(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20231121BHJP
H01C 7/02 20060101ALI20231121BHJP
H01C 7/04 20060101ALI20231121BHJP
H01C 7/10 20060101ALI20231121BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01C7/02
H01C7/04
H01C7/10
H01F17/00 D
H01G4/30 311E
H01G4/30 513
H01G4/30 517
(21)【出願番号】P 2019174038
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2018203989
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 博文
(72)【発明者】
【氏名】岡井 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】岩永 大介
(72)【発明者】
【氏名】中田 久士
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 智也
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-281957(JP,A)
【文献】特開2018-110196(JP,A)
【文献】特開2010-062372(JP,A)
【文献】特開2001-044069(JP,A)
【文献】特開2004-172466(JP,A)
【文献】特開2018-041948(JP,A)
【文献】特開平10-270282(JP,A)
【文献】特開2001-297944(JP,A)
【文献】特開2015-154044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01C 7/02
H01C 7/04
H01C 7/10
H01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極層と絶縁層とが積層方向に交互に積層してある素子本体と、
前記素子本体の上面から素子本体の内部に入り込み、前記内部電極層に接続してあるヴィアホール電極と、
前記素子本体の上面に密着して形成され、前記ヴィアホール電極に接続してある端子電極と、を有する積層セラミック電子部品であって、
前記ヴィアホール電極が、前記素子本体に形成してあるヴィアホール内に所定の空隙が形成されるように埋め込まれて
あって、
前記ヴィアホール内で、前記ヴィアホール電極が、前記素子本体の内側に位置し、前記空隙が、前記素子本体の外側に位置することを特徴とする積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記内部電極層に平行な前記素子本体の断面において、前記ヴィアホール電極の面積に対して前記空隙の面積割合を示す空隙率が1~60%の範囲内である請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記素子本体の上面から見て前記ヴィアホールの形状が円形またはスリット状である請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記ヴィアホールは、第1ヴィアホールと第2ヴィアホールとを有し、
前記ヴィアホール電極は、前記第1ヴィアホール内に入り込む第1ヴィアホール電極と、前記第2ヴィアホール内に入り込む第2ヴィアホール電極とを有し、
前記積層方向に隣り合う前記内部電極層の一方の第1引出部は、前記素子本体の一方の側面または側面近くにまで引き出され、前記内部電極層の他方の第2引出部は、前記素子本体の他方の側面または側面近くにまで引き出され、
前記第1ヴィアホール電極は、前記第1引出部に接続してあり、前記第2ヴィアホール電極は、前記第2引出部に接続してある
請求項1~3のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記素子本体の下面および側面には、電極層が形成されていない
請求項1~4のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記素子本体の下面および/または側面は、強化層で被覆してある
請求項1~5のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
内部電極層と絶縁層とが積層方向に交互に積層してある素子本体を準備する工程と、
前記素子本体にヴィアホールを形成する工程と、
前記ヴィアホールの内部に、所定の空間が形成されるように、導電成分が70質量%以上で含まれる第1導電性ペーストを埋め込む工程と、
前記
ヴィアホールの内部の所定の空間の内部に、樹脂ビーズが70質量%以上で含まれる第2導電性ペーストを埋め込む工程と、
前記第1導電性ペーストおよび前記第2導電性ペーストを
、前記樹脂ビーズが前記ヴィアホールから抜け出る条件で熱処理してヴィアホール電極を形成する工程とを有する積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば積層セラミックコンデンサなどとして用いられる積層セラミック電子部品とその製造方法に係り、さらに詳しくは、薄型化が可能な積層セラミック電子部品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の軽薄短小化に伴い、電子基板に搭載される電子部品にも小型化、薄型化が求められている。実情として、LSIの高機能化、高集積化、特性向上化が求められているのに対し、部品を搭載する実装面積は反対に狭くなってきている。電子部品の実装に関し、従来の基板表面実装技術に代わる実装技術としてプリント配線基板内に電子部品を埋め込み、三次元実装を実現する技術が実用化されている。
【0003】
しかしながら、従来の積層セラミックコンデンサは、たとえば下記の特許文献1にも示すように、素子本体の長手方向の両端部に端子電極を有し、各端子電極は、素子本体の端側電極部と、素子本体の上下面をそれぞれ覆う上下の被覆電極部とを有することが一般的である。このような従来の積層セラミックコンデンサでは、素子本体の薄型化が困難であり、そのため積層セラミックコンデンサの低背化が困難であった。
【0004】
なお、ヴィアホール電極を素子本体の内部に形成することで、素子本体の上面にのみ端子電極を形成してある積層セラミックコンデンサも知られている。しかしながら、従来のこの種の積層セラミックコンデンサでは、比較的に厚みが大きく、薄型化が困難であった。
【0005】
特に、積層セラミックコンデンサの実装工程において、積層セラミックコンデンサのピックアップにおけるノズル吸着などにおいて、素子本体への荷重の伝達により、素子本体の厚みが薄いが故に、積層セラミックコンデンサが破損しやすいと言う課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、低背化が可能で、しかも破損しにくい積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る積層セラミック電子部品は、
内部電極層と絶縁層とが積層方向に交互に積層してある素子本体と、
前記素子本体の上面から素子本体の内部に入り込み、前記内部電極層に接続してあるヴィアホール電極と、
前記素子本体の上面に密着して形成され、前記ヴィアホール電極に接続してある端子電極と、を有する積層セラミック電子部品であって、
前記ヴィアホール電極が、前記素子本体に形成してあるヴィアホール内に所定の空隙が形成されるように埋め込まれていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る積層セラミック電子部品では、ヴィアホール電極が、前記素子本体に形成してあるヴィアホール内に所定の空隙が形成されるように埋め込まれている。ヴィアホール内に空隙があることで、外部からの荷重に対し、空隙への金属変形が発生し、セラミック製素子本体への荷重の伝達を緩和し、素子本体を薄くしても強度が向上し、クラックなどが生じ難くなり、破壊されにくくなる。
【0010】
本発明の積層セラミック電子部品では、積層セラミック電子部品のトータル厚みは、100μm以下、好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下と薄くすることができ、積層セラミック電子部品の低背化に寄与する。したがって、本発明の積層セラミック電子部品は、基板の内部に内蔵させやすくなり、しかも基板を含めたパッケージの小型化が可能になる。
【0011】
好ましくは、前記内部電極層に平行な前記素子本体の断面において、前記ヴィアホール電極の面積に対して前記空隙の面積割合を示す空隙率が1~60%の範囲内、さらに好ましくは5~60%の範囲内、特に好ましくは5~30%の範囲内である。このような範囲とすることで、素子本体を薄くしてもさらに強度が向上し、クラックなどが生じ難くなると共に、耐熱衝撃特性も向上する。
【0012】
素子本体の上面から見た場合に、ヴィアホールの形状は、特に限定されず、たとえば円形またはスリット状であってもよい。特に、ヴィアホールの形状をスリット溝形状にすることで、ヴィアホール内に空隙を作りやすい。また、スリット溝形状のヴィアホールは、素子本体の横幅と略同等な幅で形成してもよく、そのスリット溝形状のヴィアホールの両端は、素子本体の外部に開放していてもよく、あるいは、絶縁性の被覆層(強化層でもよい)で覆われていてもよい。
【0013】
好ましくは、前記ヴィアホール内で、前記ヴィアホール電極が、前記素子本体の内側に位置し、前記空隙が、前記素子本体の外側に位置する。このように構成することで、外力により素子本体に発生する応力が、より外部に逃げやすくなるため、積層セラミック電子部品の強度がさらに向上する。特に、スリット溝形状のヴィアホールの場合に、その傾向が強い。
【0014】
好ましくは、前記ヴィアホールは、第1ヴィアホールと第2ヴィアホールとを有し、
前記ヴィアホール電極は、前記第1ヴィアホール内に入り込む第1ヴィアホール電極と、前記第2ヴィアホール内に入り込む第2ヴィアホール電極とを有し、
前記積層方向に隣り合う前記内部電極層の一方の第1引出部は、前記素子本体の一方の側面または側面近くにまで引き出され、前記内部電極層の他方の第2引出部は、前記素子本体の他方の側面または側面近くにまで引き出され、
前記第1ヴィアホール電極は、前記第1引出部に接続してあり、前記第2ヴィアホール電極は、前記第2引出部に接続してある。
【0015】
好ましくは、前記素子本体の下面および側面には、電極層が形成されていない。このように構成することで、外力により素子本体に発生する応力が、より外部に逃げやすくなるため、積層セラミック電子部品の強度がさらに向上する。また、素子本体の下面に電極層が形成されていないことで、素子本体の下面は平坦面にし易くなり、たとえば基板の内部に埋込みやすくなる。
【0016】
前記素子本体の下面および/または側面は、強化層で被覆してあってもよい。強化層は、絶縁層と比較して、弾性率が低い、あるいは線熱膨張係数が低い絶縁材料で構成してあってもよい。
【0017】
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造する方法は、
素子本体を準備する工程と、
素子本体にヴィアホールを形成する工程と、
ヴィアホールの内部に、所定の空間が形成されるように、導電成分が70質量%以上で含まれる第1導電性ペーストを埋め込む工程と、
ビアホールの内部の所定の空間の内部に、樹脂ビーズが70質量%以上で含まれる第2導電性ペーストを埋め込む工程と、
第1導電性ペーストおよび前記第2導電性ペーストを、前記樹脂ビーズが気化されて抜け出る温度で熱処理してヴィアホール電極を形成する工程とを有する。
【0018】
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法によれば、ヴィアホール電極を形成する際に、樹脂ビーズが気化されてヴィアホールから抜け出るため、ヴィアホールの内部には、所定の空隙が形成される。このため、上述した本発明に係る積層セラミック電子部品を製造しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1Aは本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの縦断面図である。
【
図1B】
図1Bは本発明の他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの縦断面図である。
【
図1C】
図1Cは本発明のさらに他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの縦断面図である。
【
図1D】
図1Dは本発明のさらに他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの縦断面図である。
【
図2A】
図2Aは
図1Aに示すIIA-IIA線に沿う積層セラミックコンデンサの横断面図である。
【
図2B】
図2Bは
図1Bに示すIIB-IIB線に沿う積層セラミックコンデンサの横断面図である。
【
図2C】
図2Cは
図1Cに示すIIC-IIC線に沿う積層セラミックコンデンサの横断面図である。
【
図3A】
図3Aは
図1Aに示すIIIA-IIIA線に沿う積層セラミックコンデンサの横断面図である。
【
図4】
図4は
図1Aに示す積層セラミックコンデンサの使用例を示す要部断面図である。
【
図5】
図5は
図1Aに示す積層セラミックコンデンサの他の使用例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0021】
第1実施形態
本実施形態に係る積層セラミック電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサについて説明する。
【0022】
図1Aに示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、素子本体4と、第1端子電極6と、第2端子電極8とを有する。素子本体4は、X軸およびY軸を含む平面に実質的に平行な内側誘電体層(絶縁層)10と、内部電極層12とを有し、内側誘電体層10の間に、内部電極層12がZ軸の方向に沿って交互に積層してある。ここで、「実質的に平行」とは、ほとんどの部分が平行であるが、多少平行でない部分を有していてもよいことを意味し、内部電極層12と内側誘電体層10は、多少、凹凸があったり、傾いていたりしてもよいという趣旨である。
【0023】
内側誘電体層10と内部電極層12とが交互に積層される部分が内装領域13である。また、素子本体4は、その積層方向Z(Z軸)の両端面に、外装領域11を有する。外装領域11は、内装領域13を構成する内側誘電体層10よりも厚い外側誘電体層が複数積層されて形成してある。内装領域13のZ軸方向の厚みは、積層セラミックコンデンサ2のトータル厚みz0の10~75%の範囲内であることが好ましい。また、2つの外側領域11の合計厚みは、トータル厚みZ0から内装領域13の厚みと第1端子電極6,第2端子電極8の厚みとを引き算した値である。
【0024】
なお、以下では、「内側誘電体層10」および「外側誘電体層」をまとめて、「誘電体層」と記載する場合がある。
【0025】
内側誘電体層10および外装領域11を構成する誘電体層の材質は、同じでも異なっていても良く、特に限定されず、たとえば、ABO3などのペロブスカイト構造の誘電体材料を主成分として構成される。
【0026】
ABO3 において、Aは、たとえばCa、Ba、Srなどの少なくとも一種、Bは、Ti、Zrなどの少なくとも一種である。A/Bのモル比は、特に限定されず、0.980~1.020である。このほか、副成分として、希土類(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも1種)、アルカリ土類金属(MgおよびMn)、遷移金属(V、W、および Moから選択される少なくとも1種)の酸化物やその混合物、複合酸化物およびガラスとしてSiO2を含んだ焼結助剤等が含まれていてもよい。
【0027】
交互に積層される一方の内部電極層12は、素子本体4のY軸方向第1側面4a近くに形成してあるヴィアホール(第1ヴィアホール)50内のヴィアホール電極(第1ヴィアホール電極)52の内側に対して電気的に接続してある引出部12aを有する。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、素子本体4のY軸方向第2側面4bの近くに形成してあるヴィアホール(第2ヴィアホール)50内のヴィアホール電極(第2ヴィアホール電極)52の内側に対して電気的に接続してある引出部12bを有する。
【0028】
素子本体4のY軸方向第1側面4a近くに形成してあるヴィアホール50内のヴィアホール電極52は、素子本体4の上面4cの第1側面4aの近くに密着して形成してある第1端子電極6に接続してある。また、素子本体4のY軸方向第2側面4bの近くに形成してあるヴィアホール50内のヴィアホール電極52は、素子本体4の上面cの第2側面4bの近くに密着して形成してある第2端子電極8に接続してある。第1端子電極6と第2端子電極8とは、素子本体4の上面4cでY軸方向に所定間隔で離れて形成してあり、相互に絶縁されている。
【0029】
なお、図において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸が、内側誘電体層10および内部電極層12の積層方向に一致し、Y軸が引出部12a,12bが引き出される方向に一致する。
【0030】
内装領域13は、容量領域と引出領域とを有する。容量領域は、積層方向に沿って内部電極層12が内側誘電体層10を挟んで積層する領域である。引出領域は、素子本体4のY軸方向の両側に形成されるヴィアホール電極52,52にそれぞれ接続する内部電極層12の引出部12a,12a(または12b,12b)の相互間に位置する領域である。さらに、
図2Aに示すサイドギャップ領域14は、内部電極層12のX軸方向の両端に位置する内部電極12の保護のための領域であり、一般的には、内側誘電体層10または外装領域11と同様な誘電体材料で構成される。ただし、サイドギャップ領域14は、後述する側面強化層19(
図2C参照)となるガラス材などで構成されていてもよい。また、
図1Aに示す外装領域11も、ガラス材などで構成されてもよい。
【0031】
内部電極層12に含有される導電材は特に限定されず、Ni、Cu、Ag、Pd、Al、Ptなどの金属、またはそれらの合金を用いることができる。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95質量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1質量%程度以下含まれていてもよい。
【0032】
第1端子電極6,第2端子電極8の材質も特に限定されないが、Ni、Pd、Ag、Au、Cu、Pt、Rh、Ru、Ir等の少なくとも1種、またはそれらの合金を用いることができる。通常は、Cu、Cu合金、NiまたはNi合金等や、Ag、Ag-Pd合金、In-Ga合金等が使用される。第1端子電極6,第2端子電極8は、それぞれ単一層で形成してもよいが、複数の層の積層構造であってもよい。
【0033】
ヴィアホール電極52の材質も特に限定されず、第1端子電極6,第2端子電極8の材質と同様(必ずしも同一である必要はない)であるが、特に、Cu、Cu合金、NiまたはNi合金、Ag、Ag-Pd合金、In-Ga合金などで構成されることが好ましい。なお、ヴィアホール電極52の材質を、第1端子電極6および第2端子電極8と同一とすることで、ヴィアホール電極52と第1端子電極6,第2端子電極8との接続信頼性が向上する。また、ヴィアホール電極52は、単一層で構成してあるが、複数の層の積層構造であってもよい。
【0034】
図3Aに示すように、本実施形態では、素子本体4のZ軸に略垂直な断面において、ヴィアホール電極52は、X軸方向に沿って所定間隔で形成してあるヴィアホール50の内部に、所定の空隙54が形成されるように充填してある。X軸方向に沿って所定間隔とは、一定間隔であることが好ましいが、不定間隔であってもよい。本実施形態では、各ヴィアホール50の横断面(ヴィアホールの長手方向に垂直な断面)形状は、円形であるが、楕円形あるいは多角形であってもよい。
【0035】
各ヴィアホール50の内径(円形以外の場合には内接円の径)は、好ましくは50~150μmである。各ヴィアホール50の内径は、略同一であることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0036】
各ヴィアホール50に形成されるヴィアホール電極の断面形状は、特に限定されず、
図3Aに示す実施形態では、断面三日月形状であり、空隙54の断面形状は、円形から三日月形状を除いた形状である。本実施形態では、空隙54は、素子本体4のY軸方向の第1側面4aに近い位置に位置するヴィアホール50では、第1側面4a側に位置し、素子本体4のY軸方向の第2側面4bに近い位置に位置するヴィアホール50では、第2側面4b側に位置する。すなわち、空隙54は、素子本体4のY軸方向の外側を向いている。
【0037】
また、本実施形態では、好ましくは全てのヴィアホール50において、空隙54の空隙
率は、好ましくは、1~60%の範囲内、さらに好ましくは5~60%の範囲内、特に好ましくは5~30%である。なお、空隙率は、たとえば以下のようにして測定される。すなわち、各ヴィアホール50について、深さ方向に3つの横断面を観察し、ヴィアホール電極52の面積に対して空隙54の面積割合を示す空隙率の平均値を求め、その空隙率が、好ましくは、1~60%の範囲内、さらに好ましくは5~60%の範囲内、特に好ましくは5~30%である。なお、3つの横断面の内の一つが、各ヴィアホール50の深さ方向の中央部であり、他の二つが、内装領域13と二つの外装領域11との上下二つの境界近くの部分である。
【0038】
本実施形態では、好ましくは全てのヴィアホール50において、空隙54の空隙率は、好ましくは、1~60%の範囲内、さらに好ましくは5~60%の範囲内、特に好ましくは5~30%であるが、必ずしも全てではなく、80%以上(あるいは90%以上)のヴィアホール50において、空隙率が上記範囲内であればよい。
【0039】
本実施形態では、第1端子電極6および第2端子電極8は、単一膜でも多層膜であってもよい。第1端子電極6および第2端子電極8が多層膜である場合には、ヴィアホール電極52と接触する下地層が、ヴィアホール電極52を構成する主金属または合金を含むことが好ましい。第1端子電極6および第2端子電極8のそれぞれの厚みは、特に限定されないが、好ましくは 2~15μmの範囲内である。
【0040】
図1Aおよび
図2Aに示すように、本実施形態では、これらの第1端子電極6および第2端子電極8は、素子本体4の上面4cにのみ形成してあり、素子本体4の第1側面4a,第2側面4b,側面4eおよび下面4dには形成されていない。素子本体の下面4dでは、第1端子電極6,第2端子電極8に覆われておらず、素子本体4の下面4dの全体が外部に露出している。しかも、下面4dは、平坦面に成形してある。下面4dは、第1端子電極6,第2端子電極8に覆われていないことから、上面4cとは異なり、上側電極部6b,8bによる段差状凸部が無く、平坦性に優れている。
【0041】
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよいが、本実施形態では、積層セラミックコンデンサ2のZ軸方向のトータル厚みz0を、たとえば100μm以下、好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下と薄くすることができ、積層セラミックコンデンサ2の低背化に寄与する。
【0042】
なお、本実施形態では、コンデンサ2の長手方向長さであるY軸方向の長さy0を、厚みz0の3倍以上、好ましくは300μm以上、好ましくは400~1200μmとすることができる。また、コンデンサ2のX軸方向の幅x0(
図2A参照)は、厚みz0の2倍以上、好ましくは200μm以上、好ましくは200~600μmとすることができる。
【0043】
また、本実施形態においては、コンデンサ2の長手方向をX軸方向に、短手方向をY軸方向に設計することも適宜行うことができ、その場合は、X軸方向の長さx0を、厚みz0の3倍以上、好ましくは300μm以上、好ましくは400~1200μmとすることができる。また、積層セラミックコンデンサ2のy軸方向の幅y0は、厚みz0の2倍以上、好ましくは200μm以上、好ましくは200~600μmとすることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサによれば、素子本体4の下面4dが平坦面であることで、たとえば
図4に示すように、多層基板40の内部に、コンデンサ2を埋込みやすくなる。
図4では、コンデンサ2の第1端子電極6,第2端子電極8に、多層基板40に形成してある配線パターン42がスルーホール電極などを補通して接続してある。また、本実施形態では、素子本体4の下面である平坦面が実装面に設置される際に、素子本体4が実装面に密着して取り付けられ、積層セラミックコンデンサ2の曲げ強度が向上する。
【0045】
また、本実施形態において、素子本体4の上面4cまたは下面4dを構成する外装領域11は、内側誘電体層10よりも強度が高い誘電体材料で構成してあってもよい。このように構成することで、積層セラミックコンデンサ2の曲げ強度が、さらに向上する。また、強度が向上することで、素子本体4の長手方向寸法y0または幅寸法x0を長くすることが容易になり、素子本体4の内部における内部電極層12の相互間の対向面積が広くなり、静電容量などの特性が向上する。さらに、
図2Aに示すサイドギャップ領域14も内側誘電体層10よりも強度が高い誘電体材料で構成してあってもよい。
【0046】
本実施形態の積層セラミックコンデンサ2の具体的な用途としては好ましくは、デカップリングコンデンサが挙げられるが、これに限定されず、高耐圧コンデンサ、低ESLコンデンサ、大容量コンデンサなどとしても使用される。
【0047】
次に、本発明の一実施形態としての積層セラミックコンデンサ2の製造方法について具体的に説明する。
【0048】
まず、焼成後に
図1に示す内側誘電体層10を構成することになる内側グリーンシートおよび外装領域11を構成することとなる外側グリーンシートを製造するために、内側グリーンシート用ペーストおよび外側グリーンシート用ペーストを準備する。内側グリーンシート用ペーストおよび外側グリーンシート用ペーストは、通常、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
【0049】
セラミック粉末の原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉末の原料は、本実施形態では、平均粒子径が0.45μm以下、好ましくは0.1~0.3μm程度の粉体として用いられる。なお、内側グリーンシートをきわめて薄いものとするためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
【0050】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、アセトン、メチルエチルケトン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0051】
また、グリーンシート用ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。可塑剤としては、フタル酸ジオクチルやフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。
【0052】
次に、焼成後に
図1Aに示す内部電極層12を構成することになる内部電極パターン層を製造するために、内部電極層用ペーストを準備する。内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0053】
焼成後に
図1Aに示す第1端子電極6,第2端子電極8を構成することになる端子電極用ペーストとは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。ヴィアホール電極52となる電極用ペーストの調整方法に関しては後述する。
【0054】
上記にて調製した内側グリーンシート用ペーストおよび内部電極層用ペーストを使用して、内側グリーンシートと、内部電極パターン層と、を交互に積層し、内部積層体を製造する。そして、内部積層体を製造した後に、外側グリーンシート用ペーストを使用して、外側グリーンシートを形成し、積層方向に加圧してグリーン積層体を得る。
【0055】
なお、グリーン積層体の製造方法としては、上記の他、外側グリーンシートに直接内側グリーンシートと内部電極パターン層とを交互に所定数積層して、積層方向に加圧してグリーン積層体を得てもよい。
【0056】
具体的には、まず、ドクターブレード法などにより、支持体としてのキャリアシート(たとえばPETフィルム)上に、内側グリーンシートを形成する。内側グリーンシートは、キャリアシート上に形成された後に乾燥される。
【0057】
次に、内側グリーンシートの表面に、内部電極層用ペーストを用いて、内部電極パターン層を形成し、内部電極パターン層を有する内側グリーンシートを得る。次に、内部電極パターン層を有する内側グリーンシートを複数積層して、内部積層体を製造した後に、内部積層体の上下に外側グリーンシート用ペーストを使用して、適宜の枚数の外側グリーンシートを形成し、積層方向に加圧してグリーン積層体を得る。
【0058】
次に、グリーン積層体を個片状に切断してグリーンチップを得る。なお、内部電極パターン層の形成方法としては、特に限定されず、印刷法、転写法の他、蒸着、スパッタリングなどの薄膜形成方法により形成されていてもよい。
【0059】
グリーンチップは、固化乾燥により可塑剤が除去され固化される。固化乾燥後のグリーンチップは、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を行うことにより、素子本体4が得られる。脱バインダ工程、焼成工程およびアニール工程は、連続して行なっても、独立して行なってもよい。
【0060】
次に、
図3Aに示すように、素子本体4の上面4cに、ヴィアホール50を所定パターンで形成する。ヴィアホール50の形成は、たとえばエッチングにより行うことができるが、それに限らず、レーザ照射、反応性イオンエッチング、フォトリソグラフィなどでもよい。その後に、各ヴィアホール50の内部を、たとえば
図3Aに示すヴィアホール電極52のパターンで、第1導電性ペーストを埋め込む。第1導電性ペーストは、内部電極用ペーストと同様にして製造されるが、各種導電性金属や合金からなる導電材の成分が、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは72~77質量%である。
【0061】
次に、第1導電性ペーストで埋め込まれていないヴィアホール50の空間内に、第2導電性ペーストを埋め込む。第2導電性ペーストは、第1導電性ペーストと同様な導電材が用いられて同様にして調整されるが、導電材の成分が第1導電性ペーストよりも極端に少なく(0質量%でもよい)、樹脂ビーズの割合が70質量%以上、さらに好ましくは72~77質量%である。ヴィアホール50の内部に所定パターンで導電性ペーストを埋め込むための手段としては、特に限定されないが、たとえばスクリーン印刷、メタルマスク印刷、ディスペンサー塗布などが用いられる。
【0062】
ヴィアホール50の内部に、第1導電性ペーストと第2導電性ペーストとを埋め込んだ後、これらのペーストの焼き付け処理のための熱処理を行う。熱処理条件は、特に限定されないが、たとえばN2 の雰囲気下で、700~1000°Cの温度で行う。このよう な熱処理により、第2導電性ペースト中の樹脂ビーズが気化されてヴィアホール50から抜け出るため、ヴィアホール50の内部には、所定パターンの空隙54が形成される。
【0063】
次に、素子本体4の上面4cに、所定パターンで、端子電極用ペーストを塗布して焼成し、第1端子電極6,第2端子電極8を形成する。第1端子電極6,第2端子電極8の形成は、たとえばヴィアホール電極52の形成方法と同様にしてスクリーン印刷などで行うこともできる。第1端子電極6,第2端子電極8の形成に際しては、ヴィアホール電極52の第2導電性ペーストとは異なり、導電性ペースト中に、樹脂ビーズなどは混入させない。第1端子電極6,第2端子電極8は、ヴィアホール50の空隙54の内部に多少入り込んでもよいが、上面4c近くまでであり、引出部12a,12bの近くまでは届かないことが好ましい。
【0064】
なお、第1端子電極6,第2端子電極8の形成方法については、特に限定されず、端子電極用ペーストの塗布・焼付け、メッキ、蒸着、スパッタリングなどの適宜の方法を用いることができる。必要に応じ、第1端子電極6,第2端子電極8表面に、めっき等により被覆層を形成する。被覆層としては、金メッキ、錫メッキなどが例示される。
【0065】
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。あるいは、
図4に示すように、多層基板40の内部に、コンデンサ2として埋込まれて使用される。
【0066】
あるいは、
図5に示すように、本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、回路基板40aの上に、ハンダ60を用いて実装されてもよい。その場合には、コンデンサ2は、Z軸方向の上下が逆に配置され、第1端子電極6および第2端子電極8が、図面上で下を向き、ハンダ60により回路基板40aの配線パターン42aにそれぞれ接続される。
【0067】
本実施形態の積層セラミックコンデンサ2では、素子本体4の下面に第1端子電極6,第2端子電極8が実質的に形成されず、あるいは素子本体4の下面4dの全体が露出する。そして、積層セラミックコンデンサのトータル厚みz0は、100μm以下、好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下と薄くすることができる。すなわち、積層セラミックコンデンサの低背化に寄与する。したがって、本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、
図4に示すように、基板40の内部に内蔵させやすくなり、しかも基板40を含めたパッケージの小型化が可能になる。
【0068】
また、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2では、ヴィアホール電極52が、素子本体4に形成してあるヴィアホール50内に所定の空隙54が形成されるように埋め込まれている。ヴィアホール50内に空隙54があることで、たとえばピックアップ荷重などの外部からの荷重に対し、空隙54への電極52の変形(金属変形)が発生し、セラミック製素子本体4への荷重の伝達を緩和し、素子本体4を薄くしても強度が向上し、クラックなどが生じ難くなり、破壊されにくくなる。
【0069】
さらに本実施形態では、内部電極層12に平行な素子本体4の断面において、ヴィアホール電極52の面積に対して空隙54の面積割合を示す空隙率が1~60%の範囲内、さらに好ましくは5~60%の範囲内、特に好ましくは5~30%の範囲内である。このような範囲とすることで、素子本体4を薄くしてもさらに強度が向上し、クラックなどが生じ難くなると共に、耐熱衝撃特性も向上する。
【0070】
さらに本実施形態では、ヴィアホール50内で、ヴィアホール電極52が、素子本体4の内側(Y軸方向の中心側)に位置し、空隙54が、素子本体4の外側(Y軸方向の中心から離れる側)に位置する。このように構成することで、外力により素子本体4の中央部に発生する応力が、より外部に逃げやすくなるため、積層セラミックコンデンサ2の強度がさらに向上する。
【0071】
さらにまた本実施形態では、素子本体4の下面4dおよび第1側面4a,第2側面4b,側面4eには、電極層が形成されていない。このように構成することで、外力により素子本体4に発生する応力が、より外部に逃げやすくなるため、積層セラミックコンデンサ2の強度がさらに向上する。また、素子本体4の下面に電極層が形成されていないことで、素子本体4の下面は平坦面にし易くなり、たとえば
図4に示す基板40の内部に埋込みやすくなる。また、素子本体4の下面4dである平坦面が実装面に設置される際には、素
子本体4が実装面に密着して取り付けられ、積層セラミック電子コンデンサの曲げ強度が向上する。
【0072】
第2実施形態
図1Bおよび
図2Bに示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2aでは、以下に示す以外は、第1実施形態の積層セラミックコンデンサ2と同様である。このコンデンサ2aでは、素子本体4の上面4c(または下面4d)は、内側誘電体層10よりも強度が高い材料で構成してある上面強化層16を含み、上面強化層16の外面が、素子本体4の上面4c(または下面4d)を規定している。
【0073】
上面強化層16は、第1実施形態と同様にして素子本体4を形成した後に、第1端子電極6および第2端子電極8を形成する前に、素子本体4の上面4c(または下面4d)に形成される。上面強化層16としては、特に限定されないが、たとえばガラス、アルミナ系コンポジット材料、ジルコニア系コンポジット材料、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アラミド繊維、繊維強化プラスチックなどが例示される。
【0074】
このように構成することで、積層セラミックコンデンサ2aの強度がさらに向上する。また、強度が向上することで、素子本体4を薄くしても、素子本体4の長手方向寸法y0(
図1A参照)または幅寸法x0(
図2A参照)を長くすることが容易になり、素子本体4の内部における内部電極層12の相互間の対向面積が広くなり、静電容量などのコンデンサ2bの特性が、さらに向上する。
【0075】
なお、上面強化層16を構成するガラス成分は特に限定されないが、SiO2 、BaO、Al2 O3 、アルカリ金属、CaO、SrO、B2 O3 を含むことが好ましい。上面強化層16を構成するガラス成分として含まれるSiO2は、上面強化層16のガラス成分中に30~70質量%含まれることが好ましい。SiO2を上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも少ない場合に比べて、網目形成酸化物が十分な量となり、耐めっき性を良好にする。SiO2を上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも多い場合に比べて、軟化点が高くなりすぎるのを防ぎ、作業温度が高くなり過ぎるのを防ぐ。
【0076】
本実施形態の上面強化層16を構成するガラス成分として含まれるBaOは、上面強化層16のガラス成分中に20~60質量%含まれることが好ましい。BaOを上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも少ない場合に比べて、誘電体との密着性を良好にしてデラミネーションを生じにくくする。また、熱膨張係数が小さくなり過ぎるのを防ぎ、クラックを生じにくくする。さらに、誘電体層がBaTiO3の場合、Baがガラス成分に溶出してしまうのを防止し、HALT信頼性が低下することを抑制する。BaOを上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも多い場合に比べて、ガラス化を良好にし、さらに、耐めっき性を良好にする。
【0077】
本実施形態の上面強化層16を構成するガラス成分として含まれるAl2 O3 は、上面強化層16のガラス成分中に1~15質量%含まれることが好ましい。Al2 O3
を上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも少ない場合に比べて、耐めっき性が良好である。Al2 O3 を上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも多い場合に比べて、軟化点が上昇し過ぎるのを防ぐ。
【0078】
本実施形態の上面強化層16を構成するガラス成分中にSiO2 とBaOとAl2 O3 が合計で70~100質量%含まれることが好ましい。これにより誘電体と上面強化層16の界面でBa-Ti-Si-O相が形成され易くなる。
【0079】
本実施形態の上面強化層16を構成するガラス成分として含まれるアルカリ金属としては、Li、Na、Kが挙げられるが、熱膨張係数の観点から、K、Naがより好ましい。本実施形態の上面強化層16を構成するガラス成分として含まれるアルカリ金属は、上面強化層のガラス成分中に0.1~15質量%含まれることが好ましい。これにより熱膨張係数を、高めることができる。アルカリ金属を上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも多い場合に比べて、耐めっき性を良好にできる。
【0080】
本実施形態の上面強化層16を構成するガラス成分として含まれるCaOは、上面強化層16のガラス成分に0~15質量%含まれることが好ましい。これにより熱膨張係数を高めることができ、耐めっき性を良好にできる。
【0081】
本実施形態の上面強化層16を構成するガラス成分として含まれるSrOは、上面強化層16のガラス成分に0~20質量%含まれることが好ましい。これにより熱膨張係数を高めることができ、耐めっき性を良好にできる。SrOを上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも多い場合に比べて、SrOがBaTiO3 と反応することを防ぎ、チップの絶縁性と信頼性を向上できる。
【0082】
本実施形態の上面強化層16を構成するガラス成分として含まれるB2 O3 は、上面強化層16のガラス成分に0~10質量%含まれることが好ましい。これによりガラスの網目形成酸化物としての効果を発揮できる。B2 O3 を上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも多い場合に比べて、耐めっき性を良好にできる。
【0083】
本実施形態では、上面強化層16は、外装領域11の外面側の一部のみを構成しているが、外装領域11の大部分、または全てを占めていてもよい。上面強化層16は、素子本体4の上面4cに強化層用ペーストを塗布し、焼付けることにより形成することができる。
【0084】
この強化層用ペーストは、たとえば上記したガラス原料と、エチルセルロースを主成分とするバインダと分散媒であるターピネオールおよびアセトンとをミキサーで混練して得られる。素子本体4への強化層用ペーストの塗布方法は特に限定されず、たとえば、ディップ、印刷、塗布、蒸着、噴霧等の方法が挙げられる。
【0085】
強化層用ペーストが塗布された素子本体4の焼き付け条件は特に限定されず、たとえば、加湿N2 または乾燥N2 の雰囲気において、700℃~1300℃、0.1時間~3時間保持し、焼き付けられる。
【0086】
第3実施形態
図1Cおよび
図2Cに示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2bでは、以下に示す以外は、第1実施形態または第2実施形態と同様である。このコンデンサ2bでは、底面強化層18が素子本体4の下面4dを覆うように形成してあると共に、側面強化層19が素子本体4の第1側面4a,第2側面4b,側面4eを覆うように、底面強化層18に連続して形成してある。
【0087】
また本実施形態では、
図2Cに示すように、内部電極層12のX軸方向の両端は、素子本体4のX軸方向の側面から露出しており、その部分を側面強化層19が覆うように、側面強化層19が素子本体4の第1側面4a,第2側面4b,側面4eに形成してある。本実施形態では、第1実施形態および第2実施形態に比較して、同じ素子本体4のX軸方向の外形サイズである場合に、内部電極層12のX軸方向の幅を大きくすることができ、コンデンサ容量を増大させることができる。また本実施形態では、底面強化層18および/または側面強化層19があることで、積層セラミックコンデンサ2aの強度がさらに向上する。
【0088】
なお、底面強化層18および/または側面強化層19は、第2実施形態の上面強化層16と同様な材質で構成され、同様な方法で形成することができる。ただし、底面強化層18および/または側面強化層19は、第2実施形態の上面強化層16と全く同じ材質で構成する必要は無く、また全く同じ方法で形成する必要は無い。底面強化層18および/または側面強化層19は、素子本体4を構成する誘電体層10または外装領域11と比較して、弾性率が低い、あるいは線熱膨張係数が低い絶縁材料で構成してあることが好ましい。
【0089】
第4実施形態
図3Bに示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2cでは、以下に示す以外は、第1~第3実施形態と同様である。このコンデンサ2cでは、ヴィアホール50に形成される空隙54の断面形状が略円形であり、ヴィアホール電極52の断面形状は、三日月形状であり、空隙54は、各ヴィアホール50の内部で素子本体4のY軸方向の外側に位置している。この実施形態でも、上述した実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0090】
第5実施形態
図3Cに示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2dでは、以下に示す以外は、第1~第4実施形態と同様である。このコンデンサ2dでは、ヴィアホール50に形成される空隙54の断面形状が略円形であり、ヴィアホール電極52の断面形状は、リング形状であり、空隙54は、各ヴィアホール50の内部で中心に位置している。この実施形態でも、上述した実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0091】
第6実施形態
図3Dに示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2eでは、以下に示す以外は、第1~第5実施形態と同様である。このコンデンサ2eでは、一対のヴィアホール50が、素子本体4の第1側面4a,第2側面4bの近くで、それぞれX軸方向に連続する直線状のスリット溝として形成してある。また、ヴィアホール電極52は、各スリット状のヴィアホール50の内部で、素子本体4のY軸方向の内側で、ヴィアホール50の延びる方向に沿って連続的(断続でもよい)に形成してある。また、空隙54は、各スリット状のヴィアホール50の内部で、素子本体4のY軸方向の外側で、ヴィアホール50の延びる方向に沿って連続的(断続でもよい)に形成してある。
【0092】
ヴィアホール50およびヴィアホール電極52のY-Z断面形状は、たとえば
図1Cに示す実施形態と同様であり、素子本体4を貫通していない。また、
図3Dに示す本実施形態では、
図1Cに示す側面強化層19と同様な側面強化層が、素子本体4の側面4eの少なくともヴィアホール50のX軸方向両端(好ましくは側面4eの全面)を覆っていることが好ましい。そのことにより、ヴィアホール50の空隙54の内部に水分などの侵入を抑制することができる。
【0093】
本実施形態では、素子本体4のY軸方向の両側にそれぞれ設けてあるヴィアホール50の形状をX軸方向に連続するスリット溝形状にすることで、ヴィアホール50内のY軸方向外側にX軸方向に連続する空隙54を作りやすい。本実施形態では、特に、スリット溝形状のヴィアホール50の場合には、外力により素子本体4の中央部に発生する応力が、より外部に逃げやすくなるため、積層セラミックコンデンサ2eの強度がさらに向上する傾向が強い。
【0094】
なお、図示するスリット溝形状のヴィアホール50は、素子本体4のX軸方向の横幅と略同等な幅で形成してあるが、そのスリット溝形状のヴィアホールの両端は、素子本体4のX軸方向に貫通していなくてもよい。また、たとえば
図3Eに示す実施形態の積層セラ ミックコンデンサ2fでは、ヴィアホール電極52は、ヴィアホール50のX軸方向の全長にわたり形成する必要は無く、ヴィアホール電極52のX軸方向の両端に形成してある空隙54を大きくしてある。これらの実施形態でも、上述した実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0095】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0096】
たとえば上述した各実施形態では、ヴィアホール50は、素子本体4の上面4cから下面4dまでは突き抜けないように、下面4dに近くの外装領域11まで到達するように形成してあるが、これに限定されない。たとえば
図1Dに示すように、素子本体4の上面4cから下面4dまで貫通するようにヴィアホール50を形成してもよい。ただし、その場合には、
図1Cに示すように、素子本体4の下面4dには、底面強化層18が形成してあることが好ましい。あるいは、底面強化層18を設けなくても良いが、ヴィアホール50は、X軸方向には、断続的に形成してあることが好ましい。
【0097】
また、上述した実施形態では、ヴィアホール50およびヴィアホール電極52は、素子本体4毎に個片化した後に形成し、第1端子電極6,第2端子電極8も、素子本体4毎に個片化した後に形成してあるが、その前でもよい。すなわち、本発明では、ヴィアホール50およびヴィアホール電極52は、素子本体4毎に個片化する前に形成してもよい。また、第1端子電極6,第2端子電極8も、素子本体毎に個片化する前に形成してもよい。
【0098】
また、本発明の積層セラミック電子部品は、積層セラミックコンデンサに限らず、その他の積層電子部品に適用することが可能である。その他の積層電子部品としては、誘電体層(絶縁層)が内部電極を介して積層される全ての電子部品であり、たとえばバンドパスフィルタ、インダクタ、積層三端子フィルタ、圧電素子、PTCサーミスタ、NTCサーミスタ、バリスタなどが例示される。
【実施例】
【0099】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0100】
実施例1
下記の通り、積層セラミックコンデンサ2を作製した。
【0101】
まず、BaTiO3 系セラミック粉末:100質量部と、ポリビニルブチラール樹脂 :10質量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(DOP):5質量部と、溶媒としてのアルコール:100質量部とをボールミルで混合してペースト化し、内側グリーンシート用ペーストを得た。
【0102】
また、上記とは別に、Ni粒子44.6質量部と、テルピネオール:52質量部と、エチルセルロース:3質量部と、ベンゾトリアゾール:0.4質量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを作製した。
【0103】
上記にて作製した内側グリーンシート用ペーストを用いて、PETフィルム上に内側グリーンシートを形成した。次に、内部電極層用ペーストを用いて、内部電極パターン層を所定パターンで形成した後、PETフィルムからシートを剥離し、内部電極パターン層を有する内側グリーンシートを得た。
【0104】
このようにして得られた内部電極パターン層を有する内側グリーンシートを交互に積層し、内部積層体を製造した。
【0105】
次に、内部積層体の上下に外側グリーンシート用ペーストを使用して、適宜の枚数の外側グリーンシートを形成し、積層方向に加圧接着してグリーン積層体を得た。外側グリーンシート用ペーストは、内側グリーンシート用ペーストと同様の方法により得た。
【0106】
次に、グリーン積層体を切断してグリーンチップを得た。
【0107】
次に、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、素子本体4を得た。
【0108】
脱バインダ処理条件は、昇温速度60℃/時間、保持温度:260℃、保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
【0109】
焼成条件は、昇温速度200℃/時間、保持温度1000℃~1200℃とし、温度保持時間を2時間とした。冷却速度は200℃/時間とした。なお、雰囲気ガスは、加湿したN2+H2混合ガスとした。
【0110】
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:500℃~1000℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN2ガスとした。
【0111】
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを使用した。
【0112】
次に、
図3Aに示すように、素子本体4に円形断面の複数のヴィアホール50を形成し、各ヴィアホール50の内部に、所定パターンで、第1導電性ペーストを埋め込み、その後に、ヴィアホール50の隙間部分に第2導電性ペーストを埋め込んだ。
【0113】
第1導電性ペーストは、平均粒径0.4μmの球状のCu粒子とフレーク状のCu粉の混合物84質量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂5質量部をブチルカルビトール95質量部に溶解したもの)30質量部、およびブチルカルビトール6質量部とを混練して調整した。第1導電性ペースト中の金属成分(導電成分)の質量割合は、70質量%であった。
【0114】
第2導電性ペーストは、平均粒径0.4μmの球状のCu粒子とフレーク状のCu粉の混合物84質量部と、平均粒径5μmの球状の樹脂ビーズ280質量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂5質量部をブチルカルビトール95質量部に溶解したもの)30質量部、およびブチルカルビトール6質量部とを混練して調整した。第2導電性ペースト中の樹脂ビーズの質量割合は、70質量%であった。
【0115】
第1導電性ペーストと第2導電性ペーストとを充填させたヴィアホール50を含む素子本体4を、N
2 雰囲気で850℃にて10分間熱処理したところ、
図3Aに示すように、ヴィアホール50の内部に空隙54が形成してあるヴィアホール電極52が得られた。
【0116】
次に、平均粒径0.4μmの球状のCu粒子とフレーク状のCu粉の混合物100質量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂5質量部をブチルカルビトール95質量部に溶解したもの)30質量部、およびブチルカルビトール6質量部とを混練し、ペースト化した端子電極用ペーストを得た。
【0117】
得られた端子電極用ペーストを、素子本体4の上面4cに塗布し、N2雰囲気で850℃にて10分間焼成して第1端子電極6,第2端子電極8を上面4cのみに形成した。得られた積層セラミックコンデンサ2のZ軸厚みz0は、100μmであった。また、第1端子電極6,第2端子電極8の厚みは15μmであり、ヴィアホール50のZ軸深さは、 Z軸厚みz0の80%であり、ヴィアホール50の内部の空隙率は、1%であった。
【0118】
空隙率は、たとえば以下のようにして測定した。すなわち、各ヴィアホール50について、深さ方向に3つの横断面(X-Y断面)を観察し、ヴィアホール電極52の面積に対して空隙54の面積割合を示す空隙率の平均値を、各ヴィアホール50毎に求め、さらに、一つの素子本体の全てのヴィアホール50についての平均を求め、その値を、表1に示す空隙率の数値とした。
【0119】
なお、3つの横断面の内の一つが、
図1Aに示す各ヴィアホール50の深さ方向の中央部であり、他の二つが、内装領域13と二つの外装領域11との上下二つの境界近くの部分である。
【0120】
同様にしてサンプルを100個製造し、そのサンプルについて、荷重負荷試験を行った。過重負荷試験は、素子本体4の下面4dのY軸方向の両端を保持し、素子本体4の上面4cの中央から、通常のピックアップ荷重よりも大きな1.0Nの荷重を加え、素子本体4の外観にクラックが観察される個数を評価した。結果を表1に示す。
【0121】
また、別に同様にしてサンプルを1000個製造し、これらについて、熱衝撃試験を行った。熱衝撃試験は、以下のようにして行った。
【0122】
まず、試験用基板上にクリームはんだを塗布し、その上に試験用の複数のサンプルコンデンサ2をマウントする。それらのコンデンサについて、ベルト炉式のリフロー炉を用い、加熱によりはんだ付けを行った。加熱は最高温度で250℃-10secで実施した。また、コンデンサ2が実装された基板の絶縁抵抗を市販のIRメーターで測定した。測定電圧6.3Vで、電圧印加30sec後のIR値を測定した。熱衝撃試験前の絶縁抵抗は、全てのサンプルで、109 (1.0E+09)Ω以上であった。
【0123】
次に、試験用基板を、熱衝撃試験装置(WINTECH社製の装置名NT3701W)内に投入した。試験温度の最低温度は、-55℃で、最高温度を125℃に設定した。-55℃から125℃への上昇温度時、また、125℃から-55℃への下降温度時の温度移行時間は5分で(Δ36℃/min)行い、-55℃および125℃での温度保持時間は10分で行った。
【0124】
熱衝撃の1サイクルの定義は以下の通りであった。すなわち、-55℃で保持10分で、その後に、125℃まで5分で昇温し、その後に、125℃で保持10分とし、次に、-55℃まで5分で降温した。サイクル試験は、2000サイクルに到達後、試験用基板を取り出して、試験前と同様にして、コンデンサ2が実装された基板の絶縁抵抗を市販のIRメーターで測定した。
【0125】
試験前と試験後で、共に、全てのサンプルで、109 (1.0E+09)Ω以上で変化しない場合を、評価Aとした。また、109 (1.0E+09)Ω以上から、108 (1.0E+08)Ω以上に変化したサンプルがあった場合には、評価Bとした。
【0126】
さらに、109 (1.0E+09)Ω以上から、107 (1.0E+07)Ω以上に変化したサンプルがあった場合には、評価Cとした。また、109 (1.0E+09)Ω以上から、104 (1.0E+04)Ω以上に変化したサンプルがあった場合には、評価Dとした。また、109 (1.0E+09)Ω以上から、103 (1.0E+03)Ω以上に変化したサンプルがあった場合には、評価Eとした。さらに、導通がオープンとなり、熱衝撃試験前の絶縁抵抗の測定ができない場合を評価Fとした。結果を表1に示す。
【0127】
実施例2
この実施例では、以下に示す以外は、実施例1と同様にして、
図3Dに示す積層セラミックコンデンサ2eのサンプルを作製した。この実施例では、
図3Dに示すように、一対のヴィアホール50を、素子本体4の第1側面4a,第2側面4bの近くで、それぞれX軸方向に連続する直線状のスリット溝として形成し、そのヴィアホール50に沿って空隙54が外側に位置するように、ヴィアホール電極52を直線状に形成してサンプルを作製した。これらのサンプルについて、実施例1と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試 験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0128】
実施例3
この実施例では、以下に示す以外は、実施例1と同様にして、
図1Aおよび
図3Aに示す積層セラミックコンデンサ2のサンプルを作製した。この実施例では、第1導電性ペースト中の金属成分(導電成分)の質量割合は、72質量%であり、第2導電性ペースト中の樹脂ビーズの質量割合は、72質量%であった。また、ヴィアホール50の内部での第2導電性ペーストの塗布面積割合を、実施例1よりも大きくした。これらのサンプルについて、実施例1と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0129】
実施例4
この実施例では、以下に示す以外は、実施例3と同様にして、
図3Dに示す積層セラミックコンデンサ2eのサンプルを作製した。この実施例では、
図3Dに示すように、一対のヴィアホール50を、素子本体4の第1側面4a,第2側面4bの近くで、それぞれX軸方向に連続する直線状のスリット溝として形成し、そのヴィアホール50に沿って空隙54が外側に位置するように、ヴィアホール電極52を直線状に形成してサンプルを作製した。これらのサンプルについて、実施例3と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0130】
実施例5
この実施例では、以下に示す以外は、実施例3と同様にして、
図1Aおよび
図3Aに示す積層セラミックコンデンサ2のサンプルを作製した。この実施例では、第1導電性ペースト中の金属成分(導電成分)の質量割合は、73質量%であり、第2導電性ペースト中の樹脂ビーズの質量割合は、73質量%であった。また、ヴィアホール50の内部での第2導電性ペーストの塗布面積割合を、実施例3よりも大きくした。これらのサンプルについて、実施例1と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0131】
実施例6
この実施例では、以下に示す以外は、実施例5と同様にして、
図3Dに示す積層セラミックコンデンサ2eのサンプルを作製した。この実施例では、
図3Dに示すように、一対のヴィアホール50を、素子本体4の第1側面4a,第2側面4bの近くで、それぞれX軸方向に連続する直線状のスリット溝として形成し、そのヴィアホール50に沿って空隙54が外側に位置するように、ヴィアホール電極52を直線状に形成してサンプルを作製した。これらのサンプルについて、実施例5と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0132】
実施例7
この実施例では、以下に示す以外は、実施例5と同様にして、
図1Aおよび
図3Aに示す積層セラミックコンデンサ2のサンプルを作製した。この実施例では、第1導電性ペースト中の金属成分(導電成分)の質量割合は、75質量%であり、第2導電性ペースト中の樹脂ビーズの質量割合は、75質量%であった。また、ヴィアホール50の内部での第2導電性ペーストの塗布面積割合を、実施例5よりも大きくした。これらのサンプルについて、実施例5と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0133】
実施例8
この実施例では、以下に示す以外は、実施例7と同様にして、
図3Dに示す積層セラミックコンデンサ2eのサンプルを作製した。この実施例では、
図3Dに示すように、一対のヴィアホール50を、素子本体4の第1側面4a,第2側面4bの近くで、それぞれX軸方向に連続する直線状のスリット溝として形成し、そのヴィアホール50に沿って空隙54が外側に位置するように、ヴィアホール電極52を直線状に形成してサンプルを作製した。これらのサンプルについて、実施例7と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0134】
実施例9
この実施例では、以下に示す以外は、実施例7と同様にして、
図1Aおよび
図3Aに示す積層セラミックコンデンサ2のサンプルを作製した。この実施例では、第1導電性ペースト中の金属成分(導電成分)の質量割合は、77質量%であり、第2導電性ペースト中の樹脂ビーズの質量割合は、77質量%であった。また、ヴィアホール50の内部での第2導電性ペーストの塗布面積割合を、実施例7よりも大きくした。これらのサンプルについて、実施例7と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0135】
実施例10
この実施例では、以下に示す以外は、実施例9と同様にして、
図3Dに示す積層セラミックコンデンサ2eのサンプルを作製した。この実施例では、
図3Dに示すように、一対のヴィアホール50を、素子本体4の第1側面4a,第2側面4bの近くで、それぞれX軸方向に連続する直線状のスリット溝として形成し、そのヴィアホール50に沿って空隙54が外側に位置するように、ヴィアホール電極52を直線状に形成してサンプルを作製した。これらのサンプルについて、実施例7と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0136】
実施例11
この実施例では、以下に示す以外は、実施例9と同様にして、
図1Aおよび
図3Aに示す積層セラミックコンデンサ2のサンプルを作製した。この実施例では、第1導電性ペースト中の金属成分(導電成分)の質量割合は、80質量%であり、第2導電性ペースト中の樹脂ビーズの質量割合は、80質量%であった。また、ヴィアホール50の内部での第2導電性ペーストの塗布面積割合を、実施例9よりも大きくした。これらのサンプルについて、実施例9と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0137】
実施例12
この実施例では、以下に示す以外は、実施例11と同様にして、
図3Dに示す積層セラミックコンデンサ2eのサンプルを作製した。この実施例では、
図3Dに示すように、一対のヴィアホール50を、素子本体4の第1側面4a,第2側面4bの近くで、それぞれX軸方向に連続する直線状のスリット溝として形成し、そのヴィアホール50に沿って空隙54が外側に位置するように、ヴィアホール電極52を直線状に形成してサンプルを作製した。これらのサンプルについて、実施例11と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0138】
実施例13
この実施例では、以下に示す以外は、実施例11と同様にして、
図1Aおよび
図3Aに示す積層セラミックコンデンサ2のサンプルを作製した。この実施例では、第1導電性ペースト中の金属成分(導電成分)の質量割合は、90質量%であり、第2導電性ペースト中の樹脂ビーズの質量割合は、90質量%であった。また、ヴィアホール50の内部での第2導電性ペーストの塗布面積割合を、実施例11よりも大きくした。これらのサンプルについて、実施例11と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0139】
実施例14
この実施例では、以下に示す以外は、実施例13と同様にして、
図3Dに示す積層セラミックコンデンサ2eのサンプルを作製した。この実施例では、
図3Dに示すように、一対のヴィアホール50を、素子本体4の第1側面4a,第2側面4bの近くで、それぞれX軸方向に連続する直線状のスリット溝として形成し、そのヴィアホール50に沿って空隙54が外側に位置するように、ヴィアホール電極52を直線状に形成してサンプルを作製した。これらのサンプルについて、実施例13と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0140】
実施例15
この実施例では、以下に示す以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。この実施例では、
図1Aに示す第1端子電極6が素子本体の上面4cから一方の第1側面4aの全体を覆うように延びており、第2端子電極8が素子本体の上面4cから他方の第2側面4bの全体を覆うように延びていた。すなわち、第1端子電極6,第2端子電極8の断面形状がL字型であった。これらのサンプルについて、実施例1と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0141】
実施例16
この実施例では、以下に示す以外は、実施例15と同様にして、
図3Dに示す積層セラミックコンデンサ2eのサンプルを作製した。この実施例では、
図3Dに示すように、一対のヴィアホール50を、素子本体4の第1側面4a,第2側面4bの近くで、それぞれX軸方向に連続する直線状のスリット溝として形成し、そのヴィアホール50に沿って空隙54が外側に位置するように、ヴィアホール電極52を直線状に形成してサンプルを作製した。これらのサンプルについて、実施例15と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0142】
実施例17
この実施例では、以下に示す以外は、実施例13と同様にして、
図1Aおよび
図3Aに示す積層セラミックコンデンサ2のサンプルを作製した。この実施例では、第1導電性ペースト中の金属成分(導電成分)の質量割合は、60質量%であり、第2導電性ペースト中の樹脂ビーズの質量割合は、95質量%であった。また、ヴィアホール50の内部での第2導電性ペーストの塗布面積割合を、実施例13よりも大きくした。これらのサンプルについて、実施例11と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0143】
比較例1
この比較例では、以下に示す以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。この比較例では、第1導電性ペースト中の金属成分(導電成分)の質量割合は、95質量%であり、第1導電性ペーストのみをヴィアホールの内部に充填した。第2導電性ペーストは塗布しなかった。これらのサンプルについて、実施例1と同様にして、空隙率を測定し、荷重負荷試験と熱衝撃試験を行った結果を表1に示す。
【0144】
評価
表1に示すように、比較例1に比較して、全ての実施例で、荷重負荷試験の結果が良好であった。また、ヴィアホール内の空隙率を調整することで、荷重負荷試験の結果と熱衝撃試験の結果の双方が良好となることが確認できた。さらに、ヴィアホール内の空隙率が同じであれば、断面L字型の端子電極よりも、素子本体の上面のみに端子電極を形成することで、荷重負荷試験の結果が向上することが確認できた。
【0145】
【符号の説明】
【0146】
2,2a~2f… 積層セラミックコンデンサ
4… 素子本体
4a… 第1側面
4b… 第2側面
4c… 上面
4d… 下面
4e… 側面
6… 第1端子電極
8… 第2端子電極
10… 内側誘電体層
11… 外装領域
12… 内部電極層
12a… 引出部(第1引出部)
12b… 引出部(第2引出部)
13… 内装領域
14… サイドギャップ領域
16… 上面強化層
18… 底面強化層
19… 側面強化層
40… 多層基板
40a… 回路基板
42,42a… 配線パターン
50… ヴィアホール
52… ヴィアホール電極
54… 空隙
60… ハンダ