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特許7387790低熱膨張係数を持つガラス組成物、及びガラス繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】低熱膨張係数を持つガラス組成物、及びガラス繊維
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/093 20060101AFI20231120BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20231120BHJP
   C03C 13/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C03C3/093
C03C3/091
C03C13/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022043898
(22)【出願日】2022-03-18
(65)【公開番号】P2022151758
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】110110911
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】520409925
【氏名又は名称】富喬工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】王 政棠
(72)【発明者】
【氏名】張 校康
(72)【発明者】
【氏名】陳 壁程
(72)【発明者】
【氏名】張 致源
(72)【発明者】
【氏名】徐 文合
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-001950(JP,A)
【文献】国際公開第2020/235284(WO,A1)
【文献】特開2001-220173(JP,A)
【文献】特開昭60-042247(JP,A)
【文献】特開2007-256764(JP,A)
【文献】特開平07-172863(JP,A)
【文献】特開2003-238196(JP,A)
【文献】特開2016-030712(JP,A)
【文献】特開2010-053013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低熱膨張係数を持つガラス組成物であって、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ホウ素(B)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)及び酸化銅(CuO)を含み、
該ガラス組成物の重量パーセント100wt%に対して、
該酸化ケイ素の含有量は55wt%~63wt%の範囲にあり、
該酸化アルミニウムの含有量は15wt%~22wt%の範囲にあり、
該酸化ホウ素の含有量は6wt%~13wt%の範囲にあり、
該酸化マグネシウムの含有量は5wt%~14wt%の範囲にあり、
該酸化カルシウムの含有量は0.1wt%~0.4wt%の範囲にあり、
該酸化銅の含有量は0.03wt%~7wt%の範囲にあることを特徴とする低熱膨張係数を持つガラス組成物。
【請求項2】
前記ガラス組成物は、酸化亜鉛(ZnO)をさらに含み、該ガラス組成物の重量パーセント100wt%に対して、該酸化亜鉛の含有量は0wt%を超え8wt%以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の低熱膨張係数を持つガラス組成物。
【請求項3】
前記酸化銅と酸化亜鉛の含有量の合計が4.5wt%~7wt%の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の低熱膨張係数を持つガラス組成物。
【請求項4】
前記酸化銅の含有量が前記ガラス組成物の重量パーセントの0.5wt%~7wt%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の低熱膨張係数を持つガラス組成物。
【請求項5】
前記酸化銅の含有量が前記ガラス組成物の重量パーセントの4wt%~7wt%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の低熱膨張係数を持つガラス組成物。
【請求項6】
前記酸化マグネシウムの含有量が5wt%~9.5wt%範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の低熱膨張係数を持つガラス組成物。
【請求項7】
前記酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び酸化銅の含有量の合計が12wt%~15wt%の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の低熱膨張係数を持つガラス組成物。
【請求項8】
前記酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化ホウ素の含有量の合計が84wt%~90wt%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の低熱膨張係数を持つガラス組成物。
【請求項9】
前記酸化ホウ素の含有量が6wt%~11wt%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の低熱膨張係数を持つガラス組成物。
【請求項10】
酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、酸化鉄(Fe)及び二酸化チタン(TiO)のうちの少なくとも一種を含有するドーパントをさらに含み、該ドーパントの前記ガラス組成物中の含有量が1.2wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の低熱膨張係数を持つガラス組成物。
【請求項11】
請求項1から請求項10に記載の低熱膨張係数を持つガラス組成物からなるガラス繊維であって、該ガラス繊維の熱膨張係数膨張係数が3ppm/℃以下であることを特徴とするガラス繊維。
【請求項12】
製品であって、請求項11に記載のガラス繊維を含むことを特徴とする製品。
【請求項13】
前記製品は、プリント基板、ICチップ実装基板又はレーダードームであることを特徴とする請求項12に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス組成物及びガラス繊維に関し、特に、低膨張係数を持つガラス組成物、及びガラス繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維は、優れた電気絶縁性、低消耗性、及び高安定性などの利点を持つので、回路基板、光ファイバー通信、電子製品の外装ケースなどに広く応用されている。例えば、ガラス繊維をプリント基板に適用する場合は、金属箔シート/配線などの電子部品に貼り付けるための絶縁層又は絶縁部に補強材料として添加しており、熱膨張係数の違いによる絶縁層又は絶縁部と金属箔シート/配線との間の剥離の発生を抑制するために、低熱膨張係数(Coefficient of thermal expansion,CTE)を持つガラス繊維の研究開発が進められている。
【0003】
現在市販されている低熱膨張係数のガラス繊維は、熱膨張係数が約3ppm/℃~4ppm/℃の範囲にあるが、ハイテク産業の発展に伴い、配線パターンの設計も日々複雑化しており、製造過程における熱膨張や収縮などによる残留応力が電子部品に影響を与えてしまうため、業界では、より低い熱膨張係数を有するガラス繊維が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】台湾特許第TWI565675B号公報
【文献】中国特許第CN103339076A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、本発明は、低熱膨張係数を持つガラス組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、低熱膨張係数を持つガラス組成物であって、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ホウ素(B)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化銅(CuO)を含むことを特徴とする。
【0007】
尚、前記ガラス組成物の重量パーセント100wt%に対して、該酸化ケイ素の含有量は55wt%~63wt%の範囲にあり、該酸化アルミニウムの含有量は15wt%~22wt%の範囲にあり、該酸化ホウ素の含有量は6wt%~13wt%の範囲にあり、該酸化マグネシウムの含有量は5wt%~14wt%の範囲にあり、該酸化カルシウムの含有量は0.1wt%~4wt%の範囲にあり、該酸化亜鉛の含有量は0wt%~8wt%の範囲にあり、該酸化銅の含有量は0.03wt%~7wt%の範囲にあることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の目的は、低熱膨張係数を持つガラス繊維を提供することである。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、前述の低熱膨張係数を持つガラス組成物からなるガラス繊維であって、該ガラス繊維の熱膨張係数が3ppm/℃以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の異質な効果とは、本発明の低熱膨張係数を持つガラス組成物中の酸化銅の含有量を増加させ、酸化亜鉛の含有量を減少させることにより、当該低熱膨張係数を持つガラス組成物からなるガラス繊維の熱膨張係数を3ppm/℃以下に低減させることにある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る低熱膨張係数を持つガラス組成物は、低熱膨張係数を持つガラス繊維を製造するために用いられる。概略的に説明すると、当該ガラス繊維は、本発明のガラス組成物を十分に混合した後、高温で溶融、紡糸などの工程を順次行うことにより製造され、熱膨張係数は3ppm/℃以下である。
【0012】
本発明のガラス組成物の一つの実施例においては、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ホウ素(B)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化銅(CuO)、及びドーパントを含む。
【0013】
具体的に述べると、前記ガラス組成物の重量パーセント100wt%に対して、該酸化ケイ素の含有量は55wt%~63wt%の範囲にあり、該酸化アルミニウムの含有量は15wt%~22wt%の範囲にあり、該酸化ホウ素の含有量は6wt%~13wt%の範囲にあり、該酸化マグネシウムの含有量は5wt%~14wt%の範囲にあり、該酸化カルシウムの含有量は0.1wt%~4wt%の範囲にあり、該酸化亜鉛の含有量は0wt%~8wt%の範囲にあり、該酸化銅の含有量は0.03wt%~7wt%の範囲にあり、該ドーパントの含有量は1.2wt%以下である。
【0014】
本発明のガラス組成物における、酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化ホウ素は、前記ガラス繊維を構成する主成分であり、そのうち酸化ケイ素は、網目形成成分(Network former)であることから、その四面体の結晶格子構造[SiO]で連続した網目構造を形成して、本発明のガラス組成物からなるガラス繊維の主要な構造となる。酸化アルミニウムは、本発明のガラス組成物の中間体(intermediate)となるものであり、酸化ケイ素における一部の酸素原子と結合して架橋酸素を形成して、該ガラス組成物の熱安定性及び粘度をさらに高めるために用いられるが、該酸化アルミニウムの含有量が多すぎると、当該ガラス組成物の粘度が高くなり、その後のガラス繊維の製造工程において、大量の加熱エネルギーを供給しなければならず、生産コストの増大を招いてしまう。酸化ホウ素は、四面体の結晶格子構造での酸化ケイ素と結合して、安定した連続構造を形成することができ、また、製造工程においての高温状態下では粘度を下げ、結晶析出を抑える作用があり、一方、製造工程においての低温状態下ではガラス構造の緊密度を向上させ、当該ガラス組成物の熱膨張係数を低下させることができるが、該酸化ホウ素の含有量が多すぎると、製造工程の高温状態で過度の蒸発が起こり、当該ガラス組成物の組成に変動が生じ、該ガラス組成物の電気絶縁性にも影響を及ぼしてしまう。
【0015】
本実施例においては、前記ガラス組成物の重量パーセント100wt%に対して、前記酸化ケイ素の含有量は55wt%~63wt%の範囲にあり、前記酸化アルミニウムの含有量は15wt%~22wt%の範囲にあり、前記酸化ホウ素の含有量は6wt%~13wt%の範囲にある。尚、該酸化ホウ素の含有量は、6wt%~11wt%の範囲にあることが好ましく、また、該酸化ケイ素と酸化アルミニウムと酸化ホウ素の含有量の合計は、84wt%~90wt%の範囲にあることが好ましい。
【0016】
酸化マグネシウム及び酸化カルシウムは、本発明のガラス組成物の高温時の粘度を適度に減少させることができるので、製造時における当該ガラス組成物の溶融を促進させるが、該酸化カルシウムの含有量が多すぎると、結晶析出現象が増えてしまい、この場合、酸化マグネシウムの添加は当該ガラス組成物の機械的強度を高めるのに役立つが、酸化マグネシウムの含有量が多すぎると、ガラス構造の緊密度が落ち、熱膨張係数の低減に不利となる。
【0017】
本実施例においては、前記ガラス組成物の重量パーセント100wt%に対して、前記酸化マグネシウムの含有量は5wt%~14wt%の範囲にあり、前記酸化カルシウムの含有量は0.1wt%~4wt%にある。尚、該酸化マグネシウムの含有量は5wt%~9.5wt%、該酸化カルシウムの含有量は0.1wt%~0.4wt%の範囲にあることが好ましい。
【0018】
酸化亜鉛及び酸化銅の添加は、本発明に係るガラス繊維の熱膨張係数の低減に役立つものであり、本実施例においては、前記ガラス組成物の重量パーセント100wt%に対して、該酸化亜鉛の含有量は0wt%~8wt%の範囲にあり、該酸化銅の含有量は0.03wt%~7wt%の範囲にある。しかしながら、一般的なガラス組成物には、アルカリ金属塩類(例えば、酸化カリウム、酸化ナトリウムなど)も添加されるが、ガラス組成物がアルカリ金属塩類を含むと、酸化亜鉛の存在により、かえって当該ガラス組成物本来の緻密な構造が緩くなり、膨張係数の低減に不利となる。従って、一部の実施例においては、ガラス組成物がアルカリ金属塩類などの成分を含有する場合、必要に応じて酸化亜鉛を添加しなくてもよい。
【0019】
本発明では、ガラス繊維の熱膨張係数をさらに下げるために酸化銅を添加することにより、当該ガラス繊維の熱膨張係数を低減させると共に、ガラス組成物は製造工程において緻密な構造を形成する傾向があり、酸化亜鉛によるガラス組成物の構造の粗雑化を抑制することができる。しかしながら、酸化銅の含有量が7wt%を超えると、生成されたガラス繊維中の結晶析出現象が増加する傾向にあり、その後の使用に不利となる。
【0020】
一部の実施例においは、前記ガラス組成物の重量パーセント100wt%に対して、添加された酸化銅の含有量は0.5wt%~7wt%の範囲にあるが、これに限定されるものではなく、該酸化銅の含有量が4wt%~7wt%の範囲にあり、該酸化銅と酸化亜鉛の含有量の合計が4.5wt%~7wt%の範囲にあることが好ましい。尚、他の実施例においては、該酸化マグネシウムと酸化亜鉛と酸化銅の含有量の合計が12wt%~15wt%の範囲にあってもよい。
【0021】
本実施例においては、前記ガラス組成物の重量パーセント100wt%に対して、該ドーパントの含有量が1.2wt%以下であり、該ドーパントは、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄及び二酸化チタンのうちの少なくとも一種を含有しており、該ドーパントがもたらす利点の一部は、ガラス組成物以外の微量成分に由来する。
【0022】
前記酸化ナトリウム、酸化カリウムなどのアルカリ性酸化物は、本発明のガラス組成物の耐酸性を向上させると共に、当該ガラス組成物の融点を下げ、ガラス繊維の製造に役立つが、これらアルカリ性酸化物の含有量が多すぎると、生成されたガラス繊維の化学的安定性が低下すると共に、当該ガラス繊維の電気絶縁性及び機械的強度も低下する。前記酸化鉄は、ガラス組成物の製造における溶融、紡糸などの工程においての安定性を向上させることができるが、酸化鉄の含有量が多すぎると、当該ガラス組成物の製造において温度ムラが発生する。前記二酸化チタンは、ガラス組成物の機械的強度を高めるのに役立つが、含有量が多すぎると、当該ガラス組成物の製造において結晶析出現象を起こしやすい。
【0023】
以下、本発明の各実施形態に係るガラス組成物について、第1~第9実施例を用いて説明する。また、後述する第1~第9実施例及び第1、第2比較例のガラス組成物からなるガラス繊維の熱膨張係数を表1にまとめた。
【0024】
<熱膨張係数の測定方法>
本発明の実施例においては、熱膨張係数の測定を熱機械分析装置(日立製作所製)により行い°C、その測定方法では、まず、ガラス組成物を溶融して、板状ガラス(寸法約0.5cm*0.5cm*2cm)を得て、その後、該板状ガラスを10°C/minの温度上昇速度で加熱し、50°C~200°Cの温度範囲で当該板状ガラスの伸び量を測定して、平均熱膨張係数を算出する。
【0025】
<第1実施例>
本実施例においては、ガラス組成物の重量パーセントを100wt%として、次の重量パーセントを有する成分、つまり、約59.4wt%の酸化ケイ素と、約19.1wt%の酸化アルミニウムと、約6.5wt%の酸化ホウ素と、約4.4wt%の酸化亜鉛と、約0.4wt%の酸化カルシウムと、約9.1wt%の酸化マグネシウムと、約0.1wt%の酸化銅と、約1.0wt%の前記ドーパント(0.03wt%の酸化ナトリウム(NaO)、0.03wt%の酸化カリウム(KO)、0.3wt%の酸化鉄(Fe)及び0.64wt%の二酸化チタン(TiO))とを含有する。
【0026】
上述した第1実施例のガラス組成物を十分に混合した後、1500℃~1550℃の温度で溶融し、その後、成形、裁断、研磨などの工程を経て、該第1実施例のガラス組成物からなる板状ガラスを得る。次に、当該板状ガラスを標準測定試料とし、前述の熱膨張係数の測定方法に従って、この第1実施例のガラス組成物からなる板状ガラスの熱膨張係数を測定し、2.90ppm/℃の熱膨張係数を得て、さらに、その後、混合、溶融、紡糸などの工程を経て、低熱膨張係数を持つガラス繊維を得る。
【0027】
尚、ガラス組成物に混合、溶融、紡糸などの工程を施すことにより得る、板状ガラスまたはガラス繊維に関する製造条件パラメータ及び具体的な製造工程は、当業者にとって周知技術であり、また、成分によっては、関連する製造条件パラメータが若干異なる場合があるが、これらの製造条件パラメータの調整は、当業者にとって周知の技術であるので、ここでその詳細な説明は省略する。
【0028】
<第2実施例>
本実施例においては、ガラス組成物の重量パーセントを100wt%として、次の重量パーセントを有する成分、つまり、約56.3wt%の酸化ケイ素と、約19.2wt%の酸化アルミニウムと、約10.0wt%の酸化ホウ素と、約6.5wt%の酸化亜鉛と、約0.2wt%の酸化カルシウムと、約6.2wt%の酸化マグネシウムと、約0.5wt%の酸化銅と、約1.1wt%の前記ドーパント(0.03wt%の酸化ナトリウム(NaO)、0.03wt%の酸化カリウム(KO)、0.34wt%の酸化鉄(Fe)及び0.7wt%の二酸化チタン(TiO))とを含有する。
【0029】
上述した第2実施例のガラス組成物に順次混合、溶融などの工程を施すことにより、該第2実施例のガラス組成物からなる板状ガラスを得る。次に、当該板状ガラスを標準測定試料とし、前述の熱膨張係数の測定方法に従って、この第2実施例のガラス組成物からなる板状ガラスの熱膨張係数を測定し、2.64ppm/℃の熱膨張係数を得て、さらに、その後、混合、溶融、紡糸などの工程を経て、低熱膨張係数を持つガラス繊維を得る。
【0030】
<第3実施例>
本実施例においては、ガラス組成物の重量パーセントを100wt%として、次の重量パーセントを有する成分、つまり、約56.4wt%の酸化ケイ素と、約19.2wt%の酸化アルミニウムと、約11.0wt%の酸化ホウ素と、約6.5wt%の酸化亜鉛と、約0.2wt%の酸化カルシウムと、約5.2wt%の酸化マグネシウムと、約0.5wt%の酸化銅と、約1.0wt%の前記ドーパント(0.03wt%の酸化ナトリウム(NaO)、0.03wt%の酸化カリウム(KO)、0.3wt%の酸化鉄(Fe)及び0.64wt%の二酸化チタン(TiO))とを含有する。
【0031】
上述した第3実施例のガラス組成物に順次混合、溶融などの工程を施すことにより、該第3実施例のガラス組成物からなる板状ガラスを得る。次に、当該板状ガラスを標準測定試料とし、前述の熱膨張係数の測定方法に従って、この第3実施例のガラス組成物からなる板状ガラスの熱膨張係数を測定し、2.70ppm/℃の熱膨張係数を得て、さらに、その後、混合、溶融、紡糸などの工程を経て、低熱膨張係数を持つガラス繊維を得る。
【0032】
<第4実施例>
本実施例においては、ガラス組成物の重量パーセントを100wt%として、次の重量パーセントを有する成分、つまり、約59.4wt%の酸化ケイ素と、約19.1wt%の酸化アルミニウムと、約6.5wt%の酸化ホウ素と、約3.5wt%の酸化亜鉛と、約0.4wt%の酸化カルシウムと、約9.1wt%の酸化マグネシウムと、約1.0wt%の酸化銅と、約1.0wt%の前記ドーパント(0.03wt%の酸化ナトリウム(NaO)、0.03wt%の酸化カリウム(KO)、0.3wt%の酸化鉄(Fe)及び0.64wt%の二酸化チタン(TiO))とを含有する。
【0033】
上述した第4実施例のガラス組成物に順次混合、溶融などの工程を施すことにより、該第4実施例のガラス組成物からなる板状ガラスを得る。次に、当該板状ガラスを標準測定試料とし、前述の熱膨張係数の測定方法に従って、この第4実施例のガラス組成物からなる板状ガラスの熱膨張係数を測定し、2.82ppm/℃の熱膨張係数を得て、さらに、その後、混合、溶融、紡糸などの工程を経て、低熱膨張係数を持つガラス繊維を得る。
【0034】
<第5実施例>
本実施例においては、ガラス組成物の重量パーセントを100wt%として、次の重量パーセントを有する成分、つまり、約59.4wt%の酸化ケイ素と、約19.1wt%の酸化アルミニウムと、約6.5wt%の酸化ホウ素と、約2.5wt%の酸化亜鉛と、約0.4wt%の酸化カルシウムと、約9.1wt%の酸化マグネシウムと、約2.0wt%の酸化銅と、約1.0wt%の前記ドーパント(0.03wt%の酸化ナトリウム(NaO)、0.03wt%の酸化カリウム(KO)、0.3wt%の酸化鉄(Fe)及び0.64wt%の二酸化チタン(TiO))とを含有する。
【0035】
上述した第5実施例のガラス組成物に順次混合、溶融などの工程を施すことにより、該第5実施例のガラス組成物からなる板状ガラスを得る。次に、当該板状ガラスを標準測定試料とし、前述の熱膨張係数の測定方法に従って、この第5実施例のガラス組成物からなる板状ガラスの熱膨張係数を測定し、2.80ppm/℃の熱膨張係数を得て、さらに、その後、混合、溶融、紡糸などの工程を経て、低熱膨張係数を持つガラス繊維を得る。
【0036】
<第6実施例>
本実施例においては、ガラス組成物の重量パーセントを100wt%として、次の重量パーセントを有する成分、つまり、約59.4wt%の酸化ケイ素と、約19.1wt%の酸化アルミニウムと、約6.5wt%の酸化ホウ素と、約0.4wt%の酸化カルシウムと、約9.1wt%の酸化マグネシウムと、約4.5wt%の酸化銅と、約1.0wt%の前記ドーパント(0.03wt%の酸化ナトリウム(NaO)、0.03wt%の酸化カリウム(KO)、0.3wt%の酸化鉄(Fe)及び0.64wt%の二酸化チタン(TiO))とを含有する。
【0037】
上述した第6実施例のガラス組成物に順次混合、溶融などの工程を施すことにより、該第6実施例のガラス組成物からなる板状ガラスを得る。次に、当該板状ガラスを標準測定試料とし、前述の熱膨張係数の測定方法に従って、この第6実施例のガラス組成物からなる板状ガラスの熱膨張係数を測定し、2.65ppm/℃の熱膨張係数を得て、さらに、その後、混合、溶融、紡糸などの工程を経て、低熱膨張係数を持つガラス繊維を得る。
【0038】
<第7実施例>
本実施例においては、ガラス組成物の重量パーセントを100wt%として、次の重量パーセントを有する成分、つまり、約59.4wt%の酸化ケイ素と、約19.2wt%の酸化アルミニウムと、約6.5wt%の酸化ホウ素と、約0.3wt%の酸化カルシウムと、約7.1wt%の酸化マグネシウムと、約6.5wt%の酸化銅と、約1.0wt%の前記ドーパント(0.03wt%の酸化ナトリウム(NaO)、0.03wt%の酸化カリウム(KO)、0.3wt%の酸化鉄(Fe)及び0.64wt%の二酸化チタン(TiO))とを含有する。
【0039】
上述した第7実施例のガラス組成物に順次混合、溶融などの工程を施すことにより、該第7実施例のガラス組成物からなる板状ガラスを得る。次に、当該板状ガラスを標準測定試料とし、前述の熱膨張係数の測定方法に従って、この第7実施例のガラス組成物からなる板状ガラスの熱膨張係数を測定し、2.39ppm/℃の熱膨張係数を得て、さらに、その後、混合、溶融、紡糸などの工程を経て、低熱膨張係数を持つガラス繊維を得る。
【0040】
<第8実施例>
本実施例においては、ガラス組成物の重量パーセントを100wt%として、次の重量パーセントを有する成分、つまり、約59.4wt%の酸化ケイ素と、約20.8wt%の酸化アルミニウムと、約6.5wt%の酸化ホウ素と、約0.2wt%の酸化カルシウムと、約5.5wt%の酸化マグネシウムと、約6.5wt%の酸化銅と、約1.1wt%の前記ドーパント(0.03wt%の酸化ナトリウム(NaO)、0.03wt%の酸化カリウム(KO)、0.34wt%の酸化鉄(Fe)及び0.7wt%の二酸化チタン(TiO))とを含有する。
【0041】
上述した第8実施例のガラス組成物に順次混合、溶融などの工程を施すことにより、該第8実施例のガラス組成物からなる板状ガラスを得る。次に、当該板状ガラスを標準測定試料とし、前述の熱膨張係数の測定方法に従って、この第8実施例のガラス組成物からなる板状ガラスの熱膨張係数を測定し、2.18ppm/℃の熱膨張係数を得て、さらに、その後、混合、溶融、紡糸などの工程を経て、低熱膨張係数を持つガラス繊維を得る。
【0042】
<第9実施例>
本実施例においては、ガラス組成物の重量パーセントを100wt%として、次の重量パーセントを有する成分、つまり、約59.4wt%の酸化ケイ素と、約18.7wt%の酸化アルミニウムと、約6.5wt%の酸化ホウ素と、約0.3wt%の酸化カルシウムと、約7.1wt%の酸化マグネシウムと、約7.0wt%の酸化銅と、約1.0wt%の前記ドーパント(0.03wt%の酸化ナトリウム(NaO)、0.03wt%の酸化カリウム(KO)、0.3wt%の酸化鉄(Fe)及び0.64wt%の二酸化チタン(TiO))とを含有する。
【0043】
上述した第9実施例のガラス組成物に順次混合、溶融などの工程を施すことにより、該第9実施例のガラス組成物からなる板状ガラスを得る。次に、当該板状ガラスを標準測定試料とし、前述の熱膨張係数の測定方法に従って、この第9実施例のガラス組成物からなる板状ガラスの熱膨張係数を測定し、2.33ppm/℃の熱膨張係数を得て、さらに、その後、混合、溶融、紡糸などの工程を経て、低熱膨張係数を持つガラス繊維を得る。
【0044】
<第1比較例>
本比較例においては、ガラス組成物の重量パーセントを100wt%として、次の重量パーセントを有する成分、つまり、約60.0wt%の酸化ケイ素と、約20.0wt%の酸化アルミニウムと、約5.0wt%の酸化ホウ素と、約3.0wt%の酸化カルシウムと、約11.0wt%の酸化マグネシウムと、約1.0wt%の前記ドーパント(0.03wt%の酸化ナトリウム(NaO)、0.02wt%の酸化カリウム(KO)、0.3wt%の酸化鉄(Fe)及び0.65wt%の二酸化チタン(TiO))とを含有する。
【0045】
上述した第1比較例のガラス組成物に順次混合、溶融などの工程を施すことにより、該第1比較例のガラス組成物からなる板状ガラスを得る。次に、当該板状ガラスを標準測定試料とし、前述の熱膨張係数の測定方法に従って、この第1比較例のガラス組成物からなる板状ガラスの熱膨張係数を測定し、3.34ppm/℃の熱膨張係数を得た。
【0046】
<第2比較例>
本比較例においては、ガラス組成物の重量パーセントを100wt%として、次の重量パーセントを有する成分、つまり、約60.0wt%の酸化ケイ素と、約20.0wt%の酸化アルミニウムと、約10.0wt%の酸化ホウ素と、約6.0wt%の酸化カルシウムと、約3.0wt%の酸化マグネシウムと、約1.0wt%の前記ドーパント(0.03wt%の酸化ナトリウム(NaO)、0.02wt%の酸化カリウム(KO)、0.3wt%の酸化鉄(Fe)及び0.65wt%の二酸化チタン(TiO))とを含有する。
【0047】
上述した第2比較例のガラス組成物に順次混合、溶融などの工程を施すことにより、該第2比較例のガラス組成物からなる板状ガラスを得る。次に、当該板状ガラスを標準測定試料とし、前述の熱膨張係数の測定方法に従って、この第2比較例のガラス組成物からなる板状ガラスの熱膨張係数を測定し、3.11ppm/℃の熱膨張係数を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
表1からも明らかなように、酸化銅及び酸化亜鉛を添加することにより、本発明の第1~第9実施例のガラス組成物の熱膨張係数は、第1、第2比較例に比べて、3ppm/℃以下に低減することができる。また、ガラス組成物中の酸化銅の含有量が4.5wt%以上であり、且つ、酸化亜鉛を含まない場合(第6~第9実施例)には、当該ガラス繊維の熱膨張係数をさらに2.65ppm/℃以下に低減することができる。さらに、酸化銅の含有量を6.5wt%~7.0wt%(第7~第9実施例)にさらに増加させると、当該ガラス組成物からなる板状ガラスの熱膨張係数が2.4ppm/℃以下に低減される。
【0050】
詳しく説明すると、第1実施例、第4~第6実施例のガラス組成物と比較すると、他の成分の含有量が近い場合、酸化亜鉛の含有量が減少し、酸化銅の含有量が増加することにより、製成されたガラス繊維の熱膨張係数が徐々に低減し、酸化亜鉛の含有量を0wt%に低減し、且つ酸化銅の含有量を4.5wt%(第6実施例)に増加させると、製成されたガラス繊維の熱膨張係数が2.65ppm/℃に低減する。さらに、第6~第9実施例のガラス組成物と比較すると、酸化亜鉛を含まずに、他の成分の含有量がほぼ同じである場合、酸化マグネシウムと酸化カルシウムの含有量を適量に減らして、酸化銅の含有量を7wt%までに増加させることにより、当該ガラス繊維の熱膨張係数を2.4ppm/℃以下(第7~第9実施例)に低減させることができることが分かった。
【0051】
要約すると、本發明低熱膨張係数を持つガラス組成物は、酸化銅の含有量を増加させ、酸化亜鉛の含有量を減少させ、且つ、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムの含有量を適量に減少させることにより、本発明に係るガラス組成物からなるガラス繊維の熱膨張係数を3ppm/℃以下に低減することができることから、本発明に係るガラス繊維を半導体の製造や電子産業に広く適用することが可能となるので、本発明の目的を確実に達成することができる。
【0052】
以上の説明は、本発明の好適な実施形態に過ぎず、本発明に対して何ら限定を行うものではない。本発明について、比較的好適な実施形態をもって上記のとおり説明を行ったが、これは本発明を限定するものではなく、すべての当業者が、本発明の技術構想を逸脱しない範囲において、本発明の技術の本質に基づいて上記の実施形態に対して行ういかなる簡単な修正、変更及び修飾も、依然としてすべて本発明の技術構想の範囲に含まれる。