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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】安定した液体トロンビン組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/48 20060101AFI20231120BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231120BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231120BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20231120BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 41/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61K38/48 100
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/42
A61L31/04 120
A61P7/04
A61P41/00
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021507806
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 IL2019000002
(87)【国際公開番号】W WO2020035848
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】261190
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(31)【優先権主張番号】62/764,856
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511203455
【氏名又は名称】オムリックス・バイオファーマシューティカルズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Omrix Biopharmaceuticals Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】イラン・エレツ
(72)【発明者】
【氏名】ファインゴールド・オムリ
(72)【発明者】
【氏名】ドロン・シヴァン
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-192723(JP,A)
【文献】特表2008-541731(JP,A)
【文献】特開2014-076291(JP,A)
【文献】特開昭57-039849(JP,A)
【文献】特表2015-519152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61L 31/04
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
止血キットであって、
a.60~100%v/vグリセロールを含む液体トロンビン組成物を収容する容器と、
b.ゼラチンを収容する容器と、
を備える、止血キット。
【請求項2】
前記液体トロンビン組成物が、0~00%v/vのグリセロールを含む、請求項1に記載の止血キット。
【請求項3】
前記止血キットが、カルシウムを更に含む、請求項1又は2に記載の止血キット。
【請求項4】
前記液体トロンビン組成物が、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の止血キット。
【請求項5】
前記液体トロンビン組成物が、約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の止血キット。
【請求項6】
前記液体トロンビン組成物中のロンビンが、約50℃の温度で約20時間後に少なくとも70%活性である、請求項1~5のいずれか一項に記載の止血キット。
【請求項7】
前記液体トロンビン組成物中のロンビンが、約100℃の温度で約2分後に少なくとも70%活性である、請求項1~6のいずれか一項に記載の止血キット。
【請求項8】
前記液体トロンビン組成物が、60~80%v/vのグリセロールを含む、請求項1に記載の止血キット。
【請求項9】
リセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物の大規模生産方法であって、
a.トロンビンをグリセロール溶液と混合することによってトロンビン溶液を調製し、60~100%v/vグリセロールを有する溶液を得る工程と、
b.得られた前記トロンビン溶液を少なくとも約40℃に加熱する工程と、
c.約0.22μm以下の孔径を有する少なくとも1つのフィルタを通過させることによって、前記トロンビン溶液を滅菌する工程と、
を含むことにより、60~100%v/vグリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物を得る、方法。
【請求項10】
熱不活性化により実行されるウイルス不活性化の工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記トロンビン溶液が、0~00%v/vのグリセロールを含む、請求項9又10に記載の方法。
【請求項12】
前記トロンビン溶液が、カルシウムを更に含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記トロンビン溶液が、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を更に含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記トロンビン溶液が、約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記滅菌液体トロンビン組成物中の前記トロンビンが、約50℃の温度で約20時間後に少なくとも70%活性である、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記滅菌液体トロンビン組成物中の前記トロンビンが、約100℃の温度で約2分後に少なくとも70%活性である、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
60~100%v/vグリセロール含む液体トロンビン組成物と、
ゼラチンと、を含むシーラント配合物。
【請求項18】
前記液体トロンビン組成物が、80~00%v/vのグリセロールを含む、請求項17に記載のシーラント配合物。
【請求項19】
カルシウムを更に含む、請求項17又18に記載のシーラント配合物。
【請求項20】
約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む、請求項17~19のいずれか一項に記載のシーラント配合物。
【請求項21】
フィブリノゲン成分を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載のシーラント配合物。
【請求項22】
塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を更に含む、請求項17~21のいずれか一項に記載のシーラント配合物。
【請求項23】
前記トロンビンが、約50℃の温度で約20時間後に少なくとも70%活性である、請求項20に記載のシーラント配合物。
【請求項24】
前記トロンビンが、約100℃の温度で約2分後に少なくとも70%活性である、請求項20に記載のシーラント配合物。
【請求項25】
前記液体トロンビン組成物が滅菌液体トロンビン組成物である、請求項17に記載のシーラント配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、グリセロールを含む安定した液体トロンビン組成物、それらの調製、及びその組成物を含む止血キットに関する。本発明は更に、グリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
出血の制御は、失血を最小限に抑え、術後合併症を低減させ、手術室での手術の時間を短くするために、特に外科的処置において必須かつ重要である。トロンビンを含む止血調整物が利用可能であるが、トロンビンは、トロンビンを不安定にする自己触媒機能により、凍結又は粉末形態で提供される。液体トロンビンのいくつかの調製物が現在知られており、例えば、
欧州特許第0277096号は、安定化量のポリオール及び特定のpHの緩衝液を使用して室温で安定したトロンビン配合物を開示している。
米国特許出願第US4696812号は、安定化量の抗自己分解緩衝液を低濃度の生理食塩水及びグリセロールと組み合わせて使用して変成を防止し、保存安定性を付与したトロンビン溶液を開示している。
米国特許出願公開第US4965203号は、安定化量のポリオール及び特定のpHの緩衝液を使用して、室温で安定した、改善トロンビン配合物を開示している。
米国特許出願公開第20060270015号は、高純度及び高特異的活性を有するトロンビン含有の安定した滅菌液体配合物、並びにそのような配合物を作製及び使用する方法を開示している。
米国特許出願公開第20140120078号は、可塑剤(例えばグリセロール)、及びトロンビンなどの生物活性剤を更に含んでもよい、架橋ヒドロゲル及びそれらを含むキットを開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
液体トロンビン調整物から、凍結乾燥医薬調整物を作製することができ、これは使用時に溶解させた後で用いられる。
【0004】
トロンビンを安定化させるための現在公知の組成物及び方法は、満足のいくものではなく、例えば、以下が挙げられる:様々な非特異的成分(例えば、アルブミン等のバルク担体タンパク質、様々な安定化糖類、一般的なプロテアーゼ阻害剤等)の含有;効率的であり得るが、トロンビンを不活性化又は阻害することによって有効性を低減するトロンビン活性阻害剤を伴うトロンビンの配合;大量の配合物の投与を必要とする低トロンビン濃度溶液の配合。
【0005】
本発明は、使用前に溶媒に溶解する追加工程なしに、安定した液体トロンビン組成物を容易に投与するという未だ達成されていない需要を満たすという点で、凍結乾燥調製物よりも有利である液体調製物を提供する。加えて、本発明は、保存安定性を有する液体トロンビン組成物を容易かつ迅速に投与するという未だ達成されていない需要を満たすという点で、トロンビンを含む医薬凍結乾燥組成物よりも有利である、液体トロンビンを含む使用し易い医薬液体組成物を提供する。用語「医薬液体」は、治療又は薬効値を有する物質を含む任意の液体を指す。
【0006】
特定の実施形態では、本発明は、
a.50%v/v超のグリセロールを含む液体トロンビン組成物を収容する容器と、
b.ゼラチンを収容する容器と、を備える止血キットを提供する。
【0007】
止血キットのいくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、約60~約100%v/vのグリセロール、又は80~約100%v/vのグリセロールを含む。
【0008】
止血キットのいくつかの実施形態では、トロンビン溶液は、約60~約100%v/vのグリセロール、又は80~約100%v/vのグリセロールを含む。止血キットの一実施形態では、トロンビン溶液は、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%などの、60%超、65%超、70%超、又は75%v/v超(それらの間の任意の値及び範囲を含む)のグリセロールを含む。
【0009】
止血キットのいくつかの実施形態では、キットはカルシウムを更に含む。止血キットのいくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を更に含む。止血キットのいくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、1~約5000IU/mlのトロンビンを含む。止血キットのいくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、約1~約2000、又は100~約2000IU/mlのトロンビンを含む。
【0010】
止血キットのいくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で約20時間後に少なくとも70%活性である。止血キットのいくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約100℃の温度で約2分後に少なくとも70%活性である。キットは、使用説明書を更に収容してもよい。
【0011】
別の態様によれば、本発明は、トロンビン、ゼラチン、及びグリセロールを含む止血組成物を提供し、グリセロールは、固形分の30重量%超である。
【0012】
止血組成物のいくつかの実施形態では、組成物はカルシウムを更に含む。止血組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を更に含む。止血組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、1~約2500IU/mlのトロンビン、又は約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む。止血組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、止血を補助する局所使用のためのものである。
【0013】
更なる態様によれば、本発明は、50%v/v超のグリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物の大規模生産方法(「大規模生産方法」)を提供し、本方法は、
a.トロンビンをグリセロール溶液と混合することによってトロンビン溶液を調製し、50%v/v超のグリセロールを有する溶液を得る工程と、
b.得られたトロンビン溶液を少なくとも約40℃に加熱する工程と、
c.約0.22μm以下の孔径を有する少なくとも1つのフィルタを通過させることによって、トロンビン溶液を滅菌する工程と、
を含むことにより、50%v/v超のグリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物を得る。
【0014】
大規模生産方法のいくつかの実施形態では、本方法は、熱不活性化によって実行されるウイルス不活性化の工程を更に含む。大規模生産方法のいくつかの実施形態では、トロンビン溶液は、約60~約100%v/vのグリセロール又は80~約100%v/vのグリセロールを含む。本方法の一実施形態では、トロンビン溶液は、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%などの、60%超、65%超、70%超、又は75%v/v超(それらの間の任意の値及び範囲を含む)のグリセロールを含む。
【0015】
大規模生産方法のいくつかの実施形態では、トロンビン溶液は、カルシウムを更に含む。大規模生産方法のいくつかの実施形態では、トロンビン溶液は、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を更に含む。
【0016】
大規模生産方法のいくつかの実施形態では、トロンビン溶液は、1~約2500IU/mlのトロンビン、又は約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む。大規模生産方法のいくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で約20時間後に少なくとも70%活性である。大規模生産方法のいくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約100℃の温度で約2分後に少なくとも70%活性である。
【0017】
更に別の態様によれば、本発明は、本発明の方法によって得られる50%v/v超のグリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物を提供する。
【0018】
更なる態様によれば、本発明は、50%v/v超のグリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物を提供する。
【0019】
滅菌液体トロンビン組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、約60~約100%v/vのグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、滅菌液体トロンビン組成物は、約60~約100%v/vのグリセロール又は80~約100%v/vのグリセロールを含む。滅菌液体トロンビン組成物の一実施形態では、トロンビン溶液は、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%などの、60%超、65%超、70%超、又は75%v/v超(それらの間の任意の値及び範囲を含む)のグリセロールを含む。
【0020】
滅菌液体トロンビン組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、カルシウムを更に含む。滅菌液体トロンビン組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を含む。滅菌液体トロンビン組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、1~約2500IU/mlのトロンビン、又は約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む。滅菌液体トロンビン組成物のいくつかの実施形態では、トロンビンは、約50℃の温度で約20時間後に少なくとも70%活性である。滅菌液体トロンビン組成物のいくつかの実施形態では、トロンビンは、約100℃の温度で約2分後に少なくとも70%活性である。滅菌液体トロンビン組成物のいくつかの実施形態では、組成物はゼラチンを更に含む。
【0021】
更に別の態様によれば、本発明は、トロンビン、ゼラチン、及びグリセロールを、固形分の30重量%超の濃度範囲で含む止血組成物を提供する。
【0022】
更に別の態様によれば、本発明は、トロンビンと、50%v/v超のグリセロールとを含むシーラント配合物を提供する。シーラント配合物のいくつかの実施形態では、配合物は、約60~約100%v/vのグリセロール又は80~約100%v/vのグリセロールを含む。シーラント配合物の一実施形態では、配合物は、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%などの、60%超、65%超、70%超、又は75%v/v超(それらの間の任意の値及び範囲を含む)のグリセロールを含む。
【0023】
シーラント配合物のいくつかの実施形態では、配合物は、約60~約100%v/vのグリセロール又は80~約100%v/vのグリセロールを含む。シーラント配合物のいくつかの実施形態では、配合物はカルシウムを更に含む。シーラント配合物のいくつかの実施形態では、配合物は、1~約2500IU/mlのトロンビン、又は約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む。
【0024】
更に別の態様によれば、本発明は、固形分の30重量%超の濃度範囲で、トロンビン、ゼラチン、及びグリセロールを含む滅菌止血組成物を提供する。滅菌止血組成物の一実施形態では、組成物は、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%などの、60%超、65%超、70%超、又は75%v/v超(それらの間の任意の値及び範囲を含む)のグリセロールを含む。
【0025】
更に別の態様によれば、本発明は、トロンビンと、50%v/v超のグリセロールとを含む滅菌シーラント配合物を提供する。
【0026】
滅菌シーラント配合物のいくつかの実施形態では、配合物は、65~約100%、65~約100v/vのグリセロール、又は80~約100v/vのグリセロールを含む。滅菌シーラント配合物の一実施形態では、配合物は、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%などの、60%超、65%超、70%超、又は75%v/v超(それらの間の任意の値及び範囲を含む)のグリセロールを含む。
【0027】
シーラント配合物のいくつかの実施形態では、配合物はカルシウムを更に含む。シーラント配合物のいくつかの実施形態では、配合物は、1~約2500IU/mlのトロンビン、又は約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む。
【0028】
一部の実施形態では、シーラント配合物は、フィブリノゲン成分を含む。
【0029】
本明細書に提示されるキット、組成物、配合物、及び方法の任意の態様のいくつかの実施形態では、キット、組成物、及び/又は配合物は、それぞれ、少なくとも2成分キット、2成分組成物、及び2成分配合物である。2成分組成物及び2成分配合物の任意の態様のいくつかの実施形態では、成分のうちの1つはフィブリノゲンを含む。
【0030】
例えば、キットは、アプリケータ装置を使用して適用されてもよく、少なくとも2成分物質(例えば、EVICELなどのフィブリンシーラント)の複数回の連続注入を投与するために使用されてもよい。一実施形態では、アプリケータ装置は、装置を移動させながら、組織の2次元表面上に固定量の混合構成要素を複数回注入することを可能にする。一実施形態では、アプリケータは、注入針を有し、注入針は任意選択で、注入が完了した後、投与者が注入面から上方に装置を持ち上げる必要なく、患者の皮膚から自動的に後退させられる。一実施形態では、キットは、任意の態様の任意の実施形態において、フィブリノゲン成分及びトロンビン成分を有するフィブリンシーラントを投与するために使用されてもよい。
【0031】
本明細書及び当該技術分野において使用されるとき、用語「フィブリノゲン」は、血栓マトリクスの前駆体タンパク質を指す。フィブリノゲンは、約340000ドルトンの分子量を有し、ジスルフィド結合によって共に結合される、3つの対の異なるポリペプチド鎖Aα、Bβ、及びγからなる。典型的には、フィブリノゲンは、2つの同一のD末端球状ドメイン及び1つの中央E球状ドメインが、高次コイルα-螺旋体によって結合した三節構造を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、フィブリノゲンは、フィブリノゲン濃縮物であるか、又はフィブリノゲン濃縮物から発生する。いくつかの実施形態では、フィブリノゲンは、血液由来のフィブリノゲン濃縮物である。
【0033】
全体的に、用語「発生する」又は「由来する」は、互換的に使用され、天然由来、組み換え、処理、未精製、又は精製された分子(例えば、関連タンパク質)を含み得る、関連成分の起源又はソースを指す。いくつかの実施形態では、フィブリノゲン濃縮物は、寒冷沈降したフィブリノゲンを含む。いくつかの実施形態では、フィブリノゲンは、寒冷沈降したフィブリノゲンから発生する。いくつかの実施形態では、フィブリノゲン溶液成分及びトロンビン溶液は、1:2~2:1、例えば、約1:1の比(v/v)で組み合わされる。
【0034】
いくつかの実施形態では、寒冷沈降したフィブリノゲンは、血漿の生物学的活性成分(BAC)と見なされる。いくつかの実施形態では、BACは、不活性化されたウイルスである。いくつかの実施形態では、BACは、限定されることなく、トラネキサム酸などの抗線維素溶解剤を含む生物学的活性成分である。トラネキサム酸を含む非限定的な例示のBACは、「Quixil」(Omrix、イスラエル)の名称の製品である。これは、第2世代BACと考えられ、当該技術分野では「BAC2」と呼ばれている。BAC2の調製中に、プラスミノゲン(フィブリノゲン及びフィブリンを分解するプラスミンの酵素前駆体)が除去される。BACの非限定的な調製経路は、米国特許第6、121、232号及び/又は国際公開第1998033533号に記載されており、その内容が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、BAC組成物は、1つ以上の抗線維素溶解剤(例えば、トラネキサム酸)及びアルギニン塩酸塩を含む。BAC中のトラネキサム酸などの抗線維素溶解剤の量は、約80~約110mg/mLとすることができる。いくつかの実施形態では、BAC2は、内容が参照により本明細書に組み込まれる欧州特許第534178号の開示に従って調製される。例えば、BAC2は、濃縮された寒冷沈降物から調製され得、その後、例えば、溶媒界面活性剤処理及び低温殺菌によって、ウイルスの不活性化を受ける。寒冷沈降物からプラスミン/プラスミノゲンを除去することを考慮すると、トラネキサム酸やアプロチニンなどの抗線溶薬を添加する必要はない。したがって、いくつかの実施形態では、BAC2はトラネキサム酸を含まない。
【0035】
SURGICEL(登録商標)などのいくつかの止血材料が、開示されるキット及び/又はトロンビン配合物と組み合わせて効果的に使用されてもよい。例えば、開示されるトロンビン溶液は、使用前にゼラチン、例えば流動性ゼラチンマトリクスに添加されてもよい。いったんゼラチンがトロンビン配合物と混合されると、適切なアプリケータの先端が、出血部位若しくは組織上への製品送達のため、又は毛細血管及び小静脈からの滲出血液及び小出血にアクセス可能であるときは止血の支援及び出血の制御として、シリンジに取り付けられてもよい。
【0036】
用語「組織」は、特定の機能を行う上で統合された細胞及び/又は細胞成分の会合を指す。組織中の細胞は、全てが1つの種類であるか複数の種類であり得る。組織は、生体の組織と同様に機能するように細胞を増殖させた人工組織であってもよい。組織は、人体組織又は動物組織であってよい。
【0037】
2成分組成物は、2つの成分を(例えば、混合時に)組み合わせることによって組成物を得て、同時に、又はその後に、得られた組成物を出血低減又は予防が必要とされる部位に直接塗布することによって提供されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物の塗布は、処理される領域上に組成物を噴霧又は滴下することによって補助される。
【0038】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。本明細書に記載されているものと同様又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実行又は試験に使用することが可能であるが、代表的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾のある場合、定義を含め本特許明細書が適用される。なお、材料、方法、及び実施例は、単に例示的なものであり、必ずしも限定を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】様々なグリセロール濃度が、50℃で24時間(h)のトロンビン活性に及ぼす影響を示すグラフである。トロンビンを、二重蒸留水(DDW)中のいくつかの異なる濃度のグリセロールに懸濁させ、50℃で24時間置いた。活性は、1、4.5、8及び24時間で測定し、灰色のドット付き実線は0%グリセロール、黒色の実線が50%v/vのグリセロール、灰色の破線が60%v/vのグリセロール、点線が80%v/vのグリセロール、n=4とした。
図2A】様々なグリセロール濃度が、25℃及び4℃でのトロンビン活性に及ぼす影響を示す棒グラフである。トロンビンを、DDW中のいくつかの異なる濃度のグリセロールに懸濁させ、25℃で6ヶ月間及び4℃で12ヶ月間置いた。図2Aは、25℃で3ヶ月及び6ヶ月で測定された活性を示す。
図2B】様々なグリセロール濃度が、25℃及び4℃でのトロンビン活性に及ぼす影響を示す棒グラフである。トロンビンを、DDW中のいくつかの異なる濃度のグリセロールに懸濁させ、25℃で6ヶ月間及び4℃で12ヶ月間置いた。。図2Bは、4℃で12ヶ月で測定された活性を示す。本明細書及び棒グラフにおける上記の棒は、標準偏差を示す。
図3】様々なグリセロール濃度が、100℃でのトロンビン活性に及ぼす影響(2分後に測定)を示すグラフである。トロンビンを、DDW中のいくつかの異なる濃度のグリセロール中に懸濁させ、100℃で置いた。活性は、2分後に測定した。ドット付きの黒色実線が50%v/vのグリセロール、灰色の実線が60%v/vのグリセロール、点線が80%v/vのグリセロール、n=2とした。
図4】様々なグリセロール濃度が、ブタパンチ生検モデルにおける生体内でのトロンビン活性に及ぼす影響を示す棒グラフである。トロンビンをDDW中のグリセロールの示された濃度に懸濁させ、ゼラチンキット中の再構成トロンビンの代わりに使用して、様々なグリセロール濃度でトロンビンを含むゼラチンペーストを調製した。出血を止めるために必要なタンポナーデの数に従ってトロンビン活性を測定した。左から、0%v/vのグリセロール中のトロンビンを含むゼラチンペースト、50%v/vのグリセロール中のトロンビンを含むゼラチンペースト、60%v/vのグリセロール中のトロンビンを含むゼラチンペースト、及び100%v/vのグリセロール中のトロンビンを含むゼラチンペースト、n=5とした。
【発明を実施するための形態】
【0040】
トロンビンは、出血を制御するための止血材料として広く使用されている。しかしながら、トロンビンは自己触媒酵素であり、したがって、液体形態では不安定である。トロンビン濃度が上昇する、及び/又は温度が上昇するにつれて、液体トロンビン安定性の持続時間が減少する。その結果、トロンビンの市販の調製物は、粉末又は凍結液体として存在する。これには、粉末トロンビンの再構成及び凍結トロンビンの解凍の必要性による比較的長い調製時間や、低温での出荷の必要による出荷制約だけでなく、調製が粉末トロンビンの再構成を必要とする場合には、潜在的に損なわれる滅菌性が損なわれる危険性などの、いくつかの欠点がある。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「粉末」は、典型的には0.1~1000マイクロメートルの範囲内の小径を特徴とする固形の複数の粒子を指す。
【0042】
用語「固形」は、室温(例えば、25℃)及び大気圧(760mmHg)での化合物又は組成物、すなわち、保存中に形態を保持する高粘稠度の化合物又は組成物を特徴とする。本出願におけるこの用語はまた、非流体粒子又は溶解物質にも関連する。「液体」化合物及び組成物とは対照的に、固形はそれ自重下で流動しない。
【0043】
本明細書で使用するとき、「トロンビン」は、プロトロンビンのタンパク質分解切断(因子II)から生じる活性化酵素を示す。トロンビンは、当該技術分野において既知の様々な製造方法によって生産されてもよく、組み換えトロンビン及び血漿由来トロンビンが含まれるが、これらに限定されない。ヒトトロンビンは、ジスルフィド結合によって接合された2つのポリペプチド鎖からなる、295アミノ酸タンパク質である。ヒト及び非ヒト(例えば、ウシ)トロンビンの両方を、本開示の範囲内で使用することができる。
【0044】
本発明で使用されるトロンビンの起源は、組み換え細菌及び/又は細胞(Vu et al.、2016、J.Viet.Env.8(1):21~25)、全血(いくつかの献血でプールされる又はされない)、及び/又は血液画分(いくつかの献血、例えば血漿からプールされ得る)を含むが、これらに限定されない1つ又は複数のソースから得られ得る。トロンビンは、Johnson and Johnson、Baxter、及びCSL Behringなどの製造業者から、スタンドアロン製品、例えばEVITHROM(登録商標)として、又はEVICEL(登録商標)、TISEEL(登録商標)、Beriplast(登録商標)などの製品の構成要素として入手可能である。
【0045】
本発明者らは、驚くべきことに、トロンビン溶液中の50%v/v超の高濃度グリセロールは、例えば、高温でのトロンビン酵素の安定性の向上、及び生体内でのトロンビン活性の向上をもたらすことを見出した。
【0046】
図1に示されるように、グリセロールなしで調製されたトロンビンが、50℃で24時間後に約90%の活性を失う一方、50%グリセロール以上を含むトロンビンの活性は完全に維持される。更に、図3に示されるように、100℃で2分後、通常は酵素活性が完全に低下するが、75%の活性が50%グリセロールを含んで維持され、少なくとも90%の活性が60%又は80%グリセロールを含んで維持される。この高温での安定性の向上により、液体トロンビンを、冷蔵を必要としない液体状態での輸送、取扱い、及び保存のように、これまでは不可能であった方法で使用することが可能になる。更に、以下の実施例3は、一般にフィルタ滅菌にとっては粘性が高すぎると考えられるグリセロールを、40℃及び50℃の温度で効果的に濾過することができることを示す。上記の結果を組み合わせることにより、本明細書に記載されるように濾過温度を上昇させることによって、高グリセロール濃度(例えば、60重量%超)の溶液中での液体トロンビンの濾過による滅菌が可能になる。
【0047】
用語「フィルタ」、及びその語尾変化は、流体、例えば、液体流における粒子の通過を阻止、邪魔、妨害、又は干渉することを意味する。
【0048】
しかしながら、潜在的な問題は、グリセロールなどの粘性媒体が、トロンビンとその標的分子との相互作用に干渉する場合があるため、形成される血塊の形成、動態、又は品質に影響を及ぼし得ることである。これに基づいて、当業者であっても、高グリセロール濃度とトロンビンを組み合わせることは思いつかなかったであろう。
【0049】
それにもかかわらず、驚くべきことに本発明者らによって発見されたように、この状況は生体内では異なる。図3は、グリセロールを含む液体トロンビン溶液で調製されたゼラチンの生体内活性を説明する。ゼラチンキット(Surgiflo(登録商標))は、出血部位内/上に塗布する直前に共に混合されたゼラチン及びトロンビン粉末を含む。トロンビンは粉末状態で提供されるため、施術者による再構成を必要とする。
【0050】
上記の粘度の問題とは対照的に、図4に示されるように、グリセロールで再構成されたトロンビン中のグリセロール濃度の増加は、配合物の出血を低減する能力の向上に対応することが見出された。加えて、本発明の液体トロンビン配合物の重要な利点は、再構成の工程を節約することによって、施術者の煩雑さを防止して時間を節約するだけでなく、汚染リスクを最小限に抑えることである。
【0051】
用語「液体トロンビン組成物」、「液体トロンビン溶液」、「トロンビン溶液」、及び「液体トロンビン配合物」は、互換的に使用され、トロンビンを含む液体組成物を指す。いくつかの実施形態では、「液体トロンビン組成物」は、水溶液であり、すなわち、1~50%未満の水(%v/v)を含む。
【0052】
用語「液体」は、流動することができ、固定された形状を有さず、固体又は気体ではない物質を指す。
【0053】
その結果、本発明の安定した液体トロンビン組成物は、粉末又は凍結トロンビンを止血材料として置き換えるために使用することができる。本発明の液体トロンビンは、スタンドアロントロンビン溶液、例えば、滅菌及び安定した単独トロンビン溶液として、又は、Surfiglo(登録商標)キットなどのキットの一部として、又はこれらのキット中のトロンビン成分の代わりにフィブリンシーラントキットとして提供することができる。
【0054】
したがって、本発明は、一態様では、50%v/v超のグリセロールを含む液体トロンビン組成物を収容する容器と、ゼラチンを含有する容器と、を含む、止血キットを提供する。本発明はまた、50%v/v超のグリセロールを含む保存安定滅菌液体トロンビン組成物を収容する容器と、ゼラチンを含有する容器と、を含む、止血キットを提供する。
【0055】
用語「保存安定」は、配合物や組成物が、予め選択された保存温度、配合物(例えば、流体/液体)の予め選択された物理的状などの、予め選択された保存条件下で、任意選択で容器、例えばバイアル内で安定していることを指すものとして理解すべきである。安定性は、例えば配合物が液体形態であるとき、当該技術において既知な方法、例えば、予め選択された保存条件下で配合物中に視認できる凝集体及び/又はフィブリン凝塊の不在を試験することによって判定することができる。更に、本開示によれば、安定したシーラント配合物に言及するとき、使用時に、配合物の保存条件にかかわらず有効な凝固時間を有すると理解されるべきであり、例えば、シーラント配合物は、室温(例えば、8~40℃)で保存されたか又は低温(又は8℃未満)で保存されたかどうかにかかわらずほぼ同じ期間で凝固する。
【0056】
いくつかの実施形態において、予め選択された保存条件は、室温(例えば、10~30℃)での保存を含み、シーラント配合物は、少なくとも5分間、少なくとも15分間、少なくとも1時間、少なくとも1日間、少なくとも2、3、4、5、6、又は更には7日間、時には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は更には24ヶ月以上(それらの間の任意の値及び範囲を含む)安定している。
【0057】
いくつかの実施形態において、予め選択された保存条件は、低温(例えば、2~10℃)での保存を含み、シーラント配合物は、少なくとも5分間、少なくとも15分間、少なくとも1時間、少なくとも1日間、少なくとも2、3、4、5、6、又は更には7日間、時には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は更には24ヶ月以上(それらの間の任意の値及び範囲を含む)安定している。
【0058】
用語「容器」は、例えば液体を含有し得る容器又はバイアルなどの任意の一般的な構造を指すことができる。
【0059】
一実施形態では、このキットは、8~40℃の範囲の温度など、室温で保存される。
【0060】
別の態様では、本発明は、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、又は90%超v/vのグリセロール、例えば、60%~100%、又は80%~100%v/vのグリセロールを含む液体トロンビン組成物を収容する容器と、ゼラチンを収容する容器と、を備える、2~8℃で保存するための止血キットを提供する。
【0061】
本発明の止血キットは、例えば開放創の血流を低減、遮断、又は停止する際に使用するためのキットであってもよく、例えば、腹腔鏡手術、神経手術、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭部及び頸部手術、骨盤手術、並びに皮膚及び皮下組織処置などの外科的処置などの処置中に血流を低減、予防、又は停止するために使用されてもよい。キットは、皮膚から、内部臓器内の血流を低減又は遮断するために使用されてもよい。
【0062】
用語「液体溶液」は、粘性溶液も包含する。用語「粘性溶液」とは、流に対する抵抗性が高いが、流れることができ、限定ではないが典型的には、約1センチポアズ単位を超え、約10000センチポアズ単位未満である溶液を指す。
【0063】
キット用の液体トロンビン組成物は、滅菌であってもよく、以下の工程を含む大規模製造方法から得ることができる。
a.トロンビンをグリセロール溶液と混合することによってトロンビン溶液を調製し、50%v/v超のグリセロールを有する溶液を得る工程と、
b.得られたトロンビン溶液を少なくとも40℃に加熱する工程と、
c.0.22μm以下の孔径を有する少なくとも1つのフィルタを通過させることによって、トロンビン溶液を滅菌する工程と、
を含むことにより、50%v/v超のグリセロールを含む液体滅菌トロンビン溶液を得る。
【0064】
本明細書で使用するとき、用語「大規模」は、少なくとも1リットルの溶液が生成され、典型的には少なくとも約400IUのトロンビンを含むプロセスに関する。
【0065】
本発明のゼラチン源は、合成(例えば、組み換えゼラチン)であってもよく、又はブタなどの動物由来であってもよい。ゼラチン源は滅菌であってもよく、ペースト、粉末、又はスポンジなどの異なる形態であってもよい。本明細書で使用するとき、用語「ペースト」は、室温付近の少なくとも1つの温度における組成物の粘稠度に関し、固形粒子の流体混合物を指すことができる。
【0066】
本発明で使用されるゼラチンは、使用前に架橋されてもよい。ゼラチンの架橋は、当該技術分野において開示される任意の数の好適な方法によって実施することができる。例えば、ゼラチンは、150℃まで3時間加熱することによって架橋することができる(Nagura et al.、2002、Polymer Journal 34:761~766)。
【0067】
いくつかの実施形態では、ゼラチンは溶媒中に溶解してゼラチンペーストを形成する。いくつかの実施形態では、ゼラチンペーストはグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、ゼラチンペーストは、固形分の30重量%超でグリセロールを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は滅菌である。
【0069】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、50%v/v超のグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%v/vのグリセロールを含む(それらの間の任意の値及び範囲を含む)。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、100%v/vのグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、約50%~約80%v/vのグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、約60%~約80%v/vのグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、約60%~約100%v/vのグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、約70%~約100%v/vのグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、約80%~約100%v/vのグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、65%超、67%超、又は70%超、及び最大約100%(溶媒体積)%v/vのグリセロールを含む。
【0070】
別途記載のない限り、グリセロールの状況におけるグリセロール濃度の「%v/v」又は「%」の定義は、液体トロンビン組成物中の溶媒(例えば、水)の総体積におけるグリセロール体積の割合に関する。本明細書で使用するとき、用語「溶媒」は、その物理的状態を変化させずに、別の物質を溶解又は分散させる材料を指す。
【0071】
カルシウムは、凝固カスケードにおいて重要な要素である。因子XIIIの因子XIIIaへの活性化にはカルシウムが必要であり、これにより、フィブリンを架橋し安定化させて、不溶性血塊を生成する。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態では、開示されるキット及び/又はその実施形態における組成物は、カルシウムを更に含む。本発明で使用されるカルシウムは、塩、例えば塩化カルシウム塩の形態であってもよい。あるいは、酢酸カルシウム及び/又はクエン酸カルシウムなどの追加の塩を使用してもよい。キットにおいて、カルシウム塩は、液体トロンビン組成物中に提供することができる。あるいは、カルシウム塩は、別個の容器内のキットに提供されてもよく、又はカルシウム塩は、ゼラチン成分を収容する同じ容器内のキットに提供されてもよい。
【0073】
本明細書に開示される任意の態様における液体トロンビン組成物は、以下の賦形剤:カルシウム、アルブミン、糖類、糖類誘導体、ポリオール、酢酸塩、クエン酸塩、アミノ酸、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、及び水のうちの1つ以上を含んでもよい。カルシウム源は、塩化カルシウムであってもよく、2~60mMの濃度範囲であってもよい。アルブミンは、0.05~1%(w/v)の濃度範囲、又は0.5~1%(w/w)の範囲であってもよい。糖類源は、サッカロースであってもよく、5g/lの濃度であってもよい。糖類誘導体源は、グルコン酸であってもよい。ポリオールは、マンニトールであってもよく、2%(w/w)の濃度であってもよい。酢酸源は、酢酸ナトリウムであってもよく、10mMの濃度であってもよい。クエン酸塩源は、クエン酸ナトリウムであってよい。アミノ酸はヒスチジンであってもよく、10mMの濃度であってもよい。ポリエチレングリコール源は、PEG-3350であってもよく、例えば、0.03%の濃度であってもよい。塩化ナトリウムは、50~175mMの範囲であってもよい。
【0074】
トロンビン溶液は、約5.0~8.5.のpH範囲であってもよい。
【0075】
本明細書で使用するとき、用語「賦形剤」は、所望の粘稠度又は安定化効果を提供するために配合物に添加される非治療薬を表す。
【0076】
トロンビン溶液の例は、限定はしないが、800~1200IUのトロンビン/ml、20mMの酢酸ナトリウム、40mMのCaCl、110mMのNaCl、0.5%w/wのヒトアルブミン、及びpH6.8~7.2の2%w/wのマンニトール;塩化カルシウム(40μmol/ml)、アルブミン(ヒト)、塩化ナトリウム、注射用の水;500IU/mlのタンパク質トロンビン、1%のアルブミン、10mMの酢酸ナトリウム、及び75mMの塩化ナトリウム;500IU/mlのトロンビン、2%のマンニトール、10mMのヒスチジン、0.03%のPEG-3350、及び175mMの塩化ナトリウム;500IUのトロンビン/ml、0.1%~1%(w/v)の濃度のヒトアルブミン、pH5.0~8.5で0.05Mの濃度の塩化ナトリウム、を含む。
【0077】
アルブミンは、例えば、ヒトアルブミンである。しかしながら、アルブミンは、非ヒト源又は組み換えアルブミンであってもよい。本明細書に開示される任意の態様のいくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、注入用の水を含む。
【0078】
したがって、いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、これに限定されることなく、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムから選択される賦形剤を更に含む。
【0079】
液体形態の濃縮精製トロンビンは、主に自己触媒開裂の結果、長期間の保存中に活性の低下を示す。例えば、1000国際単位(IU)/mlの濃度の水性液体トロンビンは、室温で自己触媒開裂を起こし、トロンビン活性の有意な損失を引き起こす場合がある。
【0080】
いくつかの実施形態では、トロンビン溶液又は組成物は、100~4000又は100~2500IUトロンビン/mlなどの1~10000又は100~10000IUトロンビン/mlを含む。本発明で使用する場合、用語「IU」は「国際単位(International Units)」を示し、例えば、世界保健機関(WHO)のトロンビンに関する第2国際規格01/580に対して較正された、効力濃度測定のための内部参照標準に対して、凝固アッセイによって測定され得る。単位(U)は、国際単位(IU)と同等である。
【0081】
市販の調整物では、トロンビンは、典型的には約400~1200IU/mlで使用される。
【0082】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の液体トロンビン組成物は、1~2500IU/mlのトロンビンを含む。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、100~2000IU/mlのトロンビンを含む。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、400~1200IU/mlのトロンビンを含む。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、800~1200IU/mlのトロンビンを含む。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、400~800IU/mlのトロンビンを含む。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、400~600IU/mlのトロンビンを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、約1~約20μMである。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、約5~約15μMである。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、約5~約10μMである。
【0084】
上述したように、トロンビンは、自己触媒酵素であり、したがって液体形態では不安定である。トロンビン濃度又は温度が上昇すると共に、安定性が低下する。驚くべきことに、50%超のグリセロールを含む本発明の液体トロンビン組成物は、本明細書に記載されるように非常に高温で安定であり、これは、冷蔵なしでの液体トロンビンの滅菌、熱によるウイルス不活性化、輸送、保存、及び取扱いを助ける。
【0085】
本明細書で使用するとき、用語「安定性」又は「安定」は、特定の温度への曝露後のトロンビン酵素の活性に関する。一般に、液体トロンビン組成物は、トロンビンが少なくとも70%活性である場合、特定の温度で特定の持続時間後に安定したものとして定義される。
【0086】
したがって、いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で24時間後に少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で24時間後に少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%活性である。
【0087】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、50%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で24時間後に少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、60%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で24時間後に少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、80%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で24時間後に少なくとも70%活性である。
【0088】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、50%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で24時間後に少なくとも80%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、少なくとも60%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で24時間後に少なくとも80%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、少なくとも80%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で24時間後に少なくとも80%活性である。
【0089】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、50%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で24時間後に少なくとも90%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、少なくとも60%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で24時間後に少なくとも90%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、少なくとも80%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約50℃の温度で24時間後に少なくとも90%活性である。
【0090】
ここで、様々なグリセロール濃度が、様々な温度でのトロンビン活性に及ぼす影響を示す図2A~Bを参照する。したがって、いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約25℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約25℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%活性である。
【0091】
「少なくとも6ヶ月」とは、例えば、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、又はそれ以上(それらの間の任意の値及び範囲を含む)を指す。
【0092】
「少なくとも50%」とは、任意の値及びそれらの間の範囲を含む、例えば、50%、55%、60%、65%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%(それらの間の任意の値及び範囲を含む)を指す。
【0093】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、50%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約25℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、60%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約25℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、80%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約25℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも70%活性である。
【0094】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、50%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約25℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも80%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、少なくとも60%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約25℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも80%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、少なくとも80%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約25℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも80%活性である。
【0095】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約0℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約0℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%活性である。
【0096】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、50%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約0℃の温度で少なくとも6ヶ月の少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、60%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約0℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、80%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約0℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも70%活性である。
【0097】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、50%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約0℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも80%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、少なくとも60%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約0℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも80%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、少なくとも80%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約0℃の温度で少なくとも6ヶ月後に少なくとも80%活性である。
【0098】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約100℃の温度で2分後に少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約100℃の温度で2分後に少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%活性である。いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、50%超のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約100℃の温度で2分後に少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、少なくとも60%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約100℃の温度で2分後に少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、少なくとも80%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約100℃の温度で2分後に少なくとも70%活性である。
【0099】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、少なくとも60%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約100℃の温度で2分後に少なくとも80%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、少なくとも80%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約100℃の温度で2分後に少なくとも80%活性である。
【0100】
いくつかの実施形態では、液体トロンビン組成物は、少なくとも60%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約100℃の温度で2分後に少なくとも90%活性である。いくつかの実施形態では、トロンビン組成物は、少なくとも80%のグリセロールを含み、液体トロンビン組成物中のトロンビンは、約100℃の温度で2分後に少なくとも90%活性である。
【0101】
いくつかの実施形態では、開示される液体トロンビン組成物中のトロンビンは、室温(例えば、約25℃)で24ヶ月後に少なくとも70%活性である。いくつかの実施形態では、開示される液体トロンビン組成物中のトロンビンは、室温で24ヶ月後に少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%活性である。いくつかの実施形態では、本発明の液体トロンビン組成物中のトロンビンは、2~8℃の温度で24ヶ月後に少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%活性である。いくつかの実施形態では、開示される液体トロンビン組成物中のトロンビンは、2~8℃の温度で24ヶ月後に少なくとも70%活性である。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明の液体トロンビン組成物中のトロンビンは、-20℃で2年後に少なくとも70%活性である。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明の液体トロンビン組成物中のトロンビンは、-20℃で3年後に少なくとも70%活性である。
【0104】
いくつかの実施形態では、止血キットは、液体トロンビン組成物を収容するシリンジと、ゼラチンを含有するシリンジと、を含む。いくつかの実施形態では、キット内の容器の少なくとも1つは、予め充填されたシリンジである。いくつかの実施形態では、キットの容器に加えてシリンジが提供される。いくつかの実施形態では、容器は、バイアル又はアプリケータなどの特定の種類である。
【0105】
上記のキットは、トロンビン成分と、塗布前に一緒に混合されるゼラチン成分と、を含んでもよい。例えば、成分は、例えば手術中に出血を低減する必要がある場合、外科医又は別の施術者によって混合される。キットの成分の混合は、止血組成物を形成する。
【0106】
したがって、追加の態様では、本発明は、止血組成物中の固形分の30重量%超の範囲のトロンビン、ゼラチン、及びグリセロールを含む止血組成物を提供する。
【0107】
いくつかの実施形態では、止血組成物は、グリセロールを、固形の31重量%超、35重量%超、40重量%超、45重量%超、50重量%超、55重量%超、60重量%超、65重量%超、70重量%超、75重量%超、80重量%超、85重量%超、90重量%超、95重量%超、又は約100重量%含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の止血組成物中の顕著な固形は、ゼラチンである。
【0109】
更なる態様では、本発明は、止血を補助する局所使用のための止血組成物を提供する。
【0110】
止血(又は血液停止)は、創傷治癒の第1段階である。止血は、出血を止めさせるプロセスである。「止血を補助する」とは、出血の低減又は停止を助けることを意味する。
【0111】
更なる態様では、本発明は、トロンビン及びゼラチンと、固形物の30重量%超のグリセロールと、薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0112】
例えば、医薬組成物用の賦形剤は、本明細書で上記に記載されており、塩化カルシウム、ヒトアルブミン、マンニトール、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、グルコン酸緩衝液、サッカロース、グリシン、酢酸ナトリウム、ヒスチジン、及びPEGなどの任意の薬学的に好適な賦形剤を更に含んでもよい。
【0113】
治療用途のための調製は、滅菌でなければならない。特に、血液製品を取り扱うとき、滅菌性の問題は重要であり、具体的にはウイルス不活性化の問題である。一般に、ウイルス不活性化は、例えば、溶媒洗剤、熱不活性化、照射、及びナノ濾過、又はこれらの任意の組み合わせを含む任意の方法によって実行することができる。典型的には、ウイルス不活性化の基準は、2つの異なる方法の使用を要求している。また、滅菌性のための食品医薬品局(FDA)基準は、濾過を要求する。
【0114】
しかしながら、液体トロンビンは、特に高温で不安定であるため、熱不活性化又は照射を使用する液体トロンビンの滅菌は、トロンビン活性に悪影響を及ぼすために非実用的である。一方、高濃度のグリセロールを含むためにより安定したトロンビンの調製物は、室温での濾過による滅菌には粘度が高すぎる。本発明の驚くべき発見は、グリセロールを含むトロンビン調製物が、高温で安定するだけでなく、グリセロールを含まない調製物よりも生体内での活性を向上させ、グリセロールの粘性が低い高温での濾過による滅菌を促進することである。これにより、グリセロールを含む滅菌及び安定した液体トロンビン組成物の大規模生産が可能になる。また、高温でのグリセロールを含む液体トロンビンの安定性も、熱処理によるウイルス不活性化を可能にする。
【0115】
本明細書で使用するとき、用語「滅菌」は、バイオバーデンが低く、効果的に細菌を含まないこと、例えば、細菌及びウイルスなどの微生物を含まないことを意味する。滅菌は、効果的に細菌を含まないレベルまでバイオバーデンを低減するプロセスである。滅菌液体は、一般に、滅菌濾過を受けた液体として定義される。したがって、いくつかの実施形態では、滅菌トロンビン溶液又は滅菌液体トロンビン組成物は、例えば、0.22μm以下のフィルタを通過させることによって滅菌濾過で滅菌されたトロンビン溶液又は液体トロンビン組成物である。
【0116】
上述したように、安定した滅菌液体トロンビン組成物の大規模調製方法は存在しない。これは、一方ではトロンビン(特に高温で)の安定性の欠如、他方では必要な濾過工程を困難で時間がかかるものにする可能性があるグリセロールの高粘度に起因する。グリセロールを含む液体トロンビン配合物が、高温で安定するだけでなく、出血を低減する能力を向上させるという驚くべき発見は、グリセロールの粘度が低い高温での濾過を含む、滅菌液体トロンビン組成物の大規模調製方法への道を開くものである。
【0117】
用語「調製」は、治療用途に適し生理学的に許容可能なことを指す。
【0118】
いくつかの態様では、トロンビンと50%v/v超のグリセロールとを含むシーラント配合物が提供される。
【0119】
本発明の状況において、用語「シーラント配合物」は、単一成分/一成分の接着剤/糊/止血剤として理解されるべきであり、当該配合物は、組織及び/又は血液と接触すると、例えば組織に近接すると反応し、その後凝塊を形成して組織接着剤として作用し、それによって、出血を防止、低減、又は停止し、組織を接合する、及び/又は例えば脳脊髄液(CSF)、リンパ液、胆汁、胃腸(GI)内容物、肺からの漏気などの生理学的漏出を封止する成分を有する。いくつかの実施形態では、シーラント配合物は治療薬も含む結果、体内で形成された凝塊が自然に分解したときに治療薬が放出される。治療薬は、抗生物質、鎮痛剤、抗炎症薬、制癌薬などの薬物、例えば、ヒト又は他の起源由来の任意の種類の幹細胞、例えば胚幹(ES)細胞、成体幹細胞、多能性幹細胞(iPSC)などを含む細胞であってよいが、これらに限定されない。
【0120】
フィブリンシーラントは、Ca、第VIII因子、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フォンビルブランド因子(vWF)などの凝塊の形成を促す成分を含むことも可能であり、これらの成分は、別々の成分として提供されるか又は液体組成物と配合され得る。
【0121】
時に、シーラント配合物は「トロンビン系シーラント」と称され、本明細書に開示される状況では、フィブリン糊、フィブリンシーラント、フィブリン接着剤、フィブリン膜、フィブリン網状組織、フィブリン格子、フィブリンメッシュ、フィブリングリード、及びフィブリンゲルを形成する又は意味するものとして理解されるべきである。
【0122】
任意の態様の開示される配合物、例えば、液体シーラント配合物は、エアスプレーを用いるか又は用いずに、例えば滴らせることによってシーラントを組織又は他の基材又は作用面上に直接吐出するディスペンサーを使用して組織に塗布することができる。本発明の一実施形態では、シーラントは、15PSIの空気圧で噴霧される。組織シーラントディスペンサーの例は、いずれも参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,631,055号、同第4,846,405号、同第5,116,315号、同第5,582,596号、同第5,665,067号、同第5,989,215号、同第6,461,361号、及び同第6,585,696号、同第6,620,125号、及び同第6,802,822号、並びに国際特許出願公開第WO96/39212号、同第WO2007/059801号、及び同第2010/095128号に示されている。
【0123】
上記の液体トロンビン組成物及び滅菌液体トロンビン組成物の実施形態は、開示されるシーラント配合物の態様に組み込まれる。
【0124】
したがって、いくつかの実施形態では、シーラント配合物は、トロンビンと50%v/v超のグリセロールとを含む。いくつかの実施形態では、シーラント配合物は、約60~約100%v/vのグリセロールを含む。一部の実施形態では、シーラント配合物は、カルシウムを更に含む。いくつかの実施形態において、シーラント配合物は、約1~約5000IU/ml、約1~約2000IU/ml、又は約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む。
【0125】
したがって、更なる態様では、本発明は、50%v/v超のグリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物の大規模生産方法を提供し、該方法は、
a.トロンビンをグリセロール溶液と混合することによってトロンビン溶液を調製し、50%v/v超のグリセロールを有する溶液を得る工程と、
b.得られたトロンビン溶液を少なくとも40℃に加熱する工程と、
c.0.22μm以下の孔径を有する少なくとも1つのフィルタを通過させることによって、トロンビン溶液を滅菌する工程と、
を含むことにより、50%v/v超のグリセロールを含む液体滅菌トロンビン溶液を得る。
【0126】
本明細書で使用するとき、用語「大規模」は、少なくとも1リットルの溶液が生成され、典型的には少なくとも約400IUのトロンビンを含むプロセスに関する。
【0127】
いくつかの実施形態では、溶液は、少なくとも45℃、少なくとも50℃、少なくとも55℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃、少なくとも95℃、又は約100℃まで加熱される。
【0128】
いくつかの実施形態では、フィルタは疎水性フィルタであってもよい。
【0129】
一部の実施形態においては、2つ以上のフィルタが使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのフィルタが使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも3つのフィルタが使用される。
【0130】
典型的には、濾過は滅菌濾過であり、これは、有効濾過面積1cm当たり少なくとも10の生物で試験したときに微生物を通過させない濾過プロセスとして定義される。このようなフィルタは通常、0.22μm以下の定格孔径を有する(2004 FDA Guidance for Industry Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing-Current Good Manufacturing Practice(無菌操作法で製造される無菌医薬品に関する2004FDAガイダンス)を参照されたい)。
【0131】
トロンビン溶液及び/又はフィルタなどの濾過要素は、濾過プロセスの前及び/又は濾過プロセス中に温度制御さすることができる。温度制御は、制御された循環温度浴などの様々な手段によって実行することができる。
【0132】
より大きな容量(数キログラムの濾液など)へのアップスケールのために、膜フィルタカートリッジ(例えば、Pall corporation(登録商標)のSupor EX Grade ECV、5”部品番号AB05UECV2PH4、10”AB1UECV7PH4、20”AB2UECV2PH4、又は30”AB3UECV2PH4のサイズ)を使用することができる。例示的な実施形態では、以下の実施例3で言及されるMini kleenpak(商標)カプセル(表面積0.023m)が、濾液と、前述したようにフィルタカートリッジを使用することによってより大きなスケールで複製され得るフィルタ表面積との間の既知の比率を有するために使用される。
【0133】
高いグリセロール含有量を含む液体トロンビン配合物は、高圧下でより安定することも理解される。この特徴は、通常、トロンビンの活性の喪失を引き起こすシステム内のランダムな圧力上昇時、又は処理時間を短縮するために圧力を上昇させる必要があるときに役立ち得る。
【0134】
濾過される溶液を含む容器は、エネルギー源に接続されて、液体をフィルタに通過させることができる。エネルギー源は、圧縮空気であってもよい。容器は、エネルギー出力を監視及び/又は制御する1つ以上の要素を介してエネルギー源に接続されてもよい。このような要素は、圧力弁及び圧力計であってもよい。トロンビン溶液に加えられ得る可能なエネルギーの量は制限することができる。制限は、トロンビン溶液への最大1バールの圧力であってもよい。
【0135】
したがって、いくつかの実施形態では、濾過は、約1バールの圧力下で実行される。いくつかの実施形態では、濾過は、1バール超の圧力下で実行される。いくつかの実施形態では、濾過は、1.5バール超、2バール超、2.5バール超、3バール超、3.5バール超、4バール超、4.5バール超、又は5バール超の圧力下で実行される。
【0136】
いくつかの実施形態では、濾過速度は、1kg溶液当たり1時間未満である。いくつかの実施形態では、濾過速度は、1kg溶液当たり30分未満である。いくつかの実施形態では、濾過速度は、1kg溶液当たり約20~約30分である。
【0137】
ウイルス安全性は、ヒト由来の産物のリスクに由来する場合、重要な問題である。ウイルスは、ヒト由来の産物のプロセスにおいてそのまま残るため、これらの産物は、ウイルス不活性化工程を経て安全性を保証しなければならない。従来、2つのウイルス不活性化方法が、ウイルスの潜在的負荷の効果的な低減を確保するために、個々に使用される。使用されるウイルス不活性化方法のいくつかの例を、以下に記載する。
【0138】
ナノ濾過によるウイルス不活性化-この方法は、エンベロープ及び非エンベロープウイルスの両方をフィルタ除去するためにサイズ排除を利用することができる。使用されるフィルタは、典型的には、Planova 20N、Planova 35N、Viresolve 70、Viresolve 180など、70nm未満の孔径を有する。
【0139】
溶媒洗剤(S/D)によるウイルス不活性化-この方法は、洗剤及び/又は溶媒を利用して、エンベロープ又は脂質被覆ウイルス中に見出される脂質を除去することができる。Triton X-45、Triton X-100、又はポリソルベート80、トリ(n-ブチル)リン酸塩(TnBP)、ジ-又はトリアルキルホスフェートなどの、使用される洗剤及び/又は溶媒は、エンベロープ又は脂質被覆ウイルスを不活性化する。従来、10~100mg/mlの溶媒洗剤が、pHレベル5~8、30分~24時間、2~37℃の温度範囲で使用される。製品をS/Dで処理した後、S/Dは通常、製品から除去される。使用される洗剤及び溶媒の組み合わせ及び濃度は、当該技術分野において既知である。例えば、0.1%未満のTnBP及び0.1%未満のTriton X-100の組み合わせを使用することができる。別の例では、1%のTriton X-100及び0.3%TnBPの組み合わせを使用してもよい。
【0140】
加熱活性化によるウイルス不活性化-加熱殺菌としても知られる熱不活性化は、エンベロープウイルス及び非エンベロープウイルスを含むいくつかの種類の病原体を害し得る高温を利用する。加熱殺菌は、通常、温度レベルと曝露時間をトレードするいくつかの技術によって達成され得る。例えば、温度は、10時間にわたって60℃であってもよい。別の実施例では、高熱短時間技術、例えば、100℃で2秒未満の持続時間が採用される。
【0141】
しかしながら、少なくとも熱によるウイルス不活性化に関しては、そのような選択肢は、安定性の欠如が理由で、液体トロンビンに対して利用可能ではなかった。にもかかわらず、本開示に記載の発見を考慮に入れて、高含有量のグリセロールを含む開示された液体トロンビン組成物は、熱不活性化を経ることができる。
【0142】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明によるグリセロールを50%v/v超含む滅菌液体トロンビン組成物の大規模生産方法は、熱不活性化によるウイルス不活性化の工程を更に含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、熱不活性化は、約60~100℃で実行することができる。いくつかの実施形態では、熱不活性化は、約60℃で約10時間実行することができる。いくつかの実施形態では、熱不活性化は、約100℃で2秒未満実行することができる。
【0144】
更なる態様では、本発明は、上記の方法によって得られる50%v/v超のグリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物を提供する。
【0145】
更に別の態様では、本発明は、50%v/v超のグリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物を提供する。
【0146】
本発明の液体トロンビン組成物は、出血を低減又は停止するために単独で使用することができる。液体トロンビン組成物は、凍結トロンビン又は粉末トロンビンに代えて、又は他の止血剤に加えて、キットの一部として使用されてもよい。
【0147】
本発明の別の態様では、必要とする対象の創傷上及び/又は内に任意の態様及び実施形態の液体組成物を塗布する(例えば、接触させる)工程を含む、創傷を治療する方法が提供される。
【0148】
「創傷を治療する」とは、例えば、手術を受ける患者における、組織の出血部位での出血の低減を含むことを更に意味する。
【0149】
したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、手術を受ける患者において、組織の出血部位での出血を低減するためのものであり、実施形態の開示された組成物又は配合物を、出血部位と接触させることを含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、組織の出血部位における出血を低減するために使用される組成物又は配合物は、トロンビンと、少なくとも50%のグリセロール、例えば、約60%~約100%、又は約80%~約100%v/vのグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、組成物又は配合物は、例えば、補助量でゼラチン及び/又は水を更に含む。
【0151】
本明細書で使用するとき、用語「対象」は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、又は任意の他の哺乳動物を含むが、これらに限定されない任意の動物を意味するものとする。いくつかの実施形態では、対象はヒト、例えば、ヒトの患者である。対象は、男性であっても又は女性であってもよい。
【0152】
少なくとも、%グリセロール、カルシウム及び賦形剤、トロンビン源及び濃度、並びに上述のトロンビン安定性に関する実施形態が、本出願の全ての態様に含まれることが意図される。
【0153】
本明細書で使用するとき、用語「約」は、示された値の10%上又は下の値も含まれることを意味する。一般に、本出願における全ての値は、用語「約」を含むことを意図する。
【0154】
用語「~を含む(comprises)」、「~を含んだ(comprising)」、「~を有する(has)」、「~を有した(having)」、「~を含有する(contain)」、「~を含有した(containing)」及びそれらの同根語は、「~を含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。用語「~からなる(consisting of)」は、「包含し、限定される(including and limited to)」ことを意味する。用語「~から本質的になる(consisting essentially of)」とは、組成物、方法又は構成が、追加の成分、工程及び/又は部分を含み得ることを意味するが、追加の成分、工程及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法又は構成の基本的かつ新規の特性を実質的に変えない場合に限る。
【0155】
単語「代表的な」とは、本明細書では、「実例、事例又は例証としての役割を果たす」ことを意味する。「代表的な」として記載される任意の実施形態は、その他の実施形態よりも好ましい又は有利であると必ずしも解釈される必要はない、及び/又はその他の実施形態からの特徴の組み込みを必ずしも排除する必要はない。
【0156】
本明細書では、単語「任意選択で(optionally)」は、いくつかの実施形態では提供され、その他の実施形態では提供されないことを意味する。本発明の任意の特定の実施形態は、このような特徴が矛盾しない限り、複数の「任意の」特徴を含んでもよい。
【0157】
本発明で使用する場合、その内容に別段の明確な指示がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。例えば、用語「化合物(compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」は、これらの混合物を含む複数の化合物を含んでよい。
【0158】
本出願全体を通して、本発明の種々の実施形態が範囲形式にて提示されてもよい。範囲形式の説明は単に便宜上及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲上の確固とした制限として解釈されるべきではない、と理解すべきである。したがって、範囲の説明は、全ての可能な部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示される部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6を有すると見なされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0159】
数値範囲が本明細書に示される場合はいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。用語、第1の表示番号と第2の表示番号との「間の範囲(ranging)/範囲(ranges)」、及び第1の表示番号「から」第2の表示番号「までの範囲(ranging)/範囲(ranges)」が本明細書で互換的に使用されるが、これは、第1及び第2の表示番号並びにこれらの間の全ての分数及び整数を含むことを意味する。
【0160】
本発明で使用する場合、用語「方法」とは、所与のタスクを達成するための方法、手段、技術及び手順を意味し、化学的、薬理学的、生物学的、生化学的及び医学的分野の施術者による周知の方法、手段、技術及び手順として知られるか、又は容易に開発されるか、のいずれかの方法、手段、技術及び手順のようなものを含むが、これらに限定されない。
【0161】
本明細書で使用するとき、医療の文脈での用語「治療する」は、病状の進行を抑制すること、実質的に阻害すること、緩徐化すること、若しくは逆行させること、状態の臨床症状若しくは審美的症状を実質的に改善すること、又は状態の臨床症状若しくは審美的症状の外観を実質的に予防することを含む。
【0162】
本明細書で使用するとき、用語「出血」は、循環系の任意の構成要素からの血液の滲出を指す。よって、「出血」は、望ましくない、制御されない、多くの場合、手術、外傷、又は他の形態の組織損傷に関連する過剰な出血、並びに出血性障害を有する患者における望ましくない出血を包含する。
【0163】
本明細書で使用するとき、用語「制御する」、「防止する」、又は「低減する」は、本明細書では、その語形変化を含め、出血の状況において互換的に使用されてもよく、出血速度がほぼゼロになる、又は開示される組成物が出血部位内/上に接触していない状況と比較して、出血の初期速度の10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は更には100%低下することを示す。出血の出現レベルを判定するための方法は、当該技術分野において既知である。
【0164】
更に、いくつかの実施形態では、出血の文脈において、用語「制御する」、「防止する」、又は「低減する」は、出血部位、例えば軟組織において血管を少なくとも部分的に封止することを意味する。
【0165】
「A、B、及びCなどのうちの少なくとも1つ」に類する表記が用いられる場合、一般に、このような構文は、当業者がその表記を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、限定するものではないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方及び/又はAとBとCの全てなどを有するシステムを含む)。更に、実質上、2つ若しくはそれ以上の選択的な用語を表すあらゆる選言的な語及び/又は句は、明細書内であろうと、請求の範囲内であろうと、あるいは図面内であろうと、それら用語のうちの1つ、それらの用語のうちのいずれか、又はそれらの用語の両方を含む可能性を意図すると理解されるべきであることが、当業者には理解されよう。例えば、語句「A又はB」は、「A」若しくは「B」又は「A及びB」の可能性を含むものと理解されよう。
【0166】
本発明の特定の特徴は、明確性のために別個の実施形態の文脈において記載されているが、これはまた、単一の実施形態において組み合わせて提示されてもよいことが理解されている。逆に、本発明の様々な特徴は、簡潔さのために、単一の実施形態の文脈において記載されているが、これはまた、別個に、若しくは任意の好適な部分的組み合わせで、又は本発明の任意のその他の記載される実施形態において好適にもたらされてもよい。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしには動作不可能である場合を除き、それらの実施形態の必須特徴であるとして考慮されるべきではない。
【0167】
本明細書の上記で詳述され、以下の特許請求の範囲において特許請求されるような、本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例における実験的な支持を見出す。
【実施例
【0168】
以下の実施例を参照すると、上記の説明と併せて、非限定的な方法で本発明のいくつかの実施形態が例示されている。
【0169】
材料及び方法
様々なグリセロール濃度の調製:グリセロール濃度毎に、ある量のDDWを5mLシリンジ(Yoel Naim 5mlシリンジロット:20130815)に引き込み、バイアルに添加した。ある量のグリセロールの体積(J.T Baker 500mL無水グリセロールバッチ:0000136697)を5mLシリンジに引き込み、同じバイアルに添加した。次いで、DDW及び/又はグリセロールを収容する各バイアルを、周囲温度で30秒間、ボルテックス(Scientific industries、Vortex-genie 2モデルG560E.速度セット5)を用いて混合した。
【0170】
トロンビン再構成:グリセロール濃度毎に、異なるグリセロール濃度の2mLの液体を、5mLシリンジに引き込んだ。2mLの液体を、約2000IUを収容する凍結乾燥トロンビンバイアルに注入し、周囲温度で再構成するためにローラ(Stuart、ローラミキサーモデルSRT6)上に24~72時間(h)置いた。
【0171】
簡潔に述べると、トロンビン標準曲線を、4~10国際単位(IU)/mlで作成した。次いで、40mlのトロンビン又は希釈サンプルを、試験キュベット内の160mLの0.1%フィブリノゲン溶液に添加した。凝固までの時間を自動凝固機(Stat4、Stago Diagnostica)で分析した。該凝固機は、キュベット内で小さな金属ボールを移動させる振動電磁界を生成する。凝固は、ボール移動の停止が検出されたときに生じたと判定される。試験サンプル中のトロンビン濃度は、標準曲線に対して凝固時間から外挿される。
【0172】
実施例1:液体トロンビンの安定性
50℃での24時間安定性:いくつかのグリセロール濃度を、様々なグリセロール濃度のトロンビン溶液の調製を示す以下の表1に従って上述したように調製した。
【0173】
【表1】
【0174】
トロンビンを上記のように再構成し、300μlのサンプルを、1mLシリンジ(Terumo 1mlシリンジロット:1001015)を使用してエッペンドルフチューブ(Sarstedt、1.5マイクロチューブ72.690.001)中に採取し、時点0(0時間)として、以降の分析のために凍結した(-20℃)。再構成されたトロンビンの残りを収容するバイアルを、指定時間(例えば、24時間)及び指定温度(例えば、50℃)で必要に応じてオーブン(venticell 222、SN:B020251)に入れた。1、4.5、8、及び24時間後の各時点で、300μlのサンプルを、1mLシリンジを用いてエッペンドルフチューブ内に採取し、各時点での以降の分析のために凍結させた。試験サンプル中のトロンビン活性を、上述の標準曲線に基づいて評価した。
【0175】
50℃での24時間安定性試験における、異なるグリセロール濃度に対するトロンビン活性の4回反復の平均結果を図1に示す。図1に示されるように、トロンビンの活性は、50%、60%、及び80%のグリセロール濃度で、50℃で25時間完全に維持された。
【0176】
長期安定性:様々なグリセロール濃度が、様々な温度(℃)でのトロンビン活性に及ぼす影響が、更に試験された。トロンビンを、DDW中のいくつかの異なる濃度のグリセロール中に懸濁させ、25℃で6ヶ月間及び4℃で12ヶ月間配置した。図2Aは、25℃で3ヶ月及び6ヶ月後に測定された活性を示す。図2Bは、4℃で12ヶ月後に測定された活性を示す。結果では、指定時間のそれぞれで、約90%~約100%の活性が維持されたため、試験されたグリセロールサンプルの長期安定性が実証された。
【0177】
実施例2:100℃での液体トロンビン2分間安定性
上記の表1に従って上述したようにいくつかのグリセロール濃度(50%、60%、及び80%)を調製した。
【0178】
トロンビンを上記のように再構成し、300μlのサンプルを、1mLシリンジ(Terumo 1mLシリンジロット:1001015)を使用してエッペンドルフチューブ(Sarstedt、1.5マイクロチューブ72.690.001)中に、時点0(0分)として、以降の分析のために採取した。再構成されたトロンビンの残りを収容するバイアルを、100℃で2分間に設定したオーブン(Venticell 222、SN:B020251)に入れた。2分後、各濃度から300μlのサンプルを、1mLシリンジを用いてエッペンドルフチューブ内に採取した。試験サンプル中のトロンビン活性が、上記の標準曲線に基づいて評価され、時点0での0%グリセロールの結果によって正規化された。
【0179】
100℃での2分間安定性試験における、異なるグリセロール濃度に対するトロンビン活性の2回反復の平均結果を図3に示す。図3から分かるように、100℃での2分間後、75%未満のトロンビン活性が50%のグリセロールで維持される一方、90%のトロンビン活性が60%及び80%のグリセロールの溶液中で維持された。
【0180】
実施例3:様々な温度での無水グリセロールの濾過速度
濾過を使用して滅菌液体を製造するために、液体は、0.22μM以下の孔径を有するフィルタを通過しなければならない(2004 FDA Guidance for Industry Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing-Current Good Manufacturing Practice(無菌操作法で製造される無菌医薬品に関する2004FDAガイダンス))。しかしながら、グリセロールなどの粘性液体は、このようなフィルタを通過することが困難であり、その結果、処置が非常に長くなり、最善でも効果的でないことが分かっている。したがって、本発明者らは、濾過温度の上昇が、グリセロールの粘性を低下させ、濾過をより効果的にすることができるか否かを試験した。しかしながら、これは、トロンビン活性がプロセスに影響を受けない場合にのみ実行することができる。上記の実施例1に示すように、本発明者らは、50%超のグリセロール中のトロンビンが50℃で24時間後も安定していることを確定した。また、実施例2に示すように、本発明者らは、50%超のグリセロールの溶液中のトロンビンが100℃で2分間後も安定していることを確定した。したがって、濾過プロセスには高温を使用することもできる。この実施例では、本発明者らは、グリセロールの濾過速度に対する温度の影響を調べた。
【0181】
例示的な手順では、グリセロール(J.T Baker無水グリセロールバッチ:0000136697)を、圧力容器(Sartorius Stedimモデル17530)に入れ、プロセス中に0.9~1barの圧力を維持するためにシリコーンチューブと圧力計(最大1バール)に接続された圧縮空気(CA)システムとを使用して、0.2μM Mini Kleenpak(商標)カプセルフィルタ(PALL Corporation(登録商標)REF KA02ECV2FT、ロットIB2616)を介して濾過した。グリセロールを入れた圧力容器とフィルタは、制御された循環温度浴内で濾過プロセスの前及び間に45分間インキュベートした。濾過速度に対する温度の影響を評価するために、制御された循環温度浴を、試験毎に3つの異なる温度のうちの1つに設定した。試験温度は、25℃、40℃、及び50℃とした。
【0182】
濾過速度は、経時的に濾液を秤量することによって測定した。濾過速度に対する濾過温度の影響を以下の表2に示す。
【0183】
【表2】
【0184】
表2から分かるように、25℃でのグリセロールの濾過流速は、比較的低く、すなわち0.5kg/時間未満であり、有効ではない。しかしながら、40℃及び50℃でのグリセロールの濾過流速は、室温でのプロセスと比較して、それぞれ約2.5倍及び約5倍速く、高温で実施された場合にプロセスをはるかに有効にする。したがって、大規模調製に必要とされる約1kgのグリセロールの濾過は、25℃で約2.5時間と比較して、50℃では30分で達成され得る。
【0185】
実施例4:安定した滅菌液体トロンビン溶液の大規模調製
高温でのトロンビンの安定性を示す実施例1及び2と、高温でのグリセロールの速い濾過速度を示す実施例3とを組み合わせた発見に基づくと、50%超のグリセロールを含む液体トロンビン溶液は、溶液温度を上昇させ、0.22μM以下の孔径を有するフィルタを通過させることによって滅菌濾過することができるであろう。
【0186】
例示的な手順では、トロンビンをグリセロール(J.T Baker無水グリセロール)及びDDWと混合して、80%グリセロールv/v中に1000IU/mlのトロンビンを含む最終量2リットルのトロンビン溶液を得る。トロンビン溶液を、0.2μM Mini Kleenpak(商標)カプセルフィルタ(PALL Corporation(登録商標)REF KA02ECV2FT、ロットIB2616)及び圧縮空気(CA)システムに圧力計及び圧力弁を介して接続されるSartorius Stedimモデル17530内に配置する。トロンビン溶液を収容する圧力容器と濾過要素とを、50℃に設定された制御された循環温度浴内に配置する。トロンビン溶液及び濾過要素が50℃に達した後、圧力弁及び圧力計によって圧縮された空気流を制御することによって圧力を0.9~1バールに調整する。1時間当たり0.5kg超の流速が予想される結果、2時間未満で1kgの濾過滅菌トロンビン溶液が得られる。実際に、実施例3の実験に基づいて、1時間当たり約2kgの流速が予想される結果、30分未満で1kgの濾過滅菌トロンビン溶液が得られる。温度を更に上昇させると、濾過速度は更に速くなると予想されることが理解される。
【0187】
実施例5:生体内試験におけるゼラチンと組み合わせた液体トロンビン
表1に示されるものと同様に、表3に従って上述したようにいくつかのグリセロール濃度を調製した。
【0188】
【表3】
【0189】
各グリセロール濃度について、(キットに従って水で再構成されたトロンビンの代わりに)2mLの様々なグリセロール濃度で再構成された1600~2400IUのトロンビンを使用して、(Surgiflo(登録商標)キットから)8mLのゼラチンペーストを調製した。試験した全ての止血組成物は、トロンビン、ゼラチン、及びグリセロールからなり、グリセロールは、固形分の30重量%超の濃度であった。
【0190】
各調製されたシリンジを、トロンビン再構成に使用されるグリセロール濃度で標識付けした。トロンビン活性は、以下に記載する生体内ブタパンチ生検モデルを使用して試験した。
【0191】
使用される動物処置は、以下の変更を伴って、MacDonald et al.、2017 Medical Devices:Evidence and Research 10:273~279に報告される処置に類似する。
-4mmに設定された止め部を備えた使い捨て8mm生検パンチを使用した。
-試験物品塗布後にタンポナーデを10秒間適用し、流動性血液の存在を2分間監視した。
-流動性血液をなくすのに必要なタンポナーデの数を記録した。
【0192】
簡潔に述べると、腹側正中腹部切開を実施し、正中切開の頭蓋部分を延長して肝臓の曝露を改善した。試験表面の利用能を最大化するために、必要に応じて肝臓を位置付けた。処置全体を通じて、生理食塩水及び生理食塩水に浸した腹腔切開スポンジで腹部臓器を湿らせた。深さ止め部が4mmに設定された使い捨ての8mm生検パンチを使用して、左、右及び方形葉のアクセス可能領域の横隔膜表面上に、肝実質欠損を生じさせた。生検のコア部分を掴んで、下にある表面に軽度から中程度の出血を生じさせることなく、鋭く切開した。
【0193】
得られた出血の特性評価を可能にするために、製品適用に先立って欠損部位を数秒間出血させた。各欠損部位での出血は、創傷形成時及び治療前に0~5の範囲で分類した。欠損は、除外される場合に1以下に分類され、それらの上で試験を実施しなかった。試験部位をガーゼで拭き取り、次に試験物品の1つを適用した。本研究の目的のために、有効な止血は、易流動性出血の停止として定義された。出現していたが成長しなかった少量出血又は点状出血は、易流動性出血であるとは考えられなかった。試験物品を、Surgiflo(登録商標)アプリケータによって欠損(出血部位)上に投与した。最初のタンポナーデは、ガーゼ上のデジタル圧力を使用して約10秒間行った。最初の10秒間のタンポナーデに続いて、被覆剤を除去した。止血が120秒後に達成されなかった場合、タンポナーデを再実行して更に10秒間維持し、その後、別の観察期間を設けた。このプロセスを、有効な止血が達成されるまで繰り返し、必要なタンポナーデの数を記録した。
【0194】
ブタパンチ生検生体内モデルにおいて、ゼラチンと組み合わせたグリセロールで再構成されたトロンビンの有効性結果の5回反復の平均を図4に示す。
【0195】
図4から分かるように、トロンビン溶液中のグリセロール%は、結果に直接影響を与え、50%グリセロールは平均約2.8のタンポナーデ反復となり、60%グリセロールは平均約1.8のタンポナーデ反復となり、100%グリセロールは平均1.5未満のタンポナーデ反復となる。
【0196】
比較のために、Surgicel(登録商標)(吸収性止血粉末)は、類似モデルでは、AR(Arista(商標)AH吸収性止血粒子)及びPC(PerClot(登録商標)多糖類止血系)よりも優れていることが報告されている(上述のMacDonald et al.、2017)。このモデルでは、Arista(商標)及びPerClot(登録商標)の両方が、4.75分間以上の止血時間を有した。各タンポナーデ後の各観察時間は最大2分であるため、Arista及びPerClot(登録商標)の結果は、2.3タンポナーデ以上と同等である。
【0197】
したがって、この研究の結果は、グリセロールを含まない水中で再構成されたトロンビンの既存の製品と比較して、60%超のグリセロール中で再構成されたトロンビンの有効性の向上を実証している。
【0198】
本発明は、その特定の実施形態と共に記載されてきたが、多くの代替、変更及び変形形態が当業者には明白となることは明らかである。したがって、これは、添付の特許請求の趣旨及び広義の範囲内にある、このような代替、変更及び変形形態の全てを包含することを目的としている。
【0199】
〔実施の態様〕
(1) 止血キットであって、
a.50%v/v超のグリセロールを含む液体トロンビン組成物を収容する容器と、
b.ゼラチンを収容する容器と、
を備える、止血キット。
(2) 前記液体トロンビン組成物が、約60~約100%v/vのグリセロール、任意選択で約80~約100%v/vのグリセロールを含む、実施態様1に記載の止血キット。
(3) 前記キットが、カルシウムを更に含む、実施態様1又は2に記載の止血キット。
(4) 前記液体トロンビン組成物が、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を更に含む、実施態様1~3のいずれかに記載の止血キット。
(5) 前記液体トロンビン組成物が、約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む、実施態様1~4のいずれかに記載の止血キット。
【0200】
(6) 前記液体トロンビン組成物中の前記トロンビンが、約50℃の温度で約20時間後に少なくとも70%活性である、実施態様1~5のいずれかに記載の止血キット。
(7) 前記液体トロンビン組成物中の前記トロンビンが、約100℃の温度で約2分後に少なくとも70%活性である、実施態様1~6のいずれかに記載の止血キット。
(8) トロンビン、ゼラチン、及びグリセロールを、固形分の30重量%超の濃度範囲で含む、止血組成物。
(9) カルシウムを更に含む、実施態様8に記載の止血組成物。
(10) 塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を更に含む、実施態様8又は9に記載の止血組成物。
【0201】
(11) 約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む、実施態様8~10のいずれかに記載の止血組成物。
(12) 止血を補助する局所使用のための、実施態様8~11のいずれかに記載の止血組成物。
(13) 50%v/v超のグリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物の大規模生産方法であって、
a.トロンビンをグリセロール溶液と混合することによってトロンビン溶液を調製し、50%v/v超のグリセロールを有する溶液を得る工程と、
b.得られた前記トロンビン溶液を少なくとも約40℃に加熱する工程と、
c.約0.22μm以下の孔径を有する少なくとも1つのフィルタを通過させることによって、前記トロンビン溶液を滅菌する工程と、
を含むことにより、50%v/v超のグリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物を得る、方法。
(14) 熱不活性化により実行されるウイルス不活性化の工程を更に含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記トロンビン溶液が、約60~約100%v/vのグリセロール、任意選択で約80~約100%v/vのグリセロールを含む、実施態様13又は14に記載の方法。
【0202】
(16) 前記トロンビン溶液が、カルシウムを更に含む、実施態様13~15のいずれかに記載の方法。
(17) 前記トロンビン溶液が、塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を更に含む、実施態様13~16のいずれかに記載の方法。
(18) 前記トロンビン溶液が、約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む、実施態様13~17のいずれかに記載の方法。
(19) 前記液体トロンビン組成物中の前記トロンビンが、約50℃の温度で約20時間後に少なくとも70%活性である、実施態様13~18のいずれかに記載の方法。
(20) 前記液体トロンビン組成物中の前記トロンビンが、約100℃の温度で約2分後に少なくとも70%活性である、実施態様13~19のいずれかに記載の方法。
【0203】
(21) 実施態様13~20のいずれかに記載の方法によって得られた50%v/v超のグリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物。
(22) 50%v/v超のグリセロールを含む滅菌液体トロンビン組成物。
(23) 約60~約100%v/vのグリセロール、任意選択で約80~約100%v/vのグリセロールを含む、実施態様22に記載の滅菌液体トロンビン組成物。
(24) カルシウムを更に含む、実施態様22又は23に記載の滅菌液体トロンビン組成物。
(25) 塩化ナトリウム、マンニトール、アルブミン、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を更に含む、実施態様22~24のいずれかに記載の滅菌液体トロンビン組成物。
【0204】
(26) 約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む、実施態様22~25のいずれかに記載の滅菌液体トロンビン組成物。
(27) 前記トロンビンが、約50℃の温度で約20時間後に少なくとも70%活性である、実施態様22~26のいずれかに記載の滅菌液体トロンビン組成物。
(28) 前記トロンビンが、約100℃の温度で約2分後に少なくとも70%活性である、実施態様22~27のいずれかに記載の滅菌液体トロンビン組成物。
(29) ゼラチンを更に含む、実施態様22~28のいずれかに記載の滅菌液体トロンビン組成物。
(30) トロンビンと50%v/v超のグリセロールとを含むシーラント配合物。
【0205】
(31) 約60~約100%v/vのグリセロール、任意選択で約80~約100%v/vのグリセロールを含む、実施態様30に記載のシーラント配合物。
(32) カルシウムを更に含む、実施態様30又は31に記載のシーラント配合物。
(33) 約100~約2000IU/mlのトロンビンを含む、実施態様30~32のいずれかに記載のシーラント配合物。
(34) フィブリノゲン成分を含む、実施態様30~33のいずれかに記載のシーラント配合物。
図1
図2A
図2B
図3
図4