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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】光デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/065 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
G02F1/065
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019129577
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021015186
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-264063(JP,A)
【文献】特開2017-173365(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104309(WO,A1)
【文献】米国特許第05729641(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0056845(US,A1)
【文献】国際公開第2018/174083(WO,A1)
【文献】特開2016-051718(JP,A)
【文献】A. Chen et al.,Achieving Higher Modulation Efficiency in Electrooptic Polymer Modulator With Slotted Silicon Waveguide,Journal of Lightwave Technology,IEEE,2011年11月01日,Vol.29 , No.21,pp. 3310-3318
【文献】F. Qiu et al.,Ultra-thin silicon/electro-optic polymer hybrid waveguide modulators,Applied Physics Letters,AIP Publishing,2015年09月21日,Vol. 107, No. 12,pp.123302-1~pp.123302-5
【文献】R. Palmer et al.,High-Speed, Low Drive-Voltage Silicon-Organic Hybrid Modulator Based on a Binary-Chromophore Electro-Optic Material,Journal of Lightwave Technology,IEEE,2014年08月15日,Vol. 32, No. 16,pp. 2726-2734,DOI: 10.1109/JLT.2014.2321498
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形または平行四辺形の光ICチップ上に形成される光変調器を含む光デバイスであって、
前記光変調器は、
前記光ICチップの第1の辺から第2の辺に向かって形成される光導波路を含む干渉計と、
前記光導波路に平行に形成されるメタル配線と、
前記第1の辺または前記第2の辺に沿って形成される第1の電気光学ポリマーと、
前記第1の電気光学ポリマーに接続し、前記メタル配線に重なることなく前記光導波路上に形成される第2の電気光学ポリマーと、を備え、
前記第1の電気光学ポリマーが前記第1の辺に沿って形成されるときは、前記第2の辺の近傍でありかつ前記メタル配線の近傍の領域には前記第1の電気光学ポリマーは形成されず、前記第1の電気光学ポリマーが前記第2の辺に沿って形成されるときは、前記第1の辺の近傍でありかつ前記メタル配線の近傍の領域には前記第1の電気光学ポリマーは形成されない
ことを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記干渉計の入力端が前記第1の辺の近傍に配置され、
前記干渉計の出力端が前記第2の辺の近傍に配置され、
前記第1の電気光学ポリマーは、前記第2の辺に沿って形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記メタル配線は、
前記光変調器の駆動信号が与えられる第1のメタル配線と、
グランドに接続される第2のメタル配線と、を含み、
前記第1の電気光学ポリマーは、前記第2の辺に沿って形成され、
前記第1の辺の近傍に配置される、前記第1のメタル配線の先端に設けられるパッドと前記第2のメタル配線の先端に設けられるパッドとの間の間隔は、前記第2の辺の近傍に配置される、前記第1のメタル配線の先端に設けられるパッドと前記第2のメタル配線の先端に設けられるパッドとの間の間隔より狭い
ことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記メタル配線は、
前記光変調器の駆動信号が与えられる第1のメタル配線と、
グランドに接続される第2のメタル配線と、を含み、
前記第1の電気光学ポリマーは、前記第2の辺に沿って形成され、
前記干渉計と前記第1の辺との間のフィード領域に形成される、前記第1のメタル配線と前記第2のメタル配線との間の間隔は、前記干渉計と前記第2の辺との間のフィード領域に形成される、前記第1のメタル配線と前記第2のメタル配線との間の間隔より狭い
ことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記光ICチップ上に光受信器がさらに形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器を含む光デバイスに係わる。
【背景技術】
【0002】
光変調器は、光通信システムを実現するためのキーデバイスの1つである。そして、光通信システムの各ノードに実装される光伝送装置の小型化を図るために、光変調器の小型化が要求されている。
【0003】
光変調器の小型化を実現する技術の1つとして、シリコン基板上に光変調器を形成する構成が実用化されている。この構成においては、シリコン基板上に光導波路が形成され、さらに、その光導波路の近傍に電極およびPN接合が設けられる。ここで、光導波路の屈折率は、PN接合に印加される電界に依存する。よって、このPN接合にデータを表す電界信号を印加すれば、光導波路を通過する光は、その電界信号に応じて変調される。すなわち、データを表す変調光信号が生成される。
【0004】
但し、PN接合に印加される電界の変化に対して、光導波路の屈折率の変化は小さい。このため、十分な変調を実現するためには、PN接合に印加すべき信号の駆動電圧を高くしなければならず、消費電力が大きくなってしまう。そこで、この問題を解決または緩和するために、PN接合の代わりにポリマー(すなわち、高分子材料)を使用する光変調器が提案されている。例えば、マッハツェンダ干渉計を構成する光導波路上にポリマーが形成される。そして、このポリマーに、データを表す電界信号が印加される。ここで、ポリマーに印加される電界の変化に対して、光導波路の屈折率は大きく変化する。よって、この構成によれば、駆動電圧を高くすることなく十分な変調が実現される。
【0005】
なお、関連する技術として、低コストで導波損失の少ない高分子光導波路を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。また、シングルモードポリマー導波路アレイアセンブリを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-109926号公報
【文献】US2014/0035175
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、光導波路上に形成されるポリマーを利用してその光導波路の屈折率を変化させる構成においては、駆動電圧を高くすることなく十分な変調が実現される。ところが、ポリマーは、光ICチップ上で、駆動信号を伝搬するメタル配線および接地のためのメタル配線と重ならないように形成される。このため、これらのメタル配線と光ICチップの外部の回路とを電気的に接続するメタルワイヤが長くなることがある。そして、これらのメタルワイヤが長くなると、特性インピーダンスが大きくなり、インピーダンス整合が難しくなる。この結果、インピーダンス不整合により光ICチップ上で電気信号の反射が発生すると、光変調器の帯域が狭くなってしまう。
【0008】
本発明の1つの側面に係わる目的は、ポリマーを利用して光導波路の屈折率を変化させる光変調器が生成する光信号の品質を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様の光デバイスは、矩形または平行四辺形の光ICチップ上に形成される光変調器を含む。前記光変調器は、前記光ICチップの第1の辺から第2の辺に向かって形成される光導波路を含む干渉計と、前記光導波路に平行に形成されるメタル配線と、前記第1の辺または前記第2の辺に沿って形成される第1のポリマーと、前記第1のポリマーに接続し、前記メタル配線に重なることなく前記光導波路上に形成される第2のポリマーと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
上述の態様によれば、ポリマーを利用して光導波路の屈折率を変化させる光変調器が生成する光信号の品質が改善する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係わる光デバイスの一例を示す図である。
図2】変調器を構成する光導波路を示す図である。
図3】変調器を構成する光導波路およびメタル配線を示す図である。
図4】変調器を構成する光導波路、メタル配線、およびポリマーパターンを示す図である。
図5】光変調器の製造工程の一例を示す図(その1)である。
図6】光変調器の製造工程の一例を示す図(その2)である。
図7】光変調器の製造工程の一例を示す図(その3)である。
図8】本発明の実施形態に係わる光変調器の一例を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係わる光変調器のバリエーションを示す図である。
図10】メタル配線のバリエーションを示す図である。
図11】メタル配線の他のバリエーションを示す図である。
図12】送受信モジュールを含む光デバイスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係わる光デバイスの一例を示す。本発明の実施形態に係わる光デバイス100は、光ICチップ10上に形成される光変調器を含む。光ICチップ10は、この実施例では、シリコンウエハ上に形成される。この場合、シリコンウエハ上に複数の光ICチップが形成される。すなわち、光ICチップ10は、シリコンウエハから切り出される複数の光ICチップの中の1つである。なお、この実施例では、光変調器は、偏波多重光信号を生成する。
【0013】
光変調器は、図1に示すように、変調器11~14、可変光減衰器(VOA)15x、15y、モニタ受光器(mPD)16x、16y、偏波回転器(PR)17、偏波ビームコンバイナ(PBC)18を備える。なお、光変調器は、図1に示していない他の要素を備えていてもよい。
【0014】
光ICチップ10の形状は、この実施例では、矩形である。ただし、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、光ICチップ10の形状は平行四辺形であってもよい。
【0015】
変調器11~14は、光導波路を介して入力ポートに結合されている。すなわち、連続光が変調器11~14に入力される。また、変調器11、12、13、14には、それぞれ駆動信号XI、XQ、YI、YQが与えられる。なお、駆動信号XI、XQは、データ信号Xに基づいて生成される。また、駆動信号YI、YQは、データ信号Yに基づいて生成される。そして、変調器11は、入力連続光を駆動信号XIで変調することにより、変調光信号XIを生成する。同様に、変調器12、13、14は、変調光信号XQ、YI、YQを生成する。
【0016】
変調光信号XIおよび変調光信号XQが合波され、変調光信号Xが生成される。このとき、変調光信号XIおよび変調光信号XQは、パッド21を介して与えられるバイアスにより、互いに所定の位相差を有するように合波される。なお、変調光信号Xは、データ信号Xを表す。同様に、変調光信号YIおよび変調光信号YQが合波され、変調光信号Yが生成される。このとき、変調光信号YIおよび変調光信号YQは、パッド22を介して与えられるバイアスにより、互いに所定の位相差を有するように合波される。なお、変調光信号Yは、データ信号Yを表す。
【0017】
可変光減衰器15xは、変調光信号Xのパワーを調整する。同様に、可変光減衰器15yは、変調光信号Yのパワーを調整する。このとき、可変光減衰器15x、15yは、例えば、パッド23、24を介して与えられるパワー制御信号に従って、変調光信号X、Yのパワーを互いに同じにする。
【0018】
モニタ受光器16xは、変調光信号Xのパワーを検出する。同様に、モニタ受光器16yは、変調光信号Yのパワーを検出する。なお、モニタ受光器16x、16yにより検出されるパワーは、パッド25、26を介して不図示のコントローラに通知される。そうすると、このコントローラは、可変光減衰器15x、15yを制御するパワー制御信号を生成する。
【0019】
偏波回転器17は、変調光信号X、Yの一方の偏波を制御する。この実施例では、偏波回転器17は、変調光信号Yの偏波を制御する。一例としては、偏波回転器17は、変調光信号Xの偏波および変調光信号Yの偏波が互いに直交するように、変調光信号Yの偏波を制御する。偏波ビームコンバイナ18は、変調光信号X、Yを合波して偏波多重光信号を生成する。この偏波多重光信号は、光導波路を介して出力ポートに導かれる。
【0020】
なお、光デバイス100は、図1に示していない他の要素を備えてもよい。例えば、光デバイス100は、上述の光変調器に加えて、光受信器を備えてもよい。この場合、光デバイス100は、光トランシーバとして動作する。
【0021】
図2図4は、光変調器の構成の一例を示す。なお、図2図4においては、図1に示す変調器11~14が描かれている。すなわち、図2図4においては、図1に示す可変光減衰器15x、15y、モニタ受光器16x、16y、偏波回転器17、偏波ビームコンバイナ18は省略されている。
【0022】
図2は、変調器11~14を構成する光導波路を表す。各変調器11~14は、この実施例では、マッハツェンダ干渉計により実現される。すなわち、各変調器11~14は、1組の光導波路を含む。1組の光導波路は、互いに実質的に同じ長さであり、また、互いに実質的に平行に形成されている。そして、入力光導波路は、各変調器11~14の入力端に光学的に結合されている。よって、図1に示すように、光デバイス100に連続光が入力されると、その連続光は、入力光導波路を介して変調器11~14に導かれる。
【0023】
光デバイス100は、図2に示すように、ドライバ基板30および終端基板40を備える。ドライバ基板30には、信号パッドおよび接地パッドが設けられている。なお、図2図4において、Sは、信号パッドを表し、Gは、接地パッドを表す。そして、この実施例では、各変調器11~14に対して、1個の信号パッドSおよび2個の接地パッドGが設けられている。信号パッドSは、2個の接地パッドGの間に設けられている。また、信号パッドSは、駆動信号を生成する駆動回路に接続されている。接地パッドGは、グランドに接続されている。なお、駆動回路は、ドライバ基板30上に実装されてもよいし、ドライバ基板30の外部に設けられてもよい。
【0024】
終端基板40にも、信号パッドSおよび接地パッドGが設けられている。この例では、各変調器11~14に対して、1個の信号パッドSおよび2個の接地パッドGが設けられている。信号パッドSは、2個の接地パッドGの間に設けられている。また、信号パッドSと接地パッドGとの間には、終端抵抗Rが設けられている。なお、図3図4においては、終端抵抗Rは省略されている。
【0025】
図3は、変調器11~14を構成する光導波路およびメタル配線を示す。各メタル配線は、マッハツェンダ干渉計を構成する光導波路に平行に形成される。また、各メタル配線は、ワイヤを介して、ドライバ基板30および終端基板40の対応するパッドに接続される。
【0026】
例えば、変調器11は、メタル配線1、2a、2bを備える。メタル配線1は、マッハツェンダ干渉計に重なるように形成される。また、メタル配線1は、ワイヤを介して、ドライバ基板30に設けられている対応する信号パッドS、及び、終端基板40に設けられている対応する信号パッドSに接続される。メタル配線2a、2bは、マッハツェンダ干渉計を挟むように形成される。また、メタル配線2a、2bは、それぞれ、ワイヤを介して、ドライバ基板30に設けられている対応する接地パッドG、及び、終端基板40に設けられている対応する接地パッドGに接続される。ワイヤは、導電率の高い金属で実現される。変調器12~14の構成は、実質的に変調器11と同じである。
【0027】
図4は、変調器11~14を構成する光導波路、メタル配線、およびポリマーパターンを示す。ポリマーパターンは、この実施例では、各変調器11~14において、マッハツェンダ干渉計を構成する1組の光導波路の一方に沿って形成される。なお、ポリマーパターンは、図4では、斜線領域で表されている。また、ポリマーパターンは、光ICチップ10上に電気光学ポリマー(EOポリマー)を塗布することで形成される。
【0028】
図5図7は、光変調器の製造工程の一例を示す。ここでは、光ICチップ上に光導波路、メタル配線、およびポリマーパターンを形成する手順の一例を説明する。なお、この実施例では、図5(a)に示すSOI基板を使用して光変調器が形成されるものとする。SOI基板は、シリコン基板とSi層との間に、絶縁層としてのBOX層(SiO2膜)を備える。
【0029】
図5(b)において、Si層にN領域が形成される。このとき、レジスト膜を利用してSi層に選択的にN型イオンを注入することでN領域が形成される。なお、N領域は、後の工程で光導波路が形成される領域の近傍に形成される。
【0030】
図5(c)において、光導波路が形成される。このとき、レジスト膜を利用してSi層およびN領域をエッチングすることで光導波路が形成される。
【0031】
図5(d)~図6(b)において、コンタクト層が形成される。即ち、図5(d)に示すように、Si層およびN領域の表面に酸化膜が形成される。続いて、図6(a)に示すように、レジスト膜を利用したエッチングにより、N領域の表面の一部において酸化膜が除去される。そして、図6(b)に示すように、酸化膜が除去された領域にコンタクト層が形成される。すなわち、N領域に電気的に接続するコンタクト層が形成される。
【0032】
図6(c)~図6(d)において、メタル配線が形成される。即ち、図6(c)に示すように、酸化膜の表面にメタル層が形成される。この後、図6(d)に示すように、選択的にメタル層を除去することにより、メタル配線が形成される。
【0033】
図7(a)~図7(b)において、ポリマーパターンが形成される。即ち、図7(a)に示すように、光ICチップ10の表面に形成されている酸化膜を選択的に除去することで、ポリマー流路が形成される。そして、ポリマー流路にポリマー材料を流し込むことにより、図4に示すポリマーパターンが形成される。このとき、図7(b)に示すように、ポリマーパターンは、光導波路上に接触するように形成される。具体的には、マッハツェンダ干渉計を構成する1組の光導波路の一方に接触するようにポリマーパターンが形成される。この後、図3に示すように、各メタル配線とドライバ基板30上の対応するパッドとの間、および、各メタル配線と終端基板40上の対応するパッドとの間が、それぞれワイヤで接続される。
【0034】
ここで、例えば、図7(b)に示す2つのメタル配線が図3に示すメタル配線1、2aであり、図7(b)に示す光導波路が図2図3に示す変調器11を構成するマッハツェンダ干渉計の一方の光導波路であるものとする。この場合、変調器11の駆動信号は、メタル配線1およびメタル配線1に接触するN領域を介してポリマーパターンに印加される。また、このポリマーパターンは、N領域およびメタルパターン2aを介して電気的にグランドに接続される。したがって、駆動信号に対応する電界がポリマーパターンに与えられ、この結果、駆動信号に応じて光導波路の屈折率が変化する。すなわち、駆動信号に対応する変調が実現される。
【0035】
このように、光導波路に電界を印加するためのポリマーパターンは、光ICチップ10の表面にポリマー流路を形成し、そのポリマー流路にポリマー材料を注入することにより形成される。図4に示す例では、ポリマー注入プールからポリマー材料を注入し、そのポリマー材料をポリマー流路終端に向かって流すことにより、ポリマーパターンが形成される。
【0036】
ただし、ポリマーパターンは、光ICチップ10の表面において、メタル配線と重ならないように形成される。例えば、図4に示す構成では、ポリマー注入プールとポリマー流路終端との間に、下記のポリマーパターンが形成される。
(1)ドライバ基板30に接する辺に沿って形成される入力側ポリマーパターン
(2)入力側ポリマーパターンに接続され、各変調器11~14の光導波路上に形成されるチャネルポリマーパターン
(3)各チャネルポリマーパターンに接続され、終端基板40に接する辺に沿って形成される出力側ポリマーパターン
【0037】
ところが、この構成では、光ICチップ10の端部に入力側ポリマーパターンおよび出力側ポリマーパターンが形成されるので、メタル配線(すなわち、光変調器の電極)を光ICチップ10の端部に形成できない。具体的には、光ICチップ10の表面において、ドライバ基板30に隣接する領域、および、終端基板40に隣接する領域にメタル配線を形成できない。このため、各メタル配線とドライバ基板30上の対応するパッドとを接続するワイヤ、および、各メタル配線と終端基板40上の対応するパッドとを接続するワイヤが長くなってしまう。すなわち、ワイヤ長L1、L2が長くなってしまう。そして、これらのワイヤが長くなると、信号線のインピーダンス整合が難しくなる。この結果、インピーダンス不整合により光ICチップ上で電気信号の反射が発生すると、光変調器の帯域が狭くなるおそれがある。
【0038】
<実施形態>
図8は、本発明の実施形態に係わる光変調器の一例を示す。なお、光ICチップ10の形状は、図1に示すように、矩形(または、平行四辺形)である。光ICチップ10の表面に形成される光導波路は、図2および図8において実質的に同じである。光ICチップ10の表面に形成されるメタル配線(1、2a、2b等)は、図3および図8において実質的に同じである。ドライバ基板30および終端基板40は、図2図4および図8において実質的に同じである。光導波路、メタル配線およびポリマーパターンは、例えば、図5図7に示す手順で形成される。図8では、図3に示すワイヤは省略されている。
【0039】
図8に示す実施形態においては、光ICチップ10上に、流入路ポリマーパターン3およびチャネルポリマーパターン4a~4dが形成される。流入路ポリマーパターン3は、光ICチップ10の4つの辺のうち、ドライバ基板30が隣接する辺または終端基板40が隣接する辺に沿って形成されている。この実施例では、流入路ポリマーパターン3は、終端基板40が隣接する辺に沿って形成されている。なお、以下の記載では、ドライバ基板30が隣接する辺を「ドライバ辺」と呼び、終端基板40が隣接する辺を「終端辺」と呼ぶことがある。
【0040】
チャネルポリマーパターン4a~4dは、それぞれ、流入路ポリマーパターン3に接続する。この例では、チャネルポリマーパターン4a~4dは、それぞれ、流入路ポリマーパターン3に対してほぼ直交する方向に形成される。また、チャネルポリマーパターン4a~4dは、それぞれ、対応するマッハツェンダ干渉計を構成する1組の光導波路のうちの一方の光導波路上に形成される(図7(b)参照)。たとえば、チャネルポリマーパターン4aは、変調器11を構成する1組の光導波路のうちの一方の光導波路上に形成される。同様に、チャネルポリマーパターン4b、4c、4dは、それぞれ、変調器12、13、14の光導波路上に形成される。なお、チャネルポリマーパターン4a~4dは、光ICチップ10上でメタル配線(1、2a、2b等)を重ならないように形成される。
【0041】
流入路ポリマーパターン3およびチャネルポリマーパターン4a~4dは、図7(a)に示すように光ICチップ10の表面にポリマー流路を形成し、そのポリマー流路にポリマー材料を注入することにより形成される。具体的には、図8に示すポリマー注入プールからポリマー材料が注入される。そうすると、ポリマー材料は、ポリマー流路終端に向かって流れる。このとき、ポリマー材料は、ポリマー流路を流れるので、ポリマー注入プールからポリマー流路終端に向かう方向だけでなく、ポリマー注入プールからポリマー流路終端に向かう方向に直交する方向にも流れる。この結果、流入路ポリマーパターン3およびチャネルポリマーパターン4a~4dが形成される。
【0042】
なお、ポリマー流路を介してポリマー材料を流す工程では、必要に応じて、光ICチップ10が傾けられる。この場合、例えば、ドライバ辺に対して終端辺の高さ位置が高くなるように、光ICチップ10が傾けられる。
【0043】
このように、図8に示す実施形態においては、ドライバ辺または終端辺のうちの一方の辺に沿ってポリマーパターン(すなわち、流入路ポリマーパターン3)が形成されるが、他方の辺にはポリマーパターンは形成されない。このため、光ICチップ10上のメタル配線とドライバ基板30とを接続するワイヤ、又は、光ICチップ10上のメタル配線と終端基板40とを接続するワイヤを短くできる。この実施例では、光ICチップ10の終端辺に沿って流入路ポリマーパターン3が形成されるが、光ICチップ10のドライバ辺に沿っては、ポリマーパターンは形成されない。よって、光ICチップ10上のメタル配線とドライバ基板30とを接続するワイヤを短くできる。具体的には、図3図4に示す構成と比較して、図8に示す実施形態においては、ワイヤ長L2が短くなる。
【0044】
ワイヤが短くなると、信号線のインピーダンスを整合させやすくなる。そして、インピーダンスが精度よく整合すれば、光ICチップ上での電気信号の反射が抑制されるので、光変調器の帯域が広くなる。すなわち、本発明の実施形態の構成は、光信号の高速化に寄与する。
【0045】
なお、上述したように、流入路ポリマーパターン3は、光ICチップ10のドライバ辺または終端辺のいずれか一方に沿って形成される。ただし、ドライバ基板30から光ICチップ10に駆動信号が入力される構成においては、光ICチップ10と終端基板40との間のワイヤを伝搬する信号の振幅より、ドライバ基板30と光ICチップ10との間のワイヤを伝搬する信号の振幅の方が大きい。このため、光ICチップ10と終端基板40との間よりも、ドライバ基板30と光ICチップ10との間のインピーダンス不整合の影響が大きい。即ち、光ICチップ10と終端基板40との間のワイヤを短くするより、ドライバ基板30と光ICチップ10との間のワイヤを短くする方が、インピーダンスの不整合を防ぐ効果的が高くなる。したがって、流入路ポリマーパターン3は、図8に示すように、終端辺に沿って形成することが好ましい。
【0046】
<バリエーション1>
図9に示す構成では、流入路ポリマーパターン3は、終端辺に沿って形成され、さらに光ICチップ10の側辺に沿って伸びている。すなわち、流入路ポリマーパターン3は、チャネルポリマーパターン4a~4dと平行な方向にも伸びている。そして、この流入路ポリマーパターン3の先端に、ポリマー流路終端が設けられている。ここで、側辺に沿って形成される流入路ポリマーパターン3の幅および長さは、各チャネルポリマーパターン4a~4dとほぼ同じである。
【0047】
そうすると、ポリマーパターンを形成する工程において、ポリマー注入プールに注入されるポリマー材料がポリマー流路終端まで到達するときには、各チャネルポリマーパターン4a~4dの先端にまでポリマー材料が到達していると考えられる。よって、この構成によれば、ポリマー流路終端にポリマー材料が到達したか否かをモニタすることにより、各チャネルポリマーパターン4a~4dの先端までポリマー材料が十分に到達したか否かを判定できる。
【0048】
<バリエーション2>
上述したように、流入路ポリマーパターン3は、光ICチップ10のドライバ辺または終端辺のいずれか一方に沿って形成される。そして、チャネルポリマーパターン4a~4dは、流入路ポリマーパターン3に接続している。このため、流入路ポリマーパターン3が形成されない辺の近傍領域には、空きスペースが存在する。
【0049】
図10図11に示す実施例では、光ICチップ10の終端辺に沿って流入路ポリマーパターン3が形成されている。そして、メタル配線1、2a間にチャネルポリマーパターン4aが形成されている。よって、終端辺に近い領域においてはメタル配線1、2a間に空きスペースは無いが、ドライバ辺に近い領域においては、メタル配線1、2a間に空きスペースが存在する。そこで、バリエーション2においては、この空きスペースを利用してインピーダンスを小さくする。
【0050】
図10に示す例では、メタル配線の終端辺側の先端に形成されるパッドの面積よりも、メタル配線のドライバ辺側の先端に形成されるパッドの面積が大きい。よって、ドライバ辺の近傍に配置される、メタル配線1のパッドとメタル配線2a、2bのパッドとの間の間隔(W2)は、終端辺の近傍に配置される、メタル配線1のパッドとメタル配線2a、2bのパッドとの間の間隔(W1)より狭くなる。この結果、パッド間のインピーダンスが小さくなり、インピーダンスを精度よく整合させることが可能になる。
【0051】
図11に示す例では、ドライバ辺側のフィード領域において、メタル配線の幅が広なっている。よって、ドライバ辺側のフィード領域におけるメタル配線1とメタル配線2a、2bとの間の間隔(W2)は、終端辺側のフィード領域におけるメタル配線1とメタル配線2a、2bとの間の間隔(W1)より狭くなる。この結果、パッド間のインピーダンスが小さくなり、インピーダンスを精度よく整合させることが可能になる。
【0052】
なお、図10図11に示す例では、ドライバ辺側でメタル配線間の間隔を狭くしているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、光ICチップ10のドライバ辺に沿って流入路ポリマーパターン3が形成される場合は、終端辺側でメタル配線間の間隔が狭く構成される。
【0053】
<送受信モジュール>
図12は、送受信モジュールを含む光デバイスの一例を示す。光デバイス100は、この実施例では、光源51、送受信パッケージ60、DSP71を備える。送受信パッケージ60は、受信部61、TIA回路62、ドライバ回路63、変調部64を備える。受信部61および変調部64は、例えば、図8または図9に示す光ICチップ10に実装される。変調部64は、例えば、図8または図9に示す構成により実現される。なお、光デバイス100は、図12に示していない要素を備えていてもよい。
【0054】
光源51は、所定の波長の連続光を生成する。この連続光は、光ICチップ10上に形成される光導波路を介して変調部64に導かれる。また、受信部61がコヒーレント受信器であるときは、この連続光は、受信部61にも導かれる。
【0055】
受信光信号(Rx_in)は、受信部61に導かれる。受信部61は、例えば、コヒーレント受信器である。この場合、受信部61は、光源51により生成される連続光を利用して受信光信号を表す電界情報信号を生成する。TIA回路62は、受信部61により生成される電界情報信号を電圧信号に変換して増幅する。
【0056】
DSP(Digital Signal Processor)71は、受信光信号を表す電界情報信号から受信データを再生する。なお、受信データを再生する機能は、周波数オフセットを補償する機能、波形歪みを補償する機能、位相を推定する機能を含んでもよい。また、DSP71は、送信データから駆動信号を生成する。なお、駆動信号を生成する機能は、変調方式に応じてマッピングを行う機能を含んでもよい。
【0057】
駆動信号は、ドライバ回路63により増幅されて変調部64に与えられる。なお、ドライバ回路63は、図8または図9に示すドライバ基板30に実装されてもよい。そして、変調部64は、ドライバ回路63を介して与えられる駆動信号で連続光を変調して変調光信号(Tx_out)を生成する。
【0058】
このように、光ICチップ上に受信部61および変調部64を実装することで、送受信モジュールの小型化が実現される。また、図8または図9に示す構成で変調部64を実現すれば、光ICチップ上での電気信号の反射が抑制されるので、送信帯域が広くなる。
【符号の説明】
【0059】
1、2a、2b メタル配線
3 流入路ポリマーパターン
4a~4d チャネルポリマーパターン
10 光ICチップ
11~14 変調器
30 ドライバ基板
40 終端基板
100 光デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12