(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】通信ネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
H04W 84/18 20090101AFI20231121BHJP
H04W 92/18 20090101ALI20231121BHJP
H04W 40/24 20090101ALI20231121BHJP
【FI】
H04W84/18
H04W92/18
H04W40/24
(21)【出願番号】P 2019171937
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】倉田 憲一
【審査官】吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-507970(JP,A)
【文献】国際公開第2018/182198(WO,A1)
【文献】特表2020-517144(JP,A)
【文献】特開2012-095023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0188043(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の移動端末が接続された通信ネットワークシステムであって、
それぞれの前記移動端末は、少なくとも通信可能範囲内にある他の前記移動端末との間で直接通信を行うことが可能な無線通信装置と記憶装置とを備え、
相互に通信可能範囲内にある2つの前記移動端末が直接接続されたネットワークを単位ネットワークとし、
複数の前記単位ネットワークが連結されて形成されたネットワークをローカルネットワークとし、
前記ローカルネットワークを構成する3つ以上の前記移動端末の群をネットワーク端末群として、
前記ローカルネットワークは、それぞれの前記移動端末を特定する識別情報と、前記ローカルネットワークにおける前記移動端末の接続関係を示す接続情報と、を含む台帳データを備え、
前記ネットワーク端末群を構成するそれぞれの前記移動端末は、前記台帳データをそれぞれの前記記憶装置を用いて共有すると共に、前記接続情報に変化が生じた場合には随時前記台帳データを更新し、
それぞれの前記移動端末は、通信の対象となる対象端末が前記ネットワーク端末群に含まれる場合には、前記台帳データに基づいて前記単位ネットワークを介して前記対象端末と通信を行
い、
前記台帳データは、前記単位ネットワークを示す前記接続情報の集合体であり、1つの前記接続情報をブロックとしたブロックチェーンデータである、通信ネットワークシステム。
【請求項2】
前記ネットワーク端末群の内の少なくとも一部の前記移動端末と通信可能に接続されるサーバと、サーバ側記憶装置と、をさらに備え、
前記サーバ側記憶装置は、複数の前記ローカルネットワークの前記台帳データを記憶し、
それぞれの前記移動端末は、自己が所属している前記ネットワーク端末群に前記対象端末が含まれない場合には、前記サーバ側記憶装置に記憶された複数の前記ローカルネットワークの前記台帳データに基づいて、前記サーバを介して前記対象端末と通信を行う、請求項1に記載の通信ネットワークシステム。
【請求項3】
前記台帳データは、更に、それぞれの前記移動端末の位置情報、状態情報、及び、属性情報の少なくとも1つの情報を含む、請求項1又は2に記載の通信ネットワークシステム。
【請求項4】
それぞれの前記移動端末は、自己が所属している前記ネットワーク端末群に属さない他の前記移動端末との間で新たに前記単位ネットワークが形成された場合に、当該他の前記移動端末が属する他の前記ネットワーク端末群に追加される、請求項1から3の何れか一項に記載の通信ネットワークシステム。
【請求項5】
それぞれの前記移動端末は、自己が所属している前記ネットワーク端末群の他の全ての前記移動端末との間で前記単位ネットワークが解消された場合に、当該ネットワーク端末群から除外される、請求項1から4の何れか一項に記載の通信ネットワークシステム。
【請求項6】
互いに異なる前記ネットワーク端末群に属する2つの前記移動端末の間で新たに前記単位ネットワークが形成された場合、当該異なる前記ネットワーク端末群が統合されて1つの前記ネットワーク端末群が形成される、請求項1から5の何れか一項に記載の通信ネットワークシステム。
【請求項7】
前記ローカルネットワークが1つの前記単位ネットワークのみで接続された箇所を有して形成されており、当該1つの前記単位ネットワークが解消された場合、当該ローカルネットワークを構成する前記ネットワーク端末群は、解消された前記単位ネットワークの部分で分割されて2つの異なる前記ネットワーク端末群を形成する、請求項1から6の何れか一項に記載の通信ネットワークシステム。
【請求項8】
前記移動端末は、車両に搭載された車載端末、又は前記車載端末と通信可能に接続された携帯端末である、請求項1から
7の何れか一項に記載の通信ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台の移動端末が接続された通信ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動端末による通信ネットワークの一例として、特開2004-326791号公報には、車両間臨時ネットワークを形成して、情報の発信元の車両から周辺の車両へと車両情報をルーティングする車両運行情報交換システムが開示されている(以下、背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。このシステムでは、情報の発信元の車両(600)が自車両の運行情報メッセージを特定のルータ車両を指定することなく、周辺車両に対して放送する。放送された運行情報メッセージは、例えば発信元の車両(600)の隣接車両(604,602,603,610,611)に受信される。それぞれの隣接車両(604,602,603,610,611)は、さらにそれぞれの隣接車両(604,605,612,613,650,651,652)に対して運行情報メッセージをルーティングする(
図5、[0043]-[0046]等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記システムは、送信先を特定することなく、運行情報メッセージをリレーさせるものであり、車両間臨時ネットワークの構造は特定されていない。つまり、このネットワークは、ネットワークの構造が管理されているグローバルな公衆回線網のように、多数の送信先の中から選択した特定の送信先へ情報を送信するような、自由度の高い通信を行うことは想定されていない。但し、特定の送信先への情報の送信は、必ずしもグローバルな公衆回線網を経由する必要はなく、ローカルなネットワークを介して行われてもよい。近年、公衆回線網が混雑することが増えており、自由度の高いローカルなネットワークがあれば、グロ-バルな公衆回線網の補完や代替が可能となる。
【0005】
上記背景に鑑みて、複数台の移動端末によりローカルな通信ネットワークを構成して、自由度の高い通信を行うことができる技術の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた、複数台の移動端末が接続された通信ネットワークシステムは、1つの態様として、それぞれの前記移動端末が、少なくとも通信可能範囲内にある他の前記移動端末との間で直接通信を行うことが可能な無線通信装置と記憶装置とを備え、相互に通信可能範囲内にある2つの前記移動端末が直接接続されたネットワークを単位ネットワークとし、複数の前記単位ネットワークが連結されて形成されたネットワークをローカルネットワークとし、前記ローカルネットワークを構成する3つ以上の前記移動端末の群をネットワーク端末群として、前記ローカルネットワークは、それぞれの前記移動端末を特定する識別情報と、前記ローカルネットワークにおける前記移動端末の接続関係を示す接続情報と、を含む台帳データを備え、前記ネットワーク端末群を構成するそれぞれの前記移動端末は、前記台帳データをそれぞれの前記記憶装置を用いて共有すると共に、前記接続情報に変化が生じた場合には随時前記台帳データを更新し、それぞれの前記移動端末は、通信の対象となる対象端末が前記ネットワーク端末群に含まれる場合には、前記台帳データに基づいて前記単位ネットワークを介して前記対象端末と通信を行う。
【0007】
この構成によれば、1つの移動端末は、他の少なくとも1つの移動端末との間で単位ネットワークを形成すればよく、個々の移動端末における通信負荷の増加は抑制されている。そのような単位ネットワークが複数個、連結されることによって、ローカルネットワークが形成されるので、ローカルネットワークの形成においても、個々の移動端末における通信負荷の増加は抑制されている。そして、ローカルネットワークの構造は、それぞれの移動端末の識別情報と、移動端末間の接続情報とを含む台帳データによって特定されている。このため、それぞれの移動端末は、台帳データに基づき単位ネットワークを介して、他の任意の移動端末と通信を行うことができる。また、この台帳データは、それぞれの移動端末が備える記憶装置に共有して記憶され、台帳データの更新もそれぞれの移動端末の協働によって行われる。従って、台帳データの管理コストを低く抑え易く、また、台帳データの改ざんを難しくし易い。このように、本構成によれば、複数台の移動端末によりローカルな通信ネットワークを構成して、自由度の高い通信を行うことができる。
【0008】
通信ネットワークシステムのさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】移動端末の一例としての車載端末の一例を示すブロック図
【
図5】サーバを備えた通信ネットワークシステムの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複数台の移動端末が接続された通信ネットワークシステムの実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、
図1に示すように、移動端末1が、車両5に搭載された車載端末11、又は車載端末11と通信可能に接続された携帯端末12、或いは車両5内にある携帯端末12である形態を例として説明する。しかし、移動端末1には、例えば、人が携帯する携帯端末、ドローンに搭載された通信端末等、移動可能な様々な端末が含まれる。
【0011】
図2に示すように、移動端末1は、無線通信装置2と記憶装置3とを少なくとも備え、本実施形態では演算装置4も備えている。また、車両5は、移動端末1の他、自位置情報取得部40や周辺検知センサ44等を備えている。無線通信装置2は、少なくとも通信可能範囲内にある他の移動端末1との間で直接通信を行うことが可能である。自位置情報取得部40は、衛星からの信号を取得するGPS(Global Positioning System)受信機41、自車の進行方向を検出する方位センサ42、地物などの対象物と自車との距離を検出する距離センサ43からの情報に基づいて自車位置情報を取得する。無線通信装置2と、記憶装置3と、演算装置4と、自位置情報取得部40と、周辺検知センサ44とは、例えばCAN(Controller Area Network)などの車内ネットワークを介して接続されている。演算装置4は、無線通信装置2及び記憶装置3と協働して後述する台帳データDBの更新等を行う。
【0012】
図1に示すように、それぞれの移動端末1は、少なくとも通信可能範囲内にある他の移動端末1との間で直接通信を行うことが可能である。ここで、
図3に示すように、相互に通信可能範囲内にある2つの移動端末1が直接接続されたネットワークを単位ネットワーク10と称し、複数の単位ネットワーク10が連結されて形成されたネットワークをローカルネットワーク20と称する。また、このようなローカルネットワーク20を構成する3つ以上の移動端末1の群をネットワーク端末群と称する。通信ネットワークシステム100は、少なくともこのようなローカルネットワーク20を1つ含んで構成されている。
【0013】
図3に示すように、ローカルネットワーク20は、移動端末1を示すノードNと、2つの移動端末1を関連付けるリンクKとによって表すことができる。単位ネットワーク10は、2つのノードNと1つのリンクKによって構成されている。2つの単位ネットワーク10の間で1つのノードNを共有することで2つの単位ネットワーク10が連結され、共通のノードNとそれぞれ異なる2つのノードNとをつなぐ2つのリンクKを有するネットワークが生成される。これは、最小構成のローカルネットワーク20である。このようにして複数の単位ネットワーク10が連結されることで、より広範囲に広がるローカルネットワーク20が形成される。
【0014】
ローカルネットワーク20は、台帳データDB(
図2参照)によって管理されている。
図2に示すように、台帳データDBには、それぞれの移動端末1を特定する識別情報IDと、ローカルネットワーク20における移動端末1の接続関係を示す接続情報LKとを含む。識別情報IDは、それぞれのノードNを識別する情報であり、例えば機器のマックアドレス等を用いて形成されている。また、接続情報LKは、リンクKとその両端のノードNの情報である。台帳データDBは、
図2に示すように、それぞれの移動端末1の記憶装置3に格納されている。
【0015】
台帳データDBは、単位ネットワーク10を示す接続情報LK(2つのノードNと1つのリンクKと含む情報)の集合であり、1つの接続情報LKをブロックとしたブロックチェーンデータとして構築されている。台帳データDBは、複数の移動端末1に分散管理されているため、何れかの移動端末1の記憶装置3に不具合が生じたとしても、ローカルネットワーク20全体の台帳データDBへの影響はほとんど無く、後述するように、当該ローカルネットワーク20内の任意の移動端末1の間での通信を安定的に行うことができる。また、記憶装置3に不具合が生じた移動端末1も、他の移動端末1が記憶している台帳データDBに基づいて、台帳データDBを容易に復元することができる。台帳データDBがブロックチェーンデータであることによって、堅牢で安定した通信ネットワークシステム100を構築することができる。
【0016】
台帳データDBは、更に、それぞれの移動端末1の位置情報PS、状態情報ST、及び、属性情報ATの少なくとも1つの情報を含んでいてもよい。本実施形態の場合、例えば、位置情報PSは、GPS受信機41、方位センサ42、距離センサ43などからの情報に基づき自位置情報取得部40が取得した情報に基づいて生成されて台帳データDBに組み込まれる。また、状態情報STは、周辺検知センサ44や車両内のその他のセンサ等からの情報に基づいて生成されて台帳データDBに組み込まれる。周辺検知センサ44には、例えば障害物センサや画像センサを含むことができ、車両周辺の画像等も状態情報STに含めることができる。また、属性情報ATは、車両5や携帯端末12のプロファイル情報等に基づいて生成されて台帳データDBに組み込まれる。属性情報ATは、移動端末1の属性、例えば、車両、ドローン、携帯端末、等の種別を示す情報とすることができる。
【0017】
それぞれの移動端末1は、自己が含まれるローカルネットワーク20の台帳データDBに基づいて、当該ローカルネットワーク20に含まれる他の移動端末1との間で通信を行うことができる。つまり、それぞれの移動端末1は、通信の対象となる対象端末1Tが自己の所属するネットワーク端末群に含まれる場合には、台帳データDBに基づいて単位ネットワーク10を介して対象端末1Tと通信を行うことができる。例えば、
図3において、“1F”で示す移動端末1は、送信元の移動端末1(送信元端末1F)を示す。送信元端末1Fは、台帳データDBに基づいて、送信元端末1Fから対象端末1Tまでの単位ネットワーク10を順次経由することによって、送信元端末1Fへ情報を送信することができる。送信される情報は、例えば暗号化されており、経由するそれぞれの移動端末1では内容を取得することはできないようになっている。
【0018】
それぞれの移動端末1は、自己が所属しているネットワーク端末群の他の全ての移動端末1との間で単位ネットワーク10が解消された場合に、当該ネットワーク端末群から除外される。例えば、
図3において、“1A”で示される移動端末1(第1移動端末1A)は、“K1”及び“K2”で示される2つのリンクK(第1リンクK1,第2リンクK2)を介して他の2つの移動端末1との間で単位ネットワーク10(第1単位ネットワーク10A,第2単位ネットワーク10B)を形成している。ここで、第1移動端末1Aが
図3に白抜きの〇で示す位置へ移動して第1リンクK1及び第2リンクK2が消滅すると、第1移動端末1Aはローカルネットワーク20を構成しなくなる。即ち、第1移動端末1Aは、自己が所属しているネットワーク端末群の他の全ての移動端末1との間での単位ネットワーク10(10A,10B)が解消されるため、当該ネットワーク端末群から除外される。
【0019】
一方、それぞれの移動端末1は、自己が所属しているネットワーク端末群に属さない他の移動端末1との間で新たに単位ネットワーク10が形成された場合に、当該他の移動端末1が属する他のネットワーク端末群に追加される。尚、この追加される移動端末1は、追加される前に何らかのネットワーク端末群に属していなくてもよい。「自己が所属しているネットワーク端末群に属さない他の移動端末1」とは、「自己が何れのネットワーク端末群に所属していない場合も含み、自己と同じネットワーク端末群に属さない他の移動端末1」であることを示す。
【0020】
例えば、
図3において“1B”で示される移動端末1(第2移動端末1B)はローカルネットワーク20のネットワーク端末群には含まれていない。ここで、この第2移動端末1Bが、ローカルネットワーク20のネットワーク端末群に含まれる第1移動端末1Aに近づくと第1移動端末1Aとの間に第3リンクK3によって特定される第3単位ネットワーク10Cが形成される。即ち、第2移動端末1Bは、自己が所属しているネットワーク端末群に属さない他の移動端末1(第1移動端末1A)との間で新たに単位ネットワーク10(第3単位ネットワーク10C)が形成された場合に、第1移動端末1Aが属する他のネットワーク端末群に追加される。
【0021】
また、互いに異なるネットワーク端末群に属する2つの移動端末1の間で新たに単位ネットワーク10が形成された場合、当該異なるネットワーク端末群が統合されて1つのネットワーク端末群が形成される。例えば、
図4に示すように、互いに異なる2つのローカルネットワーク20(第1ネットワーク20A、第2ネットワーク20B)が形成されている場合を考える。ここで、第1ネットワーク20Aを構成する第3移動端末1Cと、第2ネットワーク20Bを構成する第4移動端末1Dとの間に、第4リンクK4で特定される第4単位ネットワーク10Dが形成されると、第1ネットワーク20Aと第2ネットワーク20Bとが統合されて、第3ネットワーク20Cとなる。即ち、互いに異なるネットワーク端末群に属する2つの移動端末1(第3移動端末1C,第4移動端末1D)の間で新たに単位ネットワーク10(第4単位ネットワーク10D)が形成された場合、当該異なるネットワーク端末群が統合されて1つのネットワーク端末群が形成される。
【0022】
一方、ローカルネットワーク20が1つの単位ネットワーク10のみで接続された箇所を有して形成されており、当該1つの単位ネットワーク10が解消された場合、当該ローカルネットワーク20を構成するネットワーク端末群は、解消された単位ネットワーク10の部分で分割されて2つの異なるネットワーク端末群を形成する。例えば、
図4に例示する第3ネットワーク20Cは、1つの単位ネットワーク10(第4単位ネットワーク10Dが形成)のみで接続された箇所を有して形成されている。ここで、第4単位ネットワーク10Dが解消された場合、第3ネットワーク20Cは、第1ネットワーク20Aと、第2ネットワーク20Bとの2つのローカルネットワーク20に分割される。即ち、第3ネットワーク20Cのようにローカルネットワーク20が1つの単位ネットワーク10(第4単位ネットワーク10D)のみで接続された箇所を有して形成されており、当該1つの単位ネットワーク10(第4単位ネットワーク10D)が解消された場合、当該ローカルネットワーク20を構成するネットワーク端末群は、解消された単位ネットワーク10(第4単位ネットワーク10D)の部分で分割されて2つの異なるネットワーク端末群を形成する。これら2つのネットワーク端末群は、第1ネットワーク20Aを構成するネットワーク端末群と、第2ネットワーク20Bを構成するネットワーク端末群とである。
【0023】
移動端末1は、移動するため、上述したように単位ネットワーク10の成立と解消とは、頻繁に発生する可能性がある。そして、単位ネットワーク10の成立と解消とにより、ローカルネットワーク20の構造にも変化が生じる。上述したように、ローカルネットワーク20の構造は、それぞれの移動端末1の記憶装置3に記憶された台帳データDBによって管理されている。ネットワーク端末群を構成するそれぞれの移動端末1は、台帳データDBをそれぞれの記憶装置3を用いて共有すると共に、接続情報LKに変化が生じた場合には随時台帳データDBを更新する。
【0024】
例えば、演算装置4は、無線通信装置2を介して得られた、新たに形成された単位ネットワーク10の情報(接続先の移動端末1の識別情報ID、当該移動端末1との接続情報LK)に基づき、記憶装置3に格納された台帳データDBを更新する。そして、更新内容(例えば更新前の台帳データDBと更新後の台帳データDBとの差分情報)は、単位ネットワーク10を介してローカルネットワーク20を構成するネットワーク端末群に提供される。それぞれの移動端末1は、送られた更新内容に基づいて、それぞれの記憶装置3に記憶されている台帳データDBを更新する。尚、台帳データDBの更新に際しては、まず、更新用予備データが生成され、当該更新用予備データが、ローカルネットワーク20を構成するネットワーク端末群において認証された後に、正式に更新される形態であってもよい。ネットワーク端末群における認証は、予め規定された認証条件に従って実施される。例えば、ネットワーク端末群を構成する移動端末1の内、予め規定された台数以上の移動端末1が認証した場合に、ネットワーク端末群における認証がされたと判定される形態とすることができる。
【0025】
このように、ローカルネットワーク20の台帳データDBの保管や更新に際しては、複数の移動端末1が協働する。但し、それぞれの移動端末1の処理能力(記憶装置3の容量や、演算装置4の演算能力)は異なっていることが多い。従って、ネットワーク端末群を構成するそれぞれの移動端末1は、それぞれの移動端末1の処理能力に応じて、台帳データDBをそれぞれの記憶装置3を用いて共有すると共に、接続情報LKに変化が生じた場合には随時台帳データDBを更新する。
【0026】
上記においては、通信ネットワークシステム100が分散管理型の構造のみのシステムとして構築されている形態を例示して説明した。しかし、通信ネットワークシステム100は、
図5に例示するように、ネットワーク端末群の内の少なくとも一部の移動端末1と通信可能に接続されるサーバ8をさらに備えて、分散管理型とサーバ型との複合型のシステムとして構築されていてもよい。
図5に例示する形態では、サーバ8は、第1ローカルネットワーク21を構成するネットワーク端末群の内の少なくとも一部の移動端末1と公衆回線網200を介して通信可能に接続されている。また、サーバ8は、第1ローカルネットワーク21とは異なり、第1ローカルネットワーク21とは独立した第2ローカルネットワーク22を構成するネットワーク端末群の内の少なくとも一部の移動端末1とも公衆回線網200を介して通信可能に接続されている。尚、台帳データDBには、移動端末1と公衆回線網200との接続情報LKも含まれる。
【0027】
サーバ8は、サーバ側記憶装置9を備えており、サーバ側記憶装置9は、複数のローカルネットワーク20の台帳データDBを記憶する。
図5に例示する形態では、サーバ側記憶装置9は、第1ローカルネットワーク21の第1台帳データDB1と、第2ローカルネットワーク22の第2台帳データDB2とを記憶している。それぞれの移動端末1は、自己が所属しているネットワーク端末群に対象端末1Tが含まれない場合には、サーバ側記憶装置9に記憶された複数のローカルネットワーク20の台帳データDBに基づいて、サーバ8を介して対象端末1Tと通信を行うことができる。
【0028】
例えば、第1ローカルネットワーク21の送信元端末1Fから、第2ローカルネットワーク22の対象端末1Tに対してデータを送信する場合、第1ローカルネットワーク21の第1台帳データDB1には対象端末1Tの接続情報LKは存在しないため、そのままではデータを送信することができない。しかし、サーバ側記憶装置9には、対象端末1Tの接続情報LKを含む第2台帳データDB2が記憶されている。従って、送信元端末1Fは、サーバ8を介して対象端末1Tへデータを送信することができる。即ち、それぞれの移動端末1(例えば送信元端末1F)は、自己が所属しているローカルネットワーク20(ここでは第1ローカルネットワーク21)を構成するネットワーク端末群に対象端末1Tが含まれない場合には、サーバ側記憶装置9に記憶された複数のローカルネットワーク20の台帳データDB(DB1,DB2)に基づいて、サーバ8を介して対象端末1Tと通信を行うことができる。具体的には、送信元端末1Fは、第1台帳データDB1に基づいて公衆回線網200までデータを送り、第2台帳データDB2に基づいて公衆回線網200から対象端末1Tまでデータを送ることができる。
【0029】
第1ローカルネットワーク21内の通信は、第1ローカルネットワーク21における単位ネットワーク10を介して行われ、第2ローカルネットワーク22内の通信は、第2ローカルネットワーク22における単位ネットワーク10を介して行われる。尚、送信元端末1Fが公衆回線網200に接続されている場合には、第1ローカルネットワーク21における単位ネットワーク10を介すること無く、公衆回線網200及び第2ローカルネットワーク22における単位ネットワーク10を介して、送信元端末1Fから対象端末1Tへデータが送信されてもよい。同様に、尚、対象端末1Tが公衆回線網200に接続されている場合には、第2ローカルネットワーク22における単位ネットワーク10を介すること無く、第1ローカルネットワーク21における単位ネットワーク10及び公衆回線網200を介して、送信元端末1Fから対象端末1Tへデータが送信されてもよい。
【0030】
送信元端末1F及び対象端末1Tの双方が公衆回線網200に接続されている場合は、第1ローカルネットワーク21における単位ネットワーク10及び第2ローカルネットワーク22における単位ネットワーク10を介すること無く、公衆回線網200を介して、送信元端末1Fから対象端末1Tへデータが送信されてもよい。しかし、この場合においても、送信元端末1Fと対象端末1Tとの通信には、ローカルネットワーク20を含む通信ネットワークシステム100が利用されている。例えば、対象端末1Tの所在地(アドレス)は、グローバルな公衆回線網200におけるアドレスではなく、第2ローカルネットワーク22におけるアドレスである。また、送信元端末1F及び対象端末1Tと公衆回線網200との接続関係は、第1台帳データDB1及び第2台帳データDB2に記憶されたものである。
【0031】
以上、上述した通信ネットワークシステム100によれば、複数台の移動端末1により、ネットワークの構造が特定されたローカルな通信ネットワークを構成して、自由度の高い通信を行うことができる。
【0032】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した通信ネットワークシステム(100)の概要について簡単に説明する。
【0033】
1つの態様として、複数台の移動端末(1)が接続された通信ネットワークシステム(100)は、それぞれの前記移動端末(1)が、少なくとも通信可能範囲内にある他の前記移動端末(1)との間で直接通信を行うことが可能な無線通信装置(2)と記憶装置(3)とを備え、相互に通信可能範囲内にある2つの前記移動端末(1)が直接接続されたネットワークを単位ネットワーク(10)とし、複数の前記単位ネットワーク(10)が連結されて形成されたネットワークをローカルネットワーク(20)とし、前記ローカルネットワーク(20)を構成する3つ以上の前記移動端末(1)の群をネットワーク端末群として、前記ローカルネットワーク(20)は、それぞれの前記移動端末(1)を特定する識別情報(ID)と、前記ローカルネットワーク(20)における前記移動端末(1)の接続関係を示す接続情報(LK)と、を含む台帳データ(DB)を備え、前記ネットワーク端末群を構成するそれぞれの前記移動端末(1)は、前記台帳データ(DB)をそれぞれの前記記憶装置(3)を用いて共有すると共に、前記接続情報(LK)に変化が生じた場合には随時前記台帳データ(DB)を更新し、それぞれの前記移動端末(1)は、通信の対象となる対象端末(1T)が前記ネットワーク端末群に含まれる場合には、前記台帳データ(DB)に基づいて前記単位ネットワーク(10)を介して前記対象端末(1T)と通信を行う。
【0034】
この構成によれば、1つの移動端末(1)は、他の少なくとも1つの移動端末(1)との間で単位ネットワーク(10)を形成すればよく、個々の移動端末(1)における通信負荷の増加は抑制されている。そのような単位ネットワーク(10)が複数個、連結されることによって、ローカルネットワーク(20)が形成されるので、ローカルネットワーク(20)の形成においても、個々の移動端末(1)における通信負荷の増加は抑制されている。そして、ローカルネットワーク(20)の構造は、それぞれの移動端末(1)の識別情報(ID)と、移動端末(1)間の接続情報(LK)とを含む台帳データ(DB)によって特定されている。このため、それぞれの移動端末(1)は、台帳データ(DB)に基づき単位ネットワーク(10)を介して、他の任意の移動端末と通信を行うことができる。また、この台帳データ(DB)は、それぞれの移動端末(1)が備える記憶装置(3)に共有して記憶され、台帳データ(DB)の更新もそれぞれの移動端末(1)の協働によって行われる。従って、台帳データ(DB)の管理コストを低く抑え易く、また、台帳データ(DB)の改ざんを難しくし易い。このように、本構成によれば、複数台の移動端末(1)によりローカルな通信ネットワークを構成して、自由度の高い通信を行うことができる。
【0035】
また、通信ネットワークシステム(100)は、前記ネットワーク端末群の内の少なくとも一部の前記移動端末(1)と通信可能に接続されるサーバ(8)と、前記サーバ(8)に接続されるサーバ側記憶装置(9)と、をさらに備え、前記サーバ側記憶装置(9)は、複数の前記ローカルネットワーク(20)の前記台帳データ(DB)を記憶し、それぞれの前記移動端末(1)は、自己が所属している前記ネットワーク端末群に前記対象端末(1T)が含まれない場合には、前記サーバ側記憶装置(9)に記憶された複数の前記ローカルネットワーク(20)の前記台帳データ(DB)に基づいて、前記サーバ(8)を介して前記対象端末(1T)と通信を行うと好適である。
【0036】
この構成によれば、サーバ(8)のサーバ側記憶装置(9)に記憶された複数のローカルネットワーク(20)の台帳データ(DB)により、複数のローカルネットワーク(20)を関連付けることができる。その結果、異なるローカルネットワーク(20)のネットワーク端末群に含まれる移動端末(1)に対しても通信を行うことができる。つまり、本構成によれば、サーバ(8)を介してローカルネットワーク(20)の規模を拡大することができ、より広域で自由度の高い通信を実現することができる。
【0037】
また、前記台帳データ(DB)は、更に、それぞれの前記移動端末(1)の位置情報(PS)、状態情報(ST)、及び、属性情報(AT)の少なくとも1つの情報を含むと好適である。
【0038】
台帳データ(DB)が移動端末(1)の位置情報(PS)を含むことで、ローカルネットワーク(DB)の地理的な構造を特定することができ、例えば、他の移動端末(1)の位置の情報を取得し、或いは、移動端末(1)の場所を指定した通信を行うことができる。また、台帳データ(DB)が移動端末(1)の状態情報(ST)を含むことで、例えば、他の移動端末(1)の状態を示す情報を取得し、或いは、移動端末(1)の状態を指定した通信を行うことができる。また、台帳データ(DB)が属性情報(AT)を含むことで、例えば、移動端末(1)は、相手の移動端末(1)の属性を指定して通信を行うことができる。
【0039】
また、それぞれの前記移動端末(1)は、自己が所属している前記ネットワーク端末群に属さない他の前記移動端末(1)との間で新たに前記単位ネットワーク(10)が形成された場合に、当該他の前記移動端末(1)が属する他の前記ネットワーク端末群に追加されると好適である。
【0040】
ローカルネットワーク(20)は、単位ネットワーク(10)を連結することによって構成される。このため、このように新たに単位ネットワーク(10)が形成された場合には、当該単位ネットワーク(10)を構成する移動端末(1)が、ネットワーク端末群に追加されることにより、ローカルネットワーク(20)を拡張することができる。
【0041】
また、それぞれの前記移動端末(1)は、自己が所属している前記ネットワーク端末群の他の全ての前記移動端末(1)との間で前記単位ネットワーク(10)が解消された場合に、当該ネットワーク端末群から除外されると好適である。
【0042】
ローカルネットワーク(20)は、単位ネットワーク(10)を連結することによって構成され、ローカルネットワーク(20)では単位ネットワーク(10)を介して通信を行う。従って、単位ネットワーク(10)が形成されなくなった移動端末(1)がローカルネットワーク(20)を構成するネットワーク端末群から除外されることで、適切に台帳データ(DB)が更新される。
【0043】
また、互いに異なる前記ネットワーク端末群に属する2つの前記移動端末(1)の間で新たに前記単位ネットワーク(10)が形成された場合、当該異なる前記ネットワーク端末群が統合されて1つの前記ネットワーク端末群が形成されると好適である。
【0044】
ローカルネットワーク(20)は、単位ネットワーク(10)を連結することによって構成される。このため、このように新たに形成された単位ネットワーク(10)により、異なるネットワーク端末群により構成されたローカルネットワーク(20)が連結されることで、2つのローカルネットワーク(20)を合わせてローカルネットワーク(20)を拡張することができる。
【0045】
また、前記ローカルネットワークが1つの前記単位ネットワークのみで接続された箇所を有して形成されており、当該1つの前記単位ネットワークが解消された場合、当該ローカルネットワークを構成する前記ネットワーク端末群は、解消された前記単位ネットワークの部分で分割されて2つの異なる前記ネットワーク端末群を形成すると好適である。
【0046】
ローカルネットワーク(20)は、単位ネットワーク(10)を連結することによって構成され、ローカルネットワーク(20)では単位ネットワーク(10)を介して通信を行う。このため、1つの単位ネットワーク(10)のみで接続された箇所における当該単位ネットワーク(10)が解消されると、当該ローカルネットワーク(20)の中の任意の移動端末(1)間で、単位ネットワーク(10)を介した通信ができなくなる組み合わせが生じる。このような場合にネットワーク端末群を分割することで、適切に台帳データ(DB)が更新される。
【0047】
また、前記台帳データ(DB)は、ブロックチェーンデータであると好適である。
【0048】
台帳データ(DB)がブロックチェーンデータであると、何れかの移動端末(1)の記憶装置(3)に不具合が生じたとしても、ローカルネットワーク(20)全体の台帳データ(DB)への影響はほとんど無く、ローカルネットワーク(20)内の任意の移動端末(1)の間での通信を安定的に行うことができる。また、不具合が生じた記憶装置(3)も、他の移動端末(1)が記憶している台帳データ(DB)に基づいて、台帳データ(DB)を容易に復元することができる。このように、台帳データ(DB)がブロックチェーンデータであることによって、堅牢で安定した通信ネットワークシステム(100)を構築することができる。
【0049】
前記移動端末(1)は、車両(5)に搭載された車載端末(11)、又は前記車載端末(11)と通信可能に接続された携帯端末(12)であると好適である。
【0050】
車両(5)は、人の生活圏内において広範に分布しており、車載端末(11)を移動端末(1)とすることにより広範囲に亘るローカルネットワーク(20)を構築することができる。また、近年、高性能のプロセッサを備えた携帯端末(12)も普及しており、車載端末(11)と通信可能に接続された携帯端末(12)も移動端末(1)とすることによって、台帳データ(DB)の生成及び更新、安定した通信が可能となる通信ネットワークシステム(100)を構築することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 :移動端末
1T :対象端末
2 :無線通信装置
3 :記憶装置
5 :車両
8 :サーバ
9 :サーバ側記憶装置
10 :単位ネットワーク
11 :車載端末
12 :携帯端末
20 :ローカルネットワーク
100 :通信ネットワークシステム
AT :属性情報
DB :台帳データ
LK :接続情報
PS :位置情報
ST :状態情報