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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20231121BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B60C13/00 F
B60C15/06 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019157040
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021031033
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 由羽馬
(72)【発明者】
【氏名】國安 恭彰
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-025280(JP,A)
【文献】特開2001-071715(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131072(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
トロイド状のカーカスを有し、
前記カーカスは、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部に至る本体部と、前記本体部に連なってビードコアで折り返される折返し部とを含むカーカスプライを含み、
前記ビード部には、前記本体部と前記折返し部との間に配された第1エーペックスゴムと、前記折返し部のタイヤ軸方向の外側でタイヤ半径方向に延びる第2エーペックスゴムとが設けられ、
前記サイドウォール部には、前記カーカスのタイヤ軸方向の外側でタイヤ半径方向に延びるコード補強層が設けられ、
前記コード補強層の内端は、前記第2エーペックスゴムのタイヤ半径方向の外端からタイヤ半径方向の外側へタイヤ断面高さの5%以上離れて位置し、
前記コード補強層の内端は、前記折返し部の外端よりもタイヤ半径方向の内側に位置する、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつトレッド部の内方に配されたベルト層を有し、
前記コード補強層の外端は、前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端とタイヤ最大幅位置との間のタイヤ半径方向の中点よりもタイヤ半径方向外側に位置する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端と前記コード補強層の外端との間のタイヤ半径方向の距離は、タイヤ断面高さの5%~35%である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記コード補強層のタイヤ半径方向の長さは、タイヤ断面高さの20%~60%である、請求項1ないし3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記コード補強層は、補強コードを含み、
前記補強コードのタイヤ周方向に対する角度は、70~90度である、請求項1ないし4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記コード補強層の厚さは、タイヤ断面高さの1%~5%である、請求項1ないし5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、両側のビードの間に架け渡されたカーカスと、前記ビードに位置するエイペックスと、タイヤ半径方向に延びる補強層とを含む空気入りタイヤが記載されている。前記カーカスは、主部と折り返し部とからなるカーカスプライとして形成されている。前記エイペックスは、前記主部と前記折り返し部との間に配されている。前記補強層は、前記主部と前記エイペックスとの間に配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6281976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気入りタイヤでは、長距離走行時の耐久性能(以下、単に「耐久性能」という場合がある。)を高めることについて改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、耐久性能を向上することができる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気入りタイヤであって、トロイド状のカーカスを有し、前記カーカスは、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部に至る本体部と、前記本体部に連なってビードコアで折り返される折返し部とを含むカーカスプライを含み、前記ビード部には、前記本体部と前記折返し部との間に配された第1エーペックスゴムと、前記折返し部のタイヤ軸方向の外側でタイヤ半径方向に延びる第2エーペックスゴムとが設けられ、前記サイドウォール部には、前記カーカスのタイヤ軸方向の外側でタイヤ半径方向に延びるコード補強層が設けられ、前記コード補強層の内端は、前記第2エーペックスゴムのタイヤ半径方向の外端からタイヤ半径方向の外側へタイヤ断面高さの5%以上離れて位置する。
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつトレッド部の内方に配されたベルト層を有し、前記コード補強層の外端は、前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端とタイヤ最大幅位置との間のタイヤ半径方向の中点よりもタイヤ半径方向外側に位置する、のが望ましい。
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端と前記コード補強層の外端との間のタイヤ半径方向の距離が、タイヤ断面高さの5%~35%である、のが望ましい。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記コード補強層のタイヤ半径方向の長さが、タイヤ断面高さの20%~60%である、のが望ましい。
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記コード補強層が、補強コードを含み、前記補強コードのタイヤ周方向に対する角度は、70~90度である、のが望ましい。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記コード補強層の厚さが、タイヤ断面高さの1%~5%である、のが望ましい。
【0012】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記コード補強層の内端が、前記折返し部の外端よりもタイヤ半径方向の内側に位置する、のが望ましい。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記コード補強層の内端が、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向の内側に位置する、のが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空気入りタイヤは、ビード部に、カーカスの本体部と前記カーカスの折返し部との間に配された第1エーペックスゴムと、前記折返し部のタイヤ軸方向の外側でタイヤ半径方向に延びる第2エーペックスゴムとが設けられている。換言すると、前記折返し部は、前記第1エーペックスゴムと前記第2エーペックスゴムとに挟まれて固定される。これにより、破断やコードルース等の発生が抑制されるため、耐久性能が高められる。また、サイドウォール部には、前記カーカスのタイヤ軸方向の外側でタイヤ半径方向に延びるコード補強層が設けられている。コード補強層は、サイドウォール部の剛性を高めるとともに、カット傷による前記カーカスの損傷を抑制する。
【0015】
前記コード補強層は、サイドウォール部の剛性を高めるという利点があるが、前記第2エーペックスゴムと重なると、これらが剥離しやすくなる。このような剥離が生じると、空気入りタイヤの剛性が低下するという相反がある。本発明では、前記コード補強層の内端を、前記第2エーペックスゴムのタイヤ半径方向の外端からタイヤ半径方向の外側へタイヤ断面高さの5%以上離れて位置させている。これにより、前記コード補強層と前記第2エーペックスゴムとの剥離が抑制され、この剥離による剛性低下が防止される。したがって本発明の空気入りタイヤは、優れた耐久性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図である。
図2図1の空気入りタイヤの内部構造の展開図である。
図3図1の空気入りタイヤの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)1の正規状態のタイヤ回転軸(図示省略)を含むタイヤ子午線断面図である。図1には、好ましい態様として、小型トラック用のタイヤ1が示される。但し、本発明は、例えば、乗用車用や重荷重用等のタイヤ1にも採用され得る。
【0018】
前記「正規状態」とは、タイヤ1が正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0019】
「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim"である。
【0020】
「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE"である。
【0021】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2と、トレッド部2からタイヤ半径方向内側に延びるサイドウォール部3と、サイドウォール部3のタイヤ半径方向の内側に連なるビード部4とを含んでいる。ビード部4には、例えば、ビードコア5が埋設されている。本実施形態のビードコア5には、公知の態様が適宜採用される。
【0022】
タイヤ1は、例えば、サイドウォール部3の外面3aをなすサイドウォールゴム3Gと、ビード部4の外面4aをなすクリンチゴム4Gとを含んでいる。本実施形態のサイドウォールゴム3G及びクリンチゴム4Gには、それそれ公知の態様が適宜採用される。
【0023】
タイヤ1は、本実施形態では、トロイド状のカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内方に配されたベルト層7と、サイドウォール部3に配されたコード補強層8と、ビード部4に配されたビードエーペックスゴム9とを含んでいる。
【0024】
本実施形態のカーカス6は、1枚のカーカスプライ6Aで構成されている。カーカス6は、例えば、複数枚のカーカスプライで構成されても良い。
【0025】
カーカスプライ6Aは、本実施形態では、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。本体部6aは、例えば、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5まで延びている。折返し部6bは、本体部6aに連なってビードコア5の回りをタイヤ軸方向の内側から外側に折り返されている。
【0026】
折返し部6bは、例えば、ビードコア5のタイヤ軸方向の外端5eから、タイヤ半径方向外側へ向かってタイヤ軸方向内側へ傾斜する内側傾斜部6iと、内側傾斜部6iに連なりタイヤ半径方向外側へ向かってタイヤ軸方向外側へ傾斜する外側傾斜部6eとを含んでいる。このような折返し部6bは、タイヤ1の転動による歪の集中が抑制される。なお、折返し部6bは、このような態様に限定されるものではない。
【0027】
折返し部6bの外端6kは、本実施形態では、タイヤ最大幅位置M近傍に設けられている。このような折返し部6bは、タイヤ1のサイドウォール部3の剛性を高めて、耐久性能を向上する。タイヤ1の質量の過度の増加を抑制するため、外端6kとタイヤ最大幅位置Mとのタイヤ半径方向の距離Laは、タイヤ断面高さHの5%以下が望ましい。
【0028】
前記「タイヤ最大幅位置M」とは、タイヤ子午線断面おいて、サイドウォール部3の基準面3sがタイヤ軸方向の最も外側に張出す点である。基準面3sは、装飾用のセレーション、標章表示用のリブ、保護用のプロテクトリブなどの部分的な凹凸を含まないサイドウォール部3の外面3aである。また「タイヤ断面高さH」とは、ビードベースラインBLからタイヤ半径方向の最外側位置までのタイヤ半径方向の距離である。前記「ビードベースラインBL」とは、リム径位置を通るタイヤ軸方向線である。
【0029】
図2は、タイヤ1の内部構造の展開図である。図2に示されるように、カーカスプライ6Aは、例えば、カーカスコード6cをトッピングゴム6dで被覆して形成されている。本実施形態のカーカスコード6cは、例えば、タイヤ周方向に対して75~90度の角度θ1で傾けて配されている。カーカスコード6cには、例えば、スチール等の金属繊維コードや、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどの有機繊維コードが採用される。
【0030】
ベルト層7は、少なくとも1枚、本実施形態では、2枚のベルトプライで構成されている。本実施形態のベルト層7は、内側ベルトプライ7Aと、内側ベルトプライ7Aのタイヤ半径方向外側に配された外側ベルトプライ7Bとを含んでいる。各ベルトプライ7A、7Bは、例えば、タイヤ赤道Cに対して10~35°の角度θ2で傾けて配列したベルトコード7cを含んでいる。内側ベルトプライ7Aのベルトコード7cと外側ベルトプライ7Bのベルトコード7cとは、互いに交差する向きに重ねられている。ベルトコード7cには、例えば、スチールコードが好適に採用されるが、アラミドやレーヨン等の高弾性の有機繊維コードが採用されても良い。
【0031】
図1に示されるように、内側ベルトプライ7Aは、本実施形態では、外側ベルトプライ7Bよりも幅広に形成されている。内側ベルトプライ7Aのタイヤ軸方向の幅Waは、トレッド幅TWの80%~95%が望ましい。なお、内側ベルトプライ7Aは、例えば、外側ベルトプライ7Bよりも幅狭であっても良い。
【0032】
前記「トレッド幅TW」とは、トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離を意味する。前記「トレッド端Te」とは、前記正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷しかつキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置を意味する。
【0033】
前記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。
【0034】
ビードエーペックスゴム9は、例えば、本体部6aと折返し部6bとの間に配された第1エーペックスゴム10と、折返し部6bのタイヤ軸方向の外側でタイヤ半径方向に延びる第2エーペックスゴム11とを含んでいる。これにより、折返し部6bは、第1エーペックスゴム10と第2エーペックスゴム11とに挟まれて固定されるので、破断やコードルース等の発生が抑制される。したがって、本実施形態のタイヤ1は、高い耐久性能を有する。
【0035】
コード補強層8は、例えば、カーカス6のタイヤ軸方向外側でタイヤ半径方向に延びている。コード補強層8は、サイドウォール部3の剛性を高めるとともに、カット傷によるカーカス6の損傷を抑制する。
【0036】
図3は、図1のタイヤ1の拡大図である。図3に示されるように、コード補強層8の内端8iは、第2エーペックスゴム11のタイヤ半径方向の外端11eからタイヤ半径方向の外側へタイヤ断面高さH(図1に示す)の5%以上離れて位置している。これにより、コード補強層8と第2エーペックスゴム11とが接触することによる剥離が抑制されるため、この剥離によるタイヤ1の剛性低下が防止される。
【0037】
コード補強層8の内端8iと第2エーペックスゴム11の外端11eとの間のタイヤ半径方向の距離L1が大きいと、サイドウォール部3及びビード部4の剛性が小さくなるおそれがある。このため、前記距離L1は、タイヤ断面高さHの10%以下が望ましい。
【0038】
コード補強層8の内端8iは、タイヤ最大幅位置Mよりもタイヤ半径方向の内側に位置するのが望ましい。タイヤ最大幅位置Mは、走行時の撓みが相対的に大きい箇所である。このタイヤ最大幅位置Mを覆うようにコード補強層8を配することで、サイドウォールゴム3Gの変形による発熱が抑制されるので、耐久性能がさらに向上する。
【0039】
上述の作用を効果的に発揮させるために、コード補強層8の内端8iとタイヤ最大幅位置Mとの間のタイヤ半径方向の距離L2は、タイヤ断面高さHの10%~20%が望ましい。
【0040】
コード補強層8の外端8eは、本実施形態では、ベルト層7のタイヤ軸方向の外端7eとタイヤ最大幅位置Mとの間のタイヤ半径方向の中点Pよりもタイヤ半径方向外側に位置している。これにより、カット傷によるカーカス6の損傷を効果的に抑制することができる。
【0041】
カーカス6は、サイドウォール部3側からトレッド部2側に向かってサイドウォール部3の外面3aから遠ざかるように配される。換言すると、カーカス6は、ベルト層7に近づくほどカット傷による損傷の可能性が小さくなる。このため、耐カット性能の向上を図りつつ、タイヤ1の質量の増加を抑制するために、ベルト層7の外端7eとコード補強層8の外端8eとの間のタイヤ半径方向の距離L3は、タイヤ断面高さHの5%以上が望ましく、10%以上がさらに望ましく、35%以下が望ましく、30%以下がさらに望ましい。
【0042】
上述の作用をさらに効果的に発揮させるために、コード補強層8のタイヤ半径方向の長さLbは、タイヤ断面高さHの20%以上が望ましく、30%以上がさらに望ましい。また、コード補強層8の長さLbは、タイヤ断面高さHの60%以下が望ましく、50%以下がさらに望ましい。同様の観点より、コード補強層8の厚さd1は、タイヤ断面高さHの1%~5%であるのが望ましい。
【0043】
図2に示されるように、コード補強層8は、複数の補強コード8aを補強ゴム8bで被覆したプライで形成されている。各補強コード8aのタイヤ周方向に対する角度θ3は、70~90度であるのが望ましい。このようなコード補強層8は、サイドウォール部3の剛性を効果的に高める。
【0044】
補強コード8aの配設密度、即ち、コード補強層8のプライ幅50mmあたりの補強コード8aの打ち込み本数であるエンズは、30~80(本/50mm)が好ましい。このようなコード補強層8は、タイヤ1の質量の増加や乗り心地性能の低下を抑制するとともに、耐久性能を高める。
【0045】
補強コード8aは、例えば、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維が採用しうるが、好ましくは、アラミド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、カーボン、ガラス等のハイモジュラスの繊維コードが採用される。
【0046】
補強ゴム8bは、その複素弾性率E*1が、例えば、2~8MPaであるのが望ましい。このような補強ゴム8bは、サイドウォール部3の剛性を高めるとともに、乗り心地性能を高く維持する。前記「複素弾性率」は、本明細書では、JIS-K6394の規定に準じて、次に示される条件で(株)岩本製作所製の「粘弾性スペクトロメータ」を用いて測定した値である。
初期歪:10%、
動歪の振幅:±0.5%、
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0047】
図3に示されるように、第1エーペックスゴム10は、例えば、ビードコア5の外側面5aからタイヤ半径方向の外側へ先細状で延びている。本実施形態の第1エーペックスゴム10は、断面略三角形状に形成されている。
【0048】
特に限定されるものではないが、第1エーペックスゴム10のタイヤ半径方向の長さLcは、タイヤ断面高さHの5%~15%が望ましい。
【0049】
第2エーペックスゴム11は、例えば、折返し部6bの内側傾斜部6iと外側傾斜部6eとに沿って延びており、タイヤ軸方向内側に向かって凸の円弧状に形成されている。このような第2エーペックスゴム11は、ビード部4の縦剛性を高めてビード部4の変形を抑制するので、耐久性能を向上する。
【0050】
第2エーペックスゴム11は、本実施形態では、その内端11iからタイヤ半径方向外側に向かってゴム厚さが漸増するとともに、その外端11eからタイヤ半径方向内側に向かってゴム厚さが漸増している。このような第2エーペックスゴム11は、ビード部4のタイヤ半径方向での剛性の変化を滑らかにして、その剛性の段差を小さくする。
【0051】
第2エーペックスゴム11の内端11iは、例えば、ビードコア5の近傍、本実施形態では、ビードコア5の外側面5aよりもタイヤ半径方向の内側に位置している。このような第2エーペックスゴム11は、さらにビード部4の変形を抑制する。
【0052】
特に限定されるものではないが、第2エーペックスゴム11の長さLdは、タイヤ断面高さHの20%~40%が望ましい。
【0053】
第1エーペックスゴム10の複素弾性率E*2は、クリンチゴム4Gの複素弾性率E*aよりも大きいのが望ましく、例えば、35~70MPaであるのがより望ましく、40~60MPaであるのが一層望ましい。第2エーペックスゴム11の複素弾性率E*3は、第1エーペックスゴム10の複素弾性率E*2よりも小さいのが望ましく、例えば、30~50MPaである。第2エーペックスゴム11の複素弾性率E*3は、クリンチゴム4Gの複素弾性率E*aよりも小さいのが望ましい。
【0054】
本実施形態のビード部4には、リムズレ防止用のチェーファゴム20が、さらに配されている。チェーファゴム20は、例えば厚さ(図示省略)が0.5~1.5mm程度の薄いシート状で形成される。チェーファゴム20は、例えば、複素弾性率E*4が4~10MPaの耐摩耗性に優れる硬質のゴムから形成される。チェーファゴム20は、ゴムのみで形成することもできるが、ゴム中に例えばキャンバス布や有機繊維のコード配列体を埋設して補強し、耐摩耗性をより高めることもできる。
【0055】
チェーファゴム20は、本実施形態では、基部20Aと外片部20Bと内片部20Cとを含んで形成されている。基部20Aは、本実施形態では、リムのリムシート面(図示省略)と接触しタイヤ軸方向に延びている。外片部20Bは、本実施形態では、基部20Aのタイヤ軸方向外端に連なってタイヤ半径方向外側に延び、折返し部6bと第2エーペックスゴム11との間に挟まれて終端している。内片部20Cは、本実施形態では、基部20Aのタイヤ軸方向内端に連なりタイヤ内腔面1aに沿ってタイヤ半径方向外側に延びて終端している。
【0056】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0057】
図1の基本構造を有する空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤの耐久性能、及び、耐カット性能がテストされた。各試供タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
タイヤサイズ:205/70R15
リム:15×6.0J
内圧:250kPa
補強ゴムの複素弾性率E*1:1.4MPa
第1エーペックスゴムの複素弾性率E*2:70MPa
第2エーペックスゴムの複素弾性率E*3:30MPa
【0058】
<耐久性能・耐カット性能>
試供タイヤが下記車両の全輪に装着された。そして、テストドライバーが前記車両を乾燥アスファルトのテストコース及び砂利路を含むダート路面のテストコースを走行させた。耐久性能は、テストドライバーの官能により、走行終了時まで安定して走行できたか否かで評価された。耐カット性能は、テストドライバーの目視により、走行終了時のサイドウォール部のカット傷の発生状況で評価された。結果は、ともに比較例1を100とする評点で示され、数値の大きい方が良好である。
使用車両:小型トラック
速度:80km/h
乾燥アスファルトのテストコースの走行距離:15000km/h
ダート路面のテストコースの走行距離:15000km/h
【0059】
【表1】
【0060】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤよりも耐久性能及び耐カット性能が優れていることが確認できる。また、実施例6及び7のタイヤは、実施例1のタイヤよりもタイヤ質量が大きく、また、製造コストが高価であった。
【符号の説明】
【0061】
1 空気入りタイヤ
3 サイドウォール部
4 ビード部
6 カーカス
6a 本体部
6b 折返し部
8 コード補強層
8i コード補強層の内端
10 第1エーペックスゴム
11 第2エーペックスゴム
11e 第2エーペックスゴムの外端
H タイヤ断面高さ
図1
図2
図3