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特許7387751光散乱偏光測定を使用したガラス系試料の光学的リターダンスの特徴付け
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】光散乱偏光測定を使用したガラス系試料の光学的リターダンスの特徴付け
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/00 20060101AFI20231120BHJP
   G01N 21/23 20060101ALI20231120BHJP
   G01L 1/24 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
G01L1/00 B
G01N21/23
G01L1/00 G
G01L1/24 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021547656
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2019057854
(87)【国際公開番号】W WO2020092121
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】62/753,388
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ファーナス,ウィリアム ジョン
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/056121(WO,A1)
【文献】特開2005-201749(JP,A)
【文献】特開昭62-182627(JP,A)
【文献】特開2013-015443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0091416(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0076487(US,A1)
【文献】独国特許発明第10161914(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00
G01L 1/24
G01L 5/00
G01N 21/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス系試料の光学的リターダンスを特徴付けるために光散乱偏光測定を使用する方法であって、該方法は、
a.光源からの光ビームを、偏光状態毎の散乱光の生成のために、少なくとも第1の偏光状態と第2の偏光状態との間で前記光ビームの偏光を変化させながらガラス系試料に配向するステップと、
b.少なくとも前記第1の偏光状態および前記第2の偏光状態毎に、前記散乱光を、露光時間tを有しかつフレームレートFRでフレームを捕捉するイメージセンサを用いて捕捉するステップであって、ここで、前記散乱光は、前記イメージセンサにおいて強度分布を有するステップと、
c.前記試料を、前記光ビームおよび前記イメージセンサの少なくとも一方に対して試料速度SSで移動させるステップであって、これにより、少なくとも前記第1の偏光状態および前記第2の偏光状態毎に、前記イメージセンサが、平均化された強度分布を形成するために、フレーム毎の強度分布の2つ以上を平均化するステップと、
d.少なくとも前記第1の偏光状態および前記第2の偏光状態毎の平均化された強度分布を、光学的リターダンスを特徴付けるために使用するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記方法は、前記ステップd)の特徴付けられた前記光学的リターダンスを、前記ガラス系試料の少なくとも1つの応力関連特性を決定するために使用するステップをさらに含み、前記少なくとも1つの応力関連特性は、応力プロファイル、表面応力、圧縮深さ、中心張力、および複屈折プロファイルを含む応力関連特性のグループから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップc)は、前記ガラス系試料を、少なくとも0.4mm/秒の試料速度SSで移動させるステップを含み、かつ/または
前記ステップc)は、前記ガラス系試料を、試料速度SS≧K・λ/tで移動させるステップを含み、ここで、λは、光ビームの波長であり、Kは0.4~1の範囲である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
光散乱偏光測定を使用してガラス系試料の応力ベースの特性を決定する方法であって、
該方法は、
ガラス系試料を、イメージセンシングデバイスと、光ビームを放出する光源と、光ビームの少なくとも第1の偏光および第2の偏光を定める光学的補償器と、を有する偏光計において、または偏光計に対して動作可能に配置するステップと、
前記イメージセンシングデバイスにおいて、時間変化する強度分布を有する線状画像を形成する散乱光を生成するために、前記ガラス系試料を、前記光源および前記イメージセンシングデバイスの少なくとも一方に対して移動させる間に光を前記ガラス系試料に配向するステップと、
前記第1の偏光および前記第2の偏光毎に、前記イメージセンシングデバイスを用いて、少なくとも2つの実質的に異なる強度分布を検出するステップと、
少なくとも2つの実質的に異なる強度分布から平均化された強度分布を形成するステップと、
少なくとも前記第1の偏光および前記第2の偏光についての平均化された強度分布を使用して、光学的リタデーションを計算するステップと、
前記光学的リタデーションから、少なくとも1つの応力ベースの特性を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項5】
前記平均化された強度分布を形成するステップは、フレームレートFRを有するイメージセンサのフレーム内で、少なくとも2つの実質的に異なる強度分布を検出するステップを含み、前記少なくとも2つの実質的に異なる強度分布の各々は、0.05~100ミリ秒の露光時間t内で、かつ10~200フレーム/秒のフレームレートFRで検出される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記光学的リタデーションを計算するステップは、0.1秒~10秒の測定時間tにわたって2~200のフレームを使用する、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
前記ガラス系試料を移動させるステップは、少なくとも0.75ミリメートル/秒の速度で行われ、かつ/または
前記光ビームは、入射平面内に存在し、前記ガラス系試料を、入射平面に対して垂直な方向に移動させるステップをさらに含む、請求項4から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
本体を有するガラス系試料の少なくとも1つの応力ベースの特性を測定する方法であって、
該方法は、
a)波長λを有し、かつ散乱光を生成するために前記試料の前記本体内に伝送される光の少なくとも第1の偏光状態および第2の偏光状態について、前記ガラス系試料の偏光測定を行うステップと、
b)前記ステップa)の間、少なくとも第1の偏光状態および第2の偏光状態毎に、前記本体の異なる部分からの散乱光の少なくとも第1の光分布および第2の光分布を検出し、平均化光分布を形成するために少なくとも前記第1の光分布および前記第2の光分布を平均化するステップと、
c)前記ガラス系試料の前記本体内への深さの関数として光学的リターダンスを計算するために、前記第1の偏光状態および前記第2の偏光状態毎の平均化光分布を使用するステップと、
d)前記ガラス系試料の少なくとも1つの応力ベースの特性を決定するために、前記計算された光学的リターダンスを使用するステップと、を含む、方法。
【請求項9】
前記平均化するステップは、イメージセンサの単一フレーム内で少なくとも前記第1の光分布および前記第2の光分布を検出するステップにより行われ、かつ/または
少なくとも前記第1の光分布および前記第2の光分布は、各々が露光時間tを有する少なくとも第1の露光および第2の露光をそれぞれ行うことによって形成され、かつ/または
前記散乱光は、前記本体の非応力関連散乱特徴からのノイズと、前記本体の応力関連散乱特徴からのリタデーション信号とを含み、平均化光分布を形成するための前記平均化するステップは、前記光学的リターダンスを計算するために強度分布の単一の測定を使用する場合に比べて、ノイズからの前記光学的リターダンスへのノイズ寄与率を低減する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記ステップa)の間に、前記ガラス系試料を移動させ、これによって、前記本体の異なる部分が、光の波長の少なくとも2分の1だけ離間されるステップをさらに含む、請求項8または9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2018年10月31日の米国仮特許出願第62/753,388号の優先権の利益を主張するものであり、その内容が依拠され、その全体が参照により本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ガラス系試料を特徴付けることに関し、特に、光散乱偏光測定を使用して高散乱ガラス系試料を特徴付けるためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
光散乱偏光測定は、試料材料内から光を散乱させることができる製品(「試料」)の応力ベースの特性を決定するために、散乱偏光を使用している。試料は、入力レーザー光を用いてカップリングプリズムにより比較的浅い角度で照射される。レーザー光の偏光は、光学的補償器を使用して異なる偏光状態の間で連続的に変化する。散乱光は、イメージセンサによって検出される。試料内の応力は、光路に沿って光学的リタデーションを引き起こすが、この応力の大きさは、光学的リタデーションの導関数に比例する。光学的リタデーションの量は、検出された散乱光強度分布から決定することができ、この散乱光強度分布は、検出された光の異なる有効光路長に対する建設的干渉および破壊的干渉のために変化する。測定可能な応力関連特性には、応力プロファイル、中心張力(CT)、および圧縮深さ(DOC)が含まれる。
【0004】
光散乱偏光測定は、散乱光が、すべてではないにしても主として、応力ベースの偏光リタデーション信号を提供する試料内のレイリー散乱によって生成される場合にうまく機能する。しかしながら、光は、試料内の、散乱中心、微粒子、不均一性、結晶構造、ミー散乱もしくは非選択性散乱、多重散乱などの他のメカニズムによって散乱する可能性もある。そのような光の散乱は、非応力ベースのノイズを表し、応力の特徴付けを不明瞭にする可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の態様は、光学的リターダンスおよびガラス系試料の1つ以上の応力関連特性を特徴付ける方法に関する。本方法は、光ビームを、光ビームの偏光を変化させながらガラス系試料に配向するステップを含む。これにより、偏光毎の散乱光が生成される。偏光毎の散乱光は、露光時間とフレームレートとを有するイメージセンサによって捕捉される。散乱光は、イメージセンサにおいて強度分布を有している。試料は測定中に移動させられ、これによって、イメージセンサは、偏光毎の平均化された強度分布を形成するために2つ以上の異なる強度分布を平均化する。この平均化は、所与のフレーム内の画素応答時間にわたる積分であってもよいし、あるいは2つ以上の捕捉された強度分布の直接の平均であってもよい。次いで、複数のフレームに関連する平均化強度が、光学的リターダンスを特徴付けるために使用される。次いで、この光学的リターダンスは、ガラス系試料の応力関連特性を決定するために使用することができる。基板を移動させるステップは、光学的リターダンス情報に関連しない応力プロフィルを有する散乱光からの測定ノイズを低減させる。
【0006】
本開示の第1の実施形態(1)は、ガラス系試料の光学的リターダンスを特徴付けるために光散乱偏光測定を使用する方法に関する。この第1の方法は、
a)光源からの光ビームを、偏光状態毎の散乱光の生成のために、少なくとも第1の偏光状態と第2の偏光状態との間で光ビームの偏光を変化させながらガラス系試料に配向するステップと、
b)少なくとも第1の偏光状態および第2の偏光状態毎に、散乱光を、露光時間tを有しかつフレームレートFRでフレームを捕捉するイメージセンサを用いて捕捉するステップであって、ここで、散乱光は、イメージセンサにおいて強度分布を有するステップと、
c)試料を、光ビームおよびイメージセンサの少なくとも一方に対して試料速度SSで移動させるステップであって、これにより、少なくとも第1の偏光状態および第2の偏光状態毎に、イメージセンサが、平均化された強度分布を形成するために、フレーム毎の強度分布の2つ以上を平均化するステップと、
d)少なくとも第1の偏光状態および第2の偏光状態毎の平均化された強度分布を、光学的リターダンスを特徴付けるために使用するステップと、を含む。
【0007】
本開示の第2の実施形態(2)は、上述の実施形態(1)に基づいており、ガラス系試料の少なくとも1つの応力関連特性を決定するために、ステップd)の特徴付けられた光学的リターダンスを使用するステップをさらに含む。
【0008】
本開示の第3の実施形態(3)は、実施形態(1)および(2)のいずれかに基づいており、ここで、少なくとも1つの応力関連特性は、応力プロファイル、表面応力、圧縮深さ、中心張力、および複屈折プロファイルを含む応力関連特性のグループから選択される。
【0009】
本開示の第4の実施形態(4)は、実施形態(1)から(3)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料は、全体としてガラス材料またはガラスセラミック材料のいずれかから成る。
【0010】
本開示の第5の実施形態(5)は、実施形態(1)から(4)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料を、光ビームおよびイメージセンサの少なくとも一方に対して試料速度SSで移動させるステップc)は、ガラス系試料を、光ビームおよびイメージセンサを静止状態に維持しながら移動させるステップを含む。
【0011】
本開示の第6の実施形態(6)は、実施形態(1)から(5)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ステップc)は、ガラス系試料を、少なくとも0.4mm/秒の試料速度SSで移動させるステップを含む。
【0012】
本開示の第7の実施形態(7)は、実施形態(1)から(6)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ステップc)は、ガラス系試料を、試料速度SS≧K・λ/tで移動させるステップを含み、ここで、λは、光ビームの波長であり、Kは0.4~1の範囲である。
【0013】
本開示の第8の実施形態(8)は、実施形態(1)から(7)までのいずれか1つに基づいており、ここで、光ビームは、入射平面内に存在し、ガラス系試料を、入射平面に対して垂直な方向に移動させるステップをさらに含む。
【0014】
本開示の第9の実施形態(9)は、実施形態(1)から(8)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料は側面を有し、ここで、ガラス系試料を移動させるステップc)は、ガラス系試料を、側面から押し出すステップを含む。
【0015】
本開示の第10の実施形態(10)は、実施形態(1)から(9)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料は、側面部分を有する側面を有し、ガラス系試料を移動させるステップc)は、側面および側面部分の少なくとも一方を係合固定具と動作可能に係合させるステップと、係合固定具を移動させるステップと、を含む。
【0016】
本開示の第11の実施形態(11)は、実施形態(1)から(10)までのいずれか1つに基づいており、ここで、試料を移動させるステップは、並進、回転、またはそれらの組み合わせを含む。
【0017】
本開示の第12の実施形態(12)は、実施形態(1)から(11)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料を移動させるステップc)は、ガラス系試料をフレーム内で動作可能に支持するステップと、フレームを、係合固定具と動作可能に係合させるステップと、係合固定具を移動させるステップと、を含む。
【0018】
本開示の第13の実施形態(13)は、実施形態(1)から(12)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料を移動させるステップc)は、ガラス系試料を静止状態に維持しながらレーザー光源およびイメージセンサの一方または両方を移動させるステップを含む。
【0019】
本開示の第14の実施形態(14)は、光散乱偏光測定を使用してガラス系試料の応力ベースの特性を決定する方法に関し、該方法は、ガラス系試料を、イメージセンシングデバイスと、光ビームを放出する光源と、光ビームの少なくとも第1の偏光および第2の偏光を定める光学的補償器と、を有する偏光計において、または偏光計に対して動作可能に配置するステップと、イメージセンシングデバイスにおいて、時間変化する強度分布を有する線状画像を形成する散乱光を生成するために、ガラス系試料を、光源およびイメージセンシングデバイスの少なくとも一方に対して移動させる間に光をガラス系試料に配向するステップと、第1の偏光および第2の偏光毎に、イメージセンシングデバイスを用いて、少なくとも2つの実質的に異なる強度分布を検出するステップと、少なくとも2つの実質的に異なる強度分布から平均化された強度分布を形成するステップと、少なくとも第1の偏光および第2の偏光についての平均化された強度分布を使用して光学的リタデーションを計算するステップと、光学的リタデーションから、少なくとも1つの応力ベースの特性を決定するステップと、を含む。
【0020】
本開示の第15の実施形態(15)は、実施形態(14)に基づいており、ここで、平均化された強度分布を形成するステップは、フレームレートFRを有するイメージセンサのフレーム内の、少なくとも2つの実質的に異なる強度分布を検出するステップを含む。
【0021】
本開示の第16の実施形態(16)は、実施形態(14)および(15)のいずれかに基づいており、ここで、少なくとも2つの実質的に異なる強度分布の各々は、0.05ミリ秒~100ミリ秒の露光時間t内で、かつ10~200フレーム/秒のフレームレートFRで検出される。
【0022】
本開示の第17の実施形態(17)は、実施形態(14)から(16)までのいずれか1つに基づいており、ここで、光学的リタデーションを計算するステップは、0.1秒~10秒の測定時間tにわたって2~200のフレームを利用する。
【0023】
本開示の第18の実施形態(18)は、実施形態(14)から(17)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料は、全体としてガラス材料またはガラスセラミック材料のいずれかから成る。
【0024】
本開示の第19の実施形態(19)は、実施形態(14)から(18)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料を、光源およびイメージセンシングデバイスの少なくとも一方に対して移動させるステップは、ガラス系試料を、光源およびイメージセンシングデバイスを静止状態に維持しながら移動させるステップを含む。
【0025】
本開示の第20の実施形態(20)は、実施形態(14)から(19)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料を、光源およびイメージセンシングデバイスの少なくとも一方に対して移動させるステップは、ガラス系試料を静止状態に維持しながらレーザー光源およびイメージセンシングデバイスの一方または両方を移動させるステップを含む。
【0026】
本開示の第21の実施形態(21)は、実施形態(14)から(20)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料を移動させるステップは、少なくとも0.75ミリメートル/秒の速度で行われる。
【0027】
本開示の第22の実施形態(22)は、実施形態(14)から(21)までのいずれか1つに基づいており、ここで、光ビームは、入射平面内に存在し、ガラス系試料を、入射平面に対して垂直な方向に移動させるステップをさらに含む。
【0028】
本開示の第23の実施形態(23)は、実施形態(14)から(22)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料は、側面部分を有する側面を有し、ガラス系試料を移動させるステップは、側面および側面部分の少なくとも一方を係合固定具と動作可能に係合させるステップと、係合固定具を移動させるステップと、を含む。
【0029】
本開示の第24の実施形態(24)は、実施形態(14)から(23)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料を移動させるステップは、ガラス系試料をフレーム内で動作可能に支持するステップと、フレームを、係合固定具に動作可能に係合させるステップと、係合固定具を移動させるステップと、を含む。
【0030】
本開示の第25の実施形態(25)は、本体を有するガラス系試料の少なくとも1つの応力ベースの特性を測定する方法に関する。該方法は、a)波長を有し、かつ散乱光を生成するために試料の本体内に伝送される光の少なくとも第1の偏光状態および第2の偏光状態について、ガラス系試料の偏光測定を行うステップと、b)ステップa)の間、少なくとも第1の偏光状態および第2の偏光状態毎に、本体の異なる部分からの散乱光の少なくとも第1の光分布および第2の光分布を検出し、平均化光分布を形成するために少なくとも第1の光分布および第2の光分布を平均化するステップと、c)ガラス系試料の本体内への深さの関数として光学的リターダンスを計算するために、第1の偏光状態および第2の偏光状態毎の平均化光分布を使用するステップと、d)ガラス系試料の少なくとも1つの応力ベースの特性を決定するために、計算された光学的リターダンスを使用するステップと、を含む。
【0031】
本開示の第26の実施形態(26)は、実施形態(25)に基づいており、ここで、平均化するステップは、イメージセンサの単一フレーム内で少なくとも第1の光分布および第2の光分布を検出することによって行われる。
【0032】
本開示の第27の実施形態(27)は、実施形態(25)および(26)のいずれかに基づいており、ここで、少なくとも第1の光分布および第2の光分布は、各々が露光時間tを有する少なくとも第1の露光および第2の露光をそれぞれ行うことによって形成される。
【0033】
本開示の第28の実施形態(28)は、実施形態(25)から(27)までのいずれか1つに基づいており、該方法は、ステップa)の間に、ガラス系試料を移動させ、これによって、本体の異なる部分が、光の波長の少なくとも2分の1だけ離間されるステップをさらに含む。
【0034】
本開示の第29の実施形態(29)は、実施形態(25)から(28)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料の移動は、試料速度SS≧K・λ/tを有し、ここで、tは、第1の光分布および第2の光分布を捕捉するために使用される第1の露光および第2の露光のための露光時間であり、Kは0.4~1の範囲である。
【0035】
本開示の第30の実施形態(30)は、実施形態(25)から(29)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料は、側面を有し、かつ支持面上に支持されており、ガラス系試料を移動させるステップは、ガラス系試料を側面で押し出し、これによって、ガラス系試料は支持面上を摺動するステップを含む。
【0036】
本開示の第31の実施形態(31)は、実施形態(25)から(30)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料は、側面部分を有する側面を有し、ここで、ガラス系試料を移動させるステップは、側面および側面部分の少なくとも一方を係合固定具と動作可能に係合させるステップと、係合固定具を移動させるステップと、を含む、
本開示の第32の実施形態(32)は、実施形態(25)から(31)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料を移動させるステップは、ガラス系試料をフレーム内で動作可能に支持するステップと、フレームを、係合固定具と動作可能に係合させるステップと、係合固定具を移動させるステップと、を含む。
【0037】
本開示の第33の実施形態(33)は、実施形態(25)から(32)までのいずれか1つに基づいており、ここで、散乱光は、本体の非応力関連散乱特徴からのノイズと、本体の応力関連散乱特徴からのリタデーション信号と、を含み、ここで、平均化光分布を形成するための平均化するステップは、光学的リターダンスを計算するために強度分布の単一の測定を使用する場合に比べて、ノイズからの光学的リターダンスへのノイズ寄与率を低減する。
【0038】
本開示の第34の実施形態(34)は、実施形態(25)から(33)までのいずれか1つに基づいており、ここで、応力関連散乱特徴は、ガラス関連試料の本体内への深さ方向においてのみ実質的に変化する。
【0039】
本開示の第35の実施形態(35)は、実施形態(25)から(34)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料は、0.05mm≦TH≦2mmの範囲の厚さTHを有する。
【0040】
本開示の第36の実施形態(36)は、実施形態(25)から(35)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料は、0.2mm≦TH≦2mmの範囲の厚さTHを有する。
【0041】
本開示の第37の実施形態(37)は、実施形態(25)から(36)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料は、0.25mm≦TH≦2mmの範囲の厚さTHを有する。
【0042】
本開示の第38の実施形態(38)は、実施形態(25)から(37)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料は、0.3mm≦TH≦2mmの範囲の厚さTHを有する。
【0043】
本開示の第39の実施形態(39)は、実施形態(25)から(38)までのいずれか1つに基づいており、ここで、ガラス系試料は、0.3mm≦TH≦1mmの範囲の厚さTHを有する。
【0044】
付加的な特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載されており、一部は説明から当業者に明らかになるか、あるいは本明細書の書面による説明および特許請求の範囲ならびに添付の図面に記載されているように実施形態を実施することによって認識されるだろう。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明はどちらも単なる例示であり、特許請求の範囲の本質および特徴を理解するための概要もしくは枠組みの提供を意図するものであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、さらに本明細書に組み込まれてその一部を構成している。これらの図面は、1つ以上の実施形態を示し、さらに詳細な説明とともに、様々な実施形態の原理および動作を説明する。したがって、本開示は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明から、より十分に理解されるであろう。
図1A】平面シートの形態の例示的なガラス系試料の立面図である。
図1B】応力ベースの散乱特徴および非応力ベースの散乱特徴の存在を示すガラス系試料の本体の拡大図であって、後者は、応力ベースの散乱光によって定められる「リタデーション信号」を不明瞭にする可能性がある非応力ベースの散乱光を生じさせる。
図2A】本明細書に開示される測定方法を実施するために使用される例示的な光散乱偏光測定システム(「偏光計」)の概略図である。
図2B】本明細書に開示される測定方法を実施するために使用される例示的な光散乱偏光測定システム(「偏光計」)の概略図である。
図2C】本明細書に開示される測定方法を実施するために使用される例示的な光散乱偏光測定システム(「偏光計」)の概略図である。
図3A図2Aの偏光計のイメージセンサの拡大図であり、測定プロセスの一部として試料から散乱した光によってイメージセンサ上に形成された例示的な線状画像を示す。
図3B】入力光ビームの所与の偏光状態について、イメージセンサ上に形成された線状画像の強度分布I(x)の概略図である。
図3C】異なる偏光状態についての強度分布I(x)に基づく試料の本体内への距離D(mm)の関数としての光学的リタデーションOR(nm)の概略図である。
図4A図2Cに示されたものと同様の偏光計の一例の側面図であり、試料がその長さに沿ってx方向に移動するように、試料をその側面の1つで押し出すことによって試料を移動させるための例示的な構成を示す。
図4B図2Cに示されたものと同様の偏光計の一例の側面図であり、試料がその長さに沿ってy方向に移動するように、試料をその側面の1つで押し出すことによって試料を移動させるための例示的な構成を示す。
図4C図4Aと同様であり、試料が支持フレームによって支持されている一例を示す拡大図である。
図4D図4Cの支持フレームの一例の立面図である。
図4E図4Cと同様であり、測定すべき試料が基準試料の上に存在する間、基準試料が支持フレームによって支持される一例を示す。
図5A】様々な試料速度での試料の2つの異なる移動方向に関するx方向への移動について測定された光学的リタデーションOR(nm)の標準偏差σΟR(nm)対試料速度SS(mm/s)のプロットである。
図5B】様々な試料速度での試料の2つの異なる移動方向に関するy方向への移動について測定された光学的リタデーションOR(nm)の標準偏差σΟR(nm)対試料速度SS(mm/s)のプロットである。
図6A図3Bと同様であり、偏光状態毎に強度分布I(x)の平均化も行いながら約0.5mm/s以上の速度で試料を移動させたときの線状画像ILの強度分布I(x)における変動の低減を概略的に示す。
図6B図3Cと同様であり、試料を試料速度SSで移動させ図6Aの強度分布の平均化を行ったときの光学的リターダンスORの測定における変動の低減を概略的に示す。
図7A】強化された試料の非移動基準(アニールされた)および(中心をちょうど過ぎたあたりの)部分について測定された光学的リタデーションOR(nm)対D(mm)のプロットであり、ここで、異なる曲線は、3秒間にわたってイメージセンサによって捕捉されたデータの複数のフレームからの異なるリタデーション分析に対応する。
図7B】同じ試料についての測定データがSS=0.75mm/sの試料速度で試料を移動させたときに捕捉された点を除いて図7Aと同様であり、図7Aのものに比べて実質的に低減された測定ノイズが示されたプロットである。
図7C】平均化された光学的リタデーションOR(nm)対D(mm、)のプロットであり、ここで、強度プロファイルを使用した光学的リタデーションについての計算は、4~50のフレームセットに対して行われ、光学的リタデーション結果は単一の比較的滑らかな曲線を得るために平均化されている。
【発明を実施するための形態】
【0046】
次に、本開示の様々な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。同一もしくは同様の部品を参照するために、可能な限り、同一もしくは同様の参照番号および符号が図面全体で使用される。これらの図面は、必ずしも縮尺どおりではないが、当業者には、本開示の基幹となる態様の説明のために図面の簡略化された箇所は認識されるであろう。
【0047】
以下に記載の特許請求の範囲は,本明細書に組み込まれ、当該詳細な説明の一部を構成する。
【0048】
デカルト座標が参照のためにいくつかの図面に示されているが、これらは方向または配向に関する限定を意図したものではない。
【0049】
本明細書で考察されるガラス系試料の「強化された」という用語は、元の試料が、典型的には試料をより強く、したがって壊れにくくすることを意図した様々な形状を有することができるいくつかの応力プロファイルを生成するプロセスを受けたことを意味する。例示的な強化プロセスには、イオン交換、焼戻し、アニーリングなどの熱プロセスが含まれる。
【0050】
略語「ms」は、「ミリ秒」を表す。
【0051】
略語「nm」は、「ナノメートル」を表す。
【0052】
本明細書で使用される「ガラス系試料」という用語は、全体もしくは一部がガラスを材料とする任意の物体、例えばガラス材料と非ガラス材料とから成る積層体、ガラス材料と結晶材料とから成る積層体、ならびにガラス-セラミック(非晶質相および結晶相を含む)を含む。したがって、一例では、「ガラス系試料」は、全体としてガラス材料から成る可能性があり、一方、別の例では、全体としてガラス-セラミック材料から成っていてもよい。
【0053】
本明細書で考察されるガラス系試料は、偏光測定中に、散乱中心、微粒子、不均一性、結晶構造、ミー散乱または非選択性散乱、多重散乱などによる試料内の非応力ベースのメカニズムによって比較的多くの量の光散乱を生成する。そのような光散乱は、非応力ベースであるノイズを表し、応力特徴付けを不明瞭にする可能性がある。これらの特徴は、散乱光におけるリタデーション信号にノイズを発生させ、ここで、このノイズには、試料の応力ベースの特性の推論のために使用できる応力関連情報は含まれない。
【0054】
本明細書で使用される「画像」および「線状画像」という用語は、イメージセンシングデバイスであるイメージセンサにおける散乱光によって形成される光の分布(すなわち強度分布)を記述するために使用されており、光分布を定めるためのイメージングシステムを必ずしも必要としない。
【0055】
以下の説明では、偏光計は、2つ以上の偏光状態(または略して単に「偏光」)の間を周期的に繰り返すように構成されている。一例では、当技術分野で公知のように線形、楕円形、および円形の偏光を組み合わせた、周期毎に8つ以上の異なる偏光状態が存在する可能性もある。
【0056】
一例では、本明細書で考察されるガラス系試料の「特徴付け」には、ガラス系試料の1つ以上の応力ベースの特性を計算するために使用できる光学的リターダンスを決定することが含まれる。別の例では、このガラス系試料の特徴付けには、例えば、応力プロファイル、表面応力、圧縮深さ、中心張力、および複屈折プロファイルなどのガラス系試料の1つ以上の応力ベースの特性を決定することが含まれる。
【0057】
以下の例では、最小試料速度SSは、SS=K・λ/tで表され、ここで、Kは、波長平滑化係数と称され、λは光の波長であり、tは露光時間である。この試料速度SSの式は、所与の露光時間の間に波長λで所与の移動距離を達成するための試料速度SSを決定するために使用することができる。一例では、SS≧K・λ/tである。一例では、Kは0.4~1の範囲であってよく、一方、別の例では、Kは0.5~1の範囲であってもよく、また別の例では、Kは0.6~1の範囲であってもよい。
【0058】
ガラス系試料
図1Aは、平坦なシートの形態のガラス系試料10の例示的なタイプの立面図である。このガラス系試料(「試料」)10は、本体11、上面12、下面14、および側面16を有する。試料10は、厚さTHを有する。いくつかのケースでは、試料厚さは、0.025mm≦TH≦2mmの範囲であってよく、例えば、0.025mm≦TH≦2mm、0.20mm≦TH≦2mm、0.25mm≦TH≦2mm、0.3mm≦TH≦2mm、または0.3mm≦TH≦1mmなどであってもよく、さらにこれらの端点の間に形成される任意のすべてのサブ範囲であってもよい。本明細書に開示される方法を使用して測定することができるガラス系試料の厚さTHは、(以下で説明する)偏光計によって制限されるものではなく、むしろ、試料の作製に使用される製造技術によって制限される。
【0059】
例示的なタイプの試料10は、強化することができ(例えば化学的または熱的に強化される)、ガラス、セラミックス、またはガラスセラミックのいずれかを含むことができる。例示的なタイプの試料10は、ディスプレイ用の保護カバーおよび/またはスマートフォン、タブレット、ラップトップコンピュータ、GPSデバイスなどのモバイルデバイス用のハウジングを含む。そのような試料は、図1Aに示されるように、薄くて平坦な傾向がある。
【0060】
図1Bは、試料10の一部の拡大図であり、さらに試料の本体11の拡大挿入図も示している。本体部11は、光学的リタデーションに影響を与えながら入力光ビームを散乱させる応力関連(SR)散乱特徴18を含む。本体11は、以下でより詳細に記載されるように、本体11内の応力以外の、光学的リタデーションに影響を与える手段によって入力光ビームを散乱させる非応力関連(NSR)散乱特徴20も含んでいる。このNSR散乱特徴20には、散乱中心、粒子(例えば微粒子、ナノ粒子など)、非応力関連の不均一性、結晶構造などの1つ以上が含まれ得る。NSR散乱特徴20は、SR散乱特徴18の空間的規則性を有さないので、NSR散乱特徴からの光散乱の程度は、ガラス系試料の本体11内の場所毎に異なることが想定される。一例では、SR散乱特徴18は、実質的に本体11内への深さ(D)方向においてのみ変化するプロファイルを有し、横方向ではほぼ一定のプロファイルを有していることが想定される。したがって、SR散乱特徴18からの光散乱は、深さDに伴って変化するが、横方向では変化せず、一方、NSR散乱特徴20からの光散乱は、横方向ならびに深さ方向でも変化する。一例では、NSR散乱特徴20からの光散乱の変動は、ランダムまたは準ランダムであるか、または特定の測定において固定パターンを有し得る。
【0061】
試料10内に存在する所与のタイプまたは複数のタイプのNSR散乱特徴20の特性は、結果として生じる散乱光が、応力プロフィル、中心張力(CT)、圧縮深さ(DOC)、表面応力、複屈折など、試料の応力関連特性を決定するために使用できる光学的リタデーション情報を含まないことである。
【0062】
したがって、所与の試料10内のNSR散乱特徴20からの散乱光は、「ノイズ」を成すのに対して、試料のSR散乱特徴18からの散乱光は、本明細書では「リタデーション信号」とも称される信号を形成し、この信号は、試料の1つ以上の応力関連特性を決定するために使用される。
【0063】
光散乱偏光測定システム
図2Aおよび図2Bは、例示的な光散乱偏光測定システム(「偏光計」)100の概略図である。この偏光計100は、x-z平面に存在するレーザー光ビーム112を放出するレーザー光源110を含む。この光ビーム112は、測定波長と称される波長λを有している。光ビーム112は、入力光ビームとも称され得る。光ビーム112は、x-z平面に存在するものとして示されている。
【0064】
偏光計100は、光ビーム112を試料10内に効率よく結合するために使用されるプリズム120を含む。このプリズム120は、入射面122、下面124、および出射面126を含む。一例では、入力光ビーム112は、反射を最小限に抑えるために実質的に垂直な入射で入射面122に入射し、反射および屈折からの入力偏光に対する変化を低減する。下面124は、試料10の本体11内への入力光ビーム112の光結合を最適化するために、屈折率整合流体50を使用して試料10の上面12との界面を調整することができる。
【0065】
偏光計100は、入力端部142を有するイメージセンシングデバイス140も含む。一例では、このイメージセンシングデバイス140は、デジタルカメラを含む。イメージセンシングデバイス140は、一例では1.8μm~10μmの寸法を有し得る画像化画素146のアレイを有する画像センサ144を含むことができる。イメージセンシングデバイス140は、プリズム120の出射面126に隣接して配置されている。
【0066】
偏光計100は、レーザー光源110とプリズム120との間の光ビーム112のパス内に配置されて示される光学的補償器150も含む。この光学的補償器150は、2つ以上の異なる偏光状態の間で光ビーム112の偏光を連続的に変化させるように構成されている。一例では、光学的補償器150は、光学的補償器の動作を制御するコントローラ160に動作可能に接続されている。一例では、光学的補償器150は、単一の液晶デバイスを含むことができる。別の例では、光学的補償器150は、偏光器、波板、フィルタ、プリズム(例えばウェッジプリズム)などの複数の要素を含むことができる。(図示されていない)補償器要素は、すべて入力光ビーム112内に配置される必要はない。一例では、光学的補償器150は、光ビーム112に、1秒未満~10秒までの任意の時点で完全な偏光周期を通過させる(すなわち、2つ以上の選択された偏光の間で変化する)。
【0067】
コントローラ160も、イメージセンシングデバイス140に動作可能に接続されている。
【0068】
引き続き図2Aおよび図2Bを参照すれば、一例では、偏光計100は、1つ以上の移動デバイス200を含み、すなわち、一例では、レーザー光源110を移動するように構成された第1の(「レーザー」)移動デバイス200L、試料10を移動するように構成された第2の(「試料」)移動デバイス200S、およびイメージセンシングデバイス140を移動するように構成された第3の(「カメラ」)移動デバイス200Cを含む。一例では、移動デバイス200は、例えば精密ステージなどの可動ステージを各々が含むことも可能である。移動デバイス200の他の例は、以下で論じる。以下の論考では、当該論考および説明を容易にするために、第2の移動デバイスもしくは「試料」移動デバイス200Sのみを有する例示的な偏光計100を考察する。各移動デバイス200は、コントローラ160に動作可能に接続され、コントローラ160によって制御され得る。一例では、コントローラ160は、偏光計100の動作を制御し、試料10の少なくとも1つの応力関連特性を決定するための計算を実行するために、非一時的コンピュータ可読媒体に取り込まれた命令によって構成されている。コントローラ160は、例えば、マイクロコントローラ、コンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などを含むことができる。
【0069】
図2Cは、測定面302を有するハウジング300を含む例示的な偏光計100を示す部分的な断面図である。測定面302は、図4Aおよび図4Bに示しかつ以下で論じるように、試料10のための支持面としても使うことができる。ハウジング300は、内部空間304を有し、この内部空間内に偏光計の上記の構成要素の一部または全部が存在する。一例では、このハウジング300は、比較的小型の、例えば典型的なハンドヘルドデバイスのサイズであってよい。そのようなハウジングを有する例示的な携帯型偏光計(偏光器)には、エストニア国タリン在のGlassStress社から入手可能なSCALP偏光器(例えば、SCALP-04またはSCALP-05)がある。一例では、携帯型SCALP偏光器は、偏光計100を形成して、本明細書に開示される方法を実施するように変更することができる。偏光計に対する大型の機械構成の例には、日本国東京在の折原製作所のSLPシリーズの機器がある。
【0070】
次に、図2A図2Cを参照すれば、システム100の動作中、光ビーム112は、プリズム120の入射面122に入射し、プリズムの下面124に進み、次いで屈折率整合流体50を通って、試料の本体11内に入るために試料の上面12に進む。上記のように、入力光ビーム112は、光学的補償器150によって定められる任意の所与の時点で選択された偏光を有している。(偏光された)入力光ビーム112は、散乱光ビーム112Sを形成するために試料10の本体11によって散乱される。この散乱光ビーム112Sは、試料10の上面12から出射し、屈折率整合流体50とプリズム120の下面124を通過して戻り、次いでプリズムの出射面126から出射する。散乱光ビーム112Sは、イメージセンシングデバイス140に進み、イメージセンサ144によって捕捉される。散乱光ビーム112Sは、図2Cで最良に見られ、図3Aの拡大図にも示されるようにイメージセンサ144上で画像LIを形成する。
【0071】
図3Aに示すように、画像LIは、長さ座標xを有する直線の形態である。この線状画像は、当該線状画像と一致するイメージセンサ画素146によって測定された強度分布I(x)を有している。図3Bは、入力光ビーム112の所与の偏光状態に対してイメージセンサ144上に形成された線状画像ILの強度分布I(x)の概略図である。イメージセンサ144は、強度分布I(x)を電子的(デジタル)センサ信号SDに変換し、この信号がコントローラ160に送信される。LIは、偏光計100を使用して形成される典型的なタイプの画像形状であるので、以下の説明では、このLIを線状画像と称する。
【0072】
一例では、偏光計100を使用する試料10の所与の測定は、1秒~10秒の測定時間tの間、入力光ビーム112で試料を照射することを含み得る。この測定時間tの間、光ビーム112の偏光状態は、異なる偏光状態の間で変化し、好ましくは、偏光状態によって1つ以上の周期が発生する。その間、偏光状態毎に、イメージセンサ144は、露光時間tの間に線状画像LIの電子画像を捕捉する。従来の偏光計は、典型的には、イメージセンサのフレームレートFRとほぼ同じ露光時間t、例えば、50ミリ秒の露光時間t(これは20フレーム/秒のフレームレートFRに対応する)を使用する。
【0073】
電子的に捕捉された線状画像LIは、入力光ビーム112の偏光状態およびビームパスに沿って受ける光学的リタデーションに依存して、その強度分布I(x)が異なる。この相違は、異なる偏光状態間の試料10内への深さDの関数としての散乱光ビーム112Sの長さに沿った破壊的干渉および建設的干渉の違いによるものである。図3Bは、入力光ビーム112の所与の偏光状態について捕捉された強度分布I(x)のほんの一例を概略的に示している。異なる偏光状態に対する複数の強度分布I(x)間の差分は、当技術分野で周知の関係を使用して、試料本体11内への深さDの関数として光学的リターダンスORを計算するためにコントローラ160によって使用される。同様に、複数の光学的リターダンス曲線OR対深さDも、強度分布I(x)の差分を使用して計算される。例えば、20フレーム/秒のイメージセンサのフレームレートFRを用いた3秒の測定時間tの場合、I(x)対Dの全部で60個のプロットをOR対Dの計算のために生成することができ、試料10の1つ以上の応力関連特性の計算のために使用することができる。
【0074】
強度分布I(x)は、試料10内に応力が存在する場合には、入力光ビーム112の偏光状態間で必然的に異なるが、測定された強度分布から計算される異なるOR対D曲線は、理想的には、応力プロファイルが(理想的には)一定である試料の所与の測定位置にある所与の試料については同じになるはずである。
【0075】
しかしながら、上記のように、および図2Aの拡大挿入図に示されるように、散乱光ビーム112Sは、2つの成分、すなわち、試料本体11内のNSR散乱特徴20から形成されるノイズ成分(「ノイズ」)112Nと、試料本体によるSR散乱特徴18から形成された所望の測定成分(「リタデーション信号」)112Mと、を含む。
【0076】
したがって、線状画像LIの測定強度分布I(x)は、ノイズ112Nとリタデーション信号112Mの両方を含むので、強度分布I(x)における強度の変動は、すべて応力単独によるものではない。したがって、異なる偏光状態について対応する強度分布I(X)から得られる光学的リタデーション対深さDの異なるプロットには、試料の1つ以上の応力特性の不正確な決定につながる可能性のある、比較的強い非応力関連の変動がある。
【0077】
図3Cは、異なる入力偏光状態について測定された強度分布I(x)から決定された、光学的リタデーションOR(nm)対試料10の本体11内への距離D(mm)の概略図である。ここでは、少なくとも2つの異なる偏光が必要であり、より良好な測定を得るために好ましくは、より多くの偏光が使用される。図3Cの例示的/概略的なOR対Dプロットは、応力がないために図3CのORデータに勾配を有さない、約0.5mmの深さの基準領域RRを含んだ試料10を表す。この基準領域RRは、一例では、(以下で導入され、論じられる)図4Eに示されるように、基準試料(すなわち、例えば以前に特徴付けられたものなど既知の特性を有する試料)と接触する実際の試料(すなわち、測定すべきおよび特徴付けられる試料)によって形成され得る。一例では、基準試料は、実際の試料と同じであるが、例えば応力を熱アニールで除去することによって、内部応力は有さない。図3Cのプロットは、測定される試料10が、D=約0.5mm~約0.75mmの圧縮領域CRも含み、次いで、D=約0.75mm~1.35mmの中心張力領域CTR、および約1.35mm~1.6mmの別の圧縮領域も含む。不都合なことに、例示的なOR対Dプロットにおける変動(「ノイズ」)は、試料の応力特性の正確な値の取得を妨げる。
【0078】
ノイズ112Nを含む散乱光112Sに起因する測定ノイズの問題に対処するために、本明細書に開示されるシステムおよび方法の態様は、以下のステップ、すなわち、a)試料10の測定を行うときに、試料10を、光源110およびイメージセンシングデバイス140の一方に対して移動させ、これによって、ガラス試料の本体11の2つの異なる部分について得られる強度分布I(x)が実質的に異なる(すなわち、ガラス試料の移動に起因して時間とともに変化する)ステップと、b)入力光ビーム112の所与の偏光についての線状画像LIの2つ以上の実質的に異なる強度分布I(x)を平均化するステップと、を含む。一例では、平均化は、以下でより詳細に説明するように、露光時間にわたってイメージセンサ144の画素146を積分することによって実行するか、または別個に検出された線状画像を平均化することによって実行することができる。
【0079】
図4Aは、図2Cに示されているものと同様の例示的な偏光計100の側面図である。試料10は、固定支持基台部350に取り付けられたハウジング300の上面302に支持されている。この固定支持基台部350は上面352を有している。また、支持基台部350によって支持されることも、試料移動デバイス200Sの一例である。例示的な試料移動デバイス200Sは、ステージマウント212を有する可動ステージ210と、支持基台部350に固定されたステージマウントに対して移動する可動支持部材214と、を含む。可動ステージ210は、ステージマウント212上で可動支持部材214を駆動する駆動モータ216を含む。可動ステージ210は、可動支持部材214に取り付けられ、試料を直接的にまたは間接的に動作可能に係合するように構成された係合固定具220を含む。一例では、この係合固定具220は、試料10の側面16に接触または係合する接触または係合位置222を含むことができる。
【0080】
可動支持部材214がx方向に移動すると、係合固定具220もx方向に移動し、試料10をX方向にかつ偏光計100のハウジング300の測定面上に押し出す。偏光計100による試料10の測定は、試料10が光源110からの入射光ビーム112に対して移動するときに実行される。図4Aおよび図4Bに示されている例では、光ビーム112は、第1の平面(例えば図示のようにx-z平面)に存在し、試料10の移動は第2の平面(すなわち、図示のようにx-y平面)にある。一般に、レーザービーム112が異なる時点で試料の異なる部分に入射する限り任意の移動を利用することができる。
【0081】
図4Bは、図4Aと同様であり、試料がy方向に移動し、係合固定具220が接触または係合位置222に凹部224を含み、凹部が試料10の側面部分16Pを損傷することなく把持する弾性材料226を含んでいる構成を示す。これにより、試料移動装置200Sの移動に対応するやり方で試料10を移動させることができる。一例では、両方向の矢印ARによって示されているように、移動は前後に行われる。別の例では、移動は、並進、回転、またはそれらの組み合わせ(例えば、発振器、デュアルアクションなど)であってよい。
【0082】
図4Cは、図4Aと同様であり、試料10が支持フレーム230によって支持されている例を示した拡大図である。図4Dは、例示的な支持フレーム230の立面図である。この支持フレーム230は、上面232、近位端部236、および内部レッジ242を備えた中央開口部240を有する。内部レッジ242は、支持フレーム230内で試料10を支持するために使用される。固定部材244は、中央開口部240内の所定の位置に試料10を保持するための支持フレーム230の上面232の部分の上に配置することができる。支持フレーム230内に試料10を保持するための他の固定手段および構成も使用することができる。一例では、支持フレーム230は、成形プラスチックなどの軽量で剛性のある材料で作製することができる。
【0083】
支持フレーム230は、1つ以上の固定ネジなどの1つ以上の固定部材250を使用して、係合固定具220の凹部224内の所定の位置に保持することができる。図4Bの実施形態のように、一例では、試料10および支持フレーム230の移動は、両方向の矢印ARによって示されるように前後に行われる。別の例では、移動は、並進、回転、またはそれらの組み合わせ(例えば、発振器、デュアルアクションなど)であり得る。
【0084】
図4Eは、図4Cと同様であり、基準試料10Rが支持フレーム230内に支持されている例を示している。この基準試料10Rは、本体11R、上面12R、および下面14Rを有する。測定すべき試料10は、基準試料10Rの上に、すなわち、下面14Rと接触して存在する。基準試料10Rは、既知の(例えば、以前に測定された)特性を有する。一例では、基準試料10Rは、測定すべき試料10と同じであるが、本体11R内の実質的にすべての応力を除去するために熱アニールされている。これにより、試料10内に存在する場合がある何らかの非応力ベースの散乱特徴18からの光散乱を特徴付けることが可能になる。
【0085】
図5Aおよび図5Bは、試料10の2つの異なる運動方向、すなわち、イメージセンシングデバイス140に対して直角であるx方向(図5A)、および入射光ビーム112に対して直角であるy方向(図5B)について偏光計100により測定された光学的リタデーションOR(nm)対試料速度SS(mm/s)の標準偏差σOR(nm)のプロットである。光学的リタデーションOR(nm)の複数回(8回)の測定は、それぞれ異なる速度SS、すなわち、SS=0mm/s(つまり、基準のため動きなし)、0.05mm/s、0.2mm/s、0.75mm/s、1.00mm/s、および1.50mm/sで行われ、次いで、各速度SSについてのOR測定値の標準偏差σORが計算された。このことは、以下でより詳細に説明するように、使用される異なる偏光状態毎に、所与の測定時間tにわたってOR対Dの多くの測定を行うことができるため可能となる。ここでの試料測定にも、応力がないためORデータに勾配を有さない、深さ約0.5mmの領域が含まれる。図5Aおよび図5Bのプロットは、約0.75mm/s以上の試料速度SSが、光学的リタデーションORの測定ノイズを実質的に低減する結果となることを示している。
【0086】
動きのないデータSS=0mm/sについてのσOR(nm)対SS(mm/s)の両方のプロットについては、動きのない試料10からのノイズが実質的に一定であるため、OR標準偏差σORも実質的に一定である点に注意すべきである。再び図3Cを参照すれば、SS=0mm/sの場合の光学的リタデーションOR(nm)対試料内への深さD(mm)の概略的プロットは、比較的大きなピークツーピークノイズ(例えば、ピークツーピーク変動またはピークツーピーク比)を有しており、これにより、測定毎の位置および振幅が実質的に一定であることが見出された(説明を容易にするために、1つの測定プロットのみが図3Cに示されている)。
【0087】
図6Aは、図3Bと同様であり、約0.5mm/s以上の速度で試料10を移動するときの線状画像ILの強度分布I(x)への影響を概略的に示し、これは、実験配置において約0.4以上の波長平滑化係数Kを表す。図6Bは、図3Cと同様であり、約0.5mm/s以上の速度で試料10を移動し、強度分布の平均化を行うときの光学的リターダンスORの測定への影響を概略的に示している。強度分布I(x)のピークツーピーク変動の低減は、光学的リターダンスORのノイズのピークツーピーク変動の対応する低減をもたらし、これにより、測定された光学的リターダンスによって決定される試料の応力関連特性のより正確な測定がもたらされる結果となる。
【0088】
測定の考慮事項
少なくとも1つの応力関連特性を特徴付けるために試料10を測定するときに、偏光計100における測定ノイズを許容可能なレベルに低減するために必要とされる正確な試料速度SSおよび露光時間tは、いくつかの要因に依存する。これらの要因には、イメージセンシングデバイス140の特性(例えば、ゲイン、画像キャプチャレート(フレーム/秒)、画素サイズ、内部画素平均化技術など)、ならびにNSR散乱特徴20の性質、入力光ビーム112の強度、使用される偏光状態の数などが含まれる。他の要因には、レーザー光源110からの光ビーム112の測定波長λおよび散乱光ビーム112Sの強度が含まれる。例示的な測定波長λには、640nm、518nm、および405nmを含めることができる。例示的な露光時間は、0.05ミリ秒~100ミリ秒の範囲であり得る。例示的なフレームレートFRは、10フレーム/秒~200フレーム/秒の範囲であり得る。光学的リタデーションの例示的な計算では、0.1秒~10秒の測定時間tにわたって2フレーム~200フレームを利用することができる。
【0089】
イメージセンサ144によって捕捉された線状画像LIは、イメージセンサの入力端部142の構成に基づいて、試料の本体11を通る光ビーム112のパス長と同じ長さLを有する。光の入射角(試料内で測定され、水平方向に対するもの、図2C参照)がθで、L=TH/sinθならば、θ=30度の場合には、L=2・THとなる。TH=1mm、および画素146が2μm~10μmの寸法を有するならば、一例では、線状画像LIは、その長さL=2mmに沿って約200画素~1000画素がサンプリングされる。
【0090】
強度分布の平均化
基板の相対移動がない場合(SS=0mm/s)、所与の偏光状態について捕捉された線状画像ILは、実質的に一定である(つまり、時間変化しない)が、光学的リタデーションをもたらす実質的な山から谷への変動を有する強度分布I(x)を有することが見出された。また、OR対Dにも大きな山から谷への変動があり、異なるOR対D曲線間の比較的大きな標準偏差σORも伴っている。
【0091】
上記のように、本明細書に開示されるシステムおよび方法の態様は、2つ以上の線状画像LIからの現在の時間変化する強度分布I(x)を平均化しながら、光源110およびイメージセンシングデバイス140の少なくとも一方に対して試料10を移動させるステップを含む。この平均化は、ガラス試料の本体11の異なる部分に関連する所与の測定偏光について、イメージセンサ144の露光時間内に積分することによって達成することができる。この平均化は、実質的なセンサベースの平均化を受けていない、別個に捕捉された(すなわち、離散的な)線状画像LIの強度分布I(x)を直接的に平均化することによって達成することもできる。
【0092】
強度分布I(x)を平均化することは、測定偏光を同じに保ちながら、露光間の移動量が時間の関数として強度分布I(x)を大幅に変更するのに十分となる場合に最良に機能する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、経験と、高散乱試料10上での実験とから、非応力ベースの散乱特徴20は、試料10の本体11の全体にわたって均一に分布しておらず、これによってそのような特徴の分布が測定場所の関数として異なっていると考えられている。さらに、光源110からの光ビーム112の波長λのオーダーの移動距離は、所与の偏光に対する線状画像ILの強度分布I(x)の実質的な変化を引き起こし得ることが観察された。
【0093】
試料速度SSが1mm/s、露光時間tが1msの場合、試料10は、距離DS=(SS)(t)=(1mm/s)(1×10-3s)=1μmを移動する。これは、平均化された線状画像強度分布I(x)を定めるために、1μmの運動距離にわたる各画素146における光子積分によって、線状画像強度分布I(x)の変動を効果的に平均化する。この強度分布I(x)の変動は、最初に一連の離散線状画像を捕捉し、次いで、これらの離散画像を平均線状画像強度分布I(x)の計算のために使用することによって平均化することも可能である。
【0094】
測定時間tが3秒の場合、総移動距離DT=(1mm/s)(3s)=3mmであり、20フレーム/秒でイメージングデバイス140によって捕捉される露光の総数は60であり、これは、イメージセンシングデバイス140によって捕捉された線状画像ILの総数である。フレーム間の動きは、(1mm/s)(1/20フレーム/秒)=50μmである。これにより、各フレームは、試料10の異なる位置に関連付けられる。
【0095】
光学的補償器150を、選択された偏光状態によって3秒の1周期が発生し、この1周期内で60の異なる偏光状態が生じるように動作させるならば、異なる偏光状態のセットは、当技術分野で周知の関係を使用して、試料本体11内への深さDの関数として光学的リターダンスを計算するために使用される。一例では、このプロセスは8回繰り返され、各々は、異なる偏光状態の別の3秒を伴う。各々が3秒である8回の繰り返しの間、動作が継続する場合、これらの測定の間に移動する距離は(1mm/s)(測定毎に3秒)=3mmである。
【0096】
図7Aには、SS=0mm/sの例示的な試料10から測定された8つの偏光状態についての例示的なOR対Dプロット区分を示す。一方、図7Bには、SS=0.75mm/sの同じ試料で捕捉されたデータについての同じプロットを示す。図7Bで注目すべきは、試料10の動きによる測定ノイズの実質的な減少である。これらの目下ランダムに分布している低レベルのノイズは、図7Cに示すような比較的滑らかで単一のOR対D曲線の生成のために、平均化と組み合わせることができる。
【0097】
線状画像強度分布I(x)の形態の初期データは、露光時間tの増分で収集されるため、露光時間中に移動した距離DSは、OR対Dの計算におけるノイズの低減、および最終的にはOR対Dデータからの少なくとも1つの応力関連特性の改善された決定をもたらす。これは、偏光状態を介した周期が、光ビーム112の1波長λの光位相距離に等しく、様々な偏光状態が単一波長λのそれぞれの部分を表すことに注目することによって理解することができる。例えば、水平偏光と垂直偏光とは、波長λの位相距離の半分、または同等に180度の位相角φだけ異なる。ここで、φ=2π(DS)/λである。500nmの波長λの場合、1μmの距離DSは、波長λの2倍であり、したがって、偏光状態を繰り返すために必要な2πの全位相の2倍を表す。一例では、測定が行われる試料10の異なる位置(部分)は、測定波長の少なくとも2分の1の距離だけ離間されて配置されている。
【0098】
一例では、試料10は、測定が行われる(すなわち、散乱光112が捕捉される)試料の異なる部分が、光ビーム112の波長λの少なくとも半分だけ離間するように移動させられ、さらに一例では、少なくとも0.6波長λまたは少なくとも1波長λである。
【0099】
各露光が複数の線状画像強度分布I(x)に対応する、比較的多くのフレーム毎の露光数NEを平均化することによって、例えばNE≧10など、フレーム毎の試料10の移動した総距離DFは、光ビーム112の波長λと比較して非常に長くなり得る。例として、試料速度SSが1mm/s、フレーム毎の露光数NE=10、2ミリ秒の露光時間tの場合、フレーム毎の移動した距離DF=(SS)・(NE)・(t)=(1mm/s)・(10)・(.002s)=0.02mmまたは20μmとなる。これはまた、典型的な試料サイズと比較して比較的短い距離であり、実用的な目的では、多くの場合、少なくとも5mmの長さであり、通常は10mmを超える長さである。
【0100】
本明細書に記載の本開示の好ましい実施形態に対する様々な修正を、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の精神または範囲から逸脱することなく行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内にあるという条件で、修正および変形をカバーする。
【0101】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0102】
実施形態1
ガラス系試料の光学的リターダンスを特徴付けるために光散乱偏光測定を使用する方法であって、該方法は、
a.光源からの光ビームを、偏光状態毎の散乱光の生成のために、少なくとも第1の偏光状態と第2の偏光状態との間で光ビームの偏光を変化させながらガラス系試料に配向するステップと、
b.少なくとも第1の偏光状態および第2の偏光状態毎に、散乱光を、露光時間tを有しかつフレームレートFRでフレームを捕捉するイメージセンサを用いて捕捉するステップであって、ここで、散乱光は、イメージセンサにおいて強度分布を有するステップと、
c.試料を、光ビームおよびイメージセンサの少なくとも一方に対して試料速度SSで移動させるステップであって、これにより、少なくとも第1の偏光状態および第2の偏光状態毎に、イメージセンサが、平均化された強度分布を形成するために、フレーム毎の強度分布の2つ以上を平均化するステップと、
d.少なくとも第1の偏光状態および第2の偏光状態毎の平均化された強度分布を、光学的リターダンスを特徴付けるために使用するステップと、を含む方法。
【0103】
実施形態2
前記方法は、ステップd)の特徴付けられた光学的リターダンスを、ガラス系試料の少なくとも1つの応力関連特性を決定するために使用するステップをさらに含む、実施形態1記載の方法。
【0104】
実施形態3
少なくとも1つの応力関連特性は、応力プロファイル、表面応力、圧縮深さ、中心張力、および複屈折プロファイルを含む応力関連特性のグループから選択される、実施形態2記載の方法。
【0105】
実施形態4
ガラス系試料は、全体としてガラス材料またはガラスセラミック材料のいずれかから成る、実施形態1から3までのいずれか1つ記載の方法。
【0106】
実施形態5
ガラス系試料を、光ビームおよびイメージセンサの少なくとも一方に対して試料速度SSで移動させるステップc)は、ガラス系試料を、光ビームおよびイメージセンサを静止状態に維持しながら移動させるステップを含む、実施形態1から4までのいずれか1つ記載の方法。
【0107】
実施形態6
ステップc)は、ガラス系試料を、少なくとも0.4mm/秒の試料速度SSで移動させるステップを含む、実施形態1から5までのいずれか1つ記載の方法。
【0108】
実施形態7
ステップc)は、ガラス系試料を、試料速度SS≧K・λ/tで移動させるステップを含み、ここで、λは、光ビームの波長であり、Kは0.4~1の範囲である、実施形態1から6までのいずれか1つ記載の方法。
【0109】
実施形態8
光ビームは、入射平面内に存在し、ガラス系試料を、入射平面に対して垂直な方向に移動させるステップをさらに含む、実施形態1から7までのいずれか1つ記載の方法。
【0110】
実施形態9
ガラス系試料は側面を有し、ここで、ガラス系試料を移動させるステップ(c)は、ガラス系試料を側面から押し出すステップを含む、実施形態1から8までのいずれか1つ記載の方法。
【0111】
実施形態10
ガラス系試料は、側面部分を有する側面を有し、ガラス系試料を移動させるステップc)は、
側面および側面部分の少なくとも一方を係合固定具と動作可能に係合させるステップと、
係合固定具を移動させるステップと、を含む、実施形態1から9までのいずれか1つ記載の方法。
【0112】
実施形態11
試料を移動させるステップは、並進、回転、またはその組み合わせを含む、実施形態1から10までのいずれか1つ記載の方法。
【0113】
実施形態12
ガラス系試料を移動させるステップc)は、
ガラス系試料をフレーム内で動作可能に支持するステップと、
フレームを係合固定具と動作可能に係合させるステップと、
係合固定具を移動させるステップと、を含む、実施形態1から11までのいずれか1つ記載の方法。
【0114】
実施形態13
ガラス系試料を移動させるステップc)は、ガラス系試料を静止状態に維持しながら、レーザー光源およびイメージセンサの一方または両方を移動させるステップを含む、実施形態1から4までのいずれか1つ記載の方法。
【0115】
実施形態14
光散乱偏光測定を使用してガラス系試料の応力ベースの特性を決定する方法であって、
該方法は、
ガラス系試料を、イメージセンシングデバイスと、光ビームを放出する光源と、光ビームの少なくとも第1の偏光および第2の偏光を定める光学的補償器と、を有する偏光計内に、または該偏光計に対して動作可能に配置するステップと、
イメージセンシングデバイスにおいて、時間変化する強度分布を有する線状画像を形成する散乱光を生成するために、ガラス系試料を、光源およびイメージセンシングデバイスの少なくとも一方に対して移動させる間に光をガラス系試料に配向するステップと、
第1の偏光および第2の偏光毎に、イメージセンシングデバイスを用いて、少なくとも2つの実質的に異なる強度分布を検出するステップと、
少なくとも2つの実質的に異なる強度分布から平均化された強度分布を形成するステップと、
少なくとも第1の偏光および第2の偏光についての平均化された強度分布を使用して、光学的リタデーションを計算するステップと、
光学的リタデーションから、少なくとも1つの応力ベースの特性を決定するステップと、を含む、方法。
【0116】
実施形態15
平均化された強度分布を形成するステップは、フレームレートFRを有するイメージセンサのフレーム内で、少なくとも2つの実質的に異なる強度分布を検出するステップを含む、実施形態14記載の方法。
【0117】
実施形態16
少なくとも2つの実質的に異なる強度分布の各々は、0.05ミリ秒~100ミリ秒の露光時間t内で、かつ10フレーム/秒~200フレーム/秒のフレームレートFRで検出される、実施形態15記載の方法。
【0118】
実施形態17
光学的リタデーションを計算するステップは、0.1秒~10秒の測定時間tにわたって2~200のフレームを使用する、実施形態14から16までのいずれか1つ記載の方法。
【0119】
実施形態18
ガラス系試料は、全体としてガラス材料またはガラスセラミック材料のいずれかから成る、実施形態14から17までのいずれか1つ記載の方法。
【0120】
実施形態19
ガラス系試料を、光源およびイメージセンシングデバイスの少なくとも一方に対して移動させるステップは、ガラス系試料を、光源およびイメージセンシングデバイスを静止状態に維持しながら移動させるステップを含む、実施形態14から18までのいずれか1つ記載の方法。
【0121】
実施形態20
ガラス系試料を、光源およびイメージセンシングデバイスの少なくとも一方に対して移動させるステップは、ガラス系試料を静止状態に維持しながらレーザー光源およびイメージセンシングデバイスの一方または両方を移動させるステップを含む、実施形態14から18までのいずれか1つ記載の方法。
【0122】
実施形態21
ガラス系試料を移動させるステップは、少なくとも0.75ミリメートル/秒の速度で行われる、実施形態14から20までのいずれか1つ記載の方法。
【0123】
実施形態22
光ビームは、入射平面内に存在し、ガラス系試料を、入射平面に対して垂直な方向に移動させるステップをさらに含む、実施形態14から21までのいずれかに記載の方法。
【0124】
実施形態23
ガラス系試料は、側面部分を有する側面を有し、ガラス系試料を移動させるステップは、
側面および側面部分の少なくとも一方を係合固定具と動作可能に係合させるステップと、
係合固定具を移動させるステップと、を含む、実施形態14から18ならびに21から22までのいずれか1つ記載の方法。
【0125】
実施形態24
ガラス系試料を移動させるステップは、
ガラス系試料をフレーム内で動作可能に支持するステップと、
フレームを係合固定具と動作可能に係合させるステップと、
係合固定具を移動させるステップと、
を含む、実施形態14から18ならびに21から23までのいずれか1つ記載の方法。
【0126】
実施形態25
本体を有するガラス系試料の少なくとも1つの応力ベースの特性を測定する方法であって、
該方法は、
a)波長λを有し、かつ散乱光を生成するために試料の本体内に伝送される光の少なくとも第1の偏光状態および第2の偏光状態について、ガラス系試料の偏光測定を行うステップと、
b)ステップa)の間、少なくとも第1の偏光状態および第2の偏光状態毎に、本体の異なる部分からの散乱光の少なくとも第1の光分布および第2の光分布を検出し、平均化光分布を形成するために少なくとも第1の光分布および第2の光分布を平均化するステップと、
c)ガラス系試料の本体内への深さの関数として光学的リターダンスを計算するために、第1の偏光状態および第2の偏光状態毎の平均化光分布を使用するステップと、
d)ガラス系試料の少なくとも1つの応力ベースの特性を決定するために、計算された光学的リターダンスを使用するステップと、を含む、方法。
【0127】
実施形態26
前記平均化するステップは、イメージセンサの単一フレーム内で少なくとも第1の光分布および第2の光分布を検出するステップにより行われる、実施形態25記載の方法。
【0128】
実施形態27
少なくとも第1の光分布および第2の光分布は、各々が露光時間tを有する少なくとも第1の露光および第2の露光をそれぞれ行うことによって形成される、実施形態25または26記載の方法。
【0129】
実施形態28
前記該方法が、ステップa)の間に、ガラス系試料を移動させ、これによって、本体の異なる部分が、光の波長の少なくとも2分の1だけ離間されるステップをさらに含む、実施形態25または26記載の方法。
【0130】
実施形態29
ガラス系試料の移動は、試料速度SS≧K・λ/tを有し、ここで、tは、第1の光分布および第2の光分布を捕捉するために使用される第1の露光および第2の露光のための露光時間であり、Kは0.4~1の範囲である、実施形態28記載の方法。
【0131】
実施形態30
ガラス系試料は、側面を有し、かつ支持面上に支持されており、ガラス系試料を移動させるステップは、ガラス系試料を側面で押し出し、これによって、ガラス系試料は支持面上を摺動するステップを含む、実施形態28または29記載の方法。
【0132】
実施形態31
ガラス系試料は、側面部分を有する側面を有し、ガラス系試料を移動させるステップは、
側面および側面部分の少なくとも一方を係合固定具と動作可能に係合させるステップと、
係合固定具を移動させるステップと、を含む、実施形態28または29記載の方法。
【0133】
実施形態32
ガラス系試料を移動させるステップは、
ガラス系試料をフレーム内で動作可能に支持するステップと、
フレームを係合固定具と動作可能に係合させるステップと、
係合固定具を移動させるステップと、を含む、実施形態28または29記載の方法。
【0134】
実施形態33
散乱光は、本体の非応力関連散乱特徴からのノイズと、本体の応力関連散乱特徴からのリタデーション信号とを含み、平均化光分布を形成するための前記平均化するステップは、光学的リターダンスを計算するために強度分布の単一の測定を使用する場合に比べて、ノイズからの光学的リターダンスへのノイズ寄与率を低減する、実施形態25から32までのいずれか1つ記載の方法。
【0135】
実施形態34
応力関連散乱特徴は、ガラス関連試料の本体内への深さ方向においてのみ実質的に変化する、実施形態33記載の方法。
【0136】
実施形態35
ガラス系試料は、0.05mm≦TH≦2mmの範囲の厚さTHを有する、実施形態25から34までのいずれか1つ記載の方法。
【0137】
実施形態36
ガラス系試料は、0.2mm≦TH≦2mmの範囲の厚さTHを有する、実施形態25から35までのいずれか1つ記載の方法。
【0138】
実施形態37
ガラス系試料は、0.25mm≦TH≦2mmの範囲の厚さTHを有する、実施形態25から36までのいずれか1つ記載の方法。
【0139】
実施形態38
ガラス系試料は、0.3mm≦TH≦2mmの範囲の厚さTHを有する、実施形態25から37までのいずれか1つ記載の方法。
【0140】
実施形態39
ガラス系試料は、0.3mm≦TH≦1mmの範囲の厚さTHを有する、実施形態25から38までのいずれか1つ記載の方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C