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特許7387709固定構築プレートを備えた積層造形システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】固定構築プレートを備えた積層造形システム
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/30 20210101AFI20231120BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20231120BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20231120BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20231120BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20231120BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20231120BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20231120BHJP
   B22F 12/20 20210101ALI20231120BHJP
   B22F 12/10 20210101ALI20231120BHJP
   B22F 12/17 20210101ALI20231120BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231120BHJP
【FI】
B22F12/30
B29C64/153
B29C64/245
B29C64/295
B29C64/393
B22F10/28
B22F12/90
B22F12/20
B22F12/10
B22F12/17
B33Y30/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021502866
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019054285
(87)【国際公開番号】W WO2020072638
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】62/741,836
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518009515
【氏名又は名称】ヴァルカンフォームズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】スイートランド,マシュー
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108608648(CN,A)
【文献】特開2015-157420(JP,A)
【文献】特開2017-035873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
B29C 64/00-64/40
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形システムの構築表面を水平にするためのシステムであって、
構築プレートと、
ベースと、
前記ベースと前記構築プレートとの間に延在し、前記構築プレートに加えられる荷重の少なくとも一部を支持するように構成された、支柱と、
前記支柱に取り付けられ、前記支柱の一部を加熱するように構成された、ヒータと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記構築プレートが据え付けられている固定プレートをさらに備え、前記支柱が前記固定プレートに取り付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ベースが、第1温度に維持されるように構成され、前記固定プレートが、前記第1温度よりも高い第2温度に維持されるように構成され、前記ヒータが、前記第2温度以下の第3温度に前記支柱の前記一部を加熱するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ベースが、前記ベースを前記第1温度に維持するための冷却パッド及び冷却チャネルから成る群から選択される少なくとも1つを備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記固定プレートが、前記固定プレートを前記第2温度に維持するように構成された第2ヒータを備える、請求項3又は4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ヒータが、前記支柱の長さに沿った、前記ベースよりも前記構築プレートに近い位置に位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記構築プレートを加熱するように構成された構築プレートヒータをさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記支柱に取り付けられた前記ヒータ及び前記構築プレートが、独立して制御可能である、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1に記載の積層造形システムであって、
前記構築プレートの上の構築体積の周りに境界を規定するように、前記構築プレートに対して垂直方向に変位可能なシュラウドと、
前記構築体積の上面に沿って粉末層を堆積させるように構成された粉末堆積システムであって、前記粉末堆積システムが前記構築プレートに対して垂直方向に変位可能である、粉末堆積システムと、
1つ以上のレーザエネルギー源からのレーザエネルギーを前記構築体積へ向けて方向づけるように構成された光学系組立体であって、前記レーザエネルギーへの前記粉末層の暴露により、前記粉末層の少なくとも一部が溶融する、光学系組立体と、を備え、
前記支柱が2つ以上の支柱であり、各支柱が別々のヒータを備える、積層造形システム。
【請求項10】
各ヒータに動作可能に結合されたコントローラをさらに備え、前記コントローラが、ヒータごとに温度設定点を独立して設定して、各支柱に沿った温度プロファイルを調整するように構成されている、請求項9に記載の積層造形システム。
【請求項11】
前記コントローラに動作可能に結合された構築プレートヒータをさらに備え、前記コントローラが、前記構築プレートの温度設定点を設定するように構成されている、請求項10に記載の積層造形システム。
【請求項12】
前記構築プレートの前記温度設定点が、前記支柱のヒータの少なくとも1つの温度設定点とは異なる、請求項11に記載の積層造形システム。
【請求項13】
前記コントローラに動作可能に結合された構築プレートセンサをさらに備え、前記構築プレートセンサが、前記構築プレートの配向を判断するように構成されている、請求項10から12のいずれか一項に記載の積層造形システム。
【請求項14】
前記構築プレートの前記配向が水平配向とは異なると前記構築プレートセンサが判断するのに応答して、前記コントローラが、各支柱に沿った前記温度プロファイルを調整して、各支柱の長さを調整するように構成されている、請求項13に記載の積層造形システム。
【請求項15】
少なくとも1つの支柱が、前記コントローラに動作可能に結合された2つ以上の独立した調整可能なヒータを備える、請求項10から14のいずれか一項に記載の積層造形システム。
【請求項16】
前記構築プレートが、前記構築プレートの下にある固定プレート上に据え付けられ、各支柱が、前記固定プレートに取り付けられている、請求項9から15のいずれか一項に記載の積層造形システム。
【請求項17】
各支柱が、冷却プレート及び冷却チャネルから成る群から選択される少なくとも1つを備える前記積層造形システムのベースから延在する、請求項9から16のいずれか一項に記載の積層造形システム。
【請求項18】
各支柱が、前記構築プレートを支持するように中間プレートから延在し、前記中間プレートと前記積層造形システムのベースとの間に延在する2本以上の二次支柱をさらに備える、請求項9から17のいずれか一項に記載の積層造形システム。
【請求項19】
積層造形システムの構築プレートを水平にするための方法であって、
前記構築プレートの配向を制御するために、前記構築プレートを支持する支柱に沿った温度プロファイルを制御することを含み、
前記支柱に沿った前記温度プロファイルを制御することは、前記支柱に沿った前記温度プロファイルをヒータで制御することを含む、方法。
【請求項20】
前記支柱が2つ以上の支柱であり、各支柱に沿った前記温度プロファイルを独立に調整することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
各支柱に沿った前記温度プロファイルを調整することで、各支柱の長さを調整する、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
ベースを第1温度に維持し、固定プレートを第1温度よりも高い第2温度に維持し、前記第2温度以下の第3温度に前記支柱の一部を加熱することをさらに含む、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年10月5日に出願された「ADDITIVE MANUFACTURING SYSTEM WITH FIXED BUILD PLATE」と題する米国仮出願62/741,836号の35 U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張する。
【0002】
[0002] 開示された実施形態は、積層造形のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 選択的レーザ溶融プロセス又は金属粉末床融合プロセスにおいて、1つ以上の入射レーザビームは、構築プレート上に堆積した金属粉末の薄い層からなる構築表面上でスキャンされる。各レーザビームの照射点では、各点のエネルギーが十分であれば、金属粉末は、個々の粉末粒子が溶融して溶融プールが形成されるまで加熱される。各レーザポイントが構築表面上の形状の上でスキャンされると、結果として得られる溶融プール及び溶融トラックは、スキャンされたパターンに対応する所望の形状の固体金属構造に凝固される。一つの層が完了すると、粉末床が堆積された構築プレートは、典型的には一定間隔で下向きに動かされ、未加工の金属粉末の新しい層が構築表面上に拡散される。後続の表面上の溶融トラックが前のスキャンからのトラックトラック上でスキャンされる場合、層は溶融プールによって一緒に融合される。このように、複数の連続する層を処理することにより、三次元の部品を造形することができる。
【0004】
[0004] シングルレーザシステムとマルチレーザシステムの両方が使用されている。いくつかのシステムでは、検流計に据え付けられた一対のミラーを使用して、構築表面上の所望のパターン上で各レーザビームをスキャンする。いくつかのシステムでは、モーションステージを使用して、構築表面上でレーザをスキャンする。いくつかのシステムでは、モーションステージと検流計の組み合わせを使用して、構築表面上でレーザをスキャンする。スキャン方法の一部として検流計を使用するシステムでは、多くの場合、fθレンズ又はテレセントリックレンズを使用して、所与の構築表面サイズに対して構築表面へのレーザビームの入射角を可能な限り垂直に近くなるように保つのを助ける。任意のレーザ経路の最終的な光学構成要素(例えば、最終的な光学系、検流計、ミラー、テレセントリックレンズ、又はfθレンズ)間の間隔は、約数ミリメートルから100センチメートル以上であり得る。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 一実施形態では、積層造形システムは、構築プレートと、構築プレートに対して垂直方向に変位可能なシュラウドとを備える。シュラウドは、構築プレートの上の構築体積の周囲の境界を規定する。このシステムは、構築体積の上面に沿って粉末層を堆積するように構成された粉末堆積システムをさらに含み、粉末堆積は、構築プレートに対して垂直に変位可能である。このシステムはまた、1つ以上のレーザエネルギー源からのレーザエネルギーを構築体積に向けて方向づけるように構成された光学系組立体を備える。粉末層をレーザエネルギーに曝露すると、粉末層の少なくとも一部が溶融する。
【0006】
[0006] 別の実施形態では、積層造形システム構築プレート、ベース、及び、ベースと構築プレートとの間に延在し、構築プレートに加えられる荷重の少なくとも一部を支持するように構成された支柱の構築表面を水平にするためのシステム。ヒータは支柱に取り付けられ、支柱の一部を加熱するように構成されている。
【0007】
[0007] 本開示はこの点に限定されないので、前述の概念、及び以下で論じられるさらなる概念は、任意の適切な組み合わせで構成され得ることを理解されたい。さらに、本開示の他の利点及び新規な特徴は、添付図面と併せて考慮すると、様々な非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0008】
[0008] 添付の図面は、原寸に比例して描くことを意図していない。図面においては、様々な図に示されている同一又はほぼ同一な各構成要素は、同様の数字によって表され得る。わかりやすくするために、すべての構成要素がすべての図面でラベル付けされているわけではない。図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による、積層造形システムの概略図である。
図2】中間位置にある図1の積層造形システムの概略図である。
図3】構築プロセス終了時の最終位置にある図1の積層造形システムの概略図である。
図4】一実施形態による、積層造形システム用の支持及び水平化システムの概略斜視図である。
図5図4の支持及び水平化システムの正面図である。
図6】別の実施形態による、積層造形システムの支持及び水平化システムの概略図である。
図7】一実施形態による、支柱に沿った温度プロファイルを示す。
図8】別の実施形態による、支柱に沿った温度プロファイルを示す。
図9】一実施形態による、積層造形システムの支持及び水平化システムの概略斜視図である。
図10】一実施形態による、中間プレートを含む支持及び水平化システムの概略図である。
図11】一実施形態による、支柱に複数のヒータを含む支持及び水平化システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0020] 本発明者らは、構築プロセス中に構築表面の位置を正確に制御することを可能にする選択的レーザ溶融又は他の粉末床融合システムなどの積層造形システムに関連する多くの利点を認識しかつ評価してきた。従来のシステムでは、固定された粉末閉じ込めシュラウドに囲まれた構築プレートは、各処理ステップに使用される粉末層の厚さに対応するステップ距離だけ、処理ステップ間で下向きに平行移動する。例えば、典型的なステップ距離は、特定の積層造形プロセスに必要な粉末の厚さと層の解像度に基づいて、約20μmから約150μmの範囲である。しかし、本発明者らは、各処理ステップ間で構築表面を移動させることを伴う、この従来のアプローチは、積層造形機の印刷体積のサイズの増加に関連する完成した構築物の質量の増加のために、より大きな印刷部品を造形するように構成されたシステムに拡張できない場合があることを理解している。例えば、500mm×500mm×500mmの印刷体積で鋼又はステンレス部品を造形するように構成されたシステムでは、印刷体積の質量は、構築プロセスの終了時に1000kg以上になる場合がある。別の例として、構築体積が1立方メートルのシステムでは、印刷体積の質量は8000kg以上であり得る。本発明者らは、構築プロセス中に構築表面を制御する従来の配置(例えば、連続する処理ステップ間で構築プレートを一定間隔で下向きに動かすための配置)は、必要なステップ距離だけそのような大きな質量を厳密かつ正確に移動させることができない場合があることを認識している。例えば、構築表面を制御するための従来のアクチュエータシステムは、各処理ステップでミクロンスケールの正確な層厚を維持しながら、積層造形プロセス全体を通して構築表面にかかる広範囲の印刷体積質量(例えば、0kgから数千kgまで)に対応することができない場合がある。
【0011】
[0021] 前述の観点から、本発明者らは、粉末堆積システム(例えば、粉末リコータ配置)、光学ユニット、及び粉末閉じ込めシュラウドなどの他の構成要素が、構築プロセス中に固定構築表面に対して一定間隔で上方に動かすように配置されている固定構築プレートを利用する積層造形システムに関連する多数の利点を高く評価している。例えば、そのようなシステムは、構築プロセス全体を通して、広範囲の質量を支持するために、構築プレートに堅牢な支持構造を使用することを可能にし得る。さらに、可動構成要素の質量は、造形プロセス全体を通して実質的に一定であり得、これにより、構築プロセス全体を通して、層厚のより正確及び/又は厳密な制御を可能にし得る。
【0012】
[0022] 一実施形態では、積層造形システムは、構築プロセス全体を通して実質的に所定の位置に固定され得る構築プレートを含む。例えば、構築プレートは、構築プレートの上に延在する構築体積の静止した底部支持表面を規定するように構成され得る。このように、構築プレートは、構築プロセスの連続するステップ間で、一定間隔で上向き又は下向きに動かされない。しかし、以下でより詳細に説明するように、固定構築プレートは、構築プロセス全体を通して構築プレートのレベルを維持するために構築プレートの配向を調整するなど、構築プロセス中にいくらか動かされる場合があることを理解されたい。シュラウドは、構築プレートに対して垂直方向に変位可能で、構築体積の周りの境界を規定する。例えば、シュラウドは、構築プロセスの各ステップ中に、粉末層の厚さに対応する距離だけ垂直に延在し得、その結果、構築体積は、構築プロセス全体を通して増加する。以下でより詳細に説明するように、シュラウドは、構築プロセス全体を通して、構築体積内に粉末の体積及び/又は造形された部品の一部を含むように構成され、かつ配置されている。リコータシステム又は他の適切な構造などの粉末堆積システムは、構築体積の上面に沿って粉末の層を堆積するように構成され得、粉末堆積システムは、構築プレートに対して垂直に変位可能である。このシステムはさらに、1つ以上のレーザエネルギー源からのレーザエネルギーを構築体積に向けて方向づけるように構成された光学系組立体を含む。構築体積の最上部の粉末層をレーザエネルギーに曝露すると、粉末層の少なくとも一部が溶融する(例えば、所望の2次元パターンに従って)。構築プロセス中に、造形された部品の連続層は、粉末層の厚さに対応する距離だけ固定構築プレートに対して一定間隔で上方にシュラウド及び粉末堆積システムを動かし、必要に応じて各連続層の一部を融合することによって形成され得る。いくつかの実施形態では、光学系組立体はまた、構築表面に対して垂直に変位可能であり得、処理ステップ間でシュラウド及び粉末堆積システムとともに一定間隔で上方に動かされ得る。他の実施形態では、光学系ユニットの焦点距離は、その機械的据え付けを固定したまま、光学系構成要素を使用して調整され得る。どちらの構造でも、構築体積が構築プレートの上に上方に延在するため、光学系組立体の焦点を垂直方向に調整することを可能にし得る。このようにして、三次元部品は、固定構築プレートから層ごとに構築され得る。
【0013】
[0023] 上記に加えて、本発明者らは、積層造形システムの構築表面は、構築プロセス全体を通して、光学系ユニット及びリコータシステム(又は他の適切な粉末堆積システム)の両方と比較して、実質的に平坦かつ水平に維持されなければならないことを理解している。例えば、構築表面が光学系ユニットに対して水平でない場合、レーザ(複数可)の焦点は、構築表面全体にわたって構築表面と一致しない場合がある。レーザの焦点が合っていない領域で処理された粉末が適切に溶融しない場合があり、造形部品の機械的特性が低下する場合がある。構築表面がリコータシステムに対して水平でない場合、構築表面で処理される粉末層の厚さが変化することがあり、これは処理ステップ中に溶融される層の能力に影響を与えることがある。例えば、層の一部の領域の厚さが大きすぎる場合、レーザでスキャンしたときにそれらの領域が完全に溶融しないことがある。この不完全な溶融により、処理された層と構築プレート(構築プレートに堆積された第1層の場合)との間、又は処理された層と後続の層との間の、機械的接続が弱くなるか又は存在しなくなる。このような弱い接続は、複数の理由で有害になる可能性がある。例えば、第1層の場合、弱い接続は、構築プロセス中に構築プレートから一部分を層剥離させ得、これにより、後続のリコートステップ中にその部分が構築プレートから剥離し、リコータブレードに接触し、構築プロセスの失敗につながる可能性がある。さらに、処理された層間の弱い接続は、造形された部分内の不連続性につながることがあり、それはその部分の機械的堅牢性に悪影響を及ぼし、及び/又は構築プロセスの失敗につながる可能性がある。
【0014】
[0024] しかし、本発明者らは、構築体積及び質量が増加するにつれ、構築表面の水平化も困難になることを理解している。例えば、構築プレートの下に据え付けられた複数のアクチュエータを使用して、構築プレートのレベルを調整することができるが、そのような配置は、構築プレートの位置決め要件を達成することに関連するコスト、機械的複雑さ、及び制御の課題を追加するという点で望ましくない場合がある。いくつかの例では、構築プレートに手動でシムを入れて、平坦かつ水平にすることができるが、そのようなアプローチはかなりの時間と労力を必要とし、構築体積が増加するにつれて、及び/又は、以下で説明するように、加熱されたビルドプレートを使用する場合、非常に困難及び/又は危険になる可能性がある。構築プレートを室温で均すことは簡単であり得るが、動作温度まで加熱するとプレートレベルが影響を受ける場合がある。また、手動でシムを入れることは、構築体積レベルでのオペレータの介入を必要とし、これは、大型機械では望ましくない場合がある。例えば、ほとんどのレーザベースの3D金属印刷システムは不活性雰囲気を必要とする。構築シーケンスの各ステップで構築プレートを据え付けて、シムを入れるために構築体積レベルでオペレータの介入が必要な場合は、オペレータの介入後及び処理前に、機械体積を不活性ガス(通常は、窒素又はアルゴン)でパージする必要がある。このパージは、時間及び費用がかかる可能性がある。
【0015】
[0025] いくつかの態様によれば、本明細書に記載のシステムは、大量の構築体積をサポートしながら、構築プロセス全体を通して構築プレートの自動水平化を容易にすることができる。例えば、以下でより詳細に説明するように、いくつかの実施形態では、そのような自動水平化は、固定構築プレートの下にある1つ以上の支柱の制御された熱膨張を介して達成され得る。結果として、本明細書に記載のシステムは、構築表面を均すための従来のアプローチの上記の欠陥のうちの1つ以上を回避し得る。
【0016】
[0026] 上記に加えて、本発明者らは、場合によっては、構築プレートの加熱が有利であり得ることを認識している。例えば、構築プレートの温度が上昇するにつれて、造形された部分に誘起される熱応力が低減され得る。また、材料によっては、構築体積を最低温度以上に維持すると、1つ以上の冶金特性などの、造形された部分の1つ以上の特性を改善するのに役立ち得る。場合によっては、約150℃から約500℃の範囲の構築プレートの動作温度が適切であり得る。しかし、本発明者らは、構築プレートの加熱が構築表面の水平化、平坦性、及び/又は位置決め許容範囲に悪影響を及ぼす場合があること、及び構築プレートからの過剰な熱は、熱伝導が積層造形システムの他の構成要素において望ましくない加熱を引き起こすことを防ぐために抑制しなければならないことも認識している。
【0017】
[0027] 上記の観点から、本明細書に記載のいくつかの態様は、構築プレートに必要な支持及び/又は水平化を提供しながら、構築プレートを所望の温度に加熱することを可能にし得る。例えば、いくつかの実施形態では、積層造形システムの構築プレートは、ヒータを含む固定プレート上に据え付けられ得る。伝導により、構築プレートの温度を加熱された固定プレートの設定温度に追従させ得る。いくつかの実施形態では、固定プレートは、固定ベースから積層造形システムのベースへの機械的荷重を支える1つ以上の支柱に据え付けられ得る。以下でより詳細に説明するように、各支柱に沿った温度プロファイルを個別に調整することができ、結果として生じる熱膨張及び支柱内の誘起熱応力を使用して、構築プロセス全体を通して固定ベース及び構築表面を均すことができる。さらに、いくつかの実施形態では、現在の開示はこの点に関して限定されないので、加熱された固定ベースは含まれなくてもよい。例えば、支柱は構築プレートに直接取り付けられ得、支柱に沿った温度プロファイルを使用して、構築プレートの水平化を容易にすることに加えて、構築プレートを所望の温度にすることができる。
【0018】
[0028] 1つの例示的な実施形態では、積層造形システムは、固定ベースを含み、その上に構築プレートが据え付けられる。この固定ベースは、支柱などの支持構造体セットを通して機械ベース(すなわち、積層造形システムのベース又は外側ケーシング)に取り付けられている。粉末閉じ込めシュラウドは、構築プレート及び固定ベースを取り囲み、構築プレート及び固定プレートに対して垂直方向に変位可能である。シュラウドは、シュラウドが構築プレートに対して垂直方向に変位可能であるのを可能にする垂直運動ステージなどのアクチュエータによって支持されている。リコータシステムは、構築プレート上に支持され、リコータシステムに結合された別のアクチュエータセット又は運動ステージセットを介して構築プレートに対して垂直方向に変位可能であり得る。光学系組立体は、構築プレート全体にわたって据え付けられている。実施形態に応じて、光学系組立体は、構築表面全体にわたってレーザビームをスキャンする検流計システム、光学系ユニットが構築表面全体にわたる平面で機械的にスキャンされるのを可能にするガントリシステム上に据え付けられた固定光学系ユニット、及び/又は可動ガントリシステム上に据え付けられた検流計システムの組合せを備え得る。固定光学系焦点距離の場合、光学系ユニット(検流計又はガントリシステム)は、このユニットが構築プレートに対して垂直方向に変位可能であるのを可能にする垂直運動システムと結合され得る。光学系ユニットが、内部光学系構成要素から可変焦点距離を有する場合、光学系ユニットは、可能な限り高い構築表面、又はリコータ及びシュラウドシステムの上部位置を妨げないような十分に高い固定垂直位置に留まり得る。本開示はこの点で制限されていないので、いくつかの実施形態では調整可能焦点距離と調整可能光学系ユニット垂直位置との組合せも使用され得る。
【0019】
[0029] 図を参照すると、具体的な非限定的な実施形態がさらに詳細に説明されている。本開示は、本明細書に記載の具体的な実施形態のみに限定されないため、これらの実施形態に対して説明される様々なシステム、構成要素、特徴、及び方法が、独立してかつ/又は任意の望ましい組合せで使用され得ることを理解されたい。
【0020】
[0030] 図1は、積層造形システム、構築プロセスの開始時のある構成のシステムの一実施形態を描写している。このシステムは、固定プレート2上に据え付けられた構築プレート1を含み、固定プレート2が今度は、積層造形システムのベース4に取り付けられた垂直支持体3上に据え付けられている。粉末閉じ込めシュラウド5は、その最も低い位置にあり、ベース4に据え付けられている垂直運動ステージ6によって支持されている。リコータシステム7の形態の粉末堆積システムは、リコータシステムが構築プレート全体にわたって前後に動かされるのを可能にする水平運動ステージ8上に据え付けられている。リコータシステム水平運動ステージ8は、構築プレート1に対してリコータ7の垂直移動を促進する垂直運動ステージ9によって支持されている。図1では、リコータシステム7は、その最も低い位置で示されている。光学系ユニット10は、垂直運動ステージ11上に支持され、垂直運動ステージ11が今度は、光学系ユニットが構築プレート1の平面でスキャンされるのを可能にするガントリシステム12上に据え付けられている。光学系ユニットは、その最も低い位置で示されている。
【0021】
[0031] 図2は、構築プロセスの途中の中間構成にある図1の積層造形システムを描写している。この図に示されるように、シュラウド5、リコータシステム7、及び光学系ユニット10は、それぞれ、垂直運動ステージ6、9、及び11に関連付けられた総垂直移動距離に沿った中間位置にある。構築プレート1上のシュラウド5の延長部は、構築プレート上の構築体積13を規定する。
【0022】
[0032] 図3は、構築プロセスの終了時に対応する構成の同じシステムを描写している。具体的には、シュラウド5、リコータ7、及び光学系ユニット10は、それぞれ、構築プレート1に対してそれらの最上位置にあり、構築体積13は、その最大サイズを有する。構築プロセス全体を通して、垂直運動ステージ6、9、及び11のそれぞれに掛かる垂直荷重は、構築体積の高さが高くなっても、ほぼ一定のままである。また、垂直ステージのそれぞれで動かされる質量も、ほぼ一定のままである。このような構成により、各垂直運動システムは、構築プロセスでさらに層が加えられるのに従って、構築体積の変わる質量を考慮する必要なしに、その特定の荷重に対して調節され、最適化されることが可能になる。このように、システムの全体的な垂直位置精度は、大きな構築体積の場合でも維持され得る。
【0023】
[0033] いくつかの実施形態では、粉末が構築体積の外にずれることを防ぐために、構築プレート1とシュラウド5との間に、1つ以上のシールが設けられ得る。例えば、シールは、フェルト、ポリマー、ゴム、繊維、又は金物で形成され得、シールは、構築プレート及び固定プレートの最大使用温度に合わせて評価され得る。ただし、本開示がこの点で制限されないため、いくつかの実施形態ではシールが含まれない場合があることを理解されたい。例えば、シュラウドと構築プレートの周縁との接触は、構築プロセス中に粉末が構築体積を離れるのを防ぐほど十分であり得る。他の実施形態では、シュラウドは、延長可能構成を有し得る。例えば、延長可能シュラウドのベースが構築プレートの周縁の周りに取り付けられ、粉末が構築体積から離れるのを防ぐシールを形成することができ、延長可能シュラウドの上部が垂直運動ステージに取り付けられ、構築プロセス全体を通して、シュラウドを延長することができる。したがって、本開示が、構築プロセス中に粉末を構築体積内に閉じ込めるためのいずれの特定のシュラウド構造又はシール配置にも限定されないことを理解されたい。
【0024】
[0034] 上記のように、固定プレート及び/又は構築プレート用の支持構造体を使用して、構築プロセス全体を通して機械ベースに据え付けられている機械ベース及び他の構成要素に対して固定プレート及び構築プレートを水平にすることができる。このようなシステムの1つの例示的な実施形態が、図4及び図5に関連してより詳細に説明されている。具体的には、図4は、固定プレート101に取り付けられた構築プレート100の概略斜視図を示している。固定プレートは、機械ベース104に据え付けられ、取り付けられている2本の支柱102及び103に取り付けられている。各支柱は、それぞれ、独立して制御可能なヒータ105及び106を有する。各ヒータは、ヒータ内部か、又はヒータの下の支柱材料に据え付けられた関連の温度センサを有し得る。特定の実施形態に応じて、ヒータは、任意の適切な構成及び/又は配置を有し得、場合によっては、ヒータが取り付けられる支柱の形状に合うようにヒータ構成が選択され得る。例えば、丸い支柱を利用するいくつかの実施形態では、鉱物絶縁バンドヒータ又はコイル式ケーブルヒータなどのバンドヒータである。他の実施形態では(例えば、支柱が丸くない)、プレートヒータ又は薄膜ヒータが支柱の外側表面に取り付けられ得、かつ/又は1つ以上のカートリッジ様式ヒータが支柱に形成された据え付け孔に挿入され得る。代替として又は追加として、1つ以上の支柱が誘導加熱コイルなどの1つ以上の外部ヒータによって少なくとも部分的に取り囲まれ得る。したがって、本開示が、任意の特定のタイプ又は配置のヒータ又は加熱要素に限定されないことが理解されよう。
【0025】
[0035] 図5は、同じ組立体の正面図を示す。すべての構成要素が室温で始まると想定すると、構築プレートの第1右側の高さH1が、構築プレートの第2側の高さH2より低い場合、第1側の支柱102の温度は、その支柱に関連付けられたヒータ106を使用して上げられ得る。支柱の平均温度があるΔTだけ上げられる場合、H1の高さの変化は、ΔH=α・ΔT・Hから計算され得、ここで、αは支柱102の材料に対する熱膨張係数である。例えば、支柱が、17.3μm/m℃の想定熱膨張係数の場合に、100mmの初期長さ、10℃の平均温度変化の304ステンレス鋼ロッドから成る場合、支柱の長さの変化は、17.3μmになる。支柱に正味追加ストレスが加えられていない場合、この膨張のすべては、約17.3μmだけ構築プレートの右側を上にずらす結果になる。したがって、支柱の平均温度を上げることは、約1.73μm/℃の比率でその構築柱の上の領域の垂直運動をもたらすことになる。最初の検査で、構築プレートの第1側が、第2側に比べて例えば、25μm低い場合、第1側に関連付けられた支柱102は、構築プレートを水平状態にするために、平均ΔT上昇の14℃に熱せられるべきである。
【0026】
[0036] 図4及び図5、並びに図5に示されるシステムが十分な期間、平衡化されている場合、システムの対流損失及び伝導損失に基づき、熱的に安定した点が得られるであろう。この最終熱プロファイルは、2本の支柱の実際の膨張及び2本の支柱間の相対膨張を決定することになる。システムの他の部分の熱膨張も、機械ベースに対する構築プレート表面の最終位置を決定するために考慮する必要がでてくる。
【0027】
[0037] したがって、いくつかの実施形態は、特定の水平化運動を駆動する能力を高めることができる、図4及び図5に示される実施形態に対してより制御された熱状態をもたらすように構成され得る。例えば、図6に描写される実施形態では、構築プレート120は、埋め込みヒータ及び温度センサ122を有する固定プレート121に据え付けられている。支柱123及び124は、固定プレートに据え付けられ、機械ベース127よりも固定プレート121に近い位置で支柱上に据え付けられているヒータ125及び126を有する。支柱は、冷却プレート128、埋め込み冷却チャネル129、及び/又は任意の他の適切な冷却構造体を有する、機械ベース127に据え付けられている。固定プレートに埋め込まれたヒータを使用して、周囲状態に対する昇温など、望ましい温度に固定プレート及び構築プレートをさせることができる。機械ベース内の冷プレート及び/又は埋め込み冷却チャネルは、支柱からの、また支柱を通る熱伝導があっても一定温度に機械ベースを維持するためのヒートシンクとして使用され得る。この構成では、支柱は、固定プレート温度、機械ベース温度、及び支柱の周りの対流状態に基づく安定状態熱プロファイルに達するようになる。対流が支柱の周りの絶縁によって疎かにされるか、又は最小限に抑えられている場合、各支柱に沿った温度プロファイルは、固定プレート温度から機械ベース温度へほぼ線形になる。支柱を通したいずれの対流損失も、支柱の材料の性質(熱伝導性)、長さ、及び断面面積によって決まってくる。
【0028】
[0038] システムが熱平衡に達すると、構築プレートの表面が、水平であるかが測定され得る。例えば、これらのレベル測定は、光学系ユニット上に据え付けられた距離センサを使用して、また第1粉末層がリコータシステム又は他の適切な粉末堆積システムによって堆積される前に、構築プレートの上面全体にわたって複数の測定値を取ることによって、得られ得る。実施形態に応じて、距離センサは、光学式、機械式、及び/又は電気式であり得、システムの光学系ユニット又は他の適切な構成要素に対する構築プレート表面位置のミクロンレベルの測定値を提供することができる。距離センサが上で説明されているが、本開示が、構築プレートの配向を決定し、構築プレートが水平であるかどうか見極める、任意の特定のタイプのセンサに限定されないことを理解されたい。
【0029】
[0039] 距離センサ又は他の適切なセンサからの測定値を使用して、支柱上に据え付けられたヒータの温度を調整することができる。具体的には、各支柱に沿った温度プロファイルの変化が、支柱ごとの正味熱膨張をもたらすことになり、支柱の長さに沿った特定の温度プロファイルにおける熱膨張が、図7及び8に関連して以下に説明されるように概算され得る。構築表面を水平にするのに必要とされる正味熱膨張に基づき(例えば、距離センサからの測定値に基づいて決定された通りに)、支柱上の1つ以上のヒータ及び/又は機械ベース上の冷プレートが、必要な温度プロファイルに達するように制御され得る。
【0030】
[0040] 図7は、グラフA及びグラフBに示される2つの異なる場合の支柱の長さに沿った温度プロファイルを概略的に示す。具体的には、グラフAは、固定プレートが温度Tであり、機械ベースがTの温度のままである状態での温度プロファイルを示す。この例では、ヒータは、電源が切られ、支柱に沿った温度プロファイルに影響を及ぼさないと想定されている。支柱の温度変化の平均は、ΔTavg=(T-T)/2であり、元の冷状態からの長さの変化は、ΔH1A=α・ΔTavg・Hで与えられ得る。グラフBは、ヒータが固定プレートの近くに位置付けられ、ヒータの温度が固定プレートの温度に等しくなるように設定されている状態を示す。この例では、固定プレートと支柱ヒータとの間の支柱、並びにヒータの下の材料が固定プレート温度Tまで上がると想定されている。この場合、冷状態からの支柱の長さの変化は、ΔH1B=(α・ΔTavg・(H-L))+(α・(T-T)・L)で与えられる。ΔH1AとΔH1Bとの差は、固定プレート温度と同じ温度に支柱ヒータの温度を設定することからの高さ調整を表す。すべての項を膨張させ、簡略化することは、δAB=(α・(T―T)・L)/2)の2つの場合間の差分膨張をもたらす。したがって、固定プレートと機械ベースとの所与の温度差に対する感度は、ヒータの長さLによって決まり、より長いヒータを使用すると、より大きな差分膨張をもたらす。一例として、304ステンレス鋼支柱及び200℃の温度差の場合の25mmの長さを有するヒータは、43μmの差分膨張をもたらす。ヒータの長さを2倍にすると、熱膨張も2倍になるであろう。
【0031】
[0041] 図7に関連して上に述べた分析により、ヒータの位置及び長さの両方によって、本明細書に記載のシステムを使用して達成され得る、構築プレート水平補正の感度が決まることが実証される。より高感度な調整能力は、ヒータバンド位置を固定プレートから下方に離して移動させ、中間温度設定点にヒータを設定することによって、得られ得る。このような構成は、図8に示されている。支柱ヒータの電源が切られている状態では(グラフC)、固定プレートを加熱することからの柱長さの変化は、図7のグラフAに関連して上に説明したのと同じやり方で計算され、ΔH1C=α・H・(T-T)になり得る。グラフCに示されるように、ヒータの下のプロファイルの平均温度がTになるように支柱ヒータが位置付けられている。図8のグラフDに示される加熱された例では、ヒータは、ヒータ下の温度がTを上回るある事前設定値ΔTである不変の温度Tになるように設定されている。この構成は、以下の等式によって記述され得る。
[0042] T=T+ΔT
[0043]
【数1】

[0044]
【数2】

[0045]
【数3】

[0046] δCD=ΔH1D-ΔH1C
【0032】
[0047] 場合Cから場合Dへの熱膨張による長さの変化δCDは、ΔTとともに幾何学係数H、K、L、及びMによって決まる。H=200mm、K=100mm、L=50mm、25℃のT、及び200℃のTの304ステンレス鋼支柱を使用する一例では、Tは、134℃になり、10℃のΔTは、31μmのδCDをもたらすことになる。これは、3.1μm/℃の感度に対応する。この感度は、幾何学的係数(ヒータの位置及びヒータの長さ)を調整することによって、また支柱材質を変えて、様々な熱膨張係数を得ることによって、さらに調整され得る。
【0033】
[0048] 本開示が、上記のモデル及び/又は等式を使用して、特定の温度プロファイルの正味熱膨張を概算することに限定されないことを理解されたい。例えば、場合によっては、各柱に沿った温度プロファイルは、支柱に作用するすべての境界条件に基づき決定され得る。このような計算に入り込み得る多数の因子により、正確な解をもたらすのに有限要素解析が好都合であり得る。
【0034】
[0049] 平板の2つの側面を水平にすることができるのに加えて、支柱配列は、幅寸法及び長さ寸法に沿ってなど、構築プレートの複数の方向にわたって構築プレートを水平にするのに使用され得る。図9は、構築プレート150、固定プレート152、及び機械ベース154を含む一実施形態を示す。4本の支柱156は、機械ベース154と固定プレート152との間に延在する。この実施形態では、支柱は、構築プレート150にわたって4つの個所で水平にするのを可能にする2x2構成で配置されている。ほとんどすべての寸法の構築プレートを水平化できるように、他の配列及び構成の支柱が使用されてもよい。場合によっては、独立した熱制御を有する多数の支柱が、所与の構築プレート上の調整個所の数を増やして、構築プレートを望ましい程度に微調整することができる。
【0035】
[0050] 上記のように、いくつかの実施形態では、1つの以上の支柱が固定プレートと機械ベースとの間に設置され得る。他の実施形態では、1つ以上の支柱が、固定プレートと中間プレートとの間に設置され得、二次支柱セットが、中間プレートと機械ベースとの間に設置され得る。例えば、高い構築体積(すなわち、大きな粉末床構築高さ)のシステムに使用される構築プレートでは、構築プレートは、全高粉末閉じ込めシュラウドが機械ベースに接触することなく、構築プレート及び固定プレートの周りで下げられ得るように、機械ベースの上に十分に高く設置される必要があり得る。この全体の高さが、固定プレートと機械ベースとの間の支柱によって支えられる必要がある場合、支柱は、座屈荷重制限の周りの設計が難しくなるほどに長くなる場合がある。この場合、中間プレート構成が好都合であり得る。
【0036】
[0051] 図10は、中間プレートを利用する積層造形システムの一部の一実施形態を描写している。構築プレート200は、複数の支柱202によって支持されている固定プレート201上に据え付けられ、各支柱は、それ自体のヒータ203を有する。支柱は、中間プレート204に据え付けられている。中間プレートは、内部冷却チャネルを含み得るか、又はその上に据え付けられた外部冷プレートを有し得る。冷却チャネル及び/又は冷プレートは、中間プレートを固定温度に保つのを助けることができる。中間プレートは、二次支柱205上に据え付けられている。この実施形態では、これらの二次支柱は、加熱されず、二次支柱の形状、長さ、及び個数は、固定プレートと中間プレートとの間の支柱の配置と一致する必要がない場合がある。二次支柱は、機械ベース上にさらに据え付けられている。このようにして、加熱された支柱の長さ、個数、及び設計は、ここで、必要な粉末閉じ込めシュラウドの動きに構築プレート全高を合わせる必要なく、座屈荷重に対する感度及び抵抗を水平にするのに、最適化され得る。
【0037】
[0052] 図11は、構築プレート300、固定プレート301、及び機械ベース304を含む一実施形態を示す。2本の支柱303及び304が機械ベースと固定プレートとの間に延在する。2つの独立したヒータ305及び306が各支柱上に設けられている。用途によっては、このような構成は、各支柱に沿った熱プロファイルのより高度な制御を可能にすることができ、固定プレートと機械ベースとの間の温度ずれがより小さな状況で、かつ短い支柱が使用され得る場所で有用であり得る。支柱当たり複数の独立したヒータを使用することで、熱膨張を使用して構築プレートを水平にする際に制御感度が向上する。
【0038】
[0053] 用途によっては、加熱された支柱は、構築プレート上の可変荷重を補うのにも使用され得る。構築体積が各印刷層で増えるにつれて、蓄積した粉末及び印刷部分の質量は、やがて、すべての支柱、並びに、二次支柱がシステムにある場合は、二次支柱に共通圧縮を引き起こし始める。この圧縮は、多くの層にわたる印刷部分における累積高さ誤差を引き起こす場合がある。この圧縮は、計算され、同時にすべての支柱に共通熱ずれを加えることによって、補われ得る。例えば、一実施形態では、100印刷層当たりすべてのヒータ支柱に1℃追加することは、この種の可変荷重を補うのに適切であり得る。
【0039】
[0054] 本明細書に記載のヒータは任意の適切なやり方で制御され得ることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、例えば、構築プロセス中に構築プレートを水平に保つために、構築プレートの一部の望ましい動きを達成するように、支柱を望ましい長さに変えるために1つ以上のヒータの温度設定点を自動的に調整するように構成されたコントローラに動作可能に結合され得る。ヒータのこのような制御(又は、シュラウド、粉末堆積システム、光学系ユニットなどの動きを制御するなど、積層造形プロセスの他の側面)は、多くのやり方のいずれかで実施され得る。例えば、いくつかの実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組合せを使用して実装され得る。ソフトウェアにおいて実装される場合、単一のコントローラにおいて提供されるか、又は複数のコントローラにわたって分散されるかに関わらず、ソフトウェアコードが任意の適切なプロセッサ、又はプロセッサの集合体上で実行され得る。このようなプロセッサは、当技術分野では、CPUチップ、GPUチップ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又はコプロセッサなどの名前で知られている、市販の集積回路構成要素を含む集積回路構成要素内に1つ以上のプロセッサがある状態で、集積回路として実装され得る。代替として、プロセッサは、ASIC、又はプログラマブル論理デバイスを構成することからもたらされたセミカスタム回路網など、カスタム回路網に実装され得る。なおさらなる代替形態として、プロセッサは、市販であるか、セミカスタムであるか、又はカスタムであるかに関わらず、大型回路又は半導体デバイスの一部であり得る。具体例として、いくつかの市販のマイクロプロセッサは、複数のコアを有し、これらのコアのうちの1つ又はサブセットはプロセッサを構成し得る。それにも関わらず、プロセッサは、任意の適切な形態の回路網を使用して実装され得る。
【0040】
[0055] さらに、コントローラが、ラックマウント型コンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、又はタブレットコンピュータなど、いくつかの形態のうちのいずれかで具体化され得ることを理解されたい。加えて、コントローラが、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、スマートフォン、又は任意の他の適切なポータブル電子デバイスもしくは固定電子デバイスを含む、一般にコンピュータとは見なされないが適切な処理能力を備えるデバイスに埋め込まれ得る。
【0041】
[0056] また、コントローラは、1つ以上の入力デバイス及び出力デバイスを備え得る。これらのデバイスは、数ある中でも、ユーザインターフェースを提示するのに使用され得る。ユーザインターフェースを提供するのに使用され得る出力デバイスの例には、出力の視覚表現用のプリンタ又はディスプレイ、及び出力の可聴提示用のスピーカ又は他の音生成デバイスが含まれる。ユーザインターフェース用に使用され得る入力デバイスの例には、キーボードと、マウス、タッチパッド、及びデジタル化タブレットなどのポインティングデバイスと、が含まれる。別の例として、コントローラは、音声認識を通して又は他の可聴形態で入力情報を受信することができる。
【0042】
[0057] このようなコントローラは、企業ネットワーク又はインターネットなど、ローカルエリアネットワーク又は広域ネットワークとして含む、任意の適切な形態で1つ以上のナットワークによって内部接続され得る。このようなネットワークは、任意の適切なテクノロジに基づいている場合があり、任意の適切なプロトコルに従って動作することができ、無線ネットワーク、有線ネットワーク、又は光ファイバネットワークを含み得る。
【0043】
[0058] また、本明細書で概略が述べられる様々な方法又はプロセスは、様々なオペレーティングシステム又はプラットフォームのいずれか1つを採用する1つ以上のプロセッサ上で実行可能であるソフトウェアとしてコード化され得る。加えて、このようなソフトウェアは、いくつかの適切なプログラミング言語及び/又はプログラミングツールもしくはスクリプティングツールのいずれかを使用して書かれ得、またフレームワーク又は仮想マシン上で実行される実行可能機械言語コード又は中間コードとしてコンパイルされ得る。
【0044】
[0059] この点で、本明細書に記載の実施形態は、1つ以上のコンピュータ又は他のプロセッサ上で実行されると、上に述べた様々な実施形態を実装する方法を行う、1つ以上のプログラムで符号化された、コンピュータ可読記憶媒体(又は複数のコンピュータ可読媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つ以上のフロッピディスク、コンパクトディスク(CD)、光ディスク、デジタルビデオディスク(DVD)、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイもしくは他の半導体デバイスにおける回路構成、又は他の有形のコンピュータ記憶媒体)として具体化され得る。上の例から明らかであるように、コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的形態でコンピュータ実行可能命令を与えるのに十分な時間、情報を保つことができる。このような1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体は、移動可能であり得、そこに格納された1つ以上のプログラムは、上で述べたような本開示の様々な態様を実装するために、1つ以上の様々なコンピュータ又は他のプロセッサに読み込まれ得る。本明細書で使用される際、「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、製品(すなわち、製造品)又は機械であると考えられ得る非一時的コンピュータ可読媒体のみを包含する。代替として又は追加として、本開示は、伝播信号など、コンピュータ可読記憶媒体以外のコンピュータ可読媒体として具体化され得る。
【0045】
[0060] 「プログラム」又は「ソフトウェア」という用語は、本明細書では、一般的な意味合いで、上で述べたような本開示の様々な態様を実装するように、コントローラ、コンピュータ、又は他のプロセッサをプログラムするために採用され得る任意のタイプのコンピュータコード又はコンピュータ実行可能命令セットを指すように使用される。加えて、この実施形態の1つの態様によれば、実行されると、本開示の方法を行う1つ以上のコンピュータプログラムは、単一のコンピュータ又はプロセッサに存在する必要はなく、本開示の様々な態様を実装するようにいくつかの異なるコンピュータ又はプロセッサにわたってモジュール式で分散され得ることを理解されたい。
【0046】
[0061] 1つ以上のコンピュータ又は他のデバイスによって実行される、プログラムモジュールなど、コンピュータ実行可能命令には、多くの形態があり得る。大抵、プログラムモジュールは、特定のタスクを行うか、又は特定の抽象的なデータ型を実装する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素、データ構造などを含む。通常、プログラムモジュールの機能性は、様々な実施形態において必要に応じて組み合わされるか又は分散され得る。
【0047】
[0062] また、データ構造は、任意の適切な形態でコンピュータ可読媒体に格納され得る。図示を単純にするために、データ構造は、データ構造内の場所を通して関係しているフィールドを有するように示され得る。このような関係は、同様に、フィールド間の関係を伝達するコンピュータ可読媒体内の場所でフィールド用の記憶域を割り当てることによって達成され得る。ただし、データ要素間に関係を確立するポインタ、タグ、又は他の機構の使用を通してを含む、データ構造のフィールドにおいて情報間に関係を確立するのに任意の適切な機構が使用されてもよい。
【0048】
[0063] 本開示の様々な態様は、単独で、組合せて、又は、上で説明された実施形態で具体的に述べられていない様々な構成で使用され得、したがって、その適用において、上の説明で述べられるか、又は図面に示された詳細及び構成要素の配置に限定されない。例えば、一実施形態に記載の態様は、他の実施形態で記載の態様とどのようにも組合せられ得る。したがって、本教示が、様々な実施形態及び例に関連して説明されているが、本教示がこのような実施形態又は例に限定されることは意図されていない。それどころか、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、変更物、及び均等物を包含する。したがって、前の説明及び図面は、例としてのみのものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11