(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20231121BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20231121BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/01 114
G03G21/00 370
(21)【出願番号】P 2019171005
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】岸 和紀
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 努
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116705(JP,A)
【文献】特開2007-178866(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0072325(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/01
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像をそれぞれ形成する複数の像形成手段と、
前記複数の像形成手段を通過するように回転する中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを前記複数の像形成手段に対して接触させる転写位置と離間させる退避位置との間で変位可能に設けられて前記転写位置にあるときに前記トナー像を当該中間転写ベルトに一次転写させる複数の一次転写ロールと、
前記複数の一次転写ロールのうち前記像形成手段の1つの像形成手段で画像を形成する第1モードのときに転写に関与しない一次転写ロールを前記退避位置に変位させるよう接触して移動させる移動手段と、前記移動手段を前記第1モードのときに当該移動手段の一部に接触して移動させる回転カムとを有する変位機構と、
前記中間転写ベルトの回転方向に対して最上流に配置される前記一次転写ロールよりも上流側の最初の位置と当該回転方向に対して最下流に配置される前記一次転写ロールよりも下流側の最初の位置で前記中間転写ベルトの内周面に接触して当該中間転写ベルトの通過する位置を保持する上流側および下流側の保持ロールと、
を備え、
前記移動手段は、前記中間転写ベルトの回転方向に沿う左右両側に存在する左右の移動手段として配置され、
前記回転カムは、前記左右の移動手段の一部に接触して作用する左右の回転カムとして配置され、
前記左右の回転カムの一方には、前記像形成手段の2つ以上の像形成手段で画像を形成する第2モードのときに、前記左右の移動手段のうち前記一方になる前記回転カムと対応する側の前記移動手段の一部に接触して前記中間転写ベルトの通過する位置を調整するよう作用する調整作用部が設けられており、
前記変位機構は、前記第2モードのときであって前記複数の一次転写ロールのすべてが前記転写位置にあるときに、前記一方になる回転カムの前記調整作
用部を前記対応する側の前記移動手段の一部に接触させて当該移動手段を移動させることで、前記上流側および下流側の保持ロールの一方を変位させて前記中間転写ベルトの通過する位置を調整する画像形成装置。
【請求項2】
前記上流側の保持ロールは、前記第2モードのときに前記中間転写ベルトの通過する位置が調整されるよう設けられている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記中間転写ベルトの寄り特性を計測する計測手段と、前記計測手段で計測される寄り特性を補正するために前記回転カムの回転角度を調整するよう駆動するカム駆動手段とを備えている請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記寄り特性が前記中間転写ベルトの左右端のいずれの側にも片寄っておらず変動もないという結果である場合、前記第2モードのときに前記カム駆動手段により前記回転カムを回転させて前記中間転写ベルトを左右端の一方の側に片寄らせるよう、前記上流側および下流側の保持ロールの一方における前記中間転写ベルトの通過する位置が調整される請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記寄り特性が前記中間転写ベルトの左右端の一方の側に片寄っているという結果である場合、前記第2モードのときに前記カム駆動手段により前記回転カムを回転させて前記中間転写ベルトを片寄っている側と反対側にずらして寄せるよう、前記上流側および下流側の保持ロールの一方における前記中間転写ベルトの通過する位置が調整される請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、中間転写ベルトに関する調整を行う画像形成装置としては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、駆動ローラおよび従動ローラに張架される中間転写ベルトが、幅方向の一端と他端とで張力差を設けることで駆動ローラおよび従動ローラの一端又は他端のどちらか一方に寄っているタンデム型のカラー画像形成装置において、駆動ローラおよび従動ローラ以外の中間転写ベルト当接ローラの姿勢を変更することで、カラーモードとモノクロモードとを切り替えるとともに中間転写ベルトの寄り方向を切り替えるように構成した画像形成装置が記載されている。また特許文献1には、この画像形成装置により中間転写ベルトの高寿命化を可能にしていることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-178864号公報(請求項1、段落0010、
図1-4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、複数のうちの1つの一次転写ロールを回転カムの接触で移動する移動手段により転写位置と退避位置との間で変位させる機構を利用して、2つ以上の像形成手段で画像を形成するときの中間転写ベルトの不安定走行による軸方向への像ずれが発生することを抑制できる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(1)の画像形成装置は、
トナー像をそれぞれ形成する複数の像形成手段と、
前記複数の像形成手段を通過するように回転する中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを前記複数の像形成手段に対して接触させる転写位置と離間させる退避位置との間で変位可能に設けられて前記転写位置にあるときに前記トナー像を当該中間転写ベルトに一次転写させる複数の一次転写ロールと、
前記複数の一次転写ロールのうち前記像形成手段の1つの像形成手段で画像を形成する第1モードのときに転写に関与しない一次転写ロールを前記退避位置に変位させるよう接触して移動させる移動手段と、前記移動手段を前記第1モードのときに当該移動手段の一部に接触して移動させる回転カムとを有する変位機構と、
前記中間転写ベルトの回転方向に対して最上流に配置される前記一次転写ロールよりも上流側の最初の位置と当該回転方向に対して最下流に配置される前記一次転写ロールよりも下流側の最初の位置で前記中間転写ベルトの内周面に接触して当該中間転写ベルトの通過する位置を保持する上流側および下流側の保持ロールと、
を備え、
前記移動手段は、前記中間転写ベルトの回転方向に沿う左右両側に存在する左右の移動手段として配置され、
前記回転カムは、前記左右の移動手段の一部に接触して作用する左右の回転カムとして配置され、
前記左右の回転カムの一方には、前記像形成手段の2つ以上の像形成手段で画像を形成する第2モードのときに、前記左右の移動手段のうち前記一方になる前記回転カムと対応する側の前記移動手段の一部に接触して前記中間転写ベルトの通過する位置を調整するよう作用する調整作用部が設けられており、
前記変位機構は、前記第2モードのときであって前記複数の一次転写ロールのすべてが前記転写位置にあるときに、前記一方になる回転カムの前記調整作用部を前記対応する側の前記移動手段の一部に接触させて当該移動手段を移動させることで、前記上流側および下流側の保持ロールの一方を変位させて前記中間転写ベルトの通過する位置を調整するものである。
【0007】
この発明(2)の画像形成装置は、上記発明(1)の画像形成装置において、前記上流側の保持ロールは、前記第2モードのときに前記中間転写ベルトの通過する位置が調整されるよう設けられているものである。
【0008】
この発明(3)の画像形成装置は、上記発明(1)又は(2)の画像形成装置において、前記中間転写ベルトの寄り特性を計測する計測手段と、前記計測手段で計測される寄り特性を補正するために前記回転カムの回転角度を調整するよう駆動するカム駆動手段とを備えているものである。
この発明(4)の画像形成装置は、上記発明(3)の画像形成装置において、前記寄り特性が前記中間転写ベルトの左右端のいずれの側にも片寄っておらず変動もないという結果である場合、前記第2モードのときに前記カム駆動手段により前記回転カムを回転させて前記中間転写ベルトを左右端の一方の側に片寄らせるよう、前記上流側および下流側の保持ロールの一方における前記中間転写ベルトの通過する位置が調整されるものである。
この発明(5)の画像形成装置は、上記発明(3)又は(4)の画像形成装置において、前記寄り特性が前記中間転写ベルトの左右端の一方の側に片寄っているという結果である場合、前記第2モードのときに前記カム駆動手段により前記回転カムを回転させて前記中間転写ベルトを片寄っている側と反対側にずらして寄せるよう、前記上流側および下流側の保持ロールの一方における前記中間転写ベルトの通過する位置が調整されるものである。
【発明の効果】
【0009】
上記発明(1)の画像形成装置によれば、複数のうちの1つの一次転写ロールを回転カムの接触で移動する移動手段により転写位置と退避位置との間で変位させる機構を利用して、2つ以上の像形成手段で画像を形成するときの中間転写ベルトの不安定走行による軸方向への像ずれが発生することを抑制できる。
また、上記発明(1)によれば、左右のカムの両方に調整作用部が設けられている場合に比べて、左右の回転カムを共通の駆動軸で同時に回転させても、上流側又は下流側の保持ロールの一端側の位置のみを調整して中間転写ベルトの寄り特性を的確に調整することができる。
【0010】
上記発明(2)によれば、下流側の保持ロールが中間転写ベルトの通過する位置が調整されるよう設けられている場合に比べて、中間転写ベルトに転写されたトナー像を二次転写する位置での中間転写ベルトの走行が変動することを少なくすることができる。
【0011】
上記発明(3)によれば、計測手段で計測される中間転写ベルトの寄り特性に応じてカムの回転角度をカム駆動手段で調整するよう構成しない場合に比べて、第2モードのときにおける中間転写ベルトの寄り特性の的確な調整と中間転写ベルトの破断の発生の低減とを両立させることができる。
上記発明(4)によれば、計測手段で計測される寄り特性が左右端のいずれにも片寄っておらず変動もない結果であるときに、第2モードのときに回転カムを回転させて中間転写ベルトを左右端の一方に片寄るよう調整しない場合に比べて、多色モードのときの中間転写ベルトの不安定走行による軸方向への色ずれの発生を確実に抑制することができる。
上記発明(5)によれば、計測手段で計測される寄り特性が左右の一方に片寄っている
結果であるときに、回転カムを回転させて中間転写ベルトを片寄っている側と反対側にずらして寄せるよう調整しない場合に比べて、中間転写ベルトの破断の発生を確実に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1等に係る画像形成装置の全体を示す概要図である。
【
図2】
図1の画像形成装置における中間転写装置を示す概略斜視図である。
【
図3】
図2の中間転写装置のQ-Q線に沿う概略断面図であり、(A)は多色モードのときの状態を示す概略断面図、(B)は単色モードのときの状態を示す概略断面図である。
【
図4】
図2の中間転写装置の中間転写ベルトを除いた状態を示す概略斜視図である。
【
図5】
図4の中間転写装置と他の構成を示す平面図である。
【
図6】変位機構の一部を拡大して示す概略断面図である。
【
図7】変位機構の一部を拡大して示す概略平面図である。
【
図8】変位機構の一部を拡大して示す概略斜視図である。
【
図9】中間転写ベルトの端部の構成を示す概略断面図である。
【
図10】変位機構における調整作用部を設けた回転カムとその周辺部の構成を示す概略断面図である。
【
図11】(A)は多色モードのときの変位機構の一部の状態を示す概略断面図、(B)は単色モードのときの変位機構の一部の状態を示す概略断面図である。
【
図12】変位機構により中間転写ベルトの通過する位置を調整するときの状態を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
[実施の形態1]
図1と
図2は、実施の形態1に係る画像形成装置1を示すものである。
図1にはその画像形成装置1の全体の構成が示され、
図2にはその画像形成装置1の一部(主に中間転写装置と一次転写ロール)の構成が示されている。
図1、
図2等の各図面中に符号X,Y,Zで示す矢印は、各図面において想定した3次元空間の幅、高さおよび奥行の各方向を示す。また各図面においてX,Yの方向の矢印が交わる部分の丸印は、Zの方向が図面の鉛直下方に向いていることを示している。
【0015】
<画像形成装置の全体の構成>
画像形成装置1は、現像剤としてのトナーで構成される画像を記録媒体の一例である用紙9に形成する装置である。実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えば、情報端末機等の外部接続機器から入力される画像情報に対応した画像の形成を行うプリンタとして構成されている。
【0016】
この画像形成装置1は、
図1に示されるように、筐体10の内部空間に、画像情報に基づくトナー像を形成する像形成装置2と、像形成装置2で形成されるトナー像を一時的に保持した後に用紙9に二次転写する中間転写装置3と、中間転写装置3の二次転写する位置に供給すべき用紙9を収容して供給する給紙装置4と、中間転写装置3で二次転写されたトナー像を用紙9に定着させる定着装置5等を備えている。つまり、この画像形成装置1は、像形成装置2で形成されるトナー像を用紙9に中間転写装置3を介して転写させる、いわゆる中間転写方式を採用したものである。
【0017】
ここで、画像情報は、例えば、文字、図形、写真、模様等の画像に関係する情報である。筐体10は、各種の支持部材、外装材等の材料を組み合わせて所要の形状に形成された構造物である。また筐体10は、その上面部の一部に、画像が形成された後に排出される用紙9を重ねた状態で収容する排出収容部12とその排出収容部12にむけて用紙9が排出される排出口13が設けられている。
図1等における一点鎖線は、筐体10内で用紙9が搬送されるときの主な搬送経路を示している。
【0018】
像形成装置2は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像をそれぞれ専用に形成する4つの像形成装置2Y,2M,2C,2Kにて構成されている。
4つの像形成装置2(Y,M,C,K)はいずれも、矢印Aで示す方向に回転する像保持手段の一例である感光ドラム21を有し、その感光ドラム21の周囲に、帯電装置22、露光装置23、現像装置24(Y,M,C,K)、一次転写装置25、ドラム清掃装置26等の機器を配置して構成されている。
図1では、符号の21から26をブラック(K)の像形成装置2Kのみに全部記載し、他の色の像形成装置2(Y,M,C)にはその一部のみを記載している。
【0019】
このうち、帯電装置22は、感光ドラム21の外周面(像形成可能面)を所要の表面電位に帯電させる装置である。露光装置23は、感光ドラム21の外周面に画像情報に基づく露光をして所要の色成分(Y,M,C,K)の静電潜像を形成する装置である。
現像装置24(Y,M,C,K)は、感光ドラム21の外周面に形成された静電潜像を対応する所要の色(Y,M,C,K)の現像剤(トナー)により現像してトナー像を形成する装置である。
【0020】
また、一次転写装置25は、各色のトナー像を中間転写装置3(中間転写ベルト31)に静電的に転写させる装置である。実施の形態1における一次転写装置25は、
図3に示されるように、一次転写電流が供給される接触転写部材の一例である一次転写ロール251y,251m,251c,251kを適用している。ドラム清掃装置26は、感光ドラム21の外周面に付着する不要なトナー、紙粉等の不要物をかき取るように除去して感光ドラム21の外周面を清掃する装置である。
【0021】
これらの像形成装置2(Y,M,C,K)では、感光ドラム21と一次転写装置25の一次転写ロール251y,251m,251c,251kが(中間転写ベルト31を介して)それぞれ対向する各部位がトナー像の一次転写を行う一次転写位置TP1になる。
【0022】
中間転写装置3は、像形成装置2(Y,M,C,K)で形成される各色のトナー像を一次転写により保持した後に用紙9に二次転写させる位置まで搬送して用紙9に二次転写する装置である。
【0023】
実施の形態1における中間転写装置3は、筐体10の内部で像形成装置2(Y,M,C,K)の上方側に配置されている。また、この中間転写装置3は、
図1から
図3等に示されるように、像形成装置2(Y,M,C,K)の各感光ドラム21からトナー像が一次転写されて保持する中間転写ベルト31を備えており、その中間転写ベルト31の周囲に以下の機器を配置して構成されている。
【0024】
中間転写ベルト31は、その内側に配置される複数の支持ロール32a~32dにより、像形成装置2(Y,M,C,K)の各一次転写位置を順次通過して矢印Bで示す方向に回転(周回移動)するよう支持されている。
複数の支持ロール32a~32dのうち支持ロール32aは駆動ロールおよび二次転写バックアップロールとして、支持ロール32bは張力を付与するテンションロールとして、それぞれ構成されている。また、支持ロール32c,32dは中間転写ベルト31の通過する位置を保持する保持ロールとして構成されている。
【0025】
中間転写ベルト31の内側には、各像形成装置2(Y,M,C,K)における一次転写装置25(の一次転写ロール251)が配置されている。一次転写装置25は、中間転写装置3の一部を構成するものでもある。
【0026】
また、中間転写ベルト31の支持ロール32aに支持される外周面部分には、用紙9を通過させるとともにその用紙9に中間転写ベルト31上のトナー像を二次転写させる二次転写装置35が配置されている。実施の形態1における二次転写装置35は、二次転写電流が供給される接触転写部材の一例である二次転写ロールを適用しており、用紙9を中間転写ベルト31の外周面のうち支持ロール32aに支持される外周面部分に押し付けるように接触させて通過させるよう構成されている。
さらに、中間転写ベルト31の外側の周囲には、二次転写後の中間転写ベルト31の外周面に残留する不要なトナー等の不要物を除去して中間転写ベルト31の外周面を清掃するベルト清掃装置36が配置されている。
この中間転写装置3では、中間転写ベルト31の外周面に二次転写装置35(の二次転写ロール)が接触している部位がトナー像の二次転写を行う二次転写位置TP2になる。
【0027】
また、この中間転写装置3では、
図3等に示されるように、支持ロール32a~32dと一次転写装置25の一次転写ロール251y,251m,251c,251kが、中間転写装置3の支持フレーム30(側面部分30a,30b)に少なくとも回転可能に設けられている。
【0028】
給紙装置4は、中間転写装置3の二次転写位置TP2に供給すべき用紙9を収容して供給するよう構成された装置である。給紙装置4は、筐体10の内部で像形成装置2(Y,M,C,K)よりも下方側の位置に配置されており、具体的には用紙9の収容体41と、送出装置43等の機器を配置して構成されている。
【0029】
収容体41は、複数枚の用紙9を所要の向きで積載して収容する積載板42を有し、筐体10の外部に引き出して用紙9の補充等の作業ができるよう取り付けられた収容部材である。送出装置43は、収容体41の積載板42上に積載されている用紙9を、複数のロール等の紙送り機器により上方のものから1枚ずつ繰り出して送り出す装置である。用紙9は、画像形成装置1の筐体10内での搬送が可能であって、トナー像の転写および定着が可能な普通紙、コート紙、厚紙等の記録媒体であればよく、その材質や形態等について特に制約されない。
【0030】
定着装置5は、中間転写装置3で二次転写されたトナー像を用紙9に定着させるよう構成された装置である。定着装置5は、筐体10の内部で中間転写装置3の二次転写位置TP2の上方側の位置に配置されており、具体的には、用紙9の導入口や排出口が設けられた筐体50の内部空間に加熱用回転体51、加圧用回転体52等の機器を配置して構成されている。
【0031】
加熱用回転体51は、矢印で示す方向に回転するロール形態、ベルト-パット形態等からなる回転体であり、図示しない加熱手段により外表面が所要の温度に保たれるよう加熱されるものである。加圧用回転体52は、加熱用回転体51に所要の加圧下で接触して従動回転するロール形態、ベルト-パット形態等からなる回転体である。この加圧用回転体52は、加熱手段により加熱されるものでもよい。
この定着装置5では、加熱用回転体51と加圧用回転体52が接触する部位が、未定着像のトナー像を用紙9に定着するための加熱、加圧等の処理をするニップ部(定着処理部)として構成されている。
【0032】
画像形成装置1の筐体10内には、
図1に示されるように、給紙装置4にある用紙9を二次転写位置TP2まで供給するよう搬送する給紙搬送路Rt1や、定着が終了した後の用紙9を筐体10の排出口13を通過させて排出収容部12に排出させるよう搬送する排出搬送路Rt2が設けられている。
給紙搬送路Rt1は、
図1に示されるように、用紙9を挟持して搬送する一対の搬送ロール44や、用紙9の搬送空間を確保して用紙9の搬送を案内する図示しない案内部材等を配置して構成されている。排出搬送路Rt2は、排出口13の手前における一対の排出ロール47や、用紙9の搬送空間を確保して用紙9の搬送を案内する図示しない案内部材等を配置して構成されている。
【0033】
また、画像形成装置1は、4つの像形成装置2(Y,M,C,K)のすべてを作動させて4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成される多色画像(フルカラー画像)を形成する第2モードの一例である多色モードや、4つの像形成装置2(Y,M,C,K)のうちの1つ(本例では2K)を作動させて単色(K:ブラック、黒色)のトナー像からなる単色画像(黒色画像)を形成する第1モードの一例である単色モード等の画像形成モードを備えており、その多色モード、単色モード等を選択して所望の色の画像を形成することが可能になっている。
【0034】
また、画像形成装置1は、
図3に示されるように、一次転写装置25の少なくとも一次転写ロール251y,251m,251cが、中間転写ベルト31を像形成装置2(Y,M,C)における各感光ドラム21に対して接触させる転写位置とそれから離間させる退避位置との間で変位可能に設けられている。
【0035】
この画像形成装置1では、多色モードのときに、
図3(A)に示されるように、4つの一次転写ロール251y,251m,251c,251kのすべてが転写位置に変位させられる。また単色モードのときには、
図3(B)に示されるように、ブラック色用の一次転写ロール251kを除いて、単色(黒色)画像の形成時の一次転写に関与しない3つの一次転写ロール251y,251m,251cが退避位置に変位させられる。なお、ブラック色用の一次転写ロール251kについても、例えば中間転写装置3の筐体10の外部に引き出すときに、退避位置に変位できるようになっている。
【0036】
<一次転写ロールの変位機構の構成>
そして、この画像形成装置1においては、3つの一次転写ロール251y,251m,251cを転写位置と退避位置との間で変位させる機構として、次の変位機構6を備えている。
【0037】
変位機構6は、
図3、
図4、
図6等に示されるように、3つの一次転写ロール251y,251m,251cを転写位置と退避位置との間で揺動して移動させるよう支持する揺動支持体61y,61m,61cと、単色モードのときに転写に関与しない一次転写ロール251y,251m,251cを退避位置に変位させるよう揺動支持体61y,61m,61cの一部である接触突部63に接触して移動させる移動手段の一例としてのスライダー64と、スライダー64を単色モードのときにスライダー64の一部であるカム当接部65に接触して移動させるよう回転する回転カム66と、回転カム66の回転角度を調整するように回転カム66(実際は回転カム66を支持する後述の回転軸67)を回転駆動させるカム駆動手段の一例であるカム駆動装置17とを備えている。
【0038】
揺動支持体61y,61m,61cは、
図3、
図5、
図6等に示されるように、L字状に一度屈曲した形状からなる板状の部材で構成されている。この揺動支持体61y,61m,61cは、一次転写ロール251y,251m,251cの両端の軸部をそれぞれ支持するよう左右一対の状態で配置されている。詳しくは、中間転写ベルト31の回転方向Bに沿う左右両端の各外側に存在して互いに対峙し合う左右の揺動支持体として配置されている。
【0039】
また揺動支持体61y,61m,61cは、その屈曲部が支持軸62に回動可能に取り付けられており、その支持軸62を中心に矢印G1,G2で示す方向に揺動する。支持軸62は、中間転写装置3の支持フレーム30の側面部分30a,30bの各内側面にそれぞれ対峙し合う状態で設けられている。
図4等における符号30c,30dは支持フレーム30における連結フレーム、符号30eは支持フレーム30における上部取付けフレーム板を示す。
【0040】
さらに揺動支持体61y,61m,61cは、その屈曲部から一方(例えば
横方向)に延びる一端部に、一次転写ロール251y,251m,251cの両端の軸部をそれぞれ支持する構造を有している。
また揺動支持体61y,61m,61cは、その屈曲部から他方(例えば
上方向)に延びる他端部に、スライダー64の後述する作用突部(64p)と接触し得る接触突部63が設けられている。また屈曲部から他方に延びる他端部には、一次転写ロール251y,251m,251cが転写位置にあるときに中間転写ベルト31を感光ドラム21に圧接させるよう所要の圧力を付与するコイルバネ等の弾性部材14(
図7)の一端部が取り付けられている。これにより、揺動支持体61y,61m,61cは、弾性部材14からの張力を受けて矢印G1の方向に揺動するよう付勢されている。
【0041】
スライダー64は、
図4から
図6等に示されるように、中間転写ベルト31の回転方向Bに沿って細長い形状の部材で構成されている。このスライダー64は、中間転写ベルト31の回転方向Bに沿う左右両端よりも内側に存在する左右のスライダー64A,64Bとして設けられている。具体的には、左右のスライダー64A,64Bは、中間転写装置3の支持フレーム30の左右の側面部分30a,30bの各内側に配置されて、矢印E1,E2で示す方向にスライド可能に取り付けられている。
【0042】
この左右のスライダー64A,64Bは、
図3、
図4等に示されるように、その長手方向の支持ロール32bに近い側の途中部分に設けられたスライド長孔部64sが、中間転写装置3の支持フレーム30の左右の側面部分30a,30bに固定されたスライド支持棒30jを内部に貫通させた状態でスライド可能に支持されている。
図4における符号30sはコイルスプリングである。このコイルスプリング30sは、その一端がスライド支持棒30jに取りけられ、その他端が連結フレーム30dに取りけられており、これによりスライド支持棒30jに所要の張力を付与している。
また左右のスライダー64A,64Bは、
図3等に示されるように、その長手方向の支持ロール32aに近い側の端部が、中間転写装置3の支持フレーム30の左右の側面部分30a,30bに固定された支持棒30k上に乗せられてスライド可能に下方から支持されている。
【0043】
また左右のスライダー64A,64Bは、
図3、
図5、
図6等に示されるように、その長手方向の支持ロール32aに近い側の途中部分に、回転カム66が接触して作用するカム当接部65が壁面部として設けられている。このスライダー64A,64Bでは、カム当接部65の壁面部を含んだ状態で回転カム66が収容される窪んだ空間を有する収容凹部64tが設けられている。
さらに左右のスライダー64A,64Bは、
図5、
図7等に示されるように、その各側面部に、揺動支持体61y,61m,61cにおける各接触突部63とそれぞれ接触して揺動支持体61y,61m,61cを矢印G2で示す方向(退避位置にむかう方向)に揺動させる作用突部64pが突出して設けられている。
【0044】
スライダー64A,64Bは、多色モードのときには、回転カム66との接触がなく矢印E1で示す方向に移動し得る状態になっている。実施の形態1では、多色モードのときに、スライダー64A,64Bの作用突部64pに矢印G1で示す方向に付勢されている揺動支持体61y,61m,61cの各接触突部63が接触しており、これによりスライダー64A,64Bが矢印E1で示す方向に付勢されている。
回転カム66は、回転軸により回転して作用するカムとして構成されている。また回転カム66は、左右のスライダー64A,64Bにおける各カム当接部65にそれぞれ接触して作用する左右の回転カム66A,66Bとして構成されている。
【0045】
左右の回転カム66A,66Bは、
図4、
図5等に示されるに、1つの回転軸67の2箇所にそれぞれ固定して取り付けられている。
回転軸67は、中間転写装置3の支持フレーム30における左右の側面部分30a,30bの間に回転可能に支持されている。また、回転軸67は、左右のスライダー64A,64Bにおける収容凹部64tの側面に設けられた長孔部分を貫通した状態で配置されている。
回転カム66A,66Bは、より具体的には、スライダー64A,64Bにおける収容凹部64t内にある回転軸67の部分に取り付けられており、これにより各カム当接部65に接触し得るようになっている。
【0046】
さらに左右の回転カム66A,66Bは、その一方が後述する部分(調整作用部)を設けることを除けば、
図3や
図6等に示されるように同じ形状のカムになっている。
実施の形態1における回転カム66A,66Bは、モノクロモードのときに左右のスライダー64A,64Bにおける各カム当接部65にそれぞれ接触してスライダー64A,64Bを矢印E2で示す方向に移動させる主要作用部66mと、多色モードのときに左右のスライダー64A,64Bにおける各カム当接部65に接触せずスライダー64A,64Bを矢印E1で示す方向に移動させ得る状態にさせる非接触部66hとを有する形状で構成されている。
【0047】
また回転軸67は、
図5に二点鎖線で示されるように、中間転写装置3の奥側(矢印Zの示す方向)の端部が着脱可能な連結具(カップリングなど)67kを介してカム駆動装置17の駆動軸に連結している。カム駆動装置17は、ステッピングモータ、減速機構等で構成されており、その動作が制御装置15により制御されている。
回転軸67は、単色モードから多色モードへの切り替え時期と多色モードから単色モードへの切り替え時期になると、制御装置15の制御で駆動するカム駆動装置17から回転動力が伝達され
る。これにより
、回転軸67は、所定の方向(
図6等において少なくとも矢印D1で示す方向)に所要の角度だけ回転す
る。
【0048】
また、中間転写装置3は、
図9に示されるように、中間転写ベルト31の左右両端部の内周面にベルトリブ37が周方向に沿ってそれぞれ設けられている。ベルトリブ37は、断面が矩形状からなる細長い部材である。一方、支持ロール32a,32bの左右両端部には、ベルトリブ37が接触したときに案内する傾斜したガイド面38g(全体では円錐台の周面)を有するリブガイド38が設けられている。
これにより、中間転写ベルト31は、その左右のいずれかに片寄って走行すると、左右のベルトリブ37のいずれか一方がリブガイド38のガイド面38gに接触して一時的に乗り上げ
る。しかし、中間転写ベルト31は、そのガイド面38gの傾斜した面により中間転写ベルト31
の本来の走行位置に戻
されるよう案内される。
【0049】
そして、変位機構6は、単色モードから多色モードに切り替えられて画像形成動作が実行される時期になると、
図3(A)に示されるように、回転カム66A,66Bが回転軸67の回転により非接触部66hを左右のスライダー64A,64Bにおける各カム当接部65に向き合わせるよう所要の回転角度だけ回転させられ
る。これにより、回転カム66A,66Bは各カム当接部65と接触しない状態におかれる。この結果、左右のスライダー64A,64Bは、回転カム66A,66Bによる作用を受けない状態になるので、矢印G1で示す方向に付勢されている各揺動支持体61y,61m,61cから付勢力を受けて矢印E1で示す方向へ移動させられる状態になる。
【0050】
これにより、変位機構6は、
図3(A)や
図6に示されるように、各揺動支持体61y,61m,61cが支持軸62を中心にして矢印G1で示す方向に揺動し、一次転写ロール251y,251m,251cを退避位置から転写位置に変位させる。
したがって、多色モードのときは、4つの一次転写ロール251y,251m,251c,251kが転写位置におかれて4つの像形成装置2Y,2M,2C,2Kでの一次転写がいずれも可能になる。
【0051】
また、変位機構6は、多色モードから単色モードに切り替えられて画像形成動作が実行される時期になると、
図3(B)に示されるように、回転カム66A,66Bが回転軸67の回転により主要作用部66mを左右のスライダー64A,64Bにおける各カム当接部65に向き合わせるよう所要の回転角度だけ回転させられ
る。これにより、回転カム66A,66Bは各カム当接部65と接触した状態におかれる。
この結果、左右のスライダー64A,64Bは、回転カム66A,66Bの主要作用部66mによる作用を受ける状態になるので、矢印G1で示す方向に付勢されている各揺動支持体61y,61m,61cから
の付勢力に抗して矢印E2で示す方向へ移動させられる状態になる。
【0052】
この際、図
6に示されるように、回転カム66A,66Bにおける主要作用部66mの最高部分が回転軸67から距離Laの高さに設定されている場合には、左右のスライダー64A,64Bも矢印E2で示す方向に最大の距離αだけ移動させられる。最大の距離αは、主要作用部66mの最高部分の距離Laから、多色モードのときの転写位置にあ
るスライダー64A,64Bの各カム当接部65が停止している位置P1と回転軸67との離間距離Lsを差し引いた値(La-Ls)になる。
図6等における符号P2は、単色モードのときの退避位置にあるときであって最大に移動したときのカム当接部65の位置を示す。
【0053】
これにより、変位機構6は、
図3(B)に示されるように、各揺動支持体61y,61m,61cが支持軸62を中心にして矢印G2で示す方向に揺動し、一次転写ロール251y,251m,251cを転写位置から退避位置に変位させる。
したがって、単色モードのときは、黒色の一次転写ロール251kが転写位置に留まるだけで転写に関与しない3つの一次転写ロール251y,251m,251cが退避位置に移動させられ、黒色の像形成装置2Kにおける一次転写のみが可能になる。それ以外の像形成装置2Y,2M,2Cでの一次転写はできない状態になる。
【0054】
<変位機構による中間転写ベルト31の通過する位置の調整に関する構成>
そしてまた、変位機構6は、
図10、
図11等に示されるように、多色モードのときに、回転カム66の一部(68)がスライダー64(A)の一部に接触してスライダー64(A)が移動することで上流側の保持ロール32cを変位させて中間転写ベルト31の通過する位置を調整するよう設けられている。
【0055】
上流側の保持ロール32cとは、中間転写ベルト31の回転方向Bに対して最上流に配置される一次転写ロール251yよりも上流側の最初の位置に配置されて、中間転写ベルト31の内周面に接触して中間転写ベルト31の通過する位置を保持する保持ロールのことをいう。中間転写ベルト31の通過する位置とは、
図11、
図12等に示されるように、中間転写ベルト31が上流側の保持ロール32cの底面に接触して通過するときの位置PP31になる。
【0056】
また実施の形態1における変位機構6は、左右の回転カム66A,66Bのうちの一方である左の回転カム66Aに、多色モードのときに、その左の回転カム66Aに対応する左のスライダー64Aの一部であるカム当接部65に接触して中間転写ベルト31の通過する位置を調整するよう作用する調整作用部68を設けている。
これ以降では、この調整作用部68を設けた左の回転カム66Aを、調整作用部68を設けた回転カム66Cとして扱う。なお、右の回転カム66Bは、回転カム66Cと比べた場合、調整作用部68が設けられていない点で異なるが、それ以外は同じ構成からなる回転カムである。
【0057】
調整作用部68は、
図10に示されるように、回転カム66Cの主要作用部66mと非接触部66hとの間で非接触部66hに近い部分に湾曲して盛り上がる形状のカム部分として形成される。また調整作用部68は、その最高位が回転軸67から所要の距離Lbだけ離れた高さになるよう形成される。この調整作用部68の最高部分における距離Lbは、上流側の保持ロール32cによる中間転写ベルト31の通過する位置の調整すべき量に応じて設定されるが、少なくとも主要作用部66mの最高部分における距離Laよりも小さくかつ非接触部66hの回転軸67との離間距離よりも大きい値になる。
【0058】
この調整作用部68は、
図11(B)に示されるように、回転カム66Cの回転角度を変更することにより、左のスライダー64Aのカム当接部65に接触し始めてから最大で距離βだけスライダー64Aを矢印E1で示す方向に移動させることができる。
このときの最大の距離βは、調整作用部68の最高部分の距離Lbから上記した離間距離Lsを差し引いた値(Lb-Ls)になる。また、この最大の距離βは、その距離βだけ左のスライダー64Aが矢印E
2で示す方向に移動しても、そのスライダー64Aにおける作用突部64pが揺動支持体61y,61m,61cの接触突部63に接触しないような値に設定される。
【0059】
また、変位機構6では、
図3、
図7、
図8等に示されるように、上流側の保持ロール32cの両端の軸部を左右の揺動支持体61dにより変位可能に支持している。
【0060】
左右の揺動支持体61dは、一次転写ロール251の揺動支持体61と似た屈曲した形状の部材で構成されており、その屈曲部が支持フレーム30の左右の側面部分30a,30bに設けられた支持軸62dに取り付けられて、支持軸62dを支点にして矢印H1,H2で示す方向にそれぞれ揺動し得るようになっている。
また揺動支持体61dは、
図7、
図8等に示されるように、その屈曲部から他方(例えば上方の方向)に延びる部分に、左のスライダー64Aの一部と接触し得る接触突部63dが設けられている。またその屈曲部から他方に延びる部分には、揺動支持体61dを矢印H1で示す方向に付勢するコイルスプリング等の弾性部材69の一端部が設けられている。これにより、揺動支持体61dは、弾性部材69による付勢力を受けて矢印H1に示す方向に揺動し続けるよう付勢されている。
【0061】
また、左のスライダー64Aの支持ロール32bに近い側の端部には、
図7、
図8等に示されるように、揺動支持体61dにおける接触突部63と接触して揺動支持体61dを矢印H2で示す方向に揺動させる作用突部64pdを突出して設けている。
このスライダー64Aの作用突部64pdと揺動支持体61dの接触突部63dとは、多色モードのときであって回転カム66Cにおける調整作用部68がスライダー64Aのカム当接部65に接触してスライダー64Aが矢印E
2で示す方向に移動させられるときに、互いに接触し合う状態に保たれることが可能になる寸法形状や位置関係で設けられている。
【0062】
また、画像形成装置1では、
図3や
図5に示されるように、中間転写ベルト31の寄り特性を計測する計測手段の一例としての位置検知センサ18を設けるとともに、位置検知センサ18で計測される寄り特性に応じて回転カム66Cの回転角度をカム駆動装置17で調整するようにしている。
【0063】
ここで、中間転写ベルト31の寄り特性は、多色モードのときに中間転写ベルト31の回転方向Bに沿う左右端部の少なくとも一方の端部が通過する位置(回転する軸方向に対する位置)に関する経過情報である。位置検知センサ18は、中間転写ベルト31の左右端部の一方の端部の位置を検知するとともに、その検知情報を集計して中間転写ベルト31の寄り特性に関する計測を行うようになっている。
また、カム駆動装置17による回転カム66Cの回転角度の調整は、カム駆動装置17が、位置検知センサ18からの計測情報に基づいて作動する制御装置15により制御されて作動することで行われる。
【0064】
そして、この変位機構6においては、単色モードから多色モードに切り替えられて画像形成動作が実行される時期になると、
図11(A)に示されるように、左の回転カム66Cが、右の回転カム66Bの場合(
図3(A)や
図6)と同様に、非接触部66hを左のスライダー64Aにおける各カム当接部65に向き合わせるよう所要の回転角度だけ回転させられて、カム当接部65と接触しない状態におかれる。
この結果、左のスライダー64Aは、右のスライダー64Bの場合と同様に、回転カム66Cによる作用を受けない状態になるので、矢印G1で示す方向に付勢されている各揺動支持体61y,61m,61cから付勢力を受けて矢印E1で示す方向へ移動させられる状態になる。
これにより、変位機構6では、
図3(A)に示されるように、各揺動支持体61y,61m,61cが支持軸62を中心にして矢印G1で示す方向に揺動するので、一次転写ロール251y,251m,251cが退避位置から転写位置に変位させられる。
【0065】
またこのときの変位機構6では、揺動支持体61dが支持軸62dを中心にして矢印H1で示す方向に揺動し、これにより上流側の保持ロール32cが退避位置から多色モードのときの定位置に変位させられる。
この結果、中間転写ベルト31は、最上流の一次転写ロール251yに移動する前に上流側の保持ロール32cにおいてその通過する位置が一定に保持された状態になって、矢印Bで示す方向に回転して走行する。
【0066】
さらに変位機構6では、多色モードの画像形成動作が開始される前に、位置検知センサ18の計測情報が制御装置15に入力されるとともに中間転写ベルト31の寄り特性が確認される。
この際、制御装置15において中間転写ベルト31の走行が軸方向に対して不安定であると確認されると、カム駆動装置17が作動して回転軸67を回転させて回転カム66B,66Cを所要の角度だけ回転させる。中間転写ベルト31の走行が軸方向に対して不安定であるか否かの判断は、例えば、多色モードの画像形成動作のセットアップ時に中間転写ベルト31に一次転写して形成する制御用のトナー像(パッチ像)の位置ずれ量が許容範囲に入っているか否かを検証することで行われる。
【0067】
これにより、右の回転カム66Bは、調整作用部68が存在しないので右のスライダー64Bにおけるカム当接部65に接触しない状態におかれる(
図6)。このため、このときの右のスライダー64Bは、
後述するように左のスライダー64Aのカム当接部65に回転カム66C
の調整作用部68が接触
しても(図11(B)参照)移動することがない。
【0068】
一方、左の回転カム66Cは、
図11(B)に示されるように、その調整作用部68が左のスライダー64Aにおけるカム当接部65に接触した状態になる。
これにより、このときの左のスライダー64Aは、調整作用部68のカム当接部65との接触度合いに応じて矢印E2で示す方向に移動する。スライダー64Aは、上記したように最大の距離βだけ移動し得るが、回転カム66Cの回転角度により最大の距離βよりも少ない距離だけ矢印E2で示す方向に移動することもある。
【0069】
以上の動作により、右のスライダー64Bにおける作用突部64pdが右の揺動支持体61dの接触突部63dに接触することがないので、その揺動支持体61dが矢印H2(H1も含む)で示す方向に揺動することがなく、上流側の保持ロール32cにおける右側の端部が変位することもない。
一方、左のスライダー64Aにおける作用突部64pdが左の揺動支持体61dの接触突部63dに接触するので、その揺動支持体61dがスライダー64Aの移動量に対応して矢印H2で示す方向に所要の角度だけ揺動し、上流側の保持ロール32cにおける左側の端部が矢印H2で示す上方の方向に変位する。
なお、回転カム66Cは、その回転角度により調整作用部68がスライダー64Aのカム当接部65との接触度合が変わるので、スライダー64Aを矢印E2で示す方向に移動させることに限らず、調整作用部68の最高部分から外れた部分をカム当接部65に接触させて矢印E1に移動させるようにすることも可能である。また、回転カム66Cは、調整作用部68の接触状態の調整のために矢印D1、D2のいずれの方向に回転させても構わない。
【0070】
この結果、上流側の保持ロール32cは、
図12に示されるように、右側の端部が多色モードのときの通常の位置におかれた状態にあるのに対して、左側の端部が矢印H2で示す上方の方向に変位するので、中間転写ベルト31の通過する位置PP31が変更されて調整される。これにより、中間転写ベルト31は、上流側の保持ロール32cを通過する際に、軸方向における位置が変更されて走行状態が調整される。
【0071】
したがって、この画像形成装置1では、多色モードの画像形成を行う場合、変位機構6により上流側の保持ロール32cを介して中間転写ベルト31の通過する位置の調整が行われて中間転写ベルト31の不安定走行の発生が抑制されるので、多色画像を形成するときの中間転写ベルト31の不安定走行による軸方向への像ずれ(トナー像のずれ)の一例である色ずれの発生が抑制される。
【0072】
変位機構6は、位置検知センサ18の計測により中間転写ベルト31の寄り特性が中間転写ベルト31の軸方向への片寄りがなく変動もないという結果が得られた場合、次のように作動する。
すなわち、多色モードのときに、カム駆動装置17により回転カム66Cを回転させて(この際、回転カム66Bも回転する)、中間転写ベルト31を左右端の一方の側に片寄らせるよう、上流側の保持ロール32cにおける中間転写ベルト31の通過する位置PP31を調整する。具体的には、上流側の保持ロール32cは、その左側の端部が矢印H2の方向に変位させられる。
これにより、中間転写ベルト31は、左右端の一方の側に片寄って走行するようになるので、その走行が不安定になりにくくなり、多色画像を形成するときの上記色ずれの発生が抑制される。
【0073】
また、変位機構6は、位置検知センサ18の計測により中間転写ベルト31の寄り特性が中間転写ベルト31の軸方向への一方の側に片寄っているという結果が得られた場合、次のように作動する。
すなわち、多色モードのときにカム駆動装置17により回転カム66Cを回転させて(回転カム66Bも回転する)、中間転写ベルト31を片寄っている側と反対側にずらして寄せるよう、上流側の保持ロール32cにおける中間転写ベルト31の通過する位置PP31を調整する。具体的には、上流側の保持ロール32cは、その左側の端部が矢印H2の方向に変位させられる。
【0074】
これにより、中間転写ベルト31は、それまでの片寄った側とは反対側にずれて走行するようになり、軸方向の一方の側に片寄って走行し続けることが抑制されるので、多色画像を形成するときの上記色ずれの発生が抑制されることに加えて、次の利点がある。
つまり、中間転写ベルト31が一方の側に片寄った状態のままで回転走行していると、中間転写ベルト31のベルトリブ37が支持ロール32a等の左右両端部のいずれかにおけるリブガイド38のガイド面38gに乗り上げた状態で走行し続けることになる。これにより、中間転写ベルト31は、その該当する端部がたわむように変更した状態が続き、ある時点で屈曲して中間転写ベルト31が破断してしまうことがある。しかし、変位機構6は、上記したように中間転写ベルト31の通過する位置の調整を行う。これにより、中間転写ベルト31は、破断が発生しにくくなって破断の発生が低減される。
【0075】
[他の変形例]
この発明は、実施の形態1で例示した内容に何ら限定されるものではなく、例えば、以下に挙げるような変形例も含むものである。
【0076】
多色モードのときに変位機構6を利用して上流側の保持ロール32cにおける中間転写ベルト31の通過する位置を調整するのは、少なくとも画像形成装置1の出荷前の検査工程で行えばよいが、ユーザが使用する段階でも行うように構成してもよい。
【0077】
実施の形態1では、左側の回転カム66Aについて調整作用部68を設けた回転カム66Cとし、多色モードのときに左側のスライダー64Aを移動させて上流側の保持ロール32cにおける中間転写ベルト31の通過する位置を調整する構成例を示したが、右側の回転カム66Bについて調整作用部68を設けた回転カム66Cとし、多色モードのときに右側のスライダー64Bを移動させて上流側の保持ロール32cにおける中間転写ベルト31の通過する位置を調整するよう構成してもよい。
【0078】
また実施の形態1では、多色モードのときに変位機構6を利用して上流側の保持ロール32cにおける中間転写ベルト31の通過する位置を調整する構成例を示したが、必要であれば、下流側の保持ロール32dにおける中間転写ベルト31の通過する位置を調整するよう構成しても差し支えない。この場合、下流側の保持ロール32dは、中間転写ベルト31の回転方向Bに対して最下流に配置される一次転写ロール251kよりも下流側の最初の位置に配置されて、中間転写ベルト31の内周面に接触して中間転写ベルト31の通過する位置を保持する保持ロールのことである。
【0079】
さらに実施の形態では、画像形成装置1として、色が互いに異なる4色のトナー像を形成する4つの像形成装置2Y,2M,2C,2Kを備えた画像形成装置を例示したが、この発明が適用される画像形成装置としては、2つ以上からなる複数の像形成装置2を備えた中間転写方式の画像形成装置であれば差し支えない。
また、複数の像形成装置2については、互いに異なる色のトナー像を形成する複数の像形成装置であることに限定されず、例えば、すべて同じ色のトナー像を形成する複数の像形成装置であっても、あるいは、一部のトナー像のみが異なる色で形成される複数(この場合は3つ以上)の像形成装置であってもよい。
【0080】
この他、像ずれは、異なる色のトナー像どうし間で発生する場合に限らず、例えば、同じ色の複数のトナー像が形成される場合において当該同じ色のトナー像どうし間で発生する場合も含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 …画像形成装置
2 …像形成装置(像形成手段の一例)
6 …変位機構
17…カム駆動装置(カム駆動手段の一例)
18…ベルト変位検知センサ(計測手段の一部)
31…中間転写ベルト
32c…上流側の保持ロール
32d…下流側の保持ロール
64A,64B…左右のスライダー(左右の移動手段の一例)
65…カム当接部(移動手段の一部の一例)
66A,66B…左右の回転カム
66C…調整作用部が設けられた回転カム
68…調整作用部(回転カムの一部の一例、調整作用部の一例)
251y,251m,251c,251k…一次転写ロール(複数の一次転写ロールの一例)
B …中間転写ベルトの回転方向
E1,E2…スライダーの移動する方向
H1,H2…保持ロールの変位する方向