(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/209 20170101AFI20231121BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20231121BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20231121BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20231121BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231121BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20231121BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/118
B29C64/393
B29C64/314
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2019168388
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2019026967
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 修弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 茂彦
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/189062(WO,A1)
【文献】特表2016-518267(JP,A)
【文献】国際公開第2018/151074(WO,A1)
【文献】米国特許第10046511(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第107379539(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維の束に樹脂を含侵させた線状の造形材が排出される被排出部と、
前記被排出部に対して曲線状に相対移動し、前記被排出部に対する曲がり方向と反対側へ前記造形材を180度未満の範囲で回転させながら前記被排出部に排出する排出機構と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記被排出部に対する曲がり方向と反対側へ前記造形材を180度未満の範囲で回転させながら前記被排出部に排出した後、前記曲がり方向に沿った順方向へ回転させながら前記被排出部に排出させる制御を、前記排出機構に対して行う
造形装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記被排出部に対して曲線状に相対移動する際において、
前記被排出部に対する曲がり方向と反対側へ前記造形材を180度未満の範囲で回転させながら前記被排出部に排出した後、前記曲がり方向に沿った順方向へ回転させながら前記被排出部に排出させる動作を、繰り返す制御を、前記排出機構に対して行う
請求項1に記載の造形装置。
【請求項3】
連続繊維の束に樹脂を含侵させた線状の造形材が排出される被排出部と、
前記被排出部に対して曲線状に相対移動し、前記被排出部に対する曲がり方向と反対側へ前記造形材を180度未満の範囲で回転させながら前記被排出部に排出する排出機構と、
制御部と、
を備え、
前記排出機構は、複数備えられ、
前記制御部は、
一の前記排出機構が前記被排出部に対して曲線状に相対移動する際の曲率が、他の前記排出機構における曲率よりも大きい場合に、前記一の排出機構の回転角度を、前記他の排出機構の回転角度よりも大きくする制御を、前記一の排出機構に対して行う
造形装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記曲率が予め定められた閾値を超える場合に前記造形材を回転させる制御を、前記他の排出機構に対して行う
請求項3に記載の造形装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記排出機構の前記被排出部に対する曲がり角度に応じた回転角度に前記造形材を回転させながら前記被排出部に排出させる制御を、前記排出機構に対して行う
請求項1に記載の造形装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記曲がり角度よりも大きい回転角度に前記造形材を回転させながら前記被排出部に排出させる制御を、前記排出機構に対して行う
請求項2に記載の造形装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記曲がり角度よりも大きく且つ90度以下の回転角度に前記造形材を回転させながら前記被排出部に排出させる制御を、前記排出機構に対して行う
請求項3に記載の造形装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記造形材に張力を付与した状態で、前記反対側へ前記造形材を回転させながら前記被排出部に排出させる制御を、前記排出機構に対して行う
請求項1~4のいずれか1項に記載の造形装置。
【請求項9】
前記排出機構は、
前記造形材を前記被排出部に排出する排出部と、
前記造形材を前記反対側へ回転させながら前記排出部へ前記造形材を搬送する搬送部と、
前記搬送部の上流側で前記造形材に張力を付与する付与部と、
を有する請求項8に記載の造形装置。
【請求項10】
前記排出機構は、
前記造形材を前記被排出部に排出する排出部と、
前記造形材を供給する供給機構と、
前記供給機構からの前記造形材を前記排出部へ前記造形材を搬送する搬送部と、
を有し、
前記供給機構及び前記搬送部が、前記反対側へ回転することで該反対側へ前記造形材を回転させながら前記排出部へ前記造形材を搬送する
請求項1~9のいずれか1項に記載の造形装置。
【請求項11】
前記供給機構は、
前記束を供給する供給部と、
前記供給部から供給された前記束に樹脂を含侵させる含浸部と、
を有し、
前記供給部、前記含浸部及び前記搬送部が、前記反対側へ回転することで該反対側へ前記造形材を回転させながら前記排出部へ前記造形材を搬送する
請求項10に記載の造形装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記造形材に対する連続繊維の割合に応じて、前記造形材の回転角度及び回転速度の少なくとも1つの設定を変更する
請求項1~11のいずれか1項に造形装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記排出機構における前記造形材の回転角度及び回転速度に応じて、造形条件の設定を変更する
請求項11又は12に記載の造形装置。
【請求項14】
前記排出機構は、
前記造形材の回転角度としての捻じり角をθ
tw
とし、
前記造形材の複数の連続繊維のうち前記排出機構の進行方向に対する垂直方向に沿って一番離れている連続繊維間の距離をd[mm]とし、前記連続繊維の破断伸び率をEfとし、
前記排出機構が前記被排出部に対して直線状に相対移動する場合の単位移動距離あたりのねじれ角をω
tw
[rad/mm]とし、
前記排出機構が前記被排出部に対して曲線状に相対移動する場合において、前記排出機構の前記被排出部に対する曲がり角度をθ
dp
[rad]とし、曲率半径をR[mm]とし、曲がり角度θ
dp
と捻じり角θ
tw
の比をk
tw
とした場合において、
前記被排出部に対して直線状に相対移動し前記造形材を前記被排出部に排出する際において、以下の条件1及び条件2aを満たし、
前記被排出部に対して曲線状に相対移動し前記造形材を前記被排出部に排出する際において、以下の条件1及び条件2bを満たす
請求項1~13のいずれか1項に記載の造形装置。
条件1:|θ
tw
|≦π/2
条件2a:|dω
tw
|≦Ef
条件2b:|d(1+k
tw
)/R|≦Ef
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、三次元造形装置において、造形材で曲線を形成する際に、造形材を180度ねじる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、排出機構が、台などの被排出部に対して曲線状に相対移動し、造形材を180度以上回転させながら被排出部に排出する構成では、連続繊維が捻じれる場合がある。
【0005】
本発明は、造形材を180度以上回転させながら被排出部に排出する構成に比べ、連続繊維の捻じれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様は、連続繊維の束に樹脂を含侵させた線状の造形材が排出される被排出部と、前記被排出部に対して曲線状に相対移動し、前記被排出部に対する曲がり方向と反対側へ前記造形材を180度未満の範囲で回転させながら前記被排出部に排出する排出機構と、を備える。
【0007】
第2態様では、前記排出機構は、前記排出機構の前記被排出部に対する曲がり角度に応じた回転角度に前記造形材を回転させながら前記被排出部に排出する。
【0008】
第3態様では、前記排出機構は、前記曲がり角度よりも大きい回転角度に前記造形材を回転させながら前記被排出部に排出する。
【0009】
第4態様では、前記排出機構は、前記曲がり角度よりも大きく且つ90度以下の回転角度に前記造形材を回転させながら前記被排出部に排出する。
【0010】
第5態様では、前記排出機構は、前記造形材に張力を付与した状態で、前記反対側へ前記造形材を回転させながら前記被排出部に排出する。
【0011】
第6態様では、前記排出機構は、前記造形材を前記被排出部に排出する排出部と、前記造形材を前記反対側へ回転させながら前記排出部へ前記造形材を搬送する搬送部と、前記搬送部の上流側で前記造形材に張力を付与する付与部と、を有する。
【0012】
第7態様では、前記排出機構は、前記造形材を前記被排出部に排出する排出部と、前記造形材を供給する供給機構と、前記供給機構からの前記造形材を前記排出部へ前記造形材を搬送する搬送部と、を有し、前記供給機構及び前記搬送部が、前記反対側へ回転することで該反対側へ前記造形材を回転させながら前記排出部へ前記造形材を搬送する。
【0013】
第8態様では、前記供給機構は、前記束を供給する供給部と、前記供給部から供給された前記束に樹脂を含侵させる含浸部と、を有し、前記供給部、前記含浸部及び前記搬送部が、前記反対側へ回転することで該反対側へ前記造形材を回転させながら前記排出部へ前記造形材を搬送する。
【0014】
第9態様では、前記排出機構は、前記造形材に対する連続繊維の割合に応じて、前記造形材の回転角度及び回転速度の少なくとも1つの設定が変更される。
【0015】
第10態様では、前記排出機構における前記造形材の回転角度及び回転速度に応じて、造形条件の設定を変更する。
【0016】
第11態様では、前記排出機構は、前記被排出部に対する曲がり方向と反対側へ前記造形材を180度未満の範囲で回転させながら前記被排出部に排出した後、前記曲がり方向に沿った順方向へ回転させながら前記被排出部に排出させる。
【0017】
第12態様では、前記排出機構は、前記被排出部に対して曲線状に相対移動する際において、前記被排出部に対する曲がり方向と反対側へ前記造形材を180度未満の範囲で回転させながら前記被排出部に排出した後、前記曲がり方向に沿った順方向へ回転させながら前記被排出部に排出させる動作を、繰り返す。
【0018】
第13態様では、前記排出機構は、前記造形材の回転角度としての捻じり角をθtwとし、前記造形材の複数の連続繊維のうち前記排出機構の進行方向に対する垂直方向に沿って一番離れている連続繊維間の距離をd[mm]とし、前記連続繊維の破断伸び率をEfとし、前記排出機構が前記被排出部に対して直線状に相対移動する場合の単位移動距離あたりのねじれ角をωtw[rad/mm]とし、前記排出機構が前記被排出部に対して曲線状に相対移動する場合において、前記排出機構の前記被排出部に対する曲がり角度をθdp[rad]とし、曲率半径をR[mm]とし、曲がり角度θdpと捻じり角θtwの比をktwとした場合において、前記被排出部に対して直線状に相対移動し前記造形材を前記被排出部に排出する際において、以下の条件1及び条件2aを満たし、前記被排出部に対して曲線状に相対移動し前記造形材を前記被排出部に排出する際において、以下の条件1及び条件2bを満たす。
条件1:|θtw|≦π/2
条件2a:|dωtw|≦Ef
条件2b:|d(1+ktw)/R|≦Ef
【0019】
第14態様では、前記排出機構は、複数備えられ、一の前記排出機構が前記被排出部に対して曲線状に相対移動する際の曲率が、他の前記排出機構における曲率よりも大きい場合に、前記一の排出機構の回転角度を、前記他の排出機構の回転角度よりも大きくする。
【0020】
第15態様では、前記他の排出機構は、前記曲率が予め定められた閾値を超える場合に前記造形材を回転させる。
【0021】
第16態様は、連続繊維の束に樹脂を含侵させた線状の造形材が排出される被排出部と、前記被排出部に対して相対移動し、前記造形材の内周側の前記連続繊維と前記造形材の外周側の前記連続繊維とが接近するように、前記造形材を曲線状に前記被排出部に排出する排出機構と、を備える。
【発明の効果】
【0022】
第1態様の構成によれば、造形材を180度以上回転させながら被排出部に排出する構成に比べ、連続繊維の捻じれが抑制される。
【0023】
第2態様の構成によれば、排出機構の被排出部に対する曲がり角度に関わらず、造形材の回転角度が一定である構成に比べ、造形材の曲線部での割れが抑制される。
【0024】
第3態様の構成によれば、曲がり角度以下の回転角度に造形材を回転させながら被排出部に排出する構成に比べ、造形材の曲線部での割れが抑制される。
【0025】
第4態様の構成によれば、曲がり角度よりも大きく且つ90度を超える回転角度に造形材を回転させながら被排出部に排出する構成に比べ、連続繊維の捻じれ及び、造形材の曲線部における割れが抑制される。
【0026】
第5態様の構成によれば、張力が付与されていない状態の造形材を被排出部に排出する構成に比べ、造形材の曲線部での割れが抑制される。
【0027】
第6態様の構成によれば、搬送部の下流側で造形材に張力を付与する構成に比べ、造形材の曲線部での割れが抑制される。
【0028】
第7態様の構成によれば、搬送部のみが回転する構成に比べ、連続繊維の捻じれが抑制される。
【0029】
第8態様の構成によれば、供給部及び含浸部の一方と搬送部とのみが回転する構成に比べ、連続繊維の捻じれが抑制される。
【0030】
第9態様の構成によれば、造形材に対する連続繊維の割合に関わらず、排出機構における造形材の回転角度及び回転速度が一定である構成に比べ、造形材の曲線部での割れが抑制される。
【0031】
第10態様の構成によれば、排出機構における造形材の回転角度及び回転速度に関わらず、造形条件が一定である構成に比べ、造形物の造形不良が抑制される。
【0032】
第11態様の構成によれば、被排出部に対する曲がり方向と反対側へのみ造形材を回転させる構成に比べ、連続繊維の捻じれが抑制される。
【0033】
第12態様の構成によれば、被排出部に対する曲がり方向と反対側へ造形材を180度未満の範囲で回転させながら被排出部に排出した後、曲がり方向に沿った順方向へ回転させながら被排出部に排出させる動作を一回のみ行う構成に比べ、造形材の曲線部での割れが抑制される。
【0034】
第13態様の構成によれば、条件1のみを満たす構成に比べ、造形材の曲線部での割れが抑制される。
【0035】
第14態様の構成によれば、複数の排出機構の回転角度を常に同じとする構成に比べ、連続繊維の捻じれが抑制される。
【0036】
第15態様の構成によれば、複数の排出機構によって常に造形材を回転させる構成に比べ、連続繊維の捻じれが抑制される。
【0037】
第16態様の構成によれば、造形材の内周側の連続繊維と、造形材の外周側の連続繊維との距離が一定になるように、造形材を曲線状に被排出部に排出する構成に比べ、造形材の曲線部での割れが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本実施形態に係る造形装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係る造形装置に用いられる連続繊維の束の断面図である。
【
図3】本実施形態に係る造形装置に用いられる造形材の断面図である。
【
図4】
図1に示す造形装置の支持体を90度回転させた状態を示す概略図である。
【
図5】本実施形態に係る造形装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図6】本実施形態に係る造形装置によって造形される造形物のU字状部分を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る造形ユニットの動作を示す概略図である。
【
図8】本実施形態に係る造形ユニット曲がり角度と造形材の回転角度との関係を示した図である。
【
図9】本実施形態に係る造形物のU字状部分を構成する造形材の断面を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る造形物のU字状部分における連続繊維の経路を示す図である。
【
図11】比較例に係る造形ユニットの動作を示す概略図である。
【
図12】比較例に係る造形物のU字状部分における連続繊維の経路を示す図である。
【
図13】扁平形状に変形した造形材の断面図である。
【
図14】扁平形状に変形した造形材の排出されたときの姿勢を示す図である。
【
図15】第三変形例に係る造形装置の構成を示す概略図である。
【
図16】第四変形例に係る造形ユニットの動作を示す概略図である。
【
図17】第四変形例に係る造形物のU字状部分における連続繊維の経路を示す図である。
【
図18】変形例に係る造形材を回転させる機構を示す概略図である。
【
図19】造形材の断面が非円形状である場合の回転機構を示す概略図である。
【
図21】最内側繊維の経路長、最外側繊維の経路長を示す図である。
【
図23】造形ユニットを複数有する場合の動作を示す概略図である。
【
図24】造形ユニットを複数有する造形装置の構成を示す概略図である。
【
図25】造形ユニットを複数有する場合の造形ユニットの制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。なお、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行方向(水平方向)を示す。
【0040】
(造形装置10)
まず、造形装置10について説明する。
図1には、造形装置10の概略構成が示されている。
【0041】
図1に示される造形装置10は、造形物を造形する装置である。具体的には、造形装置10は、いわゆる溶解積層方式(FDM(Fused Deposition Modeling)方式ともいう)の三次元造形装置(いわゆる3Dプリンタ)である。さらに具体的には、造形装置10は、複数の層の層データに基づき、造形材100によって各層を形成して、造形物を造形する装置である。
【0042】
本実施形態に係る造形装置10は、
図1に示されるように、造形ユニット12と、台14と、移動機構18と、制御部16と、を備えている。なお、造形装置10で用いられる造形材100(
図3参照)は、連続繊維120の束110(以下、繊維束110という)に樹脂112を含侵させた線状の造形材である。
【0043】
(台14、移動機構18)
図1に示される台14は、被排出部の一例である。具体的には、台14は、造形材100が排出される台である。さらに具体的には、台14は、台14に排出された造形材100が載せられる台である。さらに言えば、造形材100によって造形物が造形される台である。
【0044】
台14は、
図1に示されるように、造形ユニット12の下方に配置されている。台14は、造形材100が排出される被排出面14Aを有している。被排出面14Aは、造形材100が載せられる面ともいえる。被排出面14Aは、造形ユニット12側を向いている。すなわち、台14は、上方側を向いている。さらに具体的には、被排出面14Aは、水平面とされている。
【0045】
図1に示される移動機構18は、台14を移動させる機構である。具体的には、移動機構18は、例えば、台14を装置上下方向、装置幅方向及び装置奥行方向に移動させる機構である。換言すれば、移動機構18は、造形ユニット12を、台14に対して相対的に装置上下方向、装置幅方向及び装置奥行方向に移動させる機構ともいえる。
【0046】
さらに具体的には、移動機構18は、台14を、装置上下方向、装置幅方向及び装置奥行方向の任意の位置に移動可能とされている。これにより、移動機構18は、台14を曲線状に移動可能とされている。換言すれば、造形ユニット12は、台14に対して相対的に、被排出面14Aに沿って曲線上に移動可能な構成とされている。
【0047】
移動機構18としては、例えば、台14を、装置上下方向、装置幅方向及び装置奥行方向の任意の位置に移動可能な三軸ロボが用いられる。
【0048】
(造形ユニット12)
図1に示される造形ユニット12は、排出機構の一例である。具体的には、造形ユニット12は、台14に造形材100を排出するユニットである。さらに具体的には、造形ユニット12は、支持体60と、供給機構20と、搬送部40と、排出部50と、加圧ロール56と、回転機構62と、を有している。
【0049】
(支持体60)
支持体60は、供給機構20の各部と、搬送部40と、を支持する支持体である。
【0050】
(供給機構20)
供給機構20は、繊維束110に樹脂112を含侵させた線状の造形材100を供給する機構である。具体的には、供給機構20は、供給部21と、巻掛ロール22と、含浸部24と、を有している。
【0051】
(供給部21)
供給部21は、巻掛ロール22へ繊維束110を供給する機能を有している。具体的には、供給部21は、繊維束110が巻かれたリールで構成されている。この供給部21は、支持体60に対して回転可能に支持されている。
【0052】
供給部21は、
図1の反時計方向に回転することで、繊維束110を装置幅方向(
図1における左方側)へ送り出す。
【0053】
なお、繊維束110とは、複数の連続繊維120が撚り合わされずに束ねられたものである。本実施形態では、連続繊維120には、一例として、直径0.005〔mm〕の炭素繊維が用いられており、この連続繊維120が1000本以上束ねられている。そして、束ねられた状態で、
図2に示されるように、繊維束110の断面は、直径(図中D1)0.3〔mm〕以上0.4〔mm〕以下の円形状とされている。なお、
図2では、繊維の本数を少なくして断面を示している。
【0054】
(巻掛ロール22)
巻掛ロール22は、
図1に示されるように、装置幅方向において、供給部21の一方側(
図1における左方側)に配置されており、支持体60に対して回転可能に支持されている。そして、巻掛ロール22には、供給部21から巻き出された繊維束110が巻き掛けられている。
【0055】
供給部21から装置幅方向へ巻き出された繊維束110は、巻掛ロール22に巻き掛けられることで、下方へ向きを変えて下方へ送られる。したがって、巻掛ロール22は、繊維束110を下方へ案内する機能を有している。
【0056】
(含浸部24)
含浸部24は、繊維束110に樹脂を含浸させて線状の造形材100とする含浸部である。含浸部24は、
図1に示されるように、造形材100が供給部21から送られる送り方向において、巻掛ロール22に対する下流側に配置されている。具体的には、含浸部24は、巻掛ロール22に対する下方側に配置されている。
【0057】
この含浸部24は、繊維束110が通過する通過部26と、通過部26へ樹脂を送り出す樹脂送出部28と、を有している。
【0058】
樹脂送出部28の内部には、樹脂が収容されており、樹脂送出部28は、収容された樹脂を加熱するヒータ28Aと、加熱された樹脂を通過部26に送り出すスクリュー28Bと、を有している。本実施形態では、一例として、樹脂送出部28の内部には、樹脂としてポリプロピレン樹脂が収容されており、ヒータ28Aは、収容されたポリプロピレン樹脂を例えば、200〔℃〕以上300〔℃〕以下に加熱することで溶融している。
【0059】
通過部26は、供給部21から送り出された繊維束110が通過するように配置されている。また、通過部26は、上下方向に延びている円筒状とされており、供給部21から巻き出された繊維束110を受け入れる受入口26Aと、内部を通過する繊維束110を周方向から囲むように樹脂が滞留している円柱状の滞留部26Bとを有している。さらに、通過部26は、樹脂が繊維束110に含侵した造形材100を排出する排出ヘッド26Cと、周壁に取り付けられ、滞留部26Bに滞留している樹脂を加熱するヒータ26Dと、を有している。そして、受入口26A、滞留部26B、及び排出ヘッド26Cは上方から下方へ向けてこの順番で並んでいる。本実施形態では、一例として、ヒータ26Dは、滞留部26Bに滞留しているポリプロピレン樹脂を200〔℃〕以上300〔℃〕以下に加熱する。
【0060】
含浸部24では、樹脂送出部28は、加熱された樹脂を通過部26の滞留部26Bに送り出す。また、通過部26は、受入口26Aから受け入れて滞留部26Bを通過する繊維束110に樹脂を含浸させる。さらに、通過部26は、樹脂が繊維束110に含侵した線状の造形材100を排出ヘッド26Cから排出する。また、排出ヘッド26Cから排出された状態で、
図3に示されるように、夫々の繊維間の隙間には、樹脂が含浸されており、造形材100の断面は、直径0.3〔mm〕以上0.4〔mm〕以下の円形状とされている。なお、
図3では、繊維の本数を少なくして断面を示している。
【0061】
このように、繊維束110に樹脂を含浸させることで、夫々の繊維同士が樹脂によって接着される。これにより、含浸部24は、夫々の繊維同士を接着させる接着手段として機能している。
【0062】
(搬送部40)
搬送部40は、供給機構20からの造形材100を排出部50へ搬送する機能を有している。搬送部40は、
図1に示されるように、造形材100が供給部21から送られる送り方向において、含浸部24に対する下流側に配置されている。具体的には、搬送部40は、含浸部24に対する下方側に配置されている。
【0063】
この搬送部40は、例えば、一対の搬送ロール42、44を有している。搬送ロール44は、造形材100を挟んで搬送ロール42の反対側に配置されている。
【0064】
搬送ロール42、44は、支持体60に回転可能に支持されている。この搬送ロール42、44は、図示しない駆動手段から駆動力が伝達されて、周方向に回転するようになっている。搬送部40では、回転する搬送ロール42、44は、例えば、造形材100を30〔mm/sec〕の速さで、挟持搬送するようになっている。なお、造形材100の搬送速度は、30〔mm/sec〕に限られない。
【0065】
なお、一対の搬送ロール42、44は、造形材100を加熱する加熱部を有していてもよい。また、搬送部40としては、搬送ロールに替えて搬送ベルトを有していてもよい。
【0066】
(排出部50)
排出部50は、造形材100を台14に排出する機能を有している。排出部50は、
図1に示されるように、造形材100が供給部21から送られる送り方向において、搬送部40に対する下流側に配置されている。具体的には、排出部50は、搬送部40に対する下方側に配置されている。
【0067】
また、排出部50は、搬送部40から送られた造形材100が流入する流入口50Cと、流入口50Cから流入された造形材100を台14の被排出面14Aへ排出する排出口50Bと、を有している。排出部50は、造形材100を加熱する加熱部を有していてもよい。
【0068】
(加圧ロール56)
加圧ロール56は、排出部50から排出された造形材100を加圧する加圧部として機能する。具体的には、加圧ロール56は、台14の被排出面14Aに造形材100を押し付けることで、造形材100を台14との間に挟むことで加圧する。加圧ロール56が造形材100を加圧することで、台14に排出された造形材100の高さが揃えられる。
【0069】
なお、加圧ロール56は、造形材100を加熱する加熱部を有していてもよい。加熱部としては、例えば、加圧ロール56の内部に設けられた加熱源が用いられる。さらに、加熱部としては、加圧ロール56を外部から加熱する加熱装置であってもよい。当該加熱源及び当該加熱装置としては、電熱線やハロゲンランプなどを用いたヒータが挙げられる。
【0070】
(回転機構62)
回転機構62は、
図4に示されるように、排出部50から台14に向けて下方へ排出される造形材100の軸線周りに支持体60を回転させる機構である。具体的には、回転機構62は、支持体60を上下方向に沿った軸線周りに回転させる機構である。さらに言えば、回転機構62は、供給機構20及び搬送部40を支持する支持体60を、台14の被排出面14Aに対する垂直方向に沿った軸線周りに正転及び逆転させる機構である。
【0071】
換言すれば、回転機構62は、供給機構20及び搬送部40を回転させる機能を有している。具体的には、回転機構62は、供給部21、巻掛ロール22、含浸部24及び搬送部40を回転させる機能を有している。なお、
図4は、支持体60を90度回転させた状態を示す図である。
【0072】
回転機構62は、支持体60を回転させることで、造形材100を上下方向に沿った軸線周りに回転させる機能を有している。具体的には、回転機構62は、造形ユニット12が台14に対して曲線状に相対移動する場合に、台14に対する造形ユニット12の、曲がり方向RAとは反対側の反対方向SB(
図7参照)へ、180度未満の範囲で造形材100を回転させる。なお、反対方向SBへの回転は、造形材100を自転させる回転であり、曲がり方向RAへの移動は、造形材100を公転させる移動といえる。回転機構62の具体的な回転動作については、後述する。また、
図7では、説明の便宜上、曲がり方向RAへ移動する排出部50の移動中心PAから、排出部50を離して図示している。
【0073】
(制御部16)
制御部16は、造形装置10の各部の動作を制御する。具体的には、制御部16は、プログラムが記憶されたROM(ロム)やストレージ等で構成された記憶部と、プログラムに従って動作するプロセッサと、を有しており、記憶部に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより、造形装置10の各部の動作が制御される。
【0074】
制御部16は、
図5に示されるように、機能構成として、移動機構18の駆動を制御する移動機構制御部16Aと、含浸部24の駆動を制御する含浸部制御部16Bと、搬送部40の駆動を制御する搬送部制御部16Cと、回転機構62の動作を制御する回転機構制御部16Dと、を有している。含浸部制御部16Bは、具体的には、含浸部24のヒータ28A、スクリュー28B及びヒータ26Dの駆動を制御する。
【0075】
制御部16は、造形物の三次元データから作成された複数の層データに基づき、以下の造形動作が実行されるように、移動機構18、供給機構20、搬送部40、及び回転機構62の動作を制御する。
【0076】
(造形装置10の造形動作)
ここでは、造形物の三次元データから作成された複数の層データに基づき、曲線状部分を含む造形物を造形する造形動作について説明する。具体的には、当該層データに基づき、
図6に示されるように、直線状部分202と曲線状部分203とを有するU字状部分200を含む造形物を造形する造形動作について説明する。
【0077】
U字状部分200を造形する場合では、移動機構18は、台14を移動させることで、台14に対して造形ユニット12をU字状に相対移動させる。具体的には、まず、造形ユニット12は、例えば、台14の被排出面14Aに沿って、第一方向M1(
図7参照)へ平面視にて直線状へ相対移動する(以下、第一直線移動という)。第一方向M1は、例えば、
図1に示す装置幅方向Wである。
【0078】
次に、造形ユニット12は、例えば、台14の被排出面14Aに対して、曲線状に相対移動する(以下、曲線移動という)。次に、造形ユニット12は、例えば、台14の被排出面14Aに沿って、第一方向M1に対する反対方向M2(
図7参照)へ平面視にて直線状へ相対移動する(以下、第二直線移動という)。
【0079】
具体的には、
図7に示されるように、造形ユニット12は、曲線移動において、台14の被排出面14A(
図1参照)に沿って、曲がり方向RA(矢印RA方向参照)に曲がりながら相対移動する。さらに言えば、造形ユニット12は、曲線移動において、平面視にて円弧状に相対移動する。曲がり方向RAとは、造形ユニット12が、曲線移動において、進行する方向である。曲がり方向RAは、
図7の紙面において、時計回り方向(すなわち右方向に向かう方向)である。
【0080】
なお、造形ユニット12は、
図7に示されるように、排出部50の正面部50Aが移動方向下流側(進行方向)を向いた状態で相対移動する。また、
図7では、排出部50の排出口50B及び、排出口50Bから排出される造形材100を透視して示している。また、第一直線移動において、造形材100において、排出部50の進行方向を向いていた部分が点100Aで示されている。点100Aは、曲線移動の開始時に、造形材100において排出部50の進行方向を向いていた部分を示しているともいえる。
【0081】
そして、造形ユニット12の曲線移動において、回転機構62が、支持体60を上下方向に沿った軸線周りに、曲がり方向RAとは反対側の反対方向SB(矢印SB方向参照)へ回転させる。なお、曲がり方向RAが
図7の紙面における時計回り方向(すなわち右方向に向かう方向)であるのに対して、反対方向SBは、点100Aが
図7の紙面における反時計回り方向(すなわち左方向へ向かう方向)とされている。
【0082】
そして、本実施形態に係る造形装置10では、造形ユニット12の曲線移動において、反対方向SBへ造形材100を、180度未満の範囲で回転させながら台14に排出する。
【0083】
回転機構62は、具体的には、造形ユニット12の曲線移動において、造形ユニット12の台14に対する曲がり角度θAに応じた回転角度θXに造形材100を回転させながら台14に排出する。
【0084】
さらに具体的には、曲がり角度θAが90度未満の範囲(
図7のNAの範囲)では、回転角度θXは、曲がり角度θAよりも大きい回転角度とされる。さらに具体的には、回転角度θXは、曲がり角度θAよりも大きく且つ90度以下の回転角度とされる。
【0085】
したがって、曲がり角度θAが90度未満の範囲では、
図7及び
図8に示されるように、曲がり角度θAが大きくなるのに伴って造形材100の回転角度θXが大きくなっていく。なお、
図7に示す角度θBは、曲がり角度θAと同じ角度である。また、
図8は、曲がり角度θAと回転角度θXとの関係を示す図である。
【0086】
また、曲がり角度θAが90度において、回転角度θXは、造形ユニット12の曲がり角度θAと同じ90度とされる。さらに、曲がり角度θAが90度を超え、180度未満の範囲(
図7のNBの範囲)では、排出部50が相対移動するのに伴って造形材100の回転角度θXが小さくなっていく。具体的には、曲がり角度θAが90度を超え、180度未満の範囲(
図7のNBの範囲)では、曲がり角度θAが0度から90度未満の範囲(
図7のNAの範囲)の逆の動作が造形材100に対して行われる(
図8参照)。すなわち、曲がり角度θAが90度を超え、180度未満の範囲(
図7のNBの範囲)では、回転機構62が、支持体60を上下方向に沿った軸線周りに、曲がり方向RAに沿った順方向SA(矢印SA方向参照)へ造形材100を回転させることで、造形材100を捻じり戻す。
【0087】
そして、本実施形態では、造形ユニット12の曲線移動の開始時において、造形材100の内周側(すなわち、曲がり方向RA側)の連続繊維128(
図9参照)と、造形材100の外周側(すなわち、曲がり方向RAとは反対側)の連続繊維129(
図9参照)とは、
図10の破線で示されるような経路を進行する。
【0088】
すなわち、連続繊維128は、連続繊維129に接近するように、造形材100の内周側を進行する。換言すれば、連続繊維128は曲げ半径が大きくなるように、造形材100の内周側を進行する。一方、連続繊維129は、連続繊維128に接近するように、造形材100の外周側を進行する。連続繊維129は曲げ半径が小さくなるように、造形材100の外周側を進行する。
【0089】
このように、本実施形態に係る造形装置10では、造形材100の内周側の連続繊維128と造形材100の外周側の連続繊維129とが接近するように、造形材100を曲線状に台14に排出する。なお、曲がり角度θAとは、曲線移動の開始位置を0度とした角度である。回転角度θXとは、曲線移動の開始時に、造形材100において排出部50の進行方向を向いていた部分(点100A)と造形材100との結ぶ線HAの進行経路12Sに対する角度である。
【0090】
ここで、造形ユニット12の曲線移動において、造形材100を反対方向SBへ回転させずに、台14に排出する
図11に示す構成(以下、本構成を第一比較例という)では、
図12に示されるように、連続繊維128と連続繊維129とは、接近せずに、一定の距離を保ったまま進行する。このため、造形材100の外周側を進行する連続繊維129は、造形材100の内周側を進行する連続繊維128に比べ、進行する距離が長くなるため、引っ張られて切れやすい。この結果、造形材100が外周側で割れやすい。一方、造形材100の内周側を進行する連続繊維128は、造形材100の外周側を進行する連続繊維129に比べ、進行する距離が短くなるため、縮んで各部同士が重なりやすい。この結果、造形材100が内周側でも割れやすい。したがって、第一比較例では、造形材100の曲線部において割れが発生しやすい。
【0091】
さらに、曲がり方向RAへ造形材100を回転させながら台14に造形材100を排出する構成(以下、本構成を第二比較例という)では、連続繊維128と連続繊維129とが離れ、造形材100の曲線部において割れが発生しやすい。
【0092】
これに対して、本実施形態に係る造形装置10では、造形材100の内周側の連続繊維128と造形材100の外周側の連続繊維129とが接近するように、造形材100を曲線状に台14に排出する。
【0093】
このため、造形材100の外周側を進行する連続繊維129は、第一比較例及び第二比較例に比べ、進行する距離が短くなるため、切れにくい。この結果、造形材100が外周側で割れにくい。また、造形材100の内周側を進行する連続繊維128は、第一比較例及び第二比較例に比べ、進行する距離が長くなるため、各部分同士が内周側で重なりにくい。この結果、造形材100が内周側でも割れにくい。よって、造形材100の曲線部での割れが抑制される。なお、
図10では、第一比較例において、連続繊維128及び連続繊維129が進行する位置が、二点鎖線で示されている。
【0094】
また、造形装置10では、前述のように、造形ユニット12の曲線移動において、造形材100を180度未満の範囲で回転させながら台14に排出する。ここで、造形材100を180度以上回転させながら台14に排出する構成(以下、本構成を第三比較例という)では、連続繊維120が捻じれやすい。連続繊維120が捻じれると、造形物のU字状部分200を構成する造形材100に起伏が生じたり、連続繊維120が破損したりする。
【0095】
これに対して、造形装置10では、造形ユニット12の曲線移動において、造形材100を180度未満の範囲で回転させながら台14に排出するので、第三比較例に比べ、連続繊維120の捻じれが抑制される。
【0096】
また、造形装置10では、造形ユニット12の曲線移動において、造形ユニット12の台14に対する曲がり角度θAに応じた回転角度θXに造形材100を回転させながら台14に排出する。具体的には、曲がり角度θAが90度未満の範囲では、曲がり角度θAが大きくなるのに伴って造形材100の回転角度θXが大きくなっていく。これにより、造形ユニット12の台14に対する曲がり角度θAに関わらず、造形材100の回転角度θXが一定である構成(以下、本構成を第四比較例という)に比べ、曲がり角度θAが90度未満の範囲において、連続繊維128と連続繊維129とが、徐々に接近する。このため、第四比較例に比べ、造形材100の曲線部での割れが抑制される。
【0097】
また、造形装置10では、曲がり角度θAが90度未満の範囲において、回転角度θXは、曲がり角度θAよりも大きい回転角度とされている。
【0098】
このため、曲がり角度以下の回転角度に造形材を回転させながら被排出部に排出する構成(以下、本構成を第五比較例という)に比べ、連続繊維128と連続繊維129とが、接近する。このため、第五比較例に比べ、造形材100の曲線部での割れが抑制される。
【0099】
また、造形装置10では、曲がり角度θAが90度未満の範囲において、回転角度θXは、90度以下の回転角度とされている。このため、90度を超える回転角度に造形材100を回転させる構成に比べ、連続繊維120の捻じれが抑制される。この結果、連続繊維120の破損、さらには、当該破損に起因する造形材100の曲線部における割れが抑制される。
【0100】
すなわち、造形装置10によれば、曲がり角度θAよりも大きく且つ90度を超える回転角度θXに造形材100を回転させながら台14に排出する構成に比べ、造形材100の曲線部における割れが抑制される。
【0101】
また、造形装置10では、回転機構62が、供給機構20及び搬送部40を反対方向SBへ回転させることで、造形材100を反対方向SBへ回転させる。このため、搬送部40のみが回転する構成に比べ、連続繊維120の捻じれが抑制される。
【0102】
さらに具体的には、造形装置10では、回転機構62が、供給部21、巻掛ロール22、含浸部24及び搬送部40を反対方向SBへ回転させることで、造形材100を反対方向SBへ回転させる。このため、供給部21、巻掛ロール22及び含浸部24の一部と、搬送部40のみが回転する構成に比べ、連続繊維120の捻じれが抑制される。
【0103】
また、造形装置10では、曲がり角度θAが90度を超え、180度未満の範囲(
図7のNBの範囲)では、回転機構62が、支持体60を上下方向に沿った軸線周りに、曲がり方向RAに沿った順方向SA(矢印SA方向参照)へ造形材100を回転させることで、造形材100を捻じり戻す。このため、回転機構62が、支持体60を反対方向SBへのみ回転させる構成に比べ、連続繊維120の捻じれが抑制される。このように、本実施形態では、回転機構62が支持体60を順方向SAに回転させることで、強制的に造形材100を回転させるが、例えば、造形材100を反対方向SBへ回転させた後、造形材100を拘束する拘束力を解放すること(すなわち造形材100を非拘束とすること)で、造形材100を順方向SAへ回転させる構成であってもよい。
【0104】
なお、造形ユニット12では、被排出面14Aに層が一層形成されると、移動機構18は、台14を下方へ移動させ、前述した工程を繰り返し、層を複数重ねることで、造形物が造形される。
【0105】
(第一変形例)
造形装置10としては、断面円形状の造形材100を断面扁平形状に変形した状態で(
図13参照)、台14に排出する構成であってもよい。
【0106】
ここで、扁平形状の断面とは、断面の一方向の長さが、断面において一方向に対して交差する交差方向の長さと比して長くなると共に、交差方向を向く一対の平面(以下「扁平平面100D」)が形成されている断面である。つまり、扁平平面100Dとは、扁平形状の短手方向を向く一対の平面のことである。
【0107】
造形材100の断面扁平形状へ変形は、例えば、搬送部40の一対の搬送ロール42、44で、加圧及び加熱することで行われる。この場合では、一対の搬送ロール42、44の少なくとも一方に、造形材100を加熱する加熱部が備えられる。
【0108】
本変形においても、
図14に示されるように、造形ユニット12の曲線移動において、造形材100を上下方向に沿った軸線周りに、曲がり方向RAとは反対側の反対方向SB(矢印SB方向参照)へ回転させる。
【0109】
(第二変形例)
造形ユニット12は、造形材100に対する連続繊維の割合に応じて、造形材100の回転角度及び回転速度の少なくとも1つの設定を変更する構成であってもよい。
【0110】
ここで、造形材100に対する連続繊維の割合が大きくなると、造形材100の剛性が高くなるため、造形材100が回転しにくくなる。換言すれば、造形材100に対する連続繊維の割合が大きくなると、回転機構62による支持体60の回転量に対して、造形材100の回転量が低下する場合がある。また、回転機構62による支持体60の回転に対して、造形材100が排出部50において回転する応答性が低下する場合がある。
【0111】
そこで、制御部16が、例えば、造形材100に対する連続繊維の割合が大きくなった場合に、造形材100の回転角度及び回転速度の少なくとも1つが大きくなるように、造形材100の回転角度及び回転速度の少なくとも1つの設定を変更する。
【0112】
これにより、造形材に対する連続繊維の割合に関わらず、排出機構における造形材の回転角度及び回転速度が一定である構成(以下、本構成を第六比較例という)に比べ、造形材100の回転不良(狙いの回転角度に回転しないこと)が抑制される。この結果、第六比較例に比べ、造形材100の曲線部での割れが抑制される。
【0113】
造形材100に対する連続繊維の割合は、含浸部24において繊維束110に供給される樹脂の量によって変更される。具体的には、含浸部24において繊維束110に供給される樹脂の量が多くなると、造形材100に対する連続繊維の割合が小さくなり、含浸部24において繊維束110に供給される樹脂の量が少なくなると、造形材100に対する連続繊維の割合が大きくなる。制御部16は、造形材100に対する樹脂の量から求められる、造形材100に対する連続繊維の割合に基づいて、造形材100の回転角度及び回転速度の少なくとも1つの設定を変更する。
【0114】
また、制御部16は、造形材100に対する連続繊維の割合が小さくなった場合に、造形材100の回転角度及び回転速度の少なくとも1つが小さくなるように、造形材100の回転角度及び回転速度の少なくとも1つの設定を変更してもよい。
【0115】
さらに、造形ユニット12における造形材100の回転角度及び回転速度に応じて、造形条件の設定を変更してもよい。なお、造形条件とは、含浸部24のヒータ28Aの加熱温度、や当該ヒータ28Aによる樹脂の加熱時間などが挙げられる。
【0116】
ここで、造形材100の回転角度及び回転速度の少なくとも1つが大きくなると、連続繊維120の捻じれが大きくなり、造形物のU字状部分200を構成する造形材100に起伏が生じやすくなる。
【0117】
そこで、造形材100の回転角度及び回転速度の少なくとも1つが大きくなるように、造形材100の回転角度及び回転速度の少なくとも1つの設定を変更された場合に、例えば、含浸部24のヒータ28Aの加熱温度、及び、当該ヒータ28Aによる樹脂の加熱時間に少なくとも一方を大きくする。
【0118】
これにより、造形ユニット12における造形材100の回転角度及び回転速度に関わらず、造形条件が一定である構成に比べ、造形物のU字状部分200を構成する造形材100に起伏が低減され、造形物の造形不良が抑制される。
【0119】
(第三変形例)
さらに、造形ユニット12は、
図15に示されるように、造形材100に張力を付与した状態で、反対方向SBへ造形材100を回転させながら台14に排出する構成であってもよい。
【0120】
具体的には、
図15に示される構成では、搬送部40の上流側で造形材100に張力を付与する付与部90が設けられている。付与部90は、具体的には、巻掛ロール22に対する供給部21とは反対側(
図15の左側)へ、巻掛ロール22を引っ張る引っ張りバネで構成されている。付与部90は、巻掛ロール22を引っ張ることで、造形材100に対して張力を付与する。これにより、造形ユニット12は、造形材100に張力を付与した状態で、反対方向SBへ造形材100を回転させながら台14に排出する。造形材100に付与される張力は、例えば、500gf(すなわち4.9N)とされる。なお、造形材100に付与される張力は、これに限られるものではない。
【0121】
ここで、張力が付与されていない状態の造形材100を台14に排出する構成(以下、本構成を第七比較例という)では、造形材100が弛むことで、造形材100の回転不良(狙いの回転角度に回転しないこと)が生じる場合がある。
【0122】
本変形例では、造形ユニット12は、造形材100に張力を付与した状態で、反対方向SBへ造形材100を回転させながら台14に排出するので、第七比較例に比べ、造形材100の回転不良(狙いの回転角度に回転しないこと)が抑制される。この結果、第七比較例に比べ、造形材100の曲線部での割れが抑制される。
【0123】
また、搬送部40の下流側で造形材100に張力を付与する構成(以下、本構成を第八比較例という)では、造形材100が弛むことで、造形材100の搬送不良(狙いの搬送量分を搬送できないこと)が生じる場合がある。
【0124】
本変形例では、搬送部40の上流側で造形材100に張力を付与するので、第八比較例に比べ、造形材100の搬送不良(狙いの搬送量分を搬送できないこと)が抑制される。
【0125】
(第四変形例)
前述の
図7に示される例では、曲がり角度θAが90度未満の範囲(
図7のNAの範囲)では、反対方向SBへ造形材100を回転させた後、曲がり角度θAが90度を超え180度未満の範囲(
図7のNBの範囲)では、順方向SAへ造形材100を回転させていたが、これに限られない。
【0126】
例えば、曲がり角度θAが180度以下の範囲において、反対方向SBへ造形材100を回転させた後、順方向SAへ造形材100を回転させる動作を繰り返してもよい。具体的には、一例として、
図16に示されるように、造形材100の回転動作が実行される。
図16に示される例では、曲がり角度θAが45度以下の範囲(
図16のMAの範囲)において、反対方向SBへ造形材100を回転させた後、曲がり角度θAが45度を超え90度以下の範囲(
図16のMBの範囲)において、順方向SAへ造形材100を回転させることで、造形材100を捻じり戻す。
【0127】
曲がり角度θAが45度以下の範囲(
図16のMAの範囲)では、具体的には、回転角度θXは、曲がり角度θA以上の回転角度とされる。さらに具体的には、回転角度θXは、曲がり角度θAと同じ角度とされる。したがって、曲がり角度θAが45度以下の範囲では、
図16に示されるように、曲がり角度θAが大きくなるのに伴って造形材100の回転角度θXが大きくなっていく。なお、曲がり角度θAが45度以下の範囲(
図16のMAの範囲)において、回転角度θXは、曲がり角度θAよりも大きく且つ90度以下の回転角度とされていてもよい。
【0128】
また、曲がり角度θAが45度を超え90度以下の範囲(
図16のMBの範囲)では、曲がり角度θAが大きくなるのに伴って、造形材100の回転角度θXが小さくなっていく。曲がり角度θAが90度において、回転角度θXは0度となる。
【0129】
さらに、
図16に示される例では、曲がり角度θAが90度を超え135度以下の範囲(
図16のMCの範囲)において、反対方向SBへ造形材100を回転させた後、曲がり角度θAが135度を超え180度未満の範囲(
図16のMDの範囲)において、順方向SAへ造形材100を回転させることで、造形材100を捻じり戻す。
【0130】
曲がり角度θAが90度を超え135度以下の範囲(
図16のMCの範囲)では、
図16に示されるように、曲がり角度θAが大きくなるのに伴って造形材100の回転角度θXが大きくなっていく。曲がり角度θAが135度において、回転角度θXは例えば、45度となる。
【0131】
また、曲がり角度θAが135度を超え180度以下の範囲(
図16のMDの範囲)では、曲がり角度θAが大きくなるのに伴って、造形材100の回転角度θXが小さくなっていく。曲がり角度θAが180度において、回転角度θXは0度となる。
【0132】
このように、反対方向SBへ造形材100を回転させた後、順方向SAへ造形材100を回転させる動作を繰り返すことで、一回の動作における反対方向SBへの回転角度θXを小さくしても、
図17に示されるように、造形材100の内周側の連続繊維128(
図9参照)と造形材100の外周側の連続繊維129(
図9参照)とが接近するように、造形材100が曲線状に台14に排出される。
【0133】
この結果、連続繊維128と連続繊維129との経路長差が小さくなるので、反対方向SBへ造形材100を回転させた後、順方向SAへ造形材100を回転させる動作を一回のみ行う構成に比べ、造形材100の曲線部での割れが抑制される。
【0134】
なお、
図16に示される例では、45度毎に造形材100の回転方向を替えていたが、例えば、30度毎に造形材100の回転方向を替える構成であってもよい。
【0135】
(造形材100を回転させる構成の変形例)
図1に示される例では、回転機構62が支持体60を回転させることで、造形材100をその軸線周りに回転させる構成であったが、これに限られない。例えば、
図18に示されるように、回転機構62が搬送部40を単独で回転させることで、造形材100をその軸線周りに回転させる構成であってもよい。この構成では、
図18に示されるように、搬送部40を回転可能に支持する支持部材47を、回転機構62が上下方向に沿った軸線周りに回転させることで、造形材100をその軸線周りに回転させる。
【0136】
さらに、造形材100の断面が非円形状である場合には、
図19に示されるように、造形材100が通される通し部としてのガイド49を、回転機構62が上下方向に沿った軸線周りに回転させることで、造形材100をその軸線周りに回転させる構成であってもよい。この構成では、ガイド49は、例えば、
図1に示される搬送部40と排出部50との間に配置される。
【0137】
なお、上記の支持部材47やガイド49に応力センサを設けて、造形材100に蓄積された応力(捻じり力)を検知する構成としてもよい。さらに、この検知結果に基づいて、造形材100の回転角度θXを制御してもよい。
【0138】
(造形材100の許容される捻じり角)
ここで、造形材100の許容される捻じり角について説明する。
【0139】
造形材100中に複数存在する連続繊維120のうち、造形方向に対する垂直方向に沿って一番離れている連続繊維120間の距離を、繊維間距離d[mm]とする(
図20参照)。造形材100が断面円形である場合は、造形材100における垂直方向の一端側及び他端側に配置された連続繊維120間の距離となる。なお、造形方向とは、造形ユニット12(具体的には排出部50)が進行する方向である(
図7の矢印M1、矢印M2及び矢印RA参照)。
【0140】
繊維間距離d[mm]を造形中も変化せず固定した値と仮定すると、常に造形材100を造形方向に向けて曲率半径R[mm]、造形角度θ
dp[rad]の曲線を造形した場合、最内側繊維の経路長(
図21の10L)と最外側繊維の経路長(
図21の12L)の差は、下記のとおりとなる(
図21参照)。なお、造形角度θ
dpは、
図7における曲がり角度θAに相当する。
【0141】
経路長差=(R+1/2d)θdp-(R-1/2d)θdp=dθdp[mm]
【0142】
このとき、造形材100の中心の経路長はRθdp[mm]となるから、連続繊維120の伸び率はd/Rとなる。
【0143】
一般に炭素繊維は、それ以上引っ張ると破断する破断伸び率という特性値をもっている。例えば、破断伸び率Ef=1%の場合、100mmの繊維を101mm超えて伸ばすと破断する。よって、曲線造形時にd/R>Efとなると、連続繊維120が破断して強度が落ちる。
【0144】
連続繊維120の破断を回避するには、繊維間距離dを小さくするか、曲率半径を大きくして、条件d/R≦Efを守る必要があるが、繊維間距離dを小さくすると、造形所要時間が増えるデメリットがあり、曲率半径Rを大きくすると、細かく造形できない問題が発生する。
【0145】
ここで、造形方向から造形材100を捻じった捻じり角θ
tw[rad]を一定のまま、曲線を造形した場合の連続繊維の伸び率はdcosθ
tw/Rとなり、捻じることで伸び率を小さくすることができる(
図22参照)。なお、捻じり角θ
twは、
図7における回転角度θXに相当する。
【0146】
また、造形材100を捻じるときにも、連続繊維120に経路長差が発生する。簡単に説明するため、まず、直線造形時に造形材100をねじる場合を考えると、以下のようになる。
【0147】
図22に示されるように、L[mm]造形中に造形材100をΔθ
tw[rad]だけねじる場合、連続繊維120の両端について、造形方向と垂直の成分は逆方向で相殺され、造形方向と平行の成分の差が経路長差となる。
【0148】
よって、伸び率は、(dsinΔθtw)/Lである。
【0149】
上記計算を曲線造形時に拡張すると、以下のようになる。LはRθdp[mm]となる。
【0150】
Δθtwが、造形角θdpの逆方向、つまり-θdpと一致する場合、ねじりによる伸び率ratetwは、下記の通りである。
【0151】
ratetw=(dsinΔθtw)/Rθdp=(dsin(-θdp))/Rθdp
xが0に近い極小値ではsinx/x≒1であるからx=θdpとして、
ratetw=-d/R
【0152】
曲線造形による伸び率ratedpは、d/Rと逆符号の同値となる。これは、逆方向に造形材100をねじって曲線造形した場合の繊維伸び率は、曲線造形によるものと捻じりによるものが相殺され、ratetw+ratedp=0となり、全体の繊維伸び率ゼロとなり、破断を回避できる効用を数式で表現したことになる。
【0153】
したがって、造形時において|ratetw+ratedp|<Efという条件を常に成立させることで、連続繊維120の損傷(具体的には破断)が回避される。
【0154】
そして、本実施形態では、造形材100の回転角度としての捻じり角をθtwとし、造形材100の複数の連続繊維120のうち造形ユニット12の進行方向に対する垂直方向に沿って一番離れている連続繊維間の距離をd[mm]とし、連続繊維120の破断伸び率をEfとし、造形ユニット12が直線移動する場合の単位移動距離あたりのねじれ角をωtw[rad/mm]とし、造形ユニット12が曲線移動する場合において、曲がり角度をθdp[rad]とし、曲率半径をR[mm]とし、曲がり角度θdpと捻じり角θtwの比をktwとした場合において、造形ユニット12が直線移動する場合において、以下の条件1及び条件2aを満たし、造形ユニット12が曲線移動する場合において、以下の条件1及び条件2bを満たす。
【0155】
条件1:|θtw|≦π/2
条件2a:|dωtw|≦Ef
条件2b:|d(1+ktw)/R|≦Ef
【0156】
この構成によれば、条件1のみを満たす構成に比べ、連続繊維120の損傷(具体的には破断)が回避されるため、造形材100の曲線部での割れが抑制される。
【0157】
(造形ユニット12が複数備えられる変形例)
造形装置10は、
図23及び
図24に示されるように、造形ユニット12を複数有する構成であってもよい。
図23及び
図24に示される例では、4つの造形ユニット12A、12B、12C、12Dが備えられている。本変形例では、造形装置10は、4つの造形ユニット12A、12B、12C、12Dの進行方向(
図23におけるX1方向)に対する垂直方向(
図23におけるY1方向)に延びる支持部19を有している。造形ユニット12A、12B、12C、12Dが支持部19に支持されており、支持部19が進行方向へ移動することで、造形ユニット12A、12B、12C、12Dが一体に進行方向へ移動する。
【0158】
具体的には、造形ユニット12A、12B、12C、12Dの各々の支持体60(
図1及び
図4参照)が、支持部19に対して回転可能に支持されており、造形ユニット12A、12B、12C、12Dの各々において、造形材100の回転角度θX(捻じり角)が変更可能となっている。
【0159】
本変形例では、4つの造形ユニット12の各々において、排出部50から排出される造形材100の送り速度(具体的には搬送部40による造形材100の搬送速度)及び造形材100の回転角度θX(捻じり角)が制御される。
【0160】
具体的には、例えば、造形ユニット12の曲線移動(
図23において矢印ZBで示す移動)において、最内側に配置された造形ユニット12Aよりも、外側に配置された造形ユニット12B、12C、12Dにおいて、搬送部40による造形材100の搬送速度が速くされる。具体的には、造形ユニット12A、12B、12C、12Dの順で徐々に速度が速くなるように、搬送部40の搬送速度が制御される。なお、
図23において矢印ZDで示す曲線移動においては、造形ユニット12D、12C、12B、12Aの順で徐々に速度が速くなるように、搬送部40の搬送速度が制御される。
【0161】
これにより、造形ユニット12の曲線移動において、内周側に比べて経路長が長い外周側において、造形材100の送り速度が速くなる。
【0162】
また、造形ユニット12の曲線移動において、最内側に配置された造形ユニット12よりも、外側に配置された造形ユニット12において、回転角度θX(捻じり角)が小さくされる。
【0163】
例えば、造形ユニット12A、12B、12C、12Dを、
図23に示されるように曲線移動を含む移動をさせる場合における造形ユニット12A、12B、12C、12Dの各々の回転角度θX(捻じり角)は、
図25のグラフに示されるように、制御される。
【0164】
なお、
図25において、「全体造形曲率」は、造形ユニット12A、12B、12C、12Dによって造形される造形材100全体の造形曲率を示す。
図23において右方向(すなわち時計回り方向)へ曲がる場合を「正」で示し、
図23において左方向(すなわち反時計回り方向)へ曲がる場合を「負」で示している。
【0165】
図25において、「支持部の進行方向角度」は、支持部19(すなわち造形ユニット12B、12C、12D)の進行方向を示している。当該進行方向が、
図23における上方向である場合を「0°」で示し、
図23における下方向である場合を「180°」で示し、
図23における右方向である場合を「正」で示し、
図23における左方向である場合を「負」で示している。
図23において、当該進行方向を矢印X1にて示している。また、
図25における矢印ZA、矢印ZB、矢印ZC、矢印ZD及び矢印ZEで示す移動範囲は、
図23において同じ矢印で示す移動範囲に対応する。
【0166】
そして、
図25のグラフに示されるように、造形ユニット12A、12B、12C、12Dは、各々の曲線移動における曲率(曲率半径)に応じて、捩じり角が制御される。具体的には、矢印ZAで示される移動範囲では、造形ユニット12D、12C、12B、12Aの順で徐々に回転角度θX(捻じり角)が大きくなるように、回転角度θX(捻じり角)が制御される。曲線移動における曲率が小さい場合(すなわち曲率半径が大きい場合)には、造形材100の伸び率が小さいため、曲率が予め定められた閾値(具体的には制限値)以下である造形ユニット12については、回転動作を実行しない。換言すれば、曲率が予め定められた閾値を超える場合において、造形ユニット12が造形材100を回転させる。
【0167】
また、矢印ZDで示される移動範囲では、造形ユニット12A、12B、12Cよりも、造形ユニット12Dにおいて,回転角度θX(捻じり角)が大きくなるように、回転角度θX(捻じり角)が制御される。
【0168】
以上により、造形ユニット12の曲線移動において、内周側に比べて曲率が小さくなる外周側において、造形材100の回転角度θX(捻じり角)が小さくなる。この結果、造形ユニット12A、12B、12C、12Dの回転角度を常に同じとする構成に比べ、連続繊維120の捻じれが抑制される。また、本変形例では、曲率が予め定められた閾値を超える場合において、造形ユニット12が造形材100を回転させるので、閾値に関係なく複数の造形ユニット12によって造形材100を常に回転させる構成に比べ、連続繊維120の捻じれが抑制される。
【0169】
(他の変形例)
本実施形態では、台14を造形ユニット12に対して移動させたが、これに限られない。例えば、造形ユニット12を台14に対して移動させる構成であってもよく、造形ユニット12及び台14の少なくとも一方を移動させることで、造形ユニット12が台14に対して相対移動する構成であればよい。
【0170】
また、本実施形態では、造形装置10は、含浸部24を備えたが、含浸部24を備えなくてもよい。この場合では、例えば、繊維束110に樹脂112を予め含侵させた線状の造形材100を供給部21から供給する構成であってもよい。
【0171】
また、本実施形態では、回転角度θXが、曲がり角度θAよりも大きく且つ90度以下の回転角度とされていたが、これに限られない。例えば、回転角度θXは、曲がり角度θAよりも小さくてもよい。また、回転角度θXは、180度未満の範囲であれば、90度を超える角度であってもよい。
【符号の説明】
【0172】
10 造形装置
12 造形ユニット(排出機構の一例)
14 台(被排出部の一例)
20 供給機構
21 供給部
24 含浸部
40 搬送部
50 排出部
90 付与部
100 造形材