(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】サンルーフ装置の駆動シューの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60J 7/02 20060101AFI20231121BHJP
B60J 7/05 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B60J7/02 B
B60J7/05 Z
(21)【出願番号】P 2019153657
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】本村 将太
(72)【発明者】
【氏名】室 明伸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勝敏
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-202627(JP,A)
【文献】特開2015-058838(JP,A)
【文献】特開2001-298277(JP,A)
【文献】特開2018-192899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0208032(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016108092(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/02
B60J 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフに形成されるルーフ開口部の車両幅方向における両端部で車両前後方向に延びるガイドレールと、
前記ルーフ開口部を開閉する可動パネルを支持し、前記ガイドレールに対して移動可能に構成される支持部材と、
前記支持部材に係合した状態で、前記ガイドレールに沿って移動する駆動シューと、を備え、
前記支持部材は、前記車両幅方向における両側にそれぞれ形成される第1ガイド部及び第2ガイド部を有し、
前記駆動シューは、前記第1ガイド部に係合する第1係合部を有する金属製の第1プレートと、前記第2ガイド部に係合する第2係合部を有する金属製の第2プレートと、前記ガイドレールと摺動する摺動部と、を有し、前記第1係合部及び前記第2係合部が前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部にそれぞれ係合した状態で、前記ガイドレールに沿って移動することにより、前記支持部材を介して前記可動パネルの後端部を昇降させ、
前記第1プレート及び前記第2プレートは、前記摺動部によって、前記車両幅方向に連結されるサンルーフ装置の駆動シューの製造方法であって、
前記第1プレート及び前記第2プレートを個別に成形する第1成形工程と、
前記第1プレート及び前記第2プレートを金型内に配置する配置工程と、
前記金型内に注入した液状樹脂を硬化させて、前記摺動部を成形する第2成形工程と、を備える
サンルーフ装置の駆動シューの製造方法。
【請求項2】
前記サンルーフ装置は、前記第1プレート及び前記第2プレートを前記車両幅方向に連結するガイド軸を備えるものであり、
前記第2成形工程の後に、前記第1プレートに形成される第1連結孔及び前記第2プレートに形成される第2連結孔に前記ガイド軸を挿入して、前記第1プレート及び前記第2プレートを連結する連結工程を備え、
前記配置工程は、前記第1プレートの前記第1連結孔の軸線と前記第2プレートの前記第2連結孔の軸線とが一致するように、前記第1プレート及び前記第2プレートを前記金型内に配置する
請求項
1に記載のサンルーフ装置の駆動シューの製造方法。
【請求項3】
前記摺動部は、樹脂材料からなり、前記第1プレートの一部を被覆することで前記第1プレートと一体化し、前記第2プレートの一部を被覆することで前記第2プレートと一体化する
請求項1
又は請求項2に記載のサンルーフ装置
の駆動シューの製造方法。
【請求項4】
前記第1プレート及び前記第2プレートには、前記車両前後方向と交差する方向に、第1貫通孔及び第2貫通孔がそれぞれ形成され、
前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔は、前記摺動部を構成する樹脂材料で満たされる
請求項
3に記載のサンルーフ装置
の駆動シューの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンルーフ装置の駆動シューの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のルーフに形成された開口部を開閉する可動パネルと、開口部の車両幅方向における両端部で車両前後方向に延びるガイドレールと、可動パネルを支持する支持部材と、ガイドレールに沿って移動するスライダ(以下、「駆動シュー」ともいう。)と、を備えるサンルーフ装置が記載されている。
【0003】
支持部材は、前端部にガイドレールに係合するシューを有し、支持部材には、車両幅方向における両側に一対のカム溝が形成される。スライダは、ガイドレールに係合する摺動部と、支持部材の一対のカム溝にそれぞれ係合する一対の係合部と、を有する。
【0004】
そして、可動パネルが全閉状態にあるときに、スライダを車両前方に移動させると、スライダの係合部が支持部材のカム溝と摺動する。すると、スライダの係合部が、カム溝を介して、支持部材の後端部を押し上げる。その結果、可動パネルは、後端部が上昇したチルト状態となる。一方、可動パネルがチルト状態であるときに、スライダを車両後方に移動させると、スライダの係合軸が支持部材のカム溝と摺動する。すると、スライダの係合軸が、カム溝を介して、支持部材の後端部を押し下げる。その結果、可動パネルは、全閉状態に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなサンルーフ装置において、スライダの一対の係合部は、一枚の金属プレートを折り曲げ加工することで形成される。このため、金属プレートの加工精度が低い場合には、スライダの係合部と支持部材のカム溝との摺動抵抗が増大し得る。よって、上記のようなサンルーフ装置では、スライダの一対の係合部を精度良く成形することが望まれている。
【0007】
本発明の課題は、可動パネルの円滑な作動を実現できるサンルーフ装置の駆動シューの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するサンルーフ装置は、車両のルーフに形成されるルーフ開口部の車両幅方向における両端部で車両前後方向に延びるガイドレールと、前記ルーフ開口部を開閉する可動パネルを支持し、前記ガイドレールに対して移動可能に構成される支持部材と、前記支持部材に係合した状態で、前記ガイドレールに沿って移動する駆動シューと、を備え、前記支持部材は、前記車両幅方向における両側にそれぞれ形成される第1ガイド部及び第2ガイド部を有し、前記駆動シューは、前記第1ガイド部に係合する第1係合部を有する金属製の第1プレートと、前記第2ガイド部に係合する第2係合部を有する金属製の第2プレートと、前記ガイドレールと摺動する摺動部と、を有し、前記第1係合部及び前記第2係合部が前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部にそれぞれ係合した状態で、前記ガイドレールに沿って移動することにより、前記支持部材を介して前記可動パネルの後端部を昇降させ、前記第1プレート及び前記第2プレートは、前記摺動部によって、前記車両幅方向に連結される。
【0009】
上記構成のサンルーフ装置において、駆動シューは、第1プレート及び第2プレートを摺動部で連結することで構成される。このため、第1プレート及び第2プレートを個別に成形できる点で、第1係合部及び第2係合部の成形精度を高めることが可能となる。したがって、サンルーフ装置は、可動パネルの円滑な作動を実現できる。
【0010】
上記サンルーフ装置において、前記摺動部は、樹脂材料からなり、前記第1プレートの一部を被覆することで前記第1プレートと一体化し、前記第2プレートの一部を被覆することで前記第2プレートと一体化することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、第1プレート及び第2プレートと摺動部とを一体化する際に、摺動部に第1プレート及び第2プレートを組み付けるための構造を摺動部などに設ける必要がない。つまり、サンルーフ装置は、駆動シューの構成を簡素化できる。
【0012】
上記サンルーフ装置において、前記第1プレート及び前記第2プレートには、前記車両前後方向と交差する方向に、第1貫通孔及び第2貫通孔がそれぞれ形成され、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔は、前記摺動部を構成する樹脂材料で満たされることが好ましい。
【0013】
上記構成のサンルーフ装置は、摺動部を構成する樹脂材料で第1貫通孔及び第2貫通孔が満たされる点で、第1プレート及び第2プレートと摺動部とを強固に接続できる。このため、サンルーフ装置は、駆動シューをガイドレールに沿って移動させることで、摺動部に車両前後方向の荷重が作用する場合に、第1プレート及び第2プレートが摺動部から分離することを抑制できる。
【0014】
上記課題を解決するサンルーフ装置の駆動シューの製造方法は、上述したサンルーフ装置の駆動シューの製造方法であって、前記第1プレート及び前記第2プレートを個別に成形する第1成形工程と、前記第1プレート及び前記第2プレートを金型内に配置する配置工程と、前記金型内に注入した液状樹脂を硬化させて、前記摺動部を成形する第2成形工程と、を備える。
【0015】
上記構成の駆動シューの製造方法は、第1プレート及び第2プレートを個別に成形するため、第1プレート及び第2プレートの成形精度を高めることができる。したがって、駆動シューの製造方法は、駆動シューの第1係合部及び第2係合部を精度良く成形できる。また、駆動シューの製造方法は、第1プレート及び第2プレートを連結する摺動部を樹脂成形するため、別体に成形した摺動部に第1プレート及び第2プレートを組み付ける場合に比較して、駆動シューを容易に製造できる。
【0016】
上記サンルーフ装置の駆動シューの製造方法において、前記サンルーフ装置は、前記第1プレート及び前記第2プレートを前記車両幅方向に連結するガイド軸を備えるものであり、前記第2成形工程の後に、前記第1プレートに形成される第1連結孔及び前記第2プレートに形成される第2連結孔に前記ガイド軸を挿入して、前記第1プレート及び前記第2プレートを連結する連結工程を備え、前記配置工程は、前記第1プレートの前記第1連結孔の軸線と前記第2プレートの前記第2連結孔の軸線とが一致するように、前記第1プレート及び前記第2プレートを前記金型内に配置することが好ましい。
【0017】
上記構成の駆動シューの製造方法によれば、第1プレートの第1連結孔の軸線及び第2プレートの第2連結孔の軸線が一致した状態で、第1プレート及び第2プレートが摺動部と一体化される。このため、駆動シューの製造方法は、連結工程において、ガイド軸を第1連結孔及び第2連結孔に挿入しやすくなる。
【発明の効果】
【0018】
サンルーフ装置の駆動シューの製造方法は、可動パネルの円滑な作動を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係る車両のルーフ周辺の概略構成を示す斜視図。
【
図3】可動パネルが全閉位置に位置するときのサンルーフ装置の側面図。
【
図8】可動パネルがチルトダウン位置に位置するときのサンルーフ装置の側面図。
【
図10】駆動シューの製造方法の配置工程を示す断面図。
【
図11】駆動シューの製造方法の第2成形工程を示す断面図。
【
図12】駆動シューの製造方法の連結工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、サンルーフ装置を備える車両の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、サンルーフ装置が車両に搭載された状態で、サンルーフ装置の方向を使用する。また、車両幅方向を単に「幅方向」ともいい、車両前後方向を単に「前後方向」ともいい、車両上下方向を単に「上下方向」ともいう。
【0021】
図1に示すように、車両10は、ルーフ開口部11が形成されるルーフ12と、ルーフ開口部11に搭載されるサンルーフ装置20と、を備える。ルーフ開口部11は、上下方向Zにおける平面視において、前後方向Yを短手方向とし、幅方向Xを長手方向とする矩形状をなしている。
【0022】
図2に示すように、サンルーフ装置20は、ルーフ開口部11の周囲を囲うベースフレーム30と、ルーフ開口部11を開閉する可動パネル40と、可動パネル40を駆動する駆動装置50と、を備える。
【0023】
次に、ベースフレーム30について説明する。
図2に示すように、ベースフレーム30は、ルーフ開口部11の幅方向Xにおける両端部で前後方向Yに延びる一対のガイドレール31と、ルーフ開口部11の前端部で幅方向Xに延びるフロントハウジング32と、を有する。
【0024】
ガイドレール31は、長手方向にわたって一定の断面形状を有する。
図3に示すように、ガイドレール31には、長手方向にわたって、摺動溝311が形成される。ガイドレール31は、車両10のルーフ12の形状に沿って湾曲していてもよい。つまり、本実施形態でいう前後方向Yに延びるガイドレール31は、湾曲した形状を含むものとする。フロントハウジング32は、ガイドレール31の前端部同士を幅方向Xに連結する。フロントハウジング32は、後述する駆動装置50の構成部材の一部を支持する。
【0025】
次に、可動パネル40について説明する。
図2に示すように、可動パネル40は、上下方向Zにおける平面視において、ルーフ開口部11の大きさに応じた矩形状をなしている。可動パネル40は、透光性を有する透光パネル41と、透光パネル41の下面に固定される一対の固定ブラケット42と、を有する。一対の固定ブラケット42は、可動パネル40の幅方向Xにおける両側端に沿ってそれぞれ延びる。透光パネル41と一対の固定ブラケット42とは、例えば、ウレタン系の接着剤により接着される。
【0026】
そして、可動パネル40は、ルーフ開口部11を閉塞する全閉位置、全閉位置よりも後端部が上昇したチルトアップ位置、全閉位置よりも後端部が下降したチルトダウン位置及びチルトダウン位置よりも後方の位置であって且つルーフ開口部11を開放する全開位置の間で作動する。詳しくは、可動パネル40は、全閉位置からチルトアップ位置にチルトアップ作動し、チルトアップ位置から全閉位置にチルトダウン作動する。また、可動パネル40は、全閉位置からチルトダウン位置にチルトダウン作動し、チルトダウン位置から全閉位置にチルトアップ作動する。さらに、可動パネル40は、チルトダウン位置及び全開位置の間でスライド作動する。
【0027】
なお、
図1に示すように、本実施形態のサンルーフ装置20は、全開位置において、可動パネル40がルーフ12と車室との間の空間に収容される、いわゆるインナースライド式のサンルーフ装置である。
【0028】
次に、駆動装置50について説明する。
図3に示すように、駆動装置50は、可動パネル40に固定される一対の支持部材60と、一対のガイドレール31に沿ってそれぞれ移動する一対の従動シュー70と、一対のガイドレール31に沿ってそれぞれ移動する一対の駆動シュー80と、を備える。
図2に示すように、駆動装置50は、フロントハウジング32に配置されるモータ90と、モータ90の動力を一対の駆動シュー80にそれぞれ伝達する一対のケーブル100と、を備える。
【0029】
はじめに、支持部材60について説明する。
図3及び
図4に示すように、支持部材60は、例えば、プレス成形した金属板を樹脂で被覆したインサート成形体である。支持部材60は、前後方向Yに延びる棒状をなしている。
図4に示すように、支持部材60は、幅方向Xにおける両側にそれぞれ形成される第1ガイド部611及び第2ガイド部612を有する。第1ガイド部611は、幅方向Xにおける内方に突出し、第2ガイド部612は、幅方向Xにおける外方に突出する。支持部材60において、第1ガイド部611及び第2ガイド部612は、樹脂からなる部分である。第1ガイド部611及び第2ガイド部612は、幅方向Xに対称な形状をなすため、以降の説明では、主に
図3に図示される第1ガイド部611について説明する。
【0030】
図3に示すように、第1ガイド部611は、支持部材60の長手方向に延びる。第1ガイド部611は、
図3に示すように、支持部材60が可動パネル40を全閉位置に配置させる姿勢を取るとき、略前後方向Yに延びる平坦部63と、平坦部63の前端から前方に進むにつれて下方に進む前側傾斜部64と、平坦部63の後端から後方に進むにつれて上方に向かう後側傾斜部65と、を含む。また、第1ガイド部611は、後側傾斜部65の後方に設けられる規制部66を含む。
【0031】
平坦部63、前側傾斜部64及び後側傾斜部65の上面は、それぞれ連続した上側ガイド面631,641,651となり、平坦部63、前側傾斜部64及び後側傾斜部65の下面は、それぞれ連続した下側ガイド面632,642,652となる。平坦部63において上側ガイド面631は下側ガイド面632と略平行に延び、前側傾斜部64において、上側ガイド面641は下側ガイド面642と略平行に延び、後側傾斜部65において、上側ガイド面651は下側ガイド面652と略平行に延びる。
【0032】
図3に示すように、支持部材60が可動パネル40を全閉位置に配置させる姿勢を取るとき、規制部66は後方に進むに連れて上方に向かう方向に凹む凹部である。規制部66は、後側傾斜部65の下側ガイド面652と連続する上側ガイド面661と、上側ガイド面661に沿って延びる下側ガイド面662と、上側ガイド面661と下側ガイド面662との後端同士を接続する規制面663と、を含む。
【0033】
支持部材60は、従動シュー70を介して、ガイドレール31に係合する。支持部材60は、従動シュー70と駆動シュー80とにより、ガイドレール31に対して移動可能に構成される。また、一対の支持部材60は、可動パネル40の一対の固定ブラケット42にそれぞれ固定される。つまり、一対の支持部材60は、可動パネル40の幅方向Xにおける両端縁に沿って可動パネル40を支持する。
【0034】
続いて、従動シュー70について説明する。
従動シュー70は、例えば、樹脂からなる。
図3に示すように、従動シュー70は、ガイドレール31の摺動溝311に係合するため、ガイドレール31の長手方向と直交する方向への移動が制限される。従動シュー70は、支持部材60の先端部を幅方向Xに延びる軸線回りに回転可能に支持する。こうして、支持部材60は、従動シュー70とともにガイドレール31に沿って移動したり、従動シュー70に対して幅方向Xに延びる軸線回りに回動したりする。
【0035】
続いて、駆動シュー80について説明する。
図5に示すように、駆動シュー80は、ガイドレール31と摺動する摺動部81と、幅方向Xに対をなす第1プレート82及び第2プレート83と、第1プレート82及び第2プレート83を幅方向Xに連結するガイド軸84と、有する。なお、本実施形態の駆動シュー80は、ガイド軸84を除き、樹脂材料からなる摺動部81と金属材料からなる第1プレート82及び第2プレート83とのインサート成形体である。
【0036】
図6及び
図7に示すように、摺動部81は、ガイドレール31の摺動溝311の幅方向Xにおける内方に配置される第1摺動部811と、幅方向Xにおける外方に配置される第2摺動部812と、第1摺動部811及び第2摺動部812を幅方向Xに接続する中間部813と、ケーブル100の一端を保持するケーブル保持部814と、を含む。第1摺動部811及び第2摺動部812は、略直方体状をなし、前後方向Yに延びている。中間部813は、略平板状をなしている。
【0037】
第1プレート82及び第2プレート83は、金属板をプレス加工することで成形される。第1プレート82及び第2プレート83は、幅方向Xにおいて略対称な形状を有する。
図6及び
図7に示すように、第1プレート82は、第1底壁821と、第1底壁821から上方に延びる第1側壁822と、第1側壁822からの上端から幅方向Xに延びる第1係合壁823と、を有する。第1プレート82が金属板をプレス加工して成形される点で、第1底壁821、第1側壁822及び第1係合壁823は、板状をなしている。
【0038】
第1底壁821は、第1側壁822の下端から屈曲する第1前側底壁824、第1中間底壁825及び第1後側底壁826を有する。第1前側底壁824は、第1側壁822の前端寄りの部位から延び、第1中間底壁825は、第1側壁822の前後方向Yにおける中間部から延び、第1後側底壁826は、第1側壁822の後端寄りの部位から延びる。幅方向Xにおいて、第1前側底壁824及び第1後側底壁826の延びる方向は、第1中間底壁825の延びる方向と逆方向である。第1前側底壁824、第1中間底壁825及び第1後側底壁826は、前後方向Yに間隔をあけて形成される。
図7に示すように、第1中間底壁825の後端寄りの部位には第1切り欠き825aが形成される。このため、第1中間底壁825において、前後方向Yにおける前端寄りの部位の幅方向Xにおける長さは、前後方向Yにおける後端寄りの部位の幅方向Xにおける長さよりも長い。一方、第1中間底壁825の前端寄りの部位には第1貫通孔825bが上下方向Zに貫通形成される。
【0039】
第1側壁822には、第1連結孔822aと第1係合孔822bとが幅方向Xに貫通形成される。第1連結孔822aと第1係合孔822bとは、前後方向Yに間隔をあけて形成される。第1連結孔822aは、第1係合孔822bよりも後方に形成される。幅方向Xにおける側面視において、第1連結孔822aは円形状をなし、第1係合孔822bは長円形状をなしている。
【0040】
第1係合壁823は、幅方向Xにおける側面視において円弧状に湾曲する。詳しくは、第1係合壁823は、前後方向Yにおける中間部が、前端部及び後端部よりも下方に位置するように湾曲している。幅方向Xにおいて、第1側壁822に対して第1係合壁823が延びる方向は、第1側壁822に対して第1中間底壁825が延びる方向と同方向である。また、上下方向Zにおける平面視において、第1係合壁823は、第1中間底壁825と対向する。本実施形態において、第1係合壁823は、「第1係合部」の一例に相当する。
【0041】
同様に、
図6及び
図7に示すように、第2プレート83は、第2底壁831と、第2底壁831から上方に延びる第2側壁832と、第2側壁832の上端から幅方向Xに延びる第2係合壁833と、を有する。第2プレート83が金属板をプレス加工して成形される点で、第2底壁831、第2側壁832及び第2係合壁833は、板状をなしている。
【0042】
第2側壁832の下端から屈曲する第2前側底壁834、第2中間底壁835及び第2後側底壁836を有する。第2前側底壁834は、第2側壁832の前端寄りの部位から延び、第2中間底壁835は、第2側壁832の前後方向Yにおける中間部から延び、第2後側底壁836は、第2側壁832の後端寄りの部位から延びる。幅方向Xにおいて、第2前側底壁834及び第2後側底壁836の延びる方向は、第2中間底壁835の延びる方向と逆方向である。第2前側底壁834、第2中間底壁835及び第2後側底壁836は、前後方向Yに間隔をあけて形成される。
図6に示すように、第2中間底壁835の前端寄りの部位には第2切り欠き835aが形成される。このため、第2中間底壁835において、前後方向Yにおける前端寄りの部位の幅方向Xにおける長さは、前後方向Yにおける後端寄りの部位の幅方向Xにおける長さよりも短い。一方、第2中間底壁835の前端寄りの部位には第2貫通孔835bが上下方向Zに貫通形成される。
【0043】
第2側壁832には、第2連結孔832aと第2係合孔832bとが幅方向Xに貫通形成される。第2連結孔832aと第2係合孔832bとは、前後方向Yに間隔をあけて形成される。第2連結孔832aは、第2係合孔832bよりも後方に形成される。幅方向Xにおける側面視において、第2連結孔832aは円形状をなし、第2係合孔832bは長円形状をなしている。
【0044】
第1プレート82及び第2プレート83において、第1連結孔822aの内径は、第2連結孔832aの内径よりも大きく、第1係合孔822bの内径は、第2係合孔832bの内径と同等である。第1連結孔822aの軸線及び第2連結孔832aの軸線は同一直線上に位置し、第1係合孔822bの軸線及び第2係合孔832bの軸線は同一直線上に位置する。このため、第1連結孔822a及び第1係合孔822bの軸線間距離は、第2連結孔832a及び第2係合孔832bの軸線間距離と等しい。
【0045】
第2係合壁833は、幅方向Xにおける側面視において円弧状に湾曲している。詳しくは、第2係合壁833は、前後方向Yにおける中間部が、前端部及び後端部よりも下方に位置するように湾曲している。幅方向Xにおいて、第2側壁832に対して第2係合壁833が延びる方向は、第2側壁832に対して第2中間底壁835が延びる方向と同方向である。また、上下方向Zにおける平面視において、第2係合壁833は、第2中間底壁835と対向する。本実施形態において、第2係合壁833は、「第2係合部」の一例に相当する。
【0046】
第1プレート82及び第2プレート83は、摺動部81に幅方向Xに連結される。詳しくは、第1プレート82の第1底壁821及び第2プレート83の第2底壁831が摺動部81の中間部813に被覆されることにより、第1プレート82及び第2プレート83が摺動部81と一体化される。言い換えれば、摺動部81は、第1プレート82の一部を被覆することで第1プレート82と一体化し、第2プレート83の一部を被覆することで第2プレート83と一体化する。また、第1底壁821が摺動部81に被覆される点で、第1貫通孔825bは、摺動部81を構成する樹脂材料で満たされる。同様に、第2底壁831が摺動部81に被覆される点で、第2貫通孔835bは、摺動部81を構成する樹脂材料で満たされる。
【0047】
このとき、第1中間底壁825の第1切り欠き825aに、第2中間底壁835の第2貫通孔835bが形成される部位が収まり、第2中間底壁835の第2切り欠き835aに、第1中間底壁825の第1貫通孔825bが形成される部位が収まる。そして、第1中間底壁825及び第2中間底壁835の間には前後方向Yにわたって隙間が形成される。なお、当該隙間は、摺動部81を構成する樹脂材料で満たされる。
【0048】
また、第1プレート82の第1側壁822及び第2プレート83の第2側壁832が幅方向Xに対向し、第1プレート82の第1係合壁823及び第2プレート83の第2係合壁833が幅方向Xに対向する。このとき、第1プレート82の第1係合壁823及び第2プレート83の第2係合壁833の間には隙間が形成される。
【0049】
ガイド軸84は、第1側壁822及び第2側壁832を幅方向Xに連結する。詳しくは、ガイド軸84は、第1側壁822の第1連結孔822a及び第2側壁832の第2連結孔832aに挿入された状態で、カシメられることにより、第1側壁822及び第2側壁832を連結する。
【0050】
ガイド軸84と第1プレート82の第1係合壁823及び第2プレート83の第2係合壁833との上下方向Zの間隔は、支持部材60の第1ガイド部611及び第2ガイド部612の上下方向Zにおける長さと略等しい。また、ガイド軸84の外径は、支持部材60の規制部66の上側ガイド面661及び下側ガイド面662の間隔と略等しい。
【0051】
図3に示すように、駆動シュー80は、摺動部81、詳しくは、第1摺動部811及び第2摺動部812がガイドレール31の摺動溝311に配置されることで、ガイドレール31の長手方向への移動が許容され、ガイドレール31の長手方向と直交する方向への移動が制限される。駆動シュー80は、ケーブル100が摺動部81をガイドレール31に沿って押し引きすることで、ガイドレール31に沿って移動する。
【0052】
また、
図4に示すように、駆動シュー80は、駆動シュー80の第1側壁822及び第2側壁832と第1係合壁823及び第2係合壁833とガイド軸84とに囲まれる領域に、支持部材60の第1ガイド部611及び第2ガイド部612が挿入されることにより、支持部材60と係合する。詳しくは、駆動シュー80の第1係合壁823とガイド軸84とが支持部材60の第1ガイド部611に係合し、駆動シュー80の第2係合壁833とガイド軸84とが支持部材60の第2ガイド部612に係合する。
【0053】
サンルーフ装置20の動作について説明する。
図3に示すように、駆動シュー80が第1の位置P1に位置する場合、駆動シュー80の第1係合壁823及び第2係合壁833が支持部材60の平坦部63の上側ガイド面631に係合し、ガイド軸84が支持部材60の平坦部63の下側ガイド面632に係合する。駆動シュー80が第1の位置P1に位置する場合、可動パネル40は全閉位置に位置する。本実施形態において、駆動シュー80の位置は、ガイド軸84の中心位置を基準としている。
【0054】
図8に示すように、駆動シュー80が第1の位置P1から後方に移動する場合、駆動シュー80の第1係合壁823及び第2係合壁833が支持部材60の後側傾斜部65の上側ガイド面651と摺動する。このとき、駆動シュー80は、第1係合壁823及び第2係合壁833で後側傾斜部65を押し下げながら後方に移動する。続いて、駆動シュー80のガイド軸84が規制部66の下側ガイド面662と摺動する。このとき、駆動シュー80は、ガイド軸84で規制部66を押し下げながら後方に移動する。
【0055】
したがって、支持部材60は、前端部に対して後端部が下降するように前端部を中心に回動し、可動パネル40は、チルトダウン作動する。そして、
図8に示すように、駆動シュー80が第2の位置P2に到達すると、駆動シュー80のガイド軸84が規制部66の規制面663に接触し、駆動シュー80が支持部材60に対して相対的に後方に移動できなくなる。また、駆動シュー80が第2の位置P2に到達すると、可動パネル40がチルトダウン位置に位置する。
【0056】
図8に示すように、駆動シュー80が第2の位置P2から後方に移動する場合、駆動シュー80とともに支持部材60が後方に移動する。このため、支持部材60は、ガイドレール31に沿って後方に移動し、可動パネル40が後方にスライド作動する。そして、駆動シュー80の移動範囲において最も後方の第3の位置P3に到達すると、可動パネル40が全開位置に位置する。
【0057】
図8に示すように、駆動シュー80が第3の位置P3から前方に移動する場合、駆動シュー80とともに支持部材60が前方に移動する。このため、支持部材60は、ガイドレール31に沿って前方に移動し、可動パネル40が前方にスライド作動する。そして、駆動シュー80が第2の位置P2に到達すると、可動パネル40がチルトダウン位置に位置する。
【0058】
図8に示すように、駆動シュー80が第2の位置P2から前方に移動する場合、駆動シュー80のガイド軸84が規制部66の上側ガイド面661と摺動する。このとき、駆動シュー80は、ガイド軸84で規制部66を押し上げながら前方に移動する。続いて、駆動シュー80のガイド軸84が支持部材60の後側傾斜部65の下側ガイド面652と摺動する。このとき、駆動シュー80は、ガイド軸84で後側傾斜部65を押し上げながら前方に移動する。
【0059】
したがって、支持部材60は、前端部に対して後端部が上昇するように前端部を中心に回動し、可動パネル40は、チルトアップ作動する。そして、駆動シュー80が第1の位置P1に到達すると、可動パネル40が全閉位置に位置する。
【0060】
図示を省略するが、駆動シュー80が第1の位置P1から前方に移動する場合、駆動シュー80のガイド軸84が支持部材60の前側傾斜部64の下側ガイド面642と摺動する。このとき、駆動シュー80は、ガイド軸84で前側傾斜部64を押し上げながら、前方に移動する。このため、支持部材60は、前端部に対して後端部が上昇するように前端部を中心に回動し、可動パネル40は、チルトアップ作動する。そして、
図3に示す第4の位置P4に到達すると、可動パネル40がチルトアップ位置に位置する。
【0061】
一方、駆動シュー80が第4の位置P4から後方に移動する場合、駆動シュー80の第1係合壁823及び第2係合壁833が支持部材60の前側傾斜部64の上側ガイド面641と摺動する。このとき、駆動シュー80は、第1係合壁823及び第2係合壁833で前側傾斜部64を押し下げながら、後方に移動する。このため、支持部材60は、前端部に対して後端部が下降するように前端部を中心に回動し、可動パネル40は、チルトダウン作動する。そして、駆動シュー80が第1の位置P1に到達すると、可動パネル40が全閉位置に位置する。
【0062】
次に、駆動シュー80のインサート成形に用いる中子110について説明する。
図9に示すように、中子110は、一対の第1側面121及び第2側面122を有する中子本体120と、第1側面121から突出する第1係合軸131及び第2係合軸132と、第2側面122から突出する第3係合軸133及び第4係合軸134と、を有する。
【0063】
中子本体120は、略直方体状をなしている。第1側面121及び第2側面122は、中子110において、互いに反対側を向く面である。中子110の第1側面121及び第2側面122の距離は、駆動シュー80の第1プレート82の第1側壁822及び第2プレート83の第2側壁832の間をなす距離と等しい。
【0064】
第1係合軸131、第2係合軸132、第3係合軸133及び第4係合軸134は、中子本体120に対して相対的に移動できるように構成することが好ましい。例えば、第1係合軸131及び第2係合軸132は、第1側面121から着脱自在に構成することが好ましい。あるいは、第1係合軸131及び第2係合軸132は、第1側面121から突出する突出位置と中子110の内部に退避することで第1側面121から突出しない退避位置との間を変位できるように構成することが好ましい。第3係合軸133及び第4係合軸134も第2側面122との関係で同様である。
【0065】
第1係合軸131の断面形状は、第1プレート82の第1連結孔822aの断面形状と略等しく、第2係合軸132の断面形状は、第1プレート82の第1係合孔822bの断面形状と略等しい。また、第3係合軸133の断面形状は、第2プレート83の第2連結孔832aの断面形状と略等しく、第4係合軸134の断面形状は、第2プレート83の第2係合孔832bの断面形状と略等しい。
【0066】
第1係合軸131の軸線及び第3係合軸133の軸線は同一直線上に位置し、第2係合軸132の軸線及び第4係合軸134の軸線は同一直線上に位置する。このため、第1係合軸131及び第2係合軸132の軸線間距離は、第3係合軸133及び第4係合軸134の軸線間距離と等しい。また、これらの軸線間距離は、第1連結孔822a及び第1係合孔822bの軸線間距離とも等しく、第2連結孔832a及び第2係合孔832bの軸線間距離とも等しい。
【0067】
本実施形態の作用について説明する。
詳しくは、駆動シュー80の
図4に示す断面を用いて、サンルーフ装置20の駆動シュー80の製造方法について説明する。
【0068】
本実施形態の駆動シュー80の製造方法は、第1成形工程、配置工程、第2成形工程及び連結工程を有する。第1成形工程、配置工程、第2成形工程及び連結工程は、順に行われる工程である。
【0069】
第1成形工程は、第1プレート82及び第2プレート83を個別に成形する工程である。詳しくは、第1成形工程は、平板状をなす金属板をプレス加工することで、第1プレート82及び第2プレート83を個別に成形する工程である。
【0070】
図10に示すように、配置工程は、第1成形工程で成形された第1プレート82及び第2プレート83を金型201~203内に配置する工程である。配置工程では、第1プレート82及び第2プレート83は、第1側壁822及び第2側壁832の間に中子110を挟んだ状態で金型201~203内に配置される。つまり、第1プレート82が中子110の第1側面121に接するとともに、第2プレート83が中子110の第2側面122に接するため、第1プレート82及び第2プレート83の幅方向Xにおける間隔が定められる。
【0071】
さらに、配置工程では、
図10に示すように、中子110の第1係合軸131及び第3係合軸133が第1プレート82の第1連結孔822a及び第2プレート83の第2連結孔832aにそれぞれ挿入される。また、図示を省略するものの、中子110の第2係合軸132及び第4係合軸134が第1プレート82の第1係合孔822b及び第2プレート83の第2係合孔832bにそれぞれ挿入される。その結果、配置工程において、第1プレート82の第1連結孔822aの軸線及び第2プレート83の第2連結孔832aの軸線が一致するとともに、第1プレート82の第1係合孔822bの軸線及び第2プレート83の第2係合孔832bの軸線が一致する。
【0072】
図11に示すように、第2成形工程は、金型201~203内に注入した液状樹脂を硬化させて、摺動部81を成形する工程である。つまり、第2成形工程は、金型201~203内に配置された第1プレート82及び第2プレート83を摺動部81で連結する工程ということもできる。第2成形工程では、第1プレート82の第1底壁821及び第2プレート83の第2底壁831と、第1プレート82の第1側壁822の一部及び第2プレート83の第2側壁832の一部と、が摺動部81に被覆される。この際、第1底壁821の第1貫通孔825b及び第2底壁831の第2貫通孔835bは、摺動部81を構成する樹脂材料によって満たされる。
【0073】
また、第2成形工程では、液状樹脂が硬化した後に、一体化された第1プレート82及び第2プレート83と摺動部81とが金型201~203から取り外される。このとき、中子110は、第1係合軸131、第2係合軸132を第1側面121から突出しない状態とし、第3係合軸133及び第4係合軸134を第2側面122から突出しない状態として、第1プレート82及び第2プレート83の間から取り除かれる。
【0074】
図12に示すように、連結工程は、第2成形工程の後に、第1プレート82に形成される第1連結孔822a及び第2プレート83に形成される第2連結孔832aにガイド軸84を挿入して、第1プレート82及び第2プレート83を連結する工程である。
【0075】
こうして、第1成形工程、配置工程、第2成形工程及び連結工程を経て、駆動シュー80が製造される。
本実施形態の効果について説明する。
【0076】
(1)サンルーフ装置20において、駆動シュー80は、第1プレート82及び第2プレート83を摺動部81で連結することで構成される。このため、第1プレート82及び第2プレート83を個別に成形できる点で、第1プレート82及び第2プレート83の成形精度を高めることが可能となる。詳しくは、第1係合壁823及び第2係合壁833の形状、第1係合壁823及び第2係合壁833の位置関係並びに第1連結孔822a及び第2連結孔832aの位置関係に関する精度を高めることが可能となる。したがって、駆動シュー80の第1係合壁823及び第2係合壁833が支持部材60の第1ガイド部611及び第2ガイド部612と摺動する際の摺動抵抗が小さくなりやすい。その結果、サンルーフ装置20は、可動パネル40の円滑な開閉作動を実現できる。
【0077】
また、第1プレート82及び第2プレート83が一体に成形される場合、すなわち、一枚の金属板から第1プレート82及び第2プレート83の一体物を成形する場合には、形状が複雑となる点で、成形に必要な工程が増大したり、成形後に形状の微調整を行なったりする必要がある。この点、本実施形態の駆動シュー80の製造方法は、第1プレート82及び第2プレート83を別体に成形するため、少ない工程で精度良く駆動シュー80を製造することが可能となる。
【0078】
(2)サンルーフ装置20において、駆動シュー80を構成する第1プレート82及び第2プレート83は、摺動部81とインサート成形により一体化される。このため、摺動部81に第1プレート82及び第2プレート83を組み付けるための構造を設ける必要がない。つまり、サンルーフ装置20は、駆動シュー80の構成を簡素化できる。
【0079】
(3)サンルーフ装置20において、第1プレート82の第1底壁821及び第2プレート83の第2底壁831には、摺動部81を構成する樹脂材料で満たされる第1貫通孔825b及び第2貫通孔835bがそれぞれ形成される。このため、サンルーフ装置20は、第1プレート82及び第2プレート83と摺動部81とを強固に接続できる。したがって、サンルーフ装置20は、駆動シュー80に前後方向Yに荷重が作用する場合に、第1プレート82及び第2プレート83が摺動部81から分離することを抑制できる。
【0080】
(4)上記駆動シュー80の製造方法は、配置工程において、中子110の第1係合軸131、第2係合軸132、第3係合軸133及び第4係合軸134を、第1プレート82の第1連結孔822a、第1プレート82の第1係合孔822b、第2プレート83の第2連結孔832a及び第2プレート83の第2係合孔832bに、それぞれ挿入する。このため、上記駆動シュー80の製造方法は、第2成形工程において、第1プレート82の第1連結孔822aの軸線及び第2プレート83の第2連結孔832aの軸線が一致した状態で、第1プレート82及び第2プレート83を摺動部81と一体化できる。したがって、駆動シュー80の製造方法は、第1プレート82及び第2プレート83をガイド軸84で連結する連結工程において、ガイド軸84を第1連結孔822a及び第2連結孔832aに挿入しにくくなることを抑制できる。
【0081】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・サンルーフ装置20は、全開位置において、可動パネル40がルーフ12の上方に位置する、いわゆるアウタースライド式のサンルーフ装置として構成することも可能である。
【0082】
・駆動シュー80の第1係合壁823及び第2係合壁833と支持部材60の第1ガイド部611及び第2ガイド部612との係合態様は適宜に変更することができる。例えば、第1係合壁823及び第2係合壁833は、幅方向Xを軸方向とする軸状をなす第1係合軸及び第2係合軸に代えてもよい。この場合、第1ガイド部611及び第2ガイド部612は、第1係合軸及び第2係合軸にそれぞれ係合する溝状をなすことが好ましい。
【0083】
・第1プレート82において、第1中間底壁825は、第1貫通孔825bを有しなくてもよい。同様に、第2プレート83において、第2中間底壁835は、第1貫通孔825bを有しなくてもよい。この場合、第1プレート82の第1底壁821及び第2プレート83の第2底壁831に溝及び凹凸を形成することで、第1プレート82及び第2プレート83と摺動部81との接触面積を増やしてもよい。
【0084】
・第1プレート82及び第2プレート83と摺動部81とは、インサート成形により一体化しなくてもよい。この場合、摺動部81に第1プレート82及び第2プレート83を組み付けるための構成を設けることが好ましい。この構成によっても、上記実施形態の効果(1)を得ることができる。
【0085】
・配置工程は、例えば、第1プレート82の第1係合壁823及び第2プレート83の第2係合壁833を、中子110に接触させたり金型201~203に接触させたりすることで、第1プレート82の第1連結孔822a及び第2プレート83の第2連結孔832aの軸線を一致させてもよい。つまり、配置工程は、中子110の第1係合軸131、第2係合軸132、第3係合軸133及び第4係合軸134を用いることなく、第1プレート82の第1連結孔822a及び第2プレート83の第2連結孔832aの軸線を一致させてもよい。
【0086】
・中子110の形状は適宜に変更してもよい。例えば、中子110は、第1係合軸131及び第3係合軸133を有していれば、第2係合軸132及び第4係合軸134を有しなくてもよいし、第2係合軸132及び第4係合軸134を有していれば、第1係合軸131及び第3係合軸133を有しなくてもよい。また、中子110は、成形工程の終了後に、第1プレート82及び第2プレート83の間から取り外しやすくするために、中子本体120を分解可能な構成としてもよい。
【0087】
・中子110は、第1係合軸131、第2係合軸132、第3係合軸133及び第4係合軸134を有しなくてもよい。つまり、中子110は、少なくとも第1プレート82及び第2プレート83の幅方向Xにおける間隔を決めるためだけの機能を有していればよい。
【符号の説明】
【0088】
10…車両、11…ルーフ開口部、12…ルーフ、20…サンルーフ装置、30…ベースフレーム、31…ガイドレール、311…摺動溝、32…フロントハウジング、40…可動パネル、41…透光パネル、42…固定ブラケット、50…駆動装置、60…支持部材、611…第1ガイド部、612…第2ガイド部、63…平坦部、631…上側ガイド面、632…下側ガイド面、64…前側傾斜部、641…上側ガイド面、642…下側ガイド面、65…後側傾斜部、651…上側ガイド面、652…下側ガイド面、66…規制部、661…上側ガイド面、662…下側ガイド面、663…規制面、70…従動シュー、80…駆動シュー、81…摺動部、811…第1摺動部、812…第2摺動部、813…中間部、814…ケーブル保持部、82…第1プレート、821…第1底壁、822…第1側壁、822a…第1連結孔、822b…第1係合孔、823…第1係合壁(第1係合部の一例)、824…第1前側底壁、825…第1中間底壁、825a…第1切り欠き、825b…第1貫通孔、826…第1後側底壁、83…第2プレート、831…第2底壁、832…第2側壁、832a…第2連結孔、832b…第2係合孔、833…第2係合壁(第2係合部の一例)、834…第2前側底壁、835…第2中間底壁、835a…第2切り欠き、835b…第2貫通孔、836…第2後側底壁、84…ガイド軸、90…モータ、100…ケーブル、110…中子、120…中子本体、121…第1側面、122…第2側面、131…第1係合軸、132…第2係合軸、133…第3係合軸、134…第4係合軸、201…金型、202…金型、203…金型、P1…第1の位置、P2…第2の位置、P3…第3の位置、P4…第4の位置、X…幅方向、Y…前後方向、Z…上下方向。