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特許7387826固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測方法
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  • 特許-固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/02 20060101AFI20231120BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20231120BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20231120BHJP
【FI】
G01N33/02
A23L27/00 D
G06Q50/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022112990
(22)【出願日】2022-07-14
(65)【公開番号】P2023024940
(43)【公開日】2023-02-21
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】202110909058 .8
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522283136
【氏名又は名称】上海太太楽食品有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Totole Food Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.969 Xinghua Highway, South of No.13 Qiao , Caoan Road, Shanghai, China
(74)【代理人】
【識別番号】100178434
【弁理士】
【氏名又は名称】李 じゅん
(72)【発明者】
【氏名】張 佳匯
(72)【発明者】
【氏名】王 芳
(72)【発明者】
【氏名】李 暁燕
(72)【発明者】
【氏名】劉 太昂
(72)【発明者】
【氏名】王 錫昌
(72)【発明者】
【氏名】葛 小通
(72)【発明者】
【氏名】兪 錚
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111323543(CN,A)
【文献】特表2012-521205(JP,A)
【文献】特開2017-026558(JP,A)
【文献】特開2013-007732(JP,A)
【文献】特開2013-127377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0377403(US,A1)
【文献】LIU YA et al.,Calculated Taste Activity Values and Umami Equivalence Explain Why Dried Sha-chong (Sipunculus nudus) is a Valiable Condiment,JOURNAL OF AQUATIC FOOD PRODUCT TECHNOLOGY,2016年01月15日,25巻2号,177-184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/02
A23L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
様々な固体状複合調味料からの7つの成分IMP、GMP、Na、Asp、Glu、Gly及びAlaの含有量を独立変数とし、各固体状複合調味料に対し人力で旨さ・唾液誘出効果スコアを与え、かつ算式を用いて独立変数としての7つの含有量の総合的処理を行い、総合的処理後のデータと唾液誘出効果から定量モデルを作成して、固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果の官能評価の定量的予測モデルを生成し、
対象固体状複合調味料に関する独立変数としての7つの含有量を総合的に処理した後、前記定量的予測モデルに代入して、対象固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアを得ることを特徴とする固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測方法。
【請求項2】
前記総合的処理は、次の変換式を用いて、
(数1)
X1=+0.260[IMP]+4.955E-2[GMP]+1.971E-2[Na]+0.271[Asp]-2.521E-3[Glu]+0.453[Gly]+1.169[Ala]-0.515
X2=+0.795[IMP]+0.340[GMP]+0.133[Na]-0.617[Asp]-4.217E-3[Glu]-0.765[Gly]+0.806[Ala]-1.488
X3=+2.354[IMP]+1.660[GMP]-0.103[Na]-0.340[Asp]+2.758E-3[Glu]-0.663[Gly]+0.686[Ala]-0.862
X4=-0.257[IMP]-1.850[GMP]-0.179[Na]-3.978E-2[Asp]+3.134E-3[Glu]-1.035[Gly]+0.665[Ala]+3.013
X5=+2.457[IMP]-2.734[GMP]+0.130[Na]+0.169[Asp]+2.082E-3[Glu]-0.106[Gly]+6.545E-2[Ala]-3.024
X6=+5.119[IMP]-5.251[GMP]-6.594E-2[Na]-5.659E-2[Asp]-9.137E-4[Glu]+0.132[Gly]-0.122[Ala]+1.209
X7=+0.917[IMP]+0.463[GMP]-2.781E-2[Na]+1.008[Asp]-3.006E-3[Glu]-0.719[Gly]-0.216[Ala]+0.754
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7はそれぞれ各固体状複合調味料の総合的処理後の7つのモデル作成データである)
含有量なるパラメータを処理することを含むことを特徴とする請求項1に記載の固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測方法。
【請求項3】
モデル作成を行う前には、前記固体状複合調味料の数が70以上で、鑑定士は各固体状複合調味料を試味し、旨さ・唾液誘出効果スコアを与えることを特徴とする請求項1に記載の固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測方法。
【請求項4】
サポートベクターマシン回帰アルゴリズムを用いて、各固体状複合調味料に関する7つの独立変数が総合的に処理された後のデータと旨さ・唾液誘出効果から定量モデルを作成することを特徴とする請求項1に記載の固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測方法。
【請求項5】
前記サポートベクターマシン回帰アルゴリズムにおいて、放射基底関数が選ばれ、ペナルティ係数は13とされ、不感損失関数は0.06とされることを特徴とする請求項4に記載の固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味料の官能評価の技術分野に関し、特に、固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体状複合調味料は2つ以上の調味料を複合させたもので、複合調味料の主な機能は、食品や料理に味付けをして特別な風味を与えることである。近年、中国の調味料業界で大きな発展が遂げられるのに伴い、消費者はシンプルな調味料から多様化を求めるため、市場では固体状複合調味料製品がますます人気を集めるようになる。しかし今や固体状複合調味料の官能評価は主に鑑定士が試味し、自分の感覚や過去の経験から官能評価スコアを出すことである。このように得た官能評価スコアは一般に主観性が高く、同じ固体状複合調味料でも、鑑定士によってスコアに差があり、大きな差が出る場合もある。例えば、同じ固体状複合調味料に対し、その旨さ・唾液誘出効果について1.5点を出す鑑定士もいれば、3.0点を出す人もいる。その理由としては、鑑定士によって3~4年から10年以上まで経験の長さが違うことが考えられる。また、鑑定士の年齢、嗜好、健康状態、精神的状態も関係している。鑑定士によっては唾液が出やすかったり、試味の時に健康問題を抱えているため、感覚や味覚が鈍くなる。これらはいずれも固体状複合調味料の官能評価に差をつける要因である。一方で、複合調味料は日常生活でますます幅広く使用され、一層の美味しさが求められているため、官能評価の正確さが要望される。そのため、人力で主観的にスコアを付けるのに代わり、より客観的に官能評価スコアを与える方法が、当業者にとって解決すべき課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、複合調味料の旨さ・唾液誘出効果について客観的で正確なスコアを与える定量的予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の目的を達成するためになされたもので、固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測方法を提供する。様々な固体状複合調味料からの7つの成分IMP、GMP、Na、Asp、Glu、Gly及びAlaの含有量を独立変数とし、各固体状複合調味料に対し人力で唾液誘出効果スコアを与え、かつ算式を用いて独立変数としての7つの含有量の総合的処理を行い、総合的処理後のデータと旨さ・唾液誘出効果から定量モデルを作成して、固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果の官能評価の定量的予測モデルを生成する。
対象固体状複合調味料に関する独立変数としての7つの含有量を総合的に処理した後、前記定量的予測モデルに代入して、対象固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアを得る。
【0005】
さらに、前記総合的処理は、次の変換式を用いて含有量なるパラメータを処理することを含む。
(数1)
X1=+0.260[IMP]+4.955E-2[GMP]+1.971E-2[Na]+0.271[Asp]-2.521E-3[Glu]+0.453[Gly]+1.169[Ala]-0.515
X2=+0.795[IMP]+0.340[GMP]+0.133[Na]-0.617[Asp]-4.217E-3[Glu]-0.765[Gly]+0.806[Ala]-1.488
X3=+2.354[IMP]+1.660[GMP]-0.103[Na]-0.340[Asp]+2.758E-3[Glu]-0.663[Gly]+0.686[Ala]-0.862
X4=-0.257[IMP]-1.850[GMP]-0.179[Na]-3.978E-2[Asp]+3.134E-3[Glu]-1.035[Gly]+0.665[Ala]+3.013
X5=+2.457[IMP]-2.734[GMP]+0.130[Na]+0.169[Asp]+2.082E-3[Glu]-0.106[Gly]+6.545E-2[Ala]-3.024
X6=+5.119[IMP]-5.251[GMP]-6.594E-2[Na]-5.659E-2[Asp]-9.137E-4[Glu]+0.132[Gly]-0.122[Ala]+1.209
X7=+0.917[IMP]+0.463[GMP]-2.781E-2[Na]+1.008[Asp]-3.006E-3[Glu]-0.719[Gly]-0.216[Ala]+0.754
式中、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7はそれぞれ各固体状複合調味料の総合的処理後の7つのモデル作成データである。
【0006】
さらに、モデル作成を行う前には、前記固体状複合調味料の数が70以上で、鑑定士は各固体状複合調味料を試味し、旨さ・唾液誘出効果スコアを与える。
【0007】
さらに、サポートベクターマシン回帰アルゴリズムを用いて、各固体状複合調味料に関する7つの独立変数が総合的に処理された後のデータと旨さ・唾液誘出効果から定量モデルを作成する。
【0008】
さらに、前記サポートベクターマシン回帰アルゴリズムにおいて、モデル作成の正確さを確保するために、放射基底関数が選ばれ、ペナルティ係数は13とされ、不感損失関数は0.06とされる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、従来技術と比べて、次の利点を有する。
1.本発明は、固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの予測を実現でき、データの面から企業の品質管理を支援する。
【0010】
2.新しい固体状複合調味料について旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアを予測する場合には、鑑定士が加わる必要がないため、主観性の問題が緩和され、予測結果はより客観的で、正確である。
【0011】
3.本発明は、人力でスコアを付けるのに比べて、実行時にサンプルの浪費を減らしているため、企業の経済的利益の改善にもつながる。
【0012】
4.本発明よりモデルを作成して予測した旨さ・唾液誘出効果の数値は実際値とほぼ同じ結果で、正確さが高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は固体状複合調味料の唾液誘出効果に関する官能評価スコアからのサポートベクターマシン回帰モデルの作成の結果図である。
図2図2は固体状複合調味料の唾液誘出効果に関する官能評価スコアのサポートベクターマシン回帰モデルの一つ抜き交差検証の結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の目的、技術案及び利点が一層明瞭になるように、本発明の技術案のさらなる説明を行う。
【0015】
本発明では、固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測方法が提供され、具体的には次のとおりである。
ステップ1で、市場から70種類の固体状複合調味料を買い集め、実験室で、独立変数として当該70種類の固体状複合調味料のIMP、GMP、Na、Asp、Glu、Gly及びAlaの含有量を測定した。鑑定士は当該70種類の固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果について人力でスコアを付け、このようにして7×70のデータ行列を構成した。当該データ行列では、旨さ・唾液誘出効果スコアが従属変数で、7つの成分の含有量の値が独立変数である。これで基礎データを得た。一部のデータは表1に示すとおりである。
表1は成分含有量及び旨さ・唾液誘出効果に関するデータの例を示したものである。
【表1】
【0016】
ステップ2で、基礎データにおける独立変数に対し総合的処理を行って、総合的処理後の新しい変数には元の独立変数が全て含まれている。変換式は次のとおりである。
(数2)
X1=+0.260[IMP]+4.955E-2[GMP]+1.971E-2[Na]+0.271[Asp]-2.521E-3[Glu]+0.453[Gly]+1.169[Ala]-0.515
X2=+0.795[IMP]+0.340[GMP]+0.133[Na]-0.617[Asp]-4.217E-3[Glu]-0.765[Gly]+0.806[Ala]-1.488
X3=+2.354[IMP]+1.660[GMP]-0.103[Na]-0.340[Asp]+2.758E-3[Glu]-0.663[Gly]+0.686[Ala]-0.862
X4=-0.257[IMP]-1.850[GMP]-0.179[Na]-3.978E-2[Asp]+3.134E-3[Glu]-1.035[Gly]+0.665[Ala]+3.013
X5=+2.457[IMP]-2.734[GMP]+0.130[Na]+0.169[Asp]+2.082E-3[Glu]-0.106[Gly]+6.545E-2[Ala]-3.024
X6=+5.119[IMP]-5.251[GMP]-6.594E-2[Na]-5.659E-2[Asp]-9.137E-4[Glu]+0.132[Gly]-0.122[Ala]+1.209
X7=+0.917[IMP]+0.463[GMP]-2.781E-2[Na]+1.008[Asp]-3.006E-3[Glu]-0.719[Gly]-0.216[Ala]+0.754
総合的処理後のデータの例は表2に示すとおりである。
表2は総合的処理後のデータの例を示したものである。
【表2】
【0017】
ステップ3で、サポートベクターマシン回帰を用いて、総合的処理後のデータから定量モデルを作成して、固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測モデルを得た。
【0018】
ステップ4で、新たに4種類の固体状複合調味料を買い集め、実験室でIMP、GMP、Na、Asp、Glu、Gly及びAlaの含有量を測定し、ただし今度は鑑定士が試味して人力で唾液誘出効果スコアを与えるのはやめ、このようにして独立テストセットを得た。新たに買い集めた品に関するデータの例は表3に示すとおりである。
表3は独立テストセットとしての新規データを示したものである。
【表3】
【0019】
ステップ5で、買い集めた品に関する新規データを変換式に代入して、総合的マッピング処理後のデータを得、変換後のデータは表4に示すとおりである。
表4は総合的処理後の新規データの例(一部)の一部である。
【表4】
【0020】
ステップ6で、続いて総合的処理後のデータを固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアの定量的予測モデルに直接代入して、独立テストセットからの固体状複合調味料の唾液誘出効果に関する官能評価スコアの予測を得た。
【0021】
独立テストセットからの固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアのサポートベクターマシン回帰モデルの独立テスト結果は、表5に示すとおりである。
表5は予測結果を示したものである。
【表5】
【0022】
70のデータに対する固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアのサポートベクターマシン回帰モデル作成の結果は図1に示すとおりである。
【0023】
図1からは、唾液誘出効果の実際値と計算値の相関係数は0.91で、非常に高い数値となっているため、モデルの正確率が高く、確立したモデルの信頼性が高いことが分かった。
【0024】
70のデータに対する固体状複合調味料の旨さ・唾液誘出効果に関する官能評価スコアのサポートベクターマシン回帰モデルの一つ抜き交差検証の結果は図2に示すとおりである。
【0025】
図2からは、モデル予測値と実測値の相関係数は0.80であることから、確立したサポートベクターマシン回帰モデルの内部相互検証結果の正確率が高いこと、そして確立したモデルは信頼性が高いことが分かった。
【0026】
上述したのが本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明に限定を加えるものではない。当業者は、本発明の技術案の範囲を逸脱することなく、本発明において開示された技術案の内容に何らかの同等な置き換えや修正などを行う場合は、そのいずれも本発明の保護範囲に含まれる。

図1
図2