(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】帯状ゴム部材の供給装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/60 20060101AFI20231121BHJP
B29D 30/30 20060101ALI20231121BHJP
B29D 30/72 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B29D30/60
B29D30/30
B29D30/72
(21)【出願番号】P 2019164532
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 和記
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 亮佑
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-239981(JP,A)
【文献】特開2002-052598(JP,A)
【文献】特開昭58-203034(JP,A)
【文献】特開2003-181949(JP,A)
【文献】特開2003-040408(JP,A)
【文献】特開平04-080117(JP,A)
【文献】特開2009-108193(JP,A)
【文献】国際公開第2006/043395(WO,A1)
【文献】特開2004-216726(JP,A)
【文献】特開平07-144737(JP,A)
【文献】特表2012-528058(JP,A)
【文献】国際公開第2008/051102(WO,A1)
【文献】米国特許第05213202(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/02
B29D 30/30
B29D 30/60
B29D 30/72
B65G 13/00
B65G 39/00
B65H 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のタイヤ用ゴム部材を供給する装置であって、
第一回転軸周りに回転する
複数の第一ローラを備え、
それぞれの第一ローラの軸方向幅が半径方向外向きに漸減
し、
複数の前記第一ローラが前記第一回転軸の軸線に沿って並べられている、タイヤ用ゴム部材の供給装置。
【請求項2】
前記第一ローラが、半径方向外向きに軸方向外側から内側に向かって傾斜する一対の第一傾斜面を備える、請求項1に記載のタイヤ用ゴム部材の供給装置。
【請求項3】
前記第一ローラが、一対の前記第一傾斜面の間で、前記第一回転軸に平行に延在する第一外周面を備える、請求項2に記載のタイヤ用ゴム部材の供給装置。
【請求項4】
前記第一外周面の軸方向幅が0.5mm以上5.0mm以下である請求項3に記載のタイヤ用ゴム部材の供給装置。
【請求項5】
前記第一傾斜面の半径方向に対する傾斜角度が45°以下である請求項2から4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム部材の供給装置。
【請求項6】
前記第一ローラの外径が20mm以上100mm以下である請求項1から5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム部材の供給装置。
【請求項7】
前記第一回転軸の軸線方向に交差する第二回転軸周りに回転する第二ローラを備えており、
前記第一ローラが前記第二ローラより上方に突出する第一姿勢と、前記二ローラが前記第一ローラより上方に突出する第二姿勢とに姿勢変化可能である、請求項1から6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム部材の供給装置。
【請求項8】
前記第二ローラの軸方向幅が半径方向外向きに漸減する、請求項7に記載のタイヤ用ゴム部材の供給装置。
【請求項9】
(A)帯状のタイヤ用ゴム部材を供給装置でドラムに供給する工程
及び
(B)前記ゴム部材を前記ドラムに巻回する工程
を含み、
前記供給装置が、第一回転軸周りに回転する
複数の第一ローラを備え、
それぞれの第一ローラの軸方向幅が半径方向外向きに漸減
し、
複数の前記第一ローラが前記第一回転軸の軸線に沿って並べられている、タイヤの製造方法。
【請求項10】
前記供給装置が、
前記第一回転軸の軸線方向に交差する第二回転軸周りに回転する第二ローラを備え、
前記第一ローラが前記第二ローラより上方に突出する第一姿勢と、前記二ローラが前記第一ローラより上方に突出する第二姿勢とに姿勢変化可能である、請求項9に記載のタイヤの製造方法。
【請求項11】
前記ゴム部材のタックが5.0(N)以上である、請求項9又は10に記載のタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状のゴム部材の供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造方法では、帯状のゴム部材が準備される。このゴム部材がドラムに供給されて巻回される。この巻回されたゴム部材と他の部材とが組み合わされてローカバーが形成される。このローカバーが加熱及び加圧され、このローカバーからタイヤが得られる。
【0003】
ゴム部材をドラムに供給する供給装置として、円筒状のローラが並べられたローラコンベアや、フリーボールベアリングが並べられたボールコンベア等が用いられる。この様なボールコンベアが、特許文献1(特開2018-114643号公報)や特許文献2(特開2018-24149号公報)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-114643号公報
【文献】特開2018-24149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に未加硫のゴム部材は柔らかく変形し易い。帯状にされたゴム部材は、延び易く変形し易い。未加硫のゴム部材は、密着性が高い。この様なゴム部材は、ローラコンベアやボールコンベアにも密着することがある。この密着は、ゴム部材の搬送を阻害する。ゴム部材の変形や位置ずれを生じさせる。更に、近年、タイヤ性能の向上等を目的に、従来より密着性の高いゴム部材が用いられる。この様なゴム部材は、更に、ローラコンベアやボールコンベアと密着し易い。この様なゴム部材は、更に変形や位置ずれを生じ易い。この様な変形や位置ずれは、タイヤの成形精度を損なう。
【0006】
本発明の目的は、タイヤの成形精度の向上に寄与するタイヤ用ゴム部材の供給装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るタイヤ用ゴム部材の供給装置は、帯状のタイヤ用ゴム部材を供給する。この装置は、第一回転軸周りに回転する第一ローラを備える。前記第一ローラの軸方向幅は、半径方向外向きに漸減する。
【0008】
好ましくは、前記第一ローラは、半径方向外向きに軸方向外側から内側に向かって傾斜する一対の第一傾斜面を備える。
【0009】
好ましくは、前記第一ローラは、一対の前記第一傾斜面の間で、前記第一回転軸に平行に延在する第一外周面を備える。
【0010】
好ましくは、前記第一外周面の軸方向幅は0.5mm以上5.0mm以下である。
【0011】
好ましくは、前記第一傾斜面の半径方向に対する傾斜角度は、45°以下である。
【0012】
好ましくは、前記第一ローラの外径は、20mm以上100mm以下である。
【0013】
好ましくは、この供給装置は、前記第一回転軸の軸線方向に交差する第二回転軸周りに回転する第二ローラを備える。この供給装置は、前記第一ローラが前記第二ローラより上方に突出する第一姿勢と、前記二ローラが前記第一ローラより上方に突出する第二姿勢とに姿勢変化可能である。
【0014】
好ましくは、前記第二ローラの軸方向幅は、半径方向外向きに漸減する。
【0015】
本発明に係るタイヤの製造方法は、
(A)帯状のタイヤ用ゴム部材を供給装置でドラムに供給する工程
及び
(B)前記ゴム部材を前記ドラムに巻回する工程
を含む。
前記供給装置は、第一回転軸周りに回転する第一ローラを備える。前記第一ローラの軸方向幅は半径方向外向きに漸減する。
【0016】
このタイヤの製造方法では、好ましくは、前記供給装置は、前記第一回転軸の軸線方向に交差する第二回転軸周りに回転する第二ローラを備える。この供給装置は、前記第一ローラが前記第二ローラより上方に突出する第一姿勢と、前記二ローラが前記第一ローラより上方に突出する第二姿勢とに姿勢変化可能である。
【0017】
このタイヤの製造方法では、好ましくは、前記ゴム部材のタックは5.0(N)以上である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る供給装置では、第一ローラの軸方向幅は半径方向外向きに漸減する。この供給装置では、ゴム部材と第一ローラとの当接面積が小さい。この供給装置は、ゴム部材と第一ローラとの密着を抑制する。供給装置は、密着を抑制することでゴム部材の搬送及び供給を容易にできる。これにより、供給装置は、タイヤの成形精度の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る供給装置を備える、タイヤの製造設備が示された概念図である。
【
図2】
図2は、
図1の供給装置の一部が示された平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の線分III-IIIに沿った断面図である。
【
図6】
図6は、
図1の供給装置の使用状態の一部が示された平面図である。
【
図7】
図7は、
図6の線分VII-VIIに沿った断面図である。
【
図8】
図8は、
図6の供給装置の他の使用状態の一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0021】
図1に示された製造設備2は、コンベア4、コンベア6、切断装置8、ドラム10及び供給装置12を備える。
図1において、左右方向右向きが製造設備2の前後方向前向きであり、上下方向上向きが左右方向左向きである。
図1には、製造設備2と共に、ゴム部材としてのトレッド部材R1とゴム成形体R2とが示されている。
【0022】
トレッド部材R1は、未加硫のゴム組成物からなる。トレッド部材R1は、帯状の形状を備えている。このトレッド部材R1は、ゴム成形体R2が所定の長さに切断されて得られる。なお、ここでは、ゴム部材として、タイヤのトレッドを形成するトレッド部材R1を例に説明がされるが、ゴム部材はこれに限定されない。ゴム部材は、タイヤの一部を形成する部材であればよい。ゴム部材は、例えば、サイドウォール部材等であってもよい。また、ゴム部材は、コードを含むカーカス部材やベルト部材であってもよい。
【0023】
コンベア4は、ゴム成形体R2を切断装置8に向かって搬送する搬送装置である。コンベア4は、例えば、ローラコンベアである。コンベア4は、ベルトコンベアであってもよい。コンベア6は、トレッド部材R1を供給装置12に向かって搬送する搬送装置である。コンベア6は、例えば、ローラコンベアである。コンベア6は、ベルトコンベアであってもよい。
【0024】
切断装置8は、ゴム成形体R2を所定の長さで裁断する装置である。この裁断によって、ゴム成形体R2からトレッド部材R1が得られる。
【0025】
ドラム10は、円筒形状を備えている。ドラム10は、その軸線周りに回転可能である。このドラム10は、外周面10aを備える。図示されないが、製造設備2は、ドラム10を回転させる駆動装置を備える。
【0026】
図2及び
図3には、供給装置12の一部のユニットが示されている。
図2において、左右方向右向きが供給装置12の前後方向前向きであり、上下方向上向きが左右方向左向きである。この供給装置12では、このユニットが前後方向に複数並べられている。
【0027】
供給装置12は、ドラム10にトレッド部材R1を供給する装置である。供給装置12は、ドラム10に向かってトレッド部材R1を搬送する機能と、左右方向において、ドラム10への巻回位置にトレッド部材R1の位置を合わせる機能とを備える。
【0028】
図2及び
図3に示される様に、供給装置12は、架台14、ベースプレート16、複数の回転軸18、複数のローラ20、昇降プレート22、昇降機24、複数の回転軸26及び複数のローラ28を備える。ここでは、ローラ20を本発明に係る第一ローラとして、ローラ28を第二ローラとして説明がされる。
【0029】
架台14にベースプレート16が支持されている。それぞれの回転軸18は、ベースプレート16に支持されている。回転軸18は、左右方向に延びている。回転軸18は、前後方向に一定の間隔で並べられている。それぞれのローラ20が回転軸18に支持されている。ローラ20は、回転軸18周りに回転可能である。
【0030】
複数のローラ20は、回転軸18によって左右方向に並べられて、ローラ20の列を形成している。このローラ20の列は、前後方向に一定の間隔で並べられている。
【0031】
昇降プレート22は、昇降機24に支持されている。昇降機24は、昇降プレート22を昇降できればよく特に限定されないが、例えば、エアーシリンダである。この昇降機24は架台14に支持されている。この昇降機24によって、昇降プレート22は、ベースプレート16に対して、上下方向に移動可能である。
【0032】
それぞれの回転軸26は、昇降プレート22に支持されている。回転軸26は前後方向に延びている。複数の回転軸26は左右方向に並べられて、回転軸26の列を形成している。この回転軸26の列が、前後方向に一定の間隔で並べられている。
【0033】
それぞれのローラ28は回転軸26に支持されている。ローラ28は、回転軸26周りに回転可能である。複数のローラ28は、回転軸26によって左右方向に並べられて、ローラ28の列を形成している。このローラ28の列が、前後方向に一定の間隔で並べられている。このローラ28の列とローラ20の列とが、前後方向において交互に配置されている。
【0034】
図4には、ローラ20の断面が示されている。このローラ20に、回転軸18が通されている。一点鎖線L1は、回転軸18の軸線を表している。
図4に示される様に、ローラ20の軸方向幅は、半径方向外向きに漸減している。このローラ20は、外周面20a及び一対の傾斜面20bを備えてる。外周面20aは、軸線L1に平行に延在する。それぞれの傾斜面20bは、半径方向外向きに軸方向外側から内側に向かって傾斜して延在する。傾斜面20bは、その半径方向外端で外周面20aに連続している。
【0035】
図4の両矢印W1は、外周面20aの軸方向幅を表している。軸方向幅W1は、外周面20aの軸方向一端から他端までの距離として測定される。両矢印D1は、ローラ20の外径を表している。外径D1は、ローラ20の半径方向外端の直径として測定される。両矢印θ1は、傾斜面20bの傾斜角度を表している。この傾斜角度θ1は、外周面20aの軸方向端において、半径方向に延びる直線と傾斜面20bとのなす角度として測定される。
【0036】
図5には、ローラ28の断面が示されている。このローラ28に、回転軸26が通されている。一点鎖線L2は、回転軸26の軸線を表している。
図5に示される様に、ローラ28の軸方向幅は、半径方向外向きに漸減している。このローラ28は、外周面28a及び一対の傾斜面28bを備えてる。外周面28aは、軸線L2に平行に延在する。それぞれの傾斜面28bは、半径方向外向きに軸方向外側から内側に向かって傾斜して延在する。傾斜面28bは、その半径方向外端で外周面28aに連続している。
【0037】
図5の両矢印W2は、外周面28aの軸方向幅を表している。軸方向幅W2は、外周面28aの軸方向一端から他端までの距離として測定される。両矢印D2は、ローラ28の外径を表している。外径D2は、ローラ28の半径方向外端の直径として測定される。両矢印θ2は、傾斜面28bの傾斜角度を表している。この傾斜角度θ2は、外周面28aの軸方向端において、半径方向に延びる直線と傾斜面28bとのなす角度として測定される。
【0038】
図6及び
図7には、この供給装置12の使用状態が示されている。
図7に示される様に、
図6及び
図7では、ローラ28は、下降位置にある。ローラ20がローラ28より上方に突出している。この供給装置12は、第一姿勢にされている。この供給装置12では、ローラ20がトレッド部材R1を支持している。このローラ20によって、トレッド部材R1は前後方向に移動可能である。
【0039】
図8には、この供給装置12の他の使用状態が示されている。
図8では、ローラ28は、上昇位置にある。ローラ28がローラ20より上方に突出している。この供給装置12は、第二姿勢にされている。この供給装置12では、ローラ28がトレッド部材R1を支持している。このローラ28によって、トレッド部材R1は左右方向に移動可能である。
【0040】
この製造設備2を用いたタイヤの製造方法が説明される。この製造方法では、ゴム成形体R2が準備される(STEP1)。このゴム成形体R2が切断装置8で所定の長さに切断される(STEP2)。このSTEP2では、この切断によって、ゴム成形体R2からトレッド部材R1が得られる。このトレッド部材R1は、コンベア6によって、供給装置12に向かって搬送される。
【0041】
トレッド部材R1は、供給装置12でドラム10に供給される(STEP3)。このSTEP3では、
図7の第一姿勢にある供給装置12に、トレッド部材R1が載置される。図示されないセンサによって、供給装置12に対する、トレッド部材R1の左右方向位置が測定される。昇降機24がローラ28を上昇位置に移動する。供給装置12は、
図8の第二姿勢に変化する。図示されないセンタリング装置によって、供給装置12に対する、トレッド部材R1の左右方向の位置ずれが修正される。その後、昇降機24がローラ28を下降位置に移動する。供給装置12は、
図7の第一姿勢に変化する。トレッド部材R1は、供給装置12でドラム10に向かって搬送される。
【0042】
トレッド部材R1はドラム10に巻回される(STEP4)。トレッド部材R1は、リング状に成形される。このトレッド部材R1と他の部材とが組み合わされてローカバーが形成される(STEP5)。このローカバーが加熱及び加圧される(STEP6)。このSTEP6で、ローカバーからタイヤが得られる。
【0043】
このSTEP3では、センサを用いて、トレッド部材R1の左右方向の位置が測定されたが、これに限られない。作業者が目視して、又は作業者が測定器具を用いて、トレッド部材R1の左右方向の位置が確認されてもよい。このSTEP3では、センタリング装置によって、トレッド部材R1の左右方向の位置ずれが修正されたが、これに限られない。作業者の手作業によって、トレッド部材R1の左右方向の位置ずれが修正されてもよい。
【0044】
このSTEP3では、トレッド部材R1の左右方向の位置ずれが修正されたが、必ずしも修正されなくてもよい。例えば、この位置ずれが所定の基準値以下のときに、この位置ずれの修正が省略されてもよい。この位置ずれが所定の基準値を超えたときに、この位置ずれの修正が実行されてもよい。
【0045】
供給装置12では、ローラ20の幅が半径方向外向きに漸減している。このローラ20とトレッド部材R1との接触面積は小さい。このローラ20とトレッド部材R1との密着によって、剥がれ難くなることが抑制される。この供給装置12は、トレッド部材R1の密着を抑制しうる。供給装置12は、トレッド部材R1を容易に搬送しうる。また、供給装置12は、トレッド部材R1の密着による変形を抑制する。この供給装置12は、トレッド部材R1の変形を抑制することで、タイヤのユニフォーミティの向上に寄与しうる。
【0046】
ここでは、トレッド部材R1を例に説明がされた。タイヤの製造方法では、トレッド部材R1に、高密着性のゴム部材が用いられることがある。この供給装置12は、ローラ20とトレッド部材R1との密着を抑制しうる。この供給装置12は、高密着性のトレッド部材R1の供給に、特に適している。
【0047】
この観点から、この供給装置12は、粘着力を表すタックの値が大きいトレッド部材R1の供給に、特に適している。この観点から、トレッド部材R1のタックは、好ましくは5.0(N)以上であり、更に好ましくは、6.0(N)以上である。このタックは、特に上限はないが、例えば、10.0(N)以下である。
【0048】
このタックは、粘着性試験機として、東洋精機製作所製「PICMAタックテスター」を用いて測定された粘着力(N)を表している。12.7(mm)×152(mm)の未加硫ゴムからなる試験片が準備される。この試験片が、JIS T9233に準拠して、温度23℃、圧着荷重4.9(N)、圧着時間10秒の条件で、アルミニウム製の接着部円盤に圧着される。その後、速度10(mm/min)の条件で、接着部円盤から引き剥がされる。この引き剥がすときの力の最大値が求められる。この最大値が、本発明のタックの値である。このタックの値は、5回の測定の平均値として求められる。本発明において、このタックの値が大きいほど、粘着力が高い。
【0049】
ローラ20は、一対の傾斜面20bを備えることで、剛性に優れる。ローラ20は、耐久性に優れる。ローラ20は、トレッド部材R1を安定に支持しうる。
【0050】
ローラ20は、外周面20aでトレッド部材R1に当接する。このローラ20は、面で当接することで、トレッド部材R1の変形を抑制しうる。この供給装置12は、トレッド部材R1の変形を抑制しつつ、容易に搬送しうる。この観点から、外周面20aの軸方向幅W1は、好ましくは0.5mm以上であり、更に好ましくは1.0mm以上である。一方で、トレッド部材R1の密着を抑制する観点から、この軸方向幅W1は、好ましくは5.0mm以下であり、更に好ましくは4.0mm以下である。なお、ローラ20は、必ずしも外周面20aを備えていなくてもよい。
【0051】
傾斜面20bの傾斜角度θ1が小さいローラ20では、傾斜面20bとトレッド部材R1との接触が抑制される。この観点から、傾斜角度θ1は、好ましくは45°以下である。一方で、傾斜角度θ1が大きいローラ20は、剛性に優れる。この観点から、傾斜角度θ1は、好ましくは10°以上である。
【0052】
外径D1が小さいローラ20は、曲率半径が小さい。このローラ20は、接触するトレッド部材R1を局所的に変形させ易い。この局所的な変形を抑制する観点から、外径D1は、好ましくは20mm以上である。一方で、外径D1が大きいローラ20では、前後方向におけるローラ20の列の間隔が大きい。この間隔が大きいローラ20では、トレッド部材R1に変形が生じ易い。この変形を抑制する観点から、外径D1は、好ましくは100mm以下である。
【0053】
供給装置12では、ローラ20の列とローラ28との列とが、前後方向に交互に並べられている。これにより、第一姿勢と第二姿勢との、いずれの姿勢においても、トレッド部材R1が均一に支持されうる。供給装置12は、トレッド部材R1の変形を抑制しうる。
【0054】
供給装置12では、ローラ28の幅が半径方向外向きに漸減している。このローラ28とトレッド部材R1との接触面積は小さい。この供給装置12は、トレッド部材R1の密着を抑制しつつ、トレッド部材R1の左右方向の位置ずれを修正しうる。供給装置12は、トレッド部材R1の左右方向の位置ずれを容易に修正しうる。また、供給装置12は、トレッド部材R1の変形を抑制しつつ、左右方向の位置ずれを修正しうる。
【0055】
供給装置12では、トレッド部材R1とローラ20との密着が抑制され、トレッド部材R1とローラ28との密着が抑制されている。供給装置12では、第一姿勢と第二姿勢との姿勢変化が容易にされている。この供給装置12では、姿勢変化における、トレッド部材R1の変形が抑制されている。
【0056】
供給装置12では、ローラ20の回転軸18の軸線方向は、ローラ28の回転軸26と直交している。供給装置12は、ローラ20がローラ28より上方に突出する第一姿勢と、ローラ28がローラ20より上方に突出する第二姿勢とに姿勢変化可能である。この供給装置12は、ドラム10に向かってトレッド部材R1は容易に搬送できる。そして、この供給装置12は、トレッド部材R1の左右方向の位置ずれを容易に修正できる。
【0057】
供給装置12は、ローラ28を備えることで、トレッド部材R1の左右方向の位置ずれを容易に修正できる。この供給装置12では、ローラ28の回転軸26はローラ20の回転軸18の軸線方向に直交しているが、これに限られない。このローラ28は、トレッド部材R1を左右方向に移動可能であればよい。ローラ28の回転軸26は、ローラ20の回転軸18の軸線方向に交差していればよい。
【0058】
ローラ28は、一対の傾斜面28bを備えることで、ローラ20と同様に、剛性に優れる。ローラ28は、剛性に優れ、トレッド部材R1を安定に支持しうる。
【0059】
ローラ28は、外周面28aでトレッド部材R1に当接する。このローラ28は、面で当接することで、トレッド部材R1の変形を抑制しうる。この供給装置12は、トレッド部材R1の変形を抑制しつつ、容易に搬送しうる。この観点から、外周面28aの軸方向幅W2は、好ましくは0.5mm以上であり、更に好ましくは1.0mm以上である。一方で、トレッド部材R1の密着を抑制する観点から、この軸方向幅W2は、好ましくは5.0mm以下であり、更に好ましくは4.0mm以下である。なお、ローラ28は、必ずしも外周面28aを備えていなくてもよい。
【0060】
傾斜面28bの傾斜角度θ2が小さいローラ28では、傾斜面28bとトレッド部材R1との接触が抑制される。この観点から、傾斜角度θ2は、好ましくは45°以下である。一方で、傾斜角度θ2が大きいローラ28は、剛性に優れる。この観点から、傾斜角度θ2は、好ましくは10°以上である。
【0061】
外径D2が小さいローラ28は、曲率半径が小さい。このローラ28は、接触するトレッド部材R1を局所的に変形させ易い。この局所的な変形を抑制する観点から、外径D2は、好ましくは20mm以上である。一方で、外径D2が大きいローラ28では、前後方向におけるローラ28の列の間隔が大きい。この間隔が大きいローラ28では、トレッド部材R1に変形が生じ易い。この変形を抑制する観点から、外径D2は、好ましくは100mm以下である。
【0062】
この供給装置12では、ローラ20とローラ28との両方の幅が半径方向外向きに漸減しているが、これに限られない。本発明に係る供給装置12は、ローラ20とローラ28とのいずれか一方の幅が半径方向外向きに漸減されていればよい。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0064】
[実施例1]
図1の製造設備を用いて、トレッド部材が巻回された。このトレッド部材を用いてタイヤが製造された。
【0065】
[比較例1]
フリーボールベアリングが並べられたボールコンベアを備える供給装置が用いられた。このフリーボールベアリングは、球状のローラをそのいずれの方向にも回転可能に支持している。その他は、実施例1と同様にしてタイヤが製造された。
【0066】
[比較例2]
円筒状のローラが並べられたローラコンベアを備える供給装置が用いられた。作業者が、切断装置から供給装置までトレッド部材を運搬した。作業者がトレッド部材を供給装置に位置合わせし、セットした。その他は、実施例1と同様にしてタイヤが製造された。
【0067】
[評価]
実施例1、比較例1及び比較例2について、作業性、異物の付着及び左右方向位置ずれの観点から、評価がされた。この作業性の評価結果が表1の作業性の欄に指数で示されている。異物の付着の評価結果が表1の異物の欄に指数で示されている。左右方向の位置ずれの評価結果が表1の位置ずれの欄に指数で示されている。これらの評価は3段階で評価され、大きいほど優れている。
【0068】
【0069】
表1に示されるように、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明された方法は、帯状のタイヤ用ゴム部材の搬送に広く適用されうる。
【符号の説明】
【0071】
2・・・製造設備
10・・・ドラム
12・・・供給装置
18、26・・・回転軸
20、28・・・ローラ
20a、28a・・・外周面
20b、28b・・・傾斜面