(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】縫製装置
(51)【国際特許分類】
D05B 39/00 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
D05B39/00
(21)【出願番号】P 2019156371
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】早川 範一
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-042078(JP,A)
【文献】特開平10-263240(JP,A)
【文献】特開昭63-177894(JP,A)
【文献】特開2017-192530(JP,A)
【文献】特開2000-140467(JP,A)
【文献】特開2010-207566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 39/00
D05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釜を有する釜機構と、前記釜機構の上方に在り、上下動可能な針棒を有する針棒機構とを水平方向と平行な第一方向に移動可能な移動機構と、
被縫製物を保持する保持機構を前記第一方向及び上下方向に直交する第二方向に送る送り機構と
を備えた縫製装置であって、
前記保持機構は、前記第一方向における両端部に設け、且つ前記第二方向に複数並んで設けた一対の被係合部を備え、
前記送り機構は、
前記第二方向に移動可能であって、複数の前記一対の被係合部のうち、一つの前記一対の被係合部と係合可能な一対の係合部
と、
前記一対の係合部と前記第二方向に並んで設けられ、前記保持機構の前記第二方向への移動を規制する突出位置と、前記保持機構の前記第二方向への移動を規制しない退避位置とに移動可能な規制部材と
を備え、
前記規制部材が前記突出位置に移動することで、前記規制部材が前記保持機構の前記第二方向への移動を規制した後、前記一対の係合部を前記一対の被係合部に係合し、
前記規制部材が前記退避位置に移動することで、前記規制部材による前記保持機構の前記第二方向への移動の規制を解除した後、前記一対の被係合部に係合した前記一対の係合部を、前記保持機構と共に前記第二方向の一方側に移動し、
前記保持機構を前記第二方向の一方側に移動した後、前記一対の被係合部に対する前記一対の係合部の係合を解除し、
前記一対の被係合部に対する係合を解除した前記一対の係合部を、前記第二方向の一方側とは反対側の他方側に移動し、
前記一対の係合部を前記第二方向の他方側に移動した後、前記複数の一対の被係合部のうち、係合を解除した前記一対の被係合部とは異なる他の前記一対の被係合部に前記一対の係合部を係合する
ことを特徴とする縫製装置。
【請求項2】
前記第一方向、及び前記第二方向に平行に延びるベッド部と、
前記第一方向に間隔をあけて設けた一対の脚柱部であって、夫々が前記ベッド部から上方に延びる一対の脚柱部と、
前記一対の脚柱部の夫々の間に亘って前記第一方向に延びる梁部と、
前記梁部にて前記第一方向に移動可能に、前記針棒機構を支持する頭部と
を備え、
前記送り機構は、上下方向において前記梁部の下方、且つ、前記第一方向において前記一対の脚柱部の内側で、前記一対の被係合部に前記一対の係合部を係合する
ことを特徴とする請求項1に記載の縫製装置。
【請求項3】
前記一対の被係合部は、前記保持機構の前記両端部から上方に向けて突出し、
前記一対の係合部の夫々は、前記第一方向に並んで配置した第一挟持部、及び第二挟持部を備え、
前記送り機構は、前記一対の被係合部の夫々を、前記第一挟持部と前記第二挟持部とにより、前記第一方向の両側から挟んで挟持する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の縫製装置。
【請求項4】
前記送り機構は、前記一対の係合部の上下方向の位置を調整可能な固定部材を備える
ことを特徴とする請求項1から
3の何れか一つに記載の縫製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、縫製設定エリアを変更可能な縫製装置を開示する。縫製装置は、押え枠、ガイドレール、外押え等を備える。押え枠は、略矩形状の枠状部材であり、X方向枠、及びY方向枠を備える。Y方向枠の上側は、Y方向に延びるガイドレールを取り付ける。ガイドレールは、Y方向に並ぶ複数の位置決め孔を備える。外押えは、平面略U字状の枠状部材であり、X方向アーム部、及び一対のY方向アーム部を備える。X方向アーム部の中央部分は、X-Y送り駆動機構に対して固定する。一対のY方向アーム部は、X方向アーム部の両端部に設け、Y方向に延びる。一対のY方向アーム部の先端部分は、チャックシリンダを夫々備える。チャックシリンダの出力軸は、ガイドレールの位置決め孔に対して夫々挿入する。これにより、外押えは、押え枠に対して結合する。
【0003】
縫製設定エリアを変更する場合、縫製装置は、チャックシリンダの出力軸を引き込ませる。外押えは、押え枠に対して分離し、押え枠とは別に移動可能になる。外押えは、X-Y送り駆動機構により、押え枠に対してY方向の奥側に移動する。外押えは、チャックシリンダの出力軸が奥側の位置決め孔に挿入することで、押え枠と結合する。これにより、縫製装置は、縫製設定エリアをY方向に拡大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記縫製装置は、X-Y送り駆動機構に外押えを固定するので、縫製設定エリアを拡大可能な大きさは、外押えのY方向の長さに依存する。従って、被縫製物の縫製範囲が大きい場合、縫製範囲の大きさに応じて外押えのY方向の長さを拡大する必要がある。この場合、縫製装置は、外押えのY方向の長さの拡大に応じた設置面積が必要となり、コストが増大する可能性があった。
【0006】
本発明の目的は、設置面積を拡大することなく縫製領域を拡大できる縫製装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の縫製装置は、釜を有する釜機構と、前記釜機構の上方に在り、上下動可能な針棒を有する針棒機構とを水平方向と平行な第一方向に移動可能な移動機構と、被縫製物を保持する保持機構を前記第一方向及び上下方向に直交する第二方向に送る送り機構とを備えた縫製装置であって、前記保持機構は、前記第一方向における両端部に設け、且つ前記第二方向に複数並んで設けた一対の被係合部を備え、前記送り機構は、前記第二方向に移動可能であって、複数の前記一対の被係合部のうち、一つの前記一対の被係合部と係合可能な一対の係合部を備え、前記一対の係合部を前記一対の被係合部に係合し、前記一対の被係合部に係合した前記一対の係合部を、前記保持機構と共に前記第二方向の一方側に移動し、前記保持機構を前記第二方向の一方側に移動した後、前記一対の被係合部に対する前記一対の係合部の係合を解除し、前記一対の被係合部に対する係合を解除した前記一対の係合部を、前記第二方向の前記一方側とは反対側の他方側に移動し、前記一対の係合部を前記第二方向の他方側に移動した後、前記複数の一対の被係合部のうち、係合を解除した前記一対の被係合部とは異なる他の前記一対の被係合部に前記一対の係合部を係合することを特徴とする。
【0008】
縫製装置において、送り機構は、一対の被係合部に係合した一対の係合部を、保持機構と共に第二方向の一方側に移動する。送り機構は、一対の被係合部に対する係合を解除した一対の係合部を、第二方向の他方側に移動する。送り機構は、一対の係合部を他方側に移動した後、他の一対の被係合部に一対の係合部を係合する。送り機構は、一対の係合部を第二方向に移動するだけでよく、第二方向の長さを拡大する必要がない。故に、縫製装置は、設置面積を拡大することなく縫製領域を拡大できる。
【0009】
請求項2の縫製装置は、前記第一方向、及び前記第二方向に平行に延びるベッド部と、前記第一方向に間隔をあけて設けた一対の脚柱部であって、夫々が前記ベッド部から上方に延びる一対の脚柱部と、前記一対の脚柱部の夫々の間に亘って前記第一方向に延びる梁部と、前記梁部にて前記第一方向に移動可能に、前記針棒機構を支持する頭部とを備え、前記送り機構は、上下方向において前記梁部の下方、且つ、前記第一方向において前記一対の脚柱部の内側で、前記一対の被係合部に前記一対の係合部を係合する。該時、縫製装置は、一対の被係合部に一対の係合部を係合する位置が梁部の下方、且つ、一対の脚柱部の内側に定まるので、送り機構を容易に制御できる。
【0010】
請求項3の縫製装置の前記一対の被係合部は、前記保持機構の前記両端部から上方に向けて突出し、前記一対の係合部の夫々は、前記第一方向に並んで配置した第一挟持部、及び第二挟持部を備え、前記送り機構は、前記一対の被係合部の夫々を、前記第一挟持部と前記第二挟持部とにより、前記第一方向の両側から挟んで挟持する。該時、縫製装置は、第一挟持部と第二挟持部を第一方向に制御すればよいので、一対の被係合部に一対の係合部を迅速に係合できる。また、縫製装置は、第一挟持部と第二挟持部を第一方向に制御すればよいので、送り機構を容易に制御できる。
【0011】
請求項4の縫製装置の前記送り機構は、前記一対の係合部と前記第二方向に並んで設けられ、前記保持機構の前記第二方向への移動を規制する規制部材を備える。該時、縫製装置は、保持機構の移動を第二方向に対して規制するので、送り機構を容易に制御できる。
【0012】
請求項5の縫製装置の前記送り機構は、前記一対の係合部の上下方向の位置を調整可能な固定部材を備える。該時、縫製装置は、保持機構の一対の被係合部の位置に併せて、一対の係合部の位置を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1の領域Aにおける第一挟持部15A、第二挟持部15Bが待機位置にある場合の送り機構25Lの拡大斜視図である。
【
図3】
図1の領域Aにおける第一挟持部15A、第二挟持部15Bが挟持位置にある場合の送り機構25Lの拡大斜視図である。
【
図4】縫製装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】保持機構85が縫製開始位置にある場合の縫製装置1の平面図である。
【
図6】送り機構25R、25Lが、保持機構85と共に限界位置P2に移動した場合の縫製装置1の平面図である。
【
図7】送り機構25R、25Lのみが係合位置P1に移動した場合の縫製装置1の平面図である。
【
図8】送り機構25R、25Lが、保持機構85と共に限界位置P2に移動した場合の縫製装置1の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1~
図4を参照し、本発明の縫製装置1を説明する。縫製装置1は、門型のミシンであり、被縫製物(図示略)である布に対する縫製が可能である。以下説明では、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。
【0015】
<縫製装置1>
図1~
図3に示すように、縫製装置1は、ベッド部21、一対の脚柱部22、梁部23、頭部24、載置台9F、9R、送り機構25等を有する。
【0016】
ベッド部21は、基部21A、枠体21Bを有する。基部21Aは略矩形状である。基部21Aの上面は、水平に延びる平らな保持面21Uを形成する。保持面21Uの右端部近傍に、前後方向に延びる蛇腹21Rが設けてある。保持面21Uの左端部近傍に、前後方向に延びる蛇腹21Lが設けてある。蛇腹21R、21Lは夫々、保持面21Uの前端部と後端部の間に亘って直線状に延びる。蛇腹21R、21Lは、後述の一対の送り機構25が前後方向に往復移動することに応じ、伸縮する。枠体21Bは格子状の構造体であり、基部21Aを下方から支持する。
【0017】
一対の脚柱部22は、脚柱部22R、22Lを有する。脚柱部22R、22Lは、夫々、略四角柱状である。右側の脚柱部22Rは、ベッド部21の右端部の前後方向中央から、上方に延びる。脚柱部22Rは、左右方向において蛇腹21Rよりも右側に位置する。左側の脚柱部22Lは、ベッド部21の左端部の前後方向中央から、上方に延びる。脚柱部22Lは、左右方向において蛇腹21Lよりも左側に位置する。即ち、脚柱部22R、22Lは、左右方向に離隔する。
【0018】
梁部23は、脚柱部22R、22Lの夫々の間に架設する。梁部23は、脚柱部22R、22Lの間に亘って左右方向に延びる。梁部23は、筐体23Uを有する。筐体23Uは、脚柱部22R、22Lの夫々の上端部と後端部の間に亘って延びる。脚柱部22R、22L、筐体23Uで囲まれた空間に、非図示のレールが設けてある。該レールは棒状を呈し、脚柱部22R、22Lの間に架設する。該レールは、後述の頭部24を左右方向に移動可能に支持する。即ち、梁部23は頭部24を左右方向に移動可能に支持する。
図1に示すように、蛇腹23Fは、脚柱部22R、22L、筐体23Uの夫々の前端部、及び、後述の頭部24の左右両端部に亘って設けてある。蛇腹23Fは、頭部24を支持するレールを前側から覆う。蛇腹23Fは、頭部24がレールに沿って左右方向に往復移動することに応じ、伸縮する。
【0019】
頭部24は、梁部23に対して前側に設けてある。頭部24は、左右方向に延びる梁部23内の非図示のレールに沿って、X移動用パルスモータ82(
図4参照)の駆動により、左右方向に移動可能である。
【0020】
頭部24は、針棒機構24A、押え足24B、天秤機構24C、及び糸調子機構24D等を備える。針棒機構24Aは針棒(図示略)を備える。針棒は上下方向に延び、下端部に縫針(図示略)を装着可能である。針棒は、ミシンモータ81(
図4参照)の駆動により上下方向に移動可能である。針棒機構24Aの下方且つベッド部21の内部に、非図示の釜機構が設けてある。該釜機構は、釜を有しており、X移動用パルスモータ82の動力により、頭部24と同期して左右方向に移動可能である。即ち、X移動用パルスモータ82は、釜機構と針棒機構24Aとを水平方向と平行な左右方向に移動可能な移動機構として機能する。釜は、ミシンモータ81(
図4参照)の駆動により駆動可能である。押え足24Bは、針棒の移動に応じて縫針が通過する貫通穴(図示略)を有し、被縫製物を上側から押える。天秤機構24Cは、針棒の上下方向への移動に応じて動作し、上糸を引き上げる。糸調子機構24Dは、上糸の張力を調整する。
【0021】
<保持板8、載置台9F、9R>
保持板8は、ベッド部21の保持面21Uに沿って前後両方向に延びる板であり、後述する保持機構85を前後方向に摺動可能に支持する。保持板8は、左右方向に延びる開口部8Aを備える。開口部8Aは、上下方向に保持板8を貫通する。縫製時、縫針は開口部8Aの内側を上下動する。載置台9F、9Rは、後述する保持機構85を前後方向に摺動可能に支持する。載置台9F、9Rは、前後に対称な構造である。載置台9Fはベッド部21の前側に設け、載置台9Rはベッド部21の後側に設ける。載置台9F、9Rは、枠体41A、及び受け部42Aを備える。枠体41Aは、前後方向に長い格子状の構造体であり、受け部42Aを下方から支持する。
【0022】
受け部42Aは、前後方向に延びる左右一対の延設部96、及び複数のローラ29を備える。一対の延設部96は、蛇腹21R、21Lの内側を通って、載置台9Fの前端から載置台9Rの後端に亘って延びる。一対の延設部96の夫々が対向する面に、一対のガイドレール95が設けてある。一対のガイドレール95は、保持機構85の左右方向の位置を規制し、前後方向に誘導する。一対のガイドレール95は、略長方形状であり、前後方向に延びる板状である。一対のガイドレール95は、一対の延設部96の前端部と後端部との間に亘って設けてある。複数のローラ29は、左右方向に延び、一対のガイドレール95の間を前後方向に並んで配置している。保持機構85は、複数のローラ29上を前後方向に摺動する。
【0023】
<保持機構85>
保持機構85は、被縫製物(図示略)を保持する枠である。保持機構85は、前後方向に延びる一対のガイドレール95に沿って前後方向に移動可能である。即ち、保持機構85は、保持板8、及び複数のローラ29上を移動する。保持機構85の左右方向における両端部は、一対の被係合部11を夫々五つずつ備える。五つの一対の被係合部11は、夫々、前後方向に所定距離L1(
図1参照)ずつ離間して配列する。各被係合部11は、保持機構85の左右方向において両端部から上方に向けて突出する。各被係合部11は、平面視円状である。
【0024】
より詳細に説明すると、五つの一対の被係合部11は、一対の被係合部111R、111Lと一対の被係合部112R、112Lと一対の被係合部113R、113Lと一対の被係合部114R、114Lと一対の被係合部115R、115Lとで構成している。以下、単に、一対の被係合部11と称す場合は、一対の被係合部111R、111L、一対の被係合部112R、112L、一対の被係合部113R、113L、一対の被係合部114R、114L、一対の被係合部115R、115Lのうち何れかを示すものとする。また、右側の被係合部111R~115Rを総称して、被係合部11Rという。左側の被係合部111L~115Lを総称して被係合部11Lという。被係合部111R~115Rは、保持機構85の右側の枠に設けられ、前側から後側に向けて、所定距離L1の間隔で順に並ぶ。被係合部111L~115Lは、保持機構85の左側の枠に設けられ、前側から後側に向けて、所定距離L1の間隔で順に並ぶ。
【0025】
保持機構85は、取っ手85A、一対の位置決め部材18を更に備える。取っ手85Aは、前後方向の両端部且つ左右方向の中央部に各々設けてある(
図5参照)。一対の位置決め部材18(
図7、
図8参照)は、右側の位置決め部材18Rと左側の位置決め部材18Lとを備える。位置決め部材18R、18Lは、左右方向に延びる略直方体状を呈する。位置決め部材18R、18Lは、後述する一対の規制部材16の規制部材16R、規制部材16Lと夫々当接可能である。位置決め部材18Rは、保持機構85の後端部且つ右端部に設けてある。位置決め部材18Rの左端部には、上方に突出する当接部18Aが設けてある。位置決め部材18Lは、保持機構85の後端部且つ左端部に設けてある(
図2参照)。位置決め部材18Lの右端部には、上方に突出する当接部18Aが設けてある。
【0026】
<一対の送り機構25>
図2、
図3を参照して、一対の送り機構25について説明する。一対の送り機構25は、送り機構25R、25Lを備える。送り機構25Rは、ベッド部21の右側に設け、送り機構25Lは、ベッド部21の左側に設けてある。一対の送り機構25は、前後方向に移動可能である。一対の送り機構25は、被縫製物を保持した保持機構85を、針棒機構24Aと釜機構とに対して相対的に前後方向に移動可能である。一対の送り機構25の移動可能な範囲は、一例として、後述の係合位置P1(
図5、
図7参照)と限界位置P2(
図6、
図8参照)との間の範囲である。
【0027】
以下、
図2、
図3を参照して、左側の送り機構25Lについて詳細に説明する。送り機構25R、25Lは、左右対称の構造である。従って、一対の送り機構25のうち、右側の送り機構25Rについての詳細な説明は省略する。なお、送り機構25Rの動作は、送り機構25Lの動作と連動する。
【0028】
送り機構25Lは、連結部52、延接部17、固定部材13、支持部14、一対の係合部15、及び規制部材16を備える。連結部52は、下端部が蛇腹21Lの左右両端部の間を左右方向に延び、下端部から上方に向けて突出している。連結部52の下端部は、蛇腹21Lの下方に設けた非図示のベルトと連結する。該ベルトは、ベッド部21の内部に設けたY移動用パルスモータ83(
図4参照)からの動力により回転し、送り機構25Lを前後方向に移動する。連結部52の上側且つ右側には、延接部17が設けてある。延接部17は、左右方向に長い略直方体状である。延接部17には、四つの螺子穴(図示略)が設けてある。
【0029】
固定部材13は、略長方形状の板であり、延接部17の前側に配置する。固定部材13は、前後方向に貫通し且つ上下方向に長い貫通穴38を四つ備える。固定部材13は、延接部17に対して、四つの貫通穴38を介して四つの螺子39で夫々締結する。四つの螺子39を緩めた状態で、固定部材13は貫通穴38の範囲内で上下方向に移動可能である。固定部材13は、貫通穴38が上下方向に長いので、固定部材13の上下方向の位置を調整可能である。これにより、固定部材13は、後述する一対の係合部15の上下方向の位置を調整可能である。
【0030】
支持部14は、左右方向に長い略直方体形状であり、後側の面が固定部材13に接続している。支持部14の下面は、上方に凹む二つの凹み部を備える。二つの凹み部は夫々、左右方向に亘って延びる。支持部14の下面は、二つの凹み部により下方に向けて凸状となる凸部58Aを形成している。
【0031】
一対の係合部15は、第一挟持部15A、第二挟持部15Bを備える。第一挟持部15A、及び第二挟持部15Bは、略直方体状であり、支持部14の下端部に左右方向に並んで配置している(
図2参照)。第一挟持部15A、第二挟持部15Bの夫々の上面には、下方に凹んだ凹部58Bが形成してある。凹部58Bは左右方向に延びる。凹部58Bは、支持部14の凸部58Aに対して、左右方向に摺動可能に係合する。支持部14は、一対の係合部15を左右方向に摺動可能に支持する。第一挟持部15A及び第二挟持部15Bと、保持機構85の一対の被係合部11との夫々の上下方向の位置は同じである。
【0032】
第一挟持部15Aは、溝部31Aを備える。溝部31Aは左方に凹み、平面視左半円状を呈する。また、第一挟持部15Aの下端部は、下方に向けて開口する。即ち、溝部31Aは、右方且つ下方に開口する。第二挟持部15Bは、溝部31Bを備える。溝部31Bは、右方に凹み、平面視右半円状を呈する。また、第二挟持部15Bの下端部は、下方に向けて開口する。即ち、溝部31Bは、左方且つ下方に開口する。
【0033】
第一挟持部15A、及び第二挟持部15Bは、駆動回路184(
図4参照)による駆動機構184A(
図4参照)の制御により、待機位置(
図2参照)と挟持位置(
図3参照)に移動可能である。駆動機構184Aは、一例として、エアシリンダ、ソレノイド等のアクチュエータである。第一挟持部15A、第二挟持部15Bは、待機位置にある時、保持機構85の各被係合部11に対して左右方向に離間する(
図2参照)。第一挟持部15A、第二挟持部15Bは、挟持位置にある時、互いに近接する(
図3参照)。溝部31Aと溝部31Bは、平面視略円状の空間を形成し、且つ下方に開口する円状の開口部を形成する。第一挟持部15A、及び第二挟持部15Bは、該空間により一対の被係合部11を挟持する。即ち、一対の係合部15は、第一挟持部15Aと第二挟持部15Bとにより、左右方向の両側から挟んで一対の被係合部11の夫々を挟持する。
【0034】
以下、第一挟持部15Aと第二挟持部15Bが、挟持位置に移動して、一対の被係合部11に対して夫々挟持することを、「送り機構25R、25Lは、一対の被係合部11に対して一対の係合部15を係合する」ともいう。また、第一挟持部15Aと第二挟持部15Bが、待機位置に移動して、一対の被係合部11に対して係合を解除することを、「送り機構25R、25Lは、一対の被係合部11に対する一対の係合部15の係合を解除する」ともいう。
【0035】
規制部材16Lは、上下方向に延びる略直方体形状を呈し、延接部17の後方且つ右側の端部に設けてある。即ち、一対の規制部材16は、一対の被係合部11と前後方向に並んで設けてある。規制部材16Lは、下端部に突出部16Aを備える。なお、規制部材16Lは、一例として、エアシリンダ等で構成する。規制部材16Lの突出部16Aは、駆動回路185(
図4参照)で駆動機構185A(
図4参照)を制御することにより、退避位置と突出位置との間を上下方向に移動する。駆動機構185Aは、例えば、エアシリンダ内部の空気圧を調整するための空気圧縮機等で構成している。
【0036】
退避位置にある場合、突出部16Aは、上方に退避し、上下方向において保持機構85の位置決め部材18Lよりも上方に位置する。また、突出位置にある場合、突出部16Aは、下方に突出し、上下方向において位置決め部材18Lの上端よりも下方、且つ左右方向において同じ位置に位置する。即ち、突出位置にある突出部16Aは、保持機構85の位置決め部材18Lの当接部18Aに当接可能である。なお、一対の規制部材16のうち右側の規制部材16Rでは、突出位置にある突出部16Aは、位置決め部材18Rの当接部18Aに当接可能である。即ち、一対の規制部材16の突出部16Aは、一対の位置決め部材18の当接部18Aに夫々当接することで、保持機構85の前後方向への移動を規制する。この場合、保持機構85は、被縫製物に対して縫製を開始可能な縫製開始位置に配置する(
図5参照)。また、一対の位置決め部材18は、一対の係合部15とは、上下方向において離間した位置に配置しているので、一対の送り機構25とは干渉しない位置にある(
図2、
図3参照)。
【0037】
図5、
図7に示すように、送り機構25R、25Lが移動可能な係合位置P1は、第一挟持部15A、第二挟持部15Bが、一対の被係合部11に対して、左右方向に対して並ぶ位置である(
図2参照)。一対の係合部15は、係合位置P1において、五つのうちの一つの一対の被係合部11に係合可能である(
図3参照)。係合位置P1において、送り機構25R、25Lは、上下方向において梁部23の下方、且つ、左右方向において一対の脚柱部22の内側で、一対の被係合部11に一対の係合部15を係合可能である。
図6、
図8に示すように、送り機構25R、25Lが移動可能な限界位置P2は、例えば、送り機構25R、25Lが後方に移動できる後端の位置である。なお、係合位置P1と限界位置P2との距離は、一対の被係合部11が前後方向に並ぶ所定距離L1と等しい。
【0038】
<電気的構成>
図4を参照し、縫製装置1の電気的構成を説明する。縫製装置1は、制御部10、制御部10にデータバス等を介して接続した入力インタフェイス87と出力インタフェイス88、駆動回路181~185等を有する。制御部10は、CPU30、ROM32、RAM33、記憶機器34を含む。CPU30は縫製装置1の動作を統括制御する。ROM32は縫製処理を実行する為のプログラム等を予め記憶する。RAM33は各種処理実行中に生じる各種情報を一時的に記憶する。記憶機器34は不揮発性で、各種設定値を記憶する。
【0039】
各駆動回路181~185は出力インタフェイス88に接続する。駆動回路181はミシンモータ81と接続し、CPU30の制御指令に基づきミシンモータ81を駆動する。駆動回路182はX移動用パルスモータ82と接続し、CPU30の制御指令に基づきX移動用パルスモータ82を駆動する。駆動回路183はY移動用パルスモータ83と接続し、CPU30の制御指令に基づきY移動用パルスモータ83を駆動する。駆動回路184は駆動機構184Aと接続し、CPU30の制御指令に基づき第一挟持部15A、第二挟持部15Bを待機位置と挟持位置に駆動する。駆動回路185は駆動機構185Aと接続し、CPU30の制御指令に基づき規制部材16R、16Lの突出部16Aを突出位置と退避位置に駆動する。
【0040】
エンコーダ191~193、操作部3等は入力インタフェイス87に接続する。エンコーダ191はミシンモータ81に接続し、ミシンモータ81の出力軸(図示略)の回転位置、回転速度を検出する。CPU30はエンコーダ191の検出結果を入力インタフェイス87に入力する。エンコーダ191の検出結果は、針棒と縫針(図示略)の上下方向位置を示す。エンコーダ192はX移動用パルスモータ82に接続し、X移動用パルスモータ82の出力軸の回転方向、回転位置(即ち回転角位相)、回転速度を検出する。CPU30はエンコーダ192の検出結果を入力インタフェイス87に入力する。X移動用パルスモータ82の出力軸の回転角位相は、針棒機構24Aと釜機構(図示略)の左右方向位置を示す。エンコーダ193はY移動用パルスモータ83に接続し、Y移動用パルスモータ83の出力軸の回転方向、回転位置(即ち回転角位相)、回転速度を検出する。CPU30はエンコーダ193の検出結果を入力インタフェイス87に入力する。Y移動用パルスモータ83の出力軸の回転角位相は、送り機構25R、25Lの前後方向位置を示す。操作部3は各種指示を検出し、CPU30は操作部3の検出結果を入力インタフェイス87から取得する。
【0041】
<縫製装置1の動作概要>
図5~
図8を参照して、送り機構25R、25Lによる保持機構85の縫製動作の一例について説明する。縫製開始前、縫製装置1は、送り機構25R、25Lを係合位置P1に配置する(
図5参照)。縫製装置1は、送り機構25R、25Lの第一挟持部15A、第二挟持部15Bを待機位置に移動する(
図2参照)。また、縫製装置1は、規制部材16R、16Lの突出部16Aを突出位置に移動する(
図2参照)。作業者は、保持機構85の取っ手85A等を操作して、一対のガイドレール95に沿って、後方に向けて保持機構85を送る(
図5参照)。
【0042】
保持機構85の後端部に設けた位置決め部材18R、18Lの当接部18Aが、規制部材16R、16Lの突出部16Aに夫々当接する(
図2参照)。これにより、規制部材16R、16Lは、保持機構85の前後方向位置を規制する。保持機構85は、前後左右の位置について縫製開始位置に位置決めした状態となる。保持機構85が縫製開始位置にある場合、一対の係合部15は、一対の被係合部115R、115Lに係合可能な係合位置P1にある(
図5参照)。この場合、第一挟持部15Aと第二挟持部15Bは、一対の被係合部115R、115Lに対して、左右方向に対して並ぶ(
図2参照)。該時、作業者は、操作部3を操作して、縫製動作を開始する。
【0043】
送り機構25R、25Lは、保持機構85が縫製開始位置で位置決めした状態で、第一挟持部15Aと第二挟持部15Bを待機位置から挟持位置に移動する(
図2、
図3参照)。これにより、送り機構25R、25Lは、保持機構85の一対の被係合部115R、115Lに対して、一対の係合部15を係合する(
図3参照)。
【0044】
送り機構25R、25Lが一対の被係合部115R、115Lに対して一対の係合部15を係合した後、規制部材16R、16Lの突出部16Aは、駆動回路185により突出位置から退避位置に移動する。これにより、保持機構85は、前後方向に移動可能となる。一対の係合部15が一対の被係合部115R、115Lに対して係合した状態を維持するので、保持機構85の前後方向の位置は固定している。
【0045】
縫製装置1は、縫製を開始する。縫製装置1は、X移動用パルスモータ82を駆動して頭部24、釜機構(図示略)を左右方向に移動しながら、ミシンモータ81により針棒機構24A、釜(図示略)を駆動して縫製を行う。次いで、縫製装置1は、Y移動用パルスモータ83の駆動により、送り機構25R、25Lを後方へ所定間隔移動する。これにより、送り機構25R、25Lは、一対の被係合部115R、115Lに係合した一対の係合部15を、保持機構85と共に後向に所定間隔の分だけ移動する。なお、所定間隔は、前後方向の所定の間隔であり、所定距離L1よりも短い距離である。縫製装置1は、保持機構85を所定間隔移動した後、左右方向に頭部24を移動しながら縫製を行う。縫製装置1は、上記動作を、送り機構25R、25Lが後方に移動可能な限界位置P2に達するまで繰り返す。
【0046】
送り機構25R、25Lは、保持機構85と共に後方の限界位置P2まで移動後、第一挟持部15A、第二挟持部15Bを待機位置へ移動する。これにより、送り機構25R、25Lは、一対の被係合部115R、115Lに対する一対の係合部15の係合を解除する。送り機構25R、25Lは、一対の係合部15と共に、係合位置P1まで前方へ移動する(
図7参照)。係合位置P1から限界位置P2までの距離は、一対の被係合部11が前後方向に並ぶ所定距離L1と等しい。従って、第一挟持部15A、第二挟持部15Bは、前後方向において、一対の被係合部115R、115Lとは異なる他の一対の被係合部114R、114Lと同じ位置となる(
図7参照)。
【0047】
送り機構25R、25Lは、一対の係合部15と共に前側の係合位置P1に移動後、他の一対の被係合部114R、114Lに対して一対の係合部15を係合する(
図7参照)。送り機構25R、25Lは、一対の被係合部114R、114Lに係合した一対の係合部15を、保持機構85と共に後方に所定間隔の分だけ移動する。縫製装置1は、送り機構25R、25Lを所定間隔の分だけ移動した後、頭部24を左右方向に移動しながら被縫製物に対して縫製を行う。
【0048】
送り機構25R、25Lは、上記に説明した動作を繰り返すことで、送り機構25が後方の限界位置P2に達するまで、縫製領域を拡大しながら被縫製物に対して縫製を行う。即ち、送り機構25R、25Lが後方の限界位置P2に達した場合、縫製領域は後方に所定距離L1の分更に拡大する。なお、一対の被係合部11は、前後に五つ配置してあるので、縫製領域を所定距離L1ずつ拡大する動作は四回行うことができる。即ち、縫製装置1は、前後方向において所定距離L1分の縫製領域の縫製を一回とすると、拡大前の縫製領域を含め計五回の縫製を行うことができる。なお、縫製領域が四回拡大した場合、送り機構25R、25Lは、一対の被係合部111R、111Lに一対の係合部15を係合した状態となる。
【0049】
縫製終了後、縫製装置1は、後方まで移動した保持機構85を前方に移動する。この場合、送り機構25R、25Lは、保持機構85の一対の被係合部111R、111Lに対して、一対の係合部15を係合した状態で、限界位置P2から係合位置P1まで移動する。次いで、送り機構25R、25Lは、一対の被係合部111R、111Lに対する一対の係合部15の係合を解除する。次いで、送り機構25R、25Lは、係合位置P1から限界位置P2まで移動する。送り機構25R、25Lは、後方の限界位置P2に対応する位置にある一対の被係合部112R、112Lに対して、一対の係合部15を係合する。送り機構25R、25Lは、限界位置P2から係合位置P1まで保持機構85と共に前方に移動する。このようにして、縫製装置1は、
図5に示す保持機構85の縫製開始位置に移動するまで、上記に説明した前方への保持機構85の移動動作を繰り返す。
【0050】
<作用、効果>
上記縫製装置1では、送り機構25R、25Lは、例えば、一対の被係合部115R、115Lに係合した一対の係合部15を、保持機構85と共に前後方向の後方に移動する。送り機構25R、25Lは、一対の被係合部115R、115Lに対する係合を解除した一対の係合部15を、前後方向の前方に移動する。送り機構25R、25Lは、一対の係合部15を前方に移動した後、他の一対の被係合部114R、114Lに一対の係合部15を係合する。該時、送り機構25R、25Lは、一対の係合部15を前後方向に移動するだけでよく、前後方向の長さを拡大する必要がない。故に、縫製装置1は、設置面積を拡大することなく縫製領域を拡大できる。
【0051】
縫製領域を拡大する場合、送り機構25R、25Lは、梁部23の下方、且つ、一対の脚柱部22L、22Rの内側で、一対の被係合部11に一対の係合部15を係合する。縫製装置1は、一対の被係合部11一対の係合部15を係合する位置が梁部23の下方、且つ、一対の脚柱部22L、22Rの内側に定まるので、送り機構25R、25Lを容易に制御できる。
【0052】
送り機構25R、25Lは、例えば、一対の被係合部115R、115Lの夫々を、第一挟持部15Aと第二挟持部15Bとで左右方向の両側から挟んで挟持する。故に、縫製装置1は、第一挟持部15Aと第二挟持部15Bを左右方向に制御すればよいので、一対の被係合部115R、115Lに一対の係合部15を迅速に係合できる。また、縫製装置1は、第一挟持部15Aと第二挟持部15Bを左右方向に制御すればよいので、送り機構25R、25Lを容易に制御できる。
【0053】
送り機構25R、25Lは、規制部材16R、16Lにより保持機構85の前後方向への移動を規制する。故に、縫製装置1は、保持機構85の移動を前後方向に対して規制するので、送り機構25R、25Lを容易に制御できる。
【0054】
送り機構25の固定部材13は、一対の係合部15の上下方向の位置を調整可能である。故に、縫製装置1は、保持機構85の一対の被係合部11の位置に併せて、一対の係合部15の位置を調整できる。
【0055】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定するものではなく、種々の変更が可能である。本実施形態では、一対の送り機構25は、係合位置P1と限界位置P2との間を移動したが、係合位置P1と限界位置P2は適宜設定してよい。送り機構25R、25Lは、一対の被係合部11を一対の係合部15により係合した状態で前方から後方に向けて保持機構85を移動したがこれに限らず、後方から前方に向けて移動してもよい。送り機構25R、25Lは、後方に送りながら縫製を行ったがこれに限らない。縫製装置1は、送り機構25R、25Lを、保持機構85と共に前方及び後方に任意に移動しながら縫製を行ってもよい。また、縫製装置1は、後方に保持機構85を搬送しながら縫製を行い、その後、前方に保持機構85を搬送しながら縫製を行ってもよい。送り機構25R、25Lは、一対の係合部15と共に前後方向に移動したが、一対の係合部15を独立して移動できる構成であってもよい。駆動機構184Aは、エアシリンダ、ソレノイド等により構成したが、これに限らず、一対の係合部15を動作可能な構成であればよい。
【0056】
第一挟持部15Aと第二挟持部15Bは、左右方向から一対の被係合部11と係合したがこれに限らず、前後方向又は斜め方向から一対の被係合部11と係合してもよい。この場合、送り機構25R、25Lは、前後方向に移動する際に一対の被係合部11との干渉を避けるため、第一挟持部15Aと第二挟持部15Bとを上下動する機構を備えるとよい。送り機構25R、25Lは、第一挟持部15Aと第二挟持部15Bとで一対の被係合部11を挟持したがこれに限らず、一対の被係合部11と係合可能であればどのような態様であってもよい。
【0057】
保持機構85の一対の被係合部11は五つ設けたが、四つ以下でもよいし、六つ以上設けてもよい。五つの一対の被係合部11は等間隔で前後方向に並んで設けたが、等間隔に並んでいなくてもよい。この場合、送り機構25R、25Lは、一対の被係合部11が並ぶ間隔に応じて、一対の係合部15を移動可能であればよい。位置決め部材18R、18Lは、左右の両側にあったが、これに限らず、左右の何れか一方にあればよい。この場合、例えば、送り機構25Rの規制部材16Rが位置決め部材18Rに対して当接すればよい。位置決め部材18R、18Lはなくてもよい。上記縫製装置1では、作業者が手動で保持機構85を縫製開始位置に移動したがこれに限らない。縫製装置1は、作業者によらず自動で保持機構85を縫製開始位置まで移動する構成であってもよい。この場合、縫製装置1は、例えば、位置検出センサ等を用いて、保持機構85の縫製開始位置を特定すればよい。
【0058】
固定部材13は、上下方向に長い貫通穴38の範囲に応じて、送り機構25R、25Lの位置を調整可能であったが、位置調整する為の機構はこれに限らない。例えば、固定部材13の貫通穴38は、左右方向に長い形状でもよい。この場合、送り機構25R、25Lは、左右方向にも調整が可能である。また、固定部材13で位置調整をせずに、例えば、連結部52の高さを調整可能する機構を設ける等して位置調整を行ってもよい。このような場合でも、縫製装置1は、様々な寸法の保持機構85を搬送可能である。
【0059】
<その他>
左右方向は、本発明の「第一方向」の一例である。前後方向は、本発明の「第二方向」の一例である。後方は、本発明の「第二方向の一方側」の一例である。前方は、本発明の「第二方向の他方側」の一例である。
【符号の説明】
【0060】
1 :縫製装置
11、111R、111L、112R、112L、113R、113L、114R、114R、115R、115L :被係合部
13 :固定部材
15 :係合部
15A :第一挟持部
15B :第二挟持部
16R、16L :規制部材
21 :ベッド部
22、22R、22L :脚柱部
23 :梁部
24 :頭部
25、25R、25L :送り機構
85 :保持機構