(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】自然流下式の貯留倉庫
(51)【国際特許分類】
B65D 88/64 20060101AFI20231121BHJP
B65G 65/42 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B65D88/64 A
B65G65/42 C
B65G65/42 B
(21)【出願番号】P 2019190724
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100167243
【氏名又は名称】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】花岡 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】井上 領介
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-207987(JP,A)
【文献】特開2008-049259(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0279641(US,A1)
【文献】実開昭59-028093(JP,U)
【文献】特開2001-278381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/64
B65G 65/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体物を一時的に貯留し、排出するための自然流下式の貯留倉庫であって、
排出口が形成された床と、
前記貯留倉庫の内部空間を、前記固体物が充填される充填空間と、前記固体物が充填されない非充填空間と、に少なくとも部分的に仕切る仕切部と、
前記非充填空間から前記充填空間へ気体を噴射するように構成された気体噴射装置と
を備え、
前記貯留倉庫は、前記充填空間に前記固体物が充填されている場合であっても、前記非充填空間内に人が出入り可能に構成された
貯留倉庫。
【請求項2】
請求項1に記載の貯留倉庫であって、
前記仕切部は、水平方向と鉛直方向とに対して角度付けられた傾斜部を備え、
前記傾斜部には、前記非充填空間と前記充填空間とを連通させるように前記傾斜部を貫通する貫通穴が形成され、
前記気体噴射装置は、前記貫通穴を介して、前記非充填空間から前記充填空間へ前記気体を噴射する
貯留倉庫。
【請求項3】
請求項2に記載の貯留倉庫であって、
前記貫通穴の前記非充填空間側の開口は、鉛直方向において、前記貫通穴の前記充填空間側
の開口と同じ高さの位置にあるか、または、前記貫通穴の前記充填空間側の前記開口よりも高い位置にある
貯留倉庫。
【請求項4】
請求項
2に記載の貯留倉庫であって、
前記貫通穴は複数の貫通穴を備え、
前記複数の貫通穴の前記充填空間側
の開口は、前記鉛直方向および前記水平方向のうちの少なくとも一方において互いに異なる位置にある
貯留倉庫。
【請求項5】
請求項4に記載の貯留倉庫であって、
前記気体噴射装置の少なくとも一部分は、前記複数の貫通穴のうちの少なくとも二つの貫通穴に対して共用可能に構成された
貯留倉庫。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の貯留倉庫であって、
前記仕切部は第1の仕切部を備え、
前記第1の仕切部は、
前記排出口の真上に配置され、
前記非充填空間の少なくとも一部分である第1の非充填空間が前記仕切部の直下に形成され、かつ、前記充填空間と前記排出口とが連通するように、前記内部空間を部分的に仕切る
貯留倉庫。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の貯留倉庫であって、
前記貯留倉庫は外壁を備え、
前記仕切部は第2の仕切部を備え、
前記第2の仕切部は、前記外壁の所定高さのところの内面から前記床まで延在し、
前記第2の仕切部の内側には前記充填空間が形成され、
前記第2の仕切部と前記外壁との間には、前記非充填空間の少なくとも一部分である第2の非充填空間が、前記充填空間から隔離された態様で形成された
貯留倉庫。
【請求項8】
請求項6を従属元に含む請求項7に記載の貯留倉庫であって、
前記貯留倉庫は、前記気体噴射装置が、第1の噴射位置で前記第1の非充填空間から前記充填空間へ気体を噴射することが可能であり、かつ、第2の噴射位置で前記第2の非充填空間から前記充填空間へ気体を噴射することが可能であるように構成され、
前記第1の噴射位置および前記第2の噴射位置は、鉛直方向において互いに異なる位置にそれぞれ設定されている
貯留倉庫。
【請求項9】
請求項6に記載の貯留倉庫であって、
外壁と、
前記外壁の外部から前記充填空間へ気体を噴射するように構成された第2の気体噴射装置と
を備える貯留倉庫。
【請求項10】
請求項9に記載の貯留倉庫であって、
前記貯留倉庫は、前記気体噴射装置が、第1の噴射位置で前記第1の非充填空間から前記充填空間へ気体を噴射することが可能であり、かつ、第2の噴射位置で前記外部から前記充填空間へ気体を噴射することが可能であるように構成され、
前記第1の噴射位置および前記第2の噴射位置は、鉛直方向において互いに異なる位置にそれぞれ設定されている
貯留倉庫。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の貯留倉庫であって、
前記仕切部は、前記非充填空間から前記充填空間内を視認可能にするための覗き窓を備える
貯留倉庫。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の貯留倉庫であって、
前記充填空間内における前記固体物の貯留状況を検知するように構成されたセンサを備える
貯留倉庫。
【請求項13】
請求項12に記載の貯留倉庫であって、
前記気体噴射装置は、前記センサによる検知結果に基づいたタイミングで前記気体を噴射するように構成された
貯留倉庫。
【請求項14】
請求項4を従属元に含む請求項13に記載の貯留倉庫であって、
前記センサは、互いに異なる位置における前記固体物の貯留状況をそれぞれ検知するように構成された複数のセンサを備え、
前記気体噴射装置は、前記複数の貫通穴のうちの、前記複数のセンサによる検知結果に基づいて決定される特定の貫通穴のみを使用して、前記気体を噴射するように構成された
貯留倉庫。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載の貯留倉庫であって、
前記気体噴射装置は、前記気体を規則的なタイミングで繰り返し噴射するように構成された
貯留倉庫。
【請求項16】
請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載の貯留倉庫であって、
前記気体噴射装置は、空気および窒素ガスのうちの一方を選択的に噴射可能に構成された
貯留倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体物を一時的に貯留し、排出するための自然流下式の貯留倉庫に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス発電施設では、バイオマス燃料を発電設備に定量的に供給するために、あるいは、まとまった量のバイオマス燃料の搬入を受け入れるために、バイオマス燃料の貯留設備が必要になる。そのような貯留設備として、下記特許文献1に記載の自然流下式の貯留設備が知られている。自然流下式の貯留設備では、ブリッジの発生抑制が課題の一つとなる。特許文献1は、ブリッジの発生抑制を安価に実現可能な構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、ブリッジの発生を抑制できるものの、利便性において改善の余地を残していた。例えば、ブリッジが発生してしまったときにブリッジ解消作業を容易に行えることが望ましい。あるいは、メンテナンス作業を容易に行えることが望ましい。かかる問題は、バイオマス燃料用の貯留設備に限らず、固体物を貯留するための種々の貯留設備にも共通する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本発明の第1の形態によれば、固体物を一時的に貯留し、排出するための自然流下式の貯留倉庫が提供される。この貯留倉庫は、排出口が形成された床と、貯留倉庫の内部空間を、固体物が充填される充填空間と、固体物が充填されない非充填空間と、に少なくとも部分的に仕切る仕切部と、非充填空間から充填空間へ気体を噴射するように構成された気体噴射装置と、を備えている。貯留倉庫は、充填空間に固体物が充填されている場合であっても、非充填空間内に人が出入り可能に構成される。
【0007】
かかる貯留倉庫によれば、充填空間において固体物のブリッジが発生したときに、ブリッジに向けて気体を噴射してブリッジを破壊することができる。気体噴射装置は、人が出入りできる非充填空間から気体を噴射するので、気体噴射装置の構成要素(例えば、配管、電磁弁、噴射ノズル、気体圧縮タンクなど)を充填空間に配置する必要が無い。換言すれば、気体噴射装置の構成要素は、人が出入りできる非充填空間、または、貯留倉庫の外部に配置できる。したがって、気体噴射装置のメンテナンス作業を容易に行うことができる。気体噴射装置の動作は、手動操作によって制御されてもよいし、自動化されてもよい。
【0008】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態において、仕切部は、水平方向と鉛直方向とに対して角度付けられた傾斜部を備えている。傾斜部には、非充填空間と充填空間とを連通させるように傾斜部を貫通する貫通穴が形成される。気体噴射装置は、貫通穴を介して、非充填空間から充填空間へ気体を噴射する。かかる形態によれば、貫通穴を介して非充填空間から充填空間へ気体を容易に噴射することができる。
【0009】
本発明の第3の形態によれば、第2の形態において、貫通穴の非充填空間側の開口は、鉛直方向において、貫通穴の充填空間側の開口と同じ高さの位置にあるか、または、貫通穴の充填空間側の開口よりも高い位置にある。かかる形態によれば、固体物が貫通穴を介して、充填空間から非充填空間に進入すること、または、貫通穴が固体物によって詰まることを抑制できる。特に、貫通穴の非充填空間側の開口が、貫通穴の充填空間側の開口よりも高い位置にある場合には、気体を斜め下向きに角度付けて噴射することができるので、つまり、噴射される気体のベクトルが鉛直方向の成分を有するので、ブリッジを破壊できる範囲が広がる。
【0010】
本発明の第4の形態によれば、第2または第3の形態において、貫通穴は複数の貫通穴を備えている。複数の貫通穴の充填空間側の開口は、鉛直方向および水平方向のうちの少なくとも一方において互いに異なる位置にある。かかる形態によれば、複数の位置から気体を噴射することができるので、ブリッジを破壊できる範囲が広くなる。気体は、複数の貫通穴から同時に噴射されてもよいし、順次、噴射されてもよい。あるいは、気体は、複数の貫通穴のうちから選択された特定の貫通穴のみから噴射されてもよい。この場合、特定の貫通穴は、ブリッジが発生した位置に応じて選択される。この選択は、作業者によって行われてもよいし、自動化されてもよい。
【0011】
本発明の第5の形態によれば、第4の形態において、気体噴射装置の少なくとも一部分は、複数の貫通穴のうちの少なくとも二つの貫通穴に対して共用可能に構成される。かかる形態によれば、気体噴射装置の数、または、気体噴射装置の構成要素の数を減らすことができ、低コスト化、または、気体噴射装置のメンテナンス作業の負荷低減に資する。
【0012】
本発明の第6の形態によれば、第1ないし第5のいずれかの形態において、仕切部は第1の仕切部を備えている。第1の仕切部は、排出口の真上に配置される。第1の仕切部は、非充填空間の少なくとも一部分である第1の非充填空間が仕切部の直下に形成され、かつ、充填空間と排出口とが連通するように、内部空間を部分的に仕切る。かかる形態によれば、排出口の真上に第1の非充填空間が形成されるので、充填空間内の固体物の自重が、排出口付近に存在する固体物に作用することを抑制できる。したがって、排出口付近でのブリッジの発生を抑制できる。さらに、充填空間に固体物が充填されている場合であっても、排出口の真上に位置する第1の非充填空間内に人が出入りすることができるので、気体噴射装置によるブリッジの破壊作業、ブリッジの発生の有無の確認作業、貯留倉庫を空にする際に平坦部に残留した固体物の除去作業などを第1の非充填空間において容易に行うことができる。
【0013】
本発明の第7の形態によれば、第1ないし第6のいずれかの形態において、貯留倉庫は、さらに外壁を備えている。仕切部は第2の仕切部を備えている。第2の仕切部は、外壁の所定高さのところの内面から床まで延在する。第2の仕切部の内側には充填空間が形成される。第2の仕切部と外壁との間には、非充填空間の少なくとも一部分である第2の非充填空間が、充填空間から隔離された態様で形成される。かかる形態によれば、充填空間の外側(つまり、第2の非充填空間)からブリッジに対して気体を噴射してブリッジを破壊することができる。さらに、第2の非充填空間において、気体噴射装置の構成要素の少なくとも一部についてのメンテナンス作業を容易に行うことができる。しかも、貯留倉庫を空にする際に、排出口から排出されずに平坦部に残留している固体物に向けて気体を噴射することによって、残留している固体物を、貯留槽の外側から内側へ、ひいては排出口へ導くことができる。その結果、固体物の残留量が低減され、メンテナンス作業(より具体的には、残留物の除去作業)の負荷が低減される。なお、本願において「外壁」とは、貯留機能を有する空間を最も外側で形成する壁をいい、必ずしも外部空気に接触する壁をいうとは限らない。例えば、貯留倉庫と事務棟とが併設される場合には、貯留倉庫と事務棟とを仕切る壁が「外壁」となる場合もある。
【0014】
第2の非充填空間は、貯留倉庫の外周全てに亘って形成されてもよい。その場合、複数の貫通穴が周方向に沿って形成されてもよい。こうすれば、第7の形態によって得られる効果を高めることができる。なお、本願において「貯留倉庫の外周」とは、貯留機能を有する空間の外周をいう。さらに、外壁は、円筒形状を有していてもよい。この場合、第2の仕切部は、逆円錐台の側面の形状を有していてもよい。こうすれば、第2の仕切部の下端を排出口に近づけることができる。その結果、充填空間内に位置する床の面積(すなわち、平坦部の面積)が低減し、床上に固体物が残留することを抑制できる。さらに、第1の仕切部は、第2の仕切部の内側を横断するように設置されてもよい。こうすれば、充填空間内に位置する床の面積がさらに低減する。
【0015】
本発明の第8の形態によれば、第6の形態を含む第7の形態において、貯留倉庫は、気体噴射装置が、第1の噴射位置で第1の非充填空間から充填空間へ気体を噴射することが可能であり、かつ、第2の噴射位置で第2の非充填空間から充填空間へ気体を噴射することが可能であるように構成される。第1の噴射位置および第2の噴射位置は、鉛直方向において互いに異なる位置にそれぞれ設定されている。かかる形態によれば、鉛直方向における複数の位置から気体を噴射することができるので、ブリッジを破壊できる範囲が広くなる。
【0016】
本発明の第9の形態によれば、第6の形態において、貯留倉庫は、外壁と、外壁の外部から充填空間へ気体を噴射するように構成された第2の気体噴射装置と、を備えている。かかる形態によれば、第7の形態と同様の効果を奏する。
【0017】
本発明の第10の形態によれば、第9の形態において、貯留倉庫は、気体噴射装置が、第1の噴射位置で第1の非充填空間から充填空間へ気体を噴射することが可能であり、かつ、第2の噴射位置で外部から充填空間へ気体を噴射することが可能であるように構成される。第1の噴射位置および第2の噴射位置は、鉛直方向において互いに異なる位置にそれぞれ設定されている。かかる形態によれば、第8の形態と同様の効果を奏する。
【0018】
本発明の第11の形態によれば、第1ないし第10のいずれかの形態において、仕切部は、非充填空間から充填空間内を視認可能にするための覗き窓を備えている。かかる形態によれば、作業者は、覗き窓を介して非充填空間から充填空間内を覗くことによって、ブリッジの発生の有無を視認することができる。このため、作業者は、ブリッジを破壊すべき状況にあることを知ることができる。
【0019】
本発明の第12の形態によれば、第1ないし第11のいずれかの形態において、貯留倉庫は、充填空間内における固体物の貯留状況を検知するように構成されたセンサを備えている。貯留状況とは、例えば、特定箇所における固体物の貯留(換言すれば、存在)の有無や、貯留高さである。かかる形態によれば、固体物の貯留状況に基づいて、ブリッジの発生の有無を自動的に検知することができる。例えば、固体物が充填空間内に十分に存在している状態において、センサによって排出口付近に空洞が検知されれば、ブリッジが発生していることが分かる。センサの種類は特に限定するものではなく、例えば、光学式、機械式、電磁式、あるいは、これらの組み合わせであってもよい。
【0020】
本発明の第13の形態によれば、第12の形態において、気体噴射装置は、センサによる検知結果に基づいたタイミングで気体を噴射するように構成される。かかる形態によれば、ブリッジの発生の検知から、ブリッジ破壊のための気体の噴射までの工程を自動化することができる。
【0021】
本発明の第14の形態によれば、第4の形態を含む第13の形態において、センサは、互いに異なる位置における固体物の貯留状況をそれぞれ検知するように構成された複数のセンサを備えている。複数の貫通穴のうちの、複数のセンサによる検知結果に基づいて決定される特定の貫通穴のみを使用して、気体を噴射するように構成される。かかる形態によれば、複数のセンサによってブリッジの発生箇所を所定の精度(この精度は、センサの設置数に依存する)で特定することができる。例えば、第1の高さのところに設置された第1のセンサによって、第1の高さのところに固体物が存在しないことが検知され、第1の高さよりも高い第2の高さのところに設置された第2のセンサによって、第2の高さのところに固体物が存在することが検知されれば、第1の高さと第2の高さとの間にブリッジが発生していることが分かる。さらに、その特定されたブリッジの発生箇所に対応する位置にある貫通穴を使用して気体を噴射して、ブリッジを破壊することができる。しかも、ブリッジの発生および発生箇所の検知から、ブリッジ破壊のための気体の噴射までの工程を自動化することができる。
【0022】
本発明の第15の形態によれば、第1ないし第14のいずれかの形態において、気体噴射装置は、気体を規則的なタイミングで繰り返し噴射するように構成される。かかる形態によれば、ブリッジが発生する前の段階で、気体を規則的なタイミングで噴射することによって、ブリッジの発生を未然に抑制することができる。
【0023】
本発明の第16の形態によれば、第1ないし第15のいずれかの形態において、気体噴射装置は、空気および窒素ガスのうちの一方を選択的に噴射可能に構成される。かかる形態によれば、通常時には、気体噴射装置から空気を噴射し、火災発生時には、気体噴射装置から窒素ガスを噴射して貯留倉庫内を窒素パージすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態による貯留倉庫の概略構成を示す断面図である。
【
図2】貯留倉庫の外観を示す斜視図であり、その内部を透視で示している。
【
図3】
図1の貯留倉庫の斜視図であり、一部を断面で示している。
【
図4】
図1の貯留倉庫の斜視図であり、一部を破断して内部構造を示している。
【
図6】第1の仕切部の開口付近の構造の変形例を示す断面図である。
【
図7】ブリッジを破壊するための構成を示す模式断面図である。
【
図8】第1の仕切部および第2の仕切部における貫通穴の配置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一実施形態としての貯留倉庫10(以下、単に倉庫とも呼ぶ)の概略構成を示す断面図である。
図2は倉庫10の斜視図であり、倉庫10の内部が透視で示されている。
図3は倉庫10の半分の斜視図であり、倉庫10の一部は断面で示されている。
図4は、
図3は倉庫10の半分の斜視図であり、領域R1を破断して、倉庫10の内部構造を示している。倉庫10は、固体物を一時的に貯留し、排出するための自然流下式の倉庫である。つまり、倉庫10は、その内部に貯留された固体物を排出口から排出するための機械装置を備えていない。倉庫10は、例えば、バイオマス発電施設において、木質バイオマス燃料(例えば、木質チップ(縦40mm×横40mm×厚み10mm)、木質ペレット(径6~10mm×長さ30mm)、パームヤシ殻(直径10mmの半球状)など)を一時的に貯留してもよい。倉庫10は、本実施形態では、鉄板造であるが、任意の構造を有していてもよい。例えば、倉庫10は、コンクリート構造物を含んでいてもよい。
【0026】
倉庫10は、円柱状の外形を有しており(
図2参照)、
図1では、その半分のところで切断した縦断面を示している。倉庫10のうちの図示していない残り半分も、
図1に示される倉庫10と同じ構造を有している。
図1に示すように、倉庫10は、外壁20と、床30と、第1の仕切部50と、第2の仕切部40と、を備えている。外壁20は、円筒状の形状を有している。外壁20の内部には、固体物が充填される充填空間21が形成されている。充填空間21へは、外壁20の上端付近に設けられた投下口(図示省略)から、コンベヤ、シュートなどを介して固体物が供給される。限定はされないが、外壁20は、例えば、直径15m×高さ40mのサイズを有していてもよい。
【0027】
図1に示すように、倉庫10の屋根(図示の関係上、低い位置にあるように示している)には、レベル計70が設置されている。レベル計70は、倉庫10内での固体物の貯留レベルを検知するために設けられている。レベル計70は、例えば、マイクロウェーブ式であってもよい。この場合、レベル計70は、レベル計70と、固体物の堆積上端(倉庫10が空の場合は、当該上端ではなく、床30)と、の間の距離を計測することにより、固体物の貯留レベルを検知することができる。
【0028】
図3に示すように、床30には、複数の排出口31が形成されている。排出口31は、2列に並んで形成されている。排出口31の真上には、第1の仕切部50が配置されている。本明細書において「真上」、「真下」とは、鉛直方向に見た場合の位置にのみ言及しており、鉛直方向において隣接した位置関係を有しているか否かについては関係がない。つまり、第1の仕切部50と排出口31との間に他の部材や空間が介在するか否かについては言及していない。
【0029】
第1の仕切部50は、倉庫10の内部空間を部分的に仕切っている。その結果、固体物が充填されない第1の非充填空間51が、第1の仕切部50の直下に形成される。本明細書において「直下」、「直上」とは、鉛直方向に見た場合の位置に加えて、鉛直方向において隣接した位置関係を有していることにも言及している。つまり、第1の非充填空間51は、第1の仕切部50の真下にあり、かつ、第1の仕切部50と第1の非充填空間51とは、鉛直方向において隣接している。
【0030】
第1の仕切部50は、床30まで延在している。つまり、第1の仕切部50は、床30上に支持されている。第1の仕切部50は、縦断面で見て、床30に対して斜め(本実施形態では、60度)に角度付けられた二つの傾斜部を有する三角形の形状を有している。この二つの傾斜部のそれぞれには、複数の開口52が水平方向に並んで形成されている。排出口31および開口52は、開口52の開口方向から見て互いに重複する位置に配置されている。開口52は、充填空間21と第1の非充填空間51(ひいては、排出口31)とを連通させている。これにより、充填空間21に充填された固体物が開口52を介して排出口31に導かれる。上述の形状の第1の仕切部50によれば、第1の仕切部50上に固体物が残留することがない。ただし、第1の仕切部50は、任意の形状とすることができる。
【0031】
上述のように第1の非充填空間51が形成されると、充填空間21の固体物の全ての自重が、排出口31の付近の固体物に作用することを抑制できる。その結果、排出口31の付近でのブリッジの発生を抑制できる。
【0032】
第1の仕切部50は、床30上に支持される構成に代えて、梁などによって上方から支持されてもよい。この場合は、第1の仕切部50には、開口52が形成されていなくてもよく、その代わりに、第1の仕切部50と床30との間の隙間が開口52の役割(すなわち、充填空間21に充填された固体物を排出口31に導く役割)を果たしてもよい。ただし、本実施形態のように第1の仕切部50を床30で支持することによって、倉庫10の構造を簡素化できる。しかも、梁などの支持構造が固体物の流れを妨げることがない。
【0033】
図1に示すように、床30の下方には、地下ピット90が形成されている。地下ピット90には、シュート91とコンベア92とが設けられている。排出口31から排出される固体物は、シュート91によってコンベア92に導かれ、コンベア92によって後段の設備(例えば、発電設備)に搬送される。排出口31の下面には、排出口31を開閉するシャッタ(図示省略)が設けられてもよい。このシャッタは、コンベア92のメンテナンスを行う際に閉められてもよい。第1の非充填空間51は、上述したブリッジ発生抑制効果の他、当該シャッタまたはコンベア92に作用する固体物の荷重を低減する効果も有している。なお、
図1では、
図1の左右の二つの排出口31から排出される固体物が一つのコンベア92に導かれる例を示しているが、左右の排出口31ごとに個別のシュート91およびコンベア92が設けられてもよい。こうすれば、シュート91上での固体物の流れが左右で非対称になりやすいので、シュート91上でのブリッジの発生を抑制できる。
【0034】
図1に示すように、第2の仕切部40は、外壁20の所定の高さのところの内面から床30まで延在している。本実施形態では、第2の仕切部40は、倉庫10の外周全てに亘って形成されている。その結果、第2の仕切部40の内側には、充填空間21が形成され、第2の仕切部40の外側、すなわち、第2の仕切部40と外壁20との間には、固体物が充填されない第2の非充填空間41が形成されている。第2の仕切部40は倉庫10の内部空間を完全に仕切っているので、第2の非充填空間41は、第2の仕切部40によって充填空間21から隔離されている。このため、作業員は、充填空間21での固体物の貯留状況にかかわらず、第2の非充填空間41に出入りすることができる。
【0035】
第2の非充填空間41には、気体噴射装置60が設置される(詳細は後述)。第2の非充填空間41は作業員が出入りすることができる大きさに形成されているので、作業員は、気体噴射装置60のメンテナンス作業や操作(気体噴射装置60の手動操作を行う場合)を第2の非充填空間41において容易に行うことができる。また、第2の非充填空間41が倉庫10の外周全てに亘って形成されているので、作業動線の利便性が向上する。しかも、充填空間21内に位置する床30の面積が低減するので、固体物の残留量(排出口31に導かれずに、平坦部に残留する量)を低減することができる。したがって、残留物の除去作業の負荷が低減される。ただし、第2の非充填空間41は、倉庫10の外周の一部のみに形成されていてもよい。
【0036】
第2の仕切部40は、本実施形態では、逆円錐台の側面の形状を有している。このため、第2の仕切部40の一部が鉛直方向に延在する場合と比べて、第2の仕切部40の下端を排出口31に近づけることができる。その結果、充填空間21内に位置する床30の面積が低減し、固体物の残留量をいっそう低減することができる。
【0037】
図3に示すように、第1の仕切部50は、第2の仕切部40の内側を横断するように設置される。そして、第1の仕切部50の内部、すなわち、第1の非充填空間51に面する床30には、床30の強度を考慮して、横断方向に亘って極力大きい排出口31が確保される。かかる構成によれば、充填空間21内に位置する床30の面積がいっそう低減し、固体物の残留量をいっそう低減することができる。
【0038】
図1,2に示すように、外壁20には二つの倉庫出入口25が形成されている(
図1では一つのみ示されているが、
図2では倉庫出入口25a,25bとして二つ示されている)。
図2では、地下部分を含めて外壁20を示しており、倉庫出入口25a,25bは、実際には、グランドレベル付近に形成されている。倉庫出入口25a,25bには、扉が設けられてもよい。
図4に示すように、倉庫出入口25は、第2の非充填空間41に連通している。第1の非充填空間51と第2の非充填空間41とを仕切る第2の仕切部40には、非充填空間出入口42(
図2では非充填空間出入口42a,42bとして二つ示されている)が形成されている。このため、第1の非充填空間51は、別の空間を介することなく、第2の非充填空間41に連通する。したがって、作業者は、第1の非充填空間51と第2の非充填空間41との間での移動を効率的に行うことができる。
【0039】
図5は、排出口31付近の拡大断面図である。
図5では、充填空間21に充填された固体物15(ハッチングで示している)が、開口52を介して排出口31へ排出されている様子が示されている。開口52を出た固体物15は、固体物15の物理的特性によって定まる安息角θ1の傾斜で、排出口31に流れている。
図5に示すように、一方側の開口52から排出される固体物15の山と、他方側の開口52から排出される固体物15の山とは、干渉していない。このような構成にすれば、一方の山の流れが、他方の山の逆方向の流れによって阻害されないので、ブリッジの発生を抑制することができる。
【0040】
しかも、第1の非充填空間51内において、山と山との間に間隔が空いているので、それらの山の間に位置する床30を、人が出入りできる、固体物と干渉しないメンテナンス通路として使用することができる。
図5に示す例では、幅D1のメンテナンス通路が確保されている。この例では、第1の非充填空間51内の床30は、固体物15の山の内側の下端よりも内側に退避した位置に設けられている。換言すれば、排出口31は、固体物15の山よりも内側まで延在している。このため、固体物15が第1の非充填空間51内の床30上に飛散しにくい。安全対策として、排出口31に網目構造の蓋(例えば、グレーチング)が設けられる場合には、幅D1よりも大きい幅D2のメンテナンス通路を確保できる。ただし、第1の非充填空間51内の床30を固体物15の山の内側の下端のところまで延在させて、幅D2のメンテナンス通路を確保してもよい。
【0041】
作業者は、定期的に第1の非充填空間51内を見て回り、ブリッジの発生の有無の確認作業を行ってもよい。十分な量の固体物が充填空間21に貯留されている(このことは、例えば、レベル計70やカメラによって確認可能である)にもかかわらず、特定の開口52から固体物が排出されていなければ、その開口52の付近でブリッジが発生していることが分かる。あるいは、第1の非充填空間51内の作業者は、倉庫10を空にした際に、充填空間21に面する床30に残留した固体物15を、レーキなどを使用して排出口31に向けて掻き出して排出する作業を行ってもよい。
【0042】
第1の非充填空間51内には、気体噴射装置60が設置される(詳細は後述)。作業員は、気体噴射装置60のメンテナンス作業や操作(気体噴射装置60の手動操作を行う場合)を第1の非充填空間51において容易に行うことができる。
【0043】
このような第1の非充填空間51内のメンテナンス通路を確保するために、第1の仕切部50の下端の幅D3は、例えば、固体物15の安息角θ1を60度(
図5では、そのように示されている)としたときに、開口52から排出口31に向けて流れる固体物15と干渉しない幅1m以上(つまり、幅D1または幅D2が1m以上)の通路を確保するように設計されてもよい。固体物15がバイオマス燃料である場合、安息角θ1は、一般的には最大でも60度未満であるから、この設計条件は、第1の非充填空間51内において固体物15と干渉しないメンテナンス通路を床30に確保するためのほぼ最低条件であるといえる。メンテナンス通路は、大きな幅で確保できるほど利便性が向上するので、1mよりも大きな幅が確保されてもよい。また、幅D3は、貯留する固体物15の特徴に応じた安息角θ1に応じて設計すればよく、安息角θ1が小さくなるほど、確保すべき幅D3は大きくなる。
【0044】
図6は、第1の仕切部50の開口52付近の構造の変形例を示す断面図である。図示する例では、第1の仕切部50よりも外側の領域における(つまり、充填空間21内の)床30は、モルタル33によってかさ上げされている。その結果、開口52の下端53は、モルタル33の上面34と同一レベルに位置している。かかる構成によれば、開口52よりも下方に固体物の滞留スペースが形成されることがない。したがって、固体物の残留量をいっそう低減することができる。第1の非充填空間51の床30についても、充填空間21の床30と同一レベルまでかさ上げされてもよい。
【0045】
上述した倉庫10において、ブリッジの発生を抑制するとともに、開口52の付近にブリッジが発生した場合には当該ブリッジを破壊するための構成について以下に説明する。
図7は、ブリッジを破壊するための構成を示す模式断面図である。図示するように、第1の非充填空間51および第2の非充填空間41には、それぞれ気体噴射装置60が配置されている。気体噴射装置60は、第1の非充填空間51または第2の非充填空間41から充填空間21へ気体(本実施形態では空気)を噴射して、ブリッジを破壊するために設けられる。気体噴射装置60は、本体61とフレキシブル配管62とを備えている。本体61は、任意の公知の方式を使用することができる。例えば、本体61は、気体圧縮タンクと電磁弁とを備えていてもよい。
【0046】
第1の非充填空間51を形成する第1の仕切部50は、第1の傾斜部54と第2の傾斜部55とを備えている。第1の傾斜部54および第2の傾斜部55は、いずれも、水平方向および鉛直方向に対して角度付けられている。第1の傾斜部54には、第1の非充填空間51と充填空間21とを連通させるように第1の傾斜部54を貫通する複数の貫通穴56が形成されている。同様に、第2の傾斜部55にも、第1の非充填空間51と充填空間21とを連通させるように第2の傾斜部55を貫通する複数の貫通穴56が形成されている。第1の非充填空間51に設置された気体噴射装置60は、これらの貫通穴56を介して、第1の非充填空間51から充填空間21へ気体を噴射する。
【0047】
貫通穴56の第1の非充填空間51側の開口は、鉛直方向において、貫通穴56の充填空間21側の開口よりも高い位置にある。換言すれば、貫通穴56は、第1の非充填空間51側から見ると、斜め下向きに充填空間21まで延在している。このため、充填空間21に貯留された固体物が貫通穴56を介して第1の非充填空間51に進入すること、または、貫通穴56が固体物によって詰まることを抑制できる。しかも、貫通穴56を介して噴射される気体のベクトルが鉛直方向の成分を有するので、ブリッジを破壊できる範囲が広がる。つまり、鉛直方向における気体が届く範囲内にブリッジが発生していれば、当該ブリッジを破壊することができる。
【0048】
図8(a)は、第1の傾斜部54における貫通穴56の配置を示す正面図であり、充填空間21内から第1の傾斜部54を見た状態を示している。図示するように、貫通穴56の充填空間21側の開口は、水平方向における異なる四つの位置にそれぞれ設けられている。さらに、貫通穴56の充填空間21側の開口は、鉛直方向における異なる二つの位置にそれぞれ設けられている。図示は省略するが、第2の傾斜部55においても、第1の傾斜部54と同じように複数の貫通穴56が設けられている。この構成によれば、複数の位置から気体を噴射することができるので、ブリッジを破壊できる範囲が広くなる。気体は、複数の貫通穴56から同時に噴射されてもよいし、順次、噴射されてもよい。あるいは、気体は、ブリッジの発生位置に応じて複数の貫通穴56のうちから選択された特定の貫通穴56のみから噴射されてもよい。
【0049】
図7に示すように、これらの貫通穴56には、管57が取り付けられている。管57の一端は、貫通穴56と管57とが連通するように、第1の仕切部50の内面に溶接されている。本実施形態では、管57は、流路抵抗を低減するために、管57と貫通穴56とが略一直線になるように設置される。管57の他端には、フランジ57aが形成されている。このフランジ57aには、気体噴射装置60のフレキシブル配管62を接続することができる。フランジ57aとフレキシブル配管62とを接続した状態で本体61を作動させることによって、気体が充填空間21へ噴射される。このように、貫通穴56に管57を取り付けることによって、第1の傾斜部54の厚みによらず、また、固体物の安息角によらず、充填空間21に貯留された固体物が貫通穴56を介して第1の非充填空間51に進入することを確実に防止できる。
【0050】
本実施形態では、第1の非充填空間51に設置される気体噴射装置60の数は、貫通穴56の数よりも少ない。そして、気体噴射装置60は、着脱可能に直接的または間接的に貫通穴56に接続するための接続部を備えている。本実施形態では、当該接続部は、フレキシブル配管62の先端に設けられた、フランジ57aと接続するためのフランジ62aとして実現されている。このため、作業者が気体噴射装置60の接続先を選択的に切り替えることによって、二つ以上の貫通穴56に対して一つの気体噴射装置60を共用することができる。
図7に示す例では、下側の貫通穴56に気体噴射装置60が接続され、上側の貫通穴56に気体噴射装置60が接続されていない状態を例示している。この構成によれば、気体噴射装置60の数を減らすことができる。代替実施形態では、複数の管57の各々にフレキシブル配管62を予め接続しておき、これらのフレキシブル配管62の間で本体61の接続先が切り替えられてもよい。ただし、貫通穴56の数と同数の気体噴射装置60が設置されてもよい。
【0051】
同様に、水平方向および鉛直方向に対して角度付けられた第2の仕切部40には、第2の非充填空間41と充填空間21とを連通させるように第2の仕切部40を貫通する複数の貫通穴43が形成されている。第2の非充填空間41に設置された気体噴射装置60は、これらの貫通穴43を介して、第2の非充填空間41から充填空間21へ気体を噴射する。
【0052】
図8(b)は、第1の傾斜部54と向かい合う第2の仕切部40における貫通穴43の配置を示す正面図であり、充填空間21内から第2の仕切部40を見た状態を示している。図示するように、貫通穴43は、鉛直方向において2段で設けられている。上段(上側)の貫通穴43の充填空間21側の開口は、水平方向における異なる四つの位置にそれぞれ設けられている。下段(下側)の貫通穴43の充填空間21側の開口は、水平方向における異なる五つの位置にそれぞれ設けられている。本実施形態では、上側の貫通穴43と下側の貫通穴43とは千鳥状に設けられている。なお、図示は省略するが、第2の傾斜部55と向かい合う第2の仕切部40にも、同様の貫通穴43が形成されている。
【0053】
上側の貫通穴43は、主に、ブリッジを破壊するために使用されるが、充填空間21における固体物の貯留量がほぼ空になった場合に、第2の仕切部40上に残留している固体物を開口52へ導くためにも使用可能である。一方、下側の貫通穴43は、充填空間21における固体物の貯留量がほぼ空になった場合に、第2の仕切部40上および/または床30上に残留している固体物を開口52へ導くために使用される。
【0054】
図7に示すように、貫通穴56と同様に、上側の貫通穴43の第2の非充填空間41側の開口は、鉛直方向において、上側の貫通穴43の充填空間21側の開口よりも高い位置にある。このため、上側の貫通穴43を介して噴射される気体のベクトルが鉛直方向の成分を有するので、ブリッジを破壊できる範囲が広がる。一方、下側の貫通穴43はブリッジの破壊を目的としていないので、下側の貫通穴43の第2の非充填空間41側の開口は、鉛直方向において、下側の貫通穴43の充填空間21側の開口と同じ高さの位置にある。このようにしても、充填空間21に貯留された固体物が下側の貫通穴43を介して第2の非充填空間41に進入すること、または、下側の貫通穴43が固体物によって詰まることを抑制できる。ただし、下側の貫通穴43も、上側の貫通穴43と同様に、斜め下向きに角度付けられていてもよい。逆に、貫通穴56および上側の貫通穴43は、下側の貫通穴43と同様に水平方向に方向付けられていてもよい。
【0055】
本実施形態では、下側の貫通穴43は、鉛直方向において、開口52の下端とほぼ同じ高さの位置に設けられている。このような低い位置に下側の貫通穴43を設ければ、より多くの固体物を開口52へ導くことができる。代替実施形態では、下側の貫通穴43は、開口52の下端よりも低い位置に設けられてもよい。
【0056】
これらの上側および下側の貫通穴43には、管44が取り付けられている。管44は、管57と同一の構成を有している。本実施形態では、第2の非充填空間41に設置される気体噴射装置60の数は、貫通穴43の数よりも少なく、一つの気体噴射装置60が二つ以上の貫通穴43に対して共用される。
【0057】
本実施形態においては、貫通穴56の充填空間21側の開口、および、上側の貫通穴43の充填空間21側の開口は、鉛直方向の位置が互いに異なっている。より具体的には、上側の貫通穴43の充填空間21側の開口は、鉛直方向において、上側の貫通穴56の充填空間21側の開口と、下側の貫通穴56の充填空間21側の開口と、の間に配置されている。この構成によれば、充填空間21の内側および外側から、鉛直方向における複数の位置で気体を噴射することができるので、ブリッジを破壊できる範囲が広くなる。例えば、下側の貫通穴56から矢印A1で示すように気体を噴射すれば、開口52よりも僅かに上方の位置P1に発生したブリッジを破壊することができる。また、上側の貫通穴43から矢印A2で示すように気体を噴射すれば、位置P1よりも上方の位置P2に発生したブリッジを破壊することができる。さらに、上側の貫通穴56から矢印A3で示すように気体を噴射すれば、位置P2よりも上方の位置P3に発生したブリッジを破壊することができる。
【0058】
図7に示す例では、鉛直方向において貫通穴56および貫通穴43は、鉛直方向において2段でそれぞれ設けられているが、貫通穴56および/または貫通穴43は、1段または3段以上で設けられてもよいまた、一つの段における貫通穴43および/または貫通穴56の数は、1以上の任意の数で適宜設定され得る。
【0059】
図9は、気体の噴射方向を示す模式図であり、貯留倉庫10の内部を上方から見た状態を示している。図示するように、第1の非充填空間51には、上側の8つの貫通穴56用に四つの気体噴射装置60(符号60aを付している)が設置されている。なお、図示は省略されているが、下側の8つの貫通穴56用にも四つの気体噴射装置60が別途、設置されている。図示する四つの気体噴射装置60からは、上側から見ると、矢印で示すように、隣り合う開口52の間に向けて気体が噴射され得る。こうすれば、貫通穴56の数、ひいては、気体噴射装置60の数を減らすことができる。ただし、開口52の各々に向けて気体を噴射できるように、貫通穴56の数や気体噴射装置60の数が設定されてもよい。
【0060】
第2の非充填空間41には、上側の8つの貫通穴43用に四つの気体噴射装置60(符号60bを付している)が設置されている。これらの四つの気体噴射装置60からは、上側から見ると、矢印で示すように、五つの開口52の並びのうち、最も外側の二つの開口52に向けて気体が噴射され得るとともに、五つの開口52の並びのうち、真ん中の三つの開口52の間に向けて気体が噴射され得る。この構成によっても、上側の貫通穴43の数、ひいては、気体噴射装置60の数を減らすことができる。
【0061】
また、第2の非充填空間41には、下側の10個の貫通穴43用に二つの気体噴射装置60(符号60cを付している)が設置されている。
図9での矢印の図示は省略するが、
図8(b)に示したように下側の貫通穴43は、第1の傾斜部54に向かい合う第2の仕切部40、および、第2の傾斜部55に向かい合う第2の仕切部40に五つずつ設けられているので、10個の下側の貫通穴43から10個の開口52の各々に向けて気体を噴射できる。
【0062】
上述した倉庫10において、気体噴射装置60は、例えば、以下のように使用できる。まず、第1の非充填空間51に設置された気体噴射装置60と、開口52に最も近い下側の貫通穴56(8つ全て、または、その一部)と、を接続しておく。そして、気体噴射装置60から気体が規則的なタイミングで繰り返し噴射される。規則的なタイミングとは、周期的なタイミングであってもよい。この動作は、作業員が気体噴射装置60を手動操作することによって実現されてもよいし、タイマー制御によって自動的に実施されてもよい。この繰り返しの気体噴射は、ブリッジの発生が確認されていないときも行われる。かかる構成によれば、ブリッジの発生を未然に抑制することができる。代替実施形態では、下側の貫通穴56に代えて、または、加えて、上側の貫通穴56および上側の貫通穴43の少なくとも一方からも気体が同時に、または、順次、噴射されてもよい。
【0063】
そして、作業員は、第1の非充填空間51を定期的に巡回して、ブリッジの発生の有無を確認する。ブリッジの発生が確認されると、作業者は、ブリッジの発生箇所を特定する。例えば、作業者は、第1の仕切部50の貫通穴56や第2の仕切部40の上側の貫通穴43を覗き窓として利用して、貫通穴56または上側の貫通穴43の充填空間21側の開口のところでの固体物の貯留状況を確認してもよい。代替実施形態では、
図10に示すように、第1の仕切部50(
図10では、第1の傾斜部54のみ示している)は、覗き窓80a,80bを備えている。覗き窓80a,80bは、貫通穴81a,81bと、管82a,82bと、を備えている。貫通穴81a,81bは、貫通穴56と同様の貫通穴である。管82a,82bは、フランジ57aを備えていない点を除き、管57と同一の構成を有している。
【0064】
覗き窓80a,80bは、鉛直方向における互いに異なる位置に設けられている。より具体的には、覗き窓80aの充填空間21側の開口は、鉛直方向において、下側の貫通穴56の充填空間21側の開口と、上側の貫通穴43の充填空間21側の開口と、の間に位置している。覗き窓80bの充填空間21側の開口は、鉛直方向において、上側の貫通穴43の充填空間21側の開口と、上側の貫通穴56の充填空間21側の開口と、の間に位置している。
【0065】
貫通穴81a,81bの充填空間21側の開口は、固体物の進入を防ぎ、かつ、作業者が充填空間21の内部を視認可能となるように、透明部材(例えば、強化ガラス)によって塞がれていてもよい。覗き窓80a,80bは、水平方向においても、異なる複数の位置に設けられていてもよい。
【0066】
ブリッジの発生箇所よりも下方に位置する固体物は開口52から排出されるので、例えば、覗き窓80aから充填空間21を覗いたときに固体物が貯留されていれば、ブリッジは、覗き窓80aの充填空間21側の開口よりも鉛直方向下方(例えば、
図10の位置P1)で発生していることになる。この場合、作業者は、下側の管57にフレキシブル配管62を接続し、下側の貫通穴56から気体を噴射させて、ブリッジを破壊することができる。
【0067】
覗き窓80aから充填空間21を覗いたときに固体物が貯留されておらず、かつ、覗き窓80bから充填空間21を覗いたときに固体物が貯留されていれば、ブリッジは、鉛直方向において、覗き窓80aの充填空間21側の開口と、覗き窓80bの充填空間21側の開口と、の間(例えば、
図10の位置P2)で発生していることになる。この場合、作業者は、上側の管44にフレキシブル配管62を接続し、上側の貫通穴43から気体を噴射させて、ブリッジを破壊することができる。
【0068】
覗き窓80bから充填空間21を覗いたときに固体物が貯留されていなければ、ブリッジは、覗き窓80bの充填空間21側の開口よりも鉛直方向上方(例えば、
図10の位置P3)で発生していることになる。この場合、作業者は、上側の管57にフレキシブル配管62を接続し、上側の貫通穴56から気体を噴射させて、ブリッジを破壊することができる。以上のように、作業者は、目視によってブリッジの発生箇所を特定し、手動操作によって気体噴射装置60を操作して、ブリッジを破壊することができる。
【0069】
代替実施形態では、覗き窓は、気体を噴射するための貫通穴の充填空間21側の開口(本実施形態では、下側の貫通穴56の充填空間21側の開口、上側の貫通穴43の充填空間21側の開口、および、上側の貫通穴56の充填空間21側の開口)と同一高さのところで充填空間21に開口するように、それぞれ設けられる。この場合、気体の噴射位置と、ブリッジの発生の有無の確認位置と、が鉛直方向において一致するので、気体を噴射させるべき位置の判断をより正確に行うことができる。他の代替実施形態では、覗き窓は、第1の仕切部50に代えて、または、加えて、第2の仕切部40に設けられていてもよい。
【0070】
他の代替実施形態では、倉庫10は、充填空間21内における固体物の貯留状況を検知するように構成されたセンサを備えていてもよい。こうすれば、作業者は、目視確認することなく、ブリッジの発生箇所を特定可能である。例えば、
図11に示すように、センサ180a,180bが第2の仕切部40および第1の仕切部50(
図10では、第1の傾斜部54のみ示している)の貫通穴に設置されていてもよい。センサ180aは、発光部181aと受光部182aとを備えている。発光部181aと受光部182aとは、同一レベル(鉛直方向の位置)に配置されている。発光部181aから放出された光が受光部182aで受光されるか否かによって、そのレベルにおける固体物の貯留物の有無を検知できる。同様に、センサ180bも、発光部181bと受光部182bとによって、センサ180aとは異なるレベルにおいて、固体物の貯留物の有無を検知できる。複数のセンサ180a,180bが、水平方向の互いに異なる複数の位置にそれぞれ配置されてもよい。
図11では、
図10に示した覗き窓80a,80bと同一レベルで固体物の貯留状況を検知する構成を示しているが、覗き窓80a,80bの代替実施形態と同様に、センサ180a,180bによる鉛直方向の検出位置と、気体の噴射位置と、を一致させてもよい。
【0071】
光学式のセンサ180a,180bに代えて、任意の形式のセンサが使用されてもよい。例えば、レベル計70と同様の電磁式のセンサが使用されてもよい。あるいは、機械式のセンサが使用されてもよい。例えば、荷重を受けると(つまり、固体物の荷重が作用すると)初期位置から変位し(例えば、倒れる、または、押し下げられる)、荷重を受けない状態では、付勢部材によって初期位置に戻される部材の変位を検知するセンサが使用されてもよい。
【0072】
このように、レベル計70およびセンサ180a,180bの検知結果を使用すれば、ブリッジの発生の有無を自動的に検知することが可能である。また、複数の位置にセンサを設置することにより、ブリッジの発生箇所の特定も可能である。倉庫10は、ブリッジの発生の有無やブリッジの発生箇所を作業者に報知するための報知手段を備えていてもよい。あるいは、貫通穴56および貫通穴43の全てに気体噴射装置60が常時接続されている場合には、倉庫10は、気体噴射装置60の自動制御を行うための制御装置を備えていてもよい。この制御装置は、ブリッジの発生の検知を契機として、ブリッジの発生箇所に対応する貫通穴56または上側の貫通穴43のみから気体を噴射するように構成されてもよい。
【0073】
充填空間21における固体物の貯留量がほぼ空になった(所定量以下になった)場合(このことは、例えば、レベル計70やカメラによって確認可能である)、上側および/または下側の貫通穴43から気体が噴射されてもよい。例えば、まず、上側の貫通穴43から気体が噴射され、第2の仕切部40上に残留している固体物が下方に導かれてもよい。その後、下側の貫通穴43から気体が噴射され、残りの固体物が開口52に導かれてもよい。この気体の噴射は、作業者の手動操作によって実施されてもよいし、自動化されてもよい。こうすれば、第2の仕切部40上から床30の平坦部に亘って残留した固体物の大半を開口52へ(ひいては、排出口31へ)導くことができる。
【0074】
気体噴射装置60は、空気および窒素ガスのうちの一方を選択的に噴射可能に構成されてもよい。例えば、本体61は、空気源と窒素ガス源とに選択的に接続可能に構成されていてもよい。この場合、通常時には、気体噴射装置60から空気を噴射し、一方、火災発生時には、気体噴射装置60から窒素ガスを噴射して、倉庫10内を窒素パージすることができる。この場合、貫通穴56および貫通穴43の全てから窒素ガスが噴射されてもよい。
【0075】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。例えば、第2の非充填空間41および第1の非充填空間51のうちの一方のみに気体噴射装置60が設置されてもよい。あるいは、第2の非充填空間41および第1の非充填空間51のうちの一方のみが形成されていてもよい。あるいは、第2の非充填空間41から気体を噴射する構成に代えて、屋外から気体が噴射されてもよい。あるいは、気体噴射装置60の一部(例えば、本体61)は、屋外に設置されてもよい。あるいは、第1の非充填空間51から開口52を介して気体が充填空間21へ噴射されてもよい。あるいは、上述した気体噴射装置60に代えて、可搬式の気体噴射装置を使用して、当該気体噴射装置を複数の貫通穴56または貫通穴43の間で共用してもよい。あるいは、気体噴射装置60が気体を規則的なタイミングで繰り返し噴射することによって、ブリッジの発生を未然に抑制する構成は、倉庫10の上述した種々の構造と切り離して実現可能である。
【符号の説明】
【0076】
10...貯留倉庫
15...固体物
20...外壁
21...充填空間
25,25a,25b...倉庫出入口
30...床
31...排出口
33...モルタル
34...上面
40...第2の仕切部
41...第2の非充填空間
42,42a,42b...非充填空間出入口
43...貫通穴
44...管
50...第1の仕切部
51...第1の非充填空間
52...開口
53...下端
54...第1の傾斜部
55...第2の傾斜部
56...貫通穴
57...管
57a...フランジ
60,60a,60b,60c...気体噴射装置
61...本体
62...フレキシブル配管
62a...フランジ
70...レベル計
80a,80b...覗き窓
81a,81b...貫通穴
82a,82b...管
90...地下ピット
91...シュート
92...コンベア
180a,180b...センサ
181a,181b...発光部
182a,182b...受光部