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  • 特許-粉体化粧料及び化粧料組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】粉体化粧料及び化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20231120BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231120BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20231120BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/02
A61K8/64
A61Q1/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022550448
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2021032136
(87)【国際公開番号】W WO2022059486
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020154913
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 朗理
(72)【発明者】
【氏名】吉村 正史
(72)【発明者】
【氏名】小川 毅
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-537116(JP,A)
【文献】特開2006-265214(JP,A)
【文献】特開2020-147525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C09C3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉体と、
前記無機粉体の表面の一部又は全部を被覆するポリアスパラギン酸アルカリ金属塩と、を含み、
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが1,000~150,000であり、
かつ、前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが、下記式(1)及び式(2)を満た
前記無機粉体は、タルク、マイカ、及びセリサイトからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、
粉体化粧料。
y ≦ 1.6×10-2.275 式(1)
y ≧ 1.3×10-2.232 式(2)
【請求項2】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが、さらに下記式(3)を満たす、請求項1に記載の粉体化粧料。
y ≦ 1.0×10-2.275 式(3)
【請求項3】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが、さらに下記式(4)を満たす、請求項1に記載の粉体化粧料。
y ≦ 8.0×10-2.275 式(4)
【請求項4】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが、さらに下記式(5)を満たす、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の粉体化粧料。
y ≧ 1.5×10-2.232 式(5)
【請求項5】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが、8,000~120,000である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の粉体化粧料。
【請求項6】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩が、ポリアスパラギン酸リチウム、ポリアスパラギン酸カリウム、及びポリアスパラギン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の粉体化粧料。
【請求項7】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩が、少なくともポリアスパラギン酸ナトリウムを含有する、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の粉体化粧料。
【請求項8】
前記無機粉体の平均粒径(D50)が1μm~100μmである、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の粉体化粧料。
【請求項9】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の粉体化粧料と、水及び油剤から選択される少なくとも1種とを含む化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉体化粧料及び化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体(パウダー)化粧料は、粉体の光学的特性により、好ましい美観等の特性を与えるものである。従来から、粉体の成分又は配合量等を改良することで、より使用感の良い粉体化粧料が開発されている。
【0003】
例えば、特開2006-265214号公報は、(a)特定の異形複合粉体、及び(b)アミノ酸、ポリアミノ酸、これらの誘導体又は塩から選ばれる一種又は二種以上の水溶性成分、を配合された粉体化粧料が記載されている。それにより、粉体化粧料は、化粧料塗布時の滑らかな伸び広がり、肌への付着力及び保湿感、並びに皮膚の凹凸を目立たなくする効果に優れることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特開2006-265214号公報は、複数の略球状粒子が凝集合一し、表面に複数の凹凸を有する形状の異形複合粉体を用いることを前提とするものである。上記特開2006-265214号公報における、化粧料塗布時の滑らかな伸び広がり、肌への付着力及び保湿感、並びに皮膚の凹凸を目立たなくするという効果の確認方法は、パネラーによる官能評価によって行われているのみである。つまり当該効果は客観的指標によって確認されたものではない。さらに、上記特開2006-265214号公報においては、化粧料を重ね塗りした場合の影響(重ね塗り時の抵抗感、化粧ヨレの発生など)については何ら記載もされておらず、また、依然として化粧料の肌に対する滑らかな伸び広がりも十分には得られない場合があることが明らかとなった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みなされたものであり、本開示の一態様は、粉体化粧料の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい粉体化粧料を提供することを課題とする。さらには、本開示の他の一態様は、化粧料組成物の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい化粧料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 無機粉体と、
前記無機粉体の表面の一部又は全部を被覆するポリアスパラギン酸アルカリ金属塩と、を含み、
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが1,000~150,000であり、
かつ、前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが、下記式(1)及び式(2)を満たす、
粉体化粧料。
y ≦ 1.6×10-2.275 式(1)
y ≧ 1.3×10-2.232 式(2)
<2> 前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが、さらに下記式(3)を満たす、前記<1>に記載の粉体化粧料。
y ≦ 1.0×10-2.275 式(3)
<3> 前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが、さらに下記式(4)を満たす、前記<1>に記載の粉体化粧料。
y ≦ 8.0×10-2.275 式(4)
<4> 前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが、さらに下記式(5)を満たす、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の粉体化粧料。
y ≧ 1.5×10-2.232 式(5)
<5> 前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが、8,000~120,000である、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の粉体化粧料。
<6> 前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩が、ポリアスパラギン酸リチウム、ポリアスパラギン酸カリウム、及びポリアスパラギン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の粉体化粧料。
<7> 前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩が、少なくともポリアスパラギン酸ナトリウムを含有する、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の粉体化粧料。
<8> 前記無機粉体は、タルク、マイカ、セリサイト、及び酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の粉体化粧料。
<9> 前記無機粉体の平均粒径(D50)が1μm~100μmである、前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の粉体化粧料。
<10> 前記<1>~<9>のいずれか1つに記載の粉体化粧料と、水及び油剤から選択される少なくとも1種とを含む化粧料組成物。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、粉体化粧料の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい粉体化粧料を提供することができる。さらには、本開示の他の一態様によれば、化粧料組成物の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい化粧料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】破壊包絡線及び曲線度の求め方を説明するためのグラフである。
図2】ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量[-]及びポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比[-]に対する、曲線度の相対値の関係について示す散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、1つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
更に、本開示において粉体化粧料又は化粧料組成物等の組成物中の各成分の量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。
【0011】
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0012】
≪粉体化粧料≫
本開示の粉体化粧料は、無機粉体と、前記無機粉体の表面の一部又は全部を被覆するポリアスパラギン酸アルカリ金属塩と、を含み、前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが1,000~150,000であり、かつ、前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが、下記式(1)及び式(2)を満たす、粉体化粧料である。
y ≦ 1.6×10-2.275 式(1)
y ≧ 1.3×10-2.232 式(2)
【0013】
本開示の粉体化粧料は、粉体化粧料の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい。
【0014】
本開示に係る粉体化粧料の作用は明確ではないが、以下のように推定される。
【0015】
本開示において、粉体化粧料の重ね塗り時における粉体化粧料の評価は、粉体層せん断力測定を利用する。粉体層せん断力測定では、セルに充填された粉体に対して垂直方向及び水平方向に負荷をかけて、垂直応力σ及びせん断応力τが定常状態となった後に、垂直応力σを減衰させることで、垂直応力σに対するせん断応力τの関係を表す破壊包絡線を得る(図1)。このような、荷重をかけながらせん断される時の粉体層の状況は、粉体化粧料が付着している肌に対して、粉体化粧料を付着させた化粧道具で、さらに粉体化粧料を重ね塗り(例えば、化粧直し、しみ隠し、又は汚れ隠し)する時の粉体層の状況と類似している。よって、本開示において、粉体化粧料を重ね塗りした場合の使用感の評価方法を、粉体層せん断力測定を利用した評価方法とすることで、客観的な評価を行う。
なお粉体化粧料の重ね塗り時に本願効果が最も奏されるが、前記重ね塗りでない場合にも当然に同様の効果が期待される。つまり、本願効果が奏されるのは、本開示に係る粉体化粧料に対して本開示に係る粉体化粧料を重ね塗りする場合に限らず、地肌に対して本開示に係る粉体化粧料を塗布する場合、地肌に塗布した下地(液状、クリーム状等)に対して本開示に係る粉体化粧料を塗布する場合、又は本開示に係る粉体化粧料上に塗布したチーク、コンシーラー等(液体、粉状等)に対して本開示に係る粉体化粧料を塗布する場合であっても、本願効果(すなわち、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい粉体化粧料を提供すること)が奏される。
【0016】
なお本開示において、粉体化粧料又は化粧料組成物等の「使用感」とは、粉体化粧料の重ね塗り時において、又は、粉体化粧料を単に塗る時等において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい、という感覚を含む。本開示では、伸び広がり又は化粧ヨレに直接言及するために、伸び広がり又は化粧ヨレを、使用感と並列して記載する場合もある。また本開示において、粉体化粧料又は化粧料組成物の、肌なじみ、潤い感、滑らかさ等の、使用者が感じる感覚も、粉体化粧料又は化粧料組成物等の「使用感」の一種である。なお化粧ヨレとは、肌に付着していた粉体層が動くことであって、例えば、ファンデーションヨレをいう。
【0017】
図1に示したように、前記粉体層せん断力測定によって得られた破壊包絡線から、曲線度を得ることができる。曲線度は、曲線度=[破壊包絡線の下部の直線の傾き]/[破壊包絡線の上部の直線の傾き]、の式より算出する。なお、破壊包絡線の下部の直線の傾きとは、垂直応力σ及びせん断応力τが定常状態となったときの垂直応力σを100%とした場合に、垂直応力σの値が0%~30%であるときの破壊包絡線の直線(すなわち垂直応力σの値が0%のときのプロットと30%のときのプロットとを繋げた直線)の傾きを示す。破壊包絡線の上部の直線の傾きとは、垂直応力σ及びせん断応力τが定常状態となったときの垂直応力σを100%とした場合に、垂直応力σの値が70%~100%であるときの破壊包絡線の直線(すなわち垂直応力σの値が70%のときのプロットと100%のときのプロットとを繋げた直線)の傾きを示す。前記曲線度は、粉体の滑り性と相関する。曲線度の数値が高いほど、せん断付着応力が高く、粉体の滑り性が低く、つまり粉体化粧料の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有さず、かつ化粧ヨレが生じやすいという問題が起こりやすい。一方で、曲線度の数値が低いほど、せん断付着応力が低く、粉体の滑り性が高く、つまり粉体化粧料の重ね塗り時において前記した問題は起こりにくい。なお「せん断応力τ」とは、粉体層内部のある断面に対して平行であり、互いに反対向きの一対の力を断面の上下の層に作用させ、その面に沿って粉体層を滑らせてせん断動作をする際に必要となる応力を示す。すなわち、せん断応力τは、粉体層内部のある面と並行方向に、その面で上下の粉体層を滑らせようとする応力である。「せん断付着応力」とは、破壊包絡線を最小二乗法で直線にて近似し、その直線がせん断応力τの軸に交差する切片と等しい応力である。すなわち、せん断付着応力は、近似式の垂直応力σが0に達した時のせん断応力τの外挿値を示す。せん断応力τ及びせん断付着応力は、圧密された粉体間の付着力の指標として用いられる。
【0018】
本開示に係る粉体化粧料は、無機粉体と、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩とを含む。ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩は、無機粉体間(すなわち無機粉体の粒子と粒子とが互いに近接したときの、両粒子の表面上)に存在することで、無機粉体同士の摩擦力を低下させ、粉体化粧料の滑り性を向上させることができる。本開示に係る、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが満たす前記式(1)及び式(2)の意義は、以下のように推定される。
【0019】
本開示に係る粉体化粧料において、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが過大であると、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩間(すなわちポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の分子と分子との間)の相互作用が強く、粘度増加が顕著となり、ハンドリング等の製造適性を損なう。さらには、以下の問題が生じやすくなることもある。なおこの時、粉体化粧料の曲線度の数値は高くなる。
(1a)粉体化粧料の粉体層間における摩擦が大きく、滑り性が低い。
(1b)粉体化粧料の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有さず、かつ化粧ヨレが生じやすい。
【0020】
また、本開示に係る粉体化粧料において、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが過大であると、以下の問題が生じる。なおこの時、粉体化粧料の曲線度の数値は高くなる。
(2a)無機粉体間に存在するポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の量が多いため、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩間の相互作用が強い。
(2b)ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩水溶液を含む粉体化粧料の粘度増加が顕著である。
(2c)粉体化粧料の粉体層間における摩擦が大きく、滑り性が低い。
(2d)粉体化粧料の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有さず、かつ化粧ヨレが生じやすい。
【0021】
上記のことから、粉体化粧料において、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが過大であり、かつ無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが過大であると、粉体化粧料の曲線度の数値はより高くなり、上記した問題はより発生しやすい。
【0022】
一方で、本開示に係る粉体化粧料において、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが過小であると、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩間の相互作用が弱く、ハンドリング等の製造適性を損なう。さらには、以下の問題が生じやすくなることもある。なおこの時も、粉体化粧料の曲線度の数値は高くなる。
(3a)ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩による粉体化粧料の粉体層間における摩擦が大きく、滑り性向上効果を十分に発揮できない。
(3b)粉体化粧料の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有さず、かつ化粧ヨレが生じやすい。
【0023】
また、本開示に係る粉体化粧料において、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが過小であると、以下の問題が生じる。なおこの時も、粉体化粧料の曲線度の数値は高くなる。
(4a)無機粉体間に存在するポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の量が少ないため、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩間の相互作用が弱い。
(4b)無機粉体の局所にポリアスパラギン酸アルカリ金属塩が存在することで、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩による粉体化粧料の均一な流動が阻害され、粉体層間における摩擦が大きく、滑り性向上効果を十分に発揮できない。
(4c)粉体化粧料の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有さず、かつ化粧ヨレが生じやすい。
【0024】
上記のことから、粉体化粧料において、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが過小であり、かつ無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが過小であると、やはり粉体化粧料の曲線度の数値はより高くなり、上記した問題はより発生しやすい。
【0025】
以上の理由から、粉体化粧料において、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが満たす前記式(1)及び式(2)が求められた。なお本開示において、前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが過大であるとは、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量が150,000を超えることをいう。前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが過小であるとは、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量が1,000未満であることをいう。
【0026】
上記のとおり、前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが満たす、式(1)「y ≦ 1.6×10-2.275」及び式(2)「y ≧ 1.3×10-2.232」中の係数は、経験により導かれた数値である。
【0027】
なお本開示に係る粉体化粧料において、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比の値は、比較的小さい値になるよう制御されている。そのため、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩は無機粉体の粒子の表面の一部又は全部を被覆するものの、その被覆量は比較的小さく抑えられている。よって、本開示に係る粉体化粧料において、親水性であるポリアスパラギン酸アルカリ金属塩に起因する過度な粘度増加が抑制されている。
【0028】
なお本開示において、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比は、単に、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比とも称する。
【0029】
本開示に係る、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比の値は無次元であるため、単位を有さない。
【0030】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yに関して、y ≦ 1.6×10-2.275(式(1))及びy ≧ 1.3×10-2.232(式(2))並びに前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xは1,000~150,000、である範囲で囲まれた領域において、本開示の粉体化粧料は効果を奏する。
なお、前記範囲は、図2のグラフエリア内における、太枠の四辺形で示された範囲に相当する。
【0031】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yに関して、y ≦ 1.0×10-2.275(式(3))及びy ≧ 1.3×10-2.232(式(2))並びに前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xは1,000~150,000、である範囲で囲まれた領域において、本開示の粉体化粧料は、より効果を奏する。
【0032】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yに関して、y ≦ 8.0×10-2.275(式(4))及びy ≧ 1.3×10-2.232(式(2))並びに前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xは1,000~150,000、である範囲で囲まれた領域において、本開示の粉体化粧料は、より効果を奏する。
【0033】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yに関して、y ≦ 1.6×10-2.275(式(1))及びy ≧ 1.5×10-2.232(式(5))並びに前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xは1,000~150,000、である範囲で囲まれた領域において、本開示の粉体化粧料は、より効果を奏する。
【0034】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yに関して、y ≦ 1.0×10-2.275(式(3))及びy ≧ 1.5×10-2.232(式(5))並びに前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xは1,000~150,000、である範囲で囲まれた領域において、本開示の粉体化粧料は、より効果を奏する。
【0035】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yに関して、y ≦ 8.0×10-2.275(式(4))及びy ≧ 1.5×10-2.232(式(5))並びに前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xは1,000~150,000、である範囲で囲まれた領域において、本開示の粉体化粧料は、より効果を奏する。
【0036】
なお、粉体の滑り性を高くする観点、及び後述する製造時のハンドリング等の観点から、上記した式を満たし、かつ前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xは8,000~120,000である範囲で囲まれた領域において、本開示の粉体化粧料は、より効果を奏する。
【0037】
さらには、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレを生じにくくする観点から、y ≦ 5.0×10-2.275及び上記式(2)若しくは式(5)並びに上記した前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xの範囲で囲まれた領域において、本開示の粉体化粧料は、より効果を奏する。
【0038】
さらには、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレを生じにくくする観点から、上記式(1)、式(3)、もしくは式(4)、及びy ≧ 2.5×10-2.232並びに上記した前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xの範囲で囲まれた領域において、本開示の粉体化粧料は、より効果を奏する。前記y ≧ 2.5×10-2.232を、y ≧ 4.0×10-2.232、y ≧ 5.0×10-2.232、又はy ≧ 9.0×10-2.232に置き換えることは、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレを生じにくくする観点から、より好ましい。
【0039】
前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが、前記範囲で囲まれた領域の値であると、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩間の相互作用を強すぎないようにし、粉体層間における摩擦を低くして粉体の滑り性を高くし、製造時のハンドリングを良好にし、本願効果をより一層得ることができる。又は、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩間の相互作用を弱すぎないようにし、粉体層間における摩擦を低くして粉体の滑り性を高くし、製造時のハンドリングを良好にし、本願効果をより一層得ることができる。
【0040】
上記したように、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xに対して、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yの好ましい範囲が存在する。ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが大きいほど、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yは小さいことが好ましい。ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xが小さいほど、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yは大きいことが好ましい。ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩は、その重量平均分子量x(又は、数平均分子量)の大小によって、ポリマーであるポリアスパラギン酸アルカリ金属塩間の相互作用の力の強さが変化する。よって、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x(又は、数平均分子量)に対して、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yの好ましい範囲が存在すると考えられる。
【0041】
なお、本開示は、上記推定機構には何ら制限されない。
【0042】
(ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩)
-ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩-
ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩は、アスパラギン酸アルカリ金属塩のアミド結合により形成されるポリマーであり、一般に以下の構造単位を複数含む構造を有している。
【0043】
【化1】
【0044】
式中、nは1以上の整数である。式中、Mはアルカリ金属を示す。Mにおけるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、又はフランシウムが含まれる。ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の主鎖中のアミド結合は、α結合でもβ結合でもかまわない。また、これら結合様式は、構造単位毎に同じでもよく、異なっていてもよい。なお、前記アミド結合は、隣接する構造単位のアミノ基が、アスパラギン酸アルカリ金属塩のα位のカルボキシル基と結合した場合がα結合であり、アスパラギン酸アルカリ金属塩のβ位のカルボキシル基と結合した場合がβ結合である。
また、構造単位の立体構造はそれぞれ独立にL型でもD型でもよく、例えば全体としてL型のポリマーであっても、D型のポリマーであっても、ラセミ体であってもよい。
【0045】
本開示に係るポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の構成は、本開示の粉体化粧料が効果を示す限り特に限定されない。本開示に係るポリアスパラギン酸アルカリ金属塩は、好ましくは、ポリアスパラギン酸リチウム、ポリアスパラギン酸カリウム及びポリアスパラギン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種のポリアスパラギン酸アルカリ金属塩を含む。本開示の一態様においては、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩を用いることにより、粉体化粧料の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい粉体化粧料を実現することが可能となった。本開示に係るポリアスパラギン酸アルカリ金属塩は、少なくともポリアスパラギン酸ナトリウムを含有することがより好ましい。
【0046】
本開示に係るポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の一例であるポリアスパラギン酸ナトリウムは、アスパラギン酸ナトリウムのアミド結合により形成されるポリマーであり、一般に以下の構造単位を複数含む構造を有している。
【0047】
【化2】
【0048】
式中、nは1以上の整数である。ポリアスパラギン酸ナトリウムの主鎖中のアミド結合は、α結合でもβ結合でもかまわない。また、これら結合様式は、構造単位毎に同じでもよく、異なっていてもよい。なお、前記アミド結合は、隣接する構造単位のアミノ基が、アスパラギン酸ナトリウムのα位のカルボキシル基と結合した場合がα結合であり、アスパラギン酸ナトリウムのβ位のカルボキシル基と結合した場合がβ結合である。
【0049】
-ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の分子量-
以下、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の分子量について、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量の多分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))の観点から詳細に説明する。
【0050】
ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量が過大である場合に生じる問題点は、上記したとおりである。ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩水溶液の粘度増加が顕著となることにより、曵糸性が発現し、粉体化粧料の製造工程における粉体混合時にハンドリングが困難になる。ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩水溶液をさらに水で希釈することで粘度を抑えることはできるが、結果的に無機粉体に対する水の添加量が多くなってしまうため、粉体混合時に粉体が吸湿し、混合槽への付着及び粉体間の凝集が発生し、均一な粉体混合が困難になる。このような粉体混合時の困難を解消するために、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩水溶液を予め濃縮し、無機粉体に対するポリアスパラギン酸アルカリ金属塩濃縮水溶液の添加量を少なくすることも考えられる。しかしながら、粉体化粧料の製造工程中に新たに濃縮工程を導入する必要があるため、製造コストが高くなってしまう。
一方で、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量が過小である場合に生じる問題点は、上記したとおりである。
以上の観点から、本開示に係るポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量は、1,000~150,000とする。
【0051】
本開示に係るポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量は、1,000~150,000である。本開示に係るポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量は、特に限定されないが、粉体の滑り性を高くする観点、及び製造時のハンドリング等の観点から、8,000~120,000が好ましく、10,000~120,000がより好ましく、10,000~100,000がさらに好ましく、16,000~60,000が特に好ましく、20,000~35,000が一層好ましく、20,000~27,000がより一層好ましい。
【0052】
本開示に係るポリアスパラギン酸アルカリ金属塩においては、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の数平均分子量は特に限定されないが、例えば、1,000~60,000としてもよい。なお粉体の滑り性を高くする観点、及び製造時のハンドリング等の観点から、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の数平均分子量は、6,000~50,000が好ましく、7,000~48,000がより好ましく、8,000~40,000がさらに好ましく、10,000~36,000が特に好ましく、12,000~20,000が一層好ましく、13,000~16,000がより一層好ましい。
【0053】
本開示に係るポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の分子量の多分散度は特に限定されないが、例えば、1.00~2.60としてもよい。ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の分子量の多分散度は、粉体の滑り性を高くする観点、及び製造時のハンドリング等の観点から、1.20~2.40であることが好ましく、1.30~1.90であることがより好ましく、1.40~1.80であることがさらに好ましく、1.50~1.75であることが特に好ましく、1.50~1.70であることが極めて好ましい。
【0054】
上記範囲内の重量平均分子量、数平均分子量及び分子量の多分散度を有するポリアスパラギン酸アルカリ金属塩は、例えば、後述のポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の製法を用いることで得ることができる。
【0055】
-ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の分子量測定方法-
なお、本開示において、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量及び数平均分子量は、それぞれ、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記GPC測定方法により測定された値を指す。
解析装置としてLC-Solution(株式会社島津製作所製)、
検出器としてRID-10A(株式会社島津製作所製)、
デガッサーとしてDGU-20A(株式会社島津製作所製)、
ポンプとしてLC-20AD(株式会社島津製作所製)、
オートサンプラーとしてSIL-20A(株式会社島津製作所製)、
送液ユニットとしてCTO-20A(株式会社島津製作所製)、
カラムとしてShodex Asahipak GF-7M HQ×1(昭和電工株式会社製)、
ガードカラムとしてShodex Asahipak GF-1G7B(昭和電工株式会社製)、
を用いる。カラムオーブンの温度は45℃とする。標品は、プルラン(Shodex STANDARD P-82(昭和電工株式会社製の標品群キット))であり、そのうちP-5、P-10、P-20、P-50、P-100及びP-200を用いて3次式の検量線を作成する。移動相としては0.1mol/L食塩水を使用する。得られた溶出曲線のうち、ポリマーのメインピークから重量平均分子量及び数平均分子量を算出する。
【0056】
-ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の製法-
ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩は、例えば、特許第3384420号公報に記載されたように、アスパラギン酸を非水溶性溶媒中200℃~230℃に加熱してポリコハク酸イミドを得ること、及び得られたポリコハク酸イミドを水酸化アルカリ金属塩水溶液中で加水分解してポリアスパラギン酸アルカリ金属塩を製造すること、を含む方法によって得てもよい。非水溶性溶媒としては、水と混合したときに分層する溶媒であって沸点が200℃以上の溶媒が使用可能である。例えば、n-パラフィン、流動パラフィン等の飽和炭化水素化合物、シリコーン系オイル、フッ素系オイル等が挙げられ、その中でも、200℃以上(好ましくは230℃以上)の沸点を有し、さらに25℃での粘度が100cP以下(好ましくは20cP以下)の溶媒を好適に使用することができる。
前駆体としてのポリコハク酸イミドは、マレアミド酸を160℃~330℃の温度で加熱して得ることもできる。また、無水マレイン酸を水溶媒中でアンモニア水と反応させ、その後少なくとも170℃の温度に加熱してポリコハク酸イミドを得ることもできる。あるいは、国際公開公報第2011/102293号に記載のように、無水マレイン酸とアンモニアの反応物及びマレアミド酸から選択される少なくとも1種をモノマーとして用いて重合を行ってポリアスパラギン酸前駆体ポリマーを調製すること、及び得られたポリアスパラギン酸前駆体ポリマーを水酸化アルカリ金属塩水溶液で処理してポリアスパラギン酸アルカリ金属塩を得ること、を含む方法によりポリアスパラギン酸アルカリ金属塩を製造することもできる。
【0057】
ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩のうち、例えば、ポリアスパラギン酸ナトリウムの製造方法の一例においては、(1)SUS製のバットにL-アスパラギン酸を敷き、窒素雰囲気の常圧下において230℃で4時間オーブン内に静置することで、粉体のポリコハク酸イミドを得て、さらに、(2)得られた粉体のポリコハク酸イミドに蒸留水を加え、溶液の温度が45℃~55℃となるように制御しながら32質量%水酸化ナトリウム水溶液を少量ずつ滴下し、反応物が流動性を獲得したところで、pH測定を開始し、pHを測定しながら32質量%水酸化ナトリウム水溶液をさらに滴下し、pHがpH10~pH10.5の範囲で変動しなくなった時に滴下を終了して、ポリアスパラギン酸ナトリウムを含むポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得る。
【0058】
ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩のうち、例えば、ポリアスパラギン酸ナトリウムをポリコハク酸イミドの加水分解によって得る場合、ポリマー中には、一部、加水分解されなかったコハク酸イミド構造単位が残留してもよい。言い換えると、本開示に係るポリアスパラギン酸ナトリウムはコハク酸イミド構造単位を一部(例えば全構造単位数の10%以下、又は5%以下、又は1%以下)含有していても、コハク酸イミド構造単位を全く含有していなくてもよい。
【0059】
-ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比-
本開示に係る粉体化粧料において、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比は、0.00000095~0.0045の範囲内にすることが好ましく、0.000035~0.0010の範囲内にすることがより好ましい。前記範囲内にすることで、より一層、粉体化粧料の重ね塗り時において、粉体化粧料は肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい。なお、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比は、[ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量]/([無機粉体の質量]+[ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量])の式から求めることができる。
【0060】
より詳細には、以下のとおりである。本開示に係る粉体化粧料において、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩と無機粉体とを混合することで、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩は、無機粉体の表面の一部又は全部を被覆する。ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩は、無機粉体間に存在することで、無機粉体同士の摩擦力を低下させ、粉体化粧料の滑り性を向上させることができる。
よって、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比が過大であると、上記した(2a)~(2d)の問題が生じ、つまり前記した重ね塗り時の問題が起きる。一方で、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比が過小であると、上記した(4a)~(4c)の問題が生じ、つまり前記した重ね塗り時の問題が起きる。
【0061】
無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比は、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩間の相互作用、及び粉体層間における摩擦等の観点から、0.000035~0.0010が好ましく、0.000035~0.00065であることがより好ましく、0.000055~0.00065であることがさらに好ましく、0.000085~0.00065であることが特に好ましく、0.00015~0.00065であることが一層好ましく、0.00020~0.00065がより一層好ましい。
【0062】
(無機粉体)
-無機粉体-
本開示に係る粉体化粧料中に含まれる無機粉体は特に限定されず、粉体化粧料用の無機粉体として一般に用いられている無機粉体を用いることができる。無機粉体の形状は球状、板状、針状等の形状であってもよく、多孔質であっても無孔性の形状であってもよい。
【0063】
無機粉体の材質は、一般的な無機粉体、光輝性粉体、有機粉体、色素粉体、又は複合粉体等のいずれであってもよい。無機粉体の例としては、具体的には、酸化チタン、黒色酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成雲母、合成雲母鉄、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、若しくは窒化硼素等の一般的な無機粉体、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカチタン、酸化鉄・酸化チタン焼結体、若しくはアルミニウムパウダー等の光輝性無機粉体、又は、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン内包シリカ、若しくは酸化亜鉛内包シリカ等の複合無機粉体が挙げられる。本開示に係る粉体化粧料は、これらの無機粉体のうち任意のものを一種単独で用いてもよいし、二種以上を任意の組み合わせで含んでいてもよい。
【0064】
本開示に係る無機粉体は、粉体化粧料の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい観点から、タルク、マイカ、セリサイト、及び酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。本開示に係る無機粉体は、例えばタルク及び酸化チタンの混合物であってもよい。本開示に係る無機粉体は、タルク、マイカ、及びセリサイトからなる群より選択される少なくとも1種を含有することがより好ましく、タルクを含有することがさらに好ましい。
【0065】
-平均粒径-
本開示に係る粉体化粧料中に含まれる無機粉体の粒径は、特に限定されず、平均粒径で0.02μm程度の超微粒子サイズから200μm程度の比較的大きなサイズまでの範囲の中で、目的に応じて適切なものを選択することができる。なお、本開示に係る平均粒径とは、無機粉体を溶媒中に分散させた状態で測定した各粒子の粒径に基づく各粒子の体積を小粒径側から積算した場合に、積算体積が全体積の50%となる粒径値をいう。つまり本開示に係る平均粒径は、メジアン径と同義であり、「平均粒径(D50)」又は「体積平均粒径D50」とも表す。本開示に係る粉体化粧料中に含まれる無機粉体の体積平均粒径D50は、分散溶媒として試薬特級ヘキサン(溶媒屈折率1.38)(富士フイルム和光純薬株式会社製)を使用し、装置内循環にて分散させ、装置Loading Index適量範囲内の濃度条件において、循環速度50%(100%時、65mL/秒)で、Microtrac MT3300EXII(Microtrac社製 粒度分布計)を用いて測定することができる。
【0066】
本開示に係る無機粉体の平均粒径は特に限定されないが、例えば、1μm~100μmである。なお無機粉体の平均粒径は、小さすぎると使用感が得られず、大きすぎると使用感が悪くなるという観点から、3μm~60μmであることが好ましく、4μm~40μmであることがより好ましく、5μm~30μmであることがさらに好ましく、6μm~20μmであることが特に好ましい。
【0067】
(その他の粉体)
本開示に係る粉体化粧料は、その効果が損なわれない限り、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩により表面の一部又は全部が被覆された前記無機粉体以外の、他の粉体を含んでいてもよい。他の粉体の例としては、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩により表面が被覆されていない状態の、先に例示した無機粉体、有機顔料被覆マイカチタン、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体パウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、若しくは結晶セルロースパウダー等の有機粉体、又は、有機タール系顔料若しくは有機色素のレーキ顔料等の色素粉体等が挙げられる。また、本開示に係る粉体化粧料は、その効果が損なわれない限り、後述の粉体化粧料組成物の欄に記載される追加的成分を含んでいてもよい。
【0068】
≪粉体化粧料の製造方法≫
本開示に係る粉体化粧料の製造方法は、無機粉体と、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩と、を混合して、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩とを含む混合物を得ること、前記混合物を粉砕すること、並びに、粉砕された前記混合物を乾燥すること、を含んでいてもよい。
【0069】
前記製造方法によって、本開示に係る粉体化粧料を製造することができる。ただし、本開示に係る粉体化粧料の製造方法は前記製造方法に限定されるものではなく、他の方法により本開示に係る粉体化粧料を製造することも可能である。
【0070】
無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との混合は、例えば室温で行ってもよいがこれに限定されず、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩水溶液が凝固又は沸騰しない任意の温度で行ってもよい。例えば、混合は、5℃~95℃の温度範囲内の温度で行ってもよい。混合の際には、水性媒体が共存していてもよいが、水性媒体は存在しなくてもよい。つまり、前記無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩とを混合することは、無機粉体、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩及び水性媒体を混合することを含んでいても、含んでいなくてもよい。前記水性媒体は、単に水であってもよいし、水と水混和性の溶媒との混合溶媒であってもよい。このような水混和性溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、及びエチレングリコール等のアルコール、又はアセトン等が挙げられる。
【0071】
無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との混合は、ディスパー、ヘンシェルミキサー、レディゲミキサー、ニーダー、V型混合機、ロールミル、ビーズミル、又は2軸混練機等を用いて行うことができる。混合時間は、例えば1分~1時間としてもよく、2分~20分であってもよい。混合は、例えば、無機粉体に、又は無機粉体と水性媒体とを含む混合液に、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩を添加することで、又はポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の水溶液を添加することで行ってもよい。この場合、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩は最初から全量を投入してもよく、部分量ずつ複数回に分けて添加してもよい。
【0072】
ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の添加量は、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対して0.00000095~0.0045に設定してもよく、0.000035~0.0010に設定してもよい。ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の添加量を無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対して0.00000095~0.0045に設定することで、より一層、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい粉体化粧料を得ることができる。なお、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との混合の際には、無機粉体及びポリアスパラギン酸アルカリ金属塩に加えて、上記の他の粉体、後述の粉体化粧料組成物の欄に記載される追加的成分等も一緒に混合してもよい。
【0073】
本開示に係る粉体化粧料の製造方法において、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の種類及び重量平均分子量の説明については、上述した、本開示に係る粉体化粧料におけるポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の種類及び重量平均分子量の説明を流用することができる。本開示に係る粉体化粧料の製造方法において、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが満たす式の説明については、上述した、本開示に係る粉体化粧料におけるポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yが満たす式の説明を流用することができる。
【0074】
前記混合によって得られた無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩とを含む混合物、又は前記混合物に加えて水性媒体とを含む混合液は、粉砕処理に供される。粉砕処理は、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、インパクトクラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、カッターミル、自生粉砕機、スタンプミル、石臼型、乳鉢、らいかい機、リングミル、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、回転ミル、振動ミル、遊星ミル、アトライター、ビーズミル、又はアトマイザー等を用いて行うことができる。粉体化粧料の用途に合わせた所望の粒径が得られるように好適な粉砕機を選択すればよい。
【0075】
粉砕処理後の混合物については、必要に応じて、任意に濾過を行ってもよい。濾過を行うことで、所望の粒径の無機粉体を回収することができ、また、水性媒体が存在する場合は無機粉体を水性媒体と分離することで乾燥を容易なものとすることができる。濾過に用いるフィルターの孔径は、所望の粒径に合わせて選択することができる。
【0076】
前記粉砕処理後の混合液中の混合物を乾燥させることで、又は任意に行われる前記濾過により得られる無機粉体を乾燥させることで、表面の一部又は全部がポリアスパラギン酸アルカリ金属塩によって被覆された無機粉体を含む粉体化粧料が得られる。乾燥の手法は特に限定されない。乾燥は、自然乾燥により行ってもよく、減圧下で行ってもよく、加熱下で行ってもよい。減圧をする場合には、例えば絶対圧力で1kPa~20kPa程度に減圧をすればよく、加熱をする場合には、例えば60℃~150℃程度に加熱して乾燥させればよい。
【0077】
乾燥により得られた、表面の一部又は全部がポリアスパラギン酸アルカリ金属塩によって被覆された無機粉体は、任意に、前述した他の粉体と混合されてもよい。
【0078】
≪化粧料組成物≫
本開示に係る粉体化粧料は、単独で粉体として用いてもよいが、本開示に係る粉体化粧料と、水及び油剤から選択される少なくとも1種とを含む化粧料組成物の形態で用いてもよい。すなわち、本開示に係る化粧料組成物は、本開示に係る粉体化粧料と、水及び油剤から選択される少なくとも1種とを含む化粧料組成物としてもよい。このような化粧料組成物の中で用いられた場合であっても、本開示に係る化粧料組成物は、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくいといった効果を奏する。
【0079】
油剤の例としては、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャトロプスワックス、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、若しくはポリブテン等の炭化水素;カルナウバロウ、ミツロウ、ラノリンワックス、若しくはキャンデリラ等の天然ロウ類;トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ホホバ油、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、若しくはジペンタエリトリット脂肪酸エステル等のエステル;ステアリン酸、ベヘニン酸、若しくは12-ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸;セタノール、ステアリルアルコール、若しくはベヘニルアルコール等の高級アルコール;オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、若しくはモクロウ等の油脂;ラノリン脂肪酸イソプロピル若しくはラノリンアルコール等のラノリン誘導体;N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)等のアミノ酸誘導体;又は、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、若しくはパーフルオロオクタン等のフッ素系油剤等が挙げられる。
【0080】
本開示に係る化粧料組成物は、その効果を損なわない限り、上記の粉体化粧料、水、及び油剤以外の成分を含んでいてもよい。このような追加的成分の例としては、化粧料に通常使用される成分、例えば、水混和性溶媒、界面活性剤、油ゲル化剤、多価アルコール類若しくは保湿剤などの水溶性成分、紫外線吸収剤、防腐剤、美容成分、又は香料等を挙げることができる。
【0081】
本開示に係る化粧料組成物は、本開示に係る粉体化粧料を、水及び油剤から選択される少なくとも1種及び任意に前述の他の成分と混合することによって製造することができる。
【0082】
本開示に係る粉体化粧料及び本開示に係る化粧料組成物の形態(化粧料の製品形態)は特に限定されず、目的に応じて適切に選択することができる。本開示に係る粉体化粧料又は本開示に係る化粧料組成物は、例えば、パウダー、パウダーパクト、ツーウェイケーキ、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、クリームファンデーション、コンシーラー、BBクリーム、CCクリーム、化粧下地、プライマー、アイシャドー、又はブラッシャであってもよい。
【0083】
上述のとおり、本開示に係る粉体化粧料及び化粧料組成物によれば、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくいという効果を奏する。
【実施例
【0084】
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。「%」も同様に質量基準である。
【0085】
<実施例1>
ポリアスパラギン酸ナトリウムA水溶液を、以下のようにして調製した。まず、SUS製のバットにL-アスパラギン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)を320g敷き、窒素雰囲気の常圧下において230℃で4時間オーブン内に静置することで、粉体のポリコハク酸イミドを233g得た。得られたポリコハク酸イミド233gに蒸留水166gを加え、溶液の温度が45℃~55℃となるように制御しながら32質量%水酸化ナトリウム水溶液を少量ずつ滴下した。反応物が流動性を獲得したところで、pH測定を開始し、pHを測定しながら32質量%水酸化ナトリウム水溶液をさらに滴下し、pHがpH10~pH10.5の範囲で変動しなくなった時に滴下を終了した。使用した32質量%水酸化ナトリウム水溶液は291gであった。この結果、均一な褐色透明のポリアスパラギン酸ナトリウムA水溶液が得られた。さらに蒸留水を128g添加することで、40質量%のポリアスパラギン酸ナトリウムA水溶液を818g得た。
得られた40質量%ポリアスパラギン酸ナトリウムA水溶液に含まれるポリアスパラギン酸ナトリウムAの分子量測定を行ったところ、重量平均分子量(Mw)は22,000であり、数平均分子量(Mn)は14,000であった。なお、分子量測定は、上述したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の装置及びGPC測定方法により測定した。
【0086】
無機粉体として、タルク(浅田製粉株式会社製、JA-46R(化粧品用))1.0kgをヘンシェルミキサー(型番FM10C/I:日本コークス工業株式会社製)に装入した。さらに前記40質量%ポリアスパラギン酸ナトリウムA水溶液を用い、無機粉体に対するポリアスパラギン酸ナトリウムAの添加量が、表1に示す所定量(無機粉体とポリアスパラギン酸ナトリウムAとの合計量に対する前記ポリアスパラギン酸ナトリウムAの質量比が0.0004)となるように、蒸留水で10gに希釈したものを添加した。前記40質量%ポリアスパラギン酸ナトリウムA水溶液の所定量の半分を添加したところで一旦添加を止め、前記ヘンシェルミキサーで3000rpm(回転/分)で3分間混合した。さらに、前記40質量%ポリアスパラギン酸ナトリウムA水溶液の所定量の残りの半分を添加し、前記ヘンシェルミキサーで3000rpm(回転/分)で3分間混合した。
【0087】
ヘンシェルミキサーによる混合後の粉体をアトマイザー(型番K2-1、不二パウダル株式会社製)にかけて固形分を粉砕した。アトマイザーによる粉砕は、スクリーン径を2mmφとし、スクリューピッチを20mmとし、段付きライナーを用いて行った。また、粉砕時間は30分~60分とした。得られた粉砕物を孔径2mmの濾布を用いて濾過し、濾布上の粉体を回収した。
【0088】
回収された粉体を、器具乾燥機で乾燥した。乾燥温度及び乾燥時間は、80℃で3時間の乾燥後に40℃で一晩放置による乾燥とした。乾燥の結果、ポリアスパラギン酸ナトリウムAにより表面の一部又は全部が被覆された無機粉体(以下、「混合粉体」とも称する)を得た。
【0089】
<実施例2~実施例5、及び比較例2>
実施例2~実施例5、及び比較例2においては、無機粉体とポリアスパラギン酸ナトリウムAとの合計量に対する前記ポリアスパラギン酸ナトリウムAの質量比を、表1に記載の通り変更したこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉体を得た。
【0090】
<比較例1>
比較例1においては、無機粉体1.0kgに対し40質量%ポリアスパラギン酸ナトリウムA水溶液を10g添加したことと、無機粉体とポリアスパラギン酸ナトリウムAとの合計量に対する前記ポリアスパラギン酸ナトリウムAの質量比を0.004に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉体を得た。
【0091】
<実施例6>
実施例6においては、実施例1におけるポリアスパラギン酸ナトリウムAの代わりに、以下のようにして得たポリアスパラギン酸ナトリウムBを使用した。特許第3384420号公報の実施例1の方法に従い、1Lフラスコ中に、L-アスパラギン酸133.0g及び流動パラフィン(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)200gを加えた。これを220℃で4時間反応させ、50℃まで冷却した。さらに、14%水酸化ナトリウム水溶液を286.0g加え1時間攪拌した。反応物を水層と有機層に分層させ、水層を取り出した。得られた水層は、残留流動パラフィンにより濁っていた。水層をセライト及び活性炭を添加して処理することにより、均一な黄色透明のポリアスパラギン酸ナトリウムB水溶液を得た。ポリアスパラギン酸ナトリウムBの分子量測定をGPC測定方法により行ったところ、重量平均分子量(Mw)は10,000であり、数平均分子量(Mn)は7,000であった。ポリアスパラギン酸ナトリウムBを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉体を得た。
【0092】
<実施例7、実施例8、及び比較例4>
実施例7、実施例8、及び比較例4においては、無機粉体とポリアスパラギン酸ナトリウムBとの合計量に対する前記ポリアスパラギン酸ナトリウムBの質量比を、表1に記載の通り変更したこと以外は、実施例6と同様にして、混合粉体を得た。
【0093】
<比較例3>
比較例3においては、無機粉体1.0kgに対し30質量%ポリアスパラギン酸ナトリウムB水溶液を58.7g添加したことと、無機粉体とポリアスパラギン酸ナトリウムBとの合計量に対する前記ポリアスパラギン酸ナトリウムBの質量比を0.0176に変更したこと以外は、実施例6と同様にして、混合粉体を得た。
【0094】
<実施例9>
実施例9においては、実施例1におけるポリアスパラギン酸ナトリウムAの代わりに、以下のようにして得たポリアスパラギン酸ナトリウムCを使用した。
すなわち、L-アスパラギン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)118g、スルホラン(富士フイルム和光純薬株式会社製、等級無し)235g、キシレン(富士フイルム和光純薬株式会社製、和光特級)83g、及び35%塩酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)70gを、3Lの4つ口フラスコに装入し、110℃~115℃で3時間反応させた。留出水はディーンスターク装置にて捕集及び抜出を適宜行った。その後、118℃~147℃で5時間反応させ、147℃~154℃で5時間反応させた。さらに、154℃~162℃で2時間、キシレンをディーンスターク装置にて捕集及び抜出を実施した。その後、アセトニトリル(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)1600gを添加し、晶析させ室温で1時間撹拌した。その後、孔径7μmの濾紙にて濾過し、濾紙上に残った白色粉体を、真空乾燥機にて、70℃、5Torrで24時間乾燥させることで、白色粉体のポリコハク酸イミド81gを得た。得られたポリコハク酸イミド81gに蒸留水99gを加え、溶液の温度が45℃~55℃となるように制御しながら32質量%水酸化ナトリウム水溶液を少量ずつ滴下した。反応物が流動性を獲得したところで、pH測定を開始し、pHを測定しながら32質量%水酸化ナトリウム水溶液をさらに滴下し、pHがpH10~pH10.5の範囲で変動しなくなった時に滴下を終了した。使用した32質量%水酸化ナトリウム水溶液は94gであった。この結果、均一な黄色透明のポリアスパラギン酸ナトリウムC水溶液が得られた。さらに蒸留水を12g添加することで、40質量%のポリアスパラギン酸ナトリウムC水溶液を286g得た。得られたポリアスパラギン酸ナトリウムCの分子量測定をGPC測定方法により行ったところ、重量平均分子量(Mw)は50,000であり、数平均分子量(Mn)は30,000であった。
ポリアスパラギン酸ナトリウムCを使用したことと、無機粉体とポリアスパラギン酸ナトリウムCとの合計量に対する前記ポリアスパラギン酸ナトリウムCの質量比を、0.00001に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉体を得た。
【0095】
<実施例10、実施例11、及び比較例5~比較例7>
実施例10、実施例11、及び比較例5~比較例7においては、無機粉体とポリアスパラギン酸ナトリウムCとの合計量に対する前記ポリアスパラギン酸ナトリウムCの質量比を、表1に記載の通り変更したこと以外は、実施例9と同様にして、混合粉体を得た。
【0096】
<実施例12>
実施例12においては、実施例1におけるポリアスパラギン酸ナトリウムAの代わりに、以下のようにして得たポリアスパラギン酸ナトリウムDを使用した。
すなわち、L-アスパラギン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)58gと、スルホラン(富士フイルム和光純薬株式会社製、等級無し)96g及びポリ燐酸-105(日本化学工業株式会社製)29gを、3Lの4つ口フラスコに装入し、155℃~175℃で3時間反応させた。留出水はディーンスターク装置にて捕集及び抜出を適宜行った。その後、N,N-ジメチルホルムアミド(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)203gにて希釈し、50℃まで冷却した。さらに、メタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)348gを添加し、晶析させ室温で1時間撹拌した。その後、孔径7μmの濾紙にて濾過し、濾紙上に残った白色粉体を、真空乾燥機にて、100℃、5Torrで24時間乾燥させることで、白色粉体のポリコハク酸イミド43gを得た。得られたポリコハク酸イミド43gに蒸留水51gを加え、溶液の温度が45℃~55℃となるように制御しながら32質量%水酸化ナトリウム水溶液を少量ずつ滴下した。反応物が流動性を獲得したところで、pH測定を開始し、pHを測定しながら32質量%水酸化ナトリウム水溶液をさらに滴下し、pHがpH10~pH10.5の範囲で変動しなくなった時に滴下を終了した。使用した32質量%水酸化ナトリウム水溶液は55gであった。この結果、均一な黄色透明のポリアスパラギン酸ナトリウムD水溶液が得られた。さらに蒸留水を3g添加することで、40質量%のポリアスパラギン酸ナトリウムD水溶液を152g得た。得られたポリアスパラギン酸ナトリウムDの分子量測定をGPC測定方法により行ったところ、重量平均分子量(Mw)は120,000であり、数平均分子量(Mn)は48,000であった。
ポリアスパラギン酸ナトリウムDを使用したことと、無機粉体とポリアスパラギン酸ナトリウムDとの合計量に対する前記ポリアスパラギン酸ナトリウムDの質量比を、0.000001に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉体を得た。
【0097】
<比較例8及び比較例9>
比較例8及び比較例9においては、無機粉体とポリアスパラギン酸ナトリウムDとの合計量に対する前記ポリアスパラギン酸ナトリウムDの質量比を、表1に記載の通り変更したこと以外は、実施例12と同様にして、混合粉体を得た。
【0098】
<実施例13>
実施例13においては、無機粉体としてセリサイト(オーケム通商株式会社製、OC-100R)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉体を得た。
【0099】
<比較例10>
比較例10においては、無機粉体1.0kgに対し40質量%ポリアスパラギン酸ナトリウムA水溶液を10g添加したことと、無機粉体とポリアスパラギン酸ナトリウムAとの合計量に対する前記ポリアスパラギン酸ナトリウムAの質量比を0.004に変更したこと以外は、実施例13と同様にして、混合粉体を得た。
【0100】
<実施例14>
実施例14においては、無機粉体としてマイカ(株式会社ヤマグチマイカ製、Y-2300X)を使用し、無機粉体とポリアスパラギン酸ナトリウムAとの合計量に対する前記ポリアスパラギン酸ナトリウムAの質量比を0.0001に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉体を得た。
【0101】
<粉体層せん断力の測定>
実施例1~実施例14及び比較例1~比較例10で得られた、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩により表面の一部又は全部が被覆された無機粉体(混合粉体)について、下記のようにして粉体層せん断力測定を実施して、粉体層の破壊包絡線を得た。
【0102】
(粉体層せん断力の測定方法)
粉体層せん断力を測定するための装置として、粉体層せん断力測定装置NS-S500型(株式会社ナノシーズ製)を使用した。
粉体層せん断力を測定する方法は、以下の通りとした。
(1)円柱状のセル(上部固定セル、下部可動セル)内部に粉末サンプルを充填し、垂直応力を一定の速度で徐々に負荷した。
(2)垂直応力が150Nに達した後、垂直応力の負荷を停止し定容積状態で粉体層の緩和時間を設けた。
(3)十分に応力緩和が起こった後に、セルに一定速度で水平方向の外力を負荷した。
(4)せん断が定常状態(すなわち垂直応力とせん断応力の値がそれぞれ一定となる状態)に達した後、水平方向の外力を保持したまま垂直応力を徐々に減衰させた。
(5)前記減衰過程で、垂直応力とせん断応力を検知して得られた各垂直応力σ(横軸;x軸)に対応するせん断応力τ(縦軸;y軸)をプロットした破壊包絡線を得た。
【0103】
なお、より詳細な粉体層せん断力の測定条件は以下の通りとした。
サンプル量 :20g
サンプリング周波数 :10Hz
装置構成識別記号 :BF22XB
上部固定セルの内径 :43mm
下部可動セルの深さ :5mm
せん断速度 :10μm/秒
せん断帯厚み :0.2mm
圧縮速度 :0.2mm/秒
【0104】
なお、粉体層せん断力の測定方法の(2)においては、粉体化粧料を肌に塗布する場合の肌にかかる圧力を想定して、垂直応力は150Nとした。
【0105】
各混合粉体から得られた破壊包絡線から、曲線度を得た。曲線度は、曲線度=[破壊包絡線の下部の直線の傾き]/[破壊包絡線の上部の直線の傾き]、の式より算出した。なお、破壊包絡線の下部の直線の傾きとは、垂直応力σ及びせん断応力τが定常状態となったときの垂直応力σを100%とした場合に、垂直応力σの値が0%~30%であるときの破壊包絡線の直線の傾きを示す。破壊包絡線の上部の直線の傾きとは、垂直応力σ及びせん断応力τが定常状態となったときの垂直応力σを100%とした場合に、垂直応力σの値が70%~100%であるときの破壊包絡線の直線の傾きを示す。
【0106】
無機粉体のみの曲線度の値を1.00とした時の、実施例1~実施例14及び比較例1~比較例10における各混合粉体の曲線度の相対値[-]を表1に示す。なお表1中、曲線度の相対値、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比、及びポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量は、単位を有しないため、単位を[-]で表している。表1中、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比とは、つまり、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比を示す。
【0107】
曲線度の相対値が1.00より大きい混合粉体は、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩を添加する前の無機粉体(つまり、無機粉体のみ)よりも滑り性が低下していることを示す。曲線度の相対値が1.00より小さい混合粉体は、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩を添加する前の無機粉体よりも滑り性が増加していることを示す。混合粉体の曲線度の相対値が1.00より小さいとき、「当該混合粉体は、重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい。」と判断した。
【0108】
【表1】
【0109】
実施例1~実施例14及び比較例1~比較例10において、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量[-]及びポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比[-]に対する、曲線度の相対値の関係について、図2に示す。なお図2中、横軸はポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量である。重量平均分子量は相対値であり、単位を有しないため、単位を[-]で表している。図2中、縦軸はポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比(つまり、無機粉体とポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比)である。ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比は単位を有しないため、単位を[-]で表している。なお縦軸は対数軸で示している。図2中、黒丸は実施例であることを表し、つまり、混合粉体の曲線度の相対値が1.00より小さいことを表す。白丸は比較例であることを表す。
【0110】
表1及び図2から、曲線度の相対値は、ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量[-]及びポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比に依存することが確認された。
【0111】
以上のことから、前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量x、及び、前記無機粉体と前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩との合計量に対する前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の質量比yに関して、前記式(1)(又は、前記式(3)若しくは式(4))及び前記式(2)(又は、前記式(5))並びに前記ポリアスパラギン酸アルカリ金属塩の重量平均分子量xは1,000~150,000(又は8,000~120,000)の範囲で囲まれた領域に含まれる実施例1~実施例14では、粉体化粧料の重ね塗り時において、肌に対して抵抗感の少ない滑らかな伸び広がりを有し、かつ化粧ヨレが生じにくい粉体化粧料を得ることができた。一方、前記範囲で囲まれた領域に含まれない比較例1~比較例10では、前記のような粉体化粧料を得ることはできなかった。
【0112】
2020年9月15日に出願された日本国特許出願2020-154913号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載されたすべての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2