(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】顔料分散剤
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20231120BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20231120BHJP
C09B 67/46 20060101ALI20231120BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20231120BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20231120BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C09D17/00
C09B67/20 L CSP
C09B67/46 B
C09D7/65
C09D201/00
C08F8/30
(21)【出願番号】P 2021511550
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2019071293
(87)【国際公開番号】W WO2020043453
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-04
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】サマンタ,シャンパ アール
(72)【発明者】
【氏名】パテル,シンタンクマール ジャヤンティラル
(72)【発明者】
【氏名】ワーデ,コリン
(72)【発明者】
【氏名】モール,ベンヤミン ゲオルク ロベルト
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-239017(JP,A)
【文献】特開平06-199785(JP,A)
【文献】特開2003-277673(JP,A)
【文献】特開2016-064321(JP,A)
【文献】特表2002-526614(JP,A)
【文献】特開平06-065521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
C09B 67/20
C09B 67/46
C09D 7/65
C09D 201/00
C08F 8/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー骨格(P)および式(I):
【化1】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され
、
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)を形成し、そして
これによって、式(I)の少なくとも1つの部分は、-C(=O)-O-基を介して前記ポリマー骨格(P)に結合している)
の少なくとも1つの部分を含む、ポリマー顔料分散剤。
【請求項2】
R1が、非置換であるか、またはF、Cl、Br、I、-NO
2、-CN、-OH、-O-C
1~C
6-アルキル、-C(=O)-C
1~C
6-アルキル、-C(=O)-O-C
1~C
6-アルキル、-C(=O)-O-フェニル、-CH
2-C(=O)-C
1~C
6-アルキル、-C(=O)-NH(C
1~C
6)アルキル、-C(=O)-NH-フェニル、-C
1~C
6-アルキルからなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4または5個の置換基で置換されている、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニルからなる群から選択され、-C
1~C
6-アルキルそれ自体は、非置換であるか、またはF、Cl、Br、I、-CN、-OH、-O-CF
3、-O-CH
3および-O-C
2H
5からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4または5個の置換基で置換されている、請求項1に記載のポリマー顔料分散剤。
【請求項3】
式(I)の前記少なくとも1つの部分が、式(II)
【化2】
(式中
、
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
の少なくとも1種の化合物と、式(III)
R1-NH
2 (III)
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択される)
の少なくとも1種の化合物とを、任意に少なくとも1種の溶媒の存在下で、反応させることによって得られる、請求項1に記載のポリマー顔料分散剤。
【請求項4】
前記ポリマー骨格(P)が直鎖のジブロックポリマーである、請求項1に記載のポリマー顔料分散剤。
【請求項5】
前記ポリマー骨格(P)がランダムポリマーである、請求項1に記載のポリマー顔料分散剤。
【請求項6】
前記ポリマー顔料分散剤がグラフトポリマーである、請求項5に記載のポリマー顔料分散剤。
【請求項7】
少なくとも以下の工程:
直鎖のジブロックポリマーと、式(IV)
【化3】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され
、
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
の化合物とを、
80℃以上から150℃以下の温度で反応させる工程
を含み、
前記直鎖のジブロックポリマーが、第1および第2のブロックを含み、リビングフリーラジカル重合によって、任意に溶媒の存在下で得られる、
少なくとも1種のポリマー顔料分散剤の製造方法。
【請求項8】
少なくとも以下の工程:
(a) ランダムポリマーと、式(IV)
【化4】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され
、
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
の化合物とを反応させる工程、
および
(b) 工程(a)で得られた化合物と、ラクトンの少なくとも1種のモノマーとを30℃以上から190℃以下の温度で反応させる工程
を含む、少なくとも1種のポリマー顔料分散剤の製造方法。
【請求項9】
少なくとも以下の工程:
(a) 少なくとも1種のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと、少なくとも1種のカルボン酸無水物とを70℃以上から140℃以下の範囲の温度で反応させて混合物を得る工程、および
(b) 工程(a)で得られた混合物と、ランダムポリマーおよび式(IV)
【化5】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され
、
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)の化合物とを、
70℃以上から140℃以下の範囲の温度で反応させる工程
を含む、少なくとも1種のポリマー顔料分散剤の製造方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか1項に記載の少なくとも1種のポリマー顔料分散剤、少なくとも1種の溶媒および少なくとも1種の顔料を含む、顔料分散体。
【請求項11】
請求項10に記載の顔料分散体および少なくとも1種のバインダーを含む、コーティング組成物。
【請求項12】
印刷インク、自動車用ベースコート、自動車用クリアコート、ミルベース、家具コーティングおよび木材コーティングにおける、請求項10に記載の顔料分散体の使用方法。
【請求項13】
請求項11に記載のコーティング組成物から形成された少なくとも1つの層でコーティングした物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本請求の発明は、ポリマー顔料分散剤、ポリマー顔料分散剤の製造方法、およびコーティングのため、および印刷インク、自動車用ベースコート、自動車用クリアコート、ミルベース、家具コーティングおよび木材コーティングにおいて使用される、顔料分散剤を含む顔料分散体に関する。本発明はさらに、顔料分散体を含むコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料入りのコーティング組成物は、自動車産業において耐食性プライマーおよび装飾用トップコートとして広く使用されている。自動車産業の車両商品化セグメントの主要な要因が色であることから、自動車市場は、高い透明性の色と豊かな彩度に向かう傾向にある。高い透明性と豊かな彩度は一般に、クリアコート中に有機顔料をサブミクロンのサイズで非常に安定して微細に分散させることで達成される。しかし、小さなサイズ、すなわち100nm未満の顔料粒子の集塊が、コーティングに適用される間、およびコーティング組成物中で長期保存されている間に生じることは、コーティング産業における主要な課題である。顔料分散体は、顔料の失速および粘度変化を最小限に抑え、実質的に安定を保つことが望ましい。
【0003】
従来、顔料分散体組成物に使用されるランダムコポリマーは、複数のアンカリング(anchoring)セグメントおよび安定化セグメントを含有し、分散剤として適用しても、特に粒子径が小さい場合、適切な安定化が得られない。さらに、市販の超分散剤は、その合成のための特定の設定および条件など、いくつかの制限を有する制御された構造を有する。あるいは、市販の分散剤中には、酸塩基反応または水素結合によって顔料粒子を安定化させるため、アミンがアンカリング部位として使用されている。しかしアミンはクリアコート組成物中に存在する酸触媒と反応し、その結果、顔料が析出する。従って、既存の顔料分散体組成物の課題に対処するため、顔料分散体の継続した開発が必要とされている。
【0004】
最新技術では、制御された構造を有する超分散剤およびイミドアンカリングブロックを含む顔料分散剤が知られており、例えば、以下の参考文献に記載されている。
【0005】
U.S.2016/257774A1には、少なくとも1つのペンダント状に結合したイミド基を有するアクリル骨格を含むポリマー分散剤組成物が記載されており、イミドのカルボニルは、縮合芳香環に化学的に結合している。
【0006】
U.S.6,037,414Aには、アクリル骨格、ポリエステル側鎖、環状イミド基および第4級アンモニウム基を有するグラフトポリマーを含むポリマー顔料分散剤が記載されている。
【0007】
U.S.8,129,466B2には、ナフトエ酸と反応したグリシジル(メタ)アクリレートを含む第1ブロック、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む第2ブロック、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む第3ブロックを有するトリブロックポリマーを含む分散剤を含むナノ粒子分散体が記載されており、前記第3ブロックは前記第2ブロックとは異なるものである。
【0008】
U.S.7,723,425B2には、原子移動ラジカル重合(ATRP)によって調製され、塩形成基で修飾された修飾ブロックコポリマー分散剤を含有する組成物が記載されている。塩形成基は、特定の単環式スルホン酸または多環式スルホン酸、または単環式または多環式のカルボン酸およびホスホン酸、または単環式または多環式の基を含有するハロゲン化アルキル、または単環式または多環式のスルホン酸のエステルから選択される。
【0009】
先行技術に開示された方法および組成物には制限がある。上述の先行技術に記載された組成物からは、効果的な脱集塊および顔料粒子との強い相互作用を提供して顔料粒子をサブミクロンのサイズで微細に分散させることを達成する、効率的な顔料分散剤が提供されない。顔料粒子との強い相互作用がないと、市場で望まれる透明性および色が影響を受ける。コーティングおよびインクの市場では、高彩度のニッチな色空間への需要が高まっているので、上記の欠点を克服し、π-π相互作用および水素結合相互作用を介して芳香族顔料分子と相互作用することができる強固なアンカリングブロックを含む、新規の顔料分散体の合成が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】U.S.2016/257774A1
【文献】U.S.6,037,414A
【文献】U.S.8,129,466B2
【文献】U.S.7,723,425B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
故に本請求の発明の目的は、顔料分散剤および顔料分散体を提供することであり、該顔料分散体は明確に定義されたポリマー鎖構造を有する該顔料分散剤を含み、該顔料分散剤は、穏やかな条件で容易に合成することができるポリマー顔料分散剤を含有する顔料分散体から得られるコーティングの低い明度(L*値の測定によって決定される)によって証明されるように、顔料粒子の効率的な分散を提供する。
【0012】
本請求の発明のさらなる目的は、該ポリマー顔料分散剤を調製するための効率的な方法を提供することである。
【0013】
概要
驚くべきことに、本明細書で下に記載の新規のポリマー顔料分散剤を含むコーティング組成物は、該新規のポリマー顔料分散剤を含むコーティング組成物から得られるコーティングの低い明度(L*値の測定によって決定される)によって証明されるように、顔料粒子に優れた安定化を提供することが見出された。さらに、本明細書で下に記載のポリマー顔料分散剤の調製方法は、従来知られているポリマー顔料分散剤の合成方法よりも効率的で安価であることが予想外に見出された。
【課題を解決するための手段】
【0014】
よって一側面では、本請求の発明は、ポリマー骨格(P)および式(I):
【化1】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)を形成し、そして
これによって、式(I)の部分は、-C(=O)-O-基を介してポリマー骨格(P)に結合している)
の少なくとも1つの部分を含む、ポリマー顔料分散剤に関する。
【0015】
別の側面では、本請求の発明は、少なくとも以下の工程:
直鎖のジブロックポリマーと、式(IV)
【化2】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
の化合物とを、
80℃以上から150℃以下の温度で反応させる工程
を含み、
直鎖のジブロックポリマーが、第1および第2のブロックを含み、リビングフリーラジカル重合によって、任意に溶媒の存在下で得られる、
少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法に関する。
【0016】
なお別の側面では、本請求の発明は、少なくとも以下の工程:
(a) ランダムポリマーと、式(IV):
【化3】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
の化合物とを反応させる工程、
および
(b) 工程(a)で得られた化合物と、ラクトンの少なくとも1種のモノマーとを
30℃以上から190℃以下の温度で反応させる工程
を含む、少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法に関する。
【0017】
別の側面では、本請求の発明は、少なくとも以下の工程:
(a) 少なくとも1種のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと、少なくとも1種のカルボン酸無水物とを70℃以上から140℃以下の範囲の温度で反応させて混合物を得る工程、および
(b) 工程(a)で得られた混合物と、ランダムポリマーおよび式(IV)
【化4】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)の化合物とを、
70℃以上から140℃以下の範囲の温度で反応させる工程
を含む、少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法に関する。
【0018】
別の側面では、本請求の発明は、本請求の発明による少なくとも1種のポリマー顔料分散剤、少なくとも1種の溶媒および少なくとも1種の顔料を含む顔料分散体に関する。
【0019】
別の側面では、本請求の発明は、本請求の発明による顔料分散体、および少なくとも1種のバインダーを含むコーティング組成物に関する。
【0020】
別の側面では、本請求の発明は、印刷インク、自動車用ベースコート、自動車用クリアコート、ミルベース、家具コーティングおよび木材コーティングにおける、本請求の発明による顔料分散体の使用方法に関する。
【0021】
なお別の側面では、本請求の発明は、本請求の発明によるコーティング組成物から形成された少なくとも1つの層でコーティングされた物品に関する。
【0022】
別の側面では、本請求の発明は、式(IV)
【化5】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成し、
これによってN-ナフタレニル-4-カルボキシ-1,2-フタルイミドの化合物が除かれる)
の化合物に関する。
【0023】
別の側面では、本請求の発明は、式(IV)
【化6】
(式中、
R1は、非置換ナフチルまたは1、2または3個の-OHで置換されたナフチルからなる群から選択され、そして
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択される環を形成する)
の化合物に関する。
【0024】
本請求の発明は、次の利点のうち、少なくとも1つに関連する:
(i) ポリマー顔料分散剤は、通常の重合技術を使用して、ジブロックポリマーおよびランダムポリマー構造で合成される、
(ii) 100nm未満のサブミクロン粒子径の顔料粒子を有する顔料分散体が提供される、
(iii) 本明細書で下に記載の式(IV)の化合物は、π-πおよび水素結合相互作用のような弱い相互作用であっても、顔料表面との良好な相互作用および強い吸着を提供する、
(iv) 本明細書で下に記載の式(IV)の化合物は、低極性溶媒への溶解性が向上している、
(v) 本請求の発明のポリマー骨格(P)は、立体的な安定化を提供する、
(vi) 本請求の発明のポリマー顔料分散剤は、従来の超分散剤と比較して、高彩度および透明な色を提供する、および
(vii) 本請求の発明のポリマー顔料分散剤は、強酸触媒と相互作用しないので、有機酸触媒を含有するクリアコート組成物と適合性がある。
【0025】
本請求の発明の他の目的、利点および適用は、以下の詳細な記載から、当業者に明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、単に例示的な性質のものであり、本請求の発明または本請求の発明の適用および使用を制限することを意図するものではない。さらに、先行する技術分野、背景、概要、または以下の詳細な説明で提示する如何なる理論に拘束されることを意図するものではない。
【0027】
本明細書で使用する用語「comprising(含む)」、「comprises(含む)」および「comprised of(から構成される)」は、「including(含む)」、「includes(含む)」または「containing(含有する)」、「contains(含有する)」と同義であり、包括的または制約がなく、追加の、列挙されていない部材、要素または方法工程を除外するものではない。本明細書で使用する用語「comprising」、「comprises」および「comprised of」は、用語「consisting of(からなる)」、「consists(からなる)」および「consists of(からなる)」を含むことが理解されるであろう。
【0028】
さらに、本明細書および特許請求の範囲における用語「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」などおよび同様のものは、類似の要素を区別するために使用しており、必ずしも連続的なまたは時系列的な順序を記載するために使用しているものではない。このように使用する用語は、適切な状況下では交換可能であり、本明細書に記載の主題の実施形態は、本明細書に記載または図示するものとは別の順序で動作可能であることを理解されたい。用語「(A)」、「(B)」および「(C)」、または「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「(i)」、「(ii)」などが、方法または使用またはアッセイの工程に関連している場合には、工程間に時間または時間間隔の一貫性はない、すなわち、本明細書の上または下に記載するように、本願明細書に別段の指示がない限り、工程は同時に実施してよく、またはそのような工程間に秒、分、時間、日、週、月、またはさらに年の時間間隔があってもよい。
【0029】
以下の節で、主題の様々な側面をより詳細に定義する。このように定義する各側面は、反対に明確に示されていない限り、任意の他の側面(単数または複数)と組み合わせてよい。特に、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、任意の他の特徴または好ましいまたは有利であると示された特徴と組み合わせてよい。
【0030】
本明細書を通して参照される「一実施形態」または「実施形態」とは、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造または特性が、本請求の発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって本明細書を通して種々の場所で現れる「一実施形態において」または「或る実施形態において」という語句は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではないが、指すこともある。さらに、特徴、構造または特性は、本開示から当業者に明らかになるように、1つ以上の実施形態において任意の適した態様で組み合わせてよい。さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが、他の特徴を含まず、様々な実施形態の特徴の組み合わせは、当業者に理解されるように、主題の範囲内であり、様々な実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、請求された実施形態のいずれも任意の組み合わせで使用することができる。
【0031】
さらに、本明細書を通して定義される範囲は末端値も含んでおり、すなわち、1から10の範囲は、1と10の両方が範囲に含まれることを意味する。疑義を避けるため、出願人は、適用される法律に従ってあらゆる等価物を得る権利を有するものとする。
【0032】
本請求の発明の目的のために、ブロックポリマーまたはブロックコポリマーとは、2つ以上のモノマーが一緒にクラスター化して、繰り返し単位の「ブロック」を形成するときに形成されるポリマーまたはコポリマーと定義される。
【0033】
本発明の目的のために、ランダムポリマーまたはランダムコポリマーとは、2つ以上のモノマーが完全にランダムな態様で繰り返し単位として加えられたときに形成されるポリマーまたはコポリマーとして定義される。
【0034】
本請求の発明の目的において、グラフトポリマーとは、1つの複合体の直鎖の骨格および別の複合体のランダムに分配された分岐を有するセグメント化されたコポリマーである。
【0035】
本明細書を通して参照される用語「コポリマー」とは、コポリマーが、ラジカル重合によって得ることができるブロックコポリマーまたはランダムコポリマーを含むことを意味する。
【0036】
本請求の発明の目的のために、質量平均(Mw)および数平均(Mn)分子量は、高速液体クロマトグラフィーポンプおよび屈折率検出器を使用して、40℃でゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。使用する溶離液はテトラヒドロフランであり、溶出速度は1ml/分である。較正は、ポリスチレン標準によって行う。
【0037】
本請求の主題の目的のために、極性溶媒とは、大きな双極子モーメントを有し、非常に様々な電気陰性度を有する原子間の結合を含有する溶媒であると定義される。
【0038】
本請求の発明の目的のために、溶媒の誘電率の値は、溶媒の極性の尺度を示す。溶媒の誘電率が高いほど、溶媒の極性が高いことを示す。
【0039】
本請求の発明の目的のために、モノマーまたは繰り返し単位における(メタ)の使用は、任意のメチル基を示す。
【0040】
本請求の発明の目的のために、透明なまたは透明性とは、可視光を散乱させることなく完全にまたは部分的に材料を通過させる、材料の特性として定義される。
【0041】
本請求の発明の目的のために、顔料とは、選択的吸収によって材料の色を変える任意の物質、または光を散乱および反射させる任意の物質と定義される。
【0042】
本請求の発明の目的のために、効果顔料とは、方向性のある光の反射、散乱、吸収、または光学的に可変な外観を、それが適用されている基材にまたはその上に付与するフレーク状または板状の構造と定義される。
【0043】
本請求の発明の目的のために、多分散性または多分散性指数(PDI)とは、所与のポリマーにおける分子質量の分布の尺度であると定義される。
【0044】
本請求の発明の目的のために、本請求の発明で使用する「質量%」または「wt.%」とは、コーティング組成物の合計質量に対するものである。さらに、本明細書で下に記載のように、それぞれの成分に含まれるあらゆる化合物のwt.-%は、総計で100wt.-%になる。
【0045】
上記の測定技術は当業者によく知られており、従って本請求の本発明を制限するものではない。
【0046】
ポリマー顔料分散剤
本請求の発明の側面は、ポリマー骨格(P)および式(I):
【化7】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)を形成し、そして
これによって、式(I)の部分は、-C(=O)-O-基を介してポリマー骨格(P)に結合している)
の少なくとも1つの部分を含む、ポリマー顔料分散剤に関する。
【0047】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載の式(I)におけるR1は、非置換であるか、またはF、Cl、Br、I、-NO2、-CN、-OH、-O-C1~C6-アルキル、-C(=O)-C1~C6-アルキル、-C(=O)-O-C1~C6-アルキル、-C(=O)-O-フェニル、-CH2-C(=O)-C1~C6-アルキル、-C(=O)-NH(C1~C6)アルキル、-C(=O)-NH-フェニル、-C1~C6-アルキルで置換されている、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニルからなる群から選択され、-C1~C6-アルキルそれ自体は、非置換であるか、またはF、Cl、Br、I、-CN、-OH、-O-CF3、-O-CH3および-O-C2H5からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4または5個の置換基で置換されている。
【0048】
本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載の式(I)におけるR1は、非置換であるか、またはF、Cl、Br、I、-NO2、-CN、-OH、--O-C1~C6-アルキル、-C(=O)-C1~C6-アルキル、-C(=O)-O-C1~C6-アルキル、-C(=O)-O-フェニル、-CH2-C(=O)-C1~C6-アルキル、-C(=O)-NH(C1~C6)アルキル、-C(=O)-NH-フェニル、-C1~C6-アルキルからなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4または5個の置換基で置換されているナフチルであり、-C1~C6-アルキルそれ自体は、非置換であるか、またはF、Cl、Br、I、-CN、-OH、-O-CF3、-O-CH3および-O-C2H5からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4または5個の置換基で置換されている。
【0049】
本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載の式(I)におけるR1は、それぞれ非置換であるか、または1、2または3個の-OHで置換されている、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニルからなる群から選択される。
【0050】
本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載の式(I)におけるR2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)からなる群から選択される環を形成する。
【0051】
本請求の発明の別の実施形態において、式(I)の少なくとも1つの部分および一般式(IV)の化合物はそれぞれ、式(II)
【化8】
(式中、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
の少なくとも1種の化合物と、
式(III)
R1-NH
2 (III)
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択される)
の少なくとも1種の化合物とを、
任意に少なくとも1種の溶媒(S1)の存在下で
反応させることによって得られる。
【0052】
本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載の式(II)の少なくとも1種の化合物は、無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、およびエンドメチレンテトラヒドロフタル酸からなる群から選択され、これらはそれぞれ1個の-C(=O)-OH基で置換されている。本請求の発明のより好ましい実施形態では、本明細書で上に記載の式(II)の少なくとも1種の化合物は、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物および1,2-シクロヘキサンカルボン酸無水物からなる群から選択される。
【0053】
本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載の式(III)の少なくとも1種の化合物は、1-ナフチルアミンおよび7-ヒドロキシ1-ナフチルアミンからなる群から選択される。
【0054】
本請求の発明の別の実施形態において、少なくとも1種の溶媒(S1)は、80℃以上から160℃以下の範囲の沸点および11以上から30以下の範囲の誘電率を有する極性溶媒である。
【0055】
本請求の発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の溶媒(S1)は、80℃以上から130℃以下の範囲の沸点および11以上から25以下の範囲の誘電率を有する極性溶媒である。
【0056】
本請求の発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の溶媒(S1)は、メチルN-アミルケトン、エチルメチルケトン、メチルイソアミルケトンおよびイソプロパノールからなる群から選択される。
【0057】
本請求の発明の目的のために、一般式(IV)の化合物は、より好ましくは、イソプロパノール、エチルメチルケトン、メチルイソアミルケトンおよびメチルN-アミルケトンのような極性が低く低沸点の溶媒の存在下で、本明細書で上に記載の反応によって合成することができる。
【0058】
本請求の発明の或る実施形態において、ポリマー顔料分散剤は、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1000g/mol以上から25000g/mol以下の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。本請求の発明の好ましい実施形態において、ポリマー顔料分散剤は、1000g/mol以上から15000g/mol以下の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0059】
本請求の発明の或る実施形態において、ポリマー顔料分散剤は、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.2以上から20以下の範囲の多分散性を有する。本請求の発明の別の実施形態において、ポリマー顔料分散剤は、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.2以上から10以下の範囲の多分散性を有する。本請求の発明の好ましい実施形態において、ポリマー顔料分散剤は、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.2以上から3.5以下の範囲の多分散性を有する。本請求の発明の最も好ましい実施形態において、ポリマー顔料分散剤は、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.2以上から2.2以下の範囲の多分散性を有する。
【0060】
本請求の発明の或る実施形態において、式(I)の少なくとも1つの部分の合計質量は、ポリマー顔料分散剤の合計質量に基づいて、5wt.%以上から50wt.%以下の範囲にある。本請求の発明の好ましい実施形態において、式(I)の少なくとも1つの部分の合計質量は、ポリマー顔料分散剤の合計質量に基づいて、5wt.%以上から30wt.%以下の範囲にある。
【0061】
直鎖のジブロックポリマー
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のポリマー骨格(P)は、直鎖のジブロックポリマーである。
【0062】
本請求の発明の別の実施形態において、直鎖のジブロックポリマーは、リビングフリーラジカル重合によって得られる。
【0063】
本請求の発明の或る実施形態において、直鎖のジブロックポリマーは、原子移動ラジカル重合(ATRP)と呼ばれるリビングフリーラジカル重合によって得られる。
【0064】
ATRP法は、制御された構造を有する非常に均一な製品を提供すると説明され、制御されたラジカル重合(CRP)とも呼ばれる。ATRP法は、U.S.6,365,666B1およびU.S.6,642,301B2における顔料分散剤を含み、多種多様な適用に有用なコポリマーの調製用と説明される。ATRP法は、U.S.5,807,937A、U.S.5,763,548A、U.S.5,789,487AおよびWO1998/40415A1に詳細に記載されている。
【0065】
本請求の発明の目的のために、直鎖のジブロックポリマーは、可逆的付加フラグメント連鎖移動(RAFT)重合、単一電子移動リビングラジカル重合(SEL-LRP)、ニトロキシド媒介ラジカル重合(NMRP)、リビング開環メタセシス重合(ROMP)、リビングアニオン重合およびリビングカチオン重合のような他の重合技術によって得ることができる。
【0066】
本請求の発明のなお別の実施形態において、直鎖のジブロックポリマーは、式A-Bを有し、式中、
Aは、少なくとも1種のグリシジル(メタ)アクリレートを含む第1の混合物を反応させることによって得られる第1のポリマーブロックであり;および
Bは、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む第2の混合物を反応させることによって得られる第2のポリマーブロックである。
【0067】
本請求の発明の或る実施形態において、直鎖のジブロックポリマーA-Bは、第1のポリマーブロックAと第2のポリマーブロックBとを、任意に少なくとも1種の溶媒の存在下で、および任意に少なくとも1種の触媒の存在下で反応させることによって得られる。
【0068】
本請求の発明の別の実施形態において、直鎖のジブロックポリマーは、式A-Bを有し、式中、
Aは、少なくとも1種のグリシジル(メタ)アクリレートを含む第1の混合物を反応させることによって得られる第1のポリマーブロックであり;および
Bは、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む第2の混合物を反応させることによって得られる第2のポリマーブロックであり、
任意に、少なくとも1種の溶媒の存在下にある。
【0069】
本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載の第1のポリマーブロックAは、少なくとも1種のグリシジル(メタ)アクリレートを含む第1の混合物を反応させることによって得られる。
【0070】
本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載の第2のポリマーブロックBは、アルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種のモノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種のモノマー、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの少なくとも1種のモノマー、およびポリエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレートの少なくとも1種のモノマーを含む第2の混合物を反応させることによって得られる。
【0071】
本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載の第2のポリマーブロックBは、アルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種のモノマーおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種のモノマーを含む第2の混合物を反応させることによって得られる。
【0072】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のアルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびイソデシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載のアルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートおよびイソブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0073】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0074】
本請求の発明の或る実施形態において、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールプロピルエーテルアクリレートおよびポリエチレングリコールブチルエーテルアクリレートからなる群から選択される。
【0075】
本請求の発明の或る実施形態において、直鎖のジブロックポリマーは、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1000g/mol以上から25000g/mol以下の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。本請求の発明の好ましい実施形態において、ポリマー顔料分散剤は、1000g/mol以上から15000g/mol以下の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0076】
本請求の発明の或る実施形態において、直鎖のジブロックは、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.2以上から20以下の範囲の多分散性を有する。本請求の発明の別の実施形態において、直鎖のジブロックは、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.2以上から10以下の範囲の多分散性を有する。本請求の発明の好ましい実施形態において、ポリマー顔料分散剤は、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.2以上から3.5以下の範囲の多分散性を有する。本請求の発明の最も好ましい実施形態において、ポリマー顔料分散剤は、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.2以上から2.2以下の範囲の多分散性を有する。
【0077】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のポリマー骨格(P)は、少なくとも2つのブロックを有するブロックポリマーである。
【0078】
ランダムポリマー
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のポリマー骨格(P)は、ランダムポリマーである。
【0079】
本請求の発明のなお別の実施形態において、ランダムポリマーはフリーラジカル重合によって得られる。
【0080】
本請求の発明の或る実施形態において、ランダムポリマーは、原子移動ラジカル重合(ATRP)と呼ばれるフリーラジカル重合によって得られる。
【0081】
ATRP法は、制御された構造を有する非常に均一な製品を提供すると説明され、制御されたラジカル重合(CRP)とも呼ばれる。ATRP法は、U.S.6,365,666B1およびU.S.6,642,301B2における顔料分散剤を含み、多種多様な適用に有用なコポリマーの調製用と説明される。ATRP法は、U.S.5,807,937A、U.S.5,763,548A、U.S.5,789,487AおよびWO1998/40415A1に詳細に記載されている。
【0082】
本請求の発明の目的のために、ランダムポリマーは、可逆的付加フラグメント連鎖移動(RAFT)、開環メタセシス重合(ROMP)、アニオン重合およびカチオン重合のような他の重合技術によって得ることができる。
【0083】
本請求の発明の或る実施形態において、ランダムポリマーは、
(a) グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレート、
(b) アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびシクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(c) 任意に、スチレンの少なくとも1種のモノマー、および
(d)任意に、ビニルモノマー、尿素基またはケト基を有するモノエチレン性不飽和モノマーおよびベンジル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー
を含む混合物(M)を、
任意に、少なくとも1種の溶媒(S2)の存在下で反応させることによって得られる。
【0084】
本請求の発明の好ましい実施形態において、ランダムポリマーは、
(a) グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレート、および
(b) アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびシクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、
を含む混合物(M)を、反応させることによって得られる。
【0085】
本請求の発明の好ましい実施形態において、ランダムポリマーは、
(a) グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレート、
(b) アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびシクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、および
(c) スチレンの少なくとも1種のモノマー
を含む混合物(M)を、反応させることによって得られる。
【0086】
本請求の発明の或る実施形態において、ランダムポリマーは、
(a) グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレート、
(b) アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびシクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(c) スチレンの少なくとも1種のモノマー、および
(d) ビニルモノマー、尿素基またはケト基を有するモノエチレン性不飽和モノマーおよびベンジル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー
を含む混合物(M)を、反応させることによって得られる。
【0087】
本請求の発明の好ましい実施形態において、ランダムポリマーは、
(a) グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレート、
(b) アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびシクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、および
(c) スチレンの少なくとも1種のモノマー、
を含む混合物(M)を、
少なくとも1種の溶媒(S2)の存在下で反応させることによって得られる。
【0088】
本請求の発明の好ましい実施形態において、ランダムポリマーは、
(a) グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレート、および
(b) アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびシクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、
を含む混合物(M)を、
少なくとも1種の溶媒(S2)の存在下で反応させることによって得られる。
【0089】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のアルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびイソデシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載のアルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートおよびイソブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0090】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0091】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のシクロアルキル(メタ)アクリレートは、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、およびボルニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0092】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のスチレンの少なくとも1種のモノマーは、4-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、4-tert-ブトキシスチレン、2-ブロモスチレン、3-ブロモスチレン、4-ブロモスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-クロロ-α-メチルスチレン、2,6-ジクロロスチレン、2-フルオロスチレン、3-フルオロスチレン、4-フルオロスチレン、2,6-ジフルオロスチレン、3-ニトロスチレンおよび4-アセトキシスチレンからなる群から選択される。
【0093】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載の少なくとも1種のビニルモノマーは、3-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸および4-ビニルベンジルクロライドからなる群から選択される。
【0094】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載の尿素基またはケト基を有するモノエチレン性不飽和モノマーは、2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エチル(メタ)アクリレート、2-ウレイド(メタ)アクリレート、N-[2-(2-オキソイミダゾリジン-3-イル)エチル]メタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、2-(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)、ジアセトンメタクリルアミド、N-(ベータ-ウレイドエチル)アクリルアミドおよびN-(ベータ-ウレイドエチル)メタクリルアミドからなる群から選択される。
【0095】
本請求の発明の或る実施形態において、溶媒(S2)は、キシレン、トルエン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ブトキシエタノール、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、メトキシプロピルアセテート、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。本請求の発明の好ましい実施形態において、溶媒(S2)は、トルエン、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルイソブチルケトンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0096】
本請求の発明の或る実施形態において、ランダムポリマーは、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1000g/mol以上から25000g/mol以下の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。本請求の発明の好ましい実施形態において、ポリマー顔料分散剤は、1000g/mol以上から15000g/mol以下の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0097】
本請求の発明の或る実施形態において、ランダムポリマーは、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.5以上から20以下の範囲の多分散性を有する。本請求の発明の別の実施形態において、ランダムポリマーは、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.5以上から10以下の範囲の多分散性を有する。本請求の発明の好ましい実施形態において、ポリマー顔料分散剤は、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.5以上から5以下の範囲の多分散性を有する。本請求の発明の最も好ましい実施形態において、ポリマー顔料分散剤は、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.5以上から3以下の範囲の多分散性を有する。
【0098】
グラフトポリマー
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のポリマー顔料分散剤はグラフトポリマーである。
【0099】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のグラフトポリマーは、少なくとも1種のポリエステルブロックを含む。
【0100】
本請求の発明のなお別の実施形態において、本明細書で上に記載のポリエステルブロックは、ヒドロキシ官能性脂肪族酸またはヒドロキシ官能性芳香族酸またはヒドロキシ官能性脂肪族酸のモノマー単位から得られる。本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載のポリエステルブロックは、ヒドロキシ官能性脂肪族酸のモノマー単位から得られる。本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のヒドロキシ官能性脂肪族酸は、グリコール酸、乳酸、5-ヒドロキシ吉草酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、12-ヒドロキシステアリン酸および6-ヒドロキシカプロン酸からなる群から選択される。
【0101】
本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載のポリエステルブロックは、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸の存在下で得られる。飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸の代表的な例は、好ましくはオレイン酸、リノレン酸、パルミトレイン酸およびトール油脂肪酸からなる群から選択される。
【0102】
本請求の発明の別の実施形態において、本明細書で上に記載のポリエステルブロックは、ラクトンのモノマー単位から得られる。本請求の発明のなお別の実施形態において、本明細書で上に記載のラクトンは、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、2-メチル-ε-カプロラクトン、3-メチル-ε-カプロラクトン、4-メチル-ε-カプロラクトン、5-ter-ブチル-ε-カプロラクトン、7-メチル-ε-カプロラクトン、4,4,6-トリメチル-ε-カプロラクトンおよびβ-プロピオラクトンからなる群から選択される。
【0103】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載の少なくとも1種のポリエステルブロックの合計質量は、ポリマー顔料分散剤の合計質量に基づいて、5wt.%以上から95wt.%以下の範囲にある。本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載の少なくとも1種のポリエステルブロックの合計質量は、ポリマー顔料分散剤の合計質量に基づいて、45wt.%以上から95wt.%以下の範囲にある。本請求の発明の最も好ましい実施形態において、本明細書で上に記載の少なくとも1種のポリエステルブロックの合計質量は、ポリマー顔料分散剤の合計質量に基づいて、45wt.%以上から80wt.%以下の範囲にある。
【0104】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のポリエステルブロックは、-C(=O)-O-基を介して、式(I)の部分および/またはポリマー骨格(P)に結合している。
【0105】
本請求の発明の別の実施形態において、本明細書で上および下に記載のグラフトポリマーは、少なくとも1種のポリエーテルブロックを含む。
【0106】
本請求の発明の別の実施形態において、本明細書で上に記載の少なくとも1種のポリエーテルブロックは、10から120個のエチレンオキシド単位を含むポリオキシエチレン基を含む。本請求の発明の好ましい実施形態において、本明細書で上に記載の少なくとも1種のポリエーテルブロックは、20から60個のエチレンオキシド単位を含むポリオキシエチレン基を含む。
【0107】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のポリエーテルブロックは、-C(=O)-O-基を介して、式(I)の部分および/またはポリマー骨格(P)に結合している。
【0108】
本請求の発明の側面は、直鎖のジブロックポリマー骨格を含む少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
本明細書で上に記載のジブロックポリマーと、式(IV):
【化9】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
の化合物とを、
80℃以上から150℃以下の温度で反応させる工程
を含み、
直鎖のジブロックポリマーが、第1および第2のブロックを含み、本明細書で上に記載のリビングフリーラジカル重合によって、任意に溶媒(S3)の存在下で得られる、
方法に関する。
【0109】
本請求の発明の或る実施形態において、溶媒(S3)は、ブチルアセテート、メチルN-アミルケトン、メチルイソアミルケトンおよびイソプロパノールからなる群から選択される。
【0110】
或る実施形態において、本請求の発明は、直鎖のジブロックポリマー骨格を含む少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
本明細書で上に記載のジブロックポリマーと、式(IV):
【化10】
(式中、
R1は、それぞれ非置換であるか、または1、2または3個の-OHで置換されている、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニルからなる群から選択され、そして
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択される環を形成する)
の化合物とを、
100℃以上から130℃以下の温度で反応させる工程
を含み、
直鎖のジブロックポリマーが、第1および第2のブロックを含み、本明細書で上に記載のリビングフリーラジカル重合によって、任意に溶媒(S3)の存在下で得られる、
方法に関する。
【0111】
好ましい実施形態において、本請求の発明は、直鎖のジブロックポリマー骨格を含む少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
本明細書で上に記載のジブロックポリマーと、式(IV):
【化11】
(式中、
R1は、非置換であるか、または1、2または3個の-OHで置換されているナフチルであり、
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択される環を形成する)
の化合物とを、
100℃以上から130℃以下の温度で反応させる工程
を含み、
直鎖のジブロックポリマーが、第1および第2のブロックを含み、本明細書で上に記載のリビングフリーラジカル重合によって、任意に溶媒(S3)の存在下で得られる、
方法に関する。
【0112】
本請求の発明の側面は、ランダムポリマーを含む少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
(a) 本明細書で上に記載のランダムポリマーと、式(IV)
【化12】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
の化合物とを反応させる工程、および
(b) 工程(a)で得られた化合物と、ラクトンの少なくとも1種のモノマーとを
30℃以上から190℃以下の温度で反応させる工程
を含む、方法に関する。
【0113】
或る実施形態において、本請求の発明は、ランダムポリマーを含む少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
(a) 本明細書で上に記載のランダムポリマーと、式(IV)
【化13】
(式中、
R1は、それぞれ非置換であるか、または1、2または3個の-OHで置換されている、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニルからなる群から選択され、そして
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択される環を形成する)
の化合物とを反応させる工程、および
(b) 工程(a)で得られた化合物と、ラクトンの少なくとも1種のモノマーとを100℃以上から140℃以下の温度で反応させる工程
を含む、方法に関する。
【0114】
好ましい実施形態において、本請求の発明は、ランダムポリマーを含む少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
本明細書で上に記載のランダムポリマーと、式(IV):
【化14】
(式中、
R1は、非置換であるか、または1、2または3個の-OHで置換されているナフチルであり、
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択される環を形成する)
の化合物とを反応させる工程、および
(b) 工程(a)で得られた化合物と、ラクトンの少なくとも1種のモノマーとを100℃以上から140℃以下の温度で反応させる工程
を含む、方法に関する。
【0115】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載のラクトンは、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、2-メチル-ε-カプロラクトン、3-メチル-ε-カプロラクトン、4-メチル-ε-カプロラクトン、5-ter-ブチル-ε-カプロラクトン、7-メチル-ε-カプロラクトン、4,4,6-トリメチル-ε-カプロラクトンおよびβ-プロピオラクトンからなる群から選択される。
【0116】
本請求の発明の側面は、ランダムポリマーを含む少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
(a) 少なくとも1種のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと、少なくとも1種のカルボン酸無水物とを70℃以上から140℃以下の範囲の温度で反応させて混合物を得る工程、および
(b) 工程(a)で得られた混合物と、本明細書で上に記載のランダムポリマーおよび式(IV)
【化15】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)の化合物とを、
70℃以上から140℃以下の範囲の温度で反応させる工程
を含む、方法に関する。
【0117】
或る実施形態において、本請求の発明は、ランダムポリマーを含む少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
(a) 少なくとも1種のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルおよび少なくとも1種のカルボン酸無水物を100℃以上から140℃以下の範囲の温度で反応させて混合物を得る工程、および
(b) 工程(a)で得られた混合物と、本明細書で上に記載のランダムポリマーおよび式(IV)
【化16】
(式中、
R1は、それぞれ非置換であるか、または1、2または3個の-OHで置換されている、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニルからなる群から選択され、そして
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択される環を形成する)
の化合物とを、
100℃以上から140℃以下の温度で反応させる工程
を含む、方法に関する。
【0118】
好ましい実施形態において、本請求の発明は、ランダムポリマーを含む少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
(a) 少なくとも1種のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルおよび少なくとも1種のカルボン酸無水物を100℃以上から140℃以下の範囲の温度で反応させて混合物を得る工程、および
(b) 工程(a)で得られた混合物と、本明細書で上に記載のランダムポリマーおよび式(IV)
【化17】
(式中、
R1は、非置換であるか、または1、2または3個の-OHで置換されているナフチルであり、
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-OH-基で置換されている)からなる群から選択される環を形成する)
の化合物とを、
100℃以上から140℃以下の温度で反応させる工程
を含む、方法に関する。
【0119】
本請求の発明の別の側面は、本請求の発明による少なくとも1種のポリマー顔料分散剤、少なくとも1種の溶媒(S5)および少なくとも1種の顔料を含む顔料分散体に関する。
【0120】
本請求の発明の目的のために、少なくとも1種の溶媒(S5)は、有機溶媒からなる群から選択される。有機溶媒の種類の代表的な例には、アルコール、ケトンまたはケトアルコール、エーテル、エステルおよび多価アルコールが含まれるが、これらに限定されない。有機溶媒の代表的な例には、キシレン、トルエン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、エチルアセテート、エチルラクテート、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびブチル-2-ヒドロキシエチルエーテルが含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
本請求の発明の目的のために、少なくとも1種の顔料は、ドイツ標準規格DIN55944の定義により、実質的に不溶性の微細に分散した有機または無機の着色剤である。
【0122】
有機顔料の代表的な例には、モノアゾ顔料、例えばC.I.Pigment Brown25;C.I.Pigment Orange5、13、36および67;C.I.Pigment Red1、2、3、5、8、9、12、17、22、23、31、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、63、112、146、170、184、210、245および251;C.I.Pigment Yellow1、3、73、74、65、97、151および183;ジアゾ顔料、例えばC.I.Pigment Orange16、34および44;C.I.Pigment Red144、166、214および242;C.I.Pigment Yellow12、13、14、16、17、81、83、106、113、126、127、155、174、176および188;アンサントロン顔料、例えばC.I.Pigment Red168(C.I.Vat Orange3);アントラキノン顔料、例えばC.I.Pigment Yellow147および177;C.I.Pigment Violet31; アントラキノン顔料、例えばC.I.Pigment Yellow147および177;C.I.Pigment Violet31;アントラピリミジン顔料:C.I.Pigment Yellow108(C.I. Vat Yellow20);キナクリドン顔料、例えばC.I.Pigment Red122、202および206;C.I.Pigment Violet19;キノフタロン顔料、例えばC.I.Pigment Yellow138;ジオキサジン顔料、例えば、C.I.Pigment Violet23および37;フラバントロン顔料、例えばC.I.Pigment Yellow24(C.I.Vat Yellow1);インダントロン顔料、例えばC.I.Pigment Blue60(C.I.Vat Blue4)および64(C.I.Vat Blue6);イソインドリン顔料、例えばC.I.Pigment Orange69;C.I.Pigment Red260;C.I.Pigment Yellow139および185;イソインドリノン顔料、例えばC.I.Pigment Orange61;C.I.Pigment Red257および260;C.I.Pigment Yellow109、110、173および185;イソビオラントロン顔料、例えばC.I.Pigment Violet31(C.I.Vat Violet1);金属錯体顔料、例えばC.I.Pigment Yellow117、150および153;C.I.Pigment Green8;ペリノン顔料、例えばC.I.Pigment Orange43(C.I.Vat Orange7);C.I.Pigment Red194(C.I.Vat Red15);ペリレン顔料、例えばC.I.Pigment Black31および32;C.I.Pigment Red123、149、178、179(C.I.Vat Red23)、190(C.I.Vat Red29)および224;C.I.Pigment Violet29;フタロシアニン顔料、例えばC.I.Pigment Blue15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6および16;C.I.Pigment Green7および36;ピラントロン顔料、例えばC.I.Pigment Orange51;C.I.Pigment Red216(C.I.Vat Orange4);チオインジゴ顔料、例えばC.I.Pigment Red88および181(C.I.Vat Red1);C.I.Pigment Violet38(C.I.Vat Violet3);トリアリールカルボニウム顔料、例えばC.I.Pigment Blue1、61および62;C.I.Pigment Green1;C.I.Pigment Red81、81:1および169;C.I.Pigment Violet1、2、3および27;C.I.Pigment Black1(アニリンブラック);C.I.Pigment Yellow101(アルダジンイエロー)、およびC.I.Pigment Brown22が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
無機顔料の代表的な例には、白色顔料、例えば二酸化チタン(C.I.Pigment White6)、亜鉛白、顔料グレードの酸化亜鉛;硫化亜鉛、リトポン;鉛白;さらに白色充填剤、例えばバリウムスルフェートおよびCaCO3、黒色顔料、例えば酸化鉄ブラック(C.I.Pigment Black11)、鉄マンガンブラック、スピネルブラック(C.I.Pigment Black27)、カーボンブラック(C.I.Pigment Black7);着色顔料、例えば酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン;クロムグリーン(C.I.Pigment Green48);コバルトグリーン(C.I.Pigment Green50);ウルトラマリングリーン;コバルトブルー(C.I.Pigment Blue28および36);ウルトラマリンブルー、鉄ブルー(C.I.Pigment Blue27)、マンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット、コバルトバイオレット、マンガンバイオレット、酸化鉄リード(C.I.Pigment Red101);カドミウムスルホセレニド(C.I.Pigment Red108);モリブデートリード(C.I.Pigment Red104);ウルトラマリンリード、酸化鉄ブラウン、混合ブラウン、スピネル相およびコランダム相(C.I.Pigment Brown24、29および31)、クロムオレンジ;酸化鉄イエロー(C.I.Pigment Yellow42);ニッケルチタンイエロー(C.I.Pigment Yellow53;C.I.Pigment Yellow157および164);クロムチタンイエロー;カドミウムスルフィドおよびカドミウム亜鉛スルフィド(C.I.Pigment Yellow37および35);クロムイエロー(C.I.Pigment Yellow34)、亜鉛イエロー、アルカリ土類金属クロメート;ナポリイエロー;ビスマスバナデート(C.I.Pigment Yellow184);干渉顔料、例えばコーティングされた金属プレートレットをベースにしたメタリック効果顔料、金属酸化物でコーティングされたマイカプレートレットをベースにしたパール光沢顔料、および液晶顔料が含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
本請求の発明の目的のために、少なくとも1種の顔料は、メタリック顔料および効果顔料からなる群から選択される。効果顔料の代表的な例には、赤色真珠光沢マイカ、白色真珠光沢マイカ、緑色有機マイカ、黄色マイカ、青色ベースマイカが含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
本請求の発明の目的のために、少なくとも1種の顔料は、2種以上の異なる顔料の混合物を含むこともできる。
【0126】
本請求の発明の目的のために、少なくとも1種の顔料は、好ましくは、BASF Perrindo Maroon L3920、BASF Perrindo Maroon L3990、Sun Chemical Perrindo Ma-roon229-8801、Sun Chemical Perrindo Maroon229-6438、Sun Chemical Perrindo Violet29、Clariant Hostaperm Brown HFR01、Sun Chemical Palomar Blue248-4816およびBASF Heliogen Blue7081Dからなる群から選択される。
【0127】
本請求の発明の或る実施形態において、ポリマー顔料分散剤の、少なくとも1種の顔料に対する質量比は、0.1:1以上から3:1以下の範囲にある。
【0128】
本請求の発明の好ましい実施形態において、ポリマー顔料分散剤の、少なくとも1種の顔料に対する質量比は、0.25:1以上から1.5:1以下の範囲にある。
【0129】
本請求の発明の目的において、顔料粒子の平均粒径は、直径が10ナノメートル以上から10ミクロン以下の範囲であり、好ましくは10ナノメートル以上から5ミクロン以下の範囲であり、より好ましくは10ナノメートル以上から1ミクロン以下の範囲にある。
【0130】
本請求の発明の目的のために、顔料分散体は、通常の当業者に既知の方法で調製してよい。顔料分散体を調製する方法の代表的な例には、ボールミルまたはメディアミルを使用したエネルギー集約型の混合または粉砕の使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0131】
本請求の発明の別の側面は、本請求の発明による顔料分散体および少なくとも1種のバインダーを含むコーティング組成物に関する。
【0132】
本請求の発明の目的のために、バインダーの代表的な例には、塗料、充填剤、および添加剤が含まれるが、これらに限定されない。添加剤の代表的な例には、界面活性剤、光安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤、染料、可塑剤、レベリング剤およびスキニング防止剤などが含まれるが、これらに限定されない。本請求の発明の目的のために、少なくとも1種のバインダーは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン系(polystyrenics)、ポリエステル、アルキド、ポリサッカライドおよびポリウレタンからなる群から選択されることが好ましい。
【0133】
本請求の発明の或る実施形態において、コーティング組成物は、溶媒系組成物である。本請求の発明の目的のために、溶媒系コーティング組成物は、有機溶媒を含む組成物である。有機溶媒の代表的な例には、キシレン、トルエン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、エチルアセテート、エチルラクテート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチル-2-ヒドロキシエチルエーテルが含まれるが、これらに限定されない。
【0134】
本請求の発明の或る実施形態において、コーティング組成物は水系組成物である。本請求の発明の目的のために、水系コーティング組成物は、主溶媒として水を含む組成物である。しかしながら、水系コーティング組成物には、0wt.%から10wt.%以下、好ましくは0wt.%から5wt.%以下、および最も好ましくは0wt.%から1wt.%以下の有機溶媒が存在してよい。
【0135】
本請求の発明の或る実施形態において、クリアコート材料は、本明細書で上に記載のコーティング組成物を含む。
【0136】
本請求の発明の或る実施形態において、ベースコート材料は、本明細書で上に記載のコーティング組成物を含む。
【0137】
本請求の発明の側面は、印刷インク、自動車用ベースコート、自動車用クリアコート、ミルベース、家具コーティングおよび木材コーティングにおける、本請求の発明による顔料分散体の使用方法に関する。
【0138】
本請求の発明の或る実施形態において、本明細書で上に記載の顔料分散体は、自動車のOEM仕上げ、自動車および/またはユーティリティビークルの中または上の装着用部品の仕上げ、および自動車の再仕上げからなる群から選択される工業用コーティングのクリアコート材料、トップコート材料、および電着塗料材料として使用される。
【0139】
本請求の発明の別の側面は、本請求の発明によるコーティング組成物から形成された少なくとも1つの層でコーティングされた物品に関する。
【0140】
本請求の発明の目的のために、コーティング組成物は、好ましくは、慣用的な塗布方法のうちの任意によって物品に塗布することができる。塗布方法の代表的な例には、噴霧、ナイフコーティング、散布、流し込み浸漬、含浸、トリクリングまたはローリングが含まれるが、これらに限定されない。このような塗布に関して、コーティングされる基材それ自体が静止していて、塗布ユニットまたは装置が動いてよい。あるいは、コーティングされる基材、より具体的にはコイルが動いて、塗布ユニットが基材に対して静止しているかまたは適切に動いてもよい。好ましい塗布方法は、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、高速回転、静電スプレー塗布であり、単独でまたはホットスプレー塗布、例えば熱風スプレーなどと組み合わせたものである。
【0141】
本請求の発明の目的のために、本請求の発明のコーティング組成物は、コーティングされていない物品または予めコーティングされた物品に適用することができる。
【0142】
本請求の発明の側面は、式(IV)
【化18】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
これによってN-ナフタレニル-4-カルボキシ-1,2-フタルイミドの化合物が除かれる)
の化合物に関する。
【0143】
本請求の発明の別の側面は、式(IV)
【化19】
(式中、
R1は、非置換ナフチルまたは1、2または3個の-OHで置換されたナフチルからなる群から選択され、そして
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択される環を形成する)
の化合物に関する。
【0144】
本請求の発明の目的のために、本明細書で上および下に記載の式(IV)の化合物は、アンカー基またはアンカー(単数)またはアンカー(複数)とも呼ばれる。本請求の発明の目的のために、本明細書で上および下に記載のポリマー顔料分散剤は、顔料分散剤または超分散剤またはポリマー分散剤または分散剤とも呼ばれる。本請求の発明の式(IV)の化合物が、驚くべきことに、分散剤として機能するときに、微粒子または粒子の凝集および/または集塊に対してコロイドの安定化を提供することが見出されたことは、本請求の発明の利点である。本明細書で上および下に記載の式(IV)の化合物は、π-πおよび水素結合相互作用のような弱い相互作用によってさえ、顔料表面との良好な相互作用および強い吸着を提供する。さらに、本請求の発明の利点は、ポリマー分散剤が、費用効果の高い簡易で効率的な方法で調製可能なことである。本明細書で上および下に記載の式(IV)の化合物は、低極性溶媒への溶解性が向上しており、ポリマー顔料分散剤の合成が通常知られている方法よりも容易である。本請求の発明のポリマー顔料分散剤は、従来の超分散剤または顔料分散剤と比較して、高彩度および透明な色を提供することができる。
【0145】
好ましい実施形態において、本請求の発明は、ポリマー骨格(P)および式(I):
【化20】
(式中、
R1は、非置換であるか、またはF、Cl、Br、I、-NO
2、-CN、-OH、-O-C
1~C
6-アルキル、-C(=O)-C
1~C
6-アルキル、-C(=O)-O-C
1~C
6-アルキル、-C(=O)-O-フェニル、-CH
2-C(=O)-C
1~C
6-アルキル、-C(=O)-NH(C
1~C
6)アルキル、-C(=O)-NH-フェニル、-C
1~C
6-アルキルからなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4または5個の置換基で置換されているナフチルであり、
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)からなる群から選択される環を形成し、そして
これによって、式(I)の部分は、-C(=O)-O-基を介してポリマー骨格(P)に結合している)
の少なくとも1つの部分を含む、ポリマー顔料分散剤に関する。
【0146】
好ましい実施形態において、本請求の発明は、ポリマー骨格(P)および式(I):
【化21】
(式中、
R1は、それぞれ非置換であるか、または1、2または3個の-OHで置換されている、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニルからなる群から選択され、
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)からなる群から選択される環を形成し、そして
これによって、式(I)の部分は、-C(=O)-O-基を介してポリマー骨格(P)に結合している)
の少なくとも1つの部分を含む、ポリマー顔料分散剤に関する。
【0147】
好ましい実施形態において、本請求の発明は、ポリマー骨格(P)および式(I):
【化22】
(式中、
R1は、非置換であるか、または1、2または3個の-OHで置換されているナフチルであり、
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)からなる群から選択される環を形成し、そして
これによって、式(I)の部分は、-C(=O)-O-基を介してポリマー骨格(P)に結合している)
の少なくとも1つの部分を含む、ポリマー顔料分散剤に関する。
【0148】
本請求の発明の好ましい実施形態において、式(I)の少なくとも1つの部分は、式(II)
【化23】
(式中、
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
の少なくとも1種の化合物と、式(III)
R1-NH
2 (III)
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択される)
の少なくとも1種の化合物とを、
少なくとも1種の溶媒の存在下で、
反応させることによって得られる。
【0149】
実施形態
以下に実施形態のリストを提供し、本開示をさらに説明するが、記載する特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0150】
1. ポリマー骨格(P)および式(I):
【化24】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)を形成し、そして
これによって、式(I)の部分は、-C(=O)-O-基を介してポリマー骨格(P)に結合している)
の部分を含む、ポリマー顔料分散剤。
【0151】
2. R1が、非置換であるか、またはF、Cl、Br、I、-NO2、-CN、-OH、-O-C1~C6-アルキル、-C(=O)-C1~C6-アルキル、-C(=O)-O-C1~C6-アルキル、-C(=O)-O-フェニル、-CH2-C(=O)-C1~C6-アルキル、-C(=O)-NH(C1~C6)アルキル、-C(=O)-NH-フェニル、-C1~C6-アルキルからなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4または5個の置換基で置換されている、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニルからなる群から選択され、-C1~C6-アルキルそれ自体は、非置換であるか、またはF、Cl、Br、I、-CN、-OH、-O-CF3、-O-CH3および-O-C2H5からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4または5個の置換基で置換されている、実施形態1に記載のポリマー顔料分散剤。
【0152】
3. R1が、それぞれ非置換であるか、または1、2または3個の-OHで置換されている、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニルからなる群から選択される、実施形態1に記載のポリマー顔料分散剤。
【0153】
4. R2およびR3が、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O-基で置換されている)からなる群から選択される環を形成する、実施形態1に記載のポリマー顔料分散剤。
【0154】
5. 式(I)の少なくとも1つの部分が、式(II)
【化25】
(式中、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
の少なくとも1種の化合物と、
式(III)
R1-NH
2 (III)
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択される)
の少なくとも1種の化合物とを、
任意に少なくとも1種の溶媒の存在下で
反応させることによって得られる、実施形態1に記載のポリマー顔料分散剤。
【0155】
6. 式(II)の少なくとも1種の化合物が、無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、およびエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物からなる群から選択され、これらはそれぞれ少なくとも1個の-C(=O)-OH基で置換されている、実施形態5に記載のポリマー顔料分散剤。
【0156】
7. 式(III)の少なくとも1種の化合物が、1-ナフチルアミンおよび7-ヒドロキシ1-ナフチルアミンからなる群から選択される、実施形態5に記載のポリマー顔料分散剤。
【0157】
8. 少なくとも1種の溶媒が、80℃以上から160℃以下の範囲の沸点および11以上から30以下の範囲の誘電率を有する極性溶媒である、実施形態5に記載のポリマー顔料分散剤。
【0158】
9. 少なくとも1種の溶媒が、メチルN-アミルケトン、エチルメチルケトン、メチルイソアミルケトンおよびイソプロパノールからなる群から選択される、実施形態8に記載のポリマー顔料分散剤。
【0159】
10. ポリマー骨格(P)が直鎖のジブロックポリマーである、実施形態1に記載のポリマー顔料分散剤。
【0160】
11. 直鎖のジブロックポリマーがリビングフリーラジカル重合によって得られる、実施形態10に記載のポリマー顔料分散剤。
【0161】
12. 直鎖のジブロックポリマーが式A-Bを有し、式中、
Aは、少なくとも1種のグリシジル(メタ)アクリレートを含む第1の混合物を反応させることによって得られる第1のポリマーブロックであり;および
Bは、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む第2の混合物を反応させることによって得られる第2のポリマーブロックである、実施形態10に記載のポリマー顔料分散剤。
【0162】
13. アルキル(メタ)アクリレートが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびイソデシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、実施形態12に記載のポリマー顔料分散剤。
【0163】
14. ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、実施形態12に記載のポリマー顔料分散剤。
【0164】
15. ポリエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレートが、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールプロピルエーテルアクリレートおよびポリエチレングリコールブチルエーテルアクリレートからなる群から選択される、実施形態12に記載のポリマー顔料分散剤。
【0165】
16. ポリマー顔料分散剤が、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1000g/mol以上から25000g/mol以下の範囲の数平均分子量(Mn)を有する、実施形態1に記載のポリマー顔料分散剤。
【0166】
17. ポリマー顔料分散剤が、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.2以上から20以下の範囲の多分散性を有する、実施形態1に記載のポリマー顔料分散剤。
【0167】
18. 式(I)の少なくとも1つの部分の合計質量が、ポリマー顔料分散剤の合計質量に基づいて、5wt.%以上から50wt.%以下の範囲にある、実施形態1に記載のポリマー顔料分散剤。
【0168】
19. ポリマー骨格(P)がランダムポリマーである、実施形態1に記載のポリマー顔料分散剤。
【0169】
20. ランダムポリマーがフリーラジカル重合によって得られる、実施形態19に記載のポリマー顔料分散剤。
【0170】
21. ランダムポリマーが、
(a) グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレート、
(b) アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびシクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(c) 任意に、スチレンの少なくとも1種のモノマー、および
(d)任意に、ビニルモノマー、尿素基またはケト基を有するモノエチレン性不飽和モノマーおよびベンジル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー
を含む混合物(M)を、
任意に、少なくとも1種の溶媒の存在下で反応させることによって得られる、実施形態19に記載のポリマー顔料分散剤。
【0171】
22. アルキル(メタ)アクリレートが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびイソデシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、実施形態21に記載のポリマー顔料分散剤。
【0172】
23. ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、実施形態21に記載のポリマー顔料分散剤。
【0173】
24. シクロアルキル(メタ)アクリレートが、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、およびボルニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、実施形態21に記載のポリマー顔料分散剤。
【0174】
25. スチレンの少なくとも1種のモノマーが、4-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、4-tert-ブトキシスチレン、2-ブロモスチレン、3-ブロモスチレン、4-ブロモスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-クロロ-α-メチルスチレン、2,6-ジクロロスチレン、2-フルオロスチレン、3-フルオロスチレン、4-フルオロスチレン、2,6-ジフルオロスチレン、3-ニトロスチレンおよび4-アセトキシスチレンからなる群から選択される、実施形態21に記載のポリマー顔料分散剤。
【0175】
26. 少なくとも1種のビニルモノマーが、3-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸および4-ビニルベンジルクロライドからなる群から選択される、実施形態21に記載のポリマー顔料分散剤。
【0176】
27. 尿素基またはケト基を有するモノエチレン性不飽和モノマーが、2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エチル(メタ)アクリレート、2-ウレイド(メタ)アクリレート、N-[2-(2-オキソイミダゾリジン-3-イル)エチル]メタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、2-(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)、ジアセトンメタクリルアミド、N-(ベータ-ウレイドエチル)アクリルアミドおよびN-(ベータ-ウレイドエチル)メタクリルアミドからなる群から選択される、実施形態21に記載のポリマー顔料分散剤。
【0177】
28. 溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ブトキシエタノール、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、メトキシプロピルアセテート、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態21に記載のポリマー顔料分散剤。
【0178】
29. ランダムコポリマーが、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1000g/mol以上から25000g/mol以下の範囲の数平均分子量(Mn)を有する、実施形態19に記載のポリマー顔料分散剤。
【0179】
30. ランダムコポリマーが、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、1.5以上から20以下の範囲の多分散性を有する、実施形態19に記載のポリマー顔料分散剤。
【0180】
31. ポリマー顔料分散剤がグラフトポリマーである、実施形態19に記載のポリマー顔料分散剤。
【0181】
32. グラフトポリマーが少なくとも1種のポリエステルブロックを含む、実施形態31に記載のポリマー顔料分散剤。
【0182】
33. ポリエステルブロックが、ヒドロキシ官能性脂肪族酸またはヒドロキシ官能性芳香族酸またはヒドロキシ官能性脂肪族酸のモノマー単位から得られる、実施形態32に記載のポリマー顔料分散剤。
【0183】
34. ポリエステルブロックが、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸の存在下で得られる、実施形態32に記載のポリマー顔料分散剤。
【0184】
35. 飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が、オレイン酸、リノレン酸、パルミトレイン酸およびトール油脂肪酸からなる群から選択される、実施形態34に記載のポリマー顔料分散剤。
【0185】
36. ヒドロキシ官能性脂肪族酸が、グリコール酸、乳酸、5-ヒドロキシ吉草酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、12-ヒドロキシステアリン酸および6-ヒドロキシカプロン酸からなる群から選択される、実施形態33に記載のポリマー顔料分散剤。
【0186】
37. ポリエステルブロックがラクトンのモノマー単位から得られる、実施形態32に記載のポリマー顔料分散剤。
【0187】
38. ラクトンが、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、2-メチル-ε-カプロラクトン、3-メチル-ε-カプロラクトン、4-メチル-ε-カプロラクトン、5-ter-ブチル-ε-カプロラクトン、7-メチル-ε-カプロラクトン、4,4,6-トリメチル-ε-カプロラクトンおよびβ-プロピオラクトンからなる群から選択される、実施形態37に記載のポリマー顔料分散剤。
【0188】
39. 少なくとも1種のポリエステルブロックの合計質量が、ポリマー顔料分散剤の合計質量に基づいて、5wt.%以上から95wt.%以下の範囲にある、実施形態32に記載のポリマー顔料分散剤。
【0189】
40. ポリエステルブロックが、-C(=O)-O-基を介して、式(I)の部分および/またはポリマー骨格(P)に結合している、実施形態32に記載のポリマー顔料分散剤。
【0190】
41. グラフトポリマーが少なくとも1種のポリエーテルブロックを含む、実施形態31に記載のポリマー顔料分散剤。
【0191】
42. 少なくとも1種のポリエーテルブロックが、10から120個のエチレンオキシド単位を含むポリオキシエチレン基を含む、実施形態41に記載のポリマー分散剤。
【0192】
43. ポリエーテルブロックが、-C(=O)-O-基を介して、式(I)の部分および/またはポリマー骨格(P)に結合している、実施形態41または42に記載のポリマー顔料分散剤。
【0193】
44. 実施形態10から18のいずれか1項に記載の少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
直鎖のジブロックポリマーと、式(IV)
【化26】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
の化合物とを、
80℃以上から150℃以下の温度で反応させる工程
を含み、および
直鎖のジブロックポリマーが、第1および第2のブロックを含み、リビングフリーラジカル重合によって、任意に溶媒の存在下で得られる、方法。
【0194】
45. 実施形態19から40のいずれか1項に記載の少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
(a) 請求項19から21のいずれか1項に記載のランダムポリマーと、式(IV)
【化27】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-OH-基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-OH-基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-OH-基で置換されている)を形成する)
の化合物とを反応させる工程、
および
(b) 工程(a)で得られた化合物と、ラクトンの少なくとも1種のモノマーとを30℃以上から190℃以下の温度で反応させる工程
を含む、方法。
【0195】
46. 実施形態41から43のいずれか1項に記載の少なくとも1種のポリマー顔料分散剤を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程:
(a) 少なくとも1種のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと、少なくとも1種のカルボン酸無水物とを70℃以上から140℃以下の範囲の温度で反応させて混合物を得る工程、および
(b) 工程(a)で得られた混合物と、実施形態19から21のいずれか1項に記載のランダムポリマーおよび式(IV)
【化28】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)の化合物とを、
70℃以上から140℃以下の範囲の温度で反応させる工程
を含む、方法。
【0196】
47. 実施形態1から43のいずれか1項に記載の少なくとも1種のポリマー顔料分散剤、少なくとも1種の溶媒および少なくとも1種の顔料を含む、顔料分散体。
【0197】
48. ポリマー顔料分散剤の、少なくとも1種の顔料に対する質量比が、0.1:1以上から3:1以下の範囲にある、実施形態47に記載の顔料分散体。
【0198】
49. 実施形態47または48に記載の顔料分散体および少なくとも1種のバインダーを含むコーティング組成物。
【0199】
50. コーティング組成物が溶媒系組成物である、実施形態49に記載のコーティング組成物。
【0200】
51. コーティング組成物が水系組成物である、実施形態49に記載のコーティング組成物。
【0201】
52. 印刷インク、自動車用ベースコート、自動車用クリアコート、ミルベース、家具コーティングおよび木材コーティングにおける、実施形態47または48に記載の顔料分散体の使用方法。
【0202】
53. 実施形態49から51のいずれか1項に記載のコーティング組成物から形成された少なくとも1つの層でコーティングされた物品。
【0203】
54. 式(IV)
【化29】
(式中、
R1は、非置換または置換ナフチル、非置換または置換アントラセニル、および非置換または置換フェナントレニルからなる群から選択され、
R2は、水素、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、
R3は、直鎖または分岐状の置換C
1~C
14アルキル、および直鎖または分岐状の置換C
2~C
14アルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択され、または
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、置換フェニルまたは置換C
3~C
10シクロアルキルまたは置換C
4~C
10シクロアルケニル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)を形成する)
これによってN-ナフタレニル-4-カルボキシ-1,2-フタルイミドの化合物が除かれる)
の化合物。
【0204】
55. 式(IV)
【化30】
(式中、
R1は、非置換ナフチルまたは1、2または3個の-OHで置換されたナフチルからなる群から選択され、そして
R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に、フェニルおよびシクロヘキシル(但し、それぞれは、1個の-C(=O)-O
H基で置換されている)からなる群から選択される環を形成する)
の化合物。
【0205】
本請求の発明をその具体的な実施形態の観点から説明してきたが、或る特定の変更および等価物は当業者には明らかであり、本請求の発明の範囲に含まれることが意図される。
【0206】
本請求の発明を以下の非制限的な実施例によって詳細に説明する。より具体的には、以下に規定する試験法は、本願の一般的な開示の一部であり、特定の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0207】
式(IV)の化合物の調製
式(IV)の化合物の調製は、無水物をアミンと適した溶媒中還流条件下で反応させ、その後の沈殿または減圧下での真空乾燥により行った(スキーム1:aからg)。
【0208】
式(IV)の化合物(アンカーCからF)の合成を、以下のスキーム1:aからgに示す。
【0209】
【0210】
【0211】
N-ナフタレニル-4-カルボキシ-1,2-フタルイミドの調製(スキーム1a):
500mLの丸底フラスコに、100g(0.52モル)の無水トリメリット酸(供給源:Sigma Aldrich)、81.98g(0.57モル)の1-ナフチルアミン(供給源:Sigma Aldrich)および65gのDMFを入れ、2.5時間還流した。室温まで冷却されたら、混合物を300mLのブチルアセテートで希釈し、500mLのヘキサンに沈殿させた。沈殿物を濾し取り、減圧下で乾燥させて、黄色っぽい固体の生成物155gを得た(アンカーC)。
【0212】
N-ナフタレニル-4-カルボキシ-1,2-フタルイミドの調製(スキーム1b):
ディーンスタークを取り付けた1Lの丸底フラスコに、100g(0.52モル)の無水トリメリット酸(供給源:Sigma Aldrich)、81.98g(0.57モル)の1-ナフチルアミン(供給源:Sigma Aldrich)および200gのイソプロパノールを入れ、15時間還流した。反応はNMR分光法で追跡した。反応終了時に、~150gのイソプロパノールを還流条件下で加熱して留去した。残りのイソプロパノールを真空で除去し、212.94g(固形分85%)の生成物(アンカーC)を得た。
【0213】
N-ナフタレニル-4-カルボキシ-1,2-フタルイミドの調製(スキーム1c):
ディーンスタークを取り付けた1Lの丸底フラスコに、100g(0.52モル)の無水トリメリット酸(供給源:Sigma Aldrich)、81.98g(0.57モル)の1-ナフチルアミン(供給源:Sigma Aldrich)および200gのMIAKを入れ、水を蒸留しながら2.5時間還流した。反応の進行は、ディーンスターク装置に集めた水の量で確認した。反応終了時に、~150gのMIAKを還流条件下で加熱して留去した。残りの溶媒を減圧下で除去して、200g(固形分91%)の生成物(アンカーC)を得た。
【0214】
N-(7-ヒドロキシナフタレニル)-4-カルボキシ-1,2-フタルイミドの調製(スキーム1d):
250mLの丸底フラスコに、50g(0.26モル)の無水トリメリット酸(供給源:Sigma Aldrich)、46.0g(0.29モル)の7-ヒドロキシ1-ナフチルアミン(供給源:Sigma Aldrich)および60gのDMFを入れ、3時間還流した。室温まで冷却されたら、混合物を300mLのブチルアセテートで希釈し、500mLのヘキサンに沈殿させた。沈殿物を濾し取り、減圧下で乾燥させて、85g(固形分65%)の生成物(アンカーD)を得た。
【0215】
N-(7-ヒドロキシナフタレニル)-4-カルボキシ-1,2-フタルイミドの調製(スキーム1e):
ディーンスタークを取り付けた500mLの丸底フラスコに、30.17g(0.16モル)の無水トリメリット酸(供給源:Sigma Aldrich)、25g(0.16モル)の7-ヒドロキシ1-ナフチルアミン(供給源:Sigma Aldrich)および150gのMIAKを入れ、水を蒸留しながら5時間還流した。反応は、ディーンスターク装置に集めた水の量で確認した。反応終了時に、~50gのMIAKを還流条件下で加熱して留去した。残りのMIAKを減圧下で除去し、87.57g(固形分63%)の生成物(アンカーD)を得た。
【0216】
ジブロックポリマー顔料分散剤の調製
(I) 溶媒系ジブロックプレポリマーの調製
当業者によく知られている方法により、以下のような3つの主要な工程で、制御されたラジカル重合(CRP)を介して、溶媒系分散剤用のジブロックプレポリマー(プレポリマー1、プレポリマー2、およびプレポリマー3)を合成した。原材料の組成を表1から3に示す。ランダムタイプのポリマー分散剤の合成に使用した様々な骨格の特性を表4に示す。
【0217】
工程A:コンデンサー、かき混ぜ機、および熱電対を備えた5Lの4つ口丸底フラスコに、試薬1から4(表1から2)を入れ、窒素で10分間パージした。これに続いて、試薬5を加え、20分間さらにパージした。暗褐色の混合物を70℃に加熱し、その温度で1.5時間保持した。温度が70℃に達するまで窒素パージを続けた。
【0218】
工程B:工程Aの終了時に、反応混合物の温度を60℃に下げ、窒素で30分間パージした試薬6から9(表1から2)の混合物を、わずかな正の窒素圧力下でカニューレを介して反応フラスコに移した。反応温度を80℃に上げ、この温度で9.5時間保持した。
【0219】
工程C:工程Bの終了時に、反応混合物を空気にさらした。試薬10および11の混合物(表1から2)をフラスコに直接加え、80℃で5時間保持した。このプロセスの終わりには、樹脂の緑色が消え、最初は黄色だったアンバーライト(amberlyte)-748樹脂が青っぽい緑色になった。溶液を固体ろ過漏斗でろ過し、アンバーライト樹脂ビーズを除去した。酢酸および一部の溶媒を減圧下で10%の揮発分がなくなるまで留去した。
【0220】
【0221】
表中、
グリシジルメタクリレートおよびHPMA=2-ヒドロキシプロピルメタクリレートはDow Chemical社から入手し、ブチルメタクリレート、TsCl=p-トルエンスルホニルクロリド、酢酸およびBpy=ビピリジルはSigma Aldrich社から入手し、ブチルアクリレートはBASF社から入手しおよびアンバーライト-748樹脂はAlfa Aesar社から入手した。
【0222】
【0223】
表中、
グリシジルメタクリレートおよびHPMA=2-ヒドロキシプロピルメタクリレートはDow Chemical社から入手し、ブチルメタクリレート、TsCl=p-トルエンスルホニルクロリド、酢酸およびBpy=ビピリジルはSigma Aldrich社から入手し、ブチルアクリレートはBASF社から入手しおよびアンバーライト-748樹脂はAlfa Aesar社から入手した。
【0224】
【0225】
表中、
MIBK=メチルイソブチルケトン、グリシジルメタクリレートおよびHPMA=2-ヒドロキシプロピルメタクリレートはDow Chemical社から入手し、TsCl=p-トルエンスルホニルクロライド、酢酸、Bpy=ビピリジルおよびPEGMEアクリレート480=ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、Mn480はSigma Aldrich社から入手し、そしてアンバーライト-748樹脂はAlfa Aesar社から入手した。
【0226】
(II) 溶媒系ジブロックポリマー分散剤の調製
ジブロックプレポリマー、プレポリマー2を、触媒量のN,N-ジメチルドデシルアミンおよびブチルアセテートを使用して還流条件下(115℃から124℃)、エポキシあたりの質量(WPE)が15,000超に達するまでアンカーCおよびDと反応させ(スキーム1)、明るい茶色の透明な溶液の分散剤1および分散剤2(表4)を約50%の不揮発性(NV)で得た。
【0227】
(III) 対照ジブロックポリマー分散剤の調製
溶媒系ジブロックポリマー分散剤の調製のための上記の同じ手順を使用して、プレポリマー2を市販のN-メチルカルボキシ-1,8-ナフタルイミドと反応させることにより、比較例のジブロックコポリマーを調製して、分散剤4を得た(表4)。
【0228】
(IV) 水系ジブロックポリマー分散剤の調製
ジブロックプレポリマー3をアンカーCと反応させ(スキーム1)、分散剤3を固形分65%で得た。混合物を還流条件下(115℃)、WPE値が12,000に達するまで加熱した。最終的な生成物を真空乾燥し、MIBKを除去した。得られた生成物を50/50(w/w)のブチルセロソルブ(供給源:Eastman Chemical Company)およびDI水で還元して、茶色の透明な溶液を約50%の不揮発性(NV)で得た。
【0229】
【0230】
ランダムポリマー顔料分散剤の調製
(I) グリシジル官能性ポリアクリレート骨格(アクリル骨格BB-1およびBB-2)の調製
ランダムタイプのポリマー分散剤を合成するためのグリシジル官能性アクリルコポリマーは、グリシジルメタクリレート(GMA)の他のビニルおよび/または(メタ)アクリレートモノマーとの、溶液重合技術を使用した通常の最先端のフリーラジカル重合を介したランダム共重合によって合成した。これらのポリアクリレートの重要な特性を表5に記載する。熱開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)AMBNを使用した。組み合わせタイプ(comb type)の超分散剤の合成に使用した様々な骨格の特性を表5に示す。
【0231】
【0232】
表中、
PbW=質量部
GMA=グリシジルメタクリレート(供給源:三菱ガス化学社)、MMA=メチルメタクリレート、UMA=ウレイドメタクリレート(MMA中25%W/W溶液として使用)(供給源:BASF)、EHA=エチルヘキシルアクリレート(供給源:Sigma Aldrich)、BzMA=ベンジルメタクリレート(供給源:Geo Specialty Chemical Company)、MIBK=メチルイソブチルケトン(供給源:Sigma Aldrich)。
【0233】
(II) 溶媒系ランダムタイプポリマー分散剤(分散剤5)の調製
工程-1:アンカーグラフト化中間体の合成:
当業者によく知られている方法により、グリシジル官能性アクリルコポリマー(アクリル-BB-1)(36.3g)を、触媒量の亜鉛アセチルアセトネートの存在下110から115℃で、FTIR分光法で確認してほぼすべてのエポキシ基が消費されるまで、アンカーD(30.5g)と反応させた。反応塊を周囲条件まで冷却し、冷却しながらエチルメチルケトン(60g)を加えて希釈した。
【0234】
工程-2:ポリエステル側鎖のグラフト化:
当業者によく知られている方法により、ラクトンモノマーの開環重合によって、上記工程-1のアンカーグラフト化された中間体から、直鎖のポリエステル安定化鎖を「グラフト化」した。中間体に存在する溶媒を留去しながら、中間体を125℃まで徐々に加熱した。ε-カプロラクトン(132.1g)およびδ-バレロラクトン(29.0g)の混合物を、120℃から130℃の間で温度を維持しながら、スズ(II)2-エチルヘキサノエート(0.54g)とともに反応器に流し込んだ。理論上の予想値と比較して%NVを測定することによって確認されるラクトンの所望の転化が達成されるまで、125℃で反応をさらに続けた。所望の転化が達成されたら、塊を75℃まで冷却し、n-ブチルアセテートで希釈して、均一な溶液が観察されるまで撹拌した。分散剤の最終的な%NVは60.8%であった。
【0235】
(III)溶媒系ランダムタイプポリマー分散剤(分散剤6)の調製
工程-1:アンカーグラフト化中間体の合成:
当業者によく知られている方法により、グリシジル官能性アクリルコポリマー(アクリル-BB-1)(36.9g)を、触媒量の亜鉛アセチルアセトネートの存在下110から120℃で、ほぼすべてのエポキシ基が消費されるまで、アンカーC(24.05g)と反応させた。反応塊を周囲条件まで冷却し、冷却しながらエチルメチルケトン(10g)を加えて希釈した。
【0236】
工程-2:ポリエステル側鎖のグラフト化:
当業者によく知られている方法により、ラクトンモノマーの開環重合によって、上記工程-1のアンカーグラフト化された中間体から、直鎖のポリエステル安定化鎖を「グラフト化」した。中間体に存在する溶媒を留去しながら、中間体を125℃まで徐々に加熱した。ε-カプロラクトン(118.5g)およびδ-バレロラクトン(26.0g)の混合物を、105℃から125℃の間で温度を維持しながら、スズ(II)2-エチルヘキサノエート(0.48g)とともに反応器に流し込んだ。理論上の予想値と比較して%NVを測定することによって確認されるラクトンの所望の転化が達成されるまで、120℃で反応をさらに続けた。所望の転化が達成されたら、塊を75℃まで冷却し、n-ブチルアセテートで希釈して、均一な溶液が観察されるまで撹拌した。分散剤の最終的な%NVは61.7%であった。
【0237】
(IV) 水系ランダムタイプポリマー分散剤(分散剤7)の調製
ポリエチレングリコール(Carbowax2000(登録商標))(158.2g)を反応器に入れ、真空下で120℃に加熱し、30分間維持した。真空を停止し、コハク酸無水物(7.5g)を加えて118℃から120℃で3.5時間反応させた。グリシジル官能性アクリルコポリマー(アクリル-BB-2)(69.9g)を加え、続いてアンカーC(48.4g)を、触媒量の亜鉛アセチルアセトネートの存在下115℃でほぼすべてのエポキシ基が消費されるまで(エポキシ当量>15000g/eq)加えた。系に存在する溶媒は、単純な蒸留によってプロセスの間に留去した。反応塊を周囲条件まで冷却する一方、エチルメチルケトン(112g)および1-プロポキシ-2-プロパノール(28g)の混合物を撹拌しながら加えて塊を希釈した。分散剤の最終的なNVは66.5%であった。
【0238】
【0239】
ポリマー分散剤の評価および観察
本明細書で上に記載の方法より合成したポリマー分散剤を評価するために、溶媒系および水系の試料を処方し、Lau Disperserを用いて粉砕した。試料の粉砕、色性能および粒度分布を測定した。
【0240】
評価は、BASF Perrindo Maroon L3920、BASF Perrindo Maroon L39990、Sun Chemical Perrindo Maroon229-8801、Sun Chemical Perrindo Maroon229-6438、Sun Chemical Perrindo Violet29、Clariant Hostaperm Brown HFR01、Sun Chemical Palomar Blue248-4816、およびBASF Heliogen Blue7081Dを含むがこれらに限定されないコーティング用の複数の高機能性有機顔料で行った。顔料はSun Chemical,New Jersey、米国およびBASF Corporation,New Jersey、米国から入手した。
【0241】
1) 処方
溶媒系試験では、10%の顔料装填量を種々の顔料上の分散剤(DoP)濃度で検討した。DoP濃度は~30%から~300%の範囲であった。試料は通常のブチルアセテート(Nexeo Solutions,Warren,Michigan、米国)で評価した。表7に、~50%DoPを有する合成分散剤の典型的な処方を示す。
【0242】
水系試験では、10%の顔料装填量を種々の顔料上の分散剤(DoP)濃度で検討した。DoP濃度は~25%から~200%の範囲であった。試料は脱イオン水、および脱イオン水/溶媒の混合物で評価し、溶媒成分は処方物全体の少なくとも2.5wt.%であった。使用した溶媒の例には、プロピレングリコールn-プロピルエーテル(Nexeo Solutions,Warren,Michigan、米国)およびプロピレングリコールn-ブチルエーテル(Dowanol PNB,The Dow Chemical Company,Midland,Michigan、米国)が含まれるが、これらに限定されない。
【0243】
2) 粉砕
顔料を粉砕するために、各処方物に0.3mmのジルコニウム安定化イットリアビーズ(Fox Industries,Fairfield,New Jersey、米国)を加えた。溶媒系の系では、ビーズは合計処方物質量の~100%であり、例えば100gの処方物に100gのビーズを加えて合計200gとした。水系の系では、ビーズは合計処方物質量の200%であり、例えば100gの処方物に200gのビーズを加えて合計300gとした。
【0244】
次いで準備した試料を、冷却システムを有するLau Disperser-モデルDAS H-TP200-K(LAU GmbH, Hemer、ドイツ)に置き、ファンを540分または9時間動かして振とうした。ランが終了したら、試料をろ過してビーズを除去し、アルミ製塗料缶に保管した。ろ過したビーズは溶媒で洗浄し、再利用した。
【0245】
【0246】
安定性および色の評価
1) 試料の安定性
ろ過後、Hegmanゲージを使用して粉砕の細かさを評価した。試料は、粉砕が6ミクロン未満を示した場合、合格とみなした。
【0247】
2) 色の評価
溶媒系顔料分散体の色性能は、BASF Corp.社(26701 Telegraph Rd.Southfield,MI48033)から市販の1成分クリアコートであるR10CG0392Dで、メリネックスドローダウンシート(Puetz GmbH+C0.Folien KG,Taunusstein、ドイツ)を使用して評価した。顔料(L3920、L3990、229-6438)は、顔料対バインダーの質量比0.3%で評価した。バインダー質量には、クリアコートからの固形分51%のみが含まれていた。顔料はかき混ぜながらR10CG0392Dクリアコートに加えた。Bykドローダウンバー上の150μmのギャップを使用し(Byk-Chemie GmbH,Wesel、ドイツ)、~20分間フラッシュさせた。その後続いて試料を270°Fで20分間焼成した。再現性を確保するため、試料は二重に作成した。
【0248】
試料が冷却されたら、Byk Mac i分光光度計(Byk-Chemie GmbH,Wesel、ドイツ)を使用して色スペクトルを測定した。色付きのクリアコートドローダウンを有するメリネックスカードを、反射鏡の上に置いた。次いでByk Mac iをメリネックスおよび鏡の上に置き、GM CieLabの重み付けを使用して、d65光で鏡面から15、25、45、75、110度の角度で色データを測定した。測定は試料1つにつき5回行い、所与の試料の再現ドローダウンを比較した。
【0249】
この方法は、粒子径の大きい顔料が集塊して散乱光が多くなり、フィルムの明度の測定値が高くなるので、色の評価に使用した。110°の角度はフィルムの光路長が最も長いので、散乱の増加を検出するのに最も感度が高い。従って110°の角度でのL*値(明度)を評価に使用し、これによってL*値が低い分散体はより透明でありく、従って顔料粒子の分布または安定化または分散が改善されていると考えられる。
【0250】
表8は、表7の配合された系の110°の角度における典型的なL*値を示す。
【0251】
【0252】
表中、
L*は、110°での明度値であり、
<dL>は、参照の分散体、すなわち分散剤4を用いた分散体組成物(実施例7*、8*および9*、アンカー基をN-メチルカルボキシ-1,8-ナフタルイミドとする)および本請求の発明のポリマー顔料分散剤を用いた分散体(実施例1から6)の110°でのL*の差の加重値である。
【0253】
結果の考察
表8の結果から、本請求の発明のポリマー顔料分散剤を用いた実施例1から6が、低いL*値を示すことがわかる。<dL>の値がマイナスであることは、ポリマー顔料分散剤が参照の分散体よりもL*値が低いことを示している。これはまた、本請求の発明のポリマー顔料分散剤を用いた分散体が参照の分散体よりも透明であることを示す。
【0254】
各顔料タイプ内では、粒子径が小さいことと、散乱および不透明性に関連する110°における明度値の低下との間に良好な相関関係がある。低いL*値は一般に粒子径が小さいことと相関している。
【0255】
利点
1) 本請求の発明のジブロックポリマー分散剤は、ジブロックプレポリマーを用いて制御ラジカル重合(CRP)法で調製されたアンカー分子N-メチルカルボキシ-1,8-ナフタルイミドから作られた分散剤に比べて、より効率的な脱集塊を提供する。これは、高エネルギーマイクロミリング法により100nm未満のサイズ範囲で顔料粒子を得ることで、より彩度があり透明な色を実現できることを示している。
【0256】
2) 本請求の発明の新規アンカー(式IV)は、有機酸触媒を含有するクリアコートコーティング組成物に適合する。これは、酸触媒と反応して分散能力を失うアミンを含有する市販の分散剤よりも有利である。
【0257】
試験法
L*値の測定
L*値は、Byk Mac i分光光度計(Byk-Chemie GmbH,Wesel、ドイツ)を使用して測定した。色データはD65光源で測定し、加重dLまたは<dL>値は、標準DIN6175-2によるGM CieLab加重を使用して決定した。
【0258】
エポキシあたりの質量(WPE)の決定
WPEは、ASTM D1652に従い、臭化水素(HBr)による滴定で測定した。
【0259】
不揮発性(NV)の測定
NVは、ASTM D2369に従い、110℃に設定した強制空気ドラフトオーブンで60分までで揮発性成分を除去することによって測定した。