θsを取得し、センシング調整部40Hは、傾斜角度θsが閾値以上である場合に、傾斜角度θsに基づいてセンシング方向の調整を行う。これにより、圃場Hの出入口SLの傾斜角度θsが大きい場合には、農業機械1が出入口SLを走行する際とその前後において、出入口SLの傾斜角度θsに応じてセンシング装置41Lのセンシング方向を自動で調整して、センシング装置41Lの検出性能を高く確保することができる。また、圃場Hの出入口SLの傾斜角度θsが小さい場合には、センシング装置41Lのセンシング方向を無駄に調整せず、センシング調整部40H及びセンシング装置41Lの処理負担を軽減することができる。
【0191】
例えば、農業機械1の走行中に、センシング装置41Lで農業機械1の周囲をセンシングした結果に基づいて、センシング方向の調整を行ってもよい。この場合、周囲の路面Kh、Ks、Kjなどの状態をセンシング装置41Lで正常に検出することができれば、リアルタイムで路面Kh、Ks、Kjの状態に応じてセンシング方向の調整することが可能になる。リアルタイムでセンシング方向の調整することが可能になる。しかし、
図9で説明したように、農業機械1が圃場Hの出入口SLを走行する前と走行中などでは、センシング装置41Lで周囲の状態を正常に検出することができないことがあり、この場合、センシング装置41Lのセンシング方向を適切に調整することもできなくなる。
【0192】
それに対し、本実施形態では、情報取得部40Iは、センシング調整部40Hがセンシング方向の調整を行うよりも前に、圃場Hに関する情報を記憶した記憶部45(他に、外部機器56の記憶部、サーバ、作業装置2のメモリ)から出入口SLに関する情報を取得する。これにより、農業機械1が圃場Hの出入口SLを走行する際とその前後において、情報取得部40Iにより予め取得された出入口SLに関する情報に基づいて、センシング装置41Lのセンシング方向を適切に調整することができ、センシング装置41Lの検出性能を確実に高く確保することが可能となる。
【0193】
本実施形態の農業機械1は、走行可能な走行車体3と、走行車体3の周囲をセンシングするセンシング装置41Lと、センシング装置41Lのセンシング範囲Eを調整可能なセンシング調整部40Hと、走行車体3の位置を測位する測位装置41kと、走行車体3が走行する路面Kh、Ks、Kjに関する情報を取得する情報取得部40Iと、を備え、センシング調整部40Hは、走行車体3の走行中に、情報取得部40Iが予め取得した前記情報に基づいて、走行車体3から走行方向に対して前方に所定距離離れた地点P2、P5、P12、P15までにある第1路面Kh、Ks、Kjと、地点P2、P5、P12、P15より走行方向に対して前方にある第2路面Ks、Kj、Khとの上下方向の角度差Δθを検出し、当該角度差Δθと、測位装置41kが検出した走行車体3の位置の地点P2、P5、P12、P15に対する相対変化とに基づいて、センシング範囲Eを上下に移動させる調整を行う。
【0194】
上記により、農業機械1の走行車体3が第1路面Kh、Ks、Kjから第2路面Ks、Kj、Khへ走行する際に、第1路面Kh、Ks、Kjと第2路面Ks、Kj、Khとの角度差Δθと、これらの路面Kh、Ks、Kjに対する走行車体3の位置の相対変化とに応じて、センシング装置41Lのセンシング範囲Eが上下に移動して適切に調整される。このため、第1路面Kh、Ks、Kjと、第2路面Ks、Kj、Khと、第2路面Ks、Kj、Khの前方とを順に走査して、これらにある対象物をセンシング装置41Lにより検出することができる。この結果、農業機械1が走行する路面Kh、Ks、Kjの状態が変化しても、センシング装置41Lの検出性能を高く確保することができ、農業機械1の安定な走行を実現可能となる。
【0195】
本実施形態では、センシング調整部40Hは、第2路面Ks、Kj、Khが第1路面Kh、Ks、Kjに対して上方に傾斜している場合、第1路面Kh、Ks、Kj上にある走行車体3の位置が、第1路面Kh、Ks、Kjと第2路面Ks、Kj、Khとの接続部分である地点P2、P5、P12、P15に近づくに連れて、角度差Δθに基づいてセンシング範囲Eを上方に揺動させる調整を行い、第2路面Ks、Kj、Kh上にある走行車体3の位置が地点P2、P5、P12、P15から離れるに連れて、センシング範囲Eを下方に揺動させて上方への揺動前の位置に戻す調整を行う。
【0196】
上記により、農業機械1の走行車体3が第1路面Kh、Ks、Kjから上方へ傾斜した第2路面Ks、Kj、Khへ走行する際に、第1路面Kh、Ks、Kjと第2路面Ks、Kj、Khとの角度差Δθと、これらの路面Kh、Ks、Kjに対する走行車体3の位置の相対変化とに応じて、センシング装置41Lのセンシング範囲Eが上下に揺動して適切に調整される。このため、第1路面Kh、Ks、Kjと、上方へ傾斜した第2路面Ks、Kj、Khと、当該第2路面Ks、Kj、Khの前方とを順で且つ着実に走査して、これらにある対象物をセンシング装置41Lにより確実に検出することができる。この結果、農業機械1が走行する路面Kh、Ks、Kjの傾斜角度が変化しても、センシング装置41Lの検出性能をより高く確保することができ、農業機械1の安定な走行を実現可能となる。
【0197】
本実施形態では、センシング調整部40Hは、第2路面Ks、Kj、Khが第1路面Kh、Ks、Kjに対して下方に傾斜している場合、第1路面Kh、Ks、Kj上にある走行車体3の位置が、第1路面Kh、Ks、Kjと第2路面Ks、Kj、Khとの接続部分である地点P2、P5、P12、P15に近づくに連れて、前記角度差Δθに基づいてセンシング範囲Eを下方に揺動させる調整を行い、第2路面Ks、Kj、Kh上にある走行車体3の位置が地点P2、P5、P12、P15から離れるに連れて、センシング範囲Eを上方に揺動させて前記下方への揺動前の位置に戻す調整を行う。
【0198】
上記により、農業機械1の走行車体3が第1路面Kh、Ks、Kjから下方へ傾斜した第2路面Ks、Kj、Khへ走行する際に、第1路面Kh、Ks、Kjと第2路面Ks、Kj、Khとの角度差Δθと、これらの路面Kh、Ks、Kjに対する走行車体3の位置の相対変化とに応じて、センシング装置41Lのセンシング範囲Eが上下に揺動して適切に調整される。このため、第1路面Kh、Ks、Kjと、下方へ傾斜した第2路面Ks、Kj、Khと、当該第2路面Ks、Kj、Khの前方とを順で且つ着実に走査して、これらにある対象物をセンシング装置41Lにより確実に検出することができる。この結果、農業機械1が走行する路面Kh、Ks、Kjの傾斜角度が変化しても、センシング装置41Lの検出性能をより高く確保することができ、農業機械1の安定な走行を実現可能となる。
【0199】
本実施形態では、センシング調整部40Hは、走行車体3が第2路面Ks、Kj、Khに向かって第1路面Kh、Ks、Kjを走行しているときは、センシング範囲Eと当該センシング範囲Eを形成するセンシング方向の少なくとも一部とを第2路面Ks、Kj、Khの終端部に向け、走行車体3が第2路面Ks、Kj、Khを走行しているときは、センシング範囲Eとセンシング方向の少なくとも一部とを第2路面Ks、Kj、Khの終端部又は当該終端部より走行方向に対して前方に向ける。
【0200】
上記により、農業機械1の走行車体3が第2路面Ks、Kj、Khに向かって第1路面Kh、Ks、Kjを走行しているときと、第2路面Ks、Kj、Khを走行しているときに、第1路面Kh、Ks、Kjと、第2路面Ks、Kj、Khと、当該第2路面Ks、Kj、Khの前方とにある対象物を、センシング装置41Lにより確実に検出することができる。このため、センシング装置41Lの検出性能をより高く確保することが可能となる。
【0201】
本実施形態では、情報取得部40Iは、センシング調整部40Hがセンシング範囲Eの調整を行うよりも前に、圃場Hに関する情報を記憶した記憶部45(他に、外部機器56の記憶部、サーバ、作業装置2のメモリ)から路面Kh、Ks、Kjに関する情報を取得する。これにより、農業機械1が路面Kh、Ks、Kjを走行する際とその前後において、情報取得部40Iにより予め取得された路面Kh、Ks、Kjに関する情報に基づいて、センシング装置41Lのセンシング方向を適切に調整することができ、センシング装置41Lの検出性能を確実に高く確保することが可能となる。
【0202】
本実施形態では、センシング調整部40Hは、前記調整を行った結果に基づいて、センシング装置41Lのセンシング結果を補正し、農業機械1は、センシング装置41Lのセンシング結果及び補正後のセンシング結果に基づいて、走行車体3の走行を制御する走行制御部(自動運転制御部)40Eを備える。これにより、センシング装置41Lのセンシング方向及びセンシング範囲Eの調整結果に応じて、センシング装置41Lのセンシング結果が補正されるので、センシング装置41Lによる対象物の検出性能を高く確保することができる。また、このように対象物の検出性能が高いセンシング装置41Lのセンシング結果に基づいて、走行車体3の走行が制御されるので、農業機械1の安定な走行をより実現可能となる。
【0203】
<作業装置の昇降に関して>
本実施形態の農業機械1は、走行可能な走行車体3と、走行車体3に連結された作業装置2の昇降位置を変更可能な昇降装置8と、走行車体3の位置を測位する測位装置41kと、圃場Hの出入口SLに関する情報を取得する情報取得部40Iと、昇降装置8の動作を制御する昇降制御部40Dと、を備え、昇降制御部40Dは、測位装置41kが検出した走行車体3の位置と、情報取得部40Iが取得した前記情報に含まれる出入口SLの位置と傾斜角度θsとを取得し、走行車体3が出入口SLに向かって走行している場合、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離が第1閾値以上であるときに、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第1位置S1、S1aに設定し、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離が第1閾値未満であるときに、出入口SLの傾斜角度θsに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を作業装置2が路面Kh、Kjから離間する第2位置S2、S2aに設定する。
【0204】
上記により、農業機械1が圃場H又は農道Jを圃場Hの出入口SLに向かって走行しているときに、出入口SLの始端部SLsに対する農業機械1の走行車体3の位置の相対変化と、出入口SLの傾斜角度θsとに応じて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置が第1位置S1、S1a又は作業装置2が路面Khから離間する第2位置S2、S2aに設定される。このため、作業装置2が出入口SLより走行車体3側にある圃場Hの路面Kh又は農道Jの路面Kjに接触するのを回避することができ、且つ農業機械1の重心が高くなり過ぎない程度に作業装置2を昇降させて、走行車体3の安定性を確保することができる。この結果、作業装置2の高さを変えて、農業機械1の安定な走行を実現可能となる。
【0205】
本実施形態では、昇降制御部40Dは、走行車体3が上り坂状の出入口SLに向かって走行している場合、第2位置S2を第1位置S1より高くし、走行車体3が出入口SLを登坂走行している場合、走行車体3の位置から出入口SLの始端部SLsまでの距離が第1閾値未満であるときに、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第2位置S2に維持する。
【0206】
上記により、農業機械1が上り坂状の出入口SLに向かって走行して、出入口SLに近づいたときと、農業機械1が出入口SLを登坂走行し始めてから、出入口SLの始端部SLsからある程度離れるまでの間に、作業装置2の昇降位置が第2位置S2に設定される。このため、作業装置2が出入口SLより走行車体3側にある路面Khに接触するのを回避することができ、且つ農業機械1の重心が高くなり過ぎるのを抑えて、走行車体3の安定性を確保することができる。
【0207】
本実施形態では、昇降制御部40Dは、走行車体3が出入口SLを走行している場合、出入口SLの傾斜角度θsに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を作業装置2が路面Ksから離間する第3位置S3、S3aに設定する。これにより、農業機械1が出入口SLを走行しているときに、作業装置2が出入口SLの路面Ksに接触するのを回避することができ、且つ農業機械1の重心が高くなり過ぎるのを抑えて、走行車体3の安定性を確保することができる。
【0208】
本実施形態では、昇降制御部40Dは、走行車体3が出入口SLを通過した場合、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を作業装置2が路面Kj、Khから離間する第4位置S4、S4aに設定する。これにより、農業機械1が出入口SLを通過した後に、作業装置2が路面Kj、Khに接触するのを回避することができ、且つ農業機械1の重心が高くなり過ぎるのを抑えて、走行車体3の安定性を確保することができる。
【0209】
本実施形態では、昇降制御部40Dは、走行車体3が下り坂状の出入口SLを下り走行している場合、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離が、第2閾値以上であるときに、出入口SLの傾斜角度θsに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を作業装置2が路面Ksから離間する第3位置S3aに設定し、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離が第2閾値未満であるときに、出入口SLの傾斜角度θsに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第3位置S3aより高い第4位置S4aに設定し、走行車体3が出入口SLを通過した場合、走行車体3の位置から出入口SLの終端部SLeまでの距離が第2閾値未満であるときに、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第4位置S4aに維持する。
【0210】
上記により、農業機械1が下り坂状の出入口SLを下り走行しているときに、作業装置2の昇降位置が第3位置S3aに設定され、農業機械1が出入口SLの終端部SLeに近づいてからある程度離れるまでの間に、作業装置2の昇降位置が第4位置S4aに設定される。このため、作業装置2が出入口SLの路面Ksに接触するのを回避することができ、且つ農業機械1の重心が高くなり過ぎるのを抑えて、走行車体3の安定性を確保することができる。
【0211】
本実施形態では、作業装置2により対地作業を行いながら走行車体3の自動運転を制御する第1運転制御及び、対地作業を行わずに走行車体3の自動運転を制御する第2運転制御を行う自動運転制御部40Eを備え、昇降制御部40Dは、走行車体3が第2運転制御によって出入口SLに向かって走行している場合、出入口SLを走行している場合、又は出入口SLを通過して行く場合のうちの少なくともいずれかにおいて、出入口SLの傾斜角度θs、出入口SLの前後にある路面Kh、Kjの傾斜角度θh、θj、又は出入口SLに対する走行車体3の位置の相対変化に基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を設定する。
【0212】
上記により、農業機械1が第2運転制御で出入口SLを走行する際又はその前後において、走行する路面Ks、Kh、Kjの傾斜角度θs、θh、θjと出入口SLに対する走行車体3の位置の相対変化とに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を適切に設定することができる。
本実施形態では、昇降制御部40Dは、出入口SLの傾斜角度θs、出入口SLの前後にある路面Kh、Kjの傾斜角度、又は出入口SLに対する走行車体3の位置の相対変化に基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を徐々に移動させる。これにより、農業機械1が圃場H、出入口SL、及び農道Jを走行する際に、昇降装置8により作業装置2の高さ(昇降位置)を適切且つ安定に変えて、作業装置2が路面Ks、Kh、Kjに接触するのを回避することができ、且つ走行車体3の安定性を確保することができる。この結果、圃場H、出入口SL、及び農道Jにおいて、農業機械1を安定に走行させることが可能となる。
【0213】
例えば、農業機械1の走行中に、センシング装置41Lで路面Kh、Ks、Kjをセンシングした結果に基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を設定してもよい。この場合、路面Kh、Ks、Kjの状態をセンシング装置41Lで正常に検出することができれば、リアルタイムで路面Kh、Ks、Kjの状態に応じてセンシング方向の調整することが可能になる。しかし、
図9で説明したように、農業機械1が圃場Hの出入口SLを走行する前と走行中などでは、センシング装置41Lで周囲の状態を正常に検出することができないことがあり、この場合、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を適切に設定することもできなくなる。
【0214】
それに対し、本実施形態では、情報取得部40Iは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置が設定されるよりも前に、圃場Hに関する情報を記憶した記憶部45(他に、外部機器56の記憶部、サーバ、作業装置2のメモリ)から出入口SLに関する情報を取得する。これにより、農業機械1が圃場Hの出入口SLを走行する際とその前後において、情報取得部40Iにより予め取得された出入口SLに関する情報に基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を適切に設定することができ、農業機械1を安定に走行させることが可能となる。
【0215】
本実施形態の農業機械1は、走行可能な走行車体3と、走行車体3に連結された作業装置2の昇降位置を変更可能な昇降装置8と、走行車体3の位置を測位する測位装置41kと、走行車体3が走行する路面Kh、Ks、Kjに関する情報を取得する情報取得部40Iと、昇降装置8の動作を制御する昇降制御部40Dと、を備え、昇降制御部40Dは、測位装置41kが検出した走行車体3の位置と、情報取得部40Iが取得した前記情報に含まれる路面Kh、Ks、Kjの位置と傾斜角度θh、θs、θjとを取得し、走行車体3が路面Kh、Ks、Kjに含まれる第1路面Kh、Kjから第2路面Ksに向かって走行している場合、走行車体3の位置から第2路面Ksの始端部SLsまでの距離が第1閾値以上であるときに、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第1位置S1、S1aに設定し、走行車体3の位置から第2路面Ksの始端部SLsまでの距離が第1閾値未満であるときに、第2路面Ksの傾斜角度θsに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を作業装置2が路面Kh、Kjから離間する第2位置S2、S2aに設定する。
【0216】
上記により、農業機械1が第1路面Kh、Kjから第2路面Ksに向かって走行しているときに、第2路面Ksの始端部SLsに対する農業機械1の走行車体3の位置の相対変化と、第2路面Ksの傾斜角度θsとに応じて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置が第1位置S1、S1a又は作業装置2が路面Kh、Kjから離間する第2位置S2、S2aに設定される。このため、作業装置2が第2路面Ksより走行車体3側にある路面Kh、Kjに接触するのを回避することができ、且つ農業機械1の重心が高くなり過ぎない程度に作業装置2を昇降させて、走行車体3の安定性を確保することができる。この結果、作業装置2の高さを変えて、農業機械1の安定な走行を実現可能となる。
【0217】
本実施形態では、昇降制御部40Dは、走行車体3が上り坂状の第2路面Ksに向かって走行している場合、第2位置S2を第1位置S1より高くし、走行車体3が第2路面Ksを登坂走行している場合、走行車体3の位置から第2路面Ksの始端部SLsまでの距離が第1閾値未満であるときに、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第2位置S2に維持する。
【0218】
上記により、農業機械1が上り坂状の第2路面Ksに向かって走行して、第2路面Ksに近づいたときと、農業機械1が第2路面Ksを登坂走行し始めてから、第2路面Ksの始端部SLsからある程度離れるまでの間に、作業装置2の昇降位置が第2位置S2に設定される。このため、作業装置2が第2路面Ksより走行車体3側にある路面Khに接触するのを回避することができ、且つ農業機械1の重心が高くなり過ぎるのを抑えて、走行車体3の安定性を確保することができる。
【0219】
本実施形態では、昇降制御部40Dは、走行車体3が下り坂状の第2路面Ksを下り走行している場合、走行車体3の位置から第2路面Ksの終端部SLeまでの距離が、第2閾値以上であるときに、第2路面Ksの傾斜角度θsに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を作業装置2が路面Ksから離間する第3位置S3aに設定し、走行車体3の位置から第2路面Ksの終端部SLeまでの距離が第2閾値未満であるときに、第2路面Ksの傾斜角度θsに基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第3位置S3aより高い第4位置S4aに設定し、走行車体3が第2路面Ksを通過した場合、走行車体3の位置から第2路面Ksの終端部SLeまでの距離が第2閾値未満であるときに、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を第4位置S4aに維持する。
【0220】
上記により、農業機械1が下り坂状の第2路面Ksを下り走行しているときに、作業装置2の昇降位置が第3位置S3aに設定され、農業機械1が第2路面Ksの終端部SLeに近づいてからある程度離れるまでの間に、作業装置2の昇降位置が第4位置S4aに設定される。このため、作業装置2が第2路面Ksの路面Ksに接触するのを回避することができ、且つ農業機械1の重心が高くなり過ぎるのを抑えて、走行車体3の安定性を確保することができる。
【0221】
本実施形態では、情報取得部40Iは、昇降装置8により作業装置2の昇降位置が設定されるよりも前に、地図情報を記憶した記憶部45(他に、外部機器56の記憶部、サーバ、作業装置2のメモリ)から路面Kh、Ks、Kjに関する情報を取得する。これにより、農業機械1が路面Kh、Ks、Kjを走行する際とその前後において、情報取得部40Iにより予め取得された路面Kh、Ks、Kjに関する情報に基づいて、昇降装置8により作業装置2の昇降位置を適切に設定することができ、農業機械1を安定に走行させることが可能となる。
【0222】
本実施形態では、情報取得部40Iは、作業装置2に関する情報を取得し、昇降制御部40Dは、情報取得部40Iが取得した作業装置2の仕様に基づいて、作業装置2の昇降位置を設定する。これにより、作業装置2の仕様に応じて、昇降装置8により作業装置2の高さ(昇降位置)を適切に変えて、作業装置2が路面Ks、Kh、Kjに接触するのを回避することができ、且つ走行車体3の安定性を確保することができる。
【0223】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均などの意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0224】
1 農業機械
3 走行車体
40E 自動運転制御部(走行制御部)
40H センシング調整部
40I 情報取得部
41k 測位装置
41L センシング装置
45 記憶部
E、Eb センシング範囲
H 圃場
K、Kh、Ks、Kj 路面
P2、P5、P12、P15 地点
SL 出入口
SLe 終端部
SLs 始端部
θs 出入口の傾斜角度
Δθ 角度差