IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両の側部車体構造 図1
  • 特許-車両の側部車体構造 図2
  • 特許-車両の側部車体構造 図3
  • 特許-車両の側部車体構造 図4
  • 特許-車両の側部車体構造 図5
  • 特許-車両の側部車体構造 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】車両の側部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
B60J5/00 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019153786
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021030913
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】駒路 知博
(72)【発明者】
【氏名】堀田 与支彦
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-025844(JP,A)
【文献】特開2011-230752(JP,A)
【文献】特開2007-269301(JP,A)
【文献】特開2005-153644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ側にセンタピラーが存在しない車両の側部車体構造であって、
フロントドアと、該フロントドアに対して前後方向の長さが短いリヤドアと、を備え、
上記リヤドアの前部にはドア側のセンタピラーが内蔵されており、
上記センタピラーの後壁部からセンタピラー外壁部に対してリヤドアアウタパネル側に突出し、かつ、該リヤドアアウタパネルに沿った側突荷重の受け面部をもったガセット部材を備え
上記センタピラーは、上部側の前後方向長さが下部側の前後方向長さに対して小さく形成され、
上部側にはセンタピラー上部を補強する補強部材が設けられており、
上記ガセット部材は上記センタピラーの下方寄りに配設され、
上記補強部材の後端部が上記ガセット部材の配設位置まで下方に延出された
車両の側部車体構造。
【請求項2】
上記センタピラー上端の前方部にフロントドアとの間のコーナシールを行なう型成形シール部材取付け用の切欠き部が形成された
請求項1に記載の車両の側部車体構造。
【請求項3】
上記ガセット部材は、その先端側が自由端である
請求項1または請求項2に記載の車両の側部車体構造。
【請求項4】
上記ガセット部材には、当該ガセット部材の延び方向に沿って補強ビードが形成された
請求項1~の何れか一項に記載の車両の側部車体構造。
【請求項5】
上記ガセット部材の上記受け面部には、リヤドアのアウタパネルに当接する弾性部材が設けられた
請求項1~の何れか一項に記載の車両の側部車体構造。
【請求項6】
ボディ側にセンタピラーが存在しない車両の側部車体構造であって、
フロントドアと、該フロントドアに対して前後方向の長さが短いリヤドアと、を備え、
上記リヤドアの前部にはドア側のセンタピラーが内蔵されており、
上記センタピラーの後壁部からセンタピラー外壁部に対してリヤドアアウタパネル側に突出し、かつ、該リヤドアアウタパネルに沿った側突荷重の受け面部をもったガセット部材を備え、
上記センタピラーの上部側にはセンタピラー上部を補強する補強部材が設けられており、
上記ガセット部材は上記センタピラーの下方寄りに配設され、
上記補強部材の後端部が上記ガセット部材の配設位置まで下方に延出された
車両の側部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボディ側にルーフサイドレール部とサイドシル部とを上下方向に連結するセンタピラーが存在しない車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センタピラーレスの車両においては、車体側にルーフサイドレールとサイドシルとを上下方向に連結するボディ側センタピラーが存在しない。このため、リヤドア前端にドア側センタピラーを内蔵し、側突時には、ドア側センタピラーで受けた荷重を、その上下両端部で車体側に伝達するように構成している。
しかしながら、一般的な車両では、デザインの関係上、フロントドアの前後方向の長さと比較して、リヤドアの前後方向の長さが短いため、センタピラーはドア開口部の後方寄りに対応して配置される。
【0003】
このため、車両の側突時に、センタピラー後壁部に対してセンタピラー前壁部に側突荷重が付勢気味になることに起因して、センタピラー前壁部がセンタピラー後壁部に対して車幅方向内方側へ大きく変位する挙動が発生する。
このような問題点を解決するため、ドア側センタピラーの上下両端の車体への荷重伝達構造について、改善の余地があった。
【0004】
ところで、特許文献1には、観音開き構造のドアを備えた車両において、リヤドア前部にセンタピラーを内蔵した構造が開示されている。上記センタピラーの下部外壁部とドアインナパネル後端に設けたレインチェックとの間には、車両の前後方向に延びるインパクトバーが張架されている。
【0005】
しかしながら、該特許文献1に開示された従来構造においては、側突時にセンタピラー前壁部がセンタピラー後壁部に対して車幅方向内方側へ大きく変位する挙動を、如何にして抑制するかという点については全く開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-25844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、側突時に、センタピラー後壁部に対してセンタピラー前壁部に側突荷重が付勢気味になることに起因して、センタピラー前壁部がセンタピラー後壁部に対して車幅方向内方側へ大きく変位する挙動を抑制することができる車両の側部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による車両の側部車体構造は、ボディ側にセンタピラーが存在しない車両の側部車体構造であって、フロントドアと、該フロントドアに対して前後方向の長さが短いリヤドアと、を備え、上記リヤドアの前部にはドア側のセンタピラーが内蔵されており、上記センタピラーの後壁部からセンタピラー外壁部に対してリヤドアアウタパネル側に突出し、かつ、該リヤドアアウタパネルに沿った側突荷重の受け面部をもったガセット部材を備え、上記センタピラーは、上部側の前後方向長さが下部側の前後方向長さに対して小さく形成され、上部側にはセンタピラー上部を補強する補強部材が設けられており、上記ガセット部材は上記センタピラーの下方寄りに配設され、上記補強部材の後端部が上記ガセット部材の配設位置まで下方に延出されたものである。
【0009】
またこの発明による車両の側部車体構造は、ボディ側にセンタピラーが存在しない車両の側部車体構造であって、フロントドアと、該フロントドアに対して前後方向の長さが短いリヤドアと、を備え、上記リヤドアの前部にはドア側のセンタピラーが内蔵されており、上記センタピラーの後壁部からセンタピラー外壁部に対してリヤドアアウタパネル側に突出し、かつ、該リヤドアアウタパネルに沿った側突荷重の受け面部をもったガセット部材を備え、上記センタピラーの上部側にはセンタピラー上部を補強する補強部材が設けられており、上記ガセット部材は上記センタピラーの下方寄りに配設され、上記補強部材の後端部が上記ガセット部材の配設位置まで下方に延出されたものである。
【0010】
上記構成によれば、側突時に上記ガセット部材にてセンタピラーの後壁部側に荷重を伝達することができる。これにより、側突時に、センタピラー後壁部に対してセンタピラー前壁部に側突荷重が付勢気味になることに起因して、センタピラー前壁部がセンタピラー後壁部に対して車幅方向内方側へ大きく変位する挙動を抑制することができる。
【0011】
さらにこの発明は、上記センタピラーは、上部側の前後方向長さが下部側の前後方向長さに対して小さく形成され、上部側にはセンタピラー上部を補強する補強部材が設けられており、上記ガセット部材はセンタピラーの下方寄りに配設され、上記補強部材の後端部が上記ガセット部材の配設位置まで下方に延出されたものである。
【0012】
上記構成によれば、補強部材の後端部をガセット部材の配設位置まで下方に延ばしたので、補強部材が室内方向に押されるに従って、ガセット部材によるリヤドア下方部に対する突っ張り力を大きくすることができる。
この発明の一実施態様においては、上記センタピラー上端の前方部にフロントドアとの間のコーナシールを行なう型成形シール部材取付け用の切欠き部が形成されたものである。
【0013】
上記構成によれば、ガセット部材により上述の挙動を抑制するので、上記切欠き部が形成されていても、センタピラー上端前方部が当該切欠き部から室内方向に摺り抜けるのを抑制することができる。
この発明の一実施態様においては、上記ガセット部材は、その先端側が自由端であることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、ガセット部材の軽量化と、ガセット部材の組付け工数の削減との両立を図ることができる。
この発明の一実施態様においては、上記ガセット部材には、当該ガセット部材の延び方向に沿って補強ビードが形成されたものである。
【0015】
上記構成によれば、ガセット部材の延び方向の高剛性化を図ることができ、側突時においてガセット部材を介してセンタピラーの後壁部側に荷重を伝達する際、その荷重伝達効率の向上を図ることができる。
この発明の一実施態様においては、上記ガセット部材の上記受け面部には、リヤドアのアウタパネルに当接する弾性部材が設けられたものである。
【0016】
上述の弾性部材は、ウレタン部材に設定してもよい。
上記構成によれば、リヤドアのアウタパネルの張り剛性を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、側突時に、センタピラー後壁部に対してセンタピラー前壁部に側突荷重が付勢気味になることに起因して、センタピラー前壁部がセンタピラー後壁部に対して車幅方向内方側へ大きく変位する挙動を抑制することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の車両の側部車体構造を示す側面図
図2図1の要部拡大側面図
図3図2のA-A線矢視断面図
図4】ドア側センタピラーの上端部周辺構造を示す部分拡大側面図
図5】リヤドア前端部に型成形シール部材を取付けた状態で示す部分拡大側面図
図6】ガセット部材を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
側突時に、センタピラー後壁部に対してセンタピラー前壁部に側突荷重が付勢気味になることに起因して、センタピラー前壁部がセンタピラー後壁部に対して車幅方向内方側へ大きく変位する挙動を抑制するという目的を、ボディ側にセンタピラーが存在しない車両の側部車体構造において、フロントドアと、該フロントドアに対して前後方向の長さが短いリヤドアと、を備え、上記リヤドアの前部にはドア側のセンタピラーが内蔵されており、上記センタピラーの後壁部からセンタピラー外壁部に対してリヤドアアウタパネル側に突出し、かつ、該リヤドアアウタパネルに沿った側突荷重の受け面部をもったガセット部材を備えるという構成にて実現した。
【実施例
【0020】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の側部車体構造を示し、図1はドアアウタパネルを取外して当該車両の側部車体構造を車幅方向外側から見た状態で示す側面図、図2図1の要部拡大側面図である。図3図2のA-A線矢視断面図、図4はドア側センタピラーの上端部周辺構造を示す部分拡大側面図、図5はリヤドア前端部に型成形シール部材を取付けた状態で示す部分拡大側面図、図6はガセット部材を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、ボディ側の側部には、前側のヒンジピラー部1と、後側のヒンジピラー部2と、サイドシル部3と、フロントピラー部4と、ルーフサイドレール部5とで環状構造体6が形成されると共に、ボディ側にはセンタピラーが存在しないセンタピラーレス車体に構成されている。
また、上述の各部、すなわち、ヒンジピラー部1,2、サイドシル部3、フロントピラー部4、ルーフサイドレール部5で囲繞されたドア開口部7(図2参照)が形成されている。
【0022】
上述の前側のヒンジピラー部1は、ヒンジピラーアウタとヒンジピラーインナとを接合して、車両上下方向に延びるヒンジピラー閉断面をもった車体剛性部材である。
上述のサイドシル部3は、前後の各ヒンジピラー部1,2の下部を連結する車体剛性部材であり、該サイドシル部3は、サイドシルアウタとサイドシルインナとサイドシルレインとを接合して、車両前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えている。
【0023】
上述のフロントピラー部4は、前側のヒンジピラー部1の上端とルーフサイドレール部5の前端とを連結して、その前部から後部にかけて後方かつ上方に斜め方向に延びる車体剛性部材である。また、該フロントピラー部4は、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとを接合して、斜め方向に延びるフロントピラー閉断面を備えている。
【0024】
上述のルーフサイドレール部5は、フロントピラー部4の後端と、図示しないリヤピラー部前端とを車両前後方向に連結する車体剛性部材である。また、該ルーフサイドレール部5は、ルーフサイドレールアウタとルーフサイドレールインナとを接合して、車両前後方向に延びるルーフサイドレール閉断面を備えている。
図2で示したドア開口部7には、図1図2に示すように、観音開き構造のフロントドア10と、リヤドア30とが設けられている。
【0025】
フロントドア10は、ヒンジピラー部1に設けた上下一対のヒンジブラケット8,8を介して、ドア前端部を支点として当該フロントドア10後側が開閉するように構成されている。リヤドア30は、後側のヒンジピラー部2に設けたヒンジブラケット(図示せず)を介して、ドア後端部を支点として当該リヤドア30前側が開閉するように構成されている。
この観音開き構造のフロントドア10と、リヤドア30とは、図3に示すように、リヤドア30に対してフロントドア10が優先して開放されるように構成している。
【0026】
図1図3に示すように、フロントドア10は、鋼板製のドアアウタパネル11と、該ドアアウタパネル11にヘミング加工等により連結された鋼板製のドアインナパネル12とを備えており、これら両者11,12によりドアパネルが形成されている。
【0027】
上述のドアアウタパネル11は車室外側に配置されてフロントドア10の意匠面を形成している。一方、ドアインナパネル12はドアアウタパネル11よりも車室内側に配置されており、これら両者11,12間にはドア内部空間13が形成されている。
【0028】
図1に示すように、上述のフロントドア10は、前辺部10Aと、下辺部10Bと、後辺部10Cと、ドアサッシュ部10Sと、ベルトライン部BLとを備えている。前辺部10Aにおいて上述のドアインナパネル12が上下一対のヒンジブラケット8,8を介して車体側のヒンジピラー部1に開閉可能を支持されている。
【0029】
フロントドア10の前辺部10Aにおいて、上下一対のヒンジブラケット8,8のうちの上側のヒンジブラケット8と対応するドアインナパネル12には、上部ヒンジレインフォースメント14を設けている。
【0030】
同様に、フロントドア10の前辺部10Aにおいて、上下一対のヒンジブラケット8,8のうちの下側のヒンジブラケット8と対応するドアインナパネル12には、下部ヒンジレインフォースメント15を設けている。
【0031】
図1に示すように、フロントドア10の後辺部10C上側におけるドアインナパネル12からドアサッシュ部10Sの後片部にかけて上下方向に延びるレインフォースメント16を設けている。後辺部10Cの上下方向中間部におけるドアインナパネル12には、ラッチレインフォースメント17を設けている。後辺部10Cの下部から下辺部10Bの後部にかけてドアインナパネル12には、接続補強部材18を設けている。
また、図1に示すように、ベルトライン部BLに沿って前後方向に延びるベルトラインレインフォースメント19を設けている。
【0032】
このベルトラインレインフォースメント19は上部ヒンジレインフォースメント14と、レインフォースメント16の下部との間に張架されたものである。
このベルトラインレインフォースメント19の車幅方向内側で、かつ、ドアアウタパネル11に設けられるドアミラー(図示せず)と対応する位置にはドアミラーの取付けを兼ねるブラケット20を設けている。
【0033】
さらに、図1に示すように、前側に位置する上部ヒンジレインフォースメント14と、後側に位置する接続補強部材18との間には、インパクトバー21を取付けている。このインパクトバー21はその前部が後部に対して上下方向の上側に位置するよう前高後低状に傾斜して配設されたものであり、該インパクトバー21は側突対応用のものである。
【0034】
さらにまた、図1に示すように、上記インパクトバー21の後部とフロントドア10の下辺部10Bにおける接続補強部材18との間を連結する補強ガセット部材22を設け、該補強ガセット部材22に突っ張り棒の役目を果たさせるように構成している。
【0035】
また、図1に示すように、ベルトラインレインフォースメント19前部とインパクトバー21前部との間と、ラッチレインフォースメント17直下部の後辺部10Cとを、前高後低状に斜め前後方向に延びるスティフナ23を設けている。
該スティフナ23は、スポンジ部材やウレタン部材を介してドアアウタパネル11に当接されており、このスティフナ23によりドアアウタパネル11の張り剛性を確保するよう構成している。
【0036】
さらに同図に示すように、ブラケット20とレインフォースメント16との両者には、ガラスガイド24,25を取付けている。そして、これら前後一対のガラスガイド24,25に沿ってウインドガラスを昇降案内するように構成している。
【0037】
図1に示すように、上述のドアインナパネル12はパネル主体部12aを有しており、このパネル主体部12aにはドアモジュール配設用、スピーカ配設用等の複数の開口部12b,12c,12dが開口形成されている。
【0038】
つぎに、図1図2図3を参照してリヤドア30の構造について説明する。
図1に示すように、リヤドア30の前後方向の長さは、フロントドア10の前後方向の長さに対して短く形成されている。
【0039】
図3に示すように、リヤドア30は、鋼板製のドアアウタパネル31と、該ドアアウタパネル31にヘミング加工またはスポット溶接により連結された鋼板製のドアインナパネル32と、を備えており、これら両者31,32によりドアパネルが形成されている。
【0040】
上述のドアアウタパネル31は車室外側に配置されてリヤドア30の意匠面を形成し、一方、ドアインナパネル32はドアアウタパネル31よりも車室内側に配置されており、これら両者31,32間にはドア内部空間33が形成されている。
【0041】
図1図2に示すように、リヤドア30は、前辺部30Aと、下辺部30Bと、後辺部30Cと、窓枠部30Sとを備えている。後辺部30Cにおいて上述のドアインナパネル32が上下一対のヒンジブラケット(図示せず)を介して車体側のヒンジピラー部2に開閉可能に支持されている。
【0042】
図2図3に示すように、上述の後辺部30Cにおいてドアインナパネル32には、上下方向に延びるヒンジレインフォースメント34を設けている。
図2図3に示すように、リヤドア30の前部には、その前端が前辺部30Aに沿うようにドア側のセンタピラー35(バーチカルレインフォースメントと同意)が内蔵されている。このセンタピラー35は、窓枠部30Sの前側上端部から下辺部30Bまで上下方向に延びるピラー部材である。
【0043】
図3に断面図で示すように、該センタピラー35は、前側の接合フランジ部35aと、前壁部35bと、外壁部35cと、後壁部35dと、後側の接合フランジ部35eと、を一体形成して、水平断面でハット形状に形成されている。
【0044】
図2に示すように、上記センタピラー35は、その上部側の前後方向長さが下部側の前後方向長さに対して小さく形成されているが、当該センタピラー35は、その上下両端部を除いて、上部側から下部側にかけて、断面ハット形状に形成されている。
図3に示すように、センタピラー35の前後の各接合フランジ部35a,35eは前後方向に延びており、これらの各接合フランジ部35a,35eはドアインナパネル32に接合固定されている。
【0045】
前壁部35bは、接合フランジ部35aの後端から車幅方向外方に延びている。同様に、後壁部35dは、接合フランジ部35eの前端から車幅方向外方に延びている。外壁部35cは、前壁部35bと後壁部35dとの車幅方向外端相互間を前後方向に延びて連結している。
【0046】
図2に示すように、センタピラー35の外壁部35cにおける下部側には、開口部36が形成されており、この開口部36の形成による剛性低下を補強すべく、後壁部35dから開口部36の後側口縁部にわたる補強部材37が設けられている。
【0047】
図2に示すように、センタピラー35の下部側の前後方向長さに対して、その前後方向長さが相対的に小さい上部側を補強すべく、センタピラー35の上部側には当該センタピラー35上部を補強する補強部材40が設けられている。
【0048】
図2に示すように、上述の補強部材40は前辺部40aと、この前辺部40aに対して後方に離間する後辺部40bと、前辺部40aと後辺部40bとの上端相互間を連結して上方に延びる上部連結部40cと、前辺部40aと後辺部40bとの下端相互間を連結して前後方向に延びる下部連結部40dと、を備えている。
また、上述の補強部材40は後辺部40bの下端から下方に延出された下方延出部40eを備えている。上述の各要素40a~40eを一体形成することで、補強部材40が構成されている。
【0049】
前辺部40aは断面L字状に形成され、センタピラー35の前壁部35bと外壁部35cとに接合されている。後辺部40bも断面L字状に形成され、センタピラー35の後壁部35dと外壁部35cとの接合されている。上部連結部40cは少なくともセンタピラー35の外壁部35cに接合されている。下部連結部40dはセンタピラー35の外壁部35cに接合されている。下方延出部40eは断面L字状に形成され、センタピラー35の後壁部35dと外壁部35cとに接合されている。
【0050】
そして、この補強部材40によりセンタピラー35の前後方向の幅が小さい上部を補強して、その折れ防止を図っている。また前辺部40a下端を下部連結部40dの位置で終焉させることで、センタピラー35と補強部材40との両者による剛性の調整を行なうように構成している。すなわち、側突に対する耐力の調整を行なうように構成したものである。
また、図2図3に示すように、センタピラー35の後壁部35dから当該センタピラー35の外壁部35cに対してドアアウタパネル31側に突出する荷重伝達部材としてのガセット部材41を備えている。
【0051】
図3図6に示すように、このガセット部材41は、ドアアウタパネル31に沿った側突荷重の受け面部41aと、センタピラー35の後壁部35dに対する取付け部41bと、これら両部41a,41bを連結する連結部41cと、を一体形成したものである。
【0052】
このガセット部材41は、センタピラー35の下方寄りに配設されると共に、該ガセット部材41は、その先端側(この実施例では、後端側)が自由端に設定されている。また、ガセット部材41の受け面部41aには、ドアアウタパネル31に当接する弾性部材としてのウレタン部材42が設けられている。
【0053】
上述の側突荷重の受け面部41aをもったガセット部材41を、センタピラー35の後壁部35dに取付けることで、側突時には当該ガセット部材41にてセンタピラー35の後壁部35dに荷重を伝達する。これにより、センタピラー35の後壁部35dに対して前壁部35bに側突荷重が付勢気味になることに起因して、センタピラー35の前壁部35bが後壁部35dに対して車幅方向内方側へ大きく変位する挙動を抑制するよう構成したものである。
【0054】
詳しくは、側突時にガセット部材41の取付け部41bを介して、センタピラー35の後壁部35dを車幅方向内側に押し、該後壁部35dを同方向に引張り込み、これにより前壁部35bの車幅方向内側への変位を相殺する。むしろ、センタピラー35の後壁部35dが前壁部35bに対して車幅方向内方側へ変位する挙動を確保するよう構成している。
【0055】
また、図6に示すように、上記ガセット部材41には、当該ガセット部材41の延び方向に沿って複数の補強ビード41d,41e,41fが形成されている。これら複数の補強ビード41d,41e,41fのうち補強ビード41d,41eは車幅方向内側に突出し、受け面部41aと、連結部41cとにわたって形成されている。補強ビード41fは車両後方側に突出し、取付け部41bの延び方向全長にわたって形成されている。
【0056】
上述の補強ビード41d~41fによりガセット部材41の延び方向の高剛性化を図り、また、側突時には、ガセット部材41を介してセンタピラー35の後壁部35dに荷重を伝達する場合、その荷重伝達効率の向上を図るよう構成したものである。
【0057】
上述のガセット部材41と補強部材40との関係において、補強部材40の後端部である下方延出部40eは、図2に示すように、ガセット部材41の配設位置まで下方に延出されている。これにより、側突時に、補強部材40が室内方向に押されるに従って、ガセット部材41によるリヤドア30下方部に対する突っ張り力を大きくすべく構成している。
【0058】
図2に示すように、ドアインナパネル32の前部上側にはラッチレインフォースメント43が設けられている。図2にその大半を点線で示すように、該ラッチレインフォースメント43はセンタピラー35と対応して、当該センタピラー35の上端からガセット部材41の直上部まで上下方向に延びている。
図2図4図5に示すように、上述のラッチレインフォースメント43およびドアインナパネル32の上端前方部には、これら両者43,32に連続して切欠き部44が形成されている。
【0059】
また、図2図4図5に示すように、上述のセンタピラー35の上端前方部には、上記切欠き部44よりも切欠き範囲が大きい切欠き部45が形成されている。この切欠き部45は、フロントドア10との間のコーナシールを行なう型成形シール部材46(図5参照)を取付けるための切欠き部である。
【0060】
このような切欠き部45が形成されていても、上述のガセット部材41によりセンタピラー35の上記挙動を抑制することで、当該センタピラー35の上端前方部が切欠き部45から室内方向に摺り抜けるのを抑制するように構成している。
【0061】
図1図5に示すように、上述のドアインナパネル32はパネル主体部32aを有しており、このパネル主体部32aには複数の開口部32b、32c,32dが開口形成されると共に、窓枠部30Sにはサイドウインドガラス取付け用の開口部47が形成されている。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0062】
このように、上記実施例の車両の側部車体構造は、ボディ側にセンタピラーが存在しない車両の側部車体構造であって、フロントドア10と、該フロントドア10に対して前後方向の長さが短いリヤドア30と、を備え、上記リヤドア30の前部にはドア側のセンタピラー35が内蔵されており、上記センタピラー35の後壁部35dからセンタピラー35の外壁部35cに対してドアアウタパネル31側に突出し、かつ、該ドアアウタパネル31に沿った側突荷重の受け面部41aをもったガセット部材41を備えるものである(図1図3参照)。
【0063】
この構成によれば、側突時に上記ガセット部材41にてセンタピラー35の後壁部35d側に荷重を伝達することができる。これにより、側突時に、センタピラー35の後壁部35dに対してセンタピラー35の前壁部35bに側突荷重が付勢気味になることに起因して、センタピラー35の前壁部35bがセンタピラー35の後壁部35dに対して車幅方向内方側へ大きく変位する挙動を抑制することができる。
【0064】
また、この発明の一実施形態においては、上記センタピラー35は、上部側の前後方向長さが下部側の前後方向長さに対して小さく形成され、上部側にはセンタピラー35上部を補強する補強部材40が設けられており、上記ガセット部材41はセンタピラー35の下方寄りに配設され、上記補強部材40の後端部(下方延出部40e参照)が上記ガセット部材41の配設位置まで下方に延出されたものである(図2参照)。
【0065】
この構成によれば、補強部材40の後端部をガセット部材41の配設位置まで下方に延ばしたので、補強部材40が室内方向に押されるに従って、ガセット部材41によるリヤドア30下方部に対する突っ張り力を大きくすることができる。
【0066】
さらにこの発明の一実施形態においては、上記センタピラー35上端の前方部にフロントドア10との間のコーナシールを行なう型成形シール部材46取付け用の切欠き部45が形成されたものである(図4図5参照)。
【0067】
この構成によれば、ガセット部材41により上述の挙動を抑制するので、上記切欠き部45が形成されていても、センタピラー35上端前方部が当該切欠き部45から室内方向に摺り抜けるのを抑制することができる。
【0068】
また、上記切欠き部45によりセンタピラー35上端の強度が低下するので、上述のガセット部材41により、側突時においてセンタピラー35を、その前壁部35bに対して後壁部35dが車幅方向内方側へ大きく変位する挙動を確保することができる。
【0069】
さらにまた、この発明の一実施形態においては、上記ガセット部材41は、その先端側が自由端であることを特徴とする(図3参照)。
この構成によれば、ガセット部材41の軽量化と、ガセット部材41の組付け工数の削減との両立を図ることができる。
【0070】
加えて、この発明の一実施形態においては、上記ガセット部材41には、当該ガセット部材41の延び方向に沿って補強ビード41d,41e,41fが形成されたものである(図6参照)。
【0071】
この構成によれば、ガセット部材41の延び方向の高剛性化を図ることができ、側突時においてガセット部材41を介してセンタピラー35の後壁部35d側に荷重を伝達する際、その荷重伝達効率の向上を図ることができる。
【0072】
また、この発明の一実施形態においては、上記ガセット部材41の上記受け面部41aには、リヤドア30のアウタパネル31に当接する弾性部材(ウレタン部材42参照)が設けられたものである(図3参照)。
この構成によれば、リヤドア30のアウタパネル31の張り剛性を確保することができる。
【0073】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のリヤドアアウタパネルは、実施例のドアアウタパネル31に対応し、
以下同様に、
弾性部材は、ウレタン部材42に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0074】
例えば、上記実施例においては、観音開き構造のドアを備えた車両の側部車体構造について例示したが、ボディ側にセンタピラーが存在しない車両であれば、リヤドアをスライドドアと成した車両であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明は、ボディ側にルーフサイドレール部とサイドシル部とを上下方向に連結するセンタピラーが存在しない車両の側部車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0076】
10…フロントドア
30…リヤドア
31…ドアアウタパネル(リヤドアアウタパネル)
35…センタピラー
35c…外壁部
35d…後壁部
40…補強部材
41…ガセット部材
41a…受け面部
41d,41e,41f…補強ビード
42…ウレタン部材(弾性部材)
45…切欠き部
46…型成形シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6