(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】トンネル内面形状測定システム
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
E21D9/06 301Z
(21)【出願番号】P 2023096072
(22)【出願日】2023-06-12
【審査請求日】2023-06-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595160927
【氏名又は名称】計測技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】紀伊 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】橋村 義人
(72)【発明者】
【氏名】入江 耀
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215167(JP,A)
【文献】特開2010-236870(JP,A)
【文献】特開2012-002783(JP,A)
【文献】特開2012-042400(JP,A)
【文献】特開平05-288548(JP,A)
【文献】特開2018-021327(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112229375(CN,A)
【文献】米国特許第05274437(US,A)
【文献】特許第7133888(JP,B1)
【文献】特開平7-224600(JP,A)
【文献】特許第5969964(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準線に沿うようにシールド機によって構築されるトンネルの内面形状を測定するシステムであって、
前記シールド機の掘進に追従して前記トンネル内を移動可能な第1の台車と、
前記第1の台車に設けられて前記トンネルの内面形状の測定に用いられる第1の距離センサと、
前記基準線の向きに対する前記第1の台車の向きのずれを特定する第1の特定部と、
を備え、
前記第1の特定部にて特定されたずれに基づいて、前記第1の距離センサの距離測定値が補正される、トンネル内面形状測定システム。
【請求項2】
前記第1の特定部は、
前記第1の台車に設けられた第1のトータルステーションと、
前記第1の台車に設けられて前記第1のトータルステーションによって視準される第1のターゲットと、
前記トンネル内に設けられて前記第1のトータルステーションによって視準される基準点と、
を備える、請求項1に記載のトンネル内面形状測定システム。
【請求項3】
前記第1の特定部は、前記第1の距離センサに設けられて前記第1のトータルステーションによって視準される第2のターゲットを更に備える、請求項2に記載のトンネル内面形状測定システム。
【請求項4】
前記シールド機と前記第1の台車との間に配置されて前記第1の台車と共に前記トンネル内を移動可能な第2の台車と、
前記シールド機と前記第2の台車との間に設けられるか、又は、前記第2の台車に設けられて、前記トンネルの内面形状の測定に用いられる第2の距離センサと、
前記基準線の向きに対する前記第2の台車の向きのずれを特定する第2の特定部と、
を更に備え、
前記第2の特定部にて特定されたずれに基づいて、前記第2の距離センサの距離測定値が補正される、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載のトンネル内面形状測定システム。
【請求項5】
前記シールド機と前記第1の台車との間に配置されて前記第1の台車と共に前記トンネル内を移動可能な第2の台車と、
前記シールド機と前記第2の台車との間に設けられるか、又は、前記第2の台車に設けられて、前記トンネルの内面形状の測定に用いられる第2の距離センサと、
前記基準線の向きに対する前記第2の台車の向きのずれを特定する第2の特定部と、
を更に備え、
前記第2の特定部にて特定されたずれに基づいて、前記第2の距離センサの距離測定値が補正され、
前記第2の特定部は、
前記第2の台車に設けられた第2のトータルステーションと、
前記第2の台車に設けられて前記第2のトータルステーションによって視準される第3のターゲットと、
前記第2のトータルステーションに設けられて前記第1のトータルステーションによって視準される第4のターゲットと、
を備える、請求項2又は請求項3に記載のトンネル内面形状測定システム。
【請求項6】
前記第2の特定部は、前記第2の距離センサに設けられて前記第2のトータルステーションによって視準される第5のターゲットを更に備える、請求項5に記載のトンネル内面形状測定システム。
【請求項7】
前記第4のターゲットは、前記第1のトータルステーションと前記第4のターゲットとの間に設けられた中継用プリズムを介して、前記第1のトータルステーションによって視準される、請求項5に記載のトンネル内面形状測定システム。
【請求項8】
前記第1の特定部は、
前記トンネル内における前記第1の台車より後方に設けられた第1のトータルステーションと、
前記第1の台車に設けられて前記第1のトータルステーションによって視準される第1のターゲットと、
前記トンネル内における前記第1のトータルステーションより後方に設けられて前記第1のトータルステーションによって視準される基準点と、
を備える、請求項1に記載のトンネル内面形状測定システム。
【請求項9】
前記第1の特定部は、前記第1の距離センサに設けられて前記第1のトータルステーションによって視準される第2のターゲットを更に備える、請求項8に記載のトンネル内面形状測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド機によって構築されるトンネルの内面形状を測定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路や鉄道等の管路として用いられるシールドトンネルは、シールド工法により構築される。シールド工法ではシールド機が用いられる。シールド機は、例えば、筒状のスキンプレートと、カッタヘッドと、推進ジャッキとを備える。スキンプレートは、シールド機の本体の外殻をなす。カッタヘッドは、スキンプレートの前端部(切羽側端部)に設けられて地山を掘削する。推進ジャッキは、スキンプレートの内側に設けられる。
【0003】
シールド工法では、例えば、地山に発進立坑と到達立坑とを構築し、発進立坑から到達立坑へ向けてシールド機で地山を掘削しながら、スキンプレートの後部の内方で次々にセグメントをトンネル周方向に組み立ててセグメントリングを構築する。そして、隣接するセグメントリング同士をトンネル軸方向で連結することで筒状の覆工体を構築する。シールド機は、シールド機の後方のセグメントリングを推進ジャッキで後方へ押圧する。シールド機は、推進ジャッキの押圧力の反力として発生する推力によって、地山を掘削しながら前進する。
【0004】
特許文献1には、シールド機のスキンプレートのテール部内に配置された距離センサを用いてセグメントリングまでの距離を測定し、この測定結果に基づいてセグメントリングの真円度を把握することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シールドトンネルは、その設計線形に対応する基準線に沿うように構築され得る。この基準線は直線部と曲線部とを含み得る。トンネルの真円度の測定では、基準線に対して垂直な断面である設計断面と、トンネルの真円度の測定が実際に行われる断面である測定断面とが一致することが好ましい。しかしながら、トンネルの曲線部の施工時には、測定断面が設計断面に対してずれかねない。このずれは、トンネルの真円度の測定に誤差を生じさせていた。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑み、トンネルの真円度の把握を含む、トンネルの内面形状の測定を精度よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため本発明の一側面によると、基準線に沿うようにシールド機によって構築されるトンネルの内面形状を測定するシステムが提供される。このシステムは、シールド機の掘進に追従してトンネル内を移動可能な第1の台車と、第1の台車に設けられてトンネルの内面形状の測定に用いられる第1の距離センサと、基準線の向きに対する第1の台車の向きのずれを特定する第1の特定部と、を備える。このシステムでは、第1の特定部にて特定されたずれに基づいて、第1の距離センサの距離測定値が補正される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、トンネルの内面形状の測定を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるシールド機の概略構成を示す図である。
【
図2】前記第1実施形態における曲線施工時のトンネルの平面図である。
【
図3】前記第1実施形態における第1の距離センサの概略構成を示す図である。
【
図4】前記第1実施形態における第1の距離センサの測定断面と設計断面とを示す図である。
【
図5】前記第1実施形態におけるシステムの概略構成を示す図である。
【
図6】前記第1実施形態における第1の距離センサの距離測定値の補正方法を示すフローチャートである。
【
図7】前記第1実施形態における方向角差の特定方法を示すフローチャートである。
【
図8】前記第1実施形態における補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図9】前記第1実施形態における補正値の一例を示す表である。
【
図10】前記第1実施形態におけるトンネルの内面形状の測定結果の一例を示す図である。
【
図11】本発明の第2実施形態におけるシールド機の概略構成を示す図である。
【
図12】前記第2実施形態における曲線施工時のトンネルの平面図である。
【
図13】前記第2実施形態における第2の距離センサの概略構成を示す図である。
【
図14】前記第2実施形態における第2の距離センサの測定断面と設計断面とを示す図である。
【
図15】前記第2実施形態におけるシステムの概略構成を示す図である。
【
図16】前記第2実施形態における第2の距離センサの距離測定値の補正方法を示すフローチャートである。
【
図17】前記第2実施形態における方向角差の特定方法を示すフローチャートである。
【
図18】本発明の第3実施形態における曲線施工時のトンネルの平面図である。
【
図19】本発明の第4実施形態における曲線施工時のトンネルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態におけるシールド機の概略構成を示す。尚、本実施形態では、便宜上、トンネル掘進方向EDを前進方向として前後左右を規定している。また本実施形態では、いわゆる泥土圧式のシールド機を例にとってシールド機の構成を説明する。しかしながら、シールド機は泥土圧式に限らない。
【0013】
シールド機1は、シールドトンネルの施工に用いられる。シールド機1は、円筒状のスキンプレート2と、掘削用のカッタヘッド3と、シールド隔壁(バルクヘッド)4とを備える。スキンプレート2は、シールド機1の本体の外殻をなす。カッタヘッド3は、スキンプレート2の前端部に設けられる。シールド隔壁4は、カッタヘッド3から間隔を空けて後方に配置される。
【0014】
カッタヘッド3はシールド隔壁4に回転自在に支持されている。カッタヘッド3は、シールド隔壁4の後面に設置された駆動用モータ(図示せず)を駆動源として、回転しながら地山を掘削する。
【0015】
カッタヘッド3とシールド隔壁4との間には、これらとスキンプレート2とによりカッタチャンバが区画形成されている。このカッタチャンバ内では、カッタヘッド3による掘削で生じた掘削土砂が滞留する。シールド機1は、このカッタチャンバ内の掘削土砂をシールド隔壁4の後方に搬出するスクリューコンベア(図示せず)を備えている。
【0016】
シールド機1は、シールド隔壁4の後方のスキンプレート2内に、エレクタ装置(図示せず)を備える。このエレクタ装置は、円弧状断面を有するセグメント7を組立ててセグメントリングを構築すると共に、隣接するセグメントリング同士をトンネル軸方向で連結することで円筒状の覆工体8を構築する。ここにおいて、覆工体8を含むトンネルは、その設計線形に対応する基準線SLに沿うようにシールド機1によって構築される。基準線SLは、トンネル軸方向に延びる仮想線である。
【0017】
シールド機1のスキンプレート2より内側には、複数の推進ジャッキ5が、スキンプレート2の内面に沿ってスキンプレート2の周方向に互いに間隔を空けて配置されている。推進ジャッキ5は、シリンダとロッドとにより構成される油圧ジャッキであり、伸縮自在である。推進ジャッキ5のシリンダは、その前端がスキンプレート2に固定されており、後端側にて、推進ジャッキ5のロッドが進出・退入可能となっている。推進ジャッキ5のロッドの後端部を既設のセグメント7に当接させた状態で推進ジャッキ5を伸長作動させることにより、シールド機1は推進力を得ることができる。このようにして、推進ジャッキ5は、既設のセグメント7から反力を取ってシールド機1を推進させる。
【0018】
覆工体8内におけるシールド機1の後方には牽引棒9を介して複数の台車(いわゆる後続台車)10が連結されている。本実施形態では、複数の台車10が、4つの台車10a~10dによって構成される例を示している。しかしながら、台車10は1つ以上の任意の個数であり得る。台車10には、シールド機1を作動させるための油圧機器や電気設備等が設けられている。
【0019】
台車10a~10dはトンネル軸方向に沿って直列に連結されている。台車10a~10dは、隣接する台車同士で相対的に左右方向に揺動可能なように、連結手段を介して直列に連結されている。尚、台車10a~10dは、後方から前方に向かって、台車10a、台車10b、台車10c、台車10dの順に並んでいる。ここにおいて、台車10a~10dのうち最も後側の台車10aが、本発明の「第1の台車」に対応する。台車10a~10dのうち最も前側の台車10dが、本発明の「第2の台車」に対応する。台車10dは、シールド機1と台車10aとの間に配置されて台車10aと共に覆工体8内(トンネル内)を移動可能である。
【0020】
覆工体8の底部には枕木11が設けられている。枕木11の上面側には、台車10a~10dが走行するための左右一対のレール12がトンネル軸方向に沿って敷設されている。ここで、軌道13は、枕木11とレール12とにより構成されている。台車10a~10dは軌道13上(特にレール12上)を走行可能である。
【0021】
シールド機1には、図示しないヒンジ機構を介して、牽引棒9の前端が取り付けられている。牽引棒9の後端は、図示しないヒンジ機構を介して、台車10dの先頭部に取り付けられている。これにより、牽引棒9は、シールド機1に対して左右方向に揺動することができ、更に、台車10dは、牽引棒9に対して左右方向に揺動することができる。
【0022】
台車10a~10dは、レール12によって案内されながら、牽引棒9を介してシールド機1により牽引されつつ、シールド機1の掘進に追従して、軌道13上を前進する。
【0023】
次に、シールドトンネルの構築方法について
図1を用いて説明する。
まず、推進ジャッキ5を短縮した状態で、スキンプレート2内にて前述のエレクタ装置を用いて、セグメント7を組み立てて、新たなセグメントリングを構築する。この新たなセグメントリングは覆工体8を構成するものである。
【0024】
次に、推進ジャッキ5を伸長作動させることにより、シールド機1を推進させる。
このようにセグメントリングの構築とシールド機1の推進とを繰り返すことで、覆工体8を含むトンネルが構築される。
【0025】
次に、トンネルの内面形状を測定するシステム(トンネル内空形状測定システム)20について、前述の
図1に加えて、
図2~
図5を用いて説明する。
図2は、曲線施工時のトンネルの平面図である。
図3は、第1の距離センサE1の概略構成を示す図である。
図4は、第1の距離センサE1の測定断面MPと設計断面SPとを示す図である。
図5は、システム20の概略構成を示す図である。尚、
図2では、図示簡略化のため、前述の牽引棒9及び軌道13等の図示を省略している。
【0026】
図1及び
図2に示すように、台車10aの上部かつ後部には、第1のトータルステーションM1が設けられている。第1のトータルステーションM1は、いわゆる自動追尾式の測距測角儀である。
【0027】
台車10aの上部かつ後端部には、左右一対の第1のターゲットTR1,TR2が互いに間隔を空けて配置されている。第1のターゲットTR1,TR2は反射プリズム等により構成されている。第1のトータルステーションM1は、第1のターゲットTR1,TR2をそれぞれ自動で視準し得る。この自動視準に関する技術については、例えば特許第5196725号公報に記載されているように周知であるので、その説明を省略する。
【0028】
平面視で、第1のターゲットTR1,TR2を通る直線(仮想線)は、
図4に示す測定断面MPと平行になるように設定されている。そして、
図2に示す台車10aの向き(台車10aの前面及び後面の向き)u1は、
図4に示す測定断面MPと直交する。ここで、
図4に示す設計断面SPは、基準線SLと直交する。基準線SLの直線部に沿う、トンネルの直線施工時には、設計断面SPと測定断面MPとが略一致する。これに対し、基準線SLの曲線部に沿う、トンネルの曲線施工時には、設計断面SPに対して測定断面MPが傾斜し得る(例えば、
図4に示す、後述する方向角差Δθ1分、傾斜し得る)。
【0029】
台車10aの後部には、第1の距離センサE1が設けられている。本実施形態では、第1の距離センサE1は、覆工体8を構成するセグメントリングの中心に位置するように台車10aに取り付けられている。しかしながら、第1の距離センサE1は、セグメントリングの中心からずれた位置に配置されてもよい。
【0030】
図1~
図3に示すように、第1の距離センサE1は、本体部15と回転部16とを備える回転式のレーザー距離センサである。本体部15は台車10aに固定されている。回転部16は本体部15より後方に位置する。回転部16は本体部15に対して回転自在である。回転部16の回転軸は、測定断面MPに直交する。第1の距離センサE1は、回転部16から覆工体8の内面(トンネルの内面)に向けてトンネル径方向にレーザー光LZを照射し、その反射光により、第1の距離センサE1と覆工体8の内面との間の距離を検出する。このレーザー光LZの照射方向は、回転部16の回転軸に対して垂直は方向である。ここで、回転部16を本体部15に対して回転させると、覆工体8の内面においてレーザー光LZが照射される位置が、覆工体8の周方向に沿って移動する。すなわち、第1の距離センサE1は、レーザー光LZの照射方向を変更可能に構成されている。回転部16を本体部15に対して回転させつつ回転部16からレーザー光LZを照射する場合において、レーザー光LZの照射可能範囲が、測定断面MPに対応し得る。
【0031】
第1の距離センサE1の回転部16の後端部には、第2のターゲットTE1が設けられている。第2のターゲットTE1は反射プリズム等により構成されている。第1のトータルステーションM1は、第2のターゲットTE1を自動で視準し得る。ここで、第2のターゲットTE1は、第1の距離センサE1の本体部15に対して、回転部16と同軸的かつ一体的に回転自在である。
【0032】
図1及び
図2に示すように、覆工体8内(トンネル内)における台車10aの後方(すなわち台車10aより坑口側)には、複数の基準点N1,N2が設けられている。基準点N1,N2は反射プリズム等により構成されている。尚、本実施形態では、覆工体8内に設けられる基準点が2つである。しかしながら、覆工体8内に設けられる基準点が3つ以上であってもよいことは言うまでもない。第1のトータルステーションM1は、基準点N1,N2をそれぞれ自動で視準し得る。
【0033】
図5に示すように、トンネルの内面形状を測定するシステム20は、第1のトータルステーションM1と、第1の距離センサE1と、処理装置21と、記録装置22と、表示装置23とを備える。処理装置21と、記録装置22と、表示装置23とについては、例えば、台車10a~10dのいずれかか、又は、トンネル工事現場の詰所等に配置され得る。
【0034】
第1のトータルステーションM1と処理装置21とは信号線31を介して接続されている。第1の距離センサE1と処理装置21とは信号線32を介して接続されている。処理装置21と記録装置22とは信号線33を介して接続されている。処理装置21と表示装置23とは信号線34を介して接続されている。尚、本実施形態では、第1のトータルステーションM1と、第1の距離センサE1と、処理装置21と、記録装置22と、表示装置23とを信号線31~34で接続することで相互間の通信を行っている。しかしながら、信号線31~34の少なくとも1つを無線通信機器(送信機及び受信機)に変更して相互間の無線通信を行うようにしてもよい。
【0035】
処理装置21は、CPU、メモリ、ハードディスク等を備え、各種演算処理を行う。処理装置21は、トンネル設計上の座標系設定部41と、座標情報記憶部42と、方向角差特定部43と、距離測定値補正部44と、トンネル内面形状特定部45と、を有する。
【0036】
本実施形態において、トンネル設計上の座標系設定部41は、トンネル設計上の2次元座標系(直交座標系)を設定する。しかしながら、トンネル設計上の座標系設定部41がトンネル設計上の3次元座標系を設定してもよいことは言うまでもない。
【0037】
座標情報記憶部42は、トンネル設計上の座標系設定部41にて設定された座標系における基準線SLの位置(座標)と、基準線SLの曲線部の中心(曲率中心)の位置(座標)と、基準点N1,N2の位置(座標)とを記憶している。
【0038】
方向角差特定部43では、基準線SLの向きu0に対する台車10aの向きu1のずれを表わす、基準線SLと台車10aとの方向角差Δθ1(
図2参照)を特定する。ここで、前述のように、基準線SLが設計断面SPと直交している。また、前述のように、台車10aの向き(台車10aの前面及び後面の向き)u1が、測定断面MPと直交している。従って、この方向角差Δθ1は、設計断面SPと測定断面MPとがなす角に対応する(
図4参照)。尚、本発明の「第1の特定部」には、第1のトータルステーションM1と、第1のターゲットTR1,TR2と、第2のターゲットTE1と、基準点N1,N2とが含まれ得る。
【0039】
距離測定値補正部44では、方向角差特定部43にて特定された方向角差Δθ1に基づいて、第1の距離センサE1の距離測定値(第1の距離センサE1によって測定された距離の測定値)を補正する。
【0040】
トンネル内面形状特定部45では、距離測定値補正部44にて補正された距離測定値を用いて、設計断面SPにおける覆工体8の内面形状(トンネルの内面形状)を特定する。
【0041】
記録装置22はプリンタと記憶装置との少なくとも一方を含む。記録装置22がプリンタを含む場合には、当該プリンタによって、設計断面SPにおける覆工体8の内面形状(トンネルの内面形状)が紙等に印刷される。記録装置22が記憶装置を含む場合には、当該記憶装置が、設計断面SPにおける覆工体8の内面形状(トンネルの内面形状)を記憶する。
【0042】
表示装置23は、設計断面SPにおける覆工体8の内面形状(トンネルの内面形状)を表示するものであり、例えばディスプレイである。
【0043】
図6は、システム20にて実施される、第1の距離センサE1の距離測定値の補正方法を示すフローチャートである。このフローは、所定の距離的間隔又は時間的間隔で(例えば、1セグメントリング分の掘進毎に)繰り返されてもよい。このフローは、トンネルの曲線施工時に実施されるのが好ましい。
【0044】
まず、シールド機1の掘進停止時に、第1の距離センサE1の回転部16を回転させつつ回転部16からレーザー光LZを照射することで、覆工体8の周方向の複数点での、第1の距離センサE1と覆工体8の内面との間の距離を測定する。
【0045】
次に、ステップS1にて、処理装置21の距離測定値補正部44が、第1の距離センサE1の距離測定値を取得する。この第1の距離センサE1の距離測定値は、レーザー光LZの照射方向に対応する角度α(後述する
図8及び
図9参照)と関連付けられた状態で、距離測定値補正部44によって取得され得る。
【0046】
次に、ステップS2にて、処理装置21の方向角差特定部43が、基準線SLと台車10aとの方向角差Δθ1を特定する。
【0047】
ここで、ステップS2にて実施される方向角差Δθ1の特定について、
図7を用いて説明する。
図7は、方向角差Δθ1の特定方法を示すフローチャートである。
【0048】
まず、ステップS11にて、第1のトータルステーションM1により、基準点N1,N2を視準する。これにより、第1のトータルステーションM1の位置(座標)が特定される。
【0049】
次に、ステップS12にて、第1のトータルステーションM1により、第2のターゲットTE1を視準する。これにより、第1の距離センサE1の位置(座標)が特定される。
【0050】
次に、ステップS13にて、第1のトータルステーションM1により、第1のターゲットTR1,TR2を視準する。これにより、第1のターゲットTR1,TR2の各々の位置(座標)が特定される。尚、ステップS13は、ステップS12に先立って実施されてもよい。
【0051】
次に、ステップS14にて、第1の距離センサE1の座標(第2のターゲットTE1の座標)と第1のターゲットTR1,TR2の座標とに基づいて、方向角差Δθ1を特定する。
【0052】
ここで、ステップS14にて実施される処理の一例について、
図2を参照しつつ説明する。ここにおいて、第1のターゲットTR1,TR2、及び第1の距離センサE1の座標を、それぞれ、以下のように仮定し、また、基準線SLの曲線部の中心(曲率中心)CCの座標を以下のように仮定する。
【0053】
TR1:(x,y)=(x1,y1)
TR2:(x,y)=(x2,y2)
E1:(x,y)=(x3,y3)
CC:(x,y)=(0,0)
【0054】
第1のターゲットTR1,TR2を通る直線(仮想線)の方程式は、以下の式(1)となる。
【0055】
y=Ax+y1-Ax1 …(1)
ここで、
A=(y2-y1)/(x2-x1)
である。
【0056】
曲率中心CCと第1の距離センサE1とを通る直線(仮想線)の方程式は、以下の式(2)となる。
【0057】
y=Bx …(2)
ここで、
B=y3/x3
である。
【0058】
ここにおいて、第1のターゲットTR1,TR2を通る直線(仮想線)は
図4の測定断面MPに対応する。また、曲率中心CCと第1の距離センサE1とを通る直線(仮想線)は、
図4の設計断面SPに対応する。従って、式(1)で表される直線と式(2)で表される直線とがなす角度が、
図4に示す方向角差Δθ1に対応する。よって、方向角差Δθ1は、二直線がなす角を求める公式により、以下の式(3)により表される。
【0059】
Δθ1=arctan{(A-B)/(1+A・B)} …(3)
ここで、
A=(y2-y1)/(x2-x1)
B=y3/x3
である。
【0060】
すなわち、式(3)を用いることで、第1の距離センサE1の座標と第1のターゲットTR1,TR2の座標とに基づいて、方向角差Δθ1を特定することができる。
【0061】
一例として、第1のターゲットTR1,TR2、及び第1の距離センサE1の座標(単位はメートルである)を、それぞれ、以下のように仮定する。
【0062】
TR1:(x,y)=(x1,y1)=(11798,96285)
TR2:(x,y)=(x2,y2)=(12158,102275)
E1:(x,y)=(x3,y3)=(12327,99259)
【0063】
前述の各値を式(3)に代入すると、
Δθ1=3.6[deg]
となる。
【0064】
ステップS2(ステップS11~S14)にて方向角差Δθ1が特定された後、ステップS3にて、処理装置21の距離測定値補正部44が、方向角差Δθ1に基づいて、第1の距離センサE1の距離測定値を補正する。
【0065】
この補正された結果である、補正された距離測定値W1と、補正される前の距離測定値(当初の距離測定値)W0と、方向角差Δθ1に基づいて得られる補正値Cとには、以下の式(4)の関係がある。
【0066】
W1=C・W0 …(4)
【0067】
つまり、距離測定値補正部44では、第1の距離センサE1の当初の距離測定値W0に、補正値Cをかけることで、補正された距離測定値W1を得ることができる。
【0068】
ここで、補正値Cを算出する方法について、
図4に加えて、
図8を用いて説明する。
図8は、補正値Cの算出方法を説明するための図である。
【0069】
図8は、シールド機1の切羽側から見た、設計断面SPにおける2次元座標系(直交座標系)を示す。
図8に示すm軸はシールド機1の幅方向(左右方向)に対応する。
図8に示すn軸はシールド機1の鉛直方向(上下方向)に対応する。
図8に示す座標系の原点Oは基準線SLに対応する。
図8に示す角度αは、n軸の正の方向(真上)を0度とし、切羽側から見て、原点O周りに時計回りに増加するように設定されている。ここで、本実施形態では、原点Oに第1の距離センサE1が位置し得る。ゆえに、角度αは、第1の距離センサE1におけるレーザー光LZの照射方向に対応し得る。
【0070】
図8に破線で示されている円S1は、設計断面SPにおける覆工体8の内面(トンネルの内面)の設計形状を示している。円S1は、原点Oを中心とする半径rの円形である。
【0071】
図8に実線で示されている楕円L1は、円S1の測定断面MPへの写像を示している。ここで、
図8に示すように、楕円L1の長軸の長さを「a×2」とし、短軸の長さを「b×2」とすると、楕円L1の方程式は、以下の式(5)で表される。
【0072】
(m2/a2)+(n2/b2)=1 …(5)
【0073】
ここにおいて、設計断面SPと測定断面MPとがなす角(方向角差Δθ1)を考慮すると、以下の式(6)及び(7)が得られる。
【0074】
a=r/cosΔθ1 …(6)
b=r …(7)
【0075】
一方、覆工体8の内面(トンネルの内面)の形状測定の方程式は、以下の式(8)となり、
図8における直線L2に対応する。
【0076】
n=m・tan(270-α) …(8)
【0077】
式(5)~(8)を用いると、方向角差Δθ1及び角度αが定まれば、それに応じて、楕円L1上の点P(
図8参照)の座標(m,n)が算出される。この算出結果の一例が
図9に示されている。
【0078】
図9では、式(5)~(8)に関して、以下のように仮定している。
Δθ1=3.6[deg]
r=5000[m]
【0079】
図9に示すように、角度αに応じて、楕円L1上の点Pの座標(m,n)が算出される。この座標(m,n)に基づいて、原点Oから楕円L1上の点Pまでの距離(換算距離)r’が算出される。補正値Cは、以下の式(9)により算出される。
【0080】
C=r/r’ …(9)
【0081】
このようにして、方向角差Δθ1及び角度αに応じた補正値Cが算出される。つまり、
図9は、補正値Cの一例を示している。
【0082】
本実施形態では、ステップS2(ステップS11~S14)の後に補正値Cを算出している。しかしながら、ステップS2(ステップS11~S14)に先立って、あらゆる方向角差Δθ1及び角度αに対応する補正値Cを予め算出しておき、それを距離測定値補正部44に記憶させておいてもよい。例えば、方向角差Δθ1と角度αと補正値Cとの関係を示すマップを距離測定値補正部44に記憶させておいてもよい。
【0083】
このようにして、第1の距離センサE1の距離測定値が補正される。
【0084】
この後、処理装置21のトンネル内面形状特定部45では、第1の距離センサE1の補正された距離測定値W1に基づいて、設計断面SPにおける覆工体8の内面形状(トンネルの内面形状)を特定する。
【0085】
図10は、トンネルの内面形状の測定結果の一例を示している。具体的には、
図10は、表示装置23にて表示されている、設計断面SPにおける覆工体8の内面形状(トンネルの内面形状)Tと、前述の円S1とを示している。この内面形状Tは、第1の距離センサE1の補正された距離測定値W1から得られる座標をプロットしたものである。例えば
図10に示す表示に基づいて、覆工体8の内面(トンネルの内面)の真円度の測定を容易に行うことができる。つまり、覆工体8の真円度(トンネルの真円度)を容易に測定できる。
【0086】
本実施形態によれば、基準線SLに沿うようにシールド機1によって構築されるトンネルの内面形状を測定するシステム20は、シールド機1の掘進に追従してトンネル内を移動可能な台車10a(第1の台車)と、台車10aに設けられてトンネルの内面形状の測定に用いられる第1の距離センサE1と、基準線SLの向きu0に対する台車10aの向きu1のずれを特定する第1の特定部と、を備える。システム20では、第1の特定部にて特定されたずれに基づいて、第1の距離センサE1の距離測定値が補正される。これにより、トンネルの内面形状の測定を精度よく行うことができる。
【0087】
また本実施形態によれば、第1の特定部は、台車10a(第1の台車)に設けられた第1のトータルステーションM1と、台車10aに設けられて第1のトータルステーションM1によって視準される第1のターゲットTR1,TR2と、トンネル内に設けられて第1のトータルステーションM1によって視準される基準点N1,N2と、を備える。これにより、台車10aの位置及び向きu1を簡易にかつ精度よく把握することができる。
【0088】
また本実施形態によれば、第1の特定部は、第1の距離センサE1に設けられて第1のトータルステーションM1によって視準される第2のターゲットTE1を更に備える。これにより、第1の距離センサE1の位置を簡易にかつ精度よく把握することができる。
【0089】
尚、本実施形態において、第1の特定部は、第1の距離センサE1に設けられている第2のターゲットTE1を第1のトータルステーションM1によって視準することにより、第1の距離センサE1の位置を直接的に把握している。しかしながら、第1の特定部は、台車10aの位置及び向きu1が把握されている場合に、把握されている台車10aの位置及び向きu1に基づいて、第1の距離センサE1の位置を間接的に把握してもよい。
【0090】
また、第1の特定部における台車10aの位置及び向きu1の把握は、台車10aの変位(位置変化の時間的推移)に基づいてもよい。この台車10aの変位は、シールド機1の推進ジャッキ5の伸長量に基づいて算出されてもよい。また、この台車10aの変位は、シールド機1の推進ジャッキ5の伸長量と、軌道13の座標(レール12の敷設位置)とに基づいて算出されてもよい。軌道13の座標は、座標情報記憶部42にて記憶され得る。
【0091】
本実施形態では、トンネル設計上の2次元座標系を設定した上で、基準線SLの向きu0に対する台車10aの向きu1のずれ(方向角差Δθ1)に基づいて、第1の距離センサE1の距離測定値を補正している。この点、トンネル設計上の3次元座標系を設定した上で、基準線SLの向きu0に対する台車10aの向きu1のずれに基づいて、第1の距離センサE1の距離測定値を補正してもよいことは言うまでもない。
【0092】
次に、本発明の第2実施形態について、
図11~
図15を用いて説明する。
図11は、本実施形態におけるシールド機1の概略構成を示す。
図12は、本実施形態における曲線施工時のトンネルの平面図である。
図13は、第2の距離センサE2の概略構成を示す図である。
図14は、第2の距離センサE2の測定断面MPと設計断面SPとを示す図である。
図15は、システム20の概略構成を示す図である。尚、
図12では、図示簡略化のため、前述の牽引棒9及び軌道13等の図示を省略している。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0093】
図11及び
図12に示すように、台車10dの上部かつ前部には、第2のトータルステーションM2が設けられている。第2のトータルステーションM2は、いわゆる自動追尾式の測距測角儀である。
【0094】
台車10dの上部かつ前端部には、左右一対の第3のターゲットTF1,TF2が互いに間隔を空けて配置されている。第3のターゲットTF1,TF2は反射プリズム等により構成されている。第2のトータルステーションM2は、第3のターゲットTF1,TF2をそれぞれ自動で視準し得る。
【0095】
平面視で、第3のターゲットTF1,TF2を通る直線(仮想線)は、
図14に示す測定断面MPと平行になるように設定されている。そして、
図12に示す台車10dの向き(台車10dの前面及び後面の向き)u2は、
図14に示す測定断面MPと直交する。ここで、
図14に示す設計断面SPは、基準線SLと直交する。基準線SLの直線部に沿う、トンネルの直線施工時には、設計断面SPと測定断面MPとが略一致する。これに対し、基準線SLの曲線部に沿う、トンネルの曲線施工時には、設計断面SPに対して測定断面MPが傾斜し得る(例えば、
図14に示す、後述する方向角差Δθ2分、傾斜し得る)。
【0096】
台車10dの前部には、第2の距離センサE2が設けられている。本実施形態では、第2の距離センサE2は、覆工体8を構成するセグメントリングの中心に位置するように台車10dに取り付けられている。しかしながら、第2の距離センサE2は、セグメントリングの中心からずれた位置に配置されてもよい。また、第2の距離センサE2は、シールド機1と台車10dとの間の足場やフレームなど(図示せず)に設けられてもよい。この足場やフレームなどは、シールド機1と台車10dとの少なくとも一方に連結され得る。
【0097】
図11~
図13に示すように、第2の距離センサE2は、第1の距離センサE1と同様の構成である。第2の距離センサE2も、本体部15と回転部16とを備える回転式のレーザー距離センサである。本体部15は台車10dに固定されている。回転部16は本体部15より前方に位置する。回転部16の回転軸は、測定断面MPに直交する。第2の距離センサE2は、回転部16から覆工体8の内面(トンネルの内面)に向けてトンネル径方向にレーザー光LZを照射し、その反射光により、第2の距離センサE2と覆工体8の内面との間の距離を検出する。このレーザー光LZの照射方向は、回転部16の回転軸に対して垂直は方向である。ここで、回転部16を本体部15に対して回転させると、覆工体8の内面においてレーザー光LZが照射される位置が、覆工体8の周方向に沿って移動する。すなわち、第2の距離センサE2も、第1の距離センサE1と同様に、レーザー光LZの照射方向を変更可能に構成されている。回転部16を本体部15に対して回転させつつ回転部16からレーザー光LZを照射する場合において、レーザー光LZの照射可能範囲が、測定断面MPに対応し得る。
【0098】
第2のトータルステーションM2には、第4のターゲットTAが設けられている。第4のターゲットTAは反射プリズム等により構成されている。第1のトータルステーションM1は、第4のターゲットTAを自動で視準し得る。
【0099】
第2の距離センサE2の回転部16の前端部には、第5のターゲットTE2が設けられている。第5のターゲットTE2は反射プリズム等により構成されている。第2のトータルステーションM2は、第5のターゲットTE2を自動で視準し得る。ここで、第5のターゲットTE2は、第2の距離センサE2の本体部15に対して、回転部16と同軸的かつ一体的に回転自在である。
【0100】
図15に示すように、本実施形態では、第2のトータルステーションM2と処理装置21とは信号線35を介して接続されている。第2の距離センサE2と処理装置21とは信号線36を介して接続されている。尚、本実施形態では、第2のトータルステーションM2と、第2の距離センサE2と、処理装置21とを信号線35,36で接続することで相互間の通信を行っている。しかしながら、信号線35,36の少なくとも1つを無線通信機器(送信機及び受信機)に変更して相互間の無線通信を行うようにしてもよい。
【0101】
方向角差特定部43では、基準線SLの向きu0に対する台車10dの向きu2のずれを表わす、基準線SLと台車10dとの方向角差Δθ2(
図12参照)を特定する。ここで、前述のように、基準線SLが設計断面SPと直交している。また、前述のように、台車10dの向き(台車10dの前面及び後面の向き)u2が、測定断面MPと直交している。従って、この方向角差Δθ2は、設計断面SPと測定断面MPとがなす角に対応する(
図14参照)。尚、本発明の「第2の特定部」には、第2のトータルステーションM2と、第3のターゲットTF1,TF2と、第4のターゲットTAと、第5のターゲットTE2と、が含まれ得る。本実施形態においても、方向角差特定部43にて、方向角差Δθ1が特定され得る。
【0102】
距離測定値補正部44では、方向角差特定部43にて特定された方向角差Δθ2に基づいて、第2の距離センサE2の距離測定値(第2の距離センサE2によって測定された距離の測定値)を補正する。尚、本実施形態においても、距離測定値補正部44にて、第1の距離センサE1の距離測定値が補正され得る。
【0103】
図16は、システム20にて実施される、第2の距離センサE2の距離測定値の補正方法を示すフローチャートである。このフローは、所定の距離的間隔又は時間的間隔で(例えば、1セグメントリング分の掘進毎に)繰り返されてもよい。このフローは、トンネルの曲線施工時に実施されるのが好ましい。
【0104】
まず、シールド機1の掘進停止時に、第2の距離センサE2の回転部16を回転させつつ回転部16からレーザー光LZを照射することで、覆工体8の周方向の複数点での、第2の距離センサE2と覆工体8の内面との間の距離を測定する。
【0105】
次に、ステップS21にて、処理装置21の距離測定値補正部44が、第2の距離センサE2の距離測定値を取得する。この第2の距離センサE2の距離測定値は、レーザー光LZの照射方向に対応する角度α(
図8及び
図9参照)と関連付けられた状態で、距離測定値補正部44によって取得され得る。
【0106】
次に、ステップS22にて、処理装置21の方向角差特定部43が、基準線SLと台車10dとの方向角差Δθ2を特定する。
【0107】
ここで、ステップS22にて実施される方向角差Δθ2の特定について、
図17を用いて説明する。
図17は、方向角差Δθ2の特定方法を示すフローチャートである。
【0108】
まず、ステップS11にて、第1のトータルステーションM1により、基準点N1,N2を視準する。これにより、第1のトータルステーションM1の位置(座標)が特定される。
【0109】
次に、ステップS31にて、第1のトータルステーションM1により、第4のターゲットTAを視準する。これにより、第2のトータルステーションM2の位置(座標)が特定される。
【0110】
次に、ステップS32にて、第2のトータルステーションM2により、第5のターゲットTE2を視準する。これにより、第2の距離センサE2の位置(座標)が特定される。
【0111】
次に、ステップS33にて、第2のトータルステーションM2により、第3のターゲットTF1,TF2を視準する。これにより、第3のターゲットTF1,TF2の各々の位置(座標)が特定される。尚、ステップS33は、ステップS32に先立って実施されてもよい。
【0112】
次に、ステップS34にて、第2の距離センサE2の座標(第5のターゲットTE2の座標)と第3のターゲットTF1,TF2の座標とに基づいて、方向角差Δθ2を特定する。この方向角差Δθ2の特定方法は、前述の方向角差Δθ1の特定方法と同様であるので、その説明を省略する。
【0113】
ステップS22(ステップS11,S31~S34)にて方向角差Δθ2が特定された後、ステップS23にて、処理装置21の距離測定値補正部44が、方向角差Δθ2に基づいて、第2の距離センサE2の距離測定値を補正する。この第2の距離センサE2の距離測定値を補正方法は、前述の第1の距離センサE1の距離測定値を補正方法と同様であるので、その説明を省略する。
【0114】
この後、処理装置21のトンネル内面形状特定部45では、第2の距離センサE2の補正された距離測定値に基づいて、設計断面SPにおける覆工体8の内面形状(トンネルの内面形状)を特定する。
【0115】
特に本実施形態によれば、システム20は、シールド機1と台車10a(第1の台車)との間に配置されて台車10aと共にトンネル内を移動可能な台車10d(第2の台車)と、シールド機1と台車10dとの間に設けられるか、又は、台車10dに設けられて、トンネルの内面形状の測定に用いられる第2の距離センサE2と、基準線SLの向きu0に対する台車10dの向きu2のずれを特定する第2の特定部と、を更に備える。システム20では、第2の特定部にて特定されたずれに基づいて、第2の距離センサE2の距離測定値が補正される。これにより、トンネルの内面形状の測定を精度よく行うことができる。
【0116】
また本実施形態によれば、第2の特定部は、台車10d(第2の台車)に設けられた第2のトータルステーションM2と、台車10dに設けられて第2のトータルステーションM2によって視準される第3のターゲットTF1,TF2と、第2のトータルステーションM2に設けられて第1のトータルステーションM1によって視準される第4のターゲットTAと、を備える。これにより、台車10dの位置及び向きu2を簡易にかつ精度よく把握することができる。
【0117】
また本実施形態によれば、第2の特定部は、第2の距離センサE2に設けられて第2のトータルステーションM2によって視準される第5のターゲットTE2を更に備える。これにより、第2の距離センサE2の位置を簡易にかつ精度よく把握することができる。
【0118】
尚、本実施形態において、第2の特定部は、第2の距離センサE2に設けられている第5のターゲットTE2を第2のトータルステーションM2によって視準することにより、第2の距離センサE2の位置を直接的に把握している。しかしながら、第2の特定部は、台車10dの位置及び向きu2が把握されている場合に、把握されている台車10dの位置及び向きu2に基づいて、第2の距離センサE2の位置を間接的に把握してもよい。
【0119】
また、第2の特定部における台車10dの位置及び向きu2の把握は、台車10dの変位(位置変化の時間的推移)に基づいてもよい。この台車10dの変位は、シールド機1の推進ジャッキ5の伸長量に基づいて算出されてもよい。また、この台車10dの変位は、シールド機1の推進ジャッキ5の伸長量と、軌道13の座標(レール12の敷設位置)とに基づいて算出されてもよい。軌道13の座標は、座標情報記憶部42にて記憶され得る。
【0120】
本実施形態では、トンネル設計上の2次元座標系を設定した上で、基準線SLの向きu0に対する台車10dの向きu2のずれ(方向角差Δθ2)に基づいて、第2の距離センサE2の距離測定値を補正している。この点、トンネル設計上の3次元座標系を設定した上で、基準線SLの向きu0に対する台車10dの向きu2のずれに基づいて、第2の距離センサE2の距離測定値を補正してもよいことは言うまでもない。
【0121】
次に、本発明の第3実施形態について、
図18を用いて説明する。
図18は、本実施形態における曲線施工時のトンネルの平面図である。尚、
図18では、図示簡略化のため、前述の牽引棒9及び軌道13等の図示を省略している。
前述の第2実施形態と異なる点について説明する。
【0122】
本実施形態では、台車10bの右側の上部と、台車10cの左側の上部とに、それぞれ、中継用プリズムQが設けられている。すなわち、中継用プリズムQは、第1のトータルステーションM1と、第2のトータルステーションM2の第4のターゲットTAとの間に設けられている。そして、第1のトータルステーションM1は、中継用プリズムQを介して、第4のターゲットTAを自動で視準し得る。尚、中継用プリズムQは反射プリズム等により構成されている。
【0123】
特に本実施形態によれば、第4のターゲットTAは、第1のトータルステーションM1と第4のターゲットTAとの間に設けられた中継用プリズムQを介して、第1のトータルステーションM1によって視準される。これにより、トンネルの曲線施工時に、第1のトータルステーションM1が第4のターゲットTAを直接的に視準できない場合であっても、第1のトータルステーションM1は、中継用プリズムQを介して、第4のターゲットTAを間接的に視準することができる。
【0124】
前述の第2及び第3実施形態では、第2のトータルステーションM2に第4のターゲットTAを設けている。これに加えて、又は、これに代えて、第1のトータルステーションM1に、反射プリズム等により構成される第6のターゲットを設けてもよい。第6のターゲットは、第2のトータルステーションM2によって視準される。また、第6のターゲットは、第2のトータルステーションM2と第6のターゲットとの間に設けられた中継用プリズムQを介して、第2のトータルステーションM2によって視準されてもよい。このようにして、第1のトータルステーションM1と第2のトータルステーションM2との相対的な位置関係を把握してもよい。
【0125】
次に、本発明の第4実施形態について、
図19を用いて説明する。
図19は、本実施形態における曲線施工時のトンネルの平面図である。尚、
図19では、図示簡略化のため、前述の牽引棒9及び軌道13等の図示を省略している。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0126】
本実施形態では、第1のトータルステーションM1が、覆工体8内(トンネル内)における、台車10aより後方、かつ、基準点N1,N2より前方に配置されている。本実施形態においても、前述の第1の特定部には、第1のトータルステーションM1と、第1のターゲットTR1,TR2と、第2のターゲットTE1と、基準点N1,N2とが含まれ得る。
【0127】
前述の第1~第4実施形態では、台車10が複数ある例を示した。しかしながら、台車10が1つのみであってもよい。台車10が1つのみである場合には、当該台車10が本発明の「第1の台車」及び「第2の台車」に対応し得る。
【0128】
前述の第1~第4実施形態では泥土圧式のシールド機1を用いて説明した。しかしながら、シールド機1は泥土圧式に限らない。例えば、シールド機1は泥水式であってもよい。また、前述の第1~第4実施形態において、シールド機1は、いわゆる中折れ式であってもよい。
【0129】
前述の第1~第4実施形態では、トンネルの内面形状が円形である例を示した。しかしながら、トンネルの内面形状は円形に限らない。例えば、トンネルの内面形状は、楕円形又は矩形であってもよい。
【0130】
また、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
尚、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
基準線に沿うようにシールド機によって構築されるトンネルの内面形状を測定するシステムであって、
前記シールド機の掘進に追従して前記トンネル内を移動可能な第1の台車と、
前記第1の台車に設けられて前記トンネルの内面形状の測定に用いられる第1の距離センサと、
前記基準線の向きに対する前記第1の台車の向きのずれを特定する第1の特定部と、
を備え、
前記第1の特定部にて特定されたずれに基づいて、前記第1の距離センサの距離測定値が補正される、トンネル内面形状測定システム。
[請求項2]
前記第1の特定部は、
前記第1の台車に設けられた第1のトータルステーションと、
前記第1の台車に設けられて前記第1のトータルステーションによって視準される第1のターゲットと、
前記トンネル内に設けられて前記第1のトータルステーションによって視準される基準点と、
を備える、請求項1に記載のトンネル内面形状測定システム。
[請求項3]
前記第1の特定部は、前記第1の距離センサに設けられて前記第1のトータルステーションによって視準される第2のターゲットを更に備える、請求項2に記載のトンネル内面形状測定システム。
[請求項4]
前記シールド機と前記第1の台車との間に配置されて前記第1の台車と共に前記トンネル内を移動可能な第2の台車と、
前記シールド機と前記第2の台車との間に設けられるか、又は、前記第2の台車に設けられて、前記トンネルの内面形状の測定に用いられる第2の距離センサと、
前記基準線の向きに対する前記第2の台車の向きのずれを特定する第2の特定部と、
を更に備え、
前記第2の特定部にて特定されたずれに基づいて、前記第2の距離センサの距離測定値が補正される、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載のトンネル内面形状測定システム。
[請求項5]
前記シールド機と前記第1の台車との間に配置されて前記第1の台車と共に前記トンネル内を移動可能な第2の台車と、
前記シールド機と前記第2の台車との間に設けられるか、又は、前記第2の台車に設けられて、前記トンネルの内面形状の測定に用いられる第2の距離センサと、
前記基準線の向きに対する前記第2の台車の向きのずれを特定する第2の特定部と、
を更に備え、
前記第2の特定部にて特定されたずれに基づいて、前記第2の距離センサの距離測定値が補正され、
前記第2の特定部は、
前記第2の台車に設けられた第2のトータルステーションと、
前記第2の台車に設けられて前記第2のトータルステーションによって視準される第3のターゲットと、
前記第2のトータルステーションに設けられて前記第1のトータルステーションによって視準される第4のターゲットと、
を備える、請求項2又は請求項3に記載のトンネル内面形状測定システム。
[請求項6]
前記第2の特定部は、前記第2の距離センサに設けられて前記第2のトータルステーションによって視準される第5のターゲットを更に備える、請求項5に記載のトンネル内面形状測定システム。
[請求項7]
前記第4のターゲットは、前記第1のトータルステーションと前記第4のターゲットとの間に設けられた中継用プリズムを介して、前記第1のトータルステーションによって視準される、請求項5に記載のトンネル内面形状測定システム。
【符号の説明】
【0131】
1 シールド機
5 推進ジャッキ
7 セグメント
8 覆工体
9 牽引棒
10 台車
10a 台車(第1の台車)
10b 台車
10c 台車
10d 台車(第2の台車)
12 レール
13 軌道
15 本体部
16 回転部
20 システム(トンネル内空形状測定システム)
21 処理装置
22 記録装置
23 表示装置
31~36 信号線
41 トンネル設計上の座標系設定部
42 座標情報記憶部
43 方向角差特定部
44 距離測定値補正部
45 トンネル内面形状特定部
u0~u2 向き
E1 第1の距離センサ
E2 第2の距離センサ
LZ レーザー光
M1 第1のトータルステーション
M2 第2のトータルステーション
MP 測定断面
N1,N2 基準点
SL 基準線
SP 設計断面
TR1,TR2 第1のターゲット
TE1 第2のターゲット
TF1,TF2 第3のターゲット
TA 第4のターゲット
TE2 第5のターゲット
Q 中継用プリズム
Δθ1,Δθ2 方向角差
【要約】
【課題】トンネルの内面形状の測定を精度よく行う。
【解決手段】基準線SLに沿うようにシールド機1によって構築されるトンネルの内面形状を測定するシステム20は、シールド機1の掘進に追従してトンネル内を移動可能な台車10aと、台車10aに設けられてトンネルの内面形状の測定に用いられる第1の距離センサE1と、基準線SLの向きu0に対する台車10aの向きu1のずれを特定する第1の特定部と、を備える。システム20では、第1の特定部にて特定されたずれに基づいて、第1の距離センサE1の距離測定値が補正される。
【選択図】
図2