(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】文書公開制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20231121BHJP
G06Q 10/10 20230101ALI20231121BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q10/10
(21)【出願番号】P 2019171222
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】造士 総一郎
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-090666(JP,A)
【文献】特開2013-210986(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/169144(JP,A1)
【文献】特開2006-190164(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/038323(JP,A1)
【文献】山本 岩男,富士通ソリューションスクエアにおけるセキュリティの取組み,FUJITSU,富士通株式会社,2004年01月09日,第55巻第1号,P.37-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各文書へのアクセス履歴情報であって当該文書の提供者、利用者及び文書種別を少なくとも含むアクセス履歴情報を取得するアクセス履歴情報取得手段と、
文書の提供者によって当該文書の利用者毎に設定される文書公開情報であって、当該利用者に対する文書の公開の程度を示す公開レベルが文書種別毎に設定されている文書公開情報を取得する文書公開情報取得手段と、
アクセス履歴情報から得られる連携度であって、文書の提供者と利用者との連携の強さを示す連携度に応じて文書公開情報の更新を制御する制御手段と、
を有
し、
文書の提供者と利用者との前記連携度は、当該利用者による当該文書へのアクセス要求回数、当該利用者による当該文書の表示回数、又は当該利用者による当該文書のダウンロード回数の少なくとも1つに基づき算出されることを特徴とする文書公開制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、文書の提供者と利用者との前記連携度が予め設定されている閾値以上の場合、当該利用者に対応する文書公開情報に設定されている、当該文書の文書種別の公開レベルを上昇させることを特徴とする請求項1に記載の文書公開制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、文書公開情報が更新可能な状況の場合、当該提供者に公開レベルの変更の是非を問い合わせることを特徴とする請求項1に記載の文書公開制御装置。
【請求項4】
文書公開情報に従って文書の公開の程度を制御する公開制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の文書公開制御装置。
【請求項5】
前記公開制御手段は、契約書から得られる契約期限情報に従って文書の公開を制御することを特徴とする請求項
4に記載の文書公開制御装置。
【請求項6】
コンピュータを、
各文書へのアクセス履歴情報であって当該文書の提供者、利用者及び文書種別を少なくとも含むアクセス履歴情報を取得するアクセス履歴情報取得手段、
文書の提供者によって当該文書の利用者毎に設定される文書公開情報であって、当該利用者に対する文書の公開の程度を示す公開レベルが文書種別毎に設定されている文書公開情報を取得する文書公開情報取得手段、
アクセス履歴情報から得られる連携度であって、文書の提供者と利用者との連携の強さを示す連携度に応じて文書公開情報の更新を制御する制御手段、
として機能させ
、
文書の提供者と利用者との前記連携度は、当該利用者による当該文書へのアクセス要求回数、当該利用者による当該文書の表示回数、又は当該利用者による当該文書のダウンロード回数の少なくとも1つに基づき算出されるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書公開制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
企業間連携にてプロジェクトを進めていく上で各企業が作成した文書を企業間で共有したい場合がある。各企業によって作成される文書は、設計図面や営業関連、機能書や契約書等種々の文書が存在しうるが、全ての文書を全ての企業に利用させる必要はなく、契約内容やセキュリティの観点から、各企業は、作成した文書を、連携する企業のうち特定の企業に限定してアクセスさせたい場合がある。
【0003】
従来においては、企業間の契約内容や文書へのアクセス履歴に応じて企業間で共有させる文書に対してアクセス権を設定する場合がある。各企業は、予め設定されたアクセス権の範囲内で文書をアクセスする。一方、アクセスしたい文書へのアクセス権限のない企業は、その文書にアクセスできるようにするため文書作成元の企業に個別に連絡を取って権限の付与を依頼していた。そして、依頼を受けた企業は、その要求に応じてアクセス権の設定を変更するなどして対応していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2004/063957号
【文献】特開2006-215797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
文書を提供する際、例えば文書のダウンロードを許可したり、文書のダウンロードは認めないものの閲覧は許可したりするなど、文書の公開の程度を文書の利用者個々に設定する場合がある。文書の提供者が提供した文書に対し、相対的に多くのアクセスをする利用者が存在する場合、文書の提供者と利用者との連携関係は、当該文書を通じて相対的に強いと考えられるので、その利用者に対しては公開の程度を上げてあげるなどの調整を行うことが好ましいと考えられる。しかしながら、この公開の程度の調整を行うのが面倒である。
【0006】
本発明は、文書の提供者と利用者との連携関係に応じて設定される文書の公開の程度を文書種別毎に調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る文書公開制御装置は、各文書へのアクセス履歴情報であって当該文書の提供者、利用者及び文書種別を少なくとも含むアクセス履歴情報を取得するアクセス履歴情報取得手段と、文書の提供者によって当該文書の利用者毎に設定される文書公開情報であって、当該利用者に対する文書の公開の程度を示す公開レベルが文書種別毎に設定されている文書公開情報を取得する文書公開情報取得手段と、アクセス履歴情報から得られる連携度であって、文書の提供者と利用者との連携の強さを示す連携度に応じて文書公開情報の更新を制御する制御手段と、を有し、文書の提供者と利用者との前記連携度は、当該利用者による当該文書へのアクセス要求回数、当該利用者による当該文書の表示回数、又は当該利用者による当該文書のダウンロード回数の少なくとも1つに基づき算出されることを特徴とする。
【0008】
また、前記制御手段は、文書の提供者と利用者との前記連携度が予め設定されている閾値以上の場合、当該利用者に対応する文書公開情報に設定されている、当該文書の文書種別の公開レベルを上昇させることを特徴とする。
【0009】
また、前記制御手段は、文書公開情報が更新可能な状況の場合、当該提供者に公開レベルの変更の是非を問い合わせることを特徴とする。
【0011】
また、文書公開情報に従って文書の公開の程度を制御する公開制御手段を有することを特徴とする。
【0012】
また、前記公開制御手段は、契約書から得られる契約期限情報に従って文書の公開を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、各文書へのアクセス履歴情報であって当該文書の提供者、利用者及び文書種別を少なくとも含むアクセス履歴情報を取得するアクセス履歴情報取得手段、文書の提供者によって当該文書の利用者毎に設定される文書公開情報であって、当該利用者に対する文書の公開の程度を示す公開レベルが文書種別毎に設定されている文書公開情報を取得する文書公開情報取得手段、アクセス履歴情報から得られる連携度であって、文書の提供者と利用者との連携の強さを示す連携度に応じて文書公開情報の更新を制御する制御手段、として機能させ、文書の提供者と利用者との前記連携度は、当該利用者による当該文書へのアクセス要求回数、当該利用者による当該文書の表示回数、又は当該利用者による当該文書のダウンロード回数の少なくとも1つに基づき算出される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、文書の提供者と利用者との連携関係に応じて設定される文書の公開の程度を文書種別毎に調整することができる。また、利用者の文書へのアクセス頻度に基づき文書の提供者と利用者との連携度を算出できる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、連携関係が強いと推定できる利用者が利用する文書の文書種別の公開レベルを上昇させることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、公開レベルを変更させるかどうかを、文書の提供者に決定させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、文書を当該文書種別に設定されている公開レベルに従った程度で公開することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、文書の提供者と利用者との間の契約期間外となった当該文書の公開を禁止することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、文書の提供者と利用者との連携関係に応じて設定される文書の公開の程度を文書種別毎に調整することができる。また、利用者の文書へのアクセス頻度に基づき文書の提供者と利用者との連携度を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施の形態における企業間連携システムを示すブロック構成図である。
【
図2】本実施の形態における標準公開情報及び公開情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図3】本実施の形態における標準公開情報と公開情報との関係を示す図である。
【
図4】本実施の形態における連携テンプレート記憶部に記憶される連携テンプレートのデータ構成の一例を示す図である。
【
図5】本実施の形態における履歴情報記憶部に蓄積される履歴情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図6】本実施の形態において企業内システムから企業のユーザが文書管理システムで管理されている文書をリスト表示させたときの画面表示例を示す図である。
【
図7】本実施の形態における公開情報更新処理を示すフローチャートである。
【
図8】本実施の形態における連携度評価処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態における企業間連携システムを示すブロック構成図である。
図1には、企業内システム1と、文書管理システム2と、がインターネット3に接続された構成が示されている。
【0024】
企業内システム1は、例えばプロジェクトの開発業務等の業務を連携して遂行する企業が個々に有するシステムである。企業内システム1は、アプリケーションを開発するユーザが使用するPC(Personal Computer)及び作成された文書ファイルを文書管理システム2との間でやり取りするサーバコンピュータ等のコンピュータが接続されて構築される。企業内システム1は、文書管理システム2で管理される文書に対して閲覧等の処理を行うための文書処理部11と、文書管理システム2からの要求に応じて公開レベルを上昇又は下降させるなどの更新処理を行うための更新処理部12と、を有している。公開レベルに関しては後述する。
【0025】
文書管理システム2は、業務を連携して遂行する企業により共通して利用されるサービスを提供するシステムである。文書管理システム2は、企業内システム1の外部に設けられ、例えばクラウドコンピューティングにより実現可能である。従って、文書管理システム2は、1又は複数のサーバコンピュータにより構築される。サーバコンピュータは、汎用的なサーバコンピュータで実現可能であり、CPU、ROM、記憶手段としてのRAM及びハードディスクドライブ(HDD)、通信手段としてのネットワークインタフェースを備えている。
【0026】
文書管理システム2は、企業内システム1を有する企業により提供された文書の公開の制御を行う。文書管理システム2は、連携情報生成部21、文書管理部22、公開情報管理部23、公開情報更新処理部24、連携テンプレート記憶部25、連携情報記憶部26、文書記憶部27、履歴情報記憶部28、標準公開情報記憶部29及び公開情報記憶部30を有している。なお、本実施の形態において説明に用いない構成要素については、図から省略している。
【0027】
詳細は後述するように、本実施の形態では、企業間連携に関連する連携情報の生成に用いる連携テンプレートが予め用意されており、連携テンプレート記憶部25には、その連携テンプレートが登録されている。連携情報生成部21は、連携テンプレート記憶部25に記憶されている連携テンプレートに必要な情報を当てはめることで連携情報を生成する。連携情報記憶部26には、連携情報生成部21が生成した連携情報が記憶される。
【0028】
文書記憶部27には、業務を連携する企業が作成した文書が記憶される。なお、本実施の形態でいう「文書」というのは、電子化されたデータであり、ファイル形式にて文書記憶部27に保存される。文書管理部22は、文書記憶部27に記憶される文書の管理を行う。また、文書管理部22は、企業内システム1からの文書のアクセス要求に応じて公開情報に従った公開レベルで文書の公開制御を行う。また、文書管理部22は、文書に対するアクセス要求があると、履歴情報を生成して履歴情報記憶部28に登録する。
【0029】
公開情報記憶部30には、詳細は後述するように文書種別毎に公開レベルが設定された公開情報が記憶されている。公開情報は、企業毎に生成される。また、公開情報を作成する際の元となる標準公開情報が企業毎に予め用意されるが、標準公開情報記憶部29には、各企業の標準公開情報が記憶される。公開情報管理部23は、標準公開情報を参照して企業毎の公開情報の設定を行う。また、公開情報管理部23は、公開情報更新処理部24と連携して行う公開情報の更新を制御する。更に、公開情報管理部23は、公開情報の更新の是非を判断する際に、連携度を算出する機能を有する。公開情報更新処理部24は、公開情報管理部23と連携して公開情報の更新処理を実行する際に公開情報の更新の是非を企業に問い合わせる。
【0030】
文書管理システム2における各構成要素21~24は、文書管理システム2を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPUで動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、各記憶部25~30は、文書管理システム2に搭載されたHDDにて実現される。
【0031】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD-ROMやUSBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0032】
次に、本実施の形態における動作について説明する。
【0033】
前述したように、文書管理システム2は、業務を連携して遂行する企業により提供され、文書記憶部27に記憶された文書の公開の制御を行うが、そのためには、種々の情報を予め設定しておく必要がある。その種々の情報の1つとして公開情報がある。
図2は、本実施の形態における標準公開情報及び公開情報のデータ構成の一例を示す図である。また、
図3は、本実施の形態における標準公開情報と公開情報との関係を示す図である。以下、これらの図を用いて前述した公開レベルが設定される公開情報について説明する。
【0034】
プロジェクト開発等の業務を連携して遂行する各企業は、業務の遂行中に設計書や仕様書等、自社が担当する業務に関連して各種文書を作成する。そして、企業は、企業間連携のために作成した文書を共有可能に文書管理システム2に登録する。ただ、企業は、作成した文書を他企業に何ら制限なく公開させる必要はない。例えば、ハードウェアの開発企業に対して、自社作成の営業戦略に対する文書を公開する必要はなく、セキュリティ上、公開しない方がよい場合もある。このように、企業は、文書を公開するに際し何らかの制限を設定するのが好ましい場合がある。
【0035】
そのために、各企業は、公開に関する基準として、
図3に示すように他企業に共通する標準的な公開情報として標準公開情報を作成し、標準公開情報記憶部29に事前登録する。そして、公開情報管理部23は、各企業が作成した標準公開情報を他企業毎に展開し、文書の公開が開始される前に公開情報を他企業毎に設定する。文書の公開開始時点では、どの企業も当該文書を利用していないので、通常、公開情報の設定当初の設定内容は標準公開情報の設定内容と同じとなる。つまり、公開情報管理部23は、各企業作成の標準公開情報をコピーすることによって当該企業の各他企業に対する公開企業を設定する。
【0036】
続いて、標準公開情報及び公開情報のデータ構成について説明するが、標準公開情報及び公開情報のデータ構成は同じである。従って、以下の説明では、公開情報を代表させて説明する。
【0037】
図2に示すように、公開情報は、公開対象の文書の公開レベルを、文書種別毎機密レベル毎に設定される情報である。文書種別(以下、単に「文書種」という)は、文書の種類を示す。各文書は、例えば設計書や仕様書等文書の目的や機能等に従って分類され、いずれかの文書種に属する。「機密レベル」は、文書の機密性の程度を示す指標であり、文書種毎に設定する。「公開レベル」は、文書の公開の程度を示す指標である。
図2に示すように、本実施の形態では、文書の公開レベルとして3段階の公開レベルを設定する。このうち「公開(ダウンロード可)」は、文書をダウンロードしてよいというレベルである。つまり、文書管理システム2で管理されている文書を企業内システム1に取り込むことが可能である。「公開(表示可)」は、文書ファイルをダウンロードはできないものの、文書の内容は表示させることによって閲覧可能にするというレベルである。「公開(表示不可)」は、文書の内容は表示できないものの、例えば文書のリストが表示される際に文書名等の情報は表示されることで、文書の存在は公開されるというレベルである。
【0038】
本実施の形態では、機密レベル及び公開レベルを共に3段階に設定したが、各レベルの段階数はこれに限る必要はない。
【0039】
続いて、連携情報について説明する。連携情報は、予め設定しておく必要がある種々の情報の1つである。
図4は、本実施の形態における連携テンプレート記憶部25に記憶される連携テンプレートのデータ構成の一例を示す図である。連携テンプレートは、企業が連携して遂行する業務に関連するデータを設定するためのデータ構造を示すテンプレートである。連携テンプレートが示すデータ構造上に必要なデータを設定することで当該業務に対応する連携情報が生成される。連携テンプレートへのデータの設定は、各企業若しくは連携する企業のうち業務の中核を成す企業等が各企業の情報をまとめて行う。
【0040】
図4に示す連携テンプレートのデータ構造の例によると、連携テンプレートに設定する情報としては、企業及び工程に関連する情報及び前述した標準公開情報がある。企業は、業務を遂行する際に連携する企業である。工程は、遂行する業務に含まれる工程である。企業に関連する情報は、各企業を識別する企業ID、企業名、業種を含む。更に、前述した公開情報が関連付けされる。企業に関連する情報は、企業毎に設定される。工程に関連する情報は、次に遷移する工程を示す遷移先、遷移するための条件を示す遷移条件、当該工程において使用する文書及びその格納先を含む。工程に関連する情報は、工程毎に設定される。文書に関連する情報は、各文書を識別する文書ID、文書種別、文書の作成者を示す作成元、文書が公開された日を示す公開日、前述した公開情報によって特定される機密レベル及び公開レベルを含む。文書に関連する情報は、文書毎に設定される。また、文書のうち契約書に関しては、更に文書IDに加え、当該契約が有効となる開始日、当該契約が満了する終了日及び連携する各企業における承認の有無を含む。
【0041】
なお、
図4に示した各テンプレートを構成する情報の構造及び項目の種類は、一例であって、例えば更に異なる種類の情報項目を含めてもよい。
【0042】
連携情報生成部21は、各企業若しくは中核を成す企業から連携テンプレートに設定する情報を受け取ると、前述した連携テンプレートに情報項目値を当てはめることによって当該企業間連携に関する連携情報を生成する。特に、連携情報生成部21は、契約書データを受け取り、契約書に設定されている契約の始期及び終期を連携テンプレートにおける開始日及び終了日に設定することで、連携情報の有効期間を設定する。つまり、契約期間と連携情報の有効期間は一致する。連携情報は、企業が連携して遂行される業務毎に生成され、それぞれを識別する識別情報としてテンプレートIDが付与される。
【0043】
以上のように、各企業が文書管理システム2に文書を共有可能に登録し、公開情報及び連携情報が設定されると、文書管理部22は、各企業内システム1からのアクセス要求に応じて、公開情報に設定される公開レベルに従って文書の公開を制御する。つまり、各企業は、公開情報に従った文書の利用が可能となる。そして、文書管理部22は、アクセス要求を受け付けると履歴情報を生成して履歴情報記憶部28に登録する。
【0044】
図5は、本実施の形態における履歴情報記憶部28に蓄積される履歴情報のデータ構成の一例を示す図である。履歴情報は、アクセス対象として指定された文書の文書IDに、当該文書の文書種、当該文書を作成した企業を示す作成元、当該文書にアクセスしようとした企業を示すアクセス企業、アクセス内容、アクセス日時及び当該文書が作成された業務に対応する連携情報のテンプレートIDが対応付けして生成される。履歴情報には、アクセス日時、アクセス企業、文書IDが少なくとも含まれていれば、いつ誰がどの文書をアクセスしようとしたのかを特定できる。アクセス内容というのは、アクセス要求、表示、ダウンロード等のアクセスの種類であり、
図2に示す公開レベルの種類に対応する。連携情報を参照することによって特定できる項目(例えば、作成元)は、履歴情報に含めてもよいし、含めなくてもよい。
【0045】
図6は、本実施の形態において企業内システム1から企業のユーザが文書管理システム2で管理されている文書をリスト表示させたときの画面表示例を示す図である。
図6には、表示対象となる文書の文書名に、当該文書の公開内容及び作成元が対応付けして表示されている例が示されている。文書管理部22は、企業内システム1からの要求に応じて
図6に例示する表示画面を生成する。企業内システム1における文書処理部11は、ブラウザによって表示画面を取得して画面に表示させる。もちろん、その他の方法によって画面を表示させるように処理してもよい。
【0046】
図6に示す公開内容には、2種類の表示要素(以下、「アイコン」という)が選択可能に表示される。アイコン31は、文書の内容を表示させるためのアイコンである。アイコン32は、文書をダウンロードするためのアイコンである。
図2に用いて説明したように、各文書には、文書種毎に公開レベルが設定されている。「公開(ダウンロード可)」に該当する文書種の文書には、
図6に例示する文書“工程表”のようにアイコン32が対応付けして表示される。「公開(表示可)」に該当する文書種の文書には、
図6に例示する文書“操作説明書”のようにアイコン31が対応付けして表示される。公開レベルが上位の文書“工程表”にもアイコン31が対応付けして表示される。「公開(表示不可)」に該当する文書種の文書には、
図6に例示する文書“機密文書”のようにアイコン31,32は対応付けして表示されない。但し、文書名が表示されることから、文書の存在は公開されていることになる。
【0047】
本実施の形態においては、
図6に例示したように各文書の公開レベルに応じて必要によりアイコン31,32を表示させるようにした。そして、アイコン31が選択されると、当該文書の内容が画面表示され、ユーザは、文書の内容を閲覧可能になる。アイコン32が選択されると、所定のダウンロード画面が表示され、当該文書がダウンロード可能になる。
【0048】
前述したように、企業のユーザは、
図6に示す文書のリスト画面からアイコン31,32を選択することによって文書管理システム2で管理されている文書に対してアクセス、具体的には公開レベルに対応する公開を要求する。文書管理部22は、このアクセス要求に応じて公開レベルに対応した文書の公開を行い、また履歴情報を生成して履歴情報記憶部28に登録する。また、公開レベルが「公開(表示不可)」の文書に対しては、アイコンが用意されていないことからアクセスできないが、例えば文書名を選択すると、その選択操作をユーザが当該文書へのアクセスを要求する操作とみなす。なお、
図6には、選択可能であることを示すために、文書名に下線33を付加した例が示されている。文書管理部22は、文書名が選択されたことを認知すると、その選択操作を文書に対するアクセス要求とみなして履歴情報を生成して履歴情報記憶部28に登録する。なお、公開レベルは「公開(表示不可)」なので、当該文書の表示やダウンロードはしない。以上のようにして、履歴情報記憶部28には、履歴情報が蓄積されていく。
【0049】
ところで、各企業に対する公開情報は、文書を提供する企業が用意した標準公開情報に従って各他企業に対応させて一律に生成される。ただ、ある企業が特定の文書(又は文書種)に頻繁にアクセスしていることが履歴情報から認識できると、公開レベルをアップ(「上昇」と同義)させてもよいとも考えられる。しかしながら、文書種毎に個々に対応しようとするとその処理が面倒である。そこで、本実施の形態では、公開レベルを自動的にアップできる機能を設けた。以下、公開情報に含まれている各文書種の公開レベルをアップさせる公開情報更新処理について、
図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0050】
例えば、複数の企業により製品Xのバージョン1.0を開発するプロジェクトにおいて契約書等の各種文書が作成され、これに応じて連携情報生成部21及び公開情報管理部23によってそれぞれ連携情報及び公開情報が設定される。そして、製品が開発される工程において各企業によって各種文書に対するアクセス要求がされると、文書管理部22は、そのアクセス要求に応じて履歴情報を生成して履歴情報記憶部28に登録する。更に、文書管理部22は、公開情報に応じて各文書に対する公開制御を行う。
【0051】
ここで、製品Xのバージョン1.0の開発終了後に新たな企業が加わり、製品Xのバージョン2.0を開発するプロジェクトが開始されるとする。このとき、新たな企業(例えば、企業3)が追加されたことに伴い、新たな契約書が作成され、連携情報が更新される。また、新たな企業向けの公開情報が設定される。具体的には、公開情報管理部23は、製品Xのバージョン1.0を開発するプロジェクトから参加していた企業(例えば、企業1及び企業2)それぞれの標準公開情報をコピーすることで、企業1の企業3向けの公開情報及び企業2の企業3向けの公開情報を設定する。公開情報管理部23は、またその反対に、企業3の標準公開情報をコピーすることによって、企業3の企業1向けの公開情報及び企業3の企業2向けの公開情報をそれぞれ設定する。そして、製品Xのプロジェクトに関して公開情報の見直しが実行される。この公開情報の見直しは、当該プロジェクトに含まれる企業の管理者又は文書管理システム2の管理者等からの要求により実行される。あるいは、連携情報が新規に作成又は更新されたことに伴い自動的に実行するようにしてもよい。
【0052】
図7に示すように、公開情報管理部23は、処理対象とする連携情報を取得する(ステップ110)。連携情報は、テンプレートIDにより識別可能なので、手動で処理が開始される場合、公開情報管理部23は、テンプレートIDを管理者等に指定させることで、取得する連携情報を特定できる。続いて、公開情報管理部23は、取得した連携情報に設定されている企業を取得する(ステップ120)。この取得された企業は、プロジェクトに参加している企業(上記例に従うと、企業1~3)である。ここで、各企業に対して以下の処理を実行する。
【0053】
公開情報管理部23は、以下の処理を実行していない企業を企業iとして1つ特定する(ステップ130)。続いて、公開情報管理部23は、履歴情報記憶部28に蓄積されている履歴情報の中から履歴情報のテンプレートIDに、管理者等に指定されたテンプレートIDと合致するレコードのみを参照し、特定した企業iに対応するレコードの有無を確認する。レコードの有無は、履歴情報の作成元及びアクセス企業を参照して判断する。企業iが設定されているレコードがない場合、当該企業iによる文書の利用実績はないものと判断し(ステップ140でN)、未処理の企業iが存在する場合(ステップ190でN)、その未処理の企業に処理を移行する(ステップ200,130)。
【0054】
なお、本処理は、連携情報が新規に作成されたときに実行されると説明したが、新規作成時には、該当する企業を含むテンプレートIDの履歴情報がまだ履歴情報記憶部28に記録されていないので、ステップ140では常にNoと判断されることになる。上記例の企業3の場合がこれに該当する。
【0055】
該当するレコードがあると、当該企業iによる文書の利用実績があると判断して(ステップ140でY)、他企業との連携実績を確認する。他企業との連携実績は、履歴情報に含まれている作成元及びアクセス企業の組を参照し、作成元が企業iであり、かつアクセス企業が企業j(jはi以外)である組合せであるかどうかを確認する。企業iと企業jとの組合せとなる履歴情報が履歴情報記憶部28に記録されていない場合、連携実績がないものと判断して(ステップ150でN)、企業iの企業j向けの公開情報は現状維持とし更新しない(ステップ160)。一方、企業iと企業jとの組合せとなる履歴情報が履歴情報記憶部28に記録されている場合、連携実績があるものと判断して(ステップ150でY)、企業i,j間の連携度を評価する処理を実行する(ステップ170)。以下、連携度を評価する処理について
図8に示すフローチャートを用いて説明する。
【0056】
公開情報管理部23は、他企業jをアクセス企業とする履歴情報を履歴情報記憶部28から取得する(ステップ171)。この例では、製品Xのバージョン2.0を開発するプロジェクトが開始される際に
図7に示す公開情報更新処理が実行されることから製品Xのバージョン1.0を開発するプロジェクトの実行中に記録された履歴情報が履歴情報記憶部28から抽出されることになる。
【0057】
図2に示すように、公開情報には、文書種毎に公開レベルを設定していることから、公開情報管理部23は、履歴情報記憶部28から抽出した履歴情報を文書種毎に分類して集計する(ステップ172)。この文書種毎に集計した値が、他企業jが当該文書種に該当する文書への参照回数となる。
【0058】
なお、本実施の形態では、アクセスの内容(すなわち、公開レベル)を区別なく集計して参照回数を算出するようにしたが、公開レベル(すなわち表示不可、表示可、ダウンロード可)それぞれの集計数、つまり当該企業による文書へのアクセス要求回数、当該企業による当該文書の表示回数、又は当該企業による当該文書のダウンロード回数の少なくとも1つに基づき算出するようにしてもよい。本実施の形態では、文書の参照回数を、企業iと企業jとの間の連携の強さ(つまり、連携度)を示す指標として用いたが、連携度は、参照回数以外の指標を採用してもよい。
【0059】
続いて、公開情報管理部23は、各文書種につき以下の処理を実行する。まず、ステップ172において算出した各文書種の参照回数の中から後段の処理を実施していない未処理の文書種の参照回数を取得する(ステップ174)。その参照回数が予め設定されている閾値以上の場合(ステップ175でY)、企業iが作成した当該文書種Xkに該当する文書に企業jが閾値に達するほど頻繁にアクセスをした実績が認められることから、公開情報管理部23は、当該文書種Xkの公開レベルを1段階アップさせる(ステップ176)。例えば、文書種Xkが
図2に示す文書種Eの場合、文書種Eの公開レベルを「公開(表示不可)」から「公開(表示可)」にレベルアップさせる。
【0060】
以上の処理を全ての文書種に対して繰り返し行い(ステップ177でN,178)、全ての文書種に対して処理が終了すると(ステップ177でY)、
図7に戻る。
【0061】
以上説明したように、連携度評価処理では、文書種毎の参照回数によって企業間の連携度を評価し、連携度の評価が高ければ、該当する企業の文書種の公開レベルをアップさせるように処理する。
【0062】
利用実績のある企業iにつき以上の処理(ステップ150~170)を全ての他企業について繰り返し実行する。企業iが企業1の場合、企業jには企業2及び企業3が該当する。企業iが企業2の場合、企業jには企業1及び企業3が該当し、企業iが企業3の場合、企業jには企業1及び企業2が該当する。全ての他企業との連携実績に関して繰り返し実行し(ステップ180でN)、全ての他企業について処理を実行すると(ステップ180でY)、未処理の企業iが存在する場合(ステップ190でN)、その未処理の企業に処理を移行する(ステップ200,130)。
【0063】
上記公開情報更新処理において、企業iが企業1又は企業2の場合、企業1と企業2との間で連携している可能性はあるが、企業jが新規参入した企業3の場合、企業3は、企業1及び企業2が作成した文書への利用実績及び連携実績は何もないので、企業3の企業1,2向けの公開情報は見直しの対象にはならない。また、企業1,2の企業3向けの公開情報も見直しの対象にはならない。
【0064】
以上のようにして、プロジェクトに参加している各企業の他企業向けの公開情報の見直しを実行する。
【0065】
以上の説明では、文書管理システム2が公開情報を自動的に更新するようにしたが、公開情報が更新可能な状況の場合、換言すると公開レベルをアップさせる文書種が存在する場合、更新対象の公開情報に対応する企業に公開レベルの変更の是非を問い合わせるようにしてもよい。問い合わせる場合、公開情報更新処理部24は、公開情報管理部23からの指示に応じて公開情報の更新の是非を企業に問い合わせる。問い合わせ先となる企業の企業内システム1に含まれる更新処理部12は、文書管理システム2からの問合せに応じて、公開レベルの更新の可否を回答する。公開情報更新処理部24が企業内システム1からの回答を得ると、公開情報管理部23は、その回答に応じて公開レベルの更新を制御する。すなわち、回答が更新可の場合には、対応する文書種の公開レベルをアップさせ、回答が更新不可の場合、更新せずに現状維持とする。
【0066】
ところで、本実施の形態では、契約書に記載されている契約期限情報に従って連携情報の有効期間が明確に設定されている。従って、公開情報管理部23は、有効期限に達した連携情報により管理されている文書の文書種の公開レベルを一律に「公開(表示不可)」と変更するよう公開制御を行う。これにより、契約期限が過ぎた文書を公開させないようにすることができる。
【0067】
また、本実施の形態では、新規参入した企業3向けの公開情報は、企業1,2の標準公開情報をコピーして初期設定するようにしたが、標準公開情報の代わりに、例えば上記公開情報更新処理により更新された後の企業1又は企業2の公開情報で、企業2の企業3向けの公開情報又は企業1の企業3向けの公開情報を初期設定してもよい。
【0068】
また、上記説明では、文書種の公開レベルを1段階アップさせる場合を例にして説明したが、例えば閾値を2段階用意して公開レベルを2段階アップできるようにしてもよい。このように、レベルアップする段階数は1段階と限定する必要はない。また、本実施の形態では、公開レベルをアップさせる場合を例にして説明したが、ダウン(「下降」と同義)させるように処理してもよい。例えば、文書種の参照回数が所定の閾値に達していない場合、あるいは所定の閾値に達していない場合が一プロジェクトの複数のバージョンにまたいで発生した場合に、公開レベルをダウンさせるように処理してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 企業内システム、2 文書管理システム、3 インターネット、11 文書処理部、12 更新処理部、21 連携情報生成部、22 文書管理部、23 公開情報管理部、24 公開情報更新処理部、25 連携テンプレート記憶部、26 連携情報記憶部、27 文書記憶部、28 履歴情報記憶部、29 標準公開情報記憶部、30 公開情報記憶部。