(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/295 20170101AFI20231121BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20231121BHJP
B29C 64/194 20170101ALI20231121BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20231121BHJP
B29C 64/364 20170101ALI20231121BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20231121BHJP
【FI】
B29C64/295
B29C64/106
B29C64/194
B29C64/209
B29C64/364
B33Y40/20
(21)【出願番号】P 2019165803
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姉川 賢太
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100304(JP,A)
【文献】特開2017-206011(JP,A)
【文献】特開2018-192624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を可塑化して造形材料とする溶融部と、
前記造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、
前記ノズルと前記ステージとの相対位置を変化させる移動機構と、
前記移動機構を制御する制御部と、
前記ノズルから吐出された前記造形材料
を加熱するために、前記造形材料に向けて温風を送風する複数の吹出口を、前記ノズルの周囲に有する送風部と、
前記吹出口ごとに、前記温風の送風量を調節可能な送風量調節機構と、を備え
、
前記溶融部は、
前記材料が供給される溝が形成された溝形成面を有するフラットスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記対向面と前記ノズルとを連通する連通孔が設けられたバレルと、を有し、
前記バレルを加熱する第1加熱部と、
前記送風部に前記温風を供給する温風供給流路と、を更に備え、
前記温風供給流路の少なくとも一部は前記バレル内に設けられ、
前記第1加熱部は、前記バレルおよび前記温風供給流路を加熱し、
前記制御部は、前記送風量調節機構を制御することによって、前記ノズルの移動方向において前記ノズルよりも前方に位置する前記吹出口からの前記送風量を、前記ノズルの移動方向において前記ノズルよりも後方に位置する前記吹出口からの前記送風量よりも大きくする、三次元造形装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の三次元造形装置であって、
前記温風供給流路を加熱する第2加熱部を有する、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2に記載の三次元造形装置であって、
前記温風供給流路の少なくとも一部は前記バレル内に設けられ、
前記バレル内に設けられた前記温風供給流路の全長は、前記バレルの外周の長さよりも長い、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項
1から請求項3までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記吹出口は、前記ノズルの周囲に一定の間隔で配置されている、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記送風部は、
前記ノズルを中心とする環状の流路であって、前記吹出口と連通し前記吹出口に前記温風を供給する環状流路と、
前記環状流路に前記温風を供給する温風供給口と、を備える、
三次元造形装置。
【請求項6】
請求項5に記載の三次元造形装置であって、
前記ノズルと前記環状流路との間に断熱部を有する、三次元造形装置。
【請求項7】
三次元造形物の製造方法であって、
溶融部によって材料を可塑化することによって生成した造形材料を、ノズルからステージに向かって吐出させるとともに、
前記ノズルと前記ステージとの相対位置を変化させながら、前記ノズルの周囲に設けられた複数の吹出口から、前記ステージ上に吐出された前記造形材料
を加熱するために、前記造形材料に向かって温風を送風
し、
前記溶融部は、
前記材料が供給される溝が形成された溝形成面を有するフラットスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記対向面と前記ノズルとを連通する連通孔が設けられたバレルと、を有し、
各前記吹出口に前記温風を供給する温風供給流路の少なくとも一部は、前記バレル内に設けられ、
前記バレルと前記温風供給流路とは、第1加熱部によって加熱され、
前記吹出口ごとに前記温風の送風量を調節可能な送風量調節機構を制御することによって、前記ノズルの移動方向において前記ノズルよりも前方に位置する前記吹出口からの前記送風量を、前記ノズルの移動方向において前記ノズルよりも後方に位置する前記吹出口からの前記送風量よりも大きくする、三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形装置に関し、例えば、特許文献1に記載された装置では、ヘッドに支持アームを介して接続されたエネルギー源で、既設層を加熱し、加熱した既設層の上に後続層を積層することで、既設層と後続層との間の密着性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載した装置では、加熱した既設層の上に後続層を積層するため、ノズルよりも前方の位置を加熱する必要がある。そのため、ノズルの移動方向を変化させるたびに、ノズル前方を加熱できる位置にエネルギー源を移動させることが必要となる場合があり、複雑な制御が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、三次元造形装置が提供される。三次元造形装置は、材料を可塑化して造形材料とする溶融部と、前記造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、前記ノズルと前記ステージとの相対位置を変化させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御部と、前記ノズルから吐出された前記造形材料に向けて温風を送風する複数の吹出口を、前記ノズルの周囲に有する送風部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】第1実施形態における送風部の構成概要を示す説明図である。
【
図3】送風部の下面側の構成を示す概略斜視図である。
【
図4】フラットスクリューの下面側の構成を示す概略斜視図である。
【
図5】バレルの上面側の構成を示す概略平面図である。
【
図6】第1実施形態における三次元造形物の造形処理の工程図である。
【
図7】第2実施形態における三次元造形装置の構成を示す概略断面図である。
【
図8】第3実施形態における送風部の構成概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X方向およびY方向は、水平方向に沿った方向であり、Z方向は、鉛直上向きの方向である。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。
図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。
【0008】
三次元造形装置100は、造形ユニット200と、ステージ300と、移動機構400と、制御部500と、を備える。三次元造形装置100は、制御部500の制御下で、ノズル61からステージ300上の造形面310に向かって造形材料を吐出しつつ、移動機構400を駆動させて、造形ユニット200に設けられたノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させることによって、造形面310上に造形材料が積層された三次元造形物を造形する。造形ユニット200の詳細な構成については後述する。なお、造形ユニット200のことをヘッドと呼ぶこともある。
【0009】
移動機構400は、上述したとおり、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構400は、ステージ300を支持しており、造形ユニット200に対してステージ300を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる。なお、造形面310に対するノズル61の相対的な位置の変化を、ノズル61の移動と呼ぶこともある。また、造形面310に対するノズル61の相対位置の変化の方向を、ノズル61の移動方向と呼ぶこともある。本実施形態では、例えば、ステージ300を+X方向に移動させたことを、ノズル61を-X方向に移動させたと言い換えることもできる。また、このときのノズル61の移動方向は、-X方向である。
【0010】
本実施形態における移動機構400は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ300をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。各モーターは、制御部500に制御されて駆動する。なお、移動機構400は、ステージ300を移動することなく造形ユニット200を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる構成であってもよい。また、移動機構400は、ステージ300と造形ユニット200との両方を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる構成であってもよい。
【0011】
制御部500は、コンピューターとして構成されており、1以上のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備える。プロセッサーは、メモリーに記憶された所定のプログラムを実行することによって、三次元造形物を造形するための造形処理を実現する。造形処理において、制御部500は、造形ユニット200と、移動機構400とを、適宜制御する。なお、制御部500の機能の一部または全部を、回路により実現するようにしてもよい。
【0012】
造形ユニット200は、造形材料に転化される前の材料の供給源である材料供給部20と、材料を溶融させて造形材料とする溶融部30と、溶融部30から供給された造形材料を造形面310に向けて吐出するノズル61と、温風を生成する温風生成部110と、温風生成部110によって生成された温風を吹き出す複数の吹出口140を有する送風部130とを、備える。
【0013】
材料供給部20は、溶融部30に、造形材料を生成するための材料を供給する。材料供給部20は、例えば、材料を収容するホッパーによって構成される。材料供給部20は、連通路22を介して、溶融部30に接続されている。材料は、例えば、ペレットや粉末等の形態で材料供給部20に投入される。材料の詳細については後述する。
【0014】
溶融部30は、材料供給部20から供給された材料を可塑化して流動性を発現させたペースト状の造形材料を生成し、ノズル61へと導く。溶融部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、バレル50と、を有する。フラットスクリュー40は、「スクロール」とも呼ばれる。バレル50は、スクリュー対面部とも呼ばれる。なお、溶融部30は、造形材料を構成する全ての種類の物質を溶融しなくてもよい。溶融部30は、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質を溶融させることによって、全体として流動性を有する状態に造形材料を転化すればよい。
【0015】
フラットスクリュー40は、その中心軸RXに沿った高さが直径よりも小さい略円柱状を有する。本実施形態において、フラットスクリュー40は、その中心軸RXがZ方向に平行になるように配置される。
【0016】
フラットスクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。フラットスクリュー40の上面側は駆動モーター32に連結されており、フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内において中心軸RXを中心に回転する。駆動モーター32は、制御部500によって制御され駆動する。
【0017】
フラットスクリュー40の下面には、溝部42が形成されている。上述した材料供給部20の連通路22は、フラットスクリュー40の側面から溝部42に連通する。
【0018】
フラットスクリュー40の下面は、バレル50の上面に面している。フラットスクリュー40の下面の溝部42と、バレル50の上面との間には空間が形成される。この空間には、材料供給部20から材料が供給される。フラットスクリュー40および溝部42の具体的な構成については後述する。
【0019】
バレル50には、材料を加熱するためのヒーター58が埋め込まれている。本実施形態では、4本の棒状のヒーター58がY方向に沿って配置されている。各ヒーター58は、スクリュー対向面52の下方に配置されている。各ヒーター58の温度は、制御部500によって制御される。なお、ヒーター58のことを第1加熱部と呼ぶこともある。
【0020】
バレル50内には温風供給流路95が設けられている。後述する温風生成部110によって生成された温風は、温風供給流路95を介して、送風部130へと流れる。温風供給流路95は、ヒーター58によって、バレル50とともに加熱される。
【0021】
なお、温風とは、吹出口140における出口温度の、吹出口140ごとの平均値が200℃以上となる気体の流れのことを指す。既設層への接着効果を高めるために、温風の温度は造形材料のガラス転移点以上の温度であることが好ましく、例えば300℃から400℃である。吹出口140ごとの温度のばらつきを抑制するために、温風の流量は大きいことが好ましく、20L/mから30L/mである。
【0022】
フラットスクリュー40の溝部42に供給された材料は、溝部42において溶融されながら、フラットスクリュー40の回転によって溝部42に沿って流動し、造形材料としてフラットスクリュー40の中央部45へと導かれる。中央部45に流入したペースト状の造形材料は、バレル50の中心に設けられた連通孔56を介してノズル61に供給される。
【0023】
ノズル61は、バレル50の下部に設けられている。ノズル61は、ノズル流路68と、吐出口69とを、有する。ノズル流路68は、ノズル61内に設けられた流路であり、その一端がバレル50内の連通孔56に接続されている。吐出口69は、ノズル流路68の連通孔56に接続されていない端部に設けられており、バレル50の下面よりも下方に位置している。本実施形態では、吐出口69の開口形状は円形である。造形材料は、連通孔56からノズル流路68に流入し、吐出口69から吐出される。なお、吐出口69の開口形状は円形に限られず、例えば、正方形や、正方形以外の多角形であってもよい。
【0024】
温風生成部110は、バレル50に対して、+X方向から接続されている。温風生成部110は、ガス管115と、発熱部120と、を備える。
【0025】
ガス管115は円筒状の管である。ガス管115の一端には、ガス管115に気体を導入するための導入口116が設けられている。ガス管115の導入口116と逆側の端部は、バレル50に設けられた温風供給流路95に接続されている。なお、図示しないが、本実施形態では、流量調整された空気が導入口116からガス管115へと導入される。ガス管115への空気の導入には、例えば、エアーポンプを用いることができる。また、ガス管115へと導入される気体は空気でなく、他の不活性ガスであってもよい。例えば、窒素であってもよい。
【0026】
発熱部120はコイル状の電熱線であり、ガス管115内部に設けられている。ガス管115へと導入された空気は、発熱部120によって加熱され、温風供給流路95へと流れる。
【0027】
図2は、送風部130の構成概要を示す説明図である。また、
図3は、送風部130の下面側の構成を示す概略斜視図である。送風部130はバレル50の下部に設けられ、略円柱形状を有している。送風部130は、環状流路135と、温風供給口137と、複数の吹出口140とを、備える。
【0028】
図2に示すように、環状流路135は、ノズル61を中心とし、送風部130の外周部136に沿うように形成された環状の流路である。環状流路135は、バレル50の下面に設けられている。環状流路135のうち、+X方向側に位置する流路の上部には、温風供給口137が設けられている。温風供給口137は円形状の開口部であり、バレル50内に設けられた温風供給流路95に接続されている。温風供給口137は、温風供給流路95から供給された温風を、環状流路135へと供給する。環状流路135は、温風供給口137から供給された温風を、環状流路135と連通する吹出口140へと供給する。
【0029】
ノズル61と環状流路135との間には、断熱部98が設けられている。断熱部98はノズル61と環状流路135とを隔絶するとともに、断熱部98に存在する空気によって、ノズル61と環状流路135とを断熱する。なお、断熱部98に、断熱材として、グラスウール等を固定してもよい。
【0030】
吹出口140は、ノズル61の周囲に配置されている。
図3に示すように、本実施形態では、8個の吹出口140が、ノズル61を中心とする円周上に一定の間隔で配置されている。吹出口140は、環状流路135から供給された温風を、ノズル61から造形面310上に吐出された造形材料に向かって送風する。
【0031】
なお、それぞれの吹出口140を区別することもある。第1吹出口141は、ノズル61から見て+X方向の位置に設けられる。それぞれの吹出口140は、第1吹出口141から、ノズル61を中心として反時計回りに、第2吹出口142、第3吹出口143、第4吹出口144、第5吹出口145、第6吹出口146、第7吹出口147、第8吹出口148の順に設けられる。なお、第3吹出口143はノズル61から見て+Y方向の位置に、第5吹出口145はノズル61から見て-X方向の位置に、第7吹出口147はノズル61から見て-Y方向の位置に設けられる。
【0032】
図2に示すように、それぞれの吹出口140には、調節弁150が設けられている。なお、
図3では、調節弁150の図示を省略している。調節弁150は、円板状の弁部と回転軸とを有するバタフライバルブである。調節弁150の回転によって、吹出口140が開閉され、吹出口140から送風される温風の送風量が調節される。また、調節弁150は、制御部500によってそれぞれ別個に制御される。すなわち、調節弁150は、吹出口140ごとに送風量を調節可能な送風量調節機構として機能する。なお、調節弁150がX方向に平行となった場合に、送風量は最小の0となる。また、調節弁150がX方向に垂直となった場合に、送風量は最大となる。他の実施形態では、送風量調節機構として、例えば、1枚または複数枚の板状の部材で吹出口140を開閉するシャッターであってもよい。
【0033】
図4は、フラットスクリュー40の下面側の構成を示す概略斜視図である。
図4には、フラットスクリュー40の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。バレル50に対向するフラットスクリュー40の下面には、溝部42が設けられている。以下、フラットスクリュー40の下面のことを、「溝形成面48」と呼ぶ。
【0034】
フラットスクリュー40の溝形成面48の中央部45は、溝部42の一端が接続されている凹部として構成されている。中央部45は、バレル50の連通孔56に対向する。第1実施形態では、中央部45は、中心軸RXと交差する。
【0035】
フラットスクリュー40の溝部42は、いわゆるスクロール溝を構成する。溝部42は、中央部45から、フラットスクリュー40の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。溝部42は、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面48には、溝部42の側壁部を構成し、各溝部42に沿って延びている凸条部43が設けられている。
【0036】
溝部42は、フラットスクリュー40の側面に形成された材料流入口44まで連続している。この材料流入口44は、材料供給部20の連通路22を介して供給された材料MRを受け入れる部分である。
【0037】
図4には、3つの溝部42と、3つの凸条部43と、を有するフラットスクリュー40の例が示されている。フラットスクリュー40に設けられる溝部42や凸条部43の数は、3つには限定されない。フラットスクリュー40には、1つの溝部42のみが設けられていてもよいし、2以上の複数の溝部42が設けられていてもよい。また、溝部42の数に合わせて任意の数の凸条部43が設けられてもよい。
【0038】
図4には、材料流入口44が3箇所に形成されているフラットスクリュー40の例が図示されている。フラットスクリュー40に設けられる材料流入口44の数は、3箇所に限定されない。フラットスクリュー40には、材料流入口44が1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0039】
図5は、バレル50の上面側の構成を示す概略平面図である。バレル50の上面は、上述したように、フラットスクリュー40の溝形成面48に対向する。以下、バレル50の上面を、「スクリュー対向面52」と呼ぶ。スクリュー対向面は、直径d1の略円形状を有する。スクリュー対向面52の中心には、造形材料をノズル61に供給するための連通孔56が形成されている。
【0040】
スクリュー対向面52には、連通孔56に接続され、連通孔56から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝54が形成されている。複数の案内溝54は、フラットスクリュー40の中央部45に流入した造形材料を連通孔56に導く機能を有する。
【0041】
フラットスクリュー40が回転すると、材料流入口44から供給された材料が、溝部42に誘導されて、溝部42内において加熱されながら中央部45に向かって移動する。材料は、中央部45に近づくほど、溶融し、流動性が高まっていき、造形材料へと転化する。中央部45に集められた造形材料は、中央部45で生じる内圧により連通孔56からノズル61に流出する。
【0042】
図6は、第1実施形態における三次元造形物の造形処理の工程図である。本実施形態では、この三次元造形物の造形処理は、既設層の上に、更に造形材料を吐出して三次元造形物を造形する場合に実行される。なお、既設層とは、ノズル61から吐出された造形材料が積層されることによって、この造形処理の実行前に既に形成された層のことを指す。本実施形態において、制御部500は、三次元造形物を作成するための造形用プログラムを実行して、三次元造形物の造形を行う。
【0043】
ステップS110にて、制御部500は、三次元造形物の造形に用いる造形用データを取得する。この造形用データは、例えば、三次元造形物の形状を表すSTL形式やAMF形式のデータをスライサーで変換することによって作成された、ツールパスデータである。なお、ここで取得される造形用データは、1層分を造形するためのデータであってもよいし、複数の層を造形するためのデータであってもよい。
【0044】
ステップS120にて、制御部500は、造形用データに基づいて、ノズル61の移動方向を決定する。
【0045】
ステップS130にて、制御部500は、ステップS120で決定したノズル61の移動方向に応じて、送風方向を決定し、決定した送風方向に基づいて、吹出口140から温風を送風する。送風方向の決定とは、それぞれの吹出口140から送風する温風の送風量を決定することを指す。具体的には、制御部500は、調節弁150を制御することによって、ノズル61の移動方向においてノズル61よりも前方に位置する吹出口140からの前方送風量を、ノズル61の移動方向においてノズル61よりも後方に位置する吹出口140からの後方送風量よりも大きくする。例えば、
図3の矢印に示すように、ノズル61が+X方向に移動する場合、制御部500は、調節弁150を制御することによって、第1吹出口141および第2吹出口142および第8吹出口148の送風量の和を、第4吹出口144および第5吹出口145および第6吹出口146の和よりも大きくする。この場合、第1吹出口141のみから送風し、他の吹出口140からの送風を停止することによっても、前方送風量を後方送風量より大きくすることができる。なお、移動方向に対してノズル61と横並びの位置である一点鎖線上の、第3吹出口143や第7吹出口147の送風量を変化させた場合、前方送風量および後方送風量の両方が同様に変化する。そのため、第3吹出口143や第7吹出口147の送風量の変化は、前方送風量と後方送風量との大小関係に影響しない。
【0046】
ステップS140にて、制御部500は、ステップS130で決定した移動方向にノズル61を移動させながら、溶融部30によって生成された造形材料をノズル61から吐出させる。すなわち、ノズル61の移動に伴って、吹出口140から温風が送風され、ノズル61から造形材料が吐出される。既設層のうち、ステップS140にて温風によって加熱された部分に造形材料が吐出されるため、吐出された造形材料と既設層との密着性が向上する。
【0047】
ステップS150にて、制御部500は、造形用データに基づいて、ノズル61の移動方向を変更するか否かを判断する。ノズル61の移動方向を変更する場合、再度ステップS120にて、ノズル61の新たな移動方向を決定する。
【0048】
ステップS150において方向転換をしなかった場合、ステップS160にて、制御部500は、三次元造形物の造形を終了するか否かを判断する。造形を終了しない場合、再度ステップS110に戻る。
【0049】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置100は、温風を送風する複数の吹出口140をノズル61の周囲に有する送風部130を備える。これによって、吹出口140を1個のみ有する場合と比較して、ノズル61周囲の広範囲を加熱できる。そのため、吹出口140をノズル61に対して移動させることなく、簡易な制御によって、ノズル61の移動方向前方を効率的に加熱できる。
【0050】
また、本実施形態では、吹出口140は、ノズル61の周囲に一定の間隔で配置されている。これによって、ノズル61の周囲から均等に温風を送風することができる。そのため、吹出口140をノズル61に対して移動させることなく、簡易な制御によって、ノズル61の移動方向前方を効率的に加熱できる。
【0051】
また、本実施形態では、吹出口140ごとに調節弁150が設けられている。そのため、三次元造形物の造形中に、ノズル61の移動方向に応じて、複数の吹出口140の送風量を個別に調節することができる。
【0052】
また、本実施形態では、前方送風量を後方送風量よりも大きくする。そのため、例えば、既設層の上に更に造形材料を吐出させて三次元造形物を造形する場合、既設層のうち、ノズル61の移動方向後方の部分よりも大きな送風量の温風によって加熱された、移動方向前方の部分に造形材料が吐出されるため、吐出された造形材料と既設層との密着性が向上する。
【0053】
また、本実施形態では、吹出口140と連通し、吹出口140に温風を供給する環状流路135を備える。そのため、簡易な構成によって、ノズル61の周囲に設けられ複数の吹出口140へと温風を供給することができる。
【0054】
また、本実施形態では、ノズル61と環状流路135との間に断熱部98を有する。そのため、ノズル61内の造形材料に、環状流路135内の温風による熱的影響が加わることを抑制できる。
【0055】
また、本実施形態では、溶融部30としてフラットスクリュー40と、バレル50とを備える。そのため、送風部130を備え、かつ、三次元造形装置100全体を小型化することができる。
【0056】
また、本実施形態では、ヒーター58は、バレル50および温風供給流路95を加熱する。そのため、簡易な構成で、バレル50および温風供給流路95を加熱することができる。
【0057】
ここで、上述した三次元造形装置100において用いられる三次元造形物の材料について説明する。三次元造形装置100では、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として三次元造形物を造形することができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0058】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、溶融部30において、当該材料が可塑化することによって、造形材料が生成される。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。
【0059】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック。
【0060】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、溶融部30において、フラットスクリュー40の回転とヒーター58の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。熱可塑性を有する材料の溶融によって生成された造形材料は、ノズル61から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0061】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル61から射出されることが望ましい。例えば、ABS樹脂は、ガラス転移点が約120℃であり、ノズル61からの吐出時には約200℃であることが望ましい。
【0062】
三次元造形装置100では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、材料MRとして溶融部30に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金。
<前記合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
【0063】
三次元造形装置100においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、造形面310に吐出された造形材料は焼結によって硬化されてもよい。
【0064】
材料供給部20に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、溶融部30において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0065】
材料供給部20に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等。
【0066】
その他に、材料供給部20に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂あるいはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)あるいはその他の熱可塑性樹脂。
【0067】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態における三次元造形装置100bの構成を示す概略断面図である。なお、第2実施形態における三次元造形装置100bの、特に説明しない部分については、第1実施形態の三次元造形装置100と同様の構成である。
【0068】
本実施形態の造形ユニット200bは、温風供給流路95を加熱する第2加熱部160を備える。第2加熱部160は棒状のヒーターである。第2加熱部160は、バレル50の下面に、X方向に沿って配置されている。
【0069】
制御部500は、第1加熱部であるヒーター58と、第2加熱部160とを、別々に制御できる。例えば、ヒーター58を制御することによって、バレル50の温度を造形材料の可塑性を発現させるのに適した温度としつつ、第2加熱部160を制御することによって、温風供給流路95を加熱し、送風部130へと供給される温風の温度を高めることができる。
【0070】
このような三次元造形装置100bの構成によっても、簡易な制御によって、ノズル61の移動方向に応じた位置を加熱しながら、三次元造形物を造形することができる。特に、本実施形態では、第2加熱部を制御することによって、送風部130へと供給される温風の温度を調節することができる。
【0071】
C.第3実施形態
図8は、第3実施形態における送風部130cの構成概要を示す説明図である。第3実施形態における三次元造形装置100cの、送風部130c以外の構成については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、送風部130cの特に説明しない部分についても、第1実施形態の送風部130と同様の構成である。
【0072】
本実施形態では、温風供給流路95cは、直線流路96および螺旋流路97を有する。直線流路96は、温風生成部110のガス管115に接続され、バレル50の側面からバレル50の内部へと-X方向に延びる流路である。螺旋流路97は、ノズル61を中心とし、バレル50の内部を鉛直下方に延びる螺旋状の流路である。螺旋流路97の始端は、直線流路96の一端と接続されている。また、螺旋流路97の終端は、温風供給口137と接続されている。
【0073】
本実施形態では、バレル50内の温風供給流路95cの全長は、バレル50の外周の長さよりも長い。なお、バレル50の外周とは、
図5に示すスクリュー対向面52の外周のことを指す。また、本実施形態では、温風供給流路95cの全長とは、直線流路96の長さと螺旋流路97の長さとの和となる。
【0074】
図5に示すように、スクリュー対向面52は直径d1の略円形状を有する。一方、螺旋流路97は、+Z方向から見て、ノズル61を中心とする直径d2の円形状となる螺旋状の流路である。なお、直径d2は、直径d1の3分の1の長さである。また、螺旋流路97は、始端から終端までに、ノズル61の周囲を3周する。そのため、温風供給流路95cの全長は、バレル50の外周の長さよりも長い。
【0075】
なお、温風供給流路95cは、螺旋状の流路ではなく、例えば、バレル50内で複数回方向を変えることによって、バレル50の外周の長さよりも長い全長を有する流路であってもよい。また、温風供給流路95cの一部がバレル50の外部に設けられていてもよい。すなわち、温風供給流路95cの少なくとも一部がバレル50内に設けられていればよい。
【0076】
このような三次元造形装置100cの構成によっても、簡易な制御によって、ノズル61の移動方向に応じた位置を加熱しながら、三次元造形物を造形することができる。特に、本実施形態では、バレル50内に設けられた温風供給流路95cの全長がバレル50の外周の長さ以下である場合に比べ、長時間、温風供給流路95c内の空気がヒーター58によって加熱される。そのため、効果的にヒーター58によって温風供給流路95内の空気が加熱される。
【0077】
D.他の実施形態
(D-1)上記実施形態では、送風部130は、8個の吹出口を有している。これに対して、吹出口の数は2個以上7個以下であってもよいし、9個以上であってもよい。
【0078】
(D-2)上記実施形態では、複数の吹出口140が、ノズル61を中心とする円周上に配置されている。これに対して、吹出口140は、例えば、ノズル61を中心とする楕円の周上に配置されていてもよい。また、ノズル61を中心とする多角形の辺上に配置されていてもよい。
【0079】
(D-3)上記実施形態では、複数の吹出口140が、ノズル61の周囲に一定の間隔で配置されている。これに対して、吹出口140が一定の間隔で配置されていなくてもよい。例えば、ノズル61と各吹出口140とを結ぶ直線同士の角度を一定とする配置であってもよい。他にも、例えば、上記実施形態の吹出口140のうち、第3吹出口143と第7吹出口147とを有していない構成であってもよい。
【0080】
(D-4)上記実施形態では、制御部500は、前方送風量を後方送風量よりも大きくする。これに対して、ノズル61の移動方向に応じて送風量を調節せず、全ての吹出口140から同じ送風量の温風を送風させてもよい。また、後方送風量を前方送風量より大きくしてもよい。
【0081】
(D-5)上記実施形態では、ノズル61を環状流路135との間に断熱部98が設けられている。これに対して、ノズル61と環状流路135との間に断熱部98が設けられていなくてもよい。
【0082】
(D-6)上記実施形態では、環状流路135と温風供給口137とが設けられている。これに対して、環状流路135と温風供給口137が設けられず、温風供給流路95から各吹出口140へと分岐する流路が設けられていてもよい。
【0083】
(D-7)上記実施形態では、それぞれの吹出口140に、温風の流量を測定する流量センサーを設けてもよい。また、それぞれの吹出口140に、温風の温度を測定する熱電対等の温度センサーを設けてもよい。この場合、制御部500は、流量センサーや温度センサーによって測定された値に応じて、それぞれの吹出口140から送風される温風の流量や温度を調整してもよい。
【0084】
(D-8)上記実施形態では、送風量調節機構として、それぞれの吹出口140に、調節弁150が設けられている。これに対して、例えば、それぞれの吹出口140に温風を供給する流路に、調節弁150が設けられていてもよい。また、吹出口140ごとではなく、送風部130全体の送風量を調節する機構を備えていてもよい。また、送風量を調節する機構を備えていなくてもよい。
【0085】
(D-9)上記実施形態では、溶融部30はフラットスクリュー40と、バレル50と、ヒーター58とを、備える。これに対して、溶融部30は、フラットスクリュー40と、バレル50と、ヒーター58と、を備えず、例えば、インラインスクリューを備えていてもよい。
【0086】
(D-10)上記実施形態では、ヒーター58はバレル50および温風供給流路95を加熱する。これに対して、ヒーター58は温風供給流路95を加熱しなくてもよい。例えば、ヒーター58をバレル50内に設け、温風供給流路95をバレル50の外部に設けることによって、ヒーター58がバレル50を加熱し、温風供給流路95を加熱しない構成としてもよい。
【0087】
(D-11)上記実施形態では、ヒーター58がバレル50内に設けられている。これに対して、ヒーター58は、バレル50の外部に設けられていてもよい。
【0088】
(D-12)上記実施形態では、温風生成部110を設けられている。これに対して、温風生成部110が設けられていなくてもよい。例えば、温風供給流路95に導入された不活性ガスを、ヒーター58で加熱し、加熱された不活性ガスを送風部130へと供給する構成であってもよい。
【0089】
E.他の形態:
本開示は、上述の各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態によって実現することができる。例えば、本開示は以下の形態として実現可能である。以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する上記の各実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中において必須であると説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0090】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。材料を可塑化して造形材料とする溶融部と、前記造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、前記ノズルと前記ステージとの相対位置を変化させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御部と、前記ノズルから吐出された前記造形材料に向けて温風を送風する複数の吹出口を、前記ノズルの周囲に有する送風部と、を備える。
このような形態によれば、吹出口を1個のみ有する場合と比較して、ノズル周囲の広範囲を加熱できる。そのため、吹出口をノズルに対して移動させることなく、簡易な制御によって、ノズルの移動方向前方を効率的に加熱できる。
【0091】
(2)上記形態の三次元造形装置において、前記吹出口は、前記ノズルの周囲に一定の間隔で配置されていてもよい。このような形態によれば、ノズルの周囲から均等に温風を送風することができる。そのため、吹出口をノズルに対して移動させることなく、簡易な制御によって、ノズルの移動方向前方を効率的に加熱できる。
【0092】
(3)上記形態の三次元造形装置において、前記吹出口ごとに、前記温風の送風量を調節可能な送風量調節機構を備えていてもよい。このような形態によれば、三次元造形物の造形中に、ノズルの移動方向に応じて、複数の吹出口の送風量を個別に調節することができる。
【0093】
(4)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記送風量調節機構を制御することによって、前記ノズルの移動方向において前記ノズルよりも前方に位置する前記吹出口からの前記送風量を、前記ノズルの移動方向において前記ノズルよりも後方に位置する前記吹出口からの前記送風量よりも大きくしてもよい。このような形態によれば、既設層の上に更に造形材料を吐出させて三次元造形物を造形する場合、既設層のうち、ノズルの移動方向後方の部分よりも大きな送風量の温風によって加熱された、移動方向前方の部分に造形材料が吐出されるため、吐出された造形材料と既設層との密着性が向上する。
【0094】
(5)上記形態の三次元造形装置において、前記送風部は、前記ノズルを中心とする環状の流路であって、前記吹出口と連通し前記吹出口に前記温風を供給する環状流路と、前記環状流路に前記温風を供給する温風供給口と、を備えていてもよい。このような形態によれば、簡易な構成によって、ノズルの周囲に設けられた複数の吹出口へと温風を供給することができる。
【0095】
(6)上記形態の三次元造形装置において、前記ノズルと前記環状流路との間に断熱部を有していてもよい。このような形態によれば、ノズル内の造形材料に、環状流路内の温風による熱的影響が加わることを抑制できる。
【0096】
(7)上記形態の三次元造形装置において、前記溶融部は、前記材料が供給される溝が形成された溝形成面を有するフラットスクリューと、前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記対向面と前記ノズルとを連通する連通孔が設けられたバレルと、を有し、前記バレルを加熱する第1加熱部を備えていてもよい。このような形態によれば、送風部を備え、かつ、三次元造形装置全体を小型化することができる。
【0097】
(8)上記形態の三次元造形装置において、前記送風部に前記温風を供給する温風供給流路を備え、前記第1加熱部は、前記バレルおよび前記温風供給流路を加熱してもよい。このような形態によれば、簡易な構成で、バレルおよび温風供給流路を加熱することができる。
【0098】
(9)上記形態の三次元造形装置において、前記温風供給流路を加熱する第2加熱部を有していてもよい。このような形態によれば、第2加熱部を制御することによって、送風部へと供給される温風の温度を調節することができる。
【0099】
(10)上記形態の三次元造形装置において、前記温風供給流路の少なくとも一部は前記バレル内に設けられ、前記バレル内に設けられた前記温風供給流路の全長は、前記バレルの外周の長さよりも長くてもよい。このような形態によれば、バレル内に設けられた温風供給流路の全長がバレルの外周の長さ以下である場合に比べ、長時間、温風供給流路内の不活性ガスが第1加熱部によって加熱されるため、効果的に第1加熱部によって温風供給流路内の不活性ガスを加熱できる。
【0100】
本開示は、上述した三次元造形装置に限らず、種々の態様で実現可能である。例えば、三次元造形物の製造方法や、三次元造形装置の制御方法、三次元造形物を造形するためのコンピュータープログラム、コンピュータープログラムを記録した一時的でない有形な記録媒体等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0101】
20…材料供給部、22…連通路、30…溶融部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、42…溝部、43…凸条部、44…材料流入口、45…中央部、48…溝形成面、50…バレル、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、61…ノズル、68…ノズル流路、69…吐出口、95,95c…温風供給流路、96…直線流路、97…螺旋流路、98…断熱部、100,100b,100c…三次元造形装置、110…温風生成部、115…ガス管、116…導入口、120…発熱部、130,130c…送風部、135…環状流路、136…外周部、137…温風供給口、140…吹出口、141…第1吹出口、142…第2吹出口、143…第3吹出口、144…第4吹出口、145…第5吹出口、146…第6吹出口、147…第7吹出口、148…第8吹出口、150…調節弁、160…第2加熱部、200…造形ユニット、300…ステージ、310…造形面、400…移動機構、500…制御部