(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマー
(51)【国際特許分類】
C08G 64/04 20060101AFI20231121BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C08G64/04
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2021507329
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011322
(87)【国際公開番号】W WO2020189598
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019050662
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000243272
【氏名又は名称】本州化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 充孝
(72)【発明者】
【氏名】須藤 健
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-26714(JP,A)
【文献】特開2006-28418(JP,A)
【文献】特開平10-81720(JP,A)
【文献】国際公開第2017/098945(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/008879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/04
C08F 290/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)及び/又は下記式(2)で表され、重量平均分子量(Mw)が300以上10,000以下の範囲であることを特徴とする末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマー。
【化1】
【化2】
(式(1)、(2)中、R
1は各々独立して水素原子又はメチル基を表し、R
2、R
3は、各々独立して水素原子又は炭素原子数1~14のアルキル基を表し、nは、1以上の整数である。ただし、R
2及びR
3の炭素原子数の合計は14以下である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒溶解性が良好であり、かつ、硬化させると耐摩耗性に優れる末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料は、軽量かつ安価であり加工性にも優れているなどの長所から、エンジニアリングプラスチックとして汎用されているが、ガラスや金属に比べて表面の硬度、耐擦傷性、耐薬品性などが劣っているため、そのまま代替材料として採用されることはない。樹脂材料のこれら欠点を改良するため、樹脂表面に基材の樹脂とは異なる素材の樹脂製薄膜を形成し、外的要因から基材の樹脂を保護し、表面改質を図るハードコート処理が一般的に行われている。このハードコート層の形成は、基材の樹脂表面にハードコート剤を塗布し乾燥した後、必要に応じて電子線、紫外線(UV)などの放射線を照射し、硬化するシステムが採用されている(例えば、特許文献1、2)。この中でも、紫外線硬化性樹脂を使用した紫外線硬化型ハードコート剤が、従来のハードコート剤に比べて、低温かつ短時間で処理が可能となるため、生産性が高く様々な用途に展開されている。
この紫外線硬化型ハードコート剤は、主成分としてペンタエリスリトール系(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリルモノマーが使用されるので、配合される成分は、これら多官能(メタ)アクリルモノマーとの相溶性の高いものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-024255号公報
【文献】特開2016-011365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した事情を背景としてなされたものであって、紫外線硬化型ハードコート剤等に用いられる紫外線硬化型(メタ)アクリル樹脂の原料として、多官能(メタ)アクリルモノマーとの相溶性や溶媒溶解性が良好であり、かつ、硬化させると耐摩耗性に優れる末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述の課題解決のために鋭意検討した結果、下記式(1)及び/又は下記式(2)で表される末端(メタ)アクリレートポリカーボネートにおいて、重量平均分子量(Mw)が特定の範囲であるオリゴマーが、多官能(メタ)アクリルモノマーとの相溶性や溶媒溶解性が良好であり、かつ、硬化させると耐摩耗性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は以下の通りである。
1.下記式(1)及び/又は下記式(2)で表され、重量平均分子量(Mw)が300以上10,000以下の範囲であることを特徴とする末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマー。
【化1】
【化2】
(式(1)、(2)中、R
1は各々独立して水素原子又はメチル基を表し、R
2、R
3は、各々独立して水素原子又は炭素原子数1~14のアルキル基を表し、nは、1以上の整数である。ただし、R
2及びR
3の炭素原子数の合計は14以下である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明による末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が300以上10,000以下の範囲であることから、ペンタエリスリトール系(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリルモノマーとの相溶性や溶媒溶解性が良好であるため紫外線硬化が可能であり、しかも、得られた硬化膜は耐摩耗性に優れるため、紫外線硬化型ハードコート剤の原料として最適であり、紫外線硬化により平滑な塗膜形成が可能という工業的に有利な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1で合成した末端アクリレートポリカーボネートオリゴマー(1a)の
1H-NMRスペクトルチャートである。
【
図2】実施例2で合成した末端アクリレートポリカーボネートオリゴマー(1b)の
1H-NMRスペクトルチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーについて詳細に説明する。
本発明の末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーは、下記反応式に例示するように、式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーと、(メタ)アクリル酸クロリドのような(メタ)アクリル化剤との反応により得られる、重量平均分子量(Mw)が300以上10,000以下の範囲である、下記式(1)及び/又は下記式(2)で表される化合物である。
【化3】
(反応式中のR
1~R
3、nの定義は、上述の式(1)、(2)と同じである。)
【0010】
<式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーについて>
本発明の末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーの化学構造については、その合成原料である、下記式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーを詳細に説明することにより、その説明とする。すなわち、式(A-1)中のnの具体例、好ましい化学基やその置換基等については、本発明の末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーを表す、式(1)及び/又は式(2)中のnと同じである。
【化4】
(式(A-1)中のR
2、R
3、nの定義は、上述の式(1)、(2)と同じである。)
上記式(A-1)におけるメチル基の置換位置は、ベンゼン環に結合する酸素原子に対してオルト位が好ましい。
【0011】
上記式(A-1)におけるR2、R3は、各々独立して水素原子又は炭素原子数1~14のアルキル基を表し、アルキル基としては、好ましくは炭素原子数1~12の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~8の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素原子数1~4の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基である。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。ただし、R2及びR3の炭素原子数の合計は14以下でなければならない。
【0012】
式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーは、従来公知の任意の製造方法により製造されるものを使用できる。具体的には、例えば、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。中でも、界面重合法、溶融エステル交換法、プレポリマーの固相エステル交換法を用いることが産業上有利である。これらの中でも、ホスゲンを使用しない溶融エステル交換法や、溶融エステル交換法によるプレポリマーの固相エステル交換法が、特に好ましい。上記製造方法は、下記式(B-1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成剤とを使用して行われる。
【化5】
(式(B-1)中のR
2、R
3の定義は、上述の式(1)、(2)と同じである。)
【0013】
<式(B-1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物について>
式(B-1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、例えば、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ドデカン、ビス(4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)プロパン等が挙げられる。
重合反応に際し、このような芳香族ジヒドロキシ化合物は単独でも、2種以上任意の割合で混合して用いても良い。
【0014】
<炭酸エステル形成剤について>
式(B-1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させる炭酸エステル形成剤としては、具体的には、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(m-クレジル)カーボネート等の炭酸ジアリール、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等の炭酸ジアルキル、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、シクロヘキシルフェニルカーボネート等の炭酸アルキルアリール又はジビニルカーボネート、ジイソプロペニルカーボネート、ジプロペニルカーボネート等の炭酸ジアルケニル等の炭酸ジエステル類が挙げられる。さらに、ホスゲン等のジハロゲン化カルボニル化合物等や、トリホスゲンも挙げられる。これらの中で、炭酸ジアリールが好ましく、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。
【0015】
<溶融エステル交換法について>
式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーの製造方法として、溶融エステル交換法について説明する。
溶融エステル交換反応の方法としては、式(B-1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と、炭酸エステル形成剤としてジフェニルカーボネートを使用する場合には、触媒の存在下、常圧又は減圧の不活性ガス雰囲気で加熱しながら撹拌し、生成するフェノールを留出させて行われる。通常、式(B-1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成剤の混合比率や、エステル交換反応時の減圧度を調整して、所望の分子量及び末端水酸基量を調整した、式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーを得ることができる。
式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーを得るために、式(B-1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成剤との混合比率は、式(B-1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸エステル形成剤を通常0.2~1.0倍モル、好ましくは0.25~0.95倍モル、更に好ましくは0.3~0.90倍モルを用いる。
溶融エステル交換反応に際し、反応速度を高めるため、必要に応じてエステル交換触媒が用いられる。エステル交換触媒としては、特に制限はなく、例えば、リチウム、ナトリウム、セシウムの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物等の無機アルカリ金属化合物、アルコラート、有機カルボン酸塩等の有機アルカリ金属化合物等のアルカリ金属化合物;ベリリウム、マグネシウム等の水酸化物、炭酸塩等の無機アルカリ土類金属化合物、アルコラート、有機カルボン酸塩等の有機アルカリ土類金属化合物等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の塩基性ホウ素化合物;トリエチルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン等の3価のリン化合物、又は、これらの化合物から誘導される4級ホスホニウム塩等の塩基性リン化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物;4-アミノピリジン、2-ジメチルアミノイミダゾール、アミノキノリン等アミン系化合物等の公知のエステル交換触媒を用いることができる。中でも、アルカリ金属化合物が好ましく、特に炭酸セシウム、水酸化セシウム等のセシウム化合物が好ましい。
触媒の使用量は、触媒残留物が生成オリゴマーの品質上の問題が生じない範囲で用いられ、触媒の種類により好適な添加量が異なるので一概には言えないが概略、例えば、式(B-1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して通常0.05~100μモル、好ましくは0.08~50μモル、より好ましくは0.1~20μモル、さらに好ましくは0.1~5μモルである。触媒はそのままで添加してもよいし、溶媒に溶解して添加してもよく、溶媒としては例えば水、フェノール等反応に影響しないものが好ましい。
溶融エステル交換反応の反応条件は、温度は通常120~360℃の範囲、好ましくは150~280℃の範囲、より好ましくは180~260℃の範囲である。反応温度が低すぎるとエステル交換反応が進行せず、反応温度が高いと分解反応等の副反応が進行するので好ましくない。反応は好ましくは減圧下でおこなわれる。反応圧力は、反応温度において原料である炭酸エステル形成剤が系外に留出せず、フェノール等の副生物が留出できる圧力であることが好ましい。このような反応条件において、反応は通常0.5~10時間程度で完結する。
【0016】
<(メタ)アクリル化について>
上記反応式において例示するように、本発明の式(1)及び/又は式(2)で表される末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーは、式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーと、(メタ)アクリル酸クロリドのような(メタ)アクリル化剤との反応により得られる。
(メタ)アクリル化剤としては、具体的には、例えば、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
(メタ)アクリル化剤の使用量は、式(1)で表される両末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーを得る場合には、式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーの全末端ヒドロキシ基に対して、(メタ)アクリル化剤を、通常1.0~2.5倍モル、好ましくは1.1~2.0倍モル、さらに好ましくは1.15~1.5倍モルを用いる。式(2)で表される片末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーを得る場合には、式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーの全末端ヒドロキシ基に対して、(メタ)アクリル化剤を、通常0.5~1.5倍モル、好ましくは0.55~1.25倍モル、さらに好ましくは0.6~1.0倍モルを用いる。
例えば、(メタ)アクリル酸クロリドを用いて、式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーをアクリル化する場合、クロリドイオンが塩化水素の形で発生するので、塩化水素捕捉剤を併用することが好ましい。塩化水素捕捉剤としては、塩基性物質であれば使用できる。無機塩基性物質としては、アルカリ金属の炭酸塩や炭酸水素塩などが使用できる。有機塩基性物質としては3級アミン類が使用できる。3級アミン類としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチル-ジエチルアミン、N-エチル-ジメチルアミン、N-エチル-ジアミルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチル-シクロヘキシルアミン、N,N-ジエチル-シクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン;N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の芳香族アミン;ピリジン、ピコリン、N,N-ジメチルアミノピリジン等の複素環アミン; 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン等の脂環式アミン等が挙げられる。
塩化水素捕捉剤の使用量としては、通常は使用される(メタ)アクリル化剤のモル数に対して、0.8~10倍モルであり、好ましくは0.9~8倍モル、特に好ましくは、1.0~7倍モル程度である。塩化水素捕捉剤が(メタ)アクリル化剤のモル数に対して0.8倍未満では、発生する塩化水素を捕捉しきれず、原料の式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーや、目的物である式(1)及び/又は式(2)で表される末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーを分解してしまい、目的物の純度低下を起こす恐れがある。また、塩化水素捕捉剤が(メタ)アクリル化剤のモル数に対して10倍モルを超えると、塩化水素捕捉剤の除去が煩雑となるだけでなく経済的ではないため好ましくない。
【0017】
この(メタ)アクリル化の反応において、使用される溶媒は使用される原料等を均一に混合できる溶媒であれば良く、具体的には、塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素やテトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロベンゼン等が挙げられる。溶媒の使用量は特に限定されないが、通常、式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーに対して、0.5~100倍重量であり、好ましくは1~50倍重量、特に好ましくは2~10倍重量である。
(メタ)アクリル化の反応は比較的低温度で実施され、通常は-50~100℃、好ましくは-30~80℃、特に好ましくは-15~60℃である。反応温度が100℃を超えると副反応が起こり、目的物の収率低下につながる。また、-50℃未満では反応速度が遅くなり所要時間がかかりすぎて経済的でない。
反応手順としては、あらかじめ、式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーと(メタ)アクリル化剤とを溶媒中で混合し、そこに塩化水素捕捉剤を添加する方法や、先に、式(A-1)で表されるポリカーボネートオリゴマーと塩化水素捕捉剤とを溶媒中で混合し、そこに(メタ)アクリル化剤を添加する方法がある。これらの方法において、後で添加する塩化水素捕捉剤や(メタ)アクリル化剤は、溶媒に希釈した状態で使用しても良い。
また、反応時に重合禁止剤として、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)等を添加しても良い。
【0018】
<(メタ)アクリル化の後処理と精製について>
(メタ)アクリル化反応においては、塩化水素捕捉剤である塩基性物質は過剰に添加されることが多く、特に有機塩基性物質は、目的物である式(1)及び/又は式(2)で表される末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーと一緒に有機溶媒中に残存し、着色・分解等の好ましくない現象を引き起こしやすいので、反応後の洗浄作業で除去しておくことが好ましい。有機塩基性物質を洗浄除去するためには、酸性物質の水溶液で洗浄することが好ましい。使用する酸性物質としては、特に限定されるものではないが、無機系酸性物質としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などがあり、有機系酸性物質としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのスルホン酸などがある。中でも、酸性度の低い有機系酸性物質がより好ましい。塩化水素捕捉剤を除去した後は、続いて、水洗を実施することが好ましい。
得られた式(1)及び/又は式(2)で表される末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーは、溶解している溶液中に貧溶媒を添加することで、沈殿物とし得る方法等が好ましい。上記貧溶媒としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1~6の脂肪族アルコール溶媒又は上記脂肪族アルコール溶媒と水の混合物が挙げられる。
【0019】
<末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーについて>
本発明の式(1)及び/又は式(2)で表される末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーの好ましい化合物について、以下に具体例を示す。
式(1)で表される両末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーの好ましい化合物は以下のとおりである。式(1a)、(1b)中のnは、1以上の整数であるが、重量平均分子量(Mw)は300以上10,000以下の範囲である。
【0020】
【化6】
式(2)で表される片末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーの好ましい化合物は以下のとおりである。式(2a)、(2b)中のnは、1以上の整数であるが、重量平均分子量(Mw)は300以上10,000以下の範囲である。
【化7】
【0021】
本発明の式(1)及び/又は式(2)で表される末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が300以上10,000以下の範囲であり、中でも、500以上9,000以下の範囲が好ましく、800以上8,500以下の範囲がより好ましく、1,000以上8,000以下の範囲がさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)がこの範囲内であると、有機溶媒に対して良好な溶解性が得られるため好ましい。
また、本発明の式(1)及び/又は式(2)で表される末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーを、紫外線硬化型ハードコート剤の成分として使用する場合には、主成分であるペンタエリスリトール系(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリルモノマーとの相溶性に優れているため、紫外線硬化により平滑な塗膜形成が可能であるという工業的に有利な効果を発揮する。しかも、本発明の末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーは、紫外線硬化により得られた硬化膜が耐摩耗性に優れるという、顕著な効果を奏するものである。
以上のことから、本発明の式(1)及び/又は式(2)で表される末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーは、紫外線硬化型ハードコート剤の原料以外に、3Dプリンタの造形用材料原料やエポキシ樹脂等の熱硬化樹脂の改質剤として非常に有用である。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例における重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。分析等に関する方法は以下のとおりである。
<分析方法>
1.ゲル浸透クロマトグラフィー測定
(オリゴマーの分析)
装置:東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
流量:0.35ml/min、移動相:テトラヒドロフラン、打ち込み量:10μl
カラム:TSKgel guardcolumn SuperMP(HZ)-N ,TSKgel SuperMultiporeHZ-N×3本
検出器:RI
解析方法:ポリスチレン換算の相対分子量とする。ポリスチレン標品は、東ソー株式会社製 A-500,A-2500,A-5000,F-1,F-2,F-4を使用。
(ポリマーの分析)
装置:東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
流量:1.0ml/min、移動相:テトラヒドロフラン、打ち込み量:100μl
カラム:TSKgel guardcolumn HXL-L TSKgel G2000HXL ×2本 + TSKgel G3000HXL + TSKgel G4000HXL
検出器:RI
解析方法:ポリスチレン換算の相対分子量とする。ポリスチレン標品は、東ソー株式会社製 PStQuick E,F(E:F-40,F-4,A-5000,A-1000、F:F-20,F-2,A-2500,A-500)を使用。
2.末端ヒドロキシ濃度の測定
1H-NMRを用い、TCE(1,1,1,2-テトラクロロエタン)を内部標準として、ビスフェノールA、ビスフェノールCを標品に用いTCEとの重量比の検量線を作成した。この検量線からフェノール末端重量を求める方法で定量した。
装置:BRUKER社製 AscendTM 400
測定条件:室温、積算回数120回
3.化学構造の同定
上記「2.」と同じ装置を用いて、1H-NMR測定により実施した。
4.摩耗性の評価
テーバー摩耗試験機(Taber Industries社の「MODEL174」)を用いて摩耗輪CS-10、荷重2.45N(250gf)の条件で50回転し摩耗させた。
上記摩耗性試験による摩耗度合いを、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社のV-780)を用いて曇価(ヘイズ)として評価した。
【0023】
<参考例1>ポリカーボネートオリゴマー(A-1-a)の合成
【化8】
温度計、撹拌機、冷却器を備えた4つ口フラスコに、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン690.0g(2.7モル)、ジフェニルカーボネート403.8g(1.9モル)を入れ、反応容器を窒素置換した後、110℃で0.06%炭酸セシウム水溶液3.1gを加えた。200℃まで昇温した後、減圧度を1.3kPaに調整し、8時間、生成したフェノールを留出させながら反応し、反応終了液737.1gを得た。
次いで、得られた反応終了液のうち540gを、トルエン1086gに溶解させた溶液を、4つ口フラスコ中のメタノール6492gに15℃を保ちながら2時間かけて滴下し、目的物を沈殿させた。一晩撹拌した後、沈殿物を濾別し、得られたウェットケーキを、メタノール中に再分散させる洗浄工程を1回実施した。沈殿物を濾別、乾燥し、粉末状のポリカーボネートオリゴマー(A-1-a)を255g取得した。
得られたポリカーボネートオリゴマー(A-1-a)の重量平均分子量は、3,373(ゲル浸透クロマトグラフィー)であり、末端ヒドロキシ濃度は1.0mmol/gであった。
【0024】
<実施例1>末端アクリレートポリカーボネートオリゴマー(1a)の合成
【化9】
温度計、撹拌機、冷却器を備えた4つ口フラスコに、参考例1で得られたポリカーボネートオリゴマー(A-1-a)207.0gを入れ、反応容器を窒素置換した後、アクリル酸クロリド53.9g(0.60モル)、ジクロロメタン455g、メトキノン14.5mgを、窒素気流下において加えた。15℃でトリエチルアミン53.5g(0.53モル)とジクロロメタン205gの混合溶液を2時間かけて添加した。さらに15℃で3時間撹拌を続けた後、水400gとメタノール1300gを添加し、1時間撹拌後、静置して分離した上層の溶液を抜き取り、更にメタノール900gを添加、撹拌した。静置して分離した上層の溶液を抜き取る作業を繰り返した後、水900gを加え、2時間撹拌させることで得られた沈殿物を濾別し、さらに得られたウェットケーキを、メタノール750g中に再分散させる洗浄工程を実施した。その後、沈殿物を濾別、乾燥し、淡黄白色粉末状の末端アクリレートポリカーボネートオリゴマー(1a)177gを取得した。
得られた末端アクリレートポリカーボネートオリゴマー(1a)の重量平均分子量は、4,024であった(ゲル浸透クロマトグラフィー)。
1H-NMRの分析結果より、得られたオリゴマーは、上記式(1a)に表される両末端アクリレートポリカーボネートオリゴマーであることを確認した。
得られた末端アクリレートポリカーボネートオリゴマー(1a)2.0g、多官能アクリレートであるペンタエリスリトールテトラアクリレート8.0g、シクロヘキサノン10.0g、イルガキュア(184)0.5gを全て混ぜ合わせた結果、透明な溶液が得られ、紫外線照射によりPC基板上に透明なハードコート膜が形成することを確認した。
この結果より、得られた末端アクリレートポリカーボネートオリゴマー(1a)は、シクロヘキサノン等の有機溶媒に良好な溶解性を示し、また、多官能アクリレートであるペンタエリスリトールテトラアクリレートとの相溶性に優れることが明らかとなった。
続いて、得られた上記溶液を、バーコーターを用いて市販のポリカーボネートシート上に塗布し、80℃で1分乾燥後、高圧水銀ランプを用いて照度850mW/cm
2照射することにより硬化させた。得られた硬化膜を用い、テーバー摩耗試験機(Taber Industries社の「MODEL174」)を用いて摩耗輪CS-10、荷重2.45N(250gf)の条件で50回転し摩耗させた。この50回転前後のヘイズを、積分球ユニットを取り付けた紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社のV-780)を用いて測定した結果、ヘイズは5.5%であった。
【0025】
<実施例2>末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマー(1b)の合成
【化10】
温度計、撹拌機、冷却器を備えた4つ口フラスコに、参考例1と同様の方法で合成したポリカーボネートオリゴマー(A-1-a)130.0gを入れ、反応容器を窒素置換した後、メタクリル酸クロリド19.9g(0.19モル)、ジクロロメタン286.2g、メトキノン10.0mgを、窒素気流下において加えた。15℃でトリエチルアミン25.4g(0.25モル)を45分かけて添加した。さらに15℃で2時間撹拌を続けた後、0.1モル/Lの塩酸水390gを添加して20分間撹拌し、分液し有機溶媒層を得た。その後、水260gで水洗・分析を1回実施し、メタノール1040gを添加し、目的物を沈殿させた。その後、静置して分離した上層の溶液を抜き取る作業を行い、さらにメタノール780gを添加して、撹拌を行った。沈殿物を濾別し、得られたウェットケーキをメタノール780g中に再分散させる洗浄工程を実施した。その後、沈殿物を濾別、乾燥し、白色粉末状の末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマー(1b)120gを取得した。
得られた末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマー(1b)の重量平均分子量は、3,134であった(ゲル浸透クロマトグラフィー)。
1H-NMRの分析結果より、得られたオリゴマーは、上記式(1b)に表される、両末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマーであることを確認した。
得られた末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマー(1b)2.0g、多官能アクリレートであるペンタエリスリトールテトラアクリレート8.0g、シクロヘキサノン10.0g、イルガキュア(184) 0.5gを混ぜ合わせたところ、透明な溶液が得られ、紫外線照射によりPC基板上に透明なハードコート膜が形成することを確認した。
この結果より、得られた末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマー(1b)は、シクロヘキサノン等の有機溶媒に良好な溶解性を示し、また、多官能アクリレートであるペンタエリスリトールテトラアクリレートとの相溶性に優れることが明らかとなった。
続いて、得られた上記溶液について、実施例1と同様の方法で硬化膜を作成し、摩耗試験後のヘイズを測定した結果、ヘイズは5.1%であった。
【0026】
<比較例1>ジアクリレートポリカーボネートの合成-1
温度計、撹拌機、冷却器を備えた4つ口フラスコに、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン246.1g(1.08モル)、ジフェニルカーボネート237.1g(1.12モル)を入れ、反応容器を窒素置換した後、110℃で0.08%炭酸セシウム水溶液0.9gを加えた。220℃まで昇温した後、常圧で40分反応させ、生成したフェノールを留出させながら、80分かけて減圧度を13.3kPaにし、240℃まで昇温後、40分かけて減圧度を0.8kPaにした。さらに285℃まで昇温し、0.7kPaで7時間反応した。反応終了液250gを得た。
次いで、得られた反応終了液のうち150.0gを、ジクロロメタン530.0gに溶解させた溶液を、メタノール1850g中に滴下し、目的物を沈殿させた。1時間撹拌した後、沈殿物を濾別、乾燥し、粉末状のポリカーボネートを取得した。
得られたポリカーボネートの重量平均分子量は、31,240(ゲル浸透クロマトグラフィー)、末端ヒドロキシ濃度は0.13mmol/gであった。
次に温度計、撹拌機、冷却器を備えた4つ口フラスコに、得られたポリカーボネート13.6gを入れ、反応容器を窒素置換した後、アクリル酸クロリド0.3g(0.003モル)、ジクロロメタン47.6gを、窒素気流下において加えた後、15℃でトリエチルアミン0.4g(0.004モル)を添加した。2時間撹拌後、メタノール163g中に反応液を添加し、目的物を沈殿させた。その後、沈殿物を濾別、乾燥し、得られたウェットケーキ14.1gをジクロロメタン47.6gに溶解させ、その溶解液を、メタノール163g中に添加し、沈殿させた。その後、沈殿物を濾別、乾燥し、白色粉末状の化合物13gを取得した。
得られた化合物の1H-NMRの分析結果より、末端ジアクリレートポリカーボネートであることを確認した。
合成したジアクリレートポリカーボネートはシクロヘキサノンには溶解しなかった。
また、シクロヘキサノンの代わりにジクロロメタンを用い、ジアクリレートポリカーボネート0.6g、多官能アクリレートであるペンタエリスリトールテトラアクリレート2.4g、ジクロロメタン3.0gを混ぜ合わせた混合物は白濁状態であり、ハードコート膜を形成させることができなかった。
【0027】
<比較例2>ジアクリレートポリカーボネートの合成-2
温度計、撹拌機、冷却器を備えた4つ口フラスコに、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン276.9g(1.08モル)、ジフェニルカーボネート237.1g(1.12モル)を入れ、反応容器を窒素置換した後、110℃で0.08%炭酸セシウム水溶液0.9gを加えた。220℃まで昇温した後、常圧で40分反応させ、生成したフェノールを留出させながら、80分かけて減圧度を13.3kPaにし、240℃まで昇温後、40分かけて減圧度を0.8kPaにした。さらに285℃まで昇温し、0.7kPaで7時間反応した。反応終了液250gを得た。
次いで、得られた反応終了液のうち150.0gを、ジクロロメタン530.0gに溶解させた溶液を、メタノール1850g中に滴下し、目的物を沈殿させた。1時間撹拌した後、沈殿物を濾別、乾燥し、粉末状のポリカーボネートを取得した。
得られたポリカーボネートの重量平均分子量は、30,760(ゲル浸透クロマトグラフィー)、末端ヒドロキシ濃度は0.13mmol/gであった。
次に温度計、撹拌機、冷却器を備えた4つ口フラスコに、得られたポリカーボネート13.6gを入れ、反応容器を窒素置換した後、アクリル酸クロリド0.3g(0.003モル)、ジクロロメタン47.6gを、窒素気流下において加えた後、15℃でトリエチルアミン0.4g(0.004モル)を添加した。2時間撹拌後、メタノール163g中に反応液を添加し、目的物を沈殿させた。その後、沈殿物を濾別、乾燥し、得られたウェットケーキ14.1gをジクロロメタン47.6gに溶解させ、その溶解液を、メタノール163g中に添加し、沈殿させた。その後、沈殿物を濾別、乾燥し、白色粉末状の化合物13gを取得した。
得られた化合物の1H-NMRの分析結果より、末端ジアクリレートポリカーボネートであることを確認した。
合成したジアクリレートポリカーボネートはシクロヘキサノンには溶解しなかった。
また、シクロヘキサノンの代わりにジクロロメタンを用い、ジアクリレートポリカーボネート0.6g、多官能アクリレートであるペンタエリスリトールテトラアクリレート2.4g、ジクロロメタン3.0gを混ぜ合わせた混合物は白濁状態であり、ハードコート膜を形成させることができなかった。
【0028】
上記比較例1及び比較例2の結果より、式(1)及び/又は(2)で表される末端(メタ)アクリレートポリカーボネートオリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が特定の範囲内のものとすることにより、有機溶媒に良好な溶解性を示し、また、多官能アクリレート等との相溶性に優れることが明らかとなった。
【0029】
<比較参考例1>ポリカーボネートオリゴマー(X)の合成
【化11】
温度計、撹拌機、冷却器を備えた4つ口フラスコに、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン616.4g(2.7モル)、ジフェニルカーボネート404.8g(1.9モル)を入れ、反応容器を窒素置換した後、110℃で0.06%炭酸セシウム水溶液2.9gを加えた。210℃まで昇温した後、減圧度を0.6kPaに調整し、8時間、生成したフェノールを留出させながら反応し、反応終了液646.9gを得た。
次いで、得られた反応終了液のうち140.0gを、トルエン252.0gに溶解させた溶液を、4つ口フラスコ中のメタノール1680gに15℃を保ちながら2時間かけて滴下し、目的物を沈殿させた。一晩撹拌した後、沈殿物を濾別し、得られたウェットケーキ2533gを、メタノール中に再分散させる洗浄工程を2回実施した。沈殿物を濾別、乾燥し、粉末状のポリカーボネートオリゴマー(X)を取得した。
得られたポリカーボネートオリゴマーの重量平均分子量は、2,944(ゲル浸透クロマトグラフィー)であり、末端ヒドロキシ濃度は1.2mmol/gであった。
【0030】
<比較例3>末端アクリレートポリカーボネートオリゴマー(x-1)の合成
【化12】
温度計、撹拌機、冷却器を備えた4つ口フラスコに、比較参考例1で得られたポリカーボネートオリゴマー(X)130.0gを入れ、反応容器を窒素置換した後、アクリル酸クロリド35.3g(0.39モル)、ジクロロメタン285.7g、メトキノン17.4mgを、窒素気流下において加えた。15℃でトリエチルアミン47.1g(0.47モル)とジクロロメタン65gの混合溶液を2時間かけて添加した。さらに15℃で3時間撹拌を続けた後、メタノール1300gを添加し、目的物を沈殿させた。その後、沈殿物を濾別し、得られたウェットケーキを水900gで2回、メタノール900gで2回、再分散させる洗浄工程を実施した。その後、沈殿物を濾別、乾燥し、黄白色粉末状の末端アクリレートポリカーボネートオリゴマー(x-1)138gを取得した。
得られた末端アクリレートポリカーボネートオリゴマー(x-1)の重量平均分子量は、3,453であった(ゲル浸透クロマトグラフィー)。
1H-NMRの分析結果より、得られたオリゴマーは、上記式(x-1)に表される、両末端アクリレートポリカーボネートオリゴマーであることを確認した。
得られた末端アクリレートポリカーボネートオリゴマー(x-1)2.0g、多官能アクリレートであるペンタエリスリトールテトラアクリレート8.0g、シクロヘキサノン10.0g、イルガキュア(184) 0.5gを混合したところ、透明な溶液が得られ、紫外線照射によりPC基板上に透明なハードコート膜を形成することを確認した。
続いて、得られた上記溶液について、実施例1と同様に硬化膜を作成し、摩耗試験後のヘイズを測定した結果、ヘイズは9.4%であった。
【0031】
<比較例4>末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマー(x-2)の合成
【化13】
温度計、撹拌機、冷却器を備えた4つ口フラスコに、比較参考例1と同様の方法で合成したポリカーボネートオリゴマー(X)120.0gを入れ、反応容器を窒素置換した後、メタクリル酸クロリド18.3g(0.18モル)、ジクロロメタン265g、メトキノン9.3mgを、窒素気流下において加えた。15℃でトリエチルアミン23.4g(0.47モル)とジクロロメタン60gの混合溶液を45分かけて添加した。さらに15℃で2時間撹拌を続けた後、0.1モル/Lの塩酸水360gを添加して20分間撹拌し、分液し有機溶媒層を得た。その後、水240gで水洗・分析を1回実施し、メタノール960gを添加し、目的物を沈殿させた。その後、静置して分離した上層の溶液を抜き取る作業を行い、さらにメタノール720gを添加して、撹拌を行った。沈殿物を濾別し、得られたウェットケーキをメタノール900g中に再分散させる洗浄工程を実施した。その後、沈殿物を濾別、乾燥し、白色粉末状の末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマー(x-2)123gを取得した。
得られた末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマー(x-2)の重量平均分子量は、3,147であった(ゲル浸透クロマトグラフィー)。
1H-NMRの分析結果より、得られたオリゴマーは、上記式(x-2)に表される、両末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマーであることを確認した。
得られた末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマー(x-2)1.0g、多官能アクリレートであるペンタエリスリトールテトラアクリレート9.0g、シクロヘキサノン10.0g、イルガキュア(184) 0.5gを混ぜ合わせたところ、透明な溶液が得られ、紫外線照射によりPC基板上に透明なハードコート膜が形成することを確認した。
実施例1と同様の方法で硬化膜を作成し、摩耗試験後のヘイズを測定した結果、ヘイズは12.8%であった。
【0032】
この結果より、本発明の式(1)及び/又は式(2)で表される末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマーは、シクロヘキサノン等の有機溶媒に良好な溶解性を示し、また、多官能アクリレートであるペンタエリスリトールテトラアクリレートとの相溶性に優れることが明らかとなった。さらに、本発明の末端メタアクリレートポリカーボネートオリゴマーは、硬化膜とした際に耐摩耗性に優れることが確認された。