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特許7387885癌処置のための多重特異性結合タンパク質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】癌処置のための多重特異性結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20231120BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231120BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231120BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231120BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231120BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231120BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231120BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231120BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231120BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231120BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C07K16/46
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P1/00
A61P11/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61K45/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022520371
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2020077586
(87)【国際公開番号】W WO2021064137
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】19201200.3
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヒップ,スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】アダム,パウル
(72)【発明者】
【氏名】ジェゲルウスキ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ガネサン,ラクマー
(72)【発明者】
【氏名】ゴーマン,フィリップ・ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,パンカジ
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,プリヤンカー
(72)【発明者】
【氏名】ラサロ,マルシオ
(72)【発明者】
【氏名】シェアー,ジャスティン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイノフ,ウラジミール・エイチ
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517844(JP,A)
【文献】特開2018-088938(JP,A)
【文献】国際公開第2017/181001(WO,A1)
【文献】特表2015-519337(JP,A)
【文献】Human/Cynomolgus Monkey B7-H6 Antibody ,R&D systems product catalog [online],2019年05月28日, [検索日 2022.01.04], インターネット: <URL:https://resources.rndsystems.com/pdfs/datasheets/mab10162.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/46
C07K 16/28
C12N 15/63
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12P 21/08
A61K 39/395
A61P 35/00
A61P 1/04
A61P 11/00
A61P 1/02
A61P 11/02
A61P 11/04
A61P 43/00
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位とCD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含むタンパク質であって、前記B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位は、i)~iii):
i)配列番号:79(CDR1)、配列番号:80(CDR2)及び配列番号:81(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:82(CDR1)、配列番号:83(CDR2)及び配列番号:84(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
ii)配列番号:85(CDR1)、配列番号:86(CDR2)及び配列番号:87(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:88(CDR1)、配列番号:89(CDR2)及び配列番号:90(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
iii)配列番号:91(CDR1)、配列番号:92(CDR2)及び配列番号:93(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:94(CDR1)、配列番号:95(CDR2)及び配列番号:96(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位
から選択され、
CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位は、配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを含む、
タンパク質。
【請求項2】
前記B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位が、i)~iii):
i)配列番号:171のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:172のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
ii)配列番号:173のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:174のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
iii)配列番号:175のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:176のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン
からなる群より選択される、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位が、
配列番号:293のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:294のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン
を含む、請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項4】
i)前記B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位が、そのN末端からC末端へ、第1の軽鎖可変ドメインと、第1の軽鎖定常ドメインと、第1のペプチドリンカーと、第1の重鎖可変ドメインと、第1の重鎖定常CH1ドメインとを含み;及び
ii)前記CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位が、そのN末端からC末端へ、第2の軽鎖可変ドメインと、第2の軽鎖定常ドメインと、第2のペプチドリンカーと、第2の重鎖可変ドメインと、第2の重鎖定常CH1ドメインとを含む;
請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項5】
前記B7H6に対して特異的な第1の抗原結合単位が、配列番号:206、配列番号:207、及び配列番号:208からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、前記CD3に対して特異的な第2の抗原結合単位が、配列番号:305のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項6】
第1及び第2のFcドメインをさらに含み、前記第1のFcドメインは前記第1の抗原結合単位に共有結合されており、前記第2のFcドメインは前記第2の抗原結合単位に共有結合されている、請求項4又は5に記載のタンパク質。
【請求項7】
i)前記第1のFcドメインが位置366にチロシン(Y)[T366Y]を含み、前記第2のFcドメインが位置407にトレオニン(T)[Y407T]を含み、又は
ii)前記第1のFcドメインが位置366にトリプトファン(W)[T366W]を含み、前記第2のFcドメインが位置366にセリン(S)[T366S]、位置368にアラニン(A)[L368A]及び位置407にバリン(V)[Y407V]を含み、又は
iii)前記第2のFcドメインが位置366にチロシン(Y)[T366Y]を含み、前記第1のFcドメインが位置407にトレオニン(T)[Y407T]を含み、又は
iv)前記第2のFcドメインが位置366にトリプトファン(W)[T366W]を含み、前記第1のFcドメインが位置366にセリン(S)[T366S]、位置368にアラニン(A)[L368A]及び位置407にバリン(V)[Y407V]を含む、
請求項6に記載のタンパク質。
【請求項8】
前記第1及び/又は前記第2のFcドメインが、位置234にアラニン[L234A]及び位置235にアラニン[L235A]を含む、請求項6又は7に記載のタンパク質。
【請求項9】
配列番号:230、配列番号:231、及び配列番号:232からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列を含む、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖とを含む、請求項4~8のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項10】
前記第1及び前記第2のポリペプチド鎖が、ジスルフィド結合を介して連結され、二重特異性の、二価の及びヘテロ二量体のタンパク質を形成している、請求項9に記載のタンパク質。
【請求項11】
一方の発現ベクターが配列番号:230、配列番号:231又は配列番号:232のいずれかの第1のポリペプチド鎖をコードし、そして他方の発現ベクターが、配列番号:3311の第2のポリペプチド鎖をコードしている、2つの発現ベクターで形質導入された宿主細胞。
【請求項12】
請求項に記載のタンパク質を製造する方法であって、
i)請求項に記載のタンパク質の発現を可能にする条件下で、請求項11に記載の前記宿主細胞を培養することと;
ii)前記タンパク質を回収すること
を含む、方法。
【請求項13】
前記タンパク質をさらに精製及び/又は修飾及び/又は製剤化することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
医薬において使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載のタンパク質と、薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物。
【請求項16】
癌を処置する方法において使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項17】
前記癌が、B7H6発現腫瘍である、請求項16に記載の使用のためのタンパク質。
【請求項18】
前記癌が、(転移性)結腸直腸癌((m)CRC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、又は頭頸部扁平上皮癌腫(HNSCC)である、請求項17に記載の使用のためのタンパク質。
【請求項19】
前記タンパク質が、細胞傷害性若しくは細胞分裂阻害性化学療法剤、血管新生を阻害する治療活性化合物、シグナル伝達経路阻害剤(例えば、EGFR阻害剤)、免疫調節剤、免疫チェックポイント阻害剤、有糸分裂チェックポイント阻害剤又はホルモン療法剤と組み合わせて使用される、請求項16~18のいずれか一項に記載の使用のためのタンパク質。
【請求項20】
前記タンパク質が、免疫チェックポイント阻害剤抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体と組み合わせて使用される、請求項19に記載の使用のためのタンパク質。
【請求項21】
前記抗PD-1抗体が、PD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4及びPD1-5からなる群より選択される、請求項20に記載の使用のためのタンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B7H6に対して特異的な第1の抗原結合単位(本明細書では「B7-H6」とも呼ばれる)とCD3に対して特異的な第2の抗原結合単位とを含む多重特異性結合タンパク質に関する。本発明は、このような結合タンパク質をコードする核酸、このような結合タンパク質を調製するための方法、このような結合タンパク質を発現する又は発現することができる宿主細胞、このような結合タンパク質を含む組成物、及び特に癌疾患の分野における治療目的のためのこのような結合タンパク質又はこのような組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
B7H6は、標的細胞に対する自然免疫を誘引することが知られている腫瘍選択的B7ファミリーのメンバーであり、細胞外ドメイン中の2つのIg様ドメインと、N末端IgV様ドメインと、C末端IgC1様ドメインとを有する他のB7ファミリーのメンバーと類似の機能を共有する。B7H6は、ヒトナチュラルキラー(NK)細胞のNKp30媒介性活性化の引き金を引き、脱顆粒及びIFNγ分泌をもたらす。(Brandt et al.,J.Exp.Med.2009 206(7);1495-1503)。現在入手可能なデータは、感染性症状に対する炎症応答における他、固形腫瘍におけるB7H6の役割を示唆している。
【0003】
B7H6は、敗血症の急性疾患状態における炎症過程の結果として敗血症患者の末梢血から単離されたCD14CD16細胞上に発現されることが示されている。IL-1β及びTNFαによる刺激に際してのCD14CD16炎症誘発性単球及び好中球の細胞表面上のB7H6の上方制御のインビトロ分析によって、これらの知見は確認されており(Matta et al.,Blood 2013 122(3))、敗血症症状に対する炎症応答におけるB7H6の役割が示唆される。
【0004】
前述の敗血症症状は例外として、B7H6は、腫瘍細胞において選択的に発現され、定常状態における正常なヒト組織では検出することができなかった。例えば、B7H6の発現は、T細胞リンパ腫、骨髄性白血病、結腸(colon)癌腫、乳癌及び卵巣癌腫細胞株(Brandt et al.,J.Exp.Med.2009 206(7):1495-1503;Li et al.,J.Exp.Med.2011 208(4);Greaves et al.,Blood 2013 121(5);Zhang et al.,Oncology Letters,2018,16:91-96)、非小細胞肺癌組織(Zhang et al.,Int J clin Exp Pathol 2014;7(10):6936-6942)、胃腸腫瘍組織(Chen et al.,Pathol.Oncol.Res.2014 20:203-207;Zhao et al.,Cell Proliferation,2018;e12468)、卵巣癌腫組織(Zhou et al.,Int clin Exp Pathol 2015 8(8)、口腔扁平上皮癌腫組織(Wang et al.,J Oral Pathol Med.2017;46:766-772)及び肝細胞癌腫組織(Li et al.,Int.J.Mol.Sci.2019,20,156)について記載されているが、腫瘍におけるB7H6の機能は完全には理解されていない。
【0005】
ADCC/CDC経路を誘導する抗B7H6抗体又は抗B7H6抗体-薬物抱合体を使用する癌の処置を含む治療用途が、国際公開第2009/046407A2号及び国際公開第2011/07044A2号に記載されている。
【0006】
しかしながら、ADCC/CDC活性に基づくB7H6標的化療法は、B7H6の細胞表面発現が低く、固形腫瘍においてADCC/CDC活性を有する従来の抗体を使用した成功率が低いため、最適な作用様式ではない。
【0007】
患者の大部分が化学療法処置後に再発し、細胞表面上のB7H6の発現が低いため、B7H6特異的抗体薬物抱合体(ADC)に基づく標的化療法も制限を有する可能性がある。さらに、ADCアプローチは、リンカーの不安定性又は分解の結果として遊離の薬物によって引き起こされるオフターゲット毒性をしばしば有する。
【0008】
CAR-T細胞及びT細胞誘導性抗体は、B7H6を発現している固形腫瘍の標的化療法のためのさらなるアプローチである(Wu et al.,Gene,2015 22,675-684;Hua et al.,Protein Engineering,Design&Selection,201730(10),713-721;国際公開第2017/181001号)。例えば、Wuら(J Immunol.2015 Jun 1;194(11):5305-11)は、B7H6特異的BiTEを用いた前臨床データを記載しており、BiTEは、2つの単鎖可変断片(scFv)からなる約55Kdaの融合タンパク質である二重(Bi)特異性T細胞誘導(Engager)を表す。その事例では、B7H6特異的BiTEは、OKT3-CD3-結合剤及び以前に公開されたB7H6抗体(Zhang et al.,J Immunol.2012 Sep 1;189(5):2290-9;国際公開第2013/169691号)に基づいて操作された。しかしながら、OKT3抗体はカニクイザルCD3と交差反応性がなく、したがって、臨床試験の準備のための好ましい試験種であるカニクイザルにおける前臨床毒性試験を可能にしない(Chatenoud et al.,The Rev Diabet Stud 2012;9(4):372-381)。さらなる課題は、比較的小さく容易に分解されるBiTE分子の半減期が短いことであり、診療所での連続静脈内投与を必要とする。したがって、このアプローチが成功するかどうかは証明されていない。現在までのところ、B7-H6発現腫瘍に対する標的化療法は利用可能ではなく、現在のアプローチによっては対処されていない、満たされていないニーズがなお存在している。
【0009】
例えば、結腸直腸癌(CRC)は、B7-H6の高い保有率及び予測可能な発現を示す。結腸直腸癌(CRC)は、世界中の癌罹患率及び死亡率の主な原因の1つである。CRC患者の約25%が病初に明白な転移を示し、新たに診断された患者の40~50%に転移性疾患が発症する。化学療法及び標的化療法における最近の改善は、転移性CRCの生存期間を延長したが、ほとんどの患者はその疾患で死亡するであろう。
【0010】
進行した疾患を有する癌患者の予後が不良であることに鑑みて、より有効な療法、特に改善された忍容性を有する有効な治療法を特定する必要が存在している。
【0011】
したがって、本発明の目的は、当技術分野で現在使用されている及び/又は公知の作用物質、組成物及び/又は方法と比較してある特定の利点を提供する薬理学的に活性な作用物質、組成物及び/又は処置の方法を提供することである。これらの利点には、改善された治療特性及び薬理学的特性、例えばインビボ有効性、より少ない副作用、低下した免疫原性、改善した治療域、低減した投与(例えば、注入)回数、より少ない投与量、より少ない頻度の投薬を可能にするための延長された半減期、及びその他の有利な特性、例えば、特に当技術分野で既に公知の候補薬物と比較して、改善された調製の容易さ、安定性、従来の抗体過程との適合性、又は削減された商品のコストが含まれる。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、T細胞上に発現されるCD3への結合アームと腫瘍細胞の細胞表面上に発現されるB7H6への結合アームとを有する多重特異性結合タンパク質を用いる二重特異性T細胞誘導アプローチに基づく。T細胞と腫瘍細胞に同時に結合することを通じて、本発明のT細胞誘導は、2つの細胞間に細胞溶解性シナプスの形成を強制し、それによって標的とされる腫瘍細胞へとT細胞活性を選択的にリダイレクトする。
【0013】
一態様において、本発明は、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位と、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含む多重特異性結合タンパク質であって、前記B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位は、i)~xxiv):
i)配列番号:1(CDR1)、配列番号:2(CDR2)及び配列番号:3(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:4(CDR1)、配列番号:5(CDR2)及び配列番号:6(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
ii)配列番号:7(CDR1)、配列番号:8(CDR2)及び配列番号:9(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:10(CDR1)、配列番号:11(CDR2)及び配列番号:12(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
iii)配列番号:13(CDR1)、配列番号:14(CDR2)及び配列番号:15(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:16(CDR1)、配列番号:17(CDR2)及び配列番号:18(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
iv)配列番号:19(CDR1)、配列番号:20(CDR2)及び配列番号:21(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:22(CDR1)、配列番号:23(CDR2)及び配列番号:24(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
v)配列番号:25(CDR1)、配列番号:26(CDR2)及び配列番号:27(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:28(CDR1)、配列番号:29(CDR2)及び配列番号:30(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
vi)配列番号:31(CDR1)、配列番号:32(CDR2)及び配列番号:33(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:34(CDR1)、配列番号:35(CDR2)及び配列番号:36(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
vii)配列番号:37(CDR1)、配列番号:38(CDR2)及び配列番号:39(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:40(CDR1)、配列番号:41(CDR2)及び配列番号:42(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
viii)配列番号:43(CDR1)、配列番号:44(CDR2)及び配列番号:45(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:46(CDR1)、配列番号:47(CDR2)及び配列番号:48(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
ix)配列番号:49(CDR1)、配列番号:50(CDR2)及び配列番号:51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:52(CDR1)、配列番号:53(CDR2)及び配列番号:54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
x)配列番号:55(CDR1)、配列番号:56(CDR2)及び配列番号:57(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:58(CDR1)、配列番号:59(CDR2)及び配列番号:60(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xi)配列番号:61(CDR1)、配列番号:62(CDR2)及び配列番号:63(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:64(CDR1)、配列番号:65(CDR2)及び配列番号:66(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xii)配列番号:67(CDR1)、配列番号:68(CDR2)及び配列番号:69(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:70(CDR1)、配列番号:71(CDR2)及び配列番号:72(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xiii)配列番号:73(CDR1)、配列番号:74(CDR2)及び配列番号:75(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:76(CDR1)、配列番号:77(CDR2)及び配列番号:78(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xiv)配列番号:79(CDR1)、配列番号:80(CDR2)及び配列番号:81(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:82(CDR1)、配列番号:83(CDR2)及び配列番号:84(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xv)配列番号:85(CDR1)、配列番号:86(CDR2)及び配列番号:87(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:88(CDR1)、配列番号:89(CDR2)及び配列番号:90(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xvi)配列番号:91(CDR1)、配列番号:92(CDR2)及び配列番号:93(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:94(CDR1)、配列番号:95(CDR2)及び配列番号:96(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xvii)配列番号:97(CDR1)、配列番号:98(CDR2)及び配列番号:99(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:100(CDR1)、配列番号:101(CDR2)及び配列番号:102(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xviii)配列番号:103(CDR1)、配列番号:104(CDR2)及び配列番号:105(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:106(CDR1)、配列番号:107(CDR2)及び配列番号:108(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xix)配列番号:109(CDR1)、配列番号:110(CDR2)及び配列番号:111(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:112(CDR1)、配列番号:113(CDR2)及び配列番号:114(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xx)配列番号:115(CDR1)、配列番号:116(CDR2)及び配列番号:117(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:118(CDR1)、配列番号:119(CDR2)及び配列番号:120(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xxi)配列番号:121(CDR1)、配列番号:122(CDR2)及び配列番号:123(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:124(CDR1)、配列番号:125(CDR2)及び配列番号:126(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xxii)配列番号:127(CDR1)、配列番号:128(CDR2)及び配列番号:129(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:130(CDR1)、配列番号:131(CDR2)及び配列番号:132(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
xxiii)配列番号:133(CDR1)、配列番号:134(CDR2)及び配列番号:135(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:136(CDR1)、配列番号:137(CDR2)及び配列番号:138(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;並びに
xxiv)配列番号:139(CDR1)、配列番号:140(CDR2)及び配列番号:141(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:142(CDR1)、配列番号:143(CDR2)及び配列番号:144(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
からなる群より選択される、多重特異性結合タンパク質を提供する。
【0014】
本発明の結合タンパク質のいくつかの実施形態において、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位は、i)~xxiv):
i)配列番号:145のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:146のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
ii)配列番号:147のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:148のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
iii)配列番号:149のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:150のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
iv)配列番号:151のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:152のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
v)配列番号:153のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:154のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
vi)配列番号:155のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:156のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
vii)配列番号:157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:158のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
viii)配列番号:159のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:160のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
ix)配列番号:161のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:162のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
x)配列番号:163のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:164のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xi)配列番号:165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:166のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xii)配列番号:167のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:168のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xiii)配列番号:169のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:170のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xiv)配列番号:171のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:172のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xv)配列番号:173のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:174のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xvi)配列番号:175のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:176のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xvii)配列番号:177のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:178のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xviii)配列番号:179のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:180のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xix)配列番号:181のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:182のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xx)配列番号:183のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:184のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xxi)配列番号:185のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:186のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xxii)配列番号:187のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:188のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
xxiii)配列番号:189のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:190のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;並びに
xxiv)配列番号:191のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:192のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
からなる群より選択される。
【0015】
本発明の結合タンパク質のいくつかの実施形態において、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位は、i)~vi):
i)配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
ii)配列番号:263(CDR1)、配列番号:264(CDR2)及び配列番号:265(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:266(CDR1)、配列番号:267(CDR2)及び配列番号:268(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
iii)配列番号:269(CDR1)、配列番号:270(CDR2)及び配列番号:271(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:272(CDR1)、配列番号:273(CDR2)及び配列番号:274(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
iv)配列番号:275(CDR1)、配列番号:276(CDR2)及び配列番号:277(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:278(CDR1)、配列番号:279(CDR2)及び配列番号:280(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
v)配列番号:281(CDR1)、配列番号:282(CDR2)及び配列番号:283(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:284(CDR1)、配列番号:285(CDR2)及び配列番号:286(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;並びに
vi)配列番号:287(CDR1)、配列番号:288(CDR2)及び配列番号:289(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:290(CDR1)、配列番号:291(CDR2)及び配列番号:292(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位;
からなる群より選択される。
【0016】
本発明の結合タンパク質のいくつかの実施形態において、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位は、i)~vi):
i)配列番号:293のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:294のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
ii)配列番号295のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号296のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
iii)配列番号:297のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:298のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
iv)配列番号:299のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号300のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
v)配列番号:301のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号302のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;並びに
vi)配列番号303のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号304のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
からなる群より選択される。
【0017】
本発明の結合タンパク質のいくつかの実施形態において、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位は、そのN末端からC末端へ、第1の軽鎖可変ドメインと、第1の軽鎖定常ドメインと、第1のペプチドリンカーと、第1の重鎖可変ドメインと、第1の重鎖定常CH1ドメインとを含み;及びCD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位は、そのN末端からC末端へ、第2の軽鎖可変ドメインと、第2の軽鎖定常ドメインと、第2のペプチドリンカーと、第2の重鎖可変ドメインと、第2の重鎖定常CH1ドメインとを含む。本発明の結合タンパク質のいくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のペプチドリンカーは、26~42個のアミノ酸、好ましくは30~40個のアミノ酸、34~40個のアミノ酸、又は36~39個のアミノ酸の任意の1つ、より好ましくは38個のアミノ酸を含む。本発明のいくつかの実施形態において、第1のリンカー及び/又は第2のリンカーは、好ましくは配列番号:250のアミノ酸配列を含むGly-Serリンカーであり、より好ましくは前記第1及び第2のペプチドリンカーが同じ配列(例えば、配列番号:250)を含む。本発明のいくつかの実施形態において、第1の軽鎖定常ドメイン及び第2の軽鎖定常ドメインは、独立して、ヒトのカッパ又はラムダドメインを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本発明の結合タンパク質のB7H6に対して特異的な第1の抗原結合単位は、配列番号:193、配列番号:194、配列番号:195、配列番号:196、配列番号:197、配列番号:198、配列番号:199、配列番号:200、配列番号:201、配列番号:202、配列番号:203、配列番号:204、配列番号:205、配列番号:206、配列番号:207、配列番号:208、配列番号:209、配列番号:210、配列番号:211、配列番号:212、配列番号:213、配列番号:214、配列番号:215及び配列番号:216からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、CD3に対して特異的な第2の抗原結合単位は、配列番号:305、配列番号:306、配列番号:307、配列番号:308、配列番号:309及び配列番号:310からなる群、好ましくは配列番号:305より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明の結合タンパク質は、第1及び第2のFcドメインをさらに含み、前記第1のFcドメインは前記第1の抗原結合単位に、好ましくは前記第1の抗原結合単位のC末端に共有結合されており、前記第2のFcドメインは前記第2の抗原結合単位に、好ましくは前記第2の抗原結合単位のC末端に共有結合されている。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、
i)第1のFcドメインは位置366にチロシン(Y)[T366Y]を含み、第2のFcドメインは位置407にトレオニン(T)[Y407T]を含み、又は
ii)第1のFcドメインは位置366にトリプトファン(W)[T366W]を含み、第2のFcドメインは位置366にセリン(S)[T366S]、位置368にアラニン(A)[L368A]及び位置407にバリン(V)[Y407V]を含み、又は
iii)第2のFcドメインは位置366にチロシン(Y)[T366Y]を含み、第1のFcドメインは位置407にトレオニン(T)[Y407T]を含み、又は
iv)第2のFcドメインは位置366にトリプトファン(W)[T366W]を含み、第1のFcドメインは位置366にセリン(S)[T366S]、位置368にアラニン(A)[L368A]及び位置407にバリン(V)[Y407V]を含み、
好ましくは、第1又は第2のFcドメインは、さらに、位置435にアルギニン[H435R]及び位置436にフェニルアラニン[Y436F]を含む。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のFcドメインは、位置234[L234A]及び位置235[L235A]にアラニンを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明の結合タンパク質は、配列番号:217、配列番号:218、配列番号:219、配列番号:220、配列番号:221、配列番号:222、配列番号:223、配列番号;224、配列番号:225、配列番号:226、配列番号:227、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239及び配列番号:240からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311、配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315及び配列番号:316からなる群、好ましくは配列番号:311より選択されるアミノ酸配列を含む、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、i)本発明の結合タンパク質の第1の抗原結合単位及び/若しくは第2の抗原結合単位をコードする、場合により、第1及び/若しくは第2のFcドメインをさらにコードする、又はii)本発明の結合タンパク質の第1及び/若しくは第2のポリペプチド鎖をコードする単離された核酸分子を提供する。さらなる態様では、本発明の核酸分子を含む発現ベクター、このような発現ベクターで形質導入された宿主細胞、及び本発明のタンパク質を製造する方法が本明細書で提供される。
【0023】
本発明のさらなる態様においては、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖とCD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖とを含む多重特異性結合タンパク質であって、第1のポリペプチド鎖は、第1の軽鎖と、第1のリンカーと、第1の重鎖とを含み、第2のポリペプチド鎖は、第2の軽鎖と、第2のリンカーと、第2の重鎖とを含み、好ましくは第1の軽鎖のC末端は、第1のペプチドリンカーを介して第1の重鎖のN末端に共有結合されており、第2の軽鎖のC末端は、第2のペプチドリンカーを介して第2の重鎖のN末端に共有結合されている、多重特異性結合タンパク質が本明細書において提供される。当業者は、本明細書における「軽鎖」又は「重鎖」への任意の言及が、それぞれ抗体軽鎖又は抗体重鎖を指すことを理解するであろう。
【0024】
本発明のタンパク質のいくつかの実施形態において、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖は、本明細書に記載されているB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23及びB7H6#24の任意の1つの抗原結合単位について定義される、CDR配列、VH/VL配列及び/又は単鎖Fab配列を含む、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態において、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖は、本明細書に記載されるように、CD3#1の抗原結合単位について定義される、CDR配列、VH/VL配列及び/又はscFab配列を含む、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含む。
【0025】
本発明の結合タンパク質を含むさらなる態様、実施形態、使用及び方法は、本発明の以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0026】
本発明は、B7H6を発現する癌、例えば(転移性)結腸直腸癌((m)CRC)、非小細胞肺癌(NSCLC)又は頭頸部扁平上皮癌腫(HNSCC)のより効率的な処置を可能にする新規な結合タンパク質を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の二重特異性結合タンパク質の概略図。
図2】CHO-K1細胞の細胞表面上に発現された細胞外B7H6タンパク質の概略図。
図3】34の例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の、組換えヒトB7H6細胞外タンパク質への結合。
図4】34の例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の、組換えヒトアラニン変異B7H6細胞外タンパク質への結合。
図5】34の例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の、内因性ヒトB7H6を発現するHCT-15細胞への結合。
図6】23の例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の、カニクイザルB7H6を発現する組換えCHO-K1細胞への結合。
図7】23の例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の、CD3を発現するヒトT細胞への結合。
図8】23の例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の、B7H6陰性CHO-K1細胞への結合。
図9】NK-92MI細胞によるB7H6依存性IFNγ分泌の17の例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の阻害活性。
図10】刺激されていないT細胞をヒトHCT-15細胞にリダイレクトする11の例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の標的細胞溶解能。
図11】刺激されていないT細胞をヒトHCT-15細胞にリダイレクトする23の例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の標的細胞溶解能。
図12】様々なエフェクター対標的(E:T)細胞比での例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の標的細胞溶解能。
図13】刺激されていないT細胞をB7-H6で形質導入された組換えCHO細胞及びCho wt細胞にリダイレクトする23の例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の細胞溶解能。
図14】6つの例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の、HCT-15細胞の存在下でのT細胞上のCD25発現の上方制御能。
図15】6つの例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の、HCT-15細胞の存在下でのT細胞中の細胞内パーフォリン発現の上方制御能。
図16】6つの例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の、HCT-15細胞の存在下でのT細胞中の細胞内グランザイムB発現の上方制御能。
図17】6つの例示的B7H6/CD3結合タンパク質の、HCT-15細胞の存在下でのT細胞の増殖促進能。
図18】5つの例示的B7H6/CD3結合タンパク質の、HCT-15細胞の存在下でのT細胞によるIFNγの分泌促進能。
図19】1つの例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の薬物動態プロファイル。
図20】T細胞を移植されたマウス異種移植モデルにおける1つの例示的B7H6/CD3結合タンパク質の抗腫瘍活性。
図21】例示的なB7H6/CD3結合タンパク質によるNCI-H716異種移植腫瘍組織におけるT細胞浸潤。
図22】4つの例示的なB7H6結合タンパク質の薬物動態学的プロファイル。
図23】T細胞を移植されたマウス異種移植モデルにおける4つの例示的B7H6/CD3結合タンパク質の抗腫瘍活性。
図24】q7d又は単回投与として投与されたT細胞移植されたマウス異種移植モデルにおける例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の抗腫瘍活性。
【発明を実施するための形態】
【0028】
使用される用語及び定義
本発明の上記及び他の態様及び実施形態は、本明細書のさらなる説明から明らかになるであろう。
別段の指示又は定義がない限り、使用される全ての用語は、当業者には明らかであろう当技術分野における通常の意味を有する。例えば、Sambrook et al,’’Molecular Cloning:A Laboratory Manual’’(2nd Ed.),Vols.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Lewin,’’Genes IV’’,Oxford University Press,New York,(1990),及びRoitt et al.,’’Immunology’’(2nd Ed.),Gower Medical Publishing,London,New York(1989)などの標準的なハンドブック並びに本明細書に引用される一般的な背景技術が参照される。さらに、特に指示しない限り、具体的に詳細に記載されていない全ての方法、工程、技術及び操作は、当業者には明らかであるように、それ自体公知の様式で実施することができ、実施されてきた。例えば、標準的なハンドブック、上記で参照された一般的な背景技術、及びそこに引用されているさらなる参考文献が再び参照される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語及び「含む(comprises)」及び「含む(comprise)」などのその変形は、「含有する(containing)」又は「含む(including)」又は「有する(having)」という用語で置き換えることができる。
【0030】
(例えば、「重鎖/軽鎖配列」、「抗体配列」、「可変ドメイン配列」、「定常ドメイン配列」又は「タンパク質配列」のような用語における)本明細書で使用される「配列」という用語は、一般に、文脈がより限定的な解釈を必要としない限り、関連するアミノ酸配列の他、これをコードする核酸配列又はヌクレオチド配列の両方を含むことが理解されるべきである。
【0031】
本明細書で使用される「抗原結合単位」という用語は、抗体の特異的な標的又は抗原への結合を可能にする抗体に由来する最小の構造上の要件(すなわち、抗体中に典型的に存在する最小の構造上の要件)を含む。したがって、抗原結合単位は、少なくとも3つの軽鎖及び3つの重鎖CDR配列を含み、好ましくは、少なくとも軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含む。
【0032】
抗体又は免疫グロブリンの一般化された構造は、当業者に周知である。これらの分子は、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖で構成される、典型的には約15万ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、典型的には完全長抗体と呼ばれる。各軽鎖は、1つのジスルフィド結合によって重鎖に共有結合で連結されてヘテロ二量体を形成し、ヘテロ二量体の2つの同一の重鎖間の共有ジスルフィド結合を通じて、ヘテロ四量体分子が形成される。軽鎖及び重鎖は1つのジスルフィド結合によって一緒に連結されているが、2つの重鎖間のジスルフィド結合の数は免疫グロブリンアイソタイプによって異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的に間隔を置いて配置された鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を有し、続いて3つ又は4つ(IgEの場合)の定常ドメイン(CH1、CH2、CH3及びCH4)、並びにCH1とCH2の間にヒンジ領域を有する。各軽鎖は、2つのドメイン、N末端可変ドメイン(VL)及びC末端定常ドメイン(CL)を有する。VLドメインはVHドメインと非共有結合的に会合するが、CLドメインは一般にジスルフィド結合を介してCH1ドメインに共有結合で連結されている。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの間の界面を形成すると考えられている(Chothia et al.,1985,J.Mol.Biol.186:651-663)。可変ドメインは、本明細書では可変領域又はFvとも呼ばれ、抗原結合部位を有することによって抗原に対する特異性を抗体に付与する部分を示す。
【0033】
本明細書で使用される「軽鎖可変ドメイン」(又は「軽鎖可変領域」)及び「重鎖可変ドメイン」(又は「重鎖可変領域」)は、同じ一般構造を有し、各ドメインは、その配列が広く保存された、当技術分野及び本明細書の以下で、それぞれ、「フレームワーク領域1」又は「FR1」;「フレームワーク領域2」又は「FR2」;「フレームワーク領域3」又は「FR3」;及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」と称される4つのフレームワーク(FR)領域から本質的になり;これらのフレームワーク領域は、当技術分野及び本明細書の以下で、それぞれ、「相補性決定領域1」又は「CDR1」;「相補性決定領域2」又は「CDR2」;及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」と称される3つの超可変領域、HVR(又はCDR)によって中断されている。したがって、免疫グロブリン可変ドメインの一般的な構造又は配列は、以下のように示すことができる:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。フレームワーク領域はベータシート立体構造をとり、CDRはベータシート構造を接続するループを形成し得る。各鎖中のCDRは、フレームワーク領域によってそれらの三次元構造に保持され、他方の鎖からのCDRとともに抗原結合部位を形成する。
【0034】
CDRの様々な定義、例えば、IMGTとも呼ばれるCCGに基づく定義(Lefranc MP,Pommie C,Ruiz M,Giudicelli V,Foulquier E,Truong L,Thouvenin-Contet V,Lefranc G.’’IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains.’’Dev Comp Immunol.2003 Jan;27(1):55-77;Giudicelli V,Brochet X,Lefranc MP.’’IMGT/V-QUEST:IMGT standardized analysis of the immunoglobulin(IG)and T cell receptor(TR)nucleotide sequences’’.Cold Spring Harb Protoc.2011;2011(6):695-715)又はChothiaに基づく定義(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.1987,196:901-917)が、Kabat(E.A.Kabat,T.T.Wu,H.Bilofsky,M.Reid-Miller and H.Perry,Sequence of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda(1983))とともに当技術分野で公知である。本発明の文脈内で、CDRへの言及はCCG(IMGT)の定義に基づく。
【0035】
本出願内で使用される「定常ドメイン」又は「定常領域」という用語は、可変領域以外の抗体のドメインの合計を表す。このような定常ドメイン及び領域は、当技術分野で周知であり、例えば、Kabatら(’’Sequence of proteins of immunological interest’’、US Public Health Services,NIH Bethesda,MD,Publication No.91-3242(1991))によって記載されている。重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、抗体又は免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMのクラスに分けられる。重鎖定常領域によれば、異なるクラスの免疫グロブリンは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4、IgA1及びIgA2にさらに分割され得る。
【0036】
抗体の「Fc部分」又は「Fcドメイン」は、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、様々なエフェクター機能を示す。「抗体のFc部分/ドメイン」は、当業者に周知の用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて定義される。抗体のFc部分は、補体活性化、C1q結合及びFc受容体結合に基づいて、ADCC(抗体依存性細胞介在性細胞傷害)及びCDC(補体依存性細胞傷害)に直接関与する。補体活性化(CDC)は、補体因子C1qがほとんどのIgG抗体サブクラスのFc部分に結合することによって開始される。補体系に対する抗体の影響はある特定の条件に依存するが、C1qへの結合はFc部分中の定義された結合部位によって引き起こされる。このような結合部位は、例えば、L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331及びP329(Eu付番による付番(Edelman et al,Proc Natl Acad Sci USA.1969 May;63(1):78-85))である。IgG1においてC1q及びFcγ受容体結合を媒介する上でこれらの残基の中で最も重要なのは、L234及びL235である(Hezareh et al.,J.Virology 75(2001)12161-12168,Shields et al(2001)JBC,276(9):6591-6604)。サブクラスIgG1及びIgG3の抗体は、通常、補体活性化並びにC1q及びC3結合を示すが、IgG2及びIgG4は補体系を活性化せず、C1q及びC3を結合しない。
【0037】
「抗体」又は「抗体分子」(本明細書では同義的に使用される)という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、配列最適化された抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗体の断片、特にFv、Fab、Fab’又はF(ab’)2断片、単鎖抗体、特に単鎖可変断片(scFv)、単鎖Fab断片(scFab)、小型モジュール免疫医薬品(SMIP(Small Modular Immunopharmaceutical))、ドメイン抗体、ナノボディ(登録商標)、ダイアボディを包含する。抗体は、抗体のFc部分によって通常媒介される、ADCC若しくはCDCなどのエフェクター機能を有することがあり得、又は例えばFc部分を欠くか、若しくはブロックされた遮蔽されたFc部分、本質的には補体系などの免疫細胞若しくは免疫系成分によって認識されない若しくは不十分に認識されるFc部分を有することによって、エフェクター機能を有さないことがあり得る。
【0038】
モノクローナル抗体(mAb)は、アミノ酸配列が同一である単一特異性抗体である。モノクローナル抗体(mAb)は、特異的な抗体を産生するB細胞の骨髄腫(B細胞癌)細胞との融合物のクローンを表すハイブリッド細胞株(ハイブリドーマと呼ばれる)からハイブリドーマ技術によって産生され得る(Kohler G,Milstein C.Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity.Nature 1975;256:495-7)。あるいは、モノクローナル抗体は、宿主細胞中での組換え発現によって産生され得る(Norderhaug L,Olafsen T,Michaelsen TE,Sandlie I.(May 1997).’’Versatile vectors for transient and stable expression of recombinant antibody molecules in mammalian cells.’’J Immunol Methods 204(1):77-87;以下も参照)。「組換え抗体」又は「組換え結合タンパク質」は、組換え的に操作された宿主細胞によって産生された抗体又は結合タンパク質である。「組換え抗体」又は「組換え結合タンパク質」は、場合により単離又は精製される。
【0039】
本発明による抗体分子には、Fab、Fab’又はF(ab’)2断片などの、抗原結合特性を保持する免疫グロブリンの断片も含まれる。このような断片は、例えばタンパク質分解消化による免疫グロブリンの断片化によって、又はこのような断片の組換え発現によって取得され得る。例えば、免疫グロブリン消化は、例えばパパイン又はペプシンを使用して、日常的な技術によって達成することができる(国際公開第94/29348号)。抗体のパパイン消化は、典型的には、2つの同一の抗原結合断片(Fab)を生成する。Fab断片は、重鎖及び軽鎖のそれぞれの1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメインから構成される。ペプシン処理は、F(ab’)2を与える。Fab断片において、可変ドメインはそれぞれ、好ましくはヒト起源の免疫グロブリン定常ドメインに融合される。したがって、重鎖可変ドメインはCH1ドメインに融合され(いわゆるFd断片)、軽鎖可変ドメインはCLドメインに融合される。Fab断片は、宿主細胞中でのそれぞれの核酸の組換え発現によって産生され得る、下記を参照。
【0040】
免疫グロブリンの可変ドメイン又はこのような可変ドメインに由来する分子を異なる分子状況に配置するためのいくつかの技術が開発されている。これらも、本発明による「抗体」又は「抗体分子」と見なされるべきである。一般に、これらの抗体分子は、免疫グロブリンと比較してサイズがより小さく、単一のアミノ酸鎖又はいくつかのアミノ酸鎖を含み得る。例えば、「単鎖可変断片(scFv)」は、短いリンカー、通常はセリン(S)又はグリシン(G)と一緒に連結された免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域の融合物である(国際公開第88/01649号;国際公開第91/17271号;Huston et al;International Reviews of Immunology,Volume 10,1993,195-217)。「単一ドメイン抗体」又は「ナノボディ(登録商標)」は、単一のIg様ドメイン中に抗原結合部位を有する(国際公開第94/04678号;国際公開第03/050531号、Ward et al.,Nature.1989 Oct 12;341(6242):544-6;Revets et al.,Expert Opin Biol Ther.5(1):111-24,2005)。同じ抗原又は異なる抗原に対する結合特異性を有する1つ以上の単一ドメイン抗体は、一緒に連結され得る。「ダイアボディ」は、2つの可変ドメインを含む2つのアミノ酸鎖からなる二価抗体分子である(国際公開第94/13804号、Holliger et al.,Proc Natl Acad Sci USA.1993 Jul 15;90(14):6444-8)。抗体様分子の他の例は、「免疫グロブリンスーパーファミリー抗体」である(IgSF;Srinivasan and Roeske,Current Protein Pept.Sci.2005,6(2):185-96)。異なる概念は、単鎖ヒンジに連結されたFvドメインと、定常ドメインCH1を欠くエフェクタードメインとを含む、いわゆる「小型モジュール免疫医薬品(SMIP)」をもたらす(国際公開第02/056910号)。「単鎖Fab」又は「scFab」は、軽鎖Fabドメイン(すなわち、1つの軽鎖定常ドメイン(CL)に連結された軽鎖可変ドメイン(VL))の、重鎖Fabドメイン(すなわち、1つの重鎖定常ドメイン(CH1)に連結された重鎖可変ドメイン(VH))との融合物である。単鎖Fabは、抗原を認識して結合することができる。scFabは、場合により、CLドメインとVHドメインの間に位置するリンカー(例えば、ペプチドリンカー)も含有し得る(Hust et al.BMC Biotechnology2007,7:14)。
【0041】
ヒトへの適用のために、マウスなどの他の種に元々由来する、本明細書に記載の抗原結合単位を含む抗体又は結合タンパク質などの治療分子の免疫原性を低下させることがしばしば望ましい。これは、キメラ抗体/結合タンパク質の構築によって、又は「ヒト化」と呼ばれる過程によって行うことができる。これに関連して、「キメラ抗体」;又は「キメラ抗原結合単位」は、異なる種(例えば、ヒト)に由来する配列部分(例えば、定常ドメイン)に融合された1つの種(例えばマウス)に由来する配列部分(例えば、可変ドメイン)を含む抗体又は抗原結合単位であると理解される。これに関連して、「ヒト化抗体」、「ヒト化抗原結合単位」又は「ヒト化VL/VHドメイン」は、非ヒト種に元々由来する可変ドメインを含む抗体、抗原結合単位又はVH/VLドメインであり、ある特定のアミノ酸が、その可変ドメインの配列全体をヒト可変ドメインの配列により密接に類似させるように変異されている。抗体のヒト化の方法は、当技術分野で周知である(Billetta R,Lobuglio AF.’’Chimeric antibodies’’.Int Rev Immunol.1993;10(2-3):165-76;Riechmann L,Clark M,Waldmann H,Winter G(1988).’’Reshaping human antibodies for therapy’’.Nature:332:323)。
【0042】
本明細書で使用される「ヒト抗体」、「ヒト抗原結合単位」又は「ヒトVH/VLドメイン」という用語には、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変(及び定常、該当する場合)領域を有する抗体、抗原結合単位又はVH/VLドメインが含まれる。本明細書で使用される「ヒト抗体」、「ヒト抗原結合単位」又は「ヒトVH/VLドメイン」という用語は、マウス、ラット又はウサギなどの別の(哺乳動物)種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含むことを意図しない。したがって、本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」、「ヒト抗原結合単位」又は「ヒトVH/VLドメイン」という用語は、タンパク質の全ての部分(例えば、CDR、フレームワーク、CL、CHドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3)、ヒンジ、VL、VH)がヒトにおいて実質的に非免疫原性であり、本明細書で以下にさらに記載されているようなわずかな配列変化又は変動のみを有する抗体、抗原結合単位又はVH/VLドメインを指す。
【0043】
このような「ヒト抗体」、「ヒト抗原結合単位」又は「ヒトVH/VLドメイン」を作製するための技術が記載されており、ファージディスプレイ又はトランスジェニック動物の使用が含まれるが、これらに限定されない(WWW.Ablexis.com/technology-alivamab.php;国際公開第90/05144号;D.Marks,H.R.Hoogenboom,T.P.Bonnert,J.McCafferty,A.D.Griffiths and G.Winter(1991)’’By-passing immunisation.Human antibodies from V-gene libraries displayed on phage.’’J.Mol.Biol.,222,581-597;Knappik et al.,J.Mol.Biol.296:57-86,2000;S.Carmen and L.Jermutus,’’Concepts in antibody phage display’’.Briefings in Functional Genomics and Proteomics 2002 1(2):189-203;Lonberg N,Huszar D.’’Human antibodies from transgenic mice’’.Int Rev Immunol.1995;13(1):65-93.;Bruggemann M,Taussig MJ.’’Production of human antibody repertoires in transgenic mice’’.Curr Opin Biotechnol.1997 Aug;8(4):455-8)。
【0044】
したがって、ヒト抗体、ヒト抗原結合単位又はヒトVH/VLドメインは、例えばキメラ抗体又はヒト化抗体とは異なる。ヒト抗体、ヒト抗原結合単位又はヒトVH/VLドメインは、機能的に再編成されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖及び/又は軽鎖)遺伝子を発現することができる非ヒト動物又は原核細胞若しくは真核細胞によって産生され得ることが指摘される。
【0045】
本発明のキメラ、ヒト化又はヒト抗体、抗原結合単位又はVH/VLドメインは、さらに最適化され得、本明細書では「最適化された」又は「配列最適化された」抗体、抗原結合単位又はVH/VLドメインとも呼ばれる。このような最適化には、例えば、ヒトにおける免疫原性を低下させるための、又は脱アミド化、望ましくない電荷若しくは親油性若しくは非特異的結合を回避するための、望ましくないアミノ酸の除去又は交換が含まれるが、これらに限定されない。このような望ましくないアミノ酸の除去又は交換は、例えば、インビトロでのランダムな若しくは部位特異的な突然変異誘発によって又はインビボでの体細胞変異によって導入することができる。さらに、キメラ又はヒト化抗体、抗原結合単位又はVH/VLドメインに関連して、ある特定のマウスFR残基が、最適化された抗体、抗原結合単位及びVH/VLドメインの機能にとって重要であり得ることが理解されよう。したがって、これらの重要なアミノ酸残基は、最適化された抗体、抗原結合単位及びVH/VLドメイン中に保持され得る。
【0046】
「モノマー」という用語は、本明細書に記載の抗体又は多重特異性タンパク質の均一な形態を指す。例えば、完全長抗体の場合、モノマーは、2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖を有するモノマー抗体を意味する。本発明の文脈において、モノマーは、本明細書に記載の、B7H6に対して特異的な単一の抗原結合単位とCD3に対して特異的な単一の抗原結合単位を有する本発明のタンパク質を意味する。例えば、本明細書中に記載される結合タンパク質のモノマーは、2つのポリペプチド鎖、すなわち、B7H6に対して特異的な単鎖Fab及び第1のFcドメインを含む第1のポリペプチド鎖と、CD3に対して特異的な単鎖Fab及び第2のFcドメインを含む第2のポリペプチド鎖とを有し得る。
【0047】
エピトープは、抗体又は抗原結合部分(例えば、本明細書中に記載されるタンパク質の抗原結合単位)によって結合される抗原の領域である。「エピトープ」という用語は、抗体又は抗原結合部分に特異的に結合できる任意のポリペプチド決定基を含む。ある特定の実施形態において、エピトープ決定基は、アミノ酸、グリカン側鎖、ホスホリル又はスルホニルなどの分子の化学的に活性な表面基を含み、ある特定の実施形態において、特定の三次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有し得る。立体構造エピトープ及び非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下において前者への結合は失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。
【0048】
ある特定のエピトープ、抗原又はタンパク質(又はその少なくとも1つの部分、断片若しくはエピトープに対して)「結合する」、「に結合する」、「特異的に結合する」若しくは「に特異的に結合する」ことができる、「(に)結合する」若しくは「に特異的に結合する」、「に対して親和性を有する」、「に対して特異的である」及び/又は「に対して特異性を有する」抗原結合分子/タンパク質(免疫グロブリン、抗体、抗原結合単位、又はこのような抗原結合分子/タンパク質の断片など)は、前記エピトープ、抗原若しくはタンパク質「に対する」若しくは「に対して作られた」又はこのようなエピトープ、抗原若しくはタンパク質に関する「結合」分子/タンパク質であると称される。これらの用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0049】
本明細書で使用される場合、「結合する」及び「特異的結合」という用語は、インビトロアッセイ、好ましくは精製された野生型抗原を用いたプラズモン共鳴アッセイ((Malmqvist M.,’’Surface plasmon resonance for detection and measurement of antibody-antigen affinity and kinetics.’’,Curr Opin Immunol.1993 Apr;5(2):282-6))における、抗原結合分子/タンパク質(免疫グロブリン、抗体、抗原結合単位、又はこのような抗原結合分子/タンパク質の断片など)の抗原のエピトープへの結合を指す。抗体親和性は、速度論的排除アッセイ(KinExA)技術(Darling,R.J.,and Brault P-A.,’’Kinetic exclusion assay technology:Characterization of Molecular Interactions.’’ASSAY and Drug Development Technologies.2004,Dec 2(6):647-657)を用いて測定することもできる。例えば、本発明の結合タンパク質又はタンパク質は、その第1の抗原結合単位/第1のポリペプチド鎖でB7H6のエピトープに結合し、その第2の抗原結合単位/第2のポリペプチド鎖でCD3のエピトープに結合する。
【0050】
一般に、「特異性」という用語は、特定の抗原結合分子/タンパク質(免疫グロブリン、抗体、抗原結合単位、又はこのような抗原結合分子/タンパク質の断片など)が結合することができる異なる種類の抗原又はエピトープの数を指す。B7H6に対する結合特異性は、本発明の抗原結合タンパク質/分子(例えば、このような結合タンパク質の第1の抗原結合単位)が、構造的に無関係な分子よりもB7H6に対して有意に高い結合親和性を有することを意味する。CD3に対する結合特異性は、本発明の抗原結合タンパク質/分子(例えば、このような結合タンパク質の第2の抗原結合単位)が、構造的に無関係な分子よりもCD3に対して有意に高い結合親和性を有することを意味する。抗原結合分子/タンパク質の特異性は、その親和性及び/又はアビディティに基づいて決定することができる。抗原結合タンパク質との抗原の解離に対する平衡定数(K)によって表される親和性は、エピトープと抗原結合分子/タンパク質上の抗原結合部位との間の結合強度の尺度であり、Kの値が小さいほど、エピトープと抗原結合部位の間の結合強度がより強くなる(あるいは、親和性は、1/Kである親和定数(K)として表すこともできる。)。当業者に明らかなように(例えば、本明細書のさらなる開示に基づいて)、親和性は、関心対象の特異的な抗原に応じて、それ自体公知の様式で決定することができる。アビディティは、抗原結合分子/タンパク質(免疫グロブリン、抗体、抗原結合単位、又はこのような抗原結合分子/タンパク質の断片など)と関連抗原の間での結合強度の尺度である。アビディティは、エピトープと抗原結合分子/タンパク質上のその抗原結合部位との間の親和性と、抗原結合分子/タンパク質上に存在する関連結合部位の数の両方に関連する。
【0051】
抗原結合単位/抗原、リガンド/受容体、又はその他の結合対に言及する場合、「特異的に結合する」又は「選択的に結合する」という用語は、タンパク質及びその他の生物製剤の異種集団中でのタンパク質の存在を決定する結合反応を示す。したがって、指定された条件下では、指定された抗原結合単位は特定の抗原に結合し、試料中に存在する他のタンパク質に有意な量で結合しない。抗原結合単位は、指定された条件下で、無関係な抗原との親和性よりも少なくとも2倍大きい、好ましくは少なくとも10倍大きい、より好ましくは少なくとも20倍大きい、最も好ましくは少なくとも100倍大きい親和性でその抗原に結合する。
【0052】
本明細書で使用される「単離された、」という用語は、その元の又は天然の環境(例えば、天然に存在する場合、自然環境)から取り出された材料を指す。例えば、生きている動物中に存在する天然に存在するポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されておらず、ヒトの介入によって天然系中の共存物質の一部又は全部から分離された同じポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得、及び/又はこのようなポリヌクレオチド若しくはポリペプチドは組成物の一部であり得るが、このようなベクター又は組成物は、自然の状態でそれが見出される環境の一部ではないという点で、なおも単離されたものということができる。例えば、核酸、タンパク質/ポリペプチド分子は、その天然の生物学的供給源及び/又は核酸、タンパク質/ポリペプチド分子がそこから得られた反応媒体若しくは培養媒体と比較した場合に、別の核酸、別のタンパク質/ポリペプチド、別の生物学的成分若しくは高分子、又は少なくとも1つの汚染物質、不純物若しくは微量成分などの、前記供給源又は媒体中で核酸、タンパク質/ポリペプチド分子に通常付随している少なくとも1つの他の成分から分離されているときに、「本質的に単離された(形態)(で)」と考えられる。特に、核酸又はタンパク質/ポリペプチド分子は、少なくとも2倍、特に少なくとも10倍、さらに特に少なくとも100倍、及び最大1000倍以上精製されている場合、「本質的に単離された」と考えられる。「本質的に単離された形態で」ある核酸又はタンパク質/ポリペプチド分子は、好ましくは、適切なクロマトグラフィー技術、例えばポリアクリルアミド-ゲル電気泳動などの適切な技術を使用して決定される場合に、本質的に均一である。
【0053】
本明細書で使用される場合、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈における「同一の」又は「パーセント同一性、」という用語は、最大の対応のために比較及び整列されたときに、同じである、又は同じであるヌクレオチド若しくはアミノ酸残基の指定された百分率を有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。パーセント同一性を決定するために、配列は最適な比較目的のために整列される(例えば、第2のアミノ酸配列又は核酸配列との最適な整列のために、第1のアミノ酸配列又は核酸配列の配列中にギャップを導入することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の位置の数/位置の総数(例えば、重なり合う位置)×100)。いくつかの実施形態において、比較される2つの配列は、適宜、配列内にギャップが導入された後に同じ長さである(例えば、比較されている配列を超えて伸長する追加の配列を除外する)。例えば、可変領域配列を比較する場合、リーダー(シグナルペプチド)及び/又は定常ドメイン配列は考慮されない。2つの配列間の配列比較のために、「対応する」CDRは、両方の配列において同じ位置にあるCDRを指す(例えば、各配列のCDR-H1)。
【0054】
2つの配列間のパーセント同一性又はパーセント類似性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877におけるように改変されたKarlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403-410のNBLAST及びXBLASTプログラム中に組み込まれる。関心対象のタンパク質をコードする核酸に相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いてBLASTヌクレオチド検索を行うことができる。関心対象のタンパク質に相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3でBLASTタンパク質検索を行うことができる。比較目的のためにギャップのある整列を得るために、Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されているように、Gapped BLASTを利用することができる。あるいは、分子間の遠い関係性を検出する反復検索を行うために、PSI-Blastを使用することができる(同文献)。BLAST、Gapped BLAST及びPSI-Blastプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)の初期設定パラメータを使用することができる。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、Myers and Miller,CABIOS(1989)のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティ及び4のギャップペナルティを使用することができる。配列分析のためのさらなるアルゴリズムは当技術分野で公知であり、Torellis and Robotti,1994,Comput.Appl.Biosci.10:3-5に記載されているADVANCE及びADAM並びにPearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444-8に記載されているFASTAが挙げられる。FASTA内で、ktupは、探索の感度及び速度を設定する制御オプションである。ktup=2の場合、比較されている2つの配列中の類似領域は、整列された残基の対を見ることによって見出され、ktup=1の場合、単一の整列されたアミノ酸が調べられる。ktupは、タンパク質配列については2若しくは1に、又はDNA配列については1~6に設定することができる。ktupが指定されていない場合の初期設定は、タンパク質については2、DNAについては6である。あるいは、タンパク質配列の整列は、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383-402によって記載されているように、CLUSTAL Wアルゴリズムを使用して実施され得る。
【0055】
本明細書で使用される「共有結合で連結された」又は「共有結合で結合された」という用語は、残基間の直接の共有結合、又は2つの残基が直接結合されていないが、両方が中間分子若しくはドメイン、例えば免疫グロブリンの中間ドメイン若しくはリンカーに共有結合で結合されている間接的な連結/結合のいずれかを意味する。
【0056】
本発明の多重特異性結合タンパク質
本発明は、B7H6に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合単位(第1の抗原結合単位)と、CD3に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合単位(第2の抗原結合単位)とを含む多重特異性結合タンパク質を提供する。腫瘍細胞抗原及びT細胞上のCD3への同時結合を通して、該結合タンパク質はT細胞活性化タンパク質として作用し、本明細書ではT細胞誘導とも呼ばれる。「(多重特異性)結合タンパク質」という用語は、本明細書では「(多重特異性)結合分子」という用語と互換的に使用される。本発明の多重特異性結合タンパク質を指すために本明細書で使用されるさらなる用語は、「本発明のタンパク質」、「本発明の結合タンパク質」、「抗原結合タンパク質」及び「多重特異性タンパク質」である。
【0057】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の多重特異性結合タンパク質が、T細胞の存在下でB7H6陽性結腸直腸癌細胞株の強力かつ選択的な溶解を誘導し、低いエフェクター対標的細胞比で既に活性であることを見出した。重要なことに、本発明の結合タンパク質は、B7H6陰性細胞を溶解せず、B7H6陽性細胞の非存在下ではT細胞活性化、T細胞増殖及びサイトカイン分泌を引き起こさない。特に、インビトロでNKp30を介してB7H6依存性NK細胞活性化を阻害しない本発明のタンパク質は、B7H6陽性腫瘍細胞の溶解においてより強力である。この活性は、例えば、実施例11のインビトロアッセイに記載されている。
【0058】
疑義を避けるために、本明細書で使用されるB7H6は、UniProt Q68D85のヒトB7H6及びそのタンパク質をコードする核酸配列を指す。本明細書で使用されるCD3は、ヒトCD3ε(UniProt P07766)及びCD3γ(Uniprot:P09693)複合体(ヒトCD3εγ複合体)を指す。当業者は、B7H6及びB7-H6という用語が本明細書では互換的に使用されることを理解するであろう。
【0059】
一態様において、本発明の多重特異性結合タンパク質は、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位と、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含み、前記第1の結合単位は、i)~xxiv):
i)配列番号:1(CDR1)、配列番号:2(CDR2)及び配列番号:3(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:4(CDR1)、配列番号:5(CDR2)及び配列番号:6(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#1);
ii)配列番号:7(CDR1)、配列番号:8(CDR2)及び配列番号:9(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:10(CDR1)、配列番号:11(CDR2)及び配列番号:12(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#2);
iii)配列番号:13(CDR1)、配列番号:14(CDR2)及び配列番号:15(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:16(CDR1)、配列番号:17(CDR2)及び配列番号:18(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#3);
iv)配列番号:19(CDR1)、配列番号:20(CDR2)及び配列番号:21(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:22(CDR1)、配列番号:23(CDR2)及び配列番号:24(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#4);
v)配列番号:25(CDR1)、配列番号:26(CDR2)及び配列番号:27(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:28(CDR1)、配列番号:29(CDR2)及び配列番号:30(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#5);
vi)配列番号:31(CDR1)、配列番号:32(CDR2)及び配列番号:33(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:34(CDR1)、配列番号:35(CDR2)及び配列番号:36(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#6);
vii)配列番号:37(CDR1)、配列番号:38(CDR2)及び配列番号:39(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:40(CDR1)、配列番号:41(CDR2)及び配列番号:42(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#7);
viii)配列番号:43(CDR1)、配列番号:44(CDR2)及び配列番号:45(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:46(CDR1)、配列番号:47(CDR2)及び配列番号:48(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#8);
ix)配列番号:49(CDR1)、配列番号:50(CDR2)及び配列番号:51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:52(CDR1)、配列番号:53(CDR2)及び配列番号:54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#9);
x)配列番号:55(CDR1)、配列番号:56(CDR2)及び配列番号:57(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:58(CDR1)、配列番号:59(CDR2)及び配列番号:60(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#10);
xi)配列番号:61(CDR1)、配列番号:62(CDR2)及び配列番号:63(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:64(CDR1)、配列番号:65(CDR2)及び配列番号:66(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#11);
xii)配列番号:67(CDR1)、配列番号:68(CDR2)及び配列番号:69(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:70(CDR1)、配列番号:71(CDR2)及び配列番号:72(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#12);
xiii)配列番号:73(CDR1)、配列番号:74(CDR2)及び配列番号:75(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:76(CDR1)、配列番号:77(CDR2)及び配列番号:78(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#13);
xiv)配列番号:79(CDR1)、配列番号:80(CDR2)及び配列番号:81(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:82(CDR1)、配列番号:83(CDR2)及び配列番号:84(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#14);
xv)配列番号:85(CDR1)、配列番号:86(CDR2)及び配列番号:87(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:88(CDR1)、配列番号:89(CDR2)及び配列番号:90(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#15);
xvi)配列番号:91(CDR1)、配列番号:92(CDR2)及び配列番号:93(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:94(CDR1)、配列番号:95(CDR2)及び配列番号:96(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#16);
xvii)配列番号:97(CDR1)、配列番号:98(CDR2)及び配列番号:99(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:100(CDR1)、配列番号:101(CDR2)及び配列番号:102(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#17);
xviii)配列番号:103(CDR1)、配列番号:104(CDR2)及び配列番号:105(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:106(CDR1)、配列番号:107(CDR2)及び配列番号:108(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#18);
xix)配列番号:109(CDR1)、配列番号:110(CDR2)及び配列番号:111(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:112(CDR1)、配列番号:113(CDR2)及び配列番号:114(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#19);
xx)配列番号:115(CDR1)、配列番号:116(CDR2)及び配列番号:117(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:118(CDR1)、配列番号:119(CDR2)及び配列番号:120(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#20);
xxi)配列番号:121(CDR1)、配列番号:122(CDR2)及び配列番号:123(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:124(CDR1)、配列番号:125(CDR2)及び配列番号:126(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#21);
xxii)配列番号:127(CDR1)、配列番号:128(CDR2)及び配列番号:129(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:130(CDR1)、配列番号:131(CDR2)及び配列番号:132(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#22);
xxiii)配列番号:133(CDR1)、配列番号:134(CDR2)及び配列番号:135(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:136(CDR1)、配列番号:137(CDR2)及び配列番号:138(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#23);並びに
xxiv)配列番号:139(CDR1)、配列番号:140(CDR2)及び配列番号:141(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:142(CDR1)、配列番号:143(CDR2)及び配列番号:144(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位B7H6#24);
からなる群より選択される。
【0060】
本発明の結合タンパク質のいくつかの実施形態において、前記CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位は、i)~vi):
i)配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位CD3#1);
ii)配列番号:263(CDR1)、配列番号:264(CDR2)及び配列番号:265(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:266(CDR1)、配列番号:267(CDR2)及び配列番号:268(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位CD3#2);
iii)配列番号:269(CDR1)、配列番号:270(CDR2)及び配列番号:271(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:272(CDR1)、配列番号:273(CDR2)及び配列番号:274(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位CD3#3);
iv)配列番号:275(CDR1)、配列番号:276(CDR2)及び配列番号:277(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:278(CDR1)、配列番号:279(CDR2)及び配列番号:280(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位CD3#4);
v)配列番号:281(CDR1)、配列番号:282(CDR2)及び配列番号:283(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:284(CDR1)、配列番号:285(CDR2)及び配列番号:286(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位CD3#5);並びに
vi)配列番号:287(CDR1)、配列番号:288(CDR2)及び配列番号:289(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:290(CDR1)、配列番号:291(CDR2)及び配列番号:292(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む抗原結合単位(抗原結合単位CD3#6);
からなる群より選択される。
【0061】
上に概説されるような第1の抗原結合単位i)~xxiv)は、それぞれ、B7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23及びB7H6#24と称され、上に概説されるような第2の抗原結合単位i)~vi)は、それぞれ、CD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5及びCD3#6と称される。本発明の特異的抗原結合単位及び完全長結合タンパク質に対する個々のアミノ酸配列の特定を容易に可能にする配列表が本明細書において提供される。概要は、実施例2の表1に示されている。
【0062】
一般に抗原結合単位に関して「第1の」及び「第2の」という用語は、本明細書で使用される場合、これらの単位が(異なる標的抗原に結合するので)2つの異なる単位であることを示すことのみを意図している。したがって、これらの用語は、本発明の結合タンパク質内での単位の正確な順序又は順番を指すと理解されるべきではない。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明の結合タンパク質は、表1に示されているそれぞれのCDR配列によって定義されるB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23及びB7H6#24からなる群より選択される第1の抗原結合単位と、表1に示されているそれぞれのCDR配列によって定義されるCD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5及びCD3#6からなる群より選択される第2の抗原結合単位とを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、本発明の結合タンパク質は、表1に示されているそれぞれのCDR配列によって定義されるB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23及びB7H6#24からなる群より選択される第1の抗原結合単位と、表1に示されているそれぞれのCDR配列によって定義されるCD3#1の第2の抗原結合単位とを含む。好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、表1に示されているそれぞれのCDR配列によって定義されるB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23及びB7H6#24からなる群より選択される第1の抗原結合単位と、表1に示されているそれぞれのCDR配列によって定義されるCD3#1の第2の抗原結合単位とを含む。好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、表1に示されているそれぞれのCDR配列によって定義されるB7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23及びB7H6#24からなる群より選択される第1の抗原結合単位と、表1に示されているそれぞれのCDR配列によって定義されるCD3#1の第2の抗原結合単位とを含む。好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、表1に示されているそれぞれのCDR配列によって定義されるB7H6#12、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16及びB7H6#23からなる群より選択される第1の抗原結合単位と、表1に示されているそれぞれのCDR配列によって定義されるCD3#1の第2の抗原結合単位とを含む。
【0065】
本明細書に記載されているCDR配列に加えて、本発明の結合タンパク質の抗原結合単位は、免疫グロブリンフレームワーク領域(FR)配列を含む。これらの配列は、好ましくはヒトにおいて免疫原性ではなく、したがって、好ましくは、ヒトの、ヒト化された又は最適化されたFR配列である。適切なヒトの、ヒト化された又は最適化されたFR配列は、当技術分野において公知である。具体的に好ましいFR配列は、完全な抗原結合単位、したがってCDR配列及びFR配列を開示する、本明細書に示されている実施形態から得ることができる。1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、配列番号:67(CDR1)、配列番号:68(CDR2)及び配列番号:69(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:70(CDR1)、配列番号:71(CDR2)及び配列番号:72(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位と、配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含む。このような抗原結合タンパク質は、本明細書においてB7H6#14/CD3#1と呼ばれる。特に好ましい実施形態において、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位は各々、VL/VHドメイン、例えば配列最適化されたVL/VHドメイン内に上記定義のCDRを含む(B7H6#12/CD3#1)。特に好ましい実施形態において、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位(B7H6#12/CD3#1)は、それぞれscFabによって形成され、場合によりそれぞれFcドメインに連結されている。
【0066】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、配列番号:79(CDR1)、配列番号:80(CDR2)及び配列番号:81(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:82(CDR1)、配列番号:83(CDR2)及び配列番号:84(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位と、配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含む。このような抗原結合タンパク質は、本明細書においてB7H6#14/CD3#1と呼ばれる。特に好ましい実施形態において、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位は各々、VL/VHドメイン、例えば配列最適化されたVL/VHドメイン内に上記定義のCDRを含む(B7H6#14/CD3#1)。特に好ましい実施形態において、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位(B7H6#14/CD3#1)は、それぞれscFabによって形成され、場合によりそれぞれFcドメインに連結されている。
【0067】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、配列番号:85(CDR1)、配列番号:86(CDR2)及び配列番号:87(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:88(CDR1)、配列番号:89(CDR2)及び配列番号:90(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位と、配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含む。このような抗原結合タンパク質は、本明細書においてB7H6#15/CD3#1と呼ばれる。特に好ましい実施形態において、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位は各々、VL/VHドメイン、例えば配列最適化されたVL/VHドメイン内に上記定義のCDRを含む(B7H6#15/CD3#1)。特に好ましい実施形態において、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位(B7H6#15/CD3#1)は、それぞれscFabによって形成され、場合によりそれぞれFcドメインに連結されている。
【0068】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、配列番号:91(CDR1)、配列番号:92(CDR2)及び配列番号:93(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:94(CDR1)、配列番号:95(CDR2)及び配列番号:96(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位と、配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含む。このような抗原結合タンパク質は、本明細書においてB7H6#16/CD3#1と呼ばれる。特に好ましい実施形態において、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位は各々、VL/VHドメイン、例えば配列最適化されたVL/VHドメイン内に上記定義のCDRを含む(B7H6#16/CD3#1)。特に好ましい実施形態において、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位(B7H6#16/CD3#1)は、それぞれscFabによって形成され、場合によりそれぞれFcドメインに連結されている。
【0069】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、配列番号:133(CDR1)、配列番号:134(CDR2)及び配列番号:135(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:136(CDR1)、配列番号:137(CDR2)及び配列番号:138(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位と、配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRと配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRとを含む、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含む。このような抗原結合タンパク質は、本明細書においてB7H6#14/CD3#1と呼ばれる。特に好ましい実施形態において、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位は各々、VL/VHドメイン、例えば配列最適化されたVL/VHドメイン内に上記定義のCDRを含む(B7H6#23/CD3#1)。特に好ましい実施形態において、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位(B7H6#23/CD3#1)は、それぞれscFabによって形成され、場合によりそれぞれFcドメインに連結されている。
【0070】
本発明の結合タンパク質の好ましい実施形態において、第1及び第2の結合単位は、それぞれ、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含み、前記軽鎖/重鎖可変ドメインは、第1の抗原結合単位についてはB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23又はB7H6#24の任意の1つのCDR配列によって定義され、前記軽鎖/重鎖可変ドメインは、第2の抗原結合単位についてはCD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5又はCD3#6の任意の1つのCDR配列によって定義される。本発明の結合タンパク質のいくつかの実施形態において、B7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23、B7H6#24、CD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5又はCD3#6の任意の1つの抗原結合単位のVH及び/又はVLドメインは、ヒトの、ヒト化された又は最適化されたVH及び/又はVLドメインである。
【0071】
本発明の結合タンパク質の好ましい実施形態において、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位の軽鎖/重鎖可変ドメインは、以下のようにさらに定義される。
i)配列番号:145のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:146のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#1);又は
ii)配列番号:147のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:148のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#2);又は
iii)配列番号:149のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:150のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#3);又は
iv)配列番号:151のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:152のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#4);又は
v)配列番号:153のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:154のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#5);又は
vi)配列番号:155のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:156のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#6);又は
vii)配列番号:157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:158のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#7);又は
viii)配列番号:159のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:160のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#8);又は
ix)配列番号:161のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:162のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#9);又は
x)配列番号:163のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:164のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#10);又は
xi)配列番号:165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:166のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#11);又は
xii)配列番号:167のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:168のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#12);又は
xiii)配列番号:169のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:170のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#13);又は
xiv)配列番号:171のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:172のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#14);又は
xv)配列番号:173のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:174のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#15);又は
xvi)配列番号:175のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:176のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#16);又は
xvii)配列番号:177のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:178のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#17);又は
xviii)配列番号:179のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:180のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#18);又は
xix)配列番号:181のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:182のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#19);又は
xx)配列番号:183のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:184のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#20);又は
xxi)配列番号:185のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:186のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#21);又は
xxii)配列番号:187のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:188のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#22);又は
xxiii)配列番号:189のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:190のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#23);又は
xxiv)配列番号:191のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:192のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位B7H6#24)。
【0072】
本発明の結合タンパク質の好ましい実施形態において、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位の軽鎖/重鎖可変ドメインは、以下のようにさらに定義される。
i)配列番号:293のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:294のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位CD3#1);又は
ii)配列番号:295のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:296のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位CD3#2);又は
iii)配列番号:297のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:298のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位CD3#3);又は
iv)配列番号:299のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:300のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位CD3#4);又は
v)配列番号:301のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:302のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位CD3#5);又は
vi)配列番号:303のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:304のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(抗原結合単位CD3#6)。
【0073】
好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、B7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#6/CD3#1、B7H6#7/CD3#1、B7H6#8/CD3#1、B7H6#9/CD3#1、B7H6#10/CD3#1、B7H6#11/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1及びB7H6#24/CD3#1からなる群より選択される第1及び第2の抗原結合単位の組み合わせを含み、第1及び第2の抗原結合単位は、表1に示されている抗原結合単位のCDR及び/又はVH及びVL配列によって定義される。
【0074】
好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、B7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1及びB7H6#24/CD3#1からなる群より選択される第1及び第2の抗原結合単位の組み合わせを含み、第1及び第2の抗原結合単位は、表1に示されている抗原結合単位のCDR及び/又はVH及びVL配列によって定義される。
【0075】
好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1及びB7H6#24/CD3#1からなる群より選択される第1及び第2の抗原結合単位の組み合わせを含み、第1及び第2の抗原結合単位は、表1に示されている抗原結合単位のCDR及び/又はVH及びVL配列によって定義される。
【0076】
好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、B7H6#12/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1及びB7H6#23/CD3#1からなる群より選択される第1及び第2の抗原結合単位の組み合わせを含み、第1及び第2の抗原結合単位は、表1に示されている抗原結合単位のCDR及び/又はVH及びVL配列によって定義される。
【0077】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:167のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと配列番号:168のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位と、(ii)配列番号:293のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと配列番号:294のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含む。このような結合タンパク質は、本明細書においてB7H6#12/CD3#1と呼ばれる。特に好ましい実施形態において、上で定義されているように、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位(B7H6#12/CD3#1)は、それぞれscFabによって形成され、場合によりFcドメインに共有結合で連結されている。
【0078】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:171のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと配列番号:172のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位と、(ii)配列番号:293のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと配列番号:294のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含む。このような結合タンパク質は、本明細書においてB7H6#14/CD3#1と呼ばれる。特に好ましい実施形態において、上で定義されているように、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位(B7H6#14/CD3#1)は、それぞれscFabによって形成され、場合によりFcドメインに共有結合で連結されている。
【0079】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:173のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと配列番号:174のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位と、(ii)配列番号:293のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと配列番号:294のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含む。このような結合タンパク質は、本明細書においてB7H6#15/CD3#1と呼ばれる。特に好ましい実施形態において、上で定義されているように、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位(B7H6#15/CD3#1)は、それぞれscFabによって形成され、場合によりFcドメインに共有結合で連結されている。
【0080】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:175のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと配列番号:176のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位と、(ii)配列番号:293のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと配列番号:294のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含む。このような結合タンパク質は、本明細書においてB7H6#16/CD3#1と呼ばれる。特に好ましい実施形態において、上で定義されているように、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位(B7H6#16/CD3#1)は、それぞれscFabによって形成され、場合によりFcドメインに共有結合で連結されている。
【0081】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:189のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと配列番号:190のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位と、(ii)配列番号:293のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと配列番号:294のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位とを含む。このような結合タンパク質は、本明細書においてB7H6#23/CD3#1と呼ばれる。特に好ましい実施形態において、上で定義されているように、それぞれB7H6及びCD3に特異的に結合する抗原結合単位(B7H6#23/CD3#1)は、それぞれscFabによって形成され、場合によりFcドメインに共有結合で連結されている。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明の結合タンパク質は、i)第1のペプチドリンカーで第1の重鎖可変ドメインに共有結合で連結された第1の軽鎖可変ドメインを含む、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位(例えば、表1に示されているそれぞれのCDR又はVH/VL配列によって定義されるB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23、B7H6#24の任意の1つ)、及び/又はii)第2のペプチドリンカーで第2の重鎖可変ドメインに共有結合で連結された第2の軽鎖可変ドメインを含む、CD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位(例えば、表1に示されているそれぞれのCDR又はVH/VL配列によって定義されるCD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5又はCD3#6の任意の1つ)を含む。場合により、第1及び第2の抗原結合単位は、ペプチドリンカーで互いに共有結合で連結されている。
【0083】
本発明の結合タンパク質のいくつかの実施形態において、第1及び/又は第2の抗原結合単位は、従来の抗体分子の軽/重Fab断片におけるようなCL及びCH1ドメインをさらに含み、したがって前記第1の結合単位は、a)第1のCLドメインに共有結合で連結された(好ましくは直接結合された)VLドメイン(例えば、B7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23又はB7H6#24の任意の1つの軽鎖CDR(LCCDR)又はVL配列によって定義される)と、b)第1のCH1ドメインに共有結合で連結された(好ましくは直接結合された)VHドメイン(例えば、B7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6 B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23又はB7H6#24の任意の1つの重鎖CDR(HCCDR)又はVH配列によって定義される)とを含み、及び/又は前記第2の抗原結合単位は、a)第2のCLドメインに共有結合で連結された(好ましくは直接結合された)VLドメイン(例えば、CD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5又はCD3#6の任意の1つのLCCDR又はVL配列によって定義される)と、b)第2のCH1ドメインに共有結合で連結された(好ましくは直接結合された)VHドメイン(例えば、CD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5又はCD3#6の任意の1つのHCCDR又はVH配列によって定義される)とを含む。
【0084】
本発明の文脈において、CLドメインは、抗体軽鎖の定常ドメイン、例えばカッパ(κ)又はラムダ(λ)軽鎖のいずれかである。カッパ軽鎖の定常領域の例が配列番号:247に示されている。ラムダ軽鎖の定常領域の例が配列番号:248に示されている。いくつかの実施形態において、第1及び第2のCLドメインは同じであり、例えば、第1及び第2のCLドメインは両方ともカッパ軽鎖定常ドメインであるか、又は第1及び第2のCLドメインは両方ともラムダ軽鎖定常ドメインである。好ましい実施形態において、第1及び第2のCLドメインは異なり、例えば、第1のCLドメインは定常カッパドメインであり、及び第2のCLドメインは定常ラムダドメインであり、又はその逆である。
【0085】
本発明の文脈において、CH1ドメインは、抗体重鎖の第1の定常ドメインである。定常CH1ドメインの一例は、配列番号:249に示されている。
【0086】
本発明の結合タンパク質の好ましい実施形態においては、B7H6に対して特異的な第1の抗原結合単位(例えば、表1に示されているCDR及び/又はVH/VL配列によって定義されるB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6 B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23又はB7H6#24の任意の1つ)は、N末端からC末端に:第1の軽鎖可変ドメインと、第1のCLドメインと、第1のリンカーペプチドと、第1のVHドメインと、第1のCH1ドメインとを含み、及び/又は本発明の結合タンパク質の第2の結合単位(例えば、表1に示されるCDR及び/又はVH/VL配列によって定義されるCD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5又はCD3#6)は、N末端からC末端に:第2の軽鎖可変ドメインと、第2のCLドメインと、第2のリンカーペプチドと、第2のVHドメインと、第2のCH1ドメインとを含む。これらの実施形態において、第1及び/又は第2の結合単位は、単鎖Fabの構造を有する。第1及び/又は第2の抗原結合単位のいずれについても、単鎖Fabを形成する場合には、N末端からC末端に、抗原結合単位がVH-CH1-[リンカーペプチド]-VL-CLを含むように順序を逆にすることができる。本発明のタンパク質のいくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の抗原結合単位がFab又は単鎖Fabを含む場合には、定常ドメインは同じタイプ(例えば、両方のCLドメインはカッパ又はラムダ軽鎖定常ドメインである)又は異なるタイプ(第1のCLドメインはカッパであり、第2のCLドメインはラムダ軽鎖定常ドメインである、又はその逆である)のものであり得、好ましくは第1及び第2のCLドメインは異なるタイプのものである。好ましい実施形態において、第1の抗原結合単位は、B7H6に対して特異的な第1の単鎖Fab(好ましくは、表1に示されているCDR及び/又はVH/VL配列によって定義されるB7H6#12、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16又はB7H6#23の任意の1つ)からなり、第2の抗原結合単位は、CD3に対して特異的な第2の単鎖Fab(例えば、表1に示されているようなCDR及び/又はVH/VL配列によって定義されるようなCD3#1)からなる。
【0087】
B7H6/CD3結合タンパク質(例えば、上記のB7H6/CD3scFab)のリンカー配列は、天然に存在する配列又は天然に存在しない配列であり得る。治療目的で使用される場合、リンカーは、好ましくは、本発明の結合タンパク質が投与される対象において非免疫原性である。好ましくは、リンカーは、26~42個のアミノ酸、例えば30~40個のアミノ酸を含む。さらなる態様では、本発明のタンパク質において使用されるリンカーは、34~40個のアミノ酸、例えば36~39個のアミノ酸、例えば38個のアミノ酸を含む。
【0088】
リンカー配列の1つの有用な群は、国際公開第1996/34103号及び国際公開第1994/04678号に記載されているような重鎖抗体のヒンジ領域に由来するリンカーである。他の例は、Ala-Ala-Alaなどのポリアラニンリンカー配列である。
【0089】
リンカー配列のさらに好ましい例は、例えば、(gly4ser)3、(gly4ser)5、(gly4ser)7、(gly3ser)3、(gly3ser)5、(gly3ser)7、(gly3ser2)3、(gly3ser2)5及び(gly3ser2)7を含む(glyxsery)zリンカーなどの異なる長さのGly/Serリンカー又は配列番号250、251、252、253、254、255若しくは256、好ましくは配列番号250の任意の1つのリンカーである。
【0090】
本発明の結合タンパク質のいくつかの実施形態において、第1の抗原結合単位のVLドメイン(例えば、表1に示されている、B7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18 B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23、B7H6#24の任意の1つの軽鎖CDR(LCCDR)又はVL配列によって定義される)は、第1のGly/Serリンカー(例えば、26~42個のアミノ酸、30~40個のアミノ酸、34~40個のアミノ酸又は36~39個のアミノ酸、好ましくは38個のアミノ酸の任意の1つのGly/Serリンカー)を介して第1の抗原結合単位のVHドメイン(例えば、表1に示されている、B7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18 B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23、B7H6#24の任意の1つの重鎖CDR(HCCDR)又はVH配列によって定義される)に共有結合で連結されており、第2の抗原結合単位のVLドメイン(例えば、表1に示されている、CD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5又はCD3#6の任意の1つの軽鎖CDR(LCCDR)又はVL配列によって定義される)は、第2のGly/Serリンカー(例えば、26~42個のアミノ酸、30~40個のアミノ酸、34~40個のアミノ酸又は36~39個のアミノ酸、好ましくは38個のアミノ酸の任意の1つのGly/Serリンカー)を介して第2の抗原結合単位のVHドメイン(例えば、表1に示されている、CD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5又はCD3#6の任意の1つの重鎖CDR(HCCDR)又はVH配列によって定義される)に共有結合で連結されている。より好ましくは、第1及び第2のリンカーは同じである。さらにより好ましくは、第1及び第2のリンカーは、それぞれ、配列番号:250のアミノ酸配列を含む。
【0091】
本発明の結合タンパク質の好ましい実施形態において、B7H6に特異的に結合する第1の抗原結合単位は、N末端からC末端に、(i)VLドメイン(例えば、表1に示されている、B7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18 B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23、B7H6#24の任意の1つの軽鎖CDR(LCCDR)又はVL配列によって定義される)、ii)第1のCLドメイン、iii)第1のGly/Serリンカー(例えば、26~42個のアミノ酸、30~40個のアミノ酸、34~40個のアミノ酸又は36~39個のアミノ酸、好ましくは38個のアミノ酸の任意の1つのGly/Serリンカー)を介して、iv)VHドメイン(例えば、表1に示されている、B7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18 B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23、B7H6#24の任意の1つの重鎖CDR(HCCDR)又はVH配列によって定義される)及びv)第1のCH1ドメインを含み、並びに/又はCD3に特異的に結合する第2の抗原結合単位は、N末端からC末端に、i)VLドメイン(例えば、表1に示されている、CD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5又はCD3#6の任意の1つの軽鎖CDR(LCCDR)又はVL配列によって定義される)、ii)第2のCLドメイン、iii)第2のGly/Serリンカー(例えば、26~42個のアミノ酸、30~40個のアミノ酸、34~40個のアミノ酸又は36~39個のアミノ酸、好ましくは38個のアミノ酸の任意の1つのGly/Serリンカー)、iv)第2の抗原結合単位のVHドメイン(例えば、表1に示されている、CD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5又はCD3#6の任意の1つの重鎖CDR(HCCDR)又はVH配列によって定義される)及びv)第2のCH1ドメインを含む。好ましくは、i)~v)は、それぞれ、抗原結合単位のN末端からC末端にi)~v)の順序で直接の共有結合を介して連結される(したがって、各抗原結合単位はscFabの構造を有する)。より好ましくは、第1及び第2のリンカーは同じである。さらにより好ましくは、第1及び第2のリンカーは、それぞれ、配列番号:250のアミノ酸配列を含む。
【0092】
好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、B7H6に対して特異的な第1の抗原結合単位を形成し、配列番号:193、配列番号:194、配列番号:195、配列番号:196、配列番号:197、配列番号:198、配列番号:199、配列番号:200、配列番号:201、配列番号:202、配列番号:203、配列番号:204、配列番号:205、配列番号:206、配列番号:207、配列番号:208、配列番号:209、配列番号:210、配列番号:211、配列番号:212、配列番号:213、配列番号:214、配列番号:215及び配列番号:216からなる群より選択される配列を含む第1の単鎖Fabと、CD3に対して特異的な第2の抗原結合単位を形成し、配列番号:305の配列を含む第2の単鎖Fabとを含む。
【0093】
好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、B7H6に対して特異的な第1の抗原結合単位を形成し、配列番号:193、配列番号:194、配列番号:195、配列番号:196、配列番号:197、配列番号:204、配列番号:205、配列番号:206、配列番号:207、配列番号:208、配列番号:209、配列番号:210、配列番号:211、配列番号:212、配列番号:213、配列番号:214、配列番号:215及び配列番号:216からなる群より選択される配列を含む第1の単鎖Fabと、CD3に対して特異的な第2の抗原結合単位を形成し、配列番号:305の配列を含む第2の単鎖Fabとを含む。
【0094】
好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、B7H6に対して特異的な第1の抗原結合単位を形成し、配列番号:204、配列番号:205、配列番号:206、配列番号:207、配列番号:208、配列番号:209、配列番号:210、配列番号:211、配列番号:212、配列番号:213、配列番号:214、配列番号:215及び配列番号:216からなる群より選択される配列を含む第1の単鎖Fabと、CD3に対して特異的な第2の抗原結合単位を形成し、配列番号:305の配列を含む第2の単鎖Fabとを含む。
【0095】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、配列番号:204の配列を含む第1の単鎖Fabと配列番号:305の配列を含む第2の単鎖Fabとを含み、場合により各単鎖FabはFcドメインにさらに連結され、それにより第1のポリペプチド鎖(「B7H6鎖」)及び第2のポリペプチド鎖(「CD3鎖」)を形成する。1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、配列番号:206の配列を含む第1の単鎖Fabと配列番号:305の配列を含む第2の単鎖Fabとを含み、場合により各単鎖FabはFcドメインにさらに連結され、それにより第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)及び第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)を形成する。1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、配列番号:207の配列を含む第1の単鎖Fabと配列番号:305の配列を含む第2の単鎖Fabとを含み、場合により各単鎖FabはFcドメインにさらに連結され、それにより第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)及び第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)を形成する。1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、配列番号:208の配列を含む第1の単鎖Fabと配列番号:305の配列を含む第2の単鎖Fabとを含み、場合により各単鎖FabはFcドメインにさらに連結され、それにより第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)及び第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)を形成する。1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、配列番号:215の配列を含む第1の単鎖Fabと配列番号:305の配列を含む第2の単鎖Fabとを含み、場合により各単鎖FabはFcドメインにさらに連結され、それにより第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)及び第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)を形成する。
【0096】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合単位(例えば、表1に示されているCDR及び/又はVH/VL配列によって定義されるB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18 B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23又はB7H6#24の任意の1つ)及び/又は第2の抗原結合単位(例えば、表1に示されているCDR配列及び/又はVH/VL配列によって定義されるCD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5又はCD3#6の任意の1つ)は、CLドメインに共有結合で連結された(好ましくは直接結合された)VLドメインとCH1ドメインに連結されたVHドメインとを含み(一緒になってFab断片を形成する)、前記CH1ドメインはFcドメインにさらに共有結合で連結され(例えば、直接結合され)、それによって1つの軽鎖及び1つの重鎖を有する従来のY字形抗体分子のアームを形成する。いくつかの実施形態において、第1及び第2の抗原結合単位はそれぞれ、Fab断片、すなわち第1及び第2のFab断片を形成し、Fab断片は各々、それぞれ第1及び第2のFcドメインに共有結合で連結されており(好ましくは直接結合されており)、それによって従来のヘテロ四量体二重特異性及び二価(それぞれ、B7H6及びCD3について一価)抗体分子を形成する。
【0097】
好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)B7H6に特異的に結合する第1の単鎖Fab、すなわち、ペプチドリンカー(例えば、26~42個のアミノ酸、30~40個のアミノ酸、34~40個のアミノ酸又は36~39個のアミノ酸、好ましくは38個のアミノ酸の任意の1つのGly/Serリンカー、さらにより好ましくは配列番号:250のリンカー)を介して重鎖のVH-CH1ドメインに共有結合で連結された抗体軽鎖(VL-CL)(表1に示されているCDR及び/又はVH/VL配列によって定義されるB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18 B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23又はB7H6#24の任意の1つのVL及びVHドメイン)を含む第1の抗原結合単位であって、該第1の抗原結合単位は第1のFcドメインに共有結合で連結されている(例えば、直接結合されている)第1の抗原結合単位と、(ii)CD3に特異的に結合する第2の単鎖Fab、すなわち、重鎖のVH-CH1ドメインに共有結合された抗体軽鎖(VL-CL)(表1に示されているそれぞれのCDR又はVH/VL配列によって定義されるCD3#1 CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5、CD3#6の任意の1つのVL及びVHドメイン)を含む第2の抗原結合単位であって、該第2の抗原結合単位は第2のFcドメインに共有結合されている(例えば、直接結合されている)第2の抗原結合単位とを含む。したがって、好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)(a)B7H6に対して特異的な第1の抗原結合単位であって、該第1の抗原結合単位はB7H6に対して特異的な第1の単鎖Fabを含む、第1の抗原結合単位(好ましくは、表1に示されているCDR及び/又はVH/VL配列によって定義されるB7H6#12、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16又はB7H6#23の任意の1つ)とb)第1のFcドメインとを含む第1のポリペプチド鎖(この第1のポリペプチド鎖は、本明細書において「B7H6鎖」とも呼ばれる)と、(ii)(a)CD3に対して特異的な第2の単鎖Fabを含む第2の抗原結合(biding)単位(好ましくは表1に示されているCDR及び/又はVL/VH配列によって定義されるCD3#1)と(b)第2のFcドメインとを含む、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖(この第2のポリペプチド鎖は、本明細書において「CD3鎖」とも呼ばれる)とを含む。したがって、本明細書で使用される「ポリペプチド鎖」という用語は、少なくともscFab及びFcドメインを含む。いくつかの実施形態において、第1及び第2のFcドメインは同じである。好ましい実施形態において、第1及び第2のFcドメインは異なる。得られた本発明の結合タンパク質は、完全なFcを有し、2つの独立した結合部位、すなわち、B7H6に対して特異的な第1のscFabによって形成される第1の抗原結合単位とCD3に対して特異的な第2のscFabによって形成される第2の結合単位とを有する2つの異なるポリペプチド鎖を含む。
【0098】
好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、それぞれFcドメインに共有結合で連結された異なる特異性を有する、scFabによって形成された抗原結合単位をそれぞれ含む2つの異なるポリペプチド鎖を含み、ポリペプチド鎖は、ジスルフィド結合を介して又は潜在的にペプチドリンカーを介して互いに共有結合で連結されている。好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、2つのポリペプチド鎖、すなわち、B7H6に特異的に結合するscFabによって形成された抗原結合単位(例えば、表1に示されているCDR及び/又はVH/VL配列によって定義されるB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18 B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23又はB7H6#24の任意の1つ)とFcドメイン(好ましくは、配列番号:242のFcドメイン)とを含む一方のポリペプチド鎖(第1のポリペプチド鎖又はB7H6鎖)及びCD3に特異的に結合するscFabによって形成された抗原結合単位(例えば、CD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5又はCD3#6の任意の1つ)とFcドメイン(好ましくは、配列番号:243のFcドメイン)とを含む他方のポリペプチド鎖(第2のポリペプチド鎖又はCD3鎖)を含む二重特異性の、二価の(それぞれ、B7H6及びCD3について一価)ヘテロ二量体タンパク質である。いくつかの実施形態において、第1の抗原結合単位は第1の単鎖Fabからなり、第2の抗原結合単位は第2の単鎖Fabからなる。結合タンパク質のいくつかの実施形態において、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)は、a)scFabからなる第1の抗原結合単位((好ましくは、表1に示されているCDR、VH/VL及び/又はscFab配列によって定義されるB7H6#12、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16又はB7H6#23の任意の1つ)とb)第1のFcドメインとからなり、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)は、a)scFabからなる第2の抗原結合単位(好ましくは、表1に示されているCDR、VH/VL及び/又はscFab配列によって定義されるCD3#1)とb)第2のFcドメインとからなる。好ましくは、scFabのC末端は、直接の共有結合を介してFcドメインのN末端に連結されている。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、ジスルフィド結合を介して互いに共有結合で連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0099】
本発明の文脈において、Fcドメインは、例えばIgG、例えばIgG、IgG又はIgGの重鎖に由来する。例えば、本発明のFcドメインは、IgG又はIgGの重鎖のFcドメインであり、ヒンジ領域及び2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)を含む。Fcドメイン(ヒンジ領域を含む)の例は、配列番号:241及び244に示されている。
【0100】
本発明のタンパク質のアミノ酸鎖中のアミノ酸の付番は、特に明記しない限り、本明細書ではEu付番システム(Edelman et al,PNAS USA 1969 May,63(1):78-85;Cunningham et al.PNAS USA 1969,Nov,64(3):997-1003)に従う。これは、特に明記しない限り、本明細書に示されるアミノ酸番号が、Eu付番システムに従って、対応するサブタイプ(例えばIgG又はIgG)の重鎖中の位置に対応することを意味する。
【0101】
いくつかの実施形態において、本発明のタンパク質中の第1のFcドメイン及び第2のFcドメインはそれぞれ、第1及び第2のポリペプチド鎖のヘテロ二量体に代わる第1又は第2のポリペプチド鎖のホモ二量体の形成を低減させる1つ以上のアミノ酸変化を含む。これらの変化を通して、重鎖の1つの界面からの1つ以上の小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置換することによって、Fcドメインの1つに「突出」が生成される。大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)で置き換えることによって、他方のFcドメインの界面上に同一又は類似のサイズの代償的な「空洞」が、作り出される。これは、ホモ二量体、特に「突出」を有するFcドメインのホモ二量体などの他の望ましくない最終生成物よりもヘテロ二量体の収率を増加させるための機構を提供する(例えば、Ridgway et al.Protein Eng,1996.9(7):p.617-21;Atwell et al,JMB,1997,270,26-35参照)。いくつかの実施形態において、このようなアミノ酸変化は、第1のFcドメインの位置366におけるチロシン(Y)[T366Y]及び第2のFcドメインの位置407におけるトレオニン(T)[Y407T]である。いくつかの実施形態において、第1のFcドメインは位置366にセリン(S)[T366S]を含み、第2のFcドメインは位置366にトリプトファン(W)[T366W]、位置368にアラニン(A)[L368A]及び位置407にバリン(V)[Y407V]を含む。好ましい実施形態において、第1のFcドメインは位置366にトリプトファン(W)[T366W]を含み、第2のFcドメインは位置366にセリン(S)[T366S]、位置368にアラニン(A)[L368A]及び位置407にバリン(V)[Y407V]を含む。例えば、配列番号:241のヒトIgG1Fc配列におけるアミノ酸位置146に対応する、Eu付番によるFcドメインの位置366は、配列番号:241中の位置146におけるTから配列番号:242中の位置146におけるWに変更され、配列番号:241中のアミノ酸位置146、148及び187にそれぞれ対応する、Eu付番による位置366、368及び407は、配列番号:241中のこれらの位置におけるT、L及びYから、配列番号:243中のこれらの位置におけるS、A及びVに変更される。これらの実施形態のいずれにおいても、第1のFcドメインについて記載されたアミノ酸変化は、第2のFcドメインに位置し得、第2のFcドメインに対するそれぞれのアミノ酸変化は、第1のFcドメインに位置し得る。換言すれば、「第1の」及び「第2の」という用語は、これらの実施形態において交換することができる。いくつかの実施形態において、このようなFcドメインはIgG又はIgGの重鎖に由来するFcドメインである。
【0102】
いくつかの実施形態において、第1のFcドメインは、位置366におけるトリプトファン(W)[T366W]に加えて位置354におけるシステイン(C)[S354C]を含み、第2のFcドメインは、位置366におけるセリン(S)[T366S]、位置368におけるアラニン(A)[L368A]及び位置407におけるバリン(V)[Y407V]に加えて位置349におけるシステイン(C)[Y349C]を含む。一態様では、このようなFcドメインは、IgGの重鎖に由来するFcドメインである。
【0103】
いくつかの実施形態において、本発明の結合タンパク質中の第1のFcドメイン又は第2のFcドメインは、FcドメインのプロテインAへの結合を低減させる1つ以上のアミノ酸変化をさらに含む。いくつかの実施形態において、このようなアミノ酸変化は、Fcドメインの1つの位置435におけるアルギニン[H435R]及び位置436におけるフェニルアラニン[Y436F]である。両方の変化は、ヒトIgG3の配列に由来する(IgG3はプロテインAに結合しない)。これらの2つの変異はCH3ドメイン中に位置し、プロテインAへの結合を低減させるためにFcドメインの1つに組み込まれる(例えば、Jendeberg et al.J Immunol Methods,1997.201(1):p.25-34参照)。これらの2つの変化は、タンパク質精製中にこれらの変化を含む重鎖のホモ二量体の除去を促進する。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明の結合タンパク質において、位置407にトレオニン(T)[Y407T]を含むFcドメインは、位置435にアルギニン[H435R]及び位置436にフェニルアラニン[Y436F]をさらに含む。この場合には、他方の重鎖は、位置366にチロシン(Y)[T366Y]を含むが、位置435及び436における2つの変化を含まない。あるいは、いくつかの実施形態において、本発明のタンパク質において、位置366にセリン(S)[T366S]、位置368にアラニン(A)[L368A]及び位置407にバリン(V)[Y407V]を含むFcドメインは、位置435にアルギニン[H435R]及び位置436にフェニルアラニン[Y436F]をさらに含む。この場合には、他方のFcドメインは、位置366にトリプトファン(W)[T366W]を含むが、位置435及び436における2つの変化を含まない。したがって、上記の「空洞」をもたらすアミノ酸変化を含むFcドメインは、プロテインAへの結合を低減させるアミノ酸変化も含む。このFcドメインを含むホモ二量体は、プロテインAへの低下した結合を通じて除去される。「突出」を含む他方のFcドメインのホモ二量体の産生は、「突出」の存在によって低減される。
【0105】
いくつかの実施形態において、本発明のタンパク質のFcドメインは、YTE変異(M252Y/S254T/T256E、Eu付番(Dall’Acqua et al.J.Biol.Chem.2006,281(33):23514-24)をさらに含んでもよく、又は含まなくてもよい。これらの変異は、pH6.0での新生児FcRn受容体に対する結合親和性の優先的増強を通じて、Fcドメインの薬物動態特性を改善することが示されている。
【0106】
いくつかの実施形態において、IgG1に由来する本発明の第1及び/又は第2のFcドメインは、「KO」変異(L234A、L235A)も含む(Xu et al,Cellular Immunology 2000 Feb 25,200(1):16-26)。さらなる態様では、IgG4に由来する本発明の第1及び/又は第2のFcドメインは、Proヒンジ変異(S228P)も含む(Angal et al,Molecular Immunology 1993,30(1):105-108;Labrijn et al,Nature Biotechnology 2009,27:767-771)。
【0107】
本発明の結合タンパク質の好ましい実施形態において、第1のFcドメインは配列番号242のアミノ酸配列を含み、第2のFcドメインは配列番号243のアミノ酸配列を含む。
【0108】
本発明の好ましい実施形態において、結合タンパク質は、i)配列番号:217のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#1/CD3#1)、又はii)配列番号:218のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#2/CD3#1)、又はiii)配列番号:219のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#3/CD3#1)、又はiv)配列番号:220のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#4/CD3#1)、又はv)配列番号:221のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#5/CD3#1)、又はvi)配列番号:222のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#6/CD3#1);又はvii)配列番号:223のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#7/CD3#1);又はviii)配列番号:224のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#8/CD3#1);又はix)配列番号:225のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#9/CD3#1);又はx)配列番号:226のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#10/CD3#1);又はxi)配列番号:227のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#11/CD3#1);又はxii)配列番号:228のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#12/CD3#1);又はxiii)配列番号:229のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#13/CD3#1);又はxiv)配列番号:230のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#14/CD3#1);又はxv)配列番号:231のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#15/CD3#1)、又はxvi)配列番号:232のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#16/CD3#1);又はxvii)配列番号:233のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#17/CD3#1);又はxviii)配列番号:234のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#18/CD3#1);又はxix)配列番号:235のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#19/CD3#1);又はxx)配列番号:236のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#20/CD3#1);又はxxi)配列番号:237のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#21/CD3#1);又はxxii)配列番号:238のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#22/CD3#1);又はxxiii)配列番号:239のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#23/CD3#1);又はxxiv)配列番号:240のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#24/CD3#1)を含む。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0109】
好ましい実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、配列番号:217、218、219、220、221、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239及び240の任意の1つからなる群からのアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号311のアミノ酸配列を含む。さらにより好ましくは、第1のポリペプチド鎖は、配列番号228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239及び240の任意の1つのアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号311のアミノ酸配列を含み、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0110】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:228のアミノ酸配列を含む、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列を含む、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0111】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:230のアミノ酸配列を含む、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列を含む、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0112】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:231のアミノ酸配列を含む、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列を含む、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0113】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:232のアミノ酸配列を含む、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列を含む、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0114】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:239のアミノ酸配列を含む、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列を含む、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0115】
本明細書に記載されている実施形態の全てについて、「を含む」という用語を使用することによって、それぞれのタンパク質、分子、抗原結合単位又はポリペプチド鎖が、示されているようなアミノ酸配列「からなる」実施形態も含むことが意図されることを理解されたい。
【0116】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:228のアミノ酸配列からなる、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列からなる、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0117】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:230のアミノ酸配列からなる、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列からなる、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0118】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:231のアミノ酸配列からなる、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列からなる、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0119】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:232のアミノ酸配列からなる、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列からなる、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0120】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:239のアミノ酸配列からなる、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列からなる、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0121】
さらなる態様において、本発明は、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)とCD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)とを含む結合タンパク質を提供し、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖は、それ自体が第1の重鎖に共有結合で連結されている(例えば、直接結合されている)第1のリンカーに共有結合で連結された(好ましくは、直接結合された)第1の軽鎖を含み、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖は、それ自体が第2の重鎖に共有結合で連結されている(例えば、直接結合されている)第2のリンカーに共有結合で連結された(好ましくは、直接結合された)第2の軽鎖を含む。
【0122】
具体的に列挙された抗原結合単位を有する本発明の結合タンパク質に関して本明細書で上記されている全ての定義及び好ましい実施形態は、本明細書で特に定義されない限り、第1及び第2のポリペプチド鎖を含む本発明のこの結合タンパク質にも準用される。
【0123】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖(本明細書ではB7H6鎖とも呼ばれる)は、そのN末端から出発して、B7H6に特異的に結合する第1の軽鎖可変ドメインと、第1の軽鎖定常ドメインと、第1のリンカーと、B7H6に対して特異的な第1の重鎖可変ドメインと、第1の重鎖定常領域とを含む。いくつかの実施形態において、そのN末端から始まる第2のポリペプチド鎖(本明細書ではCD3鎖とも呼ばれる)は、CD3に特異的に結合する第2の軽鎖可変ドメインと、第2の軽鎖定常ドメインと、第2のリンカーと、CD3に対して特異的な第2の重鎖可変ドメインと、第2の重鎖定常ドメインとを含む。
【0124】
得られたタンパク質は、完全なFcを有し、(軽鎖と重鎖の間にリンカーが存在するために)IgGよりも大きく、2つの独立した結合部位(例えば、各結合部位は、それぞれの抗原に対して一価である)である、B7H6に対する第1の結合部位とCD3に対する第2の結合部位とを有する。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結される。したがって、本発明のタンパク質は、それぞれがscFab及びFcドメインを含む2つのポリペプチド鎖を含む、従来の完全長抗体のY字形構造(図1参照)を有する抗体様構造である。好ましい実施形態において、本発明のタンパク質は、(i)B7H6に対して特異的な第1のscFab及び第1のFcドメインからなる、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)と、(ii)CD3に対して特異的な第2の単鎖Fab及び第2のFcドメインからなる、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)とを含む。
【0125】
好ましくは、第1のscFabは直接的な共有結合を介して第1のFcドメインに連結され、第2のscFabは直接的な共有結合を介して第2のFcドメインに連結される。この二重特異性フォーマットは、望ましくない免疫原性反応を生じる可能性がより低い構造内の結合部分の機能的特性を維持しながら、(例えば、異なる結合特異性を有する軽及び重可変ドメインの誤対合を回避することによって)発現及び精製後の不均一性を大幅に低減する。これは、例えば哺乳動物細胞中でのヘテロ二量体タンパク質の良好な発現も可能にする。
【0126】
本発明のタンパク質の好ましい実施形態において、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)は、i)~xxiv)からなる群より選択されるCDR配列を含む、第1の軽鎖可変ドメイン及び第1の重鎖可変ドメインを含む:
i)配列番号:1(CDR1)、配列番号:2(CDR2)及び配列番号:3(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:4(CDR1)、配列番号:5(CDR2)及び配列番号:6(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
ii)配列番号:7(CDR1)、配列番号:8(CDR2)及び配列番号:9(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:10(CDR1)、配列番号:11(CDR2)及び配列番号:12(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
iii)配列番号:13(CDR1)、配列番号:14(CDR2)及び配列番号:15(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:16(CDR1)、配列番号:17(CDR2)及び配列番号:18(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
iv)配列番号:19(CDR1)、配列番号:20(CDR2)及び配列番号:21(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:22(CDR1)、配列番号:23(CDR2)及び配列番号:24(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
v)配列番号:25(CDR1)、配列番号:26(CDR2)及び配列番号:27(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:28(CDR1)、配列番号:29(CDR2)及び配列番号:30(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
vi)配列番号:31(CDR1)、配列番号:32(CDR2)及び配列番号:33(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:34(CDR1)、配列番号:35(CDR2)及び配列番号:36(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
vii)配列番号:37(CDR1)、配列番号:38(CDR2)及び配列番号:39(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:40(CDR1)、配列番号:41(CDR2)及び配列番号:42(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
viii)配列番号:43(CDR1)、配列番号44(CDR2)及び配列番号:45(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:46(CDR1)、配列番号:47(CDR2)及び配列番号:48(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
ix)配列番号:49(CDR1)、配列番号:50(CDR2)及び配列番号:51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:52(CDR1)、配列番号:53(CDR2)及び配列番号:54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
x)配列番号:55(CDR1)、配列番号:56(CDR2)及び配列番号:57(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:58(CDR1)、配列番号:59(CDR2)及び配列番号:60(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xi)配列番号:61(CDR1)、配列番号:62(CDR2)及び配列番号:63(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:64(CDR1)、配列番号:65(CDR2)及び配列番号:66(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xii)配列番号:67(CDR1)、配列番号:68(CDR2)及び配列番号:69(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:70(CDR1)、配列番号:71(CDR2)及び配列番号:72(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xiii)配列番号:73(CDR1)、配列番号74(CDR2)及び配列番号:75(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:76(CDR1)、配列番号:77(CDR2)及び配列番号:78(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xiv)配列番号:79(CDR1)、配列番号:80(CDR2)及び配列番号:81(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:82(CDR1)、配列番号:83(CDR2)及び配列番号:84(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xv)配列番号:85(CDR1)、配列番号:86(CDR2)及び配列番号:87(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:88(CDR1)、配列番号:89(CDR2)及び配列番号:90(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xvi)配列番号:91(CDR1)、配列番号:92(CDR2)及び配列番号:93(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:94(CDR1)、配列番号:95(CDR2)及び配列番号:96(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xvii)配列番号:97(CDR1)、配列番号:98(CDR2)及び配列番号:99(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:100(CDR1)、配列番号:101(CDR2)及び配列番号:102(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xviii)配列番号:103(CDR1)、配列番号104(CDR2)及び配列番号:105(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:106(CDR1)、配列番号:107(CDR2)及び配列番号:108(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xix)配列番号:109(CDR1)、配列番号:110(CDR2)及び配列番号:111(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:112(CDR1)、配列番号:113(CDR2)及び配列番号:114(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xx)配列番号:115(CDR1)、配列番号:116(CDR2)及び配列番号:117(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:118(CDR1)、配列番号:119(CDR2)及び配列番号:120(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xxi)配列番号:121(CDR1)、配列番号:122(CDR2)及び配列番号:123(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:124(CDR1)、配列番号:125(CDR2)及び配列番号:126(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xxii)配列番号:127(CDR1)、配列番号:128(CDR2)及び配列番号:129(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:130(CDR1)、配列番号:131(CDR2)及び配列番号:132(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
xxiii)配列番号:133(CDR1)、配列番号134(CDR2)及び配列番号:135(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:136(CDR1)、配列番号:137(CDR2)及び配列番号:138(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;並びに
xxiv)配列番号:139(CDR1)、配列番号:140(CDR2)及び配列番号:141(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:142(CDR1)、配列番号:143(CDR2)及び配列番号:144(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR。
【0127】
これらのCDR配列によって定義されるそれぞれの軽鎖/重鎖可変ドメインは、それぞれB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23及びB7H6#24と命名される。
【0128】
本発明の結合タンパク質の好ましい実施形態において、CD3に特異的に結合する前記第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)は、以下からなる群より選択されるCDR配列を含む、第2の軽鎖可変ドメイン及び第2の重鎖可変ドメインを含む:
i)配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
ii)配列番号:263(CDR1)、配列番号:264(CDR2)及び配列番号:265(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:266(CDR1)、配列番号:267(CDR2)及び配列番号:268(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
iii)配列番号:269(CDR1)、配列番号270(CDR2)及び配列番号:271(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:272(CDR1)、配列番号:273(CDR2)及び配列番号:274(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;
iv)配列番号:275(CDR1)、配列番号:276(CDR2)及び配列番号:277(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:278(CDR1)、配列番号:279(CDR2)及び配列番号:280(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR。
v)配列番号:281(CDR1)、配列番号:282(CDR2)及び配列番号:283(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:284(CDR1)、配列番号:285(CDR2)及び配列番号:286(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;並びに
vi)配列番号:287(CDR1)、配列番号:288(CDR2)及び配列番号:289(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:290(CDR1)、配列番号:291(CDR2)及び配列番号:292(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR。
【0129】
これらのCDR配列によって定義されるそれぞれの軽鎖/重鎖可変ドメインは、それぞれCD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5及びCD3#6と呼ばれる。
【0130】
好ましくは、軽鎖及び重鎖CDR配列は、上で定義したB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23及びB7H6#24からなる群より選択される。
【0131】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:67(CDR1)、配列番号:68(CDR2)及び配列番号:69(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを有する第1の軽鎖可変ドメインと、配列番号:70(CDR1)、配列番号:71(CDR2)及び配列番号:72(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを有する第1の重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)と、(ii)配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを有する第2の軽鎖可変ドメインと、配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを有する第2の重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0132】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:79(CDR1)、配列番号:80(CDR2)及び配列番号:81(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを有する第1の軽鎖可変ドメインと、配列番号:82(CDR1)、配列番号:83(CDR2)及び配列番号:84(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを有する第1の重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)と、(ii)配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを有する第2の軽鎖可変ドメインと、配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを有する第2の重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0133】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:85(CDR1)、配列番号:86(CDR2)及び配列番号:87(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを有する第1の軽鎖可変ドメインと、配列番号:88(CDR1)、配列番号:89(CDR2)及び配列番号:90(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを有する第1の重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖と、(ii)配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを有する第2の軽鎖可変ドメインと、配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを有する第2の重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0134】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:91(CDR1)、配列番号:92(CDR2)及び配列番号:93(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを有する第1の軽鎖可変ドメインと、配列番号:94(CDR1)、配列番号:95(CDR2)及び配列番号:96(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを有する第1の重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖と、(ii)配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを有する第2の軽鎖可変ドメインと、配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを有する第2の重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0135】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:133(CDR1)、配列番号:134(CDR2)及び配列番号:135(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを有する第1の軽鎖可変ドメインと、配列番号:136(CDR1)、配列番号:137(CDR2)及び配列番号:138(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを有する第1の重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖と、(ii)配列番号:257(CDR1)、配列番号:258(CDR2)及び配列番号:259(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを有する第2の軽鎖可変ドメインと、配列番号:260(CDR1)、配列番号:261(CDR2)及び配列番号:262(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを有する第2の重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0136】
本発明のタンパク質の好ましい実施形態において、前記B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)は、i)~xxiv)からなる群より選択される軽鎖可変ドメイン(第1の軽鎖可変ドメイン)と重鎖可変ドメイン(第1の重鎖可変ドメイン)とを含む:
i)配列番号:145のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:146のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#1);
ii)配列番号:147のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:148のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#2);
iii)配列番号:149のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:150のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#3);
iv)配列番号:151のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:152のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#4);
v)配列番号:153のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:154のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#5);
vi)配列番号:155のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:156のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#6);
vii)配列番号:157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:158のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#7);
viii)配列番号:159のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:160のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#8);
ix)配列番号:161のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:162のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#9);
x)配列番号:163のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:164のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#10);
xi)配列番号:165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:166のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#11);
xii)配列番号:167のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:168のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#12);
xiii)配列番号:169のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:170のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#13);
xiv)配列番号:171のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:172のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#14);
xv)配列番号:173のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:174のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#15);
xvi)配列番号:175のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:176のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#16);
xvii)配列番号:177のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:178のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#17);
xviii)配列番号:179のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:180のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#18);
xix)配列番号:181のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:182のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#19);
xx)配列番号:183のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:184のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#20);
xxi)配列番号:185のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:186のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#21);
xxii)配列番号:187のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:188のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#22);
xxiii)配列番号:189のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:190のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#23);並びに
xxiv)配列番号:191のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号:192のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(B7H6#24)。
【0137】
好ましくは、軽鎖可変及び重鎖可変ドメイン配列は、上で定義したB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23及びB7H6#24からなる群より選択される。
【0138】
本発明のタンパク質の好ましい実施形態において、前記CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)は、以下からなる群より選択される軽鎖可変ドメイン(第2の軽鎖可変ドメイン)と重鎖可変ドメイン(第2の重鎖可変ドメイン)とを含む:
i)配列番号:293のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号294のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(CD3#1);
ii)配列番号:295のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号296のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(CD3#2);
iii)配列番号:297のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号298のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(CD3#3)
iv)配列番号:299のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号300のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(CD3#4)
v)配列番号:301のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号302のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(CD3#5)
vi)配列番号:303のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号304のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(CD3#6)。
【0139】
いくつかの実施形態において、本発明の結合タンパク質は、B7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#6/CD3#1、B7H6#7/CD3#1、B7H6#8/CD3#1、B7H6#9/CD3#1、B7H6#10/CD3#1、B7H6#11/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1からなるリストより選択される軽鎖/重鎖可変ドメインのCDR並びに/又はVH及びVL配列を含む第1及び第2のポリペプチド鎖を含む。好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、B7H6#12/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#23/CD3#1からなるリストより選択される軽鎖/重鎖可変ドメインのCDR並びに/又はVH及びVL配列を含む第1及び第2のポリペプチド鎖を含む。さらにより好ましくは、第1のポリペプチド鎖は、配列番号242のアミノ酸配列を含むFcドメインを含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号243のアミノ酸配列を含むFcドメインを含む。
【0140】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:167の軽鎖可変ドメインと配列番号:168の重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)と、(ii)配列番号:293の軽鎖可変ドメインと配列番号:294の重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)とを含む。
【0141】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:171の軽鎖可変ドメインと配列番号:172の重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)と、(ii)配列番号:293の軽鎖可変ドメインと配列番号:294の重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)とを含む。
【0142】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:173の軽鎖可変ドメインと配列番号:174の重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)と、(ii)配列番号:293の軽鎖可変ドメインと配列番号:294の重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)とを含む。
【0143】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:175の軽鎖可変ドメインと配列番号:176の重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)と、(ii)配列番号:293の軽鎖可変ドメインと配列番号:294の重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)とを含む。
【0144】
1つの好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質は、(i)配列番号:189の軽鎖可変ドメインと配列番号:190の重鎖可変ドメインとを含む、B7H6に特異的に結合する第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)と、(ii)配列番号:293の軽鎖可変ドメインと配列番号:294の重鎖可変ドメインとを含む、CD3に特異的に結合する第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)とを含む。
【0145】
好ましい実施形態において、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖は、配列番号:193、配列番号:194、配列番号:195、配列番号:196、配列番号:197、配列番号:198、配列番号:199、配列番号:200、配列番号:201、配列番号:202、配列番号:203、配列番号:204、配列番号:205、配列番号:206、配列番号:207、配列番号:208、配列番号:209、配列番号:210、配列番号:211、配列番号:212、配列番号:213、配列番号:214、配列番号:215又は配列番号:216の任意の1つのアミノ酸配列を有する単鎖Fabを含み、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖は、配列番号:305のアミノ酸配列を有する単鎖Fabを含む。
【0146】
好ましくは、第1のポリペプチド鎖は、配列番号:193、配列番号:194、配列番号:195、配列番号:196、配列番号:197、配列番号:204、配列番号:205、配列番号:206、配列番号:207、配列番号:208、配列番号:209、配列番号:210、配列番号:211、配列番号:212、配列番号:213、配列番号:214、配列番号:215及び配列番号:216からなる群より選択されるアミノ酸配列、より好ましくは、配列番号:204、配列番号:205、配列番号:206、配列番号:207、配列番号:208、配列番号:209、配列番号:210、配列番号:211、配列番号:212、配列番号:213、配列番号:214、配列番号:215及び配列番号:216からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単鎖Fabを含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号:305のアミノ酸配列を含む単鎖Fabを含む。
【0147】
1つの好ましい実施形態において、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)は、配列番号:204のアミノ酸配列を含む単鎖Fabを含み、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)は、配列番号:305のアミノ酸配列を含む単鎖Fabを含む。
【0148】
1つの好ましい実施形態において、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)は、配列番号:206のアミノ酸配列を含む単鎖Fabを含み、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)は、配列番号:305のアミノ酸配列を含む単鎖Fabを含む。
【0149】
1つの好ましい実施形態において、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)は、配列番号:207のアミノ酸配列を含む単鎖Fabを含み、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)は、配列番号:305のアミノ酸配列を含む単鎖Fabを含む。
【0150】
1つの好ましい実施形態において、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)は、配列番号:208のアミノ酸配列を含む単鎖Fabを含み、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)は、配列番号:305のアミノ酸配列を含む単鎖Fabを含む。
【0151】
1つの好ましい実施形態において、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖(B7H6鎖)は、配列番号:215のアミノ酸配列を含む単鎖Fabを含み、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖(CD3鎖)は、配列番号:305のアミノ酸配列を含む単鎖Fabを含む。
【0152】
また、scFabに関するこの特定の実施形態に関して、含むという用語は、より一般的な用語において本明細書で上に定義したアミノ酸配列「からなる」も含むことが意図される。
【0153】
本発明の結合タンパク質のいくつかの実施形態において、第1及び第2のポリペプチド鎖は、IgG、例えばIgG1、IgG2又はIgG4の重鎖に由来するFcドメインを含む。例えば、本発明のFcドメインは、IgG1又はIgG4の重鎖のFcドメインであり、ヒンジ領域及び2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)を含む。ヒトIgGのFcドメインの例は、配列番号:241及び配列番号:244に示されている。
【0154】
本発明の結合タンパク質のいくつかの実施形態において、重鎖は、1つ以上のアミノ酸変化を含む。例えば、このようなアミノ酸変化は、第1の重鎖の位置366におけるチロシン(Y)[T366Y]及び第2の重鎖の位置407におけるトレオニン(T)[Y407T]である。いくつかの実施形態において、第1の重鎖は位置366にセリン(S)[T366S]を含み、第2の重鎖は位置366にトリプトファン(W)[T366W]、位置368にアラニン(A)[L368A]及び位置407にバリン(V)[Y407V]を含む。好ましい実施形態において、第1の重鎖は位置366にトリプトファン(W)[T366W]を含み、第2の重鎖は位置366にセリン(S)[T366S]、位置368にアラニン(A)[L368A]及び位置407にバリン(V)[Y407V]を含む。例えば、配列番号:241のヒトIgG1Fc配列におけるアミノ酸位置146に対応する、Eu付番によるFcドメインの位置366は、配列番号:241中の位置146におけるTから配列番号:242中の位置146におけるWに変更され、配列番号:241中のアミノ酸位置146、148及び187にそれぞれ対応する、Eu付番による位置366、368及び407は、配列番号:241中のこれらの位置におけるT、L及びYから、配列番号:243中のこれらの位置におけるS、A及びVに変更される。これらの実施形態のいずれにおいても、第1の重鎖について記載されたアミノ酸変化は、第2の重鎖に位置し得、第2の重鎖に対するそれぞれのアミノ酸変化は、第1の重鎖に位置し得る。換言すれば、「第1の」及び「第2の」という用語は、これらの実施形態において交換することができる。いくつかの実施形態において、重鎖はIgG又はIgGの重鎖に由来する。
【0155】
いくつかの実施形態において、本発明のタンパク質中の第1の重鎖又は第2の重鎖は、重鎖のプロテインAへの結合を低減させる1つ以上のアミノ酸変化をさらに含む。いくつかの実施形態において、このようなアミノ酸変化は、重鎖の1つの位置435におけるアルギニン[H435R]及び位置436におけるフェニルアラニン[Y436F]である。
【0156】
いくつかの実施形態において、本発明のタンパク質において、位置407にトレオニン(T)[Y407T]を含む重鎖は、位置435にアルギニン[H435R]及び位置436にフェニルアラニン[Y436F]をさらに含む。この場合には、他方の重鎖は、位置366にチロシン(Y)[T366Y]を含むが、位置435及び436における2つの変化を含まない。あるいは、いくつかの実施形態において、本発明のタンパク質において、位置366にセリン(S)[T366S]、位置368にアラニン(A)[L368A]及び位置407にバリン(V)[Y407V]を含む重鎖は、位置435にアルギニン[H435R]及び位置436にフェニルアラニン[Y436F]をさらに含む。この場合には、他方の重鎖は、位置366にトリプトファン(W)[T366W]を含むが、位置435及び436における2つの変化を含まない。したがって、上記の「空洞」をもたらすアミノ酸変化を含む重鎖は、プロテインAへの結合を低減させるアミノ酸変化も含む。これらの重鎖を含むホモ二量体は、プロテインAへの低下した結合を通じて除去される。「突出」を含む他方の重鎖のホモ二量体の産生は、「突出」の存在によって低減される。
【0157】
いくつかの実施形態において、本発明のタンパク質の重鎖は、YTE変異(M252Y/S254T/T256E、Eu付番(Dall’Acqua et al.J.Biol.Chem.2006,281(33):23514-24))をさらに含んでもよく、又は含まなくてもよい。これらの変異は、pH6.0での新生児FcRn受容体に対する結合親和性の優先的増強を通じて、重鎖の薬物動態特性を改善することが示されている。
【0158】
いくつかの実施形態において、IgG1に由来する本発明の第1及び/又は第2の重鎖は、「KO」変異(L234A、L235A)も含む(Xu et al,Cellular Immunology 2000 Feb 25,200(1):16-26)。さらなる態様では、IgG4に由来する本発明の第1及び/又は第2の重鎖は、Proヒンジ変異(S228P)も含む(Angal et al,Molecular Immunology 1993,30(1):105-108;Labrijn et al,Nature Biotechnology 2009,27:767-771)。
【0159】
本発明の結合タンパク質の好ましい実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、配列番号:242のアミノ酸配列を含むFcドメインを含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号243:のアミノ酸配列を含むFcドメインを含む。
【0160】
本発明の好ましい実施形態において、結合タンパク質は、i)配列番号:217のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#1/CD3#1)、又はii)配列番号:218のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#2/CD3#1)、又はiii)配列番号:219のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#3/CD3#1)、又はiv)配列番号:220のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#4/CD3#1)、又はv)配列番号:221のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#5/CD3#1)、又はvi)配列番号:222のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#6/CD3#1);又はvii)配列番号:223のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#7/CD3#1);又はviii)配列番号:224のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#8/CD3#1);又はix)配列番号:225のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#9/CD3#1);又はx)配列番号:226のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#10/CD3#1);又はxi)配列番号:227のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#11/CD3#1);又はxii)配列番号:228のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#12/CD3#1);又はxiii)配列番号:229のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#13/CD3#1);又はxiv)配列番号:230のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#14/CD3#1);又はxv)配列番号:231のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#15/CD3#1)、又はxvi)配列番号:232のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#16/CD3#1);又はxvii)配列番号:233のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#17/CD3#1);又はxviii)配列番号:234のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#18/CD3#1);又はxix)配列番号:235のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#19/CD3#1);又はxx)配列番号:236のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#20/CD3#1);又はxxi)配列番号:237のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#21/CD3#1);又はxxii)配列番号:238のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#22/CD3#1);又はxxiii)配列番号:239のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#23/CD3#1);又はxxiv)配列番号:240のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号:311のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(B7H6#24/CD3#1)を含む。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0161】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:228のアミノ酸配列を含む、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列を含む、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0162】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:230のアミノ酸配列を含む、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列を含む、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0163】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:231のアミノ酸配列を含む、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列を含む、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0164】
1つの好ましい実施形態において、結合タンパク質は、配列番号:232のアミノ酸配列を含む、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖と、配列番号:311のアミノ酸配列を含む、CD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖とを含む。好ましくは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、1つ以上のジスルフィド結合を介して連結され、従来のY字形抗体分子と同様の抗体様構造(図1)を形成する。
【0165】
さらなる態様では、本発明のタンパク質は、ヒト及びカニクイザルB7H6に対して好ましくは≦10nM、より好ましくは≦1nM、さらにより好ましくは≦0.1nMの親和性で、B7H6に対して特異的な第1の抗原結合単位又はポリペプチド鎖を含む。親和性は、例えば実施例に記載されているように、組換えB7H6タンパク質を使用してSPR(BIAcore(登録商標)SPRシステム(GE Healthcare Life Sciences))アッセイ又は当業者に周知の他の方法で測定することができる。タンパク質は、ヒト及びカニクイザルCD3εγ複合体に対して好ましくは≦500nM、より好ましくは≦100nM、さらにより好ましくは≦10nMの親和性を有する第2の抗原結合単位又はポリペプチド鎖を含む。
【0166】
さらなる態様では、本発明のB7H6/CD3結合タンパク質は、B7H6陰性細胞に結合せず、B7H1と交差反応しない(例えば、それぞれ、実施例10及び実施例4を参照)。
【0167】
好ましい実施形態において、本発明のB7H6/CD3結合タンパク質(例えば、B7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)は、ナチュラルキラー細胞の活性化を阻害しない。特に、インビトロでナチュラルキラー細胞の活性化を阻害しない本発明のB7H6/CD3結合タンパク質は、NKp30相互作用部位がアラニンで置換されたB7H6に結合する。
【0168】
細胞表面上のB7H6は、NK細胞の細胞表面上のNKp30に結合し、これがNK細胞のNKp30媒介性活性化、NK細胞の細胞傷害性及びサイトカイン分泌の引き金を引く(Brandt et al,J.Exp.Med.2009,206(7):1495-503)。この状況は、組換えB7H6細胞外ドメインタンパク質で被覆されたプレート上でNK細胞株(例えばNK92MI)又は初代NK細胞を培養し、CD25若しくはCD69などの活性化マーカーの上方制御又はNK細胞によるサイトカイン分泌をその後分析することによって、インビトロで模倣することができる。このアッセイ設定は、本発明者らのB7H6/CD3結合タンパク質がB7H6とNKp30の相互作用を阻害してIFNγ分泌の阻害をもたらすかどうかを評価するため使用された(実施例11)。
【0169】
NKp30相互作用部位がアラニンで置換されている組換えAla変異B7H6細胞外タンパク質を使用して、2つのグループの結合タンパク質が存在することが明らかとなった:1)野生型B7H6に強力に結合するが、組換えAla変異B7H6細胞外タンパク質には結合しないか、又は弱く結合するに過ぎない結合タンパク質は、インビトロでNK細胞によるIFNγのB7H6依存性分泌を阻害することが分かった(「B7H6依存性NK細胞活性化の阻害剤」)、及び2)野生型B7H6に強力に結合し、組換えAla変異B7H6細胞外タンパク質にも結合する能力を維持する結合タンパク質は、インビトロでNK細胞のB7H6依存性活性化及び関連するIFNγ分泌を阻害しないことが分かった(「B7H6依存性NK細胞活性化の非阻害剤」)(実施例6及び11、図4及び9を参照)。驚くべきことに、B7H6依存性NK細胞活性化の非阻害剤である本発明の結合タンパク質は、B7H6発現腫瘍細胞のT細胞リダイレクト化溶解においてより強力である(実施例12、図10及び11を参照)。理論に束縛されるものではないが、B7H6依存性NK細胞活性化の非阻害剤は、自然免疫を媒介する上でのB7H6の自然の役割に影響を与えることなく、B7H6 NKp30相互作用を可能にする可能性がある。
【0170】
さらなる態様において、本発明のB7H6/CD3結合タンパク質は、(NK細胞が存在しないマウス異種移植モデル、実施例19、図20及び23参照、及びNK細胞の非存在下における細胞溶解アッセイ、実施例12、図10及び11参照、において示されるように)NK細胞活性とは無関係に腫瘍細胞に対するT細胞リダイレクト化細胞傷害性を媒介することができる。
【0171】
本発明のB7H6/CD3結合タンパク質によって媒介される細胞傷害性を測定するために、様々な方法を使用することができる。例えば、細胞傷害性は、実施例12に記載されている方法を用いて測定することができる。エフェクター細胞は、例えば、刺激された又は刺激されていない(ヒト又はカニクイザル)T細胞又はT細胞のサブセット(例えばCD4、CD8)又は刺激されていない(ヒト又はカニクイザル)末梢血単核球(PBMC)であり得る。標的細胞は、少なくとも(ヒト又はカニクイザル)B7H6の細胞外ドメインを発現すべきであり、内因性(天然)B7H6発現を有する細胞、例えばヒト小細胞肺癌腫細胞株SHP77、NCI-H82、あるいは完全長B7H6又はB7H6の細胞外ドメインのいずれかを発現する組換え細胞でもあり得る。エフェクター対標的細胞比(E:T)は通常約10:1であるが、様々であり得る。B7H6/CD3結合分子の細胞傷害活性は、例えば48又は72時間のインキュベーション後のLDH放出アッセイで決定することができる。細胞傷害性の決定のために使用されるインキュベーション時間及び読み出しの変更は可能であり、当業者に公知である。細胞傷害性についての読み出し系は、MTT/MTSアッセイ、ATPベースのアッセイ、FACSベースのアッセイ、51-クロム放出アッセイ、スルホローダミンB(SRB)アッセイ、比色(WST)アッセイ、クローン形成能アッセイ、ECIS技術及び生物発光アッセイを含むことができる。
【0172】
本発明のB7H6/CD3結合タンパク質によって媒介される細胞傷害活性は、好ましくは細胞ベースの細胞傷害性アッセイにおいて測定される。細胞傷害性は、細胞傷害性アッセイにおいて測定されたEC90値によって表される。当業者は、精製されたT細胞がエフェクター細胞として使用される場合、PBMCと比較してEC90がより低くなると予想され得ることを認識しており、当業者はまた、刺激されたT細胞が使用される場合、EC90がさらに低くなり得ることを認識している。さらに、標的細胞が細胞表面に多数のB7H6を発現する場合、細胞表面に少数のB7H6分子を発現する細胞と比較してEC90値がより低いことが予想され得る。B7H6/CD3結合タンパク質のEC90は、好ましくは≦10nM、より好ましくは≦5nM、さらにより好ましくは≦1nMである。
【0173】
好ましくは、本発明の多重特異性結合タンパク質は、B7H6陰性細胞の溶解を誘導/媒介しない。B7H6陰性細胞の「溶解を誘導/媒介しない」という用語は、B7H6/CD3結合分子が、30%超、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、特に5%以下又はB7H6陰性細胞の溶解を誘導又は媒介しないが、B7H6陽性結腸直腸細胞株の溶解は100%に設定されることを意味する。これは、通常、1000nMまでの結合タンパク質の濃度に当てはまる。
【0174】
さらに、本発明のB7H6/CD3結合タンパク質は、二段階精製過程で95%を超えるモノマー含有量に達することが示されており(実施例20を参照)、好ましい薬物動態特性及び良好な下流製造可能性を有し、さらに、良好な生体内分布を有することが期待される(例えば、実施例18を参照)。本発明のタンパク質はさらに、好ましい免疫原性プロファイルを有し(実施例22を参照)、インビトロ及びインビボで良好な安定性を有する(例えば、実施例21及び18を参照)。さらに、本発明のB7H6/CD3結合タンパク質は、ヒト化されたインビボ異種移植マウスモデルにおいて好ましい有効性を示す。B7H6/CD3結合タンパク質は、B7H6/CD3結合タンパク質の最初の投与後に既に開始する強い腫瘍退縮を誘導した(例えば、実施例19を参照)。さらに、本発明のB7H6/CD3結合タンパク質は、週に1回(q7d)投与される0.05mg/kgの極めて低い用量で腫瘍退縮を誘導し、本発明のB7H6/CD3結合タンパク質の治療適用性をさらに支持する。特に、本発明のB7H6/CD3結合タンパク質は、B7H6陽性標的細胞の存在下でのみ選択的なT細胞増殖、T細胞活性化、T細胞脱顆粒及びサイトカイン分泌を誘導し(それぞれ、実施例16、14、15、17を参照)、B7H6陰性標的細胞の存在下では誘導せず、腫瘍組織中へのT細胞浸潤をさらに有意に増加させる(実施例24を参照)。
【0175】
本発明のさらなる態様は、本発明の多重特異性結合タンパク質の第1及び/又は第2の抗原結合単位(それぞれ表1に示されているCDR、VH/VL又はscFab配列によって定義される、抗原結合単位B7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23及びB7H6#24の任意の1つ並びに/又は抗原結合単位CD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5及びCD3#6の任意の1つ)をコードする単離された核酸分子を提供する。いくつかの実施形態において、核酸分子は、本明細書に記載されている第1及び/又は第2のFcドメインをさらにコードし、第1及び/又は第2のFcドメインは、それぞれ第1及び/又は第2の抗原結合単位をコードする核酸分子の3’末端に連結されている。いくつかの実施形態において、核酸分子は、i)B7H6に対して特異的な第1の単鎖Fab(例えば、B7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23及びB7H6#24の任意の1つ)と第1のFcドメインとを含む第1のポリペプチド鎖及び/又はii)CD3に対して特異的な第2の単鎖Fab(例えば、CD3#1、CD3#2、CD3#3、CD3#4、CD3#5及びCD3#6の任意の1つ、好ましくはCD3#1)と第2のFcドメインとを含む第2のポリペプチド鎖をコードする。
【0176】
好ましくは、核酸分子は、配列番号:193、配列番号:194、配列番号:195、配列番号:196、配列番号:197、配列番号:198、配列番号:199、配列番号:200、配列番号:201、配列番号:202、配列番号:203、配列番号:204、配列番号:205、配列番号:206、配列番号:207、配列番号:208、配列番号:209、配列番号:210、配列番号:211、配列番号:212、配列番号:213、配列番号:214、配列番号:215若しくは配列番号:216の任意の1つの、B7H6に対して特異的な第1の単鎖Fab及び/又は配列番号:305の第2の単鎖Fabをコードするヌクレオチド配列を含む。好ましい実施形態において、核酸分子は、配列番号:204、配列番号:206、配列番号:207、配列番号:208若しくは配列番号:215の任意の1つの、B7H6に対して特異的な第1のscFabをコードするヌクレオチド配列、及び/又は配列番号:305のアミノ酸配列を含む、CD3に対して特異的な第2のscFabをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0177】
本発明のさらなる態様は、第1及び/又は第2の抗原結合ドメイン(例えば、本発明の第1及び/又は第2の単鎖Fab)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA分子を含有する発現ベクターを提供する。好ましくは、発現ベクターは、第1及び/又は第2の抗原結合ドメイン(例えば、第1及び/又は第2の単鎖Fab)をそれぞれコードする核酸分子、好ましくはDNA分子に連結された、第1及び/又は第2のFcドメインをコードする核酸分子、好ましくはDNA分子をさらに含む。したがって、発現ベクターは、第1のFcドメインに連結された第1の単鎖Fabを含むポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列及び/又は第2のFcドメインに連結された第2の単鎖Fabを含むポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0178】
好ましい実施形態において、発現ベクターは、本発明の、B7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖及び/又はCD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含むDNA分子を含有する。好ましい実施形態において、発現ベクターは、配列番号:217、配列番号:218、配列番号:219、配列番号:220、配列番号:221、配列番号:222、配列番号:223、配列番号;224、配列番号:225、配列番号:226、配列番号:227、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239若しくは配列番号:240の任意の1つの第1のポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列、及び/又は配列番号:311を含む第2のポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0179】
さらに好ましい実施形態において、発現ベクターは、配列番号:228、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232及び配列番号:239の任意の1つの第1のポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列及び/又は配列番号:311を含む第2のポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0180】
具体的に好ましい実施形態においては、2つの発現ベクターを使用することができ、それらの1つはB7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖の発現のために、もう1つはCD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖の発現のために使用され、次いで、これらの2つの発現ベクターはいずれも組換えタンパク質発現のために宿主細胞中に形質導入され得る。
【0181】
好ましくは、発現ベクターは、少なくとも1つの調節配列に機能的に連結された前記1つ又は複数の核酸分子を含むベクターであり、このような調節配列は、プロモーター、エンハンサー又はターミネーター配列、最も好ましくは異種プロモーター、エンハンサー又はターミネーター配列であり得る。
【0182】
別の態様において、本発明は、本発明のB7H6に対して特異的な第1のポリペプチド鎖をコードする発現ベクターと本発明のCD3に対して特異的な第2のポリペプチド鎖をコードする発現ベクターとを有する宿主細胞に関する。
【0183】
特に好ましい実施形態によれば、前記宿主細胞は、哺乳動物細胞などの真核細胞である。別の実施形態において、このような宿主細胞は細菌細胞である。他の有用な細胞は、酵母細胞又は他の真菌細胞である。
【0184】
適切な哺乳動物細胞としては、例えば、CHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞などが挙げられる。しかしながら、両生類細胞、昆虫細胞、植物細胞、及び異種タンパク質の発現のために当技術分野で使用される任意の他の細胞も使用することができる。
【0185】
抗B7H6抗体
本発明のさらなる態様は、以下を含む抗B7H6抗体分子を提供する:
i)配列番号:1(CDR1)、配列番号:2(CDR2)及び配列番号:3(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:4(CDR1)、配列番号:5(CDR2)及び配列番号:6(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
ii)配列番号:7(CDR1)、配列番号:8(CDR2)及び配列番号:9(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:10(CDR1)、配列番号:11(CDR2)及び配列番号:12(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
iii)配列番号:13(CDR1)、配列番号:14(CDR2)及び配列番号:15(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:16(CDR1)、配列番号:17(CDR2)及び配列番号:18(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
iv)配列番号:19(CDR1)、配列番号:20(CDR2)及び配列番号:21(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:22(CDR1)、配列番号:23(CDR2)及び配列番号:24(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
v)配列番号:25(CDR1)、配列番号:26(CDR2)及び配列番号:27(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:28(CDR1)、配列番号:29(CDR2)及び配列番号:30(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
vi)配列番号:31(CDR1)、配列番号:32(CDR2)及び配列番号:33(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:34(CDR1)、配列番号:35(CDR2)及び配列番号:36(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
vii)配列番号:37(CDR1)、配列番号:38(CDR2)及び配列番号:39(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:40(CDR1)、配列番号:41(CDR2)及び配列番号:42(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
viii)配列番号:43(CDR1)、配列番号44(CDR2)及び配列番号:45(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:46(CDR1)、配列番号:47(CDR2)及び配列番号:48(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
ix)配列番号:49(CDR1)、配列番号:50(CDR2)及び配列番号:51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:52(CDR1)、配列番号:53(CDR2)及び配列番号:54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
x)配列番号:55(CDR1)、配列番号:56(CDR2)及び配列番号:57(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:58(CDR1)、配列番号:59(CDR2)及び配列番号:60(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xi)配列番号:61(CDR1)、配列番号:62(CDR2)及び配列番号:63(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:64(CDR1)、配列番号:65(CDR2)及び配列番号:66(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xii)配列番号:67(CDR1)、配列番号:68(CDR2)及び配列番号:69(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:70(CDR1)、配列番号:71(CDR2)及び配列番号:72(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xiii)配列番号:73(CDR1)、配列番号74(CDR2)及び配列番号:75(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:76(CDR1)、配列番号:77(CDR2)及び配列番号:78(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xiv)配列番号:79(CDR1)、配列番号:80(CDR2)及び配列番号:81(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む並びに配列番号:82(CDR1)、配列番号:83(CDR2)及び配列番号:84(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xv)配列番号:85(CDR1)、配列番号:86(CDR2)及び配列番号:87(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:88(CDR1)、配列番号:89(CDR2)及び配列番号:90(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xvi)配列番号:91(CDR1)、配列番号:92(CDR2)及び配列番号:93(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:94(CDR1)、配列番号:95(CDR2)及び配列番号:96(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xvii)配列番号:97(CDR1)、配列番号:98(CDR2)及び配列番号:99(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:100(CDR1)、配列番号:101(CDR2)及び配列番号:102(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xviii)配列番号:103(CDR1)、配列番号104(CDR2)及び配列番号:105(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:106(CDR1)、配列番号:107(CDR2)及び配列番号:108(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xix)配列番号:109(CDR1)、配列番号:110(CDR2)及び配列番号:111(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:112(CDR1)、配列番号:113(CDR2)及び配列番号:114(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xx)配列番号:115(CDR1)、配列番号:116(CDR2)及び配列番号:117(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:118(CDR1)、配列番号:119(CDR2)及び配列番号:120(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xxi)配列番号:121(CDR1)、配列番号:122(CDR2)及び配列番号:123(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:124(CDR1)、配列番号:125(CDR2)及び配列番号:126(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xxii)配列番号:127(CDR1)、配列番号:128(CDR2)及び配列番号:129(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:130(CDR1)、配列番号:131(CDR2)及び配列番号:132(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xxiii)配列番号:133(CDR1)、配列番号134(CDR2)及び配列番号:135(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:136(CDR1)、配列番号:137(CDR2)及び配列番号:138(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR;又は
xxiv)配列番号:139(CDR1)、配列番号:140(CDR2)及び配列番号:141(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR並びに配列番号:142(CDR1)、配列番号:143(CDR2)及び配列番号:144(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR。
【0186】
上で概説された抗体i)~xxiv)は、それぞれB7H6#1、B7H6#2、B7H6#3、B7H6#4、B7H6#5、B7H6#6、B7H6#7、B7H6#8、B7H6#9、B7H6#10、B7H6#11、B7H6#12、B7H6#13、B7H6#14、B7H6#15、B7H6#16、B7H6#17、B7H6#18、B7H6#19、B7H6#20、B7H6#21、B7H6#22、B7H6#23及びB7H6#24と命名される。本発明の特異的抗体に対する個々のアミノ酸配列の特定を容易に可能にする配列表が本明細書において提供される。
【0187】
いくつかの実施形態において、本発明の抗B7H6抗体は、キメラ、ヒト化された、ヒトの又は最適化された抗体分子である。いくつかの実施形態において、抗体分子はモノクローナル抗体Fab、F(ab)2、Fv又はscFvである。いくつかの実施形態において、本発明の抗B7H6抗体分子は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA及びIgE定常領域からなる群から選択される重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本発明の抗B7H6抗体分子の軽鎖定常領域は、カッパ又はラムダである。
【0188】
いくつかの実施形態において、本発明の抗B7H6抗体は、配列番号:146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190及び192の任意の1つと少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを有する。好ましくは、抗体分子は、配列番号:146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190又は192のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを有する。
【0189】
いくつかの実施形態において、抗B7H6抗体分子は、配列番号:145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189及び191の任意の1つと少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを有する。好ましくは、抗体分子は、配列番号:145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189及び191のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを有する。
【0190】
アミノ酸配列同一性を計算する方法は当技術分野で周知であり、本明細書の定義の項でさらに論じられている。
【0191】
いくつかの実施形態において、抗B7H6抗体分子は、i)配列番号146のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号145のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#1)、又はii)配列番号148のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号147のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#2)、又はiii)配列番号150のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号149のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#3)、又はiv)配列番号152のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号151のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#4);又はv)配列番号154のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号153のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#5);又はvi)配列番号156のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号155のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#6);又はvii)配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#7);又はviii)配列番号160のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号159のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#8);又はix)配列番号162のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号161のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#9);又はx)配列番号164のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号163のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#10);又はxi)配列番号166のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#11);又はxii)配列番号168のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号167のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#12);又はxiii)配列番号170のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号169のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#13);又はxiv)配列番号172のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号171のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#14);又はxv)配列番号174のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号173のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#15);又はxvi)配列番号176のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号175のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#16);又はxvii)配列番号178のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号177のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#17);又はxviii)配列番号180のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号179のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#18);又はxix)配列番号182のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号181のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#19);又はxx)配列番号184のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号183のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#20);又はxxi)配列番号186のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号185のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#21);又はxxii)配列番号188のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号187のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#22);又はxxiii)配列番号190のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号189のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#23);又はxxiv)配列番号192のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号191のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(B7H6#24)を有する。
【0192】
いくつかの実施形態において、本発明の抗B7H6抗体はマウスモノクローナル抗体である。本発明の文脈において、マウスモノクローナル抗体は、ヒトB7H6タンパク質によるマウスの免疫、ヒトB7H6に一定の親和性で結合する適切なVH及びVL配列のその後の選択、次いで、組換え技術によるマウスに(例えば、マウスIgG2aに)由来する定常ドメインへのこのようなVH及びVL配列のさらなる結合からVH及びVLが得られ、宿主細胞中での組換え発現によって産生される抗体を含む。例えば、異なる種由来の可変領域及び定常領域を含むキメラ抗体が、本発明によってさらに包含される。いくつかの実施形態において、本発明の抗体分子は、上記のようなマウスに由来するVH及びVLドメインを含み、さらに、ヒト、ウサギ、ラット、ヤギ、ロバなどの別の種に由来する定常ドメインを含むキメラ抗体である。いくつかの実施形態において、キメラ抗体は、マウスに由来するVH及びVLドメイン、並びに上で定義したように最適化されたさらなるヒト化又は配列を含み、別の種に由来する定常ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態において、キメラ抗体は、ヒトIgG配列を含むトランスジェニック動物(例えば、マウス)由来のVH及びVLドメインを含み、したがってヒトVH及びVL配列を含み、さらに別の種に由来する定常ドメインを含む。上に概説したキメラ抗体の実施形態のいずれかにおいて、重鎖定常領域は、マウス、ヒト、ウサギ、ラット、ヤギ又はロバの重鎖領域である。
【0193】
いくつかの実施形態において、本発明の抗B7H6抗体分子は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA及びIgE定常ドメインからなる群から選択される定常ドメインを有する。好ましい実施形態において、抗B7H6抗体はIgG2aの定常ドメインを有する。いくつかの実施形態において、抗B7H6抗体分子は、カッパ又はラムダである軽鎖定常ドメインを有し、好ましくは、軽鎖定常ドメインは、好ましくは配列番号:247の配列を含むカッパ軽鎖定常ドメインである。
【0194】
本明細書で提供されるB7H6特異的抗体は、色素、薬物又は異なる抗原に対する結合特異性を有する別の分子を付着させることによって、(例えば、ELISAアッセイ、FACS分析、免疫組織学などにおいて)B7H6を発現する細胞を標識し、局在化し、同定し、又は標的化するために使用され得る。
【0195】
本発明の別の態様は、本発明の抗B7H6抗体分子の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする単離された核酸分子を提供する。
【0196】
好ましくは、核酸分子は、配列番号:146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190又は192の任意の1つの重鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは、核酸分子は、配列番号:145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189又は191の任意の1つの軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0197】
本発明のさらなる態様は、本発明の抗B7H6抗体分子の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含むDNA分子を含有する発現ベクターを提供する。
【0198】
好ましくは、発現ベクターは、重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをそれぞれコードする核酸分子、好ましくはDNA分子に連結された、重鎖の定常ドメイン及び/又は軽鎖の定常ドメインをそれぞれコードする核酸分子、好ましくはDNA分子をさらに含む。
【0199】
具体的に好ましい実施形態では、一方は重鎖の発現のための、他方は軽鎖の発現のための2つの発現ベクターが使用され得、次いで、その2つの発現ベクターはいずれも組換えタンパク質発現のために宿主細胞中に形質導入され得る。
【0200】
好ましくは、発現ベクターは、少なくとも1つの調節配列に機能的に連結された前記1つ又は複数の核酸分子を含むベクターであり、このような調節配列は、プロモーター、エンハンサー又はターミネーター配列、最も好ましくは異種プロモーター、エンハンサー又はターミネーター配列であり得る。
【0201】
別の態様において、本発明は、本発明の抗B7H6抗体分子の重鎖をコードする発現ベクター及び本発明の抗B7H6抗体分子の軽鎖をコードする発現ベクターを有する宿主細胞に関する。
【0202】
特に好ましい実施形態によれば、前記宿主細胞は、哺乳動物細胞などの真核細胞である。別の実施形態において、このような宿主細胞は細菌細胞である。他の有用な細胞は、酵母細胞又は他の真菌細胞である。
【0203】
適切な哺乳動物細胞としては、例えば、CHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞などが挙げられる。しかしながら、両生類細胞、昆虫細胞、植物細胞、及び異種タンパク質の発現のために当技術分野で使用される任意の他の細胞も使用することができる。
【0204】
製造及び精製の方法
本発明はさらに、本発明の多重特異性結合タンパク質を製造する方法を提供し、このような方法は、一般に、
-本発明の結合タンパク質の形成を可能にする条件下で、本発明の結合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを含む宿主細胞を培養する工程;並びに
-前記宿主細胞によって発現された前記結合タンパク質を培養物から回収する工程;並びに
-場合により、本発明の結合タンパク質をさらに精製する及び/又は修飾する及び/又は製剤化する工程;
を含む。
【0205】
本発明はさらに、本発明の抗B7H6抗体を製造する方法を提供し、このような方法は、一般に、
-本発明の抗体分子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む宿主細胞を、前記抗体分子の形成を可能にする条件下で、培養する工程;並びに
-前記宿主細胞によって発現された前記抗体分子を培養物から回収する工程;並びに
-場合により、本発明の抗体分子をさらに精製する及び/又は修飾する及び/又は製剤化する工程;
を含む。
【0206】
本発明の核酸は、例えば、コード配列並びに調節配列及び場合により天然若しくは人工のイントロンを含むDNA分子であり得、又はcDNA分子であり得る。本発明の核酸は、その元のコドンを有し得るか、又は意図された宿主細胞若しくは宿主生物における発現に対して特異的に適合された最適化されたコドン使用を有し得る。本発明の一実施形態によれば、本発明の核酸は、上記で定義されるように、本質的に単離された形態である。
【0207】
本発明の核酸は、本明細書に示される本発明のタンパク質のアミノ酸配列に関する情報に基づいて、それ自体公知の方法で(例えば、自動化されたDNA合成及び/又は組換えDNA技術によって)調製又は取得され得る。
【0208】
本発明の核酸は、典型的には、発現ベクター、すなわち、適切な宿主細胞又は他の発現系に形質導入された場合にタンパク質の発現を提供することができるベクター中に組み込まれる。
【0209】
本発明の結合タンパク質又は抗体を製造するために、当業者は、当技術分野で周知の多種多様な発現系、例えば、Kipriyanow及びLe Gall,2004によって概説されているものから選択され得る。
【0210】
発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、EBV由来エピソームなどが挙げられる。発現ベクター及び発現制御配列は、宿主細胞と適合的であるように選択される。B7H6/CD3結合タンパク質の第1の抗原結合単位(例えば、本発明の結合タンパク質のB7H6特異的単鎖Fab又は完全長B7H6鎖)をコードするヌクレオチド配列と第2の抗原結合単位(例えば、本発明の結合タンパク質のCD3特異的単鎖Fab又は完全長CD3鎖)をコードするヌクレオチド配列は、別々のベクターに挿入することができる。ある特定の実施形態において、両方のDNA配列は、同じ発現ベクターに挿入される。B7H6抗体の軽鎖をコードするヌクレオチド配列とB7H6抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列は、別々のベクターに挿入することができる。ある特定の実施形態において、両方のDNA配列は、同じ発現ベクターに挿入される。
【0211】
従来のベクターは、機能的に完全なヒトCH(定常重)免疫グロブリン配列をコードし、単鎖Fab配列又は任意の重鎖/軽鎖可変ドメインなどの任意の抗原結合単位が上記のように容易に挿入され、発現され得るように適切な制限部位が操作されているベクターである。抗体重鎖の場合、限定されないが、任意のIgGアイソタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)又は対立遺伝子変異形を含む他の免疫グロブリンであり得る。
【0212】
組換え発現ベクターは、宿主細胞からの完全長CD3若しくはB7H6鎖又は抗B7H6抗体の軽鎖/重鎖の分泌を促進するシグナルペプチドもコードし得る。シグナルペプチドが成熟完全長鎖DNAのアミノ末端にインフレームで連結されるように、タンパク質鎖をコードするDNAはベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は非免疫グロブリンタンパク質由来の異種ペプチドであり得る。あるいは、本発明のタンパク質の完全長鎖をコードするDNA配列は、シグナルペプチド配列を既に含有し得る。
【0213】
B7H6/CD3鎖をコードするDNA配列又はB7H6抗体の重鎖/軽鎖をコードするDNA配列に加えて、典型的には、組換え発現ベクターは、プロモーター、エンハンサー、終結シグナル及びポリアデニル化シグナル並びに宿主細胞におけるタンパク質鎖の発現を制御する他の発現制御エレメントを含む調節配列、場合により異種の調節配列を有する。プロモーター配列の例(哺乳動物細胞での発現のために例示される)は、CMV(CMV Simian Virus40(SV40)プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマ由来のプロモーター及び/又はエンハンサー、並びに天然の免疫グロブリン及びアクチンプロモーターなどの強力な哺乳動物プロモーターである。ポリアデニル化シグナルの例は、BGHポリA、SV40後期又は初期ポリAであり、あるいは、免疫グロブリン遺伝子などの3’UTRを使用することができる。
【0214】
組換え発現ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)及び選択可能なマーカー遺伝子も有し得る。第1の抗原結合単位を有する完全長鎖(単鎖Fab及びFcドメイン)若しくはその抗原結合部分及び/又は第2の抗原結合単位を有する完全長鎖(単鎖Fab及びFcドメイン)若しくはその抗原結合部分をコードする核酸分子並びにこれらのDNA分子を含むベクターは、リポソーム媒介形質導入、ポリカチオン媒介形質導入、プロトプラスト融合、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔又はウイルスベクターによる導入を含む当技術分野で周知の形質導入方法に従って、宿主細胞、例えば細菌細胞又は高等真核細胞、例えば哺乳動物細胞中に導入することができる。
【0215】
好ましくは、本発明のタンパク質のB7H6及びCD3鎖をコードするDNA分子は、宿主細胞、好ましくは哺乳動物細胞に同時形質導入される2つの発現ベクター上に存在する。
【0216】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野で周知であり、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0、SP2/0細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト癌腫細胞(例えば、HepG2及びA-549細胞)、3T3細胞又は任意のこのような細胞株の誘導体/子孫を含む。ヒト、マウス、ラット、サル及びげっ歯類細胞株を含むがこれらに限定されない他の哺乳動物細胞、又は酵母、昆虫及び植物細胞を含むがこれらに限定されない他の真核細胞、又は細菌などの原核細胞が使用され得る。
【0217】
本発明のタンパク質は、宿主細胞におけるタンパク質の発現を可能にするのに十分な期間にわたって宿主細胞を培養することによって産生される。タンパク質分子は、好ましくは分泌ポリペプチドとして培養培地から回収され、又は例えば分泌シグナルなしで発現される場合、宿主細胞溶解物から回収され得る。タンパク質の実質的に均一な調製物が得られるように、組換えタンパク質及び宿主細胞タンパク質に対して使用される標準的なタンパク質精製方法を使用してタンパク質分子を精製することが必要である。例として、本発明のタンパク質分子を得るために有用な先行技術の精製方法は、第1の工程として、培養培地又は溶解物からの細胞及び/又は粒子状細胞残屑の除去を含む。次いで、タンパク質は、例えば、免疫親和性又はイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、Sephadexクロマトグラフィー、シリカ又は陽イオン交換樹脂でのクロマトグラフィーによって、夾雑可溶性タンパク質、ポリペプチド及び核酸から精製される。タンパク質分子調製物を得るための過程における最後の工程として、精製されたタンパク質分子は、治療用途のために、以下に記載されているように、乾燥、例えば凍結乾燥され得る。
【0218】
本発明は、少なくとも2つの異なる標的に対して結合特異性を有する結合タンパク質に関する。本発明に関連して、結合分子は抗体に由来する。結合分子を作製するための技術には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン鎖の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))、国際公開第93/08829号、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)参照)、並びに「ノブ・イン・ホール(knob-in-hole)」工学(例えば、米国特許第5,731,168号、Atwell et al,JMB,1997,270,26-35参照)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の結合タンパク質は、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果を操作すること(国際公開第2009/089004 A1号);2つ以上の抗体又は断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照);ロイシンジッパーを使用して二重特異性タンパク質を産生すること(例えば、Kostelny et al.,Immunol.,148(5):1547-1553(1992));二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)参照);及び単鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,Immunol.,152:5368(1994));及び、例えば、Tutt et al..Immunol.147:60(1991)に記載されるような三重特異性抗体を調製することによっても作製され得る。
【0219】
本明細書に開示される組成物(例えば、多重特異性結合タンパク質及び抗B7H6抗体)及び方法は、指定された配列、又はそれと実質的に同一又は類似の配列、例えば指定された配列と少なくとも85%、90%、95%以上同一の配列を有するポリペプチド及び核酸を包含する。アミノ酸配列の文脈において、「実質的に同一」という用語は、本明細書では、第1及び第2のアミノ酸配列が共通の構造ドメイン及び/又は共通の機能的活性を有することができるように、i)第2のアミノ酸配列内の整列されたアミノ酸残基と同一である、又はii)第2のアミノ酸配列内の整列されたアミノ酸残基の保存的置換である十分な又は最小の数のアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸配列を指すために使用される。例えば、共通の構造ドメインを含有するアミノ酸配列は、参照配列、例えば本明細書で提供される配列に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。ヌクレオチド配列の文脈において、「実質的に同一」という用語は、第1及び第2のヌクレオチド配列が、共通の機能的活性を有するポリペプチドをコードするか、又は共通の構造ポリペプチドドメイン若しくは共通の機能的ポリペプチド活性をコードするように、第2の核酸配列中の整列されたヌクレオチドと同一である十分な又は最小の数のヌクレオチドを含有する第1の核酸配列、例えば、参照配列に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を指すために本明細書で使用される。
【0220】
本発明の核酸分子には、配列表に示されるポリペプチド配列をコードするDNA分子が含まれるが、これらに限定されない。また、本発明は、国際公開第2007/042309号に定義されているように、高ストリンジェンシー結合及び洗浄条件下で配列表に示されているポリペプチド配列をコードするDNA分子にハイブリダイズする核酸分子にも関する。(mRNAの観点から)好ましい分子は、本明細書に記載のDNA分子の1つと少なくとも75%又は80%(好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%)の相同性又は配列同一性を有するものである。例として、真核細胞中で抗体を発現させることを考慮して、配列表に示されているDNA配列は、真核細胞におけるコドン使用と一致するように設計されている。抗体を大腸菌(E.coli)中で発現させることが望まれる場合、これらの配列は大腸菌のコドン使用に一致するように変更することができる。本発明のDNA分子の変異形は、例えば国際公開第2007/042309号に記載されているように、いくつかの異なる方法で構築することができる。
【0221】
本発明のタンパク質は、ある特定の発現系(特異的ベクター又は宿主細胞など)を使用することによって発現されるために、又は封入体として若しくは可溶性形態で発現されるために、又は培地若しくは細胞膜腔中に分泌されるために、又は細胞内に含有されるために、又はより均一な産物を得るために分子を最適化するために、修飾されたN末端配列、例えばN末端アミノ酸の1つ以上の欠失、又は例えば第1のN末端アミノ酸の交換(例えば、グルタミン酸をアラニンへ)を有し得る。本発明のポリペプチドは、例えば、このようなポリペプチドの安定性をさらに高めるために又は免疫原性を低下させるために、例えば、国際公開第2012/175741号、国際公開第2011/075861号又は国際公開第2013/024059号に説明されているように、C末端部分又はフレームワーク領域のいずれかのうちの他の定義された位置でのさらなるアラニン及び/又はさらなるアミノ酸交換などの修飾されたC末端配列を有し得る。
【0222】
疑義を避けるために、本明細書に記載されている医薬組成物、キット、処置方法、医学的使用、組み合わせ、投与の方法及び投与量に関する全ての実施形態は、単独での又は(以下で、より詳細に明記されているように)さらなる治療剤と組み合わせた、本明細書に記載される多重特異性結合タンパク質のいずれについても企図される。
【0223】
医薬組成物、投与の方法、投与量
本発明はさらに、(以下で、より詳細に明記されているような)疾患の処置のための医薬組成物に関し、このような組成物は少なくとも1つの本発明の多重特異性結合タンパク質を含む。本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の多重特異性結合タンパク質又は以下に示される医薬組成物を使用して疾患(以下で、さらに詳細に明記されている)を処置する方法を包含し、本発明のこのような結合タンパク質又は医薬組成物を使用することによるこのような疾患を処置するための医薬の調製をさらに包含する。
【0224】
本発明の結合タンパク質(例えば、表1に示されている配列によって定義されるB7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#6/CD3#1、B7H6#7/CD3#1、B7H6#8/CD3#1、B7H6#9/CD3#1、B7H6#10/CD3#1、B7H6#11/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)及び/又は本発明の結合タンパク質を含む組成物は、使用されるべき特定の医薬製剤又は組成物に応じて、これらを必要とする患者に任意の適切な様式で投与することができる。したがって、本発明の結合タンパク質及び/又は本発明の結合タンパク質を含む組成物は、例えば、静脈内に(i.v.)、皮下に(s.c.)、筋肉内に(i.m.)、腹腔内に(i.p.)、経皮的に、経口的に、舌下に(例えば、舌の下に配置され、粘膜を介して舌の下の毛細血管網中に吸着される、舌下錠剤、スプレー又はドロップの形態で)、経鼻的(鼻腔内)に(例えば、鼻スプレーの形態で、及び/又はエアロゾルとして)、局所的に、坐剤によって、吸入によって、又は任意の他の適切な様式で、有効な量又は用量で投与され得る。結合タンパク質は、注入、ボーラス又は注射によって投与することができる。好ましい実施形態において、投与は静脈内注入又は皮下注射による。
【0225】
本発明の結合タンパク質及び/又は本発明の結合タンパク質を含む組成物は、処置又は緩和されるべき疾患、障害又は症状を処置及び/又は緩和するのに適した処置のレジメンに従って投与される。臨床医は、一般に、処置又は緩和されるべき疾患、障害又は症状、疾患の重症度、疾患の症候の重症度、使用されるべき本発明の特異的結合タンパク質、具体的な投与経路及び使用されるべき医薬製剤又は組成物、患者の年齢、性別、体重、食事、全身状態、並びに臨床医に周知の同様の要因などの要因に応じて、適切な処置レジメンを決定することができる。一般に、処置レジメンは、1つ以上の本発明の結合タンパク質又は1つ以上の本発明の結合タンパク質を含む1つ以上の組成物の治療有効量又は用量での投与を含む。
【0226】
一般に、本明細書で言及される疾患、障害及び症状の処置及び/又は緩和のために、並びに処置されるべき具体的な疾患、障害又は症状、使用されるべき本発明の特異的結合タンパク質の効力、具体的な投与経路及び使用される具体的な医薬製剤又は組成物に応じて、本発明の結合タンパク質は、一般に、体重1キログラム及び用量(dose)当たり0.005~20.0mgの間、好ましくは0.05~10.0mg/kg/用量の間の量で、連続的に(例えば、注入によって)又はより好ましくは単回用量(例えば、1週間に2回、1週間に1回、2週間若しくは3週間に1回、又は1ヶ月に1回など;以下を参照)のいずれかで投与されるが、特に前述のパラメータに応じて著しく変動し得る。したがって、いくつかの事例では、上記の最小用量未満を使用することが十分であり得るが、他の事例では、上限を超えなければならないことがあり得る。多量を投与する場合、多量を一定期間、例えば2日間以上にわたって分散させた多数のより少ない用量に分割することが賢明となり得る。
【0227】
本発明の特異的結合タンパク質並びにその特異的な薬物動態学的及びその他の特性に応じて、本発明の結合タンパク質は毎日、2、3、4、5又は6日毎に、毎週、2週又は3週間毎に1回、毎月などに投与され得る。投与レジメンは、長期処置を含み得る。「長期」とは、少なくとも2週間、好ましくは数ヶ月又は数年の期間を意味する。
【0228】
本発明の多重特異性結合タンパク質及び本発明の多重特異性結合タンパク質を含む組成物の有効性は、関与する具体的な疾患に応じて、それ自体公知の任意の適切なインビトロアッセイ、細胞ベースのアッセイ、インビボアッセイ及び/若しくは動物モデル、又はこれらの任意の組み合わせを使用して試験することができる。適切なアッセイ及び動物モデルは当業者には明らかであり、例えば、以下の実施例で使用されるアッセイ及び動物モデルを含む。
【0229】
製剤
薬学的使用のために、本発明の結合タンパク質は、(i)本発明の少なくとも1つの結合タンパク質(例えば、B7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#6/CD3#1、B7H6#7/CD3#1、B7H6#8/CD3#1、B7H6#9/CD3#1、B7H6#10/CD3#1、B7H6#11/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)と、(ii)少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体、希釈剤、賦形剤、佐剤及び/又は安定化剤と、(iii)場合により、1つ以上のさらなる薬理学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物とを含む医薬調製物として製剤化され得る。
【0230】
「薬学的に許容し得る」とは、それぞれの材料が、個体に投与されたときにいかなる生物学的又は他の望ましくない効果も示さず、それぞれの材料がその中に含有されている医薬組成物の他の成分(例えば、薬学的に活性な成分など)のいずれとも有害な様式で相互作用しないことを意味する。具体例は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Company,USA(1990)などの標準的なハンドブックに見出すことができる。例えば、本発明の結合タンパク質は、従来の抗体及び抗体断片並びに他の薬学的に活性なタンパク質についてそれ自体公知の任意の様式で製剤化及び投与され得る。したがって、さらなる実施形態によれば、本発明は、少なくとも1つの本発明の結合タンパク質と、少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体、希釈剤、賦形剤、佐剤及び/又は安定化剤と、場合により1つ以上のさらなる薬理学的に活性な物質とを、凍結乾燥された又は他の方法で乾燥された製剤又は水性若しくは非水性の溶液若しくは懸濁液の形態で含有する医薬組成物又は調製物に関する。
【0231】
静脈内、筋肉内、皮下注射又は静脈内注入などの非経口投与用の医薬調製物は、例えば、活性成分を含み、場合によりさらなる溶解又は希釈工程の後に、注入又は注射に適している無菌溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン又は粉末であり得る。このような調製物に適した担体又は希釈剤には、例えば、無菌水及び薬学的に許容し得る水性緩衝液、及び生理的リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液及びハンクス液などの溶液;水油(water oils);グリセロール;エタノール;プロピレングリコールなどのグリコール、及び鉱油、動物油及び植物油、例えば落花生油、大豆油、並びにこれらの適切な混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0232】
本発明の結合タンパク質の溶液は、抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、p-ヒドキシベンゾアート、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チオメルサール、エチレンジアミン四酢酸(のアルカリ金属塩)などの、微生物の増殖を防止するための防腐剤も含有し得る。多くの場合には、等張剤、例えば糖、緩衝剤又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。場合により、乳化剤及び/又は分散剤を使用し得る。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、又は界面活性剤の使用によって維持することができる。吸収を遅延させる他の作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンも添加され得る。溶液は、注射バイアル、アンプル、注入ボトルなどの中に充填され得る。
【0233】
全ての場合において、最終的な剤形は、製造及び貯蔵の条件下で無菌であり、流動性であり、安定でなければならない。無菌注射溶液は、必要とされる量の活性化合物を、必要に応じて、上に列挙されている様々な他の成分とともに適切な溶媒中に組み込み、続いてフィルター滅菌することによって調製される。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これにより、活性成分及び以前に滅菌濾過された溶液中に存在する任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。
【0234】
通常、水性の溶液又は懸濁液が好ましい。一般に、本発明の結合タンパク質などの治療用タンパク質のための適切な製剤は、適切な濃度(例えば、0.001~400mg/ml、好ましくは0.005~200mg/ml、より好ましくは0.01~200mg/ml、より好ましくは1.0~100mg/ml、例えば1.0mg/ml(i.v.投与)又は100mg/ml(s.c.投与)のタンパク質を含む溶液、及び水性緩衝液、例えば:
-リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、
-他のリン酸緩衝液、pH6.2~8.2、
-酢酸緩衝液、pH3.2~7.5、好ましくはpH4.8~5.5
-ヒスチジン緩衝液、pH5.5~7.0、
-コハク酸緩衝液、pH3.2~6.6、及び
-クエン酸緩衝液、pH2.1~6.2、
などの緩衝溶液、
並びに場合により、溶液の等張性を付与するための塩(例えば、NaCl)及び/又は糖(例えば、スクロース及びトレハロースなど)及び/又は他のポリアルコール(例えばマンニトール及びグリセロールなど)である。
【0235】
さらに、洗浄剤(detergent)、例えば0.02%TWEEN(商標)20又はTWEEN(商標)-80などの他の作用物質が、このような溶液中に含まれ得る。皮下適用のための製剤は、最大100mg/ml又はさらには100mg/ml超など、著しくより高い濃度の本発明の抗体を含み得る。しかしながら、上記の成分及びその量は、1つの好ましい選択肢のみを表すことが当業者には明らかであろう。その代替形態及び変形形態は、当業者に直ちに明らかであるか、又は上記の開示から出発して容易に想到することができる。上記の製剤は、場合により、溶液、例えば注射用水(WFI)中で再構成される凍結乾燥された製剤として提供することができる。
【0236】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の結合タンパク質は、タンパク質の投与に有用な装置、例えばシリンジ、ペン型注射器、マイクロポンプ又は他の装置と組み合わせて使用され得る。
【0237】
処置の方法
本発明のさらなる態様は、処置を必要とする患者に治療有効量の本発明の結合タンパク質を投与することを含む、癌を処置する方法を提供する。
【0238】
本発明のさらなる態様は、癌を処置する方法において使用するための本発明の結合タンパク質を提供する。
【0239】
本発明のさらなる態様は、癌を処置するための医薬組成物を調製するための本発明の結合タンパク質の使用である。
【0240】
疑義を避けるために、本発明の医療用途の態様は、上記の本発明の特異的結合タンパク質(例えば、B7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#6/CD3#1、B7H6#7/CD3#1、B7H6#8/CD3#1、B7H6#9/CD3#1、B7H6#10/CD3#1、B7H6#11/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)のいずれをも含み得る。
【0241】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、組織病理学的な種類又は浸潤の段階に関係なく、全ての種類の癌性増殖又は発癌過程、転移組織又は悪性に形質転換された細胞、組織又は器官を含むことを意味する。
【0242】
本明細書に記載されている多重特異性結合タンパク質を使用してその増殖を阻害することができる例示的な癌は、任意のB7H6発現腫瘍、好ましくは結腸直腸癌(例えば、転移性結腸直腸癌、mCRC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、頭頸部扁平上皮癌腫(HNSCC)である。
【0243】
本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質を使用してその増殖を阻害することができる癌は、T細胞リンパ腫、骨髄性白血病、乳癌、卵巣癌、口腔扁平上皮癌腫及び胃腸癌を含むがこれらに限定されない任意のB7H6発現腫瘍である。胃腸癌には、食道癌(例えば、胃食道接合部癌)、胃(胃の)癌、肝細胞癌腫、胆管癌(例えば、胆管細胞癌)、胆嚢癌、膵臓癌又は結腸直腸癌(CRC)が含まれるが、これらに限定されない。
【0244】
いくつかの実施形態において、以下の癌、腫瘍及び他の増殖性疾患は、本発明の多重特異性結合タンパク質で処置され得る:頭頸部癌、好ましくはHNSCC;肺癌;好ましくはNSCLC;乳癌;甲状腺癌;子宮頸癌;卵巣癌;子宮内膜癌;肝臓癌(肝芽腫又は肝細胞癌腫);膵臓癌;前立腺癌;胃肉腫;消化管間質腫瘍、食道癌;結腸癌;結腸直腸癌;腎癌;皮膚癌;脳腫瘍;神経膠芽腫;非ホジキンリンパ腫(T又はB細胞リンパ腫);白血病(慢性又は急性骨髄性白血病、非リンパ性白血病)、又は多発性骨髄腫。
【0245】
本発明の好ましい実施形態において、癌はmCRCである。
【0246】
体内のそれらの特定の位置/起源によって特徴付けられる上記の全ての癌、腫瘍、新生物などは、原発性腫瘍及びそれに由来する転移性腫瘍の両方を含むことを意味する。
【0247】
患者がB7H6の高発現を有することを特徴とする癌を有する場合、患者は(本明細書に記載されている)本発明の結合タンパク質による処置に反応する可能性がより高い可能性がある。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の結合タンパク質で処置されるべき癌は、B7H6の高発現を有する癌であり、例えば、B7H6発現は、同じ種類のB7H6発現癌に罹患している患者の集団の癌細胞における平均発現よりも高い。
【0248】
本発明の結合タンパク質は、第一選択、第二選択、又は任意のさらなる選択の処置及び維持処置の状況で治療レジメンにおいて使用され得る。
【0249】
本発明の結合タンパク質は、上記の疾患の予防、短期又は長期処置のために、場合により放射線療法、1つ以上の追加の治療剤及び/又は手術と組み合わせて使用されてもよい。
【0250】
好ましい実施形態において、本発明のタンパク質は、抗PD-1抗体又は抗PDL-1抗体などのPD-1アンタゴニストと組み合わせて癌の処置のために使用される。好ましくは、前記抗PD-1抗体は、本明細書(以下の表A中の配列によって定義される)及び国際公開第2017/198741号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、PD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4、及びPD1-5からなる群より選択される。好ましくは、前記抗PDL-1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ及びデュルバルマブからなる群より選択される。特に好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質(好ましくはB7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)は、PD1-1と組み合わせて癌の処置のために使用される。特に好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質(好ましくはB7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)は、PD1-2と組み合わせて癌の処置のために使用される。特に好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質(好ましくはB7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)は、PD1-3と組み合わせて癌の処置のために使用される。特に好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質(好ましくはB7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)は、PD1-4と組み合わせて癌の処置のために使用される。特に好ましい実施形態において、本発明の結合タンパク質(好ましくはB7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ):
【表1】


【0251】
これらの好ましい実施形態及び本発明の態様の他のいずれかによれば、抗体PD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4及びPD1-5は、国際公開第2017/198741号に開示される抗体分子であり、上記の表Aに示される配列によって定義される。
【0252】
したがって、PD1-1は、配列番号:331のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号:332のアミノ酸配列を含む軽鎖とを有し、
PD1-2は、配列番号:333のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号:334のアミノ酸配列を含む軽鎖とを有し、
PD1-3は、配列番号:335のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号:336のアミノ酸配列を含む軽鎖とを有し、
PD1-4は、配列番号:337のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号:338のアミノ酸配列を含む軽鎖とを有し、
PD1-5は、配列番号:339のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号:340のアミノ酸配列を含む軽鎖とを有する。
【0253】
上記は、上記疾患を処置することを必要とする患者に治療有効用量を投与することによって上記疾患を処置する様々な方法における本発明の結合タンパク質の使用、並びにこのような疾患を処置するための医薬の製造のためのこれらの結合タンパク質の使用、並びに本発明のこのような結合タンパク質を含む医薬組成物、並びに本発明のこのような結合タンパク質を含む医薬の調製及び/又は製造なども含む。
【0254】
他の活性物質又は処置との組み合わせ
本発明の結合タンパク質(例えば、B7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#6/CD3#1、B7H6#7/CD3#1、B7H6#8/CD3#1、B7H6#9/CD3#1、B7H6#10/CD3#1、B7H6#11/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)は、単独で、又は他の癌治療、例えば手術、放射線療法、化学療法、標的化療法、免疫療法若しくはこれらの組み合わせと組み合わせて使用され得る。例えば、本発明の結合タンパク質は、1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて、特に細胞傷害性又は細胞分裂阻害性化学療法剤、血管新生を阻害する治療活性化合物、シグナル伝達経路阻害剤、例えばEGFR阻害剤、免疫調節剤、免疫チェックポイント阻害剤、有糸分裂チェックポイント阻害剤又はホルモン療法剤と組み合わせて、癌の処置のために使用され得る。
【0255】
追加の治療剤は、B7H6/CD3結合タンパク質の投与と同時に、場合により同じ医薬調製物の成分として、又は投与前若しくは投与後に投与され得る。
【0256】
本発明の結合分子と組み合わせて投与され得る細胞分裂阻害性及び/又は細胞傷害性活性物質には、ホルモン、ホルモン類似体及び抗ホルモン薬、アロマターゼ阻害剤、LHRHアゴニスト及びアンタゴニスト、成長因子(例えば血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、ヒト上皮成長因子(HER、例えばHER2、HER3、HER4)及び肝細胞成長因子(HGF)などの成長因子)の阻害剤が含まれるが、これらに限定されず、阻害剤は、例えば(抗)成長因子抗体、(抗)成長因子受容体抗体及びチロシンキナーゼ阻害剤、例えばセツキシマブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、ニンテダニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ボスチニブ及びトラスツズマブなど;代謝拮抗剤(例えば、葉酸代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサート、ラルチトレキセド、ピリミジン類似体、例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、FOLFOX(フォリン酸、5-FU及びオキサリプラチンの併用レジメン)、FOLFIRI(フォリン酸、5-FU及びイリノテカンの併用レジメン)、ゲムシタビン、イリノテカン、ドキソルビシン、TAS-102、カペシタビン及びゲムシタビン、プリン及びアデノシン類似体、例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン及びペントスタチン、シタラビン(araC)、フルダラビン);抗腫瘍抗生物質(例えばアントラサイクリン);白金誘導体(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン);アルキル化剤(例えば、エストラムスチン、メクロレタミン、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ダカルバジン、シクロホスファミド、イホスファミド、テモゾロミド、ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン及びロムスチンなど、チオテパ);有糸分裂阻害剤(例えばビンカアルカロイド、例えばビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン及びビンクリスチンなど;並びにタキサン、例えばパクリタキセル、ドセタキセル);ベバシズマブ、ラムシルマブ及びアフリベルセプトを含む血管新生阻害剤、チューブリン阻害剤;DNA合成阻害剤、PARP阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(例えばエピポドフィロトキシン、例えばエトポシド及びエトポフォス、テニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカン、ミトキサントロンなど)、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤(例えば、PDK1阻害剤、Raf阻害剤、A-Raf阻害剤、B-Raf阻害剤、C-Raf阻害剤、mTOR阻害剤、mTORC1/2阻害剤、PI3K阻害剤、PI3Kα阻害剤、二重mTOR/PI3K阻害剤、STK33阻害剤、AKT阻害剤、PLK1阻害剤(ボラセルチブなど)、CDK9阻害剤を含むCDKの阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えばPTK2/FAK阻害剤)、タンパク質間相互作用阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤、FLT3阻害剤、BRD4阻害剤、IGF-1R阻害剤、Bcl-xL阻害剤、Bcl-2阻害剤、Bcl-2/Bcl-xL阻害剤、ErbB受容体阻害剤、BCR-ABL阻害剤、ABL阻害剤、Src阻害剤、ラパマイシン類似体(例えば、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムス、シロリムス)、アンドロゲン合成阻害剤、アンドロゲン受容体阻害剤、DNMT阻害剤、HDAC阻害剤、ANG1/2阻害剤、CYP17阻害剤、放射性医薬品、免疫療法剤、例えば免疫チェックポイント阻害剤(例えばイピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブなどのCTLA4、PD1、PD-L1、LAG3及びTIM3結合分子/免疫グロブリン)並びにアミフォスチン、アナグレリド、クロドロナート、フィルグラスチン、インターフェロン、インターフェロンα、ロイコボリン、リツキシマブ、プロカルバジン、レバミソール、メスナ、ミトタン、パミドロネート及びポルフィマーなどの様々な化学療法剤;プロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブなど);Smac及びBH3模倣物;mdm2-p53アンタゴニストを含む、p53機能を回復させる作用物質;Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路の阻害剤;並びに/又はサイクリン依存性キナーゼ9阻害剤である。
【0257】
抗PD-1及び抗PD-L1剤並びに抗LAG3剤を含む1つ以上の免疫療法剤と組み合わせた本発明の結合分子による処置が特に好ましい:例示的な抗PD1剤としては、限定されないが、本明細書(表A)及び国際公開第2017/198741号に開示されている抗PD-1抗体PDR-001、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ並びにPD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4及びPD1-5が挙げられる。例示的な抗PDL-1剤には、アテゾリズマブ、アベルマブ及びデュルバルマブが含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、本発明の結合分子(好ましくはB7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)は、PD1-1と組み合わされる。好ましい実施形態において、本発明の結合分子(好ましくはB7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)は、PD1-2と組み合わされる。好ましい実施形態において、本発明の結合分子(好ましくはB7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)は、PD1-3と組み合わされる。好ましい実施形態において、本発明の結合分子(好ましくはB7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)は、PD1-4と組み合わされる。好ましい実施形態において、本発明の結合分子(好ましくはB7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)は、PD1-5と組み合わされる。
【0258】
ある特定の実施形態において、追加の治療剤は、TIM-1、TIM-3、TIM-4、PD-L2、LAG3、CTLA-4、ガレクチン9、ガレクチン-1、CD69、CD113、GPR56、CD48、GARP、CAECAM-1、BTLA、TIGIT、CD160、LAIR1、2B4、CEACAM、CD39、TGFβ、IL-10、Fasリガンド、ICOS、B7ファミリー(B7-1、B7-2、B7-H1(PDL-1)、B7-DC(PD-L2)、B7-H2(ICOS-L)、B7-H3、B7-H4、B7-H5(VISTA))、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、SIRPα(CD47)、ILT-2、ILT-4、IDO、CD39、アルギナーゼ、CD73、HHLA2、ブチロフィリン又はA2aRの調節物質などのさらなる免疫療法剤であり得る。
【0259】
いくつかの実施形態において、追加の免疫療法剤は、同族のTNF受容体ファミリーメンバーに結合する分子のTNFファミリーのメンバーであり、CD40及びCD40L、OX-40、OX-40L、CD70、CD27L、CD30、CD30L、4-lBBL、CD137、CD137/FAP、GITR、TRAIL/Apo2-L、TRAILR1/DR4、TRAILR2/DR5、TRAILR3、TRAILR4、OPG、RANK、RANKL、TWEAKR/Fn14、TWEAK、BAFFR、EDAR、XEDAR、TACI、APRIL、BCMA、LIGHT、DcR3、HVEM、VEGI/TLlA、TRAMP/DR3、EDAR、EDAl、XEDAR、EDA2、TNFR1、リンホトキシンα/TNFβ、TNFR2、TNFα、LTβR、リンホトキシンα1β2、FAS、FASL、RELT、DR6、TROY、NGFRが含まれる。好ましくは、追加の免疫療法剤はCD137/FAPである。
【0260】
いくつかの実施形態において、追加の免疫療法剤は、免疫応答を刺激するために、例えば癌などの増殖性疾患を処置するために、(i)T細胞活性化を阻害するサイトカイン(例えば、IL-6、IL-10、TGF-B、VEGF;「免疫抑制性サイトカイン」)のアンタゴニスト並びに/又は(ii)T細胞活性化を刺激するサイトカイン及び/若しくはIL2などのサイトカインのアゴニストから選択される。
【0261】
いくつかの実施形態において、追加の免疫療法剤は、CD28、GITRL、OX40L、CD27及びCD28HなどのT細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニスト又はSTINGアゴニストである。
【0262】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、(AdV)、単純ヘルペスウイルス(HSV1又はHSV2)、レオウイルス、粘液腫ウイルス(MYXV)、ポリオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、マラバウイルス、水痘ウイルス、麻疹ウイルス(MV)又はニューカッスル病ウイルス(NDV)に由来する腫瘍溶解性ウイルスを含むがこれらに限定されない腫瘍溶解性ウイルスである。
【0263】
キット
本発明は、少なくとも本発明の多重特異性結合タンパク質(例えば、B7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#6/CD3#1、B7H6#7/CD3#1、B7H6#8/CD3#1、B7H6#9/CD3#1、B7H6#10/CD3#1、B7H6#11/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)と、場合により、上記の疾患及び障害の処置のために使用される他の薬物からなる群より選択される1つ以上の他の成分とを含むキットも包含する。
【0264】
一実施形態において、キットは、有効量の単位剤形の本発明の結合タンパク質を含有する組成物を含む。
【0265】
本発明は、少なくとも本発明の多重特異性結合タンパク質と、上記の疾患及び障害の処置のために使用される他の薬物からなる群より選択される1つ以上の他の成分とを含むキットも包含する。
【0266】
一実施形態において、キットは、有効量の単位剤形の本発明の多重特異性結合タンパク質(好ましくは、B7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つ)を含有する組成物を含む。さらなる実施形態において、キットは、有効量の単位剤形の本発明の多重特異性結合タンパク質(好ましくは、B7H6#1/CD3#1、B7H6#2/CD3#1、B7H6#3/CD3#1、B7H6#4/CD3#1、B7H6#5/CD3#1、B7H6#12/CD3#1、B7H6#13/CD3#1、B7H6#14/CD3#1、B7H6#15/CD3#1、B7H6#16/CD3#1、B7H6#17/CD3#1、B7H6#18/CD3#1、B7H6#19/CD3#1、B7H6#20/CD3#1、B7H6#21/CD3#1、B7H6#22/CD3#1、B7H6#23/CD3#1、B7H6#24/CD3#1の任意の1つの任意の1つ)を含有する組成物と、有効量の単位剤形のPD-1アンタゴニスト、例えば、抗PD-1抗体、最も好ましくは、本明細書(例えば、表A)及び国際公開第2017/198741号に記載のPD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4及びPD1-5を含有する組成物の両方を含む。
【0267】
いくつかの実施形態において、キットは、このような組成物を含有する無菌容器を含み、このような容器は、箱、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、パウチ、ブリスターパック、又は当技術分野で公知の他の適切な容器形態であり得る。このような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔又は医薬を保持するのに適した他の材料で作ることができる。さらに、キットは、凍結乾燥された形態の本発明の結合タンパク質を有する第1の容器及び注射用の薬学的に許容し得る希釈剤(例えば、無菌水)を有する第2の容器中に医薬組成物を含み得る。薬学的に許容し得る希釈剤は、結合タンパク質の再構成又は希釈のために使用され得る。
【0268】
所望であれば、本発明の多重特異性結合タンパク質は、癌を有する対象に多重特異性結合タンパク質を投与するための説明書とともに提供される。説明書は、一般に、癌の治療又は予防のための組成物の使用に関する情報を含むであろう。他の実施形態において、説明書は、以下のうちの少なくとも1つを含む:治療剤の説明;癌又はその症候の処置又は予防のための投薬スケジュール及び投与;注意;警告;適応症;禁忌;過量服薬情報;有害反応;動物薬理学;臨床研究;及び/又は参考文献。説明書は、容器に直接印刷されてもよく(存在する場合)、又は容器に貼付されたラベルとして、又は容器内に若しくは容器ともに供給される別個のシート、パンフレット、カード若しくはフォルダとして印刷されてもよい。
【0269】
適切であれば、これらの提案されたキットの構成要素は、当業者による使用のために慣用的な様式で包装され得る。例えば、これらの提案されたキットの構成要素は、溶液中に又は液体分散液などとして提供され得る。
【実施例
【0270】
以下の実施例は、本発明を例示する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0271】
実施例1:B7H6/CD3結合タンパク質の設計及び構築
本発明者らは、B7H6及びCD3を結合し、T細胞活性化を誘導してB7H6発現腫瘍細胞の溶解をもたらす多重特異性結合タンパク質を開発した。使用される分子設計は、IgG抗体骨格及びIgG様構造を有する。使用される分子設計は、ノブ及びホールアームのヘテロ二量体化のための、Fcにおけるノブ・イン・ホール技術を特徴とする。さらに、結合タンパク質は、各アーム中の軽鎖と対応する重鎖との間に柔軟なペプチド配列を有する。したがって、結合タンパク質は2つのアームを含み、一方はCD3に結合し、他方はB7H6に結合し、各アームは単鎖Fab及びFc領域を含む(図1参照)。
【0272】
好ましくは、結合分子は二重特異性及び二価(2つの標的のそれぞれについて一価)である。
【0273】
ハイブリドーマ及び培養された単一B細胞からのハイスループットV遺伝子回収を使用した、B7H6及びCD3を認識する結合ドメインの調製。
抗B7H6結合剤を得るために、B7H6で免疫した野生型マウス及びALIVAMAB(商標)ヒト化マウス(Ablexis,San Francisco,CA,USA:ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するALIVAMAB MOUSE(商標)トランスジェニックマウスプラットフォーム)に由来するハイブリドーマ又は単一B細胞をインビトロで培養した。ALPHALISA(登録商標)イムノアッセイキット(PerkinElmer,Waltham,MA,USA)によって組換えヒトB7H6への結合、ヒトB7H6を発現するNCI-H716細胞(ATCC(登録商標)、CCL-251(商標))への結合、及びフローサイトメトリーによってCHO細胞上の組換えによって発現されたカニクイザルB7-H6への結合について上清をスクリーニングした。
【0274】
次いで、免疫グロブリン(Ig)VH及びVL遺伝子を、同定された陽性クローンから増幅した。ハイブリドーマからRNAを単離するために、単一クローンから約2×10個の細胞をペレット化し、供給源材料として使用した。単一B細胞の場合、単一に単離されたB細胞から増殖させた100~500個の細胞を供給源材料として使用した。RNeasy(登録商標)PlusミニRNA抽出キット(Qiagen,Hilden,Germany)を使用してRNAを単離した。次いで、SMARTer(登録商標)cDNA合成キット(Clontech,Mountain View,CA)を製造者の説明書に従って使用してcDNAを合成した。cDNA合成を促進するために、オリゴdTを使用して全てのメッセンジャーRNAの逆転写を開始した後、SMARTer IIAオリゴヌクレオチドで「5’キャッピング」した。SMARTer IIAキャップを標的とする5’プライマー及びCH1中のコンセンサス領域を標的とする3’プライマーを使用する2段階PCR増幅を使用して、VH及びVL断片のその後の増幅を行った。簡潔には、各PCR反応 50μlは、20μM順方向及び逆方向プライマーミックス、PrimeSTAR(登録商標)Max DNAポリメラーゼプレミックス(Clontech)25μl、未精製cDNA 2μl及び再蒸留されたH2O 21μlからなる。サイクリングプログラムは、94℃で3分間、続いて35サイクル(94℃で30秒間、50℃で1分間、68℃で1分間)で開始し、72℃で7分間で終了する。2回目のPCRは、それぞれのpTT5マザーベクター(VH及びVL)中のそれぞれの領域を「オーバーラップ」させる15bpの相補的伸長を含有するVL及びVHの2回目のプライマーを用いて行った。2回目のPCRは、同じPCRサイクリングプログラムで行った。
【0275】
VL遺伝子のpTT5 huIgKベクターへの方向性クローニング及びVH遺伝子のpTT5 huIgG1KOベクターへの方向性クローニングのために、In-Fusion(登録商標)HD Cloning Kit(Clontech,U.S.A.)を使用した。In-Fusion(登録商標)HD Cloningを容易にするために、PCR産物を精製し、In-Fusion HD Cloningの前にCloning Enhancerで処理した。クローニング及び形質転換は、製造業者のプロトコル(Clontech,U.S.A.)に従って実施した。完全なV遺伝子断片が得られたことを確認するために、ミニプレップDNAをサンガー配列決定に供した。
【0276】
この方法論を使用して、B7H6に対する特異性を有する結合ドメインをコードするIgVH及びVL遺伝子のペアを調製した。対応する重鎖及び軽鎖をコードするプラスミドによるCHO-E37細胞の一過性形質導入によって、組換え抗体を作製した。
【0277】
さらなる抗CD3結合剤を得るために、huCD3εペプチド1-27構築物を使用して、WTマウスを免疫した。組換えhuCD3E+G-Fcタンパク質及び組換えcyCD3E+G-Fcタンパク質への結合、並びにhuCD3陽性及びcyCD3陽性細胞への結合について、ハイブリドーマ上清をスクリーニングした。陽性クローンの可変領域を回収し、さらなる評価のためにIgG又はIgG様二重特異性構築物としてクローニングした。
【0278】
B7H6及びCD3結合剤のヒト化/最適化
上記のB7H6又はCD3結合剤及び文献(Pessano et al.,EMBO J.1985 Feb;4(2):337-44;Salmeron A et al.,J Immunol.1991 Nov 1;147(9):3047-52)に記載されているCD3結合剤の配列をヒト化及び/又は最適化した。抗体の配列最適化/ヒト化は、ヒトにおいて産生された抗体に類似する治療薬として使用するために(特異的抗原/エピトープに対して)非ヒト種において産生された抗体を操作し、それによって特異性を保持しながら免疫原性などの潜在的な有害作用を排除する方法論である。ここで利用された配列最適化/ヒト化アプローチは、Singhら、2015(Singh S et al.,mAbs 2015:7(4):778-91)によって記載されているとおりであった。手短に言えば、緊密に合致するヒト生殖系列をインシリコで同定し、ファージスクリーニング法を使用して最適化/ヒト化変異形を評価した。結合、パーセントヒトスコア及びEpiVax(登録商標)(潜在的な免疫原性のインシリコ予測ツール)スコアに基づいて最終リード候補配列を選択した。
【0279】
B7H6及びCD3を結合する二重特異性タンパク質の構築
一般的な分子生物学技術を使用して、B7H6及びCD3結合剤の可変領域を発現ベクターpTT5(National Research Council,Canada)にクローニングして、B7H6に結合する単鎖Fab及びFc領域を含む1つのB7H6特異的結合アーム(本明細書では、このような結合単位は「B7H6アーム」又は「B7H6鎖」とも呼ばれる)並びにCD3に結合する単鎖Fab及びFc領域を含むCD3特異的結合アーム(本明細書では、このような結合単位は「CD3アーム」又は「CD3鎖」とも呼ばれる)を有する二重特異性結合タンパク質を形成した。B7H6及びCD3アームのFc領域は、「W」又は「SAV」変異(Atwell et al,JMB,1997,270,26-35)のいずれかを含み、それぞれの鎖はW又はSAV鎖と呼ばれる。マルチフラグメントDNAアセンブリのために、製造業者のプロトコル(New England Biolabs,Ipswich,MA,USA)に従って、Gibson-assembly及びNEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assemblyアプローチを使用した。DNAミニプレップを配列決定した。
【0280】
各発現ベクターは、鎖をコードする遺伝子(B7H6又はCD3アーム/鎖)、すなわちシグナル配列並びに軽鎖及び重鎖をコードする遺伝子のための真核生物プロモーターエレメントと、アンピシリンなどの原核生物選択マーカー遺伝子のための発現カセットと、複製起点とを含有する。これらのDNAプラスミドをアンピシリン耐性大腸菌コロニー及び培養物中で増殖させ、精製した。
【0281】
実施例2:B7H6及びCD3を結合する二重特異性結合タンパク質の発現及び精製
B7H6及びCD3を結合する二重特異性分子は、B7H6/CD3鎖をコードする遺伝子(一方の鎖はW鎖として、他方はSAV鎖として)を有するpTT5ベクターでのCHO-E細胞の一過性形質導入によって作製された。手短に言えば、無血清培地中の懸濁液中で増殖する形質導入されたCHO-E細胞を、振盪フラスコ中で140rpm、37℃及び5%COで撹拌しながら培養し、指数関数的増殖の条件に維持した。形質導入の当日に、Mirus Bio TransIT Pro(登録商標)形質導入試薬を用いて、1:3の質量比で細胞をW鎖プラスミド及びSAV鎖プラスミドで化学的に形質導入した。次いで、Gibco(登録商標)FreeStyle(商標)CHO発現培地(LifeTechnologies,NY,US)1L中に、1~2×10細胞/mlで細胞を播種した。次いで、タンパク質の発現を最適化するために、7日目に200mlの市販のフィード溶液を1回供給して、軌道振盪下で細胞を10日間、インキュベートした。製造者の説明書に従って、Octet(登録商標)機器(Pall ForteBio,CA,US)及びprotAバイオセンサーチップを使用して、細胞培養上清中の抗体価を決定した。
【0282】
GE Healthcare Life Sciences AKTA(商標)Pureタンパク質精製システムを使用して、2段階過程で、培養上清から組換えB7H6/CD3結合タンパク質を精製した。まず、MabSelect(商標)カラム(GE Healthcare)を用いたプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって、回収された細胞培養液から試料を捕捉した。タンパク質は中性pHでプロテインAに結合し、高塩(1M NaCl)で洗浄して、細胞培養培地成分及びプロテインAに非特異的に結合する任意のタンパク質又は成分を除去した。30mM酢酸ナトリウム、pH3.5を使用して均一濃度モードで、抗体又は抗体様構築物試料を溶出した。3M酢酸ナトリウムの1%溶液、pH9.0を使用して、溶出された試料をpH5.0に中和した。中和されたタンパク質を0.22μm濾過システムで滅菌濾過した。濃度は、nanodrop 8000分光光度計によって、UV280によって測定した。第2の精製では、POROS(商標)50 HS陽イオン交換樹脂カラム(Applied Biosystems,Carlsbad,CA,USA)を使用して陽イオン交換クロマトグラフィーを、又はHiLoad(登録商標)26/600 Superdex(登録商標)200pgカラム(GE Healthcare)を使用してサイズ排除クロマトグラフィーを適用した。50mM酢酸ナトリウム及び100mM NaCl、pH5.0の最終緩衝液中に二段階精製された材料を保存し、試料の純度及び不均一性の程度を分析サイズ排除クロマトグラフィー、質量分析及び分析超遠心分離によって評価した。機能試験に進められた試料は、約95~99%のモノマー含有量を有する二段階精製された材料を含んでいた。
【表2】















































【0283】
実施例3:組換えタンパク質の作製
・ヒトB7H6-His
Lenti-X(商標)Lentiviral System(Clontech)を使用した一過性形質導入によって、pTTベクター(ヒトB7H6-Hisをコードする、配列番号:317)を使用して、ヒト-B7H6の完全な細胞外ドメインをHis6タグとともに発現させた。Gibco(商標)Freestyle(商標)F17発現培地(Thermo Fisher Scientific)中において、形質導入の時点で1.6×10細胞/mlで、HEK293F細胞(Thermo Fisher)を使用した。1:3の比でのDNA:PEI複合体及び1mg/LのDNAを5分間プレインキュベートし、濾過し、室温でさらに15分間プレインキュベートした後、細胞に添加した。37℃、5%COで細胞をインキュベートし、140rpmで振盪した。形質導入の24時間後に、0.5%の最終濃度になるようにトリプトンN1を細胞に添加した。形質導入の48時間後に、2mMグルタミン及びグルコース 2g/Lを細胞に再度与えた。同時に、温度を33℃に下げた。形質導入の120時間後に、2mMグルタミン及びグルコース 1g/Lで最終供給を添加した。形質導入の144時間後、6000rpmで15分間遠心分離することによって細胞を回収した。G4フィルターを用いて、上清を滅菌した。
【0284】
タンパク質精製は、2段階で行った。第1に、10CVの洗浄緩衝液1×PBS、pH7.2+10mMイミダゾール、次いで10CVの洗浄緩衝液1×PBS、pH7.2+20mMイミダゾール、及び0.5Mイミダゾールを補充した1×PBS、pH7.2の溶出勾配4~60%でのアフィニティークロマトグラフィーのために、Ni-NTAカラムを使用した。画分を収集し、SDS-PAGEによって分析した後、プールし、濃縮した。第2に、ゲル濾過クロマトグラフィー(GE Healthcare Life Sciences)のために、Superdex(登録商標)200、16/600、120mlカラムを使用した。アフィニティークロマトグラフィー後の濃縮されたプール、5mlを流速0.5ml/分でカラムにかけた。製剤緩衝液は、20mM HEPES、100mM NaCl、5%スクロース、pH7.4であった。画分を集め、プールする前にSDS-PAGEによって分析し、次いで、0.2umフィルターを用いて滅菌した。
【0285】
・Cyno B7H6-His
Lenti-X(商標)Lentiviral System(Clontech)を使用した一過性形質導入によって、pTTベクター(cyno B7H6-Hisをコードする、配列番号:320)を使用して、Cyno-B7H6の完全な細胞外ドメインをHis6タグとともに発現させた。Gibco(商標)Freestyle(商標)F17発現培地(Thermo Fisher Scientific)中において、形質導入の時点で1.6×10細胞/mlで、HEK293F細胞(Thermo Fisher)を使用した。1:3の比でのDNA:PEI複合体及び1mg/LのDNAを5分間プレインキュベートし、濾過し、室温でさらに15分間プレインキュベートした後、細胞に添加した。37℃、5%COで細胞をインキュベートし、140rpmで振盪した。形質導入の24時間後に、0.5%の最終濃度になるようにトリプトンN1を細胞に添加した。形質導入の48時間後に、2mMグルタミン及びグルコース 2g/Lを細胞に再度与えた。同時に、温度を33℃に下げた。形質導入の120時間後に、2mMグルタミン及びグルコース 1g/Lで最終供給を添加した。形質導入の144時間後、6000rpmで15分間遠心分離することによって細胞を回収した。G4フィルターを用いて、上清を滅菌した。
【0286】
タンパク質精製は、2段階で行った。第1に、10CVの洗浄緩衝液1×PBS、0.2Mスクロース、0.01%CHAPS、5%グリセロール、pH7.2+10mMイミダゾール、次いで10CVの洗浄緩衝液1×PBS、pH7.2+20mMイミダゾール、及び0.5Mイミダゾールを補充した1×PBS、0.2Mスクロース、0.01%CHAPS、5%グリセロール、pH7.2の溶出勾配4~60%でのアフィニティークロマトグラフィーのために、Ni-NTAカラムを使用した。画分を収集し、SDS-PAGEによって分析した後、プールし、濃縮した。第2に、ゲル濾過クロマトグラフィー(GE Healthcare Life Sciences)のために、Superdex(登録商標)200、16/600を使用した。アフィニティークロマトグラフィー後の濃縮されたプール、10mlを流速1.0ml/分でカラムにかけた。製剤緩衝液は、1×PBS、0.2Mスクロース、0.01%CHAPS、5%グリセロール、pH7.2であった。画分を集め、プールする前にSDS-PAGEによって分析し、次いで、0.2umフィルターを用いて滅菌した。
【0287】
・ヒトCD3 E+G HuFc-6xHis(E+Gはεγサブユニットを示す)
HEK-293細胞(Thermo Fisher)、Lenti-X(商標)Lentiviral System(Clontech)及びヒトCD3 E+G HuFc-6xHisをコードするプラスミド(ヒトCD3Eアクセッション番号:P07766;ヒトCD3E+G-HuFc-His:配列番号:322)を用いて、ヒトCD3 E+G HuFc-6xHisを産生するための細胞株を作製した。発現のために、Freestyle(商標)293培地(Thermo Fisher Scientific)中、37℃、加湿された8%CO環境において、135rpmで振盪しながら、細胞を培養及び増殖させた。9300xgで30分間の遠心分離によって、6日目に、馴化された培養上清を収集した。SDS-PAGE及びウエスタンブロッティングによって発現をモニターした。0.2Mスクロース、5%グリセロール、0.01%CHAPS及び10mMイミダゾールで、馴化された培養上清を調整した。次いで、pHを7.2に調整した。精製は2段階過程で行った:Ni/NTA樹脂を用いた親和性精製(4Cでの一晩のインキュベーション、及び250mMイミダゾールによる溶出);その後、0.2Mスクロース、5%グリセロール、0.01%CHAPS、1mM TCEP、pH7.2を含む最終(destination)緩衝液PBS中のSuperdex(登録商標)200カラム(GE Healthcare Life Sciences)でのサイズ排除クロマトグラフィー。最終分析及び保存の前に、10K MWCO PES膜Vivacell(登録商標)100遠心分離装置を使用して、プールされた材料を濃縮した。精製された材料は、質量分析及び分析超遠心分離によって適格とした。
【0288】
・Cyno CD3 E+G HuFc-6xHis(E+Gはεγサブユニットを示す)
HEK-293細胞(Thermo Fisher)、Lenti-X(商標)Lentiviral System(Clontech)及びCyno CD3 E+G HuFc-6xHisをコードするプラスミド(カニクイザルCD3Eアクセッション番号:Q95LI5<、cyno CD3 E+G huFc-His:配列番号:323)を用いて、Cyno CD3 E+G HuFc-6xHisを産生するための細胞株を作製した。発現のために、Freestyle(商標)293培地(Thermo Fisher Scientific)中、37℃、加湿された8%CO環境において、135rpmで振盪しながら、細胞を培養及び増殖させた。9300xgで30分間の遠心分離によって、6日目に、馴化された培養上清を収集した。SDS-PAGE及びウエスタンブロッティングによって発現をモニターした。0.2Mスクロース、5%グリセロール、0.01%CHAPS及び10mMイミダゾールで、馴化された培養上清を調整した。次いで、pHを7.2に調整した。精製は2段階過程で行った:Ni/NTA樹脂を用いた親和性精製(4Cでの一晩のインキュベーション、及び250mMイミダゾールによる溶出);その後、0.2Mスクロース、5%グリセロール、0.01%CHAPS、1mM TCEP、pH7.2を含む最終(destination)緩衝液PBS中のSuperdex(登録商標)200カラム(GE Healthcare Life Sciences)でのサイズ排除クロマトグラフィー。最終分析及び保存の前に、10K MWCO PES膜Vivacell(登録商標)100遠心分離装置を使用して、プールされた材料を濃縮した。精製された材料は、質量分析及び分析超遠心分離によって適格とした。
【0289】
・Fc-Hisタグ付きヒトB7H6ECD
この構築物では、huB7H6ECDの後にGSリンカーが続き、次いでhuIgG1-Fcドメイン及びC末端His6タグが続く(配列番号318)。HEK293-6E細胞を用いた一過性形質導入によって構築物を発現させ、DNA:PEI比は1:3であり、DNA 1mg/L培養物であった。PEI試薬は、直鎖PEI MAX[Mw40,000](Polysciences:カタログ番号24765-2)であった。5%CO及び130rpmで、37℃で、形質導入された細胞をインキュベートした。形質導入の24時間後、トリプトンN1(Organotechnie;カタログ番号19553)及びグルコースをそれぞれ0.5%及び1g/Lの最終濃度になるように添加した。細胞を5日後に収集した。遠心分離後、0.2μmメンブランフィルターを通して上清を濾過した。2段階精製:第1に、Ni NTA Agaroseマトリックスでの親和性によって、第2に、Superdex(登録商標)200、26/600カラム(GE Healthcare Life Sciences)を使用したゲル濾過によって、huB7H6-ECD-Fc-Hisタンパク質を精製した。プールされた画分を濾過し、1×PBS、0.2Mスクロース、5%グリセロール、0.01%CHAPS、pH-7.2製剤緩衝液中で保存した。
【0290】
・Fc-Hisタグ付きヒトAla変異B7H6ECD(Alaによって置換されたNKp30相互作用部位aa35-38及びaa102-105)。
この構築物(配列番号:319)は、35~38位及び102~105位にAla置換を有するhuB7H6を有するので、NKp30を結合しない。huB7H6-Ala-ECDの後にGSリンカーが続き、次いでhuIgG1Fcドメイン及びC末端His6タグが続く。一過性形質導入によってHEK293-6E細胞中でこの構築物を発現させ、2段階精製過程で精製し、Fc-Hisタグ付きhuB7H6-ECD構築物について上述されているように保存した。
【0291】
・ヒトB7H1-Fc
この構築物(配列番号324)は、cMycタグ、トロンビン切断部位及びhuFcドメインを有するhuB7H1を含有する。HEK293f細胞を用いた一過性形質導入によって構築物を発現させ、DNA:PEI比は1:1.5であり、DNA 1mg/L培養物であった。135rpmで振盪しながら、加湿された8%CO環境においてフラスコを37℃でインキュベートした。細胞を3日後に収集した。細胞の遠心分離後に、タンパク質を上清から精製した。第1に、nProtein A Sepharose(登録商標)4Fast Flow培地(GE Healthcare、#17-5280-03)を用いて親和性精製を行い、20mM Tris、100mM NaCl、10%グリセロール、1mM TCEP、3mM CaCl、pH8.0中で溶出液を透析した。第2に、Thrombin CleanCleave(商標)樹脂(1mL、Sigma)とともに試料をインキュベートした。第3に、前の工程からのプールをnProtein A Sepharose(登録商標)4 Fast Flow培地に再び結合させた。非結合材料を残しておき、PBS、1mM TCEP、pH7.2緩衝液で平衡化されたSuperdex(登録商標)75(GE Healthcare)カラムでのゲル濾過によってさらに最終精製を行い、濃縮した。
【0292】
実施例4:組換えB7H6及びCD3εγサブユニットに対する親和性及び種間交差反応性のSPRに基づく決定
B7H6/CD3結合タンパク質に対するヒト及びcynoB7H6並びにヒトB7H1の親和性を決定するために、Biacore(商標)8K装置(GE Healthcare Life Sciences)で実験を行った。簡潔には、プロテインA/Gを介してB7H6/CD3結合タンパク質を捕捉した。この実験のためのランニング緩衝液及び全ての連続希釈液は、HBS-EP+中で調製した。10μL/分の流速で420秒間、両フローセルにわたってEDC/NHSの等しい混合物で、CM5センサーチップを活性化し、10μL/分の流速で420秒間、全てのフローセルにわたって組換えプロテインA/G(10mM NaOAc中50μg/ml、pH4.5)で固定化して、表面上にプロテインA/G約2500RUを得た。10μL/分の流速で420秒間、全てのフローセルにわたって1Mエタノールアミン-HClでセンサーチップを不活性化した。
【0293】
10μL/分の流速で60秒間、プロテインA/G表面のフローセル2上に、B7H6/CD3結合タンパク質約700RUを捕捉した。捕捉されたB7H6/CD3結合タンパク質上に、両方のフローセルにわたって、30μL/分の流速で300秒間、1200秒間の解離で、分析物HuB7H6、CyB7H6及びHuB7H1を注入した。HuB7H6及びCyB7H6の濃度は、0nM、6.25nM、12.5nM、25nM、50nM及び100nMであった。HuB7H1の濃度は、0nM及び1μMであった。両方のフローセルにわたって30μL/分の流量で10mMグリシン-HCl、pH1.5を20秒間注入することによって表面を再生した。
【0294】
参照フローセル1(センサー表面との相互作用)及びブランク(HBS-EP+又は0nM分析物)を生データから差し引いた。Biacore(商標)8K Evaluation Softwareを使用して、センサーグラムを1:1ラングミュア結合に全体的に当てはめて、会合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)及び平衡解離定数(KD)値を得た。
【0295】
ヒト及びカニクイザルCD3E+G-hFcに対するB7H6/CD3結合タンパク質の親和性を決定するために、Bio-Rad ProteOn(商標)XPR36装置で実験を行った。簡潔には、HuCD3E+G-hFc及びCyCD3E+GをProteOn(商標)GLMセンサーチップ(Bio-Rad)上にアミンカップリングさせ、固定化された表面上にB7H6/CD3結合タンパク質を流した。この実験のためのランニング緩衝液及び全ての連続希釈液は、HBS-EP+中で調製した。Bio-Radの推奨に従って、GLMセンサーチップを正規化した。30μL/分の流速で300秒間、水平方向にEDC/s-NHSの等しい混合物を用いてセンサーチップを活性化した。30μL/分の流速で300秒間、10mMアセタート pH4.5中0.4μg/mL、0.2μg/mL及び0.1μg/mLで、それぞれL1、L2及びL3に垂直方向にHuCD3E+G-hFcを固定化し、L1上に約100RUのHuCD3E+G-hFc、L2上に40RUのHuCD3E+G-hFc、及びL3上に0RUのHuCD3E+G-hFcを得た。30μL/分の流速で300秒間、10mMアセタート pH4.5中0.4μg/mL、0.2μg/mL及び0.1μg/mLで、それぞれL4、L5及びL6に垂直方向にCyCD3E+G-hFcを固定化し、L4上に約385RUのHuCD3E+G-hFc、L5上に170RUのCyCD3E+G-hFc及びL6上に50RUのCyCD3E+G-hFcを得た。30μL/分の流速で300秒間、水平方向に1Mエタノールアミン-HClを用いてセンサーチップを不活性化した。100μL/分の流速で水平方向に2回及び垂直方向に2回、18秒間の0.85%リン酸でセンサーチップを再生した。
【0296】
30μL/分の流速で300秒間、600秒の解離で、固定化された表面上にB7H6/CD3結合タンパク質分析物を水平に注入した。使用したB7H6/CD3結合タンパク質の濃度は、0nM、1.2nM、3.7nM、11.1nM、33.3nM及び100nMであった。100μL/分の流速で水平に2回18秒間、0.85%リン酸を注入することによって表面を再生した。
【0297】
インタースポット(センサー表面との相互作用)及びブランク(HBS-EP+又は0nM分析物)を生データから差し引いた。Bio-Rad ProteOn(商標)Managerソフトウェアを使用して、センサーグラムを1:1ラングミュア結合に全体的に当てはめて、会合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)及び平衡解離定数(KD)値を得た。
【0298】
例示的なB7H6/CD3結合タンパク質(それぞれ、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6/CD3結合タンパク質、及び配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質)について、上記のように決定された親和性を表2に示す。
【表3】
【0299】
実施例5:細胞表面上にカニクイザルB7H6細胞外ドメインを発現する組換えCHO-K1細胞株の作製
細胞表面上にカニクイザルB7H6の細胞外ドメイン(NCBI:XP_005578557)を発現する安定なCHO-K1細胞を作製するために、それぞれのコード配列(XP_005578557.1のaa25~262)をpcDNA3.1(Thermo Fisher Scientific)にクローニングした。構築物は、N末端マウスIgG Vkリーディング配列、続いて6-His-myc-タグ及びカニクイザルB7H6細胞外ドメイン(NCBI XP_005578557.1のaa25~262)を含有する。B7H6細胞外ドメインの細胞表面局在化を確実にするために、構築物には、リンカー、並びにEpCAMの膜貫通ドメイン及び細胞内ドメイン(Uniprot P16422)を後続させた。マウスモノクローナル抗myc抗体(AbD Serotec)を用いるフローサイトメトリーによって、細胞表面上のB7H6ドメインの発現を確認した。使用した配列を表3に列挙し、構築物の概略図を図2に示す。
【表4】
【0300】
実施例6:組換えヒトB7H6細胞外ドメインタンパク質への例示的なB7H6結合タンパク質の結合
実施例3に記載の組換えヒトFc-Hisタグ付きB7H6ECD及びヒトFc-Hisタグ付きAla変異B7H6細胞外タンパク質へのB7H6/CD3結合タンパク質の結合を評価するために、MediSorp(商標)プレート(Nunc,467320)を4℃で一晩、2μl/mlの組換えタンパク質でコーティングした。翌日、室温(RT)で1時間、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)でプレートをブロッキングした。その後、0.05%TWEEN(登録商標)20粘性液体を含有するOBSでプレートを洗浄し、B7H6/CD3結合タンパク質を0.00001~10μg/mlの範囲の濃度でインキュベートした。さらなる洗浄工程の後、ペルオキシダーゼがコンジュゲートされたヤギ抗ヒトIgGF(ab’)特異的二次抗体(Jackson Immunoresearch)によって、結合したB7H6/CD3結合タンパク質を検出し、TMB基質溶液(Bender Med Systems)によって可視化した。図3A+B及び4A+Bは、組換えヒトB7H6 ECD(図3A+B)及びヒトAla変異B7H6 ECD(図4A+B)タンパク質への例示的なB7H6/CD3結合タンパク質(それぞれ、配列番号:217、配列番号:218、配列番号:219、配列番号:220、配列番号:221、配列番号:222、配列番号:223、配列番号:224、配列番号:225、配列番号:226、配列番号:227、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖と、配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6/CD3結合タンパク質、及び配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質)の結合を示す。
【0301】
全ての試験された例示的なB7H6/CD3結合タンパク質は、組換えヒトB7H6 ECDへの同等の結合を示す(図3A+B)のに対して、それぞれ、配列番号:217、配列番号:218、配列番号:219、配列番号:220、配列番号:221、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6/CD3結合タンパク質、及び配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質のみが、NKp30結合部位がアラニンに変異されたヒトFc-Hisタグ化Ala変異B7H6細胞外タンパク質への強い結合を示す。配列番号:222、配列番号:223、配列番号:224、配列番号:225、配列番号:226、又は配列番号:227のB7H6鎖、及び配列番号:311のCD3鎖を含むB7H6/CD3結合タンパク質は、Fc-Hisタグ化Ala変異B7H6細胞外タンパク質に高濃度で弱い結合のみを示すか、又は結合を示さない。
【0302】
実施例7:B7H6陽性HCT細胞への結合
ヒト(結腸直腸癌)CRC細胞株であるHCT-15へのB7H6/CD3結合タンパク質の結合をフローサイトメトリーによって試験した。以前の実験において、HCT-15細胞がRNAレベル及びタンパク質レベルでB7-H6を発現し、細胞表面上に約8,000個のB7-H6受容体を有することが確認されている(データは示さず)。実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。FACS緩衝液(PBS/0.5%BSA/0.05%アジ化ナトリウム)中の漸増濃度の2段階精製されたB7H6/CD3結合タンパク質でHCT-15細胞を染色した。PEをコンジュゲートされた抗ヒト二次抗体(Sigma-Aldrich、#P8047)で、結合した分子を検出した。図5A+Bは、ヒトHCT-15細胞への例示的なB7H6/CD3結合タンパク質(それぞれ、配列番号:217、配列番号:218、配列番号:219、配列番号:220、配列番号:221、配列番号:222、配列番号:223、配列番号:224、配列番号:225、配列番号:226、配列番号:227、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖と、配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6/CD3結合タンパク質、及び配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質)の結合を示す。
【0303】
実施例8:カニクイザルB7H6に対する交差反応性
カニクイザルB7H6を発現する組換えCHO-K1細胞へのB7H6/CD3結合タンパク質の結合を、フローサイトメトリーによって試験した。実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。実施例5に記載されているように、組換えカニクイザルB7H6発現細胞株を作製した。FACS緩衝液(PBS/0.5%BSA/0.05%アジ化ナトリウム)中の漸増濃度の2段階精製されたB7H6/CD3結合タンパク質で細胞を染色した。PEをコンジュゲートされた抗ヒト二次抗体(Sigma-Aldrich、#P8047)で、結合した分子を検出した。図6は、組換えカニクイザルB7H6発現細胞への例示的なB7H6/CD3結合タンパク質(それぞれ、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6/CD3結合タンパク質、及び配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質)の結合を示す。
【0304】
実施例9:ヒトT細胞への結合
精製されたヒトT細胞へのB7H6/CD3結合タンパク質の結合をフローサイトメトリーによって試験した。実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。オーストリア赤十字から得られたバフィーコートから、T細胞を単離した。全てのバフィーコートに対し、ヘルシンキ宣言に従ったインフォームドコンセント及びオーストリアの州倫理委員会の承認を得た。
【0305】
Ficoll(登録商標)Paque密度勾配培地(GE Healthcare Lifesciences)を使用してヒト末梢血単核球(PBMC)を調製し、続いて遠心分離した。ヒト末梢血単核球(PBMC)は、輸血のために血液を採取する血液バンクの副産物である濃縮されたリンパ球調製物(バフィーコート)に由来した。したがって、Ficoll(登録商標)密度勾配遠心分離(1400rpmで、ブレーキなしで35分間)及びPBSによる徹底した洗浄によって、単核細胞を単離した。ACK溶解緩衝液(Thermo Fisher Scientific、A1049201)中で3分間インキュベートし、続いてPBS中で洗浄することによって残存する赤血球を除去した後、RPMI1640 GlutaMAX(商標)サプリメント(Gibco#61870-010)、5%ヒトAB血清AB(Gemini、GemCellカタログ番号100-512LOT番号H56500I)+1%MEM-NEAA(Gibco#11140-035)、10mM HEPES(Affymetrix#7365-49-9)、10μM β-メルカプトエタノール(Gibco#21985-023)及びピルビン酸ナトリウム(Gibco#11360-039)を含有するアッセイ培地中に懸濁した。
【0306】
Pan T Cell Isolation Kit II(Miltenyi Biotec#130-091-156)を使用するネガティブ選択によって、T細胞を単離した。簡単に記載すると、10Mio細胞あたり緩衝液PBS 40μl/0.5%BSA(Gibco参照番号041-94553M)/2mM EDTA(Invitrogen参照番号15575-038)中に細胞を再懸濁し、10Mio細胞あたりBiotin-Antibodyカクテル 10μlとともに4℃で5分間インキュベートした。その後、緩衝液 30μl及び抗ビオチンMACS(登録商標)MicroBeds20μl/1000万細胞を添加し、4℃で10分間インキュベートした。その後、適切なMACS(登録商標)マイクロビーズセパレータ(Miltenyi Biotec)の磁場中で予め濯がれた25LSカラム(Miltenyi Biotec#130-042-401)中に混合物を入れた。フロースルーを収集し、アッセイ培地で洗浄した。
【0307】
FACS緩衝液(PBS/0.5%BSA/0.05%アジ化ナトリウム)中の漸増濃度の2段階精製されたB7H6/CD3結合タンパク質でT細胞を染色した。PEをコンジュゲートされた抗ヒト二次抗体(Sigma-Aldrich、#P8047)で、結合した分子を検出した。図7は、ヒトT細胞への例示的なB7H6/CD3結合タンパク質(それぞれ、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6/CD3結合タンパク質、及び配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質)の結合を示す。
【0308】
実施例10:結合選択性
B7H6陰性及びCD3陰性CHO-K1細胞へのB7H6/CD3結合タンパク質の結合を、フローサイトメトリー分析によって試験した。実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。FACS緩衝液(PBS/0.5%BSA/0.05%アジ化ナトリウム)中の漸増濃度の2段階精製されたB7H6/CD3結合タンパク質でCHO-K1細胞を染色した。PEをコンジュゲートされた抗ヒト二次抗体(Sigma-Aldrich、#P8047)で、結合した分子を検出した。図8は、CHO-K1細胞への例示的なB7H6/CD3結合タンパク質(それぞれ、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6/CD3結合タンパク質、及び配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質)の結合を示す。
【0309】
実施例11:B7H6依存性NK細胞活性の阻害
細胞表面に発現されたB7H6は、NK細胞上のNKp30に結合し、これがNK細胞のNKp30媒介性活性化、並びにNK細胞の細胞傷害性及びサイトカイン分泌の引き金を引く(Brandt et al,J.Exp.Med.2009;206(7):1495-1503)。NK細胞のB7H6依存性活性化を評価するために、96ウェル平底細胞培養プレートを100nM組換えヒトB7H6タンパク質(R&DSystems#7144-B7-050)で4℃にて一晩コーティングした。翌日、プレートをPBSで洗浄し、続いて漸増濃度のB7H6/CD3結合タンパク質又は組換えNKp30タンパク質(R&DSystems#1849-NK-025)を添加し、室温で1時間インキュベートした。実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。追加の洗浄工程の後、培地 100μl(12.5%ウシ胎児血清、12.5%ウマ血清、0.2mM D-Myo-イノシトール、0.02mM葉酸及び0.1mM β-メルカプトエタノールを含有するMEMα)中の10万個のNK92MI(ATCC)細胞をウェルあたり添加し、24時間インキュベートした。翌日、V-PLEX Human IFN-y Kit(Meso Scal Discovery)を用いてIFNγ濃度を定量した。図9A+Bは、B7H6/CD3結合タンパク質(配列番号:217、配列番号:218、配列番号:219、配列番号:220、配列番号:221、配列番号:222、配列番号:223、配列番号:224、配列番号:225、配列番号:226、配列番号:227、配列番号:228、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:235、配列番号:236のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6/CD3結合タンパク質)がNK-92MIによるIFNγ分泌のB7-H6依存的誘導を阻害する能力を示す。
【0310】
NKp30相互作用部位がアラニンで置換されたAla変異B7H6細胞外タンパク質に結合しないか、又は弱く結合するに過ぎないB7H6結合タンパク質(配列番号:222、配列番号:223、配列番号:224、配列番号:225、配列番号:226、配列番号:227のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含むB7-H6/CD3結合タンパク質)(図4、実施例6に示されているとおり)は、NK-92MI細胞によるIFNγ分泌のB7-H6依存的誘導を阻害するのに対して、野生型タンパク質と同等のAla変異B7H6細胞外タンパク質への強い結合を示す結合タンパク質(配列番号:217、配列番号:218、配列番号:219、配列番号:220、配列番号:221、配列番号:228、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:235、配列番号:236のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含むB7-H6/CD3結合タンパク質)(図4、実施例6に示されているとおり)は、NK-92MI細胞によるIFNγ分泌のB7-H6依存的誘導に影響を及ぼさない。
【0311】
実施例12:ヒトHCT-15細胞に対するT細胞リダイレクト性溶解能
細胞溶解に対する計測情報として乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出を使用して、HCT-15細胞に対する非刺激T細胞の効力を決定した。このアッセイでは、エフェクター細胞としてのヒトT細胞及び漸増濃度のB7H6/CD3結合タンパク質とともに、10:1のエフェクター対標的細胞比で、B7H6陽性CRC細胞株であるHCT-15を72時間共培養した。実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。実施例9に記載されているように、精製されたT細胞を単離した。その後、0.00001nM~10nMの濃度のB7H6/CD3結合タンパク質とともに、1:10の比でのHCT-15細胞及びT細胞を72時間インキュベートした。
【0312】
製造業者の説明書に従って、Cytotoxicity Detection KitPLUS(Roche)を使用して細胞傷害活性を決定した。簡潔に言えば、この方法は、死細胞又は細胞膜が損傷した細胞からのLDHの放出の使用に基づいている。キットからの反応混合物とともに細胞培養上清を30分間インキュベートし、細胞溶解の代用として、LDH活性の結果としてのホルマザンの形成を500nmで分光光度計において測定する。以下の式に従って、最大溶解対照に対する細胞傷害性の百分率を計算した:
【数1】

バックグラウンド:標的細胞+エフェクター細胞
最大溶解:標的細胞+5%Triton X-100
最小溶解:標的細胞
【0313】
GraphPad(登録商標)Prism(登録商標)5.0ソフトウェア(GraphPad Software、Inc)を使用して、対応するB7H6/CD3結合タンパク質濃度に対して、最大溶解対照に対する細胞傷害性の百分率をプロットした。S字形用量反応曲線を評価するための4パラメータロジスティック方程式モデルを用いて用量反応曲線を分析し、EC50値を計算した。
【0314】
図10A+B及び11A+Bは、例示的なB7H6/CD3結合タンパク質(それぞれ、配列番号:217、配列番号:218、配列番号:219、配列番号:220、配列番号:221、配列番号:222、配列番号:223、配列番号:224、配列番号:225、配列番号:226、配列番号:227、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖と、配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6/CD3結合タンパク質、及び配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質)によって媒介されるHCT-15細胞に対するT細胞のリダイレクト性溶解能の例を示す。
【0315】
図10及び11は、NKp30相互作用部位がアラニンで置換された組換えAla変異B7H6細胞外タンパク質に、wtタンパク質と同等に結合し、NK92MI細胞によるIFNγのB7-H6依存性分泌を阻害しないB7H6結合タンパク質(それぞれ、配列番号:217、配列番号:218、配列番号:219、配列番号:220、配列番号:221、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6/CD3結合タンパク質、及び配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質)(実施例6、11に示されているとおり)が、組換えAla変異B7H6細胞外タンパク質に結合しないか、又は弱く結合するに過ぎず、NK92MI細胞によるIFNγのB7-H6依存性分泌を阻害するB7H6/CD3結合タンパク質(配列番号:217、配列番号:218、配列番号:219、配列番号:220又は配列番号:221のB7H6鎖、及び配列番号:CD3#1のCD3鎖を含むB7-H6/CD3結合タンパク質)(実施例6、11に示されているとおり)より低いEC50値(表4A+B)を示すことを示す。したがって、B7H6依存性NK細胞活性化を阻害しない結合タンパク質は、驚くべきことに、B7H6依存性NK細胞活性化を阻害する結合タンパク質と比較して、有意により高いT細胞媒介性腫瘍細胞溶解を示す。
【0316】
例示的なB7H6/CD3結合タンパク質を用いて図12に示されているように、活性は、低いエフェクター対標的細胞比を必要とするに過ぎない。
【0317】
【表5】
【0318】
【表6】
【0319】
実施例13:T細胞リダイレクト性溶解の交差反応性及び選択性
実施例12に記載されているように、細胞溶解に対する計測情報として乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出を使用して、HCT-15細胞に対する非刺激T細胞の効力を決定した。実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。実施例5に記載されているように、組換えカニクイザルB7H6発現細胞株を作製した。
【0320】
図13は、それぞれ、例示的なB7H6/CD3結合タンパク質、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖及び配列番号:311のCD3鎖、並びに配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質)によって媒介されるcynoB7H6発現細胞(図13A)及びB7H6陰性親CHO-K1細胞(図13B)のT細胞リダイレクト性溶解能の例を示す。
【0321】
実施例14:T細胞の活性化の選択性
T細胞の活性化を決定するために、非刺激T細胞及び標的細胞としてのB7H6陽性HCT-15細胞を用いた細胞傷害性アッセイを実施例12に記載されているように準備した。実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。T細胞活性化を決定するために、細胞を遠心分離し、CD4(BD#550630)、CD8(BD#557834)及びCD25(BD#340907)に対する抗体で染色し、フローサイトメトリーによって測定した。図14は、配列番号:228、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:235又は配列番号:236のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含む例示的なB7H6/CD3結合タンパク質によって媒介される、B7H6陽性HCT-15細胞の存在下及び非存在下でのCD4+(図14A)及びCD8+(図14B)細胞の活性化能の例を示す。
【0322】
実施例15:T細胞の脱顆粒の選択性
パーフォリン及びグランザイムBの細胞内発現を介したT細胞の脱顆粒を決定するために、非刺激T細胞及び標的細胞としてのB7H6陽性HCT-15細胞を用いた細胞傷害性アッセイを実施例12に記載されているように準備した。実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。グランザイムB及びパーフォリンの細胞内レベルを決定するために、細胞を遠心分離し、CD4(BD#550630)、CD8(BD#557834)に対する抗体で染色し、その後、Fixation/Permeabilization Solution(BD#554714)を用いて細胞を透過処理し、パーフォリン(BioLegend#308120)及びグランザイムB(BD#560221)に対する抗体で染色し、フローサイトメトリーによって測定した。図15は、CD4図15A)及びCD8図15B)細胞における細胞内パーフォリン発現の上方制御能の例を示し、図16は、配列番号:228、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:235又は配列番号:236のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含む例示的なB7H6/CD3結合タンパク質によって媒介される、B7H6陽性HCT-15細胞の存在下及び非存在下でのCD4図16A)及びCD8図16B)細胞における細胞内グランザイムB発現の上方制御を示す。
【0323】
実施例16:T細胞増殖の誘導
非刺激T細胞及び標的細胞としてのB7H6陽性HCT-15細胞を用いた細胞傷害性アッセイを実施例12に記載されているように準備した。実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。T細胞の増殖を決定するために、5μM Cell Trace(商標)CFSE(Invitrogen、C34554)でPBMCを標識し、抗CD3抗体(BioLegendカタログ番号:317336)でT細胞を染色した。その後、10:1の比でのHCT-15細胞及び漸増濃度のB7H6/CD3結合タンパク質とともに、標識されたPBMCを6日間インキュベートした。図17は、B7H6陽性HCT-15細胞の存在下での、配列番号:228、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:235又は配列番号:236のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含む例示的なB7H6/CD3結合タンパク質によるB7H6結合タンパク質によるT細胞の増殖の用量依存的誘導を示す。
【0324】
実施例17:IFNγ分泌の選択性
非刺激T細胞及び標的細胞としてのB7H6陽性HCT-15細胞を用いた細胞傷害性アッセイを実施例12に記載されているように準備した。実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。V-Plex Human IFN-γ Kit(MSD、CAT:K151QOD-4)によって、上清中のサイトカインレベルを測定した。図18は、配列番号:228、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:235又は配列番号:236のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含む5つの例示的なB7H6/CD3結合タンパク質によって誘導されるIFNγの分泌を示す。
【0325】
実施例18:マウスPK
実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。
【0326】
1mg/kgの単回静脈内投与後に、C57BL/6マウスにおいてB7H6/CD3結合タンパク質のPKを評価した。B7H6捕捉/CD3検出アッセイを使用して、B7H6/CD3結合タンパク質の血清濃度を決定した。
【0327】
簡単に記載すると、雄のC57BL/6マウスに、1mg/kgの静脈内(IV)単回投与を与えた(n=3/分子)。投与前並びに投与後0.25、2、6、24、48、96、168、240及び336時間に血液試料を収集した。捕捉試薬としてビオチン化されたB7H6及び検出試薬としてスルホタグ付加CD3εを使用して、MSDベースのリガンド結合アッセイによって血清薬物レベルを測定した。非コンパートメント分析を使用して、血清濃度時間プロファイルから薬物動態(PK)パラメータを計算した。以下のPKパラメータを評価した:AUCtlast(時間0から最後の定量可能な時点までの血清濃度-時間曲線下面積)、AUCinf(無限大まで外挿された血清濃度-時間曲線下面積)、CL(全身クリアランス)、Vss(分布の定常状態体積)及びT1/2(最終半減期)。
【0328】
例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の平均(SD)血清濃度時間プロファイルを図19に要約する。これらの例示的なBH6/CD3結合タンパク質の平均(SD)PKパラメータを表5に要約する。
【表7】
【0329】
実施例18A:マウスPK
実施例18に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質のPKを評価した。配列番号:228、配列番号:230、配列番号:231又は配列番号:232のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含む4つの例示的なB7H6/CD3結合タンパク質の平均(SD)血清濃度時間プロファイルを図22に要約する。
【0330】
実施例19:インビボ有効性
ヒトT細胞で再構成されたヒト異種移植マウスモデルを用いて有効性研究を行った。詳細には、致死量以下で照射された(2Gy、-1日目)雌NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Sug/JicTacマウスの右背側腹部にヒトNCI-H716結腸直腸癌細胞(2.5×10個)を皮下(s.c.)注射した(-16日目)。並行して、(健康なヒト血液ドナーから単離された)ヒトCD3陽性T細胞をインビトロで増殖させた。
【0331】
実施例9に記載されているように、ヒト末梢血単核球(PBMC)を調製した。
【0332】
Pan T Cell Isolation Kit II(Miltenyi Biotec#130-096-535)を使用するネガティブ選択によって、T細胞を単離した。簡単に記載すると、10×10細胞あたり緩衝液PBS 40μl/0.5%BSA(Gibco参照番号041-94553M)/2mM EDTA(Invitrogen参照番号15575-038)中に細胞を再懸濁し、10×10細胞あたりBiotin-Antibodyカクテル 10μlとともに4℃で5分間インキュベートした。その後、緩衝液 30μl及び抗ビオチンMACS(登録商標)MicroBeads 20μl/10×10細胞を添加し、4℃で10分間インキュベートした。その後、適切なMACS(登録商標)マイクロビーズセパレータ(Miltenyi Biotec)の磁場中で予め濯がれた25LSカラム(Miltenyi Biotec#130-042-401)中に混合物を入れた。フロースルーを収集し、アッセイ培地で洗浄した。
【0333】
その後、T Cell Activation/Expansion Kit human(Miltenyi Biotecカタログ番号130-091-441)を用いてT細胞を17日間増殖させた。簡単に記載すると、抗ビオチンMACSiBead(商標)ParticlesにCD2-、CD3-、CD28ビオチンを搭載し、1粒子あたり2細胞の比で精製されたT細胞に移し、組換えIL-2(R&D#202-IL-050/CF)20単位の存在下で、0.5~10細胞/mlの密度で14日間インキュベートする。3日ごとに、新鮮なIL-2 20単位を細胞に補充した。動物への注射の3日前に、さらに3日間、4細胞あたり1ビーズの比で、CD2-、CD3-、CD28ビオチンを搭載された抗ビオチンMACSiBead(商標)ParticlesでT細胞を再刺激した。最後に、MACSiMAG(商標)Separator(Miltenyi Biotec)でビーズを除去し、T細胞をPBSで洗浄した。
【0334】
-2日目に、腫瘍体積に基づいて動物を無作為に処置群に割り当て、2×10個のヒトT細胞を腹腔内(i.p.)に注射した。実施例2に記載されているように、B7H6/CD3結合タンパク質を作製した。1日目に処置を開始し、B7H6/CD3結合タンパク質又はビヒクル緩衝液(50mM NaOAc、100mM NaCl、pH5.0)を、q7d投薬レジメンで、外側尾静脈中への静脈内(i.v.)ボーラス注射によって投与した。外部キャリパー測定によって腫瘍成長をモニターし、標準半楕円体式を使用して腫瘍体積を計算した。屠殺基準に達した動物は、倫理的理由から研究中早期に安楽死させた。0.05mg/kgで週に一回、i.v.でのB7H6/CD3結合タンパク質による担腫瘍マウスの処置は、著しく腫瘍退縮を誘導した(図20)。
【0335】
実施例19A:インビボ有効性
実施例19に記載されているように、ヒトCD3T細胞で再構成されたヒトNCI-H716異種移植マウスモデルを使用して有効性研究を行った。週に1回、静脈内に0.05mg/kgで、配列番号:228、配列番号:230、配列番号:231又は配列番号:232のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6/CD3結合タンパク質で腫瘍担持マウスを処置すると、著しい腫瘍退縮が誘導された(図23)。
【0336】
実施例19B:インビボ有効性
実施例19に記載されているように、ヒトCD3T細胞で再構成されたヒトNCI-H716異種移植マウスモデルを使用して有効性研究を行った。0.05mg/kgで週に1回又は単回投与として静脈内に投与された例示的なB7H6/CD3結合タンパク質による腫瘍担持マウスの処置は、著しい腫瘍退縮を誘導した(図24)。
【0337】
実施例20:B7H6/CD3結合タンパク質のパーセントモノマー含有量
分析サイズ排除クロマトグラフィー(aSEC)によって、B7H6/CD3結合タンパク質(それぞれ、配列番号:217、配列番号:218、配列番号:219、配列番号:220、配列番号:221、配列番号:222、配列番号:223、配列番号:224、配列番号:225、配列番号:225、配列番号:227、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖と、配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6/CD3結合タンパク質、及び配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質)についてパーセントモノマーを決定した(表6に示す)。aSECは、Protein BEH SECカラム200Å、1.7μm、4.6×150mm(カタログ番号186005225)を使用して、Waters(登録商標)(Milfrod、MA、USA)Acquity UPLC(登録商標)システムで実行した。実行条件は以下のとおりであった:移動相:50mMリン酸ナトリウム、200mMアルギニン及び0.05%アジ化ナトリウム;流速:0.5ml/分;実行時間:5分;試料搭載量:10μg;ピーク検出:A280nm;クロマトグラムの自動化された処理方法。
【表8】

【0338】
実施例21:熱安定性
熱シフト分析(TSA)によって熱安定性を決定し、B7H6/CD3結合タンパク質(それぞれ、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質、及び配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質)の第1の融解転移(Tm1)の結果が表7に示されている。外因性フルオロフォアとしてSYPRO(登録商標)Orangeタンパク質ゲル染色(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いるQuantStudio(商標)6FlexリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems、Waltham、MA)を使用して、温度の関数としての蛍光強度プロファイルを取得した。40mM塩化ナトリウム及び0.02%アジ化ナトリウムを加えた10mMヒスチジン、pH6.0で試料を0.4mg/mlに希釈した。25℃から95℃まで2℃/分の速度での熱勾配で融解曲線を作成し、データは「ROX」フィルターセットを通して約0.4℃ごとに収集された(励起:580±10nm、発光:623±14nm)。Protein Thermal Shift(商標)Software Version v1.3(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)を用いてデータを分析した。
【表9】
【0339】
実施例22:Epivaxによるインシリコでの予測免疫原性スコア
数学的アルゴリズムを用いて、配列の免疫原性をインシリコで評価した。具体的には、B7H6鎖(配列番号:217、配列番号:218、配列番号:219、配列番号:220、配列番号:221、配列番号:222、配列番号:223、配列番号:224、配列番号:225、配列番号:225、配列番号:227、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖)に対して、及びCD3鎖(配列番号:311、配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖)に対して、免疫原性スコアの尺度としてEpiMatrix(登録商標)Treg-adjusted Score(EpiVax Inc.,Providence RI))を決定し、様々なFc配列のスコアと比較した。これらのスコアは、T細胞エピトープ及びTregエピトープを考慮に入れている。免疫原性スコアが低いほど、配列が免疫原性である可能性はより低い。一般に、負のスコアは免疫原性のリスクが低いと考えられ、一方、高い正のスコアは潜在的な免疫原性の指標と見なされる。以下の表8及び9に示されているように、本明細書に記載されている例示的なB7H6/CD3結合タンパク質は極めて低い免疫原性スコアを有し、これらの結合タンパク質については免疫原性であるリスクが低いことを示している。
【表10】

【表11】
【0340】
実施例23:表面への非特異的結合
高度に帯電したタンパク質を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)ベースのアッセイで、本発明のB7H6/CD3結合タンパク質の特異性をさらに試験した。結合タンパク質が無関係な帯電したタンパク質に著しい結合を有するかどうかを決定するために、バイオセンサー技術を使用して非特異的結合アッセイを開発した。このアッセイでは、2つのSPR表面、負に帯電したタンパク質(トリプシン阻害剤)でコーティングされたSPR表面及び正に帯電したタンパク質(リゾチーム)でコーティングされたSPR表面上にB7H6/CD3結合タンパク質を通した。タンパク質がこれらの表面への著しい非特異的結合を示す場合、結合の原因は、候補上の正又は負の帯電した表面パッチの存在である可能性が高い。タンパク質の非特異的結合は、不良な薬物動態(PK)及び生体内分布につながることがあり得、下流の製造可能性にも影響を及ぼし得る。
【0341】
実験は、Biacore(登録商標)T200SPRシステム(GE Healthcare Life Sciences)で行った。希釈、表面調製及び結合実験は、10×HBS-EPから調製された1×HBS-EP緩衝液中にて、25℃で行った。固定化プロトコル及び結合実験の両方の流速は5μL/分であった。
【0342】
非特異的結合実験のための表面を調製するために、製造説明書に従ってアミンカップリングキットを使用して、3000~5000RUの表面密度を有するBiacore(登録商標)シリーズS CM5センサーチップ(GE Healthcare sciences)に、手作業で、ニワトリ卵白リゾチーム及びグリシン・マックス大豆由来のトリプシン阻害剤をカップリングさせた。
【0343】
1×HBS-EP緩衝液中に1μMで試料を調製した。10分間会合及び15分間解離させて、活性化された表面上に、試料を注入した。Biacore(登録商標)T200 Control Softwareバージョン2.0.1を用いてデータを収集し、Biacore(登録商標)T200 Evaluation Softwareバージョン3.0(GE Healthcare Life Sciences)を用いて分析した。
【0344】
表10は、例示的なB7H6/CD3結合タンパク質(それぞれ、配列番号:228、配列番号:229、配列番号:230、配列番号:231、配列番号:232、配列番号:233、配列番号:234、配列番号:235、配列番号:236、配列番号:237、配列番号:238、配列番号:239又は配列番号:240のB7H6鎖と配列番号:311のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質、及び配列番号:230又は配列番号:239のB7H6鎖と配列番号:312、配列番号:313、配列番号:314、配列番号:315又は配列番号:316のCD3鎖とを含むB7H6結合タンパク質)の、2つの高度に帯電したタンパク質であるトリプシン阻害剤及びリゾチームへの結合を示さないか、又は極めて低い結合を示す。
【表12】

【0345】
実施例24:例示的なB7H6/CD3結合タンパク質によるSHP77異種移植腫瘍組織におけるT細胞浸潤。
実施例19に記載される研究におけるマウス由来の残りの腫瘍組織を調製し、ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋した。その後、組織切片を調製し、T細胞上のCD3発現について染色した(抗CD3(2GV6)、Ventana Medical Systems)。例示的なB7H6/CD3結合タンパク質を有するNCI-H716異種移植腫瘍組織におけるT細胞浸潤を図21に示す。表11のスコアリングを使用して、異種移植腫瘍組織におけるCD3発現を定量した。
【表13】
【0346】
実施例25:i.v.投与のための医薬製剤
本発明の上記結合タンパク質/分子のいずれも、i.v.適用のための医薬製剤の製造のために選択することができる。本発明の抗体についての適切な医薬製剤の例は以下のとおりである。
【0347】
10mLバイアルは、ヒスチジン、トレハロース、ポリソルベート20及び注射用水を含む緩衝液中に、10mg/mLの本発明のB7H6/CD3結合分子/タンパク質を含有する。
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【配列表】
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