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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】線状部材把持装置
(51)【国際特許分類】
   B21F 23/00 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
B21F23/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019174677
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021049554
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】西牧 悟
(72)【発明者】
【氏名】駒谷 隆行
(72)【発明者】
【氏名】三木 伸将
(72)【発明者】
【氏名】関 寿昌
(72)【発明者】
【氏名】前田 敏章
(72)【発明者】
【氏名】田中 利典
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-115914(JP,A)
【文献】特開2018-094704(JP,A)
【文献】特開平04-075916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 23/00
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象としての線状部材に当接する第1把持面を有する第1把持部材と、
前記線状部材に当接し、前記第1把持面に対向する第2把持面を有するとともに、前記第2把持面から前記第1把持面側に突出する突起部を有する第2把持部材と、
前記第1把持部材と前記第2把持部材との相対位置を、互いに近づくまたは遠ざかる方向である第1方向に変化させる第1駆動部、および、前記第1方向に垂直な方向である第2方向に変化させる第2駆動部と、
前記第1把持部材と前記第2把持部材とに挟まれる前記線状部材の前記第2方向への移動を所定の制限位置で制限する制限部と、
前記第1駆動部および前記第2駆動部を駆動させる駆動制御部と、を備え、
前記駆動制御部は、
前記突起部と前記制限部との間で複数本の前記線状部材を把持するように、前記第1駆動部が、前記第1把持部材および前記第2把持部材との相対位置を、互いに近づけるように駆動した後に、
前記第2駆動部が、前記第1把持部材および前記第2把持部材との相対位置を、前記突起部が前記制限位置に近づくように駆動することによって、前記第1把持部材と前記第2把持部材とによる把持力に対する、前記突起部と前記制限部との間で把持されている複数本の前記線状部材による反力によって、前記第1把持部材および前記第2把持部材の間隔が開き、把持されている前記線状部材が下方向に向かって1本ずつ放され前記第2駆動部が、前記線状部材1本分が前記第1把持部材および前記第2把持部材の間に挟まる程度前記制限部から突出する前記第2把持面の長さを残すようにして、前記第2把持部材の上方向への移動を停止するように制御し、
前記線状部材が前記第1把持面と前記突起部とに接触する場合に、前記線状部材の断面における中心点から、前記第1把持面と前記線状部材との接点への直線と、前記中心点から、前記突起部と前記線状部材との接点への直線とがなす角度が、90度より大きく、180度よりも小さくなる、線状部材把持装置。
【請求項2】
前記第2駆動部が、前記第1把持部材および前記第2把持部材との相対位置を、前記突起部が前記制限位置に近づくように駆動した後に、前記突起部が前記制限位置から離れる方向に駆動する請求項1に記載の線状部材把持装置。
【請求項3】
前記第1把持面は、根元側把持面、先端側把持面、および、前記根元側把持面と前記先端側把持面とを接続する段差面を備え、
前記根元側把持面と前記第2把持面との距離が、前記先端側把持面と前記第2把持面との距離よりも遠い請求項1または2に記載の線状部材把持装置。
【請求項4】
前記線状部材が前記第2把持面と前記段差面とに接触する場合に、前記線状部材の断面における中心点から、前記第2把持面と前記線状部材との接点への直線と、前記中心点から、前記段差面と前記線状部材と接点への直線とがなす角度が、90度より大きく、180度よりも小さくなる請求項3に記載の線状部材把持装置。
【請求項5】
前記第2駆動部が、前記第1把持部材および前記第2把持部材との相対位置を、前記突起部が前記制限位置から離れる方向に駆動した後に、前記線状部材を把持している前記第1把持部材および前記第2把持部材が、前記第2方向における根元側の方向へ移動する請求項2に記載の線状部材把持装置。
【請求項6】
前記第2駆動部が、前記第1把持部材および前記第2把持部材との相対位置を、前記突起部が前記制限位置から離れる方向に駆動した後に、その時点での前記突起部よりも根元側の所定位置に挿入される挿入部材をさらに備える請求項に記載の線状部材把持装置。
【請求項7】
前記第1把持面と前記第2把持面とによって把持されている前記線状部材の数を認識する認識部をさらに備える請求項1~のいずれか一項に記載の線状部材把持装置。
【請求項8】
前記認識部は、前記第1把持面と前記第2把持面との距離を検出し、検出された前記距離に基づいて、前記線状部材の数を認識する請求項に記載の線状部材把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線状部材把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種工程後に得られたリード線等の線状部材は集められ、線状部材の集合体が形成される。その後、該集合体から線状部材が1本ずつ分離されて、後の処理工程へ、分離後の線状部材が順次供給される。
【0003】
線状部材の集合体から、線状部材を1本ずつ分離するための技術として、例えば、特許文献1には、線材を収容する収容部と、該線材を把持して移動させる把持部と、該収容部を変位させる可動部と、を含み、前記収容部は、前記線材を境に向かい合う第1収容片および第2収容片を有し、それら両収容片の乖離間隔を、一方向側に近づけるほど短くするようにし、かつ、その一方向側に開口を有しており、前記把持部は、向かい合う第1把持片および第2把持片を有し、それら両把持片の乖離間隔を、一方向側に近づけるほど短くさせて、その乖離間隔に、前記開口から露出する前記線材を収めることで把持し、前記可動部は、前記把持部から前記開口を乖離させるように、前記収容部を変位させる、線材供給装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-202649号公報(2013年10月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術は、前記把持部を前記開口へ向かって移動させ、前記把持部の両把持片の乖離間隔の間に、線材を挟ませるものである。前記両把持片の乖離間隔が、両把持片の根元に近い側に向かって短くなり、両把持片の根元と反対側に向かって長くなる構造を、前記把持部は有する。前記両把持片が該構造を有することにより、前記収容部に収められ、前記開口から露出した複数の線材のうち、前記両把持片の乖離間隔に1本だけの線材を把持できず、複数本の線材が把持される虞がある。それ故、線材を確実に1本だけ把持することができる装置が求められていた。
本発明の一態様は、線状部材を確実に1本だけ把持することができる装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る線状部材把持装置は、把持対象としての線状部材に当接する第1把持面を有する第1把持部材と、前記線状部材に当接し、前記第1把持面に対向する第2把持面を有するとともに、前記第2把持面から前記第1把持面側に突出する突起部を有する第2把持部材と、前記第1把持部材と前記第2把持部材との相対位置を、互いに近づくまたは遠ざかる方向である第1方向に変化させる第1駆動部、および、前記第1方向に垂直な方向である第2方向に変化させる第2駆動部と、前記第1把持部材と前記第2把持部材とに挟まれる前記線状部材の前記第2方向への移動を所定の制限位置で制限する制限部とを備える。
【0007】
前記構成によれば、第1駆動部および第2駆動部により駆動された第1把持部材および第2把持部材が複数の線状部材を把持した後、さらに各駆動部により各把持部材が駆動されることにより、複数の線状部材のうちの、1本の線状部材を、第1把持部材、第2把持部材および制限部で把持することができる。それ故、線状部材を確実に1本だけ把持することができる装置を実現する。
【0008】
一実施形態において、前記線状部材把持装置は、前記第1駆動部が、前記第1把持部材および前記第2把持部材との相対位置を、互いに近づけるように駆動した後に、前記第2駆動部が、前記第1把持部材および前記第2把持部材との相対位置を、前記突起部が前記制限位置に近づくように駆動する。
【0009】
前記構成によれば、把持された複数の線状部材の数を減少させて、第1把持部材と第2把持部材とに挟まれる線状部材を1本だけ残すように、前記第1把持部材および前記第2把持部材を駆動できる。
【0010】
一実施形態において、前記第2駆動部が、前記第1把持部材および前記第2把持部材との相対位置を、前記突起部が前記制限位置に近づくように駆動した後に、前記突起部が前記制限位置から離れる方向に駆動する。
【0011】
前記構成によれば、第1把持部材と第2把持部材とで把持している線状部材と、把持されていない他の線状部材との距離を離すことができる。
【0012】
一実施形態において、前記線状部材把持装置は、前記第1把持面は、根元側把持面、先端側把持面、および、前記根元側把持面と前記先端側把持面とを接続する段差面を備え、前記根元側把持面と前記第2把持面との距離が、前記先端側把持面と前記第2把持面との距離よりも遠い。
【0013】
前記構成によれば、第1把持面が段差面を有することにより、段差面および第2把持面に線状部材が嵌合することにより、線状部材の移動を制限できる。
【0014】
一実施形態において、前記線状部材把持装置は、前記線状部材が前記第1把持面と前記突起部とに接触する場合に、前記線状部材の断面における中心点から、前記第1把持面と前記線状部材との接点への直線と、前記中心点から、前記突起部と前記線状部材との接点への直線とがなす角度が、90度より大きく、180度よりも小さくなる。
【0015】
前記構成によれば、線状部材の移動に伴う線状部材の移動を制限できる。
【0016】
一実施形態において、前記線状部材が前記第2把持面と前記段差面とに接触する場合に、前記線状部材の断面における中心点から、前記第2把持面と前記線状部材との接点への直線と、前記中心点から、前記段差面と前記線状部材と接点への直線とがなす角度が、90度より大きく、180度よりも小さくなる。
【0017】
前記構成によれば、線状部材の移動に伴う線状部材の移動を制限できる。
【0018】
一実施形態において、前記第2駆動部が、前記第1把持部材および前記第2把持部材との相対位置を、前記突起部が前記制限位置から離れる方向に駆動した後に、前記線状部材を把持している前記第1把持部材および前記第2把持部材が、前記第2方向における根元側の方向へ移動する。
【0019】
前記構成によれば、第1把持部材および第2把持部材により把持された線状部材を線状部材把持装置から引き上げることができる。
【0020】
一実施形態において、前記第2駆動部が、前記第1把持部材および前記第2把持部材との相対位置を、前記突起部が前記制限位置から離れる方向に駆動した後に、その時点での前記突起部よりも根元側の所定位置に挿入される挿入部材をさらに備える。
【0021】
前記構成によれば、挿入部材が所定位置に挿入されることにより、把持対象ではない線状部材が把持対象の線状部材とともに持ち上げられて移動させられてしまうことを防ぐことができる。
【0022】
一実施形態において、前記第1把持面と前記第2把持面とによって把持されている前記線状部材の数を認識する認識部をさらに備える。
【0023】
前記構成によれば、第1把持面と第2把持面とによって把持されている線状部材の数を認識することにより、確実に1本の線状部材を把持できる装置を実現する。
【0024】
一実施形態において、前記認識部は、前記第1把持面と前記第2把持面との距離を検出し、検出された前記距離に基づいて、前記線状部材の数を認識する。
【0025】
前記構成によれば、第1把持面と第2把持面との距離という比較的検出しやすい検出対象に基づいて線状部材の数を認識することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、線状部材を確実に1本だけ把持することができる装置を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態における線状部材把持装置の一例を示した正面図である。
図2】本発明の一実施形態における線状部材把持装置の一例を示した側面図である。
図3】本発明の一実施形態における線状部材把持装置に含まれる制御部の、機能ブロックの一例を示すブロック図である。
図4図1における点線枠内を示す拡大図である。
図5】本発明の一実施形態における線状部材把持装置の、突起部の形状の例を示す概略図である。
図6】本発明の一実施形態における線状部材把持装置の、段差面の形状の例を示す概略図である。
図7】本発明の一実施形態に係る線状部材把持装置の動作の一連の流れを示す概略図である。
図8】本発明の一実施形態に係る線状部材把持装置の動作例による、1本の線状部材が把持される様子を示す概略図である。
図9】本発明の一実施形態に係る線状部材把持装置の動作例における、線状部材の本数の検出方法の一例を示す概略図である。
図10】本発明の一実施形態に係る線状部材把持装置の他の例を示した側面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る線状部材把持装置の動作の、一連の流れの他の例を示す概略図である。
図12】本発明の一実施形態に係る線状部材把持装置の動作例による、端子部材が設けられている1本の線状部材が把持される様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0029】
§1 適用例
図1および2を用いて、本発明が適用される場面の線状部材把持装置について説明する。図1は、本実施形態における線状部材把持装置の一例を示した正面図である。図2は、本実施形態における線状部材把持装置の一例を示した側面図である。
【0030】
本明細書において、「線状部材把持装置」とは、各種加工後に得られ、集合体として供給された複数の線状部材を、1本ずつ把持する装置を意味する。また、本実施形態では、線状部材として、電気配線としてのリード線を想定しているが、各種線状の部材であればどのようなものであってもよい。
【0031】
本実施形態に係る線状部材把持装置について、図1および図2に基づいて説明すれば以下のとおりである。本実施形態に係る線状部材把持装置1Aは、第1駆動部2、第2駆動部3、第1把持部材4、第2把持部材5および制限部6を含む。
【0032】
第1把持部材4および第2把持部材5は、前記線状部材に当接し、線状部材を把持する。図4に示すように、第1駆動部2は、第1把持部材4と第2把持部材5との相対位置を、互いに近づくまたは遠ざかる方向である第1方向に変化させる。この例では、第1方向は、第1把持面4aおよび第2把持面5aに垂直な方向となる。また、第2駆動部3は、第1把持部材4と第2把持部材5との相対位置を、第1方向に垂直な第2方向に変化させる。この例では、第2方向は、第1把持面4aおよび第2把持面5aに平行な方向となる。なお、第1把持面4aおよび第2把持面5aは、互いに完全に平行に配置されている必要はなく、許容される範囲で平行から所定の角度ずれた状態で互いに対向していてもよい。また、第1方向と第2方向とは、完全に垂直でなくてもよく、許容される範囲で垂直から所定の角度ずれた角度であってもよい。
【0033】
第1駆動部2および第2駆動部3により駆動された第1把持部材4および第2把持部材5が複数の線状部材を把持した後、さらに各駆動部により各把持部材が駆動されることにより、複数の線状部材のうちの、1本の線状部材を、第1把持部材4、第2把持部材5および制限部6で把持することができる。
【0034】
§2 構成例
〔線状部材把持装置の構成例〕
図1図2および図4を用いて、本実施形態に係る線状部材把持装置の一例について説明する。ここで、図4は、図1における点線枠内を示す拡大図である。
【0035】
図1および図2の例では、本実施形態に係る線状部材把持装置1Aは、第1駆動部2、第2駆動部3、第1把持部材4、第2把持部材5、制限部6、第1摺動部7および第2摺動部8を含む。
【0036】
第1把持部材4は、把持対象としての線状部材に当接する第1把持面4aを有する。第2把持面は、第1把持面4aに対向する第2把持面5aを有し、第2把持面5aから第1把持面4a側に突出する突起部5bを有する。
【0037】
第1把持面4aは、鉛直下方向に向かって順に、根元側把持面4b、先端側把持面4dおよび、根元側把持面4bと先端側把持面4dとを接続する段差面4cが形成されている。また、根元側把持面4bと第2把持面5aとの距離Aが、先端側把持面4dと第2把持面5aとの距離Bよりも遠い。
【0038】
第1駆動部2は、第1把持部材4と第2把持部材5との相対位置を、第1把持面4aおよび第2把持面5aに垂直な第1方向Xに変化させる。第2駆動部3は、第1把持部材4と第2把持部材5との相対位置を、第1把持面4aおよび第2把持面5aに平行な第2方向Yに変化させる。
【0039】
制限部6は、第1把持部材4と第2把持部材5との間に把持された線状部材の第2方向Yへの移動を、所定の制限位置(後述)で制限する。
【0040】
第1摺動部7は、第1把持部材4と第2把持部材5との相対位置を第1方向Xへ移動させるためのガイド部材である。第2摺動部8は、第1把持部材4と第2把持部材5との相対位置を第2方向Yへ移動させるためのガイド部材である。
【0041】
ここで、突起部5bの形状について以下に説明する。図5は、本実施形態における線状部材把持装置の、突起部5bの形状の例を示す概略図である。図5の符号101に示すように、線状部材50が第1把持面4aと突起部5b(突起面5c)とに接触する場合に、線状部材50の断面50aにおける中心点Cから、第1把持面4aと線状部材50との接点Dへの直線と、中心点Cから、突起部5b(突起面5c)と線状部材50との接点Eへの直線とがなす角度αが、90度より大きく、180度よりも小さくなる形状を、突起部5bは有する。
【0042】
線状部材50が第1把持面4aと突起部5bとに接触する場合に、角度αが90度より大きく、180度よりも小さくなる形状であれば、突起部5bの形状は特に限定されない。突起部5bの形状の例として、例えば、図5の符号102に示す突起部(突起面5d)のように、突起部の断面形状が略部分円を含むような形状であってもよい。換言すれば、図5の符号103および104に示すような、角度αが90度以下となり得るような形状(例えば、突起面5fおよび5eのように、面の法線方向が鉛直方向よりも第2把持面5a側に傾いているような突起面上の位置で線状部材50が接触する可能性があるような形状)でなければ、突起部の形状は限定されない。以上の関係を考慮して、突起部の形状は、断面50aの長径の大きさ(または、線状部材50の種類)に応じて適宜決定される。
【0043】
また、段差面4cの形状について以下に説明する。図6は、本実施形態における線状部材把持装置の、段差面4cの形状の例を示す概略図である。図6の符号201に示すように、線状部材50が第2把持面5aと段差面4cとに接触する場合に、線状部材50の断面50aにおける中心点Cから、第2把持面5aと線状部材50との接点Fへの直線と、中心点Cから、段差面4cと線状部材50と接点Gへの直線とがなす角度βが、90度より大きく、180度よりも小さくなる形状を、段差面4cは有する。
【0044】
線状部材50が第2把持面5aと段差面4cとに接触する場合に、角度βが、90度より大きく、180度よりも小さくなる形状であれば、段差面4cの形状は特に限定されない。段差面4cの形状の例として、例えば、図6の符号202に示す段差面4eのように、段差面の断面形状が弧を描くような形状であってもよい。換言すれば、図6の符号203や符号204に示すような、角度βが90度以下となり得るような形状(例えば、段差面4gや段差面4fのように、面の法線方向が鉛直方向よりも根元側把持面4b側に傾いているような段差面上の位置で線状部材50が接触する可能性があるような形状)でなければ、段差面の形状は限定されない。以上の関係を考慮して、段差面の形状は、断面50aの長径の大きさ(または、線状部材50の種類)に応じて適宜決定される。
【0045】
第1駆動部2、第2駆動部3、第1把持部材4、第2把持部材5、第1摺動部7および第2摺動部8は、各構造部材(例えば、構造部材9、10、12、14および15)を介して接続される。制限部6は、例えば、第1把持部材4における根元側把持面4bのさらに根元側に設けられる。
【0046】
〔線状部材把持装置に含まれる制御部の、機能ブロックの例〕
図3を用いて、本実施形態に係る線状部材把持装置に含まれる制御部の、機能ブロックの一例について説明する。図3は、線状部材把持装置1Aに含まれる制御部の、機能ブロックの一例を示すブロック図である。
【0047】
図3の例では、本実施形態に係る線状部材把持装置1Aは、制御部30を含む。制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。
【0048】
制御部30は、検出部301、認識部302および駆動制御部303を含む。検出部301は、第1把持面4aと第2把持面5a(または突起面5c)との距離(例えば、図4における距離Aまたは距離B)を検出する機能ブロックである。認識部302は、検出された前記距離に基づいて、第1把持面4aと第2把持面5aとによって把持されている線状部材の数を認識する機能ブロックである。なお、検出部301および認識部302は、線状部材把持装置1Aと通信ネットワークを介して接続される外部の制御装置に設けられる構成としてもよい。外部の制御装置としては、例えばPLC(Programmable Logic Controller)やIPC(Industrial PC)などが挙げられる。
【0049】
駆動制御部303は、第1駆動部2および第2駆動部3を駆動させる機能ブロックである。駆動制御部303は、検出部301および認識部302の処理に応じて、第1駆動部2および第2駆動部3の駆動および停止を制御する。
【0050】
§3 動作例
図7を用いて、本実施形態に係る線状部材把持装置の動作例を説明する。図7は、本実施形態に係る線状部材把持装置1Aの動作の一連の流れを示す概略図である。なお、説明の便宜上、図7図1における点線枠内の構成のみを図示している。また、図7において、紙面向かって左右方向となる水平方向を第1方向X、紙面向かって上下方向となる鉛直方向を第2方向Yとする。
【0051】
まず、各種加工後に得られ、複数の線状部材が集められる。集められた線状部材が線状部材把持装置1Aに供給されると、第1把持部材4と第2把持部材5との相対位置を互いに近づけるように、第1把持部材4および第2把持部材5が第1方向Xへ、第1駆動部2により駆動される。これにより、複数本の線状部材(断面50a、50bおよび50c)が把持される(符号401)。
【0052】
前記複数本の線状部材が両把持部材により把持されると、両把持部材に対して、第1方向Xへの把持力が第1駆動部2の駆動により加えられることにより、第1把持部材4と第2把持部材5との相対位置が互いにさらに近づく。また、突起部5bが制限部6付近(以降、制限位置と称する)に近づくように、第2駆動部3により第2把持部材5が鉛直上方向へ駆動される(符号402、403)。第1把持部材4と第2把持部材5との間で複数本の線状部材が摺り合わされることで、該複数本の線状部材が、第2方向Yに向かって一列に整列される。また、第1把持部材4と第2把持部材5との間で把持された、該複数本の線状部材は、第2把持部材5の、鉛直上方向への移動に伴い、第2把持面5a上を転がりながら、鉛直上方向へ移動する。該移動の際、突起部5bにより線状部材(断面50c)が、鉛直下方向への移動が制限される。これにより、両把持部材に把持された複数本の線状部材が放されることなく、複数本の線状部材は上方向へ移動する。
【0053】
複数本の線状部材が上方向へ移動し続けると、一列に並んだ複数の線状部材のうち、制限部6に最も接近している線状部材(断面50a)が制限部6の当接面6a付近(制限位置)へ到達する。鉛直上方向へ駆動された第2把持部材5への、第2方向Yへの移動と、第1把持部材4および第2把持部材5との、第1方向Xに向かって生じる把持力とのバランスとにより、両把持部材の間隔が開き、線状部材(断面50bおよび50c)が、鉛直下方向へ向かって、1本ずつ両把持部材から放される(符号404、405)。このとき、線状部材1本分が両把持部材の間に挟まる程度の、第2把持面の長さを残すようにして、第2把持部材5の上方向への移動が、駆動制御部より停止される。このため、両把持部材の間には、線状部材が1本だけ残される。
【0054】
両把持部材の間に、線状部材が1本だけ残された後、突起部5bが前記制限位置から離れるように、鉛直下方向へ第1把持部材4および第2把持部材5の相対位置を駆動する。具体的に、第2把持部材5が駆動され、駆動前の元の位置(符号401に示す、第2把持部材5の位置)に戻る(符号406、407)。このとき、両把持部材の間に把持された断面50aは、第2把持部材5の第2方向Yへの駆動に伴い、第2把持面5a上を転がりながら、鉛直下方向へ移動する。鉛直下方向へ移動した断面50aは、段差面4cと接する。段差面4c、根元側把持面4bおよび第2把持面5aに線状部材(断面50a)が嵌合することにより、断面50aの、鉛直下方向への移動が制限される。
【0055】
第2駆動部3が、第1把持部材4および第2把持部材5との相対位置を、突起部5bが前記制限位置から離れる方向に駆動した後に、線状部材(断面50a)を把持している第1把持部材4と第2把持部材5とを、前記線状部材を把持している第1把持部材4および第2把持部材5が、第2方向Yにおける根元側の方向(上方向)へ移動するように駆動される。この移動により、線状部材(断面50a)が線状部材把持装置1Aの上部へ引き上げられる。
【0056】
なお、符号401から符号407迄の一連の動作で、基本的には線状部材は1本だけ把持された状態になるが、線状部材が2本以上残る可能性が0ではない状況もありうる。この場合、例えば符号403から符号407のステップを2回実行するようにすれば、線状部材が2本以上残る可能性をほぼ0にすることができる。
【0057】
以下に、図12を用いて、本実施形態に係る動作例による、1本の線状部材が把持される様子の例を説明する。図12は、本実施形態に係る線状部材把持装置の動作例による、端子部材53aが設けられている1本の線状部材53が把持される様子を示す概略図である。なお、符号801および802の、左側の図は、線状部材を把持しているときの、線状部材の延伸方向に垂直な方向から見た第1把持部材4の側面図を示す。また、符号801および802の、右側の図は、線状部材を把持しているときの、線状部材の延伸方向から見た第1把持部材4および第2把持部材の正面図を示す。
図12の符号801に示すように、まず、1本の線状部材53を第1把持部材4および第2把持部材5とで左右方向から挟むことにより、線状部材53の左右方向の傾きをなくす。1本の線状部材53を第1把持部材4および第2把持部材5とで挟んだ後、図12の符号802に示すように、挟んだ線状部材53が制限部6(不図示)まで持ち上げられることにより、線状部材53の上下方向の傾きをなくす。
【0058】
ここで、本実施形態に係る線状部材把持装置1Aは、図12の符号802に示すように、突起部5bの突起面5gおよび制限部6の当接面6a(不図示)とで線状部材53を把持する。これにより、線状部材53を略水平方向と平行の状態になるように把持できる。
【0059】
また、図8を用いて、本実施形態に係る動作例による、1本の線状部材が把持される様子の例を以下に説明する。なお、符号501から503の、左側の図は、線状部材を把持しているときの、線状部材の延伸方向に垂直な方向から見た第1把持部材4の側面図を示す。また、符号501から503の、右側の図は、線状部材を把持しているときの、線状部材の延伸方向から見た第1把持部材4および第2把持部材の正面図を示す。
【0060】
把持対象の線状部材の端部に、例えば図8に示されるような各種部材(例えば、端子部材51aおよび52a等)が接続されている場合、符号501に示すように該部材同士が引っかかることにより、線状部材同士が絡まることがある。
【0061】
これに対して、本実施形態に係る線状部材把持装置1Aは、以下のような動作により、上記の線状部材同士の絡みをほどくことができる。まず符号502に示すように、第2把持部材5が鉛直下方向へ駆動される。第2把持部材5の鉛直下方向への移動に伴い、第2把持面5aと接触している線状部材51が鉛直下方向へ回転し移動する。また、該移動により、線状部材52も回転し、それに伴い端子部材52aも回転する。そのため、端子部材51aと端子部材52aとの引っかかりが外れ、線状部材51と線状部材52との絡まりがほどかれる(符号503)。
【0062】
その後、第2把持部材5が鉛直下方向へ駆動される。第2把持部材5の駆動に伴い、線状部材52が鉛直下方向へ移動することにより、線状部材52が両把持部材から放される(符号503)。
【0063】
なお、図7に示す動作例において、符号401から符号405迄の一連の動作で、両把持部材の間に、線状部材が1本も残らなかった場合も、符号401から符号405迄の一連の動作が再度行われることにより、両把持部材の間に、線状部材を1本のみ残すことができる。
【0064】
符号401から符号405迄の一連の動作で、両把持部材に把持された線状部材の本数は、第1把持面4aと第2把持面5aとの距離を検出部301が検出し、検出された前記距離に基づいて、認識部302が第1把持面4aと第2把持面5aとによって把持されている線状部材の数を認識する。ここで、本実施形態に係る線状部材把持装置の動作例における、線状部材の本数の検出方法と、線状部材の数の認識の一例を、以下に説明する。
【0065】
図9は、本実施形態に係る線状部材把持装置1Aの動作例における、線状部材の本数の検出方法の一例を示す概略図である。図9の符号601から604に示す通り、第1把持面4aと第2把持面5aとの距離Iまたは第1把持面4aと突起面5cとの距離H、JおよびKを、検出部301が検出する。
【0066】
検出部301により検出された距離に基づいて、第1把持面4aと第2把持面5a(突起面5c)によって把持されている線状部材の数を、認識部302が認識する。例えば距離Hであることが検出部301によって検出された場合、認識部302は、線状部材が2本把持されている状態であると認識する。また、例えば距離Iまたは距離Jであることが検出部301によって検出された場合、認識部302は、線状部材が1本把持されている状態であると認識する。また、例えば距離Kであることが検出部301によって検出された場合、認識部302は、線状部材が1本も把持されていない状態であると認識する。認識部302により認識された線状部材の数に応じて、把持動作の成功/失敗が判断され、成功の場合には線状部材の搬送動作が行われ、失敗の場合には再度の把持動作を行う、などの制御が行われる。
【0067】
検出部301による各距離の検出を可能にする装置は特に限定されない。例えば、近接センサや光線センサなどによるセンシング結果が検出部301に送信される構成、および、第1把持部材4および第2把持部材5とのX方向の相対位置を変更させる駆動モータのエンコーダ出力やシリンダセンサ出力などが検出部301に送信される構成などが挙げられる。
【0068】
また、上記の例では、認識部302は、検出部301によって検出された距離に基づいて把持されている線状部材の本数を認識しているが、線状部材の本数を直接検出できるセンサからの出力を用いてもよい。例えば、近接センサや光電センサなどによるセンシング結果が認識部302に送信され、認識部302がセンシング結果から直接線状部材の本数を認識してもよい。
【0069】
§4 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、前記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、前記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略する。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0070】
図10は、本実施形態に係る線状部材把持装置の他の例を示した側面図である。§2で説明した線状部材把持装置1Aに備えられる構成に加えて、線状部材把持装置1Bでは、図10のように、挿入部材17が備えられていてもよい。
【0071】
以下、図11を用いて、挿入部材17が備えられている線状部材把持装置1Bの動作の例を説明する。図11は、本実施形態に係る線状部材把持装置1Bの動作の、一連の流れの他の例を示す概略図である。ここで、図11において、水平方向を第1方向X、鉛直上下方向を第2方向Yとする。
【0072】
集められた線状部材が線状部材把持装置1Bに供給された後の動作例のうち、図11の符号701から707迄に示される動作は、図7に示す符号401から407迄に示される動作と同一であるため、ここでは説明を省略する。図11の符号706等に示されるように、制限位置から離れる方向に第2把持部材5が駆動される。その後、突起部5bが制限位置から離れる方向に駆動した後に、第2把持部材5が鉛直下方向へ駆動される。即ち、第2駆動部3が、第1把持部材4および第2把持部材5との相対位置を、突起部5bが制限位置から離れる方向に駆動する。その後、駆動後の時点での突起部5bよりも根元側(上方向)の所定位置に、挿入部材17が挿入される(符号708)。その後、第2駆動部3が、第1把持部材4および第2把持部材5を鉛直上方向へ持ち上げて、把持している1本の線状部材を次の工程の場所へ移動させる。(符号709)。
【0073】
ここで、50aで示される線状部材(把持対象の線状部材)と50bで示される線状部材(把持対象ではない線状部材)とが絡み合っている場合、挿入部材17が挿入されない場合には、符号709のステップにおいて、50bで示される線状部材も持ち上げられて移動させられてしまうケースが考えられる。これに対して、上記のように挿入部材17が所定位置に挿入されることにより、把持対象ではない線状部材が把持対象の線状部材とともに持ち上げられて移動させられてしまうことを防ぐことができる。
【0074】
なお、§2および§4において、第2方向Yへ、第2把持部材5が駆動された例を示したが、第1把持部材4および第2把持部材5の駆動の仕方はこれに限定されない。例えば、第2把持部材5が固定されて、第1把持部材4が第2方向Yへ駆動されることにより、複数の線状部材から1本の線状部材が把持されるような動作が行われてもよい。また、第1把持部材および第2把持部材がそれぞれ第2方向Yへ駆動されることにより、複数の線状部材から1本の線状部材が把持されるような動作が行われてもよい。
【0075】
また、§2および§4において、第1方向Xへ、第1把持部材4および第2把持部材5が互いに接近するように駆動されることにより、複数の線状部材を把持する動作例を示したが、第1把持部材4および第2把持部材5の駆動の仕方はこれに限定されない。例えば、第1把持部材4が固定されて、第2把持部材5のみが第1方向Xへ駆動されることにより、複数の線状部材が把持されるような動作が行われてもよい。また、第2把持部材5が固定されて、第2把持部材5のみが第1方向Xへ駆動されることにより、複数の線状部材が把持されるような動作が行われてもよい。
【0076】
さらに、§2および§4において、第2把持部材5が第2方向Yへ駆動されることにより、複数の線状部材から1本の線状部材を残す動作例を説明したが、両把持部材から複数の線状部材を放すために駆動される方向は、第2方向に限定されない。具体的に、図2等に示す線状部材把持装置は、第1把持部材および第2把持部材が鉛直上下方向に延伸するように設けられている。これに対し、第1方向Xに複数の線状部材が両把持部材から放されるように、第1把持部材および第2把持部材が水平方向に延伸するように設けられていてもよい。
【0077】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1A、1B 線状部材把持装置
2 第1駆動部
3 第2駆動部
4 第1把持部材
4a 第1把持面
4b 根元側把持面
4c、4e、4f、4g 段差面
4d 先端側把持面
5 第2把持部材
5a 第2把持面
5b 突起部
5d、5e、5f、5g 突起面
6 制限部
6a 当接面(制限位置)
7 第1摺動部
8 第2摺動部
17 挿入部材
50、51、52、53 線状部材
A 根元側把持面と第2把持面との距離
B 先端側把持面と第2把持面との距離
C 中心点
D 第1把持面と線状部材との接点
E 突起部と線状部材との接点
F 第2把持面と線状部材との接点
G 段差面と線状部材と接点
α 角度
β 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12