(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】眼内レンズ挿入器具
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2019059257
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱田 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】長坂 信司
(72)【発明者】
【氏名】夏目 明嘉
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-103315(JP,A)
【文献】特開2007-181604(JP,A)
【文献】国際公開第2006/070628(WO,A1)
【文献】特開2019-154582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズを棒状の押出部材により筒状の本体部の内部を進行させて眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具において、
前記押出部材
には弾性体配置部が形成されており、
押出軸に平行な軸方向に沿って前記本体部の内壁に対して連続的に接触するように
、内周面同士を近づけるように変形させて前記軸方向に細長形状をなすOリングが、前記弾性体配置部に配置されている
ことを特徴とする眼内レンズ挿入器具。
【請求項2】
請求項
1に記載する眼内レンズ挿入器具において、
前記
Oリングは、前記押出軸を挟んで対向する2カ所に設けられている
ことを特徴とする眼内レンズ挿入器具。
【請求項3】
請求項
1に記載する眼内レンズ挿入器具において
、
前記Oリングは、その内側が前記弾性体配置部の先端側に形成された係止部に係止さ
れている
ことを特徴とする眼内レンズ挿入器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼内レンズを患者眼に挿入する眼内レンズ挿入器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、白内障の手術方法の一つとして水晶体を摘出した後、水晶体の代わりに折り曲げ可能な軟性の眼内レンズを眼内に挿入する手法が一般的に用いられている。眼内レンズの眼内への挿入には、インジェクタと呼ばれる眼内レンズ挿入器具が用いられる。近年、予め眼内レンズが眼内レンズ挿入器具内に収容されているプリセットタイプの眼内レンズ挿入器具が多く用いられている。
【0003】
近年、患者の負担低減(惹起乱視の抑制、術後の早期の創口回復など)の観点から、極小切開創から手術を行うことが主流になっている。そして、極めて小さいノズルの先端径から眼内レンズを射出するには、眼内レンズを折り畳むなど圧縮して押し出す必要がある。そのため、折り畳まれた眼内レンズがノズルの先端で射出された際に、勢い余って眼内レンズが急激に飛び出してしまい(以下、この事象を「ロケット発射」という)、眼内組織(例えば、後嚢)を損傷するおそれがある。
【0004】
そのため、このようなロケット発射を抑制するための対策がなされている。例えば、特許文献1に記載の眼内レンズ挿入器具では、Oリングにプランジャーを貫通させて、プランジャーの外周面と器具本体の内周面との間にOリングを配置している。そして、このOリングにより、プランジャーの側面に対して一定の押圧力を付与してロケット発射を抑制するようになっている。また、特許文献2に記載の眼内レンズ挿入器具では、プランジャーの外周面に剛性を低下させた変形する突起部を設けている。そして、この突起部により、プランジャーを移動させる際の摺動抵抗の大きさを任意に設定してロケット発射を抑制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-103315号公報
【文献】特開2007-181604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の眼内レンズ挿入器具では、Oリングと本体内面との接触面積がOリングの外周部のみであり、プランジャーの進行方向に対してOリングの持つ本来の反発力を十分に発揮し難いと考えられる。また、Oリング自体の寸法誤差やOリングが配置される本体部分の寸法誤差等により、Oリングによる本体内周面に対する押圧力の大きさにバラツキが生じ易かった。これらのことから、ロケット発射の抑制効果を十分に得難かった。さらに、プランジャー又は本体部を射出成型する際のヒケにより、全数又は個体差として、プランジャーと本体部の内壁との隙間が所期する寸法よりも広がってしまう場合があった。このような場合、Oリングを用いるとしても、Oリングが期待する反発力を発生できない場合があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載の眼内レンズ挿入器具では、最大押出荷重がレンズの種類によって変化するため、ロケット発射の抑制効果を十分に得難かった。また、突起部が本体内部に入り込むときにプランジャーの押出荷重が急激に大きくなること、プランジャーの押出荷重の増加タイミングが突起部の変形する部位の僅かなズレの影響を受けること等から、操作性が悪くなるという問題もあった。
【0008】
そこで、本開示は、上記した問題点を解決するために、押出荷重を安定させて操作性を良くするとともにロケット発射を抑制することができる眼内レンズ挿入器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、
眼内レンズを棒状の押出部材により筒状の本体部の内部を進行させて眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具において、
前記押出部材には弾性体配置部が形成されており、
押出軸に平行な軸方向に沿って前記本体部の内壁に対して連続的に接触するように、内周面同士を近づけるように変形させて前記軸方向に細長形状をなすOリングが、前記弾性体配置部に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示の眼内レンズ挿入器具によれば、押出荷重を安定させて操作性を良くするとともにロケット発射を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の眼内レンズ挿入器具の外観斜視図である。
【
図2】眼内レンズ挿入器具内の眼内レンズを示す図である。
【
図11】変形例1におけるプランジャーの外観斜視図である。
【
図13】変形例2におけるプランジャーの外観斜視図である。
【
図15】変形例3におけるプランジャーの外観斜視図である。
【
図16】プランジャーを押し込んだ際のOリングの変形状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示における典型的な実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。まず、眼内レンズ挿入器具の全体構成について、
図1~
図5を参照しながら説明する。本実施形態の眼内レンズ挿入器具1は、変形可能な眼内レンズ100を眼内に送り出すために使用されるものである。なお、眼内レンズ100の構成については後述する。
【0013】
眼内レンズ挿入器具1は、
図1に示すように、本体部10と、プランジャー12などから構成されている。本体部10は、挿入部20、設置部22などを備えている。本体部10は筒状であり、その内部に眼内レンズ100を小さく折り曲げるための構成(通路)が備わっている。本体部10には、術者が指で把持するための把持部11が設けられている。プランジャー12は棒状の押出部材であり、眼内レンズ100を患者眼の眼内へと押し出すためのものである。このような眼内レンズ挿入器具1は、例えば、樹脂材料等を用いた射出成形などによって形成することができる。なお、眼内レンズ挿入器具1は、樹脂の削り出しによって形成してもよい。本実施形態の眼内レンズ挿入器具1は、白色半透明の樹脂材料(例えば、ポリプロピン)を用いて射出成形により製造されたものである。
【0014】
挿入部20は、挿入部本体21(
図2参照)と天板部30などを備えている。そして、挿入部20は、中空の筒形状に形成されている。この挿入部20は、
図2の断面において、眼内レンズ100の押し出し方向(押出軸P方向)の前方(
図2の左方向)にて、先端20cに向かうにつれて内径が徐々に小さくなる通路20aを備えている。通路20aは、眼内レンズ100を押し出すための通路である。挿入部20の先端20cには、眼内レンズ100を外部に送出するための切欠き(ベベル)が形成されている。挿入部20を通過した眼内レンズ100は、挿入部20の内壁面20bに沿って小さく折り曲げられて、先端20cの切欠きから外部に送出され、眼内に挿入される。なお、
図2は、プランジャー12が
図1に示す位置よりも後退した状態(眼内レンズ100が折り畳まれる初期段階)を示している。
【0015】
設置部22は、挿入部20よりもプランジャー12の押し出し方向(押出軸P方向)の後方(
図2の右方向)の位置に形成されている。
図2に示すように、設置部22は、その内部に通路22aを備えている。通路22aは、眼内レンズ100を押し出すための通路である。そして、通路22aには、プランジャー12による眼内レンズ100の押し出し開始前において眼内レンズ100が配置される。また、通路22aは、プランジャー12による眼内レンズ100の押し出し開始後において眼内レンズ100が移動する空間(隙間)である。
【0016】
設置部22は、設置部本体24と、保持部材26と、保持部材28と、天板部30などを備えている。このような設置部22において、プランジャー12により押し出される前の眼内レンズ100が、設置部本体24の内部にて、保持部材26と保持部材28により保持されつつ設置される。
【0017】
ここで、設置部22に設置される眼内レンズ100について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。本実施形態の眼内レンズ挿入器具に設置される眼内レンズ100は、光学部110と一対の支持部である前方支持部112Aおよび後方支持部112Bとが、柔軟な素材で一体成形されたワンピースタイプの眼内レンズである。
【0018】
光学部110は、患者眼に所定の屈折力を与える部分であり、円盤形状に形成されている。また、ループ形状の前方支持部112Aと後方支持部112Bは、光学部110の外周部分110aから外側に延びるように形成されている。そして、前方支持部112Aと後方支持部112Bは、光学部110の外周部分110aにて光学部110の中心を基準として点対称の位置に形成されている。
【0019】
前方支持部112Aの根元部分116Aは、接続部分114Aを介して光学部110の外周部分110aに接続されている。前方支持部112Aの先端部分118Aは開放されている(つまり、先端部分118Aは自由端となっている)。また、後方支持部112Bの根元部分116Bは、接続部分114Bを介して光学部110の外周部分110aに接続されている。後方支持部112Bの先端部分118Bは開放されている。
【0020】
プランジャー12は、設置部22に設置された眼内レンズ100の光学部110の外周部分110aを押出軸P方向に沿って押して挿入部20内で眼内レンズ100を小さく折り曲げながら、眼内レンズ100を挿入部20の先端20cから挿入部20の外部へ押し出す押出部材である。
【0021】
本実施形態のプランジャー12は、
図5に示すように、押圧部40と、軸基部42と、押出棒44と、先端部46などを備えている。押圧部40は、眼内レンズ挿入器具1を使用する術者に押圧される部分である。軸基部42は、押圧部40の先端側に接続される部分である。押出棒44は、軸基部42の先端側に接続される部分である。先端部46は、押出棒44の先端部分に形成される部分である。このような構成のプランジャー12は、本体部10の基端部10aから挿入部20の先端20cまで繋がる通路20aや通路22aの内部を、プランジャー12の軸方向(押出軸Pと平行な方向)に進退可能な状態で、本体部10の内部に挿入されている。
【0022】
そして、本実施形態のプランジャー12の軸基部42の先端側(押出棒44側)には、軸方向(押出軸Pと平行な方向)に伸びて形成された凹状の弾性体配置部48が設けられている。弾性体配置部48は、対向するように両側面(押出軸Pを挟んで紙面手前側及び奥側)に設けられている。この弾性体配置部48には、弾性体50がはめ込まれて配置されている。弾性体50は、
図6に示すように、弾性体配置部48の形状と同様、直方体形状をなしている。そして、弾性体配置部48に配置された弾性体50は、
図5に示すように、本体部10の内壁に接触する面50aが軸基部42の側面から僅かにはみ出している。これにより、プランジャー12が本体部10に挿入された状態では、弾性体50の面50aが本体部10の内壁に対して、軸方向(押出軸Pと平行な方向)に沿って連続的に接触する。つまり、プランジャー12が本体部10に挿入された状態では、プランジャー12と本体部10との間に弾性体50が挟み込まれ、この挟み込まれた領域が軸方向(押出軸Pと平行な方向)に沿って連続的に伸びている。そのため、弾性体50と本体部10の内壁との接触面積が従来と比べて増加する。また、このような弾性体50が対向する2カ所に配置されているため、プランジャー12に対して均一な押圧力を付与することができる。なお、本実施形態では以降に説明する変形例を含め、弾性体50の材料は、一例としてシリコンを用いている。
【0023】
ここで、弾性体50は、
図6に示す形状に限られることはなく、例えば、
図7~
図10に示すような形状にすることもできる。すなわち、
図7に示すように、面50aを円弧状にすることができる。こうすることにより、例えば、プランジャー12に対してより大きな押圧力を付与することができる。また、
図8に示すように、面50aを円弧状にするとともに、空間51を設けている。この空間51を設けることにより、例えば、プランジャー12に対する押圧力を調整することができる。さらに、本体部10の内壁に接触する面に複数の凸部52を設けることもできる。具体的には、
図9に示すように、軸方向(押出軸Pと平行な方向)の先端側及び後端側に凸部52を設けてもよいし、
図10に示すように、面全体に複数の凸部52を設けても(面を波形にしても)よい。なお、
図7~
図10の弾性体においても、本体部10の内壁に接触する弾性体の部位が、軸基部42の側面から僅かにはみ出す。
【0024】
次に、このような眼内レンズ挿入器具1を用いて眼内レンズ100を眼内に挿入する手順について説明する。術者は、患者眼の角膜又は強膜に設けた切開創に、眼内レンズ挿入器具1の挿入部20を挿入する。このとき、術者は、例えば、片手で眼内レンズ挿入器具1を持って操作する。すなわち、片手の人差し指と中指により把持部11を把持しつつ、親指の腹部をプランジャー12の押圧部40に押し当てて押圧部40を先端側へ押し込む。これにより、眼内レンズ挿入器具1の内部にセットされていた眼内レンズ100が、プランジャー12により設置部22から挿入部20へと移動させられる。このとき、眼内レンズ100は、眼内レンズ挿入器具1内で折り畳まれながら挿入部20の先端20cへ移動していく。そして、眼内レンズ100は、挿入部20の先端20cの切欠きから眼内レンズ挿入器具1の外部へ押し出されて、眼内に射出される。なお、本説明は一例であり、例えば眼内レンズ挿入器具1を両手で操作してもよい。
【0025】
ここで、挿入部20の先端20cから眼内レンズ100を射出する際、挿入部20の内壁面20bと眼内レンズ100との間の摺動抵抗は、眼内レンズ100を折り畳みながら挿入部20の先端20cへ移動させるときに急激に大きくなり易く、その後、折り畳まれていた眼内レンズ100が開放されると急激に小さくなり易い。そのため、眼内レンズ100が射出された際に、術者はプランジャー12の押出荷重(上述の説明では術者が親指で押圧部40を押す力)を瞬時に低減させないと、プランジャー12を押出し過ぎてしまいロケット発射となってしまい易い。
【0026】
そのため、本実施形態では、このロケット発射を抑制するために、プランジャー12に弾性体50を配置している。そして、弾性体50は、軸方向(押出軸Pと平行な方向)に延設されて本体部10の内壁に接触している。そのため、例えば、弾性体50と本体部10の内壁との軸方向(押出軸Pと平行な方向)の接触面積が従来と比べて増加しているので、本体部10の寸法精度に影響されることなく本体部10の内壁に対する押圧力が均一になる。また、弾性体50では、面50aが本体部10の内壁に対して、軸方向(押出軸Pと平行な方向)に沿って連続的に接触している。従って、弾性体50と本体部10の内壁との接触面積がより大きくなっている。さらに、弾性体50が対向する2カ所に配置されているため、プランジャー12に対して均一な押圧力が付与され易い。これらのことにより、弾性体50と本体部10の内壁との間に従来より大きくて均一な摺動抵抗が生じる。また、眼内レンズ100を射出する際、術者は、プランジャー12の押出速度を意識的に遅くすることが考えられ、この場合、弾性体50の変形が回復して弾性体50と本体部10の内壁との間の摺動抵抗がより大きくなり易い。
【0027】
従って、眼内レンズ100の射出前後において、本体部10の内壁とプランジャー12との間の摺動抵抗の変化量(落差)が小さくなる。そのため、術者は、眼内レンズ100が射出された際に、プランジャー12の押出荷重を大きく変化(瞬時に低減)させる必要がなくなる。つまり、術者は、眼内レンズ100の射出直後に、プランジャー12の押出荷重を急激に変化(低減)させることなく、眼内レンズ100を眼内へ適正に射出することができる。なお、本説明は一例であり、弾性体50を用いる場合でも、眼内レンズ100の射出直後に、プランジャー12の押出荷重を急激に変化(低減)させてもよい。つまり本開示の弾性体50を用いることで、ロケット発射を低減できればよい。
【0028】
以上、説明したように、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1では、プランジャー12が軸方向(押出軸Pと平行な方向)に延設されて本体部10の内壁に接触する弾性体50を備えているため、例えば、眼内レンズ100を射出する際にプランジャー12の押出荷重を急激に変化させる必要がなくなる。そのため、プランジャー12の操作性が向上するとともにロケット発射を抑制することができる。
【0029】
次に、眼内レンズ挿入器具1の変形例について説明する。上記実施形態では、弾性体50として成形品を用いる場合を例示しているが、弾性体50としてOリング(汎用品)を用いることもできる。Oリングを用いることにより、例えば、製品コストを低減することができる。そこで、Oリングを弾性体50として用いる形態について、
図11~
図16を参照しながら説明する。なお、以降で説明する変形例においても、Oリング55の材料は、一例としてシリコンを用いている。
【0030】
第1変形例は、
図11及び
図12に示すように、Oリング55の内周面同士を近づける(密着させる)ように潰して細長形状にした弾性体50を、弾性体配置部48に対して横方向に(
図12の左右方向にOリング55の断面が並ぶ状態で)配置している。すなわち、潰したOリング55の反発力が本体部10の内壁面に対して最も大きく作用するように、弾性体50を配置している。これにより、弾性体50と本体部10の内壁との間に大きな摺動抵抗が生じ易く、プランジャー12の押出荷重を従来よりも大きくし易い。従って、第1変形例でも、眼内レンズ100を射出する際にプランジャー12の押出荷重を急激に変化させる必要がなくなる。そのため、プランジャー12の操作性が向上するとともにロケット発射を抑制することができる。
【0031】
第2変形例は、
図13及び
図14に示すように、Oリング55の内周面同士を近づける(密着させる)ように潰して細長形状にした弾性体50を、弾性体配置部48に対して縦方向に(
図14の上下方向にOリング55の断面が並ぶ状態で)配置している。すなわち、Oリング55と本体部10の内壁面との接触面積が最も大きくなるように、弾性体50を配置している。これにより、弾性体50と本体部10の内壁との間に大きな摺動抵抗が生じ易く、プランジャー12の押出荷重を従来よりも大きくし易い。従って、第1変形例でも、眼内レンズ100を射出する際にプランジャー12の押出荷重を急激に変化させる必要がなくなる。そのため、プランジャー12の操作性が向上するとともにロケット発射を抑制することができる。
【0032】
第3変形例は、第1及び第2変形例とは異なり、Oリング55の内周面同士を近づける(密着させる)ように潰すことなく、
図15に示すように、Oリング55(弾性体50)の内側を、弾性体配置部48の先端側に形成された係止部49に係止させて、弾性体配置部48に配置している。これにより、プランジャー12が押し込まれる際、
図16に示すように、Oリング55の位置が規制されながら変形(収縮)するため、Oリング55の変形を一定にすることができる。そのため、Oリング55を弾性体50として使用しても、プランジャー12に対して均一な押圧力を付与することができる。これにより、弾性体50と本体部10の内壁との間に従来よりも大きくて均一な摺動抵抗が生じ、プランジャー12の押出荷重を従来よりも大きくすることができる。従って、第3変形例でも、眼内レンズ100を射出する際にプランジャー12の押出荷重を急激に変化させる必要がなくなる。そのため、プランジャー12の操作性が向上するとともにロケット発射を抑制することができる。
【0033】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記の実施形態では、プランジャー12の軸基部42にOリングを装着していないものを例示しているが、軸基部42の先端部(押出棒44側)にOリングを装着してもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、プリセットタイプの眼内レンズ挿入器具1を例示したが、使用現場で眼内レンズを眼内レンズ挿入器具に充填する非プリセットタイプの眼内レンズであっても本開示の技術を適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 眼内レンズ挿入器具
10 本体部
12 プランジャー
20 挿入部
48 弾性体配置部
49 係止部
50 弾性体
55 Oリング
100 眼内レンズ