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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20231121BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20231121BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20231121BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231121BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20231121BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20231121BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20231121BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20231121BHJP
   F02P 3/055 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01L29/78 652P
H01L29/78 657B
H01L29/78 655F
H01L29/78 658F
H01L29/78 655G
H01L27/04 H
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/06 301F
H01L27/06 102A
F02P3/055 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019138156
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021022656
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】阿部 佑哉
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-069423(JP,A)
【文献】特開2006-080368(JP,A)
【文献】特開2010-267655(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0273346(US,A1)
【文献】特開2003-101039(JP,A)
【文献】特開2017-059665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 21/336
H01L 21/822
H01L 21/8234
F02P 3/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの中央側に配置された主半導体素子部と、前記半導体チップの外周側に配置された耐圧構造部とを有する半導体装置であって、
前記耐圧構造部が、
第1導電型の半導体基体と、
前記半導体基体上に選択的に配置された第1絶縁膜と、
前記半導体基体上の前記第1絶縁膜よりも前記半導体チップの中央側に配置され、前記第1絶縁膜よりも薄い第2絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に少なくとも一部が配置された保護ダイオードと、
前記保護ダイオード上に配置された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に配置されたフィールドプレートと、
を備え、
前記フィールドプレートの前記外周側の端部が、前記第1絶縁膜上に配置される前記保護ダイオードと重なり、且つ前記第1絶縁膜の前記中央側の端部上に位置することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記層間絶縁膜上に互いに離間して前記フィールドプレートが複数配置され、
前記複数のフィールドプレートのうちの最も前記外周側に位置する前記フィールドプレートの前記外周側の端部が、前記第1絶縁膜の前記中央側の端部上に位置することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記フィールドプレート直下の前記半導体基体の上部に設けられた第2導電型のガードリングを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ガードリングが、前記第2絶縁膜直下に位置することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記保護ダイオードが、前記第1絶縁膜上から前記第2絶縁膜上まで延伸することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記フィールドプレートを覆うように配置された、抵抗性シリコン窒化膜からなる保護膜を更に備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基体の上部に前記主半導体素子部から前記耐圧構造部に渡って設けられた第2導電型のウェル領域と、
前記主半導体素子部において前記ウェル領域の表面に接触する主電極と、
を更に備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ウェル領域の前記外周側の端部から前記第1絶縁膜の前記中央側の端部までの距離は、前記第1絶縁膜の前記中央側の端部から前記外周側の端部までの距離よりも短いことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イグナイタ等の高耐圧回路に好適な半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車における燃費改善を目的として、内燃機関の燃料希薄化の傾向であり、点火プラグが点火しにくい環境となっている。このため、内燃機関に用いられるイグニションコイルには高エネルギー化が要求されている。イグニションコイルの高エネルギー化の手法として、イグニションコイルの点火を制御するイグナイタの高耐圧化が挙げられる。
【0003】
イグナイタの高耐圧化は、イグナイタに内蔵されている絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)のコレクタ-ゲート間に接続されているツェナーダイオード(保護ダイオード)の高耐圧化によって実現可能である。しかしながら、イグナイタは高いサージ耐性や過酷な環境下での使用でも破壊・劣化しないことが求められるため、保護ダイオードの高耐圧化に伴い、IGBT部のバルク耐圧やチップ外周部の耐圧構造部も併せて高耐圧化を図る必要がある。
【0004】
耐圧構造部の高耐圧化の手法としては、耐圧構造部内に配置されているガードリング構造やフィールドプレート構造の多段化などが挙げられる(特許文献1及び2参照。)。しかしながら、ガードリング構造やフィールドプレート構造の多段化により、過渡サージ印加時において、チップ外周側のフィールドプレートの端部付近の絶縁膜に電界集中が発生する。このため、絶縁膜が破壊され易くなり、サージ耐量が低下するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/142331号
【文献】特開2017-59665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、イグナイタ等の高耐圧回路に好適な半導体装置において、高耐圧化を図りつつ、サージ耐量を確保することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、半導体チップの中央側に配置された主半導体素子部と、半導体チップの外周側に配置された耐圧構造部とを有する半導体装置であって、耐圧構造部が、第1導電型の半導体基体と、半導体基体上に選択的に配置された第1絶縁膜と、半導体基体上の第1絶縁膜よりも半導体チップの中央側に配置され、第1絶縁膜よりも薄い第2絶縁膜と、第1絶縁膜上に少なくとも一部が配置された保護ダイオードと、保護ダイオード上に配置された層間絶縁膜と、層間絶縁膜上に配置されたフィールドプレートとを備え、フィールドプレートの外周側の端部が、第1絶縁膜の中央側の端部上に位置する半導体装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、イグナイタ等の高耐圧回路に好適な半導体装置において、高耐圧化を図りつつ、サージ耐量を確保することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置を適用した点火装置の等価回路図である。
図2】実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図3図2の領域Aの部分拡大図である。
図4図3のA-A方向から見た断面図である。
図5図4の領域Aの部分拡大図である。
図6】比較例に係る半導体装置の断面図である。
図7】比較例に係る半導体装置の通常動作時の等電位線を示す断面図である。
図8】比較例に係る半導体装置のサージ印加時の各種波形を示すグラフである。
図9図8の破線の区間を拡大した各種波形を示すグラフである。
図10】比較例に係る半導体装置のサージ印加時の等電位線を示す概略断面図である。
図11】比較例に係る半導体装置のサージ印加時の等電位線を示す概略平面図である。
図12】比較例に係る半導体装置のサージ印加時の等電位線を示す概略断面図である。
図13】実施形態に係る半導体装置のサージ印加時の等電位線を示す概略断面図である。
図14】実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程断面図である。
図15】実施形態に係る半導体装置の製造方法の図14に引き続く工程断面図である。
図16】実施形態に係る半導体装置の製造方法の図15に引き続く工程断面図である。
図17】実施形態に係る半導体装置の製造方法の図16に引き続く工程断面図である。
図18】実施形態に係る半導体装置の製造方法の図17に引き続く工程断面図である。
図19】実施形態に係る半導体装置の製造方法の図18に引き続く工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
本明細書中の「半導体装置」には、集積化のレベルに対応して個別装置(ディスクリートデバイス)及び半導体集積回路の両方の構造を含み得る。半導体装置を構成する主半導体素子の「第1主電極領域」とは、電界効果トランジスタ(FET)や静電誘導トランジスタ(SIT)においてソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)においてはエミッタ領域又はコレクタ領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。また、MIS制御静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)等の絶縁ゲート型サイリスタにおいてはアノード領域又はカソード領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。「第2主電極領域」とは、FETやSITにおいては上記第1主電極領域とはならないソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。IGBTにおいては上記第1主電極領域とはならないエミッタ領域又はコレクタ領域のいずれか一方となる領域を意味する。MIS制御SIサイリスタ等においては上記第1主電極領域とはならないアノード領域又はカソード領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。
【0012】
このように、「第1主電極領域」がソース領域であれば、「第2主電極領域」はドレイン領域を意味し、一方と第2主電極領域の間を「主電流」が流れる。例えばIGBTの場合は主電流にはコレクタ電流が該当し、「第1主電極領域」がエミッタ領域であれば、「第2主電極領域」はコレクタ領域を意味する。「第1主電極領域」がアノード領域であれば、「第2主電極領域」はカソード領域を意味する。バイアス関係を交換すれば、MISFET等の場合、「第1主電極領域」の機能と「第2主電極領域」の機能を交換可能な場合がある。同様に、「第1主電極」は第1主電極領域に接続される導電層からなる主電極を意味し、「第2主電極」は第2主電極領域に接続される導電層からなる主電極を意味する。
【0013】
また、以下の説明では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。また、「n」や「p」に付す「+」や「-」は、「+」及び「-」が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。但し、同じ「n」と「n」とが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0014】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。
【0015】
(実施形態)
<半導体装置>
本発明の実施形態に係る半導体装置(半導体チップ)として、自動車用の内燃機関に用いられる点火装置のイグナイタを構成する電力用半導体集積回路(パワーIC)を例示する。本発明の実施形態に係る点火装置は、図1に示すように、半導体装置(イグナイタ)100、バッテリ110、電子制御ユニット(ECU)112、イグニションコイル113及び点火プラグ114を備える。
【0016】
半導体装置100は、端子105を介してECU112に接続されている。半導体装置100は、端子104を介してイグニションコイル113の1次側コイルの一端に接続されている。イグニションコイル113の1次側コイルの他端は、バッテリ110に接続されている。イグニションコイル113の2次側コイルの一端は、バッテリ110に接続され、2次側コイルの他端は、点火プラグ114に接続されている。
【0017】
半導体装置100は、主半導体素子101、保護ダイオード102及び制御回路部103を有する。主半導体素子101は、例えばIGBTで構成されている。主半導体素子101のゲートは制御回路部103に接続されている。主半導体素子101のコレクタは端子104に接続されている。主半導体素子101のエミッタは端子106を介して接地されている。
【0018】
保護ダイオード102は、主半導体素子101のコレクタ-ゲート間に接続されている。保護ダイオード102は、複数(多段)のツェナーダイオードを逆接続することにより構成されている。保護ダイオード102は、主半導体素子101のターンオフ時にコレクタに発生する高電圧をクランプすることにより、主半導体素子101への過電圧の印加を防止する。
【0019】
ECU112からオン信号が入力された場合に、制御回路部103は、主半導体素子101のゲートにオン信号を出力する。オン信号が主半導体素子101のゲートに入力されると、主半導体素子101のゲート電位が上昇し、主半導体素子101がオンする。主半導体素子101がオンすることで、バッテリ110からイグニションコイル113の1次側コイルに電流が流れる。
【0020】
一方、ECU112からのオン信号がオフした際に、制御回路部103は、主半導体素子101のゲートにオフ信号を出力する。オフ信号が主半導体素子101のゲートに入力されると、主半導体素子101のゲート電位が低下し、主半導体素子101がターンオフする。このターンオフ時に、イグニションコイル113のインダクタンス成分(L成分)とターンオフ時の主半導体素子101のdi/dtに応じた電圧が半導体装置100の端子104に発生する。イグニションコイル113の1次側コイルに発生した電圧とイグニションコイル113の巻き数比に応じた高電圧がイグニションコイル113の2次側コイルに発生して、点火プラグ114にて火花放電する。
【0021】
図1に示した半導体装置100は、図2に示すように、活性領域を構成する主半導体素子部(IGBT部)201と、主半導体素子部201を駆動する制御回路部202とが同一チップ上にモノリシックに集積化したワンチップイグナイタで構成することができる。主半導体素子部201及び制御回路部202の周囲であるチップ外周部には、耐圧構造部203が配置されている。耐圧構造部203において、主半導体素子部201に隣接して保護ダイオード10が配置されている。図2に示した主半導体素子部201、制御回路部202及び保護ダイオード10は、図1に示した主半導体素子101、制御回路部103及び保護ダイオード102にそれぞれ対応する。
【0022】
図3は、図2の破線で囲んだ領域A内の耐圧構造部203の一部を拡大した平面図である。また、図4は、図3のA-A方向から見た断面図である。図4の左端には、耐圧構造部203に隣接する主半導体素子部201の一部まで拡張して示している。
【0023】
図4の左端に示すように、主半導体素子部201は、第1導電型(n型)の半導体基体1の上部に設けられた第1導電型(n型)の第1主電極領域21a,21bと、半導体基体1の下面(裏面)側の第2導電型(p型)の第2主電極領域14が、縦方向に対向した電力用半導体素子を有する。例えば、電力用半導体素子がIGBTであれば、第1主電極領域21a,21bはエミッタ領域として機能し、第2主電極領域14はコレクタ領域として機能する。第1主電極領域21a,21bは、半導体基体1よりも低比抵抗(高不純物濃度)の半導体領域である。
【0024】
半導体基体1の上部には、p型の第1ウェル領域5a及び第2ウェル領域5bが互いに離間して配置されている。第2ウェル領域5bは、半導体基体1の上部に、主半導体素子部201から耐圧構造部203に渡って設けられている。第1ウェル領域5aと第2ウェル領域5bとに挟まれた半導体基体1の上部には、第1ウェル領域5a及び第2ウェル領域5bよりも高比抵抗でp型の第1注入制御領域22a及び第2注入制御領域22bがそれぞれ設けられている。第1注入制御領域22aは、第1主電極領域21aにpn接合をなすように隣接して設けられている。第2注入制御領域22bは、第1主電極領域21bにpn接合をなすように隣接して設けられている。
【0025】
主半導体素子部201がIGBTであれば、第1注入制御領域22a及び第2注入制御領域22bは、主半導体素子部201のベース領域として機能する。第1ウェル領域5a、第2ウェル領域5b及び第1主電極領域21a,21bにオーミック接触するように、第1主電極(エミッタ電極)2が設けられている。また、図示を省略するが、第2主電極領域14にオーミック接触するように第2主電極(コレクタ電極)が設けられる。
【0026】
半導体基体1は、半導体装置100がモノリシックに集積化される半導体チップの一部を構成している。半導体基体1は、半導体基体1に第1主電極領域21a,21bから注入された多数キャリアをドリフト電界で輸送することが可能な半導体領域である。主半導体素子部201がIGBTの構造であれば、半導体基体1は、ドリフト領域として機能する。
【0027】
第1注入制御領域22aと第2注入制御領域22bの間に挟まれた半導体基体1、第1注入制御領域22a及び第2注入制御領域22b上にはゲート絶縁膜23を介してゲート電極24が配置されている。ゲート電極24は、ゲート絶縁膜23を介して第1注入制御領域22a及び第2注入制御領域22bの表面電位のそれぞれを静電的に制御する。ゲート絶縁膜23及びゲート電極24により、第1主電極領域21a,21bから半導体基体(ドリフト領域)1への多数キャリアの注入を制御する絶縁ゲート構造(23,24)が構成される。
【0028】
例えば、半導体基体1をドリフト領域として機能させるように、n型のシリコン(Si)からなる半導体基板(Siウェハ)の裏面に、硼素(B)等のp型不純物イオンを注入してp型の半導体領域からなる第2主電極領域14を形成してもよい。或いは、n型の半導体基板の裏面に、p型不純物元素を熱拡散してp型の半導体領域からなる第2主電極領域14を形成してもよい。或いは、p型の半導体基板(Siウェハ)からなる第2主電極領域14上にn型の半導体基体1をエピタキシャル成長してもよい。
【0029】
ゲート電極24上には、ゲート電極24を覆うように第1層間絶縁膜25が配置されている。第1層間絶縁膜25に設けられた開口部(コンタクトホール)を介して、第1主電極2が、第1ウェル領域5a、第2ウェル領域5b、第1主電極領域21a及び第1主電極領域21bに金属学的に接合する。
【0030】
一方、図4の中央から右側に示す耐圧構造部203において、半導体基体1の上部には、p型の第1ガードリング6a、第2ガードリング6b及び第3ガードリング6cが設けられている。第1ガードリング6a~第3ガードリング6cは、半導体チップの外周部を囲むように環状に配置されている。図4では3本の第1ガードリング6a~第3ガードリング6cが配置された場合を例示するが、ガードリングの本数は1本又は2本でもよく、4本以上であってもよく、要求される耐圧等に応じて適宜選択可能である。
【0031】
耐圧構造部203では、半導体チップの裏面側の第2主電極領域14に電圧が印加された際に、第2ウェル領域5bと半導体基体1とのpn接合領域から空乏層が半導体チップの外側に伸びることで耐圧を確保している。第1ガードリング6a~第3ガードリング6cは、第2ウェル領域5bと半導体基体1とのpn接合領域からの空乏層を横方向(水平方向)に伸ばし、主半導体素子部201の耐圧を確保する機能を有する。
【0032】
図4の右端に示すように、半導体基体1の上部には、半導体基体1よりも低比抵抗のn型のストッパ領域7が設けられている。ストッパ領域7は、コレクタ電位(高電位側電位)と同電位となる。
【0033】
半導体基体1上には、第1絶縁膜(第1フィールド絶縁膜)11と、第1絶縁膜11よりも半導体チップの中央側(内側)で第1絶縁膜11に接する第2絶縁膜(第2フィールド絶縁膜)12とが配置されている。第2ウェル領域5bの一部、第1ガードリング6a~第3ガードリング6cは、第2絶縁膜12直下に配置されている。第1絶縁膜11の厚さT1は、第2絶縁膜12の厚さT2よりも厚い。第1絶縁膜11の厚さT1は例えば1000nm~2000nm程度であり、第2絶縁膜12の厚さT2は例えば500nm~1000nm程度である。
【0034】
図4では、第2ウェル領域5bの外側(半導体チップの外周側)の端部から第1絶縁膜11の内側(半導体チップの中央側)の端部までの距離D1が、第1絶縁膜11の内側(半導体チップの中央側)の端部から外側(半導体チップの外周側)の端部までの距離D2よりも長い場合を例示するが、距離D1が距離D2よりも短くてもよく、距離D1が距離D2と同一であってもよい。距離D1は、例えば100μm~200μm程度であり、要求される耐圧に応じて適宜調整可能である。距離D2は、例えば500μm~600μm程度であり、要求される耐圧に応じて適宜調整可能である。
【0035】
第1絶縁膜11及び第2絶縁膜12は同一材料から構成されてよく、異なる材料から構成されてもよい。第1絶縁膜11は、第1絶縁膜11の一部を構成する絶縁膜上に第2絶縁膜12が積層されて構成されていてもよい。第1絶縁膜11及び第2絶縁膜12としては、例えばシリコン酸化膜(SiO膜)が使用可能であるが、SiO膜の他にもシリコン酸窒化(SiON)膜等でもよい。
【0036】
第1絶縁膜11及び第2絶縁膜12上には、保護ダイオード10が配置されている。保護ダイオード10は、第1絶縁膜11及び第2絶縁膜12の境界部分において段差部を有している。なお、保護ダイオード10は、第2絶縁膜12上まで延伸せず、第1絶縁膜11上のみに配置されていてもよい。即ち、保護ダイオード10は、少なくとも第1絶縁膜11上に配置されていればよい。
【0037】
実施形態に係る半導体装置100において、主半導体素子101のターンオフ時に、イグニションコイル113の誘導起電力により、コレクタ電圧が数100V程度まで跳ね上がる。この際、保護ダイオード10によりコレクターゲート間を例えば約400~550V程度にクランプすることで、過電圧の発生を防止することができる。更に、保護ダイオード10は、第3ガードリング6cとストッパ領域7との間の半導体基体1に広がる等電位線の間隔を均等に広げる機能を有する。
【0038】
図4では図示を省略しているが、保護ダイオード10は、例えばp型の半導体領域とn型の半導体領域とを水平方向(図4の左右方向)に交互に配置することで構成される複数(多段)のツェナーダイオードの直列接続で構成することができる。ツェナーダイオードの直列接続の段数は例えば50~100段程度であってもよく、要求される耐圧等に応じて適宜選択可能である。
【0039】
保護ダイオード10上には、第2層間絶縁膜13が配置されている。第2層間絶縁膜13は、第1絶縁膜11及び第2絶縁膜12の境界部分において段差部を有している。第2層間絶縁膜13としては、燐シリカガラス(PSG)、ホウ素シリカガラス(BSG)、ホウ素燐シリカガラス(BPSG)、シリコン窒化物(Si)膜等が使用可能である。更に、第2層間絶縁膜13としては、「NSG」と称される燐(P)や硼素(B)を含まないノンドープのシリコン酸化膜(SiO膜)が採用可能である。
【0040】
図4の右端に示すように、第2層間絶縁膜13上にはストッパ電極8が配置されている。ストッパ電極8の外側の端部は、第2層間絶縁膜13及び第1絶縁膜11を貫通するコンタクトホールを介してストッパ領域7にオーミック接触している。ストッパ電極8の内側の端部は、第2層間絶縁膜13に設けられたコンタクトホールを介して、保護ダイオード10の外側の一端にオーミック接触している。ストッパ電極8とオーミック接触している保護ダイオード10はn型であることが望ましい。
【0041】
図4の左端に示すように、第1主電極2が第2層間絶縁膜13上まで延伸して配置されている。第2層間絶縁膜13上にはゲートランナ3が配置されている。ゲートランナ3は、第2層間絶縁膜13を貫通するコンタクトホールを介して、保護ダイオード10の内側の他端とオーミック接触している。ゲートランナ3とオーミック接触している保護ダイオード10はn型であることが望ましい。ゲートランナ3は、半導体チップの外周部に沿って配置されている。ゲートランナ3は、主半導体素子部201側のゲート電極24、及び主半導体素子部201に配置されるゲートパッド(不図示)に電気的に接続されている。
【0042】
図4の中央に示すように、第2層間絶縁膜13上には、第1フィールドプレート4a、第2フィールドプレート4b及び第3フィールドプレート4cが配置されている。第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4cの材料としては、例えばアルミニウム(Al)や、Al-Si、Al-銅(Cu)-Si、Al-Cu等のAlを主成分とする合金等の導電性材料が使用可能である。
【0043】
第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4cのうち、最も外周側の第3フィールドプレート4c以外(即ち、最も外周側の第3フィールドプレート4cよりも中央側)の第2フィールドプレート4b及び第1フィールドプレート4aは、第2絶縁膜12上に配置されている。一方、最も外周側の第3フィールドプレート4cは、第2絶縁膜12上から第1絶縁膜11上まで延伸して配置されている。
【0044】
第1フィールドプレート4aは、第1ガードリング6aに対して、平面パターンとして一部が重畳するように配置されている。第2フィールドプレート4bは、第2ガードリング6bに対して、平面パターンとして一部が重畳するように第2層間絶縁膜13上に配置されている。第3フィールドプレート4cは、第3ガードリング6cに対して、平面パターンとして一部が重畳するように第2層間絶縁膜13上に配置されている。第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4cは、図4の紙面の手前側又は奥側で、第1ガードリング6a~第3ガードリング6cにそれぞれ電気的に接続されている。
【0045】
第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4cは、半導体チップの外周部を囲むように環状に配置されている。図3に示すように、第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4cは、平行に延伸する平面パターンを有してもよい。また、第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4cのそれぞれの幅や互いの間隔は一定でなくてもよく、幅や間隔が部分的に変化してもよい。第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4cの平面パターンは、保護ダイオード10の半導体チップの中央側に突出する平面パターンに沿って曲線を描くように延伸する。図3において、第3フィールドプレート4c直下に位置する第1絶縁膜11の端部11aを破線で模式的に示している。
【0046】
図4では、第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4cが外周側に位置するほど、第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4cの幅が大きくなる場合を例示するが、第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4cの幅は同一であってもよい。また、図4では3本の第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4cが配置された場合を例示するが、フィールドプレートの本数は1本又は2本でもよく、4本以上であってもよく、要求される耐圧等に応じて適宜選択可能である。
【0047】
図4の破線で囲んだ領域A内の第1フィールドプレート4a付近を拡大した断面図を図5に示す。図4及び図5に示すように、第3フィールドプレート4cは、第1絶縁膜11及び第2絶縁膜12の境界部分において段差部を有している。第3フィールドプレート4cの外周側の端部は、第1絶縁膜11上に位置する。第3フィールドプレート4cの外周側の端部と、第1絶縁膜11の内側の端部との重なり部分の距離D0は、例えば10μm~20μm程度であるが、適宜調整可能である。
【0048】
図5に示すように、保護ダイオード10は、例えばp型の半導体領域10a,10c,10e,10gとn型の半導体領域10b,10d,10fとを交互に配置することで構成されている。第3フィールドプレート4cは、第1絶縁膜11上に配置される保護ダイオード10のpn接合を少なくとも1つ覆うように第1絶縁膜11上に延在される。図5では、第3フィールドプレート4cが、第1絶縁膜11上のp型の半導体領域10aとn型の半導体領域10bで構成されるpn接合を1つ覆うように延在する場合を例示するが、第3フィールドプレート4cは、複数のpn接合を覆うように第1絶縁膜11上に延在してもよい。
【0049】
第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4c上には、保護膜(パッシベーション膜)9が配置されている。保護膜9としては、抵抗性シリコン窒化膜(抵抗性Si膜)や、ポリイミド膜、又は有機ケイ素系化合物のテトラエトキシシラン(TEOS)ガスを用いた化学気相成長(CVD)法等による絶縁膜(TEOS膜)のいずれかの単層膜、又はこれらを積層した複合膜で構成できる。特に、保護膜9を抵抗性Si膜で構成することにより、表面電荷の影響を受けにくくすることができる。このため、耐圧を確保することができ、耐圧構造部203を狭くすることができる。
【0050】
このように、実施形態に係る半導体装置100では、耐圧構造部203が第1ガードリング6a~第3ガードリング6cと、第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4cと、保護膜9とを有することにより、主半導体素子部201の耐圧を確保している。
【0051】
<比較例>
次に、図6を参照して比較例に係る半導体装置を説明する。比較例に係る半導体装置では、耐圧構造部において、第1絶縁膜11の内側の端部が、最外周の第3フィールドプレート4cの外側の端部と重ならずに、第3フィールドプレート4cから離間して配置されている点が、図4に示した実施形態に係る半導体装置100と異なる。
【0052】
比較例に係る半導体装置によれば、複数の第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4c及び第1ガードリング6a~第3ガードリング6cを有することにより、1つのフィールドプレート及び1つのガードリングを有する場合の耐圧が例えば400V程度であるのに対して、耐圧を例えば500V以上程度に向上させることができる。
【0053】
しかし、比較例に係る半導体装置では、複数の第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4c及び第1ガードリング6a~第3ガードリング6cを有するため、1つのフィールドプレート及び1つのガードリングを有する場合よりも、第1絶縁膜11よりも薄い第2絶縁膜12の領域が広くなり、電界集中が発生し易くなる。
【0054】
図7は、比較例に係る半導体装置の通常スイッチング及びDC印加時の等電位線Lを破線で模式的に示す。図7に示すように、第2ウェル領域5bと半導体基体1とのpn接合領域から伸びた空乏層が、耐圧構造部に十分に広がっており、等電位線Lも均等に広がっている。
【0055】
しかし、ターンオフ時のコレクタ電圧の跳ね上がり時間が数100V/数μsであるのに対して、例えばイグニッションサージ等の過渡サージの印加時には、数100V/数nsの高dv/dtサージが印加される。図8は、高dv/dt過渡サージ印加波形であり、主半導体素子部201を構成するIGBTのゲート電圧Vg、コレクタ電流Ic、コレクタ電圧Vc、サージ電圧Vsの波形を示す。コレクタ電圧Vcの最大値は500V程度であり、コレクタ-ゲート間の保護ダイオード10によりクランプされている。図8の破線で示すサージ印加ポイントの代表波形を図9に示す。図9に示すように、コレクタ電圧Vcは急峻に跳ね上がり、700V以上まで上昇する。
【0056】
図10は、比較例に係る半導体装置の高dv/dtのサージ時の等電位線Lを破線で模式的に示す。図10に示すように、高dv/dtのサージ時には空乏層が伸びにくく、保護ダイオード10が耐圧構造部を跨ぐ部分の電界強度が高くなる。このため、図10に破線で囲んだ領域Aで示すように、最外周のフィールドプレート4cの端部及びその近傍に電界集中し、絶縁膜破壊に至る可能性がある。
【0057】
また、図11は、比較例に係る半導体装置の平面レイアウトにおける、高dv/dtのサージ時の等電位線Lを破線で模式的に示す。図11に示すように、保護ダイオード10が配置されている部分とそれ以外の部分で電位差が発生し、等電位線Lに歪みが生じる。これにより、図11に破線で囲んだ領域Aで示すように、第3フィールドプレート4cと保護ダイオード10が交わる領域において電界集中し、絶縁膜破壊に至る可能性がある。
【0058】
<効果>
これに対して、実施形態に係る半導体装置では、図3図5に示すように高dv/dtサージ印加時において最も電界集中しやすい、最外周側に位置する第3フィールドプレート4cの外側の端部が、第2絶縁膜12よりも厚い第1絶縁膜11の内側の端部上に位置している。このため、高dv/dtサージ印加時において第3フィールドプレート4cの外側の端部及びその近傍における電界集中を緩和することができ、絶縁膜破壊を防止することができる。
【0059】
更に、第2絶縁膜12と第1絶縁膜11との間の絶縁膜の厚さが変化する段差部分では、電位変化が大きく、電界集中が発生しやすくなる。これに対して、第2絶縁膜12と第1絶縁膜11との間の段差部分を第3フィールドプレート4cの端部の直下に配置することにより、第2絶縁膜12及び第1絶縁膜11の境界部分の電界強度を緩和することができ、絶縁膜破壊を防止することができる。したがって、実施形態に係る半導体装置によれば、高サージ耐量を確保しながら高耐圧化を図ることができる。
【0060】
また、実施形態に係る半導体装置によれば、既存の絶縁膜を使用して高dv/dt時の絶縁膜破壊を防止することができる。このため、工程を追加せずに、耐圧構造部の基本的な構造の寸法も変えることなく、高サージ耐量を確保する事が可能となる。
【0061】
図12は、比較例に係る半導体装置の高dv/dtのサージ時の等電位線Lを破線で模式的に示すが、実施形態に係る半導体装置との対比のために、図10に示した場合よりも等電位線Lを間引いて示している。また、図12では便宜的に保護ダイオード10及び第2層間絶縁膜13等の図示を省略している。図12に示すように、比較例に係る半導体装置では、高dv/dtサージ印加時に第3フィールドプレート4cの外側の端部付近の第2絶縁膜12で電界集中が発生する。
【0062】
これに対して、図13は、実施形態に係る半導体装置の高dv/dtのサージ時の等電位線Lを破線で模式的に示す。図13では便宜的に保護ダイオード10及び第2層間絶縁膜13等の図示を省略している。図13に示すように、実施形態に係る半導体装置では、第3フィールドプレート4cの外側の端部を第1絶縁膜11上に配置することにより、第1絶縁膜11内の等電位線Lの間隔を広げ、電位勾配を緩やかにすることができる。したがって、第3フィールドプレート4cの外側の端部の電界集中を緩和することができ、絶縁膜破壊を防止することができる。
【0063】
<半導体装置の製造方法>
次に、図14図19を参照しながら、実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を説明する。なお、以下に述べる本発明の実施形態に係る半導体装置100の製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0064】
まず、n型のSiからなる半導体基板(Si基板)を用意する。このSi基板の裏面(下面)に、p型不純物イオンをイオン注入する。その後、熱処理を行うことにより不純物イオンを活性化及び熱拡散させる。この結果、Si基板の裏面にp型のコレクタ領域14が形成され、コレクタ領域14上にn型の半導体基体1が定義される(図4参照)。なお、コレクタ領域14の上面に半導体基体1をエピタキシャル成長してもよい。次に、図14に示すように、熱酸化法又は化学気相成長(CVD)法等により、半導体基体1上に第1絶縁膜11を堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術等を用いて第1絶縁膜11をパターニングする。
【0065】
次に、フォトリソグラフィ技術、イオン注入、熱処理等により、図15に示すように、半導体基体1の上部にp型の第2ウェル領域5b、p型の第1ガードリング6a~第3ガードリング6c及びn型のストッパ領域7を形成する。なお、図4に示した主半導体素子部201側のp型の第1ウェル領域5a、n型の主電極領域21a,21b及びp型の注入制御領域22a,22bも同時に形成してもよい。
【0066】
次に、熱酸化法又はCVD法等により、図16に示すように、半導体基体1上に、第1絶縁膜11よりも薄い第2絶縁膜12を堆積する。第2絶縁膜12は、第1絶縁膜11上にも積層されてよく、この場合には第1絶縁膜11と第2絶縁膜12との積層膜を「第1絶縁膜11」と定義する。
【0067】
次に、CVD法等により、第1絶縁膜11及び第2絶縁膜12上にポリシリコンを堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術、イオン注入及び熱処理等により、ポリシリコンにp型領域及びn型領域を交互に形成する。その後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術等を用いて、ポリシリコン及び第2絶縁膜12の一部を選択的に除去する。この結果、図17に示すように、第2絶縁膜12上に保護ダイオード10が形成される。なお、図4に示した主半導体素子部201側のポリシリコンからなるゲート電極24も同時に形成されてよい。
【0068】
次に、CVD法等により、保護ダイオード10上に第2層間絶縁膜13を堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術等を用いて、第2層間絶縁膜13の一部を選択的に除去することで保護ダイオード10の一部の上面を露出させる。なお、図4に示した主半導体素子部201側の第1層間絶縁膜25も、第2層間絶縁膜13と同時に形成されてよい。
【0069】
次に、スパッタリング法又は蒸着法等により、第2層間絶縁膜13上に金属膜を堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術等を用いて金属膜をパターニングすることにより、第1主電極2、ゲートランナ3、第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4c及びストッパ電極8を形成する。次に、第1主電極2、ゲートランナ3、第1フィールドプレート4a~第3フィールドプレート4c及びストッパ電極8上に保護膜10を堆積することで、図4に示した実施形態に係る半導体装置100が完成する。
【0070】
以上説明したように、実施形態に係る半導体装置100の製造方法によれば、高耐圧化を図りつつ、サージ耐量を確保することができる半導体装置100を実現可能となる。
【0071】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0072】
例えば、図2に示すように、実施形態に係る半導体装置100が、主半導体素子部201及び制御回路部202が同一チップ上にモノリシックに集積化したワンチップイグナイタした場合を例示したが、実施形態に係る半導体装置は、主半導体素子部201と、制御回路部202とが個別のチップに搭載されたハイブリッド集積回路としてのマルチチップイグナイタであってもよい。この場合は、実施形態に係る半導体装置100は、半導体チップに内蔵された主半導体素子部201と耐圧構造部203を有する個別装置(ディスクリートデバイス)に範疇に含まれ得る。半導体集積回路であろうと、個別装置の場合であっても、実施形態に係る半導体装置100の耐圧構造部203は、図2図4に示すように、主半導体素子部201に隣接し平面パターン上半導体チップの外周側の位置に配置される。個別装置としての構成であっても、保護ダイオード10を半導体チップの表面に集積化しているので、実施形態に係る半導体装置100は、広義には半導体集積回路の範疇に含まれ得る。
【0073】
また、実施形態の半導体装置に用いる主半導体素子として、プレーナ型の縦型IGBTを例示したが、トレンチゲート型の縦型IGBTや、プレーナ型又はトレンチゲート型の縦型MOSFETにも本発明の半導体装置は適用可能である。MOSFETとする場合には、図4に示したp型の第2主電極領域14をn型のドレイン領域に置き換えればよい。更に、主半導体素子は、縦型MOSSIT、プレーナ型MOSSIT等の電力用半導体素子であってもよく、より一般的には、縦型MISトランジスタやプレーナ型MISトランジスタの電力用半導体素子であってもよい。更に、主半導体素子は、SIサイリスタであってもよい。また、本発明の実施形態の半導体装置は、例えば自動車等の内燃機関に用いられるイグナイタとして好適であるが、これ以外の種々の主半導体素子を集積化した構造にも適用可能である。
【0074】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0075】
1…半導体基体
2…主電極(エミッタ電極)
3…ゲートランナ
4a~4c…フィールドプレート
5a,5b…ウェル領域
6a~6c…ガードリング
8…ストッパ電極
9…保護膜
10…保護ダイオード
10a~10g…半導体領域
13…層間絶縁膜
14…第2主電極領域
21a,21b…第1主電極領域
22a,22b…注入制御領域
23…ゲート絶縁膜
24…ゲート電極
25…層間絶縁膜
100…半導体装置(半導体チップ)
101…主半導体素子
102…保護ダイオード
103…制御回路部
104,105,106…端子
110…バッテリ
112…電子制御ユニット(ECU)
113…イグニションコイル
114…点火プラグ
201…主半導体素子部
202…制御回路部
203…耐圧構造部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図16
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図18
図19