(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】電極体及びこれを含む円筒型リチウム電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20231120BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20231120BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20231120BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20231120BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231120BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20231120BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20231120BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20231120BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20231120BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20231120BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20231120BHJP
H01M 50/595 20210101ALN20231120BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M50/531
H01M50/586
H01M50/538
H01M10/052
H01M10/0566
H01M50/548 201
H01M4/13
H01M4/139
H01M50/534
H01M50/593
H01M50/595
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021162539
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2021-12-14
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521430357
【氏名又は名称】イーワン モリ エナジー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】E-ONE MOLI ENERGY CORP.
【住所又は居所原語表記】No. 10, Dali 2nd Rd., Shanhua Dist., Tainan City 741, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ, ジュイ-ミン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ, ツゥン-イ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ, クン-ミアオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ウェイ-ドゥン
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107834014(CN,A)
【文献】国際公開第2020/017923(WO,A1)
【文献】特開2011-023130(JP,A)
【文献】特開2000-311677(JP,A)
【文献】特開2020-107497(JP,A)
【文献】国際公開第2012/066637(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0151295(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058 - 10/0587
H01M 10/04
H01M 4/13 - 4/1399
H01M 50/531 - 50/567
H01M 50/584 - 50/597
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体を巻回することによって形成される巻回体である円筒型リチウム電池に適用される電極体であって、前記積層体は、
負極基板である負極シートであって、前記負極基板は、負極上面と、前記負極上面の反対側の負極下面とを有し、前記負極上面は、第1の負極被覆と、第1の負極被覆非形成部と、第2の負極被覆非形成部と、第3の負極被覆非形成部とを有し、前記負極下面は、第2の負極被覆と、第4の負極被覆非形成部と、第5の負極被覆非形成部と、第6の負極被覆非形成部とを有し、前記第1の負極被覆非形成部と前記第4の負極被覆非形成部とが互いに反対側にあるように配置され、前記第2の負極被覆非形成部と前記第5の負極被覆非形成部とが互いに反対側にあるように配置され、前記第3の負極被覆非形成部と前記第6の負極被覆非形成部とが互いに反対側にあるように配置された負極シートと、
前記負極シート上に配置された第1のセパレータと、
第1のセパレータ上に配置された正極基板である正極シートであって、前記正極基板は、正極上面と、前記正極上面の反対側の正極下面とを有し、前記正極下面は、前記負極上面に対向し、前記正極上面は、第1の正極被覆と、第1の正極被覆非形成部と、第2の正極被覆非形成部と、第3の正極被覆非形成部とを有し、前記正極下面は、第2の正極被覆と、第4の正極被覆非形成部と、第5の正極被覆非形成部と、第6の正極被覆非形成部と
を有し、前記第1の正極被覆非形成部と前記第4の正極被覆非形成部とが互いに反対側にあるように配置され、前記第2の正極被覆非形成部と前記第5の正極被覆非形成部とが千鳥状に配置され、前記第3の正極被覆非形成部と前記第6の正極被覆非形成部とが互いに反対側にあるように配置された正極シートと、
複数のカソードタブであって、前記複数のカソードタブのうちの第1のカソードタブの一端が前記第1の正極被覆非形成部又は前記第4の正極被覆非形成部に接続され、前記複数のカソードタブのうちの第2のカソードタブの一端が前記第3の正極被覆非形成部又は前記第6の正極被覆非形成部に接続され、前記第1のカソードタブの他端及び前記第2のカソードタブの他端がそれぞれ前記巻回体の一端から外方に突出している複数のカソードタブと、
複数のアノードタブであって、前記複数のアノードタブのうちの第1のアノードタブの一端が前記第1の負極被覆非形成部又は前記第4の負極被覆非形成部に接続され、前記複数のアノードタブのうちの第2のアノードタブの一端が前記第2の負極被覆非形成部又は前記第5の負極被覆非形成部に
接続され、前記複数のアノードタブのうちの第3のアノードタブの一端が前記第3の負極被覆非形成部又は前記第6の負極被覆非形成部に接続され、前記第1のアノードタブの他端、前記第2のアノードタブの他端、及び前記第3のアノードタブの他端がそれぞれ前記巻回体の他端から外方に突出している複数のアノードタブと、
を備え、
前記負極シートは、巻回始端と末尾端とを有し、前記第1の負極被覆非形成部は、前記負極シートの前記巻回始端に配置され、前記第2の負極被覆非形成部は、前記負極シートの前記巻回始端から1/3の距離と2/3の距離との間に配置され、前記第3の負極被覆非形成部は、前記負極シートの前記末尾端に配置されており、
前記正極シートは、巻回始端と末尾端とを有し、前記第1の正極被覆非形成部は、前記正極シートの前記巻回始端と、前記巻回始端から1/4の距離との間に配置され、前記第3の正極被覆非形成部は、前記正極シートの前記末尾端と、前記末尾端から1/4の距離との間に配置されており、
前記第5の正極被覆非形成部は、前記第2の負極被覆非形成部と対向している、
前記電極体。
【請求項2】
前記第1のカソードタブ及び前記第2のカソードタブは、アルミニウム箔を含む、請求項1に記載の電極体。
【請求項3】
前記第1のアノードタブ、前記第2のアノードタブ、及び前記第3のアノードタブは、銅箔、ニッケル箔、又は銅-ニッケル合金の金属箔を含む、請求項1に記載の電極体。
【請求項4】
前記第2の正極被覆非形成部、前記第4の正極被覆非形成部、前記第5の正極被覆非形成部、及び前記第6の正極被覆非形成部は、それぞれ接着テープによって覆われている、請求項1に記載の電極体。
【請求項5】
前記第1の正極被覆非形成部及び前記第3の正極被覆非形成部は、それぞれ接着テープによって覆われ、前記接着テープは、更に、前記第1のカソードタブ及び前記第2のカソードタブをそれぞれ覆っている、請求項1に記載の電極体。
【請求項6】
更に、第2のセパレータを備え、前記負極シートは、前記第1のセパレータと前記第2のセパレータとの間にある、請求項1に記載の電極体。
【請求項7】
前記第1のアノードタブの前記巻回体から突出する部分が第1の半径方向において中心から第1の距離をおいて離れており、前記第2のアノードタブの前記巻回体から突出する部分が第2の半径方向において前記中心から第2の距離をおいて離れており、前記第3のアノードタブの前記巻回体から突出する部分が第3の半径方向において前記中心から第3の距離をおいて離れており、前記第1の半径方向、前記第2の半径方向、及び前記第3の半径方向が前記巻回体を3個の異なる領域に区分しており、前記第3の距離が前記第2の距離より大きく、前記第2の距離が前記第1の距離より大きい、請求項1に記載の電極体。
【請求項8】
前記第1のカソードタブの一端、前記第2のカソードタブの一端は、前記第1の正極被覆非形成部、前記第3の正極被覆非形成部にそれぞれ個別に対応して接続、または、前記第1のカソードタブの一端、前記第2のカソードタブの一端は、前記第4の正極被覆非形成部、前記第6の正極被覆非形成部にそれぞれ個別に対応して接続されており、前記第1のアノードタブの一端、前記第2のアノードタブの一端、前記第3のアノードタブの一端は、前記第1の負極被覆非形成部、前記第2の負極被覆非形成部、前記第3の負極被覆非形成部にそれぞれ個別に対応して接続、または、前記第1のアノードタブの一端、前記第2のアノードタブの一端、前記第3のアノードタブの一端は、前記第4の負極被覆非形成部、前記第5の負極被覆非形成部、前記第6の負極被覆非形成部にそれぞれ個別に対応して接続されている、請求項1に記載の電極体。
【請求項9】
円筒型リチウム電池であって、
カバーと、タンクと、前記カバーと前記タンクとを互いに密閉接合することによって形成された上下連通する収容空間とを備えた筐体と、
前記カバーに埋設された正極
端子と、
前記タンクに埋設された負極
端子と、
請求項1に記載の電極体であって、前記収容空間に配置され、前記第1のカソードタブ及び前記第2のカソードタブを介して前記正極
端子に接続され、前記第1のアノードタブ、前記第2のアノードタブ、及び前記第3のアノードタブを介して前記負極
端子に接続された電極体と、
を備える、
円筒型リチウム電池。
【請求項10】
更に、前記収容空間に配置された電解液を備える、
請求項9に記載の円筒型リチウム電池。
【請求項11】
更に、上部絶縁シートと、下部絶縁シートとを備え、前記上部絶縁シートは、前記正極
端子と前記巻回体の一端との間に配置されており、前記下部絶縁シートは、前記負極
端子と前記巻回体の他端との間に配置されており、前記上部絶縁シートは、円状のシート構造体であり、部分扇状孔を有し、前記第1のカソードタブの他端と前記第2のカソードタブの他端とが、前記部分扇状孔を通過して、前記正極
端子に接続されており、前記下部絶縁シートは、部分円状のシート構造体であり、前記部分円の半径は、前記巻回体の他端の半径よりも小さく、前記下部絶縁シートの縁に沿って前記第2のアノードタブ及び前記第3のアノードタブが前記負極
端子に電気的に接続されるように構成され、前記部分円状のシート構造体の中心には、孔が設けられ、前記第1のアノードタブが前記孔を介して前記負極
端子に
電気的に接続されるように構成されている、
請求項9に記載の円筒型リチウム電池。
【請求項12】
前記第1のアノードタブの前記巻回体から突出する部分と、前記第2のアノードタブの前記巻回体から突出する部分と、前記第3のアノードタブの前記巻回体から突出する部分とが、前記巻回体の他端に順次積層され、前記第1のアノードタブの前記巻回体から突出する部分と、前記第2のアノードタブの前記巻回体から突出する部分と、前記第3のアノードタブの前記巻回体から突出する部分とが共に溶接され、更に前記タンクと溶接されている、
請求項11に記載の円筒型リチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体及びこれを含む円筒型リチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の進歩に伴い、益々多くの携帯用電子製品が人々の生活に欠かせないものとなっている。携帯用電子機器には、電力供給のための電池が必要である。メモリレス(memory-less)であり、小型であるという利点を有する二次電池は、一次電池に比べ環境負荷が低く、このため、用途が広がっている。小型二次電池の分野では、徐々に、リチウム電池が、環境汚染の原因となる有毒なニッケル/カドミウム電池や、体積エネルギー密度が低く温度が高いニッケル水素(NiMH)電池に取って代わってきている。
【0003】
リチウム電池は、円筒型リチウム電池及び角形リチウム電池の形態が最も一般的である。円筒型リチウム電池の製造では、かなり成熟した巻回プロセスが採用され、高度な自動化、安定した製品品質、及び低コストが実現されている。角型リチウム電池は、円筒型リチウム電池と比較して構造が単純であり、製品の大きさに応じてカスタマイズして製造することが可能であり、数千のモデルが市販されている。また、このような角形リチウム電池は、型番が圧倒的に多いため、製造工程の統一が困難である。したがって、製造方法が標準化されている円筒形のリチウム電池を採用することにより、製造工程を確保でき、代替電池も容易に見つけることができる。
【0004】
現在の設計では、円筒型リチウム電池は、通常、1個のアノードタブと1個のカソードタブ、1個のカソードタブと2個のアノードタブ、及び2個のカソードタブと2個のアノードタブの組み合わせを利用する。しかしながら、上記の組み合わせの電池は、動作時間が短く、動作温度が高く、インピーダンスが高いという欠点を有しているため、円筒型リチウム電池は、高いモビリティ(mobility)及び大容量を切実に必要とするモバイル製品、特に、電気工具及び電気自動車での使用に適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上に鑑み、本発明は、低インピーダンスでありながら、動作時間が長く、動作温度が低く、電池の寿命が向上されると共に用途が大幅に拡大された円筒型リチウム電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、負極シートと、第1のセパレータと、正極シートと、複数のカソードタブ(cathode tab)と、複数のアノードタブ(anode tab)とを含む積層体を巻回することによって形成される巻回体である円筒型リチウム電池用の電極体を提供する。負極シートは、負極基板である。負極基板は、負極上面と、負極上面の反対側の負極下面とを有する。負極上面は、第1の負極被覆(negative electrode coating)と、第1の負極被覆非形成部(bare negative electrode coating)と、第2の負極被覆非形成部と、第3の負極被覆非形成部とを有する。負極下面は、第2の負極被覆と、第4の負極被覆非形成部と、第5の負極被覆非形成部と、第6の負極被覆非形成部とを有する。第1の負極被覆非形成部と第4の負極被覆非形成部とは、互いに反対側にあるように配置され、第2の負極被覆非形成部と第5の負極被覆非形成部とは、互いに反対側にあるように配置され、第3の負極被覆非形成部と第6の負極被覆非形成部とは、互いに反対側にあるように配置されている。第1のセパレータは、負極シート上に配置される。正極シートは、正極基板である。正極基板は、正極上面と、正極上面の反対側の正極下面とを有し、正極下面は、負極上面に対向している。正極上面は、第1の正極被覆(positive electrode coating)と、第1の正極被覆非形成部(bare positive electrode coating)と、第2の正極被覆非形成部と、第3の正極被覆非形成部とを有する。正極下面は、第2の正極被覆と、第4の正極被覆非形成部と、第5の正極被覆非形成部と、第6の正極被覆非形成部とを有する。第1の正極被覆非形成部と第4の正極被覆非形成部とは、互いに反対側にあるように配置され、第2の正極被覆非形成部と第5の正極被覆非形成部とは、千鳥状に配置され、第3の正極被覆非形成部と第6の正極被覆非形成部とは、互いに反対側にあるように配置されている。複数のカソードタブのうちの第1のカソードタブの一端は、第1の正極被覆非形成部又は第4の正極被覆非形成部に接続され、複数のカソードタブのうちの第2のカソードの一端は、第3の正極被覆非形成部又は第6の正極被覆に接続され、第1のカソードタブの他端及び第2のカソードタブの他端は、それぞれ、巻回体の一端から外方に突出している。複数のアノードタブのうちの第1のアノードタブの一端は、第1の負極被覆非形成部又は第4の負極被覆非形成部に接続され、複数のアノードタブのうちの第2のアノードタブの一端は、第2の負極被覆非形成部又は第5の負極被覆非形成部に接続され、複数のカソードタブのうちの第3のアノードタブの一端は、第3の負極被覆又は第6の負極被覆非形成部に接続され、第1のアノードタブの他端、第2のアノードタブの他端、及び第3のアノードタブの他端は、それぞれ、巻回体の他端から外方に突出している。
【0007】
一実施形態では、第1のカソードタブ及び第2のカソードタブは、アルミニウム箔を含む。
【0008】
一実施形態では、第1のアノードタブ、第2のアノードタブ、及び第3のアノードタブは、銅箔、ニッケル箔、又は銅-ニッケル合金の金属箔を含む。
【0009】
一実施形態では、負極シートは、巻回始端及び末尾端を有し、第1の負極被覆非形成部は、負極シートの巻回始端に配置され、第2の負極被覆非形成部は、負極シートの巻回始端から1/3の距離と2/3の距離との間に配置され、第3の負極被覆非形成部は、負極シートの末尾端に配置されている。
【0010】
一実施形態では、正極シートは、巻回始端及び末尾端を有し、第1の正極被覆非形成部は、正極シートの巻回始端と、巻回始端から1/4の距離との間に配置され、第3の正極被覆非形成部は、正極シートの末尾端と、末尾端から1/4の距離との間に配置されている。
【0011】
一実施形態では、第5の正極被覆非形成部は、第2の負極被覆非形成部と対向している。
【0012】
一実施形態では、第2の正極被覆非形成部、第4の正極被覆非形成部、第5の正極被覆非形成部、及び第6の正極被覆非形成部は、それぞれ接着テープによって覆われている。
【0013】
一実施形態では、第1の正極被覆非形成部及び第3の正極被覆非形成部は、それぞれ接着テープによって覆われ、接着テープは、更に、第1のカソードタブ及び第2のカソードタブをそれぞれ覆っている。
【0014】
一実施形態では、電極体は、更に、第2のセパレータを備え、負極シートは、第1のセパレータと第2のセパレータとの間にある。
【0015】
一実施形態では、第1のアノードタブの巻回体から突出する部分が第1の半径方向において中心から第1の距離をおいて離れており、第2のアノードタブの巻回体から突出する部分が第2の半径方向において中心から第2の距離をおいて離れており、第3のアノードタブの巻回体から突出する部分が第3の半径方向において中心から第3の距離をおいて離れており、第1の半径方向、第2の半径方向、及び第3の半径方向は、巻回体を3個の異なる領域に区分しており、第3の距離は、第2の距離より大きく、第2の距離は、第1の距離より大きい。
【0016】
一実施形態では、第1のアノードタブ及び第3のアノードタブの巻回体から突出する部分は、エンボス加工されており、第2のアノードタブの巻回体から突出する部分は、エンボス加工されていない。
【0017】
一実施形態では、第1のカソードタブの一端、第2のカソードタブの一端は、第1の正極被覆非形成部、第3の正極被覆非形成部にそれぞれ個別に対応して接続、または、第1のカソードタブの一端、第2のカソードタブの一端は、第4の正極被覆非形成部、第6の正極被覆非形成部にそれぞれ個別に対応して接続され、第1のアノードタブの一端、第2のアノードタブの一端、第3のアノードタブの一端は、第1の負極被覆非形成部、第2の負極被覆非形成部、第3の負極被覆非形成部にそれぞれ個別に対応して接続、または、第1のアノードタブの一端、第2のアノードタブの一端、第3のアノードタブの一端は、第4の負極被覆非形成部、第5の負極被覆非形成部、第6の負極被覆非形成部にそれぞれ個別に対応して接続されている。
【0018】
別の実施形態では、第1のカソードタブの一端、第2のカソードタブの一端が、第1の正極被覆非形成部、第3の正極被覆非形成部にそれぞれ個別に対応して接続される場合、第1のアノードタブの一端、第2のアノードタブの一端、第3のアノードタブの一端は、第1の負極被覆非形成部、第2の負極被覆非形成部、第3の負極被覆非形成部にそれぞれ個別に対応して接続されている。
【0019】
別の実施形態では、第1のカソードタブの一端、第2のカソードタブの一端が、第4の正極被覆非形成部、第6の正極被覆非形成部にそれぞれ個別に対応して接続される場合、第1のアノードタブの一端、第2のアノードタブの一端、第3のアノードタブの一端は、第4の負極被覆非形成部、第5の負極被覆非形成部、第6の負極被覆非形成部にそれぞれ個別に対応して接続される。
【0020】
本出願は更に、筐体、正極、及び負極を備える円筒型リチウム電池を提供する。筐体は、カバーと、タンクと、カバーとタンクとを互いに密閉接合することによって形成された上下連通する収容空間とを備える。正極は、カバー内に埋設され、負極は、タンク内に埋設される。電極体は、収容空間に配置され、第1のカソードタブ及び第2のカソードタブを介して正極に接続され、第1のアノードタブ、第2のアノードタブ、及び第3のアノードタブを介して負極に接続されている。
【0021】
別の実施形態では、円筒型リチウム電池は、更に、収容空間に配置された電解質を備える。
【0022】
別の実施形態では、円筒型リチウム電池は、上部絶縁シート及び下部絶縁シートを備える。上部絶縁シートは、正極と巻回体の一端との間に配置され、下部絶縁シートは、負極と巻回体の他端との間に配置されている。上部絶縁シートは、円状のシート構造体であり、部分扇状孔(partial fan-shaped hole)を有し、第1のカソードタブの他端と第2のカソードタブの他端とが、部分扇状孔を通過して、正極に接続されている。下部絶縁シートは、部分円状のシート構造体であり、部分円の半径は、巻回体の他端の半径よりも小さく、下部絶縁シートの縁に沿って第2のアノードタブ及び第3のアノードタブが負極に接続されるように構成されている。また、部分円状のシート構造体の中心には、孔が設けられ、第1のアノードタブは、この孔を介して負極に接続されるよう構成されている。
【0023】
別の実施形態では、第1のアノードタブの巻回体から突出する部分と、第2のアノードタブの巻回体から突出する部分と、第3のアノードタブの巻回体から突出する部分とが、巻回体の他端に順次積層され、第1のアノードタブの巻回体から突出する部分と、第2のアノードタブの巻回体から突出する部分と、第3のアノードタブの巻回体から突出する部分とが共に溶接され、更にタンクと溶接されている。
【0024】
本発明では、正極シート上に正極被覆を特定の構成で設けることにより、正極被覆の塗布面積を大きくし、電極体の容量を大きくしている。また、第1のセパレータの存在が省かれる場合を考えると、この構成は、正極シートの下面の正極被覆に対向する負極シートの上面の位置に負極被覆が存在することにより、金属の析出を回避し、危険を防止できる。
【0025】
本発明のこれらの及びこの他の側面は、以下の添付図面と共に実施形態の詳細な説明を参照することにより、当業者にとって明らかとなる。
【0026】
なお、図面に示す構造の寸法及び縮尺は、本発明の実際の実装を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に基づく電極体の展開された積層体の断面図である。
【0028】
【
図2】第1の比較例に基づく電極体の展開された積層体の断面図である。
【0029】
【
図3A】本発明の一実施形態及び第1の比較例に基づく電圧、時間、及び温度の関係図である。
【0030】
【
図3B】本発明の一実施形態及び第1の比較例に基づく抵抗及び電荷の関係図である。
【0031】
【
図4】第2の比較例に基づく電極体の展開された積層体の断面図である。
【0032】
【
図5】本発明の一実施形態に基づく電極体の巻回された積層体の断面模式図である。
【0033】
【
図6A】本発明の一実施形態に基づくアノードタブの組立前の概略図である。
【
図6B】本発明の一実施形態に基づくアノードタブの組立後の概略図である。
【0034】
【
図7】本発明の別の実施形態に基づく円筒型リチウム電池の具体例の分解概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、電極体及びこれを含む円筒型リチウム電池、より具体的には、少なくとも2個(例えば、2個、3個、又は4個)のカソードタブ及び少なくとも3個(例えば、3個、4個、又は5個)のアノードタブを有する円筒型リチウム電池を提供する。
【0036】
以下、添付の図面を用いて本発明を詳細に説明する。添付の図面では、同じ及び/又は対応する要素には、同じ参照符号及び番号を付している。
【0037】
以下では、様々な実施形態を開示する。しかしながら、これらの実施形態は、様々な形態で実現された単なる例を示すものである。更に、様々な実施形態において提供される各実施例は、例示的なものであると合理的に理解され、限定的なものとして解釈されるべきではない。更に、図面は、実際の寸法及び比率を忠実に反映しておらず、特定の要素の詳細を強調するために、幾つかの特徴が拡大されている(図面に示す任意の寸法、材料、及びこれらに類する詳細は、限定的ではなく例示的なものとして合理的に理解される)。したがって、本明細書に開示する特定の構造的及び機能的な詳細は、限定的に解釈されるべきではなく、開示された実施形態を当業者に教示するための基礎として使用される。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態に基づく展開された電極体100の断面図である。電極体100は、積層体を下から上に巻回することによって形成される巻回体であり、積層体は、負極シート120と、第1のセパレータ140と、正極シート160と、複数のアノードタブ130と、複数のカソードタブ170とを含む。負極シート120は、負極基板である。負極基板は、負極上面120aと、負極上面120aの反対側の負極下面120bとを有する。負極上面120aは、第1の負極被覆121と、第1の負極被覆非形成部131と、第2の負極被覆非形成部132と、第3の負極被覆非形成部133とを有する。負極下面120bは、第2の負極被覆122と、第4の負極被覆非形成部134と、第5の負極被覆非形成部135と、第6の負極被覆非形成部136とを有する。第1の負極被覆非形成部131と第4の負極被覆非形成部134とは、互いに反対側にあるように配置され、第2の負極被覆非形成部132と第5の負極被覆非形成部135とは、互いに反対側にあるように配置され、第3の負極被覆非形成部133と第6の負極被覆非形成部136とは、互いに反対側にあるように配置されている。第1のセパレータ140は、負極シート120上に配置されている。正極シート160は、正極基板である。正極基板は、正極上面160aと、正極上面160aの反対側の正極下面160bとを有し、正極下面160bは、負極上面120aと対向している。正極上面160aは、第1の正極被覆161と、第1の正極被覆非形成部171と、第2の正極被覆非形成部172と、第3の正極被覆非形成部173とを有する。正極下面160bは、第2の正極被覆162と、第4の正極被覆非形成部174と、第5の正極被覆非形成部175と、第6の正極被覆非形成部176とを有する。第1の正極被覆非形成部171と第4の正極被覆非形成部174とは、互いに反対側にあるように配置され、第2の正極被覆非形成部172と第5の正極被覆非形成部175とは、千鳥状に配置され、第3の正極被覆非形成部173と第6の正極被覆非形成部176とは、互いに反対側にあるように配置されている。第1のカソードタブ170aの一端、第2のカソードタブ170bの一端は、第1の正極被覆非形成部171、第3の正極被覆非形成部173にそれぞれ個別に対応して接続されており、第1のカソードタブ170aの他端及び第2のカソードタブ170bの他端は、それぞれ、巻回体の一端から外方に突出している。第1のアノードタブ130aの一端、第2のアノードタブ130bの一端、第3のアノードタブ130cの一端は、第1の負極被覆非形成部131、第2の負極被覆非形成部132、第3の負極被覆非形成部133にそれぞれ個別に対応して接続されており、第1のアノードタブ130aの他端、第2のアノードタブ130bの他端、及び第3のアノードタブ130cの他端は、それぞれ、巻回体の他端から外方に突出している。一実施形態では、第5の正極被覆非形成部175は、第2の負極被覆非形成部132に対向している。一実施形態では、正極シートの上面における正極被覆非形成部以外の領域は、正極被覆であり、正極シートの下面における正極被覆非形成部以外の領域は、正極被覆であり、負極シートの上面における負極被覆非形成部以外の領域は、負極被覆であり、負極シートの下面における負極被覆非形成部以外の領域は、負極被覆である。
【0039】
一実施形態では、第1のカソードタブ170a及び第2のカソードタブ170bは、アルミニウム箔を含む。一実施形態では、第1のアノードタブ130a、第2のアノードタブ130b、及び第3のアノードタブ130cは、銅箔、ニッケル箔、又は銅-ニッケル合金の金属箔を含む。本発明における負極被覆非形成部(bare negative electrode coating)とは、負極被覆が形成されていない領域をいう。同様に、本発明における正極被覆非形成部(bare positive electrode coating)とは、正極被覆が形成されていない領域をいう。
【0040】
一実施形態では、負極シート120は、巻回始端A1と、末尾端A2とを含み、第1の負極被覆非形成部131は、負極シート120の巻回始端A1に配置され、第2の負極被覆非形成部132は、負極シート120の巻回始端A1から1/3の距離と2/3の距離との間に配置され、第3の負極被覆非形成部133は、負極シート120の末尾端A2に配置されている。
【0041】
一実施形態では、正極シート160は、巻回始端C1と、末尾端C2とを含み、第1の正極被覆非形成部171は、正極シート160の巻回始端C1と、巻回始端C1から1/4の距離との間に配置され、第3の正極被覆非形成部173は、正極シート160の末尾端C2と、末尾端C2から1/4の距離との間に配置されている。
【0042】
一実施形態では、第2の正極被覆非形成部172、第4の正極被覆非形成部174、第5の正極被覆非形成部175、及び第6の正極被覆非形成部176は、短絡を防止するために、それぞれ、接着テープ190によって覆われる。一実施形態では、第1の正極被覆非形成部171及び第3の正極被覆非形成部173は、短絡を防止するために、それぞれ接着テープ190によって覆われ、接着テープは、更に、第1のカソードタブ170a及び第2のカソードタブ170bのそれぞれを覆う。
【0043】
一実施形態では、電極体100は、更に、第2のセパレータ180を含み、負極シート120は、第1のセパレータ140と第2のセパレータ180との間に配置される。
【0044】
一実施形態では、カソードタブ、アノードタブは、溶接によって正極シート、負極シートにそれぞれ個別に対応して接続される。溶接は、超音波溶接が好ましい。
【0045】
本発明の別の実施形態では、第1のカソードタブ170aの一端、第2のカソードタブ170bの一端は、第4の正極被覆非形成部174、第6の正極被覆非形成部176にそれぞれ個別に対応して接続されているが、第1の正極被覆非形成部171、第3の正極被覆非形成部173のそれぞれには接続されておらず、第1のアノードタブ130aの一端、第2のアノードタブ130bの一端、第3のアノードタブ130cの一端は、第4の負極被覆非形成部134、第5の負極被覆非形成部135、第6の負極被覆非形成部136にそれぞれ個別に対応して接続されているが、第1の負極被覆非形成部131、第2の負極被覆非形成部132、第3の負極被覆非形成部133のそれぞれには、接続されていない。
【0046】
図2は、第1の比較例に基づく電極体200の展開された積層体の断面図である。
図2に示すように、第1の比較例では、電極体200は、積層体を下から上に巻回することによって形成される巻回体である。積層体は、負極シート220と、第1のセパレータ240と、正極シート260と、2個のカソードタブ270と、2個のアノードタブ230とを含む。負極シート220は、負極基板である。負極基板は、負極上面220aと、負極上面220aの反対側の負極下面220bとを有する。負極上面220aは、第1の負極被覆221と、第1の負極被覆非形成部231と、第2の負極被覆非形成部232とを有する。負極下面220bは、第2の負極被覆222と、第3の負極被覆非形成部233と、第4の負極被覆非形成部234とを有する。第1の負極被覆非形成部231と第3の負極被覆非形成部233とは、互いに反対側にあるように配置され、第2の負極被覆非形成部232と第4の負極被覆非形成部234とは、互いに反対側にあるように配置されている。第1のセパレータ240は、負極シート220上に配置されている。正極シート260は、正極基板である。正極基板は、正極上面260aと、正極上面260aの反対側の正極下面260bとを有し、正極下面260bは、負極上面220aと対向している(すなわち、正極下面260bと負極上面220aとは、第1のセパレータ240を挟んで対向するように配置されている)。正極上面260aは、第1の正極被覆261と、第1の正極被覆非形成部271と、第2の正極被覆非形成部272とを有する。正極下面260bは、第2の正極被覆262と、第3の正極被覆非形成部273と、第4の正極被覆非形成部274とを有する。第1の正極被覆非形成部271と第3の正極被覆非形成部273とは、互いに反対側にあるように配置され、第2の正極被覆非形成部272と第4の正極被覆非形成部274とは、互いに反対側にあるように配置されている。第1のカソードタブ270aの一端、第2のカソードタブ270bの一端は、第1の正極被覆非形成部271、第2の正極被覆非形成部272にそれぞれ個別に対応して接続され、第1のカソードタブ270aの他端及び第2のカソードタブ270bの他端は、それぞれ、巻回体の一端から外方に突出している。第1のアノードタブ230aの一端、第2のアノードタブ230bの一端は、第1の負極被覆非形成部231、第2の負極被覆非形成部232にそれぞれ個別に対応して接続され、第1のアノードタブ230aの他端及び第2のアノードタブ230bの他端は、それぞれ、巻回体の他端から外方に突出している。本発明の一実施形態の電極体100の積層体と比較すると、
図2に示す積層体は、カソードタブを2個のみ、及びアノードタブを2個のみ有する。
【0047】
図3Aは、本発明の一実施形態と比較例の電圧、作業時間、動作温度の関係図である。
図3Bは、本発明の一実施形態及び第1の比較例に基づく抵抗及び電荷の関係図である。
図3Aは、1Cによって定格電圧4.2Vまで充電し、23℃の温度下で、95Wの大電力で2.0Vまで放電するという条件の試験によって得たものである。
図3Bは、1Cによって定格電圧4.2Vまで充電し、23℃の温度下で、1Aと10Aを交互に2.0Vまで放電するという条件の試験によって得たものである。
図3A及び
図3Bから、本発明の実施形態の電極体は、3個のアノードタブを有しているので、第1の比較例の電極体に比べて、低抵抗で動作温度が低く、動作時間が長いことが分かる。したがって、本発明の電極体を円筒型リチウム電池に適用することにより、電池の寿命及び用途を大幅に向上させることができる。
【0048】
図4は、第2の比較例に基づく電極体の展開された積層体の断面図である。第2の比較例では、
図4に示すように、電極体300は、積層体を下から上に巻回することによって形成される巻回体である。積層体は、負極シート320と、第1のセパレータ340と、正極シート360と、2個のカソードタブ370と、3個のアノードタブ330とを備える。負極シート320は、負極基板である。負極基板は、負極上面320aと、負極上面320aの反対側の負極下面320bとを有する。負極上面320aは、第1の負極被覆321と、第1の負極被覆非形成部331と、第2の負極被覆非形成部332と、第3の負極被覆非形成部333とを有する。負極下面320bは、第2の負極被覆322と、第4の負極被覆非形成部334と、第5の負極被覆非形成部335と、第6の負極被覆非形成部336とを有する。第1の負極被覆非形成部331と第4の負極被覆非形成部334とは、互いに反対側にあるように配置され、第2の負極被覆非形成部332と第5の負極被覆非形成部335とは、互いに反対側にあるように配置され、第3の負極被覆非形成部333と第6の負極被覆非形成部336とは、互いに反対側にあるように配置されている。第1のセパレータ340は、負極シート320上に配置されている。正極シート360は、正極基板である。正極基板は、正極上面360aと、正極上面360aの反対側の正極下面360bとを有し、正極下面360bは、負極上面320aと対向している。正極上面360aは、第1の正極被覆361と、第1の正極被覆非形成部371と、第2の正極被覆非形成部372と、第3の正極被覆非形成部373とを有する。正極下面360bは、第2の正極被覆362と、第4の正極被覆非形成部374と、第5の正極被覆非形成部375と、第6の正極被覆非形成部376とを有する。第1の正極被覆非形成部371と第4の正極被覆非形成部374とは、互いに反対側にあるように配置され、第2の正極被覆非形成部372と第5の正極被覆非形成部375とは、互いに反対側にあるように配置され、第3の正極被覆非形成部373と第6の正極被覆非形成部376とは、互いに反対側にあるように配置され、第5の正極被覆非形成部375と第2の負極被覆非形成部332とは、対向するように配置されている。第1のカソードタブ370aの一端、第2のカソードタブ370bの一端は、第1の正極被覆非形成部371、第3の正極被覆非形成部373にそれぞれ個別に対応して接続されており、第1のカソードタブ370aの他端及び第2のカソードタブ370bの他端は、それぞれ、巻回体の他端から外方に突出している。第1のアノードタブ330aの一端、第2のアノードタブ330bの一端、第3のアノードタブ330cの一端は、第1の負極被覆非形成部331、第2の負極被覆非形成部332、第3の負極被覆非形成部333にそれぞれ個別に対応して接続され、第1のアノードタブ330aの他端、第2のアノードタブ330bの他端、及び第3のアノードタブ330cの他端は、それぞれ、巻回体の他端から外方に突出している。
【0049】
本発明の一実施形態の電極体と第2の比較例の電極体とを比較すると、第2の比較例の電極体の正極シート360は、正極被覆を施す面積が小さいため、容量が低下する問題がある。一実施形態では、
図1に示すように、第2の正極被覆非形成部172と第5の正極被覆非形成部175とを千鳥状に配置することにより、被覆面積が大きくなり、容量も増加する。一例では、正極シートの全長が1200mmである場合、本発明の一実施形態の電極体の被覆領域の全長と、第2の比較例の電極体の被覆領域の全長との差は、42mmであり、両者の容量差は、42/1200=3.5%である。本発明の電極体の容量が顕著に大きいことは、明らかである。このため、本発明の電極体100の積層体と比較して、
図4の積層体は、同様に2個のカソードタブと3個のアノードタブが設けられているが、正極被覆の構成において空間を有効に利用できていないため、正極被覆の被覆面積が小さく、容量を大きくできない。具体的には、
図4において、積層体300の第2の正極被覆非形成部372及び第5の正極被覆非形成部375は、
図1の第2の正極被覆非形成部172及び第5の正極被覆非形成部175のように千鳥状に配置されていないため、第2の正極被覆非形成部372及び第5の正極被覆非形成部375のそれぞれの面積が、第2の負極被覆非形成部332の面積よりも大きくなり、正極被覆が小さくなり、容量を増加させることができない。これに対し、
図1の第2の正極被覆非形成部172及び第5の正極被覆非形成部175は、千鳥状に配置されており、第2の正極被覆非形成部172及び第5の正極被覆非形成部175のそれぞれの面積は、第2の負極被覆非形成部132の領域に近似し(又は等しく)、正極被覆が大きくなり、その結果、容量が増加する。
【0050】
一実施形態では、第2の正極被覆非形成部172と第5の正極被覆非形成部175とを千鳥状に配置するために、正極上面160a、正極下面160b、負極上面120a、及び負極下面120bに、準備した正極と負極の原料の混合液を塗布機構によって同期的に塗布する。当業者は、当分野の通常の技能によって、塗布の位置、長さ、幅、及びギャップ等の関連パラメータを設定することによって、第2の正極被覆非形成部172及び第5の正極被覆非形成部175を千鳥状に配置した結果を達成できる。上述したように、このような構成によって、被覆の被覆面積を増加させ、これによって容量を増加させることができる。
【0051】
図5は、本発明の一実施形態に基づく電極体100の巻回された積層体の断面模式図である。第1のアノードタブ130aの巻回体102から突出する部分は、半径方向D1において、中心Oから第1の距離R1をおいて離れており、第2のアノードタブ130bの巻回体102から突出する部分は、第2の半径方向D2において、中心Oから第2の距離R2をおいて離れており、第3のアノードタブ130cの巻回体102から突出する部分は、第3の半径方向D3において、中心Oから第3の距離R3をおいて離れている。第1の半径方向D1、第2の半径方向D2、及び第3の半径方向D3は、巻回体を3個の異なる領域に区分しており、第1の半径方向D1、第2の半径方向D2、及び第3の半径方向D3の間に形成される角度は、特に限定されない。また、第3の距離R3は、第2の距離R2より大きく、第2の距離R2は、第1の距離R1より大きい。このような構成は、電池を形成するための組立工程中のアノードタブの溶接が容易になるため、有益である。また、
図5から分かるように、本発明の一実施形態の電極体100を巻回始端から巻回することによって、巻回体を得ることができる。
【0052】
図6A及び
図6Bは、本発明の一実施形態に基づく組立前後の電極体100の第1のアノードタブ130a、第2のアノードタブ130b、及び第3のアノードタブ130cの概略図である。電極体100の上部の黒塗り部分は、絶縁シート110bを示している。
図6Aにおいて、巻回体102として溶接された電極体100の第1のアノードタブ130a、第2のアノードタブ130b、及び第3のアノードタブ130cは、当初は、絶縁シート110bに対して垂直である。組立を容易にするために、
図6Bに示すように、第1のアノードタブ130a、第2のアノードタブ130b、及び第3のアノードタブ130cは、絶縁シート110bに近づくように曲げられ、第1のアノードタブ130aの上に第2のアノードタブ130bが重ねられ、第2のアノードタブ130bの上に第3のアノードタブ130cが重ねられる。
【0053】
図7は、本発明の別の実施形態に基づく円筒型リチウム電池10の具体例の分解概略図である。円筒型リチウム電池10は、筐体12と、正極20と、負極30とを備える。筐体12は、カバー14と、タンク16と、カバー14とタンク16とを互いに密閉接合することによって形成された上下連通する収容空間18とを備えている。正極20は、カバー14に埋設され、負極30は、タンク16に埋設されている。上記実施形態で説明した電極体100は、収容空間18内に配置されている。電極体100は、第1のカソードタブ170a及び第2のカソードタブ170bを介して正極20に電気的に接続され、更に、電極体100は、第1のアノードタブ130a、第2のアノードタブ130b、及び第3のアノードタブ130cを介して負極30に電気的に接続されている。
【0054】
本発明の別の実施形態に基づく円筒型リチウム電池10の具体例は、更に、(
図7に示すように)上部絶縁シート110a及び(
図6A及び
図6Bに示すように)下部絶縁シート110bを含む。上部絶縁シート110aは、正極20と巻回体102の一端との間に配置され、下部絶縁シート110bは、負極30と巻回体102の他端との間に配置されている。上部絶縁シート110aは、円状のシート構造体であり、部分扇状孔を有しており、第1のカソードタブ170aの他端と第2のカソードタブ170bの他端とは、この部分扇状孔を通過して、正極20に電気的に接続されている(図示せず)。第1のカソードタブ及び第2のカソードタブは、部分扇状孔を通過した後、巻回体102の中心軸方向に向かって折り曲げられて積層構造とされ(すなわち、第2のカソードタブ170bが第1のカソードタブ170a上に積層され)、後続する円筒型リチウム電池の組立を容易にしている。
図6A、
図6B、及び
図7に示すように、下部絶縁シート110bは、部分円状のシート構造体であり、この部分円の半径は、巻回体102の他端の半径よりも小さく、この下部絶縁シートの縁に沿って、アノードカソードタブ130b及び第3のアノードタブ130cが負極30に電気的に接続されるように構成されている。また、部分円状のシート構造体の中心には、孔が設けられ、第1のアノードタブ130aがこの孔を介して負極30に電気的に接続されるように構成されている(図示せず)。
【0055】
一以上の実施形態を用いて本発明の電極体及び電極体を含む円筒型リチウム電池を説明したが、本発明は、本開示に示す実施形態に限定されるわけではない。例えば、カソードタブ及びアノードタブの数は、開示した実施形態の例に限定されない。添付の特許請求の範囲によって保護される思想及び側面に含まれる種々の修正及び類似の構成は、全ての類似の修正及び構造が包含されるように、最も広く解釈される。本発明の開示は、添付の特許請求の範囲内の全ての実施形態も含む。