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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】蓄エネルギー装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20231121BHJP
   F24H 7/02 20220101ALI20231121BHJP
【FI】
F28D20/00 A
F24H7/02 602B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019189588
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021063629
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 志宏
(72)【発明者】
【氏名】石川 温士
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/097932(WO,A1)
【文献】特開2005-016766(JP,A)
【文献】特開2014-047992(JP,A)
【文献】特開2017-187181(JP,A)
【文献】特開平02-115693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
F24H 7/00
F24H 15/00
F02C 6/00
F28D 19/00
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面または下部に形成された気体供給口から気体が供給され、前記気体供給口より上方から固体粒子が供給され、前記気体と前記固体粒子とを熱交換する第1熱交換器と、
前記第1熱交換器に気体を供給する気体供給部と、
前記気体供給部から送出され前記第1熱交換器に供給される気体、および、前記第1熱交換器内の気体のうち、いずれか一方または両方を、電力を消費して加熱する加熱器と、
前記第1熱交換器から排出された固気混合物を固気分離する固気分離器と、
前記固気分離器によって分離された前記固体粒子を貯留する高温槽と、
ガス供給口、および、前記ガス供給口よりも上方に設けられるガス排出口を有する低温収容部と、前記低温収容部における前記ガス供給口と前記ガス排出口との間に設けられ、収容器および前記収容器内に収容される第1潜熱蓄熱材で構成される複数の蓄熱体と、複数の前記蓄熱体の上方に設けられ、複数の孔が形成された保護板とを含み、前記固気分離器によって分離された前記固体粒子を、前記保護板と前記ガス排出口との間に貯留する低温槽と、
前記固気分離器によって分離された前記気体が有する熱エネルギーを利用する第1熱利用機器と、
前記固気分離器によって分離された気体を、少なくとも第1熱利用機器に送出する気体送出部と、
前記高温槽に貯留された前記固体粒子を前記第1熱交換器に供給する高温粒子供給部と、
前記低温槽に貯留された前記固体粒子を前記第1熱交換器に供給する低温粒子供給部と、
前記第1潜熱蓄熱材よりも相転移点が低い第2潜熱蓄熱材を収容する収容容器と、前記収容容器内に配され、前記低温槽の前記ガス供給口および前記ガス排出口に連通される管と、を含む蓄熱部と、
を備える蓄エネルギー装置。
【請求項2】
前記気体供給部、前記加熱器、前記低温粒子供給部、および、前記気体送出部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、所定の蓄熱モードにおいて、前記気体供給部を制御して前記第1熱交換器に気体を供給し、前記加熱器を駆動して前記気体を加熱し、前記低温粒子供給部を制御して前記低温槽から前記第1熱交換器に前記固体粒子を供給して、前記第1熱交換器において前記気体で前記固体粒子を加熱し、前記固気分離器によって分離された前記固体粒子を前記高温槽に供給し、前記気体送出部を制御して前記固気分離器によって分離された前記気体を前記低温槽に通過させた後、前記蓄熱部に通過させる請求項1に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記気体送出部を制御して、前記固気分離器によって分離された気体を前記低温槽、および、前記蓄熱部に通過させた後、前記加熱器に戻す請求項に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項4】
前記気体供給部、前記加熱器、前記高温粒子供給部、および、前記気体送出部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、所定の放熱モードにおいて、前記加熱器を停止し、前記気体供給部を制御して、前記蓄熱部、前記低温槽の順に気体を通過させた後、前記気体を前記第1熱交換器に供給し、前記高温粒子供給部を制御して前記高温槽から前記第1熱交換器に前記固体粒子を供給して、前記第1熱交換器において前記固体粒子で前記気体を加熱し、前記固気分離器によって分離された前記固体粒子を前記低温槽に供給し、前記気体送出部を制御して前記固気分離器によって分離された前記気体を前記第1熱利用機器に供給する請求項1からのいずれか1項に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項5】
前記加熱器は、前記第1熱交換器の壁、および、前記第1熱交換器内のいずれか一方または両方に設けられる請求項1からのいずれか1項に記載の蓄エネルギー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄エネルギー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電された電力量(以下、「発電電力量」という)と需要される電力量(以下、「需要電力量」という)とは、必ずしも一致しない。このため、電力が余剰したり(発電電力量-需要電力量 > 0)、電力が必要となったり(発電電力量-需要電力量 < 0、例えば、電力が不足)する場合がある。特に、風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーを利用した発電では、余剰する電力量や、不足する電力量が多い。
【0003】
そこで、電気ヒータが内蔵され、内部に流路が形成されたレンガブロックを備えた装置が開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術は、電力が余剰した時に電気ヒータを駆動してレンガブロックを加熱し蓄熱しておく。そして、特許文献1の技術は、電力が必要となった際(例えば、電力が不足した際)に流路に水を通過させて蓄熱した熱で加熱する。続いて、特許文献1の技術は、加熱された水(水蒸気)でタービンを回転させて発電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2008/0219651号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力グリッドの安定化(スマートグリッドの実現)のために、余剰した電力を熱に変換して蓄熱しておき、必要となった際に蓄熱した熱を利用する技術がある。
【0006】
本開示は、上記蓄熱した熱を利用する技術において、電力を熱に変換して効率よく蓄熱し、必要となった際に熱を効率よく利用することが可能な蓄エネルギー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る蓄エネルギー装置は、底面または下部に形成された気体供給口から気体が供給され、気体供給口より上方から固体粒子が供給され、気体と固体粒子とを熱交換する第1熱交換器と、第1熱交換器に気体を供給する気体供給部と、気体供給部から送出され第1熱交換器に供給される気体、および、第1熱交換器内の気体のうち、いずれか一方または両方を、電力を消費して加熱する加熱器と、第1熱交換器から排出された固気混合物を固気分離する固気分離器と、固気分離器によって分離された固体粒子を貯留する高温槽と、ガス供給口および、ガス供給口よりも上方に設けられるガス排出口を有する低温収容部と、低温収容部におけるガス供給口とガス排出口との間に設けられ、収容器および収容器内に収容される第1潜熱蓄熱材で構成される複数の蓄熱体と、複数の蓄熱体の上方に設けられ、複数の孔が形成された保護板とを含み、固気分離器によって分離された固体粒子を、保護板とガス排出口との間に貯留する低温槽と、固気分離器によって分離された気体が有する熱エネルギーを利用する第1熱利用機器と、固気分離器によって分離された気体を、少なくとも第1熱利用機器に送出する気体送出部と、高温槽に貯留された固体粒子を第1熱交換器に供給する高温粒子供給部と、低温槽に貯留された固体粒子を第1熱交換器に供給する低温粒子供給部と、第1潜熱蓄熱材よりも相転移点が低い第2潜熱蓄熱材を収容する収容容器と、収容容器内に配され、低温槽のガス供給口およびガス排出口に連通される管と、を含む蓄熱部と、を備える。
【0010】
また、蓄エネルギー装置は、気体供給部、加熱器、低温粒子供給部、および、気体送出部を制御する制御部を備え、制御部は、所定の蓄熱モードにおいて、気体供給部を制御して第1熱交換器に気体を供給し、加熱器を駆動して気体を加熱し、低温粒子供給部を制御して低温槽から第1熱交換器に固体粒子を供給して、第1熱交換器において気体で固体粒子を加熱し、固気分離器によって分離された固体粒子を高温槽に供給し、気体送出部を制御して固気分離器によって分離された気体を低温槽に通過させた後、蓄熱部に通過させてもよい。
【0011】
また、制御部は、気体送出部を制御して、固気分離器によって分離された気体を低温槽、および、蓄熱部に通過させた後、加熱器に戻してもよい。
【0012】
また、蓄エネルギー装置は、気体供給部、加熱器、高温粒子供給部、および、気体送出部を制御する制御部を備え、制御部は、所定の放熱モードにおいて、加熱器を停止し、気体供給部を制御して、蓄熱部、低温槽の順に気体を通過させた後、気体を第1熱交換器に供給し、高温粒子供給部を制御して高温槽から第1熱交換器に固体粒子を供給して、第1熱交換器において固体粒子で気体を加熱し、固気分離器によって分離された固体粒子を低温槽に供給し、気体送出部を制御して固気分離器によって分離された気体を第1熱利用機器に供給してもよい。
【0013】
また、加熱器は、第1熱交換器の壁、および、第1熱交換器内のいずれか一方または両方に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、電力を熱に変換して効率よく蓄熱し、必要となった際に熱を効率よく利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】蓄エネルギー装置を説明する図である。
図2】実施形態にかかる蓄熱体の断面図である。
図3図3Aは、実施形態にかかる蓄熱部の断面図である。図3Bは、図3AのIII線断面図の一例を示す第1の図である。図3Cは、図3AのIII線断面図の一例を示す第2の図である。
図4】蓄熱モードにおける制御部の処理を説明する図である。
図5】放熱モードにおける制御部の処理を説明する図である。
図6】第1の変形例にかかる蓄エネルギー装置を説明する図である。
図7】蓄熱モードにおける制御部の処理を説明する図である。
図8図8Aは、第2の変形例にかかる加熱器を説明する図である。図8Bは、第2の変形例にかかる加熱器を説明する図である。図8Cは、第2の変形例にかかる加熱器を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
[蓄エネルギー装置100]
図1は、蓄エネルギー装置100を説明する図である。図1に示すように、蓄エネルギー装置100は、気体供給部110と、加熱室120と、第1熱交換器130と、固気分離器140と、分配部142と、高温槽150と、高温粒子供給部152と、低温槽160と、低温粒子供給部162と、気体送出部170と、第1熱利用機器180と、第2熱交換器190と、流体供給部192と、第2熱利用機器194と、蓄熱部196と、制御部200とを含む。なお、図1中、実線の矢印は、固体粒子および固気混合物の流れを示す。図1中、破線の矢印は、流体の流れを示す。また、クロスハッチングは、固体粒子を示す。
【0018】
気体供給部110は、後述する加熱室120に気体(例えば、空気)を供給する。気体供給部110は、ブロワ112と、配管114a、114b、114cと、バルブ116a、116b、116cとを含む。ブロワ112は、吸入側が気体供給源に接続され、吐出側が配管114aに接続される。配管114aは、ブロワ112と加熱室120とを接続する。バルブ116aは、配管114aに設けられる。配管114bは、配管114aにおけるブロワ112とバルブ116aとの間から分岐され、後述する配管172cにおけるバルブ174cと蓄熱部196との間に接続される。バルブ116bは、配管114bに設けられる。配管114cは、後述する低温槽160の低温収容部160aと加熱室120とを接続する。バルブ116cは、配管114cに設けられる。
【0019】
加熱室120は、箱体122と、加熱器124とを含む。箱体122は中空形状の容器である。箱体122の上面は通気可能な分散板で構成されている。箱体122の上面は、後述する第1熱交換器130の底面としても機能する。箱体122には、気体供給部110(ブロワ112)から気体が供給される。加熱器124は、電力を消費して気体を加熱する。加熱器124は、例えば、抵抗加熱装置(電力が供給された導体から生じる熱を利用する装置)やアーク加熱装置(アーク放電の際に生じる熱を利用する装置)である。
【0020】
加熱器124は、再生可能エネルギーを利用した発電システム、および、タービン発電機を利用した発電システムのいずれか一方または両方で生成された電力を消費することができる。再生可能エネルギーを利用した発電システムは、例えば、太陽熱発電システム、太陽光発電システム、または、風力発電システムである。加熱器124が再生可能エネルギーを利用した発電システムで生成された電力を消費することで、余剰することが多い電力を効率よく熱に変換することができる。
【0021】
加熱器124は、箱体122内に配される。加熱器124は、箱体122内に供給された気体を加熱する。したがって、加熱器124が駆動される場合、気体供給部110から箱体122内に送出された気体は、加熱器124によって加熱された後、第1熱交換器130に供給される。
【0022】
第1熱交換器130は、底面または下部から気体および固体粒子が供給され、気体と固体粒子とを熱交換する。固体粒子は、後述する第1熱利用機器180の要求温度より融点が高い材料で構成される。
【0023】
固体粒子は、例えば、シリカ、アルミナ、バライト砂(重晶石、硫酸バリウム)、部分仮焼した粘土、ガラス球、回収石油触媒等である。固体粒子は、好ましくは、シリカ、および、アルミナのうちいずれか一方または両方である。固体粒子をシリカとする場合、固体粒子に要するコストを低減することができる。また、固体粒子(シリカ)として、砂漠の砂や、川砂を用いることにより、低コストかつ容易に入手することが可能となる。また、固体粒子を相対的に融点が高いアルミナとすることで、固体粒子を高温にすることができ、より高い蓄エネルギー密度とすることが可能となる。
【0024】
固体粒子は、粒径が0.01mm以上10mm以下の粒子である。固体粒子の形状に限定はなく、球形状であってもよいし、球形状でなくてもよい。
【0025】
本実施形態において、第1熱交換器130は、中空形状の容器である。第1熱交換器130の内部には、加熱器、あるいは、熱交換器が設置されることもある。第1熱交換器130には、後述する高温槽150および低温槽160から固体粒子が供給される。また、上記したように、第1熱交換器130には、加熱室120を通じて気体供給部110から気体が供給される。気体供給部110によって第1熱交換器130に供給される気体の流速は、第1熱交換器130内の固体粒子の終端速度(terminal velocity)以上である。また、固体粒子は、第1熱交換器130の底面に配される分散板(ディストリビュータ)に形成された気体供給口130aより上方から供給される。したがって、固体粒子および気体の固気混合物は、第1熱交換器130内を下部から上部(底面から上面)に向かって通過する。また、第1熱交換器130内において、固体粒子および気体の固気混合物が形成され、また、固体粒子と気体とが強く攪拌されることから、固体粒子と気体とが効率よく接触して熱交換される。
【0026】
固気分離器140は、第1熱交換器130から排出された固気混合物を固気分離する。固気分離器140は、例えば、サイクロンや、フィルタである。分配部142は、固気分離器140によって固気分離された固体粒子を高温槽150または低温槽160に分配する。分配部142は、配管144a、144bと、バルブ146a、146bとを含む。配管144aは、固気分離器140の固体粒子の排出口と、高温槽150とを接続する。バルブ146aは、配管144aに設けられる。配管144bは、固気分離器140の固体粒子の排出口と、低温槽160とを接続する。バルブ146bは、配管144bに設けられる。なお、バルブ146aとバルブ146bとは、後述する制御部200によって排他的に開閉される。
【0027】
高温槽150は、固気分離器140によって固気分離された固体粒子を貯留する。高温槽150は、例えば、ホッパである。高温粒子供給部152は、高温槽150に貯留された固体粒子を第1熱交換器130に供給する。高温粒子供給部152は、配管154と、流量調整弁156とを含む。配管154は、高温槽150の下部と第1熱交換器130の下部とを接続する。流量調整弁156は、配管154に設けられる。
【0028】
低温槽160は、固気分離器140によって固気分離された固体粒子を貯留する。低温槽160には、高温槽150とタイミングを異にして固体粒子が供給される。低温槽160は、低温収容部160aと、蓄熱ユニット160bと、保護板160cとを含む。
【0029】
低温収容部160aは、分配部142によって供給された固体粒子を収容する。低温収容部160aは、中空形状の容器である。低温収容部160aには、ガス供給口160aaと、ガス排出口160abが設けられる。ガス供給口160aaは、低温収容部160aの底部に形成される。ガス供給口160aaは、後述する配管172bに接続される。ガス排出口160abは、低温収容部160aの上部に形成される。ガス排出口160abは、配管114cに接続される。
【0030】
蓄熱ユニット160bは、自重により低温収容部160aの下部に収容される。つまり、蓄熱ユニット160bは、低温収容部160aにおけるガス供給口160aaとガス排出口160abとの間に設けられる。蓄熱ユニット160bは、複数の蓄熱体160baで構成される。蓄熱体160baは、固体粒子よりも大きい。
【0031】
図2は、本実施形態にかかる蓄熱体160baの断面図である。図2に示すように、蓄熱体160baは、収容器210と、第1潜熱蓄熱材212とを含む。収容器210(カプセル)は、内部に閉空間を備える。収容器210は、例えば、球形状である。第1潜熱蓄熱材212は、収容器210内に収容される。第1潜熱蓄熱材212は、所定の相転移点(融点)において、固体から液体、または、液体から固体に相変化する相変化物質(PCM:Phase Change Material)である。第1潜熱蓄熱材212は、熱を吸収して液体となり、熱を放出して固体となる。第1潜熱蓄熱材212は、合金を含む金属、および、金属と非金属との化合物のいずれか一方または両方である。第1潜熱蓄熱材212の相転移点は、例えば、700℃である。
【0032】
図1に戻って説明すると、保護板160cは、蓄熱ユニット160bの上方に設けられる。保護板160cは、複数の孔が形成された板である。保護板160c上に固体粒子が貯留される。つまり、固気分離器140によって分離された固体粒子は、蓄熱ユニット160bとガス排出口160abの間に貯留される。保護板160cは、蓄熱ユニット160bと固体粒子との接触を抑制する。これにより、保護板160cは、固体粒子による蓄熱体160baの摩耗を抑制することが可能となる。したがって、保護板160cは、蓄熱体160baの破損を防止することができる。
【0033】
低温収容部160a(ガス供給口160aa)には、気体供給部110(ブロワ112)または固気分離器140から流動化気体(例えば、空気)が供給される。ガス供給口160aaに供給された流動化気体は、蓄熱ユニット160bおよび保護板160cを通じて、低温収容部160a内に供給される。なお、上記したように、蓄熱ユニット160bは、複数の蓄熱体160baで構成されるため、流動化気体は、蓄熱体160ba間を通って低温収容部160aに供給される。つまり、蓄熱ユニット160b(複数の蓄熱体160ba)は、流動化気体を分散(拡散)させて上方に導く分散器(Distributor)として機能する。
【0034】
なお、気体供給部110から低温収容部160aに供給される流動化気体の流速は、固体粒子の最小流動化速度以上飛散速度未満である。また、固気分離器140から低温収容部160aに供給される流動化気体の流速は、固体粒子の最小流動化速度以上終端速度(terminal velocity)未満である。したがって、固気分離器140から供給された固体粒子は、流動化気体によって流動化し、低温収容部160a内において流動層(気泡流動層)が形成される。また、固気分離器140から低温収容部160aに供給される流動化気体の流速は、終端速度未満であるため、低温収容部160aから固体粒子が飛散することはない。また、上記したように、蓄熱体160baは、固体粒子よりも大きいため、流動化されることはない。
【0035】
低温粒子供給部162は、低温槽160に貯留された固体粒子を第1熱交換器130に供給する。低温粒子供給部162は、配管164と、流量調整弁166とを含む。配管164は、低温収容部160aの下部と第1熱交換器130の下部とを接続する。流量調整弁166は、配管164に設けられる。
【0036】
気体送出部170は、固気分離器140によって固気分離された気体を第1熱利用機器180または低温収容部160a(ガス供給口160aa)に送出する。気体送出部170は、配管172a、172b、172c、172dと、バルブ174a、174b、174c、174dとを含む。配管172aは、固気分離器140の気体の排気口と、第1熱利用機器180とを接続する。バルブ174aは、配管172aに設けられる。配管172bは、固気分離器140の気体の排気口と、低温収容部160aのガス供給口160aaとを接続する。バルブ174bは、配管172bに設けられる。配管172cは、低温収容部160aのガス排出口160abと、後述する蓄熱部196とを接続する。バルブ174cは、配管172cに設けられる。配管172dは、蓄熱部196と、配管172bにおけるバルブ174bとガス供給口160aaとの間とを接続する。つまり、蓄熱部196は、配管172d、および、配管172bを通じて、低温収容部160aのガス供給口160aaに連通される。バルブ174dは、配管172dに設けられる。
【0037】
第1熱利用機器180は、固気分離器140によって分離された気体が有する熱エネルギーを利用する機器である。第1熱利用機器180は、例えば、ガスタービン発電機、蒸気タービン発電機(ボイラ)、蒸気を提供するボイラ、炉(ファーネス、キルン)、空調機器である。
【0038】
第2熱交換器190は、配管144bにおけるバルブ146bと低温収容部160aとの間に設けられる。第2熱交換器190は、配管144bを通過する固体粒子と流体(例えば、水、水蒸気、空気、燃焼排ガス)とを熱交換する。第2熱交換器190は、固体粒子の流動層を形成する構成であってもよいし、固体粒子の移動層を形成する構成であってもよい。第2熱交換器190は、伝熱配管190aを有する。伝熱配管190aは、固体粒子内(固体粒子の流動層内または移動層内)を通過する。流体は、伝熱配管190aを通過する。流体供給部192は、第2熱交換器190に流体を通過させ、第2熱交換器190によって熱交換(加熱)された流体を第2熱利用機器194に供給する。流体供給部192は、例えば、ポンプである。
【0039】
第2熱利用機器194は、第2熱交換器190によって加熱された流体が有する熱エネルギーを利用する機器である。第2熱利用機器194は、例えば、ガスタービン発電機、蒸気タービン発電機(ボイラ)、蒸気を提供するボイラ、炉(ファーネス、キルン)、空調機器である。
【0040】
蓄熱部196は、配管172c(ガス排出口160ab)および配管172d(ガス供給口160aa)に連通される。排気管196aは、一端が配管172dに接続され、他端が開放される。バルブ196bは、排気管196aに設けられる。
【0041】
図3Aは、本実施形態にかかる蓄熱部196の断面図である。図3Bは、図3AのIII線断面図の一例を示す第1の図である。図3Cは、図3AのIII線断面図の一例を示す第2の図である。
【0042】
図3Aに示すように、蓄熱部196は、収容容器220と、第2潜熱蓄熱材222、複数の管230と、入口マニホールド232と、出口マニホールド234とを含む。収容容器220は、内部に閉空間を備える。収容容器220は、例えば、円筒形状(図3B参照)、または、角筒形状(図3C参照)である。第2潜熱蓄熱材222は、収容容器220内に収容される。第2潜熱蓄熱材222は、相変化物質である。第2潜熱蓄熱材222は、熱を吸収して液体となり、熱を放出して固体となる。第2潜熱蓄熱材222は、第1潜熱蓄熱材212よりも相転移点が低い。第2潜熱蓄熱材222は、例えば、パラフィンである。第2潜熱蓄熱材222の相転移点は、例えば、150℃である。
【0043】
管230は、収容容器220内に配される。管230は、第2潜熱蓄熱材222に囲繞される。管230は、例えば、円筒形状(図3B参照)、または、角筒形状(図3C参照)である。入口マニホールド232は、複数の管230と配管172cとを連通する。出口マニホールド234は、複数の管230と配管172dとを連通する。
【0044】
図1に戻って説明すると、制御部200は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。制御部200は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。制御部200は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、蓄エネルギー装置100全体を管理および制御する。本実施形態において、制御部200は、気体供給部110(ブロワ112、バルブ116a、116b、116c)、加熱器124、分配部142(バルブ146a、146b)、高温粒子供給部152(流量調整弁156)、低温粒子供給部162(流量調整弁166)、気体送出部170(バルブ174a、174b、174c、174d)、流体供給部192、バルブ196bを制御する。
【0045】
本実施形態において、制御部200は、電力が余剰(発電電力量-需要電力量 > 所定値(例えば0))する期間、余剰した電力を熱エネルギーに変換して蓄熱する(蓄熱モード)。一方、制御部200は、熱あるいは電力が必要なとき、蓄熱した熱エネルギーを第1熱利用機器180、第2熱利用機器194で利用する(放熱モード)。なお、初期状態において、ブロワ112、加熱器124、流体供給部192は停止しており、バルブ116a、116b、116c、146a、146b、174a、174b、174c、174d、196b、流量調整弁156、166は閉弁されている。また、初期状態において、固体粒子は、低温槽160(低温収容部160a)に貯留されている。以下、蓄熱モードおよび放熱モードそれぞれにおける制御部200の処理について説明する。
【0046】
[蓄熱モード]
図4は、蓄熱モードにおける制御部200の処理を説明する図である。なお、理解を容易にするために、図4中、蓄熱モードにおいて利用されない構成を省略する。また、クロスハッチングは、固体粒子を示す。
【0047】
制御部200は、バルブ116b、116c、146b、174a、174d、流量調整弁156を閉弁する。制御部200は、流体供給部192を停止する。また、図4に示すように、制御部200は、ブロワ112、加熱器124を駆動する。また、制御部200は、バルブ116a、146a、174b、174c、196bを開弁する。制御部200は、流量調整弁166を開弁して開度を調整する。
【0048】
そうすると、加熱器124によって余剰の電力が消費される。ブロワ112によって加熱室120に供給された気体は、加熱器124によって加熱される。加熱器124は、固体粒子の耐熱温度未満、第1熱利用機器180の要求温度を満たす所定の第1温度に気体を加熱する。例えば、加熱器124は、気体によって加熱される固体粒子が要求温度を満たす所定の第2温度になるように、気体を加熱する。固体粒子がシリカである場合には、気体を1600℃以下に加熱する。また、第2温度は、第1温度より低いが、温度差は小さい(例えば、50℃程度)。
【0049】
こうして加熱された高温の気体(第1温度の気体)は、第1熱交換器130に供給される。また、低温収容部160aから第1熱交換器130に低温の固体粒子が供給される。したがって、第1熱交換器130において、高温の気体と低温の固体粒子とが強く攪拌され、高温の気体と低温の固体粒子とで熱交換が為される。これにより、気体によって固体粒子が加熱され、固体粒子によって気体が冷却される。なお、第1熱交換器130の出口において、固体粒子の温度と気体の温度とはほぼ等しくなる(第2温度となる)。
【0050】
そして、固気分離器140は、第1熱交換器130から排出された固気混合物を固気分離する。固気分離された高温の固体粒子(第2温度の固体粒子)は、配管144aを通じて高温槽150に供給される。高温槽150は、高温の固体粒子を貯留する。
【0051】
一方、固気分離された第2温度の気体は、配管172bを通じて、低温収容部160aに供給される。低温収容部160aに供給された第2温度の気体は、まず、蓄熱ユニット160bの蓄熱体160ba(第1潜熱蓄熱材212)と熱交換される。これにより、第2温度の気体が第3温度に冷却され、蓄熱ユニット160bの蓄熱体160baが第3温度に加熱される。
【0052】
そして、第3温度になった気体は、低温収容部160aに収容された固体粒子を流動化させる。また、第3温度の気体によって、低温収容部160aに収容された固体粒子は、第4温度(第4温度は、後述する第6温度より低く、常温(例えば、25℃)より高い)に加熱される。
【0053】
そして、第4温度となった気体は、配管172cを通じて蓄熱部196に供給される。第4温度の気体は、蓄熱部196の第2潜熱蓄熱材222と熱交換される。これにより、第4温度の気体が第5温度に冷却され、第2潜熱蓄熱材222が第5温度に加熱される。第5温度に冷却された気体は、排気管196aを通じて外部に排気される。
【0054】
つまり、低温収容部160aに収容された蓄熱ユニット160bおよび固体粒子と、蓄熱部196とは、第1熱交換器130から排出された気体が有する熱を一部回収することができる。
【0055】
このように、蓄熱モードにおいて、余剰の電力が熱に変換されて、まず、気体に伝熱される。そして、高温の気体と低温の固体粒子とで熱交換が為され、熱が固体粒子に伝達される。こうして、余剰の電力が熱エネルギーに変換されて固体粒子に保持(蓄熱)される。なお、固体粒子の熱容量は気体(空気)より大きいので、固体粒子の蓄熱密度(J/m)は気体より高い。
【0056】
なお、制御部200は、余剰した電力の量(以下、「余剰電力量」という)に基づいて、流量調整弁166の開度を調整する。具体的に説明すると、加熱器124によって余剰電力量の電力が熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーで(気体を介して)固体粒子を加熱した場合に、第2温度となる固体粒子の量が決定される。したがって、制御部200は、決定された量の固体粒子が、第1熱交換器130に供給されるように流量調整弁166の開度を調整する。
【0057】
これにより、余剰電力量が変動した場合(余剰電力量が時間的に変動した場合)であっても、高温槽150に貯留される固体粒子の温度を、定常的に第2温度に維持することができる。つまり、余剰電力量の変動に対応することができる。したがって、後述する放熱モードにおいて、追加のエネルギーを使用せずとも(例えば、補助燃料を燃焼させずとも)、要求温度を満たす第6温度の気体を第1熱利用機器180に供給することが可能となる。
【0058】
[放熱モード]
図5は、放熱モードにおける制御部200の処理を説明する図である。なお、理解を容易にするために、図5中、放熱モードにおいて利用されない構成を省略する。また、クロスハッチングは、固体粒子を示す。
【0059】
制御部200は、バルブ116a、146a、174b、174c、196b、流量調整弁166を閉弁する。制御部200は、加熱器124を停止する。また、図5に示すように、制御部200は、バルブ116b、116c、146b、174a、174dを開弁し、流量調整弁156を開弁して開度を調整する。制御部200は、ブロワ112、流体供給部192を駆動する。
【0060】
そうすると、ブロワ112から、蓄熱部196、低温槽160、箱体122を通じて第1熱交換器130に気体が供給される。なお、ブロワ112は、第1熱利用機器180の要求流量で気体を供給する。これにより、ブロワ112によって供給された気体は、蓄熱部196において第5温度に加熱され、低温槽160の蓄熱ユニット160bによって第3温度に加熱されて、第1熱交換器130に導かれる。
【0061】
また、第1熱交換器130には、高温槽150から高温の固体粒子(第2温度の固体粒子)が供給される。したがって、第1熱交換器130において、低温(第3温度)の気体と高温(第2温度)の固体粒子とで熱交換が為される。これにより、固体粒子によって気体が加熱され、気体によって固体粒子が冷却される。なお、第1熱交換器130から排出される固体粒子および気体の温度は、概ね等しく、第6温度である。
【0062】
そして、固気分離器140は、第1熱交換器130から排出された固気混合物を固気分離する。固気分離された高温の気体(第6温度の気体)は、配管172aを通じて第1熱利用機器180に供給される。なお、第6温度は、第1熱利用機器180の要求温度を満たす所定の温度であり、第2温度より低い。これにより、第1熱利用機器180において、気体が有する熱エネルギーが利用される(例えば、発電される)。一方、固気分離された第6温度の固体粒子は、配管144bを通じて低温槽160(低温収容部160a)に供給される。
【0063】
このように、放熱モードにおいて、高温の固体粒子と低温の気体とで熱交換が為され、熱が気体に伝達される。そして、必要となった際(例えば、電力が不足している期間)において、高温の気体(第6温度の気体)が第1熱利用機器180で利用される(例えば、発電される)。
【0064】
なお、制御部200は、第1熱利用機器180の要求温度および要求流量に基づいて、流量調整弁156の開度を調整する。具体的に説明すると、ブロワ112が第1熱利用機器180の要求流量で気体を供給し、高温槽150に貯留された第2温度の固体粒子で気体を加熱する場合に、気体を第6温度に加熱するための固体粒子の量が決定される。したがって、制御部200は、決定された量の固体粒子が、第1熱交換器130に供給されるように流量調整弁156の開度を調整する。
【0065】
これにより、第1熱利用機器180に供給される気体の温度を第1熱利用機器180の要求温度にすることができる。したがって、追加のエネルギーを使用せずとも(例えば、補助燃料を燃焼させずとも)、安定的に、要求温度を満たす第6温度の気体を第1熱利用機器180に供給することが可能となる。第1熱利用機器180の要求温度(例えば、要求される発電量)が時間的に変動しても、固体粒子の供給量を調整して対応できる。
【0066】
また、流体供給部192は、流体を第2熱交換器190の伝熱配管190aに通過させる。そうすると、配管144bを通過する固体粒子と流体とで熱交換が為される。こうして、固体粒子によって加熱された流体は、第2熱利用機器194に供給される。そして、第2熱利用機器194は、流体が有する熱(固気分離器140で分離された固体粒子が有する熱)を利用する。第2熱交換器190および流体供給部192を備える構成により、気体を第6温度に加熱した後の固体粒子の熱を有効利用することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態にかかる蓄エネルギー装置100は、余剰の電力を熱エネルギーに変換して固体粒子に保持させておく。これにより、余剰の電力を二次電池に蓄電する従来技術や余剰の電力を水素に転換する従来技術と比較して低コストでエネルギーを保持することが可能となる。また、余剰の電力を水素に転換して保持しておく従来技術と比較して、必要となった際(例えば、電力が不足している場合)に、保持させたエネルギーを高速で熱エネルギーや電気エネルギーに変換することができる。
【0068】
さらに、レンガブロックで蓄熱する従来技術と比較して、蓄熱モードにおいて、蓄熱させる固体粒子の量を調整することで、余剰電力が変動しても、指定する第2温度の固体粒子を貯留することができる。また、放熱モードにおいて、ブロワ112が供給する気体の流量を第1熱利用機器180の要求流量とし、第1熱交換器130に供給する固体粒子の量を調整することによって、第1熱利用機器180に供給される気体の温度を第1熱利用機器180の要求温度とすることができる。したがって、補助燃料を要さずとも、第1熱利用機器180の時間的な負荷変動に対しても対応することが可能となる。
【0069】
また、蓄エネルギー装置100は、蓄熱ユニット160bおよび蓄熱部196を備える。これにより、蓄エネルギー装置100は、蓄熱モードにおいて生じる排熱を、蓄熱ユニット160bおよび蓄熱部196に蓄熱させることができる。
【0070】
また、放熱モードにおいて、ブロワ112は、加熱室120(第1熱交換器130)に気体を直接供給するのではなく、蓄熱部196および低温槽160(蓄熱ユニット160b、固体粒子)に通過させて(蓄熱部196、蓄熱ユニット160b、および、固体粒子を経由して)、第1熱交換器130に気体を供給する。これにより、第1熱交換器130に供給される気体を、蓄熱部196、蓄熱ユニット160b、および、固体粒子によって予熱することができる。したがって、蓄エネルギー装置100は、蓄熱モードにおいて生じた排熱を、放熱モードにおいて効率よく利用することが可能となる。
【0071】
また、ブロワ112は、蓄熱ユニット160bで予熱された気体をさらに、低温収容部160aに収容された固体粒子で予熱する。これにより、蓄エネルギー装置100は、さらに、熱の利用効率を向上させることが可能となる。したがって、第1熱利用機器180の出力を増加させることができる。例えば、第1熱利用機器180が蒸気タービン発電機や、ガスタービン発電機である場合に、発電効率を向上させることが可能となる。
【0072】
[第1の変形例]
図6は、第1の変形例にかかる蓄エネルギー装置300を説明する図である。図6に示すように、蓄エネルギー装置300は、気体供給部310と、加熱室120と、第1熱交換器130と、固気分離器140と、分配部142と、高温槽150と、高温粒子供給部152と、低温槽160と、低温粒子供給部162と、気体送出部370と、第1熱利用機器180と、第2熱交換器190と、流体供給部192と、第2熱利用機器194と、蓄熱部196と、制御部380とを含む。蓄エネルギー装置300は、蓄エネルギー装置100と比較して、気体供給部310の接続関係、気体送出部370、制御部380による制御が異なる。図6中、実線の矢印は、固体粒子および固気混合物の流れを示す。図6中、破線の矢印は、流体の流れを示す。また、クロスハッチングは、固体粒子を示す。
【0073】
なお、上記蓄エネルギー装置100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
気体供給部310は、ブロワ312と、配管114a、314b、314cと、バルブ116a、316b、316cとを含む。ブロワ312は、吸入側が配管314cに接続され、吐出側が配管114aに接続される。配管314bは、一端が気体供給源に接続され、他端が配管172cにおけるバルブ174cと蓄熱部196との間に接続される。バルブ316bは、配管314bに設けられる。配管314cは、低温槽160の低温収容部160a(ガス排出口160ab)とブロワ312の吸入側とを接続する。バルブ316cは、配管314cに設けられる。
【0075】
気体送出部370は、配管172a、172b、172c、172d、172eと、バルブ174a、174b、174c、174d、174eとを含む。配管172eは、配管172dにおける蓄熱部196とバルブ174dとの間と、配管314cにおけるバルブ316cと、ブロワ312との間とを接続する。バルブ174eは、配管172eに設けられる。
【0076】
制御部380は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。制御部380は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。制御部380は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、蓄エネルギー装置300全体を管理および制御する。変形例において、制御部380は、気体供給部310(ブロワ312、バルブ116a、316b、316c)、加熱器124、分配部142(バルブ146a、146b)、高温粒子供給部152(流量調整弁156)、低温粒子供給部162(流量調整弁166)、気体送出部370(バルブ174a、174b、174c、174d、174e)、流体供給部192を制御する。
【0077】
[蓄熱モード]
図7は、蓄熱モードにおける制御部380の処理を説明する図である。なお、理解を容易にするために、図7中、蓄熱モードにおいて利用されない構成を省略する。また、クロスハッチングは、固体粒子を示す。
【0078】
変形例の蓄熱モードにおいて、制御部380は、バルブ316b、316c、146b、174a、174d、流量調整弁156を閉弁する。制御部200は、流体供給部192を停止する。また、図7に示すように、制御部380は、ブロワ312、加熱器124を駆動する。また、制御部380は、バルブ116a、146a、174b、174c、174eを開弁する。制御部380は、流量調整弁166を開弁して開度を調整する。
【0079】
そうすると、固気分離器140によって分離された第2温度の気体は、配管172bを通じて、低温収容部160aに供給される。低温収容部160aに供給された第2温度の気体は、まず、蓄熱ユニット160bの蓄熱体160ba(第1潜熱蓄熱材212)と熱交換される。これにより、第2温度の気体が第3温度に冷却され、蓄熱ユニット160bの蓄熱体160baが第3温度に加熱される。
【0080】
そして、第3温度になった気体は、低温収容部160aに収容された固体粒子を流動化させる。また、第3温度の気体によって、低温収容部160aに収容された固体粒子は、第4温度(第4温度は、後述する第6温度より低く、常温(例えば、25℃)より高い)に加熱される。
【0081】
そして、第4温度となった気体は、配管172cを通じて蓄熱部196に供給される。第4温度の気体は、蓄熱部196の第2潜熱蓄熱材222と熱交換される。これにより、第4温度の気体が第5温度に冷却され、第2潜熱蓄熱材222が第5温度に加熱される。
【0082】
つまり、低温収容部160aに収容された蓄熱ユニット160bおよび固体粒子と、蓄熱部196とは、第1熱交換器130から排出された気体が有する熱を一部回収することができる。
【0083】
そして、第5温度に冷却された気体は、配管172e、配管314cを通じて、ブロワ312に返送される。つまり、固気分離された気体は、低温槽160および蓄熱部196を通過した後、加熱器124に戻される。換言すれば、気体は、第1熱交換器130、固気分離器140、低温槽160(蓄熱ユニット160b)、蓄熱部196、加熱器124を循環することになる。
【0084】
以上説明したように、第1の変形例にかかる蓄エネルギー装置300は、蓄熱モードにおいて生じる排熱で気体を予熱した後、加熱器124に供給することができる。したがって、蓄エネルギー装置300は、加熱器124の消費エネルギーを低減することが可能となる。
【0085】
[第2の変形例]
図8Aは、第2の変形例にかかる加熱器424を説明する図である。図8Bは、第2の変形例にかかる加熱器524を説明する図である。図8Cは、第2の変形例にかかる加熱器624を説明する図である。なお、第2の変形例において、上記実施形態で説明した構成と実質的に等しい構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
加熱器424は、電気ヒータである。図8Aに示すように、加熱器424は、第1熱交換器130の外壁に設けられる。
【0087】
加熱器524は、電気ヒータである。図8Bに示すように、加熱器524は、第1熱交換器130の内壁に設けられる。
【0088】
加熱器624は、電気ヒータである。図8Cに示すように、加熱器624は、第1熱交換器130内に設けられる。
【0089】
加熱器424、524、624は、少なくとも第1熱交換器130の下部に設けられる。加熱器424、524、624の加熱温度は、箱体122の耐熱温度(箱体122の分散板の耐熱温度)未満とする。
【0090】
加熱器424、524、624は、制御部200によって駆動制御される。具体的に説明すると、加熱器424、524、624は、蓄熱モードにおいて駆動され、放熱モードにおいて停止される。加熱器424、524、624を備えることにより、固体粒子に効率よく伝熱することが可能となる。
【0091】
以上、添付図面を参照しながら一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0092】
例えば、上述した実施形態において、蓄熱部196が、収容容器220と、第2潜熱蓄熱材222と、複数の管230とを含む構成を例に挙げた。しかし、蓄熱部196は、第2潜熱蓄熱材222を含んでいれば構成に限定はない。例えば、蓄熱部196は、蓄熱ユニット160bと同様に、収容容器220と、複数の蓄熱体とを含んでもよい。この場合、蓄熱体は、収容器と、収容器内に収容される第2潜熱蓄熱材222とで構成される。
【0093】
また、上記実施形態において、気体供給部110が供給する気体として、空気を例に挙げて説明した。しかし、気体供給部110が供給する気体に限定はない。気体供給部110は、例えば、二酸化炭素や燃焼排ガスを供給してもよい。
【0094】
また、上記実施形態において、気体供給部110が、ブロワ112を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、気体供給部110は、気体を第1熱交換器130に供給できれば構成に限定はない。例えば、気体供給部110は、ブロワ112に代えて、圧縮気体源(例えば、圧縮空気源)やポンプを備えてもよい。
【0095】
また、上記実施形態において、第1熱交換器130の底面から気体が供給される構成を例に挙げて説明した。しかし、気体(空気)は、第1熱交換器130における固体粒子の供給箇所より下方から供給されればよい。例えば、気体(空気)は、第1熱交換器130の下部から供給されてもよい。また、気体供給部110は、常圧の気体を供給してもよいし、加圧した気体を供給してもよい。
【0096】
また、上記実施形態において、流体供給部192が、第2熱交換器190によって熱交換された流体を第2熱利用機器194に供給する場合を例に挙げて説明した。しかし、流体供給部192は、第2熱交換器190によって熱交換された流体を第2熱利用機器194に代えて、または、加えて、第1熱利用機器180に供給してもよい。
【0097】
また、上記実施形態において、低温槽160が流動層として固体粒子を貯留する構成を例に挙げて説明した。これにより、放熱モードにおいて固体粒子の熱で効率よく気体を予熱することができる。しかし、低温槽160は、固体粒子を貯留できれば構成に限定はない。低温槽160は、例えば、ホッパであってもよい。また、低温槽160が移動層として固体粒子を貯留してもよい。
【0098】
また、上記実施形態において、高温槽150がホッパである場合を例に挙げて説明した。これにより、高温の固体粒子の放熱を抑制することができる。しかし、高温槽150は、固体粒子を貯留できれば構成に限定はない。高温槽150は、例えば、低温槽160と同様に、流動層として固体粒子を貯留する構成であってもよい。
【0099】
また、上記実施形態において、電力が余剰(発電電力量-需要電力量 > 所定値(例えば0))する期間を蓄熱モードとした。しかし、電力を他のエネルギーに転換する必要があるとき(例えば、電力グリッドを安定させるために電力を消費する必要があるとき)に、蓄熱モードとしてもよい。また、電力が必要(発電電力量-需要電力量 < 0、例えば、電力が不足)となった際に放熱モードとした。しかし、熱を利用する必要があるとき(例えば、セメント工場で熱を利用したい場合)に放熱モードとしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態および第1の変形例において、蓄エネルギー装置100、300は、蓄熱ユニット160b(蓄熱体160ba)および、蓄熱部196を備える構成を例に挙げた。しかし、蓄エネルギー装置100、300は、蓄熱体160baおよび蓄熱部196のうち、少なくともいずれか一方を備えていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本開示は、蓄エネルギー装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
100 蓄エネルギー装置
110 気体供給部
124 加熱器
130 第1熱交換器
140 固気分離器
150 高温槽
152 高温粒子供給部
160 低温槽
162 低温粒子供給部
170 気体送出部
180 第1熱利用機器
196 蓄熱部
200 制御部
212 第1潜熱蓄熱材
222 第2潜熱蓄熱材
300 蓄エネルギー装置
310 気体供給部
370 気体送出部
380 制御部
424 加熱器
524 加熱器
624 加熱器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8