(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】吸収体、吸水性樹脂、及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20231120BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20231120BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
B01J20/26 D
B01J20/28 Z
C08L33/02
(21)【出願番号】P 2021569820
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020047821
(87)【国際公開番号】W WO2021140905
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2020000122
(32)【優先日】2020-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】武田 大介
(72)【発明者】
【氏名】中津留 玲子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】新居 知哉
(72)【発明者】
【氏名】夛田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸弥
(72)【発明者】
【氏名】木村 一樹
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-083693(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002387(WO,A1)
【文献】特表2019-519663(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002972(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/129917(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/034897(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170605(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/111223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28、20/30-20/34
A61F 13/53-13/539
C08J 3/00-3/28;99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08C 19/00-19/44
C08F 8/14、220/06、220/28
C08F 6/00-246/00;301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力が26N以上である吸水性樹脂を含
み、
前記吸水性樹脂がポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であり、以下の(1)~(5)のすべてを満たす吸水性樹脂であることを特徴とする吸収体
:
(1)総体積に占める、Cavity体積率が15体積%以上の粒子の体積が、40体積%以上である;
(2)総体積に占める、Void体積率が1体積%以下の粒子の体積が、65体積%以上である;
(3)無加圧下吸収倍率(CRC)が25g/g以上である;
(4)4.83kPaの加圧下における加圧下吸収倍率(AAP)が20g/g以上である;
(5)質量平均粒子径(D50)が250μm以上、550μm以下であり、粒子径が150μm未満の粒子の質量が、3質量%以下である。
【請求項2】
総質量における吸水性樹脂の質量比率が75質量%以上で100質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収体を含んでなる吸収性物品。
【請求項4】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であって、
4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力が26N以上であ
り、以下の(1)~(5)のすべてを満たすことを特徴とする吸水性樹脂
:
(1)総体積に占める、Cavity体積率が15体積%以上の粒子の体積が、40体積%以上である;
(2)総体積に占める、Void体積率が1体積%以下の粒子の体積が、65体積%以上である;
(3)無加圧下吸収倍率(CRC)が25g/g以上である;
(4)4.83kPaの加圧下における加圧下吸収倍率(AAP)が20g/g以上である;
(5)質量平均粒子径(D50)が250μm以上、550μm以下であり、粒子径が150μm未満の粒子の質量が、3質量%以下である。
【請求項5】
4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張速度が8.5以上であることを特徴とする請求項4に記載の吸水性樹脂。
【請求項6】
生理食塩水流れ誘導性(SFC)が15(×10
-7cm
3・sec/g)以上、55(×10
-7cm
3・sec/g)以下であることを特徴とする請求項4
又は5に記載の吸水性樹脂。
【請求項7】
総質量に占める、粒子径が710μm超の粒子の質量が、2質量%以
下であることを特徴とする請求項4~
6の何れか一項に記載の吸水性樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパルプ等の繊維材料比率の小さい吸収体を有する薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、2回目以降の排尿に対する加圧下液獲得量が従来よりも向上する吸収体、当該吸収体に用いられる2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率が従来よりも向上する吸水性樹脂、及び前記吸収体を含んでなる吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙オムツ等の衛生用品は、子供用、大人用、軽失禁用等を問わず、薄型化に向かう傾向が一層強まり、当該衛生用品の吸収体における吸水性樹脂の比率は、高くなる一方である。一般に、前記吸収体は、吸水性樹脂と木材粉砕パルプとの複合体から形成されている。木材粉砕パルプは、セルロースを主体とした親水性繊維であり、例えば紙オムツ中の吸収体においては、排尿直後の尿を速やかに吸収体に取り込み、かつ、吸収体全体に尿を拡散させる働き(短時間での液獲得機能)を有する。しかしながら、近年の薄型化に伴うパルプ等の繊維材料の比率の減少、さらにはパルプ・フリーの吸収体を採用した紙オムツの登場により、吸収体の中でパルプが従来担ってきた、前述した短時間での液獲得機能を、吸水性樹脂が代わりに担う必要が生じている。
【0003】
つまり、紙オムツ等の衛生用品に利用される次世代の吸収体には、パルプ等の繊維材料の比率が小さい場合においても優れた短時間での液獲得機能を有することが求められている。さらに、前述の優れた短時間での液獲得機能を有するパルプ等の繊維材料の比率が小さい吸収体に必要とされる吸水性樹脂として、従来の吸水性樹脂よりもさらに短時間での液獲得機能に優れた吸水性樹脂が求められている。
【0004】
このように、パルプ等の繊維材料の比率が小さいにも関わらず優れた液獲得機能を有する吸収体、及び液獲得機能を改良した吸水性樹脂を得るために、これまで、吸水性樹脂の吸水速度に着目した改良が行われており、例えば、下記特許文献1~5に記載された吸水性樹脂が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2016/111223A1
【文献】WO2019/221235A1
【文献】EP3241861A1
【文献】EP3438162A1
【文献】EP3260485A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1~5に記載された吸水性樹脂は、吸水性樹脂単独では吸水速度に優れるものの、例えばパルプ等の繊維材料の比率が小さい吸収体を有する薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合、2回目以降の排尿に対する紙オムツ等の吸収性物品の液獲得機能が不十分であるという課題を有している。特に、2回目以降の排尿に対する吸収体の加圧下液獲得量が不十分であり、且つ2回目以降の排尿に対する吸水性樹脂の加圧下吸収倍率が不十分であるという課題を有している。
【0007】
本発明の一態様は、パルプ等の繊維材料の比率が小さい吸収体を、薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用した場合でも、2回目以降の排尿に対する紙オムツ等の吸収性物品の液獲得機能を従来よりも向上させることを目的とする。特に、2回目以降の排尿に対する加圧下液獲得量が従来よりも向上する吸収体、及び当該吸収体に用いられる2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率が従来よりも向上する吸水性樹脂を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力が26N以上である吸水性樹脂において、2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率が従来よりも向上することを見出した。当該吸水性樹脂をパルプ等の繊維材料の比率が小さい吸収体に使用した場合に、当該吸収体の2回目以降の排尿に対する加圧下液獲得量を従来よりも向上させることができた。これにより、当該吸収体を薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用した場合でも、当該紙オムツ等の吸収性物品の2回目以降の排尿に対する液獲得機能が従来よりも向上することを見出し、本発明者らは本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の一実施形態に係る吸収体は、4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力が26N以上である吸水性樹脂を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、パルプ等の繊維材料の比率が小さく、薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、2回目以降の排尿に対する紙オムツ等の吸収性物品の液獲得機能が従来よりも向上し、特に、2回目以降の排尿に対する加圧下液獲得量が従来よりも向上する吸収体、及び2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率が従来よりも向上する吸水性樹脂を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂に形成されている空洞(Cavity及びVoid)を説明する概略の正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂のゲル厚み5mm到達時間、ゲル膨張力、及びゲル膨張速度を測定する際に用いるセルセットAの構成を説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂のゲル厚み5mm到達時間の測定方法を説明する図である。
【
図4】セルセットA中の重りの上面に貼り付ける白色のビニールテープの貼り付け位置を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂のゲル膨張力及びゲル膨張速度の測定方法を説明する斜視図であり、オートグラフにロードセル、圧縮治具、及びAAP測定用器具を設置した状態を示す。
【
図6】本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂のゲル膨張力、及びゲル膨張速度の測定方法の手順を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の2回目の排尿に対する加圧下吸収倍率を測定する際に用いるセルセットBの構成を説明する図である。
【
図8】セルセットB中の重りの上面に貼り付ける白色のビニールテープ貼り付け位置を示す図である。
【
図9】SFCの測定時に用いるシリンダー内に吸水性樹脂を仕込み、吸水性樹脂の上に、液透過性のトップシートを模した不織布を置いた状態を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る吸収体の加圧下液獲得量を測定する際に用いるセルセットCの構成を説明する図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る吸収体の加圧下液獲得量の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態及び実施例にそれぞれ記載された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態及び実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。本明細書中、数値範囲に関して「A~B」と記載した場合、当該記載は「A以上、B以下」を意図する。
【0013】
[1]用語の定義
[1-1]吸水性樹脂
本明細書において、「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味し、一般的に粒子状である。また、「水膨潤性」とは、WSP241.3(10)で規定される無加圧下吸収倍率(CRC)が5g/g以上であることを意味し、「水不溶性」とは、WSP270.3(10)で規定される可溶分(Ext)が50質量%以下であることを意味する。尚、「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity の略称であり、吸水性樹脂の無加圧下での吸収倍率を意味する。
【0014】
前記「吸水性樹脂」は、好ましくはカルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させてなる親水性の架橋重合体である。但し、その全量、即ち100質量%が架橋重合体である必要はなく、前記CRCやExt等の要求性能を満たす範囲内で添加剤等を含有することもできる。
【0015】
また、前記「吸水性樹脂」は、「内部のみが架橋された重合体、つまり、内部と表面の架橋密度が実質的に同じである重合体」又は「内部と表面とが架橋された重合体、つまり、表面の架橋密度が内部の架橋密度に対して相対的に高い重合体」を指す場合がある。
【0016】
本明細書において、前記「内部のみが架橋された重合体」と前記「内部と表面とが架橋された重合体」は原則、区別することなく、何れも「吸水性樹脂」と表記する。但し、表面架橋の有無について明確に区別する必要がある場合は、前記「内部のみが架橋された重合体」は表面架橋が施される前であるため「表面架橋前の吸水性樹脂」と表記し、前記「内部と表面とが架橋された重合体」は表面架橋が施された後であるため「表面架橋後の吸水性樹脂」と表記する。尚、「表面架橋前」とは、「表面架橋剤を添加する前」又は「表面架橋剤が添加された後であっても加熱処理による架橋反応が始まる前」のことを意味する。
【0017】
また、前記「吸水性樹脂」は、樹脂成分のみを指す場合の他に、添加剤等の樹脂以外の成分を含んでいる場合がある。
【0018】
[1-2]アクリル酸(塩)系単量体、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂
本明細書において、「アクリル酸(塩)」とは、アクリル酸及び/又はその塩を意味し、「アクリル酸(塩)系単量体」とは、架橋剤を除く単量体全体に対して、アクリル酸(塩)を50モル%以上含む単量体を意味する。
【0019】
本明細書において、「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、アクリル酸(塩)を原料とする重合体を意味する。つまり、「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、アクリル酸(塩)由来の構造単位を有する重合体であり、任意成分としてグラフト成分を有
する重合体である。
【0020】
具体的には、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、重合反応に関与する単量体のうち、内部架橋剤を除いた部分に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であって、好ましくは100モル%以下、特に好ましくは実質100モル%のアクリル酸(塩)を含む、重合体である。
【0021】
[1-3]「EDANA」及び「WSP」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称である。また「WSP」は、Worldwide Strategic Partners の略称であり、EDANAが提供する、吸水性樹脂の世界標準の測定方法を示す。本明細書では、WSP原本(2010年改定)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0022】
尚、本明細書では別途言及しない限り、吸水性樹脂の各種物性の測定方法は、下記実施例での測定方法に従う。
【0023】
[1-4]その他
本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸及び/又はその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0024】
[2]吸水性樹脂の製造方法
本発明の一実施形態における吸水性樹脂は、4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力が26N以上である。以下、当該吸水性樹脂の好ましい製造方法の一例を説明する。
【0025】
[2-1]単量体水溶液の調製工程
本工程は、アクリル酸(塩)を主成分として含む単量体、及び少なくとも1種類の重合性内部架橋剤を含む単量体水溶液を調製する工程である。尚、単量体のスラリー液を使用することもできるものの、本明細書では便宜上、単量体水溶液に関して説明することとする。
【0026】
(単量体)
本発明において用いられる単量体としては、例えば、アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等のアニオン性不飽和単量体及び/又はその塩;メルカプタン基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体等が挙げられる。当該単量体には、水溶性又は疎水性の不飽和単量体が含まれる。これらの中でも、アクリル酸(塩)が好ましい。また、アクリル酸(塩)とその他の単量体を併用してもよい。この場合、アクリル酸(塩)の使用量は、架橋剤を除く単量体全体に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは実質100モル%である。
【0027】
(塩基性化合物による中和)
本発明においてアクリル酸(塩)系単量体を用いる場合、アクリル酸は塩基性化合物を用いて部分的に中和されていることが好ましい。即ち、本発明では、ポリアクリル酸の酸基が部分的に中和されている吸水性樹脂が好ましい。
【0028】
前記塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属の炭酸塩や炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。中でも、吸水性樹脂の吸水性能の観点から、強塩基性の化合物が選択される。従って、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。また、当該塩基性化合物は、取り扱い性の観点から、水溶液とされていることが好ましい。尚、市販の水酸化ナトリウムには、亜鉛、鉛、鉄等の重金属がppmオーダー(質量基準)で含まれており、厳密には組成物ということもできる。本発明においては、当該組成物も塩基性化合物の範疇に含めることとする。
【0029】
前記中和を行う時期は、重合前、重合中、重合後の何れでもよく、複数の時期又は回数で中和を行うこともできる。また、吸水性樹脂の生産効率の観点から、連続式で中和することが好ましい。
【0030】
本発明においてアクリル酸(塩)を用いる場合、その中和率は、単量体の酸基に対して、好ましくは10モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上であって、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下、特に好ましくは75モル%以下である。当該中和率の範囲とすることで、吸水性樹脂の吸水性能の低下を抑制することができる。尚、前記中和率は、前述した重合前、重合中、重合後の何れの中和においても適用される。また、吸水性樹脂に関しても同様に適用される。
【0031】
(内部架橋剤)
本発明の好ましい製造方法においては、内部架橋剤が使用される。当該内部架橋剤としては、例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内部架橋剤の中から、反応性等を考慮して少なくとも1種類の内部架橋剤が選択される。
【0032】
本発明においては、吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくは重合性不飽和基を2つ以上有する内部架橋剤、より好ましくは(ポリ)アルキレングリコール構造を有する重合性不飽和基を2つ以上有する内部架橋剤が選択される。前記重合性不飽和基としては、具体的には、アリル基、(メタ)アクリレート基が挙げられる。中でも、(メタ)アクリレート基が好ましい。また、前記(ポリ)アルキレングリコール構造を有する重合性不飽和基を2つ以上有する内部架橋剤としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。尚、アルキレングリコール単位の数(以下、「n」と表記する)としては、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上、特に好ましくは6以上であって、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。
【0033】
前記内部架橋剤の使用量は、内部架橋剤を除く単量体に対して、好ましくは0.0001モル%以上、より好ましくは0.001モル%以上、さらに好ましくは0.01モル%以上、特に好ましくは0.02モル%以上であって、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下、特に好ましくは0.50モル%以下である。当該範囲内の使用量とすることで、所望する吸水性能を有する吸水性樹脂が得られる。一方、当該範囲外の使用量では、ゲル強度の低下に伴う、水可溶分の増加や、吸収倍率の低下が生じるおそれがある。
【0034】
本発明において、前記内部架橋剤を添加するタイミングは、重合体を均一に架橋できればよく、重合前の単量体水溶液や重合中又は重合後の含水ゲルに内部架橋剤を添加する方法が挙げられる。中でも、所定量の内部架橋剤を予め単量体水溶液に添加する方法が好ましい。
【0035】
(単量体水溶液に添加される物質)
本発明では、前記単量体水溶液の作製時、前記重合反応及び架橋反応の期間中、又は前記重合反応及び架橋反応の後の何れか1ヵ所以上で、吸水性樹脂の物性向上の観点から、下記物質を単量体水溶液に添加することができる。
【0036】
当該物質としては、具体的には、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)の架橋体等の親水性高分子;炭酸塩、アゾ化合物、各種気泡を生じる発泡剤、界面活性剤、キレート剤、連鎖移動剤等の化合物;が挙げられる。
【0037】
前記親水性高分子の添加量は、前記単量体水溶液に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下であって、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0質量%超である。また、前記化合物の添加量は、前記単量体水溶液に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下であって、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0質量%超である。
【0038】
前記親水性高分子として水溶性樹脂又は吸水性樹脂を用いると、グラフト重合体又は吸水性樹脂組成物、例えば、澱粉-アクリル酸(塩)共重合体、PVA-アクリル酸(塩)共重合体等が得られる。これらグラフト重合体又は吸水性樹脂組成物も、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の範疇に含まれる。
【0039】
(単量体成分の濃度)
前述した各物質及び各成分(以下、「単量体成分」と表記する)を目的に応じて種々選択し、前記範囲を満たすようにそれぞれの量を規定して互いに混合することによって、単量体水溶液が作製される。尚、本発明では、単量体を水溶液とすること以外に、水と親水性溶媒との混合溶液とすることもできる。
【0040】
また、単量体成分の合計の濃度は、吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であって、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。当該単量体成分の濃度は、下記式(A)から算出される;
単量体成分の濃度(質量%)=〔(単量体成分の質量)/(単量体水溶液の質量)〕×100 …式(A)
尚、前記式(A)中、「単量体水溶液の質量」には、グラフト成分や吸水性樹脂、逆相懸濁重合における疎水性有機溶媒の質量は含まれない。
【0041】
[2-2]重合工程
本工程は、単量体水溶液を重合させて含水ゲル状架橋重合体(以下、単に「含水ゲル」と表記する)を得る工程である。好ましくは前記単量体水溶液の調製工程で得られた、アクリル酸(塩)を主成分として含む単量体及び少なくとも1種類の重合性内部架橋剤を含む単量体水溶液を重合させて、含水ゲルを得る工程である。
【0042】
(重合開始剤)
本発明で用いられる重合開始剤としては、重合させるモノマーの種類や重合条件等に合わせて、通常の吸水性樹脂の製造において利用されている重合開始剤の中から1種又は2種以上選択して使用することができる。重合開始剤としては、例えば、熱分解型開始剤や光分解型開始剤が挙げられる。
【0043】
熱分解型開始剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t-ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0044】
光分解型開始剤としては、例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等が挙げられる。
【0045】
これらの中でもコスト、残存モノマーの低減能を考慮すると過硫酸塩が好ましい。また、前記過硫酸塩又は過酸化物等の酸化性重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用し、両者を組み合わせることによりレドックス系開始剤とすることもできる。前記還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸(塩)、L-アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩等の還元性金属(塩)、アミン類等が挙げられる。
【0046】
前記重合開始剤の使用量は、内部架橋剤を除く単量体に対して、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.01モル%以上であって、好ましくは1モル%以下、より好ましくは0.5モル%以下、さらに好ましくは0.1モル%以下である。また、前記還元剤の使用量は、内部架橋剤を除く単量体に対して、好ましくは0.0001モル%以上、より好ましくは0.0005モル%以上であって、好ましくは0.02モル%以下、より好ましくは0.015モル%以下である。当該範囲内の使用量とすることで、所望する吸水性能を有する吸水性樹脂が得られる。
【0047】
また、本発明においては、前記重合反応を、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって開始させてもよい。また、活性エネルギー線の照射と前記重合開始剤とを併用してもよい。
【0048】
(重合形態)
本発明に適用される重合形態としては、水溶液重合、逆相懸濁重合、噴霧重合、液滴重合、バルク重合、沈澱重合等が挙げられる。中でも、重合の制御の容易性や吸水性樹脂の吸水性能の観点から、好ましくは水溶液重合又は逆相懸濁重合、より好ましくは水溶液重合、さらに好ましくは連続水溶液重合が選択される。逆相懸濁重合は国際公開第2007/004529号、国際公開第2012/023433号等に記載されている。また連続水溶液重合は、吸水性樹脂を高い生産性で製造することができ、米国特許第4893999号、米国特許第6906159号、米国特許第7091253号、米国特許第7741400号、米国特許第8519212号、特開2005-36100号公報等に記載された連続ベルト重合や、米国特許第6987151号等に記載された連続ニーダー重合が挙げられる。
【0049】
前記連続水溶液重合の好ましい形態としては、高温開始重合、高濃度重合、発泡重合等がある。当該「高温開始重合」とは、重合開始時の単量体水溶液の温度を、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは45℃以上、特に好ましくは50℃以上であって、好ましくは単量体水溶液の沸点以下とする重合形態を意味する。また「高濃度重合」とは、重合開始時の単量体濃度を、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上であって、好ましくは単量体水溶液の飽和濃度以下とする重合形態を意味する。「発泡重合」とは、発泡剤又は気泡を含む前記単量体水溶液を重合する重合形態を意味する。
尚、これら重合形態は、それぞれ単独で実施してもよいし、2つ以上を併用して実施してもよい。
【0050】
前記発泡重合における気泡の分散方法としては、単量体水溶液に溶存している気体を溶解度の低下によって気泡として分散させる方法、外部から気体を導入して気泡として分散させる方法、単量体水溶液に発泡剤を添加して発泡させる方法等が挙げられる。また、目的とする吸水性樹脂の物性に応じて、前記分散方法を適宜併用して実施してもよい。
【0051】
前記外部から気体を導入する場合、当該気体として、酸素、空気、窒素、炭酸ガス、オゾン等や、これら気体の混合気体が挙げられる。重合性やコストの観点から、好ましくは窒素や炭酸ガス等の不活性ガスが使用され、より好ましくは窒素が使用される。
【0052】
使用することができる発泡剤として、アゾ化合物や有機又は無機のカーボネート溶液、分散液、0.1μm以上、1000μm以下の粒子径の粉末が挙げられる。中でも無機のカーボネートが好ましく、具体的には炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭酸水素塩を使用することができる。
【0053】
発泡重合で得られた発泡形状の含水ゲルをゲル粉砕することで乾燥が容易となる。また、発泡形状の吸水性樹脂とすることで、吸水性樹脂の吸水速度を向上させることができ、さらに吸収性物品への固定化も容易になる。発泡形状であることは、電子顕微鏡で吸水性樹脂の表面の孔、例えば直径が1μm以上、100μm以下の孔を確認することで判断することができる。孔は、吸水性樹脂1粒当たり、好ましくは1個以上、より好ましくは10個以上であって、好ましくは10000個以下、より好ましくは1000個以下であり、前記発泡重合で制御することができる。
【0054】
[2-3]ゲル粉砕工程
本工程は、前記重合工程の途中、及び/又は、重合工程後に実施される、含水ゲルを粉砕する工程である。具体的には、前記重合工程において含水ゲルを粉砕してもよく、前記重合工程後に含水ゲルを粉砕してもよい。即ち、本工程は、含水ゲルをゲル粉砕して粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と表記する)を得る工程である。尚、後述する粉砕工程での「粉砕」と区別するために、本工程は「ゲル粉砕」と表記する。また、ゲル粉砕の対象は前記重合工程で得られた含水ゲルだけでなく、特に言及しない限り、後述するリサイクルされた造粒ゲルが含まれている場合がある。他の工程も特に言及しない限り、同様の趣旨である。
【0055】
前記ゲル粉砕とは、ニーダー、ミートチョッパー等のスクリュー押出し機、カッターミル等のゲル粉砕機を用いて、含水ゲルを所定の大きさに調整することを指す。
【0056】
含水ゲルをゲル粉砕する場合、好ましくは温水及び/又は水蒸気をゲル粉砕機に添加することが好ましい。温水及び/又は水蒸気を添加することによって、粘着性が低く、通気性の良い粒子状含水ゲルが得られるため、乾燥し易くなるので好ましい。温水の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であって、好ましくは100℃以下である。
【0057】
ゲル粉砕の実施形態や稼働条件等に関しては、国際公開第2011/126079号パンフレットに記載された内容が本発明に好ましく適用される。尚、重合形態がニーダー重合である場合には、重合工程とゲル粉砕工程とが同時に実施されていることになる。また、本発明でゲル粉砕工程を経ることで、不定形破砕状の吸水性樹脂を得ることができる。
【0058】
また、本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、微粉リサイクル工程において、取り除かれた微粉と水性液とを混合して造粒ゲルを得る造粒工程、ゲル粉砕工程の終了後から乾燥工程で乾燥が完了するまでの少なくとも1つの工程、及び/又は工程間で、含水ゲルに、前記造粒ゲルを添加する造粒ゲル添加工程、を含むことがより好ましい。加えて、本発明のゲル粉砕工程では、ゲル粉砕エネルギーを適切に制御することがより好ましい。下記所定のゲル粉砕エネルギーでゲル粉砕して得られる粒子状含水ゲルは、その後に得られる吸水性樹脂の物性面においても、吸水速度、例えば国際公開第2009/016055号に記載されているFSRや、JIS K 7224(1996年度)「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法」に記載されているVortexでの評価が向上する。
【0059】
ここで、本発明における「ゲル粉砕エネルギー」とは、含水ゲルをゲル粉砕するとき、ゲル粉砕装置が必要とする単位質量、即ち、含水ゲルの単位質量当たりの機械的エネルギーを指し、ジャケットを加熱冷却するエネルギーや投入する水及びスチームのエネルギーは含まれない。尚、「ゲル粉砕エネルギー」は、英語表記の「Gel Grinding Energy」から「GGE」と略称する。
【0060】
GGEは、ゲル粉砕装置が三相交流電力で駆動する場合、以下の式(I)によって算出される;
GGE[J/g]={√3×電圧×電流×力率×モーター効率}/
{1秒間にゲル粉砕機に投入される含水ゲルの質量} …式(I)
前記「力率」及び「モーター効率」は、ゲル粉砕装置の稼動条件等によって変化する装置固有の値であり、0以上、1以下までの値を採る。これらの値は、装置メーカー等への問い合わせ等で知ることができる。また、ゲル粉砕装置が単相交流電力で駆動する場合、GGEは、前記式(I)中の「√3」を「1」に変更して算出することができる。尚、電圧の単位は[V]、電流の単位は[A]、含水ゲルの質量の単位は[g/s]である。
【0061】
前記GGEにおける「力率」及び「モーター効率」は、ゲル粉砕時での値を採用する。空運転時の力率及びモーター効率の値は、空運転時の電流値が小さいこともあり、近似的に前記式(I)のように定義する。前記式(I)における「1秒間にゲル粉砕機に投入される含水ゲルの質量」[g/s]とは、例えば、含水ゲルが定量フィーダーで連続的に供給される場合、[g/s]に換算した値をいう。但し、含水ゲルには後述するように、リサイクルされた造粒ゲルが含まれている場合がある。
【0062】
本発明においてゲル粉砕するためのゲル粉砕エネルギー(GGE)は、好ましくは100J/g以下、より好ましくは80J/g以下、さらに好ましくは60J/g以下であって、好ましくは20J/g以上、より好ましくは25J/g以上、さらに好ましくは30J/g以上である。ゲル粉砕エネルギーを前記範囲内に制御することで、適切なせん断・圧縮力を含水ゲルに与えながらゲル粉砕することができる。
【0063】
尚、ニーダー重合後におけるスクリュー押出機の使用や、複数のスクリュー押出機の使用等、ゲル粉砕が複数の装置で行われる場合には、それぞれの装置で消費されたエネルギーの合計をゲル粉砕エネルギー(GGE)とする。
【0064】
また、ゲル粉砕エネルギーを前述したように制御する場合には、前記温度の温水の添加と組み合わせて行うことで、より優れた効果が得られる。さらに、通常のゲル粉砕後に、前記ゲル粉砕エネルギーに基づくゲル粉砕を行ってもよい。
【0065】
ゲル粉砕工程によって細粒化された粒子状含水ゲルの粒子径は、乾燥のし易さや、得られる吸水性樹脂の物性の観点から、0.1mm以上、10mm以下の範囲が好ましい。また粒子状含水ゲルの質量平均粒子径(D50)は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.15mm以上、さらに好ましくは0.20mm以上、特に好ましくは0.25mm以上であって、好ましくは5mm以下、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.80mm以下である。粒子状含水ゲルの質量平均粒子径(D50)が前記範囲を外れると、乾燥が十分に行われないことがある。本発明では乾燥工程に供される含水ゲルの質量平均粒子径は、好ましくは前記範囲内であり、より好ましくは前記粒子径、及び前記質量平均粒子径の両方を満足することである。
【0066】
前記粒子状含水ゲルの粒度として、その粒度分布の狭さを示す対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.2以上であって、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.2以下である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、その値が小さいほど均一な粒子径となり、均等に乾燥させることができるという利点がある。しかしながら、当該粒度分布の対数標準偏差(σζ)を0.2未満とするには、ゲル粉砕前の重合時における粒度制御や、ゲル粉砕後における粒子状含水ゲルの分級等の特殊な操作を必要とするため、生産性やコストの観点から、実質的には実施することが難しい。
【0067】
尚、後述する吸水性樹脂の比表面積を高めるには、国際公開第2011/126079号パンフレットに記載されたゲル粉砕方法を用いることが好ましい。また、当該ゲル粉砕方法を前述した発泡重合と組み合わせてもよい。
【0068】
また、均一で効率的な乾燥のために、粒子状含水ゲルの含水率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上であって、好ましくは70質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。
【0069】
[2-4]乾燥工程
本工程は、ゲル粉砕された含水ゲルを乾燥する工程であり、具体的には、前記粒子状含水ゲル、又は造粒ゲルを添加した場合には造粒ゲルと粒子状含水ゲルの両方を、所望する固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。当該固形分、即ち、前記ゲル100質量%から含水率を引いた値は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは92質量%以上であって、好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは98質量%以下、特に好ましくは97質量%以下である。乾燥重合体の固形分を前記範囲内とすることで、粉砕や分級、表面架橋を効率的に実施することができる。尚、本明細書において「乾燥が完了」とは、固形分が80質量%に到達した状態を指す。ところで、本工程では乾燥重合体がブロック状になっており、さらにブロックの上下、中央/端で含水率が異なっている場合がある。この場合には、様々な位置から乾燥重合体を適宜取得し、必要により砕いてから含水率を測定して平均すればよい。
【0070】
本明細書において、前記所定の固形分を下回る乾燥重合体を、未乾燥物と表記することがある。乾燥工程における「被乾燥物」又は「粒子状含水ゲル」には、粒子状含水ゲルと造粒ゲルの両方を含む場合がある。また、本発明の乾燥工程は、特に粒子状含水ゲルと造粒ゲルの両方を含む場合により効果的な条件である。尚、他の工程においても同様に、含水ゲル及びその処理物に、造粒ゲル及びその処理物が含まれる場合がある。
【0071】
乾燥工程における乾燥方法は、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥、攪拌乾燥等が挙げられる。これらの乾燥方法は、連続式又はバッチ式の何れの方式でも採用することができるものの、生産効率の観点から、連続式がより好ましい。また、中でも乾燥効率の観点から、攪拌乾燥、及び熱風乾燥が好ましい。攪拌乾燥としては、パドルドライヤー又は回転ドラム式乾燥機等の攪拌乾燥機で行うことが好ましい。また、熱風乾燥としては、通気ベルト上で熱風乾燥を行う通気バンド式乾燥機で行うことが好ましい。通気バンド式乾燥機を用いることで、乾燥重合体や乾燥途中の粒子状含水ゲル等の被乾燥物の物理的破損や摩擦による微粉末の発生等を防止しつつ、効率的な乾燥が行える。
【0072】
熱風乾燥する場合の乾燥温度、即ち、熱風の温度は、乾燥効率を考慮すると、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であって、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。また、乾燥時間は、好ましくは10分間以上、より好ましくは20分間以上、さらに好ましくは30分間以上であって、好ましくは2時間以下、より好ましくは1.5時間以下、さらに好ましくは1時間以下である。当該範囲内の乾燥温度及び乾燥時間とすることで、得られる吸水性樹脂の物性を所望する範囲とすることができる。尚、他の乾燥条件に関しは、乾燥に供する粒子状含水ゲルや造粒ゲルの含水率、総質量及び目的とする固形分に応じて、適宜設定すればよく、バンド乾燥を行うときには、国際公開第2006/100300号パンフレット、同第2011/025012号パンフレット、同第2011/025013号パンフレット、同第2011/111657号パンフレット等に記載される諸条件が適宜適用される。
【0073】
(通気バンド式乾燥機)
本発明において使用される乾燥機は、連続式又はバッチ式の何れの方式でも構わないものの、生産効率の観点から、連続式の通気バンド乾燥機がより好ましい。当該連続式の通気バンド式乾燥機によって被乾燥物を乾燥する場合、被乾燥物がバンド乾燥機のバンド上で層状(以下、「ゲル層」と表記する)となるように連続的に供給し、熱風乾燥される。この乾燥機のバンドの幅は、好ましくは0.5m以上、より好ましくは1m以上であって、好ましくは10m以下、より好ましくは5m以下である。バンドの長さは、好ましくは20m以上、より好ましくは40m以上であって、好ましくは100m以下、より好ましくは50m以下である。
【0074】
バンド上での被乾燥物の移動速度は、ベルト幅、ベルト長、生産量、乾燥時間等により適宜設定すればよいものの、ベルト駆動装置に掛かる負荷、耐久性等の観点から、好ましくは0.3m/分以上、より好ましくは0.5m/分以上、さらに好ましくは0.7m/分以上であって、好ましくは5m/分以下、より好ましくは2.5m/分以下、さらに好ましくは2m/分以下、特に好ましくは1.5m/分以下である。
【0075】
通気バンド式乾燥機上に散布された被乾燥物のゲル層の平均厚さは、好ましくは3cm以上、より好ましくは5cm以上、さらに好ましくは8cm以上であって、好ましくは30cm以下、より好ましくは20cm以下、さらに好ましくは15cm以下である。前記条件において効率的に前記固形分を達成するには、ゲル層の厚さが前記範囲となるようにすることが望ましい。一方、ゲル層が厚くなり過ぎると、未乾燥物の残存や不均一な乾燥になり易いため、前記所定の乾燥工程を行っても前記好ましい固形分を満足しない乾燥重合体の割合が多くなることがある。
【0076】
[2-5]粉砕工程、分級工程
粉砕工程は、乾燥後の重合体を粉砕する工程であり、分級工程は、粉砕された重合体から微粉を取り除く工程である。具体的には、前記乾燥工程を経て得られる乾燥重合体を、粉砕工程で粉砕し、所望する範囲の粒度に分級工程で調整して、吸水性樹脂を得る工程である。乾燥後の粉砕工程を経ることで、不定形破砕状の吸水性樹脂を得ることができる。
【0077】
前記粉砕工程で使用される粉砕機としては、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機や、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられる。中でも、粉砕効率の観点から、好ましくはロールミルが選択される。
また、これら粉砕機を複数併用することもできる。
【0078】
前記分級工程での粒度の調整方法としては、JIS標準篩(JIS Z8801-1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。中でも、分級効率の観点から、好ましくは篩分級が選択される。尚、粉砕のし易さやの観点から、付加的に粉砕工程前に分級工程を行ってもよい。
【0079】
吸水性樹脂の粒度分布は、質量平均粒子径(D50)が好ましくは250μm以上、600μm以下であって、300μm~600μmの粒子の割合が好ましくは50質量%以上であって、150μm未満の粒子の割合が5質量%以下である。質量平均粒子径(D50)の上限は、好ましくは550μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは450μm以下である。また、300μm~600μmの粒子の割合は、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは65質量%以上である。また、150μm未満の粒子の割合は、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。また、710μm超の粒子の割合は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。また、粒度分布の狭さを示す対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.27以上であって、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.40以下、さらに好ましくは0.35以下である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、その値が小さいほど均一な粒子径となり、粒子の偏析が少なくなるという利点がある。好ましくは、質量平均粒子径(D50)と150μm未満の粒子の割合とを満足することであり、より好ましくは、質量平均粒子径(D50)、150μm未満の粒子の割合、及び710μm超の粒子の割合を満足することであり、さらに好ましくは、質量平均粒子径(D50)、150μm未満の粒子の割合、710μm超の粒子の割合、及び対数標準偏差を満足することであり、前記各範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0080】
前述した粒度は、粉砕工程及び分級工程後の吸水性樹脂にも適用される。そのため、表面架橋を行う場合は、表面架橋前の吸水性樹脂で調整された前記範囲の粒度を維持するように、表面架橋工程で表面架橋処理されることが好ましく、表面架橋工程以降に整粒工程を設けて粒度が調整されることがより好ましい。尚、分級工程において目開き710μmの篩を通過しない吸水性樹脂は、粉砕工程に返されて、再度、粉砕工程で粉砕されることが好ましい。また、分級工程において目開き150μmの篩を通過した吸水性樹脂は、後述する微粉リサイクル工程で処理されることが好ましい。
【0081】
[2-6]表面架橋工程
本工程は、必要に応じて前述した各工程を経て得られる表面架橋前の吸水性樹脂の表面層に、さらに架橋密度の高い部分を設ける工程であり、混合工程、熱処理工程、冷却工程等を含む構成となっている。当該表面架橋工程において、表面架橋前の吸水性樹脂の表面でラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等が起こり、表面架橋された吸水性樹脂が得られる。
【0082】
[2-6-1]混合工程
本工程は、表面架橋剤を含む溶液(以下、「表面架橋剤溶液」と表記する)を混合装置内で表面架橋前の吸水性樹脂と混合することで、加湿混合物を得る工程である。
【0083】
(表面架橋剤)
本発明においては、表面架橋時に表面架橋剤が使用される。当該表面架橋剤としては、例えば、米国特許第7183456号に記載された表面架橋剤が挙げられる。これら表面架橋剤の中から、反応性等を考慮して少なくとも1種類の表面架橋剤が選択される。また、表面架橋剤の取り扱い性や吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくはカルボキシル基と反応する官能基を2つ以上有する表面架橋剤であって、共有結合が形成される有機化合物が選択される。
【0084】
前記表面架橋剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の多価アルコール化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物;ハロエポキシ化合物、多価アミン化合物とハロエポキシ化合物との縮合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;オキサゾリジノン化合物;1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキソパン-2-オン等のアルキレンカーボネート化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリシドール等の多価グリシジル化合物;オキセタン化合物;ビニルエーテル化合物;環状尿素化合物等が挙げられる。
【0085】
前記表面架橋剤の使用量、複数種類を使用する場合はその合計量は、表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上であって、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。表面架橋剤の使用量を当該範囲内とすることで、表面架橋前の吸水性樹脂の表面層に最適な架橋構造を形成することができ、高物性の吸水性樹脂が得られる。
【0086】
前記表面架橋剤は、水溶液として表面架橋前の吸水性樹脂に添加することが好ましい。
この場合、水の使用量は、表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であって、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。水の使用量を当該範囲内とすることで、表面架橋剤溶液の取り扱い性が向上し、表面架橋前の吸水性樹脂に対して表面架橋剤を均等に混合することができる。
【0087】
また、親水性有機溶媒を必要に応じて前記水と併用して、前記表面架橋剤溶液とすることもできる。この場合、親水性有機溶媒の使用量は、表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。当該親水性有機溶媒としては、具体的には、メチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;エチレングリコール等の多価アルコール類等が挙げられる。しかしながら、これら親水性有機溶媒の使用は、できるだけ少ない使用量に制限されることが好ましい。
【0088】
また、下記「[2-7]添加剤とその添加工程」で添加される各種の添加剤を、5質量部以下の範囲内で、前記表面架橋剤溶液に添加したり、混合工程で別途添加したりすることもできる。
【0089】
(混合方法、混合条件)
前記表面架橋前の吸水性樹脂と前記表面架橋剤溶液との混合は、表面架橋剤溶液を予め作製しておき、当該溶液を表面架橋前の吸水性樹脂に対して、好ましくは噴霧又は滴下して、より好ましくは噴霧して混合する方法が選択される。
【0090】
前記混合を行う混合装置は、表面架橋前の吸水性樹脂と表面架橋剤とを均一かつ確実に混合するのに必要なトルクを有していることが好ましい。当該混合装置は、高速攪拌型混合機が好ましく、高速攪拌型連続混合機がより好ましい。尚、当該高速攪拌型混合機の回転数は、好ましくは100rpm以上、より好ましくは300rpm以上であって、好ましくは10000rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。
【0091】
本工程に供給される表面架橋前の吸水性樹脂の温度は、表面架橋剤溶液との混合性や加湿混合物の凝集性の観点から、好ましくは35℃以上であって、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。また、混合時間は、好ましくは1秒間以上、より好ましくは5秒間以上であって、好ましくは1時間以下、より好ましくは10分間以下である。
【0092】
[2-6-2]熱処理工程
本工程は、前記混合工程で得られた加湿混合物に熱を加えて、表面架橋前の吸水性樹脂の表面上で架橋反応させる工程である。前記加湿混合物の熱処理は、当該加湿混合物を静置状態で加熱してもよく、攪拌等の動力を用いて流動状態で加熱してもよいものの、加湿混合物全体を均等に加熱できる点において、攪拌下で加熱することが好ましい。前記熱処理を行う熱処理装置は、前記観点から、パドルドライヤー、マルチフィンプロセッサー、タワードドライヤー等が挙げられる。
【0093】
本工程における加熱温度は、表面架橋剤の種類及び量、並びに吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは170℃以上、特に好ましくは180℃以上であって、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。また、加熱時間は、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも7分間である。加熱温度と加熱時間とを前記範囲内に制御することにより、得られる吸水性樹脂の吸水性能が向上するため好ましい。
【0094】
[2-6-3]冷却工程
本工程は、前記熱処理工程後に、必要に応じて設けられる任意の工程である。本工程は、前記熱処理工程を終えた高温の吸水性樹脂を所定の温度まで強制冷却し、表面架橋反応を速やかに終了させる工程である。
【0095】
前記吸水性樹脂の冷却は、静置状態で冷却してもよく、攪拌等の動力を用いて流動状態で冷却してもよいものの、吸水性樹脂全体を均等に冷却できる点において、攪拌下で冷却することが好ましい。前記冷却を行う冷却装置は、前記観点から、パドルドライヤー、マルチフィンプロセッサー、タワードドライヤー等が挙げられる。尚、これら冷却装置は、熱処理工程で使用される熱処理装置と同じ仕様とすることもできる。熱処理装置の熱媒を冷媒に変更することで、冷却装置として使用できるからである。
【0096】
本工程における冷却温度は、熱処理工程での加熱温度、吸水性樹脂の吸水性能等に応じて適宜設定すればよく、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であって、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。
【0097】
[2-7]添加剤とその添加工程
本発明においては、前述した工程以外に、必要に応じて以下の添加剤(表面改質剤、その他の添加剤)を吸水性樹脂に添加する工程を実施することができる。
[2-7-1]表面改質剤
表面改質剤は、吸水性樹脂の粒子表面を改質する目的で添加される添加剤で、具体的には、通液性向上剤、吸湿下のAnti-Caking 剤、粉体の流れ制御剤、吸水性樹脂のバインダー等が挙げられる。特に通液性向上の観点から、多価金属塩、カチオン性ポリマー、無機微粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を使用することができ、必要に応じて2種類以上を併用することができる。前記表面改質剤の添加量は、選択される化合物に応じて、適宜設定される。表面改質剤の添加工程は、吸水性樹脂の粒子表面を改質する目的から、好ましくは重合工程以降、より好ましくは乾燥工程以降、さらに好ましくは表面架橋工程以降に行われる。また、表面改質剤の添加は、任意の1以上の工程で行うことができる。
【0098】
(多価金属塩)
多価金属塩を使用する場合、多価金属塩の多価金属カチオンは、好ましくは2価以上、より好ましくは2価以上、好ましくは4価以下、さらに好ましくは3価又は4価である。また、使用できる多価金属としては、アルミニウム、ジルコニウム等が挙げられる。従って、本工程で使用することができる多価金属塩としては、乳酸アルミニウム、乳酸ジルコニウム、硫酸アルミニウム、硫酸ジルコニウム等が挙げられる。中でも、食塩水流れ誘導性(SFC)の向上効果の観点から、乳酸アルミニウム又は硫酸アルミニウムがより好ましく、硫酸アルミニウムがさらに好ましい。
【0099】
前記多価金属塩の添加量としては、吸水性樹脂1gに対して、好ましくは0モル以上であって、好ましくは3.6×10-5モル未満、より好ましくは1.4×10-5モル未満、さらに好ましくは1.0×10-5モル未満である。
【0100】
さらに、前記多価金属を含む溶液には、多価金属の吸水性樹脂内への浸透性を調整する剤として、さらに水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等の、1価の金属化合物を含んでいてもよい。
【0101】
(カチオン性ポリマー)
カチオン性ポリマーを使用する場合、当該カチオン性ポリマーとしては、米国特許第7098284号に記載されている物質が挙げられる。中でも、通液性向上の観点から、ビニルアミンポリマーがより好ましい。また、カチオン性ポリマーの質量平均分子量は、5000以上、1000000以下が好ましい。
【0102】
前記カチオン性ポリマーは、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0質量部以上であって、好ましくは2.5質量部未満、より好ましくは2.0質量部未満、さらに好ましくは1.0質量部未満となるように添加すればよい。
【0103】
(無機微粒子)
無機微粒子を使用する場合、無機微粒子としては、米国特許第7638570号に記載されている物質が挙げられる。中でも、通液性向上の観点から、二酸化ケイ素が好ましい。また、加圧下吸収倍率と吸湿流動性のバランスの観点から、無機微粒子としてハイドロタルサイト、リン酸カルシウム、および、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0104】
前記無機微粒子は、一次粒子径が20nm未満である場合、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0質量部以上であって、好ましくは1.2質量部未満、より好ましくは1.0質量部未満、さらに好ましくは0.5質量部未満となるように添加すればよい。
また、前記無機微粒子は、一次粒子径が20nm以上である場合、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0質量部以上であって、好ましくは2.0質量部未満、より好ましくは1.5質量部未満、さらに好ましくは1.0質量部未満となるように添加すればよい。
【0105】
前記多価金属塩、カチオン性ポリマー及び無機微粒子から選ばれる少なくとも1種の化合物を吸水性樹脂に添加すると、当該吸水性樹脂の加圧下吸収倍率の低下を引き起こす場合がある。本発明は、特に吸水性樹脂の2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率の向上を一つの目的としており、この観点から、前記化合物の添加量が制限される。当該添加量としては、前記化合物を添加していない吸水性樹脂の加圧下吸収倍率をa(g/g)、前記化合物を添加した吸水性樹脂の加圧下吸収倍率をb(g/g)とした場合、その差「a-b」(g/g)が0.30g/g以内となる添加量が好ましく、0.10g/g以内となる添加量がより好ましく、0.05g/g以内となる添加量がさらに好ましく、0.00g/gとなる添加量が特に好ましい。
【0106】
[2-7-2]その他の添加剤
その他の添加剤としては、キレート剤、還元剤、ヒドロキシカルボン酸化合物、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維、テルペン系芳香性化合物、フェノール系芳香性化合物等の芳香性物質等が挙げられ、これらは1つ又は2つ以上を使用することができる。その他の添加剤としては、好ましくはキレート剤、より好ましくはアミノ多価カルボン酸又はアミノ多価燐酸が好ましく、具体的には、特開平11-060975号公報、国際公開第2007/004529号パンフレット、国際公開第2011/126079号パンフレット、国際公開第2012/023433号パンフレット、特表2009-509722号公報、特開2005-097519号公報、特開2011-074401号公報、特開2013-076073号公報、特開2013-213083号公報、特開昭59-105448号公報、特開昭60-158861号公報、特開平11-241030号公報、特開平2-41155号公報等に記載のキレート剤が挙げられる。
【0107】
その他の添加剤(好ましくはキレート剤)に関しても、前述した多価金属塩、カチオン性ポリマー及び無機微粒子と同様に、吸水性樹脂に添加すると、当該吸水性樹脂の加圧下吸収倍率の低下を引き起こす場合がある。従って、その他の添加剤の添加量も制限される。当該添加量も、前述した多価金属塩、カチオン性ポリマー及び無機微粒子から選ばれる少なくとも1種の化合物の添加量と同様に、前記その他の添加剤を添加していない吸水性樹脂の加圧下吸収倍率をa(g/g)、前記その他の添加剤を添加した吸水性樹脂の加圧下吸収倍率をb(g/g)とした場合、その差「a-b」(g/g)が0.30g/g以内となる添加量が好ましく、0.10g/g以内となる添加量がより好ましく、0.05g/g以内となる添加量がさらに好ましく、0.00g/gとなる添加量が特に好ましい。具体的には、前記その他の添加剤は、モノマー又は吸水性樹脂に対して、好ましくは0質量部以上、1質量部以下の範囲で添加又は含有される。
【0108】
前記添加剤は、前述した各工程、即ち、単量体水溶液の調製工程、重合工程、ゲル粉砕工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程から選ばれる少なくとも1つの工程の前後、又はその工程の途中で添加することができる。好ましくは、重合工程以降の何れかの工程の前後、又はその工程の途中で添加される。
【0109】
[2-7-3]添加剤の添加工程
添加剤を吸水性樹脂に添加する場合、当該添加剤が液体、又は水等の水性媒体の溶液のときには、当該液体又は溶液を吸水性樹脂に対して噴霧し、十分なトルクをかけて吸水性樹脂と添加剤とを均一かつ確実に混合することが好ましい。一方、前記添加剤が粉状等の固体である場合には、吸水性樹脂とドライブレンドしてもよく、水等の水性液体をバインダーとして使用してもよい。
【0110】
前記混合に使用する装置としては、具体的には、攪拌型混合機、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型ロータリーデスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機等が挙げられる。尚、攪拌型混合機を用いる場合には、その回転数は、好ましくは5rpm以上、より好ましくは10rpm以上であって、好ましくは10000rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。
【0111】
[2-8]整粒工程
本発明においては、前述した工程以外に、必要に応じて整粒工程を実施することができる。整粒工程とは、前記表面架橋工程を経て得られる表面架橋後の吸水性樹脂を所望の範囲の粒度に調整して最終製品として出荷可能な状態にある吸水性樹脂を得る工程である。
但し、表面架橋工程前に粉砕工程及び分級工程が無い場合は、表面架橋工程後の後述の操作を粉砕工程、分級工程とする。整粒工程での粒度調製方法は、前記分級工程と同様の調製方法を採用することができる。さらに、前記表面架橋工程や表面改質剤の添加工程で吸水性樹脂が凝集した場合に、解砕、例えば軽い粉砕を行ってもよい。また、粒度調整後の粒度分布も用途に応じて適宜調整することができ、好ましくは前記分級工程と同定度である。従って、所望の質量平均粒子径(D50)、当該質量平均粒子径(D50)の割合、及び対数標準偏差等を満足するように篩等による分級等を行えばよい。
【0112】
[2-9]微粉リサイクル工程
本発明においては、前述した工程以外に、必要に応じて微粉リサイクルの工程を実施することができる。本工程(微粉リサイクル工程)は、前記分級工程で取り除かれた微粉を前記乾燥工程の乾燥が完了する以前にリサイクルする工程である。詳細には、前記吸水性樹脂の製造工程において得られる微粉を、前記製造工程、好ましくは前記乾燥工程以前にリサイクルして吸水性樹脂を製造する工程である。
【0113】
乾燥工程以前の工程としては、単量体水溶液の調製工程、含水ゲルをゲル粉砕する工程、及び細粒化されたゲルを乾燥する工程が挙げられる。
【0114】
単量体水溶液の調製工程に微粉をリサイクルする場合には、単量体水溶液に微粉を添加し、スラリー状にしてから所望の重合反応を開始すればよい。また、微粉の替わりに、後述する造粒ゲルを単量体水溶液に添加してから所望の重合反応を開始してもよい。
【0115】
含水ゲルをゲル粉砕する工程に微粉をリサイクルする場合には、所望のゲル粉砕機に含水ゲルを供給するのと同時に微粉も供給し、排出時に含水ゲルと微粉を一体化すればよい。
【0116】
リサイクルされる微粉は、好ましくは前記分級工程、より好ましくは前記分級工程及び前記整粒工程等で取り除かれた微粉である。尚、微粉が得られた吸水性樹脂の製造工程と厳密に同一の吸水性樹脂の製造工程へリサイクルする必要はなく、本発明の趣旨を損なわない程度に異なる他の吸水性樹脂の製造工程へリサイクルしてもよい。例えば、ある製造ラインで発生した微粉を隣の製造ラインへリサイクルしてもよいし、同一の製造ラインで微粉を取り除いてからリサイクルするまでに重合条件等を変更してもよい。
【0117】
[2-9-1]造粒工程
本工程は、前記取り除かれた微粉と水性液を混合して造粒ゲルを得る工程である。造粒ゲルとは、光学顕微鏡によって観察したとき個々の粒子が複数集まって凝集又は融着して大きな粒子状となっているゲルであり、好ましくは分級操作や搬送操作によって損壊しない程度の強度を有するゲルである。
【0118】
(微粉)
本発明においては、吸水性樹脂の製造において得られる全ての微粉を対象とするものの、好ましくは前記分級工程、より好ましくは前記分級工程及び前記整粒工程で取り除かれた微粉を対象とし、当該微粉に水性液を添加して造粒する。分級工程から取り除かれた微粉と整粒工程から取り除かれた微粉の混合比率(質量比)は、好ましくは99:1~50:50、より好ましくは98:2~60:40、さらに好ましくは95:5~70:30である。整粒工程で取り除かれた微粉は、表面架橋工程、場合によっては表面架橋工程に加えて、前述した「表面改質剤」に記載した表面改質剤の添加工程を経ているので、造粒工程に所定比率含まれていると、造粒ゲルの凝集性が低減して有利である。さらに、本発明では例えば、各製造工程中のバグフィルター等で取り除かれた微粉を造粒に用いてもよく、また、別々の工程で取り除かれて得られた微粉や別の製造過程(別の製造装置)で取り除かれて得られた微粉を混合して用いることもできる。また、微粉は、共に乾燥する含水ゲルと同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよいものの、共に乾燥する含水ゲルに由来する同一組成の微粉を用いることが好ましい。
【0119】
造粒に使用する微粉のサイズとしては、吸水性樹脂の最終製品のサイズ未満であることが好ましい。例えば、微粉は、JIS標準篩分級により規定される質量平均粒子径(D50)の上限が、好ましくは150μm以下、より好ましくは106μm以下である。微粉の質量平均粒子径(D50)の下限は、好ましくは38μm以上、より好ましくは45μm以上である。本工程では微粉を対象としているものの、最終製品のサイズを超える凝集物であっても、適宜粉砕し、微粉として造粒に使用することができる。好ましくは、JIS標準篩分級により規定される150μm未満の粒子径を有する粒子を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であって、好ましくは100質量%以下含んでいることが望ましい。また、微粉の形状としては、造粒強度の面から、逆相懸濁重合で得られた球形よりも、水溶液重合で得られた不定形であることが好ましい。また、前述したように、前記微粉は、吸水性樹脂の製造において一般的に行われている表面架橋工程後に取り除いた微粉であってもよいし、表面架橋工程前に取り除いた微粉であってもよいし、それらの混合物であってもよい。
【0120】
前記微粉、好ましくは前記微粉を所定比率で混合した混合物に、水性液を添加して造粒ゲルを得る。造粒ゲルは、前記単独の工程、或いは複数の工程から得られる様々な粒子径を有する微粉を使用している。
【0121】
水性液と混合するときの微粉の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であって、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。微粉の温度を高めることで微粉、及び水性液の混合性が向上して所望の造粒ゲルが得られ易くなる。一方、微粉の温度を高くしすぎると加熱コストが高くなる。微粉の温度は必要に応じて熱風等による外部からの加熱、乾燥工程での加熱後の保温、或いは室温の空気の吹きつけ等による冷却によって適宜調節することができる。好ましくは、微粉を蒸気トレース等の加熱手段を持つ容器中で加熱又は保温する。
【0122】
(水性液)
微粉との混合に用いる水性液としては、具体的には、水、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等を含んだ水溶液等が挙げられる。水性液は、物性や造粒強度の面から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは99質量%以上であって、好ましくは100質量%以下の範囲内が水であることが好ましく、水のみからなることが特に好ましい。また、前記水性液には、本発明の効果を損なわない範囲で、架橋剤、キレート剤、界面活性剤、重合開始剤、酸化剤、還元剤、親水性高分子等の他の添加剤を少量含有させることもできる。添加剤は、1種、或いは2種以上添加してもよく、2種以上添加する場合の異同は問わない。例えば、重合工程に記載された重合開始剤や還元剤を添加した水性液を使用することで、造粒ゲルと含水ゲルの残存モノマーを低減することができる。好ましい重合開始剤は、過硫酸塩、好ましい還元剤は、(重)亜硫酸(塩)である。例えば、酸化剤を添加した水性液を使用することで、造粒ゲルを乾燥したときの、吸収倍率等の物性の低下を抑えることができる場合がある。好ましい酸化剤は、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過酸化物から選ばれる少なくとも1つの酸化剤であり、より好ましくは、過酸化水素である。例えば、界面活性剤を添加した水性液を使用することで、造粒ゲルに界面活性剤を含有させることができ、当該造粒ゲル同士の凝集を効果的に抑制することができる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が例示される。また、架橋剤や親水性高分子を添加した水性液を使用することで、当該造粒ゲルの凝集強度を高くし、後工程での再微粉化を抑制することができる。前記架橋剤は、前述した内部架橋剤及び表面架橋剤から、前記親水性高分子は、前述した単量体水溶液に添加される親水性高分子から、それぞれ選択される。
【0123】
尚、微粉が、前述の架橋剤、キレート剤、界面活性剤、重合開始剤、酸化剤、還元剤等の添加剤を含有している場合は、水性液にあえて添加剤を加えなくてもよいか、又は、水性液に不足分のみの添加剤を加えればよい。微粉に添加剤の添加工程の項で記載したキレート剤、界面活性剤、酸化剤、還元剤等が含まれていることが特に好ましい。
【0124】
微粉と水性液とを混合して造粒する場合、予め加熱した水性液を使用することが好ましい。加熱した水性液を使用することで微粉を短時間で均一に造粒することができ、生産性が向上する。水性液の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上であって、好ましくは水性液の沸点以下、より好ましくは100℃以下である。尚、水性液の沸点は、塩類や溶媒の添加、減圧や加圧等の圧力等によって調整することができる。また、別の方法として、水蒸気と常温の水性液を同時に添加して、実質的に前記温度にしてもよい。
【0125】
水性液の添加量は、微粉100質量部(有姿)に対して、好ましくは100質量部未満、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下であって、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上である。水性液の添加量が100質量部以上の場合、乾燥に掛かる負荷が大きくなる。一方、水性液の添加量が10質量部よりも少ない場合、造粒強度が不十分になることがあると共に、微粉の混合が不均一になって造粒物が損壊し易くなることがある。
【0126】
(混合装置)
本発明では、前記何れの実施形態においても、水性液と微粉との混合に用いる混合装置は特に限定されない。例えば容器固定型混合機であれば、機械攪拌型混合機が好ましい。
具体的にはタービューライザー(ホソカワミクロン社製)、レディゲミキサー(レディゲ社製)、及びモルタルミキサー(西日本試験機社製)等が例示される。また、混合には、バッチ式混合機及び連続式混合機の何れを用いてもよい。
【0127】
本発明では、好ましくは加熱した水性液と加熱した微粉とを前記混合装置で混合する。本発明では、水性液と微粉の加熱に加えて、混合装置内、具体的には混合装置の壁面及び/又は攪拌羽根等の攪拌手段が加熱されていることがより好ましい。このように混合装置内、水性液、微粉の何れもが所定の温度に加熱された状態で混合すると、より効率的に、所望の粒子径を有する造粒ゲルを容易に得ることができる。本発明においては、微粉、水性液、混合装置の何れも加熱されていなくても、このような効果が得られるものの、好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは2つ、さらに好ましくは全てが所定の温度に加熱されていることで、より優れた効果が得られる。
【0128】
前記混合時の混合装置内、好ましくは混合装置の内壁面、及び/又は攪拌手段の加熱温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上、特に好ましくは65℃以上、最も好ましくは70℃以上であって、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。混合装置、好ましくは内壁面、攪拌手段の何れか、より好ましくは両方を加熱することで微粉を短時間で均一に造粒することができ、生産性が向上する。混合装置内の温度は、例えば加熱した気体を供給したり、伝導電熱等によって適宜調整したりすることができる。
【0129】
本発明では、微粉と水性液を混合するとき、高速混合により造粒することが好ましい。
高速混合することで巨大なゲル状物の生成を抑制できるため、巨大なゲル状物が生成した場合に必要になる巨大な混合力が不要となり、またゲル状の塊が混練状態となって主鎖の切断や絡まり等が発生し、その結果、吸水性樹脂が劣化するという問題を回避することができる。
【0130】
前記高速混合とは、混合装置内で原料である微粉、及び水性液の接触時点から、造粒ゲルの生成までの時間が短いことを意味する。即ち、混合装置内に原料を投入してから造粒ゲルが取り出されるまでの時間が短いことをいう。混合時間は、好ましくは3分間以下、より好ましくは1分間以下であって好ましくは1秒間以上、より好ましくは5秒間以上である。混合時間が長いと、水性液と微粉との均一な混合が困難となり一体化した巨大なゲル状物となり易い。また、混合時間が長いと、得られる吸水性樹脂の水可溶分の増加や加圧下吸収倍率の低下等、吸水性樹脂の性能低下を招く場合もある。
【0131】
従って、高速混合を達成するための手段としては、原料を短時間で混合装置に投入することが望ましい。水性液を噴霧したり、滴下したりする等の方法で徐々に添加する等、何れか一方、或いは両方の原料の投入時間が長いと、混合時間も長くなるため、微粉が大きな凝集塊となったり、長時間の混練によって吸水性樹脂が劣化したりすることがある。混合装置には、微粉と水性液を同時、或いは異なるタイミングで一方の投入後に他方を投入してもよい。従って、投入が同時の場合は両方の原料、又は異なるタイミングの場合は後に投入する原料の投入開始から投入終了までの時間は、好ましくは60秒間以下、より好ましくは30秒間以下、さらに好ましくは10秒間以下である。
【0132】
さらに高速混合を達成するために、高速攪拌パドル混合機を用いることが好ましい。このとき、パドル回転数は、好ましくは100rpm以上、より好ましくは200rpm以上、さらに好ましくは300rpm以上であって、好ましくは5000rpm以下、より好ましくは4000rpm以下、さらに好ましくは3000rpm以下である。パドル回転軸の方向は限定されないものの、造粒ゲルの排出のし易さから鉛直方向が好ましい。また、パドル回転軸の数は限定されないものの、メンテナンスのし易さから1軸又は2軸が好ましく、1軸がより好ましい。
【0133】
本発明では付着防止のため、混合機の内壁に水との接触角が90度以上の材料を用いることが好ましい。好ましい材料はテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂である。但し、全ての内壁に前記材料を用いる必要はなく、強力な攪拌力を得るため、パドル付近の内壁はあえて水との接触角が90度未満の材料を用いてもよい。耐久性の観点から好ましい材料はステンレスである。
【0134】
(輸送工程)
吸水性樹脂の各製造工程は連結されていることが好ましい。各工程の連結の全てに輸送工程が必要とは限らないものの、例えば前記造粒工程で得られた造粒ゲルをリサイクルするときに所定の添加位置まで輸送する工程を含むことができる。
【0135】
造粒ゲルの輸送は、連続式又はバッチ式で行われ、好ましくは連続式である。輸送工程で用いられる輸送機としては、例えば、バケットコンベヤー、ベルトコンベヤー、スクリューコンベヤー、チェーンコンベヤー、振動コンベヤー及びニューマチックコンベヤー等であり、好ましくはバケットコンベヤーである。また、輸送する造粒ゲルを輸送機の外側から加熱された状態及び/又は保温された状態にして、輸送途中でも造粒ゲルの温度を前記高温に維持することが好ましい。このような加熱及び/又は保温は、輸送機の内壁面を外側から加熱する手段及び/又は保温する手段を備えることで達成することができる。輸送中の造粒ゲルの温度が低下すると、含水ゲルと混合するまでに造粒ゲル同士がくっついて凝集物になったり、また造粒ゲルの温度が下がって硬くなってしまったりすると、これらが乾燥工程における不均一な乾燥原因となり、未乾燥物が生じ易い。
従って、造粒ゲルを輸送する場合、製造された造粒ゲルの温度を、好ましくは維持、より好ましくは混合する含水ゲルの温度と同程度に加熱及び/又は保温することである。
【0136】
尚、輸送工程が無い場合、前記微粉と水性液の混合装置から含水ゲルとの混合位置まで、造粒ゲルを重力により落下させることが好ましい。この場合、混合装置から含水ゲルとの混合位置までの距離は、好ましくは10m以内、より好ましくは5m以内、さらに好ましくは3m以内である。さらに、造粒ゲルが通過する配管は、前記輸送機と同様の理由で、加熱及び/又は保温されていることが好ましい。
【0137】
前記加熱及び/又は保温された装置や配管に造粒ゲルが長時間留まると、造粒ゲルの表面が乾き、硬くなる恐れがある。そのため、造粒工程で得られた造粒ゲルは、できるだけ速やかに所定の温度に加熱された状態で含水ゲルと混合することが好ましい。具体的には、前記造粒工程において、微粉と水性液の混合を開始してから、得られた造粒ゲルを再添加工程において含水ゲルに添加するまでの時間は、好ましくは5分間以内、より好ましくは3分間以内、さらに好ましくは1分間以内である。尚、前記時間内に含水ゲルとの混合ができない場合でも、温度が低下した造粒ゲルを再加熱して所定の温度に加熱された状態にすれば凝集性が低下し、さらに造粒ゲルを軟化させることができる。従って、温度が低下した造粒ゲルを再加熱した後に含水ゲルと混合しても、前記所定の時間内に混合する場合と同様に、良好な混合状態が得られる。
【0138】
造粒ゲルの表面が乾くという前記問題を解決するため、前記造粒工程から再添加工程の間において、即ち、造粒後の造粒ゲルを含水ゲルに添加するまでの輸送工程において、当該造粒ゲルの雰囲気の露点を、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上であって、好ましくは99℃以下、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは90℃以下とする。また、本発明では、前記輸送工程に加えて造粒工程、及び/又は再添加工程の雰囲気の露点を前記範囲に制御することも好ましい実施態様であり、具体的には、造粒工程における微粉と水性液を混合するときの装置内の雰囲気、造粒ゲルを含水ゲルに添加するときの装置内の雰囲気を、前記範囲に制御することが好ましい。「雰囲気の露点」とは、雰囲気中に存在する空気の露点である。雰囲気の露点は、例えば、水蒸気を吹き込んだり、熱風の循環率を制御したりして前記範囲に調整することができる。
【0139】
[2-9-2]造粒ゲル添加工程
本工程は、前記乾燥工程で乾燥が完了するまでの、前記重合工程~乾燥工程の少なくとも1つの工程、及び/又は工程間で、含水ゲルに造粒ゲルを添加する工程である。具体的には、前記重合工程中、前記重合工程後であって前記ゲル粉砕工程前、前記ゲル粉砕工程中、前記ゲル粉砕工程後であって前記乾燥工程前、及び、前記乾燥工程中よりなる群から選ばれる少なくとも1工程以上で、含水ゲルに造粒ゲルを添加することが好ましい。尚、前記重合工程中でも含水ゲルが得られるため、当該重合工程中に造粒ゲルを添加してもよい。また、ゲル粉砕する工程において、含水ゲルに造粒ゲルを添加してゲル粉砕機に供給してもよい。乾燥工程において、固形分が80質量%未満である重合体は、通常、含水ゲルと見なすことができる。即ち、乾燥工程の途中までは含水ゲルが存在するため、当該乾燥工程中に造粒ゲルを添加してもよい。好ましくは前記ゲル粉砕工程後であって前記乾燥工程前、又は、前記乾燥工程中、より好ましくはゲル粉砕工程後であって乾燥工程前の含水ゲルに、造粒ゲルを添加する。このように粉砕後の含水ゲルに造粒ゲルを添加すると、両者の粒度差が小さいため混合し易く、乾燥が不均一になり難い。特に、ゲル粉砕エネルギーを制御した粉砕を行うと含水ゲルが造粒形状となるため、不均一な乾燥をより一層抑制することができる。尚、「工程前」、「工程後」とは、当該工程前、或いは当該工程後の全ての工程を含む。即ち、当該工程前、或いは当該工程後の全ての工程を含むとは、工程間の輸送工程や貯蔵工程等、任意の工程において造粒ゲルを添加してもよいことを意味する。例えばゲル粉砕工程後とは、ゲル粉砕工程から次工程に輸送される間、及び次工程を含む。
【0140】
造粒ゲル添加工程において、造粒ゲルの固形分は、50質量%以上、90質量%以下である。造粒ゲルの固形分に関する説明は後述する。
【0141】
(温度)
本発明では造粒ゲルを含水ゲルに添加する。そのときの当該造粒ゲルの温度、及び当該含水ゲルの温度は、何れも50℃以上、100℃以下の範囲内であり、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上であって、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下である。このような温度範囲内であれば、両者の良好な混合状態が得られる。造粒ゲルや含水ゲルの温度が50℃を下回ると、前述したように造粒ゲルが硬くなったり、含水ゲルと造粒ゲルとを混合すると凝集物を形成したりすることがある。即ち、混合時に凝集物が形成されると、さらに含水ゲルや造粒ゲルがくっついてより巨大な凝集物が形成されて混合状態が不良となる。また、混合できたとしても、乾燥するときに凝集物が存在すると、乾燥不良、即ち未乾燥物を生じ易い。また、当該凝集物を所望の含水率になるまで加熱を継続して乾燥させると、既に乾燥している他の造粒ゲルや含水ゲルは過乾燥状態となり、熱劣化して可溶分が増加する等、吸水性樹脂の品質が劣化する。このような問題は、一方の温度が50℃以上、他方の温度が50℃未満の場合でも生じる。一方、造粒ゲルや含水ゲルの温度が100℃を超えると、ゲル表面が乾燥してしまい、ゲルがかえって硬くなることがある。
【0142】
また、本発明では不均一な乾燥を低減する観点から、前記温度範囲内において造粒ゲルの温度と含水ゲルの温度との差は小さいほど好ましく、両者の温度差は、好ましくは40℃以内、より好ましくは30℃以内、さらに好ましくは20℃以内である。造粒ゲルの温度と含水ゲルの温度の調整は、製造過程における加熱、及び保温、或いは外部から熱風等による加熱、或いは放冷、低温空気等による冷却によって、適宜調整することができる。
【0143】
[2-9-3]ゲル混合工程
(機械的な混合)
本発明では、造粒ゲルと含水ゲルを前記温度範囲に制御することにより、含水ゲルに造粒ゲルを添加するときの僅かな衝撃や自重等によって含水ゲルと造粒ゲルがほぐれて僅かに混ざり合う。本発明ではさらに、前記造粒ゲル添加工程から乾燥工程で乾燥が完了するまでの少なくとも1つの工程、及び/又は工程間で、含水ゲルと添加した造粒ゲルを機械的に混合することも好ましい実施態様である。本発明では、前述したように、造粒ゲルを乾燥工程が完了する以前の含水ゲルに添加するものの、何れの時期で添加した場合でも造粒ゲルと含水ゲルは混合状態で乾燥される。そして、造粒ゲルと含水ゲルが均一に存在する状態であれば、未乾燥物の発生をより一層抑制することができる。ここで、「均一に存在する」とは、造粒ゲルと含水ゲルが攪拌された混合状態、或いは単位面積当たりの割合が略同一になるように均等に散布された状態を指す。尚、本発明の効果を発揮するために、造粒ゲルを含水ゲルに添加してから機械的に混合を始めるまでの時間は、好ましくは5分間以内、より好ましくは2分間以内、さらに好ましくは1分間以内である。また、造粒工程から機械的に混合を始めるまでの時間は、好ましくは10分間以内、より好ましくは5分間以内、さらに好ましくは2分間以内である。機械的に混合を開始する時点でも、造粒ゲルが添加された含水ゲルの温度は、50℃以上、100℃以下の範囲内であり、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上であって、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下である。
【0144】
本発明では、造粒ゲルと含水ゲルができるだけ均一に混合された状態とするために、造粒ゲル及び/又は含水ゲルを機械的に混合する。機械的な混合は、前記何れかの共存状態を達成することができる装置を用いればよい。攪拌方法としては、例えば攪拌翼や容器自体の回転等による回転攪拌、振り子状に動くフィーダー等による攪拌が挙げられる。
当該攪拌方法を行う装置としては、それぞれ回転攪拌装置、首振りベルト式フィーダー、振り子式コンベアが例示される。
【0145】
機械的な混合が重合工程中に行われる場合、前記回転攪拌装置は、ニーダー重合機が好ましい。機械的な混合がゲル粉砕工程中に行われる場合、前記回転攪拌装置は、例えばニーダー又はミートチョッパーが好ましい。
【0146】
機械的な混合が前記ゲル粉砕工程後であって前記乾燥工程前、又は、前記乾燥工程中、或いは乾燥工程で乾燥が完了するまでにおいて行われる場合、首振りベルト式フィーダー又は回転攪拌装置が好ましい。つまり、造粒ゲル及び含水ゲルを、首振りベルト式フィーダー又は回転攪拌装置に供給して混合することが好ましい。具体的には、前記ゲル粉砕工程後、乾燥工程までの間に、首振りベルト式フィーダー又は回転攪拌装置を用いて、或いは乾燥工程において回転攪拌装置を用いて、前記機械的な混合をすることによって、より一層均質な状態で乾燥させることができるため、不均一な乾燥や未乾燥物の生成を抑制することができる。
【0147】
首振りベルト式フィーダーを使用する場合、搬送ベルト上で輸送されている含水ゲルに対して造粒ゲルを首振りフィーダーによって添加すると、造粒ゲルの均一な分散ができる。また、搬送ベルト上で輸送されている造粒ゲルに対して含水ゲルを首振りフィーダーによって添加してもよいし、造粒ゲルと含水ゲルを首振りフィーダーに供給し、両者を首振りフィーダーによって搬送ベルト上に供給してもよい。首振りベルト式フィーダーはベルト末端が搬送ベルト上を往復運動するため、首振りベルト式フィーダー上で造粒ゲルと含水ゲルの分布に偏りがあったとしても、搬送ベルト上ではほぼ均一に分布するようになる。
【0148】
首振りフィーダーの首振り角度θやベルト速度等は、搬送ベルトの速度や供給量等を考慮して任意に選択できるものの、1往復する間の搬送ベルトの進行は1m以内が好ましく、0.5m以内がより好ましい。1往復する間の搬送ベルトの進行距離が長すぎると、造粒ゲルの分布の偏りが顕著になる。尚、前記搬送ベルトは、通気バンド式乾燥機であることが好ましい。
【0149】
また、回転攪拌装置としては、回転軸が水平方向でかつ容器自体も回転するタイプ、回転軸が水平方向で容器自体は固定のタイプ、回転軸が鉛直方向で容器自体は固定のタイプ等が例示される。これら装置は、連続式又はバッチ式の何れであってもよい。また、前記乾燥工程で用いられるロータリー式ならし機を用いて、乾燥機に積層される含水ゲルを均しつつ、混合してもよい。さらに、前記乾燥工程で用いられる攪拌乾燥機を用いて、乾燥しながら混合することも好ましい。前記装置の攪拌回転数等は、特に限定されないものの、好ましくは50rpm以上、より好ましくは100rpm以上であって、好ましくは500rpm以下、より好ましくは300rpm以下である。さらに、攪拌装置での混合(滞留)時間は、好ましくは180秒間以内、より好ましくは60秒間以内、さらに好ましくは30秒間以内であって、好ましくは0.1秒間以上、より好ましくは1秒間以上である。
【0150】
(固形分)
再添加工程(造粒後の造粒ゲルを含水ゲルに添加する工程)における前記条件において、本発明ではさらに、造粒ゲルの固形分と含水ゲルの固形分が適切に制御されていることが好ましい。即ち、造粒ゲルや含水ゲルの固形分が少なくなりすぎると(言い換えれば、ゲル100%に対する含水率が高くなりすぎると)、部分的に乾燥が不完全となったり、凝集物が生成し易くなったりする。本発明では、造粒ゲルの固形分及び/又は含水ゲルの固形分は、適切な範囲内であることが望ましい。含水ゲルの固形分は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上であって、好ましくは70質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。造粒ゲルの固形分は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であって、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。好ましい条件として、造粒ゲルと含水ゲルの温度が前記の範囲内である上で、これらのゲルの固形分が前記の範囲内の条件である。また別の好ましい条件として、再添加工程における造粒ゲルの固形分が前記の範囲内である上で、ゲル粉砕工程におけるゲル粉砕エネルギーが前記の範囲内の条件である。
【0151】
また、本発明では、より均一な乾燥を達成することを考慮すると、好ましくは前記何れかの固形分を満足する場合、より好ましくは前記両方の固形分を満足する場合に、さらに造粒ゲルの固形分が含水ゲルの固形分より高いことが好ましい。造粒ゲルの固形分の方が高いと、乾燥に掛かる負荷を下げることができる。具体的には、造粒ゲルの固形分「A(%)」と、含水ゲルの固形分「B(%)」との差「A-B」は、好ましくは6以上、より好ましくは11以上、さらに好ましくは16以上であって、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは40以下である。両者の固形分の差を、前記範囲とすることにより、乾燥に掛かる負荷が小さく、乾燥の不均一がより一層抑制されて、製造上のトラブルや、品質上の問題を回避することができる。
【0152】
本発明において、造粒ゲルと含水ゲルとの比率は、分離された微粉の量と造粒ゲルの固形分の設定に応じて適宜決定すればよい。吸水性樹脂の物性の観点から、含水ゲル100質量部(有姿)に対して、造粒ゲルは、通常、10質量部以上、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上であって、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下となるように添加する。造粒ゲルと含水ゲルとの比率が上記範囲であると、ゲル膨張速度を向上させる。本発明の方法によれば、造粒ゲルの割合が10質量部以上であっても、不均一な乾燥を抑制することができる。尚、造粒ゲルの割合が多くなりすぎると、最終製品である吸水性樹脂の最終的な品質や物性が、リサイクルされた微粉、即ち、造粒ゲルによって大きく影響されることになる。
【0153】
造粒ゲルが添加された含水ゲルは、前記乾燥工程で処理される。混合ゲルの乾燥条件等は、前記乾燥工程の乾燥条件等と同じであるため説明を省略する。また、乾燥工程以降に行われる粉砕工程、分級工程も前記粉砕工程、分級工程と同じであり、必要に応じて前記表面架橋工程や整粒工程等が施されて、製品となる吸水性樹脂が得られる。また、分級工程等で得られる微粉も、前記リサイクル工程で処理されてもよい。
【0154】
[2-10]その他の工程
本発明においては、前述した工程以外に、必要に応じて輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等から選択される少なくとも1種類の工程をさらに含んでいてもよい。
【0155】
[3]吸水性樹脂
前述した各種工程を行うことにより、本発明に係る吸水性樹脂が得られる。即ち、加圧下におけるゲル膨張力及び加圧下におけるゲル膨張速度が何れも大きい吸水性樹脂が得られる。
【0156】
本発明に係る吸水性樹脂の4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力は、26N以上であることが好ましく、27N以上であることがより好ましく、28N以上であることがさらに好ましい。これにより、本発明に係る吸水性樹脂は、例えばパルプ等の繊維材料の比率が小さい吸収体に使用され、その吸収体が薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、特に2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率が従来よりも向上する。後述するように、本発明で規定する「ゲル膨張力」とは、吸水性樹脂が所定の吸収倍率に達した後に、さらに荷重に抗って膨張しようとする力を意味する。つまり、1回目の排尿によって膨潤した薄型の紙オムツ等の吸収性物品が2回目以降の排尿に対して、加圧下でも尿を吸収することができる能力を評価する指標である。前記ゲル膨張力が26N未満である場合、2回目以降の排尿に対する吸水性樹脂の加圧下吸収倍率が不十分となり、当該吸水性樹脂を含む吸収体の加圧下液獲得量が不十分となり、当該吸収体を含む薄型の紙オムツ等の吸収性物品の液獲得機能が不十分となるため、好ましくない。
【0157】
また、本発明に係る吸水性樹脂の4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力の上限は特に限定されるものではないが、40N以下であることが好ましく、35N以下であることがより好ましい。
【0158】
尚、本発明におけるゲル膨張力と類似の吸水性樹脂評価方法として、国際公開公報WO2018/181548等に初期膨潤力なる評価方法が提案されている。これは0.16kPa(1.6g/cm2、0.02psi)の非常に軽い加圧下で、未膨潤の吸水性樹脂が膨張する際の力を測定するものである。また、日本国特許第3210009号等にゲル膨張圧力なる評価方法が提案されている。これは無加圧下で所定の吸収倍率に達した吸水性樹脂が、無加圧下でさらに膨張する際の力を測定するものである。これに対して本発明のゲル膨張力は、後述するように、4.83kPa(49g/cm2、0.7psi)の加圧下で所定の吸収倍率に達した吸水性樹脂が、4.83kPa(49g/cm2、0.7psi)の加圧下でさらに膨張する際の力を測定するため、前記先行文献の評価方法とは別の機能を評価することになる。
【0159】
すなわち、本発明のゲル膨張力は、当該吸収体又は当該吸水性樹脂を含む吸収性物品が使用される状況下として、排尿時の状況が加圧下で、かつ複数回の排尿を吸収することを想定した評価方法であり、前記先行文献で提案されている非常に軽い加圧下又は無加圧下での評価方法よりも、より吸収性物品の実使用を想定した厳しい環境下での評価方法であるといえる。
【0160】
加えて、本発明は2回目以降の排尿に対する優れた加圧下液獲得量を示す吸収体、及び2回目以降の排尿に対する優れた加圧下吸収倍率を有する吸水性樹脂を提供することを目的とする。加圧下における2回目以降の尿吸収を予測する上では、前記先行文献で提案されている評価方法では意味を成さず、本発明における加圧下で一旦膨潤した吸収性樹脂がさらに膨張する際の力を評価する方法が必要である。
【0161】
前記4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力は、吸水性樹脂の吸収倍率(CRC、AAP)、粒子形状(不定形であり、且つ、粒子中にキャビティ及びボイドが存在する形状)、粒度等を調整することによって制御できる。これらを調整することによって、4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力を26N以上に制御することができる。
【0162】
前記ゲル膨張力に加えて、本発明に係る吸水性樹脂の4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張速度は、8.5以上であることが好ましく、9.0以上であることがより好ましく、9.5以上であることがさらに好ましい。これにより、本発明に係る吸水性樹脂は、パルプ等の繊維材料の比率の小さい吸収体及び当該吸収体を含む薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率がより一層向上する。
【0163】
また、本発明に係る吸水性樹脂の4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張速度の上限は特に限定されるものではないが、15.0以下であることが好ましく、14.0以下であることがより好ましい。
【0164】
尚、従来の吸水性樹脂の評価方法として、無加圧下又は加圧下で吸収速度を評価する方法が提案されているが、いずれも未膨潤の吸水性樹脂が生理食塩水等の被吸収液と接触してからの吸収速度を評価する。一方で、本発明のゲル膨張速度なる評価方法は、加圧下で所定の吸収倍率に達した吸水性樹脂が、加圧下でさらに膨張する際の速度を測定する。このことから、本発明のゲル膨張速度は前記ゲル膨張力と同様に、加圧下でかつ複数回の排尿を吸収することが必要な吸収性物品の実使用を想定した評価方法であるといえる。
【0165】
本発明に係る吸水性樹脂の総体積に占める、Cavity体積率が15体積%以上の粒子の体積率は、40体積%以上であることが好ましく、42体積%以上であることがより好ましく、44体積%以上であることがさらに好ましい。Cavity体積率が大きい吸水性樹脂は、比表面積が大きくなる傾向にある。ただし、Cavity体積率は、比表面積を測定するだけでは十分に評価できない、粒子表面の凹部分の体積を評価する。Cavity体積率が大きくなると、吸水性樹脂が膨潤したときのゲル粒子同士の隙間も大きくなり、ゲル粒子が有するCavity体積部分及びゲル粒子同士の隙間に保持される水性液体の量が増加する。その結果として、前記ゲル膨張力が制御される。これにより、本発明に係る吸水性樹脂は、パルプ等の繊維材料の比率の小さい吸収体及び当該吸収体を含む薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率がより一層向上する。
【0166】
ここで、本発明においてCavity(キャビティ)とは、
図1に示すように、吸水性樹脂1に形成されている空洞のうち、吸水性樹脂1の外部と繋がっている(吸水性樹脂1の表面に露出している)空洞を指す。当該空洞には、吸水性樹脂1の表面に形成されている窪みや溝等も含まれる。具体的には、Cavityとは、後述するようにマイクロフォーカスX線CTシステム(inspeXio SMX-100CT/株式会社島津製作所製)を用いて下記条件で3次元画像データを取得し、高速3次元解析ソフト(TRI/3D-VOL-FCS64/ラトックシステムエンジニアリング社製)を用いて当該3次元画像データを下記条件で解析したときに、吸水性樹脂1の表面に存在を確認することができる穴、貫通孔、窪み、溝等を指す。
【0167】
本発明に係る吸水性樹脂の総体積に占める、Void体積率が1体積%以下の粒子の体積率は、65体積%以上であることが好ましく、67体積%以上であることがより好ましく、70体積%以上であることがさらに好ましく、72体積%以上であることがさらに好ましく、73体積%以上であることがさらに好ましい。この結果、前記ゲル膨張力が制御される。これにより、本発明に係る吸水性樹脂は、例えば薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率がより一層向上する。尚、Void体積率が大きい吸水性樹脂は、膨潤すると圧力によって潰れ易くなるので、パルプ等の繊維材料の比率の小さい吸収体及び当該吸収体を含む薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率が低下する。
【0168】
ここで、本発明において、Void(ボイド)とは、
図1に示すように、吸水性樹脂1に形成されている空洞のうち、吸水性樹脂1の外部と繋がっていない(吸水性樹脂1の内部に存在する)独立気泡等の空洞を指す。具体的には、Voidとは、後述するようにマイクロフォーカスX線CTシステム(inspeXio SMX-100CT/株式会社島津製作所製)を用いて下記条件で3次元画像データを取得し、高速3次元解析ソフト(TRI/3D-VOL-FCS64/ラトックシステムエンジニアリング社製)を用いて当該3次元画像データを下記条件で解析したときに、吸水性樹脂1の内部に存在を確認することができる独立気泡等の空洞を指す。
【0169】
吸水性樹脂の総体積に占める、Cavity体積率が15体積%以上、かつ、Void体積率が1体積%以下の粒子の体積率は20体積%以上であることが好ましく、25体積%以上であることがさらに好ましい。この結果、前記ゲル膨張力が制御される。これにより、本発明において用いられる吸水性樹脂は、パルプ等の繊維材料の比率の小さい吸収体及び当該吸収体を含む薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率がより一層向上する。
【0170】
本発明に係る吸水性樹脂の無加圧下吸収倍率(CRC)は、25g/g以上であることが好ましく、27g/g以上であることがより好ましく、28g/g以上であることがさらに好ましい。この結果、前記ゲル膨張力が制御される。これにより、本発明に係る吸水性樹脂は、パルプ等の繊維材料の比率の小さい吸収体及び当該吸収体を含む薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率がより一層向上する。
【0171】
尚、当該無加圧下吸収倍率(CRC)の上限は、特に限定されないものの、加圧下吸収倍率(AAP)や生理食塩水流れ誘導性(SFC)を所望の範囲とするには、40g/g以下であることが好ましく、38g/g以下であることがより好ましい。
【0172】
本発明に係る吸水性樹脂の4.83kPaの加圧下における加圧下吸収倍率(AAP)は、20g/g以上であることが好ましく、23g/g以上であることがより好ましく、24g/g以上であることがさらに好ましく、24.5g/g以上であることが特に好ましく、25g/g以上であることが最も好ましい。この結果、前記ゲル膨張力が制御される。これにより、本発明に係る吸水性樹脂は、パルプ等の繊維材料の比率の小さい吸収体や当該吸収体を含む薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、当該紙オムツ等の吸収性物品が吸収するべき全排尿量に対する加圧下吸収倍率がより一層向上する。尚、当該加圧下吸収倍率(AAP)の上限は、特に限定されないものの、前記無加圧下吸収倍率(CRC)を超えることはなく、35g/g以下が好ましい。
【0173】
前記ゲル膨張力に加えて、本発明に係る吸水性樹脂の液拡散性能を評価する生理食塩水流れ誘導性(SFC)は、15(×10-7cm3・sec/g)以上であることが好ましく、18(×10-7cm3・sec/g)以上であることがより好ましく、20(×10-7cm3・sec/g)以上であることがさらに好ましく、また、55(×10-7cm3・sec/g)以下であることが好ましく、53(×10-7cm3・sec/g)以下であることがより好ましい。SFCが15(×10-7cm3・sec/g)以上、55(×10-7cm3・sec/g)以下である場合、従来の吸収体ではパルプが担っていた液拡散能力を本発明に係る吸水性樹脂が担うことができ、パルプ等の繊維材料の比率の小さい吸収体及び当該吸収体を含む薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合でも、ゲルブロッキングによる液拡散能力の低下を起こさず、吸収体や紙オムツ等の吸収性物品は良好な性能を示す。
【0174】
尚、当該生理食塩水流れ誘導性(SFC)の上限は、特に限定されない。但し、当該生理食塩水流れ誘導性(SFC)は、前記無加圧下吸収倍率(CRC)とトレードオフの関係にあるため、生理食塩水流れ誘導性(SFC)を高くし過ぎると、所望する範囲の無加圧下吸収倍率(CRC)が得られなくなる。
【0175】
本発明に係る吸水性樹脂の質量平均粒子径(D50)は、250μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましく、550μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。また、本発明に係る吸水性樹脂の総質量に占める、粒子径が150μm未満の吸水性樹脂の質量は、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。この結果、前記ゲル膨張力が制御される。また、前述したCRC、AAP、SFCのバランス(つり合い)を保つ機能を有する。これにより、パルプ等の繊維材料の比率の小さい吸収体及び当該吸収体を含む薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率がより一層向上する。
【0176】
本発明に係る吸水性樹脂の総質量に占める、粒子径が710μm超の吸水性樹脂の質量は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。これにより、本発明に係る吸水性樹脂が、特にパルプ等の繊維材料の比率の小さい吸収体及び当該吸収体を含む、薄型の紙オムツ等の衛生用品に使用された場合において、吸水性樹脂のゴツゴツした感覚が低減し、装着感が向上するので好ましい。
【0177】
前記ゲル膨張力を制御するために、吸水性樹脂の吸収倍率(CRC、AAP)、粒子形状(不定形であり、且つ、粒子中にキャビティ及びボイドが存在する形状)及び粒度を調整すればよい。好ましくは、吸水性樹脂のCRC、AAP、キャビティ体積率、ボイド体積率、粒度を調整すればよく、より好ましくは、吸水性樹脂のCRC、AAP、粒子中のキャビティ体積率、ボイド体積率、粒度からなる群から選択される少なくとも1つ以上(好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、特に好ましくは4つ以上、最も好ましくは全て)を前記の範囲に調整する。
【0178】
前記ゲル膨張力に加えて、本発明に係る吸水性樹脂のゲル厚み5mm到達時間は、150秒以下であることが好ましく、140秒以下であることがより好ましい。これにより、本発明に係る吸水性樹脂は、パルプ等の繊維材料の比率の小さい吸収体及び当該吸収体を含む薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率がより一層向上する。
【0179】
そして、少なくとも前記ゲル膨張力が前記範囲である本発明に係る吸水性樹脂は、2回目の排尿に対する加圧下吸収倍率が14cm3/g以上となり、好ましくは14.2cm3/g以上となり、より好ましくは14.4cm3/g以上となり、さらに好ましくは14.6cm3/g以上となる。
【0180】
尚、本発明に係る吸水性樹脂の初期色調としては、WI値が45以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、52以上であることがさらに好ましい。これにより、本発明に係る吸水性樹脂は、例えばパルプ等の繊維材料比率が小さい吸収体に使用され、その吸収体が薄型の紙オムツ等の吸収性物品の上層部に使用された場合に、当該吸収性物品が清浄感のある白色状態を保つことができるため、好ましい。
【0181】
[4]吸水性樹脂の用途(吸収体)
本発明に係る吸水性樹脂の用途としては、特に限定されないが、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体に使用されることが好ましく、薄型の紙オムツ等の吸収性物品に用いられる吸水性樹脂の質量比率が大きい吸収体に使用されることがより好ましい。
【0182】
吸収体の構成としては、吸水性樹脂の他に、木材粉砕パルプ等の繊維材料(親水性繊維)を含んでいるのが一般的である。吸収体が吸水性樹脂と親水性繊維とを含む場合には、吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂と親水性繊維とを均一に混合したものを含む構成が挙げられる。具体的には、単に吸水性樹脂と親水性繊維とを均一に混合して形成した構成体;吸水性樹脂と親水性繊維とを均一に混合した層に、層状の親水性繊維を積層した構成体;吸水性樹脂と親水性繊維とを均一に混合した層と、層状の親水性繊維との間に、吸水性樹脂を配置した構成体等を例示することができる。またこの他にも、層状の親水性繊維の間に吸水性樹脂を配置した構成体等でもよい。尚、吸収体の構成は、前記例示の構成体に限定されるものではない。
【0183】
前記の親水性繊維の例としては、前述の木材粉砕パルプ(木材から得られるメカニカルパルプ)の他に、例えば、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維;レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維等の親水性繊維が挙げられる。前記例示の親水性繊維のうち、セルロース繊維が好ましい。また、親水性繊維は、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維を含有していてもよい。尚、親水性繊維は、前記例示の繊維に限定されるものではない。
【0184】
また、吸収体質量における吸水性樹脂の質量比率は、75質量%~100質量%であることが好ましく、80質量%~100質量%であることがより好ましく、85質量%~100質量%であることがさらに好ましく、90質量%~100質量%であることが特に好ましい。吸収体質量における吸水性樹脂の質量比率を前記範囲内とすることで、吸収性物品に対し近年の傾向である薄型化を図ることができるため、好ましい。また、吸収体質量における吸水性樹脂の質量比率を前記範囲内とすることで、前記吸収体を吸収性物品の上層部に用いた場合、当該吸収性物品が清浄感のある白色状態を保つことができるため、好ましい。
【0185】
また、吸収体の使用前及び使用中における吸収体の強度や保形性を高めるために接着性バインダーを用いてもよい。前記接着性バインダーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、1-ブテン-エチレン共重合体等のポリオレフィン繊維等の熱融着繊維、及び接着性を有するエマルション等が例示できる。これら接着性バインダーは、単独で用いてもよく、また、2種類以上を混合して用いてもよい。吸水性樹脂と接着性バインダーとの質量比は、50/50~99/1の範囲内が好ましく、70/30~95/5の範囲内がより好ましく、80/20~95/5の範囲内がさらに好ましい。
【0186】
また、その他の吸収体の構成としては、例えば、前述した吸水性樹脂及び親水性繊維を含む層(吸水性樹脂と親水性繊維とを均一に混合した層;吸水性樹脂と親水性繊維とを均一に混合した層に、層状の親水性繊維を積層した構成体;吸水性樹脂と親水性繊維とを均一に混合した層と、層状の親水性繊維との間に、吸水性樹脂を配置した構成体;層状の親水性繊維の間に吸水性樹脂を配置した構成体等を含む)を、上方及び/又は下方から不織布によって挟持した構成であってもよい。当該不織布としては、当該技術分野で公知の不織布であれば特に限定されず、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン繊維;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維;ナイロン等のポリアミド繊維;レーヨン繊維;その他の合成繊維製からなる不織布、及び、綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維等が混合されて製造された不織布等が挙げられる。前記不織布の目付量は、5~300g/m2であってよい。また、不織布の厚みとしては、20~800μmであってよい。後述する前記不織布の液拡散面積は、1~100m2であってよい。
【0187】
また、吸収体の形状としては、特に限定されないが、シート状、繊維状、筒状等に成形されることが好ましく、シート状に成形されることがより好ましい。
【0188】
そして、本発明に係る吸収体は、必須として4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力が26N以上であり、好ましくはさらに2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率が14cm3/g以上であり、より好ましくはさらに上記[3]吸水性樹脂で記載した各物性を満たす吸水性樹脂を含有する。これにより本発明に係る吸収体は2回目以降の排尿に対する加圧下液獲得量が向上する。2回目以降の排尿に対する加圧下液獲得量は、34.5g以上であることが好ましく、35.0gであることがより好ましく、35.5g以上であることがさらに好ましい。また、1回目及び2回目の排尿に対する加圧下総液獲得量は、72.0g以上であることが好ましく、72.5g以上であることがより好ましく、73.0g以上であることがさらに好ましい。これにより、本発明に係る吸収体は、例えば薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、特に当該吸収体の2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率が向上し、当該吸収性物品の2回目以降の排尿に対する液獲得機能が向上する。
【0189】
尚、本発明に係る吸水性樹脂の用途としては、前記衛生物品等の吸収性物品中に含まれる吸収体の他に、ペット尿吸収剤、携帯トイレの尿ゲル化剤、青果物等の鮮度保持剤、肉類及び魚介類のドリップ吸収剤、保冷剤、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、農園芸用(植物や土壌等)の土壌保水剤、結露防止剤、工業用の止水剤やパッキング剤、並びに人工雪等の、様々な用途に好適に利用することができる。
【0190】
[5]吸収体の用途(吸収性物品)
本発明に係る吸収体の用途としては、特に限定されないが、紙オムツ等の吸収性物品に使用されることが好ましく、薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用されることがより好ましい。
【0191】
吸収性物品は、例えば紙オムツである場合には、装着したときに人の肌に触れる側に位置する液透過性のトップシートと、装着したときに外側に位置する液不透過性のバックシートとの間に、本発明の吸収体を含む吸収層を挟持することにより、当該紙オムツが作製される。前記透液性のトップシート(以下、液透過性シートと称する)は、水性液体を透過する性質を備えた材料からなっている。液透過性シートの材料としては、例えば、不織布;織布;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等からなる多孔質の合成樹脂フィルム等が挙げられる。前記液不透過性のバックシート(以下、液不透過性シートと称する)は、水性液体を透過しない性質を備えた材料からなっている。液不透過性シートの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、ポリ塩化ビニル等からなる合成樹脂フィルム;これら合成樹脂と不織布との複合材からなるフィルム;前記合成樹脂と織布との複合材からなるフィルム等が挙げられる。尚、液不透過性シートは、蒸気を透過する性質を備えていてもよい。また、紙オムツ等の吸収性物品は、液透過性シートと前記吸収層との間に、液拡散を助ける不織布、セルロース、架橋セルロース等よりなる拡散層を配置することもできる。また、紙オムツ等の吸収性物品には、装着後の紙オムツを固定するための粘着テープ等の、当業者にとって公知の部材がさらに設けられている。
【0192】
前記吸収層は、吸収体を含む構成であり、それ以外は、特に限定されるものではない。例えば、吸収層に、消臭剤、抗菌剤、香料、各種の無機粉末、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類等を添加することで、吸収体又は吸収性物品に種々の機能を付与させてもよい。または、吸収層に前記の添加剤が含有されない構成(吸収体のみが含有される構成)であってもよい。
【0193】
また、吸収層の製造方法は、特に限定されるものではない。さらに、液透過性シートと液不透過性シートとで吸収層を挟持する方法、即ち、吸収性物品の製造方法は、特に限定されるものではない。
【0194】
そして、本発明に係る吸収性物品は、2回目以降の排尿に対する加圧下液獲得が向上した吸収体を有するため、2回目以降の排尿に対する優れた液獲得機能を示す。
【0195】
尚、本発明に係る吸収体の用途としては、前記吸収性物品の他に、ペット尿吸収剤、携帯トイレの尿ゲル化剤、青果物等の鮮度保持剤、肉類及び魚介類のドリップ吸収剤、保冷剤、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、農園芸用(植物や土壌等)の土壌保水剤、結露防止剤、工業用の止水剤やパッキング剤、並びに人工雪等の、様々な用途に好適に利用することができる。
【実施例】
【0196】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するものの、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0197】
〔実施例1〕
(単量体水溶液の調製工程)
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸422.0質量部、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液173.9質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量:523)2.5質量部、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液2.6質量部、及び脱イオン水403.3質量部を投入し、混合することで単量体水溶液を調製した。当該単量体水溶液の液温は、前記混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、40℃を超えていた。
【0198】
(重合工程)
次に、前記単量体水溶液を攪拌しながら冷却し、液温が40℃となった時点で、40℃に調温した48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液178.7質量部を、大気開放状態で約20秒間掛けて前記単量体水溶液に投入し、混合した(二段目の中和を開始)。これにより、単量体水溶液(1)を調製した。このとき、前記単量体水溶液(1)の液温は、前記混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、約78℃まで上昇していた。また、前記単量体水溶液に前記水酸化ナトリウム水溶液を混合し始めた直後は、析出物が観察されたものの、次第に溶解して、調製された単量体水溶液(1)は透明な均一溶液となった。
【0199】
そして、攪拌状態の前記単量体水溶液(1)に、木下式ガラスボールフィルター(フィルター粒子No.4/木下理化工業株式会社製)を用いて、窒素ガスを圧力0.1MPa、流量0.1L/分の条件下で5秒間導入した。続いて、単量体水溶液(1)に、4.5質量%過硫酸ナトリウム水溶液18.4質量部を加えた。その後、直ちに、ステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)コーティング)に、当該単量体水溶液(1)を大気開放状態で流し込んだ。尚、二段目の中和を開始した時点からバット型容器に前記単量体水溶液(1)を流し込むまでの時間は65秒間とした。また、当該バット型容器は、ホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社製)を用いて、表面温度が50℃となるまで加熱した。
【0200】
前記単量体水溶液(1)を前記バット型容器に流し込んだ後、1分以内に重合反応が開始した。当該重合反応においては、水蒸気を発生しながら四方八方に膨張発泡しながら単量体水溶液(1)の重合が進行した。その後、得られた重合体は、バット型容器の底面よりも若干大きいサイズにまで収縮した。重合反応の開始から2分間経過後に、含水ゲル(1)をバット型容器から取り出した。尚、これら一連の操作は、大気開放状態で行った。
【0201】
(ゲル粉砕工程)
次に、前記重合反応で得られた含水ゲル(1)を、1個当たりの質量が60g程度となるように切断した後、ミートチョッパー(HL-G22SN、プレート孔径6.0mm/レマコム株式会社製)を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル(1)を得た。前記含水ゲル(1)の投入量は凡そ360g/分であり、当該含水ゲル(1)の投入と並行して、90℃に調温した脱イオン水を25g/分でミートチョッパーに添加しながらゲル粉砕を行った。
【0202】
前記粒子状含水ゲル(1)のD50(質量平均粒子径)は320μmであり、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は0.91であった。
【0203】
(乾燥工程)
次に、前記粒子状含水ゲル(1)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、190℃の熱風を30分間通気させることで粒子状含水ゲル(1)を乾燥させ、乾燥重合体(1)を得た。当該乾燥重合体(1)中に未乾燥物はなかった。
【0204】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(1)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き710μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き710μmの篩を通過し、目開き15
0μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(1)を得た。
【0205】
(表面架橋工程)
次に、前記表面架橋前の吸水性樹脂(1)100質量部に対して、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.7質量部、脱イオン水2.9質量部、及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.001質量部からなる表面架橋剤水溶液を噴霧添加して均一に混合した。その後、得られた混合物を200℃で40分間、加熱処理することで表面架橋を行った。次いで、当該混合物を、目開き710μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き710μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した表面架橋後の吸水性樹脂(1)を得た。表面架橋後の吸水性樹脂(1)の諸物性を表2に示す。尚、当該吸水性樹脂(1)の初期色調として、WI値は52.4であった。
【0206】
〔実施例2〕
実施例1において使用する表面架橋剤水溶液を、1,6-ヘキサンジオール0.2質量部、トリエチレングリコール0.6質量部、脱イオン水2.6質量部、及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.001質量部からなる表面架橋剤水溶液に変更した以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って、表面架橋後の吸水性樹脂(2)を得た。表面架橋後の吸水性樹脂(2)の諸物性を表2に示す。
【0207】
尚、当該吸水性樹脂(2)の初期色調として、WI値は53.0であった。
【0208】
尚、ゲル粉砕工程を行って得た粒子状含水ゲル(2)のD50(質量平均粒子径)は330μmであり、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は0.92であった。
【0209】
〔実施例3〕
実施例1においてゲル粉砕工程を行うときに添加する脱イオン水の添加量を、50g/分に変更した以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って、粒子状含水ゲル(3)を得た。
【0210】
前記粒子状含水ゲル(3)のD50(質量平均粒子径)は400μmであり、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は0.95であった。
【0211】
(乾燥工程)
次に、前記粒子状含水ゲル(3)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、190℃の熱風を30分間通気させることで粒子状含水ゲル(3)を乾燥させ、乾燥重合体(3)を得た。当該乾燥重合体(3)中に未乾燥物はなかった。
【0212】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(3)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き710μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き710μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(3)と、目開き150μmの篩を通過した微粉(3-1)とを得た。
【0213】
(表面架橋工程)
次に、前記表面架橋前の吸水性樹脂(3)100質量部に対して、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.7質量部、脱イオン水2.9質量部、及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.001質量部からなる表面架橋剤水溶液を噴霧添加して均一に混合した。その後、得られた混合物を200℃で40分間、加熱処理することで表面架橋を行った。次いで、当該混合物を、目開き710μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き710μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した表面架橋後の吸水性樹脂(3)と、目開き150μmの篩を通過した微粉(3-2)とを得た。
【0214】
(造粒工程)
次に、前記微粉(3-1)と微粉(3-2)とを17:3(w:w)の質量割合で混合し、微粉(3-3)とした。当該微粉(3-3)のD50(質量平均粒子径)は85μmであった。次いで、前記微粉(3-3)60質量部を70℃に加熱した後、フードプロセッサー(MK-K48P/Panasonic 製)に投入し、80℃に調温した脱イオン水49質量部を攪拌しながら加え、30秒間混合することで造粒ゲル(3-3)を得た。
【0215】
(造粒ゲル添加工程)
次に、前記造粒ゲル(3-3)80質量部を、造粒開始から1分間経過後に、前述の操作を再度行って作製した粒子状含水ゲル(3)320質量部に加えた。その後直ちに、80℃に加熱しておいたモルタルミキサー(西日本試験機社製)で10秒間混合し、混合ゲル(3-4)を得た。尚、前記モルタルミキサーで混合する直前の造粒ゲル(3-3)及び粒子状含水ゲル(3)の温度は、それぞれ55℃,50℃であった。また、前記モルタルミキサーにおける造粒ゲル(3-3)及び粒子状含水ゲル(3)の混合性は、良好であった。
【0216】
(乾燥工程)
次に、前記混合ゲル(3-4)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、190℃の熱風を30分間通気させることで混合ゲル(3-4)を乾燥させ、乾燥重合体(3-4)を得た。当該乾燥重合体(3-4)中に未乾燥物はなかった。
【0217】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(3-4)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き710μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き710μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(3-4)を得た。
【0218】
(表面架橋工程)
次に、前記表面架橋前の吸水性樹脂(3-4)100質量部に対して、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.7質量部、脱イオン水2.9質量部、及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.001質量部からなる表面架橋剤水溶液を噴霧添加して均一に混合した。その後、得られた混合物を200℃で40分間、加熱処理することで表面架橋を行った。次いで、当該混合物を、目開き710μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き710μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した表面架橋後の吸水性樹脂(3-4)を得た。表面架橋後の吸水性樹脂(3-4)の諸物性を表2に示す。
【0219】
尚、当該吸水性樹脂(3-4)の初期色調として、WI値は54.7であった。
【0220】
〔実施例4〕
実施例3において使用する表面架橋剤水溶液を、1,6-ヘキサンジオール0.2質量
部、トリエチレングリコール0.6質量部、脱イオン水2.6質量部、及びポリオキシ
エチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.001質量部からなる表面架橋剤水溶液に変更した以外は、実施例3の操作と同様の操作を行って、表面架橋後の吸水性樹脂(4-4)を得た。表面架橋後の吸水性樹脂(4-4)の諸物性を表2に示す。
【0221】
尚、当該吸水性樹脂(4-4)の初期色調として、WI値は52.6であった。
【0222】
尚、ゲル粉砕工程を行って得た粒子状含水ゲル(4)のD50(質量平均粒子径)は410μmであり、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は0.94であった。
【0223】
〔比較例1〕
(単量体水溶液の調製工程)
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸421.7質量部、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液140.4質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量:523)2.4質量部、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液11.3質量部、及び脱イオン水390.3質量部を投入し、混合することで単量体水溶液を調製した。当該単量体水溶液の液温は、前記混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、40℃を超えていた。
【0224】
(重合工程)
次に、前記単量体水溶液を攪拌しながら冷却し、液温が38.3℃となった時点で、1.0質量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液4.4質量部を加えた。さらに、液温が38.0℃となった時点で、40℃に調温した48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液211.9質量部を、大気開放状態で約20秒間掛けて前記単量体水溶液に投入し、混合した(二段目の中和を開始)。これにより、単量体水溶液(1’)を調製した。このとき、前記単量体水溶液(1’)の液温は、前記混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、約81℃まで上昇していた。また、前記単量体水溶液に前記水酸化ナトリウム水溶液を混合し始めた直後は、析出物が観察されたものの、次第に溶解して、調製された単量体水溶液(1’)は透明な均一溶液となった。
【0225】
そして、攪拌状態の前記単量体水溶液(1’)に、木下式ガラスボールフィルター(フィルター粒子No.4/木下理化工業株式会社製)を用いて、窒素ガスを圧力0.1MPa、流量0.1L/分の条件下で10秒間導入した。続いて、単量体水溶液(1’)に、4.0質量%過硫酸ナトリウム水溶液17.6質量部を加えた。その後、直ちに、ステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)コーティング)に、当該単量体水溶液(1’)を大気開放状態で流し込んだ。尚、二段目の中和を開始した時点からバット型容器に前記単量体水溶液(1’)を流し込むまでの時間は55秒間とした。また、当該バット型容器は、ホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社製)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱した。
【0226】
前記単量体水溶液(1’)を前記バット型容器に流し込んだ後、59秒後に重合反応が開始した。当該重合反応においては、水蒸気を発生しながら四方八方に膨張発泡しながら単量体水溶液(1’)の重合が進行した。その後、得られた重合体は、バット型容器の底面よりも若干大きいサイズにまで収縮した。重合反応の開始から3分間経過後に、含水ゲル(1’)をバット型容器から取り出した。尚、これら一連の操作は、大気開放状態で行った。
【0227】
(ゲル粉砕工程)
次に、前記重合反応で得られた含水ゲル(1’)を、1個当たりの質量が60g程度となるように切断した後、ミートチョッパー(HL-G22SN、プレート孔径6.0mm/レマコム株式会社製)を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル(1’)を得た。前記含水ゲル(1’)の投入量は凡そ230g/分であり、当該含水ゲル(1’)の投入と並行して、90℃に調温した脱イオン水を50g/分でミートチョッパーに添加しながらゲル粉砕を行った。
【0228】
前記粒子状含水ゲル(1’)のD50(質量平均粒子径)は350μmであり、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は0.93であった。
【0229】
(乾燥工程)
次に、前記粒子状含水ゲル(1’)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、180℃の熱風を30分間通気させることで粒子状含水ゲル(1’)を乾燥させ、乾燥重合体(1’)を得た。当該乾燥重合体(1’)中に未乾燥物はなかった。
【0230】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(1’)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き710μm及び45μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き710μmの篩を通過し、目開き45μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(1’)を得た。
【0231】
(表面架橋工程)
次に、前記表面架橋前の吸水性樹脂(1’)100質量部に対して、エチレンカーボネート0.3質量部、プロピレングリコール0.6質量部、脱イオン水3.0質量部、及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.001質量部からなる表面架橋剤水溶液を噴霧添加して均一に混合した。その後、得られた混合物を208℃で40分間、加熱処理することで表面架橋を行った。次いで、当該混合物を、目開き710μm及び45μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き710μmの篩を通過し、目開き45μmの篩上に残留した表面架橋後の吸水性樹脂(1’)を得た。表面架橋後の吸水性樹脂(1’)の諸物性を表2に示す。
【0232】
〔比較例2〕
(単量体水溶液の調製工程)
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸404.7質量部、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液344.6質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量:523)2.2質量部、及び脱イオン水405.6質量部を投入し、混合することで単量体水溶液(2’)を調製した。当該単量体水溶液(2’)の液温は、前記混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、90℃を超えていた。
【0233】
(重合工程)
次に、前記単量体水溶液(2’)の液温を90℃に保ち、攪拌しながら、3.2質量%過硫酸ナトリウム水溶液22.2質量部を加えた。その後、直ちに、ステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)コーティング)に、当該単量体水溶液(2’)を大気開放状態で流し込んだ。尚、当該バット型容器は、ホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社製)を用いて、表面温度が50℃となるまで加熱した。
【0234】
前記単量体水溶液(2’)を前記バット型容器に流し込んだ後、直ちに重合反応が開始した。当該重合反応においては、水蒸気を発生しながら四方八方に膨張発泡しながら単量体水溶液(2’)の重合が進行した。その後、得られた重合体は、バット型容器の底面よりも若干大きいサイズにまで収縮した。重合反応の開始から3分間経過後に、含水ゲル(2’)をバット型容器から取り出した。尚、これら一連の操作は、大気開放状態で行った。
【0235】
(ゲル粉砕工程)
次に、前記重合反応で得られた含水ゲル(2’)を、1個当たりの質量が60g程度となるように切断した後、ミートチョッパー(HL-G22SN、プレート孔径8.0mm/レマコム株式会社製)を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル(2’)を得た。前記含水ゲル(2’)の投入量は凡そ360g/分であり、当該含水ゲル(2’)の投入と並行して、80℃に調温した脱イオン水を50g/分でミートチョッパーに添加しながらゲル粉砕を行った。
【0236】
その後、直ちに、得られた粒子状含水ゲル(2’)を、ミートチョッパー(HL-G22SN、プレート孔径8.0mm/レマコム株式会社製)を用いて再度、粉砕し、粒子状含水ゲル(2’)を得た。粒子状含水ゲル(2’)を再度、粉砕するときに、脱イオン水はミートチョッパーに添加しなかった。
【0237】
前記粒子状含水ゲル(2’)のD50(質量平均粒子径)は400μmであり、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は0.97であった。
【0238】
(乾燥工程)
次に、前記粒子状含水ゲル(2’)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、190℃の熱風を20分間通気させることで粒子状含水ゲル(2’)を乾燥させ、乾燥重合体(2’)を得た。当該乾燥重合体(2’)中に未乾燥物はなかった。
【0239】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(2’)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。目開き850μmの篩上に残留した凝集体状の乾燥重合体は、その全量が目開き850μmの篩を通過するまで、粉砕及び分級を繰り返した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(2’)と、目開き150μmの篩を通過した微粉(2’-1)とを得た。
【0240】
(表面架橋工程)
次に、前記表面架橋前の吸水性樹脂(2’)100質量部に対して、エチレンカーボネート0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、及び脱イオン水2.7質量部からなる表面架橋剤水溶液を噴霧添加して均一に混合した。その後、得られた混合物を200℃で40分間、加熱処理することで表面架橋を行った。次いで、当該混合物を、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。目開き850μmの篩上に残留した凝集体状の混合物は、その全量が目開き850μmの篩を通過するまで、凝集を解砕し、分級を繰り返した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した表面架橋後の吸水性樹脂(2’)と、目開き150μmの篩を通過した微粉(2’-2)とを得た。
【0241】
(造粒工程)
次に、前記微粉(2’-1)と微粉(2’-2)とを17:3(w:w)の質量割合で混合し、微粉(2’-3)とした。当該微粉(2’-3)のD50(質量平均粒子径)は91μmであった。次いで、前記微粉(2’-3)60質量部を67℃に加熱した後、オーブンで80℃に加熱したフードプロセッサー(MK-K48P/Panasonic 製)に投入し、82℃に調温した脱イオン水40質量部を攪拌しながら5秒間で加え、その後、さらに15秒間混合することで造粒ゲル(2’-3)を得た。
【0242】
(造粒ゲル添加工程)
次に、前記造粒ゲル(2’-3)80質量部を、造粒開始から2分間経過後に、前述の操作を再度行って作製した粒子状含水ゲル(2’)360質量部に加えた。その後直ちに、80℃に加熱しておいたモルタルミキサー(西日本試験機社製)で10秒間混合し、混合ゲル(2’-4)を得た。尚、前記モルタルミキサーで混合する直前の造粒ゲル(2’-3)及び粒子状含水ゲル(2’)の温度は、それぞれ70℃,55℃であった。また、前記モルタルミキサーにおける造粒ゲル(2’-3)及び粒子状含水ゲル(2’)の混合性は、良好であった。
【0243】
(乾燥工程)
次に、前記混合ゲル(2’-4)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、190℃の熱風を20分間通気させることで混合ゲル(2’-4)を乾燥させ、乾燥重合体(2’-4)を得た。当該乾燥重合体(2’-4)中に未乾燥物はなかった。
【0244】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(2’-4)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。目開き850μmの篩上に残留した凝集体状の乾燥重合体は、その全量が目開き850μmの篩を通過するまで、粉砕及び分級を繰り返した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(2’-4)を得た。
【0245】
(表面架橋工程)
次に、前記表面架橋前の吸水性樹脂(2’-4)100質量部に対して、エチレンカーボネート0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、及び脱イオン水2.7質量部からなる表面架橋剤水溶液を噴霧添加して均一に混合した。その後、得られた混合物を200℃で40分間、加熱処理することで表面架橋を行った。
【0246】
続いて、前記混合物を攪拌及び冷却しながら、27質量%硫酸アルミニウム水溶液1質量部、及び60質量%乳酸ナトリウム水溶液0.2質量部からなる添加剤水溶液を添加した。その後、得られた混合物を、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。目開き850μmの篩上に残留した凝集体状の混合物は、その全量が目開き850μmの篩を通過するまで、凝集を解砕し、分級を繰り返した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した表面架橋後の吸水性樹脂(2’-4)を得た。表面架橋後の吸水性樹脂(2’-4)の諸物性を表2に示す。
【0247】
〔比較例3〕
(単量体水溶液の調製工程)
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸400.0質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量:523)3.2質量部、アリルメタクリレート0.08質量部、及び0.04質量部のIRGACURE(登録商標)819を投入し、混合した。その後、さらに24.0質量%水酸化ナトリウム水溶液640.0質量部を容器に徐々に投入し、混合することで液温が40℃の単量体水溶液(3’)を調製した。
【0248】
(重合工程)
次に、液温が40℃の前記単量体水溶液(3’)を攪拌しながら、4質量%過硫酸ナトリウム水溶液24.0質量部を加えた。その後、直ちに、ステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)コーティング)に、当該単量体水溶液(3’)を大気開放状態で流し込んだ。また、前記バット型容器に単量体水溶液(3’)を流し込むと同時に、当該単量体水溶液(3’)に紫外線を照射した。尚、当該バット型容器は、ホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社製)を用いて、表面温度が50℃となるまで加熱した。
【0249】
前記単量体水溶液(3’)を前記バット型容器に流し込んだ後、間もなく重合反応が開始した。当該重合反応の開始から1分間経過後に紫外線の照射を停止し、そこから2分間経過後に、含水ゲル(3’)をバット型容器から取り出した。尚、これら一連の操作は、大気開放状態で行った。
【0250】
(ゲル粉砕工程)
次に、前記重合反応で得られた含水ゲル(3’)を、1個当たりの質量が60g程度となるように切断した後、ミートチョッパー(HL-G22SN、プレート孔径8.0mm/レマコム株式会社製)を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル(3’)を得た。前記含水ゲル(3’)の投入量は凡そ360g/分であり、当該含水ゲル(3’)の投入と並行して、80℃に調温した脱イオン水を25g/分でミートチョッパーに添加しながらゲル粉砕を行った。
【0251】
前記粒子状含水ゲル(3’)のD50(質量平均粒子径)は550μmであり、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は1.01であった。
【0252】
(乾燥工程)
次に、前記粒子状含水ゲル(3’)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、180℃の熱風を30分間通気させることで粒子状含水ゲル(3’)を乾燥させ、乾燥重合体(3’)を得た。前記180℃の熱風は、前半の15分間は金網の下から上に通気させ、後半の15分間は金網の上から下に通気させた。当該乾燥重合体(3’)中に未乾燥物はなかった。
【0253】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(3’)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(3’)と、目開き150μmの篩を通過した微粉(3’-1)とを得た。
【0254】
(造粒工程)
次に、前記微粉(3’-1)100質量部を70℃に加熱した後、レディゲミキサーに投入し、70℃に調温した脱イオン水100質量部を攪拌しながら添加し、約1分間混合することで造粒ゲル(3’-1)を得た。
【0255】
(造粒ゲル添加工程)
次に、前記造粒ゲル(3’-1)80質量部を、造粒開始から2.5分間経過後に、前述の操作を再度行って作製した粒子状含水ゲル(3’)320質量部に加えた。その後直ちに、80℃に加熱しておいたモルタルミキサー(西日本試験機社製)で10秒間混合し、混合ゲル(3’-2)を得た。尚、前記モルタルミキサーで混合する直前の造粒ゲル(3’-1)及び粒子状含水ゲル(3’)の温度は、それぞれ55℃,52℃であった。
また、前記モルタルミキサーにおける造粒ゲル(3’-1)及び粒子状含水ゲル(3’)の混合性は、良好であった。
【0256】
(乾燥工程)
次に、前記混合ゲル(3’-2)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、180℃の熱風を30分間通気させることで混合ゲル(3’-2)を乾燥させ、乾燥重合体(3’-2)を得た。前記180℃の熱風は、前半の15分間は金網の下から上に通気させ、後半の15分間は金網の上から下に通気させた。当該乾燥重合体(3’-2)中に未乾燥物はなかった。
【0257】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(3’-2)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(3’-2)を得た。
【0258】
(表面架橋工程)
次に、前記表面架橋前の吸水性樹脂(3’-2)100質量部に対して、エチレンカーボネート1.0質量部、及び脱イオン水4.0質量部からなる表面架橋剤水溶液を噴霧添加して均一に混合した。その後、得られた混合物を180℃で40分間、加熱処理することで表面架橋を行った。次いで、当該混合物を、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した表面架橋後の吸水性樹脂(3’-2)を得た。表面架橋後の吸水性樹脂(3’-2)の諸物性を表2に示す。
【0259】
〔比較例4〕
(単量体水溶液の調製工程)
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸400.0質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量:523)3.2質量部、ヘキサンジオールジアクリレート0.4質量部、及び0.04質量部のIRGACURE(登録商標)819を投入し、混合した。その後、さらに24.0質量%水酸化ナトリウム水溶液640.0質量部を容器に徐々に投入し、混合することで液温が40℃の単量体水溶液(4’)を調製した。
【0260】
(重合工程)
次に、液温が40℃の前記単量体水溶液(4’)を攪拌しながら、4質量%過硫酸ナトリウム水溶液24.0質量部を加えた。その後、直ちに、ステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)コーティング)に、当該単量体水溶液(4’)を大気開放状態で流し込んだ。また、前記バット型容器に単量体水溶液(4’)を流し込むと同時に、当該単量体水溶液(4’)に紫外線を照射した。尚、当該バット型容器は、ホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社製)を用いて、表面温度が50℃となるまで加熱した。
【0261】
前記単量体水溶液(4’)を前記バット型容器に流し込んだ後、間もなく重合反応が開始した。当該重合反応の開始から1分間経過後に紫外線の照射を停止し、そこから2分間経過後に、含水ゲル(4’)をバット型容器から取り出した。尚、これら一連の操作は、大気開放状態で行った。
【0262】
(ゲル粉砕工程)
次に、前記重合反応で得られた含水ゲル(4’)を、1個当たりの質量が60g程度となるように切断した後、ミートチョッパー(HL-G22SN、プレート孔径8.0mm/レマコム株式会社製)を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル(4’)を得た。前記含水ゲル(4’)の投入量は凡そ360g/分であり、当該含水ゲル(4’)の投入と並行して、80℃に調温した脱イオン水を25g/分でミートチョッパーに添加しながらゲル粉砕を行った。
【0263】
前記粒子状含水ゲル(4’)のD50(質量平均粒子径)は540μmであり、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は1.04であった。
【0264】
(乾燥工程)
次に、前記粒子状含水ゲル(4’)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、180℃の熱風を30分間通気させることで粒子状含水ゲル(4’)を乾燥させ、乾燥重合体(4’)を得た。前記180℃の熱風は、前半の15分間は金網の下から上に通気させ、後半の15分間は金網の上から下に通気させた。当該乾燥重合体(4’)中に未乾燥物はなかった。
【0265】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(4’)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(4’)と、目開き150μmの篩を通過した微粉(4’-1)とを得た。
【0266】
(造粒工程)
次に、前記微粉(4’-1)100質量部を70℃に加熱した後、レディゲミキサーに投入し、70℃に調温した脱イオン水100質量部を攪拌しながら添加し、約1分間混合することで造粒ゲル(4’-1)を得た。
【0267】
(造粒ゲル添加工程)
次に、前記造粒ゲル(4’-1)100質量部を、造粒開始から2.5分間経過後に、前述の操作を再度行って作製した粒子状含水ゲル(4’)300質量部に加えた。その後直ちに、80℃に加熱しておいたモルタルミキサー(西日本試験機社製)で10秒間混合し、混合ゲル(4’-2)を得た。尚、前記モルタルミキサーで混合する直前の造粒ゲル(4’-1)及び粒子状含水ゲル(4’)の温度は、それぞれ55℃,52℃であった。また、前記モルタルミキサーにおける造粒ゲル(4’-1)及び粒子状含水ゲル(4’)の混合性は、良好であった。
【0268】
(乾燥工程)
次に、前記混合ゲル(4’-2)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、180℃の熱風を30分間通気させることで混合ゲル(4’-2)を乾燥させ、乾燥重合体(4’-2)を得た。前記180℃の熱風は、前半の15分間は金網の下から上に通気させ、後半の15分間は金網の上から下に通気させた。当該乾燥重合体(4’-2)中に未乾燥物はなかった。
【0269】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(4’-2)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(4’-2)を得た。
【0270】
(表面架橋工程)
次に、前記表面架橋前の吸水性樹脂(4’-2)100質量部に対して、エチレンカーボネート0.5質量部、メタノール3.0質量部、及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液を噴霧添加して均一に混合した。その後、得られた混合物を180℃で40分間、加熱処理することで表面架橋を行った。次いで、当該混合物を、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した表面架橋後の吸水性樹脂(4’-2)を得た。表面架橋後の吸水性樹脂(4’-2)の諸物性を表2に示す。
【0271】
〔比較例5〕
(単量体水溶液の調製工程)
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸で希釈した0.5質量%IRGACURE(登録商標)819の溶液を11.0質量部、アクリル酸で希釈した5.0質量%ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量:400)の溶液を26.0質量部、アクリル酸で希釈した5.0質量%トリメチロールプロパントリアクリレート(エトキシ化TMPTA、TMP(EO)9TA、M-3190/ミウォンスペシャリティケミカル社製)の溶液を14.0質量部、及びアクリル酸445.2質量部を投入し、混合した。その後、さらに24.0質量%水酸化ナトリウム水溶液800.0質量部を容器に徐々に投入し、混合することで単量体水溶液(5’)を調製した。当該単量体水溶液(5’)におけるアクリル酸の中和率は、70モル%であった。また、得られた単量体水溶液(5’)の液温は、前記混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、50℃を超えていた。
【0272】
(重合工程)
次に、前記単量体水溶液(5’)を攪拌しながら冷却し、液温が45℃となった時点で、5.0質量%炭酸水素ナトリウム水溶液30.0質量部、硫酸アルミニウム1.6質量部を5.0質量%炭酸水素ナトリウム水溶液28.0質量部に溶解させた水溶液、及び1.0質量%OFX-0193(XIAMETER(登録商標))水溶液60.0質量部を投入し、混合した。得られた混合物を2秒間程度攪拌した後、ステンレス製のバット型容器(底面150×150mm、高さ90mm、内面:テフロン(登録商標)コーティング)に、大気開放状態で流し込んだ。また、前記バット型容器に前記混合物を流し込むと同時に、当該混合物に紫外線を照射した。尚、当該バット型容器は、表面温度が80℃となるまで加熱した。
【0273】
前記混合物を前記バット型容器に流し込んだ後、約30秒間経過後に重合反応が開始した。当該重合反応の開始から2分間経過後に紫外線の照射を停止し、含水ゲル(5’)をバット型容器から取り出した。尚、これら一連の操作は、大気開放状態で行った。
【0274】
(ゲル粉砕工程)
次に、前記重合反応で得られた含水ゲル(5’)を、1個当たりの質量が60g程度となるように切断した後、ミートチョッパー(HL-G22SN、プレート孔径8.0mm/レマコム株式会社製)を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル(5’)を得た。前記含水ゲル(5’)の投入量は凡そ360g/分であり、当該含水ゲル(5’)の投入と並行して、80℃に調温した脱イオン水を50g/分でミートチョッパーに添加しながらゲル粉砕を行った。
【0275】
前記粒子状含水ゲル(5’)のD50(質量平均粒子径)は910μmであり、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は1.02であった。
【0276】
(乾燥工程)
次に、前記粒子状含水ゲル(5’)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、180℃の熱風を30分間通気させることで粒子状含水ゲル(5’)を乾燥させ、乾燥重合体(5’)を得た。前記180℃の熱風は、前半の15分間は金網の下から上に通気させ、後半の15分間は金網の上から下に通気させた。当該乾燥重合体(5’)中に未乾燥物はなかった。
【0277】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(5’)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(5’)を得た。
【0278】
(表面架橋工程)
次に、前記表面架橋前の吸水性樹脂(5’)100質量部に対して、エチレンカーボネート0.4質量部、メタノール3.0質量部、脱イオン水3.0質量部、及びアエロジル200(EVONIK社製)0.5質量部からなる表面架橋剤水溶液を噴霧添加して均一に混
合した。その後、得られた混合物を190℃で30分間、加熱処理することで表面架橋を行った。次いで、当該混合物を、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した表面架橋後の吸水性樹脂(5’)を得た。表面架橋後の吸水性樹脂(5’)の諸物性を表2に示す。
【0279】
〔比較例6〕
(単量体水溶液の調製工程)
容量1Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸291.0質量部、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液247.0質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量:523)0.4質量部、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.8質量部、アクリル酸で希釈した1.0質量%IRGACURE(登録商標)814の溶液を3.6質量部、及び脱イオン水255.0質量部を投入し、混合することで単量体水溶液(6’)を調製した。当該単量体水溶液(6’)の液温は、前記混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、90℃を超えていた。
【0280】
(重合工程)
次に、前記単量体水溶液(6’)の液温を90℃に保ち、攪拌しながら、3.0質量%過硫酸ナトリウム水溶液1.8質量部を加えた。その後、直ちに、ステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)コーティング)に、当該単量体水溶液(6’)を大気開放状態で流し込んだ。また、前記バット型容器に単量体水溶液(6’)を流し込むと同時に、当該単量体水溶液(6’)に紫外線を照射した。尚、当該バット型容器は、ホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社製)を用いて、表面温度が50℃となるまで加熱した。
【0281】
前記単量体水溶液(6’)を前記バット型容器に流し込んだ後、間もなく重合反応が開始した。当該重合反応においては、水蒸気を発生しながら四方八方に膨張発泡しながら単量体水溶液(6’)の重合が進行した。その後、得られた重合体は、バット型容器の底面よりも若干大きいサイズにまで収縮した。当該重合反応の開始から3分間経過後に紫外線の照射を停止し、含水ゲル(6’)をバット型容器から取り出した。尚、これら一連の操作は、大気開放状態で行った。
【0282】
(ゲル粉砕工程)
次に、前記重合反応で得られた含水ゲル(6’)を、1個当たりの質量が60g程度となるように切断した後、ミートチョッパー(HL-G22SN、プレート孔径6.0mm/レマコム株式会社製)を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル(6’)を得た。前記含水ゲル(6’)の投入量は凡そ360g/分であり、当該含水ゲル(6’)の投入と並行して、90℃に調温した脱イオン水を50g/分でミートチョッパーに添加しながらゲル粉砕を行った。
【0283】
前記粒子状含水ゲル(6’)のD50(質量平均粒子径)は750μmであり、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は1.01であった。
【0284】
(乾燥工程)
次に、前記粒子状含水ゲル(6’)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、180℃の熱風を30分間通気させることで粒子状含水ゲル(6’)を乾燥させ、乾燥重合体(6’)を得た。当該乾燥重合体(6’)中に未乾燥物はなかった。
【0285】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(6’)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(6’)と、目開き150μmの篩を通過した微粉(6’-1)とを得た。
【0286】
(造粒工程)
次に、前記微粉(6’-1)100質量部をレディゲミキサーに投入し、60℃に調温した脱イオン水100質量部を攪拌しながら添加し、約1分間混合することで造粒ゲル(6’-1)を得た。
【0287】
(乾燥工程)
次に、前記造粒ゲル(6’-1)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、170℃の熱風を30分間通気させることで造粒ゲル(6’-1)を乾燥させ、乾燥重合体(6’-1)を得た。当該乾燥重合体(6’-1)中に未乾燥物はなかった。
【0288】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(6’-1)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(6’-1)を得た。
【0289】
続いて、前記表面架橋前の吸水性樹脂(6’)80質量部と当該表面架橋前の吸水性樹
脂(6’-1)20質量部とを混合することにより、表面架橋前の吸水性樹脂(6’-2
)を得た。
【0290】
(表面架橋工程)
次に、前記表面架橋前の吸水性樹脂(6’-2)100質量部に対して、カチオン性コロイダルシリカ(商品名:Klebosol 30CAL25 30%水溶液/AZ Electronic Material社製)3.3質量部、1,3-プロパンジオール0.5質量部、メタノール1.0質量部、及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液を噴霧添加して均一に混合した。その後、得られた混合物を200℃で40分間、加熱処理することで表面架橋を行った。次いで、目開き850μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き850μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した表面架橋後の吸水性樹脂(6’-2)を得た。表面架橋後の吸水性樹脂(6’-2)の諸物性を表2に示す。
【0291】
実施例1~4及び比較例1~6で得られた表面架橋後の吸水性樹脂の各種物性を測定した。測定方法を以下に示す。また、測定結果を表2に示す。
【0292】
<測定方法>
[CRC(無加圧下吸収倍率)]
本発明に係る吸水性樹脂のCRC(無加圧下吸収倍率)は、EDANA法(WSP241.3(10))に準拠して測定した。具体的には、吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れ、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して当該吸水性樹脂を自由膨潤させた後、遠心分離機(遠心力:250G)を用いて脱水し、CRC(無加圧下吸収倍率)(単位:g/g)を測定した。
【0293】
[AAP(加圧下吸収倍率)]
本発明に係る吸水性樹脂のAAP(加圧下吸収倍率)は、EDANA法(WSP242.3(10))に準拠して測定した。但し、本発明においては、加圧条件を4.83kPa(49g/cm2、0.7psi)に変更して測定した。具体的には、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を用い、吸水性樹脂0.9gを1時間、4.83kPa(49g/cm2、0.7psi)の加圧下で膨潤させた後、AAP(加圧下吸収倍率)(単位:g/g)を測定した。即ち、本明細書では、AAP(加圧下吸収倍率)は、全て、4.83kPaの加圧下で測定した値である。
【0294】
[SFC(生理食塩水流れ誘導性)]
本発明に係る吸水性樹脂のSFC(生理食塩水流れ誘導性)(単位:×10-7cm3
・sec/g)は、米国特許第5669894号に記載された測定方法に準拠して測定した。
【0295】
[固形分]
本発明に係る吸水性樹脂の固形分は、EDANA法(WSP230.3(10))に準拠して測定した含水率を用いて算出した。但し、本発明においては、WSP230.3(10)で規定される測定条件のうち、試料である吸水性樹脂の量を1.0gに、乾燥温度を180℃に、それぞれ変更した。そして、「100-含水率(質量%)」で算出される値を、吸水性樹脂の固形分(単位:質量%)とした。
【0296】
また、粒子状含水ゲル又は造粒ゲルの固形分も同様に、EDANA法(WSP230.3(10))に準拠して測定した含水率を用いて算出した。但し、本発明においては、WSP230.3(10)で規定される測定条件のうち、試料である粒子状含水ゲル又は造粒ゲルの量を2.0gに、乾燥温度を180℃に、それぞれ変更した。そして、「100-含水率(質量%)」で算出される値を、粒子状含水ゲル又は造粒ゲルの固形分(単位:質量%)とした。
【0297】
また、ブロック状の乾燥重合体の固形分は、乾燥工程における任意の箇所からサンプル(吸水性樹脂)を採取し、当該サンプルを粒子径が5mm以下となるまで砕いてから、前述した吸水性樹脂の固形分の測定方法と同様に、EDANA法(WSP230.3(10))に準拠して測定した含水率を用いて算出した。そして、「100-含水率(質量%)」で算出される値を、ブロック状の乾燥重合体の固形分(単位:質量%)とした。但し、ブロック状の乾燥重合体の固形分は、前記サンプルを乾燥工程における任意の5箇所から採取し、得られた値の平均値とした。
【0298】
[D50(質量平均粒子径)]
本発明に係る吸水性樹脂のD50(質量平均粒子径)(単位:μm)は、米国特許第7
638570号に記載された「(3) Mass-Average Particle Diameter (D50) and Logarit
hmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」の測定方法に準
拠して測定した。
【0299】
〔粒子状含水ゲルのD50(質量平均粒子径)〕
粉砕した粒子状含水ゲルの固形分換算の質量平均粒子径(D50)を測定する。温度20~25℃の粒子状含水ゲル(固形分α質量%)20gを、0.08質量%エマール20C(界面活性剤、花王株式会社製)を含む20質量%塩化ナトリウム水溶液(以下、「エマール水溶液」と称する)500g中に添加して分散液とし、長さ50mm×直径7mmのスターラーチップを用いて300rpmで1時間攪拌した(高さ21cm、直径8cmの円柱のポリプロピレン製容器(容量約1.14L)を使用)。
【0300】
攪拌終了後、回転盤の上に重ねて設置したJIS標準の篩(直径21cm、篩の目開き:8mm/4mm/2mm/1mm/0.60mm/0.30mm/0.15mm/0.075mm)の中央部に、前記分散液を投入した。エマール水溶液100gを使用して全粒子状含水ゲルを篩上に洗い出した後、上部からエマール水溶液6000gを、篩を手で回転させながら(20rpm)、30cmの高さからシャワー(孔72個あき、液量:6.0L/min)を使って注水範囲(50cm2)が篩全体に行きわたるように満遍なく注ぎ、粒子状含水ゲルを分級した。分級した一段目の篩上の粒子状含水ゲルを約2分間水切り後、秤量した。二段目以降の篩についても同様の操作で分級し、水切り後にそれぞれの篩の上に残留した粒子状含水ゲルを秤量した。
【0301】
各篩の上に残留した粒子状含水ゲルの質量から、下記式(1)より、粒子状含水ゲル全体に対する、質量割合X(単位:質量%)を算出した。篩の上に残留した固形分α質量%の粒子状含水ゲルに使用された篩の目開きR(α)(単位:mm)は、下記の式(2)に従って算出した。各々の篩に残留する粒子状含水ゲルのXとR(α)を、対数確率紙にプロットし、Xの累積重量比とR(α)の関係を示したグラフ(粒度分布)を作成した。このグラフから残留百分率が50質量%に相当する粒子径を粒子状含水ゲルの質量平均粒子径(D50)として読み取った。
【0302】
X=(w/W)×100 式(1)
R(α)=(20/W)1/3×r 式(2)
なお、ここで、X、w、W、R(α)及びrは下記の値を意味する。
【0303】
X:分級及び水切り後に各篩上に残留した粒子状含水ゲルの質量%(単位:質量%)
w:分級及び水切り後に各篩上に残留した粒子状含水ゲルのそれぞれの質量(単位:g)
W:分級及び水切り後に各篩上に残留した粒子状含水ゲルの総質量(単位:g)
R(α):固形分α質量%に換算した粒子状含水ゲルを分級した場合の篩の目開き(単位:mm:計算値)
r:0.08質量%エマール20C(界面活性剤、花王株式会社製)を含む20質量%塩化ナトリウム水溶液中で膨潤した粒子状含水ゲルを分級したJIS標準の篩の目開き(単位:mm:実測値)
[σζ(粒度分布の対数標準偏差)]
本発明に係る吸水性樹脂のσζ(粒度分布の対数標準偏差)(単位:なし)は、米国特許第7638570号に記載された「(3) Mass-Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」の測定方法に準拠して測定した。
【0304】
一方、粒子状含水ゲルのσζ(粒度分布の対数標準偏差)は、下記方法で測定した。
【0305】
即ち、前記粒子状含水ゲルのD50(質量平均粒子径)の手法と同様の手法で、各篩上に残留した粒子状含水ゲルの質量%を算出し、当該粒子状含水ゲルの粒度分布を対数確率紙にプロットした。前記プロットから、積算篩上%R=84.1質量%(これをX1とする)と、積算篩上%R=15.9質量%(これをX2とする)の粒子径を求め、下記式(3)に基づいて、σζ(粒度分布の対数標準偏差)を求めた。
【0306】
σζ=0.5×ln(X2/X1) …式(3)
σζの値が小さいほど、粒度分布が狭いことを意味する。
【0307】
[ゲル厚み5mm到達時間]
本発明に係る吸水性樹脂のゲル厚み5mm到達時間(単位:秒)は、加圧条件を4.83kPa(49g/cm2、0.7psi)に変更した前記AAP(加圧下吸収倍率)の測定時における、重りの垂直方向の移動距離を、キーエンス製レーザー変位計(アンプユニット:IL-1000、センサヘッド:IL-S100、電源ユニット:KZ-U3)、データロガー(GRAPHTEC社製、midiLOGGER GL220)、及びMicrosoft Excelを用いて算出することにより測定した。
【0308】
測定は、温度が23.0±0.5℃、湿度が35%から50%の間に調整された室内で行った。また、測定に使用する0.9質量%塩化ナトリウム水溶液は、23±0.5℃に調温したものを用いた。
【0309】
具体的な測定方法は、以下の通りである。
図2に示すように、まず、加圧条件を4.83kPa(49g/cm
2、0.7psi)に変更したAAPの測定時に用いるシリンダー3、ピストン2、重り1を準備し、シリンダー3内に吸水性樹脂0.9gを仕込み、吸水性樹脂を仕込んだシリンダー3にピストン2を挿入した。この時、シリンダー3の内壁とピストン2の間に吸水性樹脂が噛み込まないようにした。その後、ピストン2の上に重り1を置いた。尚、重り1は、円筒形でかつ上面が平面のものを用いた。シリンダー3の底面はメッシュ状をなす。以降では、前記工程で準備した吸水性樹脂、シリンダー3、ピストン2、及び重り1からなる一連のセットを、セルセットAと称す。
【0310】
次に、
図3に示すように、水平な実験台の上に23℃に設定した面上ヒーター10を置き、面上ヒーター10の上にAAPの測定時に用いるSUS製トレイ9を置き、SUS製トレイ9の中央部にAAPの測定時に用いるガラスフィルター7を凹凸が少ない面を上側にして置き、SUS製トレイ9内にガラスフィルター7の上面の高さと同じ水位になるように0.9質量%塩化ナトリウム水溶液8を投入した。この時、ガラスフィルター中に気泡が入らないようにした。続いて、ガラスフィルター7の中央部にAAPの測定時に用いる濾紙6を凹凸が少ない面を上側にして置いた。
【0311】
また、吸水性樹脂が膨潤するときの重り1の垂直方向の位置情報を測定するため、キーエンス製レーザー変位計(アンプユニット15:IL-1000、センサヘッド14:IL-S100、電源ユニット16:KZ-U3)を設置した。尚、センサヘッド14には、アンプユニット15を介し電源ユニット16が接続されている。また、センサヘッド14は、スタンド11の上部にムッフ12によりクランプ13を取り付け、クランプ13により支持されている。センサヘッド14は、センサヘッド14から照射されるレーザーが、前記濾紙6上の中央部にセルセットAを置いた際に、セルセットA中の重り1の上面に対して垂直に、具体的には矢印18で示す照射方向に照射されるように設置した。また、重り1の上面のレーザーが照射される部分には、照射されたレーザーが適切に反射するよう、白色のビニールテープ5(製品名:脱鉛タイプビニールテープ、品番:21-10W、日東電工株式会社製)を張り付けた。重り1の上面にビニールテープを貼り付けた様子を
図4の平面図に示す。これにより、重り1の垂直方向の位置情報(数値データ)を測定することが可能となった。センサヘッド14で測定した重り1の位置情報は、データロガー(GRAPHTEC社製、midiLOGGER GL220)17に送られ、データロガー17で保存した。尚、データロガー17は、アンプユニット15と電源ユニット16の間に接続し、重り1の位置情報を1秒間隔で連続的に保存できるように設定した。
【0312】
前記測定環境下で、セルセットAを濾紙の中央部に置いたときを測定開始とし、開始と同時にレーザー変形計による重り1の位置情報の測定を開始した。測定開始から1時間経過後にレーザー変形計による重り1の位置情報の測定を終了した。尚、
図3は、セルセットAを濾紙上に置き、測定を開始する段階の測定の様子を示す。
【0313】
前記測定で得られた重り1の位置情報を、データロガー17から抜き出し、Microsoft Excel上で以下の解析を行った。まず、膨潤開始から10秒経過後までの間で、重り1が最も沈み込み、低くなった時を「ゲル厚み0mmの時点」とした。「ゲル厚み0mmの時点」以降は、吸水性樹脂が膨潤することによって重りが垂直方向に押し上げられるため、「ゲル厚み0mmの時点」での位置情報の数値と、「ゲル厚み0mmの時点」以降に測定した位置情報の数値の差の絶対値が、膨潤した吸水性樹脂が重り1を垂直方向に押し上げた距離α(ゲル厚みαmm)を示すことになる。この距離αを測定の経過時間ごとに算出し、(Microsoft Excelを用いて算出する)当該距離が5mmになるまでに要した時間(ゲル厚み0mmの時点からゲル厚み5mmの時点までの時間)を「ゲル厚み5mm到達時間」とした。
【0314】
尚、本発明におけるゲル厚み5mm到達時間は、前記測定を、同サンプル(吸水性樹脂)を用いて2回行い、その平均値とした。
【0315】
[ゲル膨張力、ゲル膨張速度]
本発明に係る吸水性樹脂のゲル膨張力(単位:N)及びゲル膨張速度(単位:なし)は、加圧条件を4.83kPa(49g/cm2、0.7psi)に変更した前記AAP(加圧下吸収倍率)の測定時において、「ゲル厚み5mm」に達するまで膨潤した吸水性樹脂がさらに膨潤するときに、ピストン及び重りを垂直方向に押し上げる力を、引っ張り試験機であるオートグラフ(AG-1kNX/株式会社島津製作所製)及び、オペレーションソフトウェア(TRAPEZIUM X)を用いて測定し、測定で得られた数値データを、Microsoft Excelを用いて解析することにより求めた。
【0316】
具体的な測定方法は、以下の通りである。
図2に示すように、まず、加圧条件を4.83kPa(49g/cm
2、0.7psi)に変更したAAPの測定時に用いるシリンダー3、ピストン2、重り1を準備し、シリンダー3内に吸水性樹脂0.9gを仕込み、吸水性樹脂を仕込んだシリンダー3にピストン2を挿入した。この時、シリンダー3の内壁とピストン2の間に吸水性樹脂が噛み込まないようにした。その後、ピストン2の上に重り1を置いた。尚、重り1は、円筒形でかつ上面が平面のものを用いた。以降では、前記工程で準備した吸水性樹脂、シリンダー3、ピストン2、及び重り1からなる一連のセットを、セルセットAと称す。尚、ここまでを、温度が23±0.5℃、かつ湿度が35%から50%の間に調整された室内で実施し、これ以降の操作は、温度が23±0.5℃、かつ湿度が35%から60%の間に調整された室内で実施した。
【0317】
オートグラフ(AG-1kNX/株式会社島津製作所製)にロードセル19(SLBL-50N/株式会社島津製作所製)及び圧縮治具(上圧盤20:Φ20 S346-51687-08、下圧盤21:Φ118 S346-51687-12)を設置し、さらに上圧盤20と下圧盤21の間隔を十分に開けた状態で、下圧盤21の上にAAP測定用器具を置いた。オートグラフ30にロードセル19、圧縮治具及びAAP測定用器具を設置した状態を、
図5に示す。ここで、「下圧盤21の上にAAP測定用器具を置く」とは、下圧盤21の上にAAPの測定時に用いるSUS製トレイ9を、下圧盤21の中央部とSUS製トレイ9の中央部とが重なるようにして置き、SUS製トレイ9の中央部にAAPの測定時に用いるガラスフィルター7を凹凸が少ない面を上側にして置き、ガラスフィルター7の中央部にAAPの測定時に用いる濾紙6を凹凸が少ない面を上側にして置き、濾紙6の中央部前記セルセットAを置いた状態のことを指す。
【0318】
また、オペレーションソフトウェア(TRAPEZIUM X)上で、測定条件として、任意の位置に設置された上圧盤20が、測定を開始した時点から毎秒0.1mmの速さで自動的に下降し、その後、セルセットA中の重り1の上面と接触した時点でその位置に固定されるように設定した。加えて、固定された上圧盤20を介して、膨潤する吸水性樹脂がピストン2及び重り1を押し上げる力を0.5秒間隔で連続的に読み取れるように設定した。具体的には、オペレーションソフトウェア上で、「新規試験条件作成」をクリックし、以下に示すように試験条件を設定した。
「システム」
試験モード:シングル
試験種類:圧縮
ロードセル極性:圧縮
移動方向:ダウン
単位:SI
書式:四捨五入
「センサー」
(試験力)
チャンネル:試験力アンプ
名称:試験力
フルスケール:50N
リミット:40N(チェックを入れる)
応力名称:応力
真応力を使用する:チェックをはずす
(ストローク)
名称:ストローク
リミット:500mm(チェックを入れる)
ストローク(ひずみ)名称:ストローク(ひずみ)
真ひずみを使用する:チェックをはずす
たわみ補正を行う:チェックをはずす
(変位計)
変位計1
チャンネル:なし
(幅計)
チャンネル:なし
(その他)
その他1
チャンネル:なし
「試験制御」
伸び原点:最初から
エリア1
制御動作:負荷
コントロール:ストローク
V1:0.100000mm/sec
エリア1とエリア2の間の設定
目標値チャンネル
試験力
0.01N
エリア2
制御動作:ホールド
コントロール:ストローク
エリア2とエリア3の間の設定
ホールド時間
6000sec
エリア3
制御動作:OFF
(終了条件)
破断設定:全てチェックをはずす
試験後動作:ストップ
破断検出開始点:0.035%
(サンプリング)
時間:0.5sec
(予備負荷)
全てチェックをはずす
「試験片」
材質:プラスチック
形状:平板
バッチ数:1
サブバッチ数:1
寸法単位:mm
「データ処理項目」
特に設定しなくてよい
「グラフ」
任意に設定してよい
「レポート」
任意に設定してよい
続いて、オペレーションソフトウェア上で、「条件を選択し試験実行」をクリックし、前述の試験条件を選択したうえで、試験実行画面を開いた。また、当該画面上で「試験力」を右クリックし、キャリブレーションを実施し、当該画面上の「試験力」の表示を0.02N未満にした。
【0319】
前記測定環境下で行った、吸水性樹脂のゲル膨張力及びゲル膨張速度の測定方法の手順を、
図6を参照しながら説明する。
【0320】
先ず、
図6の(a)に示すように、上圧盤20を、セルセットA中の重り1の上面に接触するまでマニュアルで下降させ、接触した上圧盤20の位置を0mmとした。具体的には、当該上圧盤20の位置で、試験実行画面上の「ストローク」を右クリックし、ゼロリセットを実施した。尚、ここで言うマニュアルとは、オートグラフに接続されたスマートコントローラー(株式会社島津製作所製)のボタン及びダイヤルを用いて操作することを指す。また、これ以降のマニュアルという記載についても、同様の操作のことを指す。加えて、重り1と上圧盤が接触した際に、重り1が上圧盤20を押し上げる力がわずかに生じるため、試験実行画面上において「試験力」の上昇が確認される。ここでは、当該「試験力」の上昇により、「試験力」が0.1N以上0.5N未満となった時点を接触と定義した。続いて、
図6の(b)に示すように、上圧盤20をマニュアルで7.5mm上昇させ、この上圧盤20の位置を「測定開始位置」とした。前記7.5mm上昇させた理由は、ゲル膨張力の測定で、吸水性樹脂の膨潤により重り1が5.0mm上昇することを想定した為(ゲル厚み5mmに相当)、及び、試験開始で上圧盤20が下降し、ゲル厚み5mmの時点で重り1と接触する際、上圧盤20が下降した距離が2.5mmと想定した為であり、それらの想定値を合計した数値である。ゲル厚み5mmの時点は、予め測定しており、その時点から25秒前に試験開始を設定するので、上圧盤20が下降した距離を想定することは可能である(前記の場合、上圧盤20の下降速度を毎秒0.1mmと設定しているため、毎秒0.1mm×25秒=2.5mmと設定できる)。
【0321】
次に、
図6の(c)に示すように、上圧盤20を前記「測定開始位置(7.5mm)」からマニュアルでさらに上昇させ、上圧盤20に接触しないように、セルセットA及び濾紙6をガラスフィルター7上から持ち上げた後、SUS製トレイ9内に、ガラスフィルター7の上面の高さと同じ水位になるように0.9質量%塩化ナトリウム水溶液8を投入した。尚、ここで使用する0.9質量%塩化ナトリウム水溶液8は、液温を23±0.5℃に調温したものを使用した。また、このとき、ガラスフィルター7内に気泡が入らないようにした。
【0322】
この状態で、
図6の(d)に示すように、ガラスフィルター7の中央部に再度濾紙6を置き、濾紙6の中央部にセルセットAを静かに置き、吸水性樹脂の膨潤を開始させた。また、セルセットAを濾紙6上に置くと同時に時間の計測も開始した。膨潤開始後、
図6の(e)に示すように、上圧盤20をマニュアルで前記「測定開始位置(7.5mm)」まで直ちに下降させた。
【0323】
続いて、膨潤開始から数えて「ゲル厚み5mm到達時間」に達する時点よりも25秒早い時点で、試験実行画面上の「試験開始」をクリックし、
図6の(f)に示すように、上圧盤20を毎秒0.1mmの速度で自動下降させた。尚、前記25秒前に上圧盤20の下降を開始させるのは、膨潤開始から数えて「ゲル厚み5mm到達時間」に達した時点で上圧盤20が2.5mm下降し、当該上圧盤20がセルセットA中の重り1の上面と接触するようにするためである。これにより、膨潤開始から数えて「ゲル厚み5mm到達時間」に達した時点で、上圧盤とセルセットA中の重り1の上面とが接触し、
図6の(g)に示すように、当該接触時点を測定開始点として、粒子状含水ゲルがピストン2及び重り1を押し上げる力を、0.5秒間隔で60分間連続的に測定した。
【0324】
そして、前述の60分間の測定によって得られた、粒子状含水ゲルがピストン及び重りを押し上げる力を、Microsoft Excel上で解析することにより、吸水性樹脂のゲル膨張力及びゲル膨張速度を算出した。
【0325】
即ち、Microsoft Excel上で、当該押し上げる力の中で、測定開始(0秒)から1000秒間経過するまでの間において最も大きかった力を特定し、ゲル膨張力(N)とした。
【0326】
また、Microsoft Excel上で、横軸を測定時間(分)、縦軸を当該押し上げる力(N)としたグラフを作成し、当該グラフにおいて測定開始(0秒)から100秒間経過するまでのデータが示す曲線の傾きを、SLOPE関数により算出し、その値をゲル膨張速度(単位:なし)とした。
【0327】
尚、本発明におけるゲル膨張力及びゲル膨張速度は、前記測定を、同サンプル(吸水性樹脂)を用いて2回行い、その平均値とした。
【0328】
[Cavity体積率が15体積%以上の粒子の体積率、Void体積率が1体積%以下の粒子の体積率]
本発明に係る吸水性樹脂の総体積に占める、Cavity体積率が15体積%以上の粒子の体積率(単位:体積%)、及びVoid体積率が1体積%以下の粒子の体積率(単位:体積%)は、マイクロフォーカスX線CTシステム(inspeXio SMX-100CT/株式会社島津製作所製)を用いて、吸水性樹脂の3次元画像データを取得し、高速3次元解析ソフト(TRI/3D-VOL-FCS64/ラトックシステムエンジニアリング社製)を用いて当該3次元画像データを解析し、その後に統計解析ソフトウェア(JMP(登録商標)14(SAS Institute Inc.,Cary,NC,USA)及びMicrosoft Excelを用いて計算することにより求めた。Cavity体積率及び、Void体積率は、300μm~600μmの粒度の吸水性樹脂を用いて求めた。具体的には、500μm~600μmの粒度の吸水性樹脂、425μm~500μmの粒度の吸水性樹脂、及び300μm~425μmの粒度の吸水性樹脂の3次元画像データを、前記マイクロフォーカスX線CTシステムを用いてそれぞれ取得し、前記高速3次元解析ソフトを用いて解析した後に、それらの解析結果を一括して、JMP及びExcelを用いて算出した。
【0329】
具体的な算出方法について、500μm~600μmの粒度の吸水性樹脂を例に挙げて記載する。初めに、500μm~600μmの粒度の吸水性樹脂の抽出方法を記載する。まず、JIS標準の篩(The IIDA TESTING SIEVE/株式会社飯田製作所製、直径:8cm、篩の目開き:600μm/500μm/425μm/300μm)を、上から目開きの大きい順に重ね合わせ、一番下に受器(株式会社飯田製作所製、直径:8cm)を重ねた。続いて、一番上の篩(篩の目開き:600μm)に、吸水性樹脂10.0gを投入し、蓋(株式会社飯田製作所製、直径:8cm)をした。続いて、重ね合わせた蓋、4つの篩、及び受器のセットを、IIDA SIEVE SHAKER(TYPE:ES-65型、SER.No.0632)を用いて、5分間振とうさせた。振とう後、目開き500μmの篩上に残存した吸水性樹脂のみを抽出し、これを500μm~600μmの粒度の吸水性樹脂とした。前記操作は、温度が20.0~25.0℃、かつ湿度が35%から50%の間に調整された室内で実施した。尚、前記操作において、425μm~500μmの粒度の吸水性樹脂を抽出する場合は、目開き425μmの篩上に残存した吸水性樹脂のみを抽出し、300μm~425μmの粒度の吸水性樹脂を抽出する場合は、目開き300μmの篩上に残存した吸水性樹脂のみを抽出するものとする。
【0330】
続いて、プラスチック製の蓋付き円筒型容器(内径約1cm、高さ約5cm)に熱硬化性球状微粒子(エポスターMV1002/株式会社日本触媒製)0.3gを投入した後、500μm~600μmの粒度の吸水性樹脂0.1gを投入し、よく振り混ぜることで、熱硬化性球状微粒子中に吸水性樹脂を均一に分散させてサンプルを作製した。続いて、前記円筒型容器の底面に両面テープを貼り付け、前記マイクロフォーカスX線CTシステムの試料台に固定した後、下記条件で3次元画像データを取得した。
【表1】
続いて、前記高速3次元解析ソフトを用いて、下記手順に沿って解析を実施した。
1.メニュー欄から、粒子計測>3D粒子>粒子分離>巨大粒子分離を選択した。
2.EVCパネル上のBinarizeタブでL-Wを選択し、W値は初期値のままで、
L値を初期値から「1」大きい値に変更し、円形の計測対象領域を抽出した。続いて、全てのスライス画像にこの処理を適用した。この操作により抽出した画像データを(A)とし、BCパネル上のbin5ch(b5)に保管した。
3.EVCパネル上のBinarizeタブでL-Wを選択し、W値は初期値のままで、L値を初期値から「37580」に変更し、計測対象領域における全吸水性樹脂を抽出した。続いて、全てのスライス画像にこの処理を適用した。この操作により抽出した粒子画像データを(B)とし、BCパネル上のbinDch(bD)に保管した。
4.粒子画像データ(B)を基にして、先ず、EVCパネル上のBinaryタブでErs Sml を選択し、粒子サイズが10voxcel以下である、ノイズと考えられる粒子を除去した。続いて、EVCパネル上のBinaryタブでInvertを選択し、粒子が抽出されている領域とされていない領域とを反転させた。続いて、EVCパネル上のBinaryタブでErs Sml を選択し、粒子サイズが1voxcel以下である、ノイズと考えられる粒子を除去した。次いで、EVCパネル上の3DタブでLabelingを選択し、さらに体積及びMaxを選択し、最も体積の大きな領域のみを抽出した。ここで、Label Countが1と表示されていることを確認した上で、EVCパネル上のBinaryタブでInvertを再度選択することで、計測対象領域においてノイズを除去すると共に、全粒子をVoidが埋まった状態で抽出した。これらの操作により抽出した粒子画像データを(C)とし、BCパネル上のbin2ch(b2)に保管した。
5.LOpタブ(チャンネル間論理演算処理)で、対象1は「2」を、対象2は「D」を選択し、さらに「SUB」を選択し、実行を押すことで、粒子画像データ(C)から粒子画像データ(B)を引いた。その後、EVCパネル上のBinaryタブでErs Sml を選択し、粒子サイズが1voxcel以下である、ノイズと考えられる粒子を除去することで、Voidを抽出した。これらの操作により抽出した粒子画像データを(D)とし、BCパネル上のbin6ch(b6)に保管した。
6.粒子画像データ(C)を基にして、EVCパネル上の3Dタブで8連結周囲を選択し、膨張処理を2回行った後、収縮処理を2回行った。この操作により抽出した粒子画像データを(E)とし、BCパネル上のbin1h(b1)に保管した。
7.LOpタブ(チャンネル間論理演算処理)で、対象1は「1」を、対象2は「2」を選択し、さらに「SUB」を選択し、実行を押すことで、粒子画像データ(E)から粒子画像データ(C)を引いた。この操作により、Cavityを抽出した。得られた粒子画像データを(F)とし、BCパネル上のbin7ch(b7)に保管した。
8.粒子画像データ(E)を基にして、巨大粒子分離パネル上で小粒子抽出を選択し(大粒子抽出は選択しない)、くびれ割合、Repair Filter Size、及びRepair Mrg Sml Diameter を何れも「0」に設定して、粒子の分離及び色分けを行った。
9.EVCパネル上の3DタブでLabelingを選択し、さらに座標値(サイクル)を選択すると共に微小粒子サイズを「100」に設定し、粒子の分離操作を行った。これらの操作により抽出した粒子画像データを(G)とし、BCパネル上のbin1ch(b1)に保管した。
10.メニュー欄から、粒子計測>3D粒子中Void>分離後計測を選択した。
11.分離後計測パネル上で、単位としてvoxcelを選択し、続いてエッジ粒子除去を選択し、さらに計測項目として表面積計算及びVoid計算を選択し、計測ROI指定としてBinary 5chを選択して計算処理を行った。
12.前記10の計算処理によって得られたデータを、ExcelのCSV形式で抽出した。
【0331】
以上の操作により、計測対象領域に存在する全ての吸水性樹脂に対し、1粒子毎に、体積(単位:mm3)、Void体積(単位:mm3)、及びCavity体積(単位:mm3)のデータが得られた。尚、前記の1粒子当たりのVoid体積、及びCavity体積は、吸水性樹脂中に該Void及び該Cavityが埋まった状態で算出された値である。また、前記計測対象領域には、50個~500個程度の粒子を含む吸水性樹脂が存在している。
【0332】
次に、前述した手順と同様の手順の解析を、425μm~500μmの粒度の吸水性樹脂、及び300μm~425μmの粒度の吸水性樹脂についても行った。
【0333】
次に、ここまでの操作で得られた、300μm~600μmまでの粒度の吸水性樹脂の、1粒子毎の、体積(単位:mm3)、Void体積(単位:mm3)及びCavity体積(単位:mm3)に関するデータを、Excel中の一つのワークシートに全て取り込んだ。なお、ここで用いるExcelのファイル形式は、XLSX形式とする。
【0334】
次に、前記ワークシート上で、下記式(4)に基づいて1粒子毎にVoid体積率(単位:体積%)を算出した。
【0335】
Void体積率=H/(I-J)×100 …式(4)
ここで、
H:Void体積(単位:mm3)
I:体積(単位:mm3)
J:Cavity体積(単位:mm3)
である。
【0336】
次に、前記ワークシート上で、下記式(5)に基づいて1粒子毎にCavity体積率(単位:体積%)を算出した。
【0337】
Cavity体積率=J/(I-H)×100 …式(5)
ここで、
H:Void体積(単位:mm3)
I:体積(単位:mm3)
J:Cavity体積(単位:mm3)
である
次に、前記ワークシート上で、下記式(6)に基づいて1粒子毎に真の体積(単位:mm3)を算出した。
【0338】
真の体積=I-H-J …式(6)
ここで、
H:Void体積(単位:mm3)
I:体積(単位:mm3)
J:Cavity体積(単位:mm3)
である
次に、ここまでの操作で得られた、300μmから600μmまでの粒度の吸水性樹脂の、1粒子毎の、Void体積率、Cavity体積率、及び真の体積を、統計解析ソフト(JMP)に全て取り込み、データテーブルを作成した。
【0339】
そして、下記手順に沿って、Void体積率が1体積%以下の粒子の体積率(単位:体積%)、及びCavity体積率が15体積%以上の粒子の体積率(単位:体積%)を算出した。
1.まず、統計解析ソフト(JMP)の分析機能において、一変量の分布を選択し、Y,列に真の体積が入力されている列を選択し、OKを押し、分析結果における要約統計量の合計を確認することにより、全吸水性樹脂の真の体積の和(単位:mm3)を算出した。ここで得られた和の値を(K)とする。
2.次に、統計解析ソフト(JMP)のデータフィルタ機能を用いて、Void体積率が1体積%以下である吸水性樹脂のみを選択した。
3.次に、統計解析ソフト(JMP)の分析機能において、一変量の分布を選択し、Y,列に真の体積が入力されている列を選択し、OKを押し、分析結果における要約統計量の合計を確認することにより、前記2の操作で選択した吸水性樹脂の真の体積の和(単位:mm3)を算出した。ここで得られた和の値を(L)とする。
4.次に、統計解析ソフト(JMP)のデータフィルタ機能を用いて、Cavity体積率が15体積%以上である吸水性樹脂のみを選択した。
5.次に、統計解析ソフト(JMP)の分析機能において、一変量の分布を選択し、Y,列に真の体積が入力されている列を選択し、OKを押し、分析結果における要約統計量の合計を確認することにより、前記4の操作で選択した吸水性樹脂の真の体積の和(単位:mm3)を算出した。ここで得られた和の値を(M)とする。
6.そして、前記1、3、5の操作によって算出した(K)、(L)、(M)の値から、下記式(7)(8)に基づいて、Void体積率が1体積%以下の粒子の体積率(単位:体積%)、及びCavity体積率が15体積%以上の粒子の体積率(単位:体積%)を算出した。
【0340】
Void体積率が1体積%以下の粒子の体積率=L/K×100…式(7)
Cavity体積率が15体積%以上の粒子の体積率=M/K×100…式(8)
[2回目の排尿に対する加圧下吸収倍率]
本発明に係る吸水性樹脂の2回目の排尿に対する加圧下吸収倍率(単位:cm3/g)
は、下記方法で測定した。尚、当該加圧下吸収倍率は、1回目の排尿によって膨潤した薄
型の吸収体が2回目以降の排尿に対して、加圧下でも尿を吸収することができる能力を模擬的に評価する指標である。紙オムツ中の吸収体は、吸水性樹脂と木材粉砕パルプ等の繊維材料との混合物であることが多い。本発明では、薄型化の傾向が最も進んだ場合の条件として、木材粉砕パルプ等の繊維材料を使用しない、つまり、実質的に吸水性樹脂100%からなる吸収体を想定して、加圧下吸収倍率を測定した。
【0341】
具体的な測定方法は、以下の通りである。
図7に示すように、まず、前記SFCの測定時に用いるシリンダー24、ピストン25、シリンダー24の上に被せる貫通孔を2つ備えた蓋23、及び重り22を準備し、シリンダー24内に吸水性樹脂4を3.0g仕込み、吸水性樹脂4を仕込んだシリンダー24にピストン25を挿入した。この時、シリンダー24の内壁とピストン25の間に吸水性樹脂4が噛み込まないようにした。その後、蓋23をセットし、ピストン25の上部に重り22をセットした。尚、以降では、ここで作製した吸水性樹脂4、シリンダー24、ピストン25、蓋23、及び重り22からなる一連のセットを、セルセットBと称す。尚、ここまでを、温度が23±0.5℃、かつ湿度が35%から50%の間に調整された室内で実施し、これ以降は、温度が23±0.5℃、かつ湿度が35%から60%の間に調整された室内で実施した。
【0342】
次に、
図3と同様に、水平な実験台の上に23℃に設定した面上ヒーター10を置き、面上ヒーター10の上にAAPの測定時に用いるSUS製トレイ9を置き、SUS製トレイ9の中央部にAAPの測定時に用いるガラスフィルター7を凹凸が少ない面を上側にして置き、ガラスフィルター7の中央部にAAPの測定時に用いる濾紙6を凹凸が少ない面を上側にして置き、濾紙6の中央部に、前記セルセットAに代えて前記セルセットBを置いた。
【0343】
また、吸水性樹脂が膨潤するときの重り22の垂直方向の位置情報を測定するため、キーエンス製レーザー変位計(アンプユニット15:IL-1000、センサヘッド14:IL-S100、電源ユニット16:KZ-U3)を設置した。前記測定環境としては、
図3において、セルセットAがセルセットBに置き換わり、かつSUS製トレイ9中に0.9質量%塩化ナトリウム水溶液が投入されていない状態を指す。尚、
図3に示すように当該センサヘッド14は、センサヘッド14から照射されるレーザーが、セルセットB中の重り22の上面に対して垂直に照射されるように設置した。また、重り22の上面のレーザーが照射される部分には、照射されたレーザーが適切に反射するよう、白色のビニールテープ(製品名:脱鉛タイプビニールテープ、品番:21-10W、日東電工株式会社製)5を貼り付けた。重り22の上面にビニールテープを貼り付けた様子を
図8に示す。これにより、重り22の垂直方向の位置情報(数値データ)を測定することが可能となった。センサヘッド14で測定した重り22の位置情報は、データロガー(GRAPHTEC社製、midiLOGGER GL220)17に送り、データロガー17で保存した。尚、データロガー17は、アンプユニット15と電源ユニット16の間に接続し、重り22の位置情報を1秒間隔で連続的に保存できるように設定した。
【0344】
この測定環境下で、23±0.5℃に調温した0.9質量%塩化ナトリウム水溶液8を40g、容量が60mLのシリンジに測り取り、セルセットB中の蓋23の孔にシリンジの先端を挿入し、シリンダー24内に6秒間程度で添加し、吸水性樹脂4の膨潤を開始させた。尚、前記0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の添加開始と同時にレーザー変位計による重り22の位置情報の読み取りも開始した。前記0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の添加開始から2分間経過後、再び、23±0.5℃に調温した0.9質量%塩化ナトリウム水溶液50gを、先ほどと同様に、シリンジを用いてセルセットB中の蓋の孔からシリンダー内に6秒間程度で添加した(2回目吸液開始)。前記2回目の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の添加開始(2回目吸液開始)から8分間経過後、レーザー変位計による重り22の位置情報の読み取りを終了した(測定終了)。
【0345】
そして、前記2回目の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の添加を開始した時点から8分間経過するまでの加圧下吸収倍率を、2回目の排尿に対する加圧下吸収倍率(単位:cm3/g)として、下記式(4)に基づいて算出した。
【0346】
2回目の排尿に対する加圧下吸収倍率=A×C/1000/B …式(4)
ここで、
A:吸水性樹脂を仕込むシリンダーの内径の断面積(単位:mm2)
B:吸水性樹脂の仕込み量(単位:g)
C:レーザー変位計で読み取った重りの位置情報を、Microsoft Excel上で解析し算出した、2回目の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の添加を開始した時点から8分間経過した時点までの、重り22の垂直方向の移動距離(2回目吸液開始した時点でのおもり22の位置情報(数値)から、測定終了時点でのおもり22の位置情報(数値)までの距離 単位:mm)
[初期色調]
本発明に係る吸水性樹脂の初期色調は、ハンターLab表色系で測定した。測定装置には、ハンターLab社製のLabScan(登録商標)XEを使用し、測定条件として反射測定、測定口径として1.75インチを選択した。初期色調測定容器は、内径が9.5cm、高さが0.6cm、材質がアルミ製もしくはステンレス製のものを使用した。
【0347】
具体的な測定方法としては、まず、初期色調測定容器に吸水性樹脂を溢れるまで投入した。次に、当該容器の上面を超えて山なりになった吸水性樹脂を定規等ですり切り粉面を均した。そして、室温が20℃から25℃、相対湿度50RH%の雰囲気下で、当該吸水性樹脂表面のWI値を測定した。
【0348】
尚、前記吸水性樹脂が、製造直後もしくは工場出荷前の吸水性樹脂、又は、保存条件として30℃以下、相対湿度50%RHの雰囲気下で製造後1年以内である吸水性樹脂の場合、その色調を初期色調とした。
【表2】
表2から明らかなように、本発明に係る吸水性樹脂は、AAPの値を維持しつつ、4.
83kPaの加圧下におけるゲル膨張力を高くすることができ、より好ましくは、ゲル膨張力及びゲル膨張速度を高くすることができるので、1回目の排尿を吸収した後、2回目の排尿があったとき(加圧下で尿をさらに吸収するとき)においても、加圧下吸収倍率が従来(比較例)よりも向上する。即ち、2回目の排尿に対する加圧下吸収倍率が従来(比較例)よりも向上する。
【0349】
これに対して、比較例の吸水性樹脂は、4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力が低いので、さらに、ゲル膨張力及びゲル膨張速度が両方低いので、2回目の排尿に対する加圧下吸収倍率が不十分である。
【0350】
続いて、実施例1~4及び比較例1~6で得られた表面架橋後の吸水性樹脂を用いて、吸収体を作製した。作製方法を以下に示す。
【0351】
[吸収体の作製]
本発明では、紙オムツ等の吸収性物品の薄型化の傾向が最も進んだ場合の条件として、木材粉砕パルプ等の繊維材料を使用しない、つまり、実質的に吸水性樹脂100%からなる吸収体を想定して、当該吸収体を作製した。具体的には、
図9に示すように、前記SFCの測定時に用いるシリンダー24内に吸水性樹脂4を3.0g仕込み、シリンダー24内の吸水性樹脂4の上に、液透過性のトップシートを模した不織布(製法:スパンボンド法、厚み:0.1mm、目付:13g/m
2、液拡散面積:18mm
2)26を置いた。尚、当該不織布26は、シリンダー24の内径よりも0.2mm短い直径を有する円形状にカットしたものを使用した。また、当該不織布26の、厚み、目付、及び液拡散面積については後述の測定方法により測定した。
続いて、作製した吸収体を用いて、加圧下液獲得量を測定した。測定方法を以下に示す。また、測定結果を表3に示す。
【0352】
[吸収体の加圧下液獲得量]
本発明に係る吸収体の加圧下液獲得量(単位:g)は、下記方法で測定した。尚、前述の2回目の排尿に対する加圧下吸収倍率に対して、当該吸収体の加圧下液獲得量では、使用する0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(好ましくは、1000gに対して0.04gのブリリアントブルーFCF(青色1号)で着色しても良い)の液温を人尿を想定した36.5±0.5℃に変更しており、2回目の排尿に対する加圧下吸収倍率とは異なり、吸収性物品としての実使用を想定した場合の、吸収体の機能を適切に評価している。
【0353】
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、
図10に示すように、前記SFCの測定時に用いるピストン25、シリンダー24の上に被せる貫通孔を2つ備えた蓋23、及び重り22を準備し、作製した吸収体を仕込んだシリンダー24内にピストン25を挿入した。この時、シリンダー24の内壁とピストン25との間に吸水性樹脂4及び不織布26が噛み込まないようにした。その後、蓋23をセットし、ピストン25の上部に重り22をセットした。尚、以降では、ここで作製した吸水性樹脂4、不織布26、シリンダー24、ピストン25、蓋23、及び重り22からなる一連のセットを、セルセットCと称す。尚、ここまでを、温度が23±0.5℃、かつ湿度が35%から50%の間に調整された室内で実施し、これ以降は、温度が23±0.5℃、かつ湿度が35%から60%の間に調整された室内で実施した。
【0354】
セルセットCの質量を計測し、これを(A)とした。次に、
図11の測定環境に示すように、水平な実験台の上に23℃に設定した面上ヒーター10を置き、面上ヒーター10の上にAAPの測定時に用いるSUS製トレイ9を置き、SUS製トレイ9の中央部にAAPの測定時に用いるガラスフィルター7を凹凸が少ない面を上側にして置き、ガラスフィルター7の中央部にAAPの測定時に用いる濾紙6を凹凸が少ない面を上側にして置き、濾紙6の中央部に前記セルセットCを置いた。
【0355】
この測定環境下で、36.5±0.5℃に調温した0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(好ましくは、1000gに対して0.04gのブリリアントブルーFCF(青色1号)で着色しても良い)40gを容量が60mLのシリンジに測り取り、セルセットC中の蓋23の孔にシリンジの先端を挿入し、シリンダー24内に6秒間程度で添加し、吸水性樹脂4の膨潤を開始させた。そして、前記0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の添加開始から計測して2分間経過後に、セルセットCの質量を計測し、これを(B)とした。尚、質量計測に際し、濾紙6上から電子天秤等にセルセットCを移動させるときは、セルセットCは分解せず、そのままの構造を維持した。具体的には、シリンダー24の外壁部分を手で掴んで持ち運ぶようにし、蓋23、ピストン25、及びピストン25の上部にセットした重り22には触れないようにした。また質量計測の際に、並行してガラスフィルター7上の濾紙6を未使用のものに取り換えた。そして、質量を計測した後、再びセルセットCを、当該未使用の濾紙6の中央部に置き、再び、36.5±0.5℃に調温した0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(好ましくは、1000gに対して0.04gのブリリアントブルーFCF(青色1号)で着色しても良い)40gを、先ほどと同様、シリンジを用いてセルセットC中の蓋23の孔からシリンダー24内に6秒間程度で添加した。尚、前記セルセットCの質量計測作業、及び濾紙6の取り換え作業は30秒以内で実施した。すなわち、2回目の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液添加は、1回目の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の添加開始から計測して2分30秒以内に開始した。そして、2回目の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の添加開始から計測して3分間経過後にセルセットCの質量を計測し、これを(C)とした。尚、質量計測に際し濾紙紙6上から電子天秤にセルセットCを移動させるときは、前記同様セルセットCは分解せず、そのままの構造を維持した。
【0356】
そして、2回目の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の添加を開始した時点から3分間経過するまでの加圧下液獲得量を、2回目の排尿に対する吸収体の加圧下液獲得量(単位:g)として、下記式(5)に基づいて算出した。尚、2回目の排尿に対する吸収体の加圧下液獲得量とは、1回目の排尿によって膨潤した吸収体が2回目以降の排尿に対して、加圧下でも尿を吸収することができる能力を評価する指標である。
【0357】
2回目の排尿に対する吸収体の加圧下液獲得量=(C)-(B) …式(5)
また、1回目の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の添加を開始した時点から2分間経過するまでの加圧下液獲得量、及び2回目の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の添加を開始した時点から3分間経過するまでの加圧下液獲得量の合計量を、1回目及び2回目の排尿に対する吸収体の加圧下総液獲得量(単位:g)として、下記式(6)に基づいて算出した。
【0358】
1回目及び2回目の排尿に対する吸収体の加圧下総液獲得量=(C)-(A) …式(6)
尚、本測定において、前記(B)および前記(C)を計測する際、膨潤した吸水性樹脂の層の上に0.9質量%塩化ナトリウム水溶液が残っている場合は計測不可とみなす。すなわち、目視確認で、前記計測時に膨潤した吸水性樹脂の層の上に0.9質量%塩化ナトリウム水溶液が残っている場合、当該吸水性樹脂の「2回目の排尿に対する吸収体の加圧下液獲得量」、および「1回目及び2回目の排尿に対する吸収体の加圧下総液獲得量」は、測定不能とみなす。
【0359】
[不織布の厚み]
前記吸収体の加圧下液獲得量を測定する際に用いる不織布の厚み(単位:mm)は、下記測定方法で測定した。すなわち、ダイヤルシックネスゲージ 大型タイプ(厚み測定器)(株式会社尾崎製作所製、型番:J-B、測定子:アンビル上下φ50mm)を用いて測定した。測定点数は、異なる箇所を5回とし、測定値は5点の平均値とした。厚み測定時は、不織布に圧力が出来るだけかからないよう、ハンドルからゆっくりと手を離し、厚みを測定した。
【0360】
[不織布の目付]
前記吸収体の加圧下液獲得量を測定する際に用いる不織布の目付(単位:g/m2)は、下記測定方法で測定した。すなわち、縦10cm以上、横40cm以上の長方形に切り取った不織布の質量を測定し、当該質量を、切り取った不織布の面積で割って、目付を算出した。
【0361】
[不織布の液拡散面積]
前記吸収体の加圧下液獲得量を測定する際に用いる不織布の液拡散面積(単位:mm
2)は、下記測定方法で測定した。すなわち、目開きが2mm、線径が0.9mmの網を有する直径30cmのステンレス製篩を水平な実験台上に置き、当該篩の網の上に10cm四方に切り取った不織布を置いた。容量が1mLのシリンジに口径0.50mmの注射針を装着し、ブリリアントブルーFCF(青色1号)を20ppm含む0.9質量%塩化ナトリウム水溶液1.00gを量りとり、篩上の不織布の中央に当該塩化ナトリウム水溶液を、不織布に対して垂直方向に注入した。この時、不織布及び篩の網を一旦通過した当該塩化ナトリウム水溶液が、再び篩の網又は不織布に付着しないように、篩の網の下と実験台との間には十分な空間を設けた。不織布が当該塩化ナトリウム水溶液を吸水し液の拡散が完了した時点で、当該塩化ナトリウム水溶液が拡散している面積を測定した。
【表3】
表3から明らかなように、吸水性樹脂のAAPの値を維持しつつ、4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力を高くし、より好ましくは、ゲル膨張力及びゲル膨張速度を高くすることで、当該吸水性樹脂を使用した吸収体は、1回目の排尿を吸収した後、2回目の排尿があったとき(加圧下で尿をさらに吸収するとき)においても、加圧下液獲得量が従来よりも向上する。即ち、2回目の排尿に対する加圧下液獲得量が従来よりも向上する。また、1回目及び2回目の排尿に対する吸収体の加圧下総液獲得量についても従来よりも向上する。
【0362】
これに対して、比較例の吸水性樹脂は、4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力が低いので、さらに、ゲル膨張力及びゲル膨張速度が両方低いので、当該吸水性樹脂を使用した吸収体は、2回目の排尿に対する加圧下液獲得量が不十分である。また、1回目及び2回目の排尿に対する吸収体の加圧下総液獲得量についても不十分である。
【0363】
本発明の一実施形態には、以下の態様が含まれる。
【0364】
[1]4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力が26N以上である吸水性樹脂を含むことを特徴とする吸収体。
【0365】
[2]総質量における吸水性樹脂の質量比率が75質量%以上で100質量%以下であることを特徴とする[1]に記載の吸収体。
【0366】
[3][1]又は[2]に記載の吸収体を含んでなる吸収性物品。
【0367】
[4]4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張力が26N以上であることを特徴とする吸水性樹脂。
【0368】
[5]4.83kPaの加圧下におけるゲル膨張速度が8.5以上であることを特徴とする[4]に記載の吸水性樹脂。
【0369】
[6]総体積に占める、Cavity体積率が15体積%以上の粒子の体積が、40体積%以上であることを特徴とする[4]又は[5]に記載の吸水性樹脂。
【0370】
[7]総体積に占める、Void体積率が1体積%以下の粒子の体積が、65体積%以上であることを特徴とする[4]~[6]の何れか一項に記載の吸水性樹脂。
【0371】
[8]無加圧下吸収倍率(CRC)が25g/g以上であることを特徴とする[4]~[7]の何れか一項に記載の吸水性樹脂。
【0372】
[9]4.83kPaの加圧下における加圧下吸収倍率(AAP)が20g/g以上であることを特徴とする[4]~[8]の何れか一項に記載の吸水性樹脂。
【0373】
[10]生理食塩水流れ誘導性(SFC)が15(×10-7cm3・sec/g)以上、55(×10-7cm3・sec/g)以下であることを特徴とする[4]~[9]の何れか一項に記載の吸水性樹脂。
【0374】
[11]質量平均粒子径(D50)が250μm以上、550μm以下であり、総質量に占める、粒子径が710μm超の粒子の質量が、2質量%以下であり、粒子径が150μm未満の粒子の質量が、3質量%以下であることを特徴とする[4]~[10]の何れか一項に記載の吸水性樹脂。
【産業上の利用可能性】
【0375】
本発明に係る吸収体は、例えばパルプ等の繊維材料比率が小さい吸収体を有する、薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合に、当該吸収体の2回目以降の排尿に対する加圧下液獲得量が従来よりも向上し、その結果として当該紙オムツ等の吸収性物品の液獲得機能が従来よりも向上する。また、本発明に係る吸水性樹脂は、例えばパルプ等の繊維材料比率が小さい吸収体を有する薄型の紙オムツ等の吸収性物品の吸収体に使用された場合においても、当該吸水性樹脂の2回目以降の排尿に対する加圧下吸収倍率が向上し、その結果として当該吸収体の2回目以降の排尿に対する加圧下液獲得量が向上する。従って、本発明に係る吸収体及び吸水性樹脂は、例えばパルプ等の繊維材料比率の小さい薄型の紙オムツ等の吸収性物品に好適に利用することができる。また、本発明に係る吸収体及び吸水性樹脂は、紙オムツ以外の吸収性物品(生理用ナプキン、失禁パッド等)、農園芸用の土壌保水剤、工業用の止水剤等の、種々の用途にも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0376】
1 重り
2 ピストン
3 シリンダー
4 吸水性樹脂
5 ビニールテープ
6 濾紙
7 ガラスフィルター
8 0.9質量%塩化ナトリウム水溶液
9 SUS製トレイ
10 面上ヒーター
11 スタンド
12 ムッフ
13 クランプ
14 センサヘッド
15 アンプユニット
16 電源ユニット
17 データロガー
18 レーザーの照射方向
19 ロードセル
20 上圧盤
21 下圧盤
22 重り
23 蓋
24 シリンダー
25 ピストン
26 不織布