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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/18 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
B60R19/18 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019191294
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021066263
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】相澤 誠
(72)【発明者】
【氏名】長田 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】川船 良祐
(72)【発明者】
【氏名】三島 優太
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-47687(JP,A)
【文献】特許第4816141(JP,B2)
【文献】国際公開第2012/102173(WO,A1)
【文献】特開2005-47463(JP,A)
【文献】特開2002-274298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパフェースの上部寄り側の内部に前方斜め上方からの荷重を吸収する衝撃吸収部材と、上記バンパフェースの後方に車幅方向に延びるバンパビームが備わる車両の前部構造であって、
上記衝撃吸収部材は、上記バンパフェースのフロントグリル下方の内部に配設されており、
該衝撃吸収部材は、荷重を受ける荷重受け部と、上記バンパビームに対して前方に離間して設けられ、上記衝撃吸収部材の後退時に上記荷重受け部に対して後方下方に位置する上記バンパビームの上端エッジ部に係止される係止部と、上記荷重受け部と上記係止部とをつなぐ連結部と、を備え、
上記連結部には、前方上方からの荷重に対する変形促進部が形成された
車両の前部構造。
【請求項2】
上記変形促進部が、上記連結部の途中に前後方向に間隔を隔てて複数形成される屈曲部から構成された
請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
上記連結部には、上記屈曲部を前後に跨ぐと共に車幅方向で凹凸となる凹凸形状部が形成された
請求項2に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
上記荷重受け部には、車幅方向で凹凸となる凹凸形状部が形成された
請求項1~3の何れか一項に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
上記連結部の車幅方向中央には分離部が形成され、
上記連結部から上記分離部を介して下方に延びる取付け片部が形成されており、
上記分離部に隣接する上記連結部に上記凹凸形状部が形成された
請求項3に記載の車両の前部構造。
【請求項6】
バンパフェースの上部寄り側の内部に前方斜め上方からの荷重を吸収する衝撃吸収部材が備わる車両の前部構造であって、
上記衝撃吸収部材は、上記バンパフェースのフロントグリル下方の内部に配設されており、
該衝撃吸収部材は、荷重を受ける荷重受け部と、衝撃吸収部材の後退時に上記荷重受け部に対して後方下方に位置するバンパビームの上端エッジ部に係止される係止部と、上記荷重受け部と上記係止部とをつなぐ連結部と、を備え、
上記連結部には、前方上方からの荷重に対する変形促進部が形成され
上記変形促進部が、上記連結部の途中に前後方向に間隔を隔てて複数形成される屈曲部から構成され、上記連結部には、上記屈曲部を前後に跨ぐと共に車幅方向で凹凸となる凹凸形状部が形成され、上記連結部の車幅方向中央には分離部が形成され、上記連結部から上記分離部を介して下方に延びる取付け片部が形成されており、上記分離部に隣接する上記連結部に上記凹凸形状部が形成された
車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バンパフェースの上部寄り側の内部に前方斜め上方からの荷重を吸収する衝撃吸収部材が備わる車両の前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、歩行者保護に対する前方上方からの荷重吸収構造は、特許文献1に開示されているように、フロントグリル上方に位置するバンパフェースアッパ内部に設けられている。
特許文献1には開示されていないが、歩行者保護に対する前方上方からの衝撃荷重の吸収量増加を図るため、可能な限り他の部位も利用して荷重吸収させたいという要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-38497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、この発明は、バンパビームを支持部としてフロントグリル直下に加わる衝撃荷重を低減させることができる車両の前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明による車両の前部構造は、バンパフェースの上部寄り側の内部に前方斜め上方からの荷重を吸収する衝撃吸収部材と、上記バンパフェースの後方に車幅方向に延びるバンパビームが備わる車両の前部構造であって、上記衝撃吸収部材は、上記バンパフェースのフロントグリル下方の内部に配設されており、該衝撃吸収部材は、荷重を受ける荷重受け部と、上記バンパビームに対して前方に離間して設けられ、上記衝撃吸収部材の後退時に上記荷重受け部に対して後方下方に位置する上記バンパビームの上端エッジ部に係止される係止部と、上記荷重受け部と上記係止部とをつなぐ連結部と、を備え、上記連結部には、前方上方からの荷重に対する変形促進部が形成されたものである。
【0006】
上述の変形促進部は、屈曲部またはスリットや細長い開口部であってもよい。
上記構成によれば、衝撃荷重入力時に、上記係止部がバンパビームの上端エッジ部に係止されるので、バンパビームを支持部としてフロントグリル直下に加わる衝撃荷重を吸収することができる。詳しくは、衝撃荷重入力時に、係止部がバンパビームの上端エッジ部で係止され、変形促進部を起点として上記連結部が変形することで、衝撃荷重を吸収するものである。
【0007】
この発明の一実施態様においては、上記変形促進部が、上記連結部の途中に前後方向に間隔を隔てて複数形成される屈曲部から構成されたものである。
上記構成によれば、衝撃荷重入力時に、上記連結部にてある程度の突っ張り荷重を発生すると共に、屈曲部により連結部の変形を促進させながら荷重基準値以内で衝撃荷重を受け続けることができる。因に、屈曲部(変形促進部)が存在しない場合には、連結部が屈曲変形しないので、荷重基準値を超えることになる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記連結部には、上記屈曲部を前後に跨ぐと共に車幅方向で凹凸となる凹凸形状部が形成されたものである。
上記構成によれば、凹凸形状部により連結部の剛性向上を図ることができるので、屈曲変形時の衝撃吸収量の増大を図ることができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記荷重受け部には、車幅方向で凹凸となる凹凸形状部が形成されたものである。
上記構成によれば、上述の凹凸形状部にて荷重受け部の剛性向上を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記連結部の車幅方向中央には分離部が形成され、上記連結部から上記分離部を介して下方に延びる取付け片部が形成されており、上記分離部に隣接する上記連結部に上記凹凸形状部が形成されたものである。
上記構成によれば、分離部による剛性低下を上述の凹凸形状部にて補強することができる。
この発明による車両の前部構造は、バンパフェースの上部寄り側の内部に前方斜め上方からの荷重を吸収する衝撃吸収部材が備わる車両の前部構造であって、上記衝撃吸収部材は、上記バンパフェースのフロントグリル下方の内部に配設されており、該衝撃吸収部材は、荷重を受ける荷重受け部と、衝撃吸収部材の後退時に上記荷重受け部に対して後方下方に位置するバンパビームの上端エッジ部に係止される係止部と、上記荷重受け部と上記係止部とをつなぐ連結部と、を備え、上記連結部には、前方上方からの荷重に対する変形促進部が形成され、上記変形促進部が、上記連結部の途中に前後方向に間隔を隔てて複数形成される屈曲部から構成された上記連結部には、上記屈曲部を前後に跨ぐと共に車幅方向で凹凸となる凹凸形状部が形成され、上記連結部の車幅方向中央には分離部が形成され、上記連結部から上記分離部を介して下方に延びる取付け片部が形成されており、上記分離部に隣接する上記連結部に上記凹凸形状部が形成されたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、バンパビームを支持部としてフロントグリル直下に加わる衝撃荷重を低減させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の車両の前部構造を示す正面図。
図2】フロントグリルと衝撃吸収部材と下側グリルとを示す正面図。
図3図2のA―A線対応位置における矢視断面図。
図4図2のB-B線対応位置における矢視断面図。
図5図2のC-C線対応位置における矢視断面図。
図6図2のD-D線対応位置における矢視断面図。
図7】衝撃吸収部材の斜視図。
図8】衝撃吸収部材の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
バンパビームを支持部としてフロントグリル直下に加わる衝撃荷重を低減させるという目的を、バンパフェースの上部寄り側の内部に前方斜め上方からの荷重を吸収する衝撃吸収部材と、上記バンパフェースの後方に車幅方向に延びるバンパビームが備わる車両の前部構造であって、上記衝撃吸収部材は、上記バンパフェースのフロントグリル下方の内部に配設されており、該衝撃吸収部材は、荷重を受ける荷重受け部と、上記バンパビームに対して前方に離間して設けられ、上記衝撃吸収部材の後退時に上記荷重受け部に対して後方下方に位置する上記バンパビームの上端エッジ部に係止される係止部と、上記荷重受け部と上記係止部とをつなぐ連結部と、を備え、上記連結部には、前方上方からの荷重に対する変形促進部が形成されるという構成にて実現した。
【実施例
【0014】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の前部構造を示し、図1は当該車両の前部構造を示す正面図、図2はフロントグリルと衝撃吸収部材と下側グリルとを示す正面図である。また、図3図2のA-A線対応位置における矢視断面図、図4図2のB-B線対応位置における矢視断面図、図5図2のC-C線対応位置における矢視断面図、図6図2のD-D線対応位置における矢視断面図である。
【0015】
図3において、エンジンルームの前部に設けられたラジエータシュラウド1の上部は、車幅方向に延びるシュラウドアッパ2を介して、エプロンレインフォースメントの前部に取付けられている。
図3図4図5に示すように、エンジンルームの上方はボンネット3により開閉可能に覆われている。この実施例では、上記ボンネット3はその後端部をヒンジ部として、その前端側が開閉するように構成されている。
【0016】
該ボンネット3は、ボンネットアウタパネル3aとボンネットインナパネル3bとをヘミング加工により接合一体化して構成されており、図4図5に示すように、ボンネットアウタパネル3aの下面側には、ボンネットレインフォースメント3cが接着固定されている。
【0017】
エンジンルームおよびラジエータシュラウド1の車幅方向左右両サイドには、車両の前後方向に延びるフロントサイドフレームが設けられている。当該フロントサイドフレームの前端にはセットプレートを介してクラッシュカンが取付けられている。
【0018】
そして、左右一対のクラッシュカンの前端相互間には、車幅方向に延びるバンパビーム4が設けられている(図3図6参照)。このバンパビーム4は、図3図6に示すように、ラジエータシュラウド1の前方を車幅方向に延びている。また、当該バンパビーム4は、バンパビーム本体4aとクロージングプレート4bとを接合固定して、車幅方向に延びるバンパビーム閉断面5を備えている。
【0019】
図3図6に示すように、バンパビーム4のクロージングプレート4b前面には、ポリエチレン、ポリスチレン等から成る発泡スチロール製の下部衝撃吸収部材6が配置されている。この下部衝撃吸収部材6は、左右のクラッシュカン相互間の範囲内において車幅方向に連続して延びる衝撃吸収部材、いわゆる、EAフォームである。
【0020】
図3図6に示すように、車両前面を構成するバンパフェース7を設けている。
このバンパフェース7は、フロントグリル8の後方に位置する後退部7aと、後退部7aの上側に位置する上端部7bと、フロントグリル8および下部衝撃吸収部材6よりも前方に位置する中間部7cと、下側グリル9よりも前方に位置する下片部7dと、を一体形成したものである。
【0021】
図1図3に示すように、フロントグリル8の車幅方向中央において当該フロントグリル8の前部には、エンブレム10が設けられている。
図4図6に示すように、エンブレム10が設けられたフロントグリル8の車幅方向中央と、フロントグリル8の車幅方向左右両サイドと、を除いて、フロントグリル8と前後方向に対向するバンパフェース7の後退部7aには、外気導入口11が形成されている。
【0022】
また、図3に示すように、下側グリル9と前後方向に対向するバンパフェース7の下片部7dにも、外気導入口12,13が上下に開口形成されている。
図2図4図5に示すように、上述のフロントグリル8は、車両正面視で六角枠形状のセル8aを縦横に配列して、外気導入用の開口部8bを形成したものである。
【0023】
図2に示すように、下側グリル9は、車幅方向に長い環状の外枠9aに対して、間隔を隔てて横桟9bおよび複数の縦桟9cを設けることで、外気導入用の開口部9dを形成したものである。
図3図4図5に示すように、フロントグリル8の上方には車幅方向に延びるバンパフェースアッパ14を設けている。
【0024】
図4図5に示すように、このバンパフェースアッパ14は、ボンネットアウタパネル3aの上面と前後方向に連続するように前低後高状に傾斜した上面部14aと、この上面部14aの前端からフロントグリル8の上部前側に向けて折返し形成された下面部14bと、を備えている。また、バンパフェースアッパ14は上面部14aの後端からさらに後方に延びる後方延出部14cを備えている。
【0025】
図3図5に示すように、バンパフェースアッパ14の上面部14aの内部、つまり下部には、前方斜め上方からの荷重を吸収する前側衝撃吸収部材15を設けている。この前側衝撃吸収部材15は繊維強化プラスチックにより形成されている。
【0026】
図3図5に示すように、バンパフェースアッパ14の上面部14aの直下部で、かつ前側衝撃吸収部材15の後部上側には、前方斜め上方からの荷重を吸収する後側衝撃吸収部材16を設けている。この後側衝撃吸収部材16はポリプロピレン等の合成樹脂により形成されている。
【0027】
詳しくは、該後側衝撃吸収部材16は、バンパフェースアッパ14の上面部14aおよび後方延出部14cの直下部に位置する前部16aと、この前部16aの後端からボンネットインナパネル3bの下方で、かつ、シュラウドアッパ2の上方まで後方に延びる後部16bとを一体形成したものである。
図4に示すように、上述の後側衝撃吸収部材16の前部16aにおける前後方向の中間部は、取付け部材17を用いて、前側衝撃吸収部材15に取付けられている。
【0028】
図5に示すように、後側衝撃吸収部材16の前部16aにおける後端部は、取付け部材18を用いて、バンパフェースアッパ14の後方延出部14cに取付けられている。
図4図5に示すように、バンパフェースアッパ14の内部には、前側衝撃吸収部材15と後側衝撃吸収部材16とが設けられており、前側に相対的に剛性が高い前側衝撃吸収部材15を配置し、後側に相対的に剛性が低い後側衝撃吸収部材16を配置している。
【0029】
ところで、図1図3図6に示すように、バンパフェース7における中間部7cの車幅方向中央には、ベース部材19を介してライセンスプレート20を設けている。また、図1図5において、21はヘッドランプ22を支持するランプブラケットである。さらに、図3において、23はシュラウドアッパ2とバンパビーム4とをつなぐセンタステーである。
図3図6に示すように、上述のバンパフェース7は後退部7aの下端7eから前方に略水平状に延びる前方延出部7fを備えている。
【0030】
同図に示すように、バンパフェース7の上部寄り側の内部、詳しくは、前方延出部7fの下方で、かつ、中間部7cの後方には、前方斜め上方からの荷重を吸収する中間部衝撃吸収部材30(以下、単に、衝撃吸収部材30と略記する)を備えている。この衝撃吸収部材30は、上述のバンパフェース7のフロントグリル8下方の内部に配設されている。
【0031】
また、上記衝撃吸収部材30はポリプロピレン等の合成樹脂により形成されている。そして、この衝撃吸収部材30と、上述の前側衝撃吸収部材15と、の上下方向の剛性は、下部衝撃吸収部材6の上下方向の剛性に対して、高剛性に形成されている。
ここで、図1に示すように、上述の前側衝撃吸収部材15は左右のヘッドランプ22,22間に配設されているのに対して、衝撃吸収部材30は左右のヘッドランプ22,22下方位置まで配設されている。
【0032】
図7は衝撃吸収部材30の斜視図、図8は衝撃吸収部材30の正面図である。
この衝撃吸収部材30は、車両後方側が開放された断面略凹形状で、左右のヘッドランプ22,22下方位置まで車幅方向に延びる本体部31を備えている(図1図2参照)。
【0033】
図7図8に示すように、衝撃吸収部材30の本体部31において、上側の車幅方向中央には上側取付け片部32を一体形成している。また、本体部31において、上側の車幅方向左右両サイド部にはサイド取付け片部33,33を一体形成している。
【0034】
図7図8に示すように、上記本体部31の下側の車幅方向中央には、分離部34を形成し、本体部31から分離部34を介して下方に延びる下側取付け片部35を一体形成している。また、本体部31において、下側の車幅方向左右両サイド部にはサイド取付け片部36,36を一体形成している。
【0035】
上述の上側取付け片部32と下側取付け片部35とは、車幅方向の同一位置に設けられており、また、上側のサイド取付け片部33と下側のサイド取付け片部36とは、車幅方向の同一位置に設けられている。
図3に示すように、上側取付け片部32はバンパフェース7の後退部7aの下部に取付けられ、下側取付け片部35の下部は、取付け部材37を用いて、下側グリル9の外枠9a上片に取付けられている。
【0036】
上側のサイド取付け片部33は、フロントグリル8の車幅方向サイド部の後面と、ラジエータシュラウド1の車幅方向サイド部の前面と、の間をシールするシールラバーに取付けられている。
図7図8に示すように、上側のサイド取付け片部33の車幅方向内側には、上下方向に延びるシールプレート部33aが一体形成されており、左右一対のシールプレート部33a,33aによりフロントグリル8から導入した走行風をラジエータシュラウド1まで案内すべく構成している。
【0037】
図2に示すように、下側グリル9の外枠9aにおけるサイド取付け片部36と対応する位置には、取付け片9eが一体形成されており、この取付け片9eに取付け部材38を用いて、下側のサイド取付け片部36が連結固定されている。
図6に示すように、衝撃吸収部材30の本体部31は、テーパ面31aと縦壁面31bとから成る荷重受け部31cと、係止部31dと、連結部31eと、を備えている。
【0038】
上下方向に延びる縦壁面31bの上端から上方かつ後方に傾斜状に延びるテーパ面31aを一体形成し、テーパ面31aの後端には、当該後端から略水平に後方に延びる上片部31fを一体形成している。上述のテーパ面31aと縦壁面31bとから成る荷重受け部31cは、荷重を受けるものである。
【0039】
上述の係止部31dは、衝撃吸収部材30の後退時に荷重受け部31cに対して後方下方に位置するバンパビーム4の上端エッジ部4eに係止されるものである。また、上述の連結部31eは、荷重受け部31cの下端と係止部31dの上端とを前後方向につなぐものである。この実施例では、上記係止部31dは連結部31eから直角状に下方へ延びている。
【0040】
図6で示した各要素31a~31fからなる本体部31の断面構造は、分離部34の形成部位を除いて、左右のサイド取付け片部33,33間、36,36間で、略同等に形成されている。
図6に示すように、上述の連結部31eには、前方上方からの荷重に対する変形促進部としての屈曲部39,40が形成されている。
【0041】
上述の係止部31dと屈曲部39,40とを形成することで、荷重受け部31cに前方斜め上方から衝撃荷重が入力されると、係止部31dが後退してバンパビーム4の上端エッジ部4eで係止され、バンパビーム4を支持部としてフロントグリル直下に加わる衝撃荷重を吸収する。この際、変形促進部である屈曲部39,40を起点として上記連結部31eが変形することで、衝撃荷重を吸収するように構成したものである。
【0042】
図6に示すように、上述の変形促進部は、連結部31eの途中に車両前後方向に間隔を隔てて形成した複数の屈曲部39,40にて構成している。図6に示すように、この実施例では前側の屈曲部39を山折れ構造とし、後側の屈曲部40を谷折れ構造としている。
【0043】
これにより、衝撃荷重入力時に、上記連結部31eにてある程度の突っ張り荷重を発生すると共に、前後の屈曲部39,40により連結部31eの変形を促進させながら荷重基準値以内で衝撃荷重を受け続けるように構成している。因に、屈曲部39,40が存在しない場合には、連結部31eが屈曲変形しないので、荷重基準値を超えることになる。
【0044】
図2図8に示すように、上述の連結部31eには、前後の屈曲部39,40を車両前後方向に跨ぐ凹部41と凸部42とを車幅方向に交互に形成し、これにより車幅方向で凹凸となる凹凸形状部43を形成している。この凹凸形状部43により連結部31eの剛性向上を図り、屈曲変形時の衝撃吸収量の増大を図るように構成している。
【0045】
図2図7図8に示すように、上述の荷重受け部31cの縦壁面31bには、凹部44と凸部45とを車幅方向に交互に形成し、これにより車幅方向で凹凸となる凹凸形状部46を形成している。この実施例では、凸部45は縦壁面31bの前面部と面一に形成され、凹部44が縦壁面31bより後方に窪むように形成されている。上述の凹凸形状部46により荷重受け部31cの剛性向上を図るように構成したものである。
【0046】
さらに、図2図7図8に示すように、上述の連結部31eの車幅方向中央には非凹凸形状部としての分離部34が形成されている。そして、上記連結部31eから分離部34を介して下方に延びる下側取付け片部35が形成されており、上記分離部34に隣接する連結部31eに上述の凹凸形状部43が形成されている。これにより、分離部34による剛性低下を上述の凹凸形状部43にて補強するように構成している。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0047】
このように、上記実施例の車両の前部構造は、バンパフェース7の上部寄り側の内部に前方斜め上方からの荷重を吸収する衝撃吸収部材30が備わる車両の前部構造であって、上記衝撃吸収部材30は、上記バンパフェース7のフロントグリル8下方の内部に配設されており、該衝撃吸収部材30は、荷重を受ける荷重受け部31cと、衝撃吸収部材30の後退時に上記荷重受け部31cに対して後方下方に位置するバンパビーム4の上端エッジ部4eに係止される係止部31dと、上記荷重受け部31cと上記係止部31dとをつなぐ連結部31eと、を備え、上記連結部31eには、前方上方からの荷重に対する変形促進部(屈曲部39,40参照)が形成されたものである(図2図6参照)。
【0048】
この構成によれば、衝撃荷重入力時に、上記係止部31dがバンパビーム4の上端エッジ部4eに係止されるので、バンパビーム4を支持部としてフロントグリル8直下に加わる衝撃荷重を吸収することができる。詳しくは、衝撃荷重入力時に、係止部31dがバンパビーム4の上端エッジ部4eで係止され、変形促進部(屈曲部39,40)を起点として上記連結部31eが変形することで、衝撃荷重を吸収するものである。
【0049】
また、この発明の一実施形態においては、上記変形促進部が、上記連結部31eの途中に前後方向に間隔を隔てて複数形成される屈曲部39,40から構成されたものである(図6参照)。
この構成によれば、衝撃荷重入力時に、上記連結部31eにてある程度の突っ張り荷重を発生すると共に、屈曲部39,40により連結部31eの変形を促進させながら荷重基準値以内で衝撃荷重を受け続けることができる。因に、屈曲部39,40(変形促進部)が存在しない場合には、連結部31eが屈曲変形しないので、荷重基準値を超えることになる。
【0050】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記連結部31eには、上記屈曲部39,40を前後に跨ぐと共に車幅方向で凹凸となる凹凸形状部43が形成されたものである(図2図8参照)。
この構成によれば、凹凸形状部43により連結部31eの剛性向上を図ることができるので、屈曲変形時の衝撃吸収量の増大を図ることができる。
【0051】
さらにまた、この発明の一実施形態においては、上記荷重受け部31cには、車幅方向で凹凸となる凹凸形状部46が形成されたものである(図2図7図8参照)。
この構成によれば、上述の凹凸形状部46にて荷重受け部31cの剛性向上を図ることができる。
【0052】
加えて、この発明の一実施形態においては、上記連結部31eの車幅方向中央には分離部34が形成され、上記連結部31eから上記分離部34を介して下方に延びる取付け片部(下側取付け片部35参照)が形成されており、上記分離部34に隣接する上記連結部31eに上記凹凸形状部43が形成されたものである(図2図7図8参照)。
この構成によれば、分離部34による剛性低下を上述の凹凸形状部43にて補強することができる。
【0053】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の変形促進部は、実施例の屈曲部39,40に対応し、
以下同様に、
取付け片部は、下側取付け片部35に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上述の変形促進部は、屈曲部39,40に代えて、スリットや細長い開口部であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明は、バンパフェースの上部寄り側の内部に前方斜め上方からの荷重を吸収する衝撃吸収部材が備わる車両の前部構造について有用である。
【符号の説明】
【0055】
4…バンパビーム
4e…上端エッジ部
7…バンパフェース
8…フロントグリル
30…衝撃吸収部材
31c…荷重受け部
31d…係止部
31e…連結部
34…分離部
35…下側取付け片部(取付け片部)
39,40…屈曲部(変形促進部)
43,46…凹凸形状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8