(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】自動走行支援装置、作業車両及び作業車両の自動走行方法
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20231120BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20231120BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
G05D1/02 N
(21)【出願番号】P 2022087119
(22)【出願日】2022-05-27
(62)【分割の表示】P 2018243539の分割
【原出願日】2018-12-26
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】黒木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】鈴川 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】玉谷 健二
(72)【発明者】
【氏名】森下 孝文
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113940(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129671(WO,A1)
【文献】特開2018-025924(JP,A)
【文献】特開2018-045710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G05D 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1作業車両に設けられた第1測位装置で検出された第1車体位置を取得する第1車体位置取得部と、
基地局で検出された第1基準位置を、通信装置を介して取得する第1基準取得部と、
前記第1車体位置取得部が取得した第1車体位置と、前記第1基準取得部が取得した第1基準位置との相対位置に基づいて、第1圃場マップを作成する第1マップ作成部と、
前記第1圃場マップに自動走行を行うための走行予定ルートの作成を行う第1ルート作成部と、
前記第1圃場マップの前記走行予定ルートに基づいて前記第1作業車両の自動走行を行う第1自動走行制御部と、
前記第1基準位置とは異なる第2基準位置を取得する基準位置取得部と、
前記第1基準位置と前記第2基準位置との偏差
ΔX及びΔYの分だけ、前記第1圃場マップ及び前記走行予定ルートを
シフトすることにより、当該第2基準位置を基準とした前記第1圃場マップ及び前記走行予定ルートに補正する自動走行マップ補正部と、
を備え、
前記基準位置取得部は、前記第1作業車両とは別の第2作業車両が取得済みの前記第2基準位置を、当該第2作業車両から前記通信装置を介して受信することにより取得する自動走行支援装置。
【請求項2】
前記基準位置取得部は、前記第2基準位置に基づいて作成された第2圃場マップの走行予定ルートを自動走行している前記第2作業車両から、当該第2作業車両が取得済みの前記第2基準位置を、前記通信装置を介して受信することにより取得する請求項1に記載の自動走行支援装置。
【請求項3】
前記第1自動走行制御部は、前記自動走行マップ補正部で補正された前記第1圃場マップ及び前記走行予定ルートに基づいて、前記第1作業車両の自動走行を行う請求項1又は2に記載の自動走行支援装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の自動走行支援装置を備え、
前記第1自動走行制御部は、前記補正した圃場マップ及び走行予定ルートに基づいて走行車両の自動走行を行う作業車両。
【請求項5】
基地局で検出された第1基準位置に基づいて作成された第1圃場マップの走行予定ルートを生成するルート作成部と、
他の作業車両が取得済みの第2基準位置を受信する通信装置と、
前記第1基準位置と前記第2基準位置との偏差
ΔX及びΔYの分だけシフト補正された
当該第2基準位置を基準とした前記第1圃場マップ及び前記走行予定ルートに基づいて、走行車両の自動走行を行う自動走行制御部と、を備える作業車両。
【請求項6】
作業車両の自動走行を行う作業車両の自動走行方法であって、
前記作業車両に設けられた測位装置で検出された車体位置を取得する第1ステップと、
基地局で検出された第1基準位置を、通信装置を介して取得する第2ステップと、
前記第1ステップにおいて取得した車体位置と、前記第2ステップにおいて取得した第1基準位置との相対位置に基づいて、圃場マップを作成する第3ステップと、
前記圃場マップに自動走行を行うための走行予定ルートの作成を行う第4ステップと、
前記第1基準位置とは異なる第2基準位置を取得する第5ステップと、
前記第1基準位置と前記第2基準位置との偏差
ΔX及びΔYの分だけ、前記圃場マップ及び前記走行予定ルートを
シフトすることにより、当該第2基準位置を基準とした前記第1圃場マップ及び前記走行予定ルートに補正する第6ステップと、
前記補正した圃場マップ及び走行予定ルートに基づいて前記作業車両の自動走行を行う第7ステップと、
を備え、
前記第5ステップでは、前記作業車両とは別の作業車両が取得済みの前記第2基準位置を、当該別の作業車両から前記通信装置を介して受信することにより取得する作業車両の自動走行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行支援装置、作業車両及び作業車両の自動走行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の作業車両を自動走行させるための走行経路(走行予定ルート)を作成する技術として特許文献1に示す技術が知られている。特許文献1では、圃場の近傍に基地局となる衛星測位装置を設置し、基地局から補正情報をトラクタが受信することによって、トラクタの位置を補正しながら走行予定ルートに沿って自動走行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、作業を行う圃場の近くに衛星測位装置を設置し、複数台のトラクタが衛星測位装置の基準位置(基地局の位置)に基づいて、自動走行を行う場合がある。このような場合、トラクタに登録されている基地局の位置がトラクタ毎に異なることがあり、このような場合は、複数のトラクタが1つの基地局の基準位置を用いて自動走行を行うことが難しいのが実情である。また、単体のトラクタにおいて、自動走行を行う場合も、トラクタに登録されている基地局の位置と、実際の基地局の位置とが異なる場合は、自動走行を行うことが難しいのが実情である。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、走行予定ルートの作成で用いられた基準位置と、自動走行を行う際の基準位置とが異なっていても自動走行をスムーズに行うことができる自動走行支援装置、作業車両及び作業車両の自動走行方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
自動走行支援装置は、第1作業車両に設けられた第1測位装置で検出された第1車体位置を取得する第1車体位置取得部と、基地局で検出された第1基準位置を、通信装置を介して取得する第1基準取得部と、前記車体位置取得部が取得した第1車体位置と、前記第1基準取得部が取得した第1基準位置との相対位置に基づいて、第1圃場マップを作成する第1マップ作成部と、前記第1圃場マップに自動走行を行うための走行予定ルートの作成を行う第1ルート作成部と、前記第1圃場マップの前記走行予定ルートに基づいて前記第1作業車両の自動走行を行う第1自動走行制御部と、前記第1基準位置とは異なる第2基準位置を取得する基準位置取得部と、前記第1基準位置と前記第2基準位置との偏差ΔX及びΔYの分だけ、前記第1圃場マップ及び前記走行予定ルートをシフトすることにより、当該第2基準位置を基準とした前記第1圃場マップ及び前記走行予定ルートに補正する自動走行マップ補正部と、を備え、前記基準位置取得部は、前記第1作業車両とは別の第2作業車両が取得済みの前記第2基準位置を、当該第2作業車両から前記通信装置を介して受信することにより取得する。
【0007】
前記基準位置取得部は、前記第2基準位置に基づいて作成された第2圃場マップの走行予定ルートを自動走行している前記第2作業車両から、当該第2作業車両が取得済みの前記第2基準位置を、前記通信装置を介して受信することにより取得する。
前記第1自動走行制御部は、前記自動走行マップ補正部で補正された前記第1圃場マップ及び前記走行予定ルートに基づいて、第1作業車両の自動走行を行う。
【0008】
作業車両は、自動走行支援装置を備え、前記第1自動走行制御部は、前記補正した圃場マップ及び走行予定ルートに基づいて走行車両の自動走行を行う。
作業車両は、基地局で検出された第1基準位置に基づいて作成された第1圃場マップの走行予定ルートを生成するルート作成部と、他の作業車両が取得済みの第2基準位置を受信する通信装置と、前記第1基準位置と前記第2基準位置との偏差ΔX及びΔYの分だけシフト補正された当該第2基準位置を基準とした前記第1圃場マップ及び前記走行予定ルートに基づいて、走行車両の自動走行を行う自動走行制御部と、を備える。
【0009】
作業車両の自動走行方法は、作業車両の自動走行を行う作業車両の自動走行方法であって、前記作業車両に設けられた測位装置で検出された車体位置を取得する第1ステップと、基地局で検出された第1基準位置を、通信装置を介して取得する第2ステップと、前記第1ステップにおいて取得した車体位置と、前記第2ステップにおいて取得した第1基準位置との相対位置に基づいて、圃場マップを作成する第3ステップと、前記圃場マップに自動走行を行うための走行予定ルートの作成を行う第4ステップと、前記第1基準位置とは異なる第2基準位置を取得する第5ステップと、前記第1基準位置と前記第2基準位置との偏差ΔX及びΔYの分だけ、前記圃場マップ及び前記走行予定ルートをシフトすることにより、当該第2基準位置を基準とした前記第1圃場マップ及び前記走行予定ルートに補正する第6ステップと、前記補正した圃場マップ及び走行予定ルートに基づいて走行車両の自動走行を行う第7ステップと、を備え、前記第5ステップでは、前記作業車両とは別の作業車両が取得済みの前記第2基準位置を、当該別の作業車両から前記通信装置を介して受信することにより取得する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、走行予定ルートの作成で用いられた基準位置と、自動走行を行う際の基準位置とが異なっていても自動走行をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】複数の作業車両1が自動走行している状況を示す図である。
【
図5A】第1圃場マップMP11を作成する際の第1作業車両等の様子を示す図である。
【
図5B】第2圃場マップMP12を作成する際の第2作業車両等の様子を示す図である。
【
図7A】走行軌跡K11、K12から圃場の輪郭を求める図である。
【
図7B】走行軌跡K11、K12の変曲点から圃場の輪郭を求める図である。
【
図7C】走行時のスイッチ操作から輪郭を求める図である。
【
図8A】第1圃場マップMP11に走行予定ルートを作成した図である。
【
図8B】第2圃場マップMP12に走行予定ルートを作成した図である。
【
図10A】作業エリアA2に単位作業区画A3を作成した図である。
【
図11A】第1作業車両が第1基準位置BP-Aを基準として圃場HA1にて自動走行を行う様子を示した図である。
【
図11B】第2作業車両が第2基準位置BP-Bを基準として圃場HB1にて自動走行を行う様子を示した図である。
【
図12A】第1作業車両と第2作業車両とが通信して、第2基準位置BP-Bを取得する図である。
【
図12B】第1作業車両が衛星測位装置に問い合わせて、第2基準位置BP-Bを取得する図である。
【
図13】基準位置のズレに基づいて、第1圃場マップMP11及び走行予定ルートを補正する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、複数の作業車両1が走行予定ルートL1に沿って、自動走行している状況を示している。複数の作業車両1における自動走行においては、衛星航法、特に、高精度な測位が可能なRTK法を用いたRTK-GNSS測位によって、作業車両1の位置、方位等を検出しな
がら自動走行を行う。RTK-GNSS測位においては、衛星からの衛星信号を基地局(以下における衛星測位装置700)と移動局(以下における作業車両1に取り付けられた車両測位装置40)とで受信する。衛星測位装置700)は、緯度及び経度で示される基準位置に設置される。
【0013】
基地局では、衛星測位装置700が測位衛星の衛星信号によって求めた衛星受信機間距離等を含む補正情報、基準位置等を移動局(車両測位装置40)に無線通信により送信する。移動局においては、基地局から取得した補正情報に基づいて、測位衛星から受信した情報を補正して、より高い精度の位置情報を取得する。
図1に示すように、衛星測位装置700は、RTK-GNSS測位技術における基地局を構成可能な装置である。衛星測位装置700は、例えば、作業車両1で作業を行う作業場(圃場等)に設置される。衛星測位装置700は、支持体701と、支持体701に取付けられた測位装置702とを有している。測位装置702には、測位衛星からのL1信号、L2信号、L6信号等を受信する受信部703と、受信部703が受信した信号に基づいて位置等を演算する位置演算部705と、補正情報や位置を示す位置情報を送信する送信部706とを含んでいる。衛星測位装置700は、L1信号、L2信号、L6信号によって、基地局(衛星測位装置700)の位置(基準位置)を求めることができる。
【0014】
さて、複数の作業車両1は、第1作業車両1Aと、第2作業車両1Bとを含んでいる。第1作業車両1A及び第2作業車両1Bは、例えば、トラクタ、コンバイン、田植機等の農業機械である。
まず、第1作業車両1A及び第2作業車両1Bは、トラクタであるとして説明を進める。トラクタの運転席10に着座した運転者の前側を前方、運転者の後側を後方、運転者の左側を左方、運転者の右側を右方として説明する。また、作業車両1の前後方向に直交する方向である水平方向を車体幅方向として説明する。
【0015】
図15に示すように、トラクタは、走行装置7を有する走行車両3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等である。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。走行車両3にはキャビン9が設けられ、当該キャビン9内には運転席10が設けられている。
【0016】
また、走行車両3の後部には、3点リンク機構等で構成された昇降装置8が設けられている。昇降装置8には、作業装置2が着脱可能である。作業装置2を昇降装置8に連結す
ることによって、走行車両3によって作業装置2を牽引することができる。作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0017】
図2に示すように、トラクタは、操舵装置11を備えている。操舵装置11は、ハンドル(ステアリングホイール)11aと、ハンドル11aの回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)11bと、ハンドル11aの操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)11cと、を有している。補助機構11cは、油圧ポンプ21と、油圧ポンプ21から吐出した作動油が供給される制御弁22と、制御弁22により作動するステアリングシリンダ23とを含んでいる。制御弁22は、制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁22は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁22は、操舵軸11bの操舵によっても切換可能である。ステアリングシリンダ23は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)24に接続されている。
【0018】
したがって、ハンドル11aを操作すれば、当該ハンドル11aに応じて制御弁22の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁22の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ23が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置11は一例であり、上述した構成に限定されない。
図3に示すように、昇降装置8は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド8d、リフトシリンダ8eを有している。リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ8eは、制御弁を介して油圧ポンプと接続されている。制御弁は、電磁弁等であって、リフトシリンダ8eを伸縮させる。
【0019】
ロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。ロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部には、作業装置2が連結される。リフトシリンダ8eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
【0020】
トラクタは、車両測位装置40を備えている。車両測位装置40は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、車両測位装置40は、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて、トラクタの位置(例えば、緯度、経度)、即ち、車体位置を検出する。車両測位装置40は、受信装置41と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42、通信装置43を有している。受信装置41は、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された衛星信号を受信する装置であり、慣性計測装置42とは別に走行車両3に取付けられている。この実施形態では、受信装置41は、走行車両3、即ち、キャビン9に取付けられている。なお、受信装置41の取付箇所は、実施形態に限定されない。
【0021】
慣性計測装置42は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。走行車両3、例えば、運転席10の下方に設けられ、慣性計測装置4
2によって、走行車両3のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。
通信装置43は、様々なデータを当該トラクタの外部に送信したり、外部のデータをトラクタに取り込む装置である。通信装置43は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)等により無線通信を行ったり、携帯電話通信網、データ通信網、携帯電話通信網等によって無線通信を行う装置である。
【0022】
図1に示すように、トラクタは、制御装置60を備えている。制御装置60は、トラクタにおける走行系の制御、作業系の制御等を行う装置である。
制御装置60は、トラクタの自動走行を制御する自動走行制御部61を有している。自動走行制御部61は、制御装置60に設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。自動走行制御部61は、自動走行を開始すると、走行車両3が走行予定ルートL1に沿って走行するように操舵装置11の制御弁22を制御する。また、自動走行制御部61は、自動走行を開始すると、変速装置の変速段、原動機の回転数等を自動的に変更することによって、トラクタの車速(速度)を制御する。
【0023】
図4に示すように、トラクタが自動走行を行っている状況下において、車体位置と走行予定ルートL1との偏差が閾値未満である場合、自動走行制御部61は、操舵軸(回転軸)11bの回転角を維持する。車体位置と走行予定ルートL1との偏差が閾値以上であって、トラクタが走行予定ルートL1に対して左側に位置している場合は、自動走行制御部61は、トラクタの操舵方向が右方向となるように操舵軸11bを回転する。車体位置と走行予定ルートL1との偏差が閾値以上であって、トラクタが走行予定ルートL1に対して右側に位置している場合は、自動走行制御部61は、トラクタの操舵方向が左方向となるように操舵軸11bを回転する。なお、上述した実施形態では、車体位置と走行予定ルートL1との偏差に基づいて操舵装置11の操舵角を変更していたが、走行予定ルートL1の方位とトラクタ(走行車両3)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)F1とが異なる場合、即ち、走行予定ルートL1に対する車体方位F1の角度θgが閾値以上である場合、自動走行制御部61は、角度θgが零(車体方位F1が走行予定ルートL1の方位に一致)するように操舵角を設定してもよい。また、自動走行制御部61は、偏差(位置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位(方位偏差)に基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動操舵における最終の操舵角を設定してもよい。上述した実施形態における自動操舵における操舵角の設定は一例であり、限定されない。
【0024】
以上のように、制御装置60によって、トラクタ(走行車両3)を自動走行させることができる。
また、制御装置60は、手動昇降制御、自動上昇制御等を行うことができる。手動昇降制御では、制御装置60に接続された昇降スイッチ72の操作に基づいて昇降装置8による作業装置2の昇降する制御である。具体的には、昇降スイッチ72は、運転席10の周囲に設けられていて、3位置切換スイッチである。昇降スイッチ72を中立位置から一方に切り換えると、昇降装置8(リフトアーム8a)を上昇させる上昇信号が制御装置60に入力される。また、昇降スイッチ72を中立位置から他方に切り換えると、昇降装置8(リフトアーム8a)を下降させる下降信号が制御装置60に入力される。制御装置60は、上昇信号を取得すると制御弁に制御信号を出力することで昇降装置8を上昇させ、下降信号を取得すると制御弁に制御信号を出力することで昇降装置8を下降させる。つまり、制御装置60は、昇降スイッチ72の手動操作に応じて昇降装置8を昇降させる手動昇降制御をすることができる。
【0025】
また、自動上昇制御では、操舵装置11の操舵角が所定以上、例えば、旋回に対応する操舵角である場合に、自動的に昇降装置8を作動させることで作業装置2を上昇する制御である。具体的には、制御装置60には、操舵角検出装置70と、切換スイッチ71とが
接続されている。操舵角検出装置70は、操舵装置11の操舵角を検出する装置である。切換スイッチ71は、自動上昇制御の有効/無効を切り換えるスイッチであって、ON/OFFに切り換え可能なスイッチである。切換スイッチ71がONである場合、自動上昇制御が有効に設定され、切換スイッチ71がOFFである場合、自動上昇制御が無効に設定される。
【0026】
制御装置60は、自動上昇制御が有効であり且つ操舵角検出装置70が検出した操舵角が旋回に相当する操舵角以上である場合、制御弁に制御信号を出力することで昇降装置8を自動的に上昇させる自動上昇制御を行う。
以上のように、制御装置60によって、トラクタに関する制御、例えば、手動昇降制御、自動上昇制御を行うことができる。
【0027】
トラクタは、表示装置100を備えている。表示装置100は、液晶パネル、タッチパネル、その他のパネルのいずれかで構成された表示部50を有する装置である。表示装置100は、トラクタの走行を、支援をするための情報の他にトラクタに関する様々な情報を表示可能である。
以下、説明の便宜上、第1作業車両1Aに設けられた車両測位装置40のことを「第1測位装置40A」、第2作業車両1Bに設けられた車両測位装置40のことを「第2測位装置40B」、第1測位装置40Aが測位した車体位置のことを「第1車体位置」、第2測位装置40Bが測位した車体位置のことを「第2車体位置」という。また、第1作業車両1Aに設けられた自動走行制御部61のことを「第1自動走行制御部61A」、第2作業車両1Bに設けられた自動走行制御部61のことを「第2自動走行制御部61B」という。第1作業車両1Aの自動走行において用いられる圃場マップMPのことを「第1圃場マップMP11」、第2作業車両1Bの自動走行において用いられる圃場マップMPのことを「第2圃場マップMP12」という。第1作業車両1Aに設けられた表示装置100のことを「第1表示装置100A」、第2作業車両1Bに設けられた表示装置100のことを「第2表示装置100B」という。
【0028】
図5Aに示すように、第1作業車両1Aの自動走行を行うにあたっては、第1作業車両1Aに自動走行用の第1圃場マップMP11の登録を行う。例えば、第1作業車両1Aが作業を行う圃場HA1の近傍に、衛星測位装置700を設置して、衛星測位装置700の測位によって基地局の位置の設定、即ち、第1基準位置BP-Aの設定を行う。また、第1作業車両1Aは、例えば、圃場HA1の内部を走行させたときの第1車体位置VP1と、第1基準位置(設定基準位置)BP-Aとに基づいて、圃場HA1に対応する第1圃場マップMP11の登録(作成)を行う。なお、第1圃場マップMP11の登録は、後述するように他の方法であってもよい。
【0029】
図5Bに示すように、第2作業車両1Bの自動走行を行うにあたっても、第2作業車両1Bに自動走行用の第2圃場マップMP12の登録を行う。例えば、第2作業車両1Bが作業を行う圃場HB1の近傍に、衛星測位装置700を設置して、衛星測位装置700の測位によって基地局の位置の設定、即ち、第2基準位置BP-Bの設定を行う。また、第2作業車両1Bは、圃場HB1の内部を走行させたときの第2車体位置VP2と、第2基準位置(設定基準位置)BP-Bとに基づいて、圃場HB1に対応する第2圃場マップMP12の作成を行う。なお、第2圃場マップMP12の登録は、後述するように他の方法であってもよい。
【0030】
次に、第1作業車両1Aにおける第1圃場マップMP11の作成と、第2作業車両1Bにおける第2圃場マップMP12の作成とについて順に説明する。
第1圃場マップMP11の作成は、第1作業車両1Aに設けられた自動走行支援装置により行う。自動走行支援装置は、第1車体位置取得部800Aと、第1基準取得部801
Aと、第1マップ作成部802Aとを有している。第1車体位置取得部800A、第1基準取得部801A及び第1マップ作成部802Aは、例えば、第1表示装置100Aに設けられた電気・電子部品、表示装置に組み込まれたプログラム等から構成されている。なお、第1基準取得部801A及び第1マップ作成部802Aは、第1作業車両1Aに設けられていればよく第1表示装置100Aに限定されない。
【0031】
第1車体位置取得部800Aは、第1測位装置40Aで検出された第1車体位置を取得する。第1基準取得部801Aは、基地局(衛星測位装置700)で検出された第1基準位置BP-Aを取得する。第1マップ作成部802Aは、第1車体位置取得部800Aが取得した第1車体位置と、第1基準取得部801Aが取得した第1基準位置BP-Aとの相対位置に基づいて、第1圃場マップMP11を作成する。
【0032】
図6に示すように、作業者(運転者)が表示装置に対して所定の操作を行うと、第1マップ作成部802Aは、第1表示装置100Aの表示部50にマップ登録画面M1を表示する。マップ登録画面M1には、圃場を含むマップ、圃場名及び圃場管理番号等の圃場識別情報が表示される。マップには、圃場を示す画像データの他に緯度、経度等の位置情報が対応付けられている。
【0033】
第1作業車両1Aが圃場HA1内に入り、圃場HA1内を周回すると、第1車体位置取得部800Aは、第1測位装置40Aが検出した第1車体位置VP1を取得する。マップ登録画面M1には、第1作業車両1Aが周回したときに第1車体位置VP1が表示される。また、第1基準取得部801Aは、第1作業車両1Aの通信装置43を介して衛星測位装置700から送信された第1基準位置BP-A、即ち、設定基準位置BP-Aを取得する。
【0034】
第1作業車両1Aによる圃場HA1の周回が終了し、マップ登録画面M1に表示された登録ボタン51が選択されると、
図7Aに示すように、第1マップ作成部802Aは、第1作業車両1Aが周回したときの複数の第1車体位置VP1によって得られた走行軌跡K11を圃場の輪郭(外形)H11とし、当該輪郭H11を第1圃場マップMP11として圃場識別情報と共に登録する。
【0035】
なお、
図7Bに示すように、第1マップ作成部802Aは、第1車体位置VP1で示される走行軌跡から変曲点を演算して変曲点を結ぶ輪郭K12を第1圃場マップMP11として登録してもよいし、
図7Cに示すように、第1作業車両1Aが周回する際に運転者等が第1作業車両1Aに設けられたスイッチ等によって圃場の端部を指定し指定された端部を結んだ輪郭K13を第1圃場マップMP11としてもよい。
【0036】
第1圃場マップMP11における位置情報(緯度、経度)は、第1測位装置40Aが測位した第1車体位置VP1と、第1基準位置BP-Aとの相対位置として表現され、第1表示装置100Aに設けられた第1記憶装置805Aに記憶される。
第2圃場マップMP12の作成は、第2作業車両1Bに設けられた自動走行支援装置により行う。自動走行支援装置は、第2車体位置取得部800Bと、第2基準取得部801Bと、第2マップ作成部802Bとを有している。第2車体位置取得部800B、第2基準取得部801B及び第2マップ作成部802Bは、例えば、第2表示装置100Bに設けられた電気・電子部品、表示装置に組み込まれたプログラム等から構成されている。なお、第2基準取得部801B及び第2マップ作成部802Bは、第2作業車両1Bに設けられていればよく第2表示装置100Bに限定されない。
【0037】
第2車体位置取得部800Bは、第2測位装置40Bで検出された第2車体位置を取得する。第2基準取得部801Bは、基地局(衛星測位装置700)で検出された第2基準
位置BP-Bを取得する。第2マップ作成部802Bは、第2車体位置取得部800Bが取得した第2車体位置と、第2基準取得部801Bが取得した第2基準位置BP-Bとの相対位置に基づいて、第2圃場マップMP12を作成する。
【0038】
図6に示すように、作業者(運転者)が表示装置に対して所定の操作を行うと、第2マップ作成部802Bは、第2表示装置100Bの表示部50にマップ登録画面M1を表示する。マップ登録画面M1には、圃場を含むマップ、圃場名及び圃場管理番号等の圃場識別情報が表示される。マップには、圃場を示す画像データの他に緯度、経度等の位置情報が対応付けられている。
【0039】
第2作業車両1Bが圃場HB1内に入り、圃場HB1内を周回すると、第2車体位置取得部800Bは、第2測位装置40Bが検出した第2車体位置VP2を取得する。マップ登録画面M1には、第2作業車両1Bが周回したときに第2車体位置VP2が表示される。また、第2基準取得部801Bは、第2作業車両1Bの通信装置43を介して衛星測位装置700から送信された第2基準位置BP-B、即ち、設定基準位置BP-Bを取得する。
【0040】
第2作業車両1Bによる圃場HB1の周回が終了し、マップ登録画面M1に表示された登録ボタン51が選択されると、
図7Aに示すように、第2マップ作成部802Bは、第2作業車両1Bが周回したときの複数の第2車体位置VP2によって得られた走行軌跡K21を圃場の輪郭(外形)H21とし、当該輪郭H21を第2圃場マップMP12として圃場識別情報と共に登録する。
【0041】
なお、
図7Bに示すように、第2マップ作成部802Bは、第2車体位置VP2で示される走行軌跡から変曲点を演算して変曲点を結ぶ輪郭K22を第2圃場マップMP12として登録してもよいし、
図7Cに示すように、第2作業車両1Bが周回する際に運転者等が第2作業車両1Bに設けられたスイッチ等によって圃場の端部を指定し指定された端部を結んだ輪郭K23を第2圃場マップMP12としてもよい。
【0042】
第2圃場マップMP12における位置情報(緯度、経度)は、第2測位装置40Bが測位した第2車体位置VP2と、第2基準位置BP-Bとの相対位置として表現され、第2表示装置100Bに設けられた第2記憶装置805Bに記憶される。
図8Aに示すように、第1作業車両1Aにおいて、第1圃場マップMP11の登録が完了すると、登録が完了した第1圃場マップMP11に走行予定ルートL1の作成を行う。また、
図8Bに示すように、第2作業車両1Bにおいて、第2圃場マップMP12の登録が完了すると、登録が完了した第2圃場マップMP12に走行予定ルートL1の作成を行う。説明の便宜上、第1作業車両1Aに対応する走行予定ルートL1のことを「第1走行予定ルートL1」、第2作業車両1Bに対応する走行予定ルートL1のことを「第2走行予定ルートL1」という。
【0043】
次に、第1走行予定ルートL1の作成について説明する。
第1走行予定ルートL1の作成は、第1作業車両1Aに設けられた自動走行支援装置により行う。自動走行支援装置は、第1ルート作成部807Aを備えている。第1ルート作成部807Aは、例えば、第1表示装置100Aに設けられた電気・電子部品、表示装置に組み込まれたプログラム等から構成されている。第1ルート作成部807Aは、第1圃場マップMP11に自動走行を行うための第1走行予定ルートL1の作成を行う。なお、第1ルート作成部807Aは、第1作業車両1Aに設けられていればよく第1表示装置100Aに限定されない。
【0044】
図9に示すように、作業者(運転者)が第1表示装置100Aに対して所定の操作を行
うと、第1ルート作成部807Aは、ルート設定画面M3を表示する。ルート設定画面M3のルート表示部85は、第1圃場マップMP11を表示する。枕地幅入力部82に枕地幅W1を入力した後、決定ボタン99が選択されると、第1ルート作成部807Aは、ルート表示部85に表示された第1圃場マップMP11に、枕地エリアA1を除く作業エリアA2を表示する。また、作業幅入力部88に作業幅W2が入力した後、決定ボタン99が選択されると、第1ルート作成部807Aは、作業幅W2に基づいて、所定の圃場、即ち、第1圃場マップMP11に複数の単位作業区画A3n(n:単位作業区画の個数)を作成する。具体的には、第1ルート作成部807Aは、
図10Aに示すように、作業エリアA2を作業幅W2で縦方向又は横方向に区切ることによって、作業装置2で作業を行う複数の単位作業区画A3nを作業エリアA2内に作成する。即ち、第1ルート作成部807Aは、作業幅W2と同一の幅の単位作業区画A3nを作業エリアA2内に複数作成する。なお、
図10Bに示すように、第1ルート作成部807Aは、作業幅W2からオーバラップ幅W3を除した幅W4の単位作業区画A3nを作業エリアA2内に複数作成してもよい。オーバラップ幅W3は、ルート設定画面M3で入力することが可能である。
【0045】
単位作業区画A3の設定が完了すると、第1ルート作成部807Aは、第1走行予定ルートL1の作成を行う。
図8Aに示すように、第1ルート作成部807Aは、単位作業区画A3毎に走行車両3が直進する直進部(直進ルート)L1aを作成する。第1ルート作成部807Aは、枕地エリアA1に走行車両3が旋回する旋回部(直進ルート)L1bを作成する。
【0046】
次に、第2走行予定ルートL1の作成について説明する。
第2走行予定ルートL1の作成は、第1作業車両1Aに設けられた自動走行支援装置により行う。自動走行支援装置は、第2ルート作成部807Bを備えている。第2ルート作成部807Bは、例えば、第2表示装置100Bに設けられた電気・電子部品、表示装置に組み込まれたプログラム等から構成されている。第2ルート作成部807Bは、第2圃場マップMP12に自動走行を行うための第2走行予定ルートL1の作成を行う。なお、第2ルート作成部807Bは、第2作業車両1Bに設けられていればよく第2表示装置100Bに限定されない。
【0047】
第2ルート作成部807Bにおける第2走行予定ルートL1は、第1走行予定ルートL1と同様である。上述した第1走行予定ルートL1の説明において、「第1走行予定ルートL1」を「第2走行予定ルート」、「第1表示装置100A」を「第2表示装置100B」、「第1ルート作成部807A」を「第2ルート作成部807B」、「第1圃場マップMP11」を「第2圃場マップMP12」に読み替えれば、第2走行予定ルートL1の作成の説明になるため、読み替えを適用することで詳細な説明を省略する。
【0048】
以上によれば、第1作業車両1A及び第2作業車両1Bのそれぞれにおいて、第1圃場マップMP11の登録、第2圃場マップMP12の登録、第1走行予定ルートL1の作成、第2走行予定ルートL2の作成を行うことができる。
さて、第1作業車両1A及び第2作業車両1Bのそれぞれにおいて、自動走行を行う場合、第1作業車両1A及び第2作業車両1Bのいずれも、現在の衛星測位装置700の基準位置を取得して、衛星測位装置700の基準位置に基づいて、自動走行を行う。
図11Aに示すように、第1作業車両1Aが圃場HA1にて、単独で自動走行を行う場合は、現在の衛星測位装置700の基準位置(取得基準位置)BP-Qを取得し、当該取得した基準位置(取得基準位置)BP-Qが圃場HA1の第1圃場マップMP11を登録したときの第1基準位置BP-Aと一致する場合は、衛星測位装置700から補正情報を取得しながら、第1自動走行制御部61Aは、第1車体位置が第1圃場マップMP11に設定された第1走行予定ルートL1に一致するように自動走行の制御を行う。
【0049】
図11Bに示すように、第2作業車両1Bが圃場HB1にて、単独で自動走行を行う場合も、現在の衛星測位装置700の基準位置(取得基準位置)BP-Qを取得し、当該取得した基準位置(取得基準位置)BP-Qが圃場HA2の第2圃場マップMP12を登録したときの第2基準位置BP-Bと一致する場合は、衛星測位装置700から補正情報を取得しながら、第2自動走行制御部61Bは、第2車体位置が第2圃場マップMP12に設定された第2走行予定ルートL1に一致するように自動走行の制御を行う。
【0050】
また、
図12A及び
図12Bに示すように、圃場HA1及び圃場HB1の近くに、1台の衛星測位装置700を設置して、第1作業車両1Aは、圃場HA1にて自動走行を行い、第2作業車両1Bは、圃場HB1にて自動走行を行う場合がある。即ち、第1作業車両1A及び第2作業車両1Bのいずれも、共通の衛星測位装置700を用いて自動走行を行う場合がある。このような場合は、例えば、第1圃場マップMP11を補正して自動走行を行う。
【0051】
具体的には、第1作業車両1Aの自動走行支援装置は、基準位置取得部810Aと、自動走行マップ補正部811Aとを備えている。基準位置取得部810A及び自動走行マップ補正部811Aは、第1表示装置100Aに設けられた電気・電子部品、表示装置に組み込まれたプログラム等から構成されている。なお、基準位置取得部810A及び自動走行マップ補正部811Aは、第1作業車両1Aに設けられていればよく第1表示装置100Aに限定されない。
【0052】
基準位置取得部810Aは、自動走行を行う場合に、第1作業車両1Aに登録されている第1基準位置BP-Aとは異なる基準位置を取得する。例えば、
図12A及び
図12Bでは、第1作業車両1Aが自動走行を開始する前に、衛星測位装置700を第2基準位置BP-Bに設置して、第2作業車両1Bが圃場HB1(第2圃場マップMP12)にて自動走行を行っている状況であるとする。このような状況において、第1作業車両1Aが圃場HA1において自動走行を行う場合を考える。
【0053】
図12Aに示すように、第1作業車両1Aと第2作業車両1Bとが通信装置43の通信エリア内であって互いに通信が行える場合は、第1作業車両1Aが圃場HA1において自動走行の開始を行う前に、基準位置取得部810Aは、通信装置43を介して第2作業車両1Bに接続する(S1)。第2作業車両1Bは、第1作業車両1Aからの接続を受信する(S2)と、第2作業車両1Bは、第2圃場マップMP12に対応付けられた第2基準位置BP-Bを第1作業車両1Aに送信する(S3)。基準位置取得部810Aは、第2作業車両1Bから送信された第2基準位置BP-Bを受信する(S4)。
【0054】
図12Bに示すように、第1作業車両1Aと第2作業車両1Bとが通信装置43の通信エリア外であって互いに通信が行えない場合、第1作業車両1Aが圃場HA1において自動走行の開始を行う前に、基準位置取得部810Aは、通信装置43を介して衛星測位装置700に基準位置を問い合わせる(S10)。衛星測位装置700は、基準位置取得部810Aからの問い合わせを受信すると(S11)、衛星測位装置700は、現在の基準位置、即ち、第2基準位置BP-Bを第1作業車両1Aに送信する(S12)。基準位置取得部810Aは、衛星測位装置700から送信された第2基準位置BP-Bを受信する(S13)。
【0055】
自動走行マップ補正部811Aは、基準位置取得部810Aが取得した第2基準位置BP-Bが、第1作業車両1Aの第1圃場マップMP11に対応付けられた第1基準位置BP-Aと異なるため、第1基準位置BP-Aと、第2基準位置BP-Bとの偏差に基づいて、第1圃場マップMP11及び第1圃場マップMP11に対応付けられた第1走行予定ルートL1を補正する。
【0056】
図13に示すように、自動走行マップ補正部811Aは、第1基準位置BP-Aと第2基準位置BP-Bとの緯度の偏差ΔXの分だけ、第1圃場マップMP11及び第1走行予定ルートL1をシフトする補正を行う。また、自動走行マップ補正部811Aは、第1基準位置BP-Aと第2基準位置BP-Bとの経度の偏差ΔYの分だけ、第1圃場マップMP11及び第1走行予定ルートL1をシフトする補正を行う。言い換えれば、第1作業車両1Aが第2基準位置BP-Bを基準として、自動走行を行う場合、自動走行マップ補正部811Aは、第1基準位置BP-Aと第2基準位置BP-Bとの偏差(ズレ量)だけ、第1圃場マップMP11及び第1走行予定ルートL1をシフトすることにより、第2基準位置BP-Bを基準とした新しいルートマップMP13を作成する。
【0057】
自動走行マップ補正部811Aによる第1圃場マップMP11の補正(新しいルートマップMP13の作成)が完了すると、第1自動走行制御部61Aは、補正後の第1圃場マップMP11及び第1走行予定ルートL1(ルートマップMP13)に基づいて、第1作業車両1Aの自動走行を行う。つまり、第1自動走行制御部61Aは、第1車体位置が補正後の第1走行予定ルートL1に一致するように自動走行の制御を行う。
【0058】
なお、上述した実施形態では、第1作業車両1Aに、基準位置取得部810A及び自動走行マップ補正部811Aを設けているが、第2作業車両1Bに、基準位置取得部810B及び自動走行マップ補正部811Bを設けてもよい。上述した基準位置取得部810Aを「基準位置取得部810B」、自動走行マップ補正部811Aを「自動走行マップ補正部811B」、第1圃場マップMP11を「第2圃場マップMP12」、第1走行予定ルートL1を「第2走行予定ルートL1」、第1自動走行制御部61Aを「第2自動走行制御部61B」に読み替え、「第1作業車両1A」と「第2作業車両1B」とを入れ替え、「圃場HA1」と「圃場HB1」とを入れ替え、「第1基準位置BP-A」と「第2基準位置BP-B」とを入れ替えることで、基準位置取得部810B及び自動走行マップ補正部811Bの説明になるため、読み替え及び入れ替えを適用することで詳細な説明を省略する。
【0059】
以上によれば、第1作業車両1A及び第2作業車両1Bのいずれも、車両測位装置40と、マップ作成部(第1マップ作成部802A、第2マップ作成部802B)と、ルート作成部(第1ルート作成部807A、第2ルート作成部807B)とを備えている。また、第1作業車両1A及び第2作業車両1Bのいずれも、基準位置取得部810A、810Bと、自動走行マップ補正部811A、811Bと、自動走行制御部(第1自動走行制御部61A、第2自動走行制御部61B)とを備えている。したがって、第1作業車両1Aと第2作業車両1Bとを1つの基地局の基準位置(第1基準位置BP-A、第2基準位置BP-B)を用いて、自動走行を行う場合に、第1圃場マップMP11及び第2圃場マップMP12のいずれかを補正することにより、自動走行を安定して行うことができる。
【0060】
図14は、作業車両の自動走行を行う作業車両の自動走行方法を示した図である。
図14に示すように、自動走行を行う前に、作業車両(第1作業車両1A、第2作業車両)の車体位置(第1車体位置、第2車体位置)を検出する(S110)。第1作業車両1Aにおいては、第1測位装置40Aにて第1車体位置を検出し、第2作業車両1Bにおいては、第2測位装置40Bにて第2車体位置を検出する。
【0061】
車体位置(第1車体位置、第2車体位置)と、予め定められた設定基準位置(第1基準位置BP-A、第2基準位置BP-B)との相対位置との関係により示された圃場マップ(第1圃場マップMP11、第2圃場マップMP12)を作成する(S111)。第1マップ作成部802Aによって第1圃場マップMP11を作成し、第2マップ作成部802Bによって第2圃場マップMP12を作成する。
【0062】
圃場マップ(第1圃場マップMP11、第2圃場マップMP12)に自動走行を行うための走行予定ルートL1の作成を行う(S112)。第1ルート作成部807Aによって第1圃場マップMP11に第1走行予定ルートL1を作成し、第2ルート作成部807Bによって第2圃場マップMP12に第2走行予定ルートL1を作成する。
走行予定ルートL1の作成後、自動走行を開始する前に、基準位置を取得する(S113)。取得した基準位置である取得基準位置が、設定基準位置と異なる場合に、取得基準位置と設定基準位置との偏差に基づいて、圃場マップ及び走行予定ルートL1を補正する(S114)。取得基準位置が第1基準位置BP-Aであり、設定基準位置が第2基準位置BP-Bである場合、第1圃場マップMP11及び第1走行予定ルートL1を補正する。取得基準位置が第2基準位置BP-Bであり、設定基準位置が第1基準位置BP-Aである場合、第2圃場マップMP12及び第2走行予定ルートL1を補正する。補正した圃場マップ及び走行予定ルートL1に基づいて走行車両の自動走行を行う(S115)。
【0063】
第1圃場マップMP11及び第1走行予定ルートL1を補正した場合、第1作業車両1Aの第1自動走行制御部61Aは、補正後の第1走行予定ルートL1に第1車体位置が一致するように自動走行させる。第2圃場マップMP12及び第2走行予定ルートL1を補正した場合、第2作業車両1Bの第2自動走行制御部61Bは、補正後の第2走行予定ルートL1に第2車体位置が一致するように自動走行させる。
【0064】
以上のように、第1作業車両1Aと第2作業車両1Bとを1つの基地局の基準位置(第1基準位置BP-A、第2基準位置BP-B)を用いて、自動走行を行う場合に、第1圃場マップMP1及び第2圃場マップMP12のいずれかを補正することにより、自動走行を安定して行うことができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 :作業車両
1A :第1作業車両
1B :第2作業車両
40 :車両測位装置
40A :第1測位装置
40B :第2測位装置
100 :表示装置
800A :第1車体位置取得部
800B :第2車体位置取得部
801A :第1基準取得部
801B :第2基準取得部
802A :第1マップ作成部
802B :第2マップ作成部
805A :第1記憶装置
805B :第2記憶装置
807A :第1ルート作成部
807B :第2ルート作成部
810A :基準位置取得部
810B :基準位置取得部
811A :自動走行マップ補正部
811B :自動走行マップ補正部