IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルコン インコーポレイティドの特許一覧

<>
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図1
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図2
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図3
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図4
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図5
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図6
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図7
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図8
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図9A
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図9B
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図10A
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図10B
  • 特許-カム作動式光学部品ロックアウト機構 図10C
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】カム作動式光学部品ロックアウト機構
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021532964
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 IB2019060794
(87)【国際公開番号】W WO2020128763
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】62/782,804
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】インホイ ウー
(72)【発明者】
【氏名】レン タクズワ マガラ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス ビー.ウェンスリッチ
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-019987(JP,A)
【文献】特開2015-123166(JP,A)
【文献】国際公開第2014/003186(WO,A1)
【文献】特表2020-503921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール式眼内レンズのレンズ部分を眼内に送達するための装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジングの端部に配置されたノズルであって、前記ノズルの内部は床を含み、前記床はアパーチャを含む、ノズルと、
前記ハウジング内に配置されたカム作動式機構であって、
基部と柱とを含むレンズ停止部であって、前記柱は、前記アパーチャ内に可動的に配置されている、レンズ停止部と、
前記レンズ停止部に向かう方向に動くように構成されたスライダであって、前記レンズ停止部は、前記スライダの遠位端に配置されており、前記スライダは、前記レンズ停止部の前記基部の一部分と位置合わせされ、前記スライダが動く際に前記基部の前記一部分を受け入れるように構成されたスロットを含む、スライダと、
を含む、カム作動式機構と、
を含む、装置。
【請求項2】
前記レンズ停止部は、ロックアウト状態で構成され、前記ロックアウト状態は、前記アパーチャを通して突出した前記柱を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記レンズ部分を更に含み、前記レンズ部分の先端部は、前記アパーチャを通して突出した前記柱に当接し、それによって前記レンズ部分の軸方向の動きを阻止する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記レンズ停止部は、後退した状態で構成され、前記後退した状態は、前記床と面一に配置され、前記床と連続的な表面を形成し、前記床に沿った前記レンズ部分の横断を可能にする、前記柱の端部を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記後退した状態は、前記スライダの前記スロット内に配置された前記レンズ停止部の前記基部の前記一部分を更に含み、前記スライダは軸方向に延びた状態にあり、前記柱は前記レンズ部分から離れている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記スライダの前記スロットは、前記基部の前記一部分を受け入れるために角度が付けられている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記レンズ部分を更に含み、前記レンズ部分は、前記アパーチャに隣接して前記床に配置されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記レンズ部分は、前記レンズ部分の先端部に偏菱形ばねを含み、前記先端部は前記アパーチャに隣接している、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記レンズ部分は、前記レンズ部分の後端部に延びるタブを更に含み、前記後端部は、前記先端部の反対側である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記タブは直角に延びる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記レンズ部分は支持部を含まない、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
レンズ部分を眼内に送達するための装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジングの端部に配置されたノズルであって、前記ノズルの内部は床を含み、前記床はアパーチャを含む、ノズルと、
カム作動式機構であって、
基部と柱とを含むレンズ停止部であって、前記柱は、前記アパーチャ内に可動的に配置されている、レンズ停止部と、
前記レンズ停止部に向かう方向に動くように構成されたスライダであって、前記レンズ停止部は、前記スライダの遠位端に配置されており、前記スライダは、前記レンズ停止部の前記基部の一部分と位置合わせされ、前記スライダが動く際に前記基部の前記一部分を受け入れるように構成されたスロットを含む、スライダと、
前記ハウジングの凹部内に配置される可動タブを含むロッキング機構であって、前記可動タブは、前記スライダに隣接し且つ前記スライダに当接し、前記凹部は、前記タブを前記凹部内に閉じ込めるための縁部を含み、前記タブは、前記スライダから離れ、それにより、前記スライダをロック解除し、前記スライダの軸方向の動きを可能にするように構成されている、ロッキング機構と、
を含む、カム作動式機構と、
を含む、装置。
【請求項13】
前記レンズ停止部は、ロックアウト状態で構成され、前記ロックアウト状態は、前記アパーチャを通して突出した前記柱を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記レンズ部分を更に含み、前記レンズ部分の先端部は、前記アパーチャを通して突出した前記柱に当接し、それによって前記レンズ部分の軸方向の動きを阻止する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記レンズ停止部は、後退した状態で構成され、前記後退した状態は、前記床と面一に配置され、前記床と連続的な表面を形成する前記柱の端部を含み、前記後退した状態は、前記スライダの前記スロット内に配置された前記レンズ停止部の前記基部の前記一部分を更に含み、前記スライダは軸方向に延びた状態にあり、前記柱は前記レンズ部分から離れている、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的に、眼外科に関し、より具体的には、実施形態は、全般的に、カム作動式光学部品ロックアウト機構を用いる、眼内に眼内レンズ(IOL:intraocular lens)を挿入するためのシステム、方法、及びデバイスに関し得る。
【背景技術】
【0002】
人間の眼は、軽度の劣化から視力の完全な喪失を引き起こす多くの疾患に罹患する可能性がある。コンタクトレンズ及び眼鏡である程度の不快感を補うことはできるが、眼手術が必要な場合もある。一般に、眼手術は、硝子体網膜手術などの後区処置と白内障手術などの前区処置とに分類され得る。硝子体網膜手術では、黄斑変性、糖尿病性網膜症、糖尿病性硝子体出血、黄斑円孔、網膜剥離、網膜上膜、及びサイトメガロウイルス 網膜炎を含むがこれらに限定されない多くの異なる眼状態に対処する場合がある。
【0003】
白内障手術については、濁った水晶体を眼内レンズ(IOL)に置き換えるために、外科的処置に、切開、及び眼内へのツールの挿入が必要となる場合がある。IOLを眼内に送達するために挿入ツールが使用され得る。例として、挿入ツールは、挿入ツールのノズルからIOLを押し出すためのプランジャを含み得る。いくつかの場合では、IOLは、挿入ツール内に予め装填される場合がある。他の場合では、挿入ツールに別個のベイ(bay)が装填される場合がある。プランジャは、IOLと係合し、IOLを、ベイから、ノズルを通して、眼内に前進させる場合がある。ベイ(又は挿入ツール)は、折りたたみチャンバを含む場合がある。折りたたみチャンバは、例えば、IOLが折りたたみチャンバ内を前進するときにIOLを折りたたむように構成されている。いくつかの場合では、別の動作によってIOLの折りたたみを生じさせる場合がある。
【0004】
挿入ツールからのIOLの送達は、複数工程のプロセスとなり得る。例えば、送達は、前進段階及び送達段階と呼ばれ得る2段階を含むことができる。前進段階では、IOLを、ベイ内での保管状態から静止状態に前進させることができる。IOLは、予め折りたたまれていてもよい、又は保管状態から静止状態に前進したときに折りたたまれてもよい。静止状態において、IOLの前進は停止され得る。ノズルが眼内に配置された状態で、IOLは、その後静止状態から送達段階に更に前進させることができる。送達段階は、IOLを、ノズルを通して眼内に前進させることを含み得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的実施形態では、本開示は、モジュール式眼内レンズのレンズ部分を眼内に送達するための装置を提供する。装置は、ハウジングと、ハウジングの端部に配置されたノズルであって、ノズルの内部は床を含み、床はアパーチャを含む、ノズルと、ハウジング内に配置されたカム作動式機構であって、基部と柱とを含むレンズ停止部であって、柱は、アパーチャ内に可動的に配置されている、レンズ停止部と、レンズ停止部に向かう方向に動くように構成されたスライダであって、レンズ停止部は、スライダの遠位端に配置されており、スライダは、レンズ停止部の基部の一部分と位置合わせされ、スライダが動く際に基部の一部分を受け入れるように構成されたスロットを含む、スライダと、を含む、カム作動式機構と、を含む。
【0006】
別の例示的実施形態では、本開示は、モジュール式眼内レンズのレンズ部分を眼内に送達するための装置を提供する。装置は、ハウジングと、ハウジングの端部に配置されたノズルであって、ノズルの内部は床を含み、床はアパーチャを含む、ノズルと、カム作動式機構であって、基部と柱とを含むレンズ停止部であって、柱は、アパーチャ内に可動的に配置されている、レンズ停止部と、レンズ停止部に向かう方向に動くように構成されたスライダであって、レンズ停止部は、スライダの遠位端に配置されており、スライダは、レンズ停止部の基部の一部分と位置合わせされ、スライダが動く際に基部の一部分を受け入れるように構成されたスロットを含む、スライダと、ハウジングの凹部内に配置される可動タブを含むロッキング機構であって、可動タブは、スライダに隣接し且つスライダに当接し、凹部は、タブを凹部内に閉じ込めるための縁部を含み、タブは、スライダから離れ、それにより、スライダをロック解除し、スライダの軸方向の動きを可能にするように構成されている、ロッキング機構と、を含む、カム作動式機構と、を含む。
【0007】
別の例示的実施形態では、本開示は、モジュール式眼内レンズのレンズ部分を眼内に送達するための挿入ツールをロック解除する方法を提供する。当該方法は、眼内に挿入ツールを提供することを含み、挿入ツールは、ハウジングであって、ノズルがハウジングの端部に配置されており、ノズルの内部は床を含み、床はアパーチャを含む、ハウジングと、ハウジング内に配置されたカム作動式機構であって、基部と柱とを含むレンズ停止部であって、柱は、アパーチャ内に可動的に配置されている、レンズ停止部と、レンズ停止部に向かう方向に動くように構成されたスライダであって、レンズ停止部は、スライダの遠位端に配置されており、スライダは、レンズ停止部の基部の一部分と位置合わせされ、スライダが動く際に基部の一部分を受け入れるように構成されたスロットを含む、スライダと、を含む、カム作動式機構と、を含む。当該方法は、レンズ停止部に向かう方向にスライダを動かすことと、レンズ停止部の一部分をスロット内に受け入れることと、アパーチャ内で柱を動かすことと、を更に含む。
【0008】
前述の概略説明及び以下の詳細な説明の両方は、本質的に例示的且つ説明的であり、本開示の範囲を限定することなく本開示の理解をもたらすことを意図するものと理解されるべきである。その点に関して、本開示の追加の態様、特徴、及び利点が、以下の詳細な説明から当業者には明らかとなるであろう。
【0009】
これらの図面は、本開示の実施形態のいくつかの特定の態様を示すものであり、本開示を限定する又は定義するために使用されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施形態による、レンズ部分が基部部分内に配置されたモジュール式IOLを示す。
図2図2は、本開示の実施形態による、モジュール式IOLの基部部分を示す。
図3図3は、本開示の実施形態による、モジュール式IOLのレンズ部分を示す。
図4図4は、本開示の実施形態による挿入ツールの頂面図である。
図5図5は、本開示の実施形態による、図4の挿入ツールの頂面図の断面図である。
図6図6は、本開示の実施形態による、図5の挿入ツールの断面図の前部分を示す。
図7図7は、本開示の実施形態による、図6の前部分の平面図である。
図8図8は、本開示の実施形態による、図6の前部分の斜視平面図である。
図9A図9Aは、本開示の実施形態による、ロックアウト状態にある挿入ツールの図6の前部分の側面斜視図である。
図9B図9Bは、本開示の実施形態による、ロック解除状態にある挿入ツールの図6の前部分の側面斜視図である。
図10A-10C】図10A図10Cは、本開示の実施形態による、モジュール式IOLの埋め込みを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の原理の理解を促進する目的のため、ここで図面に示す実装形態を参照し、特定の言語を用いてそれらを説明する。それでもやはり、開示の範囲について何ら限定を意図していないことは理解されるであろう。説明するデバイス、機器、方法に対するあらゆる変更及び更なる修正、並びに本開示の原理の任意の更なる応用は、本開示に関連する当業者であれば通常想起されるものと十分に考えられる。特に、1つ以上の実装形態に関して説明される特徴、構成要素、及び/又は工程は、本開示の他の実装形態に関して説明される特徴、構成要素、及び/又は工程と組み合わせてもよいと十分に考えることができる。簡略にするために、場合によっては、同じ又は同様の部品を参照するために、同じ参照番号が図面全体を通じて用いられる。
【0012】
実施形態は、全般的に、眼外科に関し得る。より具体的には、実施形態は、全般的に、眼内レンズ(IOL)を患者の眼内に送達するために折りたたむ又は巻くためのシステム、方法、及びデバイスに関し得る。送達のプロセスにおいて、IOLは、対称な半球形状に折りたたまれ、圧縮されてもよい。
【0013】
少なくとも一実施形態では、IOLは、モジュール式であってもよい。モジュール式IOLの実施形態は、基部部分及びレンズ部分を含んでもよい。モジュール式IOLを形成するために、レンズ部分は基部部分に結合されてもよい。特定の実施形態では、レンズ部分は、支持部を含まない場合がある。支持部がないと、レンズ部分がその重心軸を中心に回転しないようにすることが困難になる場合がある。実施形態は、支持部を有しない場合のあるレンズ部分を折りたたむことを対象とする。
【0014】
実施形態は、IOLがノズル内に適切に配置されるようにすることはもとより、IOLが折りたたみ中に回転しないようにすることができる。IOLの重心の均一性により、等しい、反対の力を加える対称な特徴を用いて、IOLが首尾よく折りたたまれることを可能にする。特定の実施形態では、IOLは、前縁部にある短い偏菱形ばねと後縁部にあるタブとを含んでもよい。これは、通常、長いC字形又はL字形の支持部を有する大部分の1部品レンズとは対照的である。折りたたまれたら、IOLは、ISO11979-3規格に準拠する折りたたまれた構成に維持され得る。実施形態は、レンズの折りたたみが、挿入ツールのレンズベイ(lens bay)の代わりに挿入ツールのノズル内でのみ行われるという点で、従来の送達システムと異なり得る。これにより、レンズベイ内の特徴がIOLの折りたたみを妨げることを防止する。したがって、送達前のあらゆる時点でIOLが意図せずに外れないようにすることができるロックアウト機構が必要であり得る。ロックアウトをカム作動式にすることにより、外部ロック又はタブはなくてもよい。したがって、処置中に滅菌野に廃棄する部品が1つ少なくなる。
【0015】
実施形態は、挿入ツールの底面からIOLの厚さよりも高い高さまで上向きに突出し得るレンズ停止部の柱を含むロックアウト機構を含んでもよい。これにより、IOLの着座/設置又は除去中におけるIOLの引っ掻きを低減する又は防止することができる。更に、レンズ停止部の柱は、IOLを装填するための案内を提供してもよい。各柱は、水平軸、垂直軸、及び回転軸における運動を制御するために十分な高さを有し得る。柱が底面から突出していることにより、ロック解除されると、柱が落下し、IOLが妨げなく横断するための平坦な床を形成し得る。
【0016】
図1は、モジュール式IOL10の一実施形態を示す。モジュール式IOL10は、任意の適切なモジュール式眼間(interocular)レンズであり得る。図示されるように、モジュール式IOL10は、基部部分12及びレンズ部分14を含んでもよい。図示される実施形態では、レンズ部分14は、基部部分12内に配置されている。動作時、術中又は術後のいずれかにおいて、モジュール式IOL10は、基部部分12を所定の位置に残したままで、レンズ部分14を修正又は調整することを可能にできる。例として、モジュール式IOL10は、眼内に埋め込まれ得る。埋め込み後、レンズ部分14は、眼内に配置された基部部分12を残したままで、修正、調整、及び/又は交換されてもよい。少なくとも一実施形態では、モジュール式IOL10は、眼内で組み立てられてもよい。例えば、基部部分12は、最初に眼内に埋め込まれてもよい。その後、レンズ部分14が眼内に送達され、基部部分12に取り付けられてもよい。
【0017】
図2は、本開示の特定の実施形態による、図1のモジュール式IOL10の基部部分12を示す。図示される実施形態では、基部部分12は、基部16及び支持部延長部18を含む。支持部延長部18は、側部支柱(又は他の適切な延長部)であってもよく、側部支柱は、基部16から延び、基部部分12が患者の眼内に配置され得るときに基部部分12を安定させることができる。図示される実施形態では、基部16は穴19を画定してもよく、穴19は、図2で示されるように、基部16の中央に位置してもよい。穴19は基部16を貫通する貫通穴として示されているが、実施形態では、穴19が、基部16を貫通しない止まり穴であることも考えられる。例えば、基部16は、基部16を貫通している穴19を有する環状リングではなくむしろ、基部16を貫通しないブラインドホールド(blind hold)である穴19を有する中実の円板であってもよい。穴19は、基部16の内周表面20によって画定されてもよい。少なくとも一実施形態では、凹設溝22が内周表面20に形成されている。凹設溝22は、下縁24及び上縁26を含んでもよい。レンズ部分14を基部16の穴19内に置くことができるように、上縁26は、(図3で示される突起部30を除いた)レンズ部分14の外径と同じ又はよりも大きなインサイダー(insider)直径を有してもよい。下縁24の全て又は一部分は、レンズ部分14が基部16の穴19に配置されたときに下縁24がレンズ部分14のための棚状部又は戻り止めとして機能し得るように、(図3で示される突起部30を除いた)レンズ部分14の外径よりも小さい内径を有し得る。基部部分12は、一体型であってもよく、又は任意の適切な手法で組み合わされる若しくは取り付けられる構成部品から形成されてもよい。
【0018】
図3を参照すると、本開示の特定の実施形態による、図1のモジュール式IOL10のレンズ部分14が示されている。図示される実施形態では、レンズ部分14は、光学部分28及び1つ以上の突起部30を含む。図3では2つの突起部30を示すが、実施形態は、ただ1つの突起部30、又は或いは、3つ、4つ、若しくは4つより多い突起部30を含んでもよい。更に、レンズ部分14の突起部30は、同じであっても互いに異なっていてもよい。突起部30は、光学部分28に固定されているものとして示されているが、突起部30の1つ以上を作動させて、(例えば、図2で示される)基部16の穴19に送達するための圧縮された状態から、(例えば、図2で示される)基部16の凹設溝22に留置するための圧縮されていない拡張状態に移行させ、それにより、基部部分12とレンズ部分14との間にインターロック接続を形成することができると理解すべきである。突起部30の外側湾曲部は、凹設溝22の内側半径に一致する半径を有してもよい。この構成は、一旦接続されたら、基部部分12とレンズ部分14との間の相対運動を制限するはずである。実施形態では、適切な光学部分28は、眼内の天然水晶体の形状に類似する形状であってもよく、シリコーン、アクリル、及び/又はこれらの組み合わせなどの適切な材料から作製されてもよい。光学部分28は円形であるものとして示されているが、光学部分28は、例えば、突起部30が長軸に隣接して配置された長円形又は楕円形などの任意の適切な形状であってもよい。したがって、この構成は、光学部分28の、その短軸に沿った縁部と、基部16の内周表面20との間に間隙を画定する。間隙は、分離が必要な場合に、基部部分12からレンズ部分14を取り外すためのプローブ又は類似デバイスのアクセスを可能にすることができる。
【0019】
図4は、例示的実施形態による挿入ツール32の頂面図を示す。挿入ツール32は、ハウジング33と、ハウジング33内に軸方向に少なくとも部分的に配置されたプランジャ34と、ノズル35とを含んでもよい。プランジャ34は、ハウジング33内に摺動可能に配置され、ハウジング33の長手方向軸線に沿って軸方向に動いてもよい。プランジャヘッド39がプランジャ34に結合されてもよく、ハウジング33の外側に配置されてもよい。示されるように、ノズル35は、プランジャヘッド39とは反対側の挿入ツール32の端部に配置されてもよい。換言すると、示されるように、プランジャ34及びプランジャヘッド39は、ハウジング33の第1端部から延びてもよく、ノズル35は、ハウジング33の第2反対端部から延びてもよい。使用者がプランジャヘッド39を押し下げ、プランジャ34をハウジング33内で軸方向に(ノズル35に向けて)動かしてもよい。ハウジング33は、ノズル35を受け入れるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、ノズル35は、ノズル35をハウジング33に結合することができると共に、ハウジング33から分離することができるように、ハウジング33に取り付け可能であってもよい。他の実施形態では、ノズル35(又はその一部分)は、ハウジング33内に一体形成されてもよい、又はハウジング33の恒久的な部品であってもよい。
【0020】
図5は、特定の実施形態による、図4の挿入ツール32の頂面図の断面図である。断面図は、挿入ツール32の全長に沿って下方向に取られている。示されるように、挿入ツール32は、剛性構造体(例えば、細長い部材)であり得るスライダ36を含む。スライダ36は、プランジャアセンブリ37から延びる部材38に結合されてもよい。プランジャアセンブリ37は、挿入ツール32(例えば、ハウジング33の内部部分の通路33a)内に可動的に配置されてもよい。プランジャ34の押し下げ時に、プランジャアセンブリ37はノズル35に向けて軸方向に動いてもよい。
【0021】
プランジャアセンブリ37は、プランジャ34と、オリフィス52を介して第2シリンダ50と流体連通する第1シリンダ48と、第2シリンダ50内に可動的に配置され得るシャフト40とを含んでもよい。示されるように、プランジャ34は、オリフィス52を介して第1シリンダ48から第2シリンダ50に作動流体46を押し込むために、ノズル35に向かう方向(矢印を参照)に押し下げられ得る。これにより、作動流体46によってシャフト40がノズル35内に推進し、ノズル35内でレンズ部分14に接触し、レンズ部分14を患者の眼内に押し込む。レンズ部分14は、挿入ツール32のノズル35内に配置されていてもよい。特定の実施形態では、レンズ部分14の突起部30は、例えば、図7で示されるように、(レンズ部分14の)先端部にある偏菱形ばね41と、レンズ部分14の後端部にある(例えば、レンズ部分14の基部から90°に延びる)タブ43とを含んでもよい。特定の実施形態では、プランジャ34の押し下げ時に、プランジャアセンブリ37はまた、ノズル35に向けて軸方向に動いてもよい。
【0022】
タブ42は、部材38から引き離すことができるロッキング機構であり得る。タブ42は、ハウジング33の凹部44a内に摺動可能に配置されてもよい。ロックされた状態において、タブ42は、スライダ36の溝内に延び、又はスライダ36に当接し、それによって、プランジャ34の押し下げ時にスライダ36及びプランジャアセンブリ37の軸方向の動きを阻止する。(示されるような)ロック解除状態にあるとき、タブ42は部材38から引き離され、それによって、プランジャ34の押し下げ時にスライダ36及びプランジャアセンブリ37の軸方向の動きを可能にする。
【0023】
タブ42は、長手方向軸線Lに対して直交する方向に動いてもよい。タブ42は、縁部45、又は凹部44a内の溝によって凹部44aに閉じ込められてもよい。特定の実施形態では、タブ42は、挿入ツール32から完全には引き抜くことはできない。完全に取り外し可能なロックがないことは、処置中に滅菌野に廃棄する部品が1つ少なくなるという利点をもたらす。
【0024】
図6図8は、特定の実施形態による、図5の挿入ツール32の前部分51の複数の図を示す。挿入ツール32はまた、基部55と柱56とを含むレンズ停止部53を含んでもよく、レンズ停止部53は、柱56がロックアウト状態にあるときにレンズ部分14の停止部として構成される。
【0025】
ロックアウト状態において、柱56は、ノズル35内で床58から直角に突出し、それによってレンズ部分14の軸方向の動きを阻止することができる。レンズ停止部53は、スライダ36の遠位端59に接触するように配置されてもよい。
【0026】
スライダ36の遠位端59は、レンズ停止部53に向かう方向に、柱56と柱56との間に(例えば、図6及び図8で示されるように)延びてもよい。柱56は、スライダ36が軸方向に動く際に、床58のアパーチャ60内で動くように構成された細長い部材であってもよい。即ち、スライダ36がノズル35に向けて動くと、遠位端59は、レンズ停止部53に係合し、柱56をアパーチャ60内に、レンズ部分14から離れる方に引く又は動かすことができる(例えば、柱56は後退した状態にあってもよい)。特定の実施形態では、柱56の一部分はアパーチャ60内に留まり、それによってアパーチャ60を塞ぎ、例えば図7で示されるように、レンズ部分14が横断するための連続的な平坦且つ平滑な表面(途切れのない)を床58内に形成する。レンズ部分14は、床58上に、アパーチャ60に隣接して配置されてもよい。延びた状態又はロックアウト状態においては、柱56は、例えば図6で示されるように、アパーチャ60を通って突出し、レンズ部分14の先端部に当接して、レンズ部分14の軸方向の動きを阻止する。また、図6で示されるのは、プランジャ34の押し下げ時におけるスライダ36の軸方向の動きの方向であり、矢印で示される。
【0027】
図9Aで示されるように、ロックアウト状態においては、プランジャ34は押し下げられておらず、スライダ36は軸方向前方に動いていない。スライダ36は、プランジャ34の押し下げ時に、示されるように、ハウジング33内に配置された軌道57に沿って動くことができる。
【0028】
図9Bで示されるように、ロック解除状態においては、スライダ36は、前方に動き、レンズ停止部53の柱56と柱56との間に延びる基部55の部分61に接触することができる。部分61は、細長い部材(例えば、円筒状の)であってもよく、スライダ36が前方に動くと、スライダ36の遠位端59に位置するスロット62に入るように構成されている。部分61の厚さは、例えば、スロット62の幅未満であってもよい。部分61は、図8でも示される。
【0029】
スロット62が部分61を受け入れると、レンズ停止部53はレンズ部分14から(例えば、下方に)離される又は引き離される。示されるように、レンズ停止部53を、アパーチャ60を介してレンズ部分14から離れるようにスロット62に移動させる又は押し込むために、スロット62は、示されるように、角度が付けられていてもよい(例えば、スライダ36の長手方向軸線に対して15°~75°)。スライダ36のスロット62は、プランジャ34及び/又はプランジャアセンブリ37が押し下げられると、レンズ停止部53を受け入れてもよい。プランジャ34が押し下げられると、シャフト40は前方に動いて、レンズ部分14を、ノズル35を通して患者の眼に移動させる。
【0030】
特定の実施形態では、挿入ツール32は予め装填されていてもよい。即ち、最終使用者に提供されるとき、挿入ツール32は、折りたたまれていない状態のレンズ部分14(例えば、モジュール式IOL10、基部部分12、及び/又はレンズ部分14)が挿入ツール32内に既に存在し、送達の準備ができていてもよい。挿入ツール32にレンズ部分14を予め装填することで、レンズ部分14を患者の眼内に送達する前に使用者が実施を必要とし得る工程数が減少するはずである。工程数の減少により、レンズ部分14の送達に関連する瑕疵及びリスクを減少させる可能性がある。更に、レンズ部分14の送達に必要な時間量も減少させる可能性がある。いくつかの実施形態では、レンズ部分14はノズル35に予め装填されていてもよい。
【0031】
初期状態(例えば、静止状態)においては、レンズ部分14は、ノズル35内に配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、レンズ部分14は、ノズル35内で折りたたまれてもよい。即ち、レンズ部分14は、レンズ部分14の大きさを低減するために、巻かれてもよい又は折りたたまれてもよい。この大きさの低減により、眼の最低限の大きさの切開部を通したレンズ部分14の送達を可能にする。
【0032】
留置段階においては、プランジャ34がレンズ部分14を前進させ、ノズル35内での静止状態から、ノズル35の留置チャネル63を通して、ノズル35のアパーチャ64から患者の眼内に出してもよい。
【0033】
ここで、患者の眼65内にモジュール式IOL10を埋め込むための例示的な手法を、図10A図10Cに関して説明する。
【0034】
図10Aで示されるように、挿入ツール32は、最初に、患者の眼65内に基部部分12を供給してもよい。実施形態では、外科医によって眼65内に切開部69が作成され得る。例えば、切開部69は、眼65の強膜67を通して作成され得る。切開部69は、適切な幅又は長さであり得る。限定されるものではないが、適切な幅及び/又は長さは、約4000マイクロメートル(4ミリメートル)未満であり得る。例えば、切開部69は、約1000マイクロメートル~約400マイクロメートル、約1000マイクロメートル~約3000マイクロメートル、又は約2000マイクロメートル~約3000マイクロメートルの適切な幅及び/又は長さを有してもよい。切開部69の作成後、挿入ツール32のノズル35は、切開部69を通して眼65の内部部分71に挿入されてもよい。挿入ツール32は、基部部分12を眼65の水晶体嚢73内に供給するために作動させてもよい。基部部分12のこの初期動作は、任意の適切な時に、例えば、切開部69が作成される前に実施されてもよい。ノズル35が眼65内にある状態で挿入ツール32が配置されたら、その後、挿入ツール32は、(折りたたまれた又は巻かれた構成の)基部部分12を、ノズル35を通して、眼65の内部部分71に進めることができる。供給時、基部部分12は、図10Bで示されるように、眼65の水晶体嚢73内で広がり、収まるはずである。支持部延長部18は、例えば、水晶体嚢73の赤道内で係合するように操作されてもよい。支持部延長部18は、水晶体嚢73に係合し、水晶体嚢73内で基部部分12をしっかりと固定することができる。
【0035】
図10Cで示されるように、レンズ部分14は、眼65の内部部分71内に配置されてもよい。図示される実施形態では、レンズ部分14は、基部部分12の基部16内に配置された状態で示される。レンズ部分14は、折りたたまれた(又は巻かれた構成)で送達され、挿入ツール32から排出後に広げられてもよい。レンズ部分14は、基部部分12の基部16内に配置され、例えば図3で示される突起部30の使用によって基部部分12に固定され、モジュール式IOL10を形成してもよい。しかしながら、実施形態は、突起部30を使用したレンズ部分14と基部部分12とのインターロックに限定されるべきではなく、他の適切なロッキング機構が、レンズ部分14を基部部分12に固定してモジュール式IOL10形成するために使用されてもよい。レンズ部分14が光を、網膜上に集束するように屈折させることができるように、基部部分12はレンズ部分14を眼65内に保持してもよい。
【0036】
本明細書に記載される方法及びシステムを使用すると、他のIOL送達システムに比べて多くの利益及び利点がもたらされ得る。例えば、本明細書に記載される、予め装填されるIOLを含む挿入ツールは、使用者による取り扱いの減少により無菌性を向上させる。更に、輸送、保管、及び送達前の任意の操作中に、挿入ツールを用いてIOLを拘束することができる。使用者は、IOLの正確な装填位置を特定でき得る。カム機構は、取り外しできないロックアウト機構の提供に有用であり得る。IOLを最初にロックし、その後、折りたたみ、圧縮し、その後、IOLを前進及び送達できる場所にIOLを移動させるという概念は、単一部品及び複数部品レンズの埋め込み技術及び設計におけるIOL送達システムに適用可能であり得る。
【0037】
本開示の動作及び構造は、前述の説明から明らかになると考えられる。上で示した又は説明した装置及び方法は好ましいものとして特徴付けられているが、以下の特許請求の範囲に定義される本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、それらに様々な変更及び修正を施してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C