(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】シリーズハイブリッド式ストラドルドビークル
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20231120BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20231120BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20231120BHJP
B60K 5/12 20060101ALI20231120BHJP
B62M 23/02 20100101ALI20231120BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20231120BHJP
F16F 15/26 20060101ALI20231120BHJP
F02B 77/00 20060101ALI20231120BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20231120BHJP
【FI】
B60K6/40
B60K6/46 ZHV
B60K6/24
B60K5/12 E
B62M23/02 110
F16F15/04 A
F16F15/26 K
F02B77/00 L
B60L50/61
(21)【出願番号】P 2022577977
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003364
(87)【国際公開番号】W WO2022162904
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】北村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】川口 勉
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/063559(WO,A1)
【文献】特開2001-106159(JP,A)
【文献】特開2003-237674(JP,A)
【文献】特開2017-44169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547
B60K 5/12
B62M 23/02
F16F 15/04
F16F 15/26
F02B 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、
車体フレームと、
駆動モータと、
前記車体フレームに回転可能に支持され、前記駆動モータにより駆動される駆動輪と、
一つ又は複数のシリンダ、並びに一次慣性力及び一次慣性偶力による振動を抑制する二軸一次バランサを有する発電用エンジンと、前記発電用エンジンに取付けられ、前記発電用エンジンのクランク軸の回転によって駆動され発電し、発電された電力を、蓄電装置を介して又は介さずに前記駆動モータに供給する発電機とを有し、前記発電機により生成された電力を出力可能であり、且つ前記発電用エンジンから出力される動力を前記駆動輪へ伝達しないように構成されているエンジン駆動電力供給ユニットと、
残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動を許容しつつクランク軸周り回転振動を抑制する態様で、前記エンジン駆動電力供給ユニットを支持するように前記車体フレームに取り付けられ、前記残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動は、前記二軸一次バランサによって一次慣性力及び一次慣性偶力が抑制されることにより前記発電用エンジンに残存する二次慣性力によって、クランク軸線方向に見て、前記発電用エンジンのシリンダ軸線方向に発生する並進振動であり、前記クランク軸周り回転振動は、クランク軸線と平行な線を中心とする回転振動である、支持機構と
を備える。
【請求項2】
請求項1に記載のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記支持機構は、リンク機構と弾性体との組み合わせである複数の対をなすリンク部で構成される。
【請求項3】
請求項2に記載のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記発電機は、車幅方向に見て、少なくとも一部が前記発電用エンジンと重なりを有し、前記発電用エンジンの1つ又は複数のシリンダと車幅方向にずれ、
前記リンク部は、各々が左右に配置された対からなる複数の対を構成し、各々が前記リンク部の動作の方向と交わる方向への変位を許容する遊びを有し、前記リンク部がなす各対について、車幅方向において、対をなす前記リンク部の各々から前記シリンダの中央までの距離の偏差が、対をなすリンク部の各々から前記エンジン駆動電力供給ユニットの重心までの距離の偏差よりも大きく、且つ対をなす前記リンク部の各々から前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の前記車幅方向における中心までの距離の偏差よりも大きい。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記リンク部は、各々が左右に配置された対からなる第一の対と、第二の対と、第三の対とから構成され、前記第一の対及び第二の対は、前記残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動を許容する方向に動作し、前記第三の対は、前記クランク軸周り回転振動を抑制する。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記発電用エンジンは、単気筒エンジン、燃焼タイミングのクランク角度が90度及び270度の並列2気筒エンジン以外の2気筒エンジン、3気筒エンジン、又はロスプレーン型の並列4気筒エンジン以外の4気筒エンジンである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用エンジンにより発電機を駆動して電力を出力するエンジン駆動電力供給ユニットがある(例えば特許文献1)。特許文献1に記載のエンジン駆動電力供給ユニットは、レンジエクステンダEVに搭載される電力供給ユニットである。発電用エンジンにはバランサが設けられる。リンク機構でエンジン駆動電力供給ユニットが懸架される。これにより、エンジン駆動電力供給ユニットの振動が、車両のフレームに伝達することが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電用エンジンが駆動されることにより、発電用エンジンには、様々な振動が発生する。シリーズハイブリッド式鞍乗型車両には、このような発電用エンジンを含むエンジン駆動電力供給ユニットが搭載される。上述のレンジエクステンダEVは、シリーズハイブリッド鞍乗型車両の一例である。シリーズハイブリッド式鞍乗型車両については、振動が抑制されることが強く求められる傾向がある。加えて、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、乗員の体重移動により姿勢制御が行われるという車両特性を有し、日常の足としての用途やツーリング等のレジャー用途のように幅広い用途で用いられる。そのため、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両にとっては軽快性及び簡便性が強く求められる。従って、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、大型化や構造の複雑化を抑制又は防止しつつ、フレームへの発電用エンジンの振動の伝達を効率的に抑制又は防止できることが好ましい。
本発明の目的は、大型化や構造の複雑化を抑制又は防止しつつ、フレームへの発電用エンジンの振動の伝達を効率的に抑制又は防止できるシリーズハイブリッド式鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、エンジン駆動電力供給ユニットの発電用エンジンにおいて発生する振動を効率的に低減することについて検討した。特許文献1に記載のエンジン駆動電力供給ユニットは、発電用エンジンにバランサを設けて発電用エンジンの振動を軽減する。また、フレームからエンジン駆動電力供給ユニットをリンク機構により懸架して、発電用エンジンに発生する振動が、車両のフレームに伝達することを抑制する。
ここで、特許文献1に記載の発電用エンジンのバランサは、一軸一次バランサである。この場合、特許文献1に記載の一次慣性力による振動を一軸一次バランサで抑制し、リンク機構は、一次慣性偶力等の振動がフレームに伝達するのを抑制している。しかし、発電用エンジンにおいて発生する振動は、一次慣性力及び一次慣性偶力による振動の他に、二次慣性力による振動も発生する。従って、特許文献1に記載のエンジン駆動電力供給ユニットは、二次慣性力による振動が発生し、発電用エンジンの振動が複雑になる可能性があり、単純なエンジン駆動電力供給ユニットの支持機構だけではフレームに振動が伝達するのを抑制しきれない場合がある。
【0006】
本発明者らは、発電用エンジンにおいて発生する二次慣性力による振動にも考慮して、エンジンに発生する振動がフレームに伝達することを効率的に抑制することについて検討した。この検討の中で、本発明者は、一次慣性力及び一次慣性偶力による振動をバランサにより抑制し、その結果、残存する二次慣性力による振動がフレームに伝達することを支持機構により抑制することにより、大型化や構造の複雑化を抑制又は防止しつつ、二次慣性力による振動も抑制が可能になるという知見を得た。
詳細には、鞍乗型車両のエンジン駆動電力供給ユニットの発電用エンジンに一次慣性力及び一次慣性偶力による振動を抑制する二軸一次バランサを設ける。また、エンジン駆動電力供給ユニットを懸架する支持機構を、残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動を許容しつつクランク軸周り回転振動を抑制する態様で、エンジン駆動電力供給ユニットを支持するように車体フレームに取り付ける。
これにより、発電用エンジンに設けられたバランサにより発電用エンジンにおいて発生する一次慣性力及び一次慣性偶力を抑制する。この時、発電用エンジンには二次慣性力による振動が残存するため、残存二次慣性力による振動が支持機構によりフレームに伝達することを抑制することが可能となる。そうすると、エンジン駆動電力供給ユニットの発電用エンジンから生じる振動を低減することができ、支持機構も、残りの二次慣性力による振動の抑制に特化することができる。これにより、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両において、大型化や構造の複雑化を抑制又は防止しつつ、発電用エンジンに発生する振動が、フレームに伝達することを効率的に抑制することができる。
【0007】
以上の目的を達成するために、本発明の一つの観点によれば、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、次の構成を備える。
(1) シリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、
車体フレームと、
駆動モータと、
前記車体フレームに回転可能に支持され、前記駆動モータにより駆動される駆動輪と、
一つ又は複数のシリンダ、並びに一次慣性力及び一次慣性偶力による振動を抑制する二軸一次バランサを有する発電用エンジンと、前記発電用エンジンに取付けられ、前記発電用エンジンのクランク軸の回転によって駆動され発電し、発電された電力を、蓄電装置を介して又は介さずに前記駆動モータに供給する発電機とを有し、前記発電機により生成された電力を出力可能であり、且つ前記発電用エンジンから出力される動力を前記駆動輪へ伝達しないように構成されているエンジン駆動電力供給ユニットと、
残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動を許容しつつクランク軸周り回転振動を抑制する態様で、前記エンジン駆動電力供給ユニットを支持するように前記車体フレームに取り付けられ、前記残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動は、前記二軸一次バランサによって一次慣性力及び一次慣性偶力が抑制されることにより前記発電用エンジンに残存する二次慣性力によって、クランク軸線方向に見て、前記発電用エンジンのシリンダ軸線方向に発生する並進振動であり、前記クランク軸周り回転振動は、クランク軸線と平行な線を中心とする回転振動である、支持機構と
を備える。
【0008】
(1)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、車体フレームと、エンジン駆動電力供給ユニットと、支持機構とを備える。
エンジン駆動電力供給ユニットは、発電用エンジンと、発電機とを有する。発電用エンジンは、一つ又は複数のシリンダと、二軸一次バランサとを有する。二軸一次バランサは、一次慣性力及び一次慣性偶力による振動を抑制する。発電機は、発電用エンジンに取付けられる。発電機は、発電用エンジンのクランク軸の回転によって駆動され発電し、発電された電力を、蓄電装置を介して又は介さずに前記駆動モータに供給する。エンジン駆動電力供給ユニットは、発電機により生成された電力を出力可能であり、且つ発電用エンジンから出力される動力を駆動輪へ伝達しないように構成されている。
支持機構は、残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動を許容しつつクランク軸周り回転振動を抑制する態様で、エンジン駆動電力供給ユニットを支持するように車体フレームに取り付けられる。残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動は、二軸一次バランサによって一次慣性力及び一次慣性偶力が抑制されることにより発電用エンジンに残存する二次慣性力によって、クランク軸線方向に見て、発電用エンジンのシリンダ軸線方向に発生する並進振動である。クランク軸周り回転振動は、クランク軸線と平行な線を中心とする回転振動である。
【0009】
一次慣性力による振動は、発電用エンジンのピストンの上下運動に伴って生じる振動で、エンジンのクランク軸の回転と同期して生じる振動である。一次慣性力による振動は、主にシリンダ軸線方向に振動が生じる。一次慣性偶力による振動は、発電用エンジンのクランク軸周りの回転力による振動である。二軸一次バランサは、クランク軸の回転と同期してそれぞれ反対方向に回転する、クランク軸に平行な二つのバランサシャフトを有する。二軸一次バランサにより、一次慣性力及び一次慣性偶力による発電用エンジンの振動を抑制できる。二次慣性力は、一次慣性力の倍の周波数で生じる慣性力で、シリンダ軸線方向に生じる。残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動を許容しつつクランク軸周り回転振動を抑制するように構成されるとは、残存二次慣性力による振動の振幅及び振動方向に動くように支持機構の可動距離及び方向を設定することである。
【0010】
(1)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、エンジン駆動電力供給ユニットの発電用エンジンに一次慣性力及び一次慣性偶力による振動を抑制する二軸一次バランサを設ける。また、エンジン駆動電力供給ユニットを懸架する支持機構を、残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動を許容しつつクランク軸周り回転振動を抑制する態様で、エンジン駆動電力供給ユニットを支持するように車体フレームに取り付ける。
【0011】
これにより、発電用エンジンに設けられた二軸一次バランサにより発電用エンジンにおいて発生する一次慣性力及び一次慣性偶力を抑制する。この時、発電用エンジンには二次慣性力による振動が残存するため、残存二次慣性力による振動が支持機構により車体フレームに伝達することを抑制することが可能となる。そうすると、エンジン駆動電力供給ユニットの発電用エンジンから生じる振動を低減することができ、支持機構も、残りの二次慣性力による振動の抑制に特化することができる。これにより、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両において、大型化や構造の複雑化を抑制又は防止しつつ、フレームへの発電用エンジンの振動の伝達を効率的に抑制又は防止できる。
【0012】
本発明の一つの観点によれば、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(2) (1)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記支持機構は、リンク機構と弾性体との組み合わせである複数の対をなすリンク部で構成される。
【0013】
(2)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、支持機構が、リンク機構と弾性体との組み合わせである複数の対をなすリンク部で構成される。これにより、(2)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、クランク軸線方向に見て、支持機構を、エンジン駆動電力供給ユニットのシリンダ軸線方向に発生する二次慣性力による振動を許容する構造にすることができる。また、支持機構を、重心を通り、クランク軸の軸線と平行な線を中心とする回転方向の振動を抑制する構造にすることができる。従って、(2)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、発電用エンジンに発生する振動が、フレームに伝達することを効率的に抑制することができる。
【0014】
本発明の一つの観点によれば、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(3) (2)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記発電機は、車幅方向に見て、少なくとも一部が前記発電用エンジンと重なりを有し、前記発電用エンジンの1つ又は複数のシリンダと車幅方向にずれ、
前記リンク部は、各々が左右に配置された対からなる複数の対を構成し、各々が前記リンク部の動作の方向と交わる方向への変位を許容する遊びを有し、前記リンク部がなす各対について、車幅方向において、対をなす前記リンク部の各々から前記シリンダの中央までの距離の偏差が、対をなすリンク部の各々から前記エンジン駆動電力供給ユニットの重心までの距離の偏差よりも大きく、且つ対をなす前記リンク部の各々から前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の前記車幅方向における中心までの距離の偏差よりも大きい。
【0015】
(3)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両によれば、車幅方向において、対をなすリンク部の各々からシリンダの中央までの距離の偏差が、対をなすリンク部の各々からエンジン駆動電力供給ユニットの重心までの距離の偏差よりも大きい。また、(3)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、車幅方向において、対をなすリンク部の各々からシリンダの中央までの距離の偏差が、対をなすリンク部の各々からシリーズハイブリッド式鞍乗型車両の車幅方向における中心までの距離の偏差よりも大きい。
従って、(3)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、エンジン駆動電力供給ユニットに、エンジン駆動電力供給ユニットの重心及び車両中心を中心としてシリーズハイブリッド式鞍乗型車両が水平方向に回転するような慣性力が作用しやすい。しかし、(3)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、遊びつきリンク部によって、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の車体が水平方向に回転するような慣性力が発電用エンジンからフレームに伝わることを抑制できる。
【0016】
本発明の一つの観点によれば、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(4) (2)又は(3)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記リンク部は、各々が左右に配置された対からなる第一の対と、第二の対と、第三の対とから構成され、前記第一の対及び第二の対は、前記残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動を許容する方向に動作し、前記第三の対は、前記クランク軸周り回転振動を抑制する。
【0017】
(4)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、リンク部が、第一の対と、第二の対と、第三の対とから構成される。第一の対及び第二の対は、残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動を許容する方向に動作する。第三の対は、クランク軸周り回転振動を抑制する。これにより、クランク軸線方向に見て、支持機構を、エンジン駆動電力供給ユニットのシリンダ軸線方向に発生する残存二次慣性力による振動を許容し、クランク軸周りの回転方向の振動を抑制する構造にすることができる。従って、(4)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、発電用エンジンに発生する振動が、フレームに伝達することを効率的に抑制することができる。
【0018】
本発明の一つの観点によれば、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(5) (1)から(4)の何れか1つのシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記発電用エンジンは、単気筒エンジン、燃焼タイミングのクランク角度が90度及び270度の並列2気筒エンジン以外の2気筒エンジン、3気筒エンジン、又はクロスプレーン型の並列4気筒エンジン以外の4気筒エンジンである。
【0019】
シリーズハイブリッド式鞍乗型車両において、一次慣性力及び一次慣性偶力による振動をバランサにより抑制し、支持機構により二次慣性力による振動がフレームに伝達することを抑制することにより、(5)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両の発電用エンジンであっても、振動がフレームに伝達することを抑制できる。
【0020】
本明細書にて使用される専門用語は特定の実施例のみを定義する目的であって発明を制限する意図を有しない。本明細書にて使用される用語「及び/又は」は一つの、又は複数の関連した列挙された構成物のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。本明細書中で使用される場合、用語「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」及び/又はそれらの等価物は広く使用され、直接的及び間接的な取り付け、接続及び結合の両方を包含する。更に、「接続された」及び「結合された」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されず、直接的又は間接的な電気的接続又は結合を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、多数の技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせを全て繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
【0021】
本明細書では、新しいエンジン駆動電力供給ユニットについて説明する。以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細無しに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0022】
シリーズハイブリッド式鞍乗型車両に関して、鞍乗型車両(straddled vehicle)とは、運転者がサドルに跨って着座する形式のビークルをいう。鞍乗型車両としては、例えば、モペット型、オフロード型、オンロード型の自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両としては、自動二輪車に限定されず、例えば、自動三輪車、ATV(All-Terrain Vehicle)等であってもよい。自動三輪車は、2つの前輪と1つの後輪とを備えていてもよく、1つの前輪と2つの後輪とを備えていてもよい。鞍乗型車両の駆動輪は、後輪であってもよく、前輪であってもよい。また、鞍乗型車両の駆動輪は、後輪及び前輪の双方であってもよい。また、鞍乗型車両は、リーン姿勢で旋回可能に構成されていることが好ましい。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両は、カーブの中心に傾いた姿勢で旋回するように構成される。これにより、リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両は、旋回時にビークルに加わる遠心力に対抗する。
【0023】
車体フレームは、鞍乗型車両の骨格をなし、蓄電装置、エンジン駆動電力供給ユニット及び駆動モータ等の鞍乗型車両の搭載部品等を支持する。車体フレームは、フロントフォークと、フレーム本体と、スイングアームとから構成される。フレーム本体は、例えば、シングルクレードル型、ダブルクレードル型、ダイヤモンド型、及びモノコック型等が挙げられるが、これらに限定されない。車体フレームは、フロントフォークと、フレーム本体と、スイングアームとが一体となって、前輪及び後輪からの荷重を受ける。
【0024】
発電用エンジンは、例えば、高負荷領域と低負荷領域とを有するエンジンである。発電用エンジンは、例えば、4ストロークエンジンである。4ストロークエンジンは、4ストロークの間に、高負荷領域と低負荷領域とを有する。高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンは、例えば、単気筒エンジンである。また、高負荷領域と低負荷領域とを有する。高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンは、1サイクル720度の間に180度以上の連続不燃焼区間を含む。
高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンでは、低い回転速度における回転の変動が、他のタイプのエンジンと比べ大きい。高負荷領域とは、エンジンの1燃焼サイクルのうち、負荷トルクが1燃焼サイクルにおける負荷トルクの平均値よりも高い領域をいう。低負荷領域とは、1燃焼サイクルにおける高負荷領域以外の領域をいう。クランク軸の回転角度を基準として見ると、エンジンでの低負荷領域は、例えば、高負荷領域より広い。圧縮行程は、高負荷領域と重なりを有する。
例えば、高負荷領域と低負荷領域とを有するエンジンにおいて、エンジンの始動時にクランク軸の回転力が高負荷領域の圧縮反力を乗り越えるための助走区間を得るように、クランク軸の始動開始位置を調整することができる。
【0025】
発電機は、例えば永久磁石式の始動発電機である。発電機は、例えば永久磁石を使用しないモータであってもよい。永久磁石式の発電機は、例えば、ブラシレスモータである。ブラシレスモータは、整流子を有さないモータである。発電機は、発電用エンジンによって駆動され発電するモータジェネレータである。発電機は、発電用エンジンを始動する始動モータとして機能してもよい。発電機は、これに限られない。永久磁石式の発電機は、例えば、ブラシ付き直流モータでもよい。ブラシレスモータは、例えば、アウターロータ型でもよく、また、インナーロータ型でもよい。また、ブラシレスモータは、ラジアルギャップ型でなく、アキシャルギャップ型でもよい。また、発電機は、例えばロータに永久磁石を有さないタイプでもよい。
【0026】
支持機構とは、例えばリンク機構と弾性部材との組み合わせである。支持機構は、例えばリンク機構及び弾性部材の何れかであってもよい。弾性部材は、例えばゴムブッシュである。弾性部材は、例えばダンパーゴムであってもよい。弾性部材は、弾性を有する部材である。弾性部材は、例えば、緩衝部材、制振部材、防振部材等を含む。支持機構は、車体フレームに発電用エンジンに支持するための接続部品又はこれらの接続部品の組み合わせである。支持機構は、発電用エンジンの振動を許容しつつ車体フレームに発電用エンジンを支持する。発電用エンジンの振動を許容しつつ発電用エンジンを車体フレームに支持する接続部品は、例えば発電用エンジンとフレームとを接続する弾性部材である。発電用エンジンの振動を許容しつつ発電用エンジンを車体フレームに支持する接続部品の組み合わせは、例えばリンク機構と弾性部材との組み合わせである。弾性部材は、例えばゴムブッシュである。弾性部材は、例えば内外筒ブッシュ、スグリブッシュ又はダンパーゴムであってもよい。弾性部材は、弾性を有する部材である。弾性部材は、例えば、緩衝部材、制振部材、防振部材等を含む。リンク機構は、例えばリンク板と回転支持部との組み合わせである。回転支持部は、例えばベアリングにより構成されたベアリング支持部である。回転支持部は、ベアリングに替えて、例えばリンク機構が回転可能に構成された弾性体による支持であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、本発明の目的は、発電用エンジンに発生する振動が、フレームに伝達することを効率的に抑制することができるシリーズハイブリッド式鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両の構成を示す左側面図であり、(b)は、(a)の鞍乗型車両1のエンジン駆動電力供給ユニットの構成を拡大して示す左側面図である。
【
図2】(a)は、本発明の第2実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両のエンジン駆動電力供給ユニットを拡大して示す左側面図であり、(b)は、(a)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両のエンジン駆動電力供給ユニットを拡大して示す背面図であり、(c)は、(a)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両の支持機構を拡大して示す左側面図である。
【
図3】(a)は、本発明の第3実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両のエンジン駆動電力供給ユニットを拡大して示す左側面図であり、(b)は、(a)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両のエンジン駆動電力供給ユニットを拡大して示す上面図である。
【
図4】(a)は、本発明の第4実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両のエンジン駆動電力供給ユニットを拡大して示す左側面図であり、(b)から(d)は、(a)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両のエンジン駆動電力供給ユニットの支持機構のリンク部を拡大して示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両1の構成を示す図である。なお、以下においては、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を、単に、鞍乗型車両ともいう。
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る鞍乗型車両1の構成を示す左側面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の鞍乗型車両1のエンジン駆動電力供給ユニット20の構成を拡大して示す左側面図である。
本明細書及び図面で、Fは、鞍乗型車両1における前方向を示す。Bは、鞍乗型車両1における後方向を示す。FBは、鞍乗型車両1における前後方向を示す。Uは、鞍乗型車両1における上方向を示す。Dは、鞍乗型車両1における下方向を示す。UDは、鞍乗型車両1における上下方向を示す。Lは、鞍乗型車両1における左方向を示す。Rは、鞍乗型車両1における右方向を示す。LRは、鞍乗型車両1における左右方向を示す。LRは、鞍乗型車両1における車幅方向でもある。即ち、鞍乗型車両1における車幅方向LRは、鞍乗型車両1における右方向R、及び左方向Lの双方を含んでいる。
【0031】
図1(a)の鞍乗型車両1は、車体フレーム10と、エンジン駆動電力供給ユニット20と、支持機構30とを備える。
エンジン駆動電力供給ユニット20は、発電用エンジン21と、発電機25とを有する。発電用エンジン21は、一つ又は複数のシリンダ211と、二軸一次バランサ212とを有する。二軸一次バランサ212は、一次慣性力及び一次慣性偶力による振動を抑制する。発電機25は、発電用エンジン21に取付けられる。発電機25は、発電用エンジン21のクランク軸213の回転によって駆動され発電し、発電された電力を、蓄電装置15を介して又は介さずに駆動モータ16に供給する。エンジン駆動電力供給ユニット20は、発電機25により生成された電力を出力可能であり、且つ発電用エンジン21から出力される動力を駆動輪17へ伝達しないように構成されている。
支持機構30は、残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動を許容しつつクランク軸213周り回転振動を抑制する態様で、エンジン駆動電力供給ユニット20を支持するように車体フレーム10に取り付けられる。残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動は、二軸一次バランサ212によって一次慣性力及び一次慣性偶力が抑制されることにより発電用エンジン21に残存する二次慣性力によって、クランク軸線S方向に見て、発電用エンジン21のシリンダ軸線T方向に発生する並進振動である。クランク軸213周り回転振動は、クランク軸線Sと平行な線を中心とする回転振動である。
【0032】
図1(b)に示す一次慣性力による振動X1は、発電用エンジン21のピストン214の往復運動に伴って生じる振動で、発電用エンジン21のクランク軸213の回転と同期して生じる振動である。一次慣性力による振動X1は、主にシリンダ211のシリンダ軸線T方向に振動が生じる。一次慣性偶力による振動X2は、発電用エンジン21のクランク軸213周りの回転力による振動である。二軸一次バランサ212は、クランク軸213の回転と同期してそれぞれ反対方向に回転する、クランク軸213に平行な二つのバランサシャフト213-1及び213-2を有するバランサにより、一次慣性力による発電用エンジン21の振動X1及び一次慣性偶力による発電用エンジン21の振動X2を抑制する。二次慣性力は、一次慣性力の倍の周波数で生じる慣性力で、シリンダ軸線T方向に生じる。二次慣性力による振動Y1は、一次慣性力による振動X1よりも振幅が小さい。残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動を許容しつつクランク軸213周り回転振動を抑制するように構成されるとは、残存二次慣性力による振動Y1の振幅及び振動方向に動くように支持機構30の可動距離及び方向を設定することである。
【0033】
本実施形態の鞍乗型車両1では、エンジン駆動電力供給ユニット20の発電用エンジン21に一次慣性力及び一次慣性偶力による振動を抑制する二軸一次バランサ212を設ける。また、エンジン駆動電力供給ユニット20を懸架する支持機構30を、残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動を許容しつつクランク軸213周り回転振動を抑制する態様で、エンジン駆動電力供給ユニット20を支持するように車体フレーム10に取り付ける。
【0034】
本実施形態のエンジン駆動電力供給ユニット20は、発電用エンジン21に設けられた二軸一次バランサ212により発電用エンジン21において発生する一次慣性力及び一次慣性偶力を抑制する。この時、発電用エンジンには二次慣性力による振動が残存するため、残存二次慣性力による振動が支持機構30により車体フレーム10に伝達することを抑制することが可能となる。そうすると、エンジン駆動電力供給ユニット20の発電用エンジン21から生じる振動を低減することができ、支持機構も、残りの二次慣性力による振動の抑制に特化することができる。これにより、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1において、大型化や構造の複雑化を抑制又は防止しつつ、車体フレーム10への発電用エンジン21の振動の伝達を効率的に抑制又は防止できる。
【0035】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。
図2(a)は、本発明の第2実施形態に係る鞍乗型車両2のエンジン駆動電力供給ユニット20を拡大して示す左側面図であり、
図2(b)は、
図2(a)の鞍乗型車両2のエンジン駆動電力供給ユニット20を拡大して示す背面図であり、
図2(c)は、
図2(a)の鞍乗型車両2の支持機構30を拡大して示す左側面図である。本実施形態では、鞍乗型車両2が、下記のように構成される。本実施形態において第1実施形態と同一の構成には、
図1に示す鞍乗型車両1と同じ符号を付する。
【0036】
図2(b)に示す通り、支持機構30は、複数の対をなしている。詳細には支持機構30を発電用エンジン21の左右1か所ずつ、左右方向に見て同一の位置に設け、これを1つの対とする(
図2(a)及び(b)参照)。本実施形態では、この対を、発電用エンジン21の複数個所に設ける。また、
図2(c)に示す通り、支持機構30はリンク機構と弾性体との組み合わせであるリンク部31で構成される。詳細には、リンク部31は、クランク軸線S方向(左右方向LR)に垂直な方向に延在するリンク板312と、クランク軸線S方向に平行な回転軸を有するベアリング支持部313とにより、リンク機構311を構成する。リンク機構311は、リンク板312が車体フレーム10に対して、クランク軸線S方向に垂直な方向に回転可能に構成される。リンク機構311は、弾性体314により車体フレーム10に支持され、弾性体315により発電用エンジン21に支持される。リンク機構311は、弾性体314によりリンク板312が大きく回転することを抑制し、弾性体315により発電用エンジン21を振動可能に支持する。
【0037】
本実施形態において、支持機構30を上述の通り構成することで、クランク軸線S方向に見て、支持機構30を、エンジン駆動電力供給ユニット20のシリンダ軸線T方向に発生する二次慣性力による振動を許容する構造にすることができる。また、支持機構30を、クランク軸213周りの回転振動を抑制する構造にすることができる。従って、本実施形態の鞍乗型車両2では、発電用エンジン21に発生する振動が、車体フレーム10に伝達することを効率的に抑制することができる。
【0038】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について説明する。
図3(a)は、本発明の第3実施形態に係る鞍乗型車両3のエンジン駆動電力供給ユニット20を拡大して示す左側面図であり、
図3(b)は、
図3(a)の鞍乗型車両3のエンジン駆動電力供給ユニット20を拡大して示す上面図である。本実施形態では、鞍乗型車両3が、下記のように構成される。本実施形態において第1実施形態と同一の構成には、
図1に示す鞍乗型車両1と同じ符号を付する。
【0039】
図3(a)に示す通り、鞍乗型車両3の発電機25は、車幅方向LRに見て、少なくとも一部が発電用エンジン21と重なりを有する。
図3(b)に示す通り、発電機25は、発電用エンジン21の1つ又は複数のシリンダ211と車幅方向LRにずれる。リンク部31は、各々が左右に配置された対からなる複数の対を構成する。リンク部31は、各々がリンク部31の動作の方向Pと交わる方向Qへの変位を許容する遊びq1を有する。リンク部31がなす各対について、車幅方向LRにおいて、対をなすリンク部31の各々からシリンダ211の中央(シリンダ軸線T)までの距離(q21、q22)の偏差が、対をなすリンク部31の各々からエンジン駆動電力供給ユニット20の重心Gまでの距離(q31、q32)の偏差よりも大きく、且つ対をなすリンク部31の各々から鞍乗型車両1の車幅方向LRにおける中心Cまでの距離(q41、q42)の偏差よりも大きい。
【0040】
本実施形態の鞍乗型車両3によれば、車幅方向LRにおいて、対をなすリンク部31の各々からシリンダ211の中央までの距離の偏差q2が、対をなすリンク部31の各々からエンジン駆動電力供給ユニット20の重心Gまでの距離の偏差q3よりも大きい。また、鞍乗型車両3によれば、車幅方向LRにおいて、対をなすリンク部31の各々からシリンダ211の中央までの距離の偏差q2が、対をなすリンク部31の各々から鞍乗型車両の車幅方向LRにおける中心Cまでの距離の偏差q4よりも大きい。
従って、本実施形態の鞍乗型車両3は、エンジン駆動電力供給ユニット20に、エンジン駆動電力供給ユニットの重心Gを中心として鞍乗型車両3が水平方向に回転するような慣性力Hが作用しやすい。しかし、本実施形態の鞍乗型車両3は、遊びつきリンクであるリンク部31によって、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両3の車体が水平方向に回転するような慣性力Hが発電用エンジン21から車体フレーム10に伝わることを抑制できる。
【0041】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態について説明する。
図4(a)は、本発明の第4実施形態に係る鞍乗型車両4のエンジン駆動電力供給ユニット20を拡大して示す左側面図であり、
図4(b)から(d)は、
図4(a)の鞍乗型車両4のエンジン駆動電力供給ユニット20の支持機構30のリンク部32L~34Lを拡大して示す左側面図である。本実施形態では、鞍乗型車両4が、下記のように構成される。本実施形態において第1実施形態と同一の構成には、
図1に示す鞍乗型車両1と同じ符号を付する。
【0042】
図4(a)の鞍乗型車両4のリンク部は、各々が左右に配置された対からなる第一の対であるリンク部32L及び32Rと、第二の対であるリンク部33L及び33Rと、第三の対であるリンク部34L及び34Rとから構成される。第一の対であるリンク部32L及び32R及び第二の対であるリンク部33L及び33Rは、残存二次慣性力によるシリンダ方向並進振動(振動Y1)を許容する方向に動作し、第三の対であるリンク部34L及び34Rは、クランク軸213周りの回転振動(振動X2)を抑制する。なお、
図4(a)から(d)において、鞍乗型車両4の左右方向LRにおける左方向Lのリンク部であるリンク部32L~34Lのみ図示し、鞍乗型車両4の左右方向LRにおける右方向Rのリンク部であるリンク部32R~34Rは図示しない。
【0043】
詳細には、リンク部32は、クランク軸線S方向(左右方向LR)に垂直な方向に延在するリンク板322と、クランク軸線S方向に平行な回転軸を有するベアリング支持部323とにより、リンク機構321を構成する。リンク機構321は、リンク板322が車体フレーム10に対して、クランク軸線S方向に垂直な方向に回転可能に構成される。リンク機構321は、弾性体支持部324で弾性体325により車体フレーム10に支持され、車体支持部326で弾性体327により発電用エンジン21に支持される。弾性体325はリンク板322が大きく回転することを抑制し、弾性体327は発電用エンジン21を振動可能に支持する。
リンク部33は、クランク軸線S方向(左右方向LR)に垂直な方向に延在するリンク板332と、クランク軸線S方向に平行な回転軸を有するベアリング支持部333とにより、リンク機構331を構成する。リンク機構331は、リンク板332が車体フレーム10に対して、クランク軸線S方向に垂直な方向に回転可能に構成される。リンク機構331は、弾性体支持部334で弾性体335により車体フレーム10に支持され、車体支持部336で弾性体337により発電用エンジン21に支持される。弾性体335はリンク板332が大きく回転することを抑制し、弾性体337は発電用エンジン21を振動可能に支持する。
リンク部34は、クランク軸線S方向(左右方向LR)に垂直な方向に延在するリンク板342と、クランク軸線S方向に平行な回転軸を有するベアリング支持部343とにより、リンク機構341を構成する。リンク機構341は、リンク板342が車体フレーム10に対して、クランク軸線S方向に垂直な方向に回転可能に構成される。リンク機構341は、車体支持部346で弾性体347により発電用エンジン21に支持される。弾性体347は発電用エンジン21を振動可能に支持する。
【0044】
本実施形態の鞍乗型車両4では、リンク部が、第一の対であるリンク部32と、第二の対であるリンク部33と、第三の対であるリンク部34とから構成される。第一の対であるリンク部32がベアリング支持部323を中心に回転し、第二の対であるリンク部33がベアリング支持部333を中心に回転することにより、発電用エンジン21がシリンダ方向並進振動を許容する方向及びクランク軸周りの回転振動を許容する方向に動作する。ここで、第三の対であるリンク部34は、発電用エンジン21のクランク軸周り回転振動を抑制する。発電用エンジン21がクランク軸周りに回転すると、リンク部34のベアリング支持部343と車体支持部346とを結ぶ線Z上に力が働く。この時、発電用エンジン21が線Zの方向に弾性体347の伸縮範囲以上に動くことを抑制することで、発電用エンジン21のクランク軸周り回転振動を抑制する。これにより、クランク軸線S方向に見て、支持機構30を、エンジン駆動電力供給ユニット20のシリンダ軸線T方向に発生する残存二次慣性力による振動を許容し、クランク軸周りの回転方向の振動を抑制する構造にすることができる。従って、本実施形態のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両4では、発電用エンジン21に発生する振動が、車体フレーム10に伝達することを効率的に抑制することができる。
【0045】
(適用例)
上記第1実施形態から第4実施形態の発電用エンジンは、例えば、単気筒エンジン、燃焼タイミングのクランク角度が90度及び270度の並列2気筒エンジン以外の2気筒エンジン、3気筒エンジン、又はクロスプレーン型の並列4気筒エンジン以外の4気筒エンジンである。単気筒エンジン以外の上述の発電用エンジンは、並列型エンジンでもV型エンジンでもよい。第1実施形態から第4実施形態の発電用エンジンがこれらのエンジンである場合、一次慣性力及び一次慣性偶力による振動をバランサにより抑制し、支持機構により二次慣性力による振動がフレームに伝達することを抑制することにより、振動がフレームに伝達することを抑制できる。
【符号の説明】
【0046】
1~5 シリーズハイブリッド式鞍乗型車両
10 車体フレーム
16 駆動モータ
17 駆動輪
20 エンジン駆動電力供給ユニット
21 発電用エンジン
25 発電機
30 支持機構
211 シリンダ
212 二軸一次バランサ
213 クランク軸