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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20231121BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B60H1/00 101U
B60H1/00 101F
B60H1/00 101G
B60H1/00 102J
B60H1/00 102S
B60H1/32 626C
B60H1/32 626F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018168921
(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公開番号】P2020040495
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】皆見 学
(72)【発明者】
【氏名】崎山 大樹
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-081037(JP,A)
【文献】特開2005-035423(JP,A)
【文献】特開2011-025824(JP,A)
【文献】特開2018-019464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインストルメントパネル内に配置された空調ユニットと、
前記空調ユニットを制御する制御部と、
車室内の天井に配置され前記空調ユニットから吹き出される空調風を後席へ送るサーキュレーターとを備える車両用空調装置において、
前記制御部は、前席を快適にする通常モードと、前記サーキュレーターを用いて後席を快適にするオートサーキュレーターモードとを選択的に実行し、
前記オートサーキュレーターモードでは、前記空調ユニットの空調風の吹出温度を、冷房時には前記通常モードで設定される目標の吹出温度よりも所定量低い温度に設定し、暖房時には前記通常モードで設定される目標の吹出温度よりも所定量高い温度に設定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
車両のインストルメントパネル内に配置された空調ユニットと、
前記空調ユニットを制御する制御部と、
車室内の天井に配置され前記空調ユニットから吹き出される空調風を後席へ送るサーキュレーターとを備える車両用空調装置において、
前記制御部は、外部操作によって前記サーキュレーターを用いて後席を快適にするオートサーキュレーターモードを実行し、
前記制御部は、前席を快適にする通常モードと、前記オートサーキュレーターモードとを選択的に実行し、
当該車両用空調装置はさらに、前記通常モードまたは前記オートサーキュレーターモードを前記制御部が自動的に選択する第1フェイズと前記通常モードまたは前記オートサーキュレーターモードを外部操作に基づいて選択する第2フェイズのいずれかを有効にするフェイズ切替スイッチを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
当該車両用空調装置はさらに、前記フェイズ切替スイッチにより前記第2フェイズが選択されたときに外部操作により前記通常モードまたは前記オートサーキュレーターモードを選択可能にするモード選択スイッチを備え、
前記制御部は、前記フェイズ切替スイッチによって第1フェイズが選択されたときに、前席が快適でなければ前記通常モードを選択し、前席が快適であって後席が快適でなければ前記オートサーキュレーターモードを選択し実行することを特徴とする請求項に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記インストルメントパネルは、前記空調ユニットの空調風を乗員の足元、顔およびフロントガラスに向けてそれぞれ吹き出す第1吹出口、第2吹出口および第3吹出口を有し、
前記オートサーキュレーターモードでは、暖房時には、前記第1吹出口および前記第2吹出口から、または、前記第1吹出口および前記第3吹出口から空調風を吹き出させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車両用空調装置が設置されている。車両用空調装置は、インストルメントパネル内などに配置された空調ユニット(HVACとも称される)を制御し、空調ユニットから吹き出される空調風によって車室内の快適性を保つ装置である。車両用空調装置としては、例えばクロスフローファンなどのサーキュレーターを備えたものが知られている。サーキュレーターは、車室内の天井などに配置され、空調ユニットの空調風を循環させて空調の補助を行う。
【0003】
特許文献1には、車室内の天井に設置された空気調和機が記載されている。この空気調和機は、天井に設置された熱交換器、クロスフローファンおよび吹出ルーバ群を備えている。特許文献1では、車両が受ける日射などによる車室内の空調負荷に応じて、吹出ルーバ群の方向を制御することにより、日射を受ける乗員席側の温度を低めにコントロールするなどの空調制御が可能である、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-207550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1に記載の空気調和機は、運転席側に設置される空調ユニットからの空調風を吸い込み、後席側に送り出すものの、空調風の熱量については考慮していない。一例として室温が目標室温に近いため、空調ユニットが出力を下げるよう自動制御されていた場合、冷暖房風を後席に送風しようとしても、空気調和機から後席に送ることができる熱量は限られてしまう。このような場合、特許文献1の空気調和機を用いただけでは、後席の快適性を確保することが困難となる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、車室内の後席を快適にすることができる車両用空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用空調装置の代表的な構成は、車両のインストルメントパネル内に配置された空調ユニットと、空調ユニットを制御する制御部と、車室内の天井に配置され空調ユニットから吹き出される空調風を後席へ送るサーキュレーターと、前席の内気温度を検出する前席用内気温センサとを備える車両用空調装置において、制御部は、前席を快適にする通常モードと、サーキュレーターを用いて後席を快適にするオートサーキュレーターモードとを選択的に実行し、通常モードでは、前席用内気温センサによって検出された内気温度が目標の内気温度に近づくにつれ、空調ユニットの空調風の風量を減らし、オートサーキュレーターモードでは、空調ユニットの空調風の風量を所定以上に保つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車室内の後席を快適にすることができる車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る車両用空調装置が適用される車両を概略的に示す図である。
図2図1の車両用空調装置の機能を示すブロック図である。
図3図2の空調ユニットおよびサーキュレーターの機能を示すブロック図である。
図4図2の車両用空調置の処理を示すフローチャートである。
図5図4のオートサーキュレーターモードの処理を示すフローチャートである。
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両用空調装置の代表的な構成は、車両のインストルメントパネル内に配置された空調ユニットと、空調ユニットを制御する制御部と、車室内の天井に配置され空調ユニットから吹き出される空調風を後席へ送るサーキュレーターと、前席の内気温度を検出する前席用内気温センサとを備える車両用空調装置において、制御部は、前席を快適にする通常モードと、サーキュレーターを用いて後席を快適にするオートサーキュレーターモードとを選択的に実行し、通常モードでは、前席用内気温センサによって検出された内気温度が目標の内気温度に近づくにつれ、空調ユニットの空調風の風量を減らし、オートサーキュレーターモードでは、空調ユニットの空調風の風量を所定以上に保つことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、空調風の風量を、通常モードにおいては内気温度が目標内気温度に近づくにつれて減らし、一方、オートサーキュレーターモードでは所定以上に保つよう制御している。このようにすれば、オートサーキュレーターモードを実行することで、空調ユニットの空調風の熱量を前席から後席に素早く送ることができ、後席を快適にすることができる。
【0012】
本発明の一実施の形態に係る車両用空調装置の他の代表的な構成は、車両のインストルメントパネル内に配置された空調ユニットと、空調ユニットを制御する制御部と、車室内の天井に配置され空調ユニットから吹き出される空調風を後席へ送るサーキュレーターと、前席の内気温度を検出する前席用内気温センサとを備える車両用空調装置において、制御部は、前席を快適にする通常モードと、サーキュレーターを用いて後席を快適にするオートサーキュレーターモードとを選択的に実行し、通常モードでは、前席用内気温センサによって検出された内気温度が目標の内気温度に近づくにつれ、冷房時には空調ユニットの空調風の目標の吹出温度を上げ、暖房時には目標の吹出温度を下げ、オートサーキュレーターモードでは、空調ユニットの空調風の吹出温度を、冷房時には通常モードで設定される目標の吹出温度よりも所定量低い温度に設定し、暖房時には通常モードで設定される目標の吹出温度よりも所定量高い温度に設定することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、通常モードでは、設定される空調風の目標の吹出温度を、内気温度が目標内気温度に近づくにつれ冷房時には上げ、暖房時には下げる。一方、オートサーキュレーターモードでは、空調風の吹出温度を、通常モードで設定される目標の吹出温度よりも冷房時には所定量低い温度に設定し、暖房時には所定量高い温度に設定している。このようにすれば、空調ユニットの空調風の熱量を前席から後席に素早く送ることができ、後席を快適にすることができる。
【0014】
本発明の一実施の形態に係る車両用空調装置のさらに他の代表的な構成は、車両のインストルメントパネル内に配置された空調ユニットと、空調ユニットを制御する制御部と、車室内の天井に配置され空調ユニットから吹き出される空調風を後席へ送るサーキュレーターと、前席の内気温度を検出する前席用内気温センサとを備える車両用空調装置において、インストルメントパネルは、空調ユニットの空調風を乗員の足元、顔およびフロントガラスに向けてそれぞれ吹き出す第1吹出口、第2吹出口および第3吹出口を有し、制御部は、前席を快適にする通常モードと、サーキュレーターを用いて後席を快適にするオートサーキュレーターモードとを選択的に実行し、通常モードでは、暖房時には第1吹出口から空調風を吹き出させ、オートサーキュレーターモードでは、暖房時には、第1吹出口および第2吹出口から、または、第1吹出口および第3吹出口から空調風を吹き出させることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、空調風の吹出口は、通常モードにおいて暖房時には温風が乗員に直接向かわないように足元から温めるため、第1吹出口が選択される。一方、オートサーキュレーターモードでは、暖房時には、乗員の足元だけでなく、乗員の顔やフロントガラスにも温風が向かうように第1吹出口に加え、第2吹出口または第3吹出口が選択される。このようにすれば、空調ユニットの空調風の熱量を前席から後席に素早く送ることができ、後席を快適にすることができる。
【0016】
上記の車両用空調装置はさらに、後席の内気温度を検出する後席用内気温センサを備え、制御部は、後席用内気温センサによって検出された内気温度が目標の内気温度に到達するまでオートサーキュレーターモードを実行するとよい。
【0017】
これにより、後席の内気温度が目標の内気温度になって快適になるまで、オートサーキュレーターモードが継続して実行される。このため、後席の快適性を自動で維持できる。
【0018】
上記のサーキュレーターは、サーキュレーターファンと、後席用内気温センサによって検出された内気温度と目標の内気温度との差に応じてサーキュレーターファンの出力を制御するサーキュレーターファン制御部とを有するとよい。
【0019】
このように、後席用内気温センサを用いてサーキュレーターファンの出力が自動的に調整されるので、オートサーキュレーターモードにおいて後席の内気温度が目標の内気温度により迅速に到達できる。
【0020】
上記のインストルメントパネルは、第1吹出口、第2吹出口および第3吹出口にそれぞれ設けられたルーバを有し、ルーバは、空調ユニットの空調風を吹き出す方向を調整するフィンを有し、制御部は、オートサーキュレーターモードにおいてフィンを上向きにするとよい。なおフィンは、モーターなどにより上向きに制御される。
【0021】
これにより、オートサーキュレーターモードでは、第1吹出口、第2吹出口および第3吹出口から上向きの空調風が吹き出される。このため、空調ユニットの空調風の熱量を前席から後席に素早く送ることができ、後席を快適にすることができる。
【0022】
上記の車両用空調装置はさらに、通常モードまたはオートサーキュレーターモードを制御部が自動的に選択する第1フェイズと通常モードまたはオートサーキュレーターモードを外部操作に基づいて選択する第2フェイズのいずれかを有効にするフェイズ切替スイッチと、フェイズ切替スイッチにより第2フェイズが選択されたときに外部操作により通常モードまたはオートサーキュレーターモードを選択可能にするモード選択スイッチとを備え、制御部は、フェイズ切替スイッチによって第1フェイズが選択されたときに、前席が快適でなければ通常モードを選択し、前席が快適であって後席が快適でなければオートサーキュレーターモードを選択し実行するとよい。
【0023】
これにより、乗員がフェイズ切替スイッチを操作して、第2フェイズを選択にして、さらにモード選択スイッチを操作すれば、通常モードとオートサーキュレーターモードのいずれかを実行するか乗員が決定できる。またフェイズ切替スイッチにより第1フェイズを選択すれば、モード選択スイッチの操作にかかわらず、制御部は、前席が快適でなければ通常モードを自動的に選択して実行し、前席が快適であって後席が快適でなければオートサーキュレーターモードを自動的に選択して実行できる。
【実施例
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
図1は、本発明の実施例に係る車両用空調装置100が適用される車両102を概略的に示す図である。図2は、図1の車両用空調装置100の機能を示すブロック図である。
【0026】
車両用空調装置100は、車両102のインストルメントパネル104内に配置された空調ユニット106を備える。空調ユニット106は、オートエアコンコントローラ(制御部)108によって制御され空調風を吹き出す。車両用空調装置100では、詳細は後述するが、空調ユニット106の空調風の風量、吹出温度を調整し、さらには吹出口も選択可能となっている。
【0027】
インストルメントパネル104には、第1吹出口(FOOT)110、第2吹出口(FACE)112および第3吹出口(DFR)114が設けられている。第1吹出口110、第2吹出口112および第3吹出口114は、空調ユニット106の空調風を前席116の乗員(不図示)の足元、顔およびフロントガラス118に向けてそれぞれ吹き出すように配置されている。
【0028】
第1吹出口110、第2吹出口112および第3吹出口114は、ルーバ120、122、124を有し、ルーバ120、122、124の各フィン126、128、130をモーターなどによって駆動することで空調風の吹き出し方向を調整できる。
【0029】
また車両用空調装置100は、サーキュレーター132と、センサ部134(図2参照)とを備える。サーキュレーター132は、車室内の天井136に配置され、空調ユニット106から吹き出される図1の矢印Aに示す空調風を吸い込んで、矢印Bに示すように後席138へ送る。センサ部134は、外気温センサ140、前席用内気温センサ142、日射センサ144および後席用内気温センサ146を含む。
【0030】
前席用内気温センサ142は、インストルメントパネル104に配置され、前席116の位置する領域の内気温度を検出する。後席用内気温センサ146は、後席138の位置する領域の内気温度を検出するセンサであって、後席138に着座した乗員の肩口位の高さ位置になるようにクォータートリム(不図示)に配置されている。ただしこれに限られず、後席用内気温センサ146は、センターコンソールの後端に配置したり、あるいはサーキュレーター132に一体的に設けたりしてもよい。
【0031】
車両用空調装置100はさらに、オートエアコンパネル148と、スイッチ部150とを備える。オートエアコンパネル148は、インストルメントパネル104に配置され、前席116に着座した乗員に各種情報を表示する。スイッチ部150は、図2に示すように、フェイズ切替スイッチ152とモード選択スイッチ154とを含む。
【0032】
フェイズ切替スイッチ152は、オートエアコンコントローラ108による自動制御(第1フェイズ)と、乗員の手動操作による制御(第2フェイズ)とのいずれかを有効にするスイッチである。モード選択スイッチ154は、フェイズ切替スイッチ152によって第2フェイズが選択されたときに機能し、乗員の手動操作によって後述する通常モードまたはオートサーキュレーターモードを選択可能にする。
【0033】
図3は、図2の空調ユニット106およびサーキュレーター132の機能を示すブロック図である。空調ユニット106は、図3(a)に示すようにブロアファン156とブロアファン出力制御部158とを備え、ブロアファン出力制御部158がブロアファン156の出力を制御して空調風の風量を調整する。また空調ユニット106は、エアミックスドア160とエアミックスドア制御部162とを備え、エアミックスドア制御部162がエアミックスドア160を制御して空調風の吹出温度を調整する。
【0034】
さらに空調ユニット106は、吹出口切替ドア(モードドア164)とモードドア制御部166とを備える。モードドア164は、インストルメントパネル104に配置された第1吹出口110、第2吹出口112および第3吹出口114への通路を切り替える。このため、空調ユニット106は、モードドア制御部166がモードドア164を制御して空調風が吹き出す吹出口を選択する。なお空調ユニット106の各制御部158、162、166は、図1に示すオートエアコンコントローラ108からの制御信号を受けて制御される。
【0035】
サーキュレーター132は、図3(b)に示すように、サーキュレーターファン168とサーキュレーターファン出力制御部170とを備える。サーキュレーター132は、サーキュレーターファン出力制御部170がサーキュレーターファン168の出力を制御することで、後席138へ送る空調風の風量を調整する。
【0036】
以下、車両用空調装置100の動作について説明する。図4は、図2の車両用空調置100の処理を示すフローチャートである。図中では、オートエアコンコントローラ108による自動制御である第1フェイズを規定している。この場合、フェイズ切替スイッチ152(図2参照)によって第1フェイズが選択されている。
【0037】
まず、オートエアコンコントローラ108は、前席116が快適か否かを判定する(ステップS100)。ステップS100では、前席用内気温センサ142によって検出された前席116の位置する領域の内気温度と、適宜のメモリから読み出した目標の内気温度とを比較し、両者の温度差が所定の閾値以上か否かを判定する。そしてオートエアコンコントローラ108は、両者の温度差が閾値以上であれば、前席116を快適領域ではないと判定し(No)、ステップS102の通常モードの処理を行う。
【0038】
通常モードにおいてオートエアコンコントローラ108は、検出された内気温度が目標の内気温度に近づくにつれ、ブロアファン出力制御部158、エアミックスドア制御部162およびモードドア制御部166を制御する。具体的には通常モードでは、検出された内気温度が目標の内気温度に近づくにつれ、空調ユニット106の空調風の風量を減らす処理、冷房時には空調風の目標の吹出温度を上げ、暖房時には目標の吹出温度を下げる処理を行う。このように通常モードでは、検出された内気温度が目標の内気温度に近づくにつれ、空調ユニット106の出力を下げることで、前席116を快適領域にしている。さらに通常モードでは、暖房時には第1吹出口110を選択する処理を行い、温風が乗員に直接向かわないように足元から温めることで、前席116を快適領域にしている。
【0039】
一方、ステップS100で両者の温度差が閾値未満であれば、オートエアコンコントローラ108は、前席116を快適領域であると判定し(Yes)、ステップS104の処理を行う。ステップS104では、後席用内気温センサ146によって検出された後席138の位置する領域の内気温度と、目標の内気温度とを比較し、両者の温度差が所定の閾値以上か否かを判定する。そしてオートエアコンコントローラ108は、両者の温度差が閾値未満であれば、後席138を快適領域であると判定し(Yes)、ステップS102の通常モードの処理を行う。
【0040】
一方、ステップS104で両者の温度差が閾値以上であれば、オートエアコンコントローラ108は、後席138を快適領域ではないと判定し(No)、オートサーキュレーターモードの処理を行う(ステップS106)。なおステップS102の通常モードまたはステップS106のオートサーキュレーターモードの実行後、オートエアコンコントローラ108は、再びステップS100に戻り、自動制御を継続する。
【0041】
図5は、図4のオートサーキュレーターモードの処理を示すフローチャートである。まず、オートエアコンコントローラ108は、サーキュレーター132を起動し(ステップS200)、さらに空調ユニット106の空調風の風量を固定し、所定量以上に保つ(ステップS202)。
【0042】
このように車両用空調装置100では、空調風の風量を、通常モードにおいて前席116の内気温度が目標内気温度に近づくにつれて減らし、オートサーキュレーターモードのステップS202では所定量以上に保つよう制御している。
【0043】
つぎにオートエアコンコントローラ108は、空調ユニット106の空調風の吹出温度を固定する(ステップS204)。ここで通常モードにおいては、オートエアコンコントローラ108は、空調風の目標の吹出温度を、内気温度が目標内気温度に近づくにつれて冷房時には上げ、暖房時には下げるよう設定している。これに対して、オートサーキュレーターモードのステップS204では、通常モードにおいて冷房時には上げ、暖房時には下げるよう設定される空調風の目標の吹出温度を、上げ下げせずに保持している。具体的には、オートエアコンコントローラ108は、空調風の吹出温度を、通常モードで設定される目標の吹出温度よりも冷房時には所定量低い温度に設定し、暖房時には所定量高い温度に設定する。
【0044】
したがって車両用空調装置100では、オートサーキュレーターモードのステップS202、S204の処理により、空調ユニット106の空調風の熱量を前席116から後席138に素早く送ることができ、後席138を快適にすることができる。また車両用空調装置100では、通常モードによって前席116を快適にすることもできる。
【0045】
続いてオートエアコンコントローラ108は、暖房中か否かを判定し(ステップS206)、暖房中であれば(Yes)、第1吹出口110および第2吹出口112から、または、第1吹出口110および第3吹出口114から空調風を吹き出させる(ステップS208)。つまりステップS208では、暖房時には、乗員の足元だけでなく、乗員の顔やフロントガラス118にも温風が向かうように第1吹出口110に加え、第2吹出口112または第3吹出口114が選択される。
【0046】
したがって車両用空調装置100では、オートサーキュレーターモードのステップS208の処理により、空調ユニット106の空調風の熱量を前席116から後席138に素早く送ることができ、後席138を快適にすることができる。一方、通常モードにおいては、暖房時には温風が乗員に直接向かわないように足元から温めるため、第1吹出口110が選択されることから、前席116を快適にすることができる。そしてステップS208の後、あるいはステップS206で暖房中でなければ(No)、オートサーキュレーターモードから図4に示すステップS100の処理に戻って自動制御を継続する。
【0047】
ただしオートエアコンコントローラ108は、後席用内気温センサ146によって検出された内気温度が目標の内気温度に到達するまでオートサーキュレーターモードを実行してもよい。このようにすれば、後席138の内気温度が目標の内気温度になって快適になるまで、オートサーキュレーターモードが継続して実行され、その結果、後席138の快適性を自動で維持できる。
【0048】
またステップS200では、サーキュレーター132を単に起動したが、これに限定されない。すなわち後席用内気温センサ146によって検出された内気温度と目標の内気温度との差に応じて、サーキュレーターファン168の出力を制御してもよい。このようにすれば、後席用内気温センサ146で検出された内気温度に基づいてサーキュレーターファン168の出力が自動的に調整されるので、後席138の内気温度が目標の内気温度により迅速に到達できる。
【0049】
さらにオートサーキュレーターモードにおいて、第1吹出口110、第2吹出口112および第3吹出口114にそれぞれ設けられたルーバ120、122、124のフィン126、128、130をモーターなどにより上向きに制御してもよい。このようにすれば、オートサーキュレーターモードでは、第1吹出口110、第2吹出口112および第3吹出口114から上向きの空調風が吹き出される。したがって、空調ユニット106の空調風の熱量を前席116から後席138に素早く送ることができ、後席138を快適にすることができる。
【0050】
なお上記実施例では、通常モードまたはオートサーキュレーターモードをオートエアコンコントローラ108が自動的に選択する第1フェイズの処理を例示したが、これに限定されない。すなわち車両用空調装置100は、乗員の外部操作による制御である第2フェイズも実行できる。この場合には、乗員がフェイズ切替スイッチ152を操作して第2フェイズを選択し、さらにモード選択スイッチ154を操作することにより、通常モードとオートサーキュレーターモードのいずれかを実行するか乗員が決定できる。なおサーキュレーター132を手動で起動するよう、所定のスイッチを車室内に設けてもよい。
【0051】
したがって車両用空調装置100によれば、通常モードまたはオートサーキュレーターモードを、オートエアコンコントローラ108が自動的に選択するだけでなく、乗員の外部操作によっても選択し実行することができる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、車両用空調装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
100…車両用空調装置、102…車両、104…インストルメントパネル、106…空調ユニット、108…オートエアコンコントローラ、110…第1吹出口、112…第2吹出口、114…第3吹出口、116…前席、118…フロントガラス、120、122、124…ルーバ、126、128、130…フィン、132…サーキュレーター、134…センサ部、136…天井、138…後席、140…外気温センサ、142…前席用内気温センサ、144…日射センサ、146…後席用内気温センサ、148…オートエアコンパネル、150…スイッチ部、152…フェイズ切替スイッチ、154…モード選択スイッチ、156…ブロアファン、158…ブロアファン出力制御部、160…エアミックスドア、162…エアミックスドア制御部、164…モードドア、166…モードドア制御部、168…サーキュレーターファン、170…サーキュレーターファン出力制御部
図1
図2
図3
図4
図5