(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】インク吐出ヘッドのメンテナンス装置、インクジェット記録装置及びインク吐出ヘッドのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231121BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231121BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20231121BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20231121BHJP
B05D 1/26 20060101ALN20231121BHJP
B05D 3/10 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/165 301
B41J2/01 401
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D1/26 Z
B05D3/10 F
(21)【出願番号】P 2019176445
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 浩章
(72)【発明者】
【氏名】川上 創
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/153910(WO,A1)
【文献】特開2012-171345(JP,A)
【文献】特開2007-275794(JP,A)
【文献】特開2014-168853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B05C 5/00
B05C 11/10
B05D 1/26
B05D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を貯留する洗浄液貯留部と、
液体を含浸可能な外周面を有し、相対移動するインク吐出ヘッドのインク吐出面を、回転する前記外周面で払拭する払拭動作を行う払拭部材と、
前記払拭部材に含浸された液体を前記洗浄液貯留部に絞り出す絞り部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記払拭部材の一部が前記洗浄液貯留部の前記洗浄液に浸漬した状態で、前記払拭部材により第1の前記払拭動作を行わせ、
前記第1の払拭動作の終了後に、前記払拭部材に含浸された液体を前記絞り部により絞り出させながら、かつ前記第1の払拭動作時よりも前記インク吐出面から前記洗浄液貯留部の前記洗浄液の液面までの距離が大きい状態で、前記払拭部材により第2の前記払拭動作を行わせ、
前記第1の払拭動作を行わせる場合には、前記洗浄液貯留部における洗浄液の泡立ちを抑制するための抑制制御を行う
ことを特徴とするインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記洗浄液貯留部における前記洗浄液の量を前記第1の払拭動作時より低減させた状態で、前記払拭部材により前記第2の払拭動作を行わせることを特徴とする請求項1に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記払拭部材が前記洗浄液貯留部の前記洗浄液に浸漬していない状態で、前記払拭部材により前記第2の払拭動作を行わせることを特徴とする請求項1又は2に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記払拭部材により前記第1の払拭動作を行わせる場合に、前記絞り部が前記払拭部材から単位時間当たりに絞り出す液体の量を所定の基準量以下に調整する前記抑制制御を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記払拭部材により前記第1の払拭動作を行わせる場合に、前記絞り部が前記払拭部材から液体を絞り出さないようにする前記抑制制御を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記払拭部材により前記第1の払拭動作を行わせる場合に、前記払拭部材の回転速度を、前記第2の払拭動作における回転速度より遅くする前記抑制制御を行うことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記払拭部材により前記第2の払拭動作を行わせる場合に、前記払拭部材のうち前記絞り部に当接した部分が鉛直方向最上部に向かう回転方向で前記払拭部材を回転させ、
前記払拭部材により前記第1の払拭動作を行わせる場合に、前記払拭部材を、前記第2の払拭動作における前記回転方向とは逆方向に回転させる前記抑制制御を行うことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項8】
第1の前記洗浄液貯留部、第1の前記払拭部材、及び第1の前記絞り部を有する第1のユニットと、
第2の前記洗浄液貯留部、第2の前記払拭部材、及び第2の前記絞り部を有する第2のユニットと、
を備え、
前記制御部は、前記第1のユニットの前記第1の払拭部材により前記第1の払拭動作を行わせ、前記第2のユニットの前記第2の払拭部材により前記第2の払拭動作を行わせることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項9】
前記洗浄液は純水であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項10】
前記洗浄液は、pH調整剤、低揮発成分、及び消泡剤の少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1~
8のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第2の払拭動作の終了後に前記払拭部材を前記洗浄液貯留部の前記洗浄液に浸漬させることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項12】
前記インク吐出ヘッドと、
請求項1~11のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置と、
前記メンテナンス装置の前記払拭部材と前記インク吐出ヘッドとを前記インク吐出面に沿う方向に相対移動させる移動部と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記第2の払拭動作における前記相対移動の速度が、前記第1の払拭動作における前記相対移動の速度より遅くなるように前記移動部を制御する移動制御部を備えることを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
洗浄液を貯留する洗浄液貯留部と、液体を含浸可能な外周面を有し、相対移動するインク吐出ヘッドのインク吐出面を、回転する前記外周面で払拭する払拭動作を行う払拭部材と、前記払拭部材に含浸された液体を前記洗浄液貯留部に絞り出す絞り部と、を備えたメンテナンス装置によるインク吐出ヘッドのメンテナンス方法であって、
前記払拭部材の一部が前記洗浄液貯留部の前記洗浄液に浸漬した状態で、前記払拭部材により第1の前記払拭動作を行わせる第1の払拭ステップと、
前記第1の払拭動作の終了後に、前記払拭部材に含浸された液体を前記絞り部により絞り出させながら、かつ前記第1の払拭動作時よりも前記インク吐出面から前記洗浄液貯留部の前記洗浄液の液面までの距離が大きい状態で、前記払拭部材により第2の前記払拭動作を行わせる第2の払拭ステップと、
前記第1の払拭動作を行わせる場合に、前記洗浄液貯留部における洗浄液の泡立ちを抑制するための抑制制御を行う抑制ステップと、
を含むことを特徴とするインク吐出ヘッドのメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出ヘッドのメンテナンス装置、インクジェット記録装置及びインク吐出ヘッドのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク吐出ヘッドのノズルからインクを吐出して記録媒体の所望の位置に着弾させることで画像を記録するインクジェット記録装置がある。インク吐出ヘッドのインク吐出面(ノズルの開口部が形成されたノズル開口面)にインクが付着すると、このインクが記録媒体に滴下して記録媒体の汚損が生じたり、付着したインクがノズルの開口部の一部を塞いだ状態で固化してインクの吐出不良が生じたりする。このため、インクジェット記録装置では、洗浄液を含浸させた払拭部材によりインク吐出ヘッドのインク吐出面を払拭してクリーニングするメンテナンス方法が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ブレードによりインク吐出面のインクを掻き取りつつ、払拭部材としての円筒形状のクリーニングローラーを回転させながらインク吐出面に圧接させて払拭するメンテナンス方法が開示されている。引用文献1に記載の方法では、洗浄液で満たされた貯留部に払拭部材の一部を浸して払拭部材に洗浄液を含浸させ、払拭部材に含浸された洗浄液を規制板により絞り出して払拭部材における洗浄液の含浸量を調節しながらインク吐出面を払拭している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、払拭部材は、洗浄液が絞り出された後、形状が復元する際に空気を取り込むため、払拭部材から洗浄液を再度絞り出す際に、洗浄液とともに空気が排出されることで洗浄液に泡が生じる。このため、洗浄液の貯留部には、払拭部材から絞り出された洗浄液の泡が滞留してしまう。この泡が、直接、又は払拭部材を介してインク吐出面に付着すると、インクの吐出不良に繋がる。よって、上記従来の技術では、洗浄液の泡に起因して適切にメンテナンスを行うことができない場合があるという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、より確実に適切なメンテナンスを行うことができるインク吐出ヘッドのメンテナンス装置、インクジェット記録装置及びインク吐出ヘッドのメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置の発明は、
洗浄液を貯留する洗浄液貯留部と、
液体を含浸可能な外周面を有し、相対移動するインク吐出ヘッドのインク吐出面を、回転する前記外周面で払拭する払拭動作を行う払拭部材と、
前記払拭部材に含浸された液体を前記洗浄液貯留部に絞り出す絞り部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記払拭部材の一部が前記洗浄液貯留部の前記洗浄液に浸漬した状態で、前記払拭部材により第1の前記払拭動作を行わせ、
前記第1の払拭動作の終了後に、前記払拭部材に含浸された液体を前記絞り部により絞り出させながら、かつ前記第1の払拭動作時よりも前記インク吐出面から前記洗浄液貯留部の前記洗浄液の液面までの距離が大きい状態で、前記払拭部材により第2の前記払拭動作を行わせ、
前記第1の払拭動作を行わせる場合には、前記洗浄液貯留部における洗浄液の泡立ちを抑制するための抑制制御を行う
ことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記制御部は、前記洗浄液貯留部における前記洗浄液の量を前記第1の払拭動作時より低減させた状態で、前記払拭部材により前記第2の払拭動作を行わせることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記制御部は、前記払拭部材が前記洗浄液貯留部の前記洗浄液に浸漬していない状態で、前記払拭部材により前記第2の払拭動作を行わせることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記制御部は、前記払拭部材により前記第1の払拭動作を行わせる場合に、前記絞り部が前記払拭部材から単位時間当たりに絞り出す液体の量を所定の基準量以下に調整する前記抑制制御を行うことを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記制御部は、前記払拭部材により前記第1の払拭動作を行わせる場合に、前記絞り部が前記払拭部材から液体を絞り出さないようにする前記抑制制御を行うことを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記制御部は、前記払拭部材により前記第1の払拭動作を行わせる場合に、前記払拭部材の回転速度を、前記第2の払拭動作における回転速度より遅くする前記抑制制御を行うことを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記制御部は、
前記払拭部材により前記第2の払拭動作を行わせる場合に、前記払拭部材のうち前記絞り部に当接した部分が鉛直方向最上部に向かう回転方向で前記払拭部材を回転させ、
前記払拭部材により前記第1の払拭動作を行わせる場合に、前記払拭部材を、前記第2の払拭動作における前記回転方向とは逆方向に回転させる前記抑制制御を行うことを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
第1の前記洗浄液貯留部、第1の前記払拭部材、及び第1の前記絞り部を有する第1のユニットと、
第2の前記洗浄液貯留部、第2の前記払拭部材、及び第2の前記絞り部を有する第2のユニットと、
を備え、
前記制御部は、前記第1のユニットの前記第1の払拭部材により前記第1の払拭動作を行わせ、前記第2のユニットの前記第2の払拭部材により前記第2の払拭動作を行わせることを特徴としている。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1~8のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記洗浄液は純水であることを特徴としている。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1~8のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記洗浄液は、pH調整剤、低揮発成分、及び消泡剤の少なくとも一部を含むことを特徴としている。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1~10のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記制御部は、前記第2の払拭動作の終了後に前記払拭部材を前記洗浄液貯留部の前記洗浄液に浸漬させることを特徴としている。
【0018】
また、上記目的を達成するため、請求項12に記載のインクジェット記録装置の発明は、
前記インク吐出ヘッドと、
請求項1~11のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置と、
前記メンテナンス装置の前記払拭部材と前記インク吐出ヘッドとを前記インク吐出面に沿う方向に相対移動させる移動部と、
を備えることを特徴としている。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2の払拭動作における前記相対移動の速度が、前記第1の払拭動作における前記相対移動の速度より遅くなるように前記移動部を制御する移動制御部を備えることを特徴としている。
【0020】
また、上記目的を達成するため、請求項14に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス方法の発明は、
洗浄液を貯留する洗浄液貯留部と、液体を含浸可能な外周面を有し、相対移動するインク吐出ヘッドのインク吐出面を、回転する前記外周面で払拭する払拭動作を行う払拭部材と、前記払拭部材に含浸された液体を前記洗浄液貯留部に絞り出す絞り部と、を備えたメンテナンス装置によるインク吐出ヘッドのメンテナンス方法であって、
前記払拭部材の一部が前記洗浄液貯留部の前記洗浄液に浸漬した状態で、前記払拭部材により第1の前記払拭動作を行わせる第1の払拭ステップと、
前記第1の払拭動作の終了後に、前記払拭部材に含浸された液体を前記絞り部により絞り出させながら、かつ前記第1の払拭動作時よりも前記インク吐出面から前記洗浄液貯留部の前記洗浄液の液面までの距離が大きい状態で、前記払拭部材により第2の前記払拭動作を行わせる第2の払拭ステップと、
前記第1の払拭動作を行わせる場合に、前記洗浄液貯留部における洗浄液の泡立ちを抑制するための抑制制御を行う抑制ステップと、
を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明に従うと、より確実に適切なメンテナンスを行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
【
図2】クリーニングユニットの詳細な構成を示す図である。
【
図3】インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】メンテナンス処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図7】変形例1に係る第2の払拭動作を説明する図である。
【
図8】変形例2に係る第1の払拭動作を説明する図である。
【
図9】変形例3に係る第1の払拭動作を説明する図である。
【
図10】変形例4に係るクリーニング部の構成及びメンテナンス動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置、インクジェット記録装置及びインク吐出ヘッドのメンテナンス方法に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、搬送部10と、画像記録部20と、クリーニングユニット30と、制御部40(
図3参照)などを備える。このうちクリーニングユニット30及び制御部40によりメンテナンス装置100(
図3参照)が構成される。
【0025】
搬送部10は、一対の搬送ローラー11と、プラテン12などを備える。
一対の搬送ローラー11は、図示しない搬送モーターの駆動によって、
図1のX方向に平行な回転軸を中心に回転する。これにより、一対の搬送ローラー11に架け渡された記録媒体Sを所定の搬送方向(
図1のY方向)に搬送する。
プラテン12は、一対の搬送ローラー11の間において上面が略水平となるように配置された板状の部材である。プラテン12は、その上面で記録媒体Sを支持する。また、プラテン12に通気孔を設けて、記録媒体Sとは反対側から空気を吸引することで記録媒体Sをプラテン12の上面に吸着させる構成としても良い。
搬送部10の構成は上記に限られず、例えば一対の搬送ローラー11の回りに無端状の搬送ベルトを架け渡し、搬送ローラー11の回転に応じて周回移動する搬送ベルトにより記録媒体Sを搬送する構成であってもよい。
【0026】
画像記録部20は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのインク吐出ヘッド21と、これら4つのインク吐出ヘッド21を保持した状態で移動可能なキャリッジ22とを備える。
【0027】
インク吐出ヘッド21は、プラテン12に対向するインク吐出面に設けられた複数のノズル211(
図2参照)の開口部から、搬送部10により搬送される記録媒体Sに対して画像データに基づいてインクを吐出する。インク吐出ヘッド21のインク吐出面では、ノズル211の開口部がY方向に一次元配列されてノズル列を構成している。なお、インク吐出ヘッド21には、ノズル211の開口部の位置が互いにY方向にずれる位置関係で、ノズル列が複数設けられていても良い。
ノズル211からインクを吐出させる方法は、特には限られないが、例えばノズル211に連通する圧力室の壁面にピエゾ素子といった圧電素子を設け、圧電素子(したがって圧力室)を変形させて圧力室内のインクに圧力変動を生じさせることでノズル211からインクを吐出する方法を用いることができる。
4つのインク吐出ヘッド21は、X方向について所定の間隔で並ぶように配列された状態でキャリッジ22に保持されている。インク吐出ヘッド21の数は、画像の記録に用いる色の数に応じて3つ以下又は5つ以上とされていても良い。
【0028】
キャリッジ22は、X方向に延在する案内部材(図示略)に沿って、キャリッジ移動部51(
図3参照)により移動可能に設けられている。インク吐出ヘッド21を保持するキャリッジ22をX方向に移動させながら各インク吐出ヘッド21からインクを吐出させる動作(主走査)を行うことで、記録媒体SのY方向についての所定範囲(ノズル列が形成されている範囲)の帯状領域にインクを着弾させて画像を記録することができる。インクジェット記録装置1は、この主走査と、記録媒体SをY方向に所定距離搬送する動作(副走査)を繰り返し行うことで、記録媒体Sの所定の領域に画像を記録する。以下では、主走査を行って画像を記録しているときのキャリッジの位置を画像記録位置A1とも記す。
【0029】
また、キャリッジ22は、インク吐出ヘッド21のインク吐出面がクリーニングユニット30と対向するメンテナンス位置A2まで、X方向に沿って移動可能となっている。すなわち、キャリッジ22は、画像記録位置A1とメンテナンス位置A2との間をX方向に往復移動可能となっている。
【0030】
クリーニングユニット30は、X方向に延びる回転軸を中心に回転するクリーニングローラー32(払拭部材)などを備え、メンテナンス位置A2に移動したインク吐出ヘッド21のインク吐出面をクリーニングローラー32により払拭して清掃する。クリーニングローラー32のX方向(長手方向)についての長さは、一のインク吐出ヘッド21のインク吐出面のX方向についての長さよりも長くなっている。
【0031】
クリーニングユニット30は、クリーニングユニット移動部52(移動部)(
図3参照)により、X方向及びY方向に移動可能に設けられている。クリーニングユニット30は、一のインク吐出ヘッド21のインク吐出面にクリーニングローラー32を当接させた状態でY方向に移動することで、当該インク吐出ヘッド21のインク吐出面をその長手方向に沿って払拭する。詳しくは、クリーニングユニット30は、一のインク吐出ヘッド21に対し、+Y方向に移動しながらインク吐出面を払拭する第1の払拭動作と、第1の払拭動作の後、-Y方向に移動しながらインク吐出面を払拭する第2の払拭動作と、を行う。第1の払拭動作及び第2の払拭動作の詳細については後述する。
また、クリーニングユニット30は、一のインク吐出ヘッド21に対する第1の払拭動作及び第2の払拭動作が終了した後、X方向に移動することで、隣のインク吐出ヘッド21のインク吐出面にクリーニングローラー32を当接させて、再度Y方向に移動してインク吐出面を払拭する。この動作を繰り返すことで、クリーニングユニット30は、4つのインク吐出ヘッド21のインク吐出面を払拭してクリーニングする。
クリーニングローラー32のX方向の幅によっては、1回のY方向への移動で2以上のインク吐出ヘッド21のインク吐出面を払拭しても良い。
【0032】
図2は、クリーニングユニット30の詳細な構成を示す図である。
クリーニングユニット30は、洗浄液貯留部31と、クリーニングローラー32と、絞り棒33(絞り部)と、洗浄液供給ポンプ34と、洗浄液排出バルブ35と、液量検出部36などを備える。
【0033】
洗浄液貯留部31は、上面が開口した直方体形状を有する容器であり、内部に洗浄液90を貯留する。洗浄液貯留部31には洗浄液供給流路311及び洗浄液排出流路312が連通している。このうち洗浄液供給流路311には洗浄液供給ポンプ34が設けられており、この洗浄液供給ポンプ34により洗浄液貯留部31に洗浄液90が供給される。また、洗浄液排出流路312には洗浄液排出バルブ35が設けられており、洗浄液排出バルブ35が開放されることで洗浄液貯留部31内の洗浄液90が外部に排出される。
なお、洗浄液貯留部31は、
図2に示した直方体形状に限られず、例えば必要に応じて側壁が傾斜していても良いし、上面の開口部や底面が矩形以外の形状を有していても良い。
【0034】
洗浄液90としては、例えば純水が用いられる。また、洗浄液90として、各種の溶剤が用いられても良い。また、洗浄液90には、洗浄力を高めるために界面活性剤等を適宜に添加しても良い。また、pH調整剤として塩基性化合物などを添加することが、インク中に含まれる酸性分含有樹脂等の再溶解及び再分散を促進するため好ましい。また、高沸点有機溶剤や親水性の高分子化合物といった低揮発成分を添加することが、洗浄液90の乾燥を抑制できるため好ましい。また、消泡剤を入れることが、洗浄液90に泡を生じ難くするという点で好ましい。
【0035】
クリーニングローラー32は、X方向に延びるローラー軸322と、ローラー軸322の周囲に設けられた円筒形状で、液体を吸収可能な吸収部材321とを有する。すなわち、クリーニングローラー32の外周面は、吸収部材321からなる。吸収部材321は、ローラー軸322に固定されており、ローラー軸322がローラー駆動部37(
図3参照)により回転駆動されることで、ローラー軸322とともに回転する。ローラー駆動部37は、ローラー軸322を
図2の回転方向とは逆方向に回転させることもできるようになっている。また、ローラー駆動部37は、ローラー軸322の回転速度を調整することができるようになっている。
洗浄液貯留部31内の洗浄液90の液量によっては、クリーニングローラー32の一部が洗浄液90に浸漬する。クリーニングローラー32は、一部が洗浄液90に浸漬した状態で回転すると、吸収部材321のうち回転に応じて洗浄液90に浸漬する部分が順に洗浄液90を吸収し、洗浄液90を含浸した状態となる。
【0036】
吸収部材321としては、例えば、スポンジ状の柔軟な多孔質材料を用いることができる。多孔質材料としては、プラスチックポリマー等からなる連続気泡を有するもの、例えばポリウレタンが挙げられる。このような材質の吸収部材321は、洗浄液90や、インク吐出ヘッド21のインク吐出面21a上のインクを吸収して含浸することができる。
ローラー軸322は、剛性が高く錆び難い材質であることが好ましく、例えば、ステンレスなどを用いることができる。
【0037】
クリーニングユニット30は、クリーニングユニット移動部52によりZ方向に上下動することが可能となっており、クリーニングローラー32がインク吐出面21aに当接する状態(
図2に示す状態)と、クリーニングローラー32がインク吐出面21aに対して下方に退避して当接しない状態(不図示)とを切り替えることができる。以下では、クリーニングローラー32がインク吐出面21aに当接するときのクリーニングユニット30の位置を「当接位置」とも記し、クリーニングローラー32がインク吐出面21aに当接しないときのクリーニングユニット30の位置を「退避位置」とも記す。当接位置は、ローラー軸322からインク吐出面21aまでの距離が、吸収部材321の厚さより小さくなるように設定されている。これにより、当接位置では、吸収部材321の外周面321aがインク吐出面21aに圧接されて、所定面積の当接面を形成するようになっている。クリーニングローラー32は、当接位置にあるクリーニングユニット30がY方向に移動することで、インク吐出面に対して相対移動しながら、吸収部材321の回転する外周面321a(上記の当接面)でインク吐出面21aを払拭して清掃する。本明細書では、クリーニングローラー32が吸収部材321の外周面321aでインク吐出面21aを払拭する動作を、払拭動作と記す。
なお、クリーニングユニット30の全体をZ方向に上下動させる態様に代えて、クリーニングユニット30内でクリーニングローラー32をZ方向に上下動させてもよい。
【0038】
絞り棒33は、吸収部材321の
図2の回転方向についてインク吐出面21aとの接触位置の上流側に配置された円柱状部材である。絞り棒33は、吸収部材321よりも硬い材料、例えば硬質ゴムやステンレスなどで構成されている。
絞り棒33は、吸収部材321の外周面を半径方向に押圧することで、吸収部材321に含浸された液体を洗浄液貯留部31に絞り出す。ここで、吸収部材321に含浸された液体には、洗浄液90、及びインク吐出面21aから拭き取ったインクの少なくとも一方が含まれる。絞り棒33は、絞り棒移動部38(
図3参照)により移動可能となっており、この移動により、クリーニングローラー32のローラー軸322との距離を変更することができる。絞り棒33とローラー軸322との距離を調節することで、絞り棒33により吸収部材321から絞り出される液体の量、すなわち吸収部材321における液体の含浸量を所望の値に調節することができる。以下では、絞り棒33が吸収部材321を押圧して吸収部材321から液体を絞り出すときの絞り棒33の位置を「押圧位置」と記し、吸収部材321に当接していないときの絞り棒33の位置を「非押圧位置」と記す。
【0039】
なお、絞り棒33は、円柱状部材に限られず、例えばへら状の板状部材としても良い。
また、絞り棒33は、X方向に延びる回転軸を中心に回転可能なものであっても良い。この場合は、吸収部材321の回転に従動して回転しながら吸収部材321を押圧することで、吸収部材321から液体を絞り出して含浸量を調節する。回転可能な絞り棒33を用いることで、吸収部材321と絞り棒33との摩擦による摩耗を低減することができる。
【0040】
液量検出部36は、洗浄液貯留部31内の洗浄液90の液面の高さを検出して、検出結果を制御部40(
図3参照)に送信する。
【0041】
図3は、インクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、制御部40と、インク吐出ヘッド21及びヘッド制御部23を有する画像記録部20と、洗浄液供給ポンプ34、洗浄液排出バルブ35、液量検出部36、ローラー駆動部37及び絞り棒移動部38を有するクリーニングユニット30と、キャリッジ移動部51と、クリーニングユニット移動部52と、搬送制御部53と、操作表示部54と、通信部55などを備え、これらの各部は、バス56を介して信号を送受信可能に接続されている。以下では、既に説明した構成要素については説明を省略する。
【0042】
制御部40は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御する。制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)と、RAM42(Random Access Memory)と、記憶部43などを備える。
【0043】
CPU41は、記憶部43に記憶されている制御プログラムを読み出して画像記録やその設定などに係る各種制御処理を行う。
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。
記憶部43は、制御プログラムや設定データなどを記憶する不揮発性メモリーを含む。また、記憶部43は、通信部55を介して外部から取得された画像記録命令(プリントジョブ)に係る設定や記録画像の画像データなどを一時的に記憶するDRAMなどを備えても良い。
【0044】
ヘッド制御部23は、インク吐出ヘッド21の圧電素子に対して適切なタイミングで画像データに応じて駆動信号を供給することにより、画像データの画素値に応じた量のインクをノズル211から吐出させる。
【0045】
クリーニングユニット30の洗浄液供給ポンプ34は、制御部40から供給される制御信号に応じて洗浄液貯留部31に洗浄液90を送液する。
【0046】
洗浄液排出バルブ35は、制御部40から供給される制御信号に応じて開閉する。制御部40は、洗浄液排出バルブ35の開放時間を調整することで、所望の量の洗浄液90を洗浄液貯留部31から排出させる。
【0047】
ローラー駆動部37は、制御部40から供給される制御信号に基づいて、クリーニングローラー32を回転させるモーターを動作させて、クリーニングローラー32を適切な速度及び回転方向で回転させる。
【0048】
絞り棒移動部38は、制御部40から供給される制御信号に基づいて、絞り棒33を移動させる移動機構のモーターに駆動信号を出力して、絞り棒33を上述した押圧位置と非押圧位置との間で移動させる。
【0049】
キャリッジ移動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて、キャリッジ22をX方向に移動させる移動機構のモーターやブレーキに駆動信号を出力し、上述の主走査に係るキャリッジ22の移動を行い、また画像記録位置A1及びメンテナンス位置A2の間でキャリッジ22を移動させる。
【0050】
クリーニングユニット移動部52は、制御部40から供給される制御信号に基づいて、クリーニングユニット30をX方向及びY方向に移動させる移動機構のモーターやブレーキに駆動信号を出力してクリーニングユニット30を移動させる。すなわち、クリーニングユニット移動部52は、メンテナンス装置100のクリーニングローラー32とインク吐出ヘッド21とをインク吐出面21aに沿う方向に相対移動させる。また、クリーニングユニット移動部52は、制御部40から供給される制御信号に基づいて、クリーニングユニット30をZ方向に移動させる移動機構のモーターやブレーキに駆動信号を出力してクリーニングユニット30を上下動させ、上述した当接位置と退避位置との間で移動させる。制御部40は、クリーニングユニット移動部52を制御する移動制御部として機能する。
【0051】
搬送制御部53は、搬送ローラー11を回転させるモーターを動作させて、搬送ローラー11を適切な速度及びタイミングで回転させる。この搬送制御部53は、制御部40と共通の構成であっても良い。
【0052】
操作表示部54は、画像記録に係るステータス情報やメニューなどを表示させるとともに、ユーザーからの入力操作を受け付ける。操作表示部54は、例えば、液晶パネルによる表示画面及び当該液晶パネルのドライバーと、液晶画面上に重ねて設けられたタッチパネルなどを備え、ユーザーによりタッチ操作がなされた位置と操作の種別に応じた操作検出信号を制御部40に出力する。
【0053】
通信部55は、所定の通信規格に従って外部機器とのデータの送受信を行う。通信部55は、利用とする通信規格に係る接続端子及び通信接続に係るドライバーのハードウェア(ネットワークカード)などを備える。
【0054】
次に、インクジェット記録装置1が有するメンテナンス装置100によるインク吐出ヘッド21のメンテナンス動作について説明する。
インク吐出ヘッド21のノズル211がインクを吐出すると、吐出したインクの一部がインク吐出面21aに付着することがある。特に、ノズル211の目詰まり等を防ぐためにノズル211から多量のインクを吐出させるパージ動作が行われた後には、インク吐出面21aにはインクがつらら状に付着することがある。また、インク吐出面21aには、インク以外の異物も付着し得る。これらのインクや異物をインク吐出面21aから除去するために、メンテナンス装置100によるメンテナンス動作が行われる。
【0055】
上述のとおり、インク吐出ヘッド21のメンテナンス動作を行う場合には、キャリッジ22をメンテナンス位置A2に移動させ、クリーニングユニット30の回転するクリーニングローラー32をインク吐出面21aに当接ながら、クリーニングユニット30を+Y方向又は-Y方向に移動させる。これにより、クリーニングローラー32による払拭動作が行われ、インク吐出面21aに付着したインクや異物が払拭されて清掃される。
【0056】
図2に示すように、吸収部材321を洗浄液90に浸漬させ、かつ絞り棒33により吸収部材321内の液体(ここでは、洗浄液90)を絞り出しながら払拭動作を行うことで、効果的にインク吐出面21aを払拭することができる。すなわち、この方法では、吸収部材321に含浸された洗浄液90が、クリーニングローラー32の回転に応じて絞り棒33により所定量絞り出された状態で、吸収部材321の外周面321aによりインク吐出面21aが払拭されるため、インク吐出面21aのインクを効率よく吸収部材321に吸収させて除去することができる。吸収部材321のうちインクを吸収した部分は、クリーニングローラー32の回転に応じて洗浄液90に浸漬される。これにより、吸収部材321内のインクが洗い流されて、再び吸収部材321が洗浄液90を含浸した状態となる。このサイクルを繰り返すことで、インク吐出面21aのインクを効果的に払拭することができる。
【0057】
しかしながら、この方法では、以下のように洗浄液貯留部31内に泡が生じて滞留する場合がある。
吸収部材321は、絞り棒33により押圧されて洗浄液90が絞り出された後、形状が復元するときに空気を内部に取り込む。この結果、次に絞り棒33により洗浄液90が絞り出されるときには、取り込んだ空気が洗浄液90とともに排出され、泡B(
図2参照)となって洗浄液貯留部31の洗浄液90の液面に滞留する。
この泡Bは、少量であれば問題ないが、洗浄液貯留部31内に多量に滞留すると、直接、又はクリーニングローラー32を介してインク吐出面21aに付着してしまう場合がある。泡Bがインク吐出面21aに付着すると、ノズル211からのインクの吐出不良に繋がる。
【0058】
一方、絞り棒33を非押圧位置に移動させた状態で払拭動作を行うことで、絞り棒33により洗浄液90が絞り出されなくなるため、泡Bの発生を抑えることができる。しかしながら、この方法では、吸収部材321のうちインク吐出面21aと接触する部分は多くの洗浄液90を含浸した状態となるため、吸収部材321にインクを吸収させることができず、クリーニング効率が落ちてインクの拭き残りが生じてしまう。
【0059】
そこで、本実施形態では、1つのインク吐出面21aに対し、第1の払拭動作、及び第2の払拭動作をこの順に行うことで、泡による問題の発生を抑えつつ、効果的にインク吐出面21aを払拭する。
このうち第1の払拭動作は、洗浄液90の泡立ちを抑えた状態で行う。換言すれば、第1の払拭動作を行う場合には、制御部40により、洗浄液の泡立ちを抑制するための抑制制御が併せて行われる。例えば、絞り棒33を非押圧位置に移動させることで、洗浄液90の泡立ちを抑える。この第1の払拭動作で払拭しきれなかったインクを、続く第2の払拭動作で払拭する。
第2の払拭動作は、吸収部材321に含浸された液体を絞り棒33により絞り出させながら、かつ第1の払拭動作時よりもインク吐出面21aから洗浄液貯留部31の洗浄液90の液面までの距離(以下では、液面乖離距離と記す)が大きい状態で行う。液面乖離距離を大きくすることで、泡がインク吐出面21aに付着する問題の発生が抑制される。
以下、第1の払拭動作及び第2の払拭動作について詳細に説明する。
【0060】
図4は、第1の払拭動作を説明する図である。
図4に示すように、第1の払拭動作は、吸収部材321の一部が洗浄液貯留部31内の洗浄液90に浸漬した状態で行われる。以下では、第1の払拭動作時における液面乖離距離をd1とする。
また、絞り棒33が非押圧位置に移動し、絞り棒33による吸収部材321内の液体の絞り出しが行われない。
【0061】
また、第1の払拭動作では、クリーニングローラー32を回転速度Vr1で回転させつつ、クリーニングユニット30を速度Vm1で+Y方向に移動させる。回転速度Vr1は、後述する第2の払拭動作時の回転速度Vr2より遅い。このように回転速度Vr1を遅くすることによっても、洗浄液90の泡立ちを抑制することができる。
クリーニングローラー32の回転方向は、+X方向から見て時計回りの方向である。換言すれば、吸収部材321の外周面321aが絞り棒33に対向した後に鉛直方向最上部に向かう回転方向である。以下では、この回転方向を正転方向と記す。
【0062】
クリーニングユニット30の+Y方向への移動に応じて、回転する吸収部材321がインク吐出面21aを払拭する。ここでは、主に、吸収部材321の外周面321aによりインク吐出面21a上のインクが+Y方向にき取られる(掃き出される)ことでインク吐出面21aからインクが除去される。これは、上述のように、吸収部材321の洗浄液90が絞り棒33により絞り出されない状態では、吸収部材321にインクがほとんど吸収されないためである。このように吸収部材321にインクが吸収されにくいため、第1の払拭動作の終了時点では、インク吐出面21aには払拭しきれなかったインクが残留し得る。
【0063】
図5は、第2の払拭動作を説明する図である。
第2の払拭動作が行われる場合には、洗浄液貯留部31から洗浄液90を排出させる。
図5の例では、吸収部材321の全体が洗浄液90に浸漬しない状態まで洗浄液90が排出される。この結果、第2の払拭動作は、液面乖離距離d2が、第1の払拭動作時の液面乖離距離d1より大きい状態で行われる。
なお、
図5では、洗浄液貯留部31に洗浄液90が一部残留した状態としているが、全ての洗浄液90を洗浄液貯留部31から排出してもよい。
【0064】
また、第2の払拭動作が行われる場合には、絞り棒33が押圧位置に移動する。よって、第2の払拭動作では、絞り棒33により吸収部材321内の液体が絞り出される。
【0065】
また、第2の払拭動作では、クリーニングローラー32を回転速度Vr2で回転させつつ、クリーニングユニット30を速度Vm2で-Y方向に移動させる。ここで、回転速度Vr2は、第1の払拭動作時の回転速度Vr1より速い。クリーニングローラー32の回転速度Vr2を速くすることで、単位時間当たりにインク吐出面21aの各部に当接する吸収部材321の外周面321aの総面積を大きくすることができる。これによって、より効率よく吸収部材321にインクを吸収させて除去することができる。
また、クリーニングユニット30の移動速度Vm2は、第1の払拭動作時の移動速度Vm1より遅い。クリーニングユニット30の移動速度Vm2を遅くすることによっても、単位時間当たりにインク吐出面21aの各部に当接する吸収部材321の外周面321aの総面積を大きくして、インクの払拭効率を向上させることができる。
クリーニングローラー32の回転方向は、第1の払拭動作時と同様、正転方向である。
【0066】
クリーニングユニット30の-Y方向への移動に応じて、回転する吸収部材321がインク吐出面21aを払拭する。ここでは主に、吸収部材321によりインク吐出面21a上のインクが吸収されることでインク吐出面21aからインクが除去される。これは、吸収部材321がインク吐出面21aに当接する直前に、絞り棒33により吸収部材321に含浸されている液体(ここでは、吸収したインク)が絞り出され、液体を効率よく吸収可能な状態で吸収部材321がインク吐出面21aに当接するためである。これにより、第1の払拭動作で払拭しきれなかったインクが効果的に拭き取られる。
【0067】
第2の払拭動作では、絞り棒33によりクリーニングローラー32からインクが絞り出される際に泡が生じ得るが、インク吐出面21aから洗浄液90の液面までの液面乖離距離d2が大きく確保されているため、泡がインク吐出面21aに接触する不具合の発生を抑えることができる。換言すれば、液面乖離距離d2は、発生した泡がインク吐出面21aに届かない距離範囲の下限値以上に設定される。
【0068】
図6は、メンテナンス動作を実行するためのメンテナンス処理の、制御部40による制御手順を示すフローチャートである。
メンテナンス処理は、所定のメンテナンス開始条件が満たされた場合に開始される。ここで、メンテナンス開始条件は、特には限られないが、例えば、画像記録部20による画像の記録動作の累積時間が所定値を超えたこと、あるいは画像の記録回数が所定値を超えたこと、などとすることができる。
【0069】
メンテナンス処理が開始されると、制御部40は、キャリッジ移動部51に制御信号を送信してキャリッジ22をメンテナンス位置A2に移動させる(ステップS101)。これにより、クリーニングユニット30のクリーニングローラー32が、一のインク吐出ヘッド21のインク吐出面21aと対向する状態となる。
【0070】
制御部40は、洗浄液供給ポンプ34を動作させて、洗浄液貯留部31に洗浄液90を供給させる(ステップS102)。ここでは、制御部40は、液量検出部36による検出結果を参照して、洗浄液貯留部31内の洗浄液90の量が所定の第1の貯留量となったところで洗浄液供給ポンプ34による送液動作を停止させる。第1の貯留量は、インク吐出面21aから洗浄液90の液面までの距離が
図4の液面乖離距離d1となる量である。これにより、吸収部材321の一部が洗浄液90に浸漬した状態となる。
【0071】
制御部40は、絞り棒移動部38に制御信号を送信して絞り棒33を非押圧位置に移動させる(ステップS103)。制御部40が絞り棒33を非押圧位置に移動させる制御は、洗浄液貯留部31における洗浄液90の泡立ちを抑制するための「抑制制御」、及び絞り棒33が吸収部材321から洗浄液90を絞り出さないようにする「抑制制御」に相当する。また、ステップS103は、抑制制御を行う「抑制ステップ」に相当する。
【0072】
制御部40は、ローラー駆動部37に制御信号を送信してクリーニングローラー32の回転動作を開始させる(ステップS104)。ここでは、制御部40は、第1の払拭動作時の設定値である回転速度Vr1でクリーニングローラー32を正転方向に回転させる。制御部40がクリーニングローラー32を回転速度Vr1で回転させる制御は、洗浄液貯留部31における洗浄液90の泡立ちを抑制するための「抑制制御」、及びクリーニングローラー32の回転速度Vr1を、第2の払拭動作における回転速度Vr2より遅くする「抑制制御」に相当し、ステップS104は、抑制制御を行う「抑制ステップ」に相当する。
【0073】
制御部40は、クリーニングユニット移動部52に制御信号を送信して、クリーニングユニット30を当接位置に移動(上昇)させ、またクリーニングユニット30を+Y方向に移動させることで、クリーニングローラー32により第1の払拭動作を実行させる(ステップS105:第1の払拭ステップ)。すなわち、制御部40は、吸収部材321の一部が洗浄液貯留部31の洗浄液90に浸漬した状態で、クリーニングローラー32により第1の払拭動作を行わせる。
【0074】
第1の払拭動作が終了すると、制御部40は、洗浄液排出バルブ35を開放させて、洗浄液貯留部31から洗浄液90を排出させる(ステップS106)。ここでは、制御部40は、液量検出部36による検出結果を参照して、洗浄液貯留部31内の洗浄液90の量が所定の第2の貯留量まで低減したところで洗浄液排出バルブ35を閉止して、洗浄液90の排出を停止させる。第2の貯留量は、インク吐出面21aから洗浄液90の液面までの距離が
図5の液面乖離距離d2となる量である。これにより、吸収部材321が洗浄液90に浸漬しない状態となる。
【0075】
制御部40は、絞り棒移動部38に制御信号を送信して絞り棒33を押圧位置に移動させる(ステップS107)。
【0076】
制御部40は、ローラー駆動部37に制御信号を送信して、クリーニングローラー32が回転速度Vr2で回転するように回転速度を調整させる(ステップS108)。
【0077】
制御部40は、クリーニングユニット移動部52に制御信号を送信して、クリーニングユニット30を-Y方向に移動させることで、クリーニングローラー32により第2の払拭動作を実行させる(ステップS109:第2の払拭ステップ)。すなわち、制御部40は、吸収部材321に含浸された液体を絞り棒33により絞り出させながら、かつ第1の払拭動作時よりも液面乖離距離が大きい状態で、クリーニングローラー32により第2の前記払拭動作を行わせる。また、制御部40は、洗浄液貯留部31における洗浄液90の量を第1の払拭動作時より低減させた状態で、クリーニングローラー32により第2の払拭動作を行わせる。ここでは、制御部40は、第2の払拭動作におけるクリーニングローラー32の移動速度Vm2(クリーニングローラー32とインク吐出ヘッド21との相対移動の速度)が、第1の払拭動作における移動速度Vm1より遅くなるようにクリーニングユニット移動部52を制御する。
【0078】
第2の払拭動作が終了すると、制御部40は、洗浄液供給ポンプ34を動作させて、洗浄液貯留部31内の洗浄液90の量が第1の貯留量となるまで洗浄液貯留部31に洗浄液90を供給させる(ステップS110)。すなわち、制御部40は、吸収部材321を洗浄液90に浸漬させる。これにより、吸収部材321に付着したインクが洗浄液90により洗い流され、清掃される。
【0079】
制御部40は、全てのインク吐出ヘッド21のクリーニングが完了したか否かを判別する(ステップS111)。いずれかのインク吐出ヘッド21のクリーニングが完了していないと判別された場合には(ステップS111で“NO”)、制御部40は、処理をステップS103に戻し、次のインク吐出ヘッド21に対して第1の払拭動作及び第2の払拭動作を行う。
【0080】
全てのインク吐出ヘッド21のクリーニングが完了したと判別された場合には(ステップS111で“YES”)、制御部40は、クリーニングユニット移動部52に制御信号を送信してクリーニングユニット30を退避位置に移動(下降)させて、クリーニングローラー32を退避させる。また、制御部40は、キャリッジ移動部51に制御信号を送信してキャリッジ22を画像記録位置A1に移動させる(ステップS112)。
ステップS112の処理が終了すると、制御部40は、メンテナンス処理を終了させる。
【0081】
(変形例1)
次に、上記実施形態の変形例1について説明する。
上記実施形態では、吸収部材321が洗浄液90に浸漬されない状態で第2の払拭動作を行ったが、本変形例では、吸収部材321の一部を洗浄液90に浸漬させた状態で第2の払拭動作を行う。その他の点は、上記実施形態と同様である。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0082】
図7は、変形例1に係る第2の払拭動作を説明する図である。
図7に示すように、本変形例では、第2の払拭動作が行われる場合に、吸収部材321の一部が洗浄液90に浸漬する液量の範囲内で洗浄液90を洗浄液貯留部31から排出させる。したがって、本変形例では、第2の払拭動作が行われるときの液面乖離距離d3は、上記実施形態の液面乖離距離d2より小さく、液面乖離距離d1より大きい。液面乖離距離d3は、液面乖離距離d2と同様、発生した泡がインク吐出面21aに届かない距離範囲の下限値以上に設定される。
【0083】
図7の状態でクリーニングユニット30を-Y方向に移動させて第2の払拭動作を行うことで、吸収部材321のうちインクを吸収した部分が洗浄液90に浸漬して洗浄される。このとき、吸収部材321は洗浄液90を含浸するが、回転に応じて絞り棒33により絞り出されるため、インク吐出面21aに当接する際には再びインクを吸収可能な状態となっている。このように、本変形例では、吸収部材321を洗浄液90で洗浄しつつ吸収部材321によりインクを吸収できるため、より効率よくインク吐出面21aを払拭して清掃することができる。
また、絞り棒33により吸収部材321から洗浄液90が絞り出される際に泡が生じ得るが、液面乖離距離d3が大きく確保されているため、泡がインク吐出面21aに接触する不具合の発生を抑えることができる。
【0084】
(変形例2)
次に、上記実施形態の変形例2について説明する。
上記実施形態の第1の払拭動作は、絞り棒33を非押圧位置に移動させ、吸収部材321から液体を絞り出さない状態で行ったが、本変形例では、絞り棒33により吸収部材321内の液体を絞り出させながら第1の払拭動作を行う。その他の点は、上記実施形態と同様である。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0085】
図8は、変形例2に係る第1の払拭動作を説明する図である。
図8に示すように、本変形例では、第1の払拭動作が行われる場合に、絞り棒33が僅かに吸収部材321を押圧するように絞り棒33の位置が調整される。詳しくは、制御部40は、絞り棒33が吸収部材321から単位時間当たりに絞り出す液体の量が所定の基準量以下となるように絞り棒33の位置を調整する。絞り棒33が吸収部材321から単位時間当たりに絞り出す液体の量を基準量以下に調整する制御は、「抑制制御」の一態様である。
ここで、上記の基準量は、絞り棒33が液体を絞り出すことにより発生する泡がインク吐出面21aに届かない範囲の上限値以下に設定される。また、上記の基準量は、第2の払拭動作時に絞り棒33が吸収部材321から単位時間当たりに絞り出す液体の量より小さい範囲で設定される。
【0086】
このように、絞り棒33により吸収部材321の液体の一部を絞り出すことで、インク吐出面21a上のインクを吸収部材321により一部吸収させることができる。よって、第1の払拭動作において、泡立ちを抑えつつ効率よくインク吐出面21aのインクを除去することができる。
また、絞り棒33が絞り出す液体の量を基準量以下に抑えると、第1の払拭動作のみではインク吐出面21aのインクを十分に払拭できない場合があるが、さらに第2の払拭動作を行うことで、より確実にインク吐出面21aのインクを払拭することができる。
【0087】
(変形例3)
次に、上記実施形態の変形例3について説明する。
本変形例では、絞り棒移動部38が設けられておらず、絞り棒33の位置が固定されている。また、第1の払拭動作において、絞り棒33を非押圧位置に移動させる抑制制御に代えて、クリーニングローラー32の回転方向を逆転させる抑制制御により洗浄液90の泡立ちが抑制される。本変形例は、これらの点で上記実施形態と異なり、その他の点は、上記実施形態と同様である。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0088】
図9は、変形例3に係る第1の払拭動作を説明する図である。
図9に示すように、本変形例では、第1の払拭動作が行われる場合に、絞り棒33の位置は押圧位置に固定されたままとなる。一方で、制御部40は、クリーニングローラー32を、第2の払拭動作における回転方向とは逆の逆転方向に回転させる。この逆転方向は、吸収部材321の外周面321aのうち絞り棒33に当接した部分がその後に鉛直方向最下部に向かう回転方向である。よって、吸収部材321のうち絞り棒33により液体を絞り出された部分は、下方に移動することとなる。このため、吸収部材321の当該部分は、形状が復元する際に、絞り出された直後の液体を再度吸収し、空気をあまり取り込むことなく液体を含浸した状態となる。したがって、次に絞り棒33により液体が絞り出されるときに吐き出される空気が少なくなるため、泡が発生しにくくなる。
本変形例において、クリーニングローラー32を逆転方向に回転させる制御は、洗浄液貯留部31における洗浄液90の泡立ちを抑制するための「抑制制御」の一態様である。
【0089】
このように、クリーニングローラー32を逆転方向に回転させることで、絞り棒33が固定されている場合であっても、第1の払拭動作において洗浄液90の泡立ちを抑えることができる。
また、クリーニングローラー32を逆転方向に回転させた場合、吸収部材321がインク吐出面21aに当接するときには吸収部材321が多量の洗浄液90を含浸した状態となるため、インクを吸収できず、インク吐出面21aのインクを十分に払拭できない場合があるが、さらに第2の払拭動作を行うことで、より確実にインク吐出面21aのインクを払拭することができる。
【0090】
(変形例4)
次に、上記実施形態の変形例4について説明する。
本変形例は、第1の払拭動作及び第2の払拭動作を、クリーニングユニット30が有する別個のユニットによりそれぞれ行う点で上記実施形態と異なり、その他の点は、上記実施形態と同様である。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0091】
図10は、変形例4に係るクリーニングユニット30の構成及びメンテナンス動作を説明する図である。
本変形例のクリーニングユニット30は、第1のユニットUAと、第1のユニットUAに対して-Y方向に隣り合う位置に設けられた第2のユニットUBとを備える。第1のユニットUAは、第1の洗浄液貯留部31A、第1のクリーニングローラー32A、及び第1の絞り棒33Aを有する。また、第2のユニットUBは、第2の洗浄液貯留部31B、第2のクリーニングローラー32B、及び第2の絞り棒33Bを有する。したがって、第1のユニットUA及び第2のユニットUBは、上記実施形態のクリーニングユニット30と同様の構成をそれぞれ備えている。
【0092】
第1のユニットUAは、上記実施形態で第1の払拭動作を行うときのクリーニングユニット30と同一の動作を行う。すなわち、第1のユニットUAでは、吸収部材321が洗浄液90に浸漬された状態となっており、第1の絞り棒33Aが非押圧位置に移動しており、第1のクリーニングローラー32Aが正転方向に回転速度Vr1で回転する。
【0093】
第2のユニットUBは、上記実施形態で第2の払拭動作を行うときのクリーニングユニット30と同一の動作を行う。すなわち、第2のユニットUBでは、吸収部材321が洗浄液90に浸漬しない状態となっており、第2の絞り棒33Bが押圧位置に移動しており、第2のクリーニングローラー32Bが正転方向に回転速度Vr2で回転する。
【0094】
制御部40は、このような構成の第1のユニットUA及び第2のユニットUBを+Y方向に移動させることで、第1のユニットUAの第1のクリーニングローラー32Aにより第1の払拭動作を行わせ、第2のユニットUBの第2のクリーニングローラー32Bにより第2の払拭動作を行わせる。これにより、第1のユニットUA及び第2のユニットUBの各々において泡による不具合の発生を抑えつつ、短時間で効果的にインク吐出面21aを払拭して清掃することができる。
【0095】
なお、第1のユニットUA及び第2のユニットUBを+Y方向に移動させて一のインク吐出ヘッド21のクリーニングを行った後に、別のインク吐出ヘッド21に対してクリーニングを行う場合には、そのまま第1のユニットUA及び第2のユニットUBを-Y方向に移動させて払拭動作を行ってもよいし、一旦
図10の左側に第1のユニットUA及び第2のユニットUBを戻してから+Y方向への払拭動作を行ってもよい。-Y方向への払拭動作を行う場合には、進行方向先頭側の第2のユニットUBにより第1の払拭動作を行い、進行方向後方側の第1のユニットUAにより第2の払拭動作を行えばよい。
常に+Y方向への払拭動作を行う場合など、第1のユニットUAが第1の払拭動作のみを行う場合には、第1のユニットUAの第1の絞り棒33Aは省略してもよい。
【0096】
以上のように、本実施形態に係るインク吐出ヘッド21のメンテナンス装置100は、洗浄液90を貯留する洗浄液貯留部31と、液体を含浸可能な外周面321aを有し、相対移動するインク吐出ヘッド21のインク吐出面21aを、回転する外周面321aで払拭する払拭動作を行うクリーニングローラー32と、クリーニングローラー32に含浸された液体を洗浄液貯留部31に絞り出す絞り棒33と、制御部40と、を備え、制御部40は、クリーニングローラー32の一部が洗浄液貯留部31の洗浄液90に浸漬した状態で、クリーニングローラー32により第1の払拭動作を行わせ、第1の払拭動作の終了後に、クリーニングローラー32に含浸された液体を絞り棒33により絞り出させながら、かつ第1の払拭動作時よりも液面乖離距離(インク吐出面21aから洗浄液貯留部31の洗浄液90の液面までの距離)が大きい状態で、クリーニングローラー32により第2の払拭動作を行わせ、第1の払拭動作を行わせる場合には、洗浄液貯留部31における洗浄液90の泡立ちを抑制するための抑制制御を行う。
これによれば、第1の払拭動作によりインク吐出面21aのインクをある程度除去した後、絞り棒33によりクリーニングローラー32の吸収部材321の液体を絞り出しながら行う第2の払拭動作により、第1の払拭動作で拭き残されたインクを吸収部材321に吸収させて効果的に払拭することができる。
また、第1の払拭動作では抑制制御が行われるため、洗浄液90の泡立ちを抑えることができる。また、第2の払拭動作では、第1の払拭動作時よりも液面乖離距離を大きくすることで、洗浄液貯留部31内に生じた泡がインク吐出面21aに付着しないようにすることができる。よって、第1の払拭動作及び第2の払拭動作のいずれにおいても、泡がインク吐出面21aに付着することに起因するインク吐出不良の発生を抑制することができる。
よって、上記構成によれば、泡による問題の発生を抑えつつ、効果的にインク吐出面21aを払拭することができるため、インク吐出ヘッド21のメンテナンスをより確実かつ適切に行うことができる。
また、第1の払拭動作及び第2の払拭動作を1つのクリーニングローラー32を用いて行うことができるため、第1の払拭動作をクリーニングローラー32とは別個の部材(例えば、ブレード)を用いて行う構成と比較して、メンテナンス装置100の構成を簡素化し、製造コストの上昇を抑えることができる。
また、洗浄液90に消泡剤を添加しなくても(又は、添加する消泡剤の量を抑制しても)、泡がインク吐出面21aに付着する不具合の発生を抑制できるため、メンテナンス装置100のランニングコストを低減することができる。
【0097】
また、制御部40は、洗浄液貯留部31における洗浄液90の量を第1の払拭動作時より低減させた状態で、クリーニングローラー32により第2の払拭動作を行わせる。これによれば、洗浄液貯留部31内から洗浄液90を排出する簡易な方法で液面乖離距離を増大させることができる。
【0098】
また、制御部40は、クリーニングローラー32が洗浄液貯留部31の洗浄液90に浸漬していない状態で、クリーニングローラー32により第2の払拭動作を行わせる。これによれば、クリーニングローラー32の吸収部材321が洗浄液90を含浸しないため、第2の払拭動作において絞り棒33により吸収部材321から絞り出される液体の量を低減させて、泡の発生を効果的に抑制することができる。
【0099】
また、制御部40は、クリーニングローラー32により第1の払拭動作を行わせる場合に、絞り棒33がクリーニングローラー32から単位時間当たりに絞り出す液体の量を所定の基準量以下に調整する抑制制御を行う(変形例2)。これによれば、第1の払拭動作において絞り棒33によりクリーニングローラー32の吸収部材321から絞り出される液体の量を低減させて、泡の発生を抑制することができる。
【0100】
また、制御部40は、クリーニングローラー32により第1の払拭動作を行わせる場合に、絞り棒33がクリーニングローラー32から液体を絞り出さないようにする抑制制御を行う。これによれば、第1の払拭動作における泡の発生をさらに効果的に抑制することができる。
【0101】
また、制御部40は、クリーニングローラー32により第1の払拭動作を行わせる場合に、クリーニングローラー32の回転速度Vr1を、第2の払拭動作における回転速度Vr2より遅くする抑制制御を行う。第1の払拭動作において、クリーニングローラー32の回転速度Vr1を遅く速くすることで、クリーニングローラー32が洗浄液90の液面を攪乱することによる泡立ちを抑えることができる。また、変形例2のように、第1の払拭動作において絞り棒33により吸収部材321から液体を絞り出す場合において、単位時間当たりに絞り出される液体及び空気の量を低減することができるため、絞り出された液体に起因する泡立ちを抑えることができる。また、クリーニングローラー32によるインク吐出面21aの摩耗を抑えることができる。
【0102】
また、制御部40は、クリーニングローラー32により第2の払拭動作を行わせる場合に、クリーニングローラー32のうち絞り棒33に当接した部分が鉛直方向最上部に向かう回転方向(正転方向)でクリーニングローラー32を回転させ、クリーニングローラー32により第1の払拭動作を行わせる場合に、クリーニングローラー32を、第2の払拭動作における回転方向とは逆方向(逆転方向)に回転させる抑制制御を行う(変形例3)。これによれば、第1の払拭動作において、クリーニングローラー32の吸収部材321のうち絞り棒33により液体を絞り出された部分は下方に移動することとなる。このため、吸収部材321の当該部分は、形状が復元する際に、絞り出された直後の液体を再度吸収し、空気をあまり取り込むことなく液体を含浸した状態となる。したがって、次に絞り棒33により液体が絞り出されるときに吐き出される空気が少なくなるため、泡が発生しにくくなる。このように、クリーニングローラー32を逆転方向に回転させることで、絞り棒33が固定されている場合であっても、第1の払拭動作時の泡の発生を抑制することができる。
【0103】
また、変形例4に係るメンテナンス装置100は、第1の洗浄液貯留部31A、第1のクリーニングローラー32A、及び第1の絞り棒33Aを有する第1のユニットUAと、第2の洗浄液貯留部31B、第2のクリーニングローラー32B、及び第2の絞り棒33Bを有する第2のユニットUBと、を備え、制御部40は、第1のユニットUAの第1のクリーニングローラー32Aにより第1の払拭動作を行わせ、第2のユニットUBの第2のクリーニングローラー32Bにより第2の払拭動作を行わせる。これによれば、短時間で効果的にインク吐出面21aを払拭して清掃することができる。
【0104】
また、洗浄液90として純水を用いることで、インク吐出面21aを効率良く、かつ効果的にクリーニングすることができる。
【0105】
また、洗浄液90は、pH調整剤、低揮発成分、及び消泡剤の少なくとも一部を含む。洗浄液90がpH調整剤を含むことで、払拭するインク中に含まれる酸性分含有樹脂等の再溶解及び再分散を促進することができる。また、洗浄液90が低揮発成分を含むことで、洗浄液90の乾燥を抑制することができる。また、洗浄液90が消泡剤を含むことで、洗浄液90の泡を生じ難くすることができる。
【0106】
また、制御部40は、第2の払拭動作の終了後にクリーニングローラー32を洗浄液貯留部31の洗浄液90に浸漬させる。これによれば、クリーニングローラー32の吸収部材321に付着したインクを洗浄液90により洗い流して清掃することができる。
【0107】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1は、インク吐出ヘッド21と、上記のメンテナンス装置100と、メンテナンス装置100のクリーニングローラー32とインク吐出ヘッド21とをインク吐出面21aに沿う方向に相対移動させるクリーニングユニット移動部52と、を備える。これによれば、泡による問題の発生を抑えつつ、効果的にインク吐出面21aを払拭することができるため、インク吐出ヘッド21のメンテナンスをより確実かつ適切に行うことができる。
【0108】
また、制御部40は、第2の払拭動作における相対移動の速度(移動速度Vm2)が、第1の払拭動作における相対移動の速度(移動速度Vm1)より遅くなるようにクリーニングユニット移動部52を制御する(移動制御部)。このように移動速度Vm2を遅くすることで、単位時間当たりにインク吐出面21aの各部に当接する吸収部材321の外周面321aの総面積を大きくして、第2の払拭動作におけるインクの払拭効率を向上させることができる。また、第1の払拭動作における移動速度Vm1を相対的に速くすることで、メンテナンス動作の時間を短縮することができる。
【0109】
また、本実施形態のインク吐出ヘッド21のメンテナンス方法は、クリーニングローラー32の一部が洗浄液貯留部31の洗浄液90に浸漬した状態で、クリーニングローラー32により第1の払拭動作を行わせる第1の払拭ステップと、第1の払拭動作の終了後に、クリーニングローラー32に含浸された液体を絞り棒33により絞り出させながら、かつ第1の払拭動作時よりもインク吐出面21aから洗浄液貯留部31の洗浄液90の液面までの距離が大きい状態で、クリーニングローラー32により第2の払拭動作を行わせる第2の払拭ステップと、第1の払拭動作を行わせる場合に、洗浄液貯留部31における洗浄液90の泡立ちを抑制するための抑制制御を行う抑制ステップと、を含む。このような方法によれば、泡による問題の発生を抑えつつ、効果的にインク吐出面21aを払拭することができるため、インク吐出ヘッド21のメンテナンスをより確実かつ適切に行うことができる。
【0110】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、第1の払拭動作におけるクリーニングローラー32の回転速度Vr1と、第2の払拭動作におけるクリーニングローラー32の回転速度Vr2とを異ならせたが、これに限られず、第1の払拭動作及び第2の払拭動作でクリーニングローラー32の回転速度を同一にしてもよい。
また、第1の払拭動作におけるクリーニングユニット30の移動速度Vm1と、第2の払拭動作におけるクリーニングユニット30の移動速度Vm2とを異ならせたが、これに限られず、第1の払拭動作及び第2の払拭動作でクリーニングユニット30の移動速度を同一にしてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、第1の払拭動作を行う場合に、絞り棒33を非押圧位置に移動させて絞り棒33が吸収部材321の液体を絞り出さないようにする払拭制御と、クリーニングローラー32の回転速度Vr1を第2の払拭動作時の回転速度Vr2より遅くする払拭制御とを行う例を用いて説明したが、これら2つの制御のうち一方を省略してもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、第2の払拭動作を行う場合に、洗浄液貯留部31から洗浄液90を排出することで液面乖離距離を増大させる例を用いて説明したが、これに限定する趣旨ではない。例えば、クリーニングローラー32の高さを維持しつつ洗浄液貯留部31のみを鉛直方向下方に移動させることで液面乖離距離を増大させてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、第1の払拭動作ではクリーニングユニット30を+Y方向に移動させ、第2の払拭動作ではクリーニングユニット30を-Y方向に移動させたが、これに限られない。例えば、+Y方向への第1の払拭動作の後にクリーニングユニット30の位置を元に戻し、第2の払拭動作において、第1の払拭動作と同一方向(+Y方向)にクリーニングユニット30を移動させてもよい。
【0114】
また、1つのインク吐出ヘッド21に対し、第1の払拭動作及び第2の払拭動作のうち少なくとも一方を2回以上行ってもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、インク吐出ヘッド21を固定し、クリーニングユニット30を移動させることで第1の払拭動作及び第2の払拭動作を行ったが、これに限られず、クリーニングユニット30を固定してインク吐出ヘッド21(キャリッジ22)を移動させることで第1の払拭動作及び第2の払拭動作を行ってもよい。この場合には、キャリッジ移動部51が、クリーニングローラー32とインク吐出ヘッド21とを相対移動させる「移動部」に相当する。
【0116】
また、上記実施形態では、クリーニングローラー32の回転軸がインク吐出面21aの長手方向と直交する構成を例に挙げて説明したが、これに限られず、クリーニングローラー32の回転軸がインク吐出面21aの長手方向と平行となるように(
図1の例では、クリーニングローラー32の回転軸がY方向と平行になるように)クリーニングローラー32を配置しても良い。この場合には、クリーニングローラー32の回転軸方向の幅を、インク吐出面の長手方向の長さより大きくすることで、クリーニングユニット30の1回の移動によりインク吐出面21aの全体を払拭することができる。
【0117】
また、上記実施形態では、インクジェット記録装置1の制御部40がクリーニングユニット30の各部の動作を制御する例を用いて説明したが、これに限られず、クリーニングユニット30内に別個の制御部を設け、この制御部によりクリーニングユニット30の各部の動作を制御するようにしても良い。
【0118】
また、インクジェット記録装置1がメンテナンス装置100を有する例を用いて説明したが、メンテナンス装置100は、インクジェット記録装置1とは別個に設けられていてもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、インク吐出ヘッド21をキャリッジ22とともに主走査して画像を記録するインクジェット記録装置1を例に挙げて説明したが、これに限定する趣旨ではなく、記録媒体Sの幅方向についての画像の記録幅に亘ってノズル列が設けられたインク吐出ヘッド(ラインヘッド)を用いて、インク吐出ヘッドを移動させずに画像を記録するシングルパス方式のインクジェット記録装置に本発明を適用しても良い。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0121】
1 インクジェット記録装置
10 搬送部
20 画像記録部
21 インク吐出ヘッド
21a インク吐出面
211 ノズル
22 キャリッジ
23 ヘッド制御部
30 クリーニングユニット
31 洗浄液貯留部
31A 第1の洗浄液貯留部
31B 第2の洗浄液貯留部
32 クリーニングローラー(払拭部材)
32A 第1のクリーニングローラー(第1の払拭部材)
32B 第2のクリーニングローラー(第2の払拭部材)
321 吸収部材
321a 外周面
322 ローラー軸
33 絞り棒(絞り部)
33A 第1の絞り棒(第1の絞り部)
33B 第2の絞り棒(第2の絞り部)
34 洗浄液供給ポンプ
35 洗浄液排出バルブ
36 液量検出部
37 ローラー駆動部
38 絞り棒移動部
40 制御部(移動制御部)
41 CPU
42 RAM
43 記憶部
51 キャリッジ移動部
52 クリーニングユニット移動部(移動部)
53 搬送制御部
54 操作表示部
55 通信部
56 バス
90 洗浄液
100 メンテナンス装置
S 記録媒体
UA 第1のユニット
UB 第2のユニット