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特許7387858乗客コンベア、及び乗客コンベアの自動変速方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】乗客コンベア、及び乗客コンベアの自動変速方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 25/00 20060101AFI20231120BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
B66B25/00 B
B66B31/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022187254
(22)【出願日】2022-11-24
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田 光
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129156(JP,A)
【文献】特開2004-051293(JP,A)
【文献】特開平09-278301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラスと、
前記トラスにおける一方の乗降口から他方の乗降口に移動する複数の踏段と、
前記乗降口を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像に基づいて、前記乗降口付近にいる人の向きが前記踏段を向いている場合に乗客コンベアを利用する意思があると判断する画像処理装置と、
前記画像処理装置が、前記乗降口付近にいる人が乗客コンベアを利用する意思があると判断した場合に、前記踏段の運転速度を変更する制御装置と、
を有し、
前記画像処理装置は、前記カメラで撮影した画像に基づいて、前記乗降口付近にいる人の顔の向き、胴体の向き、及び足先の向きからなる人の向きを示す群から選択する少なくとも1つの情報からその人の向きを判断する、
乗客コンベア。
【請求項2】
前記画像処理装置が、前記カメラで撮影した画像から、前記乗降口付近にいる人の肩の位置と顔の位置を取得し、両肩と顔との位置関係から、前記胴体の向きを判断する、
請求項に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記画像処理装置が、前記カメラで撮影した画像から、前記乗降口付近にいる人のつま先と踵の位置を取得し、前記踵から前記つま先に向かって結んだ線の向きから前記足先の向きを判断する、
請求項に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記画像処理装置が、前記カメラで撮影した画像から、前記乗降口付近にいる人の身長と、胸部の大きさ又は足の大きさを取得し、
前記身長と前記胸部の大きさとの比から、前記胴体の向きを判断する、又は前記身長と前記足の大きさとの比から、前記足先の向きを判断する、
請求項に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記画像処理装置が、前記カメラで撮影した画像から、前記乗降口付近にいる人の目と鼻の位置を取得し、目と鼻との位置関係から、前記顔の向きを判断する、
請求項に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
トラスと、前記トラスにおける一方の乗降口から他方の乗降口に移動する複数の踏段と、を有する乗客コンベアの前記乗降口をカメラで撮影する工程と、
画像処理装置が、前記カメラで撮影した画像に基づいて、前記乗降口付近にいる人の向きが前記踏段を向いている場合に前記乗客コンベアを利用する意思があるか判断する工程と、
前記乗降口付近にいる人が前記乗客コンベアを利用する意思があると判断した場合に、制御装置が前記乗客コンベアの前記踏段の運転速度を変更する工程とを有し、
前記画像処理装置は、前記カメラで撮影した画像に基づいて、前記乗降口付近にいる人の顔の向き、胴体の向き、及び足先の向きからなる人の向きを示す群から選択する少なくとも1つの情報からその人の向きを判断する、
乗客コンベアの自動変速方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベア、及び乗客コンベアの自動変速方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、乗客コンベアの省力化や効率化のため、乗降口にセンサを用いて、乗客を感知したときのみ運転する自動運転方式の乗客コンベアが増えている。従来、自動運転方式の乗客コンベアでは乗降口に光電ポールを設置し、乗客の有無を感知していたが、意匠性などの観点から近年は光電ポールを設置しないポールレス型が増加してきている。ただし、ポールレス型の場合、欄干などに設けられたセンサの感知範囲内を人が通過すると、乗客コンベアを利用する意思の有無に関わらず運転が開始してしまうため、省力化や効率化の観点から更なる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-112616号公報
【文献】特開2019-6535号公報
【文献】特開2008-7272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の実施形態は、上記問題点に鑑み、乗客コンベアの乗降口付近にいる人の中から、利用する意思を持つ乗客を検出した場合にのみ、踏段の運転速度を変更することができる乗客コンベア、及び乗客コンベア自動変速方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、トラスと、前記トラスにおける一方の乗降口から他方の乗降口に移動する複数の踏段と、前記乗降口を撮影するカメラと、前記カメラで撮影した画像に基づいて、前記乗降口付近にいる人の向きが前記踏段を向いている場合に乗客コンベアを利用する意思があると判断する画像処理装置と、前記画像処理装置が、前記乗降口付近にいる人が乗客コンベアを利用する意思があると判断した場合に、前記踏段の運転速度を変更する制御装置と、を有し、前記画像処理装置は、前記カメラで撮影した画像に基づいて、前記乗降口付近にいる人の顔の向き、胴体の向き、及び足先の向きからなる人の向きを示す群から選択する少なくとも1つの情報からその人の向きを判断する、乗客コンベアである。
【0006】
また、本発明の実施形態は、トラスと、前記トラスにおける一方の乗降口から他方の乗降口に移動する複数の踏段と、を有する乗客コンベアの前記乗降口をカメラで撮影する工程と、画像処理装置が、前記カメラで撮影した画像に基づいて、前記乗降口付近にいる人の向きが前記踏段を向いている場合に前記乗客コンベアを利用する意思があるか判断する工程と、前記乗降口付近にいる人が前記乗客コンベアを利用する意思があると判断した場合に、制御装置が前記乗客コンベアの前記踏段の運転速度を変更する工程とを有し、前記画像処理装置は、前記カメラで撮影した画像に基づいて、前記乗降口付近にいる人の顔の向き、胴体の向き、及び足先の向きからなる人の向きを示す群から選択する少なくとも1つの情報からその人の向きを判断する、乗客コンベアの自動変速方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態を示すエスカレータを側面から見た説明図であり、上階から下階を見た場合に、左側の構造物を省略した図。
図2】本発明の一実施形態のエスカレータにおける電気的構成を説明するブロック図。
図3】本発明の一実施形態に係る制御方法を示すエスカレータのフローチャート。
図4】本発明の一実施形態に係るカメラの設置位置を示す簡略図。
図5】本発明の一実施形態に係るエスカレータの乗降口付近を上部から撮影した画像であって、肩の位置と顔の位置を特定し、胴体の向きを判断する方法を示す簡略図。
図6】本発明の一実施形態に係るエスカレータの乗降口付近を上部から撮影した画像であって、つま先の位置と踵の位置を特定し、足先の向きを判断する方法を示す簡略図。
図7】本発明の一実施形態に係るカメラの設置位置を示す簡略図。
図8】本発明の一実施形態に係るエスカレータの乗降口付近を欄干部から撮影した画像であって、身長と足の大きさを特定し、足先の向きを判断する方法を示す簡略図。
図9】本発明の一実施形態に係るエスカレータの乗降口付近を欄干部から撮影した画像であって、身長と胸部の大きさを特定し、胴体の向きを判断する方法を示す簡略図。
図10】本発明の一実施形態に係るエスカレータの乗降口付近を欄干部から撮影した画像であって、目と鼻の位置を特定し、顔の向きを判断する方法を示す簡略図。
図11】本発明の一実施形態に係るエスカレータにおいて、任意の時点における撮影画像から人の向きが踏段を向いているか判断する方法を示す簡略図。
図12】本発明の一実施形態に係るエスカレータにおいて、任意の時点における連続撮影画像から人の向きが踏段を向いているか判断する方法を示す簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態のエスカレータを図1図12に基づいて説明する。
【0009】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の構造について、図1図2を参照して説明する。
【0010】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0011】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を前後方向に走行させる駆動装置18、左右一対の駆動スプロケット24,24、左右一対のベルトスプロケット27,27が設けられている。駆動装置18は、誘導電動機(インダクションモータ)よりなるモータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン22により駆動スプロケット24が回転する。左右一対の駆動スプロケット24,24と左右一対のベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキなどを制御する制御装置50が設けられている。
【0012】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、従動スプロケット26が設けられている。上階側の駆動スプロケット24と下階側の従動スプロケット26との間には、左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。すなわち、左右一対の踏段チェーン28,28には、複数の踏段30の車輪301が等間隔で取り付けられている。踏段30の車輪301はトラス12に固定された不図示の案内レールに沿って走行するとともに、駆動スプロケット24の外周部にある凹部と従動スプロケット26の外周部にある凹部に係合して上下に反転する。また、車輪302はトラス12に固定された案内レール25を走行する。
【0013】
トラス12の左右両側には、左右一対のスカートガード44,44と左右一対の欄干36,36が立設されている。欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。スカートガード44は、欄干36の側面下部に設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0014】
手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に侵入し、案内ローラ群64を介してベルトスプロケット27に掛け渡され、その後、案内ローラ群66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42外に表れる。そして、手摺りベルト38は、ベルトスプロケット27が駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。この走行する手摺りベルト38は回転するベルトスプロケット27に押圧部材68により押圧される。
【0015】
上階側の機械室14の天井面にある乗降口には、上階側の乗降板32が水平に設けられ、下階側の機械室16の天井面にある乗降口には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60から踏段30が進出、又は、侵入する。また、乗降板34にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0016】
図4図7に示すように、エスカレータ10には、上階側の乗降口付近及び下階側の乗降口付近の状況を撮影することができるカメラ80が設けられている。カメラ80は、広角の画像で高解像度の撮影画像を取得できる機種であることが好ましく、乗降口付近にいる人の顔の向きや、胴体の向き、足先の向きなどを把握できるようにカメラ80の設置場所を決定するものとし、例えば、建屋1の天井面や欄干36に設置することができる。
【0017】
(2)エスカレータ10の電気的構成
エスカレータ10の電気的構成について、図2図4図7を参照して説明する。
【0018】
制御装置50には、駆動装置18、操作盤52,56、スピーカ54,58、カメラ80が接続されている。また、制御装置50には、カメラ80で撮影した画像を処理する画像処理装置51も接続されている。
【0019】
(3)エスカレータ10を自動運転するための制御方法
上記実施形態におけるエスカレータ10の制御方法について図2図3を参照して説明する。以下の説明では、踏段30が下降する設定であるエスカレータ10について、上階側の乗降口付近にいる人がエスカレータ10を利用する意思があるか判断し、利用意思がある場合にのみ、エスカレータ10を自動運転する制御方法について説明する。
【0020】
図3は本実施形態に係るエスカレータ10の制御方法を示すフローチャートである。エスカレータ10の乗降口の所定領域内、例えば、踏段30とコム60との境界線から3メートル以内の範囲に人が侵入したことをカメラ80が感知すると、この制御方法を開始する。ステップS1において、制御装置50は、カメラ80を制御してエスカレータ10の乗降口の所定撮影領域を撮影する。次いで、ステップS2に進む。
【0021】
ステップS2において、制御装置50は、画像処理装置51を制御して、ステップS1で取得した画像の解析を行う。この画像解析では、乗降口付近にいる人の顔の向きや、胴体の向き、足先の向きなどを把握するための情報を取得し、取得した情報を基に乗降口付近にいる人に利用する意思があるかないかを判断する。この利用意思の判断の方法については後で詳しく説明する。そして、利用する意思があると判断した場合には、ステップS3に進む(Yes)。利用する意思がないと判断した場合には、ステップS7(No)に進む。以下、利用する意思がある人を「乗客」ともいう。
【0022】
ステップS3において、制御装置50は、駆動装置18を動かし、エスカレータ10の運転を開始する。次いで、ステップS4に進む。
【0023】
ステップS4において、制御装置50は、ステップS2において、当該乗客について利用意思があると判断した時点から経過時間をカウントする。次いで、ステップS5に進む。
【0024】
ステップS5において、制御装置50は、所定時間経過時点で、新たな乗客がいないか確認する。新たな乗客がいない場合、ステップS6に進む(Yes)。新たな乗客がいる場合、新たな乗客について利用意思があると判断された時点で経過時間をリセットし、ステップS4に戻り、新たな乗客について経過時間のカウントを開始する(No)。
【0025】
ステップS6において、制御装置50は、エスカレータ10の運転を停止し、待機状態とする。そして、この制御を終了する。
【0026】
ステップS7において、制御装置50は、乗降口付近にいる人が上記所定領域から出て、乗降口から離れたと判断した場合には、この制御を終了する(Yes)。乗降口付近にいる人がまだ上記所定領域内にいると判断した場合には、ステップS1に戻る(No)。
【0027】
(4)利用意思の判断方法
上記ステップS2において、乗降口付近にいる人にエスカレータ10を利用する意思があるかどうかの判断は、その人の顔の向き、胴体の向き、及び足先の向きからなる人の向きを示す群から選択する少なくとも1つの向きが、例えば踏段30を向いている場合に、エスカレータ10を利用する意思があると判断するものとすることができる。
【0028】
まず、人の向きをどのように判断するかについて図4図10を参照して説明する。
【0029】
図4に示すように、カメラ80を建屋1の天井面に設けた場合について説明する。この場合には、図5図6に示すように、カメラ80で撮影した画像から、顔76の位置や、肩75の位置、つま先73の位置、踵72の位置などの情報が得られる。
【0030】
制御装置50は、人の向きを示す第1の群として、図5に示すように、両肩75を結んだ線の垂直二等分線のうち、顔76やつま先73が向いている方向である胴体の向きを採用することができる。
【0031】
また、制御装置50は、人の向きを示す第2の群として、図6に示すように、踵72からつま先73に向かって結んだ線の向き(足先の向き)を採用することもできる。
【0032】
次に、図7に示すように、カメラ80を欄干36に設けた場合について説明する。この場合には、図8図10に示すように、カメラ80で撮影した画像からは、その人の身長、足の大きさ、胸部の大きさ、目77の位置、鼻78の位置などの情報が得られる。
【0033】
図8(a)に示すように、人がカメラ80の方向を向いている場合には、身長a1に対する足の大きさ(幅)b1の比が小さく、図8(b)に示すように、カメラ80の方向を向いていない場合には、身長a2に対する足の大きさ(長さ)b2の比が大きくなる。制御装置50は、このような関係を利用し、撮影画像から身長と足の大きさとを取得し、身長に対する足の大きさの比を人の向きを示す第3の群として採用し、この比が所定値よりも小さい場合は、足先はカメラ80の方向に向いていると判断するものとすることもできる。
【0034】
また、図9(a)に示すように、人がカメラ80の方向を向いている場合は、身長a3に対する胸部の大きさ(幅)c3の比が大きく、図9(b)に示すように、カメラ80の方向を向いていない場合は、身長a4に対する胸部の大きさ(厚さ)c4の比が小さくなる。制御装置50は、このような関係を利用し、撮影画像から身長と胸部の大きさとを取得し、身長に対する胸部の大きさの比を人の向きを示す第4の群として採用し、この比が所定値よりも大きい場合は、胴体はカメラ80の方向に向いていると判断するものとすることもできる。
【0035】
また、図10(a)に示すように、顔76がカメラ80の方向を向いている場合は、目77の端部(目尻)から引いた2本の鉛直線と、鼻78の頂点から引いた鉛直線とが等間隔に位置し、図10(b)に示すように、顔76がカメラ80の方向を向いていない場合は、目77の端部(目尻)から引いた2本の鉛直線と、鼻78の頂点から引いた鉛直線とが等間隔ではない関係にある。制御装置50は、このような関係を利用し、顔76の向きを判断するものとすることもできる。
【0036】
人の向き(顔の向き、胴体の向き、及び足先の向き)が、踏段30を向いているかどうかの判断は、カメラ80の取り付け位置などのエスカレータ10の設置環境に対応して変化するため、その設置環境に応じて決定するものとする。
【0037】
まず、任意の時点における撮影画像(静止画像)から人の向きを判断するものであってもよい。例えば、制御装置50は、図11における矢印Aのように、人の向きを示す線が踏段30の端部(踏段30とコム60との境界線)と交わることがない場合には、その人は踏段30を向いていないと判断し、矢印Bのように踏段30の端部と交わる場合には、その人は踏段30を向いていると判断するものとすることができる。
【0038】
また、任意の時点における連続撮影画像から人の向きの変化を追跡し、判断するものであってもよい。図12において、矢印Xはn時点における人の向きを示し、矢印Yはn時点から1秒後における人の向きを示し、矢印Zはn時点から2秒後における人の向きを示し、点線は踏段30の端部(踏段30とコム60との境界線)に対する垂線を示す。制御装置50は、人の向きを示す矢印と垂線とがなす角度が時間の経過とともに小さくなっており、かつ、所定の角度以下になった場合に、その人は踏段30を向いていると判断するものとすることもできる。
【0039】
(5)効果
本実施形態によれば、乗降口付近にいる人がエスカレータ10を利用する意思があるかどうか判断することができ、利用する意思がある場合にのみ、エスカレータ10の運転を開始することができるため、エスカレータ10を省力化、効率化することができる。
【0040】
本実施形態によれば、乗降口付近で踏段30とは違う方向を向いていた人が方向転換した場合にも、利用する意思があるか判断することができる。
【0041】
(6)変更例
上記実施形態では、乗降口付近の所定領域内に侵入したことをカメラ80で感知した場合に上記制御方法を開始する例について説明したが、欄干36などに人感センサなどを配設し、センサが人を感知した場合に上記制御方法を開始するものであってもよい。
【0042】
上記実施形態では、エスカレータ10の乗り口付近にいる人に利用意思があるかどうかを判断する方法について説明したが、降り口付近にいる人に利用意思があるかどうかを判断し、利用意思があると判断した場合には乗り口ではないことをスピーカ54,58から警告アナウンスするものであってもよい。
【0043】
上記実施形態では、光電ポールを設置しない例について説明したが、これに限定されるものではなく、光電ポールを設置するものであってもよい。意匠性の観点からは、光電ポールを設置しないポールレス型であることが好ましい。
【0044】
上記実施形態では、乗降口付近にいる人に利用意思があると判断した際に、停止状態から運転状態へと切り替える例について説明したが、低速運転から通常運転へと踏段30の速度を変更するものであってもよい。すなわち、本明細書において、「踏段の運転速度を変更する」には、エスカレータ10を停止状態から運転状態へと切り替えるものも、運転中の踏段30の速度を変更するものも含まれる。
【0045】
上記実施形態では、乗客コンベアがエスカレータである例について説明したが、乗客コンベアは動く歩道であってもよく、その場合、上記制御方法と同様の制御を行うことができる。
【0046】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・建屋、10・・・エスカレータ、12・・・トラス、30・・・踏段、36・・・欄干、38・・・手摺りベルト、39・・・手摺りレール、50・・・制御装置、51・・・画像処理装置、72・・・踵、73・・・つま先、75・・・肩、76・・・顔、77・・・目、78・・・鼻、80・・・カメラ
【要約】
【課題】乗客コンベアの乗降口付近にいる人の中から、利用する意思を持つ乗客を検出した場合にのみ、踏段の運転速度を変更することができる、乗客コンベア、及び乗客コンベア自動変速方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の実施形態は、トラス12と、トラス12における一方の乗降口から他方の乗降口に移動する複数の踏段30と、上記乗降口を撮影するカメラ80と、カメラ80で撮影した画像に基づいて、上記乗降口付近にいる人の向きが踏段30を向いている場合に乗客コンベアを利用する意思があると判断する画像処理装置51と、画像処理装置51が、上記乗降口付近にいる人が乗客コンベアを利用する意思があると判断した場合に、踏段30の運転速度を変更する制御装置50とを有する、乗客コンベアとする。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12